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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1328192
審判番号 不服2015-19993  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-06 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 特願2013-539391「デバイス・コンテンツをカスタマイズする方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日国際公開,WO2012/066516,平成26年 2月20日国内公表,特表2014-504390〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成23年11月18日の国際出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 5月16日 :国内書面の提出
平成25年 6月12日 :翻訳文,出願審査請求,手続補正,
上申書の提出
平成26年 5月20日付け :拒絶理由の通知
平成26年 9月12日 :意見,手続補正の提出
平成26年12月 4日付け :拒絶理由(最後)の通知
平成27年 3月20日 :意見,手続補正の提出
平成27年 6月30日付け :補正の却下の決定,拒絶査定
平成27年11月 6日 :審判請求,手続補正の提出
平成28年 1月 8日 :前置報告

第2 平成27年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年11月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年11月6日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成26年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至20の記載

「【請求項1】
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムと,前記デバイスに関連するアカウントとを関連付けることを決定することと;
前記アカウントがネットワーク上でアクティブであるという通知を受信することと;
をさらに含み,前記デバイスの前記検出は,前記通知に少なくとも一部基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インストールを開始することは,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを前記デバイスへ伝送することを決定することを少なくとも一部含む,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インストールを開始することは,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムへの1つ又は複数のリンクを前記デバイスへ伝送することを決定することと;
前記デバイスにおける前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの取得および前記インストールをもたらすアクションを,少なくとも一部生じさせることを決定することと;
を含む,請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの1つ又は複数の特徴を決定すること;
前記1つ又は複数のリンクを伝送すること又は前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを伝送することが,前記1つ又は複数の特徴に少なくとも一部基づくかどうかを決定することと;
をさらに含む,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの前記指定に関連する1つ又は複数のオプションを提示するユーザ・インターフェースを生成することを決定することと;
前記ユーザ・インターフェースを介して,前記インストールに関する承認情報を要求することを決定することと;
をさらに含み,
前記入力は,前記承認情報を少なくとも一部含む,請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インストールの前記開始,前記インストール,またはその組み合わせは,前記デバイスのユーザへの通知を生成することなく実行される,請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記入力は,前記デバイスの販売,アクティブ化,遠隔管理イベント,またはその組み合わせがあると受信される,請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと,1つ又は複数のプログラムのコンピュータ・プログラム・コードを含む少なくとも1つのメモリとを含む装置であって,前記コンピュータ・プログラム・コードは,前記少なくとも1つのプロセッサに実行されることにより,前記装置に少なくとも:
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含む処理を実行させるよう構成されている,装置。
【請求項10】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムと,前記デバイスに関連するアカウントとを関連付けることを決定することと;
前記アカウントがネットワーク上でアクティブであるという通知を受信することと;
を含み,前記デバイスを検出することは,前記通知に少なくとも一部基づく,請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記処理はさらに,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを前記デバイスへ伝送することを決定することを更に含む,請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記インストールを開始することは,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムへの1つ又は複数のリンクを前記デバイスへ伝送することを決定することと;
前記デバイスにおける前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの取得および前記インストールをもたらすアクションを,少なくとも一部生じさせることを決定することと;
を含む,請求項9から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの1つ又は複数の特徴を決定することと;
前記1つ又は複数のリンクを伝送すること又は前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを伝送することが,前記1つ又は複数の特徴に少なくとも一部基づくかどうかを決定することと;
をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの前記指定に関連する1つ又は複数のオプションを提示するユーザ・インターフェースを生成することを決定することと;
前記ユーザ・インターフェースを介して,前記インストールに関する承認情報を要求することを決定することと;
を含み,前記入力は,前記承認情報を少なくとも一部含む,請求項9から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記インストールの前記開始,前記インストール,またはその組み合わせは,前記デバイスのユーザへの通知を生成することなく実行される,請求項9から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記入力は,前記デバイスの販売,アクティブ化,遠隔管理イベント,またはその組み合わせがあると受信される,請求項9から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
装置の処理手段により実行されると,前記装置に少なくとも請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成される命令のセットを備える,コンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行する手段を備える装置。
【請求項19】
少なくとも1つのサービスへのアクセスを可能にするよう構成されている少なくとも1つのインターフェースへのアクセスを促進することを含む方法であって,前記少なくとも1つのサービスは,請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されている,方法。
【請求項20】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法から生じる情報,データおよび/または信号に少なくとも一部基づく,少なくとも1つのデバイス・ユーザ・インターフェース構成要素,少なくとも1つのデバイス・ユーザ・インターフェース機能性,またはその組み合わせの作成および/または変更を促進することを含む方法。 」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を,

「【請求項1】
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含み,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む方法。
【請求項2】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムと,前記デバイスに関連するアカウントとを関連付けることを決定することと;
前記アカウントがネットワーク上でアクティブであるという通知を受信することと;
をさらに含み,前記デバイスの前記検出は,前記通知に少なくとも一部基づく,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インストールを開始することは,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを前記デバイスへ伝送することを決定することを少なくとも一部含む,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インストールを開始することは,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムへの1つ又は複数のリンクを前記デバイスへ伝送することを決定することと;
前記デバイスにおける前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの取得および前記インストールをもたらすアクションを,少なくとも一部生じさせることを決定することと;
を含む,請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの1つ又は複数の特徴を決定すること;
前記1つ又は複数のリンクを伝送すること又は前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを伝送することが,前記1つ又は複数の特徴に少なくとも一部基づくかどうかを決定することと;
をさらに含む,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの前記指定に関連する1つ又は複数のオプションを提示するユーザ・インターフェースを生成することを決定することと;
前記ユーザ・インターフェースを介して,前記インストールに関する承認情報を要求することを決定することと;
をさらに含み,
前記入力は,前記承認情報を少なくとも一部含む,請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記インストールの前記開始,前記インストール,またはその組み合わせは,前記デバイスのユーザへの通知を生成することなく実行される,請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記入力は,前記デバイスの販売,アクティブ化,遠隔管理イベント,またはその組み合わせがあると受信される,請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサと,1つ又は複数のプログラムのコンピュータ・プログラム・コードを含む少なくとも1つのメモリとを含む装置であって,前記コンピュータ・プログラム・コードは,前記少なくとも1つのプロセッサに実行されることにより,前記装置に少なくとも:
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含む処理を実行させるよう構成され,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む,装置。
【請求項10】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムと,前記デバイスに関連するアカウントとを関連付けることを決定することと;
前記アカウントがネットワーク上でアクティブであるという通知を受信することと;
を含み,前記デバイスを検出することは,前記通知に少なくとも一部基づく,請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記処理はさらに,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを前記デバイスへ伝送することを決定することを更に含む,請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記インストールを開始することは,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムへの1つ又は複数のリンクを前記デバイスへ伝送することを決定することと;
前記デバイスにおける前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの取得および前記インストールをもたらすアクションを,少なくとも一部生じさせることを決定することと;
を含む,請求項9から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの1つ又は複数の特徴を決定することと;
前記1つ又は複数のリンクを伝送すること又は前記1つ又は複数のコンテンツアイテムを伝送することが,前記1つ又は複数の特徴に少なくとも一部基づくかどうかを決定することと;
をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記処理はさらに,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムの前記指定に関連する1つ又は複数のオプションを提示するユーザ・インターフェースを生成することを決定することと;
前記ユーザ・インターフェースを介して,前記インストールに関する承認情報を要求することを決定することと;
を含み,前記入力は,前記承認情報を少なくとも一部含む,請求項9から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記インストールの前記開始,前記インストール,またはその組み合わせは,前記デバイスのユーザへの通知を生成することなく実行される,請求項9から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記入力は,前記デバイスの販売,アクティブ化,遠隔管理イベント,またはその組み合わせがあると受信される,請求項9から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
装置の処理手段により実行されると,前記装置に少なくとも請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成される命令のセットを備える,コンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行する手段を備える装置。
【請求項19】
少なくとも1つのサービスへのアクセスを可能にするよう構成されている少なくとも1つのインターフェースへのアクセスを促進することを含む方法であって,前記少なくとも1つのサービスは,請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されている,方法。
【請求項20】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法から生じる情報,データおよび/または信号に少なくとも一部基づく,少なくとも1つのデバイス・ユーザ・インターフェース構成要素,少なくとも1つのデバイス・ユーザ・インターフェース機能性,またはその組み合わせの作成および/または変更を促進することを含む方法 」(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。


2 目的要件
本件補正は,上記「1 補正の内容」のとおり本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と,補正後の請求項とを比較すると,本件補正は,下記の補正事項よりなるものである。

<補正事項1>
補正前の請求項1の「を含む方法」との記載を,補正後の請求項1の「を含み,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む方法」とする補正。

<補正事項2>
補正前の請求項9の「を含む処理を実行させるよう構成されている,装置」との記載を,補正後の請求項9の「を含む処理を実行させるよう構成され,前記1つの又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む,装置」とする補正。

(2)補正事項1,2について
補正事項1,2は,補正前の請求項1乃至9の発明特定事項である「1つ又は複数のコンテンツアイテム」に対し,「前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくとも1つを含む」との限定事項を追加するものである。すなわち,補正事項1,2は,発明特定事項の限定を目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

したがって,上記補正事項1,2は限定的減縮を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。

3 独立特許要件
以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする上記補正事項1,2を含むものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記平成27年11月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含み,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む方法。」

(2)引用文献及び参考文献
(2-1)引用文献1
本願の出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である平成26年12月4日付けの拒絶理由通知において引用された,庵動 隆,Androidエンジニアからの招待状 第13回 飛躍するスマートフォンOS「Android」,SoftwareDesign,日本,株式会社技術評論社,2011年 5月18日,第247号,pp.142-149(以下,「引用文献1」という)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「Androidマーケットにも2011年3月に大きな変化があり,PC上のブラウザでAndroid端末のアプリケーションを選べるしくみが提供されるようになりました。(中略)これまではAndroid端末の上でマーケットアプリを起動し,小さい画面の中でアプリケーションを探すしかありませんでした。この新しいしくみを用いると,PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,そのままインストールボタンを押すだけで,自動的にネットワークを経由し,Android端末にアプリケーションがPushインストールされます(図2)。」(143頁左欄8行目-22行目)

B 図2

(143頁上段)

(2-2)引用文献2
本願の出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である平成26年12月4日付けの拒絶理由通知において引用された,リンクアップ,Androidアプリ スーパーバイブル,日本,ソシム株式会社,2011年 4月 7日,初版第2刷,pp.26-28(以下,「引用文献2」という)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

C

(26頁下段)

D

(27頁上段)

(27頁下段)

(28頁上段)

(2-3)引用文献3
本願の出願前に頒布され,原審の拒絶査定の理由である平成26年12月4日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2007-264766号公報(平成19年10月11日出願公開)(以下,「引用文献3」という)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E「【0031】
一方,ユーザ条件取得・判断部207は,本サービスを提供する対象である移動端末の接続状況(移動端末が接続状態にあるか否か,あるいは移動端末の接続の安定性など),移動端末の現在位置や移動状況,ユーザの特性(例えば,ユーザの生活圏や習慣,ユーザの嗜好)などの様々な条件(以下,これらの条件をユーザ条件と呼ぶ)を取得する機能を有している。
【0032】
さらに,ユーザ条件取得・判断部207は取得したユーザ条件を参照して,そのユーザの現在の状況に適したユーザ提供用コンテンツの作成をユーザ提供用コンテンツ作成部208に指示するとともに,ユーザ提供用コンテンツの作成及び配信のタイミングをユーザ提供用コンテンツ作成部208及びユーザ提供用コンテンツ配信部210に通知する機能を有している。ユーザ条件取得・判断部207は,基本的に移動端末100との接続が安定した時点で,ユーザ提供用コンテンツの配信が行われるように,ユーザ提供用コンテンツ配信部210に対してユーザ提供用コンテンツの配信のタイミングを指示する。
(中略)
【0063】
以上,説明したように,本発明の実施の形態によれば,多数存在する雑多コンテンツ群の中から,ユーザにとって有益な情報を選別して提供することが可能となる。また,本発明の実施の形態によれば,移動端末100が,狭帯域かつ不安定な無線通信を利用して通信を行っていることを考慮して,サービス提供サーバ200が,ユーザにとって必要なコンテンツ(例えば,移動端末100がまだ取得していないコンテンツ)を,移動端末100の無線接続が安定したタイミングでプッシュ配信することが可能である。」

(2-4)本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-516423号公報(平成21年4月16日公表,以下,「参考文献」という)には,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0002】
ディスプレイ,プロセッサ及びメモリ技術の向上によって,かつては主として音声通信用として使用されていたモバイル端末は,現在小型のハンドヘルド型コンピュータとして機能する段階にまで達している。ユーザは,自分のモバイル端末において実行するアプリケーションを用いて,アドレス帳,連絡先リスト,カレンダ,及び電子メールのような個人情報の管理を行うことができる。モバイル端末はまた,ユーザが画像,ビデオ,及びオーディオのようなメディアコンテンツの再生や視聴を可能にするメディア・プレイヤとして役立っている。モバイル端末は,デスクトップ型コンピュータの場合と同様,グラフィックユーザインタフェースを備えた高度なグラフィックオペレーティングシステムを含む場合が多い。ユーザは,例えば,特別注文の壁紙,テーマ,及び着信音をインストールすることによってグラフィックユーザインタフェースをカスタマイズする。個々のアプリケーションによって,ユーザは自分のニーズと個人的なお気に入りとに従ってお気に入りとオプションとを設定することも可能である。ユーザは個人用ファイルをモバイル端末へダウンロードすることもできる。
(中略)
【0015】
ディスプレイ,メモリ及び処理技術の向上によって,モバイル端末100は小型のハンドヘルド型コンピュータとして機能することが可能になっている。オペレーティングシステム104aは,多くのパーソナルコンピュータ上で使用されるグラフィックユーザインタフェースに類似したグラフィックユーザインタフェースを提供する。オペレーティングシステム104aは多くのアプリケーションを実行するためのプラットフォームを提供する。例えば,モバイル端末100は,コンタクトマネージャ,電子メールクライアント,ウェブブラウザ,及び1つ以上のメディア・プレイヤのようなアプリケーションと共に販売することができる。オペレーティングシステム104aによって,作業環境と,モバイル端末100の動作方法を制御する設定値とをユーザがカスタマイズすることが可能となる。例えば,オペレーティングシステム104aによって,ユーザはデスクトップの壁紙,スクリーンセーバ,アイコン,メニュー,及び着信音のようなユーザインタフェース要素をカスタマイズすることが可能になる。モバイル端末100上の個々のアプリケーション104b?104dはまたユーザによるオーダーメイドを可能にする。例えば,ウェブブラウザによって,ユーザがブックマークを格納することが可能となるか,又はクッキーとポップアップウィンドウの処理方法のお気に入りを設定することが可能となる。モバイル端末100は,プログラム可能な機能をさらに含むことが可能である。ユーザは,上記機能をプログラムして,モバイル端末100が動作する方法をユーザに適合するようにカスタマイズしてもよい。例えば,上記プログラム可能な機能を使用して,プリセットされた機能を制御ボタン116に割り当てるようにしてもよい。動作環境,プログラム設定値,プログラム可能な機能,及びモバイル端末100における他のカスタマイズ可能な特徴を制御するユーザ設定値は,モバイル端末100内のローカルメモリ104又はキャッシュ内のユーザプロファイルに格納される。ユーザプロファイルは単一のファイル又はファイルのコレクションを備えてもよい。モバイル端末100のカスタマイズ可能な特徴とそのアプリケーションとに加えて,ユーザはモバイル端末100内のユーザデータ104fを入力し,格納してもよい。このようなユーザデータ104fは,電話帳,アドレス帳,カレンダ,電子メール,メディアファイル,及び種々のタイプのデータファイルを含むものであってもよい。
(中略)
【0018】
本発明の1つの側面によれば,ローカルなユーザプロファイルに格納されたカスタマイズ可能なユーザ設定値とお気に入りとを,ユーザのデータファイルと共にモバイル通信ネットワーク10内の集中化データベースへアップロードしてもよい。これにより,ユーザが自分のモバイル端末100を交換するとき,ユーザは自分のカスタマイズされた設定値とお気に入りとを含む自分のユーザプロファイルを,選択されたデータファイルと共に集中化データベースからそれらの新たなモバイル端末100へダウンロードすることができる。例えば,ユーザが特別注文のデスクトップの壁紙又は着信音を有する場合,画像ファイル及び該画像ファイルと関連付けられたサウンドファイルをユーザプロファイルと共にダウンロードすることができる。したがって,モバイル端末100をカスタマイズする退屈なプロセスが回避されることになる。
(中略)
【0025】
ローミングユーザプロファイルを用いて,ユーザは,自分のカスタマイズされた設定値とお気に入りとを任意の互換性のあるモバイル端末100へダウンロードしてもよい。したがって,友人からモバイル端末100を借りているユーザは自分自身のカスタマイズされたデスクトップと着信音とを有することが可能となる。さらに,このダウンロードされたユーザプロファイルは,該ユーザプロファイルと共に特定のファイルをダウンロードするように指示することも可能である。カスタマイズされたデスクトップの壁紙に対して,対応する画像ファイルをダウンロードしてもよい。カスタマイズされた着信音に対して,対応するサウンドファイルをダウンロードしてもよい。さらに,プロファイルと共に又はプロファイルの一部として,ユーザの個々の連絡先リストをダウンロードすることも可能である。1つの例示の実施形態では,ユーザのプロファイルと共にユーザの連絡先の索引がダウンロードされる。ユーザが連絡先を選択すると,ネットワークから接続情報がダウンロードされ,この接続情報をローカルに格納することができる。」


(3)引用発明
引用文献1に記載されている事項を検討する。

ア 上記Aに「Androidマーケットにも2011年3月に大きな変化があり,PC上のブラウザでAndroid端末を選べるしくみが提供される」と記載されていることから,引用文献1には「PC上のブラウザ画面でAndroid端末のアプリケーションを選べるAndroidマーケットのしくみ」が記載されていると認められる。

イ 上記Aに「この新しいしくみを用いると,PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,そのままインストールボタンを押すだけで,自動的にネットワークを経由し,Android端末にアプリケーションがPushインストールされます」と記載されていることから,引用文献1には「PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,インストールしたいアプリを選択し,インストールボタンが押されるPC」が記載されていると認められる。

ウ 上記Bの「図2 PCからインストールできるAndroidアプリ」に『「インストールしたいアプリの選択」(PC側)→「インストール実行」(PC側)→「Androidマーケット」→「Push配信&自動インストール」(Andoroid端末)』と記載されていることから,「Androidマーケット」はPCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末へPush配信と自動インストールを行うことが読み取れることから,引用文献1には「PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPush配信と自動インストールするAndroidマーケット」が記載されていると認められる。

エ 上記Bの「図2 PCからインストールできるAndroidアプリ」に「PCで選択したアプリがネットワークで端末に自動インストールされる。Android端末側は画面の最上段にインストール状況が表示される」と記載されていることから,引用文献1には「PCで選択したアプリがネットワーク経由で端末に自動インストールされ,画面の最上段にインストール状況が表示されるAndoroid端末」が記載されていると認められる。

オ 以上,ア乃至エで示した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「PC上のブラウザ画面でAndroid端末のアプリケーションを選べるAndroidマーケットのしくみにおいて,
PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,インストールしたいアプリを選択し,インストールボタンが押されるPCと,
PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPush配信と自動インストールするAndroidマーケット
と,
PCで選択したアプリがネットワーク経由で端末に自動インストールされ,
画面の最上段にインストール状況が表示されるAndoroid端末
からなるAndroidマーケットのしくみ。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「PC上のブラウザ画面でAndroid端末のアプリケーションを選べるAndroidマーケットのしくみにおいて,PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,インストールしたいアプリを選択し,インストールボタンが押されるPCと,PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPush配信と自動インストールするAndroidマーケット」と本件補正発明の「ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信すること」とを対比すると,
引用発明の「PC上のブラウザ画面でAndroid端末のアプリケーションを選べるAndroidマーケットのしくみにおいて,PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけること」は,Android端末に好みのアプリを見つけていることから,ユーザの好みにデバイス(Android端末)をカスタマイズするためといえ,引用発明の「アプリ(アプリケーション)」はコンテンツアイテムを含むことが明らかなので,本件補正発明の「1つ又は複数のコンテンツアイテム」に相当し,引用発明の「インストールしたいアプリを選択し,インストールボタンを押」されることは,アプリ(1つ又は複数のコンテンツアイテム)を選択し,インストールするアプリ(1つ又は複数のコンテンツアイテム)を指定しているといえるので,本件補正発明の「1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する」ことに相当する。引用発明の「PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPuch配信と自動インストールするAndroidマーケット」は,PCで選択されたアプリをユーザが選択したことが明らかであるので,ユーザにより選択された入力であるインストール実行を受けているといえ,引用発明の「PCからインストール実行を受け」ることは,AndroidマーケットがPCから,アプリのインストール実行を受信しているといえる。そうすると,両者は後記する点で相違するものの,
“ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツを指定する,ユーザにより選択された入力を受信すること”という点で一致する。

(イ)引用発明の「PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPush配信と自動インストールするAndroidマーケットと,PCで選択したアプリがネットワーク経由で端末に自動インストールされ,画面の最上段にインストール状況が表示されるAndroid端末」と,本件補正発明の「検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部に基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすること」とを対比すると,
引用発明の「PCからインストール実行を受け,PCで選択されたアプリをAndroid端末にPush配信と自動インストールするAndroidマーケット」は,PCからインストール実行を受けて,PCで選択されたアプリ(1つ又は複数のコンテンツアイテム)をAndroid端末(デバイス)にPush配信と自動インストールすることといえ,デバイス(Android端末)で1つ又は複数のコンテンツアイテム(PCで選択されたアプリ)のインストールを開始する決定をすることといえる。また,PCで選択されたアプリは,ユーザにより選択され入力されたことは明らかであるので,1つ又は複数のコンテンツアイテム(アプリ)はユーザにより選択された入力によって指定されたものといえる。そうすると,両者は後記する点で相違するものの,
“デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすること”という点で一致する。


(ウ)上記(ア),(イ)から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,ユーザにより選択された入力を受信することと,
デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,
前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることとを含む方法。

<相違点1>
本件補正発明では「ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられている」と特定しているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。

<相違点2>
本件補正発明では「デバイスを検出する決定をすること」と特定されているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。

<相違点3>
本件補正発明では「検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて」インストールの開始の決定をすることと特定されているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。

<相違点4>
本件補正発明では「前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像および呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む」と特定されているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。


(5)当審の判断
上記相違点1乃至4について検討する。
ア 相違点1について
引用文献2(上記C参照)には「Android端末に登録したGoogleアカウントでAndroidマーケットにログインします」と記載されており,「Androidマーケット」を利用する場合にユーザアカウント(Googoleアカウント)でログインしていることが読み取れる。また,引用文献2(上記D参照)には「(1)Androidマーケットから,インストールしたいアプリを選んでクリックします。」と記載されていることから,Androidマーケットからインストールしたいアプリを選んでクリックされたものは,ログインしているユーザアカウントに関連付けられることが読み取れる。そうすると,引用発明の「Andoroidマーケット」においてもログインした後で「インストールしたいアプリの選択」していると解せ,ユーザ操作はログインしたユーザ・アカウントに関連付けられるものと解せる。また,引用発明の「PCのブラウザ画面で好みのアプリケーションを見つけ,インストールしたいアプリを選択し,インストールボタンを押されるPC」は,ユーザにより選択された入力であることが明らかであるので,引用発明においても「ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられている」と解せる。
してみると,相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮にそうでないとしても,引用発明の「Androidマーケット」に引用文献2の周知技術を適用することは,当業者が適宜なし得ることである。
よって,相違点1は格別なものではない。

イ 相違点2について
引用文献2(上記D参照)に「(1)Androidマーケットから,インストールしたいアプリを選んでクリックします。」,「(2)アプリケーションの詳細ページが表示されます。説明やレビューを確認したら,「INSTALL」をクリックします。」,「(3)端末を複数所有している場合は,「Choose Device on Which to Install」をクリックして端末を選択します。」と記載されていることから,Androidマーケットはアプリケーションをインストールする端末を選択させるために,ユーザが所有している端末を特定(検出)する決定をしていることが読み取れる。そのため,引用発明の「Androidマーケット」においてもアプリをインストールする端末を特定(検出)する決定をしていると解せる。
してみると,相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮にそうでないとしても,引用文献3(上記E参照)に「ユーザ条件取得・判断部207は,本サービスを提供する対象である移動端末の接続状況(中略),移動端末の現在位置や移動状況,ユーザの特性(中略)などの様々な条件(中略)を取得する機能を有している。(中略)ユーザ条件取得・判断部207は,基本的に移動端末100との接続が安定した時点で,ユーザ提供用コンテンツの配信が行われるように,ユーザ提供用コンテンツ配信部210に対してユーザ提供用コンテンツの配信のタイミングを指示する。(中略)サービス提供サーバ200が,ユーザにとって必要なコンテンツ(例えば,移動端末100がまだ取得していないコンテンツ)を,移動端末100の無線接続が安定したタイミングでプッシュ配信することが可能である。」と記載されているように,コンテンツをPush配信する際に,移動端末(デバイス)を検出し,検出したことに基づいて,プッシュ配信することは当該技術分野における周知技術に過ぎず,これを引用発明に適用することは当業者が適宜なし得ることである。
よって,相違点2は格別なものではない。

ウ 相違点3について
引用文献2(上記C参照)に「Android端末に登録したGoogleアカウントでAndroidマーケットにログインします」と記載され,引用文献2(上記D参照)に「(3)端末を複数所有している場合は,「Choose Device on Which to Install」をクリックして端末を選択します」,「(4)端末の選択が完了したら,「INSTALL」をクリックします」と記載されていることから,Androidマーケットにログインしたユーザアカウント(Googleアカウント)に関連付けた端末を特定(検出)していることが読み取れることから,端末を検出およびユーザアカウントに関連付けられるデバイス(Android端末)に基づいて,インストールの開始の決定を行うと解される。そうすると,引用発明の「Androidマーケット」においても,「PCで選択したアプリをネットワーク経由でPush配信および自動インストール」する「端末」を特定(検出)する必要があることは明らかであり,Androidマーケットにログインしたユーザアカウントと関連付けた端末を特定(検出)する決定をしていると解せる。
してみると,相違点3は実質的な相違点とはいえない。
仮にそうでないとしても,引用発明の「Androidマーケット」に引用文献2の周知技術を適用して,Android端末(デバイス)を特定(検出)することおよびユーザ・アカウントと関連付けたAndroid端末(デバイス)に基づいて,インストールの開始の決定をすることは当業者が適宜なし得ることである。
よって,相違点3は格別なものではない。

エ 相違点4について
参考文献(上記F)に「ユーザは,例えば,特別注文の壁紙,テーマ,及び着信音をインストールすることによってグラフィックユーザインタフェースをカスタマイズする。(中略)オペレーティングシステム104aによって,ユーザはデスクトップの壁紙,スクリーンセーバ,アイコン,メニュー,及び着信音のようなユーザインタフェース要素をカスタマイズすることが可能になる。(中略)ユーザは,上記機能をプログラムして,モバイル端末100が動作する方法をユーザに適合するようにカスタマイズしてもよい。(中略)ユーザが自分のモバイル端末100を交換するとき,ユーザは自分のカスタマイズされた設定値とお気に入りとを含む自分のユーザプロファイルを,選択されたデータファイルと共に集中化データベースからそれらの新たなモバイル端末100へダウンロードすることができる。例えば,ユーザが特別注文のデスクトップの壁紙又は着信音を有する場合,画像ファイル及び該画像ファイルと関連付けられたサウンドファイルをユーザプロファイルと共にダウンロードすることができる。(中略)このダウンロードされたユーザプロファイルは,該ユーザプロファイルと共に特定のファイルをダウンロードするように指示することも可能である。カスタマイズされたデスクトップの壁紙に対して,対応する画像ファイルをダウンロードしてもよい。カスタマイズされた着信音に対して,対応するサウンドファイルをダウンロードしてもよい」と記載されているように,お気に入り(ユーザの好み)のアプリケーションとして,テーマ,背景画像(特別注文の壁紙),呼び出し音(着信音)をインストールすることは当該技術分野における周知技術に過ぎず,引用発明のお気に入りのアプリケーションをテーマ,背景画像(特別注文の壁紙),呼び出し音(着信音)の少なくとも1つとすることは当業者が適宜なし得ることである。
よって,相違点4は格別なものではない。

オ 小括
上記で検討したごとく,相違点1乃至4に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定のむすび
上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年11月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,補正後の請求項1に対応する補正前の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年9月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「ユーザの好みにデバイスをカスタマイズするための1つ又は複数のコンテンツアイテムを指定する,前記ユーザにより選択された入力を受信することであって,前記ユーザにより選択された入力はユーザ・アカウントに関連付けられる,前記受信することと;
前記デバイスを検出する決定をすることと;
前記検出することおよび前記ユーザ・アカウントに関連付けられる前記デバイスに少なくとも一部基づいて,前記デバイスで前記1つ又は複数のコンテンツアイテムのインストールを開始する決定をすることであって,前記1つ又は複数のコンテンツアイテムは前記ユーザにより選択された入力によって指定される,前記開始する決定をすることと;
を含む方法。」

2 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された,引用発明は,前記「第2 平成27年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用文献及び参考文献」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2 平成27年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「1つ又は複数のコンテンツアイテム」に対し「前記1つ又は複数のコンテンツアイテムはテーマ,背景画像,呼び出し音のうちの少なくともひとつを含む」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 平成27年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用文献及び参考文献」乃至「(5)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-16 
結審通知日 2016-11-22 
審決日 2016-12-15 
出願番号 特願2013-539391(P2013-539391)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 亮稲垣 良一  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 石井 茂和
高木 進
発明の名称 デバイス・コンテンツをカスタマイズする方法および装置  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 黒瀬 泰之  
代理人 緒方 和文  

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