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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1328286
審判番号 不服2015-17400  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-24 
確定日 2017-05-11 
事件の表示 特願2011- 47911「情報処理装置、情報処理システム、情報処理装置の制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日出願公開、特開2012-185651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成23年3月4日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 3月 3日 :出願審査請求書の提出
平成27年 3月 3日付け :拒絶理由の通知
平成27年 5月11日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年 6月12日付け :拒絶査定
平成27年 9月24日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成27年12月16日 :前置報告


第2 平成27年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年9月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成27年9月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成27年5月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至12の記載

「 【請求項1】
ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得する取得手段と,
前記取得手段によって取得された情報を前記入力画面に設定する設定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記情報処理装置を使用するユーザを認証する認証手段と,
前記認証手段によって認証されたユーザごとに前記スクリプトの実行の可否を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記保持手段は,前記外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを,前記Webブラウザのブックマークとして保持することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記保持手段に保持されたスクリプトには,第2のスクリプトの取得が定義されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2のスクリプトは,前記外部装置に保持されていることを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2のスクリプトには,前記情報入力画面に対する表示オブジェクトの追加が定義されていることを特徴とする請求項5または6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第2のスクリプトには,前記情報入力画面に対してユーザが入力した情報の前記外部装置への格納が定義されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記情報処理装置を操作しているユーザに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトの実行可否を判断する判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置と外部装置を含む情報処理システムであって,
前記情報処理装置は,
ネットワーク上の前記Webサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の前記外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項11】
ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,を備える情報処理装置の制御方法であって,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定工程と,
前記判定工程における判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行工程と,
を備えることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の情報処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備え,
前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記情報処理装置を使用するユーザを認証する認証手段と,
前記認証手段によって認証されたユーザごとに前記スクリプトの実行の可否を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記保持手段は,前記外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを,前記Webブラウザのブックマークとして保持することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記保持手段に保持されたスクリプトには,第2のスクリプトの取得が定義されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2のスクリプトは,前記外部装置に保持されていることを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第2のスクリプトには,前記情報入力画面に対する表示オブジェクトの追加が定義されていることを特徴とする請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第2のスクリプトには,前記情報入力画面に対してユーザが入力した情報の前記外部装置への格納が定義されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理装置を操作しているユーザに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトの実行可否を判断する判断手段を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置と外部装置を含む情報処理システムであって,
前記情報処理装置は,
ネットワーク上の前記Webサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の前記外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備え,
前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示することを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,を備える情報処理装置の制御方法であって,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定工程と,
前記判定工程における判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行工程と,
を備え,
前記実行工程は,前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」
(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。


2 目的要件

本件補正は上記「1 補正の内容」のとおり,本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と,補正後の請求項とを比較すると,本件補正により補正前の請求項2が削除されたことから,補正後の請求項1は補正前の請求項1に対応し,補正後の請求項2乃至11はそれぞれ,補正前の請求項3乃至12に対応することは明らかである。

(2)よって,本件補正は,補正前の請求項2の削除と,下記の補正事項1乃至2よりなるものである。

<補正事項1>
補正前の請求項1,10の
「前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段」との記載を,
補正後の請求項1,9の
「前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備え,
前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」との記載に変更する補正。

<補正事項2>
補正前の請求項11の
「前記判定工程における判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行工程」との記載を,
補正後の請求項10の
「前記判定工程における判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行工程と,
を備え,
前記実行工程は,前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」との記載に変更する補正。

(3)補正事項1,2について

補正事項1は,発明特定事項である「実行手段」に,「実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」との限定を加えることを目的とするものであり,
また,補正事項2は,発明特定事項である「実行工程」に,「前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」との限定を加えることを目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(4)したがって,上記補正事項1,2は限定的減縮を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。


3 独立特許要件

以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする上記補正事項1,2を含むものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記平成27年9月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備え,
前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示することを特徴とする情報処理装置。」

(2)引用例

(2-1)引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

ア 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成27年3月3日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2002-259341号公報(平成14年9月13日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,このような認証情報入力プログラムは,サーバからクライアントにダウンロードしたプログラムにより実行され,他のサーバに対しては共通的には使用できない。また,認証情報保存機能付き認証情報入力プログラムを提供していないサーバにアクセスするためには,上述のようにユーザが手入力で認証情報を入力しなければならなかった。
【0007】そこで,本発明の目的は,上述の点に鑑みて,複数のサーバにそれぞれアクセスするときに,サーバに対応した認証情報を自動入力することができる認証情報入力システム,認証情報保管システム,認証情報入力方法および認証情報入力プログラムを提供することにある。」

B 「【0023】図1は本発明を使用するコンピュータシステムの全体構成を示す。図1において,サーバ110およびクライアント120がインターネットのような通信ネットワークに接続されている。
【0024】サーバ110は各クライアントごとに,クライアントで使用する複数の認証情報(ユーザIDおよびパスワード)を内部の記憶装置に保存しており,いわば,認証情報の金庫として機能する。サーバ110には,各クライントを認証するための認証書を内部の記憶装置に保存している。認証書とは,個人情報やクライアントに固有の各種の情報を記載した文書であり,クライアント側が保有している認証書と,サーバ側が保有している認証書の内容が一致したときにクライアント120はサーバ110内の自己の認証情報を取り出すことができる。
…(中略)…
【0026】クライアント120には,不図示の各種の情報サービスを行うサーバにアクセスするためのブラウザと呼ばれる通信用プログラムと,本発明に係わる認証情報入力プログラムが搭載されている。ブラウザは市販のものを使用することができる。認証情報入力プログラムの内容は図5に示しており,後で説明する。
【0027】サーバ110およびクライアント120は市販のコンピュータを使用できるので,ハードウェアの構成の説明は要しないであろう。
【0028】サーバ110内に保存される認証情報のデータ構造を図2に示す。各クライアントのユーザごとに,認証情報記憶領域が割り当てられており,その記憶領域に,URL情報,ユーザID情報,パスワード情報および認証書の記憶アドレス等を1組とした複数のレコードが記憶される。
…(中略)…
【0030】図3において,10は,ユーザID入力欄である。クライアント120が各種情報サービスを提供するサーバにログインしようとするときに,そのサーバから提供されるHTML文書をクライアント120側のブラウザが解析して,ユーザ入力欄10がクライアントのディレスプレイの表示画面に表示される。11はパスワード入力欄であり,ユーザID入力欄10と同様にして,クライアント120の表示画面に表示される。12はマウスカーソルであり,クライアント120のマウス(いわゆるポインティングデバイス)の移動に応じて表示画面上のマウスカーソルも移動する。マウスカーソルの表示画面上の位置は,OS(オペレーティングシステム)により検出される。」

C 「【0039】(パスワード入力処理)上述の処理によりサーバ110に認証情報を登録した後,ユーザが,所望のサイト(情報サービスを提供するサーバの会員制のホームページ)にアクセスする場合,クライアント120のブラウザを立ち上げて,サイトのURLをクライアント120に入力する。ブラウザは従来と同様にしてURLで指定されるサーバにアクセスすると,そのサーバは認証情報入力用のHTML文書をクライアント120に送信するので,クライアント120のブラウザにより,図3に示すようなユーザID入力欄10およびパスワード入力欄11が表示画面に表示される。
【0040】クライアント120では,ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると,図5の認証情報入力プログラムが開始される。また,情報サービス提供サーバのホームページのURLを取得するか,またはユーザが入力したURLを取得する(ステップS100)。このURLが本発明の認証情報に関連する情報としてサーバ110での認証情報の検索に使用される。
【0041】ユーザがマウスカーソルをたとえば,ユーザID入力欄10上に位置したことを認証情報入力プログラムが入力欄10の位置情報に基づき検知すると,(認証情報保存)サーバ110に対して,クライアント内に保存している認証書とユーザIDおよびパスワード要求を送信する(ステップS110)。
【0042】この要求を受けたサーバ110のゲートウェイプログラムでは図4のステップS10でユーザIDの要求を検知する。ゲートウェイプログラムは送られてきた認証書と,サーバ110側で保存してある認証書との照合によりユーザの個人認証を行った後(ステップ20),認証OKの判定の後,ユーザIDおよびパスワードが登録されていることの確認の後,認証書に対応する認証情報記憶領域の中から,送られてきたURLに対応するユーザIDおよびパスワードを取り出してクライアント120に送信する(ステップS30→S40→S50)。」

D 「【0044】クライアント120で受信したユーザIDおよびパスワードはワークメモリに一時記憶された後,図3の21,22に示すようなメニュー20が表示される(図5のステップS120)。
【0045】ユーザがマウスカーソル12をユーザID入力メニュー21に位置させて左ボタンをクリックすると(ステップ130がYES判定),認証情報入力プログラムは,図3に示すようにユーザID入力欄10に受信のユーザIDを自動入力して,入力情報を表示させる(ステップS135)。
【0046】(パスワード入力)ユーザがパスワードを自動入力したい場合は,パスワード入力欄11にマウスを位置させて右ボタンをクリックすると,ユーザIDと同様にしてメニュー20が表示され,クライアント120ではパスワード入力メニュー22に対するマウスの操作に応じてパスワード入力欄11にパスワードを自動入力,表示する(ステップS140?S145)。
【0047】この後,ユーザは不図示の表示画面上の送信ボタンを送信すると,自動入力されたユーザIDとパスワードが認証情報入力用HTML文書中のコマンドに基づいて,情報サービス提供サーバに送られる。情報サービス提供サーバでは従来と同様にして,個人認証を行って,クライアント120のログイン処理を行う。」


イ ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Cの段落【0039】,【0040】の「(パスワード入力処理)上述の処理によりサーバ110に認証情報を登録した後,ユーザが,所望のサイト(情報サービスを提供するサーバの会員制のホームページ)にアクセスする場合,クライアント120のブラウザを立ち上げて,サイトのURLをクライアント120に入力する。」,「クライアント120では,ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると,図5の認証情報入力プログラムが開始される。また,情報サービス提供サーバのホームページのURLを取得するか,またはユーザが入力したURLを取得する(ステップS100)。」との記載からすると,情報サービスを提供するサーバ,すなわち情報サービス提供サーバは,通信ネットワークを介してクライアントに接続されていることは明らかであり,クライアントからのユーザのURLの入力によりアクセスされることが読み取れる。
また,上記Aの段落【0007】の「そこで,本発明の目的は,上述の点に鑑みて,複数のサーバにそれぞれアクセスするときに,サーバに対応した認証情報を自動入力することができる認証情報入力システム,認証情報保管システム,認証情報入力方法および認証情報入力プログラムを提供することにある。」との記載からすると,サーバに対応した認証情報の自動入力を課題とすることは明らかであり,上記Bの段落【0023】,【0024】の「図1は本発明を使用するコンピュータシステムの全体構成を示す。図1において,サーバ110およびクライアント120がインターネットのような通信ネットワークに接続されている。」,「サーバ110は各クライアントごとに,クライアントで使用する複数の認証情報(ユーザIDおよびパスワード)を内部の記憶装置に保存しており,いわば,認証情報の金庫として機能する。」との記載,上記Cの段落【0041】の「ユーザがマウスカーソルをたとえば,ユーザID入力欄10上に位置したことを認証情報入力プログラムが入力欄10の位置情報に基づき検知すると,(認証情報保存)サーバ110に対して,クライアント内に保存している認証書とユーザIDおよびパスワード要求を送信する(ステップS110)。」との記載からすると,サーバ110,すなわち認証情報保存サーバは,通信ネットワークを介してクライアントに接続され,クライアントで使用する複数の認証情報を保存することが読み取れるから,引用例1には,
“ユーザのURLの入力によりアクセスされる情報サービス提供サーバや,複数の認証情報を保存した認証情報保存サーバと通信ネットワークを介して接続されたクライアント”
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの段落【0026】の「クライアント120には,不図示の各種の情報サービスを行うサーバにアクセスするためのブラウザと呼ばれる通信用プログラムと,本発明に係わる認証情報入力プログラムが搭載されている。」との記載,段落【0030】の「クライアント120が各種情報サービスを提供するサーバにログインしようとするときに,そのサーバから提供されるHTML文書をクライアント120側のブラウザが解析して,ユーザ入力欄10がクライアントのディレスプレイの表示画面に表示される。11はパスワード入力欄であり,ユーザID入力欄10と同様にして,クライアント120の表示画面に表示される。」との記載からすると,クライアントのブラウザは,各種情報サービスを提供するサーバ,すなわち情報サービス提供サーバから提供されるHTML文書を解析して,ディスプレイの表示画面にログイン用の認証情報の入力欄などを表示することが読み取れるから,引用例1には,
“情報サービス提供サーバから提供されるHTML文書を解析して,ディスプレイの表示画面に表示するブラウザ”を備える“クライアント”
が記載されていると解される。

(ウ)上記Bの段落【0026】の「クライアント120には,不図示の各種の情報サービスを行うサーバにアクセスするためのブラウザと呼ばれる通信用プログラムと,本発明に係わる認証情報入力プログラムが搭載されている。」との記載,上記Cの段落【0040】の「クライアント120では,ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると,図5の認証情報入力プログラムが開始される。また,情報サービス提供サーバのホームページのURLを取得するか,またはユーザが入力したURLを取得する(ステップS100)。このURLが本発明の認証情報に関連する情報としてサーバ110での認証情報の検索に使用される。」との記載からすると,クライアントの認証情報入力プログラムは,サーバ110,すなわち認証情報保存サーバから認証情報を検索することが読み取れるから,引用例1には,
“認証情報保存サーバからの認証情報の検索に使用される認証情報入力プログラム”を備える“クライアント”
が記載されていると解される。

(エ)上記Cの段落【0040】,【0041】の「クライアント120では,ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると,図5の認証情報入力プログラムが開始される。また,情報サービス提供サーバのホームページのURLを取得するか,またはユーザが入力したURLを取得する(ステップS100)。このURLが本発明の認証情報に関連する情報としてサーバ110での認証情報の検索に使用される。」,「ユーザがマウスカーソルをたとえば,ユーザID入力欄10上に位置したことを認証情報入力プログラムが入力欄10の位置情報に基づき検知すると,(認証情報保存)サーバ110に対して,クライアント内に保存している認証書とユーザIDおよびパスワード要求を送信する(ステップS110)。」との記載からすると,認証情報入力プログラムは,ユーザによるマウスの右ボタンのクリックに応じて,クライアントがアクセスしようとする情報サービス提供サーバのURLを取得し,認証情報保存サーバに対して,当該情報サービス提供サーバにログインするためのユーザIDおよびパスワード,すなわち認証情報の要求を送信することが読み取れるから,引用例1には,
“ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると認証情報入力プログラムが開始され,アクセスしようとする情報サービス提供サーバのURLを取得し,認証情報保存サーバに対して,認証情報の要求を送信”する“クライアント”
が記載されていると解される。

(オ)上記Cの段落【0042】の「ゲートウェイプログラムは送られてきた認証書と,サーバ110側で保存してある認証書との照合によりユーザの個人認証を行った後(ステップ20),認証OKの判定の後,ユーザIDおよびパスワードが登録されていることの確認の後,認証書に対応する認証情報記憶領域の中から,送られてきたURLに対応するユーザIDおよびパスワードを取り出してクライアント120に送信する(ステップS30→S40→S50)。」との記載,上記Dの段落【0044】の「クライアント120で受信したユーザIDおよびパスワードはワークメモリに一時記憶された後,図3の21,22に示すようなメニュー20が表示される(図5のステップS120)。」との記載からすると,クライアントは,サーバ110(認証情報保存サーバ)からアクセスする情報サービス提供サーバのURLに対応するユーザIDおよびパスワード,すなわち認証情報を受信することが読み取れる。
また,上記Dの段落【0045】,【0046】の「ユーザがマウスカーソル12をユーザID入力メニュー21に位置させて左ボタンをクリックすると(ステップ130がYES判定),認証情報入力プログラムは,図3に示すようにユーザID入力欄10に受信のユーザIDを自動入力して,入力情報を表示させる(ステップS135)。」,「(パスワード入力)ユーザがパスワードを自動入力したい場合は,パスワード入力欄11にマウスを位置させて右ボタンをクリックすると,ユーザIDと同様にしてメニュー20が表示され,クライアント120ではパスワード入力メニュー22に対するマウスの操作に応じてパスワード入力欄11にパスワードを自動入力,表示する(ステップS140?S145)。」との記載からすると,認証情報入力プログラムによって,認証情報保存サーバから受信したユーザIDおよびパスワード(認証情報)は,情報サービス提供サーバへのログイン用表示画面の入力欄に自動入力され,入力情報が表示されることが読み取れるから,引用例1には,
“認証情報保存サーバから,アクセスしようとする情報サービス提供サーバのURLに対応する認証情報を受信して,受信した認証情報はログイン用表示画面の入力欄に自動入力され,入力情報が表示される,クライアント”
が記載されていると解される。

ウ 以上,(ア)乃至(オ)で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「ユーザのURLの入力によりアクセスされる情報サービス提供サーバや,複数の認証情報を保存した認証情報保存サーバと通信ネットワークを介して接続されたクライアントであって,
前記情報サービス提供サーバから提供されるHTML文書を解析して,ディスプレイの表示画面に表示するブラウザと,
前記認証情報保存サーバからの認証情報の検索に使用される認証情報入力プログラムと,
を備え,
ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると前記認証情報入力プログラムが開始され,アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLを取得し,前記認証情報保存サーバに対して,認証情報の要求を送信し,
前記認証情報保存サーバから,アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLに対応する認証情報を受信して,受信した前記認証情報はログイン用表示画面の入力欄に自動入力され,入力情報が表示される,クライアント。」


(2-2)引用例2に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成27年3月3日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2008-293518号公報(平成20年12月4日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0005】
このようなWWW技術を用いて構築された業務システムにおいては,クライアントコンピュータからURL(Uniform Resource Locator)を指定して,特定のサーバーに接続した際,そのサーバーから最初にクライアントコンピュータに表示されるHTML(HyperText Markup Language)ページは,ユーザー名,パスワードを要求するユーザー認証ページ(ユーザーログインページ,ログオンページ等とも呼ぶ)である場合が多い。ここで正しくユーザー名,パスワードを入力できないユーザーはそのサーバーへの以後のアクセスが許可されない。そのサーバーがデータベースを検索するサービスを提供するのであれば,資格のない者からの機密性の高いデータベースへのアクセスを防ぐことができるわけである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に,セキュリティ機能を高めると,その分使い勝手が悪くなるという問題点がある。ユーザー名やパスワードを要求するユーザー認証ページを用いると,そのサーバーの利用者はその都度ユーザー名,パスワードを入力しなければならない。
本発明はこのような問題点を考慮してなされたものであり,一度だけユーザー名,パスワードの入力設定をしておけば,特定のWebサイトにアクセスした際,ユーザー名・パスワードを要求するユーザー認証ページが現われた時に自動的にそれらを入力する認証データ自動入力機能を提供することを課題とする。」

F 「【0017】
認証データ自動入力手段19は,ICカードリーダライタ8に新しいカードが挿入されると監視プログラム17により起こされて活動状態となる。そしてまず,ICカードに記録されている自動設定情報を全て読み出し,メモリバッファに一時記録する(S11)。またこの時,認証データ自動入力手段19は,Webブラウザ12に対して,Webブラウザ12が発したHTTPリクエストに対するレスポンスをWebブラウザ12が受取った時,その旨を認証データ自動入力手段19に通知するよう設定を行なう(S12)。以後Webブラウザ12は,発信したHTTPリクエストに対するレスポンスを受取るたびに,認証データ自動入力手段19にその旨を通知することになる。この設定方法は,使用するブラウザの種類に依存する。
【0018】
次に,認証データ自動入力手段19は,Webブラウザ12から,HTTPリクエストに対するレスポンスを受取った時に発する通知を受けたかどうかチェックし,通知があった場合には,Webブラウザが受けたデータを検査して,その送信元のURLが,一時記録した自動設定情報のURLのいずれかと一致するかどうかを調べる(S13)。そして,HTTPリクエストに対するレスポンスの送信元のURLが,自動設定情報のURLと一致した場合には,その一致したURLに関係する設定情報(ユーザ名,パスワード文字列,設定ボタンのキャプション文字列)から,それらを適当に繋ぎ合わせて,その送信元URLから送られたレスポンスデータ(これはユーザーログインを受付ける頁である)に応答するデータを作成して,それをWebブラウザ12に渡す(S15)。そしてステップS17に進む。
…(中略)…
【0023】
このような認証データ自動入力手段19により,特定のURLにアクセスしに行った時に最初に現われるログインページへの入力を自動化することができる。また,認証データ自動入力手段19は,ICカードが抜き取られた時は,即座に,設定情報をクリアして,実行を休止するので,クライアントコンピュータ10上に,ユーザーの設定情報は残らない。また,ICカードの挿入がないときは認証データの自動入力機能はけっして実行されない。したがって,使い勝手のよい機能を提供しつつシステムのセキュリティ水準は維持されているということができる。」

(2-3)引用例3に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成27年3月3日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2007-257500号公報(平成19年10月4日出願公開,以下,「引用例3」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0021】
また,以下の実施例で用いる「Webブラウザブックマークレット(特許請求の範囲に記載の「Webブラウザブックマークレット」に対応する)」とは,Webブラウザにブックマークと同じ形態で保持され,かつ,利用者に選択されるべく同じ形態で提示されるように組み込まれるプログラムである。具体的には,通常,Webブラウザのブックマーク提示欄は利用者装置によってアクセスされるWebサイトのURLを格納するが,Webブラウザブックマークレットは,JavaScript等で記述されたプログラムを格納する。すると,利用者によってURLを格納するブックマークが選択されると,Webブラウザは選択されたURLで指定するアドレスのWebサイトに接続し,コンテンツを取得して利用者に提示するが,利用者によってプログラムを格納するWebブラウザブックマークレットが選択されると,WebブラウザはWebブラウザブックマークレットが格納するJavaScript等で記述された処理を実行する。
…(中略)…
【0023】
実施例1に係る認証連携システムは,この発明に係る被認証装置と,サーバと,認証装置とで構成される。そして,実施例1における被認証装置は,サーバおよび認証装置にネットワークを介してそれぞれ接続され,サーバにアクセスして受信した認証要求情報(チャレンジデータ)を認証装置へ転送することを概要とし,ネットワーク上に複数の認証装置が存在する場合でも,シングルサインオンを簡易に実現することを主たる特徴とする。なお,図1では,ひとつのサーバおよびひとつの認証装置に,ひとつの被認証装置がネットワークを介してそれぞれ接続される場合を示したが,必ずしもひとつであることに限定されることはなく,複数のサーバおよび複数の認証装置に,複数の被認証装置がネットワークを介して接続される場合も同様である。
【0024】
この主たる特徴について簡単に説明すると,図1に示すように,実施例1における被認証装置は,Webブラウザのブックマーク提示欄(favorites)に,サービスの提供を要求するサーバにアクセスするためのサーバブックマーク識別情報(図1の「サーバへ」を参照)と,被認証装置が所属する所定の認証装置にアクセスするための認証装置ブックマーク識別情報(図1の「認証装置へ」を参照)とを提示し,サーバアドレス情報と認証装置アドレス情報とを保持している。ここで,認証装置アドレス情報を保持するブックマーク識別情報の外観は通常のブックマーク識別情報と変わらないが,実際には,JavaScript等で記述されたプログラムを組み込まれたWebブラウザブックマークレットである。また,図示してはいないが,認証装置は,被認証装置の利用者IDおよびパスワードをあらかじめパスワード記憶部に格納する。」

(2-4)参考文献4に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2002-149605号公報(平成14年5月24日出願公開,以下,「参考文献4」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0058】図9では,上記認証法判定によりリンク先Aが単一画面認証法によると判定された後のポータルサイトPにおける各手段間のデータのやり取り及び前記認証代行処理手段5による処理内容を示している。すなわち,該認証代行処理手段5は,利用者Uによるリンク先Aの指定情報及びその利用者情報を受け取って,前記リンク先情報登録手段2から該当するリンク先情報(URL情報など)を,また前記認証情報格納手段3から当該利用者Uのそのリンク先Aにおける認証情報(リンク先Aにおける利用者UのユーザID及びパスワードなど)を,夫々読み出すと共に,前記ひな形スクリプト/モジュール格納手段4から,該当するリンク先Aのひな形スクリプトを読み出して,リンク先A用の認証処理スクリプト(対象とするリンク先Aに自動的に接続処理を開始する処理をHTMLとJavaScriptにて記載したもの)を作成し,上記リンク先情報及び認証処理スクリプトを,該利用者Uのブラウザ210に転送する。上記認証処理スクリプトには,ポストするHidden変数として,上記認証情報が指定される。
【0059】従って利用者U側のブラウザ210は,送られてきたリンク先情報で,目的とするリンク先Aにリンクすると共に,上記認証処理スクリプトに基づいて,該ブラウザ210が,該リンク先Aで実行される認証処理で表示される画面構成に対し,図10に示すように,自動的に上記認証情報を埋め込んでいくため,利用者Uは,何ら選択したリンク先Aへの操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されることになる。」


(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「クライアント」は「通信ネットワーク」を介して「情報サービス提供サーバ」にアクセスすることから,本件補正発明の「情報処理装置」に対応し,引用発明の「情報サービス提供サーバ」,「通信ネットワーク」はそれぞれ,本件補正発明の「Webサーバ」,「ネットワーク」に相当するといえる。

(イ)引用発明の「ブラウザ」は「クライアント」において,「情報サービス提供サーバから提供されるHTML文書を解析して,ディレスプレイの表示画面に表示する」ところ,通信ネットワーク上の情報サービス提供サーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示することは明らかであるから,引用発明の「情報サービス提供サーバから提供されるHTML文書を解析して,ディスプレイの表示画面に表示するブラウザ」は本件補正発明の「ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザ」に相当するといえる。

(ウ)引用発明の「認証情報入力プログラム」は「クライアント」において,「認証情報保存サーバ」から「認証情報」を検索するところ,本件補正発明では「スクリプト」が,「情報処理装置」において「ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用される」ことから,引用発明の「認証情報保存サーバ」,「認証情報」はそれぞれ,本件補正発明の「外部装置」,「外部装置に格納されている情報」に相当するといえる。
また,引用発明の「認証情報入力プログラム」と本件補正発明の「スクリプト」とは共に,“プログラム”である点で共通するといえ,引用発明の「クライアント」は「認証情報入力プログラム」を保持するためのメモリ等の保持手段を備えていることは自明である。
そうすると,引用発明の「認証情報保存サーバからの認証情報の検索に使用される認証情報入力プログラム」を備えることと,
本件補正発明の「ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段」を備えることとは,後記する点で相違するものの,
“ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるプログラムを保持する保持手段”を備える点で共通するといえる。

(エ)引用発明では,「ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると前記認証情報入力プログラムが開始され」,認証情報を表示中のログイン用表示画面の入力欄に自動入力するための処理が起動されるところ,ユーザのマウスの右ボタンのクリックにより,表示画面においてユーザの認証情報が入力可能状態であることを検知するとみることができるから,「クライアント」は,「ブラウザ」に表示される画面が,ユーザの認証情報を入力可能な状態であることを検知する検知手段を実質的に備えるとともに,検知手段による検知の結果,「ブラウザ」に表示される画面が,ユーザの認証情報の入力可能状態であると検知されたことに応じて,「認証情報入力プログラム」を実行する実行手段を実質的に備えているといえる。
一方,本件補正発明では,「Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段」を備えるところ,画面を判定するための機能として,「ユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面」であることを検知する機能を含むことは明らかである。また,本件補正発明では,「判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段」を備えるところ,検知の結果,Webブラウザに表示される画面が、ユーザを認証するために使用される情報を入力可能な状態であると検知されたことに応じて,保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段を備えるとみることができる。
そうすると,引用発明の「ユーザがマウスの右ボタンをクリックすると前記認証情報入力プログラムが開始され」ることと,
本件補正発明の「Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段」,「前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段」を備えることは,後記する点で相違するものの,
“Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力可能状態であることを検知する検知手段”,“検知手段による検知の結果,前記Webブラウザに表示される画面が入力可能状態であると検知されたことに応じて,保持手段に保持されたプログラムを実行する実行手段”を備える点で共通するといえる。

(オ)引用発明では,「アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLを取得し,前記認証情報保存サーバに対して,認証情報の要求を送信し,」「前記認証情報保存サーバから,アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLに対応する認証情報を受信して,受信した前記認証情報はログイン用表示画面の入力欄に自動入力され,入力情報が表示される」ところ,「クライアント」は「認証情報入力プログラム」の実行によって,「外部装置」(認証情報保存サーバ)に格納されている「認証情報」を取得し,取得された「認証情報」を「ログイン用表示画面」,すなわち入力画面に自動的に設定して表示するといえる。
一方,本件補正発明では,「スクリプト」は「プログラム」の態様の一つであるから,「プログラム」を実行することによって,「前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」とみることができる。
そうすると,引用発明の「アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLを取得し,前記認証情報保存サーバに対して,認証情報の要求を送信し,」「前記認証情報保存サーバから,アクセスしようとする前記情報サービス提供サーバのURLに対応する認証情報を受信して,受信した前記認証情報はログイン用表示画面の入力欄に自動入力され,入力情報が表示される」ことと,
本件補正発明の「前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示すること」とは,後記する点で相違するものの,
“前記実行手段によって前記プログラムを実行することによって,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する”点で共通するといえる。

イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「 ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるプログラムを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力可能状態であることを検知する検知手段と,
前記検知手段による検知の結果,前記Webブラウザに表示される画面が入力可能状態であると検知されたことに応じて,保持手段に保持されたプログラムを実行する実行手段と,
を備え,
前記実行手段によって前記プログラムを実行することによって,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する情報処理装置。」

<相違点1>

認証情報が入力可能状態であることの検知に関し,本件補正発明では,「Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段」を備えているのに対して,引用発明では,ログイン用表示画面におけるユーザの認証情報の入力欄を,「ユーザがマウスの右ボタンをクリックする」ことにより検知する点。

<相違点2>

外部装置の情報を取得するプログラムに関し,本件補正発明では,「スクリプト」が「ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得する」のに対して,引用発明では,「認証情報入力プログラム」が「外部装置」(認証情報保存サーバ)からの認証情報の検索に使用されるものの,「認証情報入力プログラム」が「スクリプト」で記述されているかどうか言及されていない点。

<相違点3>

プログラムの実行手段に関し,本件補正発明では,「実行手段」は「判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する」のに対して,引用発明では,「ユーザがマウスの右ボタンをクリックする」ことを契機として,「認証情報入力プログラムが開始され」て実行されるものの,実行手段が「スクリプト」を実行することについて言及されていない点。

<相違点4>

ユーザ操作に関し,本件補正発明では,「ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得」するのに対して,引用発明では,外部装置(認証情報保存サーバ)から,アクセスしようとするWebサーバ(情報サービス提供サーバ)のURLに対応する情報(認証情報)を受信するものの,ユーザ操作を介さないことについて言及されていない点。


(4)当審の判断

上記相違点1乃至4について検討する。

ア 相違点1,4について

引用発明では,クライアントはユーザの認証情報を認証情報保存サーバから検索し,ログイン用表示画面の入力欄に自動入力するに先立ち,ユーザの認証情報の入力可能状態であることを,「ユーザがマウスの右ボタンをクリックする」ことにより検知するところ,当該検知に応じて認証情報入力プログラムが開始されるといえる。
一方,引用例2(上記E,Fを参照)に記載されるように,ユーザの認証情報の入力画面への自動入力のための処理実行の契機とするために,クライアントにおいて,ユーザ操作を介することなく,Webブラウザに表示される画面が,ユーザ認証情報の入力画面(ログインページ)であるか否かを判定することは,本願出願前には当該技術分野においてすでに普通に用いられた公知技術であった。
そして,引用発明と引用例2に記載の上記公知技術とは,ともにユーザの認証情報を入力画面に自動入力することを課題とする点で一致しており,引用例2に記載の上記公知技術を引用発明に適用する上で,阻害要因となる事項も認められない。
そうすると,引用発明において引用例2に記載の上記公知技術を適用し,ユーザがマウスの右ボタンをクリックすることによりユーザの認証情報の入力可能状態であることを検知することに替えて,適宜,当該入力画面であるか否かを判定する判定手段の判定結果に応じて,ユーザ操作を介することなく,外部装置に格納されている認証情報を取得すること,すなわち,上記相違点1,4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2,3について

引用発明では,「クライアント」において「認証情報入力プログラム」が実行されて,「認証情報保存サーバ」からの認証情報の検索を行うところ,ブラウザを備えたクライアント端末における認証装置に対する認証要求を含む認証処理を,JavaScript等のスクリプトにより記述することは,例えば,引用例3(上記Gを参照),参考文献4(上記Hを参照)に記載されるように,本願出願前には当該技術分野における周知技術であった。
そして,引用発明の「認証情報入力プログラム」は,クライアントにおいて認証処理を行うプログラムであることに他ならず,スクリプトで記述するか否かは必要に応じて適宜に選択し得た設計的事項である。また,「認証情報入力プログラム」をスクリプトで記述することの阻害要因も認められない。
そうすると,引用発明において上記周知技術を適用し,クライアントにおいて,認証情報保存サーバからの認証情報の検索を行うスクリプトを保持し,ブラウザに表示される画面がユーザの認証情報の入力画面である場合に,保持されたスクリプトを実行すること,すなわち,上記相違点2,3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至4に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び,引用例2,3,参考文献4に記載の当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 補正却下の決定のむすび

上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年9月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,補正後の請求項1に対応する補正前の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年5月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 ネットワーク上のWebサーバから画面データを受信し,当該画面データに基づいて画面を表示するWebブラウザと,
前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得するために使用されるスクリプトを保持する保持手段と,
前記Webブラウザに表示される画面が,前記Webサーバで提供されるWebアプリによってユーザを認証するために使用される情報の入力をユーザから受け付ける入力画面であるか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された,引用発明は,前記「第2 平成27年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成27年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「前記判定手段による判定の結果,前記Webブラウザに表示される画面が前記入力画面であると判定されたことに応じて,前記保持手段に保持されたスクリプトを実行する実行手段と,を備え,前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」から「前記実行手段によって前記スクリプトを実行することによって,ユーザ操作を介することなく,前記ネットワーク上の外部装置に格納されている情報を取得し,取得された情報を前記入力画面に設定して表示する」との限定事項を削除したものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 平成27年9月24日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(4)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び,引用例2,3,参考文献4に記載の当該技術分野の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-27 
結審通知日 2017-02-28 
審決日 2017-03-24 
出願番号 特願2011-47911(P2011-47911)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 石井 茂和
辻本 泰隆
発明の名称 情報処理装置、情報処理システム、情報処理装置の制御方法、及びプログラム  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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