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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21V
審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 F21V
管理番号 1328596
審判番号 不服2016-9373  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-23 
確定日 2017-06-13 
事件の表示 特願2015- 85155号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-149301号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月8日に出願した特許出願(特願2010-131282号。以下、「原出願」という。)の一部を平成25年9月6日に新たな特許出願(特願2013-185243号)とし、さらにその一部を平成26年7月2日に新たな特許出願(特願2014-136482号)とし、さらにその一部を平成27年4月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 2月 8日付け 拒絶理由通知
3月14日 意見書、手続補正書の提出
4月19日付け 拒絶査定
6月23日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成29年 2月24日付け 拒絶理由通知
4月25日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1?6」という。)は、平成29年4月25日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
天井の器具設置面に取り付けられる照明器具であって、
前記器具設置面に取り付けられる取付面と、前記取付面に平行な底面と、前記取付面から前記底面にわたって存在し、前記取付面から前記底面に向かって少なくとも一部が内側に傾斜する傾斜側面とを有する器具本体と、
前記器具本体の取付面に対して垂直方向に光を放射するLEDである光源と、
前記器具本体の底面を覆うとともに、前記光源の発光面を覆い、前記光源から放射される光を拡散させるカバーであって、前記器具本体の傾斜側面の少なくとも一部の延長面よりも外側に突出し、前記光源から放射される光の一部を拡散させて前記器具本体の傾斜側面に到達させる凸部を有するカバーと
を備え、
前記器具本体は、前記器具本体の幅が、前記取付面から前記底面に向かう途中において、前記カバーの幅よりも広い照明器具。」

なお、本願発明2?6は、本願発明1を直接または間接的に引用するものである。

第3 引用文献等
原査定の拒絶の理由に引用された、特願2009-156236号(特開2011-14316号参照。以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。

「【0001】
本発明は、指向性を有する光源を有し、配光を広げるように構成された照明装置に関する。」

「【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造により、配光を広げることができる照明装置を提供することを目的とする。」

「【0011】
本発明に係る照明装置は、指向性を有する光源と、該光源を保持する保持部材と、前記光源からの光を透過する透光性カバーとを備える照明装置において、前記透光性カバーは、前記保持部材の前記光源を保持している保持部分に対向する面を含み、該面から前記保持部分の周縁部に至る前記光源の周囲を覆うように構成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、指向性を有する光源からの光を透過する透光性カバーを、前記光源を保持する保持部材の保持部分に対向する面を含み、該面から前記保持部分の周縁部に至る光源の周囲を覆うように構成してある。即ち、透光性カバーは、光源の光出射方向を含む略180°の範囲に亘って光源を覆うように設けてあるから、このような形状に透光性カバーを形成するという簡易な構造により、指向性を有する光源から出射した光を、透光性カバーにおいて拡散又は反射させることにより、光源の光出射方向とは異なる方向にも出射することができる。この結果、照明装置が取付けられる天井等の取付対象の方向まで配光を広げることができ、室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井等の取付対象を明るく照明することが可能となる。
【0013】
本発明に係る照明装置は、取付対象に取付けられるべき取付部を備えており、前記光源は、前記取付部に近接させて設けてあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、光源を、天井等の取付対象に取付けられるべき取付部に近接させて設けてある。これにより、指向性を有する光源を取付部、換言すると該取付部が取付けられる取付対象に近接させることができるから、照明装置近傍の取付対象に生じる影を少なくすることができ、取付対象を明るく照明することができる。」

「【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る照明装置100の模式的分解斜視図である。図2は、本発明に係る照明装置100の模式的正面図である。図3は、図2の III-III 線による模式的断面図である。図4は、本発明に係る照明装置100の模式的平面図である。
【0022】
図中1は、指向性を有する光源としてのLEDである。・・・
【0023】
このLED1は、矩形状をなすプリント配線基板であるLED基板11に実装してある。LED基板11の一面11aには、複数のLED1,1…が等間隔にマトリクス状に配列して実装してある。・・・
【0024】
この複数のLED1,1…が実装されたLED基板11は、他面11bにて保持部材2に保持してある。保持部材2は、軽量かつ放熱性が良い金属製であり、例えばアルミニウム製である。保持部材2は、LED基板11を介してLED1,1…をその一面(保持部分)21aにて保持する保持板部21と、該保持板部21の他面の長辺側の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部である側壁22,22とを備えている。これら2つの側壁22,22は、保持板部21から側壁22の端部に向けて離隔する方向に、保持板部21の垂線とθ(例えば、10°)の角度をなして傾斜するように設けてある。なお、この側壁22の高さ(保持板部21から側壁22の端部までの長さ)は、後述するネジ26,26…を取り付けることが可能な範囲内にて、可能な限り低くしてあることが望ましい。・・・」

「【0027】
保持板部21と側壁22,22との連設部には、保持板部21に略平行をなすように外側に延設され、延設端が二股に分かれてなる係合溝23,23が側壁22,22の長手方向に沿って形成してある。なお、この係合溝23の横断面形状は、図3に示すように、L字状をなしている。
【0028】
この係合溝23,23には、LED1,1…からの光を透過する透光性カバー3が係合させてある。透光性カバー3は、例えば、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である。透光性カバー3は、矩形板部31と、該矩形板部31の長辺側の縁部に立設された側壁部32,32と、該側壁部32,32の矩形板部31の反対側の端部から該矩形板部31に平行に内向きに延設され、延設端から側壁部32に平行に延設されてなる係合部33,33とを備えている。指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過する。この結果、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32が、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能とする出射部、及び指向性を有するLED1,1…から出射した光を室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井等の取付対象を明るく照明することを可能とするための配光部として機能する。なお、この係合部33の横断面形状は、図3に示すように、L字状であり、係合溝23に整合して形成してある。この透光性カバー3は、係合部33,33を係合溝23,23に係合させて保持部材2に取付けてある。これにより透光性カバー3は、光源であるLED1,1…が保持される保持部材2の一面(保持部分)21aに対向する面を含み、該面から一面21aの周縁部に至るLED1,1…の周囲を覆うように、保持部材2に取付けられることになる。なお、本実施の形態においては、透光性カバー3の形状を横断面形状がU字状になるようにしてあるが、LED1,1…の光出射側を覆い、LED1,1…の光出射位置近傍まで覆うようにしてあればよく、傾斜又は湾曲する面を有していてもよい。
【0029】
保持部材2及び透光性カバー3の長手方向の両端には、保持部材2及び透光性カバー3により包囲される空間を閉止するサイドカバー4,4が設けてある。サイドカバー4は、透光性カバー3と同一の材料製であり、例えば、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製である。サイドカバー4は、透光板部41と、該透光板部41に交叉する方向に設けられ、締結部材であるネジ25,25が挿通される貫通孔42a,42aを有する被係合部である取付板部42,42とを備えている。サイドカバー4,4は、透光性カバー3が取付けられた保持部材2の長手方向の端部から外嵌され、貫通孔42a,42a…にネジ25,25…を挿通させ、保持部材2の側壁22,22に設けられたネジ穴22a,22a…に螺合することにより、保持部材2に固定される。なお、ネジ25,25…は、側壁22,22の内側に若干突出させてある。
【0030】
以上のように一体化されてなる光源モジュール10は、取付部であるプレート5に取付けられる。プレート5は、金属製であり、例えば鉄製である。プレート5は、矩形板部51と、該矩形板部51の長辺側の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部である2つの側壁52,52とを備えている。これら2つの側壁52,52は、前述した保持部材2の側壁22の傾きθと略同一になるように、矩形板部51から側壁52の端部に向けて近接する方向に、矩形板部51の垂線とθ(例えば、10°)の角度をなして傾斜するように設けてある。なお、この側壁52の高さ(矩形板部51から側壁52の端部までの長さ)は、前述した保持部材2の側壁22と同様に、後述するネジ26,26…を取り付けることが可能な範囲内にて、可能な限り低くしてあることが望ましい。なお、側壁52の傾きθは、側壁52の高さを低くした場合においても、ネジ26,26…をドライバ等の工具にて締付け作業が行いやすいように、前述した保持部材2の側壁22と同様に、設定してある。」

「【0034】
以上のように構成された照明装置100は、まず、取付対象である天井110(又は天井に設けられた金属製のチャンネル)に、プレート5を矩形板部51にてボルト等で取り付ける。次に、電源モジュール6を筐体61の側からプレート5の開口51a及び天井110の開口110aに室内(照明装置の主たる照明空間)側から天井(取付対象)110の側に挿入して、プレート5にネジにより固定する。そして、電源モジュール6の内部の電源用端子台63に外部電源の電力線を接続し、調光用端子台64に外部の調光器に接続された信号線を接続する。そして、予め組み込まれて一体化してある光源モジュール10を、保持部材2の側を天井側(取付対象側)にして、保持部材2の側壁22,22をプレート5の側壁52,52に沿って室内側から天井側に移動させる。このとき、プレート5の側壁52,52の両端部に夫々設けられた係合部である凹部52a,52a…の端縁に案内されて、保持部材2の側壁22,22のネジ穴22a,22a…に螺合されたネジ25,25…を移動させることにより取付板部42,42…を凹部52a,52a…に係合させるようにしてある。この状態において、図3に示すように、ネジ26,26…を、保持部材2の側壁22,22に設けられた貫通穴22b,22b…に外側から挿通させ、プレート5の側壁52,52に設けられたネジ穴52b,52b…に螺合させることにより、光源モジュール10がプレート5に固定されることになり、照明装置100が天井に取付けられる。このとき、ネジ26,26…を取付ける面、換言すると側壁22,22の外面が室内側を向くように構成してある。」

「【0038】
以上のように構成された照明装置100において、外部電源による電力の供給に伴い、電源モジュール6の電源回路部により直流電圧に変換及び整流され、調光回路部により所定の電流及び/電圧の電力が光源モジュール10に供給され、LED1,1…が所定の調光率にて点灯する。そして、LED1,1…から出射される光が透光性カバー3及びサイドカバー4,4により適宜拡散されて照明装置100の外部に出射されることになる。透光性カバー3及びサイドカバー4,4を、例えば、本実施の形態の如く、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製とすることにより、指向性を有するLED1,1…から出射した光は、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4により一部が反射されるともに、他の部分が拡散されつつ透過する。この結果、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射することができ、照明装置100が取付けられる取付対象である天井110の方向まで配光を広げることができる。即ち、透光性カバー3(及びサイドカバー4,4)を前述の如く形成して設けるという簡易な構造により、室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井110を明るく照明することが可能となる。換言すると、透光性カバー3の矩形板部31及び側壁部32,32、並びにサイドカバー4,4が、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能とする出射部、及び指向性を有するLED1,1…から出射した光を室内等の照明装置の主たる照明空間に加えて、天井等の取付対象を明るく照明することを可能とするための配光部として機能する。なお、透光性カバー3及びサイドカバー4,4は、本実施の形態においては、拡散剤が適量添加された半透明なポリカーボネート樹脂製としているが、これに限定されず、光拡散性を有する材料製であればよく、また、LED1,1…から出射した光を適宜拡散又は反射させることにより、LED1,1…の光出射方向とは異なる方向にも出射可能に構成してあればよい。
【0039】
この照明装置100においては、前述したように、プレート5の側壁52,52及び保持部材2の側壁22,22の高さを可能な限り低くしてあるから、光源であるLED1,1…は取付部であるプレート5の矩形板部51、換言すると取付対象である天井110の下面に近接させて設けられることになる。この結果、照明装置100近傍の取付対象である天井110に生じる影を少なくすることができ、天井110を明るく照明することができる。」

【図3】から、プレート5の矩形板部51と保持部材2の保持板部21とは、略平行な位置関係にあることを看取しうる。

上記ア?クの事項及び【図1】?【図3】の記載からみて、本願発明1の特定事項に倣うと、先願明細書等には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「天井110に取り付けられたプレート5と、プレート5に固定される光源モジュール10とからなる照明装置100であって、
天井110に取り付けられるプレート5の矩形板部51と、矩形板部51と略平行な保持板部21と、矩形板部51の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部であり端部に向けて近接する方向に傾斜する2つの側壁52,52と、保持板部21の長辺側の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部であり端部に向けて離隔する方向に傾斜する2つの側壁22,22とをネジ26,26により固定し、
保持板部21の一面21aにて保持されるLED基板11に実装してある、出射光が指向性を有するLED1,1と、
光源であるLED1,1が保持される保持部材2の一面21aに対向する面を含み、該面から一面21aの周縁部に至るLED1,1の周囲を覆うように、保持部材2に取付けられ、LED1,1の出射光の一部を拡散する透光性カバー3であって、
保持板部21と側壁22,22との連設部に、保持板部21に略平行をなすように外側に延設され、延設端が二股に分かれてなる係合溝23,23に係合させてある透光性カバー3と
を備えた、照明装置100。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「天井110」は、光源モジュール10がプレート5を介在して取り付けられる設置箇所であるので、前者の「天井の器具設置面」に相当する。
後者の天井110に「取り付けられたプレート5と、プレート5に固定される光源モジュール10とからなる照明装置100」は、前者の天井の器具設置面に「取り付けられる照明器具」に相当する。
後者の「天井110に取り付けられるプレート5の矩形板部51」は、板であるので面状であるといえ、前者の「器具設置面に取り付けられる取付面」に相当する。
後者の「矩形板部51と略平行な保持板部21」は、板であるので面状であるといえ、前者の「取付面に平行な底面」に相当する。
後者の「矩形板部51の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部であり端部に向けて近接する方向に傾斜する2つの側壁52,52と、保持板部21の長辺側の縁部に立設された互いに対向する2つの傾斜板部であり端部に向けて離隔する方向に傾斜する2つの側壁22,22と」は、「ネジ26,26により固定」されるものであり一体のものといえ、側壁52,52と側壁22,22の傾斜方向は矩形板部51からみて内側といえるので、前者の「取付面から底面にわたって存在し、取付面から底面に向かって少なくとも一部が内側に傾斜する傾斜側面」に相当する。
後者の「矩形板部51」と「保持板部21」とネジ26,26により一体となったといえる「2つの側壁52,52」及び「2つの側壁22,22」とから構成されるものは、前者の「取付面」と「底面」と「傾斜側面」とを有する「器具本体」に相当する。
後者の「保持板部21の一面21aにて保持されるLED基板11に実装してある、出射光が指向性を有するLED1,1」は、LED基板11に実装されていること及び照明装置100としての機能からみて、その光の出射方向はLED基板11に垂直な方向といえ、また、LED基板11を保持する保持部21は矩形板部51と略平行であるので、結局、LED1,1の光の出射方向は矩形板部51に略垂直になるといえ、前者の「器具本体の取付面に対して垂直方向に光を放射するLEDである光源」に相当する。
後者の「光源であるLED1,1が保持される保持部材2の一面21aに対向する面を含み、該面から一面21aの周縁部に至るLED1,1の周囲を覆うように、保持部材2に取付けられ、LED1,1の出射光の一部を拡散する透光性カバー3」は、前者の「器具本体の底面を覆うとともに、光源の発光面を覆い、光源から放射される光を拡散させるカバー」に相当する。
後者の「保持板部21と側壁22,22との連設部に、保持板部21に略平行をなすように外側に延設され」た「延設端」は、傾斜板部である側壁22,22の傾斜の延長面より外側となることは明らかであり、その「延設端が二股に分かれてなる係合溝23,23に係合させてある透光性カバー3」は、傾斜板部である側壁22,22の傾斜の延長面より外側に突出しているといえる。そして、上述のとおり、後者の「透光性カバー3」は「LED1,1の出射光の一部を拡散する」ので、後者の「保持板部21と側壁22,22との連設部に、保持板部21に略平行をなすように外側に延設され、延設端が二股に分かれてなる係合溝23,23に係合させてある透光性カバー3」は、前者の「器具本体の傾斜側面の少なくとも一部の延長面よりも外側に突出し、光源から放射される光の一部を拡散させて器具本体の傾斜側面に到達させる凸部を有するカバー」と、「器具本体の傾斜側面の少なくとも一部の延長面よりも外側に突出し、光源から放射される光の一部を拡散させる凸部を有するカバー」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「天井の器具設置面に取り付けられる照明器具であって、
前記器具設置面に取り付けられる取付面と、前記取付面に平行な底面と、前記取付面から前記底面にわたって存在し、前記取付面から前記底面に向かって少なくとも一部が内側に傾斜する傾斜側面とを有する器具本体と、
前記器具本体の取付面に対して垂直方向に光を放射するLEDである光源と、
前記器具本体の底面を覆うとともに、前記光源の発光面を覆い、前記光源から放射される光を拡散させるカバーであって、前記器具本体の傾斜側面の少なくとも一部の延長面よりも外側に突出し、前記光源から放射される光の一部を拡散させる凸部を有するカバーと
を備えた、照明器具。」
〔相違点〕
本願発明1は、「器具本体は、器具本体の幅が、取付面から底面に向かう途中において、カバーの幅よりも広い」との事項を有し、「カバー」の「凸部」が拡散させた光を「器具本体の傾斜側面に到達させる」と特定されているのに対して、引用発明はそのような特定がなされていない点。

(2)判断
引用発明は、先願明細書等の段落【0012】、【0038】(上記「第3」の「ウ」、「キ」参照)の記載によれば、LED1,1を光源とする照明装置100において、室内等の主たる照明空間に加え、天井110等の取付対象を明るく照明することを可能としているものの、同じく段落【0014】、【0039】(上記「第3」の「ウ」、「キ」参照)の記載によれば、照明装置100近傍の取付対象である天井110に生じる影を少なくするため、光源を取付対象に極力近接させるものであり、先願明細書等の【図3】の記載を併せみれば、照明装置100の傾斜板部である側壁22,22または側壁52,52に透光性カバー3により拡散された光が届くものとはいえず、矩形板部51から保持板部21に向かう途中で透光性カバー3よりも幅広となるものではない。また、先願明細書等には、側壁22,22等に光が届くように構成すること、及び、透光性カバー3と側壁22,22等と幅の関係を示唆する記載もない。
よって、本願発明1は、引用発明と同一とはいえない。

さらに、原査定時に周知の事項を示す文献として提示された米国特許第3549879号明細書の記載を参照しても、相違点に係る本願発明1の「器具本体は、器具本体の幅が、取付面から底面に向かう途中において、カバーの幅よりも広い」との事項は記載されておらず、引用発明を相違点に係る本願発明1の構成とすることが設計上の微差とする証拠もない。

以上のとおりであるので、本願発明1は、引用発明と同一ということはできない。

2.本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであり、本願発明1の相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明と同一ということはできない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1?6に係る発明は、原出願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた上記の先願の先願明細書等に記載された引用発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその先願に係る発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年4月25日の手続補正により補正された請求項1?6は、それぞれ「器具本体は、器具本体の幅が、取付面から底面に向かう途中において、カバーの幅よりも広い」との事項、及び、「カバー」が拡散させた光を「器具本体の傾斜側面に到達させ」るとの事項を有するものとなっており、上記「第4」で述べたとおり、本願発明1?6は、上記引用発明と同一ということはできない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、
・請求項1の記載では、「光源」の配置が不明確である、
・請求項1の記載では、器具本体のどこがカバーよりも広くなっているのか不明確である、
として特許法第36条第6項第2号違反の拒絶理由を通知したが、平成29年4月25日の手続補正により、「前記器具本体の底面を覆うとともに、前記光源の発光面を覆い、前記光源から放射される光を拡散させるカバー」と補正し、光源の配置をカバーとの関係で特定し、また、「前記器具本体は、前記器具本体の幅が、前記取付面から前記底面に向かう途中において、前記カバーの幅よりも広い」と補正し、器具本体のカバーより広くなる位置を特定した結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、引用発明と同一ではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2015-85155(P2015-85155)
審決分類 P 1 8・ 16- WY (F21V)
P 1 8・ 537- WY (F21V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
平田 信勝
発明の名称 照明器具  
代理人 溝井 章司  
代理人 溝井 章司  
代理人 北村 慎吾  
代理人 北村 慎吾  

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