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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1328644
審判番号 不服2015-13137  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-09 
確定日 2017-05-23 
事件の表示 特願2013-235435「多重アンテナからのサウンディング基準信号の送信を支援する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 60775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は、2009年9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年9月26日、米国)を国際出願日とする特願2011-527757号の一部を2013年11月13日に分割した出願であって、平成26年6月26日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され、平成26年10月1日付けで手続補正がなされたが、平成27年2月27日に平成26年10月1日付けの手続補正についての補正却下がなされ、平成27年2月27日付けで拒絶査定がされ、平成27年7月9日に拒絶査定不服審判がされると同時に誤訳訂正書が提出されたものであるが、平成28年4月22日付けで誤訳訂正書に係る手続について却下理由通知書が通知され、平成28年4月26日付けで上申書が提出され、平成27年7月9日付けの誤訳訂正書は却下処分となり、平成28年12月5日付けで上申書が提出されたものである。


2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「基地局がユーザ端末機(User Equipment:UE)にスケジュールリング割当て(Scheduling Assignment:SA)を伝達するダウンリンク制御情報(Downlink Control Information:DCI)フォーマットを送信し、前記DCIフォーマットは、前記UEから前記基地局へのデータ情報の送信を構成する情報要素(Information Element:IE)を含み、前記IEは2進要素(binary element)を含む通信システムにおいて、前記UEからの基準信号(Reference Signal:RS)の送信を活性化する方法であって、
多重UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに二つの2進要素を含む“RS活性化(RS Activation)”IEを含めるステップと、
単一UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに一つの2進要素を含む“RS活性化”IEを含めるステップと、
前記“RS活性化”IEが含まれているDCIフォーマットを前記UEに送信するステップと、を含むことを特徴とする方法。」


3.平成26年6月26日付けの特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由の概要

平成26年6月26日付けの特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由の概要は下記のとおりである。

「2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

理由2について 請求項1?16について

請求項1には「多重UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに二つの2進要素を含む“RS活性化(RS Activation)”IEを含めるステップと、単一UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに一つの2進要素を含む“RS活性化”IEを含めるステップと」が記載されている。すなわち、UEが保持するアンテナの数が1つか複数かに基づいて“RS活性化”IEのビット数を変更することが記載されている。請求項5、9、13にも同様のことが記載されている。
一方、本願発明の詳細な説明には、SRS活性化IEが1ビットの場合と2ビットの場合の様々な制御は記載されている。しかし、SRS活性化IEを1ビットとするか2ビットとするかをUEが保持するアンテナの数に基づいて決定することが記載されているとは認められない。

よって、請求項1?16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」


4.請求人の主張

請求人は、平成26年10月1日付けの意見書において、

「2.理由2(記載不備)について
本拒絶理由では、本願発明は特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができない、と認定されています。
そこで、出願人はこの御認定について、以下の本願明細書の記載に基づいて、ご説明申し上げます。
本願明細書の記載部分について
本願の段落0056には「(段落0056) アップリンクSA DCIフォーマットを用いてSRS送信の活性化又は非活性化を行う第1の方法は、1ビットの“SRS活性化”IEを含む。UEは、アップリンクSA DCIフォーマットを受信する時、“SRS活性化”IEの値を検査する。例えば、“SRS活性化”=0は、現存するSRS送信の非活性化を示すか、又はSRS送信の不在を保持することを示すことができる。“SRS活性化”=1は、SRS送信の活性化を示すか、又は上位レイヤーシグナリングを通して前に割り当てられたパラメータを用いて現存するSRS送信を保持することを示すことができる。活性化されたSRS送信は、ディスエーブルされるまで1回又は継続して発生し得る。1回発生する活性化されたSRS送信は、SRS送信が構成されていないアップリンクCCに存在し得る。」ことが開示されています。
また、本願の段落0057には「(段落0057)UEが1つ以上の送信器アンテナを有している場合に、SRS活性化は、これらのアンテナのサブセットだけに適用され得る。多重アンテナサブセットの活性化を示すための第1の方法は、明示的なシグナリングを通して行われる。“SRS活性化”IEでのビットの個数は、可能なすべてのアンテナサブセットをアドレッシングすることができなければならない。例えば、2個又は4個の送信器アンテナを有するUEにおいて、表3に示すように、2ビット“SRS活性化”IEは、UEにより解釈されることができる。同一の原理は、UE送信器アンテナの個数がさらに大きい場合に拡張されることができる。」ことが開示されています。
さらに、段落0058の表3には、以下の内容が記載されています。
【表3】


以上の記載等から、本願では、UEが一つ以上の送信器アンテナを有することができ、SRS Activation IEが全てのアンテナサブセットをサポートできるべきであると記載されておりますので、該当内容は詳細な説明により裏付けられているものと思料しております。」

と主張するとともに、審判請求書において、

「(2) 補正の根拠
本願の優先権の基礎となっている、米国仮特許出願第61/100,449号の対応する段落の冒頭には「If the UE has more than one transmitter antennas, SRS activation may apply to only a subset of these antennas.」と記載されております。
すなわち、原文を翻訳すると本願の段落0057の冒頭は「UEが2つ以上の送信器アンテナを有している場合に、SRS活性化は、これらのアンテナのサブセットだけに適用され得る」となります。これらは英語表記を発音通り表記し又は、英語表記を日本語に翻訳いたしました。日本語への翻訳は英語表記からいずれも直接かつ一義的に日本語に導き出せるものでございます。
したがって、本願の段落0056はSRS活性化IEが1ビットの場合を説明し(すなわちアンテナが1つの場合)、本願の段落0057はSRS活性化IEが2ビットの場合(すなわちアンテナが複数の場合)を説明していることがおわかりになるものと思料しております。」

と主張している。


5.当審の判断

本願明細書の【0001】には、

「本発明は、一般的に、無線通信システムに関し、より具体的には、ユーザ装置の多重送信器アンテナからサウンディング基準信号の送信に関する。サウンディング基準信号は、他の目的の中で、各送信器アンテナからの信号によって得られるチャネル媒体の推定を提供しようとする。本発明は、通信システムの多重の個別帯域幅でのサウンディング基準信号の送信の支援に向けられる。」

と記載されているから、本願は、「ユーザ装置の多重送信器アンテナからサウンディング基準信号の送信に関する」発明であることが理解できる。つまり、本願のユーザ装置は「多重送信器アンテナ」を有していることが前提である。

本願明細書の【0057】には、

「UEが1つ以上の送信器アンテナを有している場合に、SRS活性化は、これらのアンテナのサブセットだけに適用され得る。多重アンテナサブセットの活性化を示すための第1の方法は、明示的なシグナリングを通して行われる。“SRS活性化”IEでのビットの個数は、可能なすべてのアンテナサブセットをアドレッシングすることができなければならない。例えば、2個又は4個の送信器アンテナを有するUEにおいて、表3に示すように、2ビット“SRS活性化”IEは、UEにより解釈されることができる。同一の原理は、UE送信器アンテナの個数がさらに大きい場合に拡張されることができる。」

と記載されている。

【0057】は、「1つ以上の送信器アンテナ」を有している場合の動作として記載されているが、「これらのアンテナのサブセット」に適用され得る場合の動作についての記載であるから、UEが有する送信機アンテナは複数、すなわち「2つ以上」であることは明らかである。

そうすると、【0057】?【0058】によれば、2つ以上の送信機アンテナを有している場合において、SRS活性化をこれらのアンテナのサブセットに適用しようとする場合には、2ビット“SRS活性化”IEを用いることが記載されていることが理解される。

一方、本願明細書の【0056】には、

「アップリンクSA DCIフォーマットを用いてSRS送信の活性化又は非活性化を行う第1の方法は、1ビットの“SRS活性化”IEを含む。UEは、アップリンクSA DCIフォーマットを受信する時、“SRS活性化”IEの値を検査する。例えば、“SRS活性化”=0は、現存するSRS送信の非活性化を示すか、又はSRS送信の不在を保持することを示すことができる。“SRS活性化”=1は、SRS送信の活性化を示すか、又は上位レイヤーシグナリングを通して前に割り当てられたパラメータを用いて現存するSRS送信を保持することを示すことができる。活性化されたSRS送信は、ディスエーブルされるまで1回又は継続して発生し得る。1回発生する活性化されたSRS送信は、SRS送信が構成されていないアップリンクCCに存在し得る。」

と記載されている。

すなわち、1ビットの“SRS活性化”IEにより、UEがSRS送信の非活性化/活性化を行うことが可能であることが記載されているものの、UEの送信器アンテナの本数については何ら記載されていない。
そうすると、【0001】から理解されるように、「ユーザ装置の多重送信器アンテナからサウンディング基準信号の送信に関する」発明について本願が記載されていること、【0057】が「これらのアンテナのサブセット」についてSRS活性化を制御することが記載していることを考慮すれば、【0056】は「UE全体」についてSRS送信の活性化を制御することが記載されていると理解される。

上記によれば、【0001】及び【0056】?【0058】から理解されることは、「1ビット」の“SRS活性化”IEにより「UE全体」についてのSRS送信の制御を行うことが可能であり、「2ビット」の“SRS活性化”IEにより「アンテナのサブセット」についてのSRS送信の制御を行うことが可能であることが理解されるに過ぎず、UEが有する送信器アンテナの本数による制御は記載されていない。

また、明細書の他の箇所を参照しても、本願は、【0001】に記載されるように「多重送信器アンテナ」を有するユーザ装置に関する発明であり、UEが有する送信器アンテナ本数が、1本であるか2本以上であるかにより“SRS活性化”IEのビット数を制御することは記載されていない。

よって、本願発明は、明細書に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしてない。


6.まとめ

以上のとおり、本願発明は、明細書に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしてない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


7.却下された平成27年7月9日付けの誤訳訂正について

平成28年4月26日付けの上申書には、

「前記誤訳訂正書に係る手続きは、手続補正書によって補正することができる内容です。
そこで、手続補正書を提出する機会を与えて頂きたく、ここに上申いたします。」

と記載され、平成28年12月5日付けの上申書には、

「審判請求人は、前記誤訳訂正書に係る手続きは、手続補正書によって補正することができる内容であり、手続補正書を提出する機会を与えて頂きたく、ここに上申いたします。
さらに、審判請求人は、前記手続却下の処分に対する訴えを提起致しませんので、本件についての御審理を進めて頂きたく、ここに上申いたします。」

と記載されているから、却下された平成27年7月9日付けの誤訳訂正が、審判請求時における通常の手続補正であったと仮定した場合について検討する。

平成27年7月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、

「基地局がユーザ端末機(User Equipment:UE)にスケジュールリング割当て(Scheduling Assignment:SA)を伝達するダウンリンク制御情報(Downlink Control Information:DCI)フォーマットを送信し、前記DCIフォーマットは、前記UEから前記基地局へのデータ情報の送信を構成する情報要素(Information Element:IE)を含み、前記IEは2進要素(binary element)を含む通信システムにおいて、前記UEからの基準信号(Reference Signal:RS)の送信を活性化する方法であって、
多重UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに二つの2進要素を含む“RS活性化(RS Activation)”IEを含めるステップと、
単一UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記DCIフォーマットに一つの2進要素を含む“RS活性化”IEを含めるステップと、
前記“RS活性化”IEが含まれているDCIフォーマットを前記UEに送信するステップと、を含むことを特徴とする方法。」(以下「補正前発明」という。)

から

「通信システムの基地局におけるユーザ端末機(User Equipment:UE)の基準信号(reference signal:RS)送信を制御する方法であって、
RS活性化(RS activation)情報要素(Information Element:IE)を含むダウンリンク制御情報(Downlink Control Information:DCI)をUEに送信するステップを含み、
多重UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記RS活性化IEは二つの2進要素を含み、
単一UE送信器アンテナからのデータ送信が存在する場合、前記RS活性化IEは一つの2進要素を含み、
前記DCIは信号送信を構成するIEを含むことを特徴とする方法。」(以下「補正後発明」という。)

と訂正された。

本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「DCI」について、補正前発明では「スケジューリング割当てを伝達する」DCIであるのに対し、補正後発明では「スケジューリング割当てを伝達する」ものに限定されない、ことに変更することを含むものである。

また、請求項の削除でなく、明瞭でない記載の釈明でなく、誤記の訂正でないことは明らかであるから、特許法17条の2第5項のいずれの目的にも該当しない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
上記によれば、平成27年7月9日付けの誤訳訂正が通常の手続補正であったとしても、補正を却下すべきものであるから、審決の結論に影響を与えない。
 
審理終結日 2016-12-20 
結審通知日 2016-12-26 
審決日 2017-01-10 
出願番号 特願2013-235435(P2013-235435)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04W)
P 1 8・ 57- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯島 尚郎深津 始  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 水野 恵雄
吉田 隆之
発明の名称 多重アンテナからのサウンディング基準信号の送信を支援する装置及び方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  

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