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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1328737
審判番号 不服2016-8085  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-06-20 
事件の表示 特願2011-282725「電子部品及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 8日出願公開,特開2013-135014,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成23年12月26日を出願日とする特許出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 5月25日 拒絶理由通知
平成27年 7月29日 意見書・手続補正書
平成28年 2月22日 拒絶査定
平成28年 6月 1日 審判請求・手続補正書
平成29年 2月 1日 拒絶理由通知(最初)
平成29年 3月13日 意見書・手続補正書
平成29年 3月24日 拒絶理由通知(最後)
平成29年 5月 1日 意見書・手続補正書


第2 補正の適否について

審判請求人が,平成29年5月1日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)が適法なものか否かについて,以下検討する。

1 補正事項の整理
本件補正は,特許法第17条の2第1項第3号に掲げる場合にした補正と認める。
そして,本件補正による特許請求の範囲及び本願明細書についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)
・補正事項1
補正前の請求項1における「前記接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」との記載を,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」とする補正をすること。
・補正事項2
補正前の請求項3における「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」との記載を,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」とする補正をすること。
・補正事項3
本願明細書の段落【0006】における「前記接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」との記載を,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」とする補正をすること。
・補正事項4
本願明細書の段落【0007】における「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」との記載を,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」とする補正をすること。
・補正事項5
本願明細書の段落【0039】における「この図7からわかるように,Ag含有量が5wt%未満の場合,及びAg含有量が95wt%を超える場合は,いずれも破断寿命が500時間以下になる。この実験結果から,保護層中のAgの含有量は,10wt%?95wt%とすることが好ましいことがわかる。」との記載を,「この図7からわかるように,Ag含有量が10wt%未満の場合,及びAg含有量が95wt%を超える場合は,いずれも破断寿命が500時間以下になる。この実験結果から,保護層中のAgの含有量は,10wt%?95wt%とすることが好ましいことがわかる。」とする補正をすること。

2 補正の適否について
(1)補正事項1について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】の記載,及び図7より,補正事項1は本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項1は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項1は,特許請求の範囲についてする補正であるところ,本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】の記載,及び図7より,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当し,また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

(2)補正事項2について
上記(1)と同様の理由により,補正事項2は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,補正事項2は,特許請求の範囲についてする補正であるところ,上記(1)と同様の理由により,補正事項2は,特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当し,また,同法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。

(3)補正事項3ないし5について
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】の記載,及び図7より,補正事項3ないし5は,いずれも,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,補正事項3ないし5は,いずれも,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3 小括
したがって,本件補正は,特許法第17条の2の規定に適合するので,適法なものといえる。


第3 本願発明について

前記第2のとおり,本件補正は適法なものと認められるので,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4(以下「本願請求項1」ないし「本願請求項4」という。)の各請求項に係る発明(以下,本願の特許請求の範囲の各請求項記載の発明を,請求項1ないし4の区分に応じて「本願発明1」ないし「本願発明4」といい,これらを併せて「本願発明」という。)は,それぞれ,本件補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載の以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,
前記接続端子はCuにより形成され,前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記保護層が,Ag_(3)Snであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
電子部品と,
前記電子部品が搭載される回路基板と,
前記電子部品の接続端子と前記回路基板の接続端子との間を接合する,Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだとを有し,
前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子はどちらもCuにより形成され,前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
前記保護層が,Ag_(3)Snであることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。」


第4 拒絶査定について

1 拒絶査定の概要
平成28年2月22日付けでした拒絶査定の概要は,以下のとおりである。
[拒絶査定の概要]
『この出願については,平成27年5月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-5
・引用文献等 1-3
引用文献1(全文全図,特に図14-図18)には,配線基板と半導体チップとを接続する際に,「アルミニウム電極パッド2」上にNiや銅からなるバリアメタルを形成し(段落[0033]),さらにその上に「Ag_(3)Sn金属間化合物膜7」とSn/Agはんだからなる「低融点金属9」とを設けることが記載されている。
引用文献1は,「Ag_(3)Sn金属間化合物膜7」をバリア性を発揮させたり(段落[0034]),密着性を向上させるために用いている(段落[0029])。
引用文献1は上述のようにパッドとしてアルミニウムを用いるものであるが,「Ag_(3)Sn金属間化合物膜7」とパッドとの間にはNiや銅からなるバリアメタルが存在するため,引用文献1における効果は当然Niや銅に対しても発揮されるものである。
ここで,引用文献2(段落[0011]-段落[0017]),引用文献3(段落[0015]-段落[0021])に記載されているように,バリアメタルとしてではなく,電極や端子,パッドそのものとして銅を用いることは周知技術であるため,引用文献1において電極や端子,パッドとして銅を用いて,その上に「Ag_(3)Sn金属間化合物膜7」と「低融点金属9」とを設ける構成とすることは,当業者が容易になし得たことであり,上述のように引用文献1の効果は銅に対しても発揮されるため,阻害要因があるとも認められない。
よって,請求項1-5に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載された周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1 特開2000-260801号公報
2 特表2009-526382号公報
3 特開2009-54790号公報』

2 引用文献の記載と引用発明
(1)引用文献1の記載と引用発明1A及び1B
ア 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である,特開2000-260801号公報(以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(当審注.下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【0060】[実施例6]シリコン1などで形成された半導体ウェハ(直径6インチ,厚さ625μm)上に,図14に示すように,100μm角のアルミニウム電極パッド2を形成し,アルミニウム電極パッド2の中心を空けるようにしてパッシベーション膜3を形成する。このとき,アルミニウム電極パッド2は,350μmのピッチで半導体ウェハの全面に格子状に形成される。
【0061】次に,ウェハ全面にチタン膜4,ニッケル膜5およびパラジウム膜6をスパッタリングや電子ビーム蒸着などによりバリアメタルとして形成する。バリアメタルとしては,この代わりに,クロム,銅,金,TiN,タングステン,タンタル,ニオブ,窒化タンタル等を組合せた積層膜を用いてもよい。
【0062】このバリアメタル上にAg_(3)Sn金属間化合物膜7を,同じくスパッタリングや電子ビーム蒸着により形成する。このAg_(3)Sn金属間化合物膜7の厚さは10μm以下,好ましくは0.5?5μmとすると効果的にバリア性が発揮される。Ag_(3)Sn金属間化合物膜7の厚さが10μmを超えるとAg_(3)Sn金属間化合物膜7の形成時間が長くなるばかりかエッチングしにくくなり,0.5μm未満だとバリア性に劣る。
【0063】なお,バリアメタルとAg_(3)Sn金属間化合物膜とは同時に形成してもよい。続いて,バリアメタルの上にレジスト8を50μm程度の厚さで塗布し,アルミニウム電極パッド2部分に重なる形状となるようガラスマスクを用いてレジストパターンを形成する。
【0064】さらに,図15に示すように,王水系溶液を用いて,Ag_(3)Sn金属間化合物膜7,パラジウム膜6およびニッケル膜5をエッチングする。次に,チタン膜4をエチレンジアミン四酢酸系溶液を用いてエッチングする。さらに,アセトンや一般的なレジスト剥離液等の溶媒を用いてレジスト8を除去する。
【0065】次に,図16に示すように,厚さ60μmの160μm角の印刷マスク12をウェハ上で位置合わせして配置し,開口部に低融点金属ペースト9を流し込み,スキージ13により余分な低融点金属ペースト9を削ぎ落としてスクリーン印刷する。
【0066】その後,図17に示すように,印刷マスク12を引き上げる,またはウェハを引き下げると,低融点金属9がバリアメタル上に形成される。
【0067】この低融点金属9としては,共晶Sn/Agはんだが挙げられる。この他,Sn,Ag,Bi,Zn,In,Sb,Cu,Bi,Ge等の金属が混合されていてもよい。
【0068】さらに,図18に示すように,半導体ウェハを,窒素雰囲気中,250℃で30秒間加熱し,はんだ金属である低融点金属9をリフローする。
【0069】この後,特に図示しないが,通常の電気的なテストを行った後,ウェハをダイシングして半導体チップとし,フリップチップ実装する。このフリップチップ実装された半導体チップと配線基板とを仮止めし,250℃に設定した窒素リフロー炉に通して,低融点金属からなるバンプを溶融する。これによって半導体チップと配線基板とが電気的に接続・実装され,半導体装置が得られる。
【0070】配線基板上の接続パッドとして,Cu,Ni,Au,Pdおよびこれらの積層膜または混合膜,または何らかの金属上にSn,Pb,Ag,Bi,Zn,In,Sb,Cu,Bi,Geといった低融点金属およびこれらの混合膜が形成されているものを用いる。さらに,この配線基板をマザーボードに接続する。
【0071】尚,配線基板上に実装された半導体チップの周囲,および配線基板と半導体チップの間にシリコーン樹脂,エポキシ樹脂またはアクリル樹脂等を充填して硬化させてもよい。
【0072】
【発明の効果】本発明によれば,バリアメタルと突起電極の間にAg_(3)Sn金属間化合物を形成することで,バリアメタルと突起電極の双方に優れた密着性を有する信頼性の高い半導体素子およびその製造方法が提供される。」

イ 上記アより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。
「共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプを溶融することにより配線基板に電気的に接続される電極パッド2を有する半導体チップにおいて,
上記電極パッド2はアルミニウムにより形成され,上記電極パッド2の表面に,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6がバリアメタルとして形成され,当該バリアメタル上にAg_(3)Sn金属間化合物膜7が形成され,当該Ag_(3)Sn金属間化合物膜7上に上記低融点金属9が形成されている半導体チップ。」

ウ また,上記アより,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1B」という。)が記載されているとも認められる。
「半導体チップと,
上記半導体チップが電気的に接続・実装される配線基板と
上記半導体チップの電極パッド2と上記配線基板の接続パッドとの間を電気的に接続する共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプとを有し,
上記半導体チップの電極パッド2はアルミニウムにより形成され,上記配線基板の接続パッドはCuにより形成され,上記電極パッド2の表面に,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6がバリアメタルとして形成され,当該バリアメタル上にAg_(3)Sn金属間化合物膜7が形成されている半導体装置。」

(2)引用文献2の記載と引用発明2
ア 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である,特表2009-526382号公報(以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0011】
図1は,絶縁基板,回路基板,又は半導体材料でつくられる第1の基板を示す,金属相互接続構造体要素101を概略的に示す。基板面は,保護オーバーコート(例えば,二酸化シリコン,シリコン窒化物,又はポリイミド)又ははんだマスクなどの絶縁性材料102で覆われ,その厚みは約20μmから40μmの間であることが好ましい。オーバーコート102には,金属性コンタクト・パッド103を露出させる窓がある。コンタクト・パッド103に好ましい金属は,約10μmから30μmまでの厚み範囲の,銅又は銅合金である。
【0012】
要素111は,第2の絶縁性基板,第2の回路基板,又は第2の半導体材料を示す。その表面は,第2の金属性コンタクト・パッド113を露出させる窓を有する,何らかの絶縁性の,保護材料112で覆われる。コンタクト・パッド113に好ましい金属は,約10μmから30μmまでの厚み範囲の,銅又は銅合金である。
【0013】
図1の変形例において,第1のコンタクト・パッド103は,銅面上に障壁金属層104及び105を有していてもよい。層104は,約0.01μmから3μmまでの厚み範囲のニッケルでつくられ,層105は,約0.3μmから1μmまでの厚み範囲の金でつくられることが好ましい。別の変形例において,第2の銅コンタクト・パッド113は,その上に,好ましくは0.01μmから3μmまでの厚みのニッケルでつくられる障壁層,その後続く,好ましくは0.3μmから1μmまでの金でつくられる層を有していてもよい。
【0014】
図1において,第2のコンタクト・パッドは,第1のコンタクト・パッドに対向して配置される。はんだの本体120が第1及び第2のパッドに接しており,このため,これらの2つのパッドを接続する。本体120のはんだは,以下の金属,即ち,約95.5から約99.49重量パーセントの量の錫,約0.5から約4.0重量パーセントの量の銀,及び約0.01から約0.5重量パーセントの量の,元素の周期表の遷移族IIIa,IVa,Va,VIa,VIIa,及びVIIIaから少なくとも1つの金属,を含む合金である。
【0015】
初期の断片部分として,元のはんだ本体は,合金の成分が実質的に均一な分布している。しかし,はんだリフロー後,コンタクト・パッド近辺のはんだ領域内の遷移金属重量パーセントは,はんだ本体の中央領域内の遷移金属重量パーセントより小さく,或る構造体では半分以下である。
【0016】
遷移族IIIaの金属は,スカンジウム,イットリウム,及びランタンを含み,遷移族IVaの金属は,チタン,ジルコニウム,及びハフニウムを含み,遷移族Vaの金属は,バナジウム,ニオブ,及びタンタルを含み,遷移族VIaの金属は,クロム,モリブデン,及びタングステンを含み,遷移族VIIaの金属は,マンガン,及びレニウムを含み,及び遷移族VIIIaの金属は,鉄,コバルト,ニッケル,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウム,及びプラチナを含む。
【0017】
はんだ本体120が液化し,その後,コンタクト・パッド103に取り付けられるべく固化すると,パッド103とはんだ120との間に金属間化合物の層が形成される。この金属間化合物は,以下の図面に示すように,(CuX)_(6)Sn_(5),Sn_(3)Ag,及びAg_(3)Snなど,銅/錫の,及び銅/銀/錫の化合物の粒子を含み,ここでXははんだ本体からの遷移金属である。化合物粒子に遷移金属が含まれることで,化合物粒子サイズ及び化合物層厚みが低減する。また,液化及び固化のサイクルが繰り返される際,遷移金属を含む化合物粒子は,再現可能なままである。これは,固体/液体/固体サイクルが繰り返された後,粒子サイズが著しく増大しないことを意味する。
【0018】
はんだ本体120が再び液化され,その後,第2のコンタクト・パッド113に取り付けるため固化されると,第2のパッドとはんだとの間に金属間化合物の別の層が形成される。この金属間化合物も,錫/銀の,銅/錫の,及び銅/銀/錫の化合物を含み,この場合も,遷移金属を含むことで,化合物粒子サイズ及び化合物層厚みが低減する。また,粒子サイズは再現可能なままである。」

イ 上記アより,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁基板,回路基板,又は半導体材料でつくられる第1の基板を示す,金属相互接続構造体要素101であって,当該金属相互接続構造体要素101は,銅又は銅合金である第1のコンタクト・パッド103を有し,
第2の絶縁性基板,第2の回路基板,又は第2の半導体材料である要素111であって,当該要素111は,銅又は銅合金である第2のコンタクト・パッド113を有し,
第2のコンタクト・パッド113は,第1のコンタクト・パッド103に対向して配置され,約95.5から約99.49重量パーセントの量の錫,約0.5から約4.0重量パーセントの量の銀,及び約0.01から約0.5重量パーセントの量の,元素の周期表の遷移族IIIa,IVa,Va,VIa,VIIa,及びVIIIaから少なくとも1つの金属,を含む合金である,はんだ本体120が,上記第1のコンタクト・パッド103及び上記第2のコンタクト・パッド113に接しており,このため,上記第1のコンタクト・パッド103と上記第2のコンタクト・パッド113とを接続し,
上記はんだ本体120が液化し,その後,上記第1のコンタクト・パッド103及び上記第2のコンタクト・パッド113に取り付けられるべく固化すると,上記第1のコンタクト・パッド103及び上記第2のコンタクト・パッド113と,上記はんだ本体120との間に,(CuX)_(6)Sn_(5)(Xははんだ本体からの遷移金属),Sn_(3)Ag,及びAg_(3)Snなど,銅/錫の,及び銅/銀/錫の化合物の粒子を含む,金属間化合物の層が形成される,半導体デバイス。」

(3)引用文献3の記載と引用発明3
ア 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である,特開2009-54790号公報(以下「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0028】
<半導体装置の製造方法,半導体装置の実装>
本発明の半導体基板の製造方法の一例を図5に従って以下に記載する。
本発明の半導体装置100は,基板102上に公知ウエハプロセスが実施され,基板102の表面にはマトリックス状に配列された半導体チップ(不図示)を形成する。ここでいう半導体チップとは,一つの半導体装置に対応して形成される基板上の電気回路のことである。
前記電気回路と電気的に接続された電極パッド(不図示)を形成した後,ポリイミド等の樹脂材料からなる絶縁層(不図示)をスピンコート等にて基板102表面上に塗布する。塗布したポリイミドのうち,不要な箇所のポリイミドは公知のフォトリソグラフィ技術等により除去する。これらの工程により,電極パッド(不図示)に対応する領域及び半導体チップ(不図示)の境界線に沿う領域を除く基板102の表面上にポリイミド等からなる絶縁層(不図示)が形成される。
この表面に,例えば,イオンスパッタ法により,チタンタングステン(TiW)等からなるバリアメタル(不図示)を形成する。その後,バリアメタル上に銅(Cu)のメッキを形成し,電極パッド(不図示)から絶縁性封止層104の上面に至るように配線し,Cu電極106を形成する。
【0029】
次に,半田ボール114とCu電極106とを電気的に接続するため,フラックス112を塗布する。この後,半田ボール114をフラックス112上に載せ,リフロー処理することにより,外部接続端子110を形成する。
ここで,本発明の半導体デバイスにおいて,好適に用いることができるフラックスとしては,例えば,樹脂系,有機酸系のフラックスが挙げられる。これらの中でも,本発明で好適に用いることができるフラックス112としては,いずれにおいてもハロゲンフリーのフラックスが挙げられ,更にリフロー処理温度の兼ね合いから以下を満たすフラックスが好ましい。
フラックス溶剤の沸点は,140℃以上300℃以下に設定し,活性を示し始める温度
が80℃以上160℃以下であることが好ましい。より好ましい態様としては,溶剤の沸点を180℃以上285℃以下に設定し,活性を示し始める温度が100℃以上140℃以下であることが挙げられる。
リフロー処理は,基板温度を例えば150℃で均一にするための予備加熱を行った後,引き続いて,ピーク温度に上昇して半田を接合する。このピーク温度にするための条件(以下,適宜,「ピーク条件」と称する)は,昇降温速度を2℃/分?3℃/分,ピーク温度を180℃?260℃,(ピーク温度-20℃)以上の保持時間を30秒?60秒とし,大気中で行うことが好ましい。中でも,ピーク温度を240℃?260℃の範囲でリフロー処理を行うと,ストッパー部が十分に形成される点で好ましい。
また,フラックス112に代えて,上述した外部接続端子110の合金組成と同じ組成の半田ペースト112を用いてもよい。また,半田ペーストの組成としては,従来から用いられているSn_(3)Ag_(0.5)Cuを用いてもよい。
【0030】
このようにして製造した本発明の半導体装置100を,実装基板120に実装する。
実装基板120上に,公知の方法で電気回路を形成し,この電気回路と電気的に接続されている端子122上に,半田ペースト128を塗布する。半田ペースト128の組成としては,例えば,Sn_((100-x-y))Ag_(x)Cu_(y)(組成比を示すx,yは,それぞれ,0.05質量%以上5質量%以下,0.05質量%以上2質量%以下)が挙げられる。その後,半田ペースト128上に,前記のように製造した本発明の半導体装置100を,外部接続端子110が半田ペースト128上に載るように配置し,リフロー処理を行い,外部接続端子110と端子122とが電気的に接続され,半導体装置100の実装基板120への実装が完了する。」

イ 上記アより,引用文献3には,次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「電気回路が形成された半導体装置100と,
上記半導体装置100が実装される,電気回路が形成された実装基板120と,
上記半導体装置100のCu電極106と上記実装基板120の端子122との間を電気的に接続する半田ボール114,及びSn_((100-x-y))Ag_(x)Cu_(y)(組成比を示すx,yは,それぞれ,0.05質量%以上5質量%以下,0.05質量%以上2質量%以下)である半田ペースト128とを有する,半導体装置100を実装基板120に実装した物。」

3 本願発明の進歩性についての判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aにおける「配線基板」,「電気的に接続される」,「電極パッド2」及び「半導体チップ」は,それぞれ,本願発明1の「他の電子部品」,「接続される」,「接続端子」及び「電子部品」に相当するといえる。
そして,本願発明1の「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合」と,引用発明1Aにおける「共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプを溶融すること」とは,「SnAg合金はんだによるはんだ接合」である点で共通するといえる。
そうすると,本願発明1と引用発明1Aとの一致点及び相違点は,以下のとおりであると認める。
(ア)一致点
「SnAg合金はんだによるはんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品。」
(イ)相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「SnAg合金はんだによるはんだ接合」について,本願発明1は,「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合」であるのに対し,引用発明1Aは,「共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプを溶融する」もので,「共晶Sn/Agはんだ」におけるAg含有量は特定されていない点。
・相違点2
一致点に係る構成の「接続端子」について,本願発明1は,「前記接続端子はCuにより形成され,前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」のに対し,引用発明1Aでは,「上記電極パッド2はアルミニウムにより形成され,上記電極パッド2の表面に,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6がバリアメタルとして形成され,当該バリアメタル上にAg_(3)Sn金属間化合物膜7が形成され,当該Ag_(3)Sn金属間化合物膜7上に上記低融点金属9が形成されている」点。

イ 相違点についての検討
相違点2について検討する。
上記2(2)イより,引用文献2には,いずれも銅又は銅合金である,第1のコンタクト・パッド103及び第2のコンタクト・パッド113と,約95.5から約99.49重量パーセントの量の錫,約0.5から約4.0重量パーセントの量の銀,及び約0.01から約0.5重量パーセントの量の,元素の周期表の遷移族IIIa,IVa,Va,VIa,VIIa,及びVIIIaから少なくとも1つの金属,を含む合金である,はんだ本体120との間に,(CuX)_(6)Sn_(5)(Xははんだ本体からの遷移金属),Sn_(3)Ag,及びAg_(3)Snなど,銅/錫の,及び銅/銀/錫の化合物の粒子を含む,金属間化合物の層が形成されることが記載されているにとどまり,「前記接続端子はCuにより形成され,前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成について,記載も示唆もされていない。
また,上記2(3)イ及びウより,引用文献3には,半導体装置100のCu電極106と実装基板120の端子122との間を,半田ボール114,及びSn_((100-x-y))Ag_(x)Cu_(y)(組成比を示すx,yは,それぞれ,0.05質量%以上5質量%以下,0.05質量%以上2質量%以下)である半田ペースト128によって電気的に接続することで,上記半導体装置100を上記実装基板120に実装することが記載されているだけで,「前記接続端子はCuにより形成され,前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成について,記載も示唆もされていない。
さらに,上記1(1)アより,引用文献1の記載によれば,引用発明1Aは,「バリアメタルと突起電極の間にAg_(3)Sn金属間化合物を形成することで,バリアメタルと突起電極の双方に優れた密着性を有する信頼性の高い半導体素子およびその製造方法が提供される。」(【0072】)との作用効果を奏するものであるから,引用発明1Aにおいて,電極パッド2の表面にバリアメタルとして形成された,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6を取り除き,上記電極パッド2の表面をAg_(3)Sn金属間化合物膜7で直接被覆することには,阻害要因があるといわざるを得ない。
そうすると,相違点2に係る構成は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして,本願明細書の記載(【0037】ないし【0039】及び図7)より,本願発明1は,相違点2に係る構成によって,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるという,格別の作用効果を奏すると認められる。

ウ 小括
以上から,本願発明1は,引用文献1記載の発明において,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(2)本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の構成を備えたものであるから,上記(1)と同様の理由により,引用文献1記載の発明において,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)本願発明3について
ア 対比
本願発明3と引用発明1Bとを対比する。
引用発明1Bにおける「半導体チップ」,「電気的に接続・実装される」,「配線基板」,「上記半導体チップの電極パッド2」,「上記配線基板の接続パッド」,及び「電気的に接続する」は,それぞれ,本願発明3の「電子部品」,「搭載される」,「回路基板」,「前記電子部品の接続端子」,「前記回路基板の接続端子」及び「接合する」に相当するといえる。
そして,本願発明3の「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだ」と,引用発明1Bにおける「共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプ」とは,「SnAg合金はんだ」である点で共通するといえる。
そうすると,本願発明3と引用発明1Bとの一致点及び相違点は,以下のとおりであると認める。
(ア)一致点
「電子部品と,
前記電子部品が搭載される回路基板と,
前記電子部品の接続端子と前記回路基板の接続端子との間を接合する,SnAg合金はんだとを有し,
前記回路基板の接続端子はCuにより形成されている電子機器。」
(イ)相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「SnAg合金はんだ」について,本願発明3は,「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだ」であるのに対し,引用発明1Bは,「共晶Sn/Agはんだである低融点金属9からなるバンプ」であり,「共晶Sn/Agはんだ」におけるAg含有量は特定されていない点。
・相違点2
本願発明3は,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子はどちらもCuにより形成され,前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」のに対し,引用発明1Bは,「上記半導体チップの電極パッド2はアルミニウムにより形成され,上記配線基板の接続パッドはCuにより形成され,上記電極パッド2の表面に,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6がバリアメタルとして形成され,当該バリアメタル上にAg_(3)Sn金属間化合物膜7が形成されている」点。

イ 相違点についての検討
相違点2について検討する。
引用文献2及び3には,上記(1)イのとおりの事項が記載されており,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子はどちらもCuにより形成され,前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成は,記載も示唆もされていない。
また,上記(1)イのとおり,引用発明1Bにおいて,電極パッド2の表面にバリアメタルとして形成された,チタン膜4,ニッケル膜5及びパラジウム膜6を取り除き,上記電極パッド2の表面をAg_(3)Sn金属間化合物膜7で直接被覆することには,阻害要因があるといわざるを得ない。
そうすると,引用発明1Bにおいて,「半導体チップの電極パッド2」をCuにより形成し,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された構成とすることや,Cuにより形成された「配線基板の接続パッド」が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された構成とすることは,いずれも,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして,本願明細書の記載(【0037】ないし【0039】及び図7)より,本願発明3は,相違点2に係る構成によって,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるという,格別の作用効果を奏すると認められる。

ウ 小括
以上から,本願発明3は,引用文献1記載の発明において,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(4)本願発明4について
本願発明4は,本願発明3の構成を備えたものであるから,上記(3)と同様の理由により,引用文献1記載の発明において,引用文献2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

4 まとめ
したがって,本願の請求項1ないし4に係る発明(本願発明1ないし4)は,いずれも,拒絶査定の理由により,拒絶すべきものとすることはできない。


第5 当審で通知した拒絶理由について

1 平成29年2月1日付けで通知した拒絶理由について
(1)拒絶理由の概要
当審が平成29年2月1日付けでした,最初の拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知(最初)」という。)の概要は,以下のとおりである。
[当審拒絶理由通知(最初)の概要]
『理由
1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 この出願は,下記の点で,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 この出願は,下記の点で,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1 理由1について
(1)請求項1について
ア 引用発明
引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「はんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,前記接続端子はCuにより形成されている電子部品。」
イ 対比
本願請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その余の点で一致すると認める。
・相違点
本願請求項1に係る発明は,「接続端子の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成を備えているのに対し,引用発明1は,上記の構成を備えていない点。
ウ 相違点についての判断
引用文献2には,はんだ接合により他の電子部品に接続される電子部品の複合リード線であって,銅からなる導体の表面に,Ag_(3)Sn金属間化合物により形成された保護層を直接被覆することで,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善することが記載されている。
そして,引用発明1において,Cuにより形成された接続端子に,半田付け性及び電気接続性を付与することや,耐熱性及び耐食性を改善することは,当業者が当然に考慮するものと認められ,また,はんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,上記接続端子を被覆する層をAg_(3)Snにより形成することは,引用文献3にみられるように,本願出願日前,当該技術分野では普通に行われていたと認められる。
そうすると,引用発明1において,Cuにより形成された接続端子に,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善するために,上記接続端子の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆された構成(相違点に係る構成)とすることは,本願出願時の当該技術分野における技術水準に鑑みれば,引用文献2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(2)請求項2について
本願出願時の当該技術分野における技術水準に鑑みれば,本願請求項2に係る構成は,引用発明1において,引用文献2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(3)請求項3について
ア 引用発明
引用文献1には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品と,
前記電子部品が搭載される回路基板と,
前記電子部品の接続端子と前記回路基板の接続端子との間を接合するはんだとを有し,
前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子はどちらもCuにより形成されている,
電子機器。」
イ 対比
本願請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その余の点で一致すると認める。
・相違点
本願請求項1に係る発明は,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成を備えているのに対し,引用発明2は,上記の構成を備えていない点。
ウ 相違点についての判断
引用文献2には,はんだ接合により他の電子部品に接続される電子部品の複合リード線であって,銅からなる導体の表面に,Ag_(3)Sn金属間化合物により形成された保護層を直接被覆することで,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善することが記載されている。
そして,引用発明2において,電子部品及び回路基板それぞれのCuにより形成された接続端子に,半田付け性及び電気接続性を付与することや,耐熱性及び耐食性を改善することは,当業者が当然に考慮するものと認められ,また,はんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,上記接続端子を被覆する層をAg_(3)Snにより形成することは,引用文献3にみられるように,本願出願日前,当該技術分野では普通に行われていたと認められる。
そうすると,引用発明2において,電子部品及び回路基板それぞれのCuにより形成された接続端子に,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善するために,上記接続端子の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆された構成(相違点に係る構成)とすることは,本願出願時の当該技術分野における技術水準に鑑みれば,引用文献2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(4)請求項4について
本願出願時の当該技術分野における技術水準に鑑みれば,本願請求項4に係る構成は,引用発明2において,引用文献2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

引用文献等一覧
1 特開2008-288297号公報
2 特開昭56-56745号公報
3 特開2000-260801号公報

2 理由2について
(1)本願請求項1及び2について
本願請求項1の記載より,当該請求項に係る発明には,任意の材料からなる「はんだ」で,電子部品間を「はんだ接合」するものが含まれ得ると認められる。
しかし,本願明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本願に係る発明は,「接続端子とはんだとの接合部に流れる電流密度が高くてもエレクトロマイグレーションが発生しにくい電子部品及び電子機器を提供することを目的とする」(【0005】)ものであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,「はんだ(Sn-3.5wt%Ag)」を用いた場合に,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成により,上記の目的が達成されることが記載されているだけで,他の材料からなる「はんだ」を用いた場合について上記の構成により上記の目的が達成されることは記載されていない。
そして,当該技術分野における技術常識を参酌しても,電子部品間を「はんだ接合」する「はんだ」の材料に関係なく,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag_(3)Snにより形成された保護層により直接被覆されている」との構成によって,上記の目的が達成されることが自明であるとは認められない。
以上から,本願請求項1に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。
同様の理由により,請求項1を引用する,本願請求項2に係る発明も,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。

(2)本願請求項3について
本願請求項3の記載より,当該請求項に係る発明には,任意の材料からなる「はんだ」で,電子部品と回路基板とを「はんだ接合」するものが含まれ得ると認められるが,上記(1)と同様の理由により,本願請求項3に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。

3 理由3について
本願請求項2には「前記保護層中のAg含有量が10wt%以上,95wt%以下である」と記載され,また,当該請求項で引用する本願請求項1には「Ag_(3)Snにより形成された保護層」と記載されているが,「Ag_(3)Sn」であることと,「Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下である」ことが両立するとは認められず,本願請求項2の上記の記載では「保護層」の構成は不明である。
以上から,本願請求項2には,当該請求項に係る発明の構成が明確に記載されているとは認められない。』

(2)引用文献の記載と引用発明
ア 引用文献4の記載と引用発明4A及び4B
(ア)当審拒絶理由通知(最初)で引用文献1として引用された,本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である,特開2008-288297号公報(以下「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「【0026】
実施例1は,実装部として半導体チップを用いた,いわゆるチップオンチップ型の半導体装置である。図1から図4を用い,実施例1に係る半導体装置100の製造方法について説明する。
【0027】
図1(a)は,実装する側の半導体チップの下面図であり,図1(b)は図1(a)のA-A1線に沿った断面図である。シリコンからなる第1半導体チップ10の主面には,外部に配線を引き出すための銅からなる第1電極30が形成されている。第1電極30の表面には,外部と物理的かつ電気的な接続を行うため,錫と銀からなる半田ボール48が形成されている。第1電極30を上面から見た平面形状(第1形状90)は円形である。これは,後述する工程において半田ボール48が加熱溶融した際,半田ボール48は表面張力によって丸まり概半球状となるので,電極を円形とすることで半田との濡れ性が向上するためである。
【0028】
図2(a)は,実装される側の半導体チップの上面図であり,図2(b)は図2(a)のB-B1線に沿った断面図である。図3は電極の形状を比較するための参考図である。シリコンからなる第2半導体チップ20(実装部)の主面には,後述するX線検査用の銅からなる第2電極32,及び第2半導体チップ20から外部に配線を引き出すための銅からなる第3電極34が形成されている。第2電極32及び第3電極34の表面には,半田との濡れ性を高めるためのフラックス(不図示)が塗布されている。第2電極32の上面から見た平面形状(第2形状92)は,第1形状90とは異なる十字形である。図3に示されるように,第1形状90と第2形状92を重ねた場合,第2形状92の一部が第1形状からはみ出す形となる。また,第3電極34の上面から見た平面形状(第3形状94)は第1形状90と同じく円形である。これは,第1電極30の場合と同じく半田との濡れ性を考慮したものである。図2(a)に示されるように,第2電極32は第3電極34に囲まれる形で,第2半導体チップ20の中央部に設けられている。たとえば実施例1の場合,図2(a)に示されるように第2電極32は,そのすぐ外側を8つの第3電極34aによって囲まれている。これは後述する半田ボールの過熱溶融工程や,半導体チップのパ
ッケージング時の樹脂封止工程において電極に熱応力がかかるため,熱応力の影響が大きい外側には熱応力に強い円形の第3電極34を,熱応力の影響が小さい内側には熱応力に弱い十字状の第2電極32を設けたものである。
【0029】
図4を参照に,第1半導体チップ10を第2半導体チップ20にフリップチップボンディングにより実装する。まず,半田ボール48を加熱により溶融させる。次に第1電極30,並びに第2電極32及び第3電極34の位置合わせを行った上で,半田ボール48を第2電極32及び第3電極34に融着させる。第2電極32及び第3電極34の表面にはフラックスが塗布してあるため,半田ボール48が十分に溶融した状態であれば,半田ボール48は第2電極32及び第3電極34の表面全体を覆う。その後,半田ボール48が固化すると,第1電極30と第2電極32との間には第1半田バンプ40が,第1電極30と第3電極34との間には第2半田バンプ42がそれぞれ形成される。以上の半田バンプ接合工程により,実施例1に係る半導体装置100が完成する。」
(イ)上記(ア)より,引用文献4には,次の発明(以下「引用発明4A」という。)が記載されていると認められる。
「錫と銀からなる半田ボール48により第2半導体チップ20に接続される第1電極30が形成された第1半導体チップ10において,上記第1電極30は銅からなる第1半導体チップ10。」
(ウ)上記(ア)より,引用文献4には,次の発明(以下「引用発明4B」という。)が記載されているとも認められる。
「第1半導体チップ10と,
上記第1半導体チップ10が実装される第2半導体チップ20と,
上記第1半導体チップ10の第1電極30と上記第2半導体チップ20の第2電極32及び第3電極34との間を接合する錫と銀からなる半田ボール48とを有し,
上記第1半導体チップ10の第1電極30と上記第2半導体チップ20の第2電極32及び第3電極34はいずれも銅からなる半導体装置。」

イ 引用文献5の記載と引用文献5に記載の事項
(ア)当審拒絶理由通知(最初)で引用文献2として引用された,本願の出願日前に国内において頒布された刊行物である,特開昭56-56745号公報(以下「引用文献5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
・「本発明は,レジスター,コンデンサー,ダイオード,トランジスターなどの電子機器部品に用いられる複合リード線の改良に関するもので,特に半田付け性,電気接続性を劣化せしめることなく,耐食性と耐熱性を向上せしめたものである。」(1頁右下欄4行ないし8行)
・「本発明はこれに鑑み種々研究の結果,半田接続性及び電気接続性を劣化せしめることなく耐食性及び耐熱性を向上せしめた複合リード線を開発したもので,導体表面にNi,Co又はNi合金からなる中間層又は/及びAgからなる中間層を介在させ又は介在させることなくAg-3?30wt%Sn合金で最外層の保護層を形成したものである。
また本発明は上記複合リード線を容易に製造し得る方法を開発したもので,導体表面にNi,Co又はNi合金を被覆し又は被覆することなくAgを被覆した後,Snを被覆しこれを伸線加工し,又は伸線加工することなく加熱してAgとSnを相互拡散せしめて最外層の保護層を形成することを特徴とするものである。
即ち本発明リード線は,第1図に示すように導体1の最外層にAg-3?30wt%Sn合金からなる保護層2を形成したものであり,また第2図に示すものは,導体1の表面にAg,Ni,Co又はNi合金からなる中間層3を設けその上にAg-3?30wt%Sn合金からなる保護層2を形成したものであり,更に第3図に示すものは導体1の表面にNi,Co又はNi合金からなる第1中間層3’とAgからなる第2中間層3”を設けその上にAg-3?30wt%Sn合金からなる保護層2を形成したものである。
導体1は従来同様銅,銅合金,アルミニウム,ニッケル,鋼線,銅覆鋼線等の丸線又は角線からなり,その線径は用途に応じて異なるも大略0.1?3mm程度のものである。
Ag-3?30wt%Sn合金からなる保護層2は導体1を保護し,これに複合リード線として必要な半田付け性,電気接続性を付与すると共に表面硬度を高めて外傷を防止し,耐熱性,耐食性を改善したものである。しかしてSn含有量は,Snの固溶状態(α相)から金属間化合物Ag_(3)Sn(γ相)まで有効であり,特に金属間化合物Ag_(3)Snは硬度が高く,耐食性に優れ,しかも金属間化合物でありながら加工性が良好であり,この分解温度は480℃である。しかもSnの含有によりAgの致命的欠点である硫化腐食が防止できる。しかしながらSn含有量が3wt%未満では改善効果が小さく,30wt%を越えると脆くなり,実用的でない。」(2頁左上欄10行ないし左下欄10行)
・「このような本発明複合リード線は,Ag-3?30wt%Sn合金からなる保護層を導体上に直接電気メッキや真空蒸着などの方法で形成することも不可能でない。」(2頁右下欄18行ないし3頁左上欄1行)
(イ)上記(ア)より,引用文献5には,以下の事項が記載されていると認められる。
「はんだ接合により他の電子部品に接続される電子部品の複合リード線であって,銅からなる導体の表面に,Ag_(3)Sn金属間化合物により形成された保護層を直接被覆することで,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善すること。」

ウ 当審拒絶理由通知(最初)で引用された引用文献3について
当審拒絶理由通知(最初)で引用文献3として引用された文献は,拒絶査定で引用された引用文献1と同じものであり,前記第4の2(1)イ及びウのとおりの引用発明1A及び1Bが記載されていると認められる。

(3)本願発明の進歩性(当審拒絶理由通知(最初)の理由1)についての判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明4Aとを対比する。
引用発明4Aにおける「第2半導体チップ20」,「第1電極30」及び「第1半導体チップ10」は,それぞれ,本願発明1の「他の電子部品」,「接続端子」及び「電子部品」に相当するといえる。
そして,本願発明1の「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合により」と,引用発明4Aにおける「錫と銀からなる半田ボール48により」とは,「SnAg合金はんだによるはんだ接合によ」るものである点で共通するといえる。
そうすると,本願発明1と引用発明4Aとの一致点及び相違点は,以下のとおりであると認める。
a 一致点
「SnAg合金はんだによるはんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,
前記接続端子はCuにより形成された,電子部品。」
b 相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「SnAg合金はんだによるはんだ接合」について,本願発明1は,「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合」であるのに対し,引用発明4Aは,「錫と銀からなる半田ボール48によ」る点。
・相違点2
一致点に係る構成の「接続端子」について,本願発明1は,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」のに対し,引用発明4Aは,上記の構成を備えていない点。
(イ)相違点についての検討
相違点2について検討する。
本願明細書の記載(【0037】ないし【0039】及び図7)より,本願発明1は,相違点2に係る構成によって,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるとの作用効果を奏すると認められる。
他方,引用文献5には,はんだ接合により他の電子部品に接続される電子部品の複合リード線において,銅からなる導体の表面に,Ag_(3)Sn金属間化合物により形成された保護層を直接被覆することで,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善することが記載されているにとどまり,電子部品の接続端子をCuにより形成し,上記接続端子の表面を,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆することで,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるとの作用効果を奏することについて,記載も示唆もされていない。
また,前記第4の2(1)イ及びウより,引用文献1には,上記相違点2に係る構成,及びそれによる作用効果について,記載も示唆もされていない。
そうすると,相違点2に係る構成は,引用発明4Aにおいて,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)小括
以上から,本願発明1は,引用文献4記載の発明において,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の構成を備えたものであるから,上記アと同様の理由により,引用文献4記載の発明において,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 本願発明3について
(ア)対比
本願発明3と引用発明4Bとを対比する。
引用発明4Bにおける「第1半導体チップ10」,「実装される」,「第2半導体チップ20」,「上記第1半導体チップ10の第1電極30」,「上記第2半導体チップ20の第2電極32及び第3電極34」及び「半導体装置」は,それぞれ,本願発明3の「電子部品」,「搭載される」,「回路基板」,「前記電子部品の接続端子」,「前記回路基板の接続端子」及び「電子機器」に相当するといえる。
そして,本願発明3の「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだ」と,引用発明4Bにおける「錫と銀からなる半田ボール48」とは,「SnAg合金はんだ」である点で共通するといえる。
そうすると,本願発明3と引用発明4Bとの一致点及び相違点は,以下のとおりであると認める。
a 一致点
「電子部品と,
前記電子部品が搭載される回路基板と,
前記電子部品の接続端子と前記回路基板の接続端子との間を接合する,SnAg合金はんだとを有し,
前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子はどちらもCuにより形成された,電子機器。」
b 相違点
・相違点1
一致点に係る構成の「SnAg合金はんだ」について,本願発明3は,「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだ」であるのに対し,引用発明4Aは,「錫と銀からなる半田ボール48」である点。
・相違点2
一致点に係る構成の「接続端子」について,本願発明3は,「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」のに対し,引用発明4Bは,上記の構成を備えていない点。
(イ)相違点についての検討
相違点2について検討する。
本願明細書の記載(【0037】ないし【0039】及び図7)より,本願発明3は,相違点2に係る構成によって,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるとの作用効果を奏すると認められる。
他方,引用文献5には,はんだ接合により他の電子部品に接続される電子部品の複合リード線において,銅からなる導体の表面に,Ag_(3)Sn金属間化合物により形成された保護層を直接被覆することで,半田付け性及び電気接続性を付与するとともに,耐熱性及び耐食性を改善することが記載されているにとどまり,電子部品の接続端子及び回路基板の接続端子をCuにより形成し,上記2つの接続端子のの少なくとも一方の表面を,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆することで,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えるとの作用効果を奏することについて,記載も示唆もされていない。
また,前記第4の2(1)イ及びウより,引用文献1には,上記相違点2に係る構成,及びそれによる作用効果について,記載も示唆もされていない。
そうすると,相違点2に係る構成は,引用発明4Bにおいて,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)小括
以上から,本願発明3は,引用文献4記載の発明において,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

エ 本願発明4について
本願発明4は,本願発明3の構成を備えたものであるから,上記アと同様の理由により,引用文献4記載の発明において,引用文献5及び1にそれぞれ記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(4)本願の特許請求の範囲のサポート要件(当審拒絶理由通知(最初)の理由2)についての判断
ア 本願請求項1について
前記第3のとおり,本願請求項1には,「Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだによるはんだ接合により他の電子部品に接続される接続端子を有する電子部品において,」と記載されている。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明には,「但し,接続端子12,22間を接続するはんだ25は,2.0wt%?4.0wt%のAgを含有したSnAg合金により形成することが好ましい。はんだとして上記のSnAg合金を使用すると,保護層13,23中のAgSn合金がはんだ中に拡散することを抑制する効果が大きく,エレクトロマイグレーションによる接続端子12,22間の断線をより確実に抑制できる。」(【0028】)との記載があるから,本願請求項1における上記の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されている。
そうすると,本願請求項1に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項1に対し当審拒絶理由通知(最初)で通知した理由2は解消されたと認められる。
そして,本願請求項1を引用する本願請求項2に係る発明も,同様の理由により,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項2に対し当審拒絶理由通知(最初)で通知した理由2は解消されたと認められる。

イ 本願請求項3及び4について
前記第3のとおり,本願請求項3には,「前記電子部品の接続端子と前記回路基板の接続端子との間を接合する,Ag含有量が2.0wt%乃至4.0wt%のSnAg合金はんだとを有し,」と記載されている。
そして,上記アより,本願請求項3における上記の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明(【0028】)に記載されている。
そうすると,本願請求項3に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項3に対し当審拒絶理由通知(最初)で通知した理由2は解消されたと認められる。
そして,本願請求項3を引用する本願請求項4に係る発明も,同様の理由により,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項4に対し当審拒絶理由通知(最初)で通知した理由2は解消されたと認められる。

ウ 小括
以上より,本願請求項1ないし4の各請求項に係る発明は,いずれも,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第1号に規定に適合すると認める。

(5)本願の特許請求の範囲の明確性要件(当審拒絶理由通知(最初)の理由3)についての判断
前記第3のとおり,本願請求項1には,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」が記載され,また,本願請求項2には,「前記保護層が,Ag_(3)Snであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。」と記載されている。
そうすると,本願請求項1及び2における「保護層」に関する上記の記載より,本願請求項2には,本願発明における「保護層」の構成が明確に記載されているといえるから,本願請求項2に対し当審拒絶理由通知(最初)で通知した理由3は解消されたと認められる。
以上より,本願請求項2には,当該請求項に係る発明の構成が明確に記載されているといえるから,本願の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第2号に規定に適合すると認める。

(6)まとめ
したがって,本願の請求項1ないし4に係る発明(本願発明1ないし4)は,いずれも,当審拒絶理由通知(最初)の理由により,拒絶すべきものとすることはできない。

2 平成29年3月24日付けで通知した拒絶理由について
(1)拒絶理由の概要
当審が平成29年3月24日付けでした,最後の拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知(最後)」という。)の概要は,以下のとおりである。
[当審拒絶理由通知(最後)の概要]
『理由
この出願は,下記の点で,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



1 本願請求項1及び2について
本願請求項1における「前記接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」との記載より,当該請求項に係る発明には,接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%以上10wt%未満のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された構成を備えたものが含まれ得ると認められる。
しかし,本願明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本願に係る発明は,「接続端子とはんだとの接合部に流れる電流密度が高くてもエレクトロマイグレーションが発生しにくい電子部品及び電子機器を提供することを目的とする」(【0005】)ものであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,「図7は,横軸にAgSn合金中のAg含有量をとり,縦軸に断線が発生するまでの時間(破断寿命)をとって,両者の関係を調べた結果を示す図である。この図7からわかるように,Ag含有量が5wt%未満の場合,及びAg含有量が95wt%を超える場合は,いずれも破断寿命が500時間以下になる。この実験結果から,保護層中のAgの含有量は,10wt%?95wt%とすることが好ましいことがわかる。」(【0039】)と記載され,接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%以上10wt%未満のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された場合の破断寿命は記載されていない。
また,保護層であるAgSn合金中のAg含有量(横軸)と破断寿命(縦軸)との関係を調べた結果を示す図である,本願の図7には,保護層であるAgSn合金中のAg含有量が5wt%以上10wt%未満の場合,破断寿命は,Ag含有量が5wt%未満の場合,及びAg含有量が95wt%を超える場合と同様に,破断寿命が500時間以下になることが記載されていると認められる。
そうすると,本願請求項1に係る発明に含まれ得る,接続端子の表面が,Ag含有量が5wt%以上10wt%未満のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された構成を備えたものが,本願に係る発明の目的を達成することは,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。
そして,本願請求項1に係る発明に含まれ得る上記の構成を備えたものが,本願に係る発明の目的を達成することは,当該技術分野における技術常識を参酌しても,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から自明であるとは認められない。
以上から,本願請求項1に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。
同様の理由により,請求項1を引用する,本願請求項2に係る発明も,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。

2 本願請求項3及び4について
本願請求項3における「前記電子部品の接続端子及び前記回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が5wt%乃至95wt%のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されている」との記載より,当該請求項に係る発明には,電子部品の接続端子及び回路基板の接続端子の少なくとも一方の表面が,Ag含有量が5wt%以上10wt%未満のAgSnにより形成された保護層により直接被覆された構成を備えたものが含まれ得ると認められる。
しかし,上記1と同様の理由により,本願請求項3に係る発明に含まれ得る上記の構成を備えたものが,本願に係る発明の目的を達成することは,本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず,また,本願請求項3に係る発明に含まれ得る上記の構成を備えたものが,本願に係る発明の目的を達成することは,当該技術分野における技術常識を参酌しても,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から自明であるとは認められない。
以上から,本願請求項3に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。
同様の理由により,請求項3を引用する,本願請求項4に係る発明も,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。』

(2)本願の特許請求の範囲のサポート要件(当審拒絶理由通知(最後)の理由)についての判断
ア 本願請求項1及び2について
前記第3のとおり,本願請求項1には,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」が記載されている。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,本願に係る発明は,「接続端子とはんだとの接合部に流れる電流密度が高くてもエレクトロマイグレーションが発生しにくい電子部品及び電子機器を提供することを目的とする」(【0005】)ものであるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,「この図7からわかるように,Ag含有量が5wt%未満の場合,及びAg含有量が95wt%を超える場合は,いずれも破断寿命が500時間以下になる。この実験結果から,保護層中のAgの含有量は,10wt%?95wt%とすることが好ましいことがわかる。」(【0039】)と記載され,また,保護層であるAgSn合金中のAg含有量(横軸)と破断寿命(縦軸)との関係を調べた結果を示す図である,本願の図7には,保護層であるAgSn合金中のAg含有量が10wt%以上,95wt%以下のとき,2.5×10^(4)A/cm^(2)の電流密度で直流電流を流した場合に,エレクトロマイグレーションによる断線寿命が500時間を超えることが記載されていると認められる。
そうすると,本願請求項1における上記の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されており,本願請求項1に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項1に対し当審拒絶理由通知(最後)で通知した理由は解消されたと認められる。
そして,本願請求項1を引用する本願請求項2に係る発明も,同様の理由により,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項2に対し当審拒絶理由通知(最後)で通知した理由は解消されたと認められる。

イ 本願請求項3及び4について
前記第3のとおり,本願請求項3には,「前記接続端子の表面が,Ag含有量が10wt%以上,95wt%以下のAgSnにより形成された保護層により直接被覆されていること」が記載されている。
そうすると,上記アと同様の理由により,本願請求項3における上記の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されており,本願請求項3に係る発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項3に対し当審拒絶理由通知(最後)で通知した理由は解消されたと認められる。
そして,本願請求項3を引用する本願請求項4に係る発明も,同様の理由により,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願請求項4に対し当審拒絶理由通知(最後)で通知した理由は解消されたと認められる。

ウ 小括
以上より,本願請求項1ないし4の各請求項に係る発明は,いずれも,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された発明といえるから,本願の特許請求の範囲は,特許法第36条第6項第1号に規定に適合すると認める。

(4)まとめ
したがって,本願請求項1ないし4に係る発明(本願発明1ないし4)は,いずれも,当審拒絶理由通知(最後)の理由により,拒絶すべきものとすることはできない。


第6 結言

以上のとおり,本願については,原査定の拒絶理由,及び当審で通知した拒絶理由を検討しても,これらの理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-05 
出願番号 特願2011-282725(P2011-282725)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 篠原 功一堀江 義隆小堺 行彦  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 河口 雅英
加藤 浩一
発明の名称 電子部品及び電子機器  
代理人 岡本 啓三  
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