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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1328841
審判番号 不服2016-4534  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-28 
確定日 2017-06-05 
事件の表示 特願2014- 23426「リン脂質を含む免疫原性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日出願公開、特開2014- 80442〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成15年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年12月27日、2003年10月21日及び2003年12月29日,米国)を国際出願日とする特願2004-565756号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成22年6月21日に新たな特許出願としたもの(特願2010-141085号)の一部を、さらに特許法第44条第1項の規定により、平成26年2月10日に新たな特許出願としたものである。
以降の手続は次のとおりである。

平成26年2月10日 上申書
平成27年1月23日付け 拒絶理由通知書
平成27年7月24日 意見書
平成27年11月25日付け 拒絶査定
平成28年3月28日 審判請求書


2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
明細書中に記載の発明。」


3 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1の「明細書中に記載の発明」がどのような発明を意図しているのか、発明の範囲を明確に把握することができないから、請求項1に係る発明は明確ではなく、本願は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。


4 特許法第36条第6項第2号に関連する裁判例について
(1)平成13年(行ケ)第346号判決
東京高等裁判所は、旧特許法36条5項2号の規定について、平成13年(行ケ)第346号判決において次のとおり判示した。
「上記規定は、発明の詳細な説明に多面的に記載されている発明のうち、どの発明について特許を受けようとしているのかを、出願人の意思により、特許請求の範囲に明示すべきことを要求しているものであり、これにより、一つの請求項に基づいて、特許を受けようとする発明が、まとまりのある一つの技術的思想として明確に把握できることになるのである。そのためには、明細書の特許請求の範囲には、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」を明確に記載する必要があるのであり、特許発明の構成に欠くことができない事項を明確に記載することが容易にできるにもかかわらず、殊更に不明確あるいは不明りょうな用語を使用して特許請求の範囲を記載し、特許発明に欠くことができない構成を不明確なものとするようなことが許されないのは、当然のことというべきである。
このことは、特許法70条1項が、「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定し、特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲を定めることを規定していることからも当然のことである。すなわち、特許請求の範囲を明確に記載することが容易にできるにもかかわらず、殊更に不明確あるいは不明りょうな用語を使用して記載することが許されるとすれば、特許発明の技術的範囲を明確に確定することができなくなるおそれが生じ、特許権が行使される対象となる範囲が不明確となって、社会一般に対しあるいは競業者に対し、特許権が行使される範囲の外延を明示するとの、特許請求の範囲が果たすべき、本来の機能を果たすことができなくなる結果を招来するのである。」

この判決は、旧特許法第36条第5項第2号の規定についてのものであるが、特許請求の範囲の記載を明確に記載する必要があるということに関する判示事項については、「特許を受けようとする発明が明確であること。」と規定している特許法第36条第6項第2号の判断において参照し得ることは明らかであって、しかも、特許法第36条第6項第2号について判断した下記の平成20年(行ケ)第10107号判決および平成21年(行ケ)第10434号判決の判示事項と反するところもない。

(2)平成20年(行ケ)第10107号判決
知的財産高等裁判所は、特許法第36条第6項第2号の規定について、平成20年(行ケ)第10107号判決において、次のとおり判示した。
「特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載において、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨を規定する。同号がこのように規定した趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許発明の技術的範囲、すなわち、特許によって付与された独占の範囲が不明となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあるので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。」

(3)平成21年(行ケ)第10434号判決
知的財産高等裁判所は、特許法第36条第6項第2号の規定について、平成21年(行ケ)第10434号判決において、次のとおり判示した。
「法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」


5 本願明細書の記載事項
本願明細書には、次のような記載がある。(なお、下線は当審による。)
(1)『【0005】
(発明の要旨)
本発明は顕著な免疫刺激能力を有するアジュバントを含む免疫原性組成物、そして特にリン脂質アジュバントを含む組成物に関する。』
(2)『【0020】
本発明はさらに体液性および/または細胞性免疫応答を誘導するために効果的な量の本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかを動物に投与することを含む、宿主動物における宿主動物内部の体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答、例えばTh1免疫応答またはCTL応答、またはリンパ増殖またはサイトカイン生産を刺激する方法に関する。
【0021】
別の実施形態においては、本発明は本明細書に記載した免疫原性組成物の何れかの治療有効量を宿主動物に投与することを含む免疫化の方法に関する。
【0022】
本発明はさらに保護応答を誘導するのに有効な量の本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかを動物に投与することを含む、例えば腫瘍またはウィルス、細菌または寄生生物の感染に対して宿主動物を免疫化する方法に関する。』
(3)『【0024】
従って、本発明の一部の実施形態によれば、例えば、ウィルス、真菌、マイコプラズマ、細菌または原虫の感染に対して、並びに、腫瘍に対して、宿主動物を予防的および/または治療的に免疫化することを含む治療のための組成物および方法が提供される。本発明の方法は宿主動物、好ましくはヒトに対し、予防的および/または治療的な免疫化をもたらすために有用である。本発明の方法はまた生物医学的な研究用途を含むヒト以外の動物に対しても実施できる。
【0025】
本発明の他の実施形態は上記組成物を製造するための方法に関する。例えば、上記した重合体微粒子は下記工程、即ち(a)水、有機溶媒、生体分解性重合体およびアニオン、カチオン、非イオン性または両性イオン系の界面活性剤を含む水中油中水エマルジョンを形成すること;および(b)エマルジョンから有機溶媒を除去して重合体微粒子を形成することを含む方法により製造できる。』
(4)『【0179】
・・・
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の成分、即ち:(a)水;(b)ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリシアノアクリレートから選択される重合体を含む重合体微粒子;(c)該微粒子に吸着させた抗原;ならびに(d)以下の成分、即ち:(i)独立して下記基:
【化1】

および下記基:
【化2】

から選択されるホスホリル基1つ以上;(ii)直鎖アルカン基:
【化3】


[式中nは独立して6?20の整数である]複数、を含む合成リン脂質化合物、を含む免疫原性組成物。
(項目2)
・・・
(項目28)
前記免疫原性組成物が注射可能組成物である項目1?27のいずれかに記載の免疫原性組成物。
(項目29)
脊椎動物の宿主動物に抗原の治療量を送達する方法であって、項目1?28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該宿主動物に投与することを含む、方法。
(項目30)
病原性生物感染または腫瘍を有する宿主動物の治療方法であって、項目1?28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
(項目31)
腫瘍または病原性生物感染による感染に対して宿主動物を免疫化する方法であって、項目1?28のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
(項目32)
宿主動物における免疫応答を刺激する方法であって、項目1?28のいずれかに記載の免疫原性組成物を宿主動物に投与することを含む、方法。
・・・
(項目40)
以下の成分、即ち:(a)水;(b)代謝可能な油;(c)乳化剤;(d)抗原;および
(e)(i)独立して下記基:
【化12】

および下記基:
【化13】

から選択されるホスホリル基1つ以上;(ii)直鎖アルカン基:
【化14】

[式中nは独立して6?20の整数である]複数、を含むリン脂質化合物、
を含み、
ここで該組成物は油相および水相を有する水中油のエマルジョンであり、そして、
ここで油相は実質的に全てが直径1ミクロン未満である油滴の形態である免疫原性組成物。
(項目41)
・・・
(項目75)
脊椎動物の宿主動物に抗原の治療量を送達する方法であって、項目40?74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該宿主動物に投与することを含む、方法。
(項目76)
病原性生物感染または腫瘍を有する宿主動物の治療方法であって、項目40?74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
(項目77)
腫瘍または病原性生物感染による感染に対して宿主動物を免疫化する方法であって、項目40?74のいずれかに記載の免疫原性組成物を該動物に投与することを含む、方法。
(項目78)
宿主動物における免疫応答を刺激する方法であって、項目40?74のいずれかに記載の免疫原性組成物を宿主動物に投与することを含む、方法。
・・・
(項目85)
前記宿主動物がヒトである項目78記載の方法。

要件となる発明の好ましい実施形態を幾分詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を外れることなく顕著な変更が可能であると理解される。』

以上のことから、本願明細書には、少なくとも上記の
・免疫原性組成物。
・脊椎動物の宿主動物に抗原の治療量を送達する方法
・病原性生物感染または腫瘍を有する宿主動物の治療方法
・腫瘍または病原性生物感染による感染に対して宿主動物を免疫化する方法
・宿主動物における免疫応答を刺激する方法
として例示される発明を含む、様々な多数種の組成物の発明及び方法の発明が記載されているといえる。
そして、これらの発明は、各々十分特定できる程度に明確に本願明細書に記載されていると認められる。


6 当審の判断
上記「5」に述べたように、本願明細書中には様々な多数種の組成物及び方法の発明が記載され、それらの発明は、本願明細書においてそれぞれ明確に記載されており、いずれの発明も特許請求の範囲に明確に記載することが可能なものであって、それを本願の特許請求の範囲に記載できないような事情は見いだせない。

そして、上記4(1)の平成13年(行ケ)第346号判決の「上記規定は、発明の詳細な説明に多面的に記載されている発明のうち、どの発明について特許を受けようとしているのかを、出願人の意思により、特許請求の範囲に明示すべきことを要求しているもの」であるとの判示事項に照らせば、本願特許請求の範囲の記載は、本願明細書中に記載された発明のうち、どの発明について特許を受けようとしているのか不明であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことは明白である。

また、上記4(2)の平成20年(行ケ)第10107号判決及び4(3)の平成21年(行ケ)第10434号判決の観点からも検討を加えると、前記したように本願明細書中の発明のうち何が本願の特許請求の範囲に含まれるのか明確でないから、特許発明の技術的範囲を明確に確定することができなくなるおそれが生じ、特許権が行使される対象となる範囲が不明確となることは明らかである。
よって、本願の特許請求の範囲の記載に、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎としても、本願の特許請求の範囲の記載は、「第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である」といえ、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


7 結語
以上のことから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-10 
結審通知日 2017-01-11 
審決日 2017-01-24 
出願番号 特願2014-23426(P2014-23426)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 大久保 元浩
福井 美穂
発明の名称 リン脂質を含む免疫原性組成物  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
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