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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 A23L |
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管理番号 | 1329043 |
異議申立番号 | 異議2016-700816 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-02 |
確定日 | 2017-04-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5881321号発明「飲料における精油の分散安定化方法、及びそれを利用した飲料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5881321号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5881321号の請求項1、2、4、6、7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5881321号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成23年6月27日の出願であって、平成28年2月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人尾田久敏により請求項1、2、4、6、7に対して特許異議申立がなされ、当審において平成28年11月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月24日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、特許法第120条の5第5項の規定に基づく書面を特許異議申立人に送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人から応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年1月24日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5881321号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「食品として許容可能な非水性混合溶媒に精油成分を溶解してなるオイル香料」とあるのを、「食品として許容可能な非水性混合溶媒に0.1?30%の精油成分を溶解してなるオイル香料」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項3に「オイル香料が、0.1?30%の精油を溶解してなるものである」とあるのを、「オイル香料が、1.0?30%の精油を溶解してなるものである」と訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、オイル香料に溶解させる精油成分の量を「0.1?30%」に特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1で限定した事項は、本件明細書の【0008】に「オイル香料が、0.1?30%の精油を溶解してなるものである」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、オイル香料に溶解させる精油の量を「0.1?30%」から、「1.0?30%」に狭めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2で限定した事項は、本件明細書の【0015】に「オイル香料における精油の濃度は、例えば1.0%(w/w)以上」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)独立特許要件違反でないこと 特許異議申立がされていない訂正後の請求項3は、減縮を目的とした上記訂正事項2を含み、また、訂正後の請求項5、8、9は、減縮を目的とした上記訂正事項1又は2を含む請求項1又は3を直接的又は間接的に引用するものであるから、実質的に減縮を目的とした訂正を含むものである。 そして、特許異議申立がされていない請求項3、5、8、9に係る訂正後の発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから、特許法第120条の5第9項の規定によって読み替えて準用する第126条第7項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5?7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕についての訂正を認める。 第3 特許異議申立について 1 本件発明 本件訂正の請求により訂正された訂正請求項1?9に係る発明(以下訂正請求項1?9に記載された発明を「本件発明1?9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 水性飲料原料液に、食品として許容可能な非水性混合溶媒に0.1?30%の精油成分を溶解してなるオイル香料の、飲料あたり0.001?0.2重量%となる量を、撹拌により分散する工程; オイル香料が分散された水性飲料原料液に、乳化香料の、オイル香料分散安定化上有効量のミセル非形成乳化剤を含む量を混合し、オイル香料の分散を安定化する工程; を含む、飲料の製造方法。 【請求項2】 前記乳化香料を、滴下することによって混合する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 オイル香料が、1.0?30%の精油を溶解してなるものである、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 オイル香料1重量部に対して0.2?5重量部の乳化香料を用いる、請求項1?3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 非水性混合溶媒が、プロピレングリコール及びエタノールからなる、請求項1?4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 飲料が、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、請求項1?5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 容器詰め飲料の製造方法である、請求項1?6のいずれかに記載の方法。 【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載の方法によって製造された飲料であって、 2.88ppm?72ppmのオイル香料と、乳化香料とを含み、臨界ミセル濃度未満の乳化剤により、オイル香料を含む油滴が分散安定化されている、飲料。 【請求項9】 前記油滴の平均粒径が0.3?0.5μmである、請求項8に記載の飲料。 2 取消理由について (1)取消理由の概要 当審において、本件特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 <特許法第29条第2項> 請求項1、2、4、6、7に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明、及び周知技術(甲第3号証?甲第9号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:(社)日本果汁協会監修、最新 果汁・果実飲料事典、株式会社朝倉書店、1997年10月1日発行、p.491?493 甲第2号証:社団法人全国清涼飲料工業界、財団法人日本炭酸飲料検査協会監修、最新 ソフトドリンクス、株式会社 光琳、平成15年9月30日発行、p.147?151 甲第3号証:大木道則、外3名編集、化学辞典 株式会社東京化学同人、2007年2月1日発行、p.1131 甲第4号証:山崎 三吉、食品香料の知識、日本香料協会、昭和41年10月15日発行、p.18?19 甲第5号証:赤星 亮一、香料の化学、大日本図書株式会社、昭和58年9月16日発行、p.228?230 甲第6号証:荒井綜一、外3名編集、最新 香料の事典、株式会社朝倉書店、2000年5月10日発行、p.422?423 甲第7号証:特開2008-109900号公報 甲第8号証:辻 薦、乳化・可溶化の技術、工学図書株式会社、昭和51年6月20日発行、p.18?19、p.120?123 甲第9号証:特開2004-166632号公報 (2) 当審の判断 ア 甲第1号証、甲第2号証に記載された発明 (ア)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、492頁の記載から以下の発明が記載されている。 「果実飲料の原料液に、アルコール性香料、プロピレングリコール性香料、またはグリセリン性香料を添加する工程と、当該香料が添加された果実飲料の原料液に、乳化香料を添加する工程を含むことにより、乳化香料の粒子の破壊するおそれを避けた、果実飲料の製造方法。」(以下「甲1発明」という。) (イ)甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、147頁及び151頁の記載から以下の発明が記載されている。 「調整前の飲料に、含水アルコールで香気成分を抽出されたエッセンスを添加して良く分散する工程と、当該エッセンスが分散された飲料に、乳化香料を添加する工程を含むことにより、エッセンス中のアルコールによる乳化破壊を防止する、飲料の製造方法。」(以下「甲2発明」という。) イ 対比 (ア)甲1発明との対比 甲1発明の「果実飲料の原料液」は本件発明1の「水性飲料原料液」に相当し、同様に「アルコール性香料、プロピレングリコール性香料、またはグリセリン性香料」は「食品として許容可能な非水性」「溶媒に精油成分を溶解してなるオイル香料」に相当する。また、甲1発明の「乳化香料の粒子の破壊するおそれを避けた」ことは、「アルコール性香料、プロピレングリコール性香料、またはグリセリン性香料」が「乳化香料」により分散されて安定化されているといえるので、本件発明1の「オイル香料の分散を安定化する」ことに相当する。 本件発明1と甲1発明とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「水性飲料原料液に、食品として許容可能な非水性溶媒に精油成分を溶解してなるオイル香料を、添加する工程; オイル香料が添加された水性飲料原料液に、乳化香料を混合し、オイル香料の分散を安定化する工程; を含む、飲料の製造方法。」 <相違点1-1> 非水性溶媒について、本件発明1では、「混合溶媒」であるのに対して、甲1発明では、混合溶媒であるとは特定されていない点。 <相違点1-2> オイル香料の精油成分の量について、本件発明1では、「0.1?30%」であるのに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。 <相違点1-3> 水性飲料原料液にオイル香料を添加した後、本件発明1では、「撹拌により分散する」のに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。 <相違点1-4> オイル香料の水性飲料原料液中の量について、本件発明1では、「飲料あたり0.001?0.2重量%となる量」であるのに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。 <相違点1-5> 乳化香料の混合する量が、本件発明1では、「オイル香料分散安定化上有効量のミセル非形成乳化剤を含む量」であるのに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。 (イ)甲2発明との対比 甲2発明の「調整前の飲料」は本件発明1の「水性飲料原料液」に相当し、同様に「含水アルコールで香気成分を抽出されたエッセンス」は「食品として許容可能な非水性」「溶媒に精油成分を溶解してなるオイル香料」に、「エッセンス中のアルコールによる乳化破壊を防止する」ことは「オイル香料の分散を安定化する」ことに相当する。 本件発明1と甲2発明とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「水性飲料原料液に、食品として許容可能な非水性溶媒に精油成分を溶解してなるオイル香料を、分散する工程; オイル香料が分散された水性飲料原料液に、乳化香料を混合し、オイル香料の分散を安定化する工程; を含む、飲料の製造方法。」 <相違点2-1> 非水性溶媒について、本件発明1では、「混合溶媒」であるのに対して、甲2発明では、混合溶媒であるとは特定されていない点。 <相違点2-2> オイル香料の精油成分の量について、本件発明1では、「0.1?30%」であるのに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。 <相違点2-3> 水性飲料原料液にオイル香料を分散することについて、本件発明1では、「撹拌により分散する」のに対して、甲2発明では攪拌によりと特定されていない点。 <相違点2-4> オイル香料の水性飲料原料液中の量について、本件発明1では、「飲料あたり0.001?0.2重量%となる量」であるのに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。 <相違点2-5> 乳化香料の混合する量が、本件発明1では、「オイル香料分散安定化上有効量のミセル非形成乳化剤を含む量」であるのに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。 ウ 判断 そこで、上記相違点(1-2)、(2-2)について検討する。 0.1?30%の精油成分を溶解したオイル香料については、甲第1号証及び甲第2号証に示唆するところがなく、甲第3?9号証に記載がないことから、周知技術とも認められない。 よって、相違点(1-2)、(2-2)は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)まとめ したがって、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものであるとはいえない。 また、本件発明2、4、6、7は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定されたものであるから、同様の理由により、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものであるとはいえない。 第4 むすび したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1、2、4、6、7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 水性飲料原料液に、食品として許容可能な非水性混合溶媒に0.1?30%の精油成分を溶解してなるオイル香料の、飲料あたり0.001?0.2重量%となる量を、撹拌により分散する工程; オイル香料が分散された水性飲料原料液に、乳化香料の、オイル香料分散安定化上有効量のミセル非形成乳化剤を含む量を混合し、オイル香料の分散を安定化する工程; を含む、飲料の製造方法。 【請求項2】 前記乳化香料を、滴下することによって混合する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 オイル香料が、1.0?30%の精油を溶解してなるものである、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 オイル香料1重量部に対して0.2?5重量部の乳化香料を用いる、請求項1?3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 非水性混合溶媒が、プロピレングリコール及びエタノールからなる、請求項1?4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 飲料が、低アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、請求項1?5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 容器詰め飲料の製造方法である、請求項1?6のいずれかに記載の方法。 【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載の方法によって製造された飲料であって、 2.88ppm?72ppmのオイル香料と、乳化香料とを含み、臨界ミセル濃度未満の乳化剤により、オイル香料を含む油滴が分散安定化されている、飲料。 【請求項9】 前記油滴の平均粒径が0.3?0.5μmである、請求項8に記載の飲料。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-04-10 |
出願番号 | 特願2011-141918(P2011-141918) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(A23L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 名和 大輔、上條 肇 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 山崎 勝司 |
登録日 | 2016-02-12 |
登録番号 | 特許第5881321号(P5881321) |
権利者 | サントリー食品インターナショナル株式会社 |
発明の名称 | 飲料における精油の分散安定化方法、及びそれを利用した飲料の製造方法 |
代理人 | 中村 充利 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 中村 充利 |
代理人 | 小野 新次郎 |