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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 一部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1329377
審判番号 無効2013-800052  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-29 
確定日 2017-05-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5127123号「太陽電池のバックシート」の特許無効審判事件についてされた平成25年12月10日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10020号、平成26年12月18日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第5127123号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを認める。 請求項5に記載された発明についての本件審判の請求は、成り立たない。 請求項1ないし3に記載された発明についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
平成17年 7月22日 本件出願(特願2005-212550号)
平成24年11月 9日 設定登録(特許第5127123号)
平成25年 3月29日 無効審判請求
同年 6月18日 答弁書
訂正請求書(第1回)
同年 7月31日 弁駁書提出(第1回)
同年10月 8日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年10月22日 口頭審理、上申書提出(請求人)
同年12月10日 審決(「訂正を認める。本件審判の請求は、成
り立たない。」)
同年12月19日(審決送達日)
平成26年 1月17日 知的財産高等裁判所出訴(請求人原告 平成2
6年(行ケ)第10020号)
同年12月18日 判決言渡(審決取消)
平成27年 2月18日 訂正請求書(第2回)
上申書
同年10月16日 弁駁書(第2回)

II.訂正の適否について
平成27年2月18日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の適否について、以下に検討する。
II-1 訂正の内容
被請求人が求める本件訂正請求の内容は、本件特許明細書及び特許請求の範囲(以下、図面と併せて「本件特許明細書等」という。)を平成27年2月18日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおりに訂正しようとするものである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1?請求項3を削除する。

(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項4の「硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである請求項1?3のいずれかに記載の太陽電池のバックシート。」を、
訂正後の特許請求の範囲の請求項4の「太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネート基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、又は、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネート基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート。」とする。

(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「請求項1?4のいずれかに記載のバックシートを備えた太陽電池モジュール。」を、
訂正後の特許請求の範囲の請求項5の「太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって、
太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシートから構成されており、
前記封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層であり、
前記バックシートは、
水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、
該硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散しており、
前記バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、
試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、
前記封止剤層と前記バックシートとは直接接着しており、前記封止剤層及び前記バックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない
太陽電池モジュール。」とするものである。

II-2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項4が同請求項1ないし3のいずれかを引用する記載形式であったものを、かかる形式を解消し、訂正前の請求項1ないし3の記載を取り込んで独立した請求項の記載形式とすると共に、訂正前の「太陽電池のバックシート」を訂正後の「太陽電池モジュールのバックシート」とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものにすることを目的とすると共に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項の規定により準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、当該請求項4は、特許無効審判の請求がなされていない請求項であるが、その訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」又は「誤記又は誤訳の訂正」ではないから、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)に適合するか否かの検討を要しない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が同請求項1ないし4のいずれかを引用する記載形式であったものを、かかる形式を解消し、訂正前の請求項1の記載を取り込んで独立した請求項の記載形式とした上で、
太陽電池モジュールについて、「太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシ一卜から構成されており、」との限定事項を付加し(以下、「訂正事項a」という)、
封止剤層について、「封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層であり、」との限定事項を付加し(以下、「訂正事項b」という)、
バックシートについて、「太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、」とあったのを、「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、」に限定し(以下、「訂正事項c」という)、
硬化塗膜について、「該硬化塗膜中に顔料が分散している太陽電池モジュールのバックシート。」とあったのを、「該硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散しており、」に限定し(以下、「訂正事項d」という)、
バックシートについて、「前記バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、」との限定事項を付加し(以下、「訂正事項e」という)、
封止剤層及びバックシートについて、「前記封止剤層と前記バックシートとは直接接着しており、前記封止剤層及び前記バックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」との限定事項を付加するものである(以下、「訂正事項f」という)。
ここで、訂正事項aないし訂正事項fについて、
太陽電池モジュールが、太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシ一卜から構成されることは、本件特許明細書の【0064】ないし【0070】及び図面の【図3】に記載されているから、訂正事項aは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、
封止剤層が、表面層とバックシートとに挟まれることは、本件特許明細書の【0064】ないし【0070】及び図面の【図3】に記載され、また、封止剤層が、エチレン/酢酸ビニル共重合体、すなわち「EVA」の層であることは、本件特許明細書の【0064】ないし【0070】に記載されているから、訂正事項bは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、
バックシートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が直接接着していることは、本件特許明細書の【0061】、【0064】ないし【0070】及び図面の【図3】に記載されているから、訂正事項cは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、
硬化塗膜に黒色顔料又は白色顔料が分散していることは、本件特許明細書の【0056】に記載されているから、訂正事項dは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、
バックシートが折り曲げ性試験に耐えるものであることは、本件特許明細書の【0098】の折り曲げ性試験の方法の記載、及び、【0122】の【表3】において、実施例4ないし6における折り曲げ性(枚数)が1であると記載されているから、訂正事項eは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、
封止剤層とバックシートとが直接接着していることは、本件特許明細書の【0018】、【0064】ないし【0070】及び図面の【図3】に記載され、また、太陽電池モジュールの構成のうち、封止剤層及びバックシートからなる積層体の部分が促進耐候性試験に耐えるものであることは、本件訂正明細書の【0094】ないし【0097】の耐候性試験の方法の記載、及び、【0122】の【表3】において、実施例4ないし6における「耐候性:EVAとの界面」が○であり、「耐候性:外観」が○であると記載されているから、訂正事項fは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でするものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし3からなる本件訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1、3及び4号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項の規定により準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件特許訂正発明
本件特許第5127123号の訂正後の特許請求の範囲の請求項4、5に記載された発明(以下、「本件特許訂正発明4」、「本件特許訂正発明5」といい、これらを纏めて「本件特許訂正発明」という。)は、平成27年2月18日付け訂正請求により訂正された明細書及び特許請求の範囲(以下、図面を併せて「本件訂正明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項4及び5に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである。
「【請求項4】
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネー卜基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、又は、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネー卜系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネー卜基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項5】
太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって、
太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシートから構成されており、
前記封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層であり、
前記バックシートは、
水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、
該硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散しており、
前記バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、
試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、
前記封止剤層と前記バックシートとは直接接着しており、前記封止剤層及び前記バックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない
太陽電池モジュール。」

IV.請求人の主張
上記のとおり、本件訂正請求は適法なものであるから、請求の趣旨及び理由は、以下のように整理することができる。
なお、本件訂正請求により削除された請求項1ないし3に記載された発明についての本件無効審判の請求については却下する。
[請求の趣旨]
本件無効審判の請求の趣旨は、「特許第5127123号の訂正後の特許請求の範囲の請求項5に係る発明(本件特許訂正発明5)についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。

[請求の理由]
1.本件特許訂正発明5は、甲第9号証に記載された発明及び周知技術、または、甲第9号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができないもの(以下、「無効理由1」という。)であり、
2.本件特許訂正発明5は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないもの(以下、「無効理由2」という。)であり、
3.本件特許訂正発明5は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術、または、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明並びに周知技術、または、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができないもの(以下、「無効理由3」という。)であるので、
その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2001-196614号公報
甲第2号証:日刊工業新聞社「ふっ素樹脂ハンドブック」(1990年1
1月30日 初版1刷発行)713?728頁
甲第3号証:特開平6-350117号公報
甲第4号証:特開2000-332275号公報
甲第5号証:特開2001-44481号公報
甲第6号証:特開2002-83988号公報
甲第7号証:特開2002-368243号公報
甲第8号証:株式会社シーエムシー出版「水性コーティング材料の開発と
応用」(2004年8月31日第1刷発行)107?116

甲第9号証:特開2000-114565号公報
甲第10号証:(株)プラスチックス・エージ「実用プラスチック用語辞
典」(1989年9月10日 改訂第3版)406?40
7頁
甲第11号証:本件出願にかかる平成22年3月10日付け意見書

V.被請求人の反論
被請求人の実質的な反論は、「請求人の主張には理由がないので、本件特許補正発明5を無効とすることはできない。審判費用は請求人の負担とする審決を求める。」であると認められ、提出された証拠は以下のものである。
乙第1号証:「ルミフロンエマルション品種」、旭硝子株式会社、化学
品事業本部、1995年3月27日
乙第2号証:特開平11-278965号公報

VI.甲号証の記載事項
請求人の提出した甲第1ないし10号証には、以下の記載があり、甲第11号証については、本件出願にかかる平成22年3月10日付け意見書であって、本件特許訂正発明5の先行技術とは直接関係しないものであるので、摘記していない。
VI-1 甲第1号証
1-1 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現在、太陽電池を構成する材料、素材等においては、上記のような条件の総てを充足し得るものはなく、一長一短があり、太陽電池を構成する材料自体の安定性と共にそのような材料を使用して製造した太陽電池の構造自体の安定性等を十分に満足し得るものであるとは言い得ないものであるというのが実状である。・・・そこで本発明は、耐候性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐風圧性、耐降雹性、その他等の諸特性に優れ、極めて耐久性に富み、かつ、長期間の使用に対し極めて優れた信頼性を有する太陽電池モジュールを提供することである。」

1-2 「【0007】
【発明の実施の形態】・・・本発明にかかる太陽電池モジュールについて図面等を用いて説明すると、図1および図2は、本発明にかかる太陽電池モジュールの層構成についてその一二例を示す概略的断面図である。
【0008】本発明において、本発明にかかる太陽電池モジュールについてその一例を例示すると、本発明にかかる太陽電池モジュールTは、図1に示すように、まず、表面保護層1、少なくとも、透明性、クッション性を有し、かつ、耐熱性を有し、熱の作用に対する非劣化ないし非分解性に優れた樹脂層からなる充填剤層2、光起電力素子としての太陽電池素子3、充填剤層4、および、裏面保護層5を順次に積層し、更に、例えば、上記の表面保護層1の上に、少なくとも、防汚層6、紫外線遮蔽層7、または、耐候性層8の1層あるいはそれ以上を積層し、次いで、それらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として構成することを基本構造とするものである。・・・本発明においては、図示しないが、本発明にかかる太陽電池モジュールにおいて、防汚層、紫外線遮蔽層、または、耐候性層等は、個々別々に、あるいは、その一層ないし2層以上を同時に、表面保護層、充填剤層、太陽電池素子、充填剤層、裏面保護層のいずれの層間あるいは層上に任意に設けることができるものである。例えば゛(ママ)本発明においては、図示しないが、防汚層、耐候性層等を表面保護層の上に設け、紫外線遮蔽層を表面保護層と充填剤層との層間に設けることができるものである。而して、本発明においては、防汚層を最表面に位置して設けることが望ましいものである。・・・
【0009】次に、本発明において、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する材料、製造法等について更に詳しく説明すると、まず、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する表面保護層について詳しく説明すると、かかる表面保護層としては、太陽光の透過性を有し、更に、絶縁性を有し、かつ、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とうい(ママ)ことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護層としては、具体的には、例えば、公知のガラス板等は勿論のこと、更に、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。・・・」

1-3 「【0012】・・・本発明においては、上記のフッ素系樹脂シートの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)、または、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂シートが、透明性を有し、太陽光の透過性等の観点から好ましいものである。
【0013】・・・本発明においては、上記の透明な環状ポリオレフィン系樹脂シートの中でも、特に・・・透明な環状ポリオレフィン系樹脂シートが、耐候性、耐水性等に優れ、更に、透明性を有し、太陽光の透過性等の観点から好ましいものである。・・・
【0014】・・・本発明において、各種の樹脂のフィルムないしシートとしては、可視光透過率が、90%以上、好ましくは、95%以上であって、入射する太陽光を全て透過し、これを吸収する性質を有することが望ましいものである。」

1-4 「【0017】また、本発明において、各種の樹脂のフィルムないしシ-トの表面は、後述する無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができるものである。本発明において、上記の表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロ-放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施し、例えば、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層、その他等を形成して設けることができる。上記の表面前処理は、各種の樹脂のフィルムないしシ-トと後述する無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を改善するための方法として実施するものであるが、上記の密接着性を改善する方法として、その他、例えば、各種の樹脂のフィルムないしシ-トの表面に、予め、プライマ-コ-ト剤層、アンダ-コ-ト剤層、アンカ-コ-ト剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカ-コ-ト剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記の前処理のコ-ト剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。」

1-5 「【0030】次に、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する、少なくとも、透明性、クッション性を有し、かつ、耐熱性を有し、熱の作用に対する非劣化ないし非分解性に優れた樹脂層からなる充填剤層について更に詳しく説明すると、かかる充填剤層としては、まず、太陽電池モジュールを構成する表面保護層の下に積層されるものであることから、太陽光が入射し、これを透過する透明性を有することが望ましいものである。・・・
【0031】本発明において、具体的には、上記の充填剤層としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、または、シリコ-ン系樹脂の1種ないし2種以上の樹脂層からなる充填剤層を使用することができる。而して、上記のような樹脂は、いずれも、透明性を有し、かつ、熱可塑性を有し、更に、熱の作用により溶融して熱接着性を示し、更に、耐スクラッチ性、衝撃吸収性(クッション性)等に優れているものである。更に、上記のような樹脂は、熱に対し不活性であり、耐熱性を有し、熱の作用により劣化ないし分解等を起こさないものであり、例えば、太陽電池モジュ-ルを製造する際の真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等における加熱作用、あるいは、太陽電池モジュ-ル等の長期間の使用における太陽光等の熱の作用等により、変質したり、あるいは、それが劣化ないし分解し、分解ガス等を発生するということはないものである。本発明においては、上記のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、または、シリコ-ン系樹脂が有する上記のような特性を利用し、これを充填剤層を構成する素材として使用するものである。なお、本発明においては、上記の充填剤層を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができるものである。本発明において、充填剤層としては、特に、エチレン-α・オレフィン共重合体からなる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の紫外線吸収剤含有ポリエチレン系樹脂、または、紫外線吸収剤含有ポリプロピレン系樹脂からなる充填剤層を使用することが好ましいものである。なお、上記の充填剤層の厚さとしては、200?1000μm位、好ましくは、350?600μm位が望ましい。」

1-6 「【0033】次に、本発明において、太陽電池モジュ-ルを構成する光起電力素子の下に積層する充填剤層について説明すると、かかる充填剤層としては、上記の太陽電池モジュ-ル用表面保護層の下に積層する充填剤層と同様に、裏面保護層との接着性を有することも必要であり、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、また、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とういことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。更には、上記の充填剤層としては、耐熱性を有し、例えば、太陽電池モジュ-ルを製造する際の真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等における加熱作用、あるいは、太陽電池モジュ-ル等の長期間の使用における太陽光等の熱の作用等により、充填剤層を構成する樹脂等が変質したり、あるいは、それが劣化ないし分解し、それに含まれる充填剤等が溶出したり、あるいは、劣化ないし分解物を生成し、それらが太陽電池素子の起電力面(素子面)に作用し、その機能、性能等を劣化させることがないものを使用することが望ましいものである。しかし、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する光起電力素子の下に積層する充填剤層としては、上記の太陽電池モジュ-ル用表面保護層の下に積層する充填剤層と異なり、必ずも、透明性を有することを必要としないものである。
【0034】本発明において、具体的には、上記の充填剤層としては、例えば、フッ素系樹脂、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸、または、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマ-ル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラ-ル樹脂、シリコ-ン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、本発明においては、上記の充填剤層を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができるものである。なお、上記の充填剤層の厚さとしては、200?1000μm位、より好ましくは、350?600μm位が望ましい。」

1-7 「【0035】而して、本発明において、太陽電池モジュールを構成する光起電力素子としての太陽電池素子の下に積層する充填剤層としては・・・光起電力素子としての太陽電池素子の下に使用することから、必ずしも、透明性を有することを要するものではないものである。
【0036】次に、本発明において、太陽電池モジュールを構成する裏面保護層について説明すると、かかる裏面保護層としては、絶縁性の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、金属板ないし箔等を使用することができ、更に、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とうい(ママ)ことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護層としては、具体的には、例えば、公知のガラス板等は勿論のこと、更に、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。・・・。
【0037】更に、本発明においては、上記の裏面保護層としては、前述の表面保護層として詳述した、基材フィルムの上に、無機酸化物の蒸着膜を設けた蒸着フィルムを同様に裏面保護層として使用することができる。而して、本発明において、裏面保護層としての蒸着フィルムは、前述の表面保護層としての蒸着フィルムと同様にして製造することができる。
【0038】次に、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する防汚層について説明すると、かかる防汚層は、光触媒粉末を含む組成物による塗布膜から構成することができ、該防汚層は、表面の保護層として最表面に設けるものである。すなわち、本発明においては、太陽電池モジュールを構成する、例えば、表面保護層等の最表面の面に、ゴミ、埃等の蓄積を防止する防汚層を形成するものである。・・・光触媒粉末を含む組成物による塗布膜としては、まず、例えば、光触媒粉末の1種ないし2種以上に、ビヒクルとしての結合剤の1種ないし2種以上を添加し、更に、必要ならば、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、強化剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を太陽光の透過に影響しない範囲内で任意に添加し・・・組成物を調整する。次いで・・・上記で調整した組成物を・・・塗布ないし印刷し、次いで、乾燥して塗布膜を形成することにより、本発明にかかる防汚層を構成することができる・・・。・・・また、本発明においては、防汚層としては、後述のフッ素系樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物による塗布膜からなる耐候性層を防汚層として使用することもできるものである。」

1-8 「【0041】ところで、本発明においては、上記の防汚層を構成する塗布膜中の光触媒粉末の光活性が、該防汚層の下層に位置する、例えば、表面保護層、あるいは、充填剤層等に影響を与え、その劣化、分解、あるいは、破壊等を起こさないように、その相互の接触を遮断する無機質膜等からなる光触媒粉末の活性を遮断する活性遮断層を設けることができる。上記の活性遮断層は、通常、防汚層の下層に設けるものである。上記の活性遮断層を構成する無機質膜としては、例えば、前述の透明性を有する酸化珪素、あるいは、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着薄膜等を使用することができる。上記の無機酸化物の蒸着膜の形成は、前述と同様にして蒸着法等を用いて製膜化して、活性遮断層を形成することができ、その膜厚としては、100?3000Å位、より好ましくは、100?1500Å位が望ましい。また、本発明において、活性遮断層としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、その他等の金属アルコキシド化合物および/またはその加水分解物をビヒクルの主成分とするゾルゲル組成物による硬化塗布膜等を使用することができる。なお、本発明においては、上記の防汚層の密接着性を強固にするために、該防汚層を構成する光触媒粉末を含む組成物による塗布膜を設けるに際し、必要ならば、表面保護層等の上に、接着用プライマ-層等を設けることができる。上記のプライマ-層を構成する材料としては、例えば、防汚層中の光触媒粉末の光活性等によって分解されない無機系のプライマ-層を構成する材料を使用して形成することが望ましいものである。具体的には、有機チタン化合物として代表的なテトライソプロピルチタネ-ト、テトラブチルチタネ-ト、テトラステアリルチタネ-ト等のアルキルチタネ-トやチタンキレ-ト等の加水分解による生成物等を使用することができ、その他、無機ポリシラザン(ペルヒドポリシラザラン)等も使用することができる。本発明においては、特に、加水分解速度が極めて早く、溶液を塗工後に分解できるテトライソプロピルチタネ-ト、テトラブチルチタネ-トが好ましい材料である。
【0042】次に、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する紫外線遮蔽層について説明すると、かかる紫外線遮蔽層は、例えば、紫外線吸収剤を含む組成物による塗布膜から構成することができる。而して、上記の紫外線遮蔽層としては、例えば、紫外線吸収剤の1種ないし2種以上に、ビヒクルとしての結合剤の1種ないし2種以上を添加し、更に、必要ならば、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、強化剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を太陽光の透過に影響しない範囲内で任意に添加し・・・塗布ないし印刷することにより塗布膜を形成して紫外線遮蔽層を設けることができる。・・・
【0043】上記において、紫外線吸収剤としては・・・超微粒子酸化チタン(粒径、0.01?0.06μm)・・・等の無機系等の紫外線吸収剤の1種ないし2種以上を使用することができる。・・・
【0044】次に、本発明において、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する耐候性層について更に詳しく説明すると、本発明にかかる太陽電池モジュールを構成する耐候性層としては・・・強靱な樹脂の1種ないし2種以上をビヒクルの主成分とする樹脂組成物による塗布膜により構成することができる。・・・まず、強靱な樹脂の1種ないし2種以上をビヒクルの主成分とし、これに、必要ならば、例
えば、塗布膜の加工性、耐熱性、耐光性、耐水性、耐候性、機械的ないし化学的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、その他等を改良、改質する目的で種々のプラスチックの添加剤、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、強化剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防ガビ剤(ママ)、着色剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を太陽光の透過に影響しない範囲内で任意に添加し・・・塗布ないし印刷し、乾燥して塗布膜を形成することができる。・・・
【0045】・・・本発明においては・・・特に、諸堅牢性に優れた特性を有するフッ素系樹脂の1種あいし(ママ)2種以上を使用することが望ましいものである。本発明において、上記のフッ素系樹脂としては、例えば・・・商品名、ルミフロン(登録商標)からなる透明フッ素樹脂(・・・旭硝子株式会社製)等からなるフッ素系樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。」

1-9 「【0054】実施例2
(1).厚さ200μmのポリジシクロペンタジエン系樹脂からなる環状ポリオレフィン系樹脂シートを使用し、その一方の面に、0.03μmの酸化チタン超微粒子5重量部とエチレン-ビニルアルコール共重合体液(固形分20%溶液)95重量部とからなる紫外線吸収剤組成物をグラビアロールコート法を用いてコーティングし、膜厚0.5g/m^(2)(乾燥状態)の紫外線遮蔽層を形成した。更に、上記で形成した紫外線遮蔽層の上にに(ママ)、フッ素樹脂塗布液(商品名、ルミフロン、旭硝子株式会社製)を使用し、グラビアロールコート法を用いて、コーティングし、膜厚10g/m^(2)(乾燥状態)の塗布膜からなる耐候性層を形成した。更に、上記で形成した耐候性層の上に、チタンプロポオキサンドからなる無機系プライマー組成物を使用し、これをグラビアロールコート法を用いて塗布し、膜厚0.3g/m^(2)(乾燥状態)のプライマー層を形成した。次に、上記で形成したプライマー層の面に、粒径0.03μmの酸化チタン超微粒子10重量部とテトラエトキシシラン液90重量部(固形分20%)とからなる光触媒塗工液をグラビアロールコート法を用いて塗布し、膜厚1g/m^(2)(乾燥状態)の防汚層を形成した。次に、上記で紫外線遮蔽層、耐候性層、および、防汚層を形成した厚さ200μmのポリジシクロペンタジエン系樹脂からなる環状ポリオレフィン系樹脂シートを使用し、これを巻き取り式真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これをコーティングドラムの上に繰り出して、下記の条件で、アルミニウムを蒸着源に用い、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による反応真空蒸着法により、上記の環状ポリオレフィン系樹脂シートの他方の面に、膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。・・・
(2).次に、上記の(1)で製造した酸化アルミニウムの蒸着膜のプラズマ処理面に、ポリウレタン系樹脂の初期縮合物に、エポキシ系のシランカップリング剤(8.0重量%)とブロッキング防止剤(1.0重量%)を添加し、十分に混練してなるプライマー樹脂組成物を使用し、これをグラビアロールコート法により、膜厚0.5g/m^(2)(乾燥状態)になるようにコーティングしてプライマー層を形成した。更に、上記で形成したプライマー層の面に、2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤を使用し、これを、上記と同様に、グラビアロールコート法により、膜厚0.1g/m^(2)(乾燥状態)になるようにコーティングしてアンカーコート剤層を形成した。他方、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)に、紫外線吸収剤としての超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01?0.06μm、3重量%)を添加し、その他、所要の添加剤を添加し、十分に混練して線状低密度ポリエチレン樹脂脂(ママ)組成物を調製した。次に、上記で形成したアンカーコート剤層面に、上記で形成した線状低密度ポリエチレン樹脂組成物を使用し、これを押出機を用いて溶融押し出しして、厚さ400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層を押し出しラミネート積層して、防汚層/耐候性層/紫外線遮蔽層/膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シート・膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜/プライマー層/アンカーコート剤層/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層からなる積層体を製造した。
(3).次に、上記で製造した積層体を、表面保護層/充填剤層からなる積層体と、裏面保護層/充填剤層からなる積層体との両方に使用し、防汚層/耐候性層/紫外線遮蔽層/膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シート・膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜/プライマー層/アンカーコート剤層/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層からなる積層体(表面保護層/充填剤層からなる積層体)、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ50μmのポリアラミドフィルム、および、膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層/防汚層(充填剤層/裏面保護層からなる積層体)を、その太陽電池素子面を上に向けて、順次に積層し、更に、層間にアクリル系樹脂からなる接着剤層を介して積層して、次いで、真空吸引しながら加熱圧着するラミネーション法を用いて一体化成形して、本発明にかかる太陽電池モジュールを製造した。」

VI-2 甲第2号証
2-1 「塗料用樹脂には以下の適正が求められる。
・・・
しかるに、従来のふっ素系ポリマーが溶剤に不溶あるいは難溶であるとか、塗膜の形成に高温を要するとか、コーティング剤として用いるには施工性に劣る点があり、汎用的に使用されることがなかった。しかしながら、昭和57年に旭硝子が溶剤に融け、しかも広い温度範囲で硬化できるふっ素樹脂ルミフロン(以下FEVEと略す)を開発したことから、ふっ素系ポリマーを超耐候性コーティング材などとして汎用的に使用することが可能となった。」(713頁下から8行?714頁6行)

2-2 「3.1.1 FEVEの基本構造
FEVE樹脂は、フルオロエチレン(FE)と炭化水素系ビニルエーテル(VE)とのラジカル重合によって得られる共重合体である。」(715頁9行?11行)

2-3 「塗料用樹脂には、先にも述べたように有機溶剤への溶解性、配合する顔料との親和性、硬化剤を相分離しない樹脂の相溶性、硬化剤との反応性ならびに塗膜の透明性、硬度、可撓性など様々な特性が要求される。・・・特にOH基を有するVEを共重合することにより、多官能性イソシアネートやメラミン樹脂との反応により、容易に架橋が起こる樹脂構造とすることが可能であり、これによって有機溶剤に可溶な樹脂でありながらも、塗装した後には直ちに耐溶解性を持つFEVE樹脂系塗膜を形成しうるのである。(716頁下から3行?717頁6行)

2-4 「つぎに図IV.3.4にFEVE樹脂の硬化特性を示した。FEVE樹脂はポリマーの側鎖にOH基を有しているので、例えばヘキサメチレンジイソアネートの付加体や、縮合体のごときポリイソシアネート類あるいはメラミン樹脂を硬化剤として耐溶剤性、対(当審注:「耐」の誤記と認める。)汚染性を有する強靱な塗膜を形成する。」(719頁5行?10行)

VI-3 甲第3号証
3-1 「【0019】
【実施態様例】図1に本発明の太陽電池モジュールの概略構成図を示す。図1の太陽電池モジュールは、絶縁体層101、太陽電池103、充填材102および104、硬質フィルム層105、最表面の三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体106によって構成される。外部からの光は、最表面106から入射し、硬質フィルム105および充填材104を通り、太陽電池103に到達し起電力が生ずる。
【0020】(裏面絶縁フィルム)裏面絶縁フィルム101は導電性の基板を持つ光起電力素子の場合、より絶縁を完全とするものである。裏面絶縁フィルムとしては、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等が挙げられる。
【0021】(裏面充填剤)裏面に用いられる充填材は、接着力と、耐候性、凹凸の充填能力が求められるが不透明であっても良い。具体的な材料としては、フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0022】これらの樹脂には耐熱性を高めるために、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定性のためには紫外線吸収剤や光酸化防止剤を添加することも可能である。」

3-2 「【0054】三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)100部、ブロックイソシアネート(日本ポリウレタン工業製コロネート2513)18部、無機化合物紫外線吸収剤(多木化学製ニードラールW-100)1.5部、シリカ微粉末(デグサ製商品名アエロジル#300)30部及びキシレン80部を混合撹拌し塗料化を行った。硬質フィルムとしてポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製商品名ユーピロン、100μm両面コロナ処理済み)を用い、上記塗料をカーテンコーター法で塗装した。塗膜の厚さは、およそ40μmとした。その後、120度30分間硬化を行う。」

3-3 「【符号の説明】
101,304 絶縁体層
・・・
106,408,508,608,708,808,908 三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体
・・・
1207 クレーンガラス」

3-4 「 【図1】




VI-4 甲第4号証
4-1 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する保護シ-ト層としては、例えば、表面保護シ-ト層の場合は、現在、ガラス板等が、最も一般的に使用され、その他、近年、フッ素系樹脂シ-ト等の樹脂シ-トも注目され、その開発が、急速に進められている。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-ト層の場合は、現在、強度に優れた樹脂シ-ト等が、最も一般的に使用され、その他、金属板等も使用されている。而して、一般に、太陽電池モジュ-ルを構成する保護シ-ト層としては、例えば、表面保護シ-ト層の場合は、太陽電池が、太陽光を吸収して光起電力することから、太陽光を透過する透過性に富むと共に強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性等の諸堅牢性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、更に、表面硬度が高く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高いこと、その他等の条件を充足することが必要とされ、また、裏面保護シ-ト層の場合も、ほぼ、上記の表面保護シ-ト層の場合と同様な条件を充足することが必要とされている。しかしながら、例えば、太陽電池モジュ-ルを構成する表面保護シ-ト層として、現在、最も一般的に使用されているガラス板等は、太陽光の透過性に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性等の諸堅牢性に優れ、また、防湿性にも優れ、更に、表面硬度が硬く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、その保護能力性が高い等の利点を有するが、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性等に欠け、更に、その加工性、施工性等に劣り、かつ、低コスト化等に欠けるという問題点がある。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する表面保護シ-ト層として、フッ素系樹脂等の樹脂シ-トを使用する場合には、ガラス板等と比較して、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性等に富むものではあるが、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性等の諸堅牢性に劣り、特に、防湿性、防汚性等に欠けるという問題点がある。更に、上記のフッ素系樹脂等の樹脂シ-トを使用する場合には、使用後廃棄処理する際に、環境汚染あるいは環境破壊を発生させるというおそれがあり、また、上記のフッ素系樹脂等の樹脂シ-トは、価格的に高価になるという問題点もある。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-ト層として、強度に優れた樹脂シ-ト等を使用する場合には、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性、低コスト化等に富むものではあるが、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性等の諸堅牢性に劣り、特に、防湿性、防汚性等に欠けるという問題点がある。そこで本発明は、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性を著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、極めて耐久性に富み、保護能力が高く、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュ-ルを構成する表面または裏面保護シ-トを安定的に提供することである。」

4-2 「【0030】次に、本発明において、太陽電池モジュ-ルを構成する通常の太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トについて説明すると、かかる表面保護シ-トとしては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、更に、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とういことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護シ-トとしては、具体的には、例えば、公知のガラス板等は勿論のこと、更に、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシ-トとしては、例えば、2軸延伸した樹脂のフィルムないしシ-トも使用することができる。また、上記の樹脂のフィルムないしシ-トにおいて、その膜厚としては、12?200μm位、より好ましくは、25?150μm位が望ましい。」

4-3 「【0044】実施例7
(1).上記の実施例1で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トの一方のポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。
(2).なお、上記において、上記の基材としての厚さ100μmのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの代わりに、厚さ100μmのポリシクロペンタジエン樹脂シ-トを使用し、上記と全く同様にして、同様な本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。更に、上記において、酸化アルミニウムの蒸着薄膜を形成したポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの2層を、その酸化アルミニウムの蒸着薄膜面とポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面とを対向させて重層し、上記と同様にして、上記と同様に本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。
【0045】実施例8
(1).上記の実施例2で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。
(2).なお、上記において、上記の基材としての厚さ100μmのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの代わりに、厚さ100μmのポリシクロペンタジエン樹脂シ-トを使用し、上記と全く同様にして、同様な本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。更に、上記において、酸化珪素の蒸着薄膜を形成したポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの2層を、その酸化珪素の蒸着薄膜面とポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面とを対向させて重層し、上記と同様にして、上記と同様に本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。

4-4 「【0046】実施例9
(1).上記の実施例3で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。
(2).なお、上記において、上記の基材としての紫外線吸収剤を練り込み加工した厚さ100μmのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トを代えて、紫外線吸収剤を練り込み加工した厚さ100μmのポリシクロペンタジエン樹脂シ-トを使用し、上記と全く同様にして、同様な本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。また、上記において、酸化珪素の蒸着薄膜と酸化アルミニウムの蒸着薄膜とを形成したポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの2層を、その酸化アルミニウムの蒸着薄膜面とポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面とを対向させて重層し、上記と同様にして、上記と同様に本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。
【0047】実施例10
上記の実施例4で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。また、上記において、ポリジシクロペンタジエン樹脂の代わりに、ポリシクロペンタジエン樹脂を使用し、上記と全く同様にして、同様な本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。更に、上記において、酸化アルミニウムの蒸着薄膜を形成したポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの2層を、その酸化アルミニウムの蒸着薄膜面とポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面とを対向させて重層し、上記と同様にして、上記と同様に本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。
【0048】実施例11
上記の実施例5で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。また、上記において、ポリジシクロペンタジエン樹脂の代わりに、ポリシクロペンタジエン樹脂を使用し、上記と全く同様にして、同様な本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。更に、上記において、酸化珪素の蒸着薄膜を形成したポリジシクロペンタジエン樹脂シ-トの2層を、その酸化珪素の蒸着薄膜面とポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面とを対向させて重層しても、上記と同様にして、上記と同様に本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用保護シ-ト、および、太陽電池モジュ-ルを製造することができた。」

VI-5 甲第5号証
5-1 「【0002】
【従来の技術】近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリ-ンなエネルギ-源としての太陽電池が注目され、現在、種々の形態からなる太陽電池モジュ-ルが開発され、提案されている。一般に、上記の太陽電池モジュ-ルは、例えば、結晶シリコン太陽電池素子あるいはアモルファスシリコン太陽電池素子等を製造し、そのような太陽電池素子を使用し、表面保護シ-ト層、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、裏面保護シ-ト層等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等を利用して製造されている。而して、上記の太陽電池モジュ-ルは、当初、電卓への適用を始めとし、その後、各種の電子機器等に応用され、民生用の利用として、その応用範囲は急速に広まりつつあり、更に、今後、最も重要な課題として、大規模集中型太陽電池発電の実現であるとされている。ところで、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する保護シ-ト層としては、例えば、表面保護シ-ト層の場合は、現在、ガラス板等が、最も一般的に使用され、その他、近年、フッ素系樹脂シ-ト等の強度に優れた樹脂シ-ト等も注目され、その開発が、急速に進められている。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-ト層の場合は、現在、フッ素系樹脂シ-ト等の強度に優れた樹脂シ-ト等が、最も一般的に使用され、その他、金属板等も使用されている。而して、一般に、太陽電池モジュ-ルを構成する保護シ-ト層としては、例えば、表面保護シ-ト層の場合は、太陽電池が、太陽光を吸収して光起電力することから、太陽光を透過する透過性に富むと共に強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、耐突き刺し性等の諸堅牢性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、更に、表面硬度が高く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高いこと、その他等の条件を充足することが必要とされ、また、裏面保護シ-ト層の場合も、ほぼ、上記の表面保護シ-ト層の場合と同様な条件を充足することが必要とされている。」

5-2 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例えば、太陽電池モジュ-ルを構成する表面保護シ-ト層として、現在、最も一般的に使用されているガラス板等は、太陽光の透過性に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、耐突き刺し性等の諸堅牢性に優れ、また、防湿性等にも優れ、更に、表面硬度が硬く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、その保護能力性が高い等の利点を有するが、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性等に欠け、更に、その加工性、施工性等に劣り、かつ、低コスト化等に欠けるという問題点がある。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する表面保護シ-ト層として、フッ素系樹脂等の強度に優れた樹脂シ-トを使用する場合には、ガラス板等と比較して、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性等に富むものではあるが、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、耐突き刺し性等の諸堅牢性に劣り、特に、防湿性、防汚性等に欠けるという問題点がある。また、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-ト層として、強度に優れた樹脂シ-ト等を使用する場合には、強度、可塑性、耐衝撃性、軽量性、低コスト化等に富むものではあるが、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、耐突き刺し性等の諸堅牢性に劣り、特に、防湿性、防汚性等に欠けるという問題点がある。而して、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する表面または裏面保護シ-ト層として、強靱な樹脂シ-ト等を使用する場合の問題点を改良すべく更に種々検討され、例えば、フッ素系樹脂またはポリメチルメタクリレ-トよりなるフィルムに、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性環状オレフィン共重合体よりなるフィルムを積層した積層体からなる太陽電池モジュ-ルを構成する表面または裏面保護シ-トが提案されている(特開平8-306947号公報、特開平8-306948号公報等参照。)。しかしながら、上記の太陽電池モジュ-ル用表面または裏面保護シ-トにおいては、フッ素系樹脂またはポリメチルメタクリレ-トよりなるフィルムと非晶性環状オレフィン共重合体よりなるフィルムとを積層した積層体を製造する際に、その密接着性に欠け、しばしば層間において剥離現象を起こし、更に、ガラス転移温度が低いため、特に、太陽電池モジュ-ル用表面または裏面保護シ-トとしての耐熱性に劣り、また、その表面硬度が不足し、耐突き刺し性等に劣るという問題点があり、その防湿性等の改良効果は、多少、認められるものの、相変わらず、太陽電池モジュ-ルが、その使用中に劣化することは否めないものであり、充分に満足し得るものであるとは言えないものである。そこで本発明は、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、耐突き刺し性、その他等の諸特性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性を著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、極めて耐久性に富み、保護能力性に優れ、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュ-ルを構成する表面または裏面保護シ-トを安定的に提供することである。」

5-3 「【0029】次に、本発明において、太陽電池モジュ-ルを構成する通常の太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トについて説明すると、かかる表面保護シ-トとしては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、更に、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、その他等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とういことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の表面保護シ-トとしては、具体的には、例えば、公知のガラス板等は勿論のこと、更に、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシ-トとしては、例えば、2軸延伸した樹脂のフィルムないしシ-トも使用することができる。また、上記の樹脂のフィルムないしシ-トにおいて、その膜厚としては、12?200μm位、より好ましくは、25?150μm位が望ましい。」

5-4 「【0033】次に、本発明において、太陽電池モジュ-ルを構成する通常の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト層について説明すると、かかる裏面保護シ-トとしては、絶縁性の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができ、更に、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、更に、光起電力素子としての太陽電池素子の保護とういことから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。上記の裏面保護シ-トとしては、具体的には、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシ-トとしては、例えば、2軸延伸した樹脂のフィルムないしシ-トも使用することができる。また、上記の樹脂のフィルムないしシ-トにおいて、その膜厚としては、12?200μm位、より好ましくは、25?150μm位が望ましい。」

5-5 「【0041】実施例4
(1).上記の実施例1で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面を対向させ、かつ、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。
【0042】実施例5
(1).上記の実施例2で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂シ-ト面を対向させ、かつ、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。
【0043】実施例6
(1).上記の実施例3で製造した太陽電池モジュ-ル用保護シ-トを太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トと太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トとして使用し、その太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂層面に、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、そのポリジシクロペンタジエン樹脂層面を対向させ、かつ、その太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。」

VI-6 甲第6号証
6-1 「【請求項1】 基材フィルムの一方の面に、金属または金属酸化物の蒸着膜を設けたバリア性裏面保護シ-トの金属または金属酸化物の蒸着膜側の面に、耐候性樹脂層を設け、更に、上記の耐候性樹脂層の面に、不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体を含む硬化性樹脂組成物による耐候性最外層を設けたことを特徴とする太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト。
【請求項2】 基材フィルムが、フッ素系樹脂フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、または、ポリエステル系樹脂フィルムからなることを特徴とする上記の請求項1に記載する太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト。【請求項3】 金属の蒸着膜が、アルミニウムの蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1?2に記載する太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト。
【請求項4】 金属酸化物の蒸着膜が、酸化アルミニウムの蒸着膜、または、酸化珪素の蒸着膜からなることを特徴とする上記の請求項1?2に記載する太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト。」

6-2 「【0002】
【従来の技術】近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリ-ンなエネルギ-源としての太陽電池が注目され、現在、種々の形態からなる太陽電池モジュ-ルが開発され、提案されている。一般に、上記の太陽電池モジュ-ルは、例えば、結晶シリコン太陽電池素子あるいはアモルファスシリコン太陽電池素子等を製造し、そのような太陽電池素子を使用し、表面保護シ-ト、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、裏面保護シ-ト等の順に積層し、次いで、それらを真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等を利用して製造されている。而して、上記の太陽電池モジュ-ルは、当初、電卓への適用を始めとし、その後、各種の電子機器等に応用され、民生用の利用として、その応用範囲は急速に広まりつつあり、更に、今後、最も重要な課題として、大規模集中型太陽電池発電の実現であるとされている。ところで、上記の太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-トとしては、現在、強度に優れたプラスチック基材等が、最も一般的に使用され、その他、金属板等も使用されている。而して、一般に、太陽電池モジュ-ルを構成する裏面保護シ-トとしては、例えば、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、光反射性、光拡散性、意匠性等の諸堅牢性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、更に、表面硬度が高く、かつ、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高いこと、その他等の条件を充足することが必要とされいる。」

6-3 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、先に提案した太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トおよびそれを使用した太陽電池モジュ-ルについて、更に種々検討した結果、まず、基材フィルムの一方の面に、アルミニウム、酸化珪素、あるいは、酸化アルミニウム等からなる水蒸気バリア性、酸素バリア性等に優れた金属または金属酸化物の蒸着膜を設けてバリア性裏面保護シ-トを製造し、次に、上記で製造したバリア性裏面保護シ-トの金属または金属酸化物の蒸着膜側の面に、耐候性樹脂層を設け、更に、上記の耐候性樹脂層の面に、不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体を含む硬化性樹脂組成物による耐候性最外層を設けて太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを製造し、而して、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを使用し、例えば、ガラス板等からなる通常の太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-ト、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その耐候性最外層と逆の側の面を対向させて順次に積層し、次いで、それらを一体的に真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等を利用して一体化成形して太陽電池モジュ-ルを製造したところ、先と同様に、強度に優れ、更に、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防汚性、その他等の諸特性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、また、光反射性、光拡散性、意匠性等についても著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、極めて耐久性に富み、保護能力性に優れ、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュ-ルを製造し得ることができると共に、特に、具体的には、耐候性最外層を設けることにより、水分、酸素等の浸入を防止する防湿性を著しく向上させ、水分、酸素等が侵入し、それらが基材フィルムまたは耐候性樹脂層等に影響し、それらによる基材フィルムまたは耐候性樹脂層の加水分解等の発生を防止し、その防湿性を著しく向上させることができる安全な太陽電池モジュ-ルを製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
【0006】すなわち、本発明は、基材フィルムの一方の面に、金属または金属酸化物の蒸着膜を設けたバリア性裏面保護シ-トの金属または金属酸化物の蒸着膜側の面に、耐候性樹脂層を設け、更に、上記の耐候性樹脂層の面に、不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体を含む硬化性樹脂組成物による耐候性最外層を設けたことを特徴とする太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トおよびそれを使用した太陽電池モジュ-ルに関するものである。」

6-4 「【0013】具体的には、上記の各種の樹脂のフィルムないしシ-トとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、ポリエチレンテレフタレ-トまたはポリエチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリ-ルフタレ-ト系樹脂、シリコ-ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ-テルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。本発明においては、上記の樹脂のフィルムないしシ-トの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のフィルムないしシ-トを使用することが好ましいものである。」

6-5 「【0035】次に、本発明において、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト、太陽電池モジュ-ル等を構成する耐候性樹脂層について説明すると、かかる耐候性樹脂層としては、太陽電池モジュ-ルの裏面層を構成し、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性、光反射性、光拡散性、意匠性、その他等の諸特性に優れ、その長期間の使用に対し性能劣化等を最小限に抑え、極めて耐久性に富み、その保護能力性に優れ、かつ、より低コストで安全な樹脂層であることが望ましいものである。特に、本発明において、耐候性樹脂層としては、表面保護シ-トから透過し、更に、太陽電池素子を透過して裏面側に当たった太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用するために光反射性、光拡散性等を有し、更に、意匠性等に優れている樹脂層であることが望ましいものである。
【0036】而して、本発明において、上記の本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト、太陽電池モジュ-ル等を構成する耐候性樹脂層としては、まず、強度等に優れた樹脂の1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、硬化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、染料・顔料等の着色剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、要すれば、溶剤、希釈剤等を添加し、十分に混練して樹脂組成物を調製する。而して、本発明においては、上記で調製した樹脂組成物を使用し、例えば、押出機、Tダイ押出機、キャスト成形機、インフレ-ション成形機、その他等を使用し、押出法、Tダイ押出法、キャスト成形法、インフレ-ション法、その他等のフィルムないしシ-トの成形法により、樹脂のフィルムないしシ-トを製造し、更に、要すれば、例えば、テンタ-方式、あるいは、チュ-ブラ-方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸して、強度に優れ、所謂、腰を有する樹脂のフィルムないしシ-トを製造する。次いで、本発明においては、上記で製造した樹脂のフィルムないしシ-トを使用し、これを、前述のバリア性裏面保護シ-トの金属または金属酸化物の蒸着膜側の面に、例えば、ラミネ-ト用接着剤層等を介して、ドライラミネ-ト積層法等を用いて積層することにより、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト、太陽電池モジュ-ル等を構成する耐候性樹脂層を設けることができるものである。」

6-6 「【0044】而して、本発明において、耐候性最外層としては、(a)不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体の1種ないし2種以上をビヒクルの主成分とし、これに、(b)1分子中に少なくとも2個のケイ素-水素結合を有するオルガノハイドロジエンポリシロキサンの1種ないし2種以上を添加し、更に、(c)白金触媒を添加し、その他、要すれば、例えば、光反射性あるいは光拡散性、更には、意匠性等を付与する染料・顔料等の着色剤の1種ないし2種以上を添加し、更にまた、必要ならば、可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤ならば、可塑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤、硬化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、溶剤、希釈剤等を用いて、十分に混練して、不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体を含む硬化性樹脂組成物を調製する。次に、本発明においては、上記で調製した硬化性樹脂組成物を使用し、これを、前述のバリア性裏面保護シ-トを構成する基材フィルムまたは耐候性樹脂層のいずれかの面に、望ましくは、耐候性樹脂層の面に、例えば、ロ-ルコ-ト、グラビアロ-ルコ-ト、キスコ-ト、その他等のコ-ティング法でコ-ティングし、上記の硬化性樹脂組成物によるコ-ティング膜を形成して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト、太陽電池モジュ-ル等を構成する耐候性最外層を設けることができるものである。なお、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-ト、太陽電池モジュ-ル等を構成する耐候性最外層の厚さとしては、1?50μm位、より好ましくは、2?10μm位が望ましいものである。
【0045】上記において、不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体としては、具体的には、ビニル基含有脂環式アクリル酸誘導体と、該ビニル基含有脂環式アクリル酸誘導体以外の反応性二重結合を有するモノマ-とをラジカル共重合させて製造することができる。而して、上記の不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体、および、それを含む硬化性樹脂組成物等としては、特開平11-240920号公報に記載されている不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体、および、それを含む硬化性樹脂組成物等を使用することができるものである。また、上記において、着色剤としては、太陽電池モジュ-ルにおいて透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用するために光反射性、光拡散性等を付与し、更に、意匠性等を付与することを目的とし添加するものであり、例えば、白色、黒色、青色、赤色、その他等の各種の無機系ないし有機系の染料、顔料等の着色剤の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。而して、本発明においては、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、その他等の白色顔料、あるいは、カ-ボンブラック、その他等の黒色顔料の1種ないし2種以上を使用することが特に好ましいものである。その使用量としては、樹脂に対し、0.1重量%?30重量%位、好ましくは、0.5重量%?10重量%位添加して使用することが望ましいものである。」

6-7 「【0060】
【実施例】以下に本発明について実施例を挙げて更に具体的に本発明を説明する。
実施例1
(1).太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トの製造
(イ).テトラフロロエチレンとエチレンとのコポリマ-(ETFE)からなる厚さ50μmのフッ素系樹脂シ-トを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロ-ルに装着し、次いで、上記のフッ素系樹脂シ-トのコロナ処理面に、下記の条件で厚さ800Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
反応ガス混合比:ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:10:10(単位:slm)
真空チャンバ-内の真空度:5.0×10^(-6)mbar
蒸着チャンバ-内の真空度:6.0×10^(-2)mbar
冷却・電極ドラム供給電力:20kW
フィルムの搬送速度:80m/分
次に、上記で膜厚800Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロ-放電プラズマ発生装置を使用し、プラズマ出力、1500W、酸素ガス(O_(2)):アルゴンガス(Ar)=19:1からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10^(-5)Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスによるプラズマ処理を行ってプラズマ処理面を形成して、バリア性裏面保護シ-トを製造した。
(ロ).次に、上記で製造したバリア性裏面保護シ-トの酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理の面に、ポリウレタン系樹脂の初期縮合物に、エポキシ系のシランカップリング剤(8.0重量%)とブロッキング防止剤(1.0重量%)を添加し、十分に混練してなるプライマ-樹脂組成物を使用し、これをグラビアロ-ルコ-ト法により、膜厚0.5g/m^(2)(乾燥状態)になるようにコ-ティングしてプライマ-層を形成した。更に、上記で形成したプライマ-層の面に、紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2.0重量%)を含有する2液硬化型のウレタン系ラミネ-ト用接着剤を使用し、これを、上記と同様に、グラビアロ-ルコ-ト法により、膜厚5.0g/m^(2)(乾燥状態)になるようにコ-ティングしてラミネ-ト用接着剤層を形成した。
(ハ).他方、熱可塑性ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂に、紫外線吸収剤としての超微粒子酸化チタン(粒子径、0.01?0.06μm、3重量%)を添加し、その他、所要の添加剤を添加し、十分に混練してポリエステル系樹脂組成物を調製した。次に、上記で調製したポリエステル系樹脂組成物を使用し、これらをTダイ押出機を使用して溶融押出成形して、厚さ50μmのポリエステル系樹脂フィルムを製造し、次いで、そのポリエステル系樹脂フィルムの一方の面に、常法に従って、コロナ放電処理を施してコロナ処理面を形成した。次に、上記の(ロ)で形成したラミネ-ト用接着剤層面に、同じく、上記の(ハ)で形成したポリエステル系樹脂フィルムのコロナ処理面を対向させ、その両者をドライラミネ-ト積層して、耐候性樹脂層を形成した。
(ニ).更に、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド(ダイセル化学工業株式会社製「セロキサイド2000」、分子量124)180重量部とアクリル酸100重量部とからビニル基含有脂環式アクリル酸誘導体を製造した。次に、上記のビニル基含有脂環式アクリル酸誘導体20重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル15重量部、メチルメタクリレ-ト55重量部およびスチレン10重量部を共重合させて不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体を製造した。更に、上記の不飽和基含有アクリレ-ト系共重合体80重量部とオルガノハイドロジエンポリシロキサン15重量部と白金触媒微量と白色化剤としての酸化チタン5重量部を含む硬化性樹脂組成物を調製し、これを、前述の(ハ)で形成した耐候性樹脂層の他方のコロナ処理面上に、グラビアロ-ルコ-ト法でコ-ティングして、膜厚7μm(乾燥状態)からなる耐候性最外層を形成して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを製造した。
(2).太陽電池モジュ-ルの製造
次に、上記で製造した太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを使用し、厚さ3mmのガラス板、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム、厚さ400μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-ト、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トのフッ素系樹脂シ-ト(コロナ処理面)の面を、充填剤層としてのエチレン-酢酸ビニル共重合体シ-トの面に対向させ、更に、上記の太陽電池素子面を上に向けて、かつ、各層間をアクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、本発明にかかる太陽電池モジュ-ルを製造した。」

VI-7 甲第7号証
7-1 「【請求項9】 表面側保護部材と裏面側保護部材との間に太陽電池用セルが透明接着剤層により封止されてなる太陽電池において、表面側保護部材及び裏面側保護部材が、有機ポリマーフィルムと、該フィルム層の透明接着剤層に面しない側の表面に設けられた硬化性樹脂の硬化被膜からなるハードコート層とからなることを特徴とする太陽電池。」

7-2 「【0009】従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、耐擦傷性が良好で容易に製造することができる、薄厚軽量の太陽電池を提供することをその目的とする。」

7-3 「【0022】また、図2の太陽電池20においては、受光面側の表面側透明保護部材として有機ポリマーフィルム層21を使用し、さらに裏面側保護部材(バックカバー材)にも有機ポリマーフィルム層22しており、この両フィルム層の間にエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等からなる透明接着剤層23A,23Bの封止膜により、太陽電池用セル、即ち、シリコン等の発電素子24が封止されており、さらに有機ポリマーフィルム層21及び22の外側表面に、それぞれハードコート層25及び26が形成されている。」

7-4 「【0027】或いは、有機ポリマーフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に、シリカ又はアルミナ等の無機酸化物をコーティングした透明高防湿フィルム、或いは、この透明フィルム2枚をコーティング面同士を貼り合わせてなる積層フィルムを使用することも好ましい。上記各フィルムの厚さは、12?500μm程度であることが好ましい。」

7-5 「【0041】本発明の有機ポリマーフィルムの表面に設けられるハードコート層は、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂の硬化被膜からなる層であり、特に紫外線硬化性樹脂を用いることにより極めて容易に、耐擦傷性に優れたハードコート層をフィルム上に設けることができる。
【0042】熱硬化性樹脂としては、熱硬化型シリコーン組成物(有機ポリシロキサンを形成する例えばメチルトリメトキシシラン)が好ましく、シラノール基の脱水縮合に3次元架橋がなされ、高硬度の被膜が得られる。一般に、80?220℃にて、10分?1時間加熱することにより硬化させることができる。
【0043】また硬化性樹脂として、エチレン性二重結合(好ましくはアクリロイル基又はメタクリロイル基)を有する樹脂又はオリゴマーを使用することができ、これは一般に光硬化することによりハードコート層とすることができる。
【0044】本発明のハードコート層を形成するための光硬化性樹脂は、一般に紫外線硬化性樹脂であり、この紫外線硬化性樹脂は公知の紫外線硬化性樹脂(重合性オリゴマー、多官能性モノマー、単官能性モノマー、光重合開始剤、添加剤等を含む)を使用することができる。この紫外線硬化性樹脂は、一般に上記エチレン性二重結合を有する樹脂又はオリゴマーを主成分とする。」

7-6 「【0055】本発明には、また必要に応じて各種添加剤を添加することができるが、これらの添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を挙げることができる。
【0056】本発明の有機ポリマーフィルム層のハードコート層は、前記成分を主成分とするものであるが、上記オリゴマー又はモノマーの変性したもの、あるいは他の機能性樹脂、添加剤をさらに使用すること等により、種々の機能に優れたハードコート層を得ることができる。例えば、耐擦傷性がさらに向上した高耐擦傷性ハードコート層、防曇性が付与された防曇性ハードコート層、導電性を有する導電性ハードコート層、帯電防止性が付与された帯電防止性ハードコート層、光沢がより向上した高光沢ハードコート層、耐溶剤性が特に優れた耐溶剤性ハードコート層及び湿気を殆ど透過しない低透湿性ハードコート層を挙げることができる。そして用途により、これらの層を少なくとも二層組み合わせて、ハードコート層を構成することができる。勿論、1層で使用しても良い。或いは本発明の特定のシリカ微粒子含有のハードコート層と上記のハードコート層を組み合わせることもできる。」

VI-8 甲第8号証
8-1 「2 水系架橋系の種類
塗料、コーティング剤、粘接着剤で検討されている主な架橋系について表1に示す。
表に示すような架橋は、高分子化合物を通常共有結合により分子間に結合を生じさせ、3次元ポリマーもしくは網目ポリマーを形成し、水や溶剤に対して不溶、不融化することにより熱可塑性樹脂では得られない物性が得られる。物性としては、耐水性や耐溶剤や耐薬品性が向上することにともない、耐熱性、耐久性、耐候性や、接着、密着性や機械強度などの向上があげられる。・・・
表1 各種水系架橋システム」(107頁下から8行?108頁表1)

VI-9 甲第9号証
9-1 「【0027】図1は、本発明の太陽電池モジュールの概略の構成を示す模式部分断面図である。図1において、太陽電池モジュール100は、前面、即ち、光が入射する側から、フロントカバーフィルム1、充填材層2、太陽電池素子3、充填材層2′、バックカバーフィルム4が順に積層された構成である。このような太陽電池モジュール100は、最下段にバックカバーフィルム4を配置し、その上に充填材層2′、太陽電池素子3、充填材層2、フロントカバーフィルム1を順に重ねて配置し、例えば、真空ラミネート法などで排気、加熱、加圧することにより、容易に製造することができる。
【0028】フロントカバーフィルム1は、光透過性に優れると同時に、耐候性、水蒸気その他のガスバリヤー性などに優れることが好ましく、例えば、フッ素樹脂フィルム、またはその他の耐候性フィルムに、光透過性と水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた無機酸化物の蒸着層などを設けた積層フィルムを好適に使用することができる。
【0029】充填材層2、2′は、アモルファスシリコンや結晶性シリコンなどからなる太陽電池素子3を埋め込んで安定化させるために用いるものであり、熱流動性および熱接着性に優れた各種の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を使用することができる。具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α-オレフィン共重合体、ポリビニルブチラールなどの熱可塑性樹脂に、架橋剤、紫外線吸収剤、カップリング剤などを適宜混合した樹脂組成物を製膜して使用することができる。このような充填材層2、2′は、それぞれ単独のシートとして使用してもよいが、予め、フロントカバーフィルム1やバックカバーフィルム4の内面(積層面)に積層して使用することもできる。
【0030】次に、図2は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第1の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図2において、バックカバーフィルム20は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、光反射性を有する基材フィルム5、接着層11、無機酸化物の蒸着層9、耐候性樹脂フィルム8が順に積層された構成である。
【0031】上記の構成において、最背面層の耐候性樹脂フィルム8としては,ポリビニルフルオライドフィルム(以下、PVFフィルム)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂フィルム(以下、ETFE樹脂フィルム)などのフッ素樹脂フィルム、または高耐候性2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、高耐候性PETフィルム)などを好適に使用することができる。耐候性樹脂フィルム8の上に積層する無機酸化物の蒸着層9としては、水蒸気その他のガスバリヤー性に優れると同時に、非導電性であることが好ましく、Al_(2)O_(3)などのアルミニウム酸化物、またはSiO_(X)で表される珪素酸化物が特に適している。
【0032】また、光反射性を有する基材フィルム5としては、例えば、二酸化チタンなどの白色顔料を練り込んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)や、微細な気泡を含有するPETフィルムなどを使用することができる。只、このような光反射性を有する基材フィルム5も、耐候性に優れていることが更に好ましく、この点から、前記のように光反射性を付与したフッ素樹脂フィルムや高耐候性PETフィルムなどの耐候性フィルムを用いることもできる。
【0033】そして、接着層11は、前記光反射性を有する基材フィルム5と、無機酸化物の蒸着層9を蒸着した耐候性樹脂フィルム8とを貼り合わせるために用いるものであり、両者をドライラミネーション法で貼り合わせる場合は、例えば、2液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用でき、また、押し出しラミネーション法で貼り合わせる場合には、熱接着性樹脂を適宜選択して使用することができる。尚、前記光反射性を有する基材フィルム5や、耐候性樹脂フィルム8の各積層面には、必要に応じてコロナ放電処理などの易接着性処理を施すことができる。
【0034】図3は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第2の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図3において、バックカバーフィルム30は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、接着層11′、光反射性を有する基材フィルム5、接着層11、保護層10、無機酸化物の蒸着層9、耐候性樹脂フィルム8が順に積層された構成である。この構成は、前記図2に示したバックカバーフィルム20の構成に対して、光反射性を有する基材フィルム5の充填材層に積層する側の面に接着層11′を追加して設け、また、無機酸化物の蒸着層9の上、即ち、無機酸化物の蒸着層9と接着層11との間に、保護層10を追加して設けた構成である。
【0035】上記接着層11′は、バックカバーフィルム30を用いて太陽電池モジュールを作製する際、太陽電池素子が埋設されている充填材層とバックカバーフィルム30との接着性を向上させるために設けるものであり、光反射性を有する基材フィルム5の上に、例えば、EVA共重合体樹脂組成物などの塗布液をグラビアコート法または各種ロールコート法などで塗布、乾燥することにより容易に設けることができる。
【0036】また、保護層10は、耐候性樹脂フィルム8の上に無機酸化物の蒸着層9を設けた後、その上に無機有機のハイブリッド材料、または高分子化合物からなる塗布液をグラビアコート法または各種ロールコート法などで塗布、乾燥することにより設けることができる。上記以外の各層、および積層方法は、前記図2に示したバックカバーフィルム20と同様であるため説明を省略する。
【0037】図4は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第3の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図4において、バックカバーフィルム40は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、接着層11′、光反射性を有する基材フィルム5、接着層11、保護層10、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12、耐候性塗膜層13が順に積層された構成である。
【0038】この構成は、前記図3に示したバックカバーフィルム30の構成において、最背面層に用いた耐候性樹脂フィルム8を、一方の面に耐候性塗膜層13を設けた樹脂フィルム12に代え、樹脂フィルム12のもう一方の面には、前記図3の耐候性樹脂フィルム8の場合と同様に、無機酸化物の蒸着層9と保護層10とを積層し、その耐候性塗膜層13が最背面層となるように接着層11を介して積層して構成したものである。上記耐候性塗膜層13は、例えば、PETフィルムなどの樹脂フィルム12の上にフッ素樹脂などの塗布液をグラビアコート法または各種のロールコート法などで塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0039】図5は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第4の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図5において、バックカバーフィルム50は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、接着層11′、光反射性を有する塗膜層6、基材フィルム7、接着層11、保護層10、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12、耐候性塗膜層13が順に積層された構成である。
【0040】この構成は、前記図4に示したバックカバーフィルム40の構成において、光反射性を有する基材フィルム5に代えて、基材フィルム7の上に光反射性を有する塗膜層6を設けた積層フィルムを積層して構成したものである。上記基材フィルム7には、PETフィルムなどを使用できるが、PVFフィルムやETFE樹脂フィルムなどのフッ素樹脂フィルムや、高耐候性PETフィルムなどを用いることもできる。そして、これらの基材フィルム7の上に、白色顔料、微細な中空粒子、微細な気泡のうち、少なくとも一種を含む樹脂塗膜層をコーティング手段で形成することにより、光反射性を有する塗膜層6を設けることができる。尚、上記光反射性を有する塗膜層6は、基材フィルム7の前面側または背面側のいずれの側に設けてもよく、また、塗膜層6の樹脂成分は特に限定はされないが、後工程での積層適性から、例えばEVA共重合体系樹脂などが適している。また、このような光反射性を有する塗膜層6は、基材フィルム7を用いずに、例えば保護層10の上にコーティングして設けることもできる。
【0041】図6は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第5の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図6において、バックカバーフィルム60は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、接着層11′、光反射性を有する耐候性樹脂フィルム14、接着層11、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12、接着層11、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12が順に積層された構成である。
【0042】この構成は、太陽電池素子を埋設した充填材層2′に近接する位置に、光反射性を有する耐候性樹脂フィルム14を積層して、光反射性と耐候性とを付与し、その背面側に、無機酸化物の蒸着層9が積層された樹脂フィルム12を接着層11を介して二枚重ねて積層して、水蒸気その他のガスバリヤー性および強度を付与したものである。上記の光反射性を有する耐候性樹脂フィルム14には、白色顔料または微細な気泡などを含有させたフッ素樹脂フィルムまたは高耐候性PETフィルムなどを使用することができる。また、樹脂フィルム12には、PETフィルムなどを使用できるが、一層耐候性を高めるためには前記フッ素樹脂フィルムや、高耐候性PETフィルムなどを使用することもできる。
【0043】図7は、本発明の太陽電池モジュールに用いるバックカバーフィルムの第6の実施例の構成を示す模式部分断面図である。図7において、バックカバーフィルム70は、前記図1に示した太陽電池モジュール100の充填材層2′に積層される側から、接着層11′、耐候性樹脂フィルム8、光反射性を有する塗膜層6、接着層11、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12、接着層11、無機酸化物の蒸着層9、樹脂フィルム12が順に積層された構成である。
【0044】この構成は、前記図6に示したバックカバーフィルム60の構成において、前面側に用いた光反射性を有する耐候性樹脂フィルム14に代えて、光反射性を有する塗膜層6を一方の面に積層した耐候性樹脂フィルム8を積層して構成したものである。この場合も図では、光反射性を有する塗膜層6が耐候性樹脂フィルム8の背面側になるように積層されているが、光反射性を有する塗膜層6が耐候性樹脂フィルム8の前面側になるように積層してもよく、むしろ光反射性を高めるためにはその方が好ましい。」

9-2 「
【図1】



【図2】



【図3】



【図4】



【図5】



【図6】



【図7】




VI-10 甲第10号証
10-1 「着色剤 colorant
成形品や塗膜に所望の色彩を与えるために用いる染料や顔料の総称。・・・しかし、耐熱性、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性は逆に無機顔料>有機顔料>染料の順に優れている。」(406頁右欄下から2行?407頁左欄8行)

VII.甲号証記載の発明
VII-1 甲第9号証記載の発明
甲第9号証には、太陽電池モジュールについて、光が入射する側のフロントカバーフィルム1/エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2/太陽電池素子3/エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2′/バックカバーフィルム4が順に積層された太陽電池モジュールであって、バックカバーフィルム4において、基材フィルム5として、二酸化チタンなどの白色顔料を練り込んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)や、微細な気泡を含有するPETフィルムなどを使用すること(上記「9-1」の【0032】)、塗膜層6として、白色顔料、微細な中空粒子、微細な気泡のうち、少なくとも一種を含む樹脂塗膜層をコーティング手段で形成することで光反射性が付与されたものを使用すること(同【0040】)、基材フィルム7として、ポリビニルフルオライドフィルム(以下、PVFフィルム)やエチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂フィルム(以下、ETFE樹脂フィルム)などのフッ素樹脂フィルムを使用すること(同【0040】)、耐候性樹脂フィルム8として、PVFフィルム、ETFE樹脂フィルムなどのフッ素樹脂フィルム、または高耐候性2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、高耐候性PETフィルム)などのフッ素樹脂フィルムを使用すること(同【0031】)、蒸着層9として、水蒸気その他のガスバリヤー性に優れると同時に、非導電性であることが好ましく、Al_(2)O_(3)などのアルミニウム酸化物、またはSiO_(X)で表される珪素酸化物を蒸着した無機酸化物を使用すること(同【0031】【0033】)、保護層10として、無機有機のハイブリッド材料、または高分子化合物からなる塗布液をグラビアコート法または各種ロールコート法などで塗布、乾燥することにより設けたものを使用すること(同【0036】)、樹脂フィルム12として、PETフィルム、フッ素樹脂フィルム、高耐候性PETフィルムなどを使用すること(同【0042】)、耐候性塗膜層13として、フッ素樹脂などの塗布液をグラビアコート法または各種のロールコート法などで塗布、乾燥することにより形成したものを用いること(同【0038】)、 耐候性樹脂フィルム14として、白色顔料または微細な気泡などを含有させたフッ素樹脂フィルムまたは高耐候性PETフィルムなどを使用すること(同【0042】)、バックカバーフィルム20は、充填剤層2’側に積層される側から、基材フィルム5/保護層10/蒸着層9/耐候性樹脂フィルム8が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0030】ないし【0033】及び上記「9-2」の【図2】)、バックカバーフィルム30は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/基材フィルム5/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/耐候性樹脂フィルム8が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0034】ないし【0036】及び上記「9-2」の【図3】)、バックカバーフィルム40は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/基材フィルム5/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/樹脂フィルム12/耐候性塗膜層13が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0037】【0038】及び上記「9-2」の【図4】)、バックカバーフィルム50は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/塗膜層6/基材フィルム7/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/樹脂フィルム12/耐候性塗膜層13が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0039】【0040】及び上記「9-2」の【図5】)、バックカバーフィルム60は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/耐候性樹脂フィルム14/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0041】【0042】及び上記「9-2」の【図6】)、バックカバーフィルム70は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/耐候性樹脂フィルム8/塗膜層6/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12が順に積層されたものであること(上記「9-1」の【0043】【0044】及び上記「9-2」の【図7】)の記載がある。
なお、甲第9号証の【図1】の太陽電池モジュール100は、バックカバーフィルム4を1層で(概念的に)示すものであって、バックカバーフィルム4の構成を具体的に記載するものではない。

上記記載からして、甲第9号証には、
「光が入射する側のフロントカバーフィルム1/エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2/太陽電池素子3/エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2′/バックカバーフィルム4が順に積層された太陽電池モジュールであって、バックカバーフィルム4において、基材フィルム5は、二酸化チタンなどの白色顔料を練り込んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)や、微細な気泡を含有するPETフィルムなどであり、塗膜層6は、白色顔料、微細な中空粒子、微細な気泡のうち、少なくとも一種を含む樹脂塗膜層をコーティング手段で形成することで光反射性が付与されたものであり、基材フィルム7は、PVFフィルムやETFE樹脂フィルムなどのフッ素樹脂フィルムであり、耐候性樹脂フィルム8は、PVFフィルム、ETFE樹脂フィルムなどのフッ素樹脂フィルム、または高耐候性PETフィルムなどのフッ素樹脂フィルムであり、蒸着層9は、水蒸気その他のガスバリヤー性に優れると同時に、非導電性であることが好ましく、Al_(2)O_(3)などのアルミニウム酸化物、またはSiO_(X)で表される珪素酸化物を蒸着した無機酸化物であり、保護層10は、無機有機のハイブリッド材料、または高分子化合物からなる塗布液をグラビアコート法または各種ロールコート法などで塗布、乾燥することにより設けたものであり、樹脂フィルム12は、PETフィルム、フッ素樹脂フィルム、高耐候性PETフィルムなどであり、耐候性塗膜層13は、フッ素樹脂などの塗布液をグラビアコート法または各種のロールコート法などで塗布、乾燥することにより形成したものであり、 耐候性樹脂フィルム14は、白色顔料または微細な気泡などを含有させたフッ素樹脂フィルムまたは高耐候性PETフィルムなどであり、バックカバーフィルム20は、充填剤層2’側に積層される側から、基材フィルム5/保護層10/蒸着層9/耐候性樹脂フィルム8が順に積層されたものであり、バックカバーフィルム30は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/基材フィルム5/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/耐候性樹脂フィルム8が順に積層されたものであり、バックカバーフィルム40は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/基材フィルム5/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/樹脂フィルム12/耐候性塗膜層13が順に積層されたものであり、バックカバーフィルム50は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/塗膜層6/基材フィルム7/接着剤層11/保護層10/蒸着層9/樹脂フィルム12/耐候性塗膜層13が順に積層されたものであり、バックカバーフィルム60は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/耐候性樹脂フィルム14/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12が順に積層されたものであり、バックカバーフィルム70は、充填剤層2’側に積層される側から、接着層11’/耐候性樹脂フィルム8/塗膜層6/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12/接着剤層11/蒸着層9/樹脂フィルム12が順に積層されたものである、太陽電池モジュール。」(以下、「甲9発明」という。)が記載されているものと認める。

VII-2 甲第1号証記載の発明
上記「1-9」【0054】の実施例2からして、甲第1号証には、「防汚層/プライマー層/耐候性層/紫外線遮蔽層/膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シート・膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜からなる積層体/プライマー層/アンカーコート剤層/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ50μmのポリアラミドフィルム/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層(商品名がルミフロンであるフッ素樹脂塗布液の塗布膜)/プライマー層/防汚層を、その太陽電池素子面を上に向けて、順次に積層し、更に、層間にアクリル系樹脂からなる接着剤層を介して積層して、次いで、真空吸引しながら加熱圧着するラミネーション法を用いて一体化成形した、太陽電池モジュール。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

VII-3 甲第3号証記載の発明
上記「3-1」ないし「3-3」からして、甲第3号証には、「ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等からなる絶縁体層101/フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材102/太陽電池103/フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材104/硬質フィルム層105/最表面の三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)106によって構成された、太陽電池モジュール。」(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。(当審注:当該号証における「/]は、層と層の境界を示すものとして、当審において付与した。)

XIII.対比・判断
XIII-1 無効理由1について
甲9発明の「フロントカバーフィルム1」、「水蒸気その他のガスバリヤー性に優れると同時に、非導電性であることが好ましく、Al_(2)O_(3)などのアルミニウム酸化物、またはSiO_(X)で表される珪素酸化物を蒸着した蒸着層9」、「太陽電池素子3」及び「バックカバーフィルム4」は、本件特許訂正発明5の「表面層」、「水不透過性シート」、「太陽電池セル」及び「バックシート」それぞれに相当する。
また、甲9発明の「エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2」は、本件特許訂正発明5の「封止剤層」及び「エチレン/酢酸ビニル共重合体の層」に相当し、同じく、甲9発明の「エチレン-酢酸ビニル共重合体からなる充填材層2’」も、本件特許訂正発明5の「封止剤層」及び「エチレン/酢酸ビニル共重合体の層」に相当する。
そして、甲9発明の「光が入射する側から・・・順に積層されたものである、太陽電池モジュール」と、本件特許訂正発明5の「太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって・・・外観にも異常が認められない太陽電池モジュール」とは、「太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって、太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシートから構成されており、バックシートは、水不透過性シートを備え、封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層である、太陽電池モジュール」という点で共通する。
したがって、本件特許訂正発明5と甲9発明とは、「太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって、太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシートから構成されており、バックシートは、水不透過性シートを備え、前記封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層である、太陽電池モジュール。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件特許訂正発明5では、『「バックシートは、」「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、」「硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散して」いる』(以下、単に「発明特定事項A」という。)のに対して、甲9発明では、上記の規定がない点。

<相違点2>
本件特許訂正発明5では、『「バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、」「封止剤層とバックシートとは直接接着しており、封止剤層及びバックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」』(以下、単に「発明特定事項B」という。)のに対して、甲9発明には、上記の規定がない点。

以下、両相違点について検討する。
<相違点1>について
ア 甲9発明の「バックカバーフィルム4」(「バックカバーフィルム20」ないし「バックカバーフィルム70」)が、発明特定事項Aを想定するものであるかについて
当該検討にあたり、甲9発明の「バックカバーフィルム20」ないし「バックカバーフィルム70」(上記「9-2」の【図2】ないし【図7】)が、発明特定事項Aに包含される「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され」るとの事項を想定するものであるかについて検討する。
ここで、上記「VII-2 甲第9号証記載の発明」で示したように、甲9発明の「バックカバーフィルム20」及び「バックカバーフィルム30」は、「無機酸化物の蒸着層9(水不透過性シート)」の「封止剤層2’(封止剤層)」側ではない側の面に「耐候性樹脂フィルム8」が直接接着されたものであり、甲9発明の「バックカバーフィルム40」ないし「バックカバーフィルム70」は、同面に「樹脂フィルム12」が直接接着されたものであり、甲9発明の「耐候性樹脂フィルム8」は、「PVFフィルム、ETFE樹脂フィルムなどのフッ素樹脂フィルム、または高耐候性PETフィルムなどのフッ素樹脂フィルム」であり、甲9発明の「樹脂フィルム12」は、「PETフィルム、フッ素樹脂フィルム、高耐候性PETフィルムなど」である。
しかしながら、甲第9号証の「耐候性樹脂フィルム8の上に積層する無機酸化物の蒸着層9」(上記「9-1」の【0031】)、同「無機酸化物の蒸着層9を蒸着した耐候性樹脂フィルム8」(同【0033】)、同「無機酸化物の蒸着層9が積層された樹脂フィルム12」(同【0042】)、同「厚さ25μmのETFE樹脂フィルムに、ガスバリヤー層として酸化アルミニウムをPVD法で厚さ300Åに蒸着した積層フィルム」(同【0053】)、同「厚さ12μmのPETフィルムを使用し、その一方の面に、アルミニウムを蒸着源に用いてEB加熱方式による真空蒸着法により、膜厚300ÅのAl_(2)O_(3)の蒸着膜を形成し」(同【0055】)、同「厚さ25μmのETFE樹脂フィルムに、ガスバリヤー層として酸化アルミニウムをPVD法で厚さ300Åに蒸着した積層フィルムとを用意し」(同【0057】)との記載、及び、【図2】ないし【図7】の図示内容からして、上記「耐候性樹脂フィルム8」及び「樹脂フィルム12」は、あくまでも、蒸着層9を蒸着させるフィルム(蒸着層9の支持基材)であって、硬化塗膜ではないとみるのが妥当である。
また、甲第9号証には、これらのフィルムに代えて、「硬化塗膜」を使用することの記載も示唆もなく、また、これが自明の事項であるともいえない。
そうすると、甲9発明の「バックカバーフィルム20」ないし「バックカバーフィルム70」は、「無機酸化物の蒸着層9(水不透過性シート)」と直接接着する、蒸着層9の支持基材としての「耐候性樹脂フィルム8」及び「樹脂フィルム12」を、「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」より形成して、「無機酸化物の蒸着層9(水不透過性シート)」の「封止剤層2’(封止剤層)」側ではない側の面に「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」に直接接着させるものではない。
なお、甲9発明の「バックカバーフィルム20」ないし「バックカバーフィルム70」の「無機酸化物の蒸着層9(水不透過性シート)」の「封止剤層2’(封止剤層)」側の面には、「接着剤層11」又は「保護層10」が設けられているが、甲第9号証には、これらの層を「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」で形成することの記載も示唆もない。
したがって、甲9発明の「バックカバーフィルム20」ないし「バックカバーフィルム70」には、「無機酸化物の蒸着層9(水不透過性シート)」の「封止剤層2’(封止剤層)」の両側の面に「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」を直接接着させること、つまり、「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され」るとの事項の想定はなく、そうである以上、この事項を包含する発明特定事項Aについての想定もないというべきである。

イ 発明特定事項Aが周知技術であるかについて
イ-1 上記「VII-1 甲第1号証記載の発明」で示したように、甲1発明は、「防汚層/プライマー層/耐候性層/紫外線遮蔽層/膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シート・膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜からなる積層体/プライマー層/アンカーコート剤層/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ50μmのポリアラミドフィルム/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層(商品名がルミフロンであるフッ素樹脂塗布液の塗布膜)/プライマー層/防汚層を、その太陽電池素子面を上に向けて、順次に積層し、更に、層間にアクリル系樹脂からなる接着剤層を介して積層して、次いで、真空吸引しながら加熱圧着するラミネーション法を用いて一体化成形した、太陽電池モジュール。」である。
ここで、甲1発明において、「アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ50μmのポリアラミドフィルム/膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層/アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層(商品名がルミフロンであるフッ素樹脂塗布液の塗布膜)/プライマー層/防汚層」における「膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層」が「封止剤層」であり、同「アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層(商品名がルミフロンであるフッ素樹脂塗布液の塗布膜)/プライマー層/防汚層」が「バックシート」であり、同「膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体」が「水不透過化性シート」であり、同「耐候性層(商品名がルミフロンのフッ素樹脂塗布液の塗布膜)」が「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」であるとし、また、甲第1号証には、「防汚層、紫外線遮蔽層、または、耐候性層等は、個々別々に、あるいは、その一層ないし2層以上を同時に、・・・いずれの層間あるいは層上に任意に設ける」(上記「1-2」の【0008】)との記載があることからして、甲1発明には、「バックシート」における「紫外線遮蔽層」を設けないようにすることで、「膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体」(水不透過性シート)の「膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層」(封止剤層)側ではない側の面に「耐候性層(商品名がルミフロンのフッ素樹脂塗布液の塗布膜)」(硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜)を設けることの想定はあるということができる。
しかしながら、甲第1号証には、「膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体」(水不透過性シート)の「膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層」(封止剤層)側の「プライマー層」及び「アンカーコート剤層」について、「プライマー層」を「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」に代えること、又は、「プライマー層」を設けないようにすると共に「アンカーコート剤層」を「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」に代えることの記載も示唆もないので、甲1発明には、「膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体」(水不透過性シート)の「膜厚400μmの線状低密度ポリエチレン樹脂層」(封止剤層)側に面に「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」を設けることの想定はないというべきである。
したがって、甲1発明の「アンカーコート剤層/プライマー層/膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体/紫外線遮蔽層/耐候性層(商品名がルミフロンであるフッ素樹脂塗布液の塗布膜)/プライマー層/防汚層」(バックシート)には、「膜厚800Åの酸化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シートからなる積層体(水不透過性シート)の両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され」るとの事項の想定はなく、そうである以上、この事項を包含する発明特定事項Aについての想定もないということができる。
よって、甲1発明は、発明特定事項Aを構成とするものではない。

イ-2 上記「VII-3 甲第3号証記載の発明」で示したように、甲3発明は、「ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等からなる絶縁体層101/フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材102/太陽電池103/フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材104/硬質フィルム層105/最表面の三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)106によって構成された、太陽電池モジュール。」である。
ここで、甲3発明において、「ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等からなる絶縁体層101」が「バックシート」であり、「フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材102」が「バックシート側の封止剤層」であり、「フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる充填材104」が「前面シート側の封止剤層」であり、「硬質フィルム層105/最表面の三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)106」が「前面シ-ト」であり、「三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)106」が「硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜」であるとしたとき、この「三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)106」は、あくまで、「最表面」に設けられたものであって、バックシートに含まれるものではなく、また、「ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等からなる絶縁体層101」が「水不透過性シート」に当たるかどうかは不明である。
さらに、甲第3号証には、「バックシート」において、「水不透過性シート」を形成すると共に、これの両側の面に「三フッ化塩化エチレン-ビニル共重合体(旭硝子製商品名ルミフロンLF710)」(硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜)を形成することの記載も示唆もない。
したがって、甲3発明の「バックシート」には、「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され」るとの事項の想定はなく、そうである以上、これを包含する発明特定事項Aについての想定もないということができる。
よって、甲3発明は、発明特定事項Aを構成とするものではない。

イ-3 上記「VI-2 甲第2号証」及び「VI-10 甲第10号証」で示した摘示内容からして、甲第2号証には、「硬化性官能基を備えたふっ素樹脂ルミフロンが開発されたことにより、耐候性及び硬さを持つ硬化塗膜が形成され、ふっ素樹脂を汎用的に使用できるようになった」ことの記載があり、甲第10号証には、成形品や塗膜に所望の色彩を与えるために用いる染料や顔料の耐熱性、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性は、無機顔料>有機顔料>染料の順に優れていることの記載があるものの、これらは、太陽電池モジュールのバックシートに関する事項ではない。
したがって、甲第2号証及び甲第10号証には、『「バックシートは、」「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、」「硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散して」いる』との発明特定事項Aを設けることの記載も示唆もない。

イ-4 上記「VI-4 甲第4号証」ないし「VI-8 甲第8号証」で示した摘示内容からして、甲第4、5号証には、太陽電池モジュールの保護シートに関し、耐候性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、防湿性等に優れ、表面硬度が高く耐スクラッチ性にも優れることが、表面保護シート(表面層)と裏面保護シート(バックシート)の双方に求められること、並びに、同一の保護シートを用いて表面と裏面の双方を保護することの記載があり、甲第6号証には、太陽電池モジュールの最外層5だけでなく、その内側の耐候性樹脂層4にも顔料を添加することの記載があり、甲第7号証には、太陽電池の裏面保護シート(バックシート)に硬化塗膜を形成することの記載があり、甲第8号証には、塗膜の耐候性、接着性、密着性等を向上させるために、塗膜を硬化させることの記載があるものの、甲第4号証ないし甲第8号証には、『「バックシートは、」「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、」「硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散して」いる』との発明特定事項Aを設けることの記載も示唆もない。

イ-6 平成27年10月16日付け弁駁書に添付された、本件出願前に頒布された公知文献の特開2001-111077号公報(【請求項1】【0007】【0030】等)には、太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、無機酸化物の蒸着膜2を設けた基材フィルム1の両面に太陽電池モジュールにおいて透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用するために光反射性、光拡散性等を付与することを目的として、白色顔料を含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フイルム3、3を積層することの記載がある。
ここで、公知文献の「裏面保護シート」が「バックシート」であり、「無機酸化物の蒸着膜2」が「水不透過性シート」であり、「無機酸化物の蒸着膜2(水不透過性シート)を設けた基材フィルム1の両面」に「白色顔料を含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フイルム3、3」を積層するとしても、公知文献には、『「バックシートは、」「水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、」「硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散して」いる』との発明特定事項Aを設けることの記載も示唆もない。

イ-7 上記「イ-1」ないし「イ-6」からして、発明特定事項Aが周知技術であるとはいえない。

ウ 上記「イ-2」で示したように、甲3発明は、発明特定事項Aを構成にするものではない。

エ 上記「ア」ないし「ウ」からして、相違点1に係る発明特定事項Aは、甲9発明及び周知技術、または、甲9発明及び甲3発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に構成し得るものであるとはいえない。

<相違点2>について
甲第1号証ないし甲第10号証には、発明特定事項Bに関する記載ないし示唆は見当たらないが、甲9発明がこれを想定するものであるか、あるいは、発明特定事項Bが、甲9発明及び周知技術、または、甲9発明及び甲3発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に構成し得るものであるかについて検討する。
本件訂正明細書には、実施例・比較例に関して以下の記載がある。
「【実施例】
【0078】
つぎに本発明を調製例および実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる調製例および実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
調製例1
硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)223.2質量部、黒色顔料(大日精化(株)製のダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて黒色塗料を調製した。
【0080】
この黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料1を調製した。
【0081】
調製例2
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)223.2質量部、白色顔料として酸化チタン(デュポン社製のタイピュアR960)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて白色塗料を調製した。
【0082】
この白色塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料2を調製した。
【0083】
調製例3
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)100質量部、酢酸ブチル100質量
部、UV吸収剤(BASF社製のユビナール3035)6質量部を攪拌下に混合してクリア塗料を調製した。
【0084】
このクリア塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料3を調製した。
【0085】
調製例4
PVdF系共重合体の黒エナメル塗料であるディックフローC(日本NFC(株)製)100質量部に、シリケート化合物(コルコート社製のメチルシリケート51)を30質量部配合して、非硬化性の比較塗料1を調製した。
【0086】
調製例5
ポリエステル系共重合体(住化バイエルウレタン(株)製のデスモフェン650MPA、固形分65質量%、水酸基価5.3mgKOH/g、溶剤:メトキシプロピルアセテート)223.2質量部、黒色顔料(ダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液にポリエステル系共重合体(デスモフェン650MPA)を269.2質量部加えて比較用黒色塗料を調製した。
【0087】
この比較用黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)13質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、非フッ素系で硬化性の比較塗料2を調製した。
【0088】
実施例1
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(三菱樹脂(株)製のバリアテックH、厚さ12μm。シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートA1を作製した。
【0089】
このバックシートA1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表1に示す。
【0090】
ついでこのバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート(三井化学ファブロ(株)製のソーラーエバ。厚さ400μm)を載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルA1(図1に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルA1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0091】
試験方法および測定方法はつぎのとおりである。
【0092】
(密着性)
JIS K6900で規定する碁盤目試験(幅1mmにクロスカット)による。
【0093】
評価基準
○:剥離なし。
×:剥離有り。
【0094】
(耐候性試験)
JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行う。
【0095】
評価は、EVAと塗膜またはシートの界面と外観を目視で観察して行う。
【0096】
界面状態の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0097】
外観の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0098】
(折り曲げ性)
バックシートを50mm×50mmにカットして試験片とする。試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察する。割れが観察できた場合は、試験片を2枚重ねて同様にして180度折り曲げる。これを繰返し、割れが観察できなかったときの試験片の枚数を記録する。枚数が少ない方が折り曲げ性がよい。
【0099】
(膜厚)
電磁式膜厚計で測定する。
【0100】
比較例1
実施例1において、塗料として調製例4で調製した比較塗料1(PVdF系の非硬化性塗料)を用いたほかは実施例1と同様にして2層構造のバックシートA2および3層構造のEVA接着サンプルA2を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】


【0102】
実施例2
実施例1と同様にして作製した2層構造のバックシートA1のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB1(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0103】
実施例3
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例2で調製した硬化性塗料2を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートB2を作製した。
【0104】
このバックシートB2について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表2に示す。
【0105】
ついでこのバックシートB2のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB2(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0106】
【表2】


【0107】
実施例4
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例1で調製した硬化性塗料1をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC1を作製した。
【0108】
このバックシートC1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0109】
ついでこのバックシートC1の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC1(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0110】
実施例5
実施例4において、シートAに代えてアルミニウム板(シートB。0.5mm)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC2を作製し、実施例4と同様にして密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0111】
ついでこのバックシートC2の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC2(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0112】
実施例6
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例2で調製した硬化性塗料2をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC3を作製した。
【0113】
このバックシートC3について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0114】
ついでこのバックシートC3の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC3(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC3について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0115】
実施例7
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、他方の面に調製例3で調製した硬化性塗料3を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC4を作製した。
【0116】
このバックシートC4について、密着性(硬化性塗料3の塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0117】
ついでこのバックシートC4の硬化性塗料3の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC4(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC4について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0118】
比較例2
実施例4において、塗料として調製例5で調製した硬化性の比較塗料2(非フッ素系の硬化性塗料)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC5(図7の態様)および4層構造のEVA接着サンプルC5を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0119】
比較例3
シートAの両面にポリエステル系接着剤を用いてポリビニルフルオライド(PVF)フィルム(三井デュポンケミカル(株)製のテドラー。黒色顔料入り。厚さ10μm)を貼り付け、3層構造のバックシートC6を作製した。
【0120】
このバックシートC6について、密着性(シートAとPVFフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0121】
ついでこのバックシートC6の一方のPVFフィルム側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC6(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC6について、密着性(EVAとPVFフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0122】
【表3】


【0123】
実施例8
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA側にポリエステル系接着剤を用いてポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製のルミラー。白色顔料入り。厚さ75μm)を貼り付け、3層構造のバックシートD1を作製した。
【0124】
このバックシートD1について、密着性(シートAとPETフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表4に示す。
【0125】
ついでこのバックシートD1の硬化性塗料1の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD1(図4に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0126】
実施例9
実施例8と同様にして作製した3層構造のバックシートD1のPETフィルム側上にEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD2(図5に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD2について、密着性(EVAとPETフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】


【0128】
実施例10
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図1の態様)を作製した。
【0129】
実施例11
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA面上にポリエステル系接着剤を介してEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図2の態様)を作製した。
【0130】
実施例12
実施例4で作製した3層構造のバックシートC1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図3の態様)を作製した。
【0131】
実施例13
実施例8で作製した3層構造のバックシートD1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図4の態様)を作製した。
【0132】
実施例14
実施例9で作製した3層構造のバックシートD2のPETフィルム面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図5の態様)を作製した。」

上記記載からして、実施例1ないし9及び比較例1ないし3における「バックシートの折り曲げ性試験の内容」及び「EVA積層体の耐候性試験(EVAとの界面)及び同耐候性試験(外観)の内容」は、【0098】及び【0094】ないし【0097】に記載されたものであり、また、同「封止剤層」は、「エチレン/酢酸ビニル共重合体の積層体」であり、さらに、実施例1ないし4、6ないし9及び比較例1ないし3の「水不透過層」は、Si蒸着PETフイルムであり(実施例5の「水不透過層」だけについては、「アルミニウム板」であり)、そして、実施例4ないし6は、発明特定事項Aを備えたものであるのに対して、実施例1ないし3、7ないし9及び比較例1ないし3については、発明特定事項Aを備えていないものである(下記の※参照)ことは明らかであり、これらを前提にして、以下、「バックシートの折り曲げ性試験の結果」及び「EVA積層体の耐候性試験(EVAとの界面)及び同耐候性試験(外観)の結果」(以下、これらを纏めて「試験の結果」という。)について、実施例4ないし6と、実施例1ないし3、7ないし9及び比較例1ないし3とを対比する。
※ 実施例1ないし3、8及び9は、水不透過性シートの片面のみに硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されたものであり、実施例7は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜(片面)に顔料が含まれていないものであり、比較例1ないし3は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されていないものである。
なお、実施例10ないし14には、「試験の結果」が示されていないので、上記対比の対象外とした。

「バックシートの折り曲げ性試験の結果(枚数が少ない方が折り曲がり性がよい)」及び「EVA積層体の耐候性試験(EVAとの界面)及び同耐候性試験(外観)の結果」について、
実施例4及び6では、「1枚」及び「○、○」であり、
水不透過層がアルミニウム板である(Si蒸着PETフイルムでない)実施例5でも、「1枚」及び「○、○」である。
一方、実施例1では、「1枚」及び「○、×」であり、
実施例2、3及び9では、「1枚」及び「×、○」であり、
実施例7では、「1枚」及び「○、○」であり、
実施例8では、「1枚」及び「○、×」であり、
比較例1では、「90度で割れ」及び「×、×」であり、
比較例2では、「90度で割れ」及び「×、×」であり、
比較例3では、「1枚」及び「△、△」である。
上記からして、発明特定事項Aを備えた実施例4ないし6の「試験の結果」の方が、発明特定事項Aを備えていない実施例1ないし3、7ないし9及び比較例1ないし3の「試験の結果」よりも、全体的に良好である。
そして、発明特定事項Bの「バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、」における「バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察」するという「バックシートの折り曲げ性試験の内容」と、実施例1ないし9及び比較例1ないし3における「バックシートの折り曲げ性試験の内容」(【0098】)とが同等であり、また、発明特定事項Bの「封止剤層とバックシートとは直接接着しており、封止剤層及びバックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」における「封止剤層とバックシートとは直接接着しており、封止剤層及びバックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行」うという「積層体(封止剤層がエチレン/酢酸ビニル共重合体の層である積層体)の促進耐候性試験の内容」と、実施例1ないし9及び比較例1ないし3における「EVA積層体の耐候性試験(EVAとの界面)及び同耐候性試験(外観)の内容」(【0094】ないし【0097】)とが同等であり、これを前提にして、発明特定事項Bにおける「割れを観察できない」及び「封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」こと(作用効果)と、実施例1ないし9及び比較例1ないし3における「試験の結果」とを見たとき、発明特定事項Bにおける「作用効果」と、実施例4ないし6における「試験の結果(良好な結果)」とが対応するということができ、また、上記で示したように、実施例1ないし9及び比較例1ないし3の「封止剤層」は、「エチレン/酢酸ビニル共重合体の積層体」であり、さらに、実施例1ないし4、6ないし9及び比較例1ないし3の「水不透過層」は、Si蒸着PETフイルムであり(実施例5の「水不透過層」だけについては、「アルミニウム板」であり)、そして、実施例4ないし6は、発明特定事項Aを備えたものであるのに対して、実施例1ないし3、7ないし9及び比較例1ないし3については、発明特定事項Aを備えていないものであることからして、発明特定事項Bにおける「作用効果」は、発明特定事項Aを備えることに基くものであるというべきである。
また、上記「<相違点1>について」で示したように、甲9発明は、発明特定事項Aを想定するものではない。
そうすると、甲9発明は、発明特定事項Bを想定するものではない。
さらに、同「<相違点1>について」で示したように、相違点1に係る発明特定事項Aは、甲9発明及び周知技術、または、甲9発明及び甲3発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に構成し得るものであるとはいえないので、相違点2に係る発明特定事項Bも、甲9発明及び周知技術、または、甲9発明及び甲3発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に構成し得るものであるとはいえない。

そして、本件特許訂正発明5の「割れを観察できない」及び「封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」という作用効果は、上記からして、当業者が容易に予測し得るものであるとはいえない。
よって、本件特許訂正発明5は、甲9発明及び周知技術、または、甲9発明及び甲3発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、特許を受けることができるものである。

VIII-2 無効理由2について
上記「VIII-1 無効理由1について」の「イ-1」で示したように、甲1発明は、発明特定事項Aを構成にするものではない。
したがって、本件特許訂正発明5は、甲1発明ではないので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものではなく、特許を受けることができるものである。

VIII-3 無効理由3について
上記「VIII-1 無効理由1について」の「イ-2」で示したように、甲3発明は、発明特定事項Aを構成にするものではない。
また、同「イ-7」で示したように、発明特定事項Aが周知技術であるとはいえない。
したがって、本件特許訂正発明5は、甲1発明及び周知技術、または、甲1発明及び甲3発明並びに周知技術、または、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、特許を受けることができるものである。

VIII-4 小括
上記「VIII-1」ないし「VIII-3」からして、本件特許訂正発明5は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものではなく、また、同法同条第2項の規定に違反するものでもないから、特許を受けることができるものであるので、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当するものであるとはいえない。

IX.請求人の主張
平成27年10月16日付け弁駁書において、請求人は、念のための付言として、「バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、」および「封止剤層とバックシートとは直接接着しており、封止剤層及びバックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない」との「構成が、仮に訂正発明5に記載された構成によっては達成できない、すなわち特定の具体的構成のバックシートを用いた実施例4?6のみによってしか達成できない作用効果なのであれば、出願時の技術常識に照らしても、実施例4?6を含む発明の詳細な説明において開示された内容を、訂正発明5の範囲(つまり、顔料が分散された硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜)まで拡張ないし一般化できるとはいえず、また、当業者が容易に発明を実施することもできない。したがって、訂正発明5には、サポート要件と実施可能要件についての明確な記載不備があると言わざるを得ない(特許法第36条第4項第1号、同第6項第1号)。」旨の主張をしているが、本件訂正明細書の【0079】【0080】には、硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)と黒色顔料を用いた硬化性塗料1を調整する具体的な調整例1の記載があり、同【0081】【0082】には、 硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)と白色顔料を用いた硬化性塗料2を調整する具体的な調整例2の記載があり、また、同【0107】ないし【0111】には、水不透過性シートの両側のそれぞれに硬化性塗料1を直接接着したバックシート(実施例4、5)の記載があり、同【0112】ないし【0114】には、水不透過性シートの両側のそれぞれに硬化性塗料2を直接接着したバックシート(実施例6)の記載があり、さらに、同【0122】【表3】には、実施例4ないし6の折り曲げ性及び耐候性の試験結果の記載があり、これらからして、実施例4ないし6は、本件特許訂正発明5そのものの実施態様であるといえるので、本件特許訂正発明5は、実施例4ないし6によって十分にサポートされ、実施可能なものであるというべきである。
したがって、本件訂正後の請求項5の記載は、特許法第36条第4項第1号、同第6項第1号の規定に違反するものであるとはいえない。
よって、上記請求人の主張を認めることはできない。

X.まとめ
以上のとおり、平成27年2月18日付け訂正請求によって求められる請求は、これを認めるべきものであり、当該訂正によって訂正された本件特許請求の範囲の請求項5に記載された発明には、その特許を無効とすべき理由はない。また、当該訂正により削除された本件特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての本件無効審判の請求は却下されるべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
太陽電池のバックシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの封止剤として用いられているエチレン/酢酸ビニル共重合体との接着性に優れた太陽電池のバックシート、および該バックシートを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、通常、図6に示すように、太陽電池セル1を封止剤層2で封止し、これをガラスや透明な樹脂などからなる表面層3とバックシート4で挟んで積層した構造となっている。そして封止剤としてはエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられている。
【0003】
太陽電池モジュールにおけるバックシート4は、モジュールの機械的強度を高める目的のほか、水分(水蒸気)が封止剤層2に入らないように防止する役割もある。
【0004】
バックシート4は、図7に示すように、水蒸気バリヤー性をもたすための水不透過性シート5とその一方の面に樹脂シート8が貼り合わされた構成とされている。通常、水不透過性シート5の他方の面にも樹脂シート9が貼り合わされている。
【0005】
水不透過性シート5の材料としては、水不透過性に優れたSi蒸着ポリエステル(Si蒸着PET)や、アルミニウムやステンレススチールなどの金属が使用されており、通常は10?20μmの膜厚とされている。
【0006】
樹脂シート8、9には、耐候性、電気絶縁性、難燃性、意匠性などといった特性が求められており、ポリフッ化ビニル重合体(PVF)のシートが使用されている。また、封止剤層2側の樹脂シート8として、ポリエチレンシートも使用されることがある。
【0007】
しかし、これらの樹脂シートは、要求される耐候性、電気絶縁性、光の遮蔽性といった特性を満たすために、通常は厚さ20?100μmとする必要があり、重量面からさらなる軽量化が求められている。
【0008】
そこで、樹脂シートに代えて樹脂塗料を用いて同様の層を形成することが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0009】
特許文献1では、樹脂塗料としてエポキシ樹脂塗料を使用している。しかしエポキシ樹脂では耐候性の点で不充分であり、実用化には至っていない。
【0010】
特許文献2では、官能基をもたないPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を特定量配合したPVdF系塗料で金属基材(水不透過性シート)を塗装する2層構造のバックシートが提案されている。このPVdF系塗料はPVdFが官能基をもたないので、単独では封止剤であるEVAとの接着性にも劣っている。この点を特許文献2ではテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を特定量配合し、EVAとの界面にテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配向させることで改善している。しかし、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物がEVAとの界面に偏在しているため、依然としてPVdF塗膜と金属基材との接着性は改善されていない。しかも、PVdFは結晶性でありかつ官能基をもたず、塗膜を形成するためには200?300℃で20?120秒間加熱焼成しなければならないため、金属以外の水不透過性シートへの提供は困難となっている。
【0011】
【特許文献1】特開平7-176775号公報
【特許文献2】特開2004-214342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、水不透過性シートとの接着性に優れた太陽電池のバックシートを提供することを目的とする。
【0013】
その他の課題については、具体的な実施形態に応じて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明は、水不透過性シートの少なくとも一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネート基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤である太陽電池モジュールのバックシートに関する。
【0015】
本発明のバックシートは、水不透過性シートの片面のみに硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されている2層構造でも、水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる3層構造、または水不透過性シートの一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され、他方の面に、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシートまたはポリエステル塗料の塗膜(以下、「他のシートまたは塗膜」ということもある)が形成されてなる3層構造でもよい。
【0016】
なお、水不透過性シートと硬化塗膜および/または他のシートまたは塗膜の間に、接着性をさらに高めるためや隠蔽性を高めるため、水蒸気透過性を下げるために、従来公知の1または2以上の介在層が存在していてもよい。そうした介在層の代表例はプライマー層である。
【0017】
水不透過性シートとしては、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートといった従来公知の材料が好ましく使用できる。
【0018】
太陽電池モジュールの封止剤(通常、EVA)層側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を形成する場合は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの官能基がEVAと共架橋を惹き起こし、さらに接着性が向上する。
【0019】
また、太陽電池モジュールの美観の観点から、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜中に顔料を分散させることが好ましい。この観点から、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、顔料分散性に優れたテトラフルオロエチレン(TFE)系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記のバックシートを備えた太陽電池モジュールにも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバックシートは、塗料の形態で塗装することができるので従来のシートの貼り合せに比べて厚さを薄くでき、薄膜化・軽量化を図ることができる。また塗膜の膜厚の減少による機械的強度の低下は、硬化性の官能基による硬化(架橋)によって補うことができる。
【0022】
また、たとえば水不透過性シートとの接着性が、含フッ素ポリマーに官能基を導入することにより、テトラアルコキシシランなどを添加せずとも、向上させることができる。
【0023】
その他の効果については、具体的な実施形態に応じて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のバックシートの特徴は、耐候性や隠蔽性、耐薬品性、耐湿性、耐塩性のために設けられるポリマー層に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を採用している点にある。
【0025】
かかる硬化塗膜を形成する硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料としては、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物が用いられる。
【0026】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーがあげられる。なお、含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0027】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基としては、たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基などがあげられ、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択される。なかでも、硬化反応性が良好な点から水酸基、シアノ基、シリル基が好ましく、特にポリマーの入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基含有単量体を共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0028】
硬化性官能基含有単量体としては、たとえばつぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0029】
(1-1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、たとえば2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などがあげられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0030】
他の水酸基含有モノマーとしては、たとえばアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどが例示できる。
【0031】
(1-2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば式(II):
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、R^(3)、R^(4)およびR^(5)は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基;nは0または1である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類;または式(III):
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、R^(6)およびR^(7)は同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体などがあげられる。
【0036】
式(II)の不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3-アリルオキシプロピオン酸、3-(2-アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3-アリルオキシプロピオン酸が、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0037】
式(III)のカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば3-(2-アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3-(2-アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3-(2-ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3-(2-ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などの1種または2種以上があげられる。これらの中でも3-(2-アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸などが、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0038】
(1-3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH_(2)=CH-O-(CH_(2))_(x)-NH_(2)(x=0?10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH_(2)=CH-O-CO(CH_(2))_(x)-NH_(2)(x=1?10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0039】
(1-4)シリコーン系ビニル単量体:
シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH_(2)=CHCO_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(3))_(3)、CH_(2)=CHCO_(2)(CH_(2))_(3)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)Si(OCH_(3))_(3)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)Si(OC_(2)H_(5))_(3)、CH_(2)=CHCO_(2)(CH_(2))_(3)SiCH_(3)(OC_(2)H_(5))_(2)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)SiC_(2)H_(5)(OCH_(3))_(2)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)(OC_(2)H_(5))、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)Si(CH_(3))_(2)OH、CH_(2)=CH(CH_(2))_(3)Si(OCOCH_(3))_(3)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)SiC_(2)H_(5)(OCOCH_(3))_(2)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)SiCH_(3)(N(CH_(3))COCH_(3))_(2)、CH_(2)=CHCO_(2)(CH_(2))_(3)SiCH_(3)〔ON(CH_(3))C_(2)H_(5)〕_(2)、CH_(2)=C(CH_(3))CO_(2)(CH_(2))_(3)SiC_(6)H_(5)〔ON(CH_(3))C_(2)H_(5)〕_(2)などの(メタ)アクリル酸エステル類;CH_(2)=CHSi[ON=C(CH_(3))(C_(2)H_(5))]_(3)、CH_(2)=CHSi(OCH_(3))_(3)、CH_(2)=CHSi(OC_(2)H_(5))_(3)、CH_(2)=CHSiCH_(3)(OCH_(3))_(2)、CH_(2)=CHSi(OCOCH_(3))_(3)、CH_(2)=CHSi(CH_(3))_(2)(OC_(2)H_(5))、CH_(2)=CHSi(CH_(3))_(2)SiCH_(3)(OCH_(3))_(2)、CH_(2)=CHSiC_(2)H_(5)(OCOCH_(3))_(2)、CH_(2)=CHSiCH_(3)〔ON(CH_(3))C_(2)H_(5)〕_(2)、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物などのビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが例示される。
【0040】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、構成単位の観点から、たとえば次のものが例示できる。
【0041】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、さらにはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0042】
共重合可能な他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0043】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0044】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、たとえばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが好ましい。
【0045】
TFE系の硬化性ポリマー塗料としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズなどが例示できる。
【0046】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:
具体例としては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0047】
CTFE系の硬化性ポリマー塗料としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン、大日本インキ製造(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亜合成(株)製のザフロンなどが例示できる。
【0048】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:
具体例としては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0049】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:
具体例としては、たとえばCF_(3)CF_(2)(CF_(2)CF_(2))_(n)CH_(2)CH_(2)OCOCH=CH_(2)(n=3と4の混合物)/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0050】
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニールなどが例示できる。
【0051】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0052】
これらの硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物は、溶剤型塗料組成物、水性型塗料組成物、粉体型塗料組成物の形態に、常法により調製することができる。なかでも成膜の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さなどの点からは溶剤型塗料組成物が好ましい。
【0053】
また、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料組成物には、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0054】
硬化剤としては、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
【0055】
硬化促進剤としては、従来公知のスズ系、他の金属系、有機酸系、アミノ系の硬化促進剤が使用できる。
【0056】
また、顔料は太陽電池モジュールの外観を美麗にする点から添加することが強く望まれている。特に白色顔料である酸化チタン、炭酸カルシウムや、黒色顔料であるカーボンブラックのほかCu-Cr-Mn合金などの複合金属類などが通常配合される。
【0057】
水不透過性シートは、封止剤であるEVAや太陽電池セルに水分が透過しないように設けられる層であり、水が実質的に透過しない材料であれば使用できるが、重量や価格、可撓性などの点から、Si蒸着PETシート、アルミニウムやステンレススチールなどの金属薄シートなどが多用されている。なかでも特にSi蒸着PETシートがよく用いられている。厚さは通常10?20μm程度である。
【0058】
また接着性を向上させるために、従来公知の表面処理を行ってもよい。表面処理としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理などが例示できる。
【0059】
水不透過性シートへの硬化塗膜の形成は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物をその塗料形態に応じて、水不透過性シートに塗装することにより行う。
【0060】
塗装温度は塗装形態における通常の条件の範囲内で行えばよく、塗膜の硬化も溶剤型塗料組成物の場合、10?300℃、通常は常温(20?30℃)で行う。したがって、水不透過性シートとして、Si蒸着PETシートのような高温での処理を避けたい材料も問題なく使用できる。硬化は、通常、20?300℃にて1分間?3日間で完了する。
【0061】
水不透過性シートへの塗装は、水不透過性シートに直接行ってもよいし、またプライマー層などを介して塗装してもよい。
【0062】
プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行う。プライマー用の塗料としては、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが代表例としてあげられる。
【0063】
硬化塗膜の膜厚は、5μm以上、さらには10μm以上、特に20μm以上とすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度、さらには100μmが好ましい。膜厚としては、特に30?40μmが好ましい。
【0064】
つぎに本発明の太陽電池モジュールについて、好ましい実施形態を示した図1に従って説明する。また、本発明の別の好ましい実施形態の概略断面図を図2?5に示す。
【0065】
図1において、1は太陽電池セルであり、EVAに代表される封止剤層2に封止されており、表面層3とバックシート4で挟まれている。バックシート4はさらに水不透過性シート5と硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜6とから構成されている。この第1の実施形態では硬化塗膜6は封止(EVA)層2側に設けられている。
【0066】
この実施形態では、硬化塗膜6がEVAと接するので、特にEVAとの共架橋により界面接着性が向上する。
【0067】
図2は第2の実施形態であり、硬化塗膜6は封止(EVA)層2と反対側に設けられている。この実施形態の場合、硬化塗膜6を設けることにより耐候性の点で優れたものになる。また、水不透過性シート5の封止(EVA)層2側を表面処理しておくことが密着性の改善の点から好ましい。また、必要に応じて、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などを使用してもよい。
【0068】
本発明のバックシートは、上記の水不透過性シート5の片面のみに硬化塗膜6が形成されている2層構造(図1、図2)でもよいし、以下に説明する3層構造であってもよい。
【0069】
3層構造のバックシートの実施形態(第3の実施形態)を図3に示す。この第3の実施形態は、水不透過性シート5の両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜6が形成されてなる3層構造のものである。
【0070】
この第3の実施形態は、バックシートの膜厚の観点からは多少後退するが、上記の第1の実施形態および第2の実施形態の利点を併せもつものである。
【0071】
3層構造のバックシートとしては、また、水不透過性シートの一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され、他方の面に、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシートまたはポリエステル塗料の塗膜(他のシートまたは塗膜)が形成されてなる3層構造(図4、図5)でもよい。
【0072】
第4の実施形態(図4)は、第1の実施形態の封止(EVA)層2と反対側に他の塗膜7が形成されている構造であり、第5の実施形態(図5)は、第2の実施形態の封止(EVA)層2側に他の塗膜7が形成されている構造である。
【0073】
第4および第5のいずれの実施形態においても、層7を構成する材料は、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜でも、含フッ素ポリマーシートでも、ポリエステルシートでも、ポリエステル塗料の塗膜でもよい。
【0074】
硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜としては、たとえば特許文献2に記載されているPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/HFP共重合体にアミノシランカップリング剤を配合した塗料の硬化塗膜などがあげられる。膜厚は、通常、5?300μm、さらには10?100μm、特に10?50μmとすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【0075】
含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシートやPVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シートなど、現在のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートがあげられる。膜厚は、通常、5?300μm、さらには10?100μm、特に10?50μmとすることが、耐候性が良好な点から好ましい。
【0076】
ポリエステルシートとしては、従来のバックシートで使用されているものがそのまま使用でき、その水不透過性シート5への接着はアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤などによって行うことができる。膜厚は、通常5?300μm、さらには10?100μm、特に10?50μmとすることが、耐候性、コスト、透明性が良好な点から好ましい。
【0077】
ポリエステル塗料としては、多価カルボン酸と多価アルコールなどを用いた飽和ポリエステル樹脂を用いたもの、無水マレイン酸、フマル酸などのグリコール類を用いた不飽和ポリエステル樹脂を用いたものなどがあげられ、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコートなどの塗装方法により塗膜を形成できる。膜厚は、5?300μm、さらには10?100μm、特に10?50μmとすることが隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【実施例】
【0078】
つぎに本発明を調製例および実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる調製例および実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
調製例1
硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)223.2質量部、黒色顔料(大日精化(株)製のダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて黒色塗料を調製した。
【0080】
この黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料1を調製した。
【0081】
調製例2
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)223.2質量部、白色顔料として酸化チタン(デュポン社製のタイピュアR960)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて白色塗料を調製した。
【0082】
この白色塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料2を調製した。
【0083】
調製例3
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)100質量部、酢酸ブチル100質量部、UV吸収剤(BASF社製のユビナール3035)6質量部を攪拌下に混合してクリア塗料を調製した。
【0084】
このクリア塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3))3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料3を調製した。
【0085】
調製例4
PVdF系共重合体の黒エナメル塗料であるディックフローC(日本NFC(株)製)100質量部に、シリケート化合物(コルコート社製のメチルシリケート51)を30質量部配合して、非硬化性の比較塗料1を調製した。
【0086】
調製例5
ポリエステル系共重合体(住化バイエルウレタン(株)製のデスモフェン650MPA、固形分65質量%、水酸基価5.3mgKOH/g、溶剤:メトキシプロピルアセテート)223.2質量部、黒色顔料(ダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液にポリエステル系共重合体(デスモフェン650MPA)を269.2質量部加えて比較用黒色塗料を調製した。
【0087】
この比較用黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)13質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、非フッ素系で硬化性の比較塗料2を調製した。
【0088】
実施例1
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(三菱樹脂(株)製のバリアテックH、厚さ12μm。シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートA1を作製した。
【0089】
このバックシートA1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表1に示す。
【0090】
ついでこのバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート(三井化学ファブロ(株)製のソーラーエバ。厚さ400μm)を載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルA1(図1に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルA1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0091】
試験方法および測定方法はつぎのとおりである。
【0092】
(密着性)
JIS K6900で規定する碁盤目試験(幅1mmにクロスカット)による。
【0093】
評価基準
○:剥離なし。
×:剥離有り。
【0094】
(耐候性試験)
JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行う。
【0095】
評価は、EVAと塗膜またはシートの界面と外観を目視で観察して行う。
【0096】
界面状態の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0097】
外観の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0098】
(折り曲げ性)
バックシートを50mm×50mmにカットして試験片とする。試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察する。割れが観察できた場合は、試験片を2枚重ねて同様にして180度折り曲げる。これを繰返し、割れが観察できなかったときの試験片の枚数を記録する。枚数が少ない方が折り曲げ性がよい。
【0099】
(膜厚)
電磁式膜厚計で測定する。
【0100】
比較例1
実施例1において、塗料として調製例4で調製した比較塗料1(PVdF系の非硬化性塗料)を用いたほかは実施例1と同様にして2層構造のバックシートA2および3層構造のEVA接着サンプルA2を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例2
実施例1と同様にして作製した2層構造のバックシートA1のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB1(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0103】
実施例3
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例2で調製した硬化性塗料2を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートB2を作製した。
【0104】
このバックシートB2について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表2に示す。
【0105】
ついでこのバックシートB2のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB2(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
実施例4
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例1で調製した硬化性塗料1をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC1を作製した。
【0108】
このバックシートC1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0109】
ついでこのバックシートC1の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC1(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0110】
実施例5
実施例4において、シートAに代えてアルミニウム板(シートB。0.5mm)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC2を作製し、実施例4と同様にして密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0111】
ついでこのバックシートC2の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC2(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0112】
実施例6
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例2で調製した硬化性塗料2をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC3を作製した。
【0113】
このバックシートC3について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0114】
ついでこのバックシートC3の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC3(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC3について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0115】
実施例7
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、他方の面に調製例3で調製した硬化性塗料3を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC4を作製した。
【0116】
このバックシートC4について、密着性(硬化性塗料3の塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0117】
ついでこのバックシートC4の硬化性塗料3の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC4(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC4について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0118】
比較例2
実施例4において、塗料として調製例5で調製した硬化性の比較塗料2(非フッ素系の硬化性塗料)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC5(図7の態様)および4層構造のEVA接着サンプルC5を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0119】
比較例3
シートAの両面にポリエステル系接着剤を用いてポリビニルフルオライド(PVF)フィルム(三井デュポンケミカル(株)製のテドラー。黒色顔料入り。厚さ10μm)を貼り付け、3層構造のバックシートC6を作製した。
【0120】
このバックシートC6について、密着性(シートAとPVFフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0121】
ついでこのバックシートC6の一方のPVFフィルム側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD-76P1とCAT-10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC6(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC6について、密着性(EVAとPVFフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
実施例8
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA側にポリエステル系接着剤を用いてポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製のルミラー。白色顔料入り。厚さ75μm)を貼り付け、3層構造のバックシートD1を作製した。
【0124】
このバックシートD1について、密着性(シートAとPETフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表4に示す。
【0125】
ついでこのバックシートD1の硬化性塗料1の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD1(図4に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0126】
実施例9
実施例8と同様にして作製した3層構造のバックシートD1のPETフィルム側上にEVA樹脂シートを圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD2(図5に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD2について、密着性(EVAとPETフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
実施例10
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図1の態様)を作製した。
【0129】
実施例11
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA面上にポリエステル系接着剤を介してEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図2の態様)を作製した。
【0130】
実施例12
実施例4で作製した3層構造のバックシートC1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図3の態様)を作製した。
【0131】
実施例13
実施例8で作製した3層構造のバックシートD1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図4の態様)を作製した。
【0132】
実施例14
実施例9で作製した3層構造のバックシートD2のPETフィルム面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm^(2)にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図5の態様)を作製した。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの第1の実施形態の概略断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの第2の実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの第3の実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの第4の実施形態の概略断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの第5の実施形態の概略断面図である。
【図6】従来の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図7】従来の太陽電池モジュールのバックシートの概略断面図である。
【符号の説明】
【0134】
1 太陽電池セル
2 封止剤層
3 表面層
4 バックシート
5 水不透過性シート
6 含フッ素硬化塗膜
7 シートまたは塗膜
8、9 樹脂シート
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネート基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート、又は、
太陽電池モジュールの封止剤層と反対側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートであって、該硬化塗膜中に顔料が分散しており、前記硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの硬化性官能基が水酸基の場合の硬化剤がイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物またはイソシアネート基含有シラン化合物であり、硬化性官能基がカルボキシル基の場合の硬化剤がアミノ系硬化剤またはエポキシ系硬化剤であり、硬化性官能基がアミノ基である場合の硬化剤がカルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤または酸無水物系硬化剤であり、水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートであり、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項5】
太陽電池モジュールのバックシートを備えた太陽電池モジュールであって、
太陽電池セル、封止剤層、表面層及びバックシートから構成されており、
前記封止剤層は、表面層とバックシートとに挟まれており、エチレン/酢酸ビニル共重合体の層であり、
前記バックシートは、
水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されており、水不透過性シートと硬化塗膜とは直接接着しており、
該硬化塗膜中に白色顔料又は黒色顔料が分散しており、
前記バックシートは、該バックシートを50mm×50mmにカットした試験片について、試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察した場合に、割れを観察できないものであり、
前記封止剤層と前記バックシートとは直接接着しており、前記封止剤層及び前記バックシートからなる積層体について、JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL-300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行った場合に、封止剤層と硬化塗膜との界面に異常が認められず、外観にも異常が認められない
太陽電池モジュール。
【図面】







 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-03-22 
結審通知日 2017-03-27 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2005-212550(P2005-212550)
審決分類 P 1 123・ 121- YAA (H01L)
P 1 123・ 113- YAA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 進  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 豊永 茂弘
日比野 隆治
登録日 2012-11-09 
登録番号 特許第5127123号(P5127123)
発明の名称 太陽電池のバックシート  
代理人 豊岡 静男  
代理人 原 裕子  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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