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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61K
管理番号 1329516
審判番号 不服2015-12310  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-30 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2013- 87238「ステロイドホルモンを含むタブレット」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-155190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、平成18年3月15日(パリ条約による優先権主張 2005年3月31日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願(特願2008-503397号)の一部を、平成25年4月18日に新たな特許出願(特願2013-87238号)としたものであって、平成27年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されるのと同時に、手続補正書が提出され、平成28年9月15日付けで拒絶理由(以下、「本件拒絶理由」という。)が通知されたものである。

第2 本願発明及び本件拒絶理由について
本願の請求項1?37に係る発明は、平成27年6月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?37に記載された事項により特定されるとおりのものである。
また、本件拒絶理由の内容は、本審決末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
請求人は、本件拒絶理由に対して、指定期間内に特許法第159条第2項で準用する同法第50条所定の意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして、本件拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせず、本願は本件拒絶理由で拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

以下、本件拒絶理由を掲記する。

理由1.この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由4.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



(1)本願発明について
本願請求項1?37に係る発明は、平成27年6月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?37に記載された事項により特定されるものである。
以下、本願請求項1に係る発明を、「本願発明1」などといい、それらをいくつかあわせて「本願発明」ともいう。

(2)理由1及び理由2について
ア 「ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在」していることについて

(ア)本願明細書の【0033】?【0036】には、「ステロイドホルモン」として、極めて広範な種類が示されており、これらはステロイドとしての基本骨格を有することは共通するものの、置換基の位置及び種類等は多岐にわたるものである。また本願明細書の【0022】には、「担体物質」としても、極めて広範な種類の物質が示されている。

(イ)そして、本願明細書で示された実施例1?3については、ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在することに関して、「実施例1の乾燥系は、担体物質中に単分子ディスパージョンとして溶解されたステロイドホルモンを含んでなり、一方、実施例2及び3のステロイドホルモンは油相中の溶液の形態であり、油相はさらに個々の相として担体物質中に存在することに注目することができる。従って、液体、好ましくはステロイドホルモンを溶解することができ、そして(好ましくは親水性の)担体物質中で第二の相を形成することができる親油性の賦形剤の使用は、「二相系」としてステロイドホルモン入りのフィルム形態の投与系を製造することを可能にする。」(【0045】)と記載され、要すれば、実施例1の溶解の態様は、「担体物質中での単分子ディスパージョンとしての溶解」であるのに対し、実施例2及び3の溶解の態様は「油相中の溶液の形態」での溶解であり、両者は異なる態様であるものの、いずれも本願明細書においては「溶解」の概念に含まれるものであり、本願発明1?37の「溶解」との記載も、特段の限定が加えられるものではないから、本願明細書における「溶解」の概念と異なるところはない。

(ウ)ところで、本願発明1は「ステロイドホルモン0.01?50質量%及び親水性の担体物質50?99.99質量%を含むステロイドホルモンを経粘膜投与するためのフィルム形態の投与系であって、ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在しており、そして、ステロイドホルモンが1.0?4.3の範囲のlogPを有することを特徴とする該投与系。」であるが、ステロイドホルモン及び担体物質の種類は特定されていないこと、及び上記(イ)の「溶解」の概念を踏まえれば、本願発明1には、種類が限定されないステロイドホルモン、及び種類が限定されない担体物質の組み合わせ全般が、「担体物質中での単分子ディスパージョンとしての溶解」した態様が、含まれるものと解される。

(エ)担体物質中での単分子ディスパージョンとして溶解した態様に関して、実施例で示されているのは、実施例1として、ステロイドホルモンとして、MENTを使用し、担体物質として、HPMCを用いた態様のみである。
(オ)本願明細書を参酌しても、ステロイドホルモン全般が、MENTと同等に、HPMCに単分子ディスパージョンとして溶解すること、さらには担体物質全般に単分子ディスパージョンとして溶解することを説明した記載はないし、またステロイドホルモン全般が、MENTと同様に、単分子ディスパージョンとしてHPMCに溶解すること、さらには担体物質全般に単分子ディスパージョンとして溶解するとの技術常識も存在しない。それどころか、本願明細書の【0016】に、「ステロイドホルモンは親油性物質であり、水中の溶解度は非常に僅かでしかない。」と記載されているように、ステロイドホルモンは、一般的に水溶解度が著しく低いことが技術常識であり、それ故に、親油性物質であるステロイドホルモンが、実施例による具体的な確認なくして「親水性の担体物質中に単分子ディスパージョンとして溶解して存在」するものとは到底理解できないものである。

(カ)以上のことから、本願明細書には、ステロイドホルモン全般が親水性の担体物質中に単分子ディスパージョンとして溶解して存在することについて、MENTとHPMCの組み合わせの他に、具体的に確認した実施例はなく、ステロイドホルモン全般と親水性の担体物質全般の組み合わせが、MENTとHPMCの組み合わせと、単分子ディスパージョンとして溶解して存在することにおいて、同等であることを説明した記載もなく、さらに、ステロイドホルモン全般と親水性の担体物質全般の組み合わせが、MENTとHPMCの組み合わせと、単分子ディスパージョンとして溶解して存在することについて同等であるという技術常識もみあたらないから、「ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在」することのうち、単分子ディスパージョンとして溶解する態様は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、また「ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在」することのうち、単分子ディスパージョンとして溶解する態様について、当業者が実施することができる程度に、上記発明の詳細な説明が記載されているともいえない。

(3)理由3及び4について/本願発明1?37
引用文献1:特表2002-535269号公報(原査定での引用文献1)
引用文献2:特表2004-529674号公報(新たに示す文献、周知事項を示す文献)
引用文献3:KALYAN SUNDARAM ほか’’7α-Methyl-19-nortestosterone(MENT):the optimal androgen for male contraception and replacement therapy’’,International journal of andrology,2000年,23(Suppl.2),13-15(新たに示す文献、周知事項を示す文献)
引用文献4:国際公開第2004/096191号(原審拒絶理由での引用文献2、周知事項を示す文献)

備考
ア 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
引用文献1には以下の事項が記載されている。

(ア1)「【請求項1】 有効投与量の有効剤(・・・)を含有する、水溶性親水コロイドの粘膜表面被覆形成フィルムを含む投薬ユニット。
・・・
【請求項11】 前記親水コロイドが天然、半天然及び合成の生体ポリマーから成る群から選択されているポリマーから選択されているポリマーである請求項1に記載の投薬ユニット。
・・・
【請求項13】 前記親水コロイドがヒドロキシプロピルメチルセルロース・ポリマーである請求項11に記載の投薬ユニット。
・・・
【請求項21】 前記有効剤が治療薬、食物補助品及び衛生補助剤から成る群から選択されている請求項1に記載の投薬ユニット。
・・・
【請求項23】 前記治療薬がニコチン、ヒドロモルホン、オキシブチニン及びエストラジオールから成る群から選択されている請求項21に記載の投薬ユニット。」

(ア2)「【請求項38】 (a)親水コロイドを溶媒に溶かして実質的に均一な製剤を形成する工程、
(b)前記親水コロイド製剤に有効剤と、乳化剤、・・・からなる群から選択される少なくとも一の試薬とを添加して、塗布あるいは押出し可能な混合物を形成する工程、及び
(c)前記混合物から投薬ユニットとして包装するための粘膜の表面被覆形成性フィルムを形成する工程、
を含む粘膜投与に適した投薬ユニットの製造方法。
【請求項39】 前記工程(b)が前記混合物を支持体フィルム上に塗布する工程を更に含む請求項38に記載の方法。」

(ア3)「フィルムに適用される「粘膜の表面被覆形成性」とは、・・・接触した際に粘膜表面を被覆して、その後はマニュアルで回収あるいは接触部位から移動できず、かつ引き続いて崩壊及び溶解して有効剤を放出するフィルムを意味する。」(【0019】)

(ア4)「有効剤(ヒト及び家畜用)は、治療薬、・・・を含む。治療薬の例は、・・・、ステロイド及びステロイド性薬、・・・である。・・・副腎皮質ステロイド、・・・の有効剤も含まれる。」(【0035】)

(ア5)「本発明の複数の態様において、親水コロイドは、水溶性で非ゲル化(室温で)性の天然ポリサッカライドあるいは誘導体でよい。これには、・・・澱粉(アミロース、アミロペクチン)、変性澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、・・・、カルボキシメチル澱粉、・・・が含まれる。
本発明の複数の態様において、親水コロイドは、水溶性で非ゲル化のポリペプチドあるいは蛋白であってよい。例としては、ゼラチン、・・・がある。親水性コロイドは更に、合成親水コロイドから選択されてもよい。例としては、・・・ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース、メチル・セルロース、エチル・セルロース、ポリアクリル酸、・・・ポリビニルピロリドン、・・・及び他のブロック・コポリマー、カルボキシビニルポリマー、・・・、任意のものがある。」 (【0054】【0055】)

(ア6)「実施例1-8では、親水コロイドは激しく混合して水に溶解され、均一のかつ粘稠な溶液を形成した。次いで、ペパーミント、アスパルテーム、プロピルグリコール、安息香酸、及びクエン酸等の追加の成分を、順次粘稠溶液に添加して、親水コロイド中に均一に分散又は溶解するまで激しく混合した。得られた混合物を、真空チャンバ内で、捕捉された空気の泡が除去されるまで脱気した。粘度、pH及び比重を測定した。この処方を次いでポリエステルフィルムの非シリコン化面に湿時膜厚10milで塗布し、熱空気循環炉中で50℃で9分間乾燥した。乾燥後、光沢のある、実質的に透明で、自立性で、自己支持性の、非粘着性で可撓性のフィルムが得られた。」(【0063】)

(ア7)「実施例1-3:溶解の速いフィルム、組成物及び付随する特性
以下に従ってフィルムを調製した。塗布液中に、表1に示した量で、成分の均一混合物を調製した。量は、塗布液の重量百分率である。この混合物を真空チャンバー内で脱気して、ポリエステルフィルムの非シリコン化面上に塗布し、熱空気循環炉内で乾燥して、自己支持性、非粘着性及び可撓性のフィルムを形成した。次いで、フィルムを包装に備えて投薬ユニットに裁断した。」(【0065】)

(ア8)「実施例4-8 治療薬を含有する溶解のはやい口腔用水性プロピル・メチル・セルロース系フィルム
実施例1-3と同様にしてフィルムを用意した。治療薬は、フィルムの形成前に均一な混合物(塗布液)に添加した。」(【0066】)

(ア9)実施例8として、「エストラジオール 1.49、ペパーミント 1.0、メトセル E5(HPMC) 21.06、プロピレングリコール 1.0、アスパルテーム 0.8、クエン酸 0.7、クレムフォア EL40 1.0、安息香酸 0.013、水 72.94」の組成の塗布液が記載されている(【0066】【表5】)。

したがって、引用文献1には、特に(ア1)(ア4)(ア6)?(ア9)より、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「エストラジオール 1.49重量%、ペパーミント 1.0重量%、HPMC 21.06重量%、プロピレングリコール 1.0重量%、アスパルテーム 0.8重量%、クエン酸 0.7重量%、クレムフォアEL40 1.0重量%、安息香酸 0.013重量%、水 72.94重量%を含有する塗布液より形成された粘膜表面被覆形成フィルムを含む投薬ユニット。」

また、引用文献1には、特に(ア2)(ア5)?(ア9)より、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「(a)HPMCを溶媒に溶かして実質的に均一な製剤を形成する工程、(b)前記HPMCにエストラジオールと、ペパーミント、プロピレングリコール、アスパルテーム、クエン酸、クレムフォア EL40、安息香酸を添加して、激しく混合し、塗布可能な混合物を形成し、さらに該混合物を支持体フィルムに塗布する工程、及び
(c)前記混合物から投薬ユニットとして包装するための粘膜の表面被覆形成性フィルムを形成する工程、さらに該フィルムを裁断する工程
を含む粘膜投与に適した投薬ユニットの製造方法。」

イ 本願発明1?6について
(ア)対比
本願発明1?6と引用発明1とを対比する。
・本願発明の「親水性の担体物質」は、その一例として、本願発明2?4に記載された「HPMC」等を含むから、引用発明1の「HPMC」は、本願発明の「親水性の担体物質」を充足する。
・引用発明1の「粘膜表面被覆形成フィルムを含む投薬ユニット」は、本願発明の「経粘膜投与するためのフィルム形態の投与系」に相当する。
・引用発明1の「粘膜表面被覆形成」は、上記摘示(ア3)によれば、接触部位から移動できないものであるため、本願発明の「粘膜付着性」を充足する。

すると、本願発明と引用発明1とは以下の点で相違し、その余の点で一致している。

(相違点1)
本願発明は、ステロイドホルモン0.01?50質量%、または2?15質量%、または3?8質量%及び親水性の担体物質50?99.99質量%を含むのに対し、引用発明1は、塗布液とした際のエストラジオールと、HPMCの含有量は明らかにされているものの、フィルムとした際の含有量は不明である点

(相違点2)
本願発明は、ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在しているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点

(相違点3)
本願発明は、ステロイドホルモンが1.0?4.3の範囲のlogPを有するものであるのに対し、引用発明1はエストラジオールである点

(イ)判断
(相違点1)について
上記摘示(ア7)によれば、フィルムの形成工程で、塗布液は乾燥されるものであるから、少なくとも塗布液中の水分の大部分は除去されるため、水分が完全に除去された、あるいはほぼ除去されたものとして、フィルムの組成を計算してみると、エストラジオールは約5.5重量%(=1.49/(1.49+1.0+21.06+1.0+0.8+0.7+1.0+0.013))、HPMCは約77.8重量%(=21.06/(1.49+1.0+21.06+1.0+0.8+0.7+1.0+0.013))となるため、引用発明の含有量は、本願発明1の含有量を満足する。なお、質量%と重量%とが、ほぼ一致することは技術常識である。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(相違点2)について
引用発明1が、乳化剤(クレムフォアEL40)や、油状成分(プロピレングリコール)を使用するものであり、それに加えて、上記摘示(ア6)に記載のとおり、全成分を添加して激しく混合する製造方法で製造すること、及びステロイドホルモンが親油性物質であるとの技術常識を参酌すれば、引用発明1に含まれたエストラジオールは、全量とはいかないまでも、少なくとも一定量以上は油状成分中に存在する、すなわち、エストラジオールの一定量以上は、「油相中の溶液の形態で溶解」している、すなわち本願発明での「溶解」の一態様を示す蓋然性が高い。
したがって、「ステロイドホルモンが親水性の担体物質中に溶解して存在」していることにおいて、本願発明と引用発明1とは相違しないため、相違点2は実質的な相違点ではない。

(相違点3)について
引用文献2の【0083】に記載のとおり、エストラジオールのlogPは、4.3であるため、引用発明1の「エストラジオール」は、本願発明1の数値を満足する。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。

(ウ)まとめ
以上より、本願発明1?6は、引用文献1に記載された発明である。

ウ 本願発明7?32、35?37について
(ア)対比
本願発明と、引用発明1とを対比する。
・引用発明1の「ペパーミント、アスパルテーム」が、本願発明の「香味料、着色剤、透過促進剤、甘味料、充填剤、可塑剤、可溶化剤、pH安定剤、崩壊剤の群からの少なくとも1つの賦形剤を含む」ことに相当する。

すると、本願発明7?32、35?37は、引用発明1と以下の点で相違し、その余の点で一致している。

(相違点4)
本願発明は、ステロイドホルモンを5質量%を含むのに対し、引用発明1はそのような特定がされていない点

(相違点5)
本願発明は、ステロイドホルモンが、本願発明18及び19に記載された特定の物質であるのに対し、引用発明1はエストラジオールである点

(相違点6)
本願発明は、フィルムの面積、単位当たりの質量、厚さ、フィルムの溶解時間が特定されるのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点

(相違点7)
本願発明は、生物学的利用能の程度が特定されているのに対し、引用発明1でそのような特定がない点

(相違点8)
本願発明は、ステロイドホルモン欠乏症に起因する障害及び/又は機能障害の治療に使用されるのに対し、引用発明はそのような特定がない点

(イ)判断
(相違点4)について
有効成分であるステロイドホルモンの含有量を、薬効増大、副作用低減等といった当業者によく知られた課題を解決するために、用量を好適化すること、その結果、引用発明1において、エストラジオールをは5質量%とすることに格別な困難性は認められない。
また、これらの数値範囲としたことにより格別顕著な効果が奏されるとも認められない。

(相違点5)について
引用発明1は、エストラジオールという特定の物質を使用しているものの、エストラジオールがステロイド剤であることが周知の事項であることを参酌すれば、エストラジオールは、上記摘示(ア4)における「ステロイド」「副腎皮質ステロイド」の一例として使用されているものと解される。
してみれば、引用発明1において、ステロイドの一種であるエストラジオールを、ステロイドとしてよく知られた他の物質に代えてみることは当業者が容易に想到し得るものであり、その際、周知のステロイドとして、例えば「MENT」(MENTがステロイド剤として周知であることは、引用文献3参照)を採用することに格別な困難性は認められないし、また「MENT」を採用したことにより格別顕著な効果が奏されるとも認められない。

(相違点6)及び(相違点7)について
引用発明1は、本願発明と同様に、口に含み、粘膜投与されるフィルムである以上、口の大きさや、溶けやすさを考慮して、フィルムの物理的形状を適当なものとすることは、当業者が適宜なし得るものであり、その結果、引用発明1において、本願発明と同程度のフィルムの面積、単位当たりの質量、厚さ、フィルムの溶解時間とすること、その結果、有効成分の生物学的利用能を所望のものとすることに格別な困難性は認められない。また、これらの物理的性状としたことに格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

(相違点8)について
ストイドホルモン欠乏症に起因する障害や機能障害の治療は、ステロイドホルモンの周知の用途であるため(例えば引用文献4の第30頁第15行?第31頁第16行参照)、引用発明1の投薬ユニットを、ステロイドホルモン欠乏症に起因する障害及び/又は機能障害の治療に使用されるものとすることは、当業者が適宜なし得るものである。

(ウ)まとめ
以上より、本願発明7?32、35?37は、引用文献1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

エ 本願発明33、34について
(ア)対比
本願発明33、34と、引用発明2とを対比すると、上記相違点7及び相違点8の他に、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

(相違点9)
本願発明は、ステロイドホルモンの溶液を形成し、該溶液を担体物質の含水混合物と共に医薬上許容しうる溶媒中で混合するのに対し、引用発明2は、HPMCを溶媒に溶かした均一な製剤に、エストラジオールを加え、激しく混合する点

(イ)判断
(相違点7)及び(相違点8)について
上記ウの(イ)で、既に検討済みである。

(相違点9)について
複数成分を混合する際に、各成分を溶液状としてから混合するか、全成分を激しく混合するかのいずれの方法をとるかは当業者が適宜なし得るものである。
また、得られた混合物の性状は、混合の順番だけでなく、具体的な混合装置及び混合の激しさの程度等の混合条件にも影響を受けることが自明であることを考慮すれば、単に「各成分を溶液状としてから混合する方法」を選択しただけで、格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

(ウ)まとめ
以上のとおり、本願発明33、34は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
 
審理終結日 2017-01-13 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2013-87238(P2013-87238)
審決分類 P 1 8・ 113- WZF (A61K)
P 1 8・ 121- WZF (A61K)
P 1 8・ 537- WZF (A61K)
P 1 8・ 536- WZF (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 小川 慶子
齊藤 光子
発明の名称 ステロイドホルモンを含むタブレット  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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