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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1329534
審判番号 不服2016-5674  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2012-553297「アダプティブ・ストリーミングのマルチパス配信」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月25日国際公開、WO2011/101371、平成25年 5月30日国内公表、特表2013-520119〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 経緯
本件出願は、2011年(平成23年)2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年2月19日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成24年10月18日:手続補正
平成26年 1月21日:手続補正
平成26年11月 7日:拒絶理由の通知
平成27年 5月11日:手続補正
平成27年12月24日:拒絶査定
平成28年 1月 6日:拒絶査定の謄本の送達
平成28年 4月18日:拒絶査定不服審判の請求
平成28年 4月18日:手続補正

2 査定の概要
原査定の理由は、概略、次のとおりである。

[査定の理由]
この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2006-244054号公報
引用文献2:特開2007-36666号公報

第2 補正却下の決定
平成28年4月18日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]
平成28年4月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年4月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正である。
(下線は補正箇所を示す。)

補正前の請求項1?15
「 【請求項1】
少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法であり、前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースが通信アドレスを有し、前記コンテンツが、通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され、前記コンテンツが、前記第1および少なくとも第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である方法であって、前記クライアント装置において、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップと、
前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップと、
前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記識別されたチャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分のそれぞれが、前記決定した利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップと、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記コンテンツが、2つの経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であり、前記要求した第1の部分が第1のサイズを有し、前記要求した第2の部分が第2のサイズを有し、前記第1のサイズと前記第2のサイズの比が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの比に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートの和を評価することを含み、前記要求ビット・レートが、前記和から決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートの前記和からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択することにある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
目標要求ビット・レートの第2のしきい値が決定され、前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記第2のしきい値からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択することにある、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のサイズが、前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクのサイズ、ならびに前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記和の比に比例する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記4つのステップが、前記クライアント装置がチャンクを完全に受信するたびに実行される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記経路上で決定された前記第1および少なくとも第2の利用可能なビット・レートが第1のしきい値より大きいかどうかを判定する、前記ステップの前に実行されるステップをさらに含み、前記4つのステップが、前記クライアント装置が前記決定した利用可能なビット・レートが前記第1のしきい値より大きいと判定した経路についてのみ実行される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップが、前記クライアント装置から前記第1および少なくとも第2の経路を介して送信された要求、ならびに前記要求に応答して前記少なくとも第1および第2の経路を介して送信される確認メッセージの往復時間を計算することにある、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記クライアント装置が前記経路のうちの少なくとも1つを介して前記対応ビット・レートのリストを受信するステップと、対応ビット・レート毎に前記チャンクのサイズを受信するステップとをさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記クライアント装置が、通信アドレスを有する第3の通信インタフェースをさらに含み、前記コンテンツが、通信アドレスを有する第3のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第3の経路が、前記第3の通信インタフェースの前記通信アドレスおよび前記第3のサーバ通信インタフェースの前記アドレスによって識別され、前記要求ビット・レートが、前記第1、第2および第3の経路上でそれぞれ決定された前記第1、前記第2および第3の利用可能なビット・レートから決定され、前記クライアント装置が、前記第1の経路を介して、前記時間指標iおよび前記要求ビット・レートによって識別される前記チャンクの第1の部分を要求し、前記第2の経路を介して前記チャンクの第2の部分を要求し、前記第3の経路を介して前記チャンクの第3の部分を要求しており、前記コンテンツが、前記第1、第2および第3の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であり、前記方法が、前記クライアント装置において、
前記クライアント装置が前記要求した第1の部分および第2の部分を完全に受信し、前記第3の部分の第1のフラグメントを受信中であり、前記第3の部分の第2のフラグメントは前記第1のフラグメントと相補的であり、前記経路での前記利用可能なビット・レートが第3のしきい値未満であると判定したときに、前記第2のフラグメントの第1の相補的な部分を受信するための要求を前記経路を介して送信し、前記第2のフラグメントの第2の相補的な部分を受信するための要求を前記経路を介して送信するステップであって、前記第1の相補的な部分と前記第2の相補的な部分とが重複せず、前記第1の相補的な部分と前記第2の相補的な部分を結合することによって前記第2のフラグメントの全体が得られる、前記ステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含む、レンダリングするコンテンツを受信するクライアント装置であり、前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースが通信アドレスを有し、前記コンテンツが、通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一の持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートによって識別され、前記コンテンツが、前記少なくとも第1および第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であるクライアント装置であって、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定する手段と、
前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定する手段と、
前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記チャンクの第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信する手段であって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分のそれぞれが、前記決定した利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記手段と、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信する手段と、を含む、前記クライアント装置。
【請求項13】
前記第1および第2の経路のうちの少なくとも1つを介して、前記対応ビット・レートに関する情報を受信し、且つ各対応ビット・レート毎に、前記チャンクのサイズに関する情報を受信する手段をさらに含む、請求項12に記載のクライアント装置。
【請求項14】
要求ビット・レートを決定する前記手段が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの和を評価するようになっており、前記手段が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの前記和からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択するようになっている、請求項12および13のいずれか1項に記載のクライアント装置。
【請求項15】
前記決定した利用可能なビット・レートが第1のしきい値を超えるかどうかを判定する手段をさらに含み、要求を送信する前記手段が、前記クライアント装置が前記決定した利用可能なビット・レートが前記第1のしきい値より大きいと判定した経路についてのみ、前記チャンクの第1の部分および前記少なくとも第2の部分を受信するための要求を送信するようになっている、請求項12から14のいずれか1項に記載のクライアント装置。」

を、次のとおり補正後の請求項1?15に補正するものである。

「 【請求項1】
少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法であり、前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有し、前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され、前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である方法であって、前記クライアント装置において、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップと、
前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップと、
前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップと、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記コンテンツが、2つの経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であり、前記要求した第1の部分が第1のサイズを有し、前記要求した第2の部分が第2のサイズを有し、前記第1のサイズと前記第2のサイズの比が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの比に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートの和を評価することを含み、前記要求ビット・レートが、前記和から決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートの前記和からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択することにある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
目標要求ビット・レートの第2のしきい値が決定され、前記要求ビット・レートを決定する前記ステップが、前記第2のしきい値からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択することにある、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のサイズが、前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクのサイズ、ならびに前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記和の比に比例する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記4つのステップが、前記クライアント装置がチャンクを完全に受信するたびに実行される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記経路上で決定された前記第1および少なくとも第2の利用可能なビット・レートが第1のしきい値より大きいかどうかを判定する、前記ステップの前に実行されるステップをさらに含み、前記4つのステップが、前記クライアント装置が前記決定した利用可能なビット・レートが前記第1のしきい値より大きいと判定した経路についてのみ実行される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップが、前記クライアント装置から前記第1および少なくとも第2の経路を介して送信された要求、ならびに前記要求に応答して前記少なくとも第1および第2の経路を介して送信される確認メッセージの往復時間を計算することにある、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記クライアント装置が前記経路のうちの少なくとも1つを介して前記対応ビット・レートのリストを受信するステップと、対応ビット・レート毎に前記チャンクのサイズを受信するステップとをさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記クライアント装置が、通信アドレスを有する第3の通信インタフェースをさらに含み、前記コンテンツが、通信アドレスを有する第3のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第3の経路が、前記第3の通信インタフェースの前記通信アドレスおよび前記第3のサーバ通信インタフェースの前記アドレスによって識別され、前記要求ビット・レートが、前記第1、第2および第3の経路上でそれぞれ決定された前記第1、前記第2および第3の利用可能なビット・レートから決定され、前記クライアント装置が、前記第1の経路を介して、前記時間指標iおよび前記要求ビット・レートによって識別される前記チャンクの第1の部分を要求し、前記第2の経路を介して前記チャンクの第2の部分を要求し、前記第3の経路を介して前記チャンクの第3の部分を要求しており、前記コンテンツが、前記第1、第2および第3の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であり、前記方法が、前記クライアント装置において、
前記クライアント装置が前記要求した前記チャンクの第1の部分および第2の部分を完全に受信し、前記第3の部分の第1のフラグメントを受信中であり、前記第3の部分の第2のフラグメントは前記第1のフラグメントと相補的であり、前記経路での前記利用可能なビット・レートが第3のしきい値未満であると判定したときに、前記第2のフラグメントの第1の相補的な部分を受信するための要求を前記経路を介して送信し、前記第2のフラグメントの第2の相補的な部分を受信するための要求を前記経路を介して送信するステップであって、前記第1の相補的な部分と前記第2の相補的な部分とが重複せず、前記第1の相補的な部分と前記第2の相補的な部分を結合することによって前記第2のフラグメントの全体が得られる、前記ステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含む、レンダリングするコンテンツを受信するクライアント装置であり、前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有し、前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一の持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートによって識別され、前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能であるクライアント装置であって、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定する手段と、
前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定する手段と、
前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信する手段であって、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記手段と、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信する手段と、を含む、前記クライアント装置。
【請求項13】
前記第1および第2の経路のうちの少なくとも1つを介して、前記対応ビット・レートに関する情報を受信し、且つ各対応ビット・レート毎に、前記チャンクのサイズに関する情報を受信する手段をさらに含む、請求項12に記載のクライアント装置。
【請求項14】
要求ビット・レートを決定する前記手段が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの和を評価するようになっており、前記手段が、前記決定した第1の利用可能なビット・レートと前記決定した第2の利用可能なビット・レートの前記和からプロビジョンを引いた値以下となる、対応ビット・レートの中から最大ビット・レートを選択するようになっている、請求項12および13のいずれか1項に記載のクライアント装置。
【請求項15】
前記決定した利用可能なビット・レートが第1のしきい値を超えるかどうかを判定する手段をさらに含み、要求を送信する前記手段が、前記クライアント装置が前記決定した利用可能なビット・レートが前記第1のしきい値より大きいと判定した経路についてのみ、前記チャンクの第1の部分および前記少なくとも第2の部分を受信するための要求を送信するようになっている、請求項12から14のいずれか1項に記載のクライアント装置。」

2 補正の適合性
(1)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更、補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1、12における
「前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースが通信アドレスを有し」を「前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有し」とし、
「前記コンテンツが、通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して」を「前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して」とし、
「前記コンテンツが、前記第1および少なくとも第2の経路を介して」を「前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して」とし、
また、補正前の請求項1、12「チャンク」を「時間指標iによって識別されるチャンク」であること、「前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する」ことを明確にしたものである。
また、本件補正は、補正前の請求項11における「第1の部分および第2の部分」を「前記チャンクの第1の部分および第2の部分」としたものである。
通信アドレスについては、本願明細書の段落【0035】、図2等に記載されており、チャンクについては、本願明細書の段落【0073】、図1?4等に記載されており、本件補正は、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内ものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。

(2)独立特許要件
上記のとおり本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。

(3)補正後発明
補正後の請求項1?15に係る発明のうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(この発明を以下「補正後発明」という。)。

(補正後発明)
「(A)少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法であり、
(A-1)前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有し、
(A-2)前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、
(A-3)第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、
(A-4)少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、
(A-5)前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、
(A-6)前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、
(A-7)チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され、
(A-8)前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である
(A-9)方法であって、
(A-10)前記クライアント装置において、
(B)前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップと、
(C)前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップと、
(D)前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記時間指標iによって識別される前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップと、
(E)前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップと、を含む、
(F)前記方法。」

((A)?(F)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」等という。)

(4)引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-244054号公報(上記引用文献1、以下「引用文献1」という。)には、「情報処理装置および方法、記録媒体、プログラム、並びに情報処理システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0001】
本発明は情報処理装置および方法、記録媒体、プログラム、並びに情報処理システムに関し、特に、より効率よくストリーミングすることができるようにした情報処理装置および方法、記録媒体、プログラム、並びに情報処理システムに関する。」

「【0056】
図2は、本発明に係るコンテンツ配信システムを説明する図である。このコンテンツ配信システムにおいては、クライアント51およびサーバ52-1乃至サーバ52-N(サーバ52-5乃至サーバ52-(N-1)は図示せず)のそれぞれが、互いに通信網53を介して接続されている。
【0057】
クライアント51およびサーバ52-1乃至サーバ52-Nから構成されるネットワークは、いわゆるピアツーピアネットワークであり、クライアント51およびサーバ52-1乃至サーバ52-Nのそれぞれは、通信網53を介して接続されている装置(クライアント51およびサーバ52-1乃至サーバ52-N)のうち、所望するコンテンツデータを記録している装置を検索し、検索された装置からコンテンツデータをダウンロードすることができる。また、クライアント51およびサーバ52-1乃至サーバ52-Nのそれぞれは、通信網53を介して接続されている装置からの要求に応じて、記録しているコンテンツデータを、通信網53を介してコンテンツデータの送信を要求してきた装置あてに送信することができる。」

「【0067】
例えば、クライアント51が、これから受信しようとするコンテンツデータを分割して、2つのサーバ52-1およびサーバ52-2からダウンロードする場合、図3に示すように、コンテンツデータが、所定の大きさのデータであるセグメント71-1乃至セグメント71-6の、6つのデータに分割されるように、その分割位置を指定する。
【0068】
コンテンツデータをセグメント71-1乃至セグメント71-6のそれぞれに分割する場合、例えば、セグメント71-1の大きさが、セグメント71-2乃至セグメント71-6のそれぞれの大きさよりも小さくなるように分割位置を指定するなど、セグメント71-1乃至セグメント71-6の大きさがそれぞれ異なるように分割位置を指定してもよく、また、セグメント71-1乃至セグメント71-6が、それぞれ同じ大きさのデータとなるように分割位置を指定してもよい。
【0069】
例えば、セグメント71-1乃至セグメント71-6が、それぞれ同じ大きさのデータとなるように分割する場合、セグメント71-1乃至セグメント71-6のそれぞれの大きさは、例えば、コンテンツデータに対応するコンテンツを、1分間再生するために必要なデータの大きさなどとされる。以下、セグメント71-1乃至セグメント71-6のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単にセグメント71と称する。
【0070】
次に、クライアント51は、セグメント71が、コンテンツデータをダウンロードするサーバ52の数のデータに分割されるように分割位置を指定する。したがって、図3の例においては、クライアント51は、コンテンツデータを、サーバ52-1およびサーバ52-2から分割してダウンロードするので、セグメント71がそれぞれ2つのデータに分割されるように、それぞれのデータの分割位置を指定する。なお、以下、セグメント71を分割したデータをパートと称する。
【0071】
すなわち、クライアント51は、セグメント71-1をパート81-1およびパート82-1に分割し、セグメント71-2をパート81-2およびパート82-2に分割し、セグメント71-3をパート81-3およびパート82-3に分割する。
【0072】
同様に、クライアント51は、セグメント71-4をパート81-4およびパート82-4に分割し、セグメント71-5をパート81-5およびパート82-5に分割し、セグメント71-6をパート81-6およびパート82-6に分割する。
【0073】
さらに、クライアント51は、パート81-1乃至パート81-6のそれぞれの送信を、サーバ52-1に割り当て、パート82-1乃至パート82-6のそれぞれの送信を、サーバ52-2に割り当てる。そして、クライアント51は、サーバ52-1およびサーバ52-2とそれぞれセッションを張り(コネクションを確立させ)、サーバ52-1からパート81-1乃至パート81-6をそれぞれダウンロードし、サーバ52-2からパート82-1乃至パート82-6をそれぞれダウンロードする。
【0074】
すなわち、クライアント51は、まず、サーバ52-1からパート81-1をダウンロードし、パート81-1のダウンロードが完了した後、サーバ52-1からパート81-2をダウンロードする。そして、パート81-2のダウンロードが完了した後、サーバ52-1からパート81-3をダウンロードし、同様にして、順番にパート81-4乃至パート81-6のそれぞれを、サーバ52-1からダウンロードする。
【0075】
また、クライアント51は、パート81-1乃至パート81-6のダウンロードと並行して、パート82-1乃至パート82-6のそれぞれを、サーバ52-2からダウンロードする。すなわち、クライアント51は、まず、サーバ52-2からパート82-1をダウンロードし、パート82-1のダウンロードが完了した後、サーバ52-2からパート82-2をダウンロードする。そして、パート82-2のダウンロードが完了した後、サーバ52-2からパート82-3をダウンロードし、同様にして、順番にパート82-4乃至パート82-6のそれぞれを、サーバ52-2からダウンロードする。
【0076】
なお、以下、パート81-1乃至パート81-6のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単にパート81と称する。また、以下、パート82-1乃至パート82-6のそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単にパート82と称する。
【0077】
また、以下、クライアント51がコンテンツデータを分割するとは、クライアント51がコンテンツデータそのものを分割するのではなく、クライアント51がこれから受信しようとするコンテンツデータを、所定の大きさ(量)のデータに分けるための大きさ(または分割位置)を指定することをいう。したがって、クライアント51は、コンテンツデータを分割する位置を指定することによって、すなわち、コンテンツデータのうちの送信を要求する部分(パート)を指定することによって、複数のサーバ52からコンテンツデータを分割してダウンロードする。」

「【0097】
これは、パート101のダウンロード速度と、パート102のダウンロード速度が異なるにも関わらず、セグメント71をそれぞれ等しい大きさのパート101とパート102とに分割した(分けた)からである。そこで、図5に示すように、それぞれのパートの大きさを、パートのダウンロード速度に応じて定めることによって、キャッシュ増加速度をより大きくすることができる。すなわち、パートのダウンロード速度に応じてパートの大きさを変化させることによって、ダウンロードが完了したコンテンツデータの量に対する、連続したコンテンツの再生に用いることができるコンテンツデータ(キャッシュされたコンテンツデータ)の量の割合をより大きくすることができる。」

「【0100】
クライアント51は、まず、セグメント71-1を、それぞれ大きさが等しいパート111-1およびパート112-1に分割する。そして、クライアント51は、パート111-1の送信をサーバ52-1に割り当て、パート112-1の送信をサーバ52-2に割り当てて、パート111-1をサーバ52-1からダウンロードし、パート112-1をサーバ52-2からダウンロードする。
【0101】
次に、パート111-1およびパート112-1のダウンロードが完了すると、クライアント51は、パート111-1のダウンロード速度、およびパート112-1のダウンロード速度に基づいて、セグメント71-2をパート111-2およびパート112-2に分割する。ここで、例えば、パート112-1のダウンロード速度よりも、パート111-1のダウンロード速度が大きい場合、クライアント51は、パート112-2の大きさよりもパート111-2の大きさが大きくなるように、セグメント71-2をパート111-2およびパート112-2に分割する。」

「【0107】
図5の例においては、クライアント51において、既にパート111-1乃至パート111-4のサーバ52-1からのダウンロードが完了しており、また、パート112-1乃至パート112-4のサーバ52-2からのダウンロードが完了している。したがって、この場合、クライアント51は、セグメント71-1乃至セグメント71-4の部分のコンテンツデータを用いて、コンテンツを連続して再生することができる。すなわち、ユーザは、再生時刻t50から再生時刻t52までのコンテンツデータに対応するコンテンツを、連続して視聴することができる。」

「【0122】
図7は、クライアント51のCPU131およびサーバ52のCPUが、それぞれプログラムを実行することによって実現される、クライアント51およびサーバ52の機能の構成を示すブロック図である。
【0123】
ユーザが、所定のコンテンツデータのダウンロードをクライアント51に指示すると、クライアント51は、ユーザによってダウンロードが指示されたコンテンツデータを記録しているサーバ52と通信するために、サーバ52とのコネクションを確立させる。なお、以下では、クライアント51がサーバ52とのコネクションを確立させる例として、いわゆる2wayでコネクションを確立させる場合について説明するが、いわゆる3wayでコネクションを確立させることも可能である。
【0124】
すなわち、クライアント51は、通信の開始を要求する通信要求信号を生成し、生成した通信要求信号を、通信網53を介してサーバ52あてに送信する。サーバ52は、クライアント51から送信されてきた通信要求信号を受信する。サーバ52は、通信要求信号を受信すると、通信要求信号を受信した旨の応答信号を生成し、生成した応答信号を、通信網53を介してクライアント51あてに送信する。
【0125】
クライアント51は、サーバ52から応答信号が送信されてくるので、サーバ52から送信されてきた応答信号を受信する。そして、応答信号を受信することによって、サーバ52とのコネクションが確立されたので、クライアント51は、ユーザからダウンロードが指示されたコンテンツデータをセグメントに分け、さらにセグメントをパートに分けて、各パートの送信を、それぞれサーバ52-1乃至サーバ52-Nのいずれかに割り当てる。そして、クライアント51は、サーバ52のそれぞれに割り当てたパート(コンテンツデータ)の送信を要求する送信要求信号を生成する。
【0126】
クライアント51は、生成した送信要求信号を、通信網53を介してサーバ52にそれぞれ送信する。サーバ52は、クライアント51から送信されてきた送信要求信号を受信し、記録しているコンテンツデータのうちのクライアント51から要求された部分(パート)を、通信網53を介してクライアント51あてに送信する。そして、クライアント51は、サーバ52から送信されてきたコンテンツデータ(パート)を受信する。
【0127】
クライアント51は、管理部181、割り当て部182、通信制御部183-1乃至通信制御部183-N、および再構成部184を含むように構成される。
【0128】
管理部181は、図示せぬアプリケーションプログラムなどの上位レイヤと、割り当て部182および再構成部184とのデータの授受を制御(仲介)する。管理部181は、登録制御部201およびコンテンツ出力部202を備えている。
【0129】
ユーザが、所望のコンテンツデータのダウンロードを指示すると、例えば、管理部181には、アプリケーションプログラムから、通信網53を介してクライアント51に接続されている送信ノードとしてのサーバ52の数、すなわち、ユーザが所望するコンテンツデータを記録しているサーバ52の数、サーバ52のIP(Internet Protocol)アドレス、サーバ52の処理能力などから定められたデータの送信能力などが含まれている、ノード情報が供給される。また、アプリケーションプログラムから管理部181には、ノード情報とともに、ユーザによってダウンロードが指示されたコンテンツデータを特定する情報、コンテンツデータの大きさ(データのサイズ)、コンテンツデータを分割するセグメントの数、1つのセグメントの大きさ(データのサイズ)などが含まれている初期設定情報が供給される。
【0130】
さらに、アプリケーションプログラムが、管理部181にノード情報を供給した後、新たに、ユーザが所望するコンテンツデータを記録しているサーバ52が検出されると、アプリケーションプログラムから管理部181には、新たに検出されたサーバ52のIPアドレス、サーバ52の送信能力などが含まれている追加ノード情報が供給される。
【0131】
管理部181の登録制御部201は、アプリケーションプログラムから供給されたノード情報、初期設定情報、または追加ノード情報を割り当て部182に供給する。また、管理部181のコンテンツ出力部202は、再構成部184から供給されたコンテンツデータ(が格納されているパケット)をアプリケーションプログラムに供給する。
【0132】
割り当て部182は、管理部181から供給されたノード情報を記憶する。割り当て部182は、管理部181から追加ノード情報が供給されると、供給された追加ノード情報に含まれている情報が、記憶しているノード情報に含まれるように、ノード情報を更新する。また、割り当て部182は、管理部181から供給された初期設定情報を記憶するとともに、初期設定情報を通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nにそれぞれ供給する。
【0133】
さらに、クライアント51と、サーバ52-1乃至サーバ52-Nのそれぞれとのコネクションが確立されると、割り当て部182には、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれから、コネクションが確立された旨の信号が供給される。割り当て部182は、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれから、コネクションが確立された旨の信号が供給されると、サーバ52にそれぞれ割り当てられた、コンテンツデータのパートを特定する情報が含まれている割り当て情報を生成し、生成した割り当て情報を、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれに供給する。
【0134】
すなわち、割り当て部182から、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれには、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれが通信するサーバ52-1乃至サーバ52-Nのそれぞれに割り当てられた、コンテンツデータのパートを特定する情報が含まれている割り当て情報が供給される。なお、以下、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれを個々に区別する必要のない場合、単に、通信制御部183と称する。
【0135】
割り当て部182は、通信制御部183-1乃至通信制御部183-Nのそれぞれから供給された受信情報を基に、受信履歴を更新する。ここで、受信情報とは、通信制御部183がサーバ52から受信したパートを特定する情報、パートのダウンロード速度などが含まれている情報であり、通信制御部183から割り当て部182には、通信制御部183がパートのダウンロード(受信)が完了するたびに、そのパートのダウンロード速度が含まれている受信情報が供給される。また、受信履歴の詳細は後述するが、受信履歴には、各サーバ52のセグメント(パート)ごとの受信情報が含まれている。
【0136】
通信制御部183-1は、サーバ52-1とのデータの送受信を制御する。送信制御部183-1は、送信部203-1および受信部204-1を備えている。
【0137】
通信制御部183-1は、割り当て部182から供給された初期設定情報を一時的に記憶するとともに、サーバ52-1とのコネクションを確立させるために、通信要求信号を生成する。通信制御部183-1の送信部203-1は、通信制御部183-1が生成した通信要求信号を、通信網53を介してサーバ52-1あてに送信する。
【0138】
通信制御部183-1の受信部204-1は、サーバ52-1から送信されてきた応答信号を受信する。通信制御部183-1は、応答信号を受信すると、コネクションが確立された旨の信号を生成し、生成したコネクションが確立された旨の信号を、割り当て部182に供給する。
【0139】
通信制御部183-1は、割り当て部182から割り当て情報が供給されると、割り当て情報が含まれる送信要求信号を生成する。通信制御部183-1の送信部203-1は、通信制御部183-1が生成した送信要求信号を、通信網53を介してサーバ52-1あてに送信する。
【0140】
通信制御部183-1の受信部204-1は、サーバ52-1から送信されてきたコンテンツデータを受信する。より詳細には、通信制御部183-1の受信部204-1は、サーバ52-1から送信されてきた、コンテンツデータ(のパート)が格納されているパケットを受信する。通信制御部183-1は、受信したコンテンツデータが格納されているパケットを、再構成部184に供給する。
【0141】
また、サーバ52-1が、要求されたコンテンツデータ(のパート)を送信すると、サーバ52-1からパートの送信が終了した旨の終了通知信号が送信されてくるので、通信制御部183-1の受信部204-1は、サーバ52-1から送信されてきた終了通知信号を受信する。通信制御部183-1は、終了通知信号を受信すると、受信したパートのダウンロード速度などが含まれている受信情報を生成し、生成した受信情報を割り当て部182に供給する。
【0142】
通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれは、サーバ52-2乃至サーバ52-Nのそれぞれとのデータの送受信を制御する。通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nは、それぞれ送信部203-2乃至送信部203-N、および受信部204-2乃至受信部204-Nを備えている。
【0143】
通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれは、割り当て部182から供給された初期設定情報を一時的に記憶するとともに、それぞれ、サーバ52-2乃至サーバ52-Nとのコネクションを確立させるために、通信要求信号を生成する。通信制御部183-2の送信部203-2乃至通信制御部183-Nの送信部203-Nは、通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれが生成した通信要求信号を、通信網53を介してサーバ52-2乃至サーバ52-Nあてにそれぞれ送信する。
【0144】
通信制御部183-2の受信部204-2乃至通信制御部183-Nの受信部204-Nのそれぞれは、サーバ52-2乃至サーバ52-Nのそれぞれから送信されてきた応答信号を受信する。通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれは、応答信号を受信すると、コネクションが確立された旨の信号を生成し、生成したコネクションが確立された旨の信号を、割り当て部182に供給する。
【0145】
通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれは、割り当て部182から割り当て情報が供給されると、割り当て情報が含まれる送信要求信号を生成する。通信制御部183-2の送信部203-2乃至通信制御部183-Nの送信部203-Nのそれぞれは、通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nのそれぞれが生成した送信要求信号を、通信網53を介してサーバ52-2乃至サーバ52-Nあてに送信する。
【0146】
通信制御部183-2の受信部204-2乃至通信制御部183-Nの受信部204-Nは、サーバ52-2乃至サーバ52-Nから送信されてきたコンテンツデータを受信する。より詳細には、通信制御部183-2の受信部204-2乃至通信制御部183-Nの受信部204-Nは、サーバ52-2乃至サーバ52-Nから送信されてきた、コンテンツデータ(のパート)が格納されているパケットをそれぞれ受信する。通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nは、受信したコンテンツデータが格納されているパケットを、再構成部184に供給する。
【0147】
また、サーバ52-2乃至サーバ52-Nのそれぞれが、要求されたコンテンツデータ(のパート)を送信すると、サーバ52-2乃至サーバ52-Nのそれぞれからパートの送信が終了した旨の終了通知信号が送信されてくるので、通信制御部183-2の受信部204-2乃至通信制御部183-Nの受信部204-Nは、サーバ52-2乃至サーバ52-Nから送信されてきた終了通知信号を受信する。通信制御部183-2乃至通信制御部183-Nは、終了通知信号を受信すると、受信したパートのダウンロード速度などが含まれている受信情報を生成し、生成した受信情報を割り当て部182に供給する。
【0148】
以下、送信部203-1乃至送信部203-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に送信部203と称する。また、以下、受信部204-1乃至受信部204-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に受信部204と称する。
【0149】
再構成部184は、通信制御部183から供給されたコンテンツデータのパート(パケット)を、必要に応じて一時的に記憶し、記憶しているパートを連続したコンテンツデータのストリームに再構成する。再構成部184は、出力制御部205および記憶部206を備えている。
【0150】
再構成部184の出力制御部205は、通信制御部183からパケットが供給されると、パケットのヘッダに含まれている、コンテンツデータの再生の順番を示すシーケンス番号を検査する。そして、再構成部184の出力制御部205は、パケットに含まれているシーケンス番号が、再構成部184の出力制御部205が記憶している、出力すべきシーケンス番号と同じ番号である場合、通信制御部183からから供給されたパケットを管理部181に供給する。
【0151】
例えば、パケットのヘッダに含まれているシーケンス番号は、パケットに格納されているパートの始点位置を表す値となっている。すなわち、例えば、コンテンツデータの位置を、コンテンツデータの先頭の位置を“0”として、データが1KB増えるごとにインクリメントした値で表し、パートの先頭の位置に対応するコンテンツデータのデータの位置を、パートの始点位置とする。例えば、パケットに格納されているパートの開始位置が“0”である場合、パケットのシーケンス番号は、“0”となる。
【0152】
したがって、例えば、再構成部184の出力制御部205が記憶している、出力すべきシーケンス番号が“0”であり、通信制御部183から供給されたパケットのシーケンス番号が“0”である場合、再構成部184の出力制御部205は、通信制御部183から供給された、シーケンス番号が“0”であるパケットを、管理部181に供給する。
【0153】
また、再構成部184の出力制御部205は、管理部181にパケットを供給すると、出力すべきシーケンス番号を更新する。例えば、再構成部184の出力制御部205が、シーケンス番号が“0”であるパケットを管理部181に供給し、そのパケットに格納されているパートの大きさ(サイズ)が“1100KB”である場合、構成部184の出力制御部205は、出力すべきシーケンス番号を、1100だけ増加させて、“1100“とする

【0154】
一方、再構成部184の出力制御部205は、通信制御部183からから供給されたパケットのシーケンス番号が、出力すべきシーケンス番号と同じ番号でない場合、通信制御部183から供給されたパケットを、管理部181に供給せずに、再構成部184の記憶部206に供給する。
【0155】
また、再構成部184の出力制御部205は、記憶部206に記憶されているパケットのうち、パケットのシーケンス番号が、出力すべきシーケンス番号と同じ番号であるパケットを、記憶部206から取得し、管理部181に供給する。
【0156】
再構成部184の記憶部206は、再構成部184の出力制御部205から供給されたパケットを一時的に記憶する。また、再構成部184の記憶部206は、記憶しているパケットを、再構成部184の出力制御部205に供給する。
【0157】
サーバ52-1乃至サーバ52-Nのそれぞれは、受信部221-1乃至受信部221-N、取得部222-1乃至取得部222-N、記録部223-1乃至記録部223-N、および送信部224-1乃至送信部224-Nをそれぞれ備えている。
【0158】
受信部221-1乃至受信部221-Nのそれぞれは、クライアント51から送信されてきた通信要求信号または送信要求信号をそれぞれ受信し、受信した通信要求信号または送信要求信号を、取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれに供給する。
【0159】
取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれは、受信部221-1乃至受信部221-Nのそれぞれから、通信要求信号が供給されると、通信要求信号を受信した旨の応答信号を生成し、生成した応答信号を送信部224-1乃至送信部224-Nのそれぞれに供給する。
【0160】
また、取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれは、受信部221-1乃至受信部221-Nのそれぞれから、送信要求信号が供給されると、記録部223-1乃至記録部223-Nのそれぞれが記録しているコンテンツデータから、送信が要求されたコンテンツデータのパートを取得し、取得したパート(コンテンツデータ)を、例えば、TCP方式のパケットに格納する。なお、このとき、取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれは、送信要求信号を基に、パートが格納されるパケットにシーケンス番号を付与し、そのシーケンス番号をパケットのヘッダに格納する。取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれは、コンテンツデータのパートを格納したパケットを、送信部224-1乃至送信部224-Nのそれぞれに供給する。
【0161】
記録部223-1乃至記録部223-Nのそれぞれは、コンテンツデータを記録している。記録部223-1乃至記録部223-Nのそれぞれは、記録しているコンテンツデータ(の一部(パート))を取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれに供給する。
【0162】
送信部224-1乃至送信部224-Nのそれぞれは、取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれから供給された、コンテンツデータが格納されているパケット、または応答信号を、通信網53を介してクライアント51あてに送信する。
【0163】
なお、以下、受信部221-1乃至受信部221-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に受信部221と称する。また、以下、取得部222-1乃至取得部222-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に取得部222と称する。
【0164】
さらに、以下、記録部223-1乃至記録部223-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に記録部223と称する。さらに、また、以下、送信部224-1乃至送信部224-Nのそれぞれを、個々に区別する必要のない場合、単に送信部224と称する。」

「【0169】
ノード情報記憶部252は、設定部251の制御のもと、設定部251から供給されたノード情報を記憶する。なお、ノード情報には、上述したように、送信ノードとしてのサーバ52の数、サーバ52の送信能力、サーバ52のIPアドレスなどが含まれている。また、ノード情報記憶部252は、設定部251の制御のもと、設定部251から供給された追加ノード情報を基に、記憶しているノード情報を更新する。」

「【0178】
次に、図9のフローチャートを参照して、コンテンツデータを2つのセグメントに分割する場合における、後述するクライアント51によるコンテンツデータの受信の処理、およびサーバ52が、クライアント51から要求されたコンテンツデータを送信する処理の概要を説明する。なお、図9のフローチャートの説明においては、クライアント51が、1つのサーバ52からコンテンツデータのパートをダウンロードする処理を説明するが、実際には、クライアント51は、これに並行して、複数のサーバ52からコンテンツデータのパートをダウンロードする処理を実行する。」

「【0189】
まず、図10のフローチャートを参照して、図9で説明した、クライアント51による、コンテンツデータの受信の処理の詳細を説明する。
【0190】
ステップS61において、設定部251は、管理部181から供給された初期設定情報を、算出部253および通信制御部183に供給する。算出部253は、設定部251から供給された初期設定情報を記憶する。
【0191】
ステップS62において、通信制御部183は、サーバ52とのコネクションを確立させる。すなわち、通信制御部183は、設定部251から供給された初期設定情報を記憶し、さらに、通信要求信号を生成する。通信制御部183の送信部203は、通信制御部183が生成した通信要求信号を、通信網53を介して、サーバ52あてに送信する。そして、これに応じてサーバ52から応答信号が送信されてくると、通信制御部183の受信部204は、サーバ52から送信されてきた応答信号を受信する。応答信号を受信すると、通信制御部183は、コネクションが確立された旨の信号を生成し、割り当て部182に供給する。
【0192】
通信制御部183から、コネクションが確立された旨の信号が供給されると、ステップS63において、設定部251は、ダウンロードの開始を指示する信号を生成し、生成したダウンロードの開始を指示する信号を、算出部253に供給する。
【0193】
設定部251から算出部253に、ダウンロードの開始を指示する信号が供給されると、ダウンロードの開始が指示されたので、ステップS64において、算出部253は、記憶している初期設定情報、およびノード情報記憶部252が記憶しているノード情報を参照して、割り当て情報を生成し、生成した割り当て情報を、通信制御部183に供給する。
【0194】
例えば、初期設定情報に、1つのセグメントの大きさが“2300KB”であり、コンテンツデータを分割するセグメントの数が“6”である情報が含まれており、ノード情報に含まれている、送信ノードとしてのサーバ52の数が“2”である場合、算出部253は、1つのセグメントの大きさを2300KBとして、図5に示すように、ダウンロードが指示されたコンテンツデータを6つのセグメント71-1乃至セグメント71-6に分割する(セグメント71-1乃至セグメント71-6に分割されるように分割位置を指定する)。
【0195】
次に、算出部253は、セグメント71を、送信ノードとしてのサーバ52の数に分割する(分割位置を指定する)。すなわち、算出部253は、セグメント71が2つのパート111およびパート112に分割されるように分割位置を指定する。なお、このとき、算出部253は、パート111およびパート112の大きさがそれぞれ等しくなるようにセグメント71を分割する。したがって、この場合、算出部253は、パート111およびパート112の大きさが、それぞれ1150KB(2300/2)となるようにセグメント71を分割する。
【0196】
セグメント71を分割すると、算出部253は、パート111の送信を、例えば、サーバ52-1に割り当て、パート112の送信を、サーバ52-1とは異なるサーバ52-2に割り当てる。そして、算出部253は、パート111-1を特定するための割り当て情報、およびパート112-1を特定するための割り当て情報を、それぞれ生成する。算出部253は、生成したパート111-1を特定するための割り当て情報を、通信制御部183-1に供給し、パート112-1を特定するための割り当て情報を、通信制御部183-2に供給する。
【0197】
割り当て情報には、例えば、図11に示すように、ダウンロードするコンテンツデータを特定するための情報、コンテンツデータを分割するセグメントの大きさを示す情報、セグメントを特定するための情報、パートの始点位置を示す情報、およびパートの終点位置を示す情報が含まれている。
【0198】
図11の例においては、ダウンロードするコンテンツデータが、コンテンツデータAである情報が含まれており、コンテンツデータを分割するセグメントの大きさが、2300KBである情報が含まれている。
【0199】
また、セグメントを特定するための情報として“1/6”が含まれている。ここで、“1/6”は、この情報によって特定されるセグメントが、コンテンツデータを構成する6つのセグメントのうちの、1番目(先頭)のセグメントであることを示している。したがって、例えば、図5において、1番目のセグメントは、コンテンツデータを構成するセグメント71のうち、再生を開始する位置のデータ、すなわち、再性時刻t50に対応するデータが含まれているセグメント71-1をいう。
【0200】
さらに、図11に示す割り当て情報には、パートの始点位置が“0”である情報、およびパートの終点位置が“1150”である情報が含まれている。ここで、パートの始点位置および終点位置は、コンテンツデータの先頭の位置を“0”として、データが1KB増えるごとにインクリメントした値で表されている。したがって、この場合、始点位置が“0”であり、終点位置が“1150”であるパートは、コンテンツデータの先頭から1150KBのデータである。すなわち、このパートは、コンテンツデータの先頭をパートの先頭(開始位置)とする、大きさが1150KBのデータとなる。
【0201】
図10のフローチャートの説明に戻り、ステップS65において、通信制御部183は、算出部253から供給された割り当て情報を含む、送信要求信号を生成し、通信制御部183の送信部203は、通信制御部183が生成した送信要求信号を、通信網53を介してサーバ52あてに送信する。
【0202】
サーバ52は、送信要求信号を受信すると、それに応じて送信が要求されたコンテンツデータのパートを送信してくるので、ステップS66において、通信制御部183の受信部204は、サーバ52から送信されてきたコンテンツデータのパートを受信する。そして、通信制御部183は、受信されたパートを再構成部184に供給する。
【0203】
また、サーバ52において、コンテンツデータのパートの送信が終了すると、サーバ52は、終了通知信号を送信してくるので、ステップS67において、通信制御部183の受信部204は、サーバ52から送信されてきた終了通知信号を受信する。
【0204】
ステップS68において、通信制御部183は、通信制御部183の受信部204が受信したパートの受信情報を生成し、生成した受信情報を割り当て部182に供給する。例えば、ステップS68において、通信制御部183は、図12に示す受信情報を生成する。
【0205】
受信情報には、パートを送信してきた、送信ノードとしてのサーバを特定する情報、受信したパートが含まれているセグメントを特定する情報、受信したパートの開始位置を示す情報、受信したパートの終点位置を示す情報、ダウンロードしたパートのダウンロード速度を示す情報、およびパートをダウンロードする処理のスループットの変動の大きさを示す情報が含まれている。
【0206】
図12では、受信情報には、“サーバP”である、送信ノードとしてのサーバを特定する情報、および“1/6”であるセグメントを特定する情報が含まれている。ここで、“1/6”は、コンテンツデータを構成する6つのセグメントのうちの、1番目のセグメントを表している。また、受信情報には、“0”であるパートの始点位置を示す情報、“1150”であるパートの終点位置を示す情報、“3Mbps”であるダウンロード速度を示す情報、および“0Mbps”であるスループットの変動の大きさを示す情報が含まれている。
【0207】
なお、上述したように、始点位置が“0”であり、終点位置が“1150”であるパートは、コンテンツデータの先頭から1150KBのデータである。また、受信情報に、スループットの変動の大きさ(絶対値)ではなく、スループットの変動の分散値が含まれるようにしてもよい。
【0208】
図10の説明に戻り、ステップS69において、再割り当て制御部254は、通信制御部183から供給された受信情報を、受信履歴記憶部255に供給し、受信履歴記憶部255に、受信履歴を更新させる。
【0209】
ここで、受信履歴には、例えば、図13に示すように、各セグメントを構成するパートのそれぞれの受信情報が含まれている。図13では、1番目のセグメントを構成するパートの受信情報、および2番目のセグメントを構成するパートの受信情報が含まれている。また、1番目のセグメントを構成するパートの受信情報として、“サーバP”から受信したパートの受信情報、および“サーバQ”から受信したパートの受信情報が含まれている。
【0210】
1番目のセグメントを構成するパートの受信情報のうち、“サーバP”から受信したパートの受信情報には、“0”であるパートの始点位置を示す情報、“1150”であるパートの終点位置を示す情報、“3Mbps”であるダウンロード速度を示す情報、および“0Mbps”であるスループットの変動の大きさを示す情報が含まれており、“サーバQ”から受信したパートの受信情報には、“1150”であるパートの始点位置を示す情報、“2300”であるパートの終点位置を示す情報、“2Mbps”であるダウンロード速度を示す情報、および“0Mbps”であるスループットの変動の大きさを示す情報が含まれている。
【0211】
また、2番目のセグメントを構成するパートの受信情報として、“サーバP”から受信したパートの受信情報、および“サーバQ”から受信したパートの受信情報が含まれている。2番目のセグメントを構成するパートの受信情報のうち、“サーバP”から受信したパートの受信情報には、“2300”であるパートの始点位置を示す情報、“3680”であるパートの終点位置を示す情報、“3Mbps”であるダウンロード速度を示す情報、および“0Mbps”であるスループットの変動の大きさを示す情報が含まれており、“サーバQ”から受信したパートの受信情報には、“3680”であるパートの始点位置を示す情報、“4600”であるパートの終点位置を示す情報、“3Mbps”であるダウンロード速度を示す情報、および“1Mbps”であるスループットの変動の大きさを示す情報が含まれている。
【0212】
図10の説明に戻り、ステップS70において、再割り当て制御部254は、受信履歴記憶部255が記憶している受信履歴を参照して、コンテンツデータのダウンロードが完了(終了)したか否かを判定する。例えば、受信履歴記憶部255が、図13に示す受信履歴を記憶している場合、コンテンツデータが、6つのセグメントに分割されており、1番目のセグメントおよび2番目のセグメントのダウンロードが完了しているが、3番目乃至6番目のセグメントのダウンロードが完了していないので、再割り当て制御部254は、コンテンツデータのダウンロードが完了していないと判定する。
【0213】
ステップS70において、コンテンツデータのダウンロードが完了していないと判定された場合、ステップS71に進み、再割り当て制御部254は、パートの送信の割り当てをし直す、再割り当てを指示する信号を生成し、生成した再割り当てを指示する信号を、算出部253に供給する。
【0214】
再割り当て制御部254から算出部253に、再割り当てを指示する信号が供給されると、ステップS72において、算出部253は、パートの送信の再割り当てが指示されたので、初期設定情報、ノード情報記憶部252が記憶しているノード情報、および受信履歴記憶部255が記憶している受信履歴を参照して、まだダウンロードされていないセグメントを、パートに分割して、パートごとの割り当て情報を生成する。そして、算出部253は、生成した割り当て情報を、通信制御部183に供給して、ステップS65に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0215】
例えば、図5に示すコンテンツデータのうち、セグメント71-1のダウンロードが終了しており、セグメント71-2乃至セグメント71-6のダウンロードが終了していない場合、算出部253は、ノード情報および受信履歴を参照して、セグメント71-2乃至セグメント71-6のそれぞれを、ノード情報に含まれている、送信ノードとしてのサーバ52の数によって示される数に分割する。
【0216】
例えば、ノード情報に含まれている、送信ノードとしてのサーバ52の数が“2”である場合、算出部253は、セグメント71-2乃至セグメント71-6を、それぞれ2つのパートに分割する。このとき、パートの大きさは、例えば、受信履歴に含まれている、パートのダウンロード速度を基に、式(4)を計算して定める。
【0217】
Pi=Vi×D/(ΣVi) ・・・(4)
【0218】
ここで、Piは、サーバ52-i(但し、1≦i≦N)に割り当てるパートの大きさを示しており、Viは、前回、サーバ52-iからダウンロードしたパートのダウンロード速度を示している。また、Σは、iを1からNに変えてのViの和(合計)をとることを表し、Dは、セグメントの大きさを示す。
【0219】
したがって、例えば、図5に示すセグメント71の大きさが2300KBであり、パート111-1のサーバ52-1からのダウンロード速度が“3Mbps”であり、パート112-1のサーバ52-2からのダウンロード速度が“2Mbps”であり、さらに、セグメント71-2乃至セグメント71-6を、それぞれ、パート111-2乃至パート111-6、およびパート112-2乃至パート112-6に分割して、パート111-2乃至パート111-6をサーバ52-1からダウンロードし、パート112-2乃至パート112-6をサーバ52-2からダウンロードする場合、パート111-2乃至パート111-6のそれぞれの大きさは、式(4)から、1380KB(3×2300/(2+3))と算出される。
【0220】
そして、算出部253は、セグメント71-2乃至セグメント71-6をそれぞれ分割すると、パート111の送信を、サーバ52-1に割り当て、パート112の送信を、サーバ52-2に割り当てる。そして、算出部253は、パート111-2を特定するための割り当て情報、およびパート112-2を特定するための割り当て情報を、それぞれ生成する。算出部253は、生成したパート111-2を特定するための割り当て情報を、通信制御部183-1に供給し、パート112-2を特定するための割り当て情報を、通信制御部183-2に供給する。
【0221】
なお、セグメントをパートに分割するとき、セグメントの大きさおよびダウンロード速度を基に、パートの大きさを定めると説明したが、例えば、受信履歴に含まれているスループットの変動の大きさを用いて、サーバ52に割り当てるパートの大きさを変化させるようにしてもよい。この場合、例えば、スループットの変動が少ないサーバ52に、より大きいパート(の送信)が割り当てられる。すなわち、スループットの変動が大きいサーバ52には、そのサーバ52の送信能力と比べて小さいパート(の送信)が割り当てられる。
【0222】
また、再割り当てを行う場合、ノード情報記憶部252のノード情報が更新されて、新たな送信ノードとしてのサーバ52が追加されたとき、新たに追加されたサーバ52からのダウンロード速度として、予め定められた所定の値を用いて式(4)を算出し、再割り当てを行う。したがって、例えば、新たに、ノード情報にサーバ52-3の情報が追加された場合、式(4)において、ダウンロード速度V3の値を、例えば、2Mbpsとして式(4)を計算する。さらに、また、予め定められた所定の時間が経過するごとに、再割り当ての処理を行うようにすることも可能である。
【0223】
図10の説明に戻り、ステップS70において、コンテンツデータのダウンロードが完了したと判定された場合、コンテンツデータの受信の処理は終了する。
【0224】
このようにして、クライアント51は、コンテンツデータを複数のセグメントに分割(する分割位置を指定)し、さらに、各セグメントを複数のパートに分割(する分割位置を指定)して、1つのセグメントを構成するパートのそれぞれの送信を異なるサーバ52に割り当てる。そして、クライアント51は、サーバ52から、それぞれ割り当てたパートをダウンロードする。
【0225】
このように、コンテンツデータを複数のセグメントに分割し、さらに、各セグメントを複数のパートに分割して、1つのセグメントを構成するパートのそれぞれを、異なるサーバ52からダウンロードするようにしたので、クライアント51は、コンテンツデータをより迅速にダウンロードすることができる。
【0226】
また、各セグメントを、それぞれ複数のパートに分割し、それぞれのパートの大きさを、前回ダウンロードしたパートのダウンロード速度に応じて定めるようにしたので、コンテンツデータを、より効率よくダウンロードすることができ、その結果、ダウンロードが完了したコンテンツデータの量に対する、連続したコンテンツの再生に用いることができるコンテンツデータの量の割合をより大きくすることができる。これにより、サーバ52や通信網53に問題が発生した場合に、コンテンツの再生が途切れてしまう可能性をより低くすることができる。」

(イ)引用文献1に記載された発明
(イ-1)段落【0067】?【0077】、【0100】?【0101】には、クライアントが、これから受信するコンテンツを分割して、2つのサーバからダウンロードすることが記載されている。具体的には、コンテンツを、1分間再生するのに必要なデータの大きさのセグメントに分割し、さらに、セグメントを、2つのサーバから分割してダウンロードするために2つのデータに分割する(セグメントを分割したデータをパートという。)。クライアントは、2つのサーバからそれぞれのパートをダウンロードすることが記載されている。
すなわち、『コンテンツを一定時間再生するのに必要な大きさのセグメントに分割し、さらにセグメントを2つのサーバからダウンロードするために、2つのパートに分割し、』クライアントは、2つのサーバからそれぞれのパートをダウンロードすることが記載されている。

(イ-2)段落【0122】?【0164】には、クライアント及びサーバの機能の構成が記載されている。
『クライアントは、サーバ52-1?52-2とそれぞれ通信制御部183-1?183-Nを介し通信を行う』(段落【0123】、【0127】)。

クライアントにおける通信制御部183-1は、割り当て情報が含まれる送信要求信号をサーバ52-1に送信する(段落【0139】)。ここで、割り当て情報にはコンテンツのパートを特定する情報が含まれる(段落【0134】)。
通信制御部183から割り当て部182には、通信制御部183がパートをダウンロード(受信)が完了するたびに、そのパートのダウンロード速度が含まれる受信情報が供給される(段落【0135】)。

『サーバ52はIPアドレスを有する』(段落【0169】)。

『クライアント51及びサーバ52-1乃至サーバ52-Nから構成されるネットワークはピアツーピアネットワークである』(段落【0057】)。

『クライアント51とサーバ52-1、クライアント51とサーバ52-2とは並行してダウンロードする』(段落【0178】)。

クライアントは、ダウンロードしたデータを『再生する』ものである(段落【0097】、【0107】、【0226】)。

(イ-3)段落【0189】?【0226】には、クライアント51によるコンテンツデータの受信処理が記載されている。
サーバの数が2つの場合、コンテンツデータを分割したセグメントを、同じ大きさに2つのパートに分割する(段落【0194】?【0195】)。
第1のパートを第1サーバに割り当て、第2のパートを第2サーバに割り当て、それぞれのパートを特定する割り当て情報を生成する(段落【0196】)。
『割り当て情報をそれぞれのサーバに送信し、それぞれのサーバから送信されたパートを受信する』(段落【0201】?【0202】)。
クライアントは、『ダウンロードしたパートのダウンロード速度それぞれを得る』(段落【0204】?【0205】)。
コンテンツのダウンロードが完了していない場合は、再割り当てを行う(段落【0213】)。
2つのパートの大きさは、『パートのダウンロード速度を基に計算し、第1のパートを第1サーバに割り当て、第2のパートを第2サーバに割り当て、それぞれのパートを特定する割り当て情報を生成し』(段落【0215】?【0220】)、『割り当て情報をそれぞれのサーバに送信し、』上記処理をコンテンツのダウンロードが完了するまで繰り返す(段落【0214】)。

(イ-4)以上より、引用文献1に記載された発明を、クライアントがコンテンツをダウンロードする動作を方法の発明として認定すると、次のとおりである。この発明を以下「引用発明」という。

(引用発明)
(a)少なくとも第1および第2の通信制御部を含むクライアントにおいて再生されるコンテンツを提供する方法であり、
(a-1)コンテンツを一定時間再生するのに必要な大きさのセグメントに分割し、さらにセグメントを2つのサーバからダウンロードするために、第1、第2のパートに分割し、
(a-2)第1の通信制御部を介して第1サーバから第1のパートをダウンロードし、
(a-3)第2の通信制御部を介して第2サーバから第2のパートをダウンロードし、
(a-4)各サーバはアドレスを有し、クライアント及び第1、第2サーバから構成されるネットワークはピアツーピアネットワークであり、
(a-5)クライアントと第1サーバ、クライアントと第2サーバとは並行してダウンロードする方法であって、
(a-6)クライアントにおいて、
(b)第1、第2のサーバからダウンロードしたパートのダウンロード速度を得るステップと、
(c)パートのダウンロード速度を基に、第1、第2のパートを特定する割り当て情報を生成し、割り当て情報を第1、第2のサーバに送信するステップと、
(d)第1サーバから送信された第1のパート及び第2サーバから送信された第2のパートを受信するステップと、を含む、
(e)前記方法。

((a)?(e)は、引用発明の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成a」等という。)

イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-36666号公報(上記引用文献2、以下「引用文献2」という。)には、「コンテンツ配信システム、クライアント及びクライアントプログラム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0024】
[ストリームデータの構造]
図2にストリームデータST1?ST3のデータ構造を示す。横軸は再生時間を示す。また、各ストリームデータST1?ST3の面積は、データ量を示す。
【0025】
ストリームデータST1?ST3は、互いに異なる再生ビットレートBR1?BR3を有する。ストリームデータST1の再生ビットレートBR1が最も低く、ストリームデータST2の再生ビットレートBR2は再生ビットレートBR1よりも高く、ストリームデータST3の再生ビットレートBR3が最も高い。したがって、ストリームデータST3のデータ量が最も多く、ストリームデータST1のデータ量が最も少ない。
【0026】
ストリームデータST1?ST3のデータ量は互いに異なるものの、その再生時間は同じである(時刻t0?時刻t8)。同一のコンテンツに基づいて作成されているためである。
【0027】
各ストリームデータST1?ST3は、連続的に配列された複数のパート(P0?P7)に分割される。このとき、各パートPj(パート番号j=0?7)は、画質や音質が変化しても視聴への影響が少ない再生位置(時刻t1?t7)で区切られる。たとえば、動画の場合であれば、場面設定が変更される位置等で区切られる。そのため、各パートP0?P7の再生時間(D0?D7)は互いに異なる。
【0028】
ストリームデータST1?ST3は、同じ再生位置(t1?t7)で分割されるため、各ストリームデータの同じパートPjは同じ再生時間Djを有する。たとえば、ストリームデータST1のパートP0と、ストリームデータST2のパートP0と、ストリームデータST3のパートP0とは、同じ再生時間D0を有する。」

「【0040】
クライアント20は、パートP0の再生が終了した時刻t1において、サーバに要求するストリームデータSTiを選択する(データ要求処理:図6)。データ要求処理では、次のパート(パートP1)の全データ量SZ(3,1)が既にバッファ領域27に蓄積されているか判断し、既に蓄積されている場合、パートP1の再生時間D1中にバッファ領域27に蓄積可能なデータ量に基づいて、再生ビットレートBR3(ストリームデータST3)を変更するか否かを判断する。時刻t1では、データ量SZ(3,1)が既にバッファ領域27に蓄積されており、かつ、再生ビットレートBR3のまま維持すると判断し、そのまま再生を継続する。
【0041】
時刻t21で配信ビットレートBRcurは低下し、再生ビットレートBR3よりも低くなる。そのため、時刻t21以降、バッファ領域27に蓄積されているデータ量DL(t)は減少する。つまり、図4中のDL(t)の傾きの方が、DST3の傾きよりも小さくなる。
クライアント20は、時刻t3でデータ要求処理を実施し、次のパートP3のデータ量SZ(3,3)は既に蓄積しているものの、このまま再生を続けると、パートP4の再生中に蓄積したデータが枯渇する(図4中のDL(t)がDST3よりも低くなる)と判断する。このとき、クライアント20は、再生するデータをストリームデータST2(ビットレートBR2)に切り替えればパートP4以降も再生が途切れないと判断し、サーバ10にストリームデータST2をパートP4から配信するよう要求する。この動作により、クライアント20は時刻t4(パートP4)以降ストリームデータST2を再生する。」

「【図2】



(イ)引用文献2に記載された技術
引用文献2には、『コンテンツを提供する際に、複数のビットレートのデータストリームを用意し、各データストリームを同じ再生時間のパートに分割し、配信ビットレートにより、上記ビットレートのデータストリームのパートを選択する』技術が開示されている。

(5)対比
ア 補正後発明と引用発明との対比
補正後発明と引用発明とを対比する。

(ア)構成要件Aと構成aとを対比する。
引用発明における「クライアント」は、補正後発明の「クライアント装置」に相当する。
引用発明の「再生されるコンテンツ」は、「レンダリングされるコンテンツ」といえる。
また、引用発明の「通信制御部」は、当該「通信制御部」を介してサーバと通信するから「通信インターフェース」といえる。
したがって、補正後発明と引用発明とは「少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法」として一致する。

(イ)構成要件A-1と構成a-1、a-2、a-3、a-4、a-5とを対比する。
引用発明の「通信制御部」は、補正後発明の「通信インターフェース」に相当する。
引用発明の「通信制御部」はアドレスを有することは特定されていないが、引用発明においては、「各サーバはアドレスを有し、クライアント及び第1、第2サーバから構成されるネットワークはピアツーピアネットワークであ」る(構成a-4)から、「通信制御部」がアドレスを有することは明らかである。
また、引用発明においては、「クライアントと第1サーバ、クライアントと第2サーバとは並行してダウンロードする」(構成a-5)から、第1通信制御部、第2通信制御部がそれぞれアドレスを有することも明らかである。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であ」る点で一致する。

(ウ)構成要件A-2と構成a-1、a-2、a-3、a-4とを対比する。
引用発明における「パート」は、コンテンツの一部であり、第1、第2サーバからクライアントにダウンロードされるものであって、第1、第2サーバが通信インターフェースを有することは明らかであり、各サーバはアドレスを有するから、補正後発明と引用発明とは、「前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能」である点で一致する。

(エ)構成要件A-3と構成a-2、a-4とを対比する。
引用発明は、「第1の通信制御部を介して第1サーバから第1のパートをダウンロード」するから、ダウンロードするための「経路」があることは明らかであり、当該「経路」は「第1の経路」といい得る。
また、第1サーバはアドレスを有する(構成a-4)。
さらに、「第1の通信インターフェース」に相当する「第1の通信制御部」がアドレスを有することは、上記(イ)のとおりである。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され」る点で一致する。

(オ)構成要件A-4と構成a-3、a-4とを対比する。
引用発明は、「第2の通信制御部を介して第2サーバから第2のパートをダウンロード」するから、ダウンロードするための「経路」があることは明らかであり、当該「経路」は「第2の経路」といい得る。
また、第2サーバはアドレスを有する(構成a-4)。
さらに、「第2の通信インターフェース」に相当する「第2の通信制御部」がアドレスを有することは、上記(イ)のとおりである。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され」る点で一致する。

(カ)構成要件A-5、A-6、A-7と構成a-1とを対比する。
引用発明の「セグメント」はデータの塊であるから、「チャンク」といえ、引用発明においては、「コンテンツを一定時間再生するのに必要な大きさのセグメントに分割」するから、「前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され」る点で、補正後発明と共通する。
しかしながら、引用発明における「コンテンツ」は、「対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能で」はない。
したがって、補正後発明と引用発明とは、引用発明が、
「前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能で」なく、
「前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され」ておらず、
「チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され」ていない点で、補正後発明と相違する(相違点1)。

(キ)構成要件A-8と構成a-2、a-3、a-5とを対比する。
「第1の経路」、「第2の経路」については、上記(エ)、(オ)のとおりである。
また、引用発明は、「クライアントと第1サーバ、クライアントと第2サーバとは並行してダウンロードする」(構成a-5)から、コンテンツが第1および第2の経路を介してクライアントから同時にアクセス可能といえる。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である」点で一致する。

(ク)構成要件A-9、A-10と構成a-5、a-6とを対比する。
補正後発明と引用発明とは、「方法であって、前記クライアント装置において、」として一致する。

(ケ)構成要件Bと構成bとを対比する。
引用発明の「ダウンロード速度」は、補正後発明の「利用可能なビット・レート」に相当する。
「第1の経路」、「第2の経路」については、上記(エ)、(オ)のとおりである。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップ」を含む点で一致する。

(コ)構成要件Cについて
引用発明は、「前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップ」を含んでおらず、補正後発明と相違する(相違点2)。

(サ)構成要件Dと構成dとを対比する。
引用発明においては、セグメントが第1のパートと第2のパートに分割される(構成a-1)から、第1のパートと第2のパートによりセグメントが構成されており、第1のパート及び第2のパートが「相補的」といえる。
また、第1のパート、第2のパートは、それぞれ、「第1の部分」、「第2の部分」といえ、セグメントはデータの塊であるから、「チャンク」といえる。
引用発明の「第1のパートを特定する割り当て情報」は、補正後発明の「第1の部分を受信するための第1の要求」に相当し、「第1の経路」については上記(エ)のとおりであるから、「割り当て情報を第1のサーバに送信する」ことは、「第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信」するといえる。
また、引用発明の「第2のパートを特定する割り当て情報」は、補正後発明の「第2の部分を受信するための第2の要求」に相当し、「第2の経路」については上記(オ)のとおりであるから、「割り当て情報を第2のサーバに送信する」ことは、「第2の部分を受信するための第2の要求を前記第2の経路を介して送信」するといえる。
さらに、引用発明においては、「パートのダウンロード速度を基に、第1、第2のパートを特定する割り当て情報を生成」するものであり、「ダウンロード速度」は補正後発明の「利用可能なビットレート」に相当し、補正後発明と引用発明とは、「前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップ」を含む点で一致することは、上記(ケ)のとおりであるから、補正後発明と引用発明とは、「前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する」点で共通する。
以上まとめると、補正後発明と引用発明とは、「チャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、「チャンク」が、補正後発明においては「時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別される」のに対し、引用発明においては、そのように特定されていない点で相違する(相違点3)。

(シ)構成要件Eと構成eとを対比する。
「第1の経路」、「第2の経路」については、上記(エ)、(オ)のとおりである。
引用発明の「第1のパート」、「第2のパート」は、それぞれ、補正後発明の「第1の部分」、「第2の部分」に相当する。
したがって、補正後発明と引用発明とは、「前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップ」を含む点で一致する。

(セ)構成要件Fと構成fとを対比する。
補正後発明と引用発明とは、「前記方法」で一致する。

イ 一致点、相違点
以上より、補正後発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
「少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法であり、
前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有し、
前記コンテンツが、それぞれが通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、
第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、
少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、
前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、
前記コンテンツが、少なくとも前記第1および前記第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である
方法であって、
前記クライアント装置において、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップと、
チャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップと、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップと、を含む、
前記方法。」

(相違点1)
補正後発明においては、
「前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、
前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、
チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され」るのに対し、
引用発明では、「前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能で」ないから、
「前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、
チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され」るものでない点

(相違点2)
補正後発明が「前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップ」を含むのに対し、引用発明が当該ステップを含んでいない点

(相違点3)
「チャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップ」における「チャンク」が、
補正後発明においては、「時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別される」のに対し、引用発明においては、そのように特定されていない点

(6)相違点の判断
ア 相違点1、相違点3について
上記(4)イ(イ)のとおり、引用文献2には、『コンテンツを提供する際に、複数のビットレートのデータストリームを用意し、各データストリームを同じ再生時間のパートに分割し、配信ビットレートにより、上記ビットレートのデータストリームのパートを選択する』技術(以下「引用文献2の技術」という。)が記載されている。
引用文献2の技術は、コンテンツを提供する技術として引用発明と同じ技術分野であるから、引用発明に引用文献2の技術を適用することは、当業者が容易に着想することである。
引用文献2の技術は、複数のビットレートのデータストリームがあるから、「コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であ」るといえる。
また、引用文献2の技術は、各データストリームを同じ再生時間のパートに分割しているから、「前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され」るといえる。
さらに、「チャンク」に相当する引用文献2の技術における「パート」は、引用文献2の図2から、時間とビットレートにより識別されるものであるから、「チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され」るといえる。
そうすると、引用発明に引用文献2の技術を適用することにより、引用発明において、「前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、
前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、
チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである(相違点1)。
また、「チャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記チャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および少なくとも前記第2の部分のそれぞれが、前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した第2の利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップ」における「チャンク」も、同様に、「時間指標i」および「ビット・レート」によって識別されるものとなる(相違点3)。

イ 相違点2について
上記アのとおり、引用発明に引用文献2の技術を適用して、相違点1、相違点3の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることであって、その際に、どのように「ビットレート」を決定するかを検討する。
引用発明は、パートのダウンロード速度を基に、第1、第2のパートを特定する割り当て情報を生成し、割り当て情報を第1、第2のサーバに送信し、第1サーバから送信された第1のパート及び第2サーバから送信された第2のパートを受信するものであり(構成c、d)、第1、第2のパートのダウンロード速度、すなわち、ビットレートを利用するものである。
一方、引用発明に引用文献2の技術を適用することにより、複数のバージョンが利用可能となり、どのバージョンを要求するかを決定することが必要となることは明らかである。
そして、バージョンはビットレート対応しているから、クライアントは、第1、第2のパートを受信する際のビットレートに基づいて、利用可能な複数のバージョンから利用するバージョンを決定することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明に引用文献2の技術を適用して、引用発明において、「前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップ」を含むようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、補正後発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

なお、上記(5)ア(イ)において、「前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースのそれぞれが通信アドレスを有」する点を、補正後発明と引用発明との一致点としたが、仮に、「通信インターフェース」がアドレスを有する点が相違点であるとしても、通信を行う際にアドレスを用いることは周知の技術であるから、引用発明において「通信インターフェース」に相当する「通信制御部」がアドレスを有するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、補正後発明は、引用文献1、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年4月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成27年5月11日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(この発明を以下「本願発明」という。)。

(本願発明)
「少なくとも第1および第2の通信インタフェースを含むクライアント装置においてレンダリングされるコンテンツを提供する方法であり、前記少なくとも第1および第2の通信インタフェースが通信アドレスを有し、前記コンテンツが、通信アドレスを有する少なくとも第1および第2のサーバ通信インタフェースを介して前記クライアント装置からアクセス可能であり、第1の経路が、前記第1の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記第1のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、少なくとも第2の経路が、前記第2の通信インタフェースの通信アドレスおよび前記少なくとも第2のサーバ通信インタフェースのアドレスによって識別され、前記コンテンツが、対応ビット・レートの制約に対応する符号化品質を有する少なくとも2つのバージョンで利用可能であり、前記少なくとも2つのバージョンのそれぞれが、前記コンテンツの同一のレンダリング持続時間に対応する複数のチャンクに時間的に分割され、チャンクが、時間指標iおよび前記対応ビット・レートのうちの1つによって識別され、前記コンテンツが、前記第1および少なくとも第2の経路を介して前記クライアント装置から同時にアクセス可能である方法であって、前記クライアント装置において、
前記第1の経路上の第1の利用可能なビット・レートおよび前記少なくとも第2の経路上の少なくとも第2の利用可能なビット・レートを決定するステップと、
前記決定した第1の利用可能なビット・レートおよび前記決定した少なくとも第2の利用可能なビット・レートに基づいて、前記対応ビット・レートの中から要求ビット・レートを決定するステップと、
前記時間指標iおよび前記決定した要求ビット・レートによって識別されるチャンクの第1の部分を受信するための第1の要求を前記第1の経路を介して送信し、前記識別されたチャンクの少なくとも第2の部分を受信するための少なくとも第2の要求を前記少なくとも第2の経路を介して送信するステップであって、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分が相補的であり、前記チャンクの前記第1の部分および前記少なくとも第2の部分のそれぞれが、前記決定した利用可能なビット・レートから計算されるサイズを有する、前記ステップと、
前記第1の経路を介して前記要求した第1の部分を受信し、前記少なくとも第2の経路を介して前記要求した少なくとも第2の部分を受信するステップと、を含む、前記方法。」

2 判断
補正後発明は、本願発明をさらに限定したものと認められ、補正後発明が引用文献1、引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであることは、上記第2のとおりであるから、同じ理由で、本願発明は引用文献1、引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものと認められる。

3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2?15に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-10 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2012-553297(P2012-553297)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 藤井 浩
小池 正彦
発明の名称 アダプティブ・ストリーミングのマルチパス配信  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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