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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1329539
審判番号 不服2016-10793  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-15 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2014-116126「コンテンツにアクセスする装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日出願公開、特開2014-209355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)1月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年(平成20年)2月7日、米国)を国際出願日とする特願2010-545932号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年6月4日に新たな出願としたものであって、平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月13日付けで手続補正がされ、平成28年3月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年7月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年7月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年7月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.手続補正の内容
平成28年7月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲について補正するものであって、補正前の請求項1を補正後の請求項1とする補正を含んでおり、それらの記載は次のとおりである(下線は補正により変更された部分を示す)。

[補正前の請求項1]
第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる、
前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと、
前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、
一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である、
前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、
を備える、電子コンテンツへのアクセスを管理する方法。

[補正後の請求項1]
第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる、
前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと、
前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、
一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である、
前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、
を備え、前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードすることを備える、電子コンテンツへのアクセスを管理する方法。

2.補正の適否
(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、補正の目的要件について
補正後の請求項1は、補正前の請求項1における「前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすること」について、「前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードすること」との構成を付加するものである。
この補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定的に減縮するものであって、その補正前後の請求項1に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。
また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについて以下検討する。

(2)独立特許要件
ア.本願補正発明
本願補正発明は、上記[補正後の請求項1]の記載により特定される次のとおりのものである。

[本願補正発明]
「第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる、
前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと、
前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、
一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である、
前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、
を備え、前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードすることを備える、電子コンテンツへのアクセスを管理する方法。」

イ.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-328949号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。)

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルコンテンツをユーザが視聴するための技術に関する。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、デジタルコンテンツの流通が盛んになってきた。漫画喫茶や図書館などが所有している、本、CD、ビデオ等がデジタルコンテンツとなると、利用者はそのデジタルコンテンツを漫画喫茶や図書館に設置された視聴端末を用いて視聴することが期待される。利用者はデジタルコンテンツの視聴を途中で止め、次に来店した時に継続した視聴を行い、他の店舗でも続きを視聴することが期待される。次に、異なる形態の視聴端末間で継続的な視聴を行いたいというニーズが期待される。例えば、自宅でPCのWebによるマルチメディアでの読書の継続視聴と中断を、病院での電子書籍端末による文字として継続視聴と中断、さらに、電車での移動中、音声端末による音声での継続視聴と中断を行いたいというニーズである。」

「【0009】本発明の目的は、上記の課題を改善し、利用者が異なる場所または異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とするデジタルコンテンツ表示方法およびシステムを提供することにある。」

「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態としてのデジタルコンテンツ視聴方法及びシステムを説明する。ここで述べるデジタルコンテンツとは、電子書籍、音楽、映像、ゲームなど、デジタル化されたコンテンツを指す。」

「【0016】次に、図1により、詳細な流れを説明する。図1は、本発明の一実施形態であるデジタルコンテンツ視聴システムの一連の動作をを示すシーケンス図である。
【0017】ステップ101) デジタルコンテンツ視聴者(デジタルコンテンツ視聴システム利用者)は、個人識別子とコンテンツ識別子を視聴端末装置220に入力する。可搬記憶媒体230から入力しても良い。入力手段は視聴端末の形態により様々である。PCであればキーボードが一般的であろうし、個人情報が記録されたICカードを端末のカード挿入口に挿入することによって、自動的に個人識別子、コンテンツ識別子を入力することも可能である。音声入力や、タッチパネルでの入力も考えられる。また、この入力の後、個人識別子を認証するステップがあるのが実用的である。このステップ101は、個人識別子の入力ステップと、コンテンツ識別子の入力ステップの二つに分かれる形態も有る。例えば個人識別子を入力した後、視聴端末から、この個人識別子で認識される利用者が視聴可能なコンテンツの一覧をCRT等に出力され、この一覧に対し利用者がコンテンツを選択する、といった入力の方法をとっても良い。
【0018】ステップ102) 視聴端末装置220は利用者から個人識別子とコンテンツ識別子を受付ける。
【0019】ステップ103) 視聴端末装置220は視聴開始情報を取得するために、利用者から受け付けた該個人識別子と該コンテンツ識別子を通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に対して送信する。場合によっては、変換済コンテンツを得るために、端末タイプ421も、視聴データ管理装置210に送信する。図2の構成ではサーバが一つであるが、複数のサーバの場合にも本発明は適用できる。ステップ102は変換済コンテンツを取得するためのステップと、視聴開始情報を取得するためのステップに分けても良い。
【0020】ステップ104) 視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して個人識別子とコンテンツ識別子を受信する。場合によっては、視聴端末装置220から通信回線240を通して端末タイプ421も受信する。
【0021】ステップ105) 視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信した個人識別子と、視聴行動履歴とから、該個人識別子に対応した個人視聴行動履歴を得る。
【0022】ステップ106) 視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツを準備する。準備の方法は様々であり、例えば視聴データ管理装置210内に記録しておき、それを取得するといった方法や、遠隔地にあるデジタルコンテンツ保持サーバから通信回線を通して該コンテンツを取得する方法などがある。端末タイプがない場合はこのステップは無くても良い。
【0023】ステップ107) 視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツ情報を準備する。準備の手段は様々であり、例えば視聴データ管理装置210内に記録しておき、それを取得する方法や、遠隔地にあるデジタルコンテンツ情報保持サーバから通信回線を通して該コンテンツ情報を取得する方法などがある。
【0024】ステップ108) 視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して端末タイプを受信すると、ステップ106で準備した該コンテンツを端末タイプに合わせて変換し、変換済みコンテンツを生成する。変換の例として、視聴端末装置220が文字情報のみを出力できる端末の場合、文字と絵とからなるコンテンツを、文字のみのコンテンツに変換する、音声情報のみを出力できる端末の場合は文字情報を音声情報に変換する、などがある。変換済みコンテンツ生成の詳細は図8を用いて説明する。
【0025】ステップ109) 視聴データ管理装置210は、ステップ105で得た該利用者の個人視聴行動履歴と、ステップ107で得たコンテンツ情報とから、視聴再開に必要な情報である、視聴開始情報を生成する。該視聴開始情報は、個人視聴行動履歴の該コンテンツに関する個人視聴行動履歴の最新情報などから構成される。ステップ104で端末タイプを受信した場合は、上記コンテンツに関する個人視聴行動履歴の最新情報は、端末タイプに応じて変換された情報となる。また、コンテンツ視聴に関する情報を有するのが実用的である。コンテンツ視聴に関する情報とは、例えば、音声再生端末であれば設定された音量をデジタル化した情報や、映像再生装置であれば色の濃さ、コントラスト等をデジタル化した情報、などである。視聴開始情報生成の詳細は図9を用いて説明する。
【0026】ステップ110) 視聴データ管理装置210は、ステップ109で得た視聴開始情報と、ステップ104で端末タイプを受信した場合にはステップ108で得た変換済みコンテンツとを、視聴端末装置220に通信回線240を利用して送信する。視聴開始情報が示す開始位置のコンテンツを視聴端末装置220に送ることも可能である。このような場合は、視聴端末装置220へは視聴開始情報を送らなくても良い。このように、コンテンツの開始位置から送る場合とコンテンツ全てを送る場合で、モード分けしておき、そのモード情報を視聴端末装置220から入力し、視聴データ管理装置210はいずれかを選択する方法も採ることができる。
【0027】ステップ111) 視聴端末装置220は、視聴データ管理装置210から、通信回線240を通して視聴開始情報と、ステップ103で端末タイプを送信した場合にはステップ108で得た変換済みコンテンツを受信する。
【0028】ステップ112) 視聴端末装置220は、ステップ111で得た視聴開始情報と、ステップ103で端末タイプを送信した場合には変換済コンテンツ、端末タイプを送らない場合はコンテンツ、とから、視聴情報を生成する。該視聴情報とは、該コンテンツもしくは該変換済コンテンツを、視聴開始情報を元に再生するための、利用者に通知する情報と、利用者から受付けることのできる視聴に関する操作を促すデジタル化された情報から構成される。上記のように送られたコンテンツが、上記視聴開始情報が示す開始位置のコンテンツの場合、そのコンテンツの最初から視聴情報を生成する。利用者にとってそのコンテンツが最初の視聴である時も同様に最初から視聴情報を生成する。
【0029】ステップ113) 視聴端末装置220はステップ112で生成した視聴情報を利用者に通知する。通知の方法は視聴端末装置220の出力装置の形態により、様々な形態になり得る。例えば視聴端末装置220がPCの場合は、CRTに表示する画像、文字情報であり、視聴端末装置220が音声再生装置の場合には、音声情報など、である。
【0030】ステップ114) 利用者は視聴端末装置220から得た視聴情報を元に、視聴をする。視聴に関する操作はコンテンツにより様々である。一般的に、再生、進む、戻る、一時停止、停止、終了、再生位置検索、などの操作が行える。
【0031】ステップ115) 利用者が視聴端末に対し継続要求の操作を行う。例えば中断操作などである。システムによって、利用者は継続要求を意識しないようにしても良い。例えば終了操作をすることによって、継続要求の操作となるようにしても良い。
【0032】ステップ116) 視聴端末装置220は、利用者からの継続要求を受け付ける。視聴操作の受け付け方法は、視聴端末装置220の形態により、ステップ101のように様々である。利用者は継続要求を意識しないようにしても良い。例えば終了操作をされることによって、継続要求の操作となるようにしても良い。
【0033】ステップ117) 視聴端末装置220は、視聴継続情報を生成する。視聴継続情報とは、コンテンツのどの位置まで視聴したかの情報をデジタル化したものである。少なくともステップ109で記述した、コンテンツに関する利用者視聴行動履歴の最新情報と同様の情報を持っている。コンテンツ視聴に関する情報が加えられても良いも考えられる。例えば音声再生端末であれば、設定された音量をデジタル化した情報や、映像再生装置であれば、色の濃さ、コントラスト等の設定情報が加えられる場合もある。
【0034】ステップ118) 視聴端末装置220は、個人視聴行動履歴を更新するために、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を、通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に送信する。
【0035】ステップ120) 視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を受信する。
【0036】ステップ120) 視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から受信した、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報とから、視聴行動履歴の該個人識別子で識別される個人視聴行動履歴を更新する。104で端末タイプが受信されている場合、視聴継続情報は端末タイプに合わせて変換しても良い。更新とは情報の挿入や、情報の書き換えを意味する。」

「【0045】図4は本実施形態の視聴端末装置220の概略構成図である。図4に示すように、視聴端末装置220は、CPU401、入力装置402、出力装置403、通信アダプタ404、可搬記憶媒体I/O装置405、メモリ410、記憶装置420より構成される。
【0046】CPU401は、視聴データ管理装置220全体の動作を制御する制御装置である。入力装置402は、ユーザからの情報を入力し、デジタル化するための装置であり、個人識別子、コンテンツ識別子、視聴操作を入力し、デジタル化する。キーボードや音声入力装置や、タッチパネル等、様々な形態がある。出力装置403は、デジタル化された情報を、利用者が認識できるものに変換し、ユーザに情報を伝達するための装置であり、利用者にコンテンツを視聴させたり、視聴操作を促したりする。CRTやスピーカや、振動装置など、様々な形態がある。通信アダプタ404は、他の装置とデジタル化された情報の送受信を行うための装置であり、視聴視聴データ管理装置210と情報の送受信を行う。可搬記憶媒体I/O装置405は、可搬記憶媒体230へ情報の読み書きを行う装置であり、ICカードリーダライタや、スマートカードリーダライタがある。メモリ410は、視聴端末装置220の動作を制御するための各種処理プログラムやデータを保持する記憶装置である。記憶装置420は、前記各種処理プログラムや視聴行動履歴や、場合によってはデジタルコンテンツを格納する磁気ディスク等の記憶装置である。
【0047】視聴端末装置220は、利用者入出力処理部411と、受信送信処理部412と、視聴情報生成処理部413と、視聴継続情報生成処理部414と、制御処理部415を有している。
【0048】利用者入出力処理部411は、利用者が入力装置402に入力した情報をメモリ410にロードする。場合によっては可搬記憶媒体I/O装置405を用いて、可搬記憶媒体230から入力する。また、視聴情報生成処理部413によって生成された視聴情報を、必要ならば出力装置に出力できる形式に変換し、出力装置に出力することによって、利用者に視聴させ、視聴操作を促す。
【0049】受信送信処理部412は、通信アダプタ404を利用し、通信回線240を通して視聴データ管理装置210との情報の送受信を行う。受信した情報は、メモリ410にロード、もしくは記憶装置420に格納される。
【0050】視聴情報生成処理部413は、受信送信処理部412で得た視聴開始情報と変換済コンテンツ、もしくは自ら準備したコンテンツから、利用者が視聴するべきデジタル化された情報を生成し、これと視聴操作を促す情報を合わせて視聴情報として、メモリ410にロードする。コンテンツの準備の方法は様々であり、例えばコンテンツ保管DBから準備しても良いし、視聴データ端末装置から受信しても良い。視聴情報生成処理部413は、利用者入出力処理部によって利用者から入力された操作情報から、視聴情報を更新する。
【0051】視聴継続情報生成処理部414は、利用者入出力処理部によってメモリ410にロードされた情報と、視聴情報生成処理部413によって生成及び更新された視聴情報から、視聴継続情報を生成し、メモリ410にロードする。視聴継続情報は、コンテンツのどこまでを視聴したかなどの視聴の中断に関するデジタル化された情報である。制御処理部415は、メモリ410内の各処理部および記憶装置420といった視聴端末装置220全体を制御する。端末タイプ421は、該視聴端末装置220の特徴をデジタル化した情報であり、記憶装置420に格納されている。読み出しメモリ等に格納されていても良い。端末タイプ421により、その視聴端末装置220で視聴できるコンテンツの種類が制限される。例えば端末タイプ421が音声出力のみ可能であるという情報を持つ場合、視聴端末装置220は音声出力のみを備えた装置であるということを意味し、視覚に訴えるコンテンツの再生はできないということになる。コンテンツ保管DB422は、視聴データ管理装置210から受信した変換済コンテンツを保管する。主に視聴データ管理装置210との転送をキャッシュする目的や、メモリ420に変換済コンテンツが入りきらない場合の保管の目的で存在する。視聴データ管理装置210を、利用者入出力処理部411と、受信送信処理部412と、視聴情報生成処理部413と、視聴継続情報生成処理部414と、制御処理部415として機能させるためのプログラムは、CD-ROM等の記憶媒体から記憶装置420に格納された後、メモリ410にロードされて実行されるものとする。なお、前記プログラムを記憶する媒体は、CD-ROM以外の他の媒体、例えばDVDやDATでも良い。また、通信アダプタ404を介して他の装置から記憶媒体に格納しても良い。
【0052】図5は、視聴行動履歴管理DB321内に格納される視聴行動履歴500の例である。視聴行動履歴500は、デジタル化された情報であり、文字列等で表される複数の個人識別子と、コンテンツ識別子、該コンテンツ識別子で識別されるコンテンツに関する視聴行動に関する履歴から構成され、複数の個人視聴行動履歴510からなる。個人視聴行動履歴510は、1つの個人識別子に対して0個以上のコンテンツ識別子と、コンテンツ識別子に対して1つ以上の履歴情報から構成される。その他個人の嗜好などの個人情報や利用開始日等のシステム運用用の付帯情報などがあると実用的である。履歴情報はデジタルコンテンツの視聴開始位置が特定できるようなマーキング位置を有しており、同時に日付や視聴した端末などの情報があるのが実用的である。コンテンツに対しての履歴情報のうち、最も新しいものを、コンテンツに関する個人視聴行動履歴の最新情報511とする。」

以上の記載(特に、下線部)および図面(特に、図1)から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
利用者が、異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とするデジタルコンテンツ視聴方法であって、
デジタルコンテンツ視聴者(デジタルコンテンツ視聴システム利用者)は、個人識別子とコンテンツ識別子を視聴端末装置220に入力するステップ101と、
視聴端末装置220は利用者から個人識別子とコンテンツ識別子を受付けるステップ102と、
視聴端末装置220は視聴開始情報を取得するために、利用者から受け付けた該個人識別子と該コンテンツ識別子を通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に対して送信するステップ103と、
ここで、視聴データ管理装置210は、一つ又は複数のサーバであり、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して個人識別子とコンテンツ識別子を受信するステップ104と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信した個人識別子と、視聴行動履歴とから、該個人識別子に対応した個人視聴行動履歴を得るステップ105と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツを準備するステップ106と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツ情報を準備するステップ107と、
視聴データ管理装置210は、ステップ105で得た該利用者の個人視聴行動履歴と、ステップ107で得たコンテンツ情報とから、視聴再開に必要な情報である、視聴開始情報を生成するステップ109と、
視聴データ管理装置210は、ステップ109で得た視聴開始情報と、視聴開始情報が示す開始位置からのコンテンツ又はコンテンツ全てとを、視聴端末装置220に通信回線240を利用して送信するステップ110と、
視聴端末装置220は、視聴データ管理装置210から、通信回線240を通して視聴開始情報と、コンテンツを受信するステップ111と、
視聴端末装置220は、ステップ111で得た視聴開始情報と、コンテンツ、とから、視聴情報を生成し、利用者にとってそのコンテンツが最初の視聴である時は最初から視聴情報を生成するステップ112と、
視聴端末装置220はステップ112で生成した視聴情報を利用者に通知するステップ113と、
利用者は視聴端末装置220から得た視聴情報を元に、視聴をし、視聴に関する操作はコンテンツにより様々であり、一般的に、再生、進む、戻る、一時停止、停止、終了、再生位置検索、などの操作が行えるステップ114と、
利用者が視聴端末に対し継続要求の操作を行い、例えば中断操作などであるステップ115と、
視聴端末装置220は、利用者からの継続要求を受け付けるステップ116と、
視聴端末装置220は、視聴継続情報を生成し、視聴継続情報とは、コンテンツのどの位置まで視聴したかの情報をデジタル化したものであるステップ117と、
視聴端末装置220は、個人視聴行動履歴を更新するために、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を、通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に送信するステップ118と、
視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を受信するステップ119と、
視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から受信した、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報とから、視聴行動履歴の該個人識別子で識別される個人視聴行動履歴を更新するステップ120と、
を備えたデジタルコンテンツ視聴方法

ウ.本願補正発明と刊行物1発明との対比
(ア)本願補正発明の「第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる」について

刊行物1発明の方法は、「利用者が視聴端末に対し継続要求の操作を行い、例えば中断操作などであるステップ115と、
視聴端末装置220は、利用者からの継続要求を受け付けるステップ116と、
視聴端末装置220は、視聴継続情報を生成し、視聴継続情報とは、コンテンツのどの位置まで視聴したかの情報をデジタル化したものであるステップ117と、
視聴端末装置220は、個人視聴行動履歴を更新するために、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を、通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に送信するステップ118と、
視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報を受信するステップ119と、
視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から受信した、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報とから、視聴行動履歴の該個人識別子で識別される個人視聴行動履歴を更新するステップ120」を備えている。

刊行物1発明の「視聴端末装置220」、「視聴データ管理装置210」、「個人識別子」、「コンテンツ識別子」は、それぞれ、本願補正発明の「第1の通信デバイス」、「サーバシステム」、「ユーザ識別子」、「コンテンツ識別子」に相当するものである。
刊行物1発明の「視聴継続情報」は、「コンテンツのどの位置まで視聴したかの情報をデジタル化したもの」であるから、本願補正発明の「第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表」す「マーカ情報」に相当する。
刊行物1発明における『「コンテンツ識別子」及び「個人識別子」』は、本願補正発明の「コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え」た、「データキー情報」に相当する。
刊行物1発明における『「視聴継続情報」、「コンテンツ識別子」及び「個人識別子」』(本願補正発明の『「マーカ情報」、「データキー情報」』に相当)は、利用者からの継続要求に基づいて、個人視聴行動履歴(コンテンツの中断位置を含む(【0052】、図5))を更新するためのものであるから、本願補正発明の「マーカ情報とデータキー情報とを備え」た「マーカ要求」に相当し、これは、視聴端末装置220から送信され視聴データ管理装置210で受信(本願補正発明の「第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信」に相当)される。
刊行物1発明において、「コンテンツ」は、「視聴データ管理装置210は、ステップ109で得た視聴開始情報と、視聴開始情報が示す開始位置からのコンテンツ又はコンテンツ全てとが、視聴端末装置220に通信回線240を利用して送信するステップ110」で視聴端末装置220に送信されるものであるから、「第1の通信デバイスにダウンロードされる」ものであるといえる。

以上、まとめると、刊行物1発明の方法は、「第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる」を備えるといえ、この点で本願補正発明と一致する。

(イ)本願補正発明の「前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと」について

刊行物1発明の方法は、「視聴データ管理装置210は、通信回線240を通して視聴端末装置220から受信した、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報とから、視聴行動履歴の該個人識別子で識別される個人視聴行動履歴を更新するステップ120」を備えている。
すなわち、「視聴データ管理装置210」(本願補正発明の「サーバシステム」に相当)が、「個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報」(本願補正発明の「マーカ要求」に相当)を、「個人視聴行動履歴」として更新(本願補正発明の「保存」に相当)するのであるから、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと」を備える点で一致する。

(ウ)本願補正発明の「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する」について

刊行物1発明の方法は、「視聴端末装置220は利用者から個人識別子とコンテンツ識別子を受付けるステップ102と、
視聴端末装置220は視聴開始情報を取得するために、利用者から受け付けた該個人識別子と該コンテンツ識別子を通信回線240を利用して視聴データ管理装置210に対して送信するステップ103と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して個人識別子とコンテンツ識別子を受信するステップ104と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信した個人識別子と、視聴行動履歴とから、該個人識別子に対応した個人視聴行動履歴を得るステップ105と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツを準備するステップ106と、
視聴データ管理装置210は、視聴端末装置220から通信回線240を通して受信したコンテンツ識別子から、該コンテンツ識別子に対応するコンテンツ情報を準備するステップ107」を備えている。

刊行物1発明の視聴データ管理装置210(本願補正発明の「サーバシステム」に相当)がステップ104で受信した、「個人識別子」と「コンテンツ識別子」は、システム利用者がコンテンツを視聴するために送信したものであるから、それぞれ、本願補正発明の「リクエスタ識別子」と「要求コンテンツ識別子」に相当するものである。
視聴データ管理装置210は、この個人識別子(「リクエスタ識別子」)に対応した個人視聴行動履歴を得て、このコンテンツ識別子(「要求コンテンツ識別子」)に対応するコンテンツを準備することを行う。この個人視聴行動履歴は、上記(ア)で述べたように、利用者からの継続要求に基づいて、個人識別子とコンテンツ識別子と視聴継続情報により更新したもの(例えば図5)であるから、視聴データ管理装置210が、個人識別子に対応した個人視聴行動履歴を得て、コンテンツ識別子に対応するコンテンツを準備するために、受信した、「個人識別子」及び「コンテンツ識別子」と、それぞれ、視聴行動履歴を更新するのに用いた、個人識別子及びコンテンツ識別子との間の一致を判断していることは明らかである。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと」を備える点で一致する。
また、刊行物1発明は、「利用者が異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とする」ものであるから、ステップ101からステップ103まで、および、ステップ111からステップ114までは、ある視聴端末(「第2の通信端末」とする)で行われるステップであり、ステップ115からステップ118までは、別の異なる視聴端末(「第1の通信端末」とする)で行われるステップであることが想定されている。
また、ステップ103で視聴端末装置220(「第2の通信端末」)から送信される「個人識別子」と「コンテンツ識別子」(それぞれ、本願補正発明の「リクエスタ識別子」と「要求コンテンツ識別子」に相当)は、もともと、ステップ101で、デジタルコンテンツ視聴者(デジタルコンテンツ視聴システム利用者)が、コンテンツの視聴をするために入力した情報であるから、「第2の通信端末によって送信されるコンテンツ要求に対応する」ものであるといえる。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信されるコンテンツ要求に対応する」といえる点では共通するということができる。
もっとも、本願補正発明は、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、」を備えるのに対し、刊行物1発明は、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信されるコンテンツ要求に対応する、」を備えるとはいえるものの、該「コンテンツ要求」が、「前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求」ではない点で、両者は相違する。

(エ)本願補正発明の「一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である」について

刊行物1発明の方法は、「視聴データ管理装置210は、ステップ105で得た該利用者の個人視聴行動履歴と、ステップ107で得たコンテンツ情報とから、視聴再開に必要な情報である、視聴開始情報を生成するステップ109と、
視聴データ管理装置210は、ステップ109で得た視聴開始情報と、視聴開始情報が示す開始位置からのコンテンツ又はコンテンツ全てとを、視聴端末装置220に通信回線240を利用して送信するステップ110と、
視聴端末装置220は、視聴データ管理装置210から、通信回線240を通して視聴開始情報と、コンテンツを受信するステップ111と、
視聴端末装置220は、ステップ111で得た視聴開始情報と、コンテンツ、とから、視聴情報を生成し、利用者にとってそのコンテンツが最初の視聴である時は最初から視聴情報を生成するステップ112と、
視聴端末装置220はステップ112で生成した視聴情報を利用者に通知するステップ113と、
利用者は視聴端末装置220から得た視聴情報を元に、視聴をし、視聴に関する操作はコンテンツにより様々であり、一般的に、再生、進む、戻る、一時停止、停止、終了、再生位置検索、などの操作が行えるステップ114」を備えている。

ステップ105で利用者の個人視聴行動履歴が得られ、ステップ107でコンテンツ情報が得られるのは、「一致が判断された場合」といえ、このとき、ステップ109で視聴再開に必要な情報である、視聴開始情報を生成し、ステップ110で視聴データ管理装置210は、視聴開始情報を、コンテンツ全てと、視聴端末装置220に送信する。この視聴開始情報は、コンテンツの視聴を再開する位置(「コンテンツのどの位置まで視聴したかの情報をデジタル化したもの」である「視聴継続情報」の位置と同じと考えられる)を示すものであるから、本願補正発明の「第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態」である「マーカ情報」に相当する。この情報を用いて、「第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である」のは明らかである。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である」を備える点で一致する。

(オ)本願補正発明の「前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、を備え、前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードすること」について

上記(ア)で示したとおり、刊行物1発明において、「コンテンツ」は、「視聴データ管理装置210は、ステップ109で得た視聴開始情報と、視聴開始情報が示す開始位置からのコンテンツ又はコンテンツ全てとが、視聴端末装置220に通信回線240を利用して送信するステップ110」で視聴端末装置220に送信されるものであり、また、上記(ウ)で示したとおり、刊行物1発明は、「利用者が異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とする」ものであるから、ステップ101からステップ103まで、および、ステップ111からステップ114までは、ある視聴端末(「第2の通信端末」とする)で行われるステップであり、ステップ115からステップ118までは、別の異なる視聴端末(「第1の通信端末」とする)で行われるステップであることが想定されているから、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、を備え、前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードする」ものである点で一致する。

(カ)本願補正発明の「電子コンテンツへのアクセスを管理する方法」について

刊行物1発明の「利用者が、異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とするデジタルコンテンツ視聴方法」は、デジタルコンテンツ(電子コンテンツ)の視聴(コンテンツへのアクセス)を視聴データ管理装置210を用いて管理しているから、「電子コンテンツへのアクセスを管理する方法」ともいい得る。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「電子コンテンツへのアクセスを管理する方法」である点で一致する。

(カ)一致点、相違点
以上をまとめると、本願補正発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる、
前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと、
前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信されるコンテンツ要求に対応する、
一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である、
前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、
を備え、前記コンテンツをダウンロードすることは、前記マーカ情報が示すロケーションで始まる前記コンテンツの部分をダウンロードすることを備える、電子コンテンツへのアクセスを管理する方法。

[相違点]
本願補正発明は、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、」という構成を備えるのに対し、刊行物1発明は、「前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信されるコンテンツ要求に対応する、」という構成を備えるとはいえるものの、該「コンテンツ要求」が、「前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求」であるとの限定がない点。

エ.判断
刊行物1発明は、上記ウ.(ウ)で示したとおり、「利用者が異なる視聴端末で、コンテンツ視聴の再開を可能とする」のであるから、その場合、利用者は「前に取得したコンテンツの消費を再開したい」という期待を持って視聴端末を利用するものといえる。
このとき、刊行物1発明における「コンテンツ要求」を、本願補正発明のように「前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求」と称することは、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正却下のまとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年7月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年10月13日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載により特定される、以下のとおりのものである。

[本願発明]
「第1の通信デバイスによって開始されるマーカ要求をサーバシステムが受信することと、ここで、前記マーカ要求は、マーカ情報とデータキー情報とを備え、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上でのコンテンツの保存状態を表し、前記データキー情報は、前記コンテンツに対応するコンテンツ識別子と、ユーザ識別子とを備え、前記コンテンツは、前記第1の通信デバイスにダウンロードされる、
前記サーバシステムが前記マーカ要求を保存することと、
前記サーバシステムが要求コンテンツ識別子およびリクエスタ識別子と、それぞれ、前記コンテンツ識別子および前記ユーザ識別子との間の一致を判断することと、ここで、前記要求コンテンツ識別子および前記リクエスタ識別子は、第2の通信デバイスによって送信される前に取得したコンテンツの消費を再開したいというコンテンツ再開要求に対応する、
一致が判断された場合、前記サーバシステムが前記第2の通信デバイスへの前記マーカ情報の送信を開始することと、ここで、前記マーカ情報は、前記第1の通信デバイス上での前記コンテンツの保存状態で、前記第2の通信デバイス上で前記コンテンツへのアクセスを開始するように動作可能である、
前記サーバシステムが、前記第2の通信デバイスに前記コンテンツをダウンロードすることと、
を備える、電子コンテンツへのアクセスを管理する方法。」

2.刊行物に記載された発明
刊行物1の記載事項及び刊行物1発明は、上記「第2 2.(2)イ.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.本願発明と刊行物1発明との対比
本願発明は本願補正発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、上記「第2 2.(2)独立特許要件」で検討したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-13 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2014-116126(P2014-116126)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
土谷 慎吾
発明の名称 コンテンツにアクセスする装置および方法  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  

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