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審決分類 審判 全部無効 特174条1項  B23Q
審判 全部無効 2項進歩性  B23Q
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B23Q
管理番号 1329834
審判番号 無効2015-800169  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-09-01 
確定日 2017-07-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第5666660号発明「位置検知装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5666660号の請求項1ないし6に係る発明についての出願の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成23年10月 7日 特願2011-222846号(以下「原出願
」という。)の出願
平成25年 7月26日 原出願の一部を新たに本件特許に係る特許出願
(特願2013-155443号、以下「本件
出願」という。)として出願
平成26年12月19日 本件特許の特許権の設定登録
平成27年 2月12日 本件特許の特許公報発行(特許第566666
0号公報)
平成27年 9月 1日 本件無効審判の請求
平成27年11月13日 審判事件答弁書の提出
平成28年 1月 4日 審理事項の通知
平成28年 2月26日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
平成28年 2月26日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
平成28年 3月11日 口頭審理陳述要領書(2)の提出(被請求人)
平成28年 3月11日 口頭審理

第2 本件特許の請求項1ないし6に係る発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向に進出させ、前記油圧シリンダの出力部材により前記弁体を第1方向と反対の第2方向へ移動させて前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成し、
前記弁体は、小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含み、
前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材と、
前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と、
前記凹穴内に設けられ、前記油圧シリンダの油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記第1方向に進出させる油圧導入室と、
前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、
前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え、
前記油圧シリンダの油室と前記エア通路とが互いに連通せず、
前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され、
前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、
前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され、
前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され、
前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記第1方向に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知されることを特徴とする位置検知装置。
【請求項2】
油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって前記油圧シリンダの油室側に弁機構の弁体を進出させ、前記油圧シリンダの出力部材により前記油圧シリンダの油室と反対側に弁体を移動させて前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成し、
前記弁体は、小径軸部と、前記小径軸部に対して油室と反対側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含み、
前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材と、
前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と、
前記凹穴内に設けられ、前記油室の油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記油室側に進出させる油圧導入室と、
前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、
前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え、
前記油圧シリンダの油室と前記エア通路とが互いに連通せず、
前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され、
前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、
前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され、
前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記油室と反対側に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され、
前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記油室側に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知されることを特徴とする位置検知装置。
【請求項3】
前記油圧シリンダの油圧は、前記弁体の進退方向の軸心と同軸に形成された貫通孔を通じて前記凹穴内に供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置検知装置。
【請求項4】
前記弁体は、前記出力部材の進退方向と直交する方向に沿って進退可能に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置検知装置。
【請求項5】
前記弁体は、前記出力部材の進退方向に沿って進退可能に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置検知装置。
【請求項6】
前記出力部材の上昇限界位置、下降限界位置のうちの何れかの位置を検知可能に構成したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置検知装置。」

第3 当事者の主張
(以下、甲第○号証及び乙第○号証を、それぞれ「甲○」及び「乙○」といい、当事者の主張する甲第○号証あるいは乙第○号証に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲○記載発明」、「甲○記載事項」等という。また、行数により記載箇所を特定する場合には、空白行は行数に含めない。)

1. 請求人の主張する請求の趣旨及び理由
審判請求書(以下「請求書」という。)及び平成28年2月26日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書」という。)によれば、請求人の主張する請求の趣旨は、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とする、との審決を求めるものであり、その無効理由1ないし4の概要は以下のとおりである。
無効理由1は、本件特許発明1ないし6は、甲1記載発明に甲2ないし甲10記載事項や従来周知の事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。
無効理由2は、本件特許発明1ないし6は、甲2記載発明に甲1、甲3ないし甲8記載事項や従来周知の事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。
無効理由3は、本件特許発明1ないし6は、甲3記載発明に甲1、甲2、甲4、甲6ないし甲8記事項や従来周知の事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。
無効理由4は、本件出願は、第1の手続の経緯に記載したとおり、原出願の一部を新たな特許出願としたものであるが、出願時に原出願の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されていない新規な技術事項を追加したものであるから、特許法第44条の規定に違反し、本件出願の出願日は、原出願の出願日ではなく現実の出願日である。したがって、本件特許発明1ないし6は、本件出願の出願日前に頒布された刊行物である原出願に係る公開公報である特開2013-82025号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。
以下、無効理由1ないし4のそれぞれについて、請求人の主張をまとめて記載する。

(1) 無効理由1について

ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1記載発明とを対比すると、以下の相違点1-1ないし1-3で相違するか、又は、以下の相違点1-1ないし1-3及び形式的な相違点1-Aないし1-Dで相違し、その他の点では一致する。
<相違点1-1>
本件特許発明1のエア通路は、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され、前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」、また、「シリンダ本体内に形成されている」のに対し、甲1記載発明のエア通路の構成は、前記下線部の構成を有していない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1の弁体本体は、「小径軸部と小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された」ものであるのに対し、甲1記載発明の弁体本体は、先端部と後端部とが一体形成されたものである点。
<相違点1-3>
本件特許発明1の弁ケースは、「前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の先端部が挿入される貫通孔を有する環状部材と、環状部材に隣接し、シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と」から構成されているのに対し、甲1記載発明の弁ケースは、シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の先端部が挿入される貫通孔を有するバルブ本体の先端部と、それに隣接し、凹穴を有するバルブ本体の後端部とから構成されている点。
<相違点1-A>
本件特許発明1は、「位置検知装置」であるのに対し、甲1記載発明のパイロット弁Bは、ピストン及びピストンロッドが所定の位置(後退ストローク端)に到達したときに動作される開閉弁機構であり、「位置検知装置」と明記されていない点。
<相違点1-B>
本件特許発明1の開閉弁機構の制御流体が、「加圧エア」であるのに対し、甲1記載発明の開閉弁機構の制御流体が、「加圧エア」であるかが明確ではない点。
<相違点1-C>
本件特許発明1は、「油室の油圧のみによって弁体を進出」させているのに対し、甲1記載発明は、「油室の油圧とバネ力とによって弁体を進出」させている点。
<相違点1-D>
本件特許発明1は、シール部材として、「前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え」ているのに対し、甲1記載発明には、シール部材について明記されていない点。
(以上、請求書26ページ下から16行?28ページ下から7行)

相違点1-1について検討する。エア流路は、弁機構に制御流体を供給し(第1エア通路)、また排気する流路(第2エア通路)であるから、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」るとか、「前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けら」れていることは、当然のことである。そして、弁機構のエア通路から外部に開口を設ける場合、弁ケースを径方向に貫通することも、当然である。
そして、弁機構から加圧エアの供給源までの流路をどうするか、また、弁機構からエア排出路までの流路をどうするかは、当業者が適宜設計可能な事項であり、流体通路に連通される通路をシリンダ本体内に設ける構成も、甲2、甲3、甲5、甲6記載事項に示されているように公知であるから、相違点1-1のようにエア通路を構成することは、当業者が適宜設計可能な事項であり、当業者が、そのような流路を選択することに、なんら困難性も阻害事由も存在しない。
(請求書29ページ13行?32ページ最下行)
相違点1-Aについて検討する。当業者は、甲1記載発明の「パイロット弁」を「位置検知装置」として認識するから、相違点1-Aは実質的な相違点ではないし、仮に、相違点であるとしても、甲4、甲9及び甲10記載事項に示されるように公知技術であるし、また、これら記載事項から、甲1記載発明を「位置検知装置」として利用すること、すなわち、相違点1-Aの構成に、容易に想到する。
(請求書36ページ10?14行)
相違点1-Bについて検討する。甲1記載発明において、「アクチュエータを作動させる加圧流体」と「パイロット弁によって制御される加圧流体」は、シールされ完全に分離されているから、同じ圧力流体を使用する必然性はない。さらに、本件特許出願前から、位置検知装置の制御流体として加圧エアを用いることは、例えば甲2及び甲4記載事項に示されるように、当業者において技術常識であった。また、甲1記載発明の開閉弁機構の制御流体を「加圧エア」とすることを阻害する事由は存在しない。
そして、甲1記載発明のパイロット弁Bの制御流体が明確でないとしても、当該制御流体を加圧エアとすること(相違点1-B)は、甲2及び甲4記載事項や技術常識(例えば、甲7、甲8及び甲11記載の加圧エア回路)から、当業者が容易に想到できるものである。
(請求書36ページ下から6行?38ページ最終行)
相違点1-Cについて検討する。甲3には、弁体を第1方向(シリンダの油室側)に進出させる方法として、バネによる押し力に代えて、差圧ピストンの構成にすることで、油圧シリンダの油圧のみで、弁体を進出させる構成が開示されている。甲5には、弁部材62を図2の位置に移動させる方法として、高圧流体による構成が開示されている。甲6には、スライド弁42を後退位置から移動させる方法として、流体圧力による構成が開示されている。そして、弁体を進出させる構成として、甲1記載発明(バネ力+油圧シリンダの油圧)に代えて、甲3記載事項(油圧シリンダの油圧)、甲5記載事項(高圧流体等の油圧)、甲6記載事項(流体圧力)を適用することについて、具体的な動機づけがあるから、当業者は、甲1記載発明に、甲3、甲5及び甲6記載事項のいずれかを適用して、相違点1-Cの構成に容易に想到する。
(請求書39ページ6行?42ページ下から9行)
相違点1-2について検討する。上記相違点1-Cでの検討のとおり、甲1記載発明の「油室の油圧とバネ力とによって弁体を進出」させる構成を、本件特許発明1のように「油室の油圧のみによって弁体を進出」させる構成に置換することは、当業者が容易に想到するものである。そして、この際、弁体本体を第1方向側に押し出す力は、「油圧導入室から第1方向に押圧される力」から「弁体の先端部が油室から第2方向に押圧される力」の差となる。そして、弁体本体に作用する力は、受圧面積に比例するから、弁体本体を第1方向側に押し出すためには、弁体の「油圧導入室側の端面」が「シリンダ室側の端面」よりも広いことが必要であるから、弁体は、当然、「(第2方向側の)大径軸部」と「(第1方向側の)小径軸部」を持つ構造となる。よって、当業者は、相違点1-Cに容易に想到すると同時に、相違点1-2にも容易に想到する。
したがって、相違点1-2は、当業者が適宜設計可能な事項であり、当業者にとって周知技術でもあり、当業者が甲1記載発明に甲3、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用することでも容易に想到する。
(請求書42ページ下から4行?43ページ下から3行)
相違点1-3について検討する。パイロット弁をシリンダ本体に埋没させることは、例えば、甲2、甲5、甲6記載事項に示すように、動機付けが存在する。そして、甲1記載発明のパイロット弁が、シリンダ本体に埋没するような構成の場合、弁ケースは、当然、シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定されることとなる。よって、甲1記載発明の弁ケースの先端部と後端部を二つの部材で構成した場合、先端部は、本件特許発明1の「環状部材」となり、後端部は、本件特許発明1の「キャップ部材」となる。そして、一体の弁ケースを、二つの部材で構成することは、まさに当業者が適宜設計可能な事項であり、それに困難性も阻害する事由も存在しない。
また、弁ケースを本件特許発明1のように「環状部材」「キャップ部材」の二つの部材で構成することは、例えば甲6にも記載されているように、本件出願前から当業者に広く知られた技術でもある。そして、甲6記載事項を、甲1記載発明に適用する動機付けがあることは、上記相違点1-Cで検討したとおりである。
以上のとおり、相違点1-3は、当業者が適宜設計可能な事項であるし、また、甲6記載事項を甲1記載発明に適用して、当業者が容易に想到できるものである。
(請求書44ページ9行?45ページ下から4行)
相違点1-Dについて検討する。甲1記載発明は、開閉弁機構の流路の圧力変化で、出力部材が所定の位置に達したかどうかを判断するものであるから、油室と開閉弁機構の流路とが連通しないように、シール部材を設けることは、当業者が適宜設計可能な事項にすぎない。そして、具体的なシール方法については、当業者が適宜設計可能な事項であるところ、第1シール部材を弁体本体の外周側に設け、第2シール部材を弁体本体とともに凹穴に摺動自在に内嵌されたものとすることは、一般的なシール方法であるとともに、甲5にも記載されているように、当業者にとって周知技術である。
そうすると、相違点1-Dは、当業者が適宜設計可能な事項であるし、甲5記載事項を甲1記載発明に適用して、当業者が容易に想到できるものである。
(請求書46ページ6行?47ページ下から6行)
以上のとおり、相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に甲2ないし甲10記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件特許発明1には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書47ページ下から4行?同ページ最終行)

イ 本件特許発明2について
本件特許発明1と本件特許発明2とは、本件特許発明1の「第1方向」及び「第2方向」が、それぞれ本件特許発明2では「シリンダの油室側」及び「シリンダの油室と反対側」に書き換えられている以外は同一である。この点、甲1記載発明において、「第1方向」及び「第2方向」が、それぞれ本件特許発明1の「シリンダの油室側」及び「シリンダの油室と反対側」に相当する。そうすると、本件特許発明2と甲1記載発明とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dにおいて相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に甲2ないし甲10記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明2には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書48ページ1?14行)

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1記載発明とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dで相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に甲2ないし甲10記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明3には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書48ページ下から9行?49ページ1行)

エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1記載発明とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dで相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に甲2ないし甲10記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明4には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書49ページ2?12行)

オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1記載発明とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dに加えて、以下の相違点1-4において相違し、その他は一致する。
<相違点1-4>
本件特許発明5は、弁体が「出力部材の進退方向に進退可能に設けられ」ているのに対し、甲1記載発明は、進退方向に直交する方向に進退可能に設けられている点。
(請求書49ページ下から11行?下から5行)
相違点1-4について検討する。甲1記載発明では、ピストンの動きがパイロット弁の進退方向に水平な場合でも、垂直な場合でも、ピストンは所定に位置に達した場合、パイロット弁を押し上げ、開閉弁機構の開閉を切り換えることは、当業者に容易に理解される。よって、弁体の進退方向を、進出部材の進退方向に合わせるか、直交させるかは、当業者が適宜設計可能な事項である。
仮に、相違点1-4が設計事項でないとしても、当業者において、相違点1-4は、従来周知の事項、または、甲1記載発明に甲2、甲3、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用して、容易に想到するものである。
したがって、相違点1-1ないし1-4、及び、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に、設計事項や従来周知の事項、甲2ないし甲10記載事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明5には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書49ページ下から4行?53ページ9行)

カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1記載発明とを対比すると、上記相違点1-1ないし1-3、及び、相違点1-Aないし1-Dに加え、以下の相違点1-5において相違し、その他は一致する。
<相違点1-5>
本件特許発明6は、弁機構によって検知される出力部材の「所定の位置」が「上昇限界位置、下降限界位置のうちの何れかの位置」であるのに対し、甲1記載発明は、出力部材の検知される位置が、水平方向の限界位置である点。
(請求書53ページ下から12行?下から5行)
相違点1-5について検討する。相違点1-5は、結局、ピストンが垂直方向に移動するように配置されているか、甲1記載発明のように水平方向に移動するように配置されているのかの相違に過ぎない。この点、ピストンの位置を検知する装置に関する発明において、ピストンを垂直方向に配置した例は、枚挙にいとまがない(甲7記載事項、甲8記載事項等)。また、水平方向に移動するピストンを、垂直方向に移動するように設計変更することに、何ら阻害事由はない。よって、相違点1-5は、当業者が適宜設定可能な設計事項に過ぎず、容易に想到するものである。
仮に、相違点1-5が設計事項でないとしても、当業者において、相違点1-5は、従来周知の事項、または、甲7、甲8記載事項を甲1記載発明に適用して、容易に想到するものである。
したがって、相違点1-1ないし1-3、及び1-5並びに、相違点1-Aないし1-Dは、いずれも、甲1記載発明に、甲2ないし甲10記載事項、従来周知の事項や当業者が適宜選択可能な設計事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明6には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書53ページ下から4行?57ページ3行)

(2) 無効理由2について

ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2記載発明とを対比すると、以下の相違点2-1及び2-2で相違するか、又は、以下の相違点2-1及び2-2並びに形式的な相違点2-Aで相違し、その他の点では一致する。
<相違点2-1>
本件特許発明1の弁機構は、「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向に進出させ」るのに対し、甲2記載発明のパイロット弁16は、バネ力及びエア通路内のエア圧によって進出させる点。
<相違点2-2>
本件特許発明1の弁体本体は、「小径軸部と小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された」ものであるのに対し、甲2記載発明の弁体本体は、先端部と後端部とが一体形成されたものである点。
<相違点2-A>
本件特許発明1はシール部材として、「前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え」ているのに対し、甲2記載発明には、同様の構成の第1シール部材は明記されているが、前記構成の第2シール部材について明記されていない点。
(請求書63ページ下から2行?65ページ7行)

相違点2-1について検討する。
甲1には、「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧とバネによって弁機構の弁体を第1方向に進出させ、前記油圧シリンダの出力部材により前記弁体を第1方向と反対の第2方向へ移動させてバルブ本体(弁ケース)に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成」した点が記載されている。甲2記載発明の弁体を出力部材側に進出させる方法について、甲1記載事項を適用し、相違点2-1の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
甲3には、弁体を第1方向(シリンダの油室側)に進出される方法として、バネによる押し力に代えて、差圧ピストンの構成にすることで、油圧シリンダの油圧で、弁体を進出させる構成が記載されている。そして、甲3記載事項に接した当業者は、弁体を進出させる構成として、甲2記載発明に代えて、甲3記載事項(油圧シリンダの油圧)を適用することについて、具体的な動機づけがある。
甲5には、弁部材62を図2の位置に移動させる方法として、ピストンの駆動流体の圧力を用いる構成が記載されている。甲5記載事項に接した当業者は、弁体を進出させる構成として、甲2記載発明(バネ力)に代えて、甲5記載事項(圧力流体)を適用することについて、具体的な動機づけがある。
甲6には、スライド弁42を後退位置から移動させる方法として、流体圧力による構成が記載されている。そして、甲6記載事項に接した当業者は、弁体を進出させる構成として、甲2記載発明(バネ力)に代えて、甲6記載事項(流体圧力)を適用することについて、具体的な動機づけがある。
よって、相違点2-1は、甲1、甲3、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用して、当業者が容易に想到したものである。
(請求書65ページ下から3行ないし69ページ6行)
相違点2-2について検討する。相違点2-2は、上記(1)アの<相違点1-2>と同一である。よって、上記(1)アで主張したとおり、「油室の油圧のみによって弁体を進出」させる構成を採用した場合、弁体本体が、相違点2-2の構成となることは必然である。
また、甲3、甲5、甲6記載事項の弁体本体は、小径軸部と小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成されたものであり、上記(2)アで主張したとおり、当業者は、甲3、甲5、甲6記載事項を甲2記載発明に適用する動機付けがある。
以上から、相違点2-2は、相違点2-1を採用すれば当然に充足する構成であるし、また、甲3、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用して、当業者が容易に想到したものである。
(請求書69ページ7?最終行)
相違点2-Aについて検討する。
甲2記載発明は、弁機構の流路の圧力変化で、出力部材が所定の位置に達したかどうかを判断するものであるから、油室と開閉弁機構の流路とが連通しないように、シールすることは、当業者が適宜設計可能な事項にすぎない。そして、甲2記載発明に、相違点2-1を適用した場合、油圧導入室と弁機構の流路を連通しないようにシールするのは当然であり、第2シール部材を弁体本体とともに凹穴に摺動自在に内嵌されたものとすることは、当業者が適宜選択可能な一般的なシール方法である。
また、甲5、甲6には、弁体の大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、制御流体の通路と流体圧導入室との間をシールするシール部材(第2シール部材)が明記されている。そして、当業者が、甲2記載発明に甲5、甲6記載事項を適用する具体的な動機づけがある。
よって、相違点2-Aは、当業者が適宜設計可能な事項であるし、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用して、当業者が容易に想到したものである。
(請求書70ページ8行?71ページ4行)
したがって、相違点2-1、2-2及び相違点2-Aは、いずれも、甲1、甲3、甲5、甲6記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明1には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する
(請求書71ページ6?9行)

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2記載発明とを対比すると、本件特許発明1と同様に、相違点2-1、2-2及び相違点2-Aにおいて相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点2-1、2-2及び相違点2-Aは、いずれも、甲2記載発明に甲1、甲3、甲5、甲6記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明2には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書71ページ10?最終行)

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲2記載発明とを対比すると、上記相違点2-1、2-2及び2-Aに加え、以下の相違点2-3で相違し、その他は一致する。
<相違点2-3>
本件特許発明3は、「前記油圧シリンダの油圧は、前記弁体の進退方向の軸心と同軸に形成された貫通孔を通じて前記凹穴内に供給される」のに対し、甲2記載発明にはそのような構成がない点。
相違点2-3について検討する。甲2記載発明の開閉弁機構には、油圧導入室と、油室と油圧導入室を連通させる油圧導入路(貫通孔)を設ける構成が存在しないが、この点は、甲1、甲3、甲5、甲6記載事項のいずれかを適用して、当業者が容易に想到したものである。そして、甲1、甲3、甲5、甲6のいずれに記載された油圧導入路(貫通孔)も、弁体の進退方向の軸心と同軸に形成されている。よって、相違点2-3も、甲2記載発明に、甲1、甲3、甲5、甲6記載事項や従来周知の事項を適用して、当業者が容易に想到したものである。
したがって、本件特許発明3は、甲2記載発明に、甲1、甲3、甲5、甲6記載事項を適用して、当業者が容易に想到したものであるから、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書72ページ1行?73ページ6行)

エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2記載発明とを対比すると、上記相違点2-1ないし2-3及び相違点2-Aに加え、以下の相違点2-4で相違し、その他は一致する。
<相違点2-4>
本件特許発明4は、弁体が「出力部材の進退方向と直交する方向に進退可能に設けられ」ているのに対し、甲2記載発明では、進退方向に進退可能に設けられている点。
相違点2-4について検討する。
甲2記載発明では、ピストンの動きがパイロット弁の進退方向に水平な場合でも、垂直な場合でも、ピストンは所定に位置に達した場合、パイロット弁を押し上げ、弁機構の開閉を切り換えることは、当業者に容易に理解される。また、弁体を出力部材の進退方向に進退可能に設けるか、出力部材の進退方向に直行する方向に進退可能に設けるかは、弁機構と出力部材との位置関係で適宜決定されることであり、阻害事由は全く存在しない。よって、弁体の進退方向を、進出部材の進退方向に合わせるか、直交させるかは、当業者が適宜選択可能な設計事項である。
仮に、相違点2-4が設計事項でないとしても、当業者は、甲2記載発明に、周知技術、または、甲1、甲4記載事項を適用して、相違点2-4を容易に想到する。
よって、相違点2-4は、当業者が適宜選択可能な設計事項であるか、または、甲2記載発明に甲1、甲4事項のいずれかを適用して、当業者が容易に想到する。
したがって本件特許発明4は、当業者が、甲2記載発明に、甲1、甲3ないし甲6記載事項や従来周知の事項を適用し、または適宜選択設計して、容易に想到したものであるから、本件特許発明4には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書73ページ7行?76ページ1行)

オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2記載発明とを対比すると、相違点2-1ないし2-3及び相違点2-Aにおいて相違し、その他は一致する。
したがって、相違点2-1ないし2-3及び相違点2-Aは、いずれも、甲2記載発明に甲1、甲3、甲5、甲6記載事項や従来周知の事項を適用して、または適宜選択設計して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明5には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書76ページ2?11行)

カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と、甲2記載発明とを対比すると、上記相違点2-1ないし2-4及び相違点2-Aに加え、以下の相違点2-5で相違し、その他は一致する。
<相違点2-5>
本件特許発明6は、弁機構によって検知される出力部材の「所定の位置」が「上昇限界位置、下降限界位置のうち何れかの位置」であるのに対し、甲2記載発明は、出力部材が検知されるのが水平方向の限界位置である点。
相違点2-5について検討する。相違点2-5は、結局、ピストンが垂直方向に移動するように配置されているか(本件特許発明6)、水平方向に移動するように配置されているのか(甲2記載発明)の相違に過ぎない。この点、ピストンの位置を検知する装置に関する発明において、ピストンを垂直方向に配置した例は、枚挙にいとまがない(甲7、甲8記載事項等)。また、水平方向に移動するピストンを、垂直方向に移動するように設計変更することに、何ら阻害事由はない。よって、相違点2-5は、当業者が適宜設定可能な設計事項であるか、当業者に周知の技術に過ぎず、容易に想到するものである。
仮に、相違点2-5が設計事項でないとしても、当業者は、周知技術、または、甲7、甲8記載事項を甲2記載発明に適用して、容易に相違点2-5を想到する。
したがって本件特許発明6は、当業者が、甲2記載発明に、甲1、甲3ないし甲8記載事項や従来周知の事項を適用し、または適宜選択設計して、容易に想到したものであるから、本件特許発明6には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書76ページ12行?78ページ下から4行)

(3) 無効理由3について

ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3記載発明とを対比すると、以下の相違点3-1ないし3-4で相違するか、又は、以下の相違点3-1ないし3-4並びに形式的な相違点3-A及び3-Bで相違し、その他の点では一致する。
<相違点3-1>
甲3記載発明においては、ピストンを油圧駆動にした場合、反転動作する装置の制御流体(制御管路としての流路61に供給される加圧流体)が「加圧油」となるのに対し、本件特許発明1では、ピストンを油圧駆動にし、位置検知装置の制御流体を「加圧エア」としている点。
<相違点3-2>
本件特許発明1のエア通路は、「前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ているの対し、甲3記載発明の制御流体の流路は、そのような構成になっていない点。
<相違点3-3>
本件特許発明1の弁ケースは、「前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材と、前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と」から構成されているの対し、甲3記載発明の弁ケース(ケース本体)は、シリンダ本体と一体である点。
<相違点3-4>
本件特許発明1は、「出力部材が所定の位置にない」状態で、弁機構の流路は「開弁状態が維持され」、「所定の位置に達したとき」に「閉弁状態」となり、「圧力が設定圧以上に上昇したこと」で「所定の位置にあることが検知され」るのに対し、甲3記載発明は、出力部材が所定の位置にない状態で、弁機構の流路は閉弁状態を維持し、所定の位置に達した時に開弁状態となり、圧力が設定圧以下に低下したことで所定の位置にあることを検知する点。
<相違点3-A>
本件特許発明1は、「位置検知装置」であるのに対し、甲3記載発明の弁体は、ピストンロッドが所定の位置(後退ストローク端)に到達したときに動作される開閉弁機構であり、「位置検知装置」と明記されていない点。
<相違点3-B>
本件特許発明1は、「前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え」ているのに対し、甲3記載発明は、シール部材の明記がない点。
相違点3-1について検討する。甲3の図1では、駆動流体と制御流体の供給源が共通とされ、同一の加圧流体が使用されているが、甲3記載発明において、同一の加圧流体を使用しなければならない理由はなく、甲3の図1においても、両者が共通しているのは、圧力流体供給源39の出口配管までで、その後の流路は全く独立している。そうすると、当業者は、甲3の図1から、甲3記載発明が、構造を簡略化するために、圧力流体の供給源を共用していると理解するのであり、必要に応じて、二種類の供給源を用いて、異なる圧力流体を利用することができることを容易に想到する。よって、相違点3-1は、当業者が適宜選択可能な設計事項である。
仮に、相違点3-1が設計事項でないとしても、駆動流体と制御流体として、別々の圧力流体を使用することは、甲1、甲4に明記されているように、当業者に周知の事項であり、また、甲1、甲4記載事項を甲3記載発明に適用して、容易に相違点3-1に想到する。
相違点3-2について検討する。エア流路は、弁機構に制御流体を供給し(第1エア通路)、また排気する流路(第2エア通路)であるから、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続されもの」とか、「前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けら」れていることは、当然のことである。また、弁機構のエア通路から外部に開口を設ける場合、弁ケースを径方向に貫通することも、当然である。そして、弁機構から加圧流体の供給源までの流路をどうするか、また、弁機構からエア排出路までの流路をどうするかは、当業者が適宜設計可能な事項である。このことは、甲2、甲5、甲6など多くの公知文献でも、それぞれの構成に適宜流路が設けられていることからも明らかである。以上のとおり、相違点3-2は、当業者が適宜設計可能な事項であり、当業者が、そのような流路を選択することに、なんら困難性も阻害事由も存在しない
相違点3-3について検討する。弁ケースを一体の構成とするか、二つの部材(環状部材、キャップ部材)から構成するかは、当業者が適宜設計可能な事項であり、困難性も阻害する事由も存在しない。また、弁ケースを本件特許発明1のように「環状部材」「キャップ部材」の二つの部材で構成することは、本件出願前から当業者に広く知られた技術でもある。例えば、甲6の図2には、シリンダ本体に埋設されたスライド弁42の弁ケースが、本件特許発明1と同様の「環状部材」と「キャップ部材」から構成されている点が記載されている。以上のとおり、相違点3-2は、当業者が適宜設計可能な事項であるし、また、甲6記載事項を甲3記載発明に適用して、当業者が容易に想到できるものである。
相違点3-4について検討する。開閉弁機構において、弁体に外力(出力部材による押圧力)が掛かっていない状態で、閉弁状態とするか、開弁状態とするかは、当業者が適宜選択可能な設計事項に過ぎない。また、本件特許発明1のように、弁体に外力(出力部材による押圧力)が掛かっていない状態で、開弁状態に維持する構成は、甲1の図1の説明部分、甲2の図3、甲7の図1と図4、甲11の図10と図11に記載されており、本件技術分野においては周知技術である。さらに、当業者は、甲3記載発明に、甲1記載事項を適用して、相違点3-4に容易に想到する。
相違点3-Aについて検討する。甲2には、ピストン24行程の行程端を検知する位置センサであって、ピストン24が所望の位置に移動したことを確認可能に構成した位置センサが開示されている。一方、甲3記載発明は、出力部材が所定の位置に達した時に、弁体が押されて移動することで、弁の開閉状態が切り替わり、流路61が外界に開放された流路と連通するか否かで作動するスイッチであるところ、かかる「スイッチ」は、「位置検知装置」と「流体制御機器の制御機能」とからなる複合的な発明である。そして、甲3記載発明で位置検知装置として機能する「弁体」は、弁機構を切り換えて、「位置検出装置」として機能する。これに対し、甲2記載事項も、出力部材であるピストン24が所定の位置に達した時に空圧パイロット弁16の弁部材46が押されて移動することで、弁の開閉状態が切り替わり、複数の通孔56や通孔58が互いに連通または遮断されることから、複数の通孔間で連通するか否かで作動する装置である。よって、甲3記載発明と甲2記載事項は、「(ピストンの)位置検知装置」である点でも、位置を検知するための構造においても共通しているから、甲3記載発明の開閉弁機構を、甲2記載事項の「位置検知装置」として適用することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
甲4には、ピストン30が所望の位置へ移動したことを確認する「プランジャ型スイッチ100」が開示されている。甲4記載事項も、出力部材が所定の位置に達した時にプランジャ126が押されて移動することで、弁の開閉状態が切り替わり、複数の空気ポート130の間で連通するか否かで作動する検知装置である点で、位置検知装置という用途もスイッチの構造も甲3記載発明と共通しているから、甲3記載発明の開閉弁機構を、甲4記載事項の「位置検知装置」として適用することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
したがって、当業者は、甲3記載発明に、甲2記載事項または甲4記載事項のいずれかを適用して、相違点3-Aの構成に容易に想到する。
相違点3-Bについて検討する。油室と開閉弁機構の流路とが連通しないようにシールすることは当然であり、その際、第1シール部材を弁体本体の外周側に設け、第2シール部材を弁体本体とともに凹穴に摺動自在に内嵌されたものとすることは、当業者が適宜設計可能な事項であり、困難性も阻害する事由も存在しない。また、相違点3-Bのシール方法は、甲5にも記載されているように、当業者にとって周知技術である。以上のとおり、相違点3-Bは、当業者が適宜設計可能な事項であるし、また、当業者に周知な技術事項であるから、当業者が容易に想到できるものである。
したがって、本件特許発明1は、甲3記載発明に、従来周知の事項や、甲1、甲2及び甲4記載事項を適宜適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反した無効理由がある。
(請求書85ページ5行?97ページ17行)

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3記載発明とを対比すると、本件特許発明1と同様に、上記相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bで相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bは、いずれも、甲3記載発明に従来周知の事項や甲1、甲2及び甲4記載事項を適宜適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明2には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書97ページ下から7行?98ページ7行)

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲3記載発明とを対比すると、本件特許発明1と同様に、上記相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bで相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bは、いずれも、甲3記載発明に従来周知の事項や甲1、甲2及び甲4記載事項を適宜適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明3には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書98ページ8?19行)

エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲3記載発明とを対比すると、上記相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bに加え、以下の相違点3-5で相違し、その他は一致する。
<相違点3-5>
本件特許発明4は、弁体が「出力部材の進退方向と直交する方向に沿って進退可能に設けられ」ているのに対し、甲3記載発明は、進退方向に進退可能に設けられている点。
相違点3-5について検討する。甲3記載発明では、ピストンの動きがパイロット弁の進退方向に水平な場合でも、垂直な場合でも、ピストンは所定に位置に達した場合、パイロット弁を押し上げ、開閉弁機構の開閉を切り換えることは、当業者に容易に理解される。よって、弁体の進退方向を、進出部材の進退方向に合わせるか、直交させるかは、当業者が適宜設計可能な事項である。
また、相違点3-5が設計事項でないとしても、位置検知装置の弁体の進退方向を、進出部材の進退方向に直交させることは、甲1や甲4に明記されているように、当業者に周知の事項であり、また、当業者は、甲1、甲4記載事項を甲3記載発明に適用して、容易に相違点3-5に想到する。
したがって、本件特許発明4は、甲3記載発明に、従来周知の事項や、甲1、甲2及び甲4記載事項を適宜適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書98ページ下から4行?101ページ8行)

オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲3記載発明とを対比すると、本件特許発明1と同様に、上記相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bで相違し、その他は一致する。
したがって、上記アで示したとおり、相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bは、いずれも、甲3記載発明に従来周知の事項や甲1、甲2及び甲4記載事項を適宜適用して、当業者が容易に想到したものであるから、本件特許発明5には、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書101ページ9?20行)

カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲3記載発明とを対比すると、上記相違点3-1ないし3-4並びに相違点3-A及び3-Bに加え、以下の相違点3-6で相違し、その他は一致する。
<相違点3-6>
本件特許発明6は、弁機構によって検知される出力部材の「所定の位置」が「上昇限界位置・下降限界位置のうち何れかの位置」であるのに対し、甲3記載発明は出力部材が、水平方向の限界位置である点。
相違点3-6について検討する。相違点3-6は、結局、ピストンが垂直方向に移動するように配置されているか(本件特許発明6)、水平方向に移動するように配置されているのか(甲3記載発明)の相違に過ぎない。この点、ピストンの位置を検知する装置に関する発明において、ピストンを垂直方向に配置した例は、枚挙にいとまがない(甲7、甲8等)。また、水平方向に移動するピストンを、垂直方向に移動するように設計変更することに、何ら阻害事由はない。よって、相違点3-6は、当業者が適宜設定可能な設計事項に過ぎず、容易に想到するものである。
仮に、相違点3-6が設計事項でないとしても、水平方向に移動するピストンを、垂直方向に移動するように設計変更することは、甲7や甲8に明記されているように、当業者に周知の事項であり、また、当業者は、甲7、甲8記載事項を甲3記載発明に適用して、容易に相違点3-6に想到する。
したがって、本件特許発明6は、甲3記載発明、甲1、甲2、甲4、甲7及び甲8記載事項、並びに、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に違反する無効理由が存在する。
(請求書101ページ下から4行ないし104ページ9行)

(4) 無効理由4について

ア 原出願明細書に記載されていた事項
原出願明細書には以下の記載があった(当審注:下線は請求人が付したもの。以下同様。)。

(ア)「【0004】
特許文献2のクランプ装置においては、流体圧シリンダの出力ロッドの昇降動作に連動してエア通路を開閉する機構を設け、出力ロッドの上昇位置と下降位置とを検出可能に構成してある。」

(イ)「【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-87991号公報
【特許文献2】特開2003-305626号公報
【特許文献3】特開2009-125821号公報」

(ウ)「【0008】
特許文献2のクランプ装置においては、出力ロッドの上昇位置と下降位置とを検出する機構をクランプ本体の外側に構成する。そのため、特許文献1のクランプ装置と同様に、クランプ本体の外部に検出スペースが必要となるから、クランプ装置をコンパクトに構成することができない。しかも、エア通路を開閉する検出具を検出孔に対して摺動自在に移動させる構造であるため、長期間使用した場合にエア通路を閉止する性能が低下する虞がある。」

(エ)「【0010】
本発明の目的は、出力部材が所定の位置に達したことをシリンダ本体内のエア通路のエア圧の圧力変化を介して確実に検知可能で小型化可能な流体圧シリンダ及びクランプ装置を提供すること、出力部材の所定の位置を検出する信頼性や耐久性を向上し得る流体圧シリンダ及びクランプ装置を提供すること、等である。」

イ 特許文献2の記載
上記アの摘記事項(イ)に記載された【特許文献2】である特開2003-305626号公報(甲8)には、以下の記載がある。

(ア)「【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、例えば、図1から図4、または図5から図9に示すように、クランプの動作検出装置を次のように構成した。ハウジング3内にクランプロッド5を軸心方向へ移動可能に挿入し、上記クランプロッド5の軸心とほぼ同心上で上記ハウジング3の一端壁3bに検出孔58を形成し、その検出孔58の周面に圧力流体供給用の入口孔71(72)を開口し、上記の検出孔58に検出具62を軸心方向へ移動可能に嵌入し、その検出具62の外周面に、上記の入口孔71(72)の開口部71a(72a)を閉じる閉止面68と、上記の開口部71a(72a)を外気へ連通させる凹所69を設け、上記クランプロッド5の一端部に操作部5aを設けて、その操作部5aを上記の検出具62に半径方向へ相対移動可能に連結した。」

(イ)【図6】


ウ 特許文献2に開示された発明と原出願明細書が除外した発明
特許文献2(甲8)の上記記載から、甲8記載発明の検出具62は本発明の弁体に相当するものであり、検出具62の閉止面68が、入口孔72の開口部72aと摺接している状態では、検出具62と孔72とは閉弁状態となり、検出具62が上方に移動して、検出具62の凹所69と入口孔72の開口部72aとが対面している状態では、入口孔72は、外気に連通される。
上記甲8記載発明に対し、原出願明細書では、「検出具を検出孔に対して摺動自在に移動させる構造であるため、長期間使用した場合にエア通路を閉止する性能が低下する」との問題点(甲8問題)を指摘し、本発明の目的を「出力部材の所定の位置を検出する信頼性や耐久性を向上し得る流体圧シリンダ及びクランプ装置を提供すること、等である。」とした。
そして、上記の甲8問題を回避するための原出願明細書記載の発明の構成は、開閉弁機構として、弁体が摺動しない「ポペット弁」(弁体が弁座に当接する構成)を採用し、特許請求の範囲の請求項1にも当該構成である「この弁体が当接可能な弁座」が明記されていた。

分割出願により追加された発明
しかしながら、原出願を分割した本件出願の特許請求の範囲においては、前記の「弁体が弁座に当接する構成」の限定が除かれ、弁体が弁体挿入孔に摺動することによって、弁機構の開閉を切り換える、いわゆる「スプール弁」がその権利範囲に含まれることとなった。
当該スプール弁は、まさに「エア通路を開閉する部材(弁体)を検出孔(弁体挿入孔)に対して摺動自在に移動させる構造」であり、本件発明において、解決する課題とされた前記甲8問題を内包する構成なのである。
以上のとおり、本件出願は、原出願において、明確に除外された発明を取り込むものであり、「新たな技術的事項」、すなわち、原出願の明細書に記載されていない新規な技術事項を追加したものである。

新規事項の追加
分割出願は、原出願明細書に記載された発明の範囲内で、原出願とは別の出願が許されるのであり、原出願明細書に記載されていない新たな技術事項を付加する場合には、「原出願明細書に記載された発明の範囲内」とは言えず、特許法第44条の規定に違反するから、特許法第44条第2項の適用を受けない。

カ 結論
よって、本件特許の出願日は、現実の出願日である平成25年7月26日となるところ、原出願は平成25年5月9日に公開され(特開2013-82025号)、そこに記載された実施例は、本件特許の実施例と同一である。
したがって、本件特許発明1ないし6は、その出願日前に頒布された原出願の公開公報である甲12(特開2013-82025号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に違反した無効理由がある。
(請求書104ページ13行?108ページ9行)

(5) 請求人の証拠方法
請求人は審判請求書とともに、証拠方法として以下の甲1ないし12を提出している。また、平成28年2月26日付け口頭審理陳述要領書とともに、甲13ないし23を提出している。
甲1:米国特許第3530896号明細書
甲2:米国特許第3555966号明細書
甲3:英国特許出願公開第1140216号明細書
甲4:米国特許第4632018号明細書
甲5:米国特許第3348803号明細書
甲6:米国特許第3463055号明細書
甲7:特開平6-15549号公報
甲8:特開2003-305626号公報
甲9:実願昭62-102171号(実開昭64-6373号)のマイクロフィルム
甲10:特開昭59-212503号公報
甲11:特開2009-190137号公報
甲12:特開2013-82025号公報
甲13:米国特許第3530896号明細書(甲1)の訳文の差替
甲14:実公昭59-18165号公報
甲15:杉田稔著、「自動化機器の設計と製作」、日刊工業新聞社、昭和49年1月30日16版発行、52ないし63並びに116及び117ページ
甲16:米国特許第666959号明細書
甲17:米国特許第3253617号明細書
甲18:米国特許第6761186号明細書
甲19:実願昭62-158511号(実開平1-65403号)のマイクロフィルム
甲20:特開昭48-83279号公報
甲21:先の無効審判(無効2013-800210号)における平成26年11月20日付け補正許否の決定
甲22:先の無効審判における審判請求書の請求の理由を対象とした平成26年9月17日付け手続補正書
甲23:特開2001-87991号公報

2. 被請求人の主張する答弁の趣旨
平成27年11月13日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、平成28年2月26日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書1」という。)及び平成28年3月11日付け口頭審理陳述要領書(2)(以下「被請求人要領書2」という。)によれば、被請求人の答弁の趣旨は、本件審判請求は成り立たない、との審決を求めるもので、その主張の概要は以下のとおりである。

(1) 「外界」の解釈について
本件特許発明においては、「前記油圧により前記弁体が前記第1方向(前記油室側)に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ」ることを明記している。
上記の記載から、本件特許発明における「外界」とは、単にシリンダ本体の外部を意味するものではなく、開閉弁機構がエア通路を開いたときにエア通路の一端部側のエア圧を低下させるものであり、「加圧エア」よりも低圧の外部空間を意味することが明確に理解できる。また、「加圧エア」の「加圧」という文言から、これが「外界」よりも高圧であるとすることは自然な解釈であるし、「油圧シリンダ」の分野において、「外界」といえば大気圧の外部空間であると解することも自然な解釈である。
(答弁書9ページ9?21行)

(2) 無効理由1について

ア 甲1記載発明の認定について
請求人の主張する甲1記載発明の認定は、少なくとも以下の点で誤りである。

(ア) 位置検知装置
本件特許発明1、2に係る位置検知装置では、「前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向(前記油室と反対側)に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され」、出力部材の所定の位置を確実に検知可能としている。
しかし、甲1記載発明は「パイロット弁B」によって油圧アクチュエータをサイクル動作させるものにすぎず、ピストン15の位置そのものを直接検知・検出しているものではないため、本件特許発明1、2の「位置検知装置」に相当するものではない。
甲1記載発明において、「パイロット弁B」は、ピストン15がストロークエンド付近に達したときに、三方弁を切り換えて油圧パワーアクチュエータの動作を制御するためのものであり、流体圧シリンダの出力部材の所定の位置を検知するものではない。
(答弁書10ページ5?下から3行)

甲1に「位置検知」は明示されていない。そして、本件特許発明でいう「(他端部が外界に開放された)エア通路の開閉状態を切換え、当該切換えにより弁機構の一端側に位置するエア通路の圧力を上昇させ、…所定の位置にあることが検知される」ことは示されていない。
(被請求人要領書1の3ページ16?19行)

(イ) 弁体をシリンダの油室に進出させる構成
甲1記載発明において、「孔延長部33」に導入された油圧は「弁体29」をバランスさせるものにすぎず、進出させる力はゼロである。本件特許発明1、2では「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向(油圧シリンダの油室側)に進出させ」と規定しており、バネの存在の有無はともかく、油圧によって弁体を出力部材側に進出させる力を発生させなければならない。
甲1記載発明のパイロット弁Bは、「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向(油圧シリンダの油室側)に進出させ」る構成を備えない。
(答弁書10ページ下から2行?11ページ12行)

(ウ) 通路の開閉状態を切り換える構成
請求人は、甲1記載発明の3つのポートを2つにすることは慣用技術であると主張するが、その根拠がない。甲1記載発明は、ピストン15がストロークエンド付近に達したときに、三方弁を切り換えて油圧パワーアクチュエータの動作を制御するものであり、3つのポートを備えることが必須である。また、「パイロット弁B」は、他の機器を動作させるものであるので、制御回路の他端部は他の機器に接続されている必要があり、仮にポートを2つにしても、他端部が外界に連通することはない。
(答弁書11ページ下から6行?12ページ3行)

(エ) 開閉弁機構の制御流体
請求人は、甲1記載発明のパイロット弁Bの制御流体が「加圧エア」であると主張する。しかし、甲1には、「本発明の重要な特徴は、アクチュエータ流体がパイロット弁の部品の潤滑剤としても機能することにある」と記載されており、パイロット弁Bの制御流体が「加圧エア」ではなく「加圧油」であることは明らかである。甲1記載発明は、パイロット弁Bの動作によって複数のアクチュエータをサイクル動作させるものであるから、パイロット弁によって制御される加圧流体も「アクチュエータを作動させる加圧流体」にほかならない。甲1記載発明は、アクチュエータの作動流体によってパイロット弁を潤滑するとともに、パイロット弁を完全に密封することを目的とするものであるから、パイロット弁Bに制御される流体は「加圧油」であり、その制御流体用の配管は外界に対して密閉されている。
よって、甲1記載発明は、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」るとの構成を備えるものではない。
(答弁書12ページ4?最終行)

(オ) 環状部材及びキャップ部材
請求人は、甲1記載発明の「バルブ本体21」及び「ネジ栓34」が本件特許発明1、2の「環状部材」及び「キャップ部材」に相当すると主張する。しかし、本件特許発明1、2においては、「シリンダ本体に形成されたエア通路」の構成に加えて、「前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路」及び「前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ることを明記しており、「環状部材」及び「キャップ部材」の内部または周囲に形成される「第1エア通路」及び「第2エア通路」は「シリンダ本体に形成されたエア通路」に連通するものでなければならない。しかるに、甲1には「シリンダ本体に形成されたエア通路」が示されておらず、「バルブ本体21」に形成された3つのポートが「シリンダ本体に形成されたエア通路」に連通することはない。よって、甲1には本件特許発明1、2の「環状部材」及び「キャップ部材」に相当する構成は開示されていない。
(答弁書13ページ1?17行)

(カ) 第1シール部材及び第2シール部材
請求人は、本件特許発明1、2の「第1シール部材」及び「第2シール部材」が甲1に示されていると主張するが、「第1シール部材」及び「第2シール部材」に相当する事項は甲1には示されていない。
(答弁書13ページ18?21行)

イ 一致点、相違点の認定について
本件特許発明1、2と甲1記載発明とは、少なくとも以下の点において相違する。
・本件特許発明1、2では、「出力部材が所定の位置にあることが検知され」るのに対し、甲1には「位置検知装置」自体が示されていない(相違点1-A)。
・本件特許発明1、2では、「油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向(油圧シリンダの油室側)に進出させ」るのに対し、甲1記載発明の「孔延長部33」に導入された油圧は「弁体29」をバランスさせるものにすぎず、進出させる力はゼロである。
・本件特許発明1、2では、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」るのに対し、甲1記載発明のパイロット弁Bの制御流体は「加圧油」であり、甲1には「エア通路」自体の開示がなく、他端部が外界に開放される構成も示されていない。
・本件特許発明1、2は、「環状部材」、「キャップ部材」、「第1シール部材」及び「第2シール部材」を備え、「加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され」、「加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」るのに対し、かかる構成に対応し得る事項は甲1には示されていない。
(答弁書13ページ下から6行?14ページ最終行)

ウ 本件特許発明1、2を容易に想到し得ないことについて

(ア) 「位置検知」について
本件特許発明1、2では、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」、「前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換える」のに対し、甲4、甲9、甲10にはかかる構成は開示されておらず、本件特許発明1、2の「位置検知装置」を開示するものではない。また、甲1記載発明は、パイロット弁Bによって油圧アクチュエータをサイクル動作させるものにすぎず、出力部材(ピストン15)の位置を検知するという発想が生じるはずもなく、ここに位置検知の構成を適用しようとする動機づけもない。よって、甲1記載発明から「位置検知」に関する構成を容易に想到し得たものではない。
(答弁書15ページ6?20行)

(イ) 「加圧エア」及び「エア通路」について
甲1記載発明の「パイロット弁B」の制御流体が「加圧油」であることは上述のとおりである。甲1には、「本発明の重要な特徴は、アクチュエータ流体がパイロット弁の部品の潤滑剤としても機能することにある」とも記載されており、パイロット弁Bの制御流体を加圧エアにすることは甲1記載発明の重要な特徴に反することとなるから、これを当業者が容易に想到し得たということは到底できない。
また、甲1記載発明を改変して本件特許発明1、2の「エア通路」を得るためには、「パイロット弁B」に通じる流路を大気圧の外部空間(外界)に開放しなければならない。しかし、甲1においては、従来の構造においてパイロット弁ユニットの一部が外部に開放されていることを問題としていることから、パイロット弁Bは大気圧の外部空間に開放され得ないものと理解しなければならない。
さらに、甲1記載発明の「パイロット弁B」は、シリンダに組み付けられるバルブ本体21に設けられるものであり、「シリンダ本体」に形成されたものではなく、「パイロット弁B」の構造をシリンダ本体に形成する動機づけも存在しない。
(答弁書15ページ下から7行?16ページ15行)

(ウ) 「環状部材」、「キャップ部材」、「第1エア通路」、「第2エア通路」について
甲1はもとより、その他の甲号証にも、本件特許発明1、2の「環状部材」及び「キャップ部材」に相当する構成は記載も示唆もなされていない。本件特許発明1、2においては、「環状部材」、「キャップ部材」、「第1シール部材」、「第2シール部材」、「第1エア通路」、及び「第2エア通路」の構成により、シール部材の交換等のメンテナンスが容易となり、位置検知装置の信頼性や耐久性の向上に繋がるともに、シリンダ本体に複雑な加工を行なうことなく「弁体」及び「油圧導入室」の周りのスペースを有効に活用して「加圧エア」の流路を構成することができ、位置検知装置を小型化できる。かかる構成を何ら根拠なく設計的事項ということもできない。
本件特許発明1、2は、「前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ることにより、「弁体」及び「油圧導入室」の周りのスペースを有効に活用して「加圧エア」の流路を構成することができる。かかる事項は甲6には記載も示唆もなされておらず、甲1記載発明に甲6記載事項をどのように組み合わせても、本件特許発明1、2の「キャップ部材」及び「第2エア通路」の構成を容易に想到し得たものではない。
さらに、甲6においては油圧と空圧を併用することは開示されておらず、スライド弁42によって「加圧エア」を制御するという前提の下では、ピストン32を駆動するのは「空気圧シリンダ」でなければならない。このように、「開閉弁機構」によって「加圧エア」を制御しながら、その「開閉弁機構」の「キャップ部材」に「油圧」を導入するための「油圧導入室」を設けるという本件特許発明1、2の思想は、甲6には記載も示唆もなされていない。甲6記載のスライド弁42は本件発明の開閉弁機構とは基本的構成が全く異なり、これを甲1記載発明に組み合わせて本件特許発明1、2を容易に想到し得たとは到底いえない。
よって、本件特許発明1、2における「環状部材」、「キャップ部材」、「第1エア通路」、及び「第2エア通路」を容易に想到し得ない。
(答弁書16ページ下から13行?17ページ下から7行)

(エ) 「第1シール部材」及び「第2シール部材」
本件特許発明1、2の「第1シール部材」及び「第2シール部材」に相当する事項は甲1記載発明には示されていない。甲1記載発明は、パイロット弁の潤滑を目的とするものであって、摺動部分には潤滑油として適量の加圧油を供給すべきである。よって、甲1記載発明においては、制御用の圧力流体にも加圧油を供給するとともに、駆動用の圧力流体と制御用の圧力流体の間にはシールを設けないことが自然である。
本件特許発明1、2においては、「小径軸部」が挿入される「環状部材」や「大径軸部」が内嵌される「キャップ部材」に「第1エア通路」及び「第2エア通路」を形成することで、シリンダ本体に複雑な加工を行なうことなく「弁体」及び「油圧導入室」の周りのスペースを有効に活用して「加圧エア」の流路を構成することができ、位置検知装置をさらに小型化することができる。かかる構成を何ら根拠なく設計的事項ということもできない。
(答弁書17ページ下から6行?18ページ下から8行)

エ まとめ
よって、甲1記載発明に他の各甲号証記載事項を組み合わせて、本件特許発明1、2を容易に想到し得るものではない。
そして、本件特許発明1、2が進歩性を有することは明らかであるから、本件特許発明1、2に従属する本件特許発明3ないし6が進歩性を有することも明らかである。
したがって、甲1記載発明を主たる引用発明として本件特許発明1ないし6の進歩性欠如をいう請求人の主張には、理由がない。
(答弁書18ページ下から6行?19ページ3行)

(3) 無効理由2について

ア 甲2記載発明の認定について
請求人の主張する甲2記載発明の認定は、少なくとも以下の点で誤りである。

(ア) 空圧パイロット弁の構成
甲2記載発明は、「前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成し」、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」ているとの構成を備えるものではない。
さらに、本件特許発明1、2においては、「前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、…前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ」ると規定しているが、甲2記載発明では、圧力入口孔としての「通孔58」と排気用の「通孔64」とが連通することはなく。「開閉弁機構に対して一端部側に位置するエア通路」の圧力が上昇したり低下することはない。
よって、甲2記載発明についての請求人の認定は失当である。
(答弁書20ページ5行?21ページ下から7行)

イ 一致点、相違点の認定について
甲2は、「前記油圧によって前記弁体を前記第1方向(前記油室側)に進出させる油圧導入室」を開示するものではない。
さらに、「前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成し」、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」ること、及び、「前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、…前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ」ることは、甲2には記載も示唆もなされていない。
さらに、「前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材」、「前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ることも甲2には示されていない。
(答弁書21ページ下から6行?22ページ18行)

ウ 本件特許発明1、2を容易に想到し得ないことについて

(ア) 「油圧導入室」について
甲2発明は、「弁操作具44」及び「弁部材46」を「バネ50」の付勢力及び制御流体(加圧エア)の圧力によって「ピストン24」側に付勢するものであり、「油圧導入室」を備えるものではない。
請求人は、甲1、甲3、甲5、甲6を副引例として挙げ、これを甲2記載発明に適用することで「油圧導入室」を容易に想到し得たと主張する。
しかし、甲1記載事項において、「孔延長部33」に導入された油圧は「弁体29」をバランスさせるものにすぎず、進出させる力はゼロであり、甲3記載事項は、油圧と空圧という異なる流体を用いることは想定されないものであって、「開閉弁機構」によって「加圧エア」を制御しながら、その「開閉弁機構」に「油圧」を導入するための「油圧導入室」及び「油圧導入路」を設けるという本件特許発明1、2の思想は、甲3に記載も示唆もされていない。この点、甲5及び甲6も同じである。
甲2記載発明は、「加圧エア」によって「弁操作具44」を付勢しており、「油圧導入室」をさらに付加する動機づけはなく、甲2記載発明に「油圧導入室」を無理やり適用しようとすると、「加圧エア」を導入すべき弁孔53や入口孔58に油圧を導入する必要があり、甲2記載発明のパイロット弁16が動作しなくなるから、甲2記載発明には「油圧導入室」を設けることの阻害要因が存在する。
以上説明したとおり、甲2記載発明に甲1、甲3、甲5、甲6記載事項を組み合わせて本件特許発明1、2の「油圧導入室」に係る構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
(答弁書22ページ下から4行?25ページ3行)

(イ) 「エア通路」について
甲2記載発明は、圧力出口孔である「通孔56」が外界に連通せず、圧力入口孔である「通孔58」は排気用の「通孔64」に連通することがないから、「一端部に加圧エアが供給され他端部が外界に連通したエア通路」を開閉可能な「開閉弁機構」が甲2に示されているとはいえない。
本件特許発明1、2と甲2記載発明とは、「エア通路」に関する基本的構成が全く異なるものであり、甲2記載発明を出発点として本件特許発明1、2の「エア通路」に係る構成を容易に想到し得たものではない。
(答弁書25ページ4?下から3行)

(ウ) 「キャップ部材」及び「第2シール部材」について
甲2記載発明の「弁操作具44」は「スリーブ84」内に収容されており、「プラグ74a」に内嵌されることはないから、甲2記載発明を変形して「弁体の大径軸部をキャップ部材の凹穴に内嵌する」ことは、当業者が容易に想到し得たものではない。
甲2記載発明において、「シール部材78a」は、シリンダ室とエア通路との間、及びエア通路どうしの間をシールするために設けられ、「スリーブ84」は、「シール部材78a」を配置するためのスペーサとして設けられるものであって、仮に、無理やりに甲2記載発明を変形して「前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材」の構成を得ようとする場合、「スリーブ84」及び「シール部材78a」の構成も変更しなければならない。そうすると、「環状部材」及び「第1シール部材」が甲2記載発明に示されているとする請求人の主張の前提が変更される。よって、本件特許発明1、2の「第2シール部材」が適宜設計可能な事項にすぎないとの請求人主張は、甲2記載発明の他の構成を無視したものであるから失当である。
甲2記載発明の「弁部材46a」は「スリーブ84」に内嵌されるべきものであり、「弁部材46a」が「プラグ74a」の凹穴に内嵌されることはない。また、「弁部材46a」の外周に本件特許発明1、2の「第2シール部材」に相当する部材を設けることもない。この点からも、甲2記載発明を出発点として本件発明1,2の「キャップ部材」及び「第2シール部材」を容易に想到し得ない。
(答弁書25ページ下から2行?27ページ7行)

エ まとめ
よって、甲2記載発明に他の各甲号証記載事項を組み合わせて、本件特許発明1、2を容易に想到し得るものではない。
そして、本件特許発明1、2が進歩性を有することは明らかであるから、本件特許発明1、2に従属する本件特許発明3ないし6が進歩性を有することも明らかである。
したがって、甲2記載発明を主たる引用発明として本件特許発明1ないし6の進歩性欠如をいう請求人の主張には、理由がない。
(答弁書27ページ8?最終行)

(4) 無効理由3について

ア 本件特許発明1、2を容易に想到し得ないことについて
本件特許発明1、2に係る位置検知装置では、出力部材の駆動を油圧で行ない、開閉弁機構によりエア圧を制御するのに対し、甲3記載発明において、ピストン21の駆動を油圧で行なう場合において、パイロット弁63,100の制御流体も加圧油となる点は、請求人は「相違点3-1」として認めている。請求人は、上記相違点は設計的事項であるか、設計的事項でないとしても、副引例として甲1及び甲4を引用し、パイロット弁63,100の制御流体を「加圧エア」にすることは容易に想到し得ると主張する。しかし、甲3に記載されたものにおいては、油圧と空圧という異なる流体を用いることは想定されておらず、甲3記載発明においてパイロット弁63,100の制御流体を「加圧エア」とするのを想到することは困難である。よって、甲3記載発明を出発点として、「相違点3-1」に係る構成を容易に想到し得たということはできない。
本件特許発明1、2は、「相違点3-1」以外にも「位置検知」、「キャップ部材」、「環状部材」、「第1シール部材」、「第2シール部材」等、甲3記載発明には示されていない特有の構成を有し、これらの構成を甲3記載発明を出発点として容易に想到し得たとも到底いえないから、甲3記載発明を出発点として本件特許発明1、2を容易に想到し得ない。
以下の点については、予備的に反論する。
請求人は、甲3においても「位置検知装置」が示されていると主張するが、甲3は「位置検知」を開示するものではない。
請求人は、本件特許発明1、2の「環状部材」及び「キャップ部材」の構成が設計的事項にすぎないとも主張するが、本件特許発明1、2の「環状部材」、「キャップ部材」、「第1エア通路」、及び「第2エア通路」が単なる設計的事項といえるものではない。
さらに、請求人は、甲6の図2に示すスライド弁42の弁ケースが「環状部材」と「キャップ部材」の2つに分割されている旨を主張するが、本件特許発明1、2は、単に弁ケースを2つの部材で構成したというものではなく、「前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ることにより、「弁体」及び「油圧導入室」の周りのスペースを有効に活用して「加圧エア」の流路を構成することができるが、かかる事項は甲6には記載も示唆もなされておらず、本件特許発明1、2の「キャップ部材」及び「第2エア通路」の構成を容易に想到し得たものではない。
さらに、甲6記載事項は、油圧と空圧という異なる流体を用いることは想定されていないから、甲6記載のスライド弁42を甲3記載発明に組み合わせて本件特許発明1、2を容易に想到し得たとは到底いえない。
(答弁書28ページ14行?30ページ17行)
甲3記載発明においては、「流路61」と「シリンダ空間23」とが「四方弁36」によって接続されているため「油圧シリンダ」と「加圧エア」とを併用できない。
(被請求人要領書2の4ページ11ないし13行)

イ まとめ
本件特許発明1、2が進歩性を有することは明らかである。よって、本件特許発明1、2に従属する本件特許発明3ないし6が進歩性を有することも明らかである。
したがって、甲3記載発明を主たる引用発明として本件特許発明1ないし6の進歩性欠如をいう請求人の主張には、理由がない。
(答弁書30ページ下から7?最終行)

(5) 無効理由4について

請求人の無効理由4についての主張は、原出願の明細書の段落【0008】の記載内容を、以下のとおり曲解したものであるから失当である。
原出願明細書の段落【0008】の記載は、先行技術文献である特許文献2(特開2003-305626号公報)に示す構造の問題点を説明するものであり、仮に当該段落の記載によって意識的に除外される部分があるとしても、特許文献2に示す構造と同等のものが除外されるにすぎない。
特許文献2に示す構造は、検出具62がクランプロッド5と一体化されたものであるため、クランプロッド5(出力部材)の移動距離がそのまま検出具62(弁体)の移動距離となり、クランプロッド5の往復動に伴なう検出具62の移動距離が大きい。この結果、摺動部の摩耗が進みやすい。原出願明細書の段落【0008】では、これを「長期間使用した場合にエア通路を閉止する性能が低下する虞がある。」と指摘したものである。これに対し、本件特許発明1、2は、エア通路を開閉する弁体の移動距離が出力部材の移動距離に比べて小さなものにすることができるので、特許文献2のような問題が生じることはない。
さらに、原出願明細書の段落【0008】の記載から、特許文献2の第一義的な課題は、クランプ本体の外部に検出スペースを有することであり、請求人主張の摺動に係る課題は副次的なものである。本件発明は、第一義的な課題が達成できれば足りるものであり、副次的な課題までも達成されるものに限定する必要もない。
原出願明細書の【0097】には「4)・・・本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の開閉弁機構を採用することができる。」と記載され、一方、乙5によれば、原出願の出願時において、「スプール弁」は「ポペット弁」とともによく知られた構造であり、「スプール弁」が明示的に示されていないとしても、原出願の範囲から意識的に除外された発明ということはできない。
以上詳述したように、本件特許発明は、原出願明細書に記載されたもので、分割要件を満たすものである。よって、本件分割出願は適法なものであるから、請求人主張の無効理由4には理由がない。
(請求書31ページ1行?33ページ14行)

(6) 被請求人の証拠方法
被請求人は答弁書とともに、証拠方法として乙1ないし5を提出している。
乙1:新村出編、「広辞苑」、第6版、株式会社岩波書店、2008年1月11日発行、452ないし455ページ
乙2:無効2015-800025号における平成27年6月18日付け審理事項通知書
乙3:無効2013-800210号における平成26年12月8日付け審決
乙4:米国特許第3540348号明細書
乙5:(社)日本油空圧学会編、「新版 油空圧便覧」、株式会社オーム社、1989年2月25日発行、453ないし458ページ

第4 当審の判断

1. 各書証の記載、各書証記載の発明及び記載の事項
(以下、甲○に記載の発明を、「甲○発明」という。なお、日本語訳は、請求人が付した日本語訳に基づいて当審で付した仮訳である。また、記載箇所を行数により特定するときには、各書証に行数を示す番号が記載されている場合には、その番号により特定し、そのような番号がない場合には、行数により特定した。その際に、空白行は行数に含めない。)

(1) 甲1
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲1には以下の記載がある。

(ア)
「The invention relates to a hydraulic power actuator which is combined with a pilot valve to provide a unit assembly for controlling fluid control circuits in timed relation to the operation of the power actuator.」(1欄5ないし8行)
(本発明は、パイロット弁を組み合わせた油圧パワーアクチュエータに関し、そのパワーアクチュエータの動作にタイミングを合わせて流体制御回路を制御するためのユニット組立体を提供するものである。)

(イ)
「The pilot valve unit and associated cam, as heretofore utilized, were more or less openly exposed with respect to at least a portion of their moving parts. These exposed moving parts were easily susceptible of contamination and lacked proper provision for proper protection against the elements, or for lubricating internal parts.
・・・
The above noted problem as well as others inherent in the presently known conventional arrangements have to a great extent been eliminated by the herein described invention by providing a unitized assembly wherein the cycling pilot control valve is intimately associated with the power actuator in order to provide an integrated unit assembly, wherein the operatively associated moving parts of the actuator and pilot valve will be entirely enclosed, and in which the pilot valve means will be lubricated by the pressurized fluid medium utilized for motivating the actuator.」(1欄26ないし46行)
(従来から利用されているパイロット弁ユニットと連動カムは、少なくとも可動部分の一部が外部に多少開放されていた。これらの開放された可動部分は、汚染物が侵入しやすく、構成要素を適切に保護できず、また、内部の部品を適切に潤滑できない。
・・・
現在知られている従来構造に起因する上記問題および他の問題は、有用な組立体を備える以下の発明によって大幅に改善される。即ち、一体化されたユニット組立体を提供するために、サイクル用パイロット制御弁がパワーアクチュエータに密接に連携され、また、その連携動作されるアクチュエータの可動部分およびパイロット弁が完全に密封され、さらに、アクチュエータ作動用の加圧流体によって上記パイロット弁手段が潤滑される。)

(ウ)
「Referring more specifically to the drawings, the present invention for illustrative purposes is shown in FIG. 1 as comprising a hydraulic power actuator A and pilot valve B which have been combined according to the present invention into a unit assembly for use in systems utilizing a plurality of fluid actuators, and in which it is desired to cycle the operation of control for certain of the devices in dependence upon the operation of one or more of the hydraulic actuators.
The hydraulic power actuator A is of conventional construction in so far as it comprises a cylinder 10 having its ends mounted in an end cap structure 11 at one end and a power delivery end cap structure 12 at its other end. These end caps are provided with suitable ports adapted for connection with a supply conduit 13 in the case of end cap 11, and conduit 14 in the case of end cap 12. By means of these conduits, suitable actuator fluid pressure may be alternately admitted and exhausted to the cylinder for actuating an operatively associated piston 15 therein for reciprocable movement, this piston being connected with a power delivery piston rod 16 which is carried through a suitable bushing in the end cap 12 where it is provided with appropriate coupling means (not shown) for connecting to the device to be operated thereby. The rods 17 interconnect the end caps and retain them in assembled relation with the cylinder to provide the actuator assembly.」(2欄38ないし61行)
(図面を参照して、より詳しく説明する。説明目的としての図1に示されるように、本発明は、油圧パワーアクチュエータAとパイロット弁Bとからなり、これらは、本発明に基づいてユニット組立体に結合されて、複数の流体アクチュエータを利用するシステムに用いられる。これにより、1つ以上の油圧アクチュエータの動作に応じてサイクル制御できる確実な装置を望める。
上記油圧パワーアクチュエータAは、シリンダ10の一端部にエンドキャップ構造11を有すると共に他端部に出力側のエンドキャップ構造12を有する限りにおいて、従来の構造を備えている。これらのエンドキャップには適切なポートが設けられる。即ち、エンドキャップ11には、供給配管13に接続されるポートが設けられ、また、エンドキャップ12には、配管14が接続されるポートが設けられる。これらの配管により、適切なアクチュエータ流体の圧力が上記シリンダに交互に供給および排出され、それに連携して上記シリンダ内のピストン15を往復移動させる。このピストンには出力用ピストンロッド16が接続され、そのピストンロッド16がエンドキャップ12内の適切なブッシュを介して支持され、当該ピストンロッド16には、操作されるべき装置に連結される適切なカップリング手段(図示しない)が設けられる。上記エンドキャップ同士を相互に連結するロッド17は、これらエンドキャップをシリンダに組み付けた状態に保持し、これにより、アクチュエータ組立体を提供する。)

(エ)
「As will be seen, the power delivery end cap may be provided with a suitable attaching flange or flanges 18 for mounting the actuator assembly, as by one or more securing bolts 19 and associated nuts 20. As thus arranged, the end cap 11 will be outwardly disposed and is shown in this case as having the pilot valve B mounted thereon. In this position, the pilot valve will be actuated when the piston rod reaches the end of its retracted stroke. It will be appreciated, however, that a similar pilot valve might also be mounted at the power delivery end cap 12 so as to provide cycling control at the end of the extended position of the power delivery piston rod. Should it be required that the system be so operated, a pilot valve may be positioned at both ends of the cylinder. It is believed that the operation of the pilot valve will be fully comprehended from a description of a valve as mounted in one position only, for example, upon the end cap structure 11.」(2欄62行ないし3欄3行)
(図示されるように、出力側のエンドキャップには、1つ以上の固定ボルト19及びナット20によってアクチュエータ組立体を装着するのに適切な取付けフランジ18を設けてもよい。その配置では、エンドキャップ11は外方へ配置され、そのエンドキャップ11にパイロット弁Bが装着される。この場合、そのパイロット弁は、ピストンロッドが後退ストローク端に到達したときに動作される。しかしながら、出力側のエンドキャップ12に類似のパイロット弁を設けて、出力用ピストンロッドの伸長した端部でサイクル制御してもよいことが明らかである。必要ならば、シリンダの両端部にパイロット弁をそれぞれ配置してシステムを動作させるようにできる。上記パイロット弁の動作は、例えばエンドキャップ構造11の一箇所に配置される弁を説明することによって十分に理解され得る。)

(オ)
「Between the opposite ends of the valve body 21, the body is enlarged and internally constructed to provide spaced cavities which are in communication with corresonding port openings arranged for the connection of fluid control conduits for the flow of pressurized fluid under the control of the pilot valve.
・・・
Reciprocably mounted within the bore 22 is a spool valve 29, this valve having end portions 30 and 31 respectively in axially spaced apart relation and being interconnected by a neck portion 32 of reduced diameter.・・・With a valve spool as thus arranged, it is readily apparent that the valve can be moved to an upper position wherein the connection ports 26 and 28 will be connected while the port 26 will be disconnected with respect to the port 27. On the other hand, the valve spool is displaceable to a lower position in which the port 26 will connect with the port 27, but will be disconnected with respect to the port 28. Selectivity of flow is thus controlled between the ports.」(3欄12ないし42行)
(バルブ本体21の両端の間では、その本体が拡大されると共に当該本体の内部に間隔を空けて空所が設けられる。これらの空所は、上記パイロット弁によって制御される加圧流体用の流体制御配管が接続されるように配置した孔開口に連通される。
・・・
上記孔22内にスプール弁29が往復移動可能に装着される。この弁は、軸方向に離間した端部30,31を有し、これらの端部30,31が小径の首部32によって相互に接続される。・・・弁スプールをこのような構成とすることで、以下のことが容易に理解される。即ち、上記弁は上方位置へ移動可能であって、その上方位置では、接続ポート26及び28が連通されるのに対し、そのポート26とポート27とが接続解除される。これとは逆に、上記弁スプールは下方位置へ移動可能であって、その下方位置では、ポート26とポート27とが連通されるが、そのポート26とポート28とが接続解除される。ポート同士の間の流れの選択は上記のように制御される。)

(カ)
「In the raised position of the spool valve, as shown in FIG. 1, it will be noted that an edge of the roller extends into the cavity 24, and that when the spool valve is urged by the spring 35 to the limit of its movement, the roller will be in a position within the cavity 24 wherein it will be in the path of movement of a cam member 43 carried by and axially in alignment with the piston 15. When the piston is moved to the right, as shown in FIG. 1, the cam member will be withdrawn from the cavity 24, and the spool valve is then free to be urged downwardly to one of its control positions. However, when the piston is moved in an opposite direction so that the cam member re-enters the cavity 24, a cam surface thereon, as indicated at 44, will engage the roller and move it to its other control position. As thus arranged, it will be clear that the actuation of the valve will be synchronized with movements of the piston of the actuator. As previously mentioned, in some installations it may be desirable to also actuate a pilot valve at the end of the power delivery stroke of the actuator.」(3欄56行ないし4欄1行)
(図1に示すように、スプール弁が上昇位置にあるときには、空所24内に上記ローラの端が進出し、そして、スプール弁が上記バネ35によって移動制限位置へ付勢されたときに上記ローラが空所24内に位置され、そこでは、当該ローラは、ピストン15と同行移動しかつ同軸のカム部材43の移動経路に位置される。図1において、ピストンが右方へ移動されるときには、カム部材は空所24から引き抜かれ、その後、スプール弁は、解放されて、制御位置のうちの一つの位置へ向けて下方に付勢される。しかしながら、ピストンが反対方向に移動されたときには、カム部材は、空所24に再び挿入されて、44で示すカム面がローラと係合すると共に、スプール弁を他の制御位置へ移動させる。このような構成とすることで、弁の動作がアクチュエータのピストンの移動と同期されることが明らかである。前述したように、設備に応じて、アクチュエータの出力ストロークの端部でパイロット弁を動作させるようにしてもよい。)

(キ)
「This fluid being pressurized acts on the lowermost end of the spool valve, and would tend to force the valve against the pressure of the spring 35 and thus produce faulty operation. This is prevented by providing an equalizing pressure of fluid at the opposite end of the spool valve through a passageway which connects the source of fluid pressure with the bore extension 33. For convenience, this is accomplished by providing an axial bore passage 48 which interconnects the spaces at the opposite ends of the valve spool and subjects end areas to fluid pressure which balances the valve spool so that the fluid pressure does not interfere with the spool operation.」(4欄15ないし25行)
(この加圧流体は、上記スプール弁の最下端に作用してバネ35の力に抗するように当該弁に力を加えるので、動作不良を生じさせる。この動作不良を防止するには、流体圧力源を孔延長部33へ接続する通路を介して、スプール弁の反対側の端部に均圧流体を供給すればよい。これを達成するには、好ましくは、弁スプールの両端部の空間同士を連通させる軸孔路48を設けて、その弁スプールをバランスさせる流体圧力を上記の両端面に作用させ、これにより、流体圧力がスプールの動作を妨げないようにする。)

(ク) 図1


(ケ)
上記摘記事項(ウ)の「油圧パワーアクチュエータAは、シリンダ10の一端部にエンドキャップ構造11を有すると共に他端部に出力側のエンドキャップ構造12を有する限りにおいて、従来の構造を備えている。これらのエンドキャップには適切なポートが設けられる。即ち、エンドキャップ11には、供給配管13に接続されるポートが設けられ、また、エンドキャップ12には、配管14が接続されるポートが設けられる。これらの配管により、適切なアクチュエータ流体の圧力が上記シリンダに交互に供給および排出され、それに連携して上記シリンダ内のピストン15を往復移動させる。このピストンには出力用ピストンロッド16が接続され、そのピストンロッド16がエンドキャップ12内の適切なブッシュを介して支持され、当該ピストンロッド16には、操作されるべき装置に連結される適切なカップリング手段・・・が設けられる。」との記載から、甲1記載のシリンダ本体10は、ピストン15及びピストンロッド16を進退可能に装備している。そして、甲1記載のパワーアクチュエータAは、油圧により作動するピストン15及びピストンロッド16を装備するのであるから、ピストン15及びピストンロッド16を進出側と退出側の少なくとも一方に駆動するための油室を備えるものであることは、明らかである。

(コ)
上記摘記事項(オ)の「上記孔22内にスプール弁29が往復動可能に装着される。・・・上記弁は上方位置へ移動可能であって、その上方位置では、接続ポート26及び28が連通されるのに対し、そのポート26とポート27とが接続解除される。これとは逆に、上記弁スプールは下方位置へ移動可能であって、その下方位置では、ポート26とポート27とが連通されるが、そのポート26とポート28とが接続解除される。ポート同士の間の流れの選択は上記のように制御される。」との記載から、甲1記載のスプール弁29は、流体が流れる流路が接続されたポート26を、ポート27あるいは28との間で切り換えるものであって、かつ当該ポート26、27及び28に接続される流路は、一端部に流体が供給され他端部がパイロット弁Bの外部にある他所に連通したものであることは明らかである。そして、図1には、各ポート26、27及び28は、バルブ本体21に形成された流路であることの図示がある。さらに各ポート26、27、28のいずれかは、流体が供給されるものであって、他の端部が他所に連通するものであるといえる。さらに、上記摘記の「接続ポート26及び28が連通されるのに対し、そのポート26とポート27とが接続解除される」ことは、それまでポート26とポート27にそれぞれ接続されていた流路間で開通していた流路が、新たにポート26及び28間での連通に伴い閉鎖されるから、パイロット弁Bは、当該流路を開閉可能なものであるといえる。そうすると、甲1記載のスプール弁29は、バルブ本体21に形成されたものであって、一端部に流体が供給され他端部が他所に連通した流路と、この流路を開閉可能なパイロット弁Bが、記載されていることは明らかである。
さらに、上記摘記事項(ウ)の「本発明は、油圧パワーアクチュエータAとパイロット弁Bとからなり、これらは、本発明に基づいてユニット組立体に結合されて、複数の流体アクチュエータを利用するシステムに用いられる。これにより、1つ以上の油圧アクチュエータの動作に応じてサイクル制御できる確実な装置を望める。」との記載、同「エンドキャップ11には、供給配管13に接続されるポートが設けられ、また、エンドキャップ12には、配管14が接続されるポートが設けられる。これらの配管により、適切なアクチュエータ流体の圧力が上記シリンダに交互に供給および排出され、それに連携して上記シリンダ内のピストン15を往復移動させる。」との記載、上記摘記事項(エ)の「そのパイロット弁は、ピストンロッドが後退ストローク端に到達したときに動作される。しかしながら、出力側のエンドキャップ12に類似のパイロット弁を設けて、出力用ピストンロッドの伸長した端部でサイクル制御してもよい」との記載、上記摘記事項(オ)の「上記弁は上方位置へ移動可能であって、その上方位置では、接続ポート26及び28が連通されるのに対し、そのポート26とポート27とが接続解除される。これとは逆に、上記弁スプールは下方位置へ移動可能であって、その下方位置では、ポート26とポート27とが連通されるが、そのポート26とポート28とが接続解除される。ポート同士の間の流れの選択は上記のように制御される。」の記載、並びに、上記摘記事項(カ)の「図1において、ピストンが右方へ移動されるときには、カム部材は空所24から引き抜かれ、その後、スプール弁は、解放されて、制御位置のうちの一つの位置へ向けて下方に付勢される。しかしながら、ピストンが反対方向に移動されたときには、カム部材は、空所24に再び挿入されて、44で示すカム面がローラと係合すると共に、スプール弁を他の制御位置へ移動させる。このような構成とすることで、弁の動作がアクチュエータのピストンの移動と同期されることが明らかである。」との記載がある。そうすると、上記パイロット弁Bは、ピストン15に設けられたカム部材43とバネ35によって往復動作するスプール弁29を有し、当該スプール弁29によって、上記流路の開閉を行うことで、油圧パワーアクチュエータAの供給配管13あるいは14に交互に供給あるいは排出される流体の圧力によってピストン15が往復移動するよう制御するものであることが、明らかである。

イ 甲1発明
上記摘記事項(ア)ないし(キ)、(ク)の図示並びに認定事項(ケ)及び(コ)を技術常識を考慮して総合すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。

「圧縮バネ35の付勢によってパイロット弁Bのスプール弁29を下方に進出させ、油圧パワーアクチュエータAのカム部材43と同軸のピストン15及び出力用ピストンロッド16により前記スプール弁29を下方と反対の上方へ移動させてパイロット弁Bに形成されたポートの接続状態を切換えることにより流体制御回路を制御可能に構成し、
前記スプール弁29は、軸方向に離間した端部30、31が小径の首部32によって相互に接続された弁を含み、
シリンダ10のエンドキャップ11に装着され、前記スプール弁29が挿入される孔22を有するバルブ本体21と、
前記バルブ本体21の上端の孔延長部33を塞いで固定されるネジ栓34と、
前記孔延長部33に設けられ、油圧パワーアクチュエータAのアクチュエータ流体が供給され、前記アクチュエータ流体圧力によって前記スプール弁29をバランスさせる孔とを備え、
前記油圧パワーアクチュエータAの油室と前記ポートとが互いに連通せず、
前記ポートの端部は、流体制御配管が接続され、
前記バルブ本体21を前記バルブ本体21の径方向に貫通する、加圧流体の通路となるポートが形成され、
前記カム部材43が空所24から引き抜かれるときにはポート26とポート27とが連通しポート26とポート28とが接続解除される状態になり、前記カム部材43が前記空所24に挿入されたときには前記スプール弁29が前記上方に移動して前記ポート26とポート28とが連通されポート26とポート27とが接続解除される状態に切換えられ、
前記アクチュエータ流体によって前記カム部材43が前記空所24から引き抜き開始したときには前記圧縮バネ35の付勢により前記スプール弁29が前記下方に進出してポート26とポート27とが連通しポート26とポート28とが接続解除される状態に切換えられるパイロット弁B」

(2) 甲2
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲2には以下の記載がある。

(ア)
「ABSTRACT A fluid control arrangement including a cylinder having a pair of spaced heads joined by a hollow body in which a piston is mounted for reciprocal movement. A valve unit is provided in a valve bore integrally formed within at least one of the heads of the cylinder. The valve unit includes a spring-biased reciprocable valve member having a valve operator integrally formed therewith and extending into the hollow body so as to be in actuatable relation with the piston. A pair of conduit openings extend into the valve bore, and, depending upon the positioning of the valve member in the bore due to the operation of the piston, communicate with or are blocked from each other.」
(要約 流体制御装置はシリンダを含み、そのシリンダは、一対の離間されたヘッドを有し、これらヘッドは、往復移動されるピストンを収容した中空体によって連結される。上記シリンダの上記ヘッドのうちの少なくとも一つに一体形成された弁孔に、弁ユニットが備えられる。上記の弁ユニットは、バネによって付勢された往復弁部材を含み、その弁部材は弁操作具を有し、その弁操作具は、上記ピストンと連携動作可能なように、上記弁部材と一体に形成されて上記の中空体内へ延びている。一対の通孔は上記弁孔内へ延び、上記ピストンの動作に基づく上記の弁孔内の弁部材の位置に応じて、上記の通孔が互いに連通または遮断される。)

(イ)
「AIR CYLINDER WITH PILOT VALVE IN HEAD
This application is a continuation of application Ser. No. 750,998 filed July 18, 1968, now abandoned, which in turn was, also, a continuation of application Ser. No. 570,075, filed Aug. 3, 1966, now abandoned.
This invention relates generally to pneumatic control circuitry and more particularly to pneumatic control circuitry which incorporates a pneumatic or hydraulic cylinder jack and pneumatic pilot valve.」(1欄1ないし9行)
(ヘッド部にパイロット弁を備えた空圧シリンダ[当審注:クレームにおける発明の名称は、pneumatic control arrangement(空圧制御装置)である。]
本願は、1966年8月3日に出願されると共に現時点では放棄された出願番号570,075の継続出願としての「1968年7月18日に出願されると共に現時点では放棄された出願番号750,998」の継続出願である。
本発明は、一般的には空圧制御回路の構成部分に関し、より詳しくは、空圧または油圧のシリンダ往復機器と空圧パイロット弁とを合体させた空圧制御回路の構成部分に関する。)

(ウ)
「These and other objects and features of the invention will become more apparent from a consideration of the following descriptions.
A pneumatic control arrangement in accord with the invention includes a cylinder having spaced heads and a hollow body connecting the heads. One of the heads of the cylinder is fashioned with a valve bore and with spaced pneumatic conduits opening into the bore. A reciprocable piston is situated in the cylinder, and a valve unit is located in the head having the valve bore. The valve unit itself includes a valve operator that projects from the valve bore through an inner wall portion of the corresponding head into actuatable relationship with the piston, and a reciprocable valve member is arranged in the bore to move with the valve operator (preferably being integral therewith), the valve member being provided with flow control passageway means for selectively connecting the pneumatic conduits.
In order that the principles of the invention may be readily understood, two embodiments thereof, but to which the application is not to be restricted, are shown in the accompanying drawing wherein:」(1欄28ないし49行)
(本発明における上記目的と他の目的および特徴は、以下の説明により、より明確になる。
本発明に基づく空圧制御装置はシリンダを含む。そのシリンダは、間隔をあけて配置された複数のヘッドと、これらヘッドを連結する中空体とを有する。上記シリンダの一つのヘッドには、弁孔と複数の空圧孔とが形成される。上記の空圧孔は、間隔をあけて配置され、弁孔に開口される。上記シリンダに往復ピストンが配置される。上記弁孔を有する上記ヘッド内に弁ユニットが配置される。その弁ユニットは、弁操作具と往復弁部材とを含む。その弁操作具は、上記弁孔から上記ヘッドの内壁部分を通って突出して上記ピストンと連動する。上記の弁部材は、上記の弁孔内に配置されて上記の弁操作具と同行して移動する(好ましくは、弁操作具が弁部材と一体化される)。その弁部材は、前記の複数の空圧孔を選択的に接続するため、流れ制御の通路手段を備える。
本発明の原理が容易に理解されるようにするため、添付図面で2つの実施例を示しているが、本発明はそれに限定されるものではない。)

(エ)
「In the examples of the invention hereinafter set forth the term “pneumatic” is exemplary; hydraulic mechanisms and circuits are also contemplated. Referring now in detail to the drawing, specifically to FIG. 1, a pneumatic control arrangement indicated generally by the numeral 10 is seen to comprise a pneumatic cylinder 12 and pneumatic pilot valves 14 and 16. The cylinder 12 includes a pair of spaced heads 18 and 20 of blocklike construction which are connected by a hollow cylindrical tube or body 22 in defining a housing for a reciprocable piston 24. The piston 24 is secured on a piston rod 26 by means of a radially projecting flange 28, which may be defined by a washer, and a nut 30 which turns on a threaded inner end 32 of the piston rod 26. On its external end, the piston rod 26 carries a threaded attachment site 34 or other means for coupling the piston rod to an element which it is desired to drive. The introduction and exhaust of pressurized fluid for moving the piston 24 are achieved by pipes 36 and 38 which are threaded into or otherwise suitably connected with the heads 18 and 20 respectively. The pipes 36 and 38 are connected by passageways 40 into the hollow body 22. Radially outwardly of the external wall of the body 22, the heads 18 and 20 are held rigidly against the hollow cylindrical body 22 by cylindrical rods 97.」(1欄63行ないし2欄10行)
(本発明の実施例においては、以下の「空圧」の用語は例示であり、油圧の機構や回路も意図されている。図面に基づいて説明すると、特には図1において、参照数字10で示された空圧制御装置は、空圧シリンダ12と空圧パイロット弁14及び16とからなる。上記シリンダ12は、間隔をあけて配置された一対のブロック状の構造のヘッド18及び20を含む。これらヘッド18及び20が、往復ピストン24のハウジングとしての中空の円形チューブ又は円形体22によって連結される。そのピストン24は、半径方向へ突出するフランジ(ワッシャでもよい)28と、上記ピストンロッド26の内端ネジ部に螺合されたナット30とによって、ピストンロッド26に固定される。そのピストンロッド26の外端部には、当該ピストンロッドを被駆動部材に連結するため、ねじアタッチメント部34又は他の手段が設けられる。ピストン24を移動させるための圧力流体の導入および排出は、パイプ36及び38によってなされる。各パイプ36及び38は、螺合などによって上記ヘッド18及び20に接続される。上記パイプ36及び38は、通路40によって中空体22内に連通される。その中空体22の外壁の半径方向の外側で、前記ヘッド18及び20が円形ロッド97によって中空体22に強固に保持される。)

(オ)
「In compliance with the features of the present invention, the pilot valves 14 and 16 are incorporated directly in the as sociated heads 18 and 20 to be integral therewith; and turning to a consideration of FIGS. 2 and 3, valve unit 16 comprises a valve operator 44 integral with a reciprocable valve member 46, a flow directing arrangement 48 and a biasing spring 50. The valve operator 44 projects through a reduced diameter end portion 52 of a valve bore 53, bore 53 being fashioned in head 20 and operator 44 extending through an inner wall portion 54 of head 20 into actuatable relationship with the piston 24. In addition to the valve bore 53, the head 20 is fashioned with pneumatic conduits 56 and 58 which open radially into the bore 53. It will be apparent from an inspection of FIG. 3, that the pneumatic conduits 56 and 58 are spaced longitudinally of the axis of bore 53. Conveniently, an inlet fitting 60 is mounted in communication with conduit 58, and an outlet fitting 62 is secured in communication with the conduit 56. An exhaust conduit 64 may also be arranged to open into the valve bore 53 at a different longitudinal position than either the conduit 56 or the conduit 58.」(2欄11ないし31行)
(本発明の特徴によれば、上記パイロット弁14及び16は、対応するヘッド18及び20に直接に組み込まれて一体化される。また、図2および図3を参照して説明すると、弁ユニット16は、往復弁部材46と一体化された弁操作具44と、流れ指図構造48と、付勢バネ50とを備える。上記の弁操作具44は、ヘッド20に形成された弁孔53の縮径端部52を通って突出し、その弁操作具44は、ヘッド20の内壁部54を通って延びて上記ピストン24と連動関係にある。上記弁孔53については、上記ヘッド20に形成された空圧孔56及び58が上記弁孔53に半径方向へ開口される。図3から明らかなように、上記空圧孔56及び58は、上記弁孔53の軸方向に間隔をあけて配置される。好ましくは、入口継手60が通孔58に連通状に取り付けられ、出口継手62が通孔56に連通状に取り付けられる。排気孔64は、上記通孔56又は通孔58のいずれかとは長手方向の異なる位置で、上記弁孔53に開口されるように配置してもよい。)

(カ)
「Although various means may be employed to provide appropriate connection between the valve operator 44 and the reciprocable valve member 46, it has proved convenient and preferable to form them integrally. The valve member 46 is in the nature of a spool valve member including a cylindrical portion 66 and a spaced follower portion 68 connected thereto by a reduced diameter or necked-down region 70, region 70 forming an annular flow control passageway for selectively connecting the pneumatic conduits 56 and 58. The valve member 46 also blocks fluid communication between the pilot valve and the main cylinder, as will be apparent hereinafter. Advantageously, the valve member 46 is drilled with a bore 72 that defines a retainer for one end of spring 50. Being a compression spring, spring 72 requires an opposing abutment, and this latter function is supplied by a plug 74 which is turned into a threaded bore 76 that is formed coaxially with the valve bore 53. Means of sealing cap 74 and head 20 to prevent fluid from escaping from valve bore 53 is provided.」(2欄32ないし51行)
(上記の弁操作具44と往復弁部材46とに適切な連結を採用することには種々の手段があるけれども、これらを一体化することが便利で好ましい。上記弁部材46は、スプール弁部材の性質を有し、円柱部分66と、離れた従動部分68とを含む。その従動部分68は、縮径領域または首領域70によって円柱部分66に連結される。その首領域70は、空圧孔56及び58を選択的に接続するための流れ制御路を形成している。また、後述するように、上記弁部材46は、前記パイロット弁と前記のメインシリンダとの間の流体連通を遮断している。好ましくは、弁部材46には、バネ50の一端のためのリテーナとしての孔72が孔あけされる。圧縮バネについては、バネ72の反対側が接当する必要があり、これは、ネジ孔76に螺合したプラグ74によって行われる。そのネジ孔76は前記弁孔53と同心に形成されている。上記弁孔53から流体が漏れるのを防止するため、上記キャップ74及びヘッド20を封止する手段が備えられる。)

(キ)
「Cooperating with the annular chamber or groove that is defined by necked-down region 70, the flow directing arrangement 48 comprises a system of alternating resilient sealing means 78, conveniently rubber O-rings, and respectively labeled from left to right as 78b, 78c and 78d, and spacing means or ring spacers 80. Each of the spacing means or ring spacers 80 is formed with a generally U-shaped cross section with the closed end thereof disposed generally radially inwardly. In addition, each of the spacers 80 is perforated with a series of arcuate ports 82 in the floor or inner collar thereof. Thus, each of the spacers defines a radially outwardly opening groove which is communicated in the radially inward direction by means of the ports 82. In order to direct flow between the several conduits 56, 58 and 64, one of the spacers 80 is aligned radially with each of these conduits, as is well shown in FIG. 3. Cooperatively, the axial extent or length of the necked-down region 70 is arranged to span the radial distance between immediately adjacent spacers 80.」(第2欄52ないし69行)
(上記の首領域70によって形成された環状室または環状溝と協働して、流れ指図構造48は、交互に並べられた弾性シール手段78のシステムと、スペース手段またはリングスペーサ80とを含む。その弾性シール手段78のシステムは、好ましくはOリングからなり、左方から右方へ78b,78c,78dの参照数字が付けられている。それぞれのスペース手段またはリングスペーサ80は、ほぼU状断面に形成され、その閉じ端が半径方向の内方に配置される。さらに、各スペーサ80の底または内環には、一連のアーチ形の孔82が貫通される。このため、各スペーサ80は、半径方向の外方へ開口する溝を形成しており、その溝は、上記孔82によって半径方向の内方へ連通している。数個の通孔56,58,64の間の流れを指図するため、図3に示すように、複数のスペーサ80のうちの一つが上記の各通孔56,58,64と半径方向に整列されている。これに合わせて、前記の首領域70の軸方向の大きさ又は長さは、直接に隣り合うスペーサ80の間の半径距離に架かるように配置される。)

(ク)
「At one extremity of its travel, piston 24 will forcibly engage the valve operator 44 to drive the same inwardly and against the compression spring 50. As the valve operator 44 moves inwardly, the necked-down region 70 moves from the position shown in FIG. 3 until its axial length spans the radial distance between the conduit 56 and the conduit 58. A fluid path will thus be formed permitting a pressurized fluid to flow, for example, from conduit 58 through the ports 82 in the spacer 80 aligned therewith, into the annular chamber defined by the necked-down region 70 and the resilient seal 78 and thence through the ports 82 in the spacer 80 aligned with conduit 56 and ultimately into the latter conduit. In this position portion 66 of the valve member engages resilient seal 78c which in turn engages bore 53, blocking flow of pressurized fluid to conduit 64. Upon retreat of the piston 24, the valve operator 44 will be released to the action of spring 50 and/or the force exerted by pressurized air on the equivalent area of the follower portion 68 and the valve member 46 will be returned to its normal outward position shown in FIG. 3 where the necked-down region 70 communicates conduit 56 with exhaust conduit 64 and where follower portion 68 engages resilient seal 78d which in turn engages bore 53, blocking flow of pressurized air from conduit 58 to conduits 56 and/or 64. In these movements of the valve member 46, the several resilient seals 78b, 78c and 78d provide a sealing action against both the walls of valve bore 53 and the radially outwardmost surfaces of valve member 46, specifically portions 66 and 68 thereof. Cylindrical portion 66 always engages seal 78b, thereby blocking fluid communication between the pilot valve and the main cylinder. It should be recognized that the movements of piston 24 may thus be employed, through the resultant manipulations of pneumatic valve 16, to control the actuation of some other device, such as for example a related pneumatic cylinder, valve, or other device, or it may be employed in a servomechanism sense to provide information about the position of piston 24.」(2欄70行ないし3欄31行)
(ピストン24は、その一つの行程端で弁操作具44に強力に係合し、圧縮バネ50に抗して上記の弁操作具44を内方へ駆動する。その弁操作具44が内方へ動くと、首領域70は、図3の位置から、その首領域70の軸方向の長さが通孔56と通孔58との間の半径距離に架かるように移動する。これにより、圧力流体が流れるのを許容する流体通路が形成され、例えば、通孔58から、スペーサ80内のポート82を通って、首領域70と弾性シール78との間に形成された環状室に入り、そこから、通孔56と同軸のスペーサ80内のポート82へ入り、最終的には、後者の通孔へ入る。この位置では、弁部材の部分66は、孔53に係合する弾性シール78cに係合されて、圧力流体が通孔64へ流れるのを阻止する。上記ピストン24が後退すると、弁操作具44は、バネ50の作用および/又は従動部分68の対応面積に作用する加圧エアの力によってリリースされ、その弁操作具44は、図3のノーマル外方位置へ戻る。その図3の位置では、上記の首領域70は、通孔56を排気用の通孔64へ連通させると共に、従動部分68は、上記孔53に係合する弾性シール78dに係合されて、加圧エアが通孔58から通孔56及び/又は通孔64へ流れるのを阻止する。上記弁部材46の上記移動において、数個の弾性シール78b,78c及び78dは、上記の弁孔53の壁と、弁部材46のうちの特には部分66及び部分68の半径方向の外周面との両者に、封止機能を付与する。円柱部分66は、シール78bに常に係合しており、このため、パイロット弁とメインシリンダとの流体連通を遮断している。上記ピストン24の移動は、上記の空圧バルブ16の操作結果を介して、例えば関連する空圧シリンダやバルブや他の装置のような何らかの装置の動作を制御するのに利用したり、又は、上記ピストン24の位置についての情報を提供するためサーボ機構の検知に利用することが理解され得る。)

(ケ)
「In accordance with a feature of the invention, the conduit 58 comprises a pressure inlet conduit as has been described hereinabove; and in further accord with the invention, the conduit 56 comprises a pressure outlet conduit between the pressure inlet conduit 58 and the inner wall portion 54 of head 20. With the pressure inlets and outlets and the exhaust conduit positioned as shown, fluid pressure from the inlet conduit 58 cooperates with the bias established by spring 50 in resisting pressurized fluid forces imposed on the valve operator 44 and the valve member 46 from within the hollow body of the cylinder 12, thus preventing movement of operator 44 from its outward position by these pressurized fluid forces.」 (3欄32ないし43行)
(本発明の特徴によれば、前記の通孔58は、前述したように圧力入口孔からなり、さらには、前記通孔56は、上記の圧力入口孔58とヘッド20の内壁部分54との間における圧力出口孔からなる。図示のように圧力入口と出口および排気孔が位置されることにより、入口孔58からの流体圧力は、バネ50の付勢力と協働して、シリンダ12の中空体の内部から弁操作具44及び弁部材46に作用する圧力流体の力に抗して上記の操作具44が外方位置へ移動するのを防止する。)

(コ)
「In FIG. 1 the main cylinder conduits or pipes 36 and 38 are shown schematically as extending to an external master valve 92 receiving inlet pressure as indicated. The valve is capable of alternately supplying pneumatic pressure to the ends of the main cylinder, and venting to atmosphere the nonpressurized end. The pilot valve outlets 62 also extend to the valve 92 for controlling the position thereof. This arrangement causes the piston 24 to reciprocate continuously. Although this feature is believed to be novel, it is clearly to be understood that pneumatic connections other than through the valve 92 are contemplated.」(3欄65ないし75行)
(図1においては、メインシリンダ通路またはパイプ36、38は、図示の入口圧力を受け入れる外部マスター弁92へ延びるように概念的に示されている。その弁は、メインシリンダの端部への空気圧の供給と無圧端の大気側への開放とを交互に行う。パイロット弁の出口62も、前記弁92の位置を制御するため、その弁92へ延びる。この構造により、ピストン24が連続的に往復する。この特徴は新規であるが、上記弁92を介在させる空圧連結構造以外の空圧連結構造が想定されることは明確に理解される。)

(サ) 図1、3及び4


(シ)
また、図3には、ヘッド20に形成された弁孔53を塞ぐプラグ74が凹穴を有しており、当該凹穴内に弁操作具44及び弁部材46を外方へ押圧して進出させるバネ50が配置されていることが図示されている。

(ス)
上記摘記事項(ク)の「上記ピストン24の移動は、上記の空圧バルブ16の操作結果を介して、・・・上記ピストン24の位置についての情報を提供するためサーボ機構の検知に利用することが理解され得る。」との記載に鑑みると、甲2には、空圧パイロット弁16の操作結果を介してピストン24の位置を検知可能に構成された位置検知装置が記載されていることは明らかである。

(セ)
空圧パイロット弁16の弁操作具44の動作について記載された、上記摘記事項(ク)の「その弁操作具44が内方へ動くと、首領域70は、図3の位置から、その首領域70の軸方向の長さが通孔56と通孔58との間の半径距離に架かるように移動する。これにより、圧力流体が流れるのを許容する流体通路が形成され、例えば、通孔58から、スペーサ80内のポート82を通って、首領域70と弾性シール78との間に形成された環状室に入り、そこから、通孔56と同軸のスペーサ80内のポート82へ入り、最終的には、後者の通孔へ入る。この位置では、弁部材の部分66は、孔53に係合する弾性シール78cに係合されて、圧力流体が通孔64へ流れるのを阻止する。上記ピストン24が後退すると、弁操作具44は、バネ50の作用および/又は従動部分68の対応面積に作用する加圧エアの力によってリリースされ、その弁操作具44は、図3のノーマル外方位置へ戻る。」との記載から、空圧パイロット弁16によって、通孔56、58及び排気孔64の間の流路通路が形成、すなわち開通したり、遮断、すなわち閉じられたりするから、空圧パイロット弁16は、通孔56、58及び排気孔64による流路の開閉状態を切換えることが可能であることが明らかである。
また、上記摘記事項(ク)の「ピストン24は、その一つの行程端で弁操作具44に強力に係合し、圧縮バネ50に抗して上記の弁操作具44を内方へ駆動する。」との記載から、ピストン24と弁操作具44とは、「一つの行程端」という定められた位置において係合し、弁操作具44に対する移動が開始されるから、ピストンロッド26が所定の位置に達したときに、弁操作具44が形成された弁部材46が移動させられるということがいえる。また、その際に、通孔56が、端部に加圧エアが供給された通孔58と、端部が外界に連通した通孔64との間での開閉状態が切り替えられることは、当業者にとって明らかである。

(ソ)
上記摘記事項(ク)の「上記ピストン24が後退すると、弁操作具44は、バネ50の作用および/又は従動部分68の対応面積に作用する加圧エアの力によってリリースされ、その弁操作具44は、図3のノーマル外方位置へ戻る。」との記載、及び、上記摘記事項(ケ)の「入口孔58からの流体圧力は、バネ50の付勢力と協働して、シリンダ12の中空体の内部から弁操作具44及び弁部材46に作用する圧力流体の力に抗して上記の操作具44が外方位置へ移動するのを防止する。」との記載、そして、図3の通孔58が従動部分68の右側の空間に開口していることの図示から、甲2には、加圧エアの圧力が、操作具44がシリンダ12の内部へ移動する方向に作用し続けるように構成されることで、弁部材46をピストンロッド26側に進出させた状態に保持し、ピストン24の後退時には、弁操作具44がリリースされる空間が記載されているといえる。

イ 甲2発明
上記摘記事項(ア)ないし(コ)、(サ)の図示並びに認定事項(シ)ないし(ソ)を技術常識を考慮して総合すると、甲2には、以下の甲2発明が記載されている。

「バネ50の付勢力及び空圧パイロット弁16の加圧エアによって空圧パイロット弁16の弁操作具44及び弁部材46を外方に進出させ、シリンダ12のピストンロッド26に固定されたピストン24により前記弁操作具44及び弁部材46を内方へ移動させて前記シリンダ12のヘッド20に形成された流体通路の開閉状態を切換えることにより前記ピストン24の位置を検知可能に構成し、
前記弁操作具44及び弁部材46は、弁孔53の縮径端部52を通って突出する弁操作具44と、前記弁操作具44に対して内方側に設けられた弁部材46とが一体化して連結されており、
前記ヘッド20の弁孔53の途中部に装着され、前記弁部材46が挿入される貫通孔を有するリングスペーサ80と、
前記リングスペーサ80に隣接し、前記ヘッド20の弁孔53を塞ぐように固定され、凹穴を有するプラグ74と、
前記凹穴内に配置され、前記弁操作具44及び弁部材46を前記外方に進出させるバネ50と、
前記弁部材46の外周側に設けられ、前記シリンダ12のメインシリンダと前記流体通路との間をシールする弾性シール手段78とを備え、
前記シリンダ12のメインシリンダと前記流体通路とが互いに連通せず、
前記流体通路は、圧力流体供給源から圧力流体が供給され通孔58に連通する入口継手60、通孔56に連通する出口継手62、外界に開放された排気孔64に接続され、
前記リングスペーサ80を前記リングスペーサ80の径方向に貫通し、前記圧力流体の通路となる流体通路が形成され、
前記ピストン24が後退すると通孔56を排気孔64に連通させるとともに加圧エアが通孔58から通孔56及び排気孔64へ流れるのを阻止し、前記ピストン24が前記行程端に達したときには前記弁部材46が前記内方に移動して前記圧力流体が通孔58から通孔56へ流れる状態に切換えられ、当該切換えにより前記空圧パイロット弁16に対して通孔58から通孔56に圧力流体が流れる流体通路を形成し、当該操作結果を介してピストン24の位置を検知する、位置検知装置。」

(3) 甲3
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲3には以下の記載がある。

(ア)
「The present invention relates to improvements in reciprocating fluid pressure devices and particularly to a hydraulic or pneumatic continuously operated piston drive with reciprocatory movement especially a double acting pressure booster in which the movements of the low pressure piston reverse the control pressure in the end positions. Although the invention is not limited to pressure boosters but can be applied in the same way to hydraulically or pneumatically operated motors, reference will be made hereinafter maily only to a double acting pressure booster.」(1ページ9ないし22行)
(本発明は、往復する流体圧装置の改良に関し、詳しくいえば、油圧または空圧で連続的に往復移動されるピストンドライブに関し、特には、行程端位置での低圧ピストンの移動によって制御圧力を反転させる複動ブースタに関する。本発明は、圧カブースタに限定されるものではなく、油圧または空圧で駆動される作動器にも適用できるが、以下の記述では、主として複動式の圧カブースタに限定して説明する。)

(イ)
「In the field of double acting air motors it is known to effect reversal by the fact that the movemenets of the work piston reduce the control pressure of an impulse controlled four-way valve in the end positions, that is to say controlled by reducing the pressure, and in which control pipes open on both sides of the control valve connecting the control chambers to the pressure source.
In another type of air motors the otherwise usual three-way pilot valve operated mechanically by the work piston has been replaced by a simple two-way pilot valve for controlling the four-way valve in that constant pressure action in the two control chambers of the four-way valve has been ensured by auxiliary bores in the control valve or in the valve body of the four-way valve, which connect the puressure source to the two control chambers, instead of by the three-way pilot valve.
This arrangement has the disadvantage that it fails with show movement of the work piston. The reason for this is that at very slow operartion the pilot valve also opens very slowly so that the pressure loading of the control chamber is effected slowly in the end positions whereby the control valve commences to shift slowly to its opposite end position and then remains in the mid-position since the pressure difference is not sufficiet to overcome the resistance to further movement. Since in the mid position according to the construction of the slide valve:
(a) the pressure connection and both cylinder connections are cut off, or
(b) the presure connection is cut off and both cylinder connetions are without pressure, the low pressure piston remains stationary and the pilot valve is held in the open position in which it was already located.」(1ページ23ないし62行)
(複動式のエア作動器の分野では、反転動作として次のことが知られている。行程端の位置における作業ピストンの移動が、インパルス制御すなわち減圧制御される四方弁の制御圧力を減らし、制御弁の両側には、制御室を圧力源へ接続する制御管路が連通される。
エア作動器の別のタイプでは、四方弁を制御するため、作業ピストンによって機械的に操作される通常の三方パイロット弁が簡素な二方パイロットに入れ換えられ、上記の四方弁の2つの制御室内における一定圧力の付与が、上記の制御弁内または四方弁の弁本体内の補助孔によって提供される。上記の孔は、三方パイロット弁に代えて、2つの制御室へ圧力源を連通させる。
この構造は、作業ピストンがゆっくりと動く場合に機能しないという不利益がある。その理由は、極めてゆっくりと動く行程では、上記パイロットも極めてゆっくりと開いて、行程端位置での制御室への圧力供給が非常にゆっくりになるからである。このため、前記の制御弁は、反対位置へゆっくりと移動し始め、さらなる移動抵抗を克服するためには圧力差が十分でないので、中間位置でストップする。上記スライド弁の構造に基づく上記の中間位置では、
(a)圧力接続(the pressure connection)と両方のシリンダ接続(both cylinder connections)とが閉じられ、又は、
(b)上記の圧力接続が閉じられ、かつ、上記シリンダ接続が無圧とされる。前記の低圧ピストンは、静止状態に留まり、そのとき前記パイロット弁は既存の開き状態に留まる。)

(ウ)
「Figs. 1, 2, 4 and 5 are circuit diagrams of a first arrangement with a four-way valve,
Fig. 3 is a detail thereof,
Figs. 6 and 8 are sectional views of a four-way valve,
Fig. 7 shows the circuit symbol of the four-way valve,
Figs. 9, 12, 13 and 15 show circuit diagrams with two three-way valves according to the second arrangement,
Figs. 10, 11 and 14 show details thereof,
and
Figs. 16 and 17 are sectional views of the three-way valves in two different control positions.」(3ページ11ないし25行)
(図1,図2,図4,及び図5は,四方弁を備えた第1配置構造の回路図である。
図3は,上記の詳細である。
図6と図8は,上記の四方弁の断面図である。
図7は,上記の四方弁の回路記号である。
図9,図12,図13,及び図15は,2つの三方弁を備えた第2配置構造の回路図である。
図10,図11,及び図14は,上記の詳細である。
図16及び図17は,2つの異なった制御位置における三方弁の断面図である。)

(エ)
「A continuously operating piston drive, which in the constructional examples are hydraulic double acting pressure boosters, consists according to Fig. 1 of a low pressure cylinder 20 with working or main cylinder spaces 22 and 23 separated by a reciprocatory main or work piston 21, high pressure cylinders 24, 25 as well as high pressure pistons 26, 27 which in the case of a drive motor represent the piston rods. High pressure fluid is supplied through non-return valves 28 and 29 into pipes 30, 21 alternately to the point of use.
The high pressure pistons 26, 27 can draw pressure medium during their return strokes through non-return valves 32, 33 in pipes 34, 35 The pipes 34, 35 are adapted to be connected through a four-way valve36 (Fig. 1, 2, 4 and 5) or two three-way valves 37, 38 (Fig. 9, 12, 13, 15) alternately to a pressure fluid pipe 39 or returning pipe 40 leading to a collecting container 41. The main cylinder spaces 22, 23 of the low pressure cylinder 20 are connected alternately to the pressure pipe 39 and to the return pipe 40 through branch or feed pipes 42 and 43. To this extent all the circuit diagrams shown are the same. Further, In all diagrams the condition of the various spaces is marked p or o to indicate whether the pressure p or zero pressure o is operative.」(3ページ26行ないし55行)
(構造例に示された連続動作ピストンドライブは、油圧複動式の圧力ブースタであって、図1に示すように、次のように構成される。低圧シリンダ20は、往復するメイン又は作業ピストン21によって分割された作業空間またはメインシリンダ空間22及び23を備え、高圧シリンダ24,25が設けられると共に、この実施例ではモータ駆動におけるピストンロッドの役割を果たす高圧ピストン26,27が設けられる。高圧流体は、逆止弁28,29と配管30,31とを交互に通って消費ポイントに供給される。
高圧ピストン26,27は、戻りストローク中に、配管34,35内の逆止弁32,33を介して圧力媒体を吸い込む。上記配管34,35は、1つの四方弁36(図1,2,4,5)又は二つの三方弁37,38(図9,12,13,15)によって、圧力流体配管39と回収容器41へ延びる戻し配管40とに、交互に接続される。低圧シリンダ20の前記メインシリンダ空間22,23は、分岐または供給管42,43を通って、圧力配管39と戻し配管40とに、交互に接続される。この点は、全ての回路図で同様である。さらに、これらの回路図の全てにおいて、上記の種々の空間の状態は、参照文字「p」又は「0」によって示され、それらが正圧力「p」又は零圧力「0」であることを示している。)

(オ)
「Two control chambers 50, 51 of the valve 36 are connected constantly to the inlet or pressure fluid pipe 39 through auxiliary ducts or bore 52, 43 (当審注:「53」の誤記と解される。) in the control piston 45.」(3ページ75ないし78行)
(四方弁36の二つの制御室50,51は、いつも導入口を介して圧力パイプ30へ、軸に形成した流路あるいは空洞52,53を通して接続されている。)

(カ)
「Reverting to Fig. 1, two two-way pilot valves 63, 64 in control pipes 61, 62 are provided for applying the pressure pulse for reversing the four-way valve 36; they are held closed in the position of rest by spring force, and in the terminal positions they are mechanically opened by plungers 65, 66 engaged by the main or work piston 21, whereby the pressure release in the control chambers 50, 51 of the four-way valve is effected to a low pressure zone or to the collecting container 41.」(3ページ128行ないし4ページ10行)
(図1に戻って説明すると、前記の四方弁36を切換えるための圧力パルスを供給するため、2つの二方パイロット弁63,64が制御管路61,62に設けられる。これらパイロット弁63,64は、バネの力によって休止位置で閉じ状態に保持されると共に、終端位置では、メイン又は作業ピストン21に係合されるプランジャ65,66によって機械的に開かれ、これにより、前記の四方弁の制御室50,51内が、低圧領域または回収容器41へ圧抜きされる。)

(キ)
「・・・This is obtained by the connections 98, 99 (Fig. 9).
The reversal of the pressure booster shortly before reaching its end position can be initiated
(a) by the release of pressure in the control chamber of one of the two three-way valves 37, 38;
(b) by the application of pressure to the control chamber of one of the two three-way vales.
In the first place the circuit of Fig. 9 will be explained to show how use is made of the possibility set out under (a) above. During the stroke of the work piston 21 towards the left the control chamber 96 of the three-way valve 38 is released from pressure through the pipes 94, 99, 43 while the control chamber 96 of the three-way valve 37 is at pressure p through the pipes 93, 98, 42. Since two associated two-way pilot valves 100, 101 remain closed by spring force during the stroke, the pipe 98, 99 ensure that this condition is maintained since they connect the control chambers to the respective feed pipes 42, 43 running to the low pressure cylinder 20 which have the same pressure.
The reversal in the left-hand end position of the work piston 21 is effected by mechanical operation of the pilot valve 100, by which operation the control chamber of the three-way valve 37 is released from pressure and the work chamber 23 receives the pressure p. At the same time the control chamber of the three-way valve 38 is placed under pressure through the pipe 99 whereby the valve is reversed and the work chamber 22 is released from pressure. After reversal of the movement the pilot valve 100 is returned to its rest position by spring pressure, but the control pipe 98 ensures that the control chamber of the three-way valve 37 remains without pressure up to the next reversal. The two-way pilot valves 100 and 101 can be constructed as shown in Fig. 10, but the spring force in each case must be greater than the pressure acting on the opposite side of the piston. Instead of spring force it is also possible to use a slide valve with a return action by a differential piston action as shown in Fig. 11.」(5ページ47ないし97行)
(・・・これは、連通部98,99(図9)によって確保される。
エンドポジションへ到達する直前における圧カブースタの反転動作は、以下のように開始される。
(a)2つの三方弁37,38のうちの一方の三方弁の制御室からの圧力の放出
(b)上記2つの三方弁のうちの一方の三方弁の上記制御室への圧力の付与
まず、上記(a)項の条件下で如何に動作し得るかを図9の回路で説明する。上記の作業用ピストン21が左方ヘストロークしているときには、三方弁38の制御室96及び管路94,99,43に圧力が無いのに対して、三方弁37の制御室96には管路93,98,42を介して圧力「p」が付与されている。連携された2つの二方パイロット弁100,101は、上記ストローク中にバネの押す力で閉じられたままであり、管路98,99が前記の制御室を低圧シリンダ20へ延びる分岐路42,43へ接続するので、上記の管路98,99が上記の圧力状態を確実に保持する。
上記の作業ピストン21の左端位置における反転動作は、前記パイロット弁100の機械的な操作によってなされ、これにより、前記三方弁37の制御室が圧抜きされると共に作業室23が圧力「p」を受け入れる。これと同時に、前記三方弁38の制御室に管路99を介して圧力が付与され、これにより、その弁が切換えられると共に作業室22が圧抜きされる。上記移動の反転後、前記パイロット弁100がバネの圧力によって休止位置へ復帰されるが、制御管路98は、前記三方弁37の制御室が次の反転までは圧力を受けないようしている。前記の二方パイロット弁100,101は、図10に示すように、バネの押し力が、ピストンの反対側に作用する圧力に基づく力よりも大きくなるように構成すればよい。上記バネの押し力に代えて、図11に示されたような差圧ピストンの作用に基づく復帰動作を備えたスライド弁を使用可能である。)

(ク) 図1、図9、10及び11


(ケ)
上記摘記事項(キ)の「前記の二方パイロット弁100,101は、図10に示すように、バネの押し力が、ピストンの反対側に作用する圧力に基づく力よりも大きくなるように構成すればよい。上記バネの押し力に代えて、図11に示されたような差圧ピストンの作用に基づく復帰動作を備えたスライド弁を使用可能である。」との記載と併せて図11をみると、図11には、二方パイロット弁100が低圧シリンダ20と一体になって形成されており、該低圧シリンダ20の本体内に、前記二方パイロット弁100を貫通するように、一端部が圧力制御配管39に接続され他端部が外界に開放する回収容器に連通した管路93と接続するための流体通路が形成されている構造が看取できる。
また、二方パイロット弁100の差圧ピストンが、小径軸部と、前記小径軸部に対して終端位置側に設けられた大径軸部とが一体形成された構造が、図11から看取できる。
さらに、二方パイロット弁100が、メインシリンダ空間23の油圧によって差圧ピストンを休止位置側に進出させた状態に保持する油圧導入室を備えた構造も看取できる。

(コ)
上記摘記事項(カ)の「2つの二方パイロット弁63,64が制御管路61,62に設けられる。これらパイロット弁63,64は、バネの力によって休止位置で閉じ状態に保持されると共に、終端位置では、メイン又は作業ピストン21に係合されるプランジャ65,66によって機械的に開かれ、これにより、前記の四方弁の制御室50,51内が、低圧領域または回収容器41へ圧抜きされる。」との記載が、図9の二方パイロット弁100,101及び管路93,94の関係にも適用できることは、当業者には明らかであるから、二方パイロット弁100に形成された上記管路93と接続するための流体通路は、一端部は圧力制御配管39に接続され、他端部は外界に開放されたものであって、二方パイロット弁100は、当該流体通路の開閉状態を切換え可能であることも、当然理解できるものである。

イ 甲3発明
上記摘記事項(ア)ないし(キ)、(ク)の図示並びに認定事項(ケ)及び(コ)を、技術常識を考慮しつつ総合すると、甲3には、以下の甲3発明が記載されている。

「圧力流体配管39から供給される低圧シリンダ20の油圧によって、二方パイロット弁100の差圧ピストンを休止位置に進出させ、低圧シリンダ20の作業ピストン21により前記差圧ピストンを終端位置へ移動させて前記低圧シリンダのシリンダ本体に形成された流体通路の開閉状態を切換えることにより前記作業ピストン21の反転動作可能に構成し、
前記差圧ピストンは、小径軸部と、前記小径軸部に対して終端位置側に設けられた大径軸部とが一体形成されており、
前記低圧シリンダ20の油圧が導入され、前記油圧によって前記差圧ピストンを前記休止位置に進出させる油圧導入室を備え、
前記低圧シリンダ20のメインシリンダ空間23と前記流体通路とが互いに連通せず、
前記流体通路の一端部は、圧力流体配管39に接続され、前記流体通路の他端部は外界に開放され、
前記二方パイロット弁100を貫通して前記流体通路が形成され、
前記作業ピストン21が左方へストロークしているときには、前記二方パイロット弁100は閉じ状態に保持され、前記作業ピストン21が左端位置に達したときには前記差圧ピストンが終端位置に移動して前記二方パイロット弁100は開かれた状態に切換えられ、当該切換えにより前記二方パイロット弁100に対して前記一端部側に位置する管路93の圧力が低下し三方弁37,38を切換えて作業ピストン21が反転動作され、
前記油圧によって作業ピストン21が反転動作したときには前記油圧により前記差圧ピストンが休止位置に進出して前記二方パイロット弁100を閉じ状態に保持する油圧複動式圧力ブースタ」

(4) 甲4
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲4には以下の記載がある。

(ア)
「BACKGROUND OF THE INVENTION
I. Field of the Invention
This invention relates, in general, to fluid operated, expansible chamber cylinders and, more specifically, to position sensors for fluid operated, expansible chamber cylinders.」(1欄8ないし13行)
(発明の背景
I.技術分野
本発明は、一般的には、流体駆動される膨張室シリンダに関し、より詳しくいえば、流体駆動される膨張室シリンダのための位置センサに関する。)

(イ)
「Since it is often necessary to know when the piston has moved to the fully extended or retracted travel position before the next step in the machine sequence can take place, limit switches have been used to contact the external end of the piston rod or the connected work component at the end of piston travel.」(1欄26ないし31行)
(機械の順次動作における次のステップが起こる前に上記ピストンが最伸長または最後退の行程位置へ移動したのを知ることが頻繁に必要になるので、ピストン行程の行程端において上記ピストンロッドの外端または当該ピストンロッドに連結した作業部分にリミットスイッチが接触するように、当該リミットスイッチが使用されてきた。)

(ウ)
「Referring now to the drawing, and to FIG. 1 in particular, there is illustrated a fluid operated, expansible chamber cylinder 10 having a position sensor mounted in a mounting apparatus constructed in accordance with the teachings of the present invention. As is conventional, the fluid operated cylinder 10 includes a hollow cylindrical housing 12, typically having a circular cross section.」(3欄8ないし15行)
(図面・特には図1を参照すると、本発明の教示に従って構成された取付け装置に設置した位置センサを有する流体駆動・膨張室シリンダ10が示されている。従来と同様に、上記の流体駆動シリンダ10は、典型的には円形断面を有する中空円形状のハウジング12を含んでいる。)

(エ)
「Recessed internal cavities 18 and 20 are respectively formed in the first and second end plates 14 and 16 and communicate with the interior of the cylinder housing 12 to form a sealed internal chamber 22.」(3欄18ないし22行)
(凹形の内部空所18及び20は、それぞれ、上記の第1と第2のエンドプレート14及び16に形成されると共に、上記シリンダハウジング12の内部に連通されて、封止された内部室22を形成している。)

(オ)
「A piston 30 is slidingly disposed within the chamber 22 and is axially movable from one end to the other within the chamber 22.」(3欄27ないし29行)
(ピストン30は、上記の室22内に滑動するように配置されると共に、その室22内で一端から他端へ軸方向に移動される。)

(カ)
「In operation, as is well known, a pressurized fluid, such as compressed air or hydraulic oil, may be admitted through the inlet bore 26 into the chamber 22 of the cylinder 10 by means of control valves, not shown. The pressurized fluid acts upon the rear face 42 of the piston 30 to move the cylinder piston 30 to the left, as viewed in FIG. 1. When fluid under pressure is admitted through the bore 24 in the first end plate 14, the fluid acts against the front face 34 of the piston 30 to move the piston 30 toward the end plate 16, thereby retracting the piston rod 36 into the cylinder 10.」(3欄41ないし51行)
(作動においては、周知のとおり、圧縮空気または油圧のような加圧流体が図示しない制御弁によって前記シリンダ10の前記の入口孔26を通って前記の室22へ入れられる。その加圧流体は、上記ピストン30の後面42に作用して、図1に示すように上記シリンダピストン30を左方へ移動させる。加圧流体が前記の第1エンドプレート14内の前記孔24を通って供給されたときには、その流体が上記ピストン30の前面34に作用して当該ピストン30を前記エンドプレート16へ移動させ、これにより、前記ピストンロッド36をシリンダ10内へ後退させる。)

(キ)
「A piston position sensor is provided on the cylinder 10. The position sensor, as shown by way of example by reference number 50 in FIG. 1, is typically mounted in a bore 52 formed in the end plate 14.」(3欄52ないし55行)
(上記シリンダ10にピストン位置センサが設けられる。その位置センサは、図1に参照数字50で例示したように、典型的には、前記エンドプレート14に形成した孔52に取り付けられる。)

(ク)
「Finally, a plunger type switch, such as shown at 100 in FIG. 3, may be mounted within the bore 52 to detect by actual contact the presence of the cushion plug 32 at the end point of piston travel.」(3欄66行ないし4欄2行)
(最後に、図3の100に示すようなプランジャ型スイッチを、ピストン行程の行程端で上記クッションプラグ32に実際に接触させて検出するために、前記孔52内に取付けてもよい。)

(ケ)
「Referring now to FIG. 3, there is illustrated the plunger-type switch 100. Switch 100 is adapted to utilize an air valve sensor. The switch 100 includes a housing 121 having a step bore 125, the lower end of which is cylindrically shaped and adapted to extend into the cylinder bore 52 in the same manner as the sensor 62 described hereinbefore. The lower portion 127 of the housing 121 slidably supports a plunger 126 which is adapted to engage the cushion 32 and be moved upwardly against the bias of a spring 128 disposed within the interior of the housing 121. The upward movement of the plunger 126 permits communication between air ports, one of which is designated by the numeral 130, in the conventional manner to a suitable sensing device to establish that the piston 30 has moved to a desired position.」(5欄11ないし26行)
(図3についていえば、プランジャ型スイッチ100が記載されている。そのスイッチ100は、エア弁センサを利用するように変更されている。そのスイッチ100は、段付き孔125を有するハウジング121を含み、そのハウジング121の下端が、円筒状に形成されると共に、前述したセンサ62と同様の方法で前記シリンダ孔52内へ延設される。上記ハウジング121の下部127はプランジャ126をスライド可能に支持し、そのプランジャ126は、前記クッション32に係合されると共に、ハウジング121の内部に配置されたバネ128の付勢力に抗して上昇される。上記プランジャ126が上昇すると、複数の空気ポート(そのうちの一つの空気ポートに参照数字130を付けてある)の間が連通され、従来の方法により、適切な検出装置が、ピストン30が所望の位置へ移動したことを確認する。)

(5) 甲5
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲5には以下の記載がある。

(ア)
「This invention relates to a novel actuator valve for reversing the travel of a piston in a cylinder, and more particular, to an actuator valve unit adapted for installation at each end of a double acting cylinder for automatically reciprocating a piston thereof by merely supplying the valves with control fluid.」(1欄9ないし14行)
(本発明は、シリンダ内のピストンの行程を反転させるための新規な操作弁に関し、より詳しく言えば、制御流体を弁に供給するだけでピストンを自動的に往復動作させるため、複動シリンダの各端部に設置するように適合された操作弁ユニットに関する。)

(イ)
「The valve member 62 is moved between the positions illustrated in FIGURES 2 and 5 of the drawings by a generally cylindrical actuator rod 75 having an end portion 76 slidably received through an opening 77 in the end cap 52 and projecting through a bore 78 in the plate 45 into the interior of the cylinder 10. The rod 75 is slidably received in an axial bore 80 of the valve member 62. A collar 81 having a generally annular spring seat 82 is secured to an opposite end portion (unnumbered) of the rod 75 positioned in a counterbore 83 of the valve member 62. A spring 84 seated against the annular seat 82 of the collar 81 and a seat 85 of the end cap 47 normally urges the actuator rod 75 to the position illustrated in FIGURE 2 of the drawings. The spring 84 likewise urges the valve member 62 to the position illustrated in FIGURE 2 of the drawings by the contact between the collar 81 carried by the rod 75 and an annular wall or surface 86 of the counterbore 83.」(3欄55行ないし72行)
(前記の弁部材62は、ほぼ円筒状の操作ロッド75によって、図2及び図5に示される位置の間を移動される。その操作ロッド75の端部76は、エンドキャップ52の開口部77を貫通して摺動可能に支持されると共に、プレート45内の孔78を通ってシリンダ10の内部へ突出される。そのロッド75は、弁部材62の軸孔80に摺動可能に収容される。その弁部材62の片方の孔83内に位置するロッド75の反対側端部(参照数字なし)に、ほぼ環状のバネ座82を有する鍔81が固定される。バネ84は、鍔81の環状座82とエンドキャップ47の座85とに装着されて、操作ロッド75を図2の位置に付勢する。そのバネ84は、同様に、操作ロッド75に同行する鍔81と片方の孔83の環状の壁または面86との接当により、弁部材62を図2の位置に付勢する。)

(ウ)
「As the piston 34 continues its movement, the abutment means 87 of the rod 75 contacts the annular wall 88 of the valve member 62 and urges the valve member 62 from the position illustrated in FIGURE 2 to the position shown in FIGURE 4 against the biasing force of the spring 84. During this movement of the valve member 62, the O-ring 60 breaks sealing contact with the housing 46 and the first chamber 56 is placed in fluid communication with the second chamber 63 through the passages 64, 65, as shown in FIGURE 4. The fluid in the left chamber 16 of the valve 11 now begins to vent through the conduit 30, the inlet port 31, the groove 55, the passages 57, 58, the first chamber 56, the passages 64, 65 and the second chamber 63. At this point the chamber 63 is not fully open to atmosphere through the passages 67, 68, the groove 70 and the exhaust port 71, as illustrated in FIGURE 4 of the drawings. In this position, the tubular end portion 66 of the valve member 62 occupies an intermediate position in which a portion thereof overlies and is minutely spaced from the housing portion defining the passages 67, 68. Thus, restricted flow occurs outwardly of the second chamber 63, the restriction between the housing 46 and the tubular end portion 66, the passages 67, 68, the groove 70 and the exhaust port 71. This restriction causes a delay in the opening of the second chamber 63 to atmosphere until such time as pressure builds up in the chamber 63 to a sufficient extent to rapidly move the valve member 62 to the second position (FIGURE 5) to fully open the chamber 63 to atmosphere.」(4欄52行ないし5欄6行)
(上記ピストン34が上記移動を続けると、ロッド75の接当手段87は、弁部材62の環状壁88に接触して、バネ84の付勢力に抗して弁部材62を図2の位置から図4の位置へ付勢する。弁部材62の上記移動中には、前記Oリング60は、図4に示すように、ハウジング46との封止係合を解除し、第1室56は、通路64,65を介して第2室63へ連通される。弁11の左室16内の流体は、管路30と入口ポート31と溝55と通路57,58と第1室56と通路64,65と第2室63とを通って排気され始める。この時点では、図4に示されるように、前記の室63は、通路67,68と溝70と排気ポート71とを介して外気へは十分に開放されていない。この位置では、弁部材62の管状端部66は、中間位置で横方向に延在して、通路67,68を区画しているハウジング部分から僅かに離間する。このため、第2室63から外側への流れが絞られる。その絞りは、ハウジング46と、環状端部66と通路67,68と溝70と排気ポート71との間を制限する。上記の絞り効果により、第2室63内の圧力が弁部材62を第2位置(図5)へ急速に移動させるのに十分な程度に高まるまで当該室63の大気開放を遅らせて、その後で上記の室63を大気へ十分に開放させる。)

(エ)
「With the valve member 22 shifting to the left as viewed in FIGURE 1, high pressure from the central chamber 17 of the valve 11 enters the interior of the cylinder 10 to the right of the piston 34 through the port 23 and the conduit 35. This high pressure begins moving the piston 34 to the left (FIGURE 5) and enters the third chamber 94 through the bore 92 in the rod 75. As the high pressure enters the chamber 94 it augments the biasing force of the spring 84 and shifts the valve member 62 from the position shown in FIGURE 5 to the position illustrated in FIGURE 2 to again prevent communication between the first chamber 56 and the second chamber 66 and thus condition the actuator valve 40, as well as the actuator valve 41, for subsequent cycling identical to that just described.」(5欄18ないし32行)
(図1において、上記の弁部材22が左側に切り換わると、弁11の中央室17からの高圧流体が、ポート23と管路35を通ってシリンダ10内のピストン34の右側へ流入する。この高圧流体は、ピストン34を左側へ移動させ始めると共に(図5)、ロッド75内の孔92を通って第3室94に流入する。その室94に高圧流体が流入したことで、前記バネ84の付勢力に上記の高圧流体が加わって、弁部材62を図5の位置から図2の位置に移動させて、第1室56と第2室66(当審注:「63」の誤記であると解される)との連通を再び防止する。これにより、上記の操作弁40及び41を上述の内容と同じ順次サイクルの様態にさせる。)

(6) 甲6
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲6には以下の記載がある。

(ア)
「ABSTRACT OF THE DISCLOSURE
A double-acting hydraulic actuator having finger locks to restrain the piston in the retracted position, and an internally mounted slider valve for affecting the movement of a locking piston to selectively hold the finger locks in their locking position.」(1欄12ないし17行)
(開示の要約
複動油圧アクチュエータは、ピストンを後退位置に拘束する指状ロックと、内蔵されたスライド弁とを有し、そのスライド弁は、ロックピストンの移動に関与して指状ロックをロック位置で選択的に保持する。)

(イ)
「The cylinder formed by the cylindrical housing 22 and the pressure cap 16 is divided into first and second pressure chambers 34 and 36 by a main or actuator piston 32, which can be formed as an integral part of the piston rod 12. An O-ring seal 33 fitted into an outer groove on the periphery of the piston 32 pressure-seals the chambers 34, 36 from each other. The closed end of the cylindrical housing 22 includes a plurality of fluid connecting passages; one passage 31 connects a supply of operating fluid (not shown) to the pressure chamber 34, and a second fluid passage 38 opens into an unloading cylinder 39. Referring additionally to FIGURE 2, the unloading cylinder 39 includes a sleeve 41 and slider valve 42 assembled into a bore at the closed end 84 of the cylindrical housing 22. A hexagon shaped plug 44, threadably inserted into the cylindrical housing 22, holds the sleeve 41 and slider valve 42 in place to align the fluid passage 38 with openings in said sleeve. Two O-ring seals 46, 47 fitted into grooves in the slider valve 42 divide the unloading cylinder 39 into pressure chambers 48, 49 which will be discussed below.」(2欄36ないし56行)
(筒状ハウジング22と圧力キャップ16とから構成されるシリンダは、メインの又は操作ピストン32によって第1圧力室34と第2圧力室36とに分割される。その操作ピストン32は、ピストンロッド12に一体的に形成され得る。ピストン32の外周溝に嵌合するOリングシール33は、上記の室34,36の双方からの圧力を封止する。筒状ハウジング22の閉止端は、複数の流体の接続流路を含む。一つの流路31は、作動流体の供給部(図示せず)を圧力室34に接続し、第2の流路38は、アンロードシリンダ39内に開口している。さらに図2を参照すると、アンロードシリンダ39は、筒状ハウジング22の閉止端84の孔に組み込まれたスリーブ41とスライド弁42とを含む。六角プラグ44は、筒状ハウジング22に螺合されて、スリーブ41及びスライド弁42を適所に保持して上記スリーブ41の孔に流路38を整合させる。1つのOリングシール46,47は、スライド弁42の溝に嵌合され、アンロードシリンダ39を後述の圧力室48と圧力室49とに分割する。)

(ウ)
「To insure that the actuator piston 32 will be maintained in its fully retracted position, as shown in FIGURE 1, the two pressure chambers 34 and 36 are preferably opened to a reservoir (not shown). The pressure chamber 36 is connected to the reservoir by means of a fluid passage 37 which extends from the capped end of the cylindrical housing 22 to passage 38; passage 38 in turn is in communication with port 88. The pressure chamber 34 is connected to the reservoir by means of a fluid passage 31 which is in communication with port 89. Appropriate return lines (not shown) in turn connect the ports 88, 89 to the reservoir through the aforementioned selector valve. The chamber 59 of locking cylinder 51 is connected to port 88 and in turn to the reservoir by means of passageways in the slider valve 42 when the valve is in its retracted position, said passageways being shown in greater detail in FIGURE 2. Referring to FIGURE 2, with the actuator piston 32 in its fully retracted position, the slider valve 42 is forced to its fully retracted position by direct contact with the actuator piston 32. With the slider valve 42 fully retracted, a small annular chamber 71 in said slider valve is in communication with chambers 72, 73 of the sleeve 41, as shown in FIGURE 3. At the same time, the axial passage 74 remains open into the chamber 49, but the transverse passage 76 is sealed by the sleeve 41 as shown in FIGURE 5. The fluid connection from the locking chamber 59 to the reservoir, when the actuator piston 32 is fully retracted, is by means of passages 40, 73, 71, 72, and 38. Since both sides of the piston 53 are connected to the reservoir, a transient pressure change in the system will not inadvertently unlock the actuator piston 32.」(3欄39ないし70行)
(操作ピストン32を、図1に示される最も後退した位置に確実に保持させるには、2つの圧力室34及び圧力室36をリザーバ(図示せず)に連通させることが好ましい。その圧力室36は、流路37によってリザーバに接続され、その流路37が筒状ハウジング22の閉止端から通路38まで延び、その通路38がポート88に連通される。上記圧力室34は、ポート89に連通される流路31によってリザーバに接続される。適切な戻り流路(図示せず)が切換弁を介してポート88,89をリザーバに接続する。ロックシリンダ51の室59は、後退位置のスライド弁42の通路によってポート88に接続され、引き続きリザーバに接続される。前記通路は図2によって詳細に示されている。図2を参照すると、操作ピストン32が最も後退した位置にあるときに、スライド弁42が操作ピストン32に直接接触することによって当該スライド弁42が最も後退した位置に移動される。スライド弁42が最も後退されると、図3に示すように、スライド弁内の小さな環状室71がスリーブ41の室72,73に連通される。それと同時に、軸路74が室49内に連通されるのに対して、図5に示すように、横断路76がスリーブ41によって封止される。操作ピストン32が最も後退したときにおけるロック室59からリザーバへの流体の接続は、流路40,73,71,72,38によって行われる。ピストン53の両側はリザーバに接続されるので、システム内の圧力が瞬間的に変化しても操作ピストン32が不意にアンロックしない。)

(エ)
「To move the piston 32 to its fully extended position, the pressure chamber 34 is subjected to pressurized fluid through the aforementioned selector valve, while the pressure chamber 36 remains open to the reservoir return line. With the pressure chamber 34 connected to a source of fluid pressure, the pressure therein will become greater than that in the pressure chamber 36. In spite of the pressure differential initially established across the piston 32, it will be restrained from moving because the locking fingers 66 remain engaged with the annular detent 52. As described above, so long as the piston 32 remains in its fully retracted position, the pressure in the locking chamber 59 will be the same as that existing in chamber 36 and in the reservoir. Thus, by connecting the pressure chamber 34 to a source of operating fluid and chamber 59 to the reservoir, a differential pressure is developed across the piston 53 which eventually overcomes the force of the compression spring 63, and the piston 53 is moved to its retracted position. As the boss 82 on the piston 53 moves to the right past the annular recess 52, the locking fingers 66 are free to be extracted therefrom in response to the force exerted by fluid in chamber 34 acting on piston 32 which tends to pull fingers 66 to the left. Once the fingers 66 are pulled from the recess 52, the differential pressure developed across the piston 32 will cause said piston to continue to move until it reaches its extended position. Movement of the piston 32 to its extended position releases the slider valve 42, and it will be forced from the retracted position by the fluid pressure in the pressure chamber 49. Although both the front and back face of the slider valve 42 are exposed to the same pressure, positive movement of the slider valve is assured since the back of the slider valve has a larger surface area than the front. The fully extended position of the slider valve 42 is determined by the structural configuration of the sleeve 41.」(3欄71行ないし4欄31行)
(上記ピストン32を最も伸長した位置に移動させるには、圧力室34が前述の切換弁を介して圧力流体の圧力を受けるのに対して、圧力室36がリザーバの戻り路に開放されたままにする。圧力室34を流体圧力の供給源に接続するときには、その圧力が圧力室36の圧力を上回るようにする。ピストン32の両側には当初から差圧が発生するにもかかわらず、指状突起66が環状の戻り止め52(翻訳注記:「環状凹部52」と同義と解される)に係合したままなので、当該ピストン32の移動が制限される。前述のように、ピストン32が最も後退した位置にあり続ける限り、ロック室59の圧力は、室36内及びリザーバ内と同じ圧力である。このように、圧力室34を作動流体の供給源に接続すると共に室59をリザーバに接続することにより、ピストン53の両側に差圧が生じて、その差圧が圧縮バネ63の力に打ち勝って、ピストン53を後退位置へ移動させる。ピストン53のボス83が環状凹部52を越えて右方へ移動すると、ロック用の指状突起66が、その指状突起を左方へ引っ張るように室34からピストン32へ作用する流体力に応じて、前記凹部から引き抜かれて解放される。その指状突起66が凹部52から一旦引き出されると、ピストン32の両側に生じる差圧が当該ピストンを伸長位置に到達するまで移動させ続ける。そのピストン32が伸長位置に移動することで、スライド弁42を拘束解除すると共に、圧力室49内の流体圧力によってスライド弁42が後退位置から移動される。そのスライド弁42の表裏の両面には同じ圧力が作用するけれども、そのスライド弁42の裏面が表面よりも大きい面積を有するので、そのスライド弁が確実に移動し得る。そのスライド弁42の最も伸長した位置は、前記スリーブ41の相対的な配置構造によって決定される。)

(オ)
「Referring to FIGURE 6, the slider valve 42 is shown in its fully extended position. In this position, the pressure in the locking chamber 59 is equal to the pressure in the chamber 34 since the transverse passage 76, of the slider valve 42, lines up with the second passage of the chamber 73, as shown in FIGURE 9. The annular passage 71 that previously provided communication between the locking chamber 59 and the reservoir, when the piston 32 was in its locked position, is now sealed off as shown in FIGURE 7. Also, the chamber 72 is isolated from the chamber 73 by the slider valve 42, as shown in FIGURE 8.」(4欄32ないし42行)
(図6を参照すると、上記スライド弁42が最も伸長した位置にあることが示されている。この位置では、ロック室59内の圧力が室34内の圧力に等しい。これは、図9に示ように、スライド弁42の横断路76が室73の第2路に連通しているからである。前記ピストン32のロック位置においてロック室59とリザーバとの間を前述のように連通させていた環状流路71は、今度は、図7に示されるように閉止される。図8に示すように、室72もスライド弁42によって室73から遮断される。)

(7) 甲7
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲7には以下の記載がある。

(ア)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パレット上のワーク取付具に固定される被加工物のクランプ、アンクランプ状態を確認するクランプ・アンクランプ確認装置に関する。」

(イ)
「【0046】治具本体51,軸体53,クランプ部材50,ピストン54,バネ55は図3に示す第2実施例と同様であり、シリンダ室51cへの圧力供給とバネ55とによりクランプ部材50が上下動する。この実施例では、ブロック52の前記軸体53軸線上に気密室51gを設け、圧力供給源と気密室51gとを連通させる通孔40gと、大気圧側と気密室51gとを連通させる通孔40hとの結合を、軸体53の上下動で遮断してアンクランプ状態を検出している。
【0047】本発明は上述した実施例に限定されることなく、ワーク取付け治具のクランプ、アンクランプ動作を行うときに生じる可動部分の移動を利用し、圧力供給源側に連通する通孔と、大気圧側に連通する通孔とを、結合、遮断することにより生じる圧力変化を検出する構成であればよい。また、この検出は、クランプ、アンクランプ状態の両方を検出してもよくどちらか一方を検出してもよい。
【0048】
【発明の効果】本発明に係るクランプ・アンクランプ確認装置によれば、ワーク取付け治具の可動部の移動で気密室内のプランジャ部を押圧移動させることにより、気密室内で結合している通孔間を遮断し、それによって生じる圧力流体の圧力変化を検出する簡素な構成であり、クランプ、アンクランプ状態を高い信頼性で確実に検出することができる。」

(8) 甲8
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲8には以下の記載がある。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ワークなどを固定するクランプの動作状態を検出する装置に関する。」

(イ)
「【0005】上記の請求項1の発明は、次の作用効果を奏する。クランプの動作を検出するときには、前記の入口孔に圧縮空気等の圧力流体を供給する。上記の入口孔の開口部が前記の検出具の前記の凹所に対面している場合には、その入口孔に供給された圧力流体が上記の凹所を通って外部へ排出され、その圧力流体の圧力が設定圧力よりも低下する。これに対して、上記の入口孔の開口部が上記の検出具の前記の閉止面によって閉じられたときには、上記の圧力流体の排出が阻止されて、その圧力流体が設定圧力に保持される。従って、上記の圧力流体の圧力を検出することにより、上記の検出具の切換え状態を検出でき、これにより、前記クランプロッドの動作状態を検出できる。上述したように、本発明の動作検出装置は、圧縮空気等の圧力流体を利用するので、前述した従来技術のリミットスイッチ等とは異なり、切削油等による劣化がなくなって寿命が長いうえに信頼性も高い。また、上記の動作検出装置は、前記ハウジングの一端壁に設けることが可能なので、コンパクトに造れる。」

(ウ)
「【0028】主として図3に示すように、上記の検出ロッド62の外周面の下半部に、上下方向へ延びる3つの閉止面68と上下方向へ延びる3つの凹所69とが周方向へほぼ等間隔に設けられる。上記の凹所69は、溝によって構成され、その凹所69の下端が上記の検出ロッド62の下端面に開口されると共に、同上の凹所69の上端が同上の検出ロッド62の上端面に開口される。その検出ロッド62が前記の検出孔58に上下方向へ移動自在かつ軸心回りに旋回自在に挿入される。上記の内筒57の上記の検出孔58には、クランプ状態検出用の第1入口孔71と旋回退避状態検出用の第2入口孔72とが、上下方向へ間隔をあけると共に周方向へ約90度の角度をあけて開口される。上記の第1入口孔71は、前記の外筒56の第1周溝73および第1貫通孔74と前記テーブル1の第1供給孔75とを順に経て圧縮空気の供給源(図示せず)へ接続される。また、上記の第2入口孔72も、上記の外筒56の第2周溝77および第2貫通孔78と同上テーブル1の第2供給孔79とを順に経て上記の圧縮空気の供給源へ接続される。
【0029】上記構成の動作検出装置51は次のように作動する。上記の検出ロッド62は、前述したクランプロッド5の移動に連動して、図2A中の実線図(および図3)の旋回退避位置Xから図2A中の太線一点鎖線図(および図4)のクランプ準備位置Yへ旋回され、その後、図2A中の二点鎖線図のクランプ位置Zへ直進される。より詳しくいえば次の通りである。」

(9) 甲9
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲9には以下の記載がある。

(ア)
「・・・第5図のように、衝合部材101’’,102’’が低圧ピストン1との衝合によって方向切り換え弁103,104を作動させ、該方向切り換え弁103,104の流体をパイロットとして方向制御弁7を作動させるようにしたものもある。」(明細書4ページ下から7ないし3行)

(10) 甲10
ア 本件遡及出願日前に頒布された刊行物である甲10には以下の記載がある。

(ア)
「従来より、油や気体等の油気圧を用いピストンを運動させるシリンダ装置が周知であり、各種の用途に幅広く用いられている。
第1図には、このような従来のシリンダ装置が示されており、このシリンダ装置は、内部にピストン10が移動可能に設けられたシリンダ本体12と、シリンダ本体12内の油気圧を制御するバルブ本体14と、を含み、シリンダ本体12内のピストン10位置を位置検出器16により検出しながらピストンを制御している。」(1ページ右下欄2ないし11行)

2. 無効理由についての検討

(1) 無効理由1
ア 本件特許発明1について

(ア) 甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「シリンダ本体10」及び「油圧パワーアクチュエータA」が、その構成及び機能からみて本件特許発明1の「シリンダ本体」及び「油圧シリンダ」に相当することは明らかである。
また、甲1発明の「カム部材43と同軸のピストン15及びピストンロッド16」は、上記1.(1)の摘記事項(ウ)の「・・・上記シリンダ内のピストン15を往復移動させる。このピストンには出力用ピストンロッド16が接続され、そのピストンロッド16がエンドキャップ12内の適切なブッシュを介して支持され、当該ピストンロッド16には、操作されるべき装置に連結される適切なカップリング手段・・・が設けられる。」及び上記摘記事項(カ)の「ピストン15と同行移動しかつ同軸のカム部材43」という記載からみて、本件特許発明1の「出力部材」に相当するものと認められる。
甲1発明の「パイロット弁B」は、油圧シリンダの出力部材によって動作する機能からみて、本件特許発明1の「弁機構」に相当するものといえる。そうすると、甲1発明の「軸方向に離間した端部30、31が小径の首部32によって相互に接続された弁を含む」「スプール弁29」と、本件特許発明1の「小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含む」「弁体」とは、「軸部が一体形成された弁体本体を含む」「弁体」である点で共通する。
また、甲1発明における「スプール弁29」の移動方向である「下方」及び「上方」は、本件特許発明1における「弁体」の移動方向である「第1方向」及び「第1方向と反対の第2方向」に相当することも、当業者には明らかな事項である。
さらに、甲1発明の「シリンダ10のエンドキャップ11に装着され、前記スプール弁29が挿入される孔22を有するバルブ本体21」、「前記バルブ本体21の上端の孔延長部33を塞いで固定されるネジ栓34」、「前記孔延長部33に設けられ、油圧パワーアクチュエータAのアクチュエータ流体が供給され、前記アクチュエータ流体圧力によって前記スプール弁29をバランスさせる孔」を備えた構成と、本件特許発明1の「前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材」、「前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材」、「前記凹穴内に設けられ、前記油圧シリンダの油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記第1方向に進出させる油圧導入室」を備えた構成とは、「前記弁体の軸部が挿入される貫通孔を有する円筒部材」、「前記円筒部材に隣接して固定されるキャップ部材」、「油圧シリンダの油圧が導入される室」を備えた点で共通する。
また、甲1発明の「ポート」は、「加圧流体の通路」となるから、本件特許発明1の「エア通路」と対比して、「流路」であることで共通している。
そして、甲1発明の「前記カム部材43が空所24から引き抜かれるとき」は、本件特許発明1の「前記出力部材が所定の位置にないとき」に相当し、同様に甲1発明の「前記カム部材43が前記空所24に挿入されたとき」は、本件特許発明1の「前記出力部材が前記所定の位置に達したとき」に相当し、甲1発明の「前記カム部材43が前記空所24から引き抜き開始したとき」は、本件特許発明1の「前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したとき」に相当することは、当業者にとって自明である。
さらに、甲1発明の「前記カム部材43が空所24から引き抜かれるときにはポート26とポート27とが連通しポート26とポート28とが接続解除される状態になり、前記カム部材43が前記空所24に挿入されたときには前記スプール弁29が前記上方に移動して前記ポート26とポート28とが連通されポート26とポート27とが接続解除される状態に切換えられ」と、本件特許発明1の「前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され」とは、「前記出力部材が所定の位置にないときには流路の流通状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記流路の流通状態が切換えられ」という点で共通する。
また、甲1発明の「前記アクチュエータ流体によって前記カム部材43が前記空所24から引き抜き開始したときには前記圧縮バネ35の付勢により前記スプール弁29が前記下方に進出してポート26とポート27とが連通しポート26とポート28とが接続解除される状態に切換えられる」と、本件特許発明1の「前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記第1方向に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知される」とは、「前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記弁体が前記第1方向に進出して流路の流通状態が切換えられる」点で共通する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「弁機構の弁体を第1方向に進出させ、油圧シリンダの出力部材により前記弁体を第1方向と反対の第2方向へ移動させて流路の流通状態を切換えるように構成し、
前記弁体は、軸部が一体形成された弁体本体を含み、
前記弁体の軸部が挿入される貫通孔を有する円筒部材と、
前記円筒部材に隣接して固定されるキャップ部材と、
油圧シリンダの油圧が導入される室とを備え、
前記油圧シリンダの油室と前記流路とが互いに連通せず、
前記出力部材が所定の位置にないときには流路の流通状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記流路の流通状態が切換えられ、
前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記弁体が前記第1方向に進出して流路の流通状態が切換えられる装置」

<相違点1>
本件特許発明1の弁機構が、「前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材」と「前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材」とを備え、シリンダ本体の装着孔に設けられたものであるのに対し、甲1発明のパイロット弁Bが、エンドキャップ11に装着されたものである点。

<相違点2>
本件特許発明1の弁機構が、「前記凹穴内に設けられ、前記油圧シリンダの油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記第1方向に進出させる油圧導入室」及び「小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体」を備え、「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって弁機構の弁体を第1方向に進出させ」るものであるのに対し、甲1発明のパイロット弁Bは、孔延長部33に供給された加圧流体はスプール弁29をバランスさせる流体圧力を作用させるだけで、圧縮バネ35のバネ力によってスプール弁29を下方に進出させるものである点。

<相違点3>
本件特許発明1の弁機構が、「前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材」及び「前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材」を備えているのに対し、甲1発明では、スプール弁29に設けられて空所24とポートとの間又は孔延長部33とポートとの間をシールする部材については不明である点。

<相違点4>
本件特許発明1の流路が「油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路」であり、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され、前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」るものであるのに対し、甲1発明の流路は、バルブ本体21の径方向に貫通して形成された加圧流体の通路となるポート及び該ポートの端部に接続された流体制御配管であって、前記加圧流体の種類は特定されていない点。

<相違点5>
本件特許発明1の「装置」は、油圧シリンダに形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより出力部材の位置を検知する位置検知装置であって、「前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され、前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記第1方向に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知される」ものであるのに対し、甲1発明の「装置」は、パイロット弁Bに形成されたポートの接続状態を切換えることにより流体制御回路を制御可能ではあるが、カム部材43(又はピストン15及びピストンロッド16)の位置を検出する装置であるか否かは不明である点。

(イ) 相違点に対する検討

a. 相違点1について
甲1には、上記1.(1)アの摘記事項(イ)の「従来から利用されているパイロット弁ユニットと連動カムは、少なくとも可動部分の一部が外部に多少開放されていた。これらの開放された可動部分は、汚染物が侵入しやすく、構成要素を適切に保護できず、また、内部の部品を適切に潤滑できない。・・・現在知られている従来構造に起因する上記問題および他の問題は、有用な組立体を備える以下の発明によって大幅に改善される。即ち、一体化されたユニット組立体を提供するために、サイクル用パイロット制御弁がパワーアクチュエータに密接に連携され、また、その連携動作されるアクチュエータの可動部分およびパイロット弁が完全に密封され、さらに、アクチュエータ作動用の加圧流体によって上記パイロット弁手段が潤滑される。」という記載がある。そうすると、甲1発明は、従来のパイロット弁のユニットと連動カムの可動部分が外部に露出していたために生じた、汚染物が侵入しやすく、部品を適切に潤滑できないとの問題点を解決しようとして、バルブ本体21やエンドキャップ11により当該可動部分が完全に密閉されるようにしたものである。一方、本件特許発明1は、甲1発明のカム部材43のような、出力部材とは別の弁体を移動させるための構成をピストンとは別途に備えたものではないから、本件特許発明1と甲1発明とは、そもそも前提とする構成において相違し、甲1発明の流路や開閉弁機構をシリンダ本体10に設けることの動機付けがあるとはいえない。
請求人は、第3の1.(1)アに記載したように、甲2、甲3、甲5及び甲6には、エア通路をシリンダ本体内あるいは弁ケースに形成する旨が記載されている旨、主張している。しかし、これらの各甲号証記載のものは、いずれも甲1発明のカム部材43のような、ピストン15の位置を検出するための突出部を持たないものばかりである。そうすると、甲1発明のようなピストン15の位置検出のためのカム部材43とそれを覆うエンドキャップ11を有するものにおいて、シリンダ本体10に流路やパイロット弁Bを備える甲号証はない。
したがって、甲1発明に上記相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

b. 相違点2について
甲1の、上記1.(1)アの摘記事項(キ)の「この加圧流体は、上記スプール弁の最下端に作用してバネ35の力に抗するように当該弁に力を加えるので、動作不良を生じさせる。この動作不良を防止するには、流体圧力源を孔延長部33へ接続する通路を介して、スプール弁の反対側の端部に均圧流体を供給すればよい。これを達成するには、好ましくは、弁スプールの両端部の空間同士を連通させる軸孔路48を設けて、その弁スプールをバランスさせる流体圧力を上記の両端面に作用させ、これにより、流体圧力がスプールの動作を妨げないようにする。」との記載、及びスプール弁29が、カム部材43により移動させられることから、甲1発明は、軸孔路48を設けることで、スプール弁29の両側(油室側とエンドキャップ11側)を連通させて、当該両側に作用する油圧を等しくし、バネ35とカム部材43によるスプール弁29の動作が油圧によって実質的に妨げられないようにするものであること、そして、当該両側に作用する油圧に差が生じると、スプール弁29に対して当該差に基づく油圧が作用し、スプール弁29の往復動作を妨げるであろうことは当業者にとって明らかである。
そうすると、甲1発明において、孔延長部33を、油室の油圧によって、スプール弁29をピストン15及びピストンロッド16側に進出させた状態に保持するためには、スプール弁29の両端に作用する油圧において、孔延長部33側のものを相対的に大きくすることが必要であり、その結果、油室の油圧の影響によりカム部材43によるスプール弁29の図1における上方への移動を妨げることとなるから、甲1発明に上記相違点2に係る構成を備えることの阻害事由があるというべきである。
上記第3の1.(1)アに記載したように、請求人は、甲3、甲5及び甲6にはそれぞれ油圧によってのみ弁体を進出させるものが記載されていると主張している。しかし、上記に示したとおり、甲1発明は、油圧によってスプール弁29を進出させることの阻害事由があるというべきであるから、甲3、5及び6に記載された上記事項を適用することが当業者にとって容易であるとは認められない。
また、上記のように、油圧によってスプール弁29を進出させることの阻害事由があるため、たとえ、「小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体」の構造が当業者にとって設計的事項であったとしても、上記相違点2のように構成することが当業者にとって容易であったとはいえない。
したがって、甲1発明に上記相違点2に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

c. 相違点3について
甲1には、スプール弁29に設けられ、空所24とポートとの間又は孔延長部33とポートとの間をシールする部材については、記載されていない。また、図1を見ると、バルブ本体21とエンドキャップ構造11との間、バルブ本体21とスペーサ部材47との間、バルブ本体21とネジ栓34との間には、それぞれ、Oリングのようなシール部材が配置されていることが明示されていると理解されるが、スプール弁29とバルブ本体21との当接部分に、シールする部材を配置する点は明示されていない。
また、請求人は、請求書の19ページ4ないし9行及び同ページ12ないし22行で、アクチュエータを作動させる作動流体がパイロット弁の部品の潤滑剤として機能している旨主張するが、そうであれば、潤滑剤となるアクチュエータの作動流体が当接摺動部となるスプール弁29とバルブ本体21との隙間に入ることを防止するシール部材をわざわざ設ける意味がないことは自明である。そうすると、たとえ油室と弁機構の流路が流通しないようにシールすることが当然のことであるとしても、また、具体的なシール方法は周知で設計事項であるとしても、甲1発明について、空所24とポートとの間又は孔延長部33とポートとの間をシールする部材を設けるようなことはしないものというべきである。
したがって、甲1発明に上記相違点3に係る構成を備えることは、当業者が容易に成し得たものであるということはできない。

d. 相違点4について
加圧エアの通路として形成されるエア通路について、環状部材の径方向に貫通して形成した第1エア通路、及び、油圧導入室の外周に位置し、キャップ部材の外周部と装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成した第2エア通路の両方を備えた点については、請求人が上記第3の1.(1)アで提示している甲2、甲3、甲5、甲6のいずれの甲号証においても、環状部材に相当する部分にエア通路を径方向に貫通して形成した構造は記載されているものの、キャップ部材に相当する部分についてエア通路を形成することは示唆されていないし、他の甲号証にも記載されていないことから、従来周知の構造とも言うことができない。そして、このような環状部材及びキャップ部材の両方にエア通路を設けた構造を採用することにより、シール部材の交換等のメンテナンスが容易となり、位置検知装置の信頼性や耐久性を向上させ、シリンダ本体に複雑な加工を行うことなく「弁体」及び「油圧導入室」の周囲のスペースを有効に活用して「加圧エア」の流路を構成することができ、位置検知装置を小型化できるという効果を奏することができることからみて、単なる設計的事項ということもできない。
したがって、甲1発明に上記相違点4に係る構成を備えることは、当業者が容易に成し得たものであるということはできない。

e. 相違点5について
甲1発明は、ピストン15及びピストンロッド16が後退ストローク端に達したときに、カム部材43によりパイロット弁Bのスプール弁29を移動させて、ポート26と27とを接続する流路とポート26と28とを接続する流路との間で切り換えることで、当該ピストン15及びピストンロッド16が往復移動するよう制御するものであるから、甲1発明のスプール弁29は、ポート26ないし28との間の流路を切り換え、ピストン15及び16が自動的に反転動作をするための動作切替手段の一部である。そうすると、当業者が、自動往復運動をしているピストン15及びピストンロッド16が後退ストローク端に達したことを検知しようとして、動作切替手段の一部にすぎないスプール弁29に、ピストン15及びピストンロッド16が後退ストローク端に達したことの検知機能を持たせようとする合理的理由がない。
上記第3の1.(1)アに記載されたように、甲4、甲9及び甲10には、ピストンの位置を検知する装置が記載されている、と請求人は主張するが、上記で示したように、スプール弁29は、動作切換手段の一部であるに過ぎず、これらの甲号証が位置を検出する装置であったとしても、甲1発明にはそれらの構成と組み合わせることの動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1発明を上記相違点5に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

f. 本件特許発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明、甲2ないし甲10号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の「第1方向」を、「油圧シリンダの油室側」又は「油室側」に、本件特許発明1の「第2方向」を、「油圧シリンダの油室と反対側」又は「油室と反対側」と限定するとともに、本件特許発明1の「前記油圧シリンダの油圧が導入され」を「前記油室の油圧が導入され」と限定したものであって、本件特許発明1で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、当業者が甲1発明、甲2ないし甲10号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明3ないし6について
本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2を直接あるいは間接に引用するものであって、本件特許発明1又は2で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2と同様に、当業者が甲1発明、甲2ないし甲10号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 無効理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6については、請求人が主張する無効理由1は成立しない。

(2) 無効理由2

ア 本件特許発明1について

(ア) 甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2の上記1.(2)アの摘記事項(エ)の「本発明の実施例においては、以下の「空圧」の用語は例示であり、油圧の機構や回路も意図されている。」との記載から、甲2発明の「シリンダ12」が油圧シリンダも意味し、油圧駆動される「ピストン24」を有し、「シリンダ12のメインシリンダ」が油圧駆動のための油室となることは、当業者には明らかである。
そうすると、甲2発明の「シリンダ12」及び「メインシリンダ」は、その構成及び機能からみて本件特許発明1の「油圧シリンダ」及び「油室」に相当し、甲2発明の「ピストン24」は、「ピストンロッド26に固定された」もので、「ピストンロッド26」と一体物としてみることができるから、本件特許発明1の「出力部材」に相当する。
また、甲2の上記1.(2)アの摘記事項(エ)の「上記シリンダ12は、間隔をあけて配置された一対のブロック状の構造のヘッド18及び20を含む。」との記載からみて、甲2発明の「ヘッド20」は、「シリンダ本体」に相当することも理解できる。
次に、甲2発明の「空圧パイロット弁16」は本件特許発明1の「弁機構」に相当することは自明であり、そうすると、甲2発明の「弁操作具44」及び「弁部材46」を合わせた部材が、本件特許発明1の「弁体」に相当する。また、甲2発明の「弁孔53の縮径端部52を通って突出する弁操作具44」が、本件特許発明1の「小径軸部」を有し、甲2発明の「弁部材46」が「大径軸部」となることも明らかであるから、甲2発明の「弁孔53の縮径端部52を通って突出する弁操作具44と、前記弁操作具44に対して内方側に設けられた弁部材46とが一体化して連結されており」は、本件特許発明1の「小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含み」に相当するものと認められる。
甲2発明の「外方」及び「内方」は、弁体の移動方向を勘案して、本件特許発明1の「第1方向」及び「第1方向と反対の第2方向」に相当することは明らかである。
甲2発明の「流体通路」、「弁孔53」、「リングスペーサ80」及び「プラグ74」は、本件特許発明1の「エア通路」、「装着孔」、「環状部材」及び「キャップ部材」に相当する。
甲2発明の「弁部材46の外周側に設けられ」た「弾性シール手段78」と、本件特許発明1の「小径軸部の外周側に設けられ」た「第1シール部材」とは、「弁体の外周側に設けられ」た「シール部材」である点で共通する。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「弁機構の弁体を第1方向に進出させ、油圧シリンダの出力部材により前記弁体を第1方向と反対の第2方向へ移動させて前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成されたエア通路の開閉状態を切換えることにより前記出力部材の位置を検知可能に構成し、
前記弁体は、小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含み、
前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁部材46が挿入される貫通孔を有する環状部材と、
前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と、
前記弁体の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールするシール部材とを備え、
前記油圧シリンダの油室と前記エア通路とが互いに連通しない、位置検知装置。」

<相違点1>
本件特許発明1の弁機構は、弁体を第1方向に進出させるのに、キャップ部材の「凹穴内に設けられ、前記油圧シリンダの油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記第1方向に進出させる油圧導入室」を備え、「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって」行うのに対し、甲2発明の空圧パイロット弁16は、油圧導入室に相当する構成を備えておらず、バネ50の作用及び加圧エアによって弁操作具44及び往復弁部材46を外方に進出させる点。

<相違点2>
本件特許発明1の環状部材は、「弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する」のに対し、甲2発明のリングスペーサ80は、大径軸部となる「弁部材46が挿入される貫通孔を有する」ものである点。

<相違点3>
本件特許発明1は、「前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材」を備えているのに対し、甲2発明では、弁部材46の外周側に設けられた弾性シール手段78のみを備える点。

<相違点4>
本件特許発明1のエア通路は、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され、前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」るもので、「前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され、前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記第1方向に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知される」ものであるのに対し、甲2発明の流体通路は、「前記流体通路は、圧力流体供給源から圧力流体が供給され通孔58に連通する入口継手60、通孔56に連通する出口継手62、外界に開放された排気孔64に接続され、前記リングスペーサ80を前記リングスペーサ80の径方向に貫通し、前記圧力流体の通路となる流体通路が形成され」るものであり、「前記ピストン24が後退すると通孔56を排気孔64に連通させるとともに加圧エアが通孔58から通孔56及び排気孔64へ流れるのを阻止し、前記ピストン24が前記行程端に達したときには前記弁部材46が前記内方に移動して前記圧力流体が通孔58から通孔56へ流れる状態に切換えられ、当該切換えにより前記空圧パイロット弁16に対して通孔58から通孔56に圧力流体が流れる流体通路を形成し、当該操作結果を介してピストン24の位置を検知する」ものであるから、流体通路が、一端部に圧力流体が供給される第1エア通路が形成され、他端部が外界に開放される第2エア通路という構造とならず、圧力検知及び出力部材の位置検知のやり方も異なる点。

(イ) 相違点に対する検討

a. 相違点1について
甲2発明の空圧パイロット弁16の弁部材46は、加圧エアの圧力が、弁操作具44がシリンダ12の内部へ移動する方向に作用し続けるように構成されることで、弁部材46をピストン24側に進出させた状態に保持し、ピストン24の後退時には、弁操作具44がリリースされるものである。
また、甲2発明の空圧パイロット弁16は、通孔58の端部に加圧エアが供給され、通孔64は端部が外界に連通し、そしてこの通孔56と58との間を流れる流路及び通孔56と64との間を流れる流路を開閉可能であって、通孔56と58との間及び通孔56と64との開閉状態を切り換え、前記通孔56のエア圧を介して出力部材が所定の位置に達したことを検知するものであるから、通孔58から供給される加圧エアは、空圧パイロット弁16によって、通孔56に供給されるか否かによって、出力部材が所定の位置に達したことを検知可能とするものでもある。
したがって、甲2発明の加圧エアは、空圧パイロット弁16の弁部材46に対してシリンダ12の内部の方向へ向けて押圧し続ける機能と、出力部材が所定の位置に達したことを伝えるための構成の一部である機能とを併有するものであることが理解できる。
そうすると、甲2発明の、空圧パイロット弁16において、油室と空間を連通させる油圧導入路を形成して、油室の油圧によって、弁部材46をピストンロッド26側に進出させた状態に保持することは、上記加圧エアが併有する上記二つの機能のうち、弁部材46に対して押圧するとの機能のみを油圧で置き換えようとするものであって、そのように一部の機能に係る構成部分のみを置き換えることの動機付けが甲2発明に存在するとは認められない。
第3の1.(2)アに記載したように、請求人は、甲1及び甲3には、油圧シリンダの油圧によって弁体が進出するものが記載されており、また、甲5、甲6には流体シリンダの駆動流体圧によって弁体が進出するものが記載されていると主張する。しかし、上記したとおり、甲2発明には、空圧パイロット弁16において、油圧によって弁部材46を押圧することの動機付けが存在するとは認められないから、甲2発明に対して、上記甲1、甲3、甲5、甲6に記載された事項を適用し、油圧導入室を設けることが当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、甲2発明を、上記相違点1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。

b. 相違点2及び3について
相違点2及び3に係る本件特許発明1の特定事項は、油圧導入室に導入された油圧シリンダの油圧により弁体を第1方向に進出させる態様を実現させるために、弁体の小径軸部と大径軸部を確実にシールして油圧導入室の密閉度を向上させる具体的構造についてのものである。そうすると、上記相違点1で説示したように、そもそも甲2発明の空圧パイロット弁16においては、油室と空間を連通させる油圧導入路を形成して、油室の油圧によって、弁部材46をピストンロッド26側に進出させた状態に保持する構成部分のみを置き換えることの動機付けがないことを鑑みると、甲2発明に相違点2及び3に係る本件特許発明1の特定事項を備えさせることも、同様に動機付けがないものというべきである。
請求人は、油室と弁機構の流路とが連通しないようにシールすることは当然であり、当業者が適宜設計可能な事項にすぎないと主張している。しかし、シールが必要な部位にシールを配置すること自体は当然であっても、具体的にシール部材をどのような配置でどの程度シールするように構成するかは、前提となる装置構成に応じて決められるものであるところ、甲2発明においては、その前提となる油圧導入室の構成を上記のとおり採用し得ないとしている以上、シール部材に係る構成について、当業者が適宜選択可能な事項とも、甲5、甲6に記載された事項を適用することで当業者が容易に想到したものとはいえない。
したがって、甲2発明を、上記相違点2及び3に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。

c. 相違点4について
本件特許発明1に特定された事項である、「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」という構成は、出力部材が所定の位置に達したときに、出力部材により弁体を移動させて開閉弁機構の開閉状態を切り換え、エア通路のエア圧を介して出力部材が前記所定の位置に達したことを検知可能にするものである。したがって、加圧エアが供給される一端部から外界に連通した他端部までのエア通路全体の圧力が、開閉弁機能の開閉状態を切り換える動作によって、加圧エアの圧力と外界の圧力との間で大きく変化し、当該圧力の変化を検出することで、出力部材が所定の位置に達したことを検知するものであることが理解できる。
一方、上記a.にて示したとおり、甲2発明の通孔58によって供給される加圧エアは、空圧パイロット弁16の弁部材46に対してシリンダ12の内部の方向へ向けて押圧し続ける機能と、出力部材が所定の位置に達したことを伝えるための構成の一部である機能とを併有するものである。そして前者の機能のためには、弁部材46に作用する通路58の加圧エアの圧力が変化しないことが望ましいし、後者の機能のためには、通孔56が通孔58に接続されて加圧エアが供給されたときの通孔56に生じるエア圧と、通孔56が通孔64に接続されて外界に連通した際の通孔56に生じるのエア圧の変化を検出するのであるから、同様に通路58の加圧エアの圧力が変化しないことが望ましいことは当業者にとって明らかである。
そうすると、甲2発明を、相違点4に係る構成を備えたものとすることは、変化しないことが望ましい通路58内の加圧エアの圧力を変化させるものであるから、この点、そうした置き換えに対する阻害事項が存在するというべきである。
第3の1.(2)アに記載したように、請求人は「加圧エアが供給されるエア通路と外界に連通したエア通路とを連通」させる要件については、甲2発明も充足していると主張する。しかし、甲2発明において、通孔56、58及び排気孔64の3つのエア通路のうち、2つのエア通路を弁体の切換えに選択的に連通させても、例えば、通孔58を加圧エアが供給される一端部側とすると、他端部側は通孔56であるから外界に連通していないし、逆に、他端部側を外界に連通した排気孔64とすると、一端部側は通孔56となるから加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア通路とはならないから、上記要件を甲2発明は備えていない。さらに、上記要件が、例えば、甲4、甲7、甲8にも記載されているように従来周知であるとしても、当該周知の構成を甲2発明に適用することは、上記したとおり、通路58内の加圧エアの圧力が変化することとなり、阻害事由があるから、甲2発明に当該周知の事項を適用することが当業者にとって容易であるということはできない。
したがって、甲2発明を、上記相違点2に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。

d. 本件特許発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8号証に記載された事項並びに従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の「第1方向」を、「油圧シリンダの油室側」又は「油室側」に、本件特許発明1の「第2方向」を、「油圧シリンダの油室と反対側」又は「油室と反対側」と限定するとともに、本件特許発明1の「前記油圧シリンダの油圧が導入され」を「前記油室の油圧が導入され」と限定したものであって、本件特許発明1で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、当業者が甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8号証に記載された事項並びに従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明3ないし6について
本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2を直接あるいは間接に引用するものであって、本件特許発明1又は2で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2と同様に、当業者が甲2発明、甲1及び甲3ないし甲8号証に記載された事項並びに従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 無効理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6については、請求人が主張する無効理由2は成立しない。

(3) 無効理由3

ア 本件特許発明1について

(ア) 甲1発明との対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明は油圧複動式圧力ブースタの油圧駆動に用いられるから、甲3発明の「圧力流体配管39から供給される」、「低圧シリンダ20」、「メインシリンダ空間23」は、それぞれ本件特許発明1の「油圧供給源から供給される」、「油圧シリンダ」、「油室」に相当する。また、甲3発明の「作業ピストン21」は、モータ駆動におけるピストンロッドの役割を果たす高圧ピストンが設けられるものであるから、本件特許発明1の「出力部材」に相当する。
甲3発明の「二方パイロット弁100」、「差圧ピストン」は、それぞれ本件特許発明1の「弁機構」、「弁体」に相当する。また、甲3発明の「差圧ピストンは・・・一体形成されており」は、本件特許発明1の「弁体は・・・一体形成された弁体本体を含み」に相当することも明らかである。
甲3発明の「休止位置」及び「終端位置」は、二方パイロット弁100の動作方向を勘案して、本件特許発明1の「第1方向」、「第1方向と反対の第2方向」に相当することは明らかである。
甲3発明の「流体通路」は圧力流体として油圧を用いているものではあるが、本件特許発明1の「エア通路」とは、「流体通路」という概念は共通するものである。
また、甲3発明の「前記流体通路の一端部は、圧力流体配管39に接続され、前記流体通路の他端部は外界に開放され」と、本件特許発明1の「前記エア通路の一端部は、加圧エア供給源から加圧エアが供給されるエア供給路に接続され、前記エア通路の他端部は、外界に開放されたエア排出路に接続され」とは、「前記流体通路の一端部は、圧力流体供給源から圧力流体が供給される圧力流体供給路に接続され、前記流体通路の他端部は、外界に開放された圧力流体排出路に接続され」という点で共通する。
そして、甲3発明の「油圧複動式圧力ブースタ」と本件特許発明1の「位置検知装置」とは、前者が低圧シリンダ20の作業ピストン21により二方パイロット弁100の開閉状態を切換えることで、作業ピストン21を反転動作させるものであるのに対し、後者は油圧シリンダの出力部材により弁機構の開閉状態を切換えることで、出力部材の位置を検知するものであるが、弁機構の開閉状態を切換える「切換装置」であるという点では共通する。

そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは以下の点で一致し、かつ、相違する。
<一致点>
「油圧供給源から供給される油圧シリンダの油圧によって、弁機構の弁体を第1方向に進出させ、油圧シリンダの出力部材により前記弁体を第1方向と反対の第2方向へ移動させて前記油圧シリンダのシリンダ本体に形成された流体通路の開閉状態を切換えるように構成し、
前記弁体は、小径軸部と、前記小径軸部に対して第2方向側に設けられた大径軸部とが一体形成された弁体本体を含み、
前記油圧シリンダの油圧が導入され、前記油圧によって前記弁体を前記第1方向に進出させる油圧導入室を備え、
前記油圧シリンダの油室と前記流体通路とが互いに連通せず、
前記流体通路の一端部は、圧力流体供給源から圧力流体が供給される圧力流体供給路に接続され、前記流体通路の他端部は、外界に開放された圧力流体排出路に接続された
切換装置。」

<相違点1>
弁機構の構成について、本件特許発明1は、「前記シリンダ本体の装着孔の途中部に装着され、前記弁体の小径軸部が挿入される貫通孔を有する環状部材と、前記環状部材に隣接し、前記シリンダ本体の装着孔を塞ぐように固定され、凹穴を有するキャップ部材と、前記凹穴内に設けられた油圧導入室と、前記小径軸部の外周側に設けられ、前記油圧シリンダの油室と前記エア通路との間をシールする第1シール部材と、前記大径軸部とともに前記凹穴に摺動自在に内嵌され、前記エア通路と前記油圧導入室との間をシールする第2シール部材とを備え、前記環状部材を前記環状部材の径方向に貫通し、前記弁体に対して前記エア通路の一端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第1エア通路が形成され、前記油圧導入室の外周に位置し、前記弁体に対して前記エア通路の他端部側に設けられ、前記加圧エアの通路となる第2エア通路が、前記キャップ部材の外周部と前記装着孔の内周面との間、または、前記キャップ部材の内部に形成され」ているのに対し、甲3発明では、環状部材、キャップ部材、第1シール部材、第2シール部材については不明であり、油圧導入室もキャップ部材の凹穴内に設けられたものではなく、流体通路も二方パイロット弁100を貫通して形成されているだけである点。

<相違点2>
本件特許発明1は、出力部材が所定の位置に達したときに、出力部材により弁体を移動させて開閉弁機構の開閉状態を切り換えて、エア通路のエア圧を介して出力部材が所定の位置に達したことを検知可能とした位置検出装置であるのに対し、甲3発明は、ピストン21により差圧ピストンを移動させて二方パイロット弁63、64の開閉状態を切り換えて、流体通路の流体圧を介して反転動作する装置である点。

<相違点3>
本件特許発明1では、ピストンを油圧駆動にし、位置検出装置の制御流体を「加圧エア」としているのに対し、甲3発明においては、ピストンを油圧駆動にした場合、反転動作する装置の制御流体が「加圧油」となる点。

<相違点4>
切換装置の制御について、本件特許発明1では、「前記出力部材が所定の位置にないときには前記エア通路を外界に開放する開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには前記弁体が前記第2方向に移動して前記エア通路を閉じる閉弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を上昇させ、当該圧力が設定圧以上に上昇したことに基づいて前記出力部材が所定の位置にあることが検知され、前記油圧によって前記出力部材が前記所定の位置から移動開始したときには前記油圧により前記弁体が前記第1方向に進出して前記エア通路を外界に開放する開弁状態に切換えられ、当該切換えにより前記弁機構に対して前記一端部側に位置する前記エア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知される」のに対して、甲3発明では、「前記作業ピストン21が左方へストロークしているときには、前記二方パイロット弁100は閉じ状態に保持され、前記作業ピストン21が左端位置に達したときには前記差圧ピストンが終端位置に移動して前記二方パイロット弁100は開かれた状態に切換えられ、当該切換えにより前記二方パイロット弁100に対して前記一端部側に位置する管路93の圧力が低下し三方弁37,38を切換えて作業ピストン21が反転動作され、前記油圧によって作業ピストン21が反転動作したときには前記油圧により前記差圧ピストンが休止位置に進出して前記二方パイロット弁100を閉じ状態に保持する」ものである点。

(イ) 相違点に対する検討

a. 相違点1について
本件特許発明1において、相違点1に係る発明特定事項のように、弁機構の構造として流体通路を形成した環状部材及びキャップ部材を用いて、これらを弁体に組み合わせた上、第1シール部材及び第2シール部材でシールして構成したのは、出力部材の位置検出可能な油圧シリンダを小型化するとともに、位置検知装置の信頼性や耐久性を向上させる目的のためである(本件特許明細書の段落【0008】、【0058】-【0060】の記載を参照)。そして、これら各部材の配置、組み合わせ、構造の相乗効果により上記目的が達成されるものであると認められる。一方、甲3だけでなく、その他の甲号証を見ても、相違点1に係る構成を有する弁機構の構造は見当たらない。上記第3の1.(2)アに記載したように、請求人は、相違点1に係る構成のうち部分的に抽出して、それが各甲号証に記載されているか、従来周知の事項であると主張するが、そのような細切れの技術を寄せ集めて相違点1に係る構成のようにすることの合理的な理由がない。また、請求人は、このような弁機構の構成の差異は設計的事項にすぎないとも主張しているが、部分的には設計的事項といえても、それらを総合的に組み合わせた場合まで、単なる設計的事項という根拠が不明である。
そうすると、甲3発明において、上記相違点1に係る構成を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

b. 相違点2について
甲3発明の二方向パイロット弁100,101は、流体通路を切り換え、作業ピストン21が自動的に反転動作をするための動作切替手段の一部である。そうすると、当業者が自動往復運動をしている作業ピストン21の行程端を検知しようと試みて、動作切替手段の一部にすぎない二方パイロット弁100,101に作業ピストン21の行程端の検知機能を持たせようとすることの動機付けがあるとはいえない。
請求人は、第3の1.(3)アに記載したように、甲2記載の「位置センサ」あるいは甲4記載の「プランジャ型スイッチ100」を適用することは容易である旨主張するが、そもそも、甲3発明は上記に示したとおり、作業ピストン21が自動的に反転動作するための動作切換手段であるから、作業ピストン21が行程端に達したことを検知する必要性があるとは認められず、甲2や甲4に記載された上記構成を適用することの動機付けに欠けるというべきである。
そうすると、甲3発明において、上記相違点2に係る構成を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

c. 相違点3について
甲3には、上記1.(3)アの摘記事項(イ)に示したように、従来技術の問題点について、「この構造は、作業ピストンがゆっくりと動く場合に機能しないという不利益がある。その理由は、極めてゆっくりと動く行程では、上記パイロットも極めてゆっくりと開いて、行程端位置での制御室への圧力供給が非常にゆっくりになるからである。このため、前記の制御弁は、反対位置へゆっくりと移動し始め、さらなる移動抵抗を克服するためには圧力差が十分でないので、中間位置でストップする。」との記載があり、同摘記事項(オ)に「四方弁36の二つの制御室50、51は、いつも導入口を介して圧力パイプ30へ、軸に形成した流路あるいは空洞52,53を通して接続されている。」との記載、同摘記事項(カ)に「パイロット弁63,64は、バネの力によって休止位置で閉じ状態に保持されると共に、終端位置では、メイン又は作業ピストン21に係合されるプランジャ65,66によって機械的に開かれ、これにより、前記の四方弁の制御室50,51内が、低圧領域または回収容器41へ圧抜きされる。」との記載、及び、同摘記事項(キ)に「作業用ピストン21が左方ヘストロークしているときには、三方弁38の制御室96及び管路94,99,43に圧力が無いのに対して、三方弁37の制御室96には管路93,98,42を介して圧力「p」が付与されている。連携された2つの二方パイロット弁100,101は、上記ストローク中にバネの押す力で閉じられたままであり、管路98,99が前記の制御室を低圧シリンダ20へ延びる分岐路42,43へ接続するので、上記の管路98,99が上記の圧力状態を確実に保持する。上記の作業ピストン21の左端位置における反転動作は、前記パイロット弁100の機械的な操作によってなされ、これにより、前記三方弁37の制御室が圧抜きされると共に作業室23が圧力「p」を受け入れる。これと同時に、前記三方弁38の制御室に管路99を介して圧力が付与され、これにより、その弁が切換えられると共に作業室22が圧抜きされる。」との記載がある。
そうすると、甲3発明は、従来技術が有する、作業ピストンが行程端位置において、制御弁の制御室への圧力供給がゆっくりとなることによって生じる不利益を解決しようとして、作業ピストン21により二方パイロット弁63、64、100、101の開閉状態を切り換えて、四方弁36の制御室50、51や、三方弁37,38の制御室に作業ピストン21に対する流体供給源の圧力「p」が作用するようにして、従来技術ではゆっくりであった制御室における圧力変化を、圧力供給源からの圧力「p」を作用させることで、迅速な圧力変化を達成するものであることが理解できる。
よって、甲3発明においては、作業ピストン21を駆動するための流体と、反転動作する装置の制御流体の圧力供給源を共通としたことに技術的な意義があるから、前者を油圧とし、後者をエアと異なったものとすることへの動機付けがあるとはいえないし、むしろそうすることの阻害事由があるというべきである。
請求人は、第3の1.(3)アに記載したように、甲1には、ピストン15の行程端を検知するためのエア通路を設ける点が記載されており、甲4には、プランジャ型スイッチ100がエア圧センサを利用することができる点が記載されていて、甲3発明に上記甲1あるいは甲4記載事項を適用することは容易である旨主張している。さらに、甲2、甲7、甲8等の記載から、ピストンの駆動流体と制御流体について、別々の供給源から、別々の加圧流体を供給することは周知技術に過ぎないと主張している。しかし、上記したように、甲3発明は、反転動作する制御流体と作業ピストン21を駆動するための流体の圧力供給源を共通にしたことに技術的な意義があるから、甲1、甲2、甲4、甲7及び甲8に、制御のための流体を(ピストンを駆動するための流体とは異なった)エアとすることや、流体の供給源をピストン駆動のための流体と制御のための流体とで別々としたことが記載されていても、甲3発明において、ピストン21を駆動するために油圧を用いた場合において、制御のための流体としてエアを採用することが当業者にとって容易であるということはできない。
したがって、甲3発明に上記相違点3に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

d. 相違点4について
相違点4について、本件特許発明1の弁機構が、出力部材が所定の位置にないときには開弁状態が保持され、前記出力部材が前記所定の位置に達したときには閉弁状態に切換えられるのに対し、甲3発明の二方パイロット弁は、作業ピストン21が左方へストロークしているときには閉じ状態に保持され、前記作業ピストン21が左端位置に達したときには開かれた状態に切換えられものであり、出力部材の位置と弁機構の開閉状態の関係が逆になっている点で相違する。そして、甲3の摘記事項(カ)の「前記の四方弁36を切換えるための圧力パルスを供給するため、2つの二方パイロット弁63,64が制御管路61,62に設けられる。」という記載からみて、甲3発明は、二方パイロット弁の開閉状態の切換えにより、作業ピストン21を反転動作させる四方弁又は三方弁を駆動するための圧力パルスを供給するものであることが理解される。そうすると、甲3発明における二方パイロット弁の開閉切換え構成は、単に圧力の変化を検知させるための単独の部品というものではなく、作業ピストンの反転動作を行う四方弁又は三方弁を含む油圧制御回路の一部として機能しており、甲3発明の油圧制御回路全体の構造に関連するものと認められる。そして、甲3発明においては、2つの二方パイロット弁、低圧シリンダ、四方弁又は三方弁を機能的に組み合わせることで、確実に油圧制御回路の圧力状態を切り換えて作業ピストンを反転動作させているから、このように完成した油圧制御回路の一部の開閉状態を変更することの動機付けがないものというべきである。請求人は、上記第3の1.(3)アに記載したように、開閉弁機構において開閉状態をどちらにするかは設計事項であるか、従来周知の事項であるか、甲1に記載されているように公知であるから、甲3発明から容易に想到すると主張しているが、甲3発明において二方パイロット弁の開閉状態を変更する動機付けがない以上、当該主張を採用することはできない。
また、相違点4については、さらに、本件特許発明1の弁機構が、出力部材が所定の位置から移動開始したときには開弁状態に切換えられ、当該切換えにより弁機構に対して一端部側に位置するエア通路の圧力を低下させ、当該圧力が低下したことに基づいて前記出力部材が所定の位置から離れたことが検知されるのに対し、甲3発明の二方パイロット弁は、作業ピストン21が反転動作したときには閉じ状態に保持されるものである。そして、甲3発明では、作業ピストン21が反転動作した際に二方パイロット弁が閉じ状態になっても、制御管路98には圧力が供給されないように構成されているため、圧力の変化による作業ピストン21の位置移動の検知を行うことができないものである。
したがって、甲3発明に上記相違点4に係る構成を備えることは、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

e. 本件特許発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲3発明、甲1、甲2、甲4、甲6ないし甲8号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の「第1方向」を、「油圧シリンダの油室側」又は「油室側」に、本件特許発明1の「第2方向」を、「油圧シリンダの油室と反対側」又は「油室と反対側」と限定するとともに、本件特許発明1の「前記油圧シリンダの油圧が導入され」を「前記油室の油圧が導入され」と限定したものであって、本件特許発明1で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、当業者が甲3発明、甲1、甲2、甲4、甲6ないし甲8号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明3ないし6について
本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2を直接あるいは間接に引用するものであって、本件特許発明1又は2で特定された事項を全て含み、さらなる限定事項を付加したものである。よって、本件特許発明3ないし6は、本件特許発明1又は2と同様に、当業者が甲3発明、甲1、甲2、甲4、甲6ないし甲8号証に記載された事項及び従来周知の事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 無効理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6については、請求人が主張する無効理由3は成立しない。

(4) 無効理由4

ア 本件特許の分割前の原出願の明細書等の記載
本件特許の分割前の原出願の明細書(以下、「原出願明細書」という。)」には、請求人が主張している上記第3の1.(4)ア.の摘記事項(ア)ないし(エ)の記載がある。また、当該摘記事項(イ)に記載の「【特許文献2】特開2003-305626号公報」(甲8)には、上記第3の1.(4)イ.の摘記事項(ア)及び(イ)の図示がある。

イ 検討
上記甲8の記載から、閉止面68は、クランプロッド5が軸心方向へ移動する際に、開口部71aあるいは72aに対して摺動することで、当該開口部71aあるいは72aを開閉するものであることが理解できる。そして、当該摺動部から発生する摩耗等により、長時間使用した場合に開口部71aおよび72aの閉止性能が低下することや、摺動部の摩耗等は、当該互いに摺動しつつ移動する距離が長いほど激しくなるであろうことは、当業者にとって明らかである。そうすると、当該移動距離が無いか、あるいは短ければ短いほど、上記摺動に伴う閉止性能の低下が緩和されるであろうことも、当業者にとって明らかである。
したがって、仮に閉止面と開口部との間で摺動する部分が残っていたとしても、甲8記載の、クランプロッド5に対して連結された検出具62の外周面に摺動面68を設けたもののように、クランプロッド5の軸方向の移動距離と摺動面68の移動距離が等しくなるような構成ではなく、例えば、本件特許発明1のように、クランプロッド5の軸方向の移動に応答して、それよりも短い移動距離で開閉を行うように摺動面を構成することで、上記従来技術の問題が解決できると、原明細書の記載から当業者は理解できるといえる。
そうすると、本件特許にかかる分割出願の特許請求の範囲において、「弁体が弁座に当接する構成」との限定が省かれたとしても、本件特許に係る分割出願が原出願明細書に記載された事項の範囲内においてしたものではないということはできない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件特許に係る分割出願は適法になされたものであり、本件特許に係る出願は、特許法第44条第2項の規定により、原出願に係る出願の時にしたものとみなされる。
よって、本件特許発明1ないし6に係る発明が、原出願に係る公開公報である甲12に記載されていることをもって、特許法第29条第1項第3号に違反した無効理由がある、との請求人の主張は失当である。

エ 無効理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6については、請求人が主張する無効理由4は成立しない。

第5 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1ないし6に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-16 
結審通知日 2016-08-24 
審決日 2016-09-06 
出願番号 特願2013-155443(P2013-155443)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (B23Q)
P 1 113・ 121- Y (B23Q)
P 1 113・ 55- Y (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 平岩 正一
栗田 雅弘
登録日 2014-12-19 
登録番号 特許第5666660号(P5666660)
発明の名称 位置検知装置  
代理人 村林 隆一  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 高橋 智洋  
代理人 井上 裕史  
代理人 深見 久郎  
代理人 別城 信太郎  
代理人 佐合 俊彦  

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