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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1329990
審判番号 不服2016-5027  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2017-07-06 
事件の表示 特願2015-114316「配信装置、配信方法、及び配信プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-119042〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯等
1 手続の経緯
本願は、平成26年12月19日に出願された特許出願である特願2014-257844号の一部を平成27年6月4日に新たな特許出願としたものであって、同年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月15日付けで拒絶査定がなされて同月19日に発送されて送達され、これに対し、同年4月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされた。
そして、当審において、審判請求と同時になされた手続補正(平成28年4月5日付けの手続補正)を平成29年1月18日付けで決定により却下するとともに、同日付けで拒絶理由を通知したところ、同年3月14日付けで、意見書及び手続補正書が提出された。

2 当審において平成29年1月18日付けで通知した拒絶理由(理由3)の概要
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特表2014-534481号公報(平成26年12月18日公表)
2.特開2014-99111号公報(平成26年5月29日公開)

・請求項:1、刊行物:引用文献の1及び2
・・(以下略)・・

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年3月14日付けの手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、下記のとおりのものである。

端末装置において動作するアプリケーションによる広告要求を受け付ける受付部と、
前記受付部により前記広告要求が受け付けられた場合、表示候補となる広告である表示候補広告であって、インストール済みのアプリケーションのうち前記広告要求が受け付けられた時点がインストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間に対応する当該インストール済みのアプリケーションに関する広告である表示候補広告を前記端末装置に配信する配信部と、
を備えたことを特徴とする配信装置。

第3 引用文献、引用発明及び周知例
1 引用文献及び引用発明
(1)引用文献
当審より平成29年1月18日付けで通知した拒絶理由(理由3)で「引用文献1」として引用した特表2014-534481号公報(以下、単に「引用文献」という。)は、本願の出願時とみなされた原出願の出願時の前である平成26年12月18日に公表された特許公表公報であって、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0012】書籍出版社は、書籍を宣伝したいとき、書籍に関する広告または他の仮想コンテンツを送るのに使用することができる、モバイルデバイス上のアプリケーションの有無を考慮に入れる仕組みを必要とする。例えば、書籍出版社は、新規の書籍に関する広告または他の仮想コンテンツをレンダリングする前に、他の読取りアプリケーションの存在と、書籍に対する対象の特定の読取りアプリケーションの不在とを調べることができる仕組みを必要とすることがある。書籍出版社は、それぞれが特定のアプリケーションの存在などの別々の条件向けである複数の別々の広告を送ることができる仕組みを必要としている。それぞれの条件が満たされる広告または他の仮想コンテンツを、表示用に選択することができる。」

イ「【0016】モバイルアプリケーション(アプリケーション)は、モバイルデバイス100にダウンロードされてよく、ゲームおよび諸情報をもたらすユーティリティを含む、多くのさまざまなカテゴリのアプリケーションを含んでよい。モバイルアプリケーションの開発業者(または発行者)は、アプリケーションに表示するために、モバイルアプリケーションがサーバコンピュータから広告を要求すること可能にする広告ソフトウェアを組み込むことができる。通常動作の下では、広告ソフトウェアと一体化されたアプリケーションが起動されると、広告ソフトウェアは広告サーバに対して広告の要求を送る。広告サーバは、関連性および入札額を含む種々のパラメータに基づいて「最善の」広告を送り返す。
【0017】図5は、例示的ネットワークシステムのシステム図である。モバイルデバイス100は、広告サーバであり得るサーバ502と通信するクライアント装置504であってよい。広告主のクライアント520も広告サーバ502と通信してよい。この開示の目的のために、サーバによって供給される広告は、あるいは仮想コンテンツであり得ることが注意される。
【0018】広告サーバ502は、クライアント装置504からの広告の要求に応答して広告データベース530から広告を取り出すことができる広告選択コンポーネント508を含み、選択された広告をクライアント装置504に伝送する。広告選択コンポーネント508による広告選択は、広告競売に従ってもよい。
【0019】アプリケーション開発業者は、サーバ502からの広告または他の仮想コンテンツを要求するための広告ソフトウェアをモバイルアプリケーションに組み込むことができる。広告ソフトウェアが含むことができる広告ソフトウェア開発キット(SDK)506は、1つまたは複数の広告および条件コードを受け取ること、クライアント装置504上に広告をレンダリングすること、OS 510に対してアプリケーションを開くように求めること、および、適切なアプリケーションもしくはページへの代替経路を調べる、またはアプリケーションの有無を調べることができるように、JavaScript(登録商標)などの条件コードを扱うことができる。クライアント装置504は、ウェブブラウザならびに/あるいは他の閲覧コンポーネント512および1つまたは複数のモバイルアプリケーション514を含んでいる。他の閲覧コンポーネントは、それだけではないが、アニメーション、映像および/または音響プレーヤ、またはHTMLドキュメント用のWebViewもしくはUIWebViewなどの内蔵閲覧ソフトを含むことができる。」

ウ「【0024】広告主は、広告データベース530に保存されている広告を、モバイル広告を提示するための広告主のクライアント装置520経由で提示することができる。モバイル広告を提示するためのクライアント装置は、一般に、広告主が使用している装置であり、エンドユーザのモバイルデバイスとは別のクライアントである。しかし、クリエイティブを開発して広告サーバ502にクリエイティブを提示するために、広告主によってエンドユーザのモバイルデバイス504が使用されてもよいことが理解される。広告主は、広告キャンペーンの一部分として、1つまたは複数のクリエイティブを設計してよい。広告主のクライアント装置520は、クリエイティブの入力を促進する広告主のフロントエンド524をレンダリングすることができるウェブブラウザ522と、広告主が望む順番でモバイルデバイスによって扱われる(be considered)ように順序付けられた、クリエイティブに関連する一連のランディングページアドレスとを含む。ランディングページアドレスは、各ランディングページ(または他のドキュメント)のユニフォームリソースロケータ(URL)などの予備登録されたアドレスであり得る。
【0025】広告サーバ502は、広告クライアント520からクリエイティブおよびランディングページ(または他のドキュメント)のアドレスに関連する順序付けられた一連のリストを受け取ることができる。・・・」

エ「【0035】さらなる態様には、他のアプリケーションの有無に基づいて広告自体を適合させるものがある。
【0036】各モバイルアプリケーションまたはそのアプリケーションの内部のアクティビティは、モバイルプラットフォーム(例えばオペレーティングシステム、モバイルデバイス)のタイプに依拠して、それ自体をオペレーティングシステムに登録する。広告主のアプリケーションは、「blah-blah://」のようなURLを受け取るように登録してあってもよい。オペレーティングシステム(OS)は、広告主のアプリケーションがURLを開くための関数を呼ぶことによってURLを開くことが可能かどうか検出することができ、可能との返答があれば、広告主のアプリケーションを扱うことができる。この動作を前提として、広告SDKは、登録済みのアプリケーションのリストを保持することができるOSに問い合わせて、アプリケーションまたはアクティビティが存在するかどうか判断することができる。
【0037】アプリケーション開発業者は、広告を介してアプリケーションのそのポートフォリオを販売促進したいであろう。例えば、書籍出版社は、モバイルデバイス上に存在する、または存在しないアプリケーションに依拠して、別々の広告を分配したいであろう。広告主の製品またはサービスに関する広告の選択可能な組は、適応型広告と称される。図3は、適応型広告の一例を示す。図7は、対応するデータ流れ図を示す。
【0038】書籍出版社などの広告主は、広告主のクライアントコンピュータ520に用意されたツールを用いて、1組の広告を生成することができる。広告主のフロントエンド524は、1組の広告ならびに広告を示す条件を提示するためのインターフェースを与える。例えば、書籍出版社は、各タイプのリーダアプリケーション向けに、または特定のリーダアプリケーション向けに、書籍の広告を生成して、1組の広告および関連する条件をアップロードすることができる。モバイルデバイスがリーダアプリケーションを有する場合には、そのタイプのリーダアプリケーション向けの広告を示すという条件になり得る。別の実例として、モバイルデバイスに特定のタイプの一群のアプリケーションがあるものの、対象の書籍のフォーマット用のアプリケーションがない場合には、この特定のリーダアプリケーションを必要とする書籍の広告を示さない、という条件になり得る。
【0039】ステップ302で広告サーバ502に広告の要求が送られ、ステップ304で、広告サーバ502は、示すべきアプリケーション開発業者の広告を選択する。広告応答には、複数(N個)のクリエイティブ(またはクリエイティブへのリンク)およびそれぞれのランディングページへのリンクが含まれ得る。それに加えて、広告応答には複数(M個)の条件を有するJavaScript(登録商標)コードが含まれ得る。
【0040】広告主は、広告サーバ502が保持している複数の広告クリエイティブおよびそれぞれのランディングページへのリンクを、広告主のフロントエンド524を使用して広告主のクライアント装置520上に提示しておくことがある。
【0041】ステップ308で、広告SDK 506は、OS 510に対して第1の条件Mを調べるようにとの要求を送ることができる。ステップ310で条件が満たされると、ステップ312で、条件を満たす広告を、クライアント装置504に対して表示用に供給することができる。第1の条件が満たされなければ、ステップ314で、続く条件が調べられる。例示的態様では、ステップ308で、広告のJavaScript(登録商標)コードは、広告SDKに対して、アプリケーション開発業者のどのアプリケーションが装置に存在するか検出し、次いで、モバイルデバイス504上に存在するアプリケーションまたはアプリケーションの組に対応するクリエイティブを選ぶように指示することができる。
【0042】さらなる態様では、広告SDK 506は、どの的確なクリエイティブを示すべきか判断する前に、種々の条件を試験してもよい。例えば、広告主は、クライアント装置504がアプリケーションAおよびアプリケーションC(例えばどちらもゲーム関連のアプリケーション)を有する場合、ユーザがアプリケーションB(やはりゲーム関連のアプリケーション)をダウンロードする可能性が高いと考えてもよい。広告に含まれているJavaScript(登録商標)は、条件のリストを明示することができる。次いで、広告SDK 506が、適切なクリエイティブを表示することになり、これによって、アプリケーションストアが開かれ、広告をクリックすると、アプリケーションBのダウンロードが可能になる。
【0043】広告サーバ502は、アプリケーション開発業者に対して、最初はクライアントに存在するアプリケーションについての情報なしで広告サーバ502における競売を勝ち取り、次いで、クライアントに複数のオプションを送るように要求することができる。あるいは、広告サーバは、複数の勝者(それぞれが複数のクリエイティブを有する)を返してよく、装置において検出された情報に基づいて、モバイルデバイス504で小さな競売が行なわれてもよい。例えば、最初のアプリケーション開発業者のアプリケーションの1つまたは複数をユーザが既に利用していると判断された場合には、別のアプリケーション開発業者は、最初のアプリケーション開発業者より高価な値段で入札する可能性がある。
【0044】図3および図7に示されている例示的態様は、モバイルデバイス504に対して、条件に関するJavaScript(登録商標)コードおよび1組の広告を提示するステップと、広告主のソフトウェアに対して、モバイルデバイス504に含まれている1組のアプリケーションを、オペレーティングシステム510によって報告するステップとを含んでよい。」

オ「【0044】・・・代替形態として、広告主のソフトウェアは、広告サーバ502に対して、モバイルデバイス504上に存在する広告のリストを広告の要求とともに送ることができる。広告サーバ502は、モバイルデバイス504に送る応答のタイプを判断する際に、広告サーバ502が、特定のモバイルデバイス504用のアプリケーションの組を前もって受け取っているかどうか判断することができる。
【0045】図4は、広告サーバ502が、特定のモバイルデバイス504に含まれているアプリケーションを知らされている場合の流れ図を示す。図8は、対応するデータ流れ図を示す。ステップ402で、クライアント装置504からの広告の要求は、装置にあるアプリケーションのすべてまたはサブセットについての情報を含んでいる。これは、広告の要求にアプリケーション識別子を添付することにより達成することができる。
【0046】広告サーバ502は、勝者の広告を判断する間に、アプリケーションが存在する情報を考慮に入れることもできる。例えば、アプリケーション開発業者は、モバイルデバイスが自社のアプリケーションのうちの3つを既に有すること(すなわち誠実な需要家であること)を知れば、進んでより高値で入札する可能性がある。広告サーバが条件ベースの入札をサポートするとき、この態様がもたらされる。次いで、ステップ404において、広告サーバ502は、ステップ406でクライアント装置504上に表示されることになる、まさにその広告(およびまさにそのランディングページ)で応答してよい。・・・」

(2)引用発明
(1)に示した引用文献の記載及び図4によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

適応型広告の一例の代替形態(図4)における広告サーバであって、
クライアント装置であるモバイルデバイス上でモバイルアプリケーションが起動することで出され、モバイルデバイスにあるモバイルアプリケーションのすべてまたはサブセットについての情報を含む広告要求を受信し、
アプリケーションが存在する情報を考慮に入れて勝者の広告が判断され、モバイルデバイス上に表示されることになる広告で応答する、広告サーバ。

3 周知例
(1)配信装置から配信された複数の表示候補から端末装置で表示する広告を選択すること(周知技術1)、及び、端末装置にインストールされているアプリの利用を促す広告を配信すること(周知技術2)についての記載

ア 特開2014-99111号公報
「【0008】上述した特許文献1や非特許文献1に開示された技術によれば、広告対象となるアプリをダウンロードし、利用を開始するきっかけを提供することはできるが、広告対象となるアプリを継続して利用してもらうための、いわゆる「ユーザの継続率の向上」に結びつくことはなかった。
【0009】すなわち、インストールして利用し始めたアプリであっても、何らかの理由で利用が中断してしまうと、再び利用してみようというきっかけはほとんどなく、利用開始後の継続率が低いという問題があった。
【0010】本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、端末装置上で実行されるアプリの利用の継続率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】上記の課題を解決するため、本発明にあっては、端末装置で実行される第1のアプリケーションプログラムから前記端末装置のユーザを特定するユーザIDを伴うバナー要求を受け付けるバナー要求受付手段と、前記ユーザIDに基づいて当該ユーザIDにより特定されるユーザの任意のアプリケーションプログラムについての利用履歴を参照し、最終起動から所定期間を経過した第2のアプリケーションプログラムを選択するアプリケーションプログラム選択手段と、選択した第2のアプリケーションプログラムに対応する、当該第2のアプリケーションプログラムの再度の利用を促す広告情報を前記端末装置に送信し、前記第1のアプリケーションプログラムの画面上に前記広告情報を表示させる広告情報送信手段とを備えるようにしている。」

「【0046】 次いで、広告・ユーザ管理サーバ5は、アプリリストの最上位から取得したアプリIDと、バナー要求に伴われたユーザIDとに基づいてアプリ利用履歴DB55とバナー選択テーブル56とを参照し、所定数(例えば、5個)の広告バナーを選択する(ステップS105)。すなわち、アプリリストの最上位のアプリIDの当該ユーザIDのユーザによる利用履歴を参照し、図7のバナー選択テーブル56に従う場合、当該アプリが未インストール(未起動)の場合(インストールもしくは起動の履歴がない場合)は「通常バナー」、最終起動後7日以上?14日未満経過の場合は「リテンションバナー#1」、最終起動後14日以上?21日未満経過の場合は「リテンションバナー#2」、最終起動後21日以上?28日未満経過の場合は「リテンションバナー#3」、最終起動後28日以上?経過の場合は「リテンションバナー#4」をバナー種別として選択する。いずれにも該当しない場合(最終起動後、6日以内)は、そのアプリIDについて広告バナー(バナー種別)は選択しない。同様に、次の順位のアプリIDについて処理を行ない、所定数の広告バナーを選択するまで続ける。」

(2)「広告キャンペーン」において出稿した広告を配信することができる期間(宣伝活動期間)を定めることについての記載

ア 特開2002-24692号公報
「【0022】広告主は、広告を出した企業等を示す。・・・ここでは、広告とは、ある広告主がキャンペーンの一環として数多くの媒体に出した広告全体をいうのではなく、特定の個別出稿媒体(特定の雑誌や特定のTV番組)に特定の期間だけだされた広告を意味する。」

イ 特開2002-109357号公報
「【0035】図10は、かかるステップSB5の処理において、第1の申込み画面211の申し込みボタンがクリックされた場合に、クライアント端末4が表示する第2の申込み画面212を示した図であって、コンテンツ管理サーバ1は、第2の申込み画面212から、掲載希望者にバナー広告に使用する画像ファイル名、及びそのリンク先URLを入力させるとともに、契約期間の単位を、予め用意してある月毎、週毎、曜日毎、日毎・時間単位から選択させる。また、これにより掲載希望者がいずれかの単位を選択された後には、さらに、クライアント端末4は、当該掲載枠における現在の契約状況を示す契約状況画面を表示する。図11は、「日毎」が選択されたとき表示さする契約状況画面113の一例を示した図であって、本実施の形態においては、掲載希望者に当該掲載枠における現在の契約状況を示すだけでなく、契約状況画面113において、掲載希望者が空いている時間帯(図で空欄の部分)をクリックして、その部分を反転させることにより、掲載を希望する時間帯の指定が可能となっている。・・・
・・・
【0038】したがって、以上の受発注処理の動作後には、例えば掲載希望者に指定された掲載期間(契約期間)に、現在の時間帯が含まれていれば、掲載希望者が希望したバナー広告がホームページ等に直ちに掲載される。・・・」

ウ 特開2006-19800号公報
「【0031】・・・CMテーブル1dには、「CMID」、「広告主ID」、「カテゴリ」、「有効期限」、「データ実体」の情報がそれぞれ対応付けられて記録される。・・・
【0032】・・・「有効期限」には、そのCMの有効期限が記録される。例えば、2004年4月4日まで有効なCMであるならば、「有効期限」として「2004/04/04」のようなデータが記録される。「有効期限」のデータをCMテーブル1dに記録することにより、キャンペーン情報などのような特定の時期を経過すると配信する意味がなくなる広告を、有効期限内に配信するように管理することができる。・・・」

「【0047】・・・キャンペーン情報などの時間的制約のある広告をキャンペーン期間内に配信することが可能であり、広告の効果を高めることができる。」

第4 対比
引用発明の「(適応型広告の一例である図3の代替形態である図4における)広告サーバ」、「モバイルデバイス」、「モバイルアプリケーション」、「広告」、「広告要求」は、それぞれ、本願発明の「配信装置」、「端末装置」、「アプリケーション」、「広告」、「広告要求」に相当する。また、引用発明の「モバイルデバイスにあるモバイルアプリケーション」は、端末装置にインストールされたアプリケーションであるから、本願発明の「インストール済みアプリケーション」に相当する。

引用発明の「クライアント装置であるモバイルデバイス上でモバイルアプリケーションが起動することで出され」た「広告要求」を「受信」することは、本願発明の「受信部」における「端末装置において動作するアプリケーションによる広告要求を受け付ける」ことに相当する。

引用発明が「広告で応答する」ことは、「広告」が「表示候補となる広告である表示候補広告」であり、かつ、「インストール済みのアプリケーションのうち前記広告要求が受け付けられた時点がインストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間に対応する当該インストール済みのアプリケーションに関する」ものである旨は明示されていないものの、その旨を除けば、本願発明の「配信部」における「広告」を「端末装置に配信する」ことに対応している。

してみると、本願発明と引用発明とは、

<一致点>
端末装置において動作するアプリケーションによる広告要求を受け付ける受付部と、
前記受付部により前記広告要求が受け付けられた場合、広告を前記端末装置に配信する配信部と、
を備えたことを特徴とする配信装置

で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
端末装置に配信される広告が、本願発明では、「表示候補となる広告である表示候補広告」であり、かつ、「インストール済みのアプリケーションのうち前記広告要求が受け付けられた時点がインストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間に対応する当該インストール済みのアプリケーションに関する」ものであるのに対し、引用発明では、その旨が明示されていない点

第5 相違点の判断
(1)上記相違点について検討する。
配信装置から配信された複数の表示候補から端末装置で表示する広告を選択することは、例えば、第3 2(1)や第3 1(1)エの記載に示されるように、周知技術(周知技術1)であり、また、アプリの最終起動後の経過日数に応じた広告のような、端末装置にインストールされているアプリの利用を促す広告を配信することも、例えば、第3 2(1)の記載に示されるように、周知技術(周知技術2)である。
そして、引用発明は、「特定のアプリケーションの存在などの別々の条件向けである複数の別々の広告を送ることができる仕組み」(【0012】)を必要とする広告主が用いることができる適応型広告の代替形態に係るものであり、例えば、端末装置における「特定のアプリケーション」である「書籍の読み取りアプリケーション」の存在を条件としてこの「書籍の読み取りアプリケーション」に関する広告である「書籍の広告」を送ることを可能とするものであり、また、そのような「書籍の広告」が同時に端末装置に存在する「書籍の読み取りアプリケーション」の利用を促すものでもあるという観点からみても、「インストール済みのアプリケーション」に関する広告を送るものといえる。
その上、引用文献には、広告主が「広告キャンペーンの一部分として」広告(クリエイティブ)を設計してよい旨が明示されている(第3 1(1)ウ)ところ、「広告キャンペーン」における広告媒体へ広告を出稿する広告主は、例外はあるにしても多くの場合、その「広告キャンペーン」において出稿した広告を送ることができる期間を定めるのであり(第3 2(2))、「インストール済みのアプリケーション」の「広告キャンペーン」期間が定められることにより、この期間内の要求に対して「インストール済みのアプリケーション」の「広告キャンペーン(の一部分)」としての「インストール済みのアプリケーション」に関する広告が送られることになる。この点、当審における拒絶理由の通知に対して平成29年3月14日付けで提出された手続補正書により本願特許請求の範囲の請求項1に導入された「アプリケーションにおける宣伝活動期間」の文言は、この文言のみからは、端末装置におけるアプリケーションの動作に関連して設定される期間であることを要するか否かが明らかでないものの、本願明細書(【0081】)の記載をも踏まえれば、必ずしも端末装置におけるアプリケーションの動作に関連して設定される必要がない、「特定のアプリの広告を配信してよい」期間である「アプリのキャンペーン期間」を包含する概念を示すものである。
してみると、引用発明において、上記の周知技術を採用して端末装置に配信される広告を「表示候補となる広告である表示候補広告」とするとともに、「インストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間」(例えば、ある「書籍の読み取りアプリケーション」の広告キャンペーンの期間)中の配信要求に対して当該「インストール済みのアプリケーションに関する広告」(例えば、「書籍の広告」を含む当該「書籍の読み取りアプリケーション」に関する広告)を配信するようにして、「インストール済みのアプリケーションのうち前記広告要求が受け付けられた時点がインストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間に対応する当該インストール済みのアプリケーションに関する」ものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

また、本願発明の奏する効果は、引用発明を含む引用文献の記載及び周知技術に照らして、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別なものでない。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年3月14日提出の意見書において、同日付で補正された特許請求の範囲の記載に基づき、引用文献に期間に関する記載がない旨を主張している。
しかし、(1)で上述したとおり、多くの「広告キャンペーン」においては期間が定められるのであり、引用文献に「広告主」が「広告キャンペーンの一部分として」広告(クリエイティブ)を設計してよい旨が明示されている以上、「期間」の明示がないからといって期間に関する記載がないとはいえず、引用発明において「インストール済みのアプリケーションのうち前記広告要求が受け付けられた時点がインストール済みのアプリケーションにおける宣伝活動期間に対応する当該インストール済みのアプリケーションに関する」ものとすることは、適宜なし得たことである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許出願前に当業者が引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-08 
結審通知日 2017-05-09 
審決日 2017-05-22 
出願番号 特願2015-114316(P2015-114316)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
石川 正二
発明の名称 配信装置、配信方法、及び配信プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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