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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
管理番号 1330076
異議申立番号 異議2016-700319  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-14 
確定日 2017-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5833547号発明「発光セラミックおよびそれを使用する発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5833547号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔13-17〕について訂正することを認める。 特許第5833547号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許異議申立事件に係る特許第5833547号(以下「本件特許」という。)の特許権は、特許権者である日東電工株式会社が所有するものであり、その請求項1ないし18に係る特許についての出願は、平成27年11月6日にその特許権の設定登録がされ、同年12月16日の特許掲載公報の発行の日から6月以内にあたる平成28年4月14日に、これらの特許すべてについて、特許異議申立人である木下淳より特許異議の申立てがなされたものである。
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 9月16日付け 取消理由通知
同年11月21日 意見書の提出・訂正の請求(特許権者)
同年12月28日 意見書の提出(特許異議申立人)
平成29年 3月 6日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月28日 意見書の提出(特許権者)

第2 本件訂正の適否についての判断

1 訂正事項
平成28年11月21日になされた訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項13ないし17を対象として請求されたものであって、具体的な訂正事項は、次のとおりである。
訂正事項1:特許請求の範囲の請求項13に「前記発光セラミックの全光 線透過率は、50%以上である、請求項11又は12に記載 の発光装置。」と記載されているのを、「前記発光セラミッ クの全光線透過率は、60?70%である、請求項11又は 12に記載の発光装置。」に訂正する。請求項13の記載を 引用する請求項14ないし17についても同様に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書の【0017】の記載からみて新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔13ないし17〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記のとおり、本件訂正は認容されるべきものであるから、本件特許の請求項1ないし18に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(以下、各請求項に発明を項番に従って「本件発明1」ないし「本件発明18」という。)。
そのうち、本件発明1は、独立形式請求項である請求項1に記載された次のとおりのものである(なお、本件発明2?18は、当該請求項1に記載された本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものである。)。
「【請求項1】
式(Y_(1-(x+y))Gd_(y)Ce_(x))_(3)B_(5)O_(12)
(式中、xは、0.0001?0.004の範囲であり;yは、0.005?0.05の範囲にあり;Bは、Alである)
によって表わされる多結晶蛍光体を含み、
420nm?480nmの範囲に最大吸収波長を有する、発光セラミック。」

第4 パリ条約による優先権の主張の効果の有無

本件特許についての出願は、米国における出願(出願番号:61/183004、以下「優先基礎出願」という。)を基礎として、パリ条約による優先権の主張をするものである。
そこで、当該優先基礎出願の出願書類をみてみると、そこには、本件発明1ないし18が共通に具備する上記請求項1に記載された本件発明1の発明特定事項、すなわち、上記の式(Y_(1-(x+y))Gd_(y)Ce_(x))_(3)B_(5)O_(12)において、「xは、0.0001?0.004の範囲であり、yは、0.005?0.05の範囲にあり、Bは、Alである」ことについて、何ら記載されていない。
特に、本件特許明細書には、その段落【0011】に「いくつかの実施形態では、セラミックは、低いドーパント濃度を有するイットリウム・アルミニウム・ガーネットなどのガーネットを含む。いくつかの実施形態は、式(Y_(1-x)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)によって表わされる組成物を提供する。いくつかの実施形態は、式(Y_(1-(x+y))Gd_(y)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)によって表わされる組成物を提供する。上記式のいずれかにおいて、xは、約0.0001?約0.005の範囲、約0.0005?約0.004、または代わりに約0.0008?約0.0025であってもよい。いくつかの実施形態では、yは、約0.005?約0.05の範囲、約0.01?約0.03、または代わりに0.015?約0.025であってもよい。」と記載され、さらに同段落【0038】及び段落【0047】の【表1】には、具体的態様として、x=0.002、y=0.02の場合にあたる「実施例3A(実施例3a)」が記載されているから、上記「xは、0.0001?0.004の範囲であり、yは、0.005?0.05の範囲にあり、Bは、Alである」ことに対応する記載を確認することができるのに対して、上記優先基礎出願の出願書類には、これらに対応する記載は存在しない。
以上のとおり、本件発明1ないし18に係る技術的事項は、上記優先基礎出願の出願書類に記載された事項とはいえないから、本件発明1ないし18について、パリ条約による優先権の主張の効果を認めることはできない。
したがって、以下に示す、進歩性の判断にあたっては、現実の出願日である、平成22年5月26日(国際出願日)を基準とする。

第5 平成29年3月6日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(進歩性)について

上記のとおり、本件発明1ないし18は、パリ条約による優先権の主張の効果を認めることができないものであり、進歩性の判断の基準となるのは現実の出願日(平成22年5月26日)となるところ、当該現実の出願日時点で、国際公開第2009/148176号(甲第1号証として提出された出願に係る最先の公開公報。以下、単に「甲1」という。)は既に国際公開(国際公開日:平成21年12月10日)されており、甲1は、同出願日前に頒布された刊行物にあたる。
これを踏まえ、平成29年3月6日付けの取消理由通知(決定の予告)において、当審は、「本件発明1?18は、この判断基準日よりも前に公開されている甲1に記載された発明(引用発明1、2)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するため取り消されるべきものである。」と判断した。
これに対して、平成29年4月28日に、特許権者より意見書が提出されているので、その内容をも参酌しながら、以下、上記取消理由(進歩性)の妥当性につき検討をする。

1 甲1の記載事項
甲1(国際公開第2009/148176号)には、次の技術的事項が記載されている。
なお、甲1の記載内容を把握するにあたっては、その日本語の公表公報である特表2011-519149号公報(以下、単に「甲1公表公報」という。)を参照し、以下、便宜上、当該甲1公表公報の記載を甲1の訳文として用い、該当箇所の指摘も甲1公表公報の段落番号などを用いて示した。
(1) 甲1には、次に示す半導体発光装置が記載されている。
「固体発光素子と、当該固体発光素子が放つ一次光をより長波長の光に変換する波長変換体とを備え、
前記波長変換体は、ガーネット結晶構造を有する蛍光体を含んだ透光性の波長変換層を備える無機成形体であり、
前記蛍光体は、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Gd、Tb、Luから選ばれる少なくとも一つの元素を含んでなる構成元素群を含み、前記構成元素群の一部がCe^(3+)で置換されており、その置換量が前記構成元素群に対して0.01原子%以上1原子%以下である
ことを特徴とする半導体発光装置。」(甲1公表公報の【請求項1】)
(2) そして、上記半導体発光装置の波長変換体として、(Y_(1-a-x)GdaCe_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表される透光性蛍光セラミックス(甲1公表公報の【0216】参照。甲1では当該xの数値を原子%で示したものを「Ce^(3+)置換量」、当該aの数値を原子%で示したものを「Gd^(3+)置換量」とそれぞれ呼称している。)を用い、これと、InGaN系化合物を発光層とする青色発光ダイオード(発光ピーク波長は450nmである。)とを組み合わせ、当該透光性蛍光セラミックスが放つ黄緑色光と、当該青色発光ダイオードが放つ青色光の加法混色による白色光を放つ構造の白色LEDについて実験され(甲1公表公報の【0215】【0290】参照)、透光性蛍光セラミックスの、Ce^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量、透光性蛍光セラミックスの厚み(形状は平板状である。)、及び、当該白色LEDが放つ光の色度(x,y)と相関色温度それぞれのデータを得る実験の結果が種々示されている(甲1公表公報の【図18】?【図38】)。
(3) なかでも、「ハロゲンランプや車載用ヘッドランプに好適な相関色温度を得るための条件」、特に、相関色温度5000Kを実現するための条件(甲1公表公報の【0277】?【0288】、【図20】?【図33】)、及び2800?8000Kの範囲内の様々な相関色温度を実現するための条件(甲1公表公報の【0289】?【0296】、【図34】?【図38】)を検証するための実験では、次のように考察されている。
ア Ce^(3+)置換量・Gd^(3+)置換量と内部量子効率の関係
内部量子効率はCe^(3+)置換量が減少するほど増加する傾向にあり、450nm励起において、内部量子効率90%以上とするためには、Ce^(3+)置換量は0.5原子%以下とする必要がある(甲1公表公報の【0278】【0279】【図20】?【図26】)。なお、青色光の吸収効率などの観点から、Ce^(3+)置換量の下限は0.01原子%とされている(甲1公表公報の【0160】【0181】【0236】【0254】)。
一方、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系黄緑色蛍光体では、Yの一部をGd^(3+)で置換すると、発光ピーク波長を長波長側にシフトさせて、黄色味を帯びた発光色にすることができるため、Gd^(3+)置換により色度調整が可能であるところ、Gd^(3+)置換量が内部量子効率に与える影響は小さく、透光性蛍光セラミックスの450nm励起における内部量子効率では、Gd^(3+)置換量が50原子%以内であれば内部量子効率は90%以上を保持することができる(甲1公表公報の【0280】?【0282】【図27】?【図30】)。
イ Ce^(3+)置換量・Gd^(3+)置換量と温度特性との関係
Gd^(3+)置換量が0原子%のとき、Ce^(3+)置換量が2.0原子%以下である場合は、150℃での発光強度が室温時の70%以上であるが、Ce^(3+)置換量が3.0原子%以上になると、発光強度は急激に低下して70%未満になる。一方、Ce^(3+)置換量が0.5原子%のとき、Gd^(3+)置換量が30原子%以下である場合は、発光強度が70%以上であるが、Gd^(3+)置換量が40原子%以上になると、発光強度は急激に低下して70%未満になる。
これらから、Ce^(3+)置換量が2.0原子%以下であり、かつ、Gd^(3+)置換量が30原子%以下である条件を満たせば、150℃で室温時の70%以上の発光強度を保持できるということができる(甲1公表公報の【0286】【0287】【0288】【図32】【図33】)。
なお、上記の実験は、Ce^(3+)置換量あるいはGd^(3+)置換量が多くなるほど、温度消光が大きくなるという傾向(Ce^(3+)置換量及びGd^(3+)置換量が低くなるほど、好適化されていく傾向)を示すものである(甲1公表公報の【0161】【0222】【0226】参照)。
ウ 2800?8000Kの範囲内における様々な相関色温度の調整
Ce^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量、透光性蛍光セラミックスの厚み等に変更を加えることにより、2800?8000Kの範囲内の様々な相関色温度が実現可能である(甲1公表公報の【0291】【図34】【図35】)。
また、Ce^(3+)置換量が0.5原子%である実施例1?5群と、Ce^(3+)置換量が0.8原子%である実施例6?9群とを比較すると、Ce^(3+)置換量を増加させることでより低い相関色温度が実現できる(甲1公表公報の【0292】【図34】)。
さらに、一般照明用であれば、70℃で室温時の70%以上の発光強度を保持すれば良いのに対して、ハロゲンランプや車載用ヘッドランプは、より過酷な環境下で使用される場合を考慮すれば、200℃で室温時の70%以上の発光強度を保持することがさらに好ましいことから、70℃、150℃、200℃のそれぞれで、室温時の70%以上の発光強度を保持する条件について整理すると、Ce^(3+)置換量が0.5原子%の場合に、Gd^(3+)置換量が50原子%以下であれば3600?8000Kの色温度領域において70℃で室温時の70%以上の発光強度が得られ、Gd^(3+)置換量が30原子%以下であれば4500?8000Kの色温度領域において150℃で室温時の70%以上の発光強度が得られ、Gd^(3+)置換量が10原子%以下であれば6000?8000Kの色温度領域において200℃で室温時の70%以上の発光強度が得られる(甲1公表公報の【0294】【0295】【図37】)。
(4) ここで、Ce^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量及び透光性蛍光セラミックスの厚みと、相関色温度などの特性との関係について整理しておくと、Ce^(3+)置換量は、多くなるほど、黄緑色Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系透光性蛍光セラミックスの発光色は黄色がかったものとなって、8000K以下の低色温度の加法混色光を得ることが容易になるとともに、青色光を吸収しやすい透光性蛍光セラミックスになるため、薄い厚みで、黄緑又は黄色がかった加法混色光を得ることが容易になり、同様に、同透光性蛍光セラミックスのYの一部をGd^(3+)で置換することによって、発光色は黄色がかったものとなって、8000K以下の低色温度の加法混色光を得ることができる(【0220】【0221】【0225】【0162】)。また、同透光性蛍光セラミックスの厚さは、薄いものであればあるほど、温度上昇を抑制できることになるが、機械的強度、製造や取り扱いの容易さなどとの兼ね合いで、具体的な厚みとしては、10μm以上2mm未満程度が好ましいところ(【0127】【0112】)、厚ければ厚いほど、青色光を吸収しやすい透光性蛍光セラミックスになるため、黄緑又は黄色がかった加法混色光を得ることが容易になる(【0230】)。
このように、甲1は、Ce^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量及び透光性蛍光セラミックスの厚みの各数値が、相関色温度、さらには、上記内部量子効率及び温度特性といった諸特性に与える影響(作用機序)について教示するものである。

2 甲1に記載された発明(引用発明1、引用発明2)
(1) 上記1(2)のとおり、甲1に記載された種々の実験では、「(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表される透光性蛍光セラミックスと、InGaN系化合物を発光層とする青色発光ダイオード(発光ピーク波長は450nmである。)とを組み合わせ、当該透光性蛍光セラミックスが放つ黄緑色光と、当該青色発光ダイオードが放つ青色光の加法混色による白色光を放つ構造の白色LED」が用いられている。
(2) そして、当該白色LEDをハロゲンランプや車載用ヘッドランプにおいて使用する際の好適な相関色温度を得るための条件についてみると、上記1(3)アからみて、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表される透光性蛍光セラミックスのa及びxの値(上記Ce^(3+)置換量及びGd^(3+)置換量の1/100の値)は、内部量子効率90%を確保するという観点からすると、0<a≦0.5、0.0001≦x≦0.005であることが必要であることが分かる。
なお、当該内部量子効率を確保した上で、さらにCe^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量、透光性蛍光セラミックスの厚み等に変更を加えて、所望の温度特性(温度消光)及び相関色温度となるように調整することになるところ、上記1(3)ウでは、上記Ce^(3+)置換量(0.0001≦x≦0.005)を満足する具体的調整例としては、Ce^(3+)置換量が0.5原子%(x=0.005)の態様のみが示されている(甲1公表公報の【図37】)。
(3) そうすると、甲1には、次の「透光性蛍光セラミックス」及びこれを用いた「白色LED」の発明が記載されているといえる。
・「(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式(ここで、0<a≦0.5、0.0001≦x≦0.005)で表される透光性蛍光セラミックス」(以下「引用発明1」という。)
・「引用発明1の透光性蛍光セラミックスと、InGaN系化合物を発光層とする青色発光ダイオード(発光ピーク波長は450nmである。)とを組み合わせ、当該透光性蛍光セラミックスが放つ黄緑色光と、当該青色発光ダイオードが放つ青色光の加法混色による白色光を放つ構造の白色LED。」(以下「引用発明2」という。)

3 本件発明1について
(1) 引用発明1との対比
引用発明1の「透光性蛍光セラミックス」は、本件発明1における「発光セラミック」に相当するものであり、引用発明2の「白色LED」のとおり、最終的には青色発光ダイオード(発光ピーク波長は450nmである。)が放つ青色光により励起され、黄緑色光を放つものであるから、本件発明1が規定する「最大吸収波長」の数値範囲を満足するものといえる。
また、引用発明1の「透光性蛍光セラミックス」は、通常、粒状の無機蛍光体の単結晶の集合体、すなわち多結晶体により構成されるものであるから(甲1公表公報の【0246】参照)、本件発明1が具備する「多結晶」なる構造と共通する。
そうすると、本件発明1と引用発明1とは、式(Y_(1-(x+y))Gd_(y)Ce_(x))_(3)B_(5)O_(12)におけるx及びy(引用発明1ではyではなくaと表記されている。以下、引用発明1におけるaについてはa(y)と表記する。)の数値範囲において相違し、その余の点で一致するといえる。
なお、引用発明1におけるx(Ce^(3+)置換量)及びa(y)(Gd^(3+)置換量)は、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)における原子比(モル比)を示すものであり、これを「原子%」(甲1の原文では「atmic%」)として表示したものは、単純にこれらx、a(y)を100倍した数値であるから、本件発明におけるx、yの数値(さらには、実施例3aの%表記の数値)との比較において特別な換算は要しない。
(2) 相違点の検討
ア 確かに、上記1(4)において整理したとおり、甲1には、Ce^(3+)置換量、Gd^(3+)置換量及び透光性蛍光セラミックスの厚みの各数値が、相関色温度、内部量子効率、温度特性といった諸特性に与える影響(作用機序)について教示され、また、上記1(3)イの考察のとおり、温度特性(温度消光)は、引用発明1におけるCe^(3+)置換量及びGd^(3+)置換量が低くなるほど、好適化されていく傾向を理解することができる。
イ しかしながら、上記引用発明1におけるx、yの数値範囲は0.0001≦x≦0.005、0<a(y)≦0.5であり、本件発明1が規定する0.0001≦x≦0.004、0.005≦y≦0.05を包含するものであるものの、甲1には、本件発明1の数値範囲を満足する具体的調整例は見当たらない。
ウ また、本件特許明細書をみると、その【表1】に記載された「実施例3a」(CeとGdをドープ)と「実施例1」(Ceのみをドープ)のデータの比較により、「実施例3a」の方が温度特性が良好である(すなわちGdをドープした方が温度特性が良好である)という結果を看取することができるところ、この結果は、上記甲1において考察される傾向とは異なるものであって、引用発明1に対する有利な効果を示すものであるということができる。
加えて、平成29年4月28日に特許権者が提出した意見書の追試データを斟酌すると、この有利な効果は、本件発明1が規定する数値範囲のほぼ全域にわたって奏される効果とみることができる。
エ 以上の点を総合すると、引用発明1におけるx及びa(y)の数値範囲の中から、本件発明1が規定する数値範囲を選択することは、本願発明1が有する上記の有利な効果からみて、当業者が適宜行い得る設計的事項ということはできないから、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

4 本件発明2?18について
本件発明2?18は、本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、同様の理由により、これらの発明についても、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由について

特許異議申立人は、上記甲1に係る出願に基づく、特許法第29条の2所定の規定違反(拡大先願)を、異議申立理由として主張しているが、上記「第5」のとおり、当該甲1は、本件特許の現実の出願日前に頒布された刊行物であるから、当該主張は採用しない。
なお、同主張の趣旨は、上記特許法第29条第2項の規定違反(進歩性)の検討において加味した。

第7 結び

以上のとおり、本件訂正は許容できるものであり、本件訂正後の本件発明1?18に係る特許は、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によって、取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Y_(1-(x+y))Gd_(y)Ce_(x))_(3)B_(5)O_(12)
(式中、xは、0.0001?0.004の範囲であり;yは、0.005?0.05の範囲にあり;Bは、Alである)
によって表わされる多結晶蛍光体を含み、
420nm?480nmの範囲に最大吸収波長を有する、発光セラミック。
【請求項2】
500nm?750nmの範囲に最大放射波長を有する光を放射する、請求項1のセラミック。
【請求項3】
前記セラミックは、200℃で第1の発光効率および25℃で第2の発光効率を有し、第1の発光効率は、第2の発光効率の少なくとも80%である、請求項1又は2に記載のセラミック。
【請求項4】
xは、0.0005?0.004の範囲にある、請求項1?3のいずれかに記載のセラミック。
【請求項5】
xは、0.0008?0.0025の範囲にある、請求項1?4のいずれかに記載のセラミック。
【請求項6】
yは、0.01?0.03の範囲にある、請求項1?5のいずれかに記載のセラミック。
【請求項7】
yは、0.015?0.025の範囲にある、請求項1?6のいずれかに記載のセラミック。
【請求項8】
前記蛍光体が、さらに、式(Y_(0.978)Gd_(0.02)Ce_(0.002))_(3)Al_(5)O_(12)によって表わされる、請求項1?7のいずれかに記載のセラミック。
【請求項9】
前記多結晶蛍光体と異なる第2の成分をさらに含む、請求項1?8のいずれかに記載のセラミック。
【請求項10】
前記第2の成分は、アルミナ、イットリア、および酸化イットリウム・アルミニウムから選択される、請求項9に記載のセラミック。
【請求項11】
420nm?480nmの範囲に最大放射波長を有する発光ダイオードと、
請求項1に記載の発光セラミックと、
を含み、
発光セラミックは、発光ダイオードから放射された光の少なくとも一部を受け、500?700nmの範囲に最大放射波長を有する光に変換するために位置する、発光装置。
【請求項12】
前記発光セラミックは、50μm?5mmの範囲の厚さを有する、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光セラミックの全光線透過率は、60?70%である、請求項11又は12に記載の発光装置。
【請求項14】
xは、0.0005?0.004の範囲にある、請求項11?13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
yが、0.01?0.03の範囲にある、請求項11?14のいずれかに記載の発光装置。
【請求項16】
少なくとも第2のセラミックの成分をさらに含む、請求項11?15のいずれかに記載の発光装置。
【請求項17】
第2の成分は、アルミナ、イットリア、および酸化イットリウム・アルミニウムから選択される、請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
空隙がない、請求項1?10に記載の発光セラミック。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-19 
出願番号 特願2012-513986(P2012-513986)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤代 亮  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 日比野 隆治
原 賢一
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5833547号(P5833547)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 発光セラミックおよびそれを使用する発光装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  
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