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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1330093
異議申立番号 異議2016-700953  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-05 
確定日 2017-06-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5900330号発明「耐候性接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5900330号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5900330号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5900330号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成24年3月26日(優先権主張 平成23年3月28日、日本国)を国際出願日とする日本語国際特許出願であって、平成28年3月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人加藤加津子により特許異議の申立てがされたものである。
本件特許異議の申立てに係る手続きの経緯は以下のとおりである。
平成28年10月 5日 :特許異議の申立て
平成28年12月27日付け:取消理由通知
平成29年 3月 1日 :訂正請求書、意見書の提出
なお、平成29年3月8日付けで、当審から異議申立人加藤加津子に、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、また、参考として、上記取消理由通知の写し、上記訂正請求書及びこれに添付された訂正した明細書及び特許請求の範囲の副本、及び上記取消理由通知に対応する特許権者の意見書副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に異議申立人から意見書は提出されなかった。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
平成29年3月1日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「酸価が30?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。」と記載されているのを、
「酸価が80?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。」に訂正する。
請求項1を引用して記載されている請求項2?7も、請求項1に連動して訂正される。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に対応する事項が記載された明細書の段落[0007]の(1)において、
「(1)酸価が30?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。」と記載されているのを、
「(1)酸価が80?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。」に訂正する。

(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていたポリエステルポリオール(A)の酸価の数値範囲である「30?150当量/10^(6)g」という記載を、明細書の段落[0014]における「本発明に使用されるポリエステルポリオール(A)の酸価は30?150当量/10^(6)gであり、特に好ましくは80?100当量/10^(6)gである。」という記載に基づいて、「80?150当量/10^(6)g」に減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項を追加するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。また、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた酸価の数値範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。さらに、訂正事項1に係る訂正前の請求項1?7のうち請求項2?7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、いずれも訂正事項1による請求項1の訂正に連動して訂正され、訂正後の請求項2?7となるから、訂正事項1は、訂正事項1により訂正される一群の請求項である請求項1?7に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、訂正前の明細書の段落[0007]の(1)に記載されていたポリエステルポリオール(A)の酸価の数値範囲である「30?150当量/10^(6)g」という記載を、「80?150当量/10^(6)g」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。また、訂正事項1と同様、訂正事項2は新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。さらに、訂正事項2は、訂正事項1により訂正される一群の請求項である請求項1?7に係る発明に関係するものであるから、訂正事項1と同様に一群の請求項である請求項1?7に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第4項の規定に適合する。

ウ 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するから、訂正後の請求項1?7について訂正を認める。

3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
酸価が80?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。
[請求項2]
前記ポリエステルポリオール(A)が、炭素数5以上の脂肪族グリコールを含有するものである請求項1に記載の耐候性接着剤組成物。
[請求項3]
前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20?20℃であり、数平均分子量が5000?40000である請求項1?2のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
[請求項4]
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のアダクト体、IPDIのイソシアヌレート体、IPDIのビウレット体からなる群より選択される、少なくとも1つ以上含有することを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
[請求項5]
ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)の配合比が、ポリエステルポリオール(A)100重量部に対してポリイソシアネート化合物(B)1?20重量部であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物。
[請求項6]
ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムの1種または2種以上を、請求項1?5のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物を接着層とし貼り合わせた積層体。
[請求項7]
請求項1?5のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物をポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムに塗布し、ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムとドライラミネートで積層した後、40℃?70℃でゲル分率が40重量%以上となるまでエージングする、積層体の製造方法。」

4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成28年12月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)本件特許の請求項1?3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項1?3に係る特許は取り消すべきものである。
(2)(進歩性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、引用文献1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである。

5.引用文献に記載された事項
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2006-213860号公報(当審において新たに引用された文献)
引用文献2:岩田敬治編, 「ポリウレタン樹脂ハンドブック」, 初版1刷, 日刊工業新聞社, 1992年8月25日, p.90-98, p.108-109(当審において新たに引用された文献)
引用文献3:特開2003-137961号公報(当審において新たに引用された文献)
引用文献4:特開2009-296893号公報(当審において新たに引用された文献)
引用文献5:特開2001-144309号公報(当審において新たに引用された文献)
引用文献6:旭化成アミダス株式会社, 「プラスチックス」編集部共編, 「プラスチック・データブック」, 初版第2刷, 株式会社工業調査会, 2006年1月20日, p.35(当審において新たに引用された文献)

(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]
ジカルボン酸成分、グリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が30モル%以上、グリコール成分としてトリエチレングリコールが20モル%以上共重合されていることを特徴とするポリエステル樹脂。」

(1-2)「[請求項6]
請求項1?5のいずれかに記載のポリエステル樹脂を含む水分散体。
[請求項7]
接着剤として用いられることを特徴とする請求項6に記載の水分散体。
[請求項8]
請求項1?5のいずれかに記載のポリエステル樹脂を含む接着剤。
[請求項9]
請求項6に記載の水分散体にさらに硬化剤を配合することを特徴とする請求項8に記載の接着剤。
[請求項10]
硬化剤がイソシアネート系硬化剤であることを特徴とする請求項9に記載の接着剤。」

(1-3)
「[0020]
本発明のポリエステル樹脂においてジカルボン酸成分として用いられるイソフタル酸は、これをグリコール成分と共重合させて得られたポリエステル樹脂にて接着剤層を形成しても、耐候性を減じることなく機械的強度を向上させる効果を発揮するため、可及的に含有量を増加させることが望ましい。したがって本発明のポリエステル樹脂においては、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸を50モル%以上含有するのが好ましく、60モル%以上含有するのがより好ましく、70モル%以上含有させるのがさらに好ましく、80モル%以上含有させるのが特に好ましく、90モル%以上含有させるのが最も好ましい。」

(1-4)「[0024]
また、本発明のポリエステル樹脂においては、ジカルボン酸成分およびグリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分が40モル%以下であり、かつ、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール成分が40モル%以下であるのが好ましい。直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール成分のうち少なくともいずれかでも40モル%を越えると、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合させてポリエステル樹脂を形成することにより得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度を下げることができ、またかかるポリエステル樹脂を用いて形成した接着剤層において接着直後の接着強度を上げることができる反面、長期にわたる光照射で三次元架橋(ゲル化)が進むため、接着剤層が脆くなってしまい、結果として接着強度低下の原因となる虞がある。本発明のポリエステル樹脂においては、上記直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分およびグリコール成分の共重合量は、ともに、30モル%以下であるのがより好ましく、20モル%以下であるのがさらに好ましく、10モル%以下であるのが特に好ましく、0モル%であるのが最も好ましい。」

(1-5)「[0026]
また、本明細書中でいう「直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール」とは、二つのヒドロキシル基の間に含まれる連続した炭素数が3以上であるものを示し、たとえば、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオールなどが挙げられる。これらのうち、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールは特に長期にわたる光照射で三次元架橋(ゲル化)が進みやすく、塗膜接着強度が低下する傾向にある。」

(1-6)「[0028]
本発明のポリエステル樹脂はまた、分子末端の一部が、塩基で中和されていないコハク酸であることが好ましい。分子末端の一部が塩基で中和されていないコハク酸であると、後述するように本発明のポリエステル樹脂の水分散体に水分散型イソシアネート系硬化剤を配合した際、ポリエステル樹脂の末端の水酸基と、イソシアネート系硬化剤が反応して架橋反応が進むが、末端の塩基で中和されていないコハク酸は、水とイソシアネートとの反応触媒として働き、系中に結果としてウレア結合体を生成し、主に塗布直後の接着強度を向上する効果がある。さらに充分にエージングされ、架橋反応が進むと、ウレタン結合とウレア結合による強力な架橋体が形成される。」

(1-7)「[0037]
本発明のポリエステル樹脂は、その数平均分子量については特に制限されるものではないが、その下限が5000以上であるのが好ましく、7000以上であるのがより好ましい。数平均分子量の下限値が5000未満であると、接着剤として用いたときに接着剤層の凝集力が不足気味となってしまい、接着強度が低下してしまい傾向にある。また、本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量の上限は、40000以下であるのが好ましく、30000以下であるのがより好ましく、25000以下であるのがさらに好ましい。数平均分子量の上限値が40000を越えると、後述する水分散体を製造することが難しくな
ってしまう傾向にある。なお上記数平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィを用いて、ポリスチレンを標準物質として測定することができる。」

(1-8)「[0039]
また、本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度の上限は、基材密着性を出すためには40℃以下であるのが好ましく、30℃以下であるのがより好ましく、20℃以下であるのがさらに好ましく、10℃以下であるのが特に好ましい。一方、本発明のポリエステル樹脂における比重の下限は低ければ低い程がよいが、あまり低すぎるとポリエステル樹脂および水分散体を安定的に製造することが難しくなるため、好ましくは-70℃以上、より好ましくは-50℃以上である。」

(1-9)「[0045]
本発明においては、上述してきたような特徴を有する本発明のポリエステル樹脂を含む接着剤も提供する。本発明のポリエステル樹脂を接着剤として用いることで、ポリオレフィン系樹脂などの非極性基材を含めた各種基材に対する接着力に優れ、特に、屋外曝露での接着力低下、および着色の少ない接着剤を提供することができる。」

(1-10)「[0047]
本発明の水分散体は、硬化剤を加えられることで、接着剤として好適に使用される。本発明は、かかる水分散体と硬化剤とを含む接着剤も提供するものである。本発明の接着剤に用いられる硬化剤としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、フェノール系などの各種の硬化剤を使用することができるが、特に、イソシアネート系硬化剤を使用すると、低温での硬化が可能であり、被着体がオレフィン樹脂系の基材であっても、その接着強度を損なうことなく、高い接着力を得ることができる。」

(1-11)「[0048]
イソシアネート系硬化剤としては、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあげられ、低分子化合物、高分子化合物のいずれを用いてもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタキシリレンジイソシアネンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の三量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。」

(1-12)「[0050]
本発明の接着剤において、高度の耐候性を実現するためには、使用するイソシアネート系硬化剤が脂肪族系であることが好ましい。またポリエステル樹脂水分散体と配合することから、配合後塗工液の使用可能時間を考慮すると、ブロックタイプまたは水分散型(イソシアネート化合物をポリエーテル等で変性したもの)のイソシアネート系硬化剤が好ましい。ブロックタイプのものは、ブロック化剤を除去するために、100℃以上の高温条件下に基材を保つことになり、OPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)などのオレフィン系樹脂で形成された基材には不適切であり、基材による使用制限を受けることから、水分散型が好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体化合物のポリエチレングリコール変性品は、ポリエステル水分散体との相溶性が良好で、使用可能時間も長く、硬化塗膜も高い接着強度を示し、かつ高い耐候性、耐久性を示すため、特に好適である。」

(1-13)「[0051]
本発明の接着剤における水分散体とイソシアネート系硬化剤の配合量は、[NCO]/[OH](モル比)が、0.3?40であるのが好ましく、0.5?30であるのがより好ましく、0.7?20であるのがさらに好ましく、0.9?15であるのが特に好ましい。上記[NCO]/[OH]が0.3未満であると、架橋効果が不十分であり、充分な接着強度が得られない虞がある。また、上記[NCO]/[OH]が40を越えると、未反応のイソシアネート系硬化剤が系中に残り、耐候性、耐水性等の低下が起こるおそれがある。」

(1-14)「[0052]
非ブロック型のイソシアネート系硬化剤を使用した場合、ポリエステル由来のOH基との反応性が高く、水分散体に室温でエージングを施すことで、硬化塗膜を得ることができる。さらに熱をかけると、硬化反応が進行し、高い接着強力を得ることが出来る。ブロック型のイソシアネート系硬化剤を使用する場合、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の加熱を施すのが好適である。」

(1-15)「[0058]
(1)初期接着強度
接着強度を測定サンプルの作製方法を以下に説明する。まず水分散体/硬化剤混液(ポリエステル樹脂:硬化剤=100:30[固形重量比]、硬化剤としてタケネートWD-730(三井武田ケミカル(株)製)を用いた)を、二軸延伸ポリプロピレンシート(OPP)(パイレン(東洋紡績(株)製)、厚み50μm)のコロナ面に5g/m^(2)(乾燥後の重量)塗布した後、60℃×30秒間送風乾燥機で乾燥した。水分が無くなった状態で、塗布面に、上記と同じOPPコロナ面を貼り合せ、60℃、30Paでロールラミ(60cm/分)した。得られたサンプルを、室温6時間保存後、引張試験機(オリエンテック社製)にてT型接着強度を測定した。
[0059]
(2)常態接着強度
上記(1)の方法で得られたサンプルを、48時間40℃でエージングした後、引張試験機にてT型接着強度を測定した。」

(1-16)「[0060]
(3)黄変試験
水分散体を、OPPコロナ面に5g/m^(2)(乾燥重量)塗布した後、120℃×30分間送風乾燥機で乾燥した後、耐候性試験機アイスーパーUVテスターSUV-W151(岩崎電気株式会社製)で、紫外線照射(100mW/cm2、63℃、50%RH、45時間連続照射)後の塗膜の着色度合いを目視で判断した。
・・・
[0065]
(4)耐候性(強度)試験
上記(1)で作成した接着強度測定用サンプルを、(3)の黄変試験と同等の条件で紫外線照射し、照射後の接着強度を測定した。」

(1-17)「[0071]
実施例1
(1)ポリエステル樹脂の製造例
・・・
[0072]
ポリエステル樹脂(A)は、NMR分析の結果、ジカルボン酸成分はイソフタル酸96モル%、5-Naスルホイソフタル酸4モル%、ジオール成分はジエチレングリコール20モル%、トリエチレングリコール80モル%、末端付加酸成分はコハク酸1モル%の組成を有していた。その他の樹脂物性と併せて測定結果を表1に示す。」

(1-18)「[0073]
(2)水分散体製造例
攪拌機、温度計、還流用冷却器を装備した反応缶内にポリエステル樹脂(A)35重量部、イソプロピルアルコール18重量部、水47重量部を加え、約75℃で3時間攪拌することにより、水分散体(A-1)を得た。
[0074]
水分散体(A-1)100重量部に対して、さらに、高分子紫外線吸収剤ULS-1700(一方社油脂工業株式会社製)0.3重量部、エマルション型ヒンダードアミン系光安定剤アデカスタブLX-335(旭電化工業株式会社製)0.04重量部添加し攪拌後、200メッシュナイロンフィルタで濾過することにより、水分散体(A-2)を得た。
[0075]
この水分散体を用いて上記の方法を用いて接着剤としての特性を測定し、その結果を表
1に示す。」

(1-19)「[0076]
[表1]


実施例2?6
表1に示す原料を用いて実施例1と同様な方法でポリエステル樹脂(B)、(C)、(D)、(E)、(F)を合成し、水分散体(B-1)、(B-2)、(C-1)、(C-2)、(D-1)、(D-2)、(E-1)、(E-2)、(F-1)、(F-2)を作製した。評価結果を表1に示す。」

(1-20)「[0078]
[表2]


比較例1?3は、グリコール成分としてトリエチレングリコールが共重合されておらず、本発明の対象から外れる。
[0079]
比較例4は、ジカルボン酸成分としてのイソフタル酸が30モル%未満であり、本発明の対象から外れる。」

(2)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「3.2.6 ポリイソシアネートの変性体,誘導体
PUの最終製品が最良の品質で,もっとも優れた,かつ経済性の高い加工,成形性を得るとともに,安全かつ,応用の単純化を計るためPU工業では,ポリイソシアネートのMWを大きくした変性体,誘導体が多数開発されてきたし,今後もこの傾向は失われることはないと思われる.」(引用文献2のp.90下から13行?下から9行)

(2-2)「(1)ウレタン変性体
単量体のポリイソシアネートNCO/OHモル率を少なくとも2:1,またはそれ以上の比率で変性したもので,遊離の単量体を除去したアダクト体と,その他の変性体に分けられる.-OH剤としては単量体のポリオール,たとえばTMP,グリコールなどを用いるもの,またはポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオールなどにより変性したプレポリマー,擬プレポリマーがある.」(引用文献2のp.91第3?8行)

(2-3)「(2)二量体,三量体,カルボジイミド体
これらの変性体は,単量体のポリイソシアネートが相互に反応して得られるもので,環化反応により誘導されたものが,二量体(ウレチジオン),三量体(イソシアヌレート)であり,CO_(2)の除去によりカルボジイミド化されたポリイソシアネートは,カルボジイイミド変性体である.・・・
2)三量体
・・・
イソシアヌレート環は,熱に対して,きわめて安定であるため,イソシアヌレート変性ポリイソシアネートとして,または他のポリイソシアネートのブレンドで,耐候性,耐光性のよいPUを得ることができるし,三量化により,官能基を増すことができるが,ときには相溶性を減じさせることもある.」(引用文献2のp.91第14行?p.92下から4行)

(2-4)「(3)アロハネート,ビュレット,ウレア変性体
ポリイソシアネートと多官能性ヒドロキシル,あるいは,あるいは,アミン化合物との部分的反応によって,それぞれ相当する構造体と末端NCOの化合物を得ることは,第2章で述べたとおりである.・・・
3)ビュレット変性ポリイソシアネート
ウレアのH原子は,ウレタンのそれに比べてより活性であるため,イソシアネート自身は,ウレタンよりもよりウレアを攻撃しやすい傾向がある.
・・・
ビュレット変性ポリイソシアネートは,直接ポリイソシアネートとジアミンの転化によって得ることができ,ウレアはその中間体である.
ビュレット構造体は,ポリイソシアネートと水との転化反応によっても得ることができる.たとえば,HDIは水とのモル比3:1で,転化反応によりおもにトリイソシアネートビュレットを生成する.この製品は,HDIよりも低蒸気圧であるので,より容易に応用することができる.」(引用文献2のp.94第4行?p.96第8行)

(2-5)「表3.13 イソシアネートの変性または誘導体

」(引用文献2のp.98)

(2-6)「3.3.8ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールはほぼ次のように分類することができる.
・縮合系ポリエステルポリオール
・ラクトン系ポリエステルポリオール(重合型)
・ポリカーボネートジオール
(1)縮合系ポリエステルポリオール
二塩基酸そのほとんどはアジピン酸とグリコール,トリオールとの脱水縮合反応によって製造され,これらの酸,ポリオールの種類,MW,および性状などによって,得られるポリオールの性状,物性は変わる.また,これらポリエステルポリオールの官能基は,通常使用するトリオールによりコントロールすることができる.
ポリエステルポリオール(縮合系)の性状を表3.20にまとめた.」(引用文献2のp.108下から2行?p.109第10行)

(2-7)「表3.20 ポリエステルポリオールの性状と商品名



(2-8)「 これら縮合ポリエステルポリオールの構成原料である低MWグリコールで,ジエチレングリコールを用いたものは,液状で延び弾性が得やすいため,おもにフォーム用ポリオールに用いられ,1,6-ヘキサングリコール,ネオペンチルグリコールは,耐加水分解性が向上するため,おもにエラストマーなどに用いられる.
高MWのポリエステル,MW 10000?50000のようなものは,溶剤型接着剤などに用いられている.」(引用文献2のp.109下から8行?下から2行)

(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「[0079]2)接着性能
(1)水性ポリウレタン接着剤の調製
各実施例および各比較例において調製されたポリウレタン樹脂水分散液であって、常態のものと50℃で7日間貯蔵したものとのそれぞれについて、ポリウレタン樹脂水分散液100重量部に対して、ポリオキシエチレン変性ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(商品名:タケネートWD-730、三井武田ケミカル社製)5重量部を配合することにより、水性ポリウレタン接着剤をそれぞれ調製した。」

(4)引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「[0011]
基体樹脂フィルム
本発明に使用する基体樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、セロハンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムの単体あるいは複合体が挙げられる。中でも、農業用フィルムに用いられる公知のポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリオレフィン系樹脂に添加剤を混合したポリオレフィン系樹脂フィルムを好適に用いることができる。」

(4-2)「[0087]
また、基体樹脂フィルムと被膜組成物に由来する被膜との接着性が充分でない場合には、基体フィルムの表面を予めアルコールまたは水で洗浄したり、プラズマ放電処理、あるいはコロナ放電処理を施しておいてもよい。」

(4-3)「[0100]
(発明の効果)
上記実施例で示したように、本発明の構成を採用することにより、基体樹脂フィルムとフッ素系樹脂被膜の接着性が優れ、耐久性に優れた農業用フィルムが提供される。また、本発明の農業用フィルムは、表面にフッ素系樹脂皮膜が形成されていることから、防塵性も非常に優れている。」

(5)引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「[0010]・・・本発明においては、上記の樹脂のフィルムないしシ-トの中でも、特に、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、または、ポリ(メタ)アクリル系樹脂のフィルムないしシ-トを使用することが好ましいものである。而して、本発明において、上記のようなフッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、または、ポリ(メタ)アクリル系樹脂のフィルムないしシ-トは、機械的特性、化学的特性、物理的特性等に優れ、具体的には、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐防湿性、耐汚染性、耐薬品性、その他等の諸堅牢性に優れて、太陽電池を構成する裏面保護シ-トとして有用性を有し、耐久性、保護機能性等に優れ、また、そのフレキシブル性や機械的特性、化学的特性等から軽量で、かつ、加工性等に優れ、そのハンドリングし易い等の利点を有するものである。
[0011]・・・なお、本発明においては、上記のフッ素系樹脂シ-トの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)、または、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとのコポリマ-(ETFE)からなるフッ素系樹脂シ-トが好ましいものである。」

(5-2)「[0038]次に、本発明において、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを使用して太陽電池モジュ-ルを製造する方法について説明すると、かかる製造法としては、公知の方法、例えば、上記の太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-ト、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、本発明にかかる太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その印刷層の面を対向させて、順次に積層し、更に、必要ならば、各層間に、その他の素材を任意に積層し、次いで、これらを、真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ-ション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュ-ルを製造することができる。上記において、必要ならば、各層間の接着性等を高めるために、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、その他等の樹脂をビヒクルの主成分とする加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤、その他等を使用することができる。
[0039]また、上記の積層において、各積層対向面には、密接着性を向上させるために、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロ-放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理を任意に施すことができる。更に、上記の積層においては、各積層対向面に、予め、プライマ-コ-ト剤層、アンダ-コ-ト剤層、接着剤層、あるいは、アンカ-コ-ト剤層等を任意に形成して、表面前処理を行うこともできる。」

(5-3)「[0055]
[発明の効果]以上の説明で明らかなよう、本発明は、耐候性基材の片面に、酸化珪素、あるいは、酸化アルミニウム等のガラス質からなる透明な、かつ、水蒸気バリア性、酸素バリア性等に優れた無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、該無機酸化物の蒸着膜の上に、インキ用ビヒクルを主成分とし、これに染料、顔料等の着色剤、その他等を添加し、十分に混練してなるインキ組成物による印刷層を設けて太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを製造し、而して、該太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを使用し、例えば、ガラス板等からなる通常の太陽電池モジュ-ル用表面保護シ-ト、充填剤層、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層、および、上記の太陽電池モジュ-ル用裏面保護シ-トを、その印刷層の面を対向させて順次に積層し、次いで、これらを一体的に真空吸引して加熱圧着するラミネ-ション法等を利用して太陽電池モジュ-ルを製造して、強度に優れ、更に、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防汚性、その他等の諸特性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、また、光反射性、光拡散性、意匠性等についても著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、極めて耐久性に富み、保護能力性に優れ、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュ-ルを安定的に製造し得ることができるというものである。」

(6)引用文献6の記載事項
引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「1.2.3 表面張力
(19)プラスチックの表面張力

」(引用文献6のp.35)

6.引用文献1に記載された発明
引用文献1には、ジカルボン酸成分、グリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が30モル%以上、グリコール成分としてトリエチレングリコールが20モル%以上共重合されていることを特徴とするポリエステル樹脂を含む水分散体に、イソシネート系硬化剤を配合してなる接着剤が記載されており(摘記1-1、1-2)、ポリエステル樹脂の水分散体に水分散型イソシアネート系硬化剤を配合した際、ポリエステル樹脂の末端の水酸基と、イソシアネート系硬化剤が反応して架橋反応が進むこと(摘記1-6)、ポリオレフィン系樹脂などの非極性基材を含めた各種基材に対する接着力に優れ、特に、屋外曝露での接着力低下、および着色の少ない接着剤を提供することができること(摘記1-9)が記載されている。また、実施例1?6として、ポリエステル樹脂の製造、その水分散体の製造及びその水分散体を用いて得られた接着剤の特性測定を行ったことが記載されており(摘記1-17?1-19)、表1には各実施例のポリエステルの樹脂組成及び樹脂物性、並びに各接着剤の評価結果が記載されており(摘記1-19)、そのうち、実施例2のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分がイソフタル酸96モル%及び5-Naスルホイソフタル酸4モル%からなり、グリコール成分がトリエチレングリコール70モル%、ジエチレングリコールが10モル%及びヘキサンジオールが20モル%からなり、末端酸成分がコハク酸1モル%からなる樹脂組成を有すること、数平均分子量が10000、酸価が42eq/10^(6)g、ガラス転移温度が-5℃という樹脂物性を備えたものであることが記載されている。そして、上記各実施例の初期接着強度の測定においては、まず水分散体/硬化剤混液(ポリエステル樹脂:硬化剤=100:30[固形重量比]、硬化剤としてタケネートWD-730(三井武田ケミカル(株)製)を用いた)を、二軸延伸ポリプロピレンシート(OPP)(パイレン(東洋紡績(株)製)、厚み50μm)のコロナ面に5g/m^(2)(乾燥後の重量)塗布した後、60℃×30秒間送風乾燥機で乾燥した。水分が無くなった状態で、塗布面に、上記と同じOPPコロナ面を貼り合せ、60℃、30Paでロールラミ(60cm/分)し、得られたサンプルを、室温6時間保存後、引張試験機(オリエンテック社製)にてT型接着強度を測定したこと(摘記1-15)が記載されており、加えて、耐候性(強度)試験においては、上記初期接着強度の測定で作製された接着強度測定用サンプルを、黄変試験と同等の条件である、耐候性試験機アイスーパーUVテスターSUV-W151(岩崎電気株式会社製)で、紫外線照射(100mW/cm^(2)、63℃、50%RH、45時間連続照射)し、照射後の接着強度を測定したこと(摘記1-16)が記載されており、表1には、実施例2のポリエステル樹脂の水分散体(B-1)を用いた場合、及び水分散体(B-1)に対して、さらに、高分子紫外線吸収剤及びエマルション型ヒンダードアミン系光安定剤を添加した水分散体(B-2)を用いた場合に、それぞれ800cN/inch(約481g/15mm)、950cN/inch(約572g/15mm)の接着強度が得られたことが記載されている(摘記1-19)。
ここで、上記ポリエステル樹脂は、末端の水酸基とイソシアネート系硬化剤が反応して「架橋反応」することが記載されているから(摘記1-6)、一分子中に複数の水酸基を有する「ポリエステルポリオール」であるといえる。なお、上記ポリエステル樹脂は、グリコール成分としてトリエチレングリコール及びジエチレングリコールというエーテル結合を有するグリコールを含んでいるが、例えば引用文献2には、ポリウレタンの原材料として用いられる「ポリエステルポリオール」の一種として、エーテル結合を有するグリコールであるジエチレングリコールをグリコール成分とする「ジエチレンアジペート」が記載されているから(摘記2-7、2-8)、引用文献2の記載を参酌すると、引用文献1に記載された上記ポリエステル樹脂も「ポリエステルポリオール」の範疇に含まれるものといえる。
また、上記接着剤は、屋外曝露での接着力低下、および着色の少ない接着剤を提供することができるものであり(摘記1-9)、実施例において耐候性も確認されていることから(摘記1-16、1-19)、「耐候性接着剤組成物」であるといえる。

そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「酸価が42eq/10^(6)g、ガラス転移温度が-5℃、数平均分子量が10000であるポリエステルポリオールの水分散体に、イソシアネート系硬化剤としてタケネートWD-730(三井武田ケミカル(株)製)を配合してなる接着剤であって、上記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分がイソフタル酸96モル%及び5-Naスルホイソフタル酸4モル%からなり、グリコール成分がトリエチレングリコール70モル%、ジエチレングリコールが10モル%及びヘキサンジオールが20モル%からなり、末端酸成分がコハク酸1モル%からなる樹脂組成を有するものである、耐候性接着剤組成物。」

7.取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)(新規性)特許法第29条第1項第3号について
本件発明1と引用発明とを対比すると、両者は、
「ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート化合物を含有し、前記ポリエステルポリオールが、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸を96モル%含有するものである耐候性接着剤組成物。」である点で一致し、
相違点1:接着剤の原料であるポリエステルポリオールの酸価が、前者においては「80?150当量/10^(6)g」であるのに対し、後者においては「42当量/10^(6)g」である点
相違点2:ポリイソシアネート化合物が、前者においては「脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物」と特定されているのに対し、後者においては「タケネートWD-730(三井武田ケミカル(株)製)」と特定されている点
で相違する。

そうすると、本件発明1と引用発明とは、上記相違点1において相違することが明らかであるから、相違点2については検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1に記載された発明とはいえない。本件発明1を直接又は間接的に引用して記載されている請求項2及び3についても同様である。
よって、本件発明1?3は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(2)(進歩性)特許法第29条第2項について
上記7.(1)に記載した相違点1について検討する。
引用文献1の[0076]表1(摘記1-19)には、引用発明として認定した実施例2の接着剤組成物以外に、実施例1及び3?6の接着剤組成物が記載されているが、その原料として用いられたポリエステルポリオールの酸価は、5?75当量/10^(6)gであり、いずれも本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価(80?150当量/10^(6)g)の条件を満たしていない。また、引用文献1の[0078]表2(摘記1-20)には、比較例1?5の接着剤組成物が記載されており、比較例4の原料として用いられたポリエステルポリオールの酸価は82当量/10^(6)gであるが、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対するイソフタル酸の割合を30モル%未満とした比較例であることが記載されているから(摘記1-20)、イソフタル酸の割合が96モル%である引用発明と組み合わせる動機付けがなく、また、比較例4の黄変試験の評価結果及びUV照射後の接着強度が引用発明(実施例2)よりも低いことからみても、引用発明におけるポリエステルポリオールの酸価を80以上に変更する動機付けとなるものではない。さらに、引用文献1には、ポリエステルポリオールの酸価を調整することによる作用効果や、好ましい酸価の範囲について特段記載されていない。加えて、引用文献2?6のいずれにも、ポリエステルポリオールの酸価については記載も示唆もされていない。
そして、本件明細書[0014]には、ポリエステルポリオール(A)の酸価について、「酸価が低すぎるとエージング時間短縮に効果がなく」と記載され、[0055]には、「従来技術においては、50?60℃程度の比較的低い温度で5?7日程度の長時間のエージング処理を行うことが一般的に行われている。エージング温度を現状と同程度あるいはさらに低温となし、なおかつエージング時間を短縮できれば、省エネルギー、作業性・生産性の向上およびコストダウンの観点から好ましいものである。」と記載されており、[0053]表4の比較例1(酸価10当量/10^(6)g)の硬化度が×(硬化度40%)未満であることや、同実施例1(酸価40当量/10^(6)g)の硬化度が○(硬化度40%以上80%未満)と、他の実施例よりも低いことからみて、本件発明1は上記相違点1の点により好ましい効果を奏するものである。
よって、相違点2については検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2?7についても、本件発明1と同じ理由により、引用文献1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

8.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人加藤加津子は、特許異議申立書において次のように主張している。
(イ)(新規性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである(周知引例:甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第5号証、甲第6号証)
(ロ)(進歩性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第1号証の2、甲第2号証、甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである(周知引例:甲第2号証の1、甲第5号証、甲第6号証)。
(ハ)(進歩性)本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである(周知引例:甲第2号証の1、甲第5号証、甲第6号証)。
(ニ)(実施可能要件)本件発明7は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載された発明ではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(ホ)(明確性)本件発明7は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載された発明ではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)甲第1号証?甲第6号証に記載された事項
特許異議申立人加藤加津子は証拠方法として以下の甲第1号証?甲第6号証を提出している。
甲第1号証 :特開2005-132902号公報
甲第1号証の1:東洋モートン技術情報「高性能アルミレトルト用接着剤TOMOFLEX^(TM) TM-D830HV」、2005年2月4日作製、1頁
甲第1号証の2:特開2000-154363号公報
甲第2号証 :特開平7-97557号公報
甲第2号証の1:国際公開第2011/016539号
甲第3号証 :特開平5-70758号公報
甲第4号証 :特開2002-173588号公報
甲第5号証 :特開2008-287207号公報
甲第6号証 :特開2008-176194号公報

(ア)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には以下の事項が記載されている。
(甲1-1)「[請求項1]
ポリオールと無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物とを、無水トリメリット酸10?70質量%、トリメリット酸エステル無水物90?30質量%の割合で反応させてなる部分酸変性ポリオールならびにポリイソシアネートを含有する接着剤。」

(甲1-2)「[0026]
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
(製造例1?5)
イソフタル酸13.28kg、エチレングリコール2.48kg、ネオペンチルグリコール4.16kg、1,6-ヘキサンジオール4.72kgを仕込み、200?230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸2.92kgを加え、さらに6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1.21×10^(2)?1×10^(3)Pa、230?250℃で5時間エステル化反応を行い、数平均分子量5,000、水酸基価23mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。さらにこのポリエステルポリオールの全量に対してイソホロンジイソシアネート0.75kgを徐々に添加し(NCO/OHのモル比が0.7)、150℃で約2時間反応を行い、数平均分子量13,000、水酸基価7mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリウレタンポリオールを得た。
このポリエステルポリウレタンポリオール484gに無水トリメリット酸とエチレングリコールアンヒドロトリメリテートを表1に示す所定量添加し、180℃で約2時間反応させ部分酸変性ポリオールを得た。これを酢酸エチルにて不揮発分50質量%に調整し部分酸変性ポリオール溶液AからEを得た。この部分酸変性ポリオール溶液について、その粘度を測定すると共に調製直後と25℃で3ケ月保存後の溶液の外観を肉眼で観察した。
[表1]


[0027]
(実施例1?4、比較例1?2)
部分酸変性ポリオール溶液A?E、下記に示すポリイソシアネート、下記に示すシランカップリング剤および酢酸エチルを表2に示す割合(質量比)で配合し、不揮発分25質量%の接着剤溶液を得た。これらの接着剤溶液を各々使用し、下記の方法で積層体を作成した後、得られた各積層体について、ラミネート強度試験、耐熱水性試験、耐酸性試験を下記の通り行った。それらの結果を表3に示す。
ポリイソシアネート:CAT-RT86(商品名、東洋モートン株式会社製)
シランカップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製)」

(イ)甲第1号証の1に記載された事項
甲第1号証の1には以下の事項が記載されている。
(甲1の1-1)「高性能アルミレトルト用接着剤
TOMOFLEX^(TM) TM-D830HV
〔特長〕
TM-D830HVは、各種プラスチック及びアルミ箔のドライラミネート用途に開発された2液硬化型接着剤です。・・・

〔性状〕
・・・ 硬化剤
・・・(脂肪族系仕様)
品 名:・・・CAT-RT86
組 成:・・・ポリイソシアネート
外 観:・・・淡黄色透明
不 揮 発 分:・・・75±2%
粘度(25℃):・・・約1200mPa・s
配合比(重量):・・・11部」(甲第1号証の1のPage1/1)

(ウ)甲第1号証の2に記載された事項
甲第1号証の2には以下の事項が記載されている。
(甲1の2-1)「[請求項1] ガラス転移温度が40℃以上の有機ポリオール5?50重量%及びガラス転移温度が40℃未満の有機ポリオール95?50重量%からなる混合物、シランカップリング剤並びに有機ポリイソシアネートを含有することからなるウレタン系接着剤組成物。」

(甲1の2-2)「[0010]
[発明の実施の形態]本発明に用いられる有機ポリオールとしては、官能基数が約2?6、好ましくは約2?4で、数平均分子量が約500?100,000、好ましくは1,000?30,000の化合物が挙げられる。更に詳しくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシルアルカン、ポリウレタンポリオール、ひまし油又はそれらの混合物が挙げられる。このようなポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
[0011]ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルアミドポリオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。アクリルポリオールの例としては、1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
[0012]ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAの中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。ポリヒドロキシアルカンとしては、ブタジエン、又はブタジエンとアクリルアミド等と共重合して得られる液状ゴムが挙げられる。ポリウレタンポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200?20,000のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとをNCO/OHが1未満、好ましくは0.9以下で反応させて得られる。」

(甲1の2-3)「[0029]
[実施例]次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%は総て重量%を意味する。
(合成例1)イソフタル酸166.0g、テレフタル酸166.0g、エチレングリコール89.3g、ネオペンチルグリコール99.8gを仕込み、200?220℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.12gを添加し徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で6時間エステル交換反応を行い、酸価1.5、数平均分子量10,000、Tg60℃のポリエステルポリオールを得た。更にこのポスリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分45%に調整し有機ポリオール溶液Aを得た。
[0030](合成例2)イソフタル酸99.6g、テレフタル酸99.6g、エチレングリコール74.4g、ネオペンチルグリコール124.8gを仕込み、200?220℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、セバチン酸161.6gを加え、更に6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で6時間エステル交換反応を行い、酸価1.0、数平均分子量9,800、Tg45℃のポリエステルポリオールを得た。更にこのポスリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分45%に調整し有機ポリオール溶液Bを得た。
[0031](合成例3)イソフタル酸116.5g、テレフタル酸116.5g、エチレングリコール148.8gを仕込み、200?220℃で8時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アゼライン酸112.8gを加え、更に4時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で3時間エステル交換反応を行い、酸価1.3、数平均分子量11,000、Tg0℃のポリエステルポリオールを得た。更にこのポスリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分45%に調整し有機ポリオール溶液Cを得た。
[0032](合成例4)イソフタル酸265.6g、エチレングリコール44.6g、ネオペンチルグリコール74.9g、1,6-ヘキサンジオール113.3gを仕込み、200?230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸58.4g加え、更に6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で3時間エステル交換反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。更にこのポリエステルポリオールの全量に対して無水ピロメリット酸7.7gを添加し、180℃で約2時間反応させ、数平均分子量9,000、Tg0℃の有機ポリオールを得た。液体クロマトグラフを用いて反応系中に未反応の無水ピロメリット酸が残存しないことを確認した後、酢酸エチルにて不揮発分60%に調整し有機ポリオール溶液Dを得た。この有機ポリオールは末端水酸基の約90%が無水ピロメリット酸と反応したものである。
[0033](合成例5)イソフタル酸166.0g、エチレングリコール44.6g、ネオペンチルグリコール74.9g、1,6-ヘキサンジオール113.3gを仕込み、200?230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸146.0gを加え、更に6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で3時間エステル交換反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。更にこのポリエステルポリオールの全量に対して無水トリメリット酸12.6gを添加し、180℃で約2時間反応させ、数平均分子量11,000、Tg-10℃の有機ポリオールを得た。液体クロマトグラフを用いて反応系中に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、酢酸エチルにて不揮発分60%に調整し有機ポリオール溶液Eを得た。この有機ポリオールは末端水酸基の約90%が無水トリメリット酸と反応したものである。
[0034](合成例6)合成例4で得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分60%に調整した有機ポリオール溶液Fを得た。
[0035](合成例7)合成例5で得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分60%に調整した有機ポリオール溶液Gを得た。
[0036](合成例8)イソフタル酸265.6g、エチレングリコール44.6g、ネオペンチルグリコール74.9g、1,6-ヘキサンジオール113.3gを仕込み、200?230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸58.4g加え、更に6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1?2mmHg、230?250℃で6時間かけ余剰のグリコールを系外へ除去しポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオール400gに対してイソホロンジイソシアネート17.8gを150℃で2時間反応させポリウレタンポリオールを得た。次いで、得られたポリウレタンポリオールに無水トリメリット酸12.6gを添加し、180℃で約2時間反応させ、数平均分子量8,000、Tg0℃の有機ポリオールを得た。液体クロマトグラフを用いて反応系中に未反応の無水トリメリット酸が存在しないことを確認した後、酢酸エチルにて不揮発分60%に調整し有機ポリオール溶液Hを得た。この有機ポリオールは末端水酸基の約90%が無水トリメリット酸と反応したものである。
[0037](実施例1?7、比較例1?10)有機ポリオール溶液A?H並びに下記に示す有機ポリイソシアネート、更に下記に示すシランカップリング剤又はシランカップリング剤とリンの酸素酸を表1及び表2に示す割合(重量比)で配合した後、不揮発分が25%となるよう酢酸エチルを加えて、接着剤組成物を得た。これらの接着剤組成物を各々使用し、下記の方法で複合フィルムを作成した後、得られた各フィルムについて、剥離強度試験、耐熱水性試験及び耐酸性試験を下記の通り行い、それら結果を表3に示した。なお、表1及び表2中、有機ポリオール溶液の欄の( )内の数値は、有機ポリオールの実質重量部を示す。
有機ポリイソシアネートA:CAT-RT86(商品名、東洋モートン(株)製)
有機ポリイソシアネートB:CAT-RT1(商品名、東洋モートン(株)製)
シランカップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製)
リンの酸素酸:85%オルトリン酸」

(エ)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には以下の事項が記載されている。
(甲2-1)「[請求項1] ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール及びポリウレタンポリオールより成る群から選ばれた有機ポリマーポリオール化合物と、該有機ポリマーポリオール化合物の片末端にカルボン酸無水物を付加してなる片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを配合して成る事を特徴とする無溶剤型複合ラミネート用接着剤組成物。
・・・
[請求項3] 請求項1または請求項2に記載の無溶剤型複合ラミネート用接着剤組成物を加温して屈曲性基材に塗布して接着剤層を形成させた後、その接着剤塗布面と他の屈曲性基材とを貼り合わせることを特徴とする貼合方法。」

(甲2-2)「[0002]詳しくは、各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム及び金属箔をラミネートして複合フィルムを製造する際に、貼合した後、実用接着物性に達するまでの時間が著しく短く、更に優れた接着性、耐熱水性および耐酸性を発現する無溶剤型複合ラミネート用接着剤組成物およびそれを用いた貼合方法に関する。」

(甲2-3)「[0012]ポリウレタンポリオールとしては、例えば上記ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールなどと後述の有機ポリイソシアネート又はその単量体とをNCO/OHが1未満、好ましくは0.8以下で反応して得られる。」

(甲2-4)「[0017]有機ポリマーポリオール化合物及び片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオールの混合物の酸価は、2?10(mg-KOH/gー樹脂固形分)が望ましい。酸価2以下では十分な硬化速度が得られず、酸価10以上ではポリイソシアネートと所定の配合をした後のポットライフが短く作業性に劣る問題がある。」

(甲2-5)「[0032]比較例1
エチレングリコール 276部、ネオペンチルグリコール 456部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃に加熱して溶解した。更に攪拌しながらアジピン酸 245部、イソフタル酸 555部、セバシン酸 338部を反応容器に仕込み150℃?240℃に加熱してエステル化反応を行った。
[0033]酸価が5以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200?240℃で1時間反応させ、酸価0.8、水酸基価125、分子量約1000の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂を得た。以下、この樹脂をポリオール樹脂Iと言う。更に、ポリオール樹脂I 100部に対して、ポリイソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、固形分100%)50部を約80℃で加熱混合して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物について物性試験を実施した結果を表1に示す。」

(甲2-6)「[0035]実施例1
ポリオール樹脂I 500部、無水トリメリット酸 1.5部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら200℃に加熱して2時間反応させ、有機ポリマーポリオール化合物中に片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオール化合物を1重量%含有する酸価1.3の混合物IIIを得た。更に、混合物III 100部に対して、ポリイソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、固形分100%)50部を約80℃で加熱混合して本発明の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物について物性試験を実施した結果を表1に示す。」

(甲2-7)「[0048]
[発明の効果]本発明によれば、短い硬化時間で耐熱性、耐酸性に優れた包装材料を製造することができる。」

(オ)甲第2号証の1に記載された事項
甲第2号証の1には以下の事項が記載されている。
(甲2の1-1)「[0061]イソシアネート
・・・
コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、1分子中にイソシアネート基数:3個、日本ポリウレタン社製)」

(カ)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には以下の事項が記載されている。
(甲3-1)「[請求項1] ジカルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸を主体とし、グリコール成分が側鎖アルキル基を有する炭素数5?11の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6?8の脂環族グリコールを主体とし、還元粘度0.30?0.70、酸価70?400当量/10^(6)gおよび比重が1.25以下であるポリエステル系樹脂70?99部、前記ポリエステル系樹脂と反応硬化し得る化合物30?1部とから成ることを特徴とするポリエステル系接着剤組成物。」

(甲3-2)「[0001]
[産業上の利用分野]本発明は金属板とプラスチックフイルムまたはシートとの接着に好適な接着剤に関する。とりわけ、鋼板と塩化ビニールシートとの接着の際に優れた接着性、耐水性、耐熱性を発揮する接着剤組成物に関する。」

(甲3-3)「[0005]本発明のポリエステル系樹脂のジカルボン酸成分は芳香族ジカルボン酸を主体とするものであり全酸成分の85モル%以上、望ましくは95モル%以上が、芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等があげられ、このうち、イソフタル酸を60モル%以上含有することが好ましい。また15モル%未満の範囲で使用できるカルボン酸成分としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸あるいは、ε-カプロラクトン等のようなヒドロキシカルボン酸、あるいはそれらの環状エステル化合物等を挙げることができる。更に全酸成分中に7モル%以下の3官能以上のポリカルボン酸を使用することが好ましい。3官能以上のポリカルボン酸としては、無水トリメトリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸等を挙げることができる。」

(甲3-4)「[0010]本発明のポリエステル系樹脂は、還元粘度が0.3?0.7、望ましくは0.4?0.6、酸価が70?460当量/10^(6)g、望ましくは90?300当量/10^(6)g、比重が1.25以下、望ましくは1.18?1.23の範囲にあり、望ましくはガラス転移温度が50?90℃、より望ましくは60?80℃である。ポリエステル系樹脂の還元粘度が0.3未満では、初期接着力が乏しく、逆に0.7を越えても低温接着性が低下し好ましくない。ポリエステル系樹脂の酸価が70未満の場合、耐熱水テスト後の接着力が低下し、逆に400を越える場合は、初期接着力、耐熱水テスト後の接着力とも低下する。ポリエステル系樹脂の比重は1.25以下であり、1.25を越えると、塩化ビニール樹脂に対する接着性、とりわけ耐熱水テスト後の接着力が低下する。またポリエステル系樹脂のガラス転移温度は50?90℃の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度が50℃未満では、耐熱水テスト後の接着力が低下し、90℃を越えると高温接着でないと接着することができなくなり、目的とする低温での接着が困難となる。」

(甲3-5)「[0016]
[実施例]本発明は、金属とプラスチックシート、とりわけ鋼板と塩化ビニルシートとを、従来より低温で接着し、かつ、優れた接着性能を有するポリエステル系接着剤組成物を提供するものであり、以下実施例で具体的に説明をする。
ポリエステル樹脂の製造例1
撹拌器、温度計、溜出用コンデンサーを具備した反応容器中にジメチルテレフタレート262部、ジメチルイソフタレート679部、1,4-シクロヘキサンジメタノール317部、ネオペンチルグリコール811部、酢酸亜鉛0.44部および三酸化アンチモン0.43部を加え、140?210℃で3時間エステル交換反応を行ない、次いで無水トリメリット酸14.4部を加え210?260℃で1時間昇温しながらエステル化反応を行った。次いで260℃で30分かけて、5mmHgまで減圧し、更に45分かけて、0.3mmHg以下の高真空下で重縮合反応を行った。引き続き、窒素ガスを用いて常圧にもどし、反応系内温度を210℃まで下げた後、更に無水トリメリット酸14.4部を加え、15分間反応させることによりポリエステル樹脂(A-1)を得た。ポリエステル樹脂(A-1)は、還元粘度0.51、酸価120当量/10^(6)g、比重1.22、ガラス転移温度75℃を有し、エタノール分解後ガスクロマトグラフによる樹脂組成の分析結果では、テレフタル酸27モル%、イソフタル酸70モル%、トリメリット酸3モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール38モル%、ネオペンチルグリコール62モル%であった。
[0017]ポリエステル樹脂の製造例2?7
製造例1と同様の方法でポリエステル樹脂(A-2)?(A-6)を得た。各樹脂の組成、特性値を表1に示した。」

(甲3-6)「[0018]
[表1]



(甲3-7)「[0019]実施例1
ポリエステル樹脂(A-1)30部をメチルエチルケトン35部、トルエン35部に溶解した後、硬化剤として、多官能性ポリイソシアネート化合物であるコロネートMR(日本ポリウレタン工業製)を2部加え、よく混合した後、0.5mm厚の電気亜鉛メッキ鋼板にクロメート処理をした。鋼鈑上に膜厚が5μmとなるようバーコーターを用いて塗布した。180℃で1分間、熱風乾燥機で溶剤を除いた後、直ちに200μ厚の塩化ビニールシートを乗せ、ロールプレス機にて接着を行ない、更に180℃で30秒間加熱した。得られた塩化ビニル/鋼鈑積層体は、そのまま室温下で空冷され、1日後下記測定項目について評価を実施した。
[0020](イ) 初期はくり接着力
塩化ビニルシート側を15mm巾となるようカッターナイフで切り、その一部をはくりした後、インストロン型引張り試験機にて、はくり速度50mm/分ではくり接着力を測定したところ、6.4Kg/15mmであった。
(ロ) 初期密着力
塩化ビニルシート側を巾5mmで2本線をそれぞれ直角に交叉するようにカッターナイフで切り込みを入れ、5mm角の部分が中央になるようにして、エリクセン試験機で鋼鈑側より8mm押出した。押出された部分の塩化ビニールシートをピンセットにて、強制的にはくりしたが、ほとんどはくり観察されなかった。はくりの程度を5段階に分け評価したところ4.5であった(全くはくりのないものは5、押出し部が全てはくりしたものは1である。)。
(ハ) 耐熱性
上記(ロ)と同一サンプルを作成し、100℃雰囲気で1時間放置した後の加工部のはくりの状態を前記の5段階評価で実施したところ4の評価であった。
(ニ) 耐熱水性
上記(ロ)と同一サンプルを作成し、98℃沸騰水中に1時間浸漬した後加工部のはくり状態を前記の5段階評価で実施したところ3.5の評価であった。
[0021]実施例2?4
実施例1におけるポリエステル樹脂(A-1)のかわりに(A-2)?(A-3)を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表2に示した。」

(甲3-8)「[0023]
[表2]



(キ)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には以下の事項が記載されている。
(甲4-1)「[請求項1] 1種類以上のジカルボン酸成分と1種類以上のグリコール成分とからなり、ガラス転移点が-30?40℃、カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)g以下である共重合ポリエステル樹脂に、カルボキシル末端基と反応し得る化合物が、下記式を満たす量を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
0.5≦[X]/[COOH]≦5
(式中、[X]はカルボキシル末端基と反応し得る化合物の共重合ポリエステル樹脂中の総含有量(geq/10^(6)g)、[COOH]は共重合ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量(geq/10^(6)g)を表す。)」

(甲4-2)「[0013]また、本発明のポリエステル樹脂組成物で用いられる共重合ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)g以下である必要がある。好ましくは30geq/10^(6)g以下である。カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)gを超える場合には、経時での加水分解による分子量低下が大きく、下記の化合物を含有させても、耐水性、耐湿性の改良効果が十分でなく、接着剤としても接着強力が低下しやすく好ましくない。」

(ク)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には以下の事項が記載されている。
(甲5-1)「[請求項1]
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
接着剤層は、少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されており、
接着剤層のTgが、60℃以上であり、かつ、
接着剤層の厚みが、0.01?7μmであることを特徴とする偏光板。
・・・
[請求項3]
接着剤層は、ゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板。
[請求項4]
硬化性成分が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の偏光板。」

(甲5-2)「[0149]
<ゲル分率>
アプリケーターを用いて、離型フィルムに、各例で用いた接着剤を塗工し、その上に、別の離型フィルムを貼り合わせた後、各例と同様の条件で電子線を照射して、接着剤を硬化させて接着剤層を形成した。得られた接着剤層の両側から離型フィルムを剥がし、接着剤層から約200mgを取り出し、これを秤量して重量(W1)を求めた。次いでこれを微孔性テトラフルオロエチレン膜(膜重量:W2)に包んで紐で縛り、約50mlのトルエン中に4日間浸漬したのち、可溶分を抽出した。これを、110℃で、1時間オーブンで乾燥し、全体の重量(W3)を測定した。これらの測定値から、下記の式にしたがって、粘着剤層のゲル分率(重量%)を求めた。
ゲル分率(重量%)=((W3-W2)/W1)×100」

(ケ)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には以下の事項が記載されている。
(甲6-1)「[請求項1]
ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学部材において、
前記光学部材は第1の光学シートと第2の光学シートとが接着層で接合されて構成され、
前記第1の光学シートの厚さ方向の一方の面に複数の開口が形成され、
前記第2の光学シートは、前記複数の開口が形成された前記第2の光学シートの面に前記接着層を介して接合され、
前記接着層を構成する接着剤は、100℃で貯蔵弾性率G'1.0E+04Pa以上である、
ことを特徴とする光学部材。
・・・
[請求項3]
前記接着層を構成する接着剤は、Tg-10℃を下回らず、かつ、ゲル分率36%を下回らず、かつ、分子量分布Mw/Mn11以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光学部材。」

(2)異議申立理由(イ)(新規性)について
異議申立人加藤加津子は、本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である旨を主張しており、補助的に甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第5号証及び甲第6号証を証拠として提出している。
(a)甲第1号証について
甲第1号証には、ポリオールと無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物とを、無水トリメリット酸10?70質量%、トリメリット酸エステル無水物90?30質量%の割合で反応させてなる部分酸変性ポリオールならびにポリイソシアネートを含有する接着剤が記載されており(摘記甲1-1)、その実施例では、イソフタル酸を共重合成分として80モル%含むポリエステルポリオールに、イソホロンジイシソシアネートを反応させて得たポリエステルポリウレタンポリオールに、さらに無水トリメリット酸とエチレングリコールアンヒドロトリメリテートを反応させて部分酸変性ポリオールを得たこと、及び当該部分酸変性ポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50質量%に調整し、部分酸変性ポリオール溶液A?Eを製造し、これを接着剤の配合成分として用いたことが記載されているが(摘記甲1-2)、表1(摘記甲1-2)によると上記部分酸変ポリオールの酸価はA:13mg-KOH/g(232当量/10^(6)g)、B:9mg-KOH/g(160当量/10^(6)g)、C:4mg-KOH/g(71当量/10^(6)g)、D:2mg-KOH/g(36当量/10^(6)g)、E:15mg-KOH/g(267当量/10^(6)g)であるから、いずれも訂正後の本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価(80?150当量/10^(6)g)の条件を満たしていない。また、甲第1号証には、ポリエステルポリオール成分の酸価について上記以外特段の記載はないから、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、少なくともポリエステルポリオールの酸価の点で相違することが明らかである。

(b)甲第1号証の1について
甲第1号証の1には、甲第1号証の接着剤溶液の実施例(摘記甲1-2)で用いられたポリイソシアネートCAT-RT86(商品名、東洋モートン株式会社製)と同じ商品が、プラスチック及びアルミ箔のドライラミネート用途に開発された2液硬化型接着剤の硬化剤として用いられていること、及びそれが脂肪族ポリイソシアネートであることが記載されているが(摘記甲1の1-1)、ポリエステルポリオール成分の酸価については記載も示唆もされていない。

(c)甲第1号証の2について
甲第1号証の2には、ガラス転移温度が40℃以上の有機ポリオール及びガラス転移温度が40℃未満の有機ポリオールからなる混合物と、シランカップリング剤並びに有機ポリイソシアネートを含有するウレタン系接着剤組成物が記載されており(摘記甲1の2-1)、ポリエステルポリオールの範疇に、甲第1号証の実施例(摘記甲1-2)で用いられたようなポリエステルポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応物が含まれること(摘記甲1の2-2)、及びポリエステルポリオールの合成例1?8が記載されている(摘記甲1の2-3)。ポリエステルポリオール成分の酸価については、合成例1:酸価1.5(26当量/10^(6)g)、合成例2:酸価1.0(18当量/10^(6)g)、合成例3:酸価1.3(23当量/10^(6)g)であったことが記載されているものの(摘記甲1の2-3)、いずれも本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価(80?150当量/10^(6)g)の条件を満たしておらず、また、上記以外にポリエステルポリオール成分の酸価については特段記載されていない。

(d)甲第5号証について
甲第5号証には、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板が記載されており、接着剤層は、ゲル分率が50重量%以上であること(摘記甲5-1)、及びゲル分率の測定方法(摘記甲5-2)が記載されているが、ポリエステルポリオール成分の酸価については特段記載されていない。

(e)甲第6号証について
甲第6号証には、ディスプレイ用バックライト・ユニットにおける照明光路制御に使用される光学部材において、前記光学部材は第1の光学シートと第2の光学シートとが接着層で接合されて構成されており、前記接着層を構成する接着剤は、Tg-10℃を下回らず、かつ、ゲル分率36%を下回らず、かつ、分子量分布Mw/Mn11以下である(摘記甲6-1)ものが記載されているが、ポリエステルポリオール成分の酸価については特段記載されていない。

(f)新規性についての判断
そうすると、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第5号証及び甲第6号証の記載を参酌しても、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、少なくともポリエステルポリオールの酸価の点で相違することが明らかである。
よって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。本件発明1を直接又は間接的に引用している本件発明2?7についても同様である。
したがって、異議申立理由(イ)は理由がない。

(3)異議申立理由(ロ)(進歩性)について
異議申立人加藤加津子は、本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第1号証の2、甲第2号証、甲第4号証、甲第2号証の1、甲第5号証及び甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
(a)本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価について
まず、本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価と作用効果について検討する。本件発明は、「低温かつ短時間エージングにより実用レベルの接着性、耐湿熱性および耐候性を発揮する耐候性接着剤の提供を課題とする」発明であり(本件明細書[0006])、酸価が低すぎるとエージング時間短縮に効果がなく、酸価が高すぎると得られた接着層の耐湿熱性が低下する傾向にあること(本件明細書[0014])が記載されている。実際、比較例1(酸価10当量/106g)の硬化度が×(硬化度40%)未満であることや、実施例1(酸価40当量/106g、訂正後の本件発明1の範囲外)の硬化度が○(硬化度40%以上80%未満)と、他の実施例よりも低いことからみて、酸価の下限値を特定することにより低温かつ短時間エージングで実用レベルの接着性が得られる等の好ましい効果が得られるものと理解できる。また、比較例2(酸価160当量/106g)の耐湿熱性の評価が×(剥離強度の保持率が40%未満)であり、他の実施例よりも低いことからみて、酸価の上限値を150当量/106gと特定したことにより、高い耐湿熱性という好ましい効果が得られたものと解される

(b)甲第1号証及び甲第1号証の2について
甲第1号証には、上記8.(2)(a)「甲第1号証について」に記載した事項が記載されており、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、少なくともポリエステルポリオール成分の酸価の点で相違している。
また、甲第1号証の2には、上記7.(2)(c)「甲第1号証の2について」に記載した事項が記載されており、本件発明1に記載されポリエステルポリオール成分の酸価については記載されていない。

(c)甲第2号証について
甲第2号証には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール及びポリウレタンポリオールより成る群から選ばれた有機ポリマーポリオール化合物と、該有機ポリマーポリオール化合物の片末端にカルボン酸無水物を付加してなる片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを配合してなる事を特徴とする無溶剤型複合ラミネート用接着剤組成物が記載されており(摘記甲2-1)、ポリエステルポリオールと同様に、甲第1号証の実施例(摘記甲1-2)で用いられたようなポリエステルポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応物を用いることができること(摘記甲2-3)、有機ポリマーポリオール化合物と、該有機ポリマーポリオール化合物の片末端にカルボン酸無水物を付加してなる片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオール化合物との混合物の酸価は2?10mg-KOH/g-樹脂固形分(36?178当量/10^(6)g)が望ましく、酸価2以下では十分な硬化速度が得られず、酸価10以上ではポリイソシアネートと所定の配合をした後のポットライフが短く作業性に劣る問題があること(摘記甲2-4)、実施例では、イソフタル酸を酸成分の約50モル%含む酸価0.8、水酸基価125、分子量約1000の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂(ポリオール樹脂I)を製造し(摘記甲2-5)、ポリオール樹脂Iに対して無水トリメリット酸を反応させて片末端にカルボキシル基が導入された有機ポリマーポリオール化合物を1重量%含有する酸価1.3(23当量/10^(6)g)の混合物IIIを得て、更にポリイソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、固形分100%)を加熱混合して接着剤組成物を得たこと(摘記甲2-6)が記載されている。

(d)甲第2号証の1について
甲第2号証の1には、甲第2号証の実施例で用いられたポリイソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、固形分100%)が、ヘキサメチレンジイシソシアネートの3量体であり、1分子中のイソシアネート基数が3個の化合物であることが記載されている(摘記甲2の1-1)。

(e)異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書の第22頁において次のように主張している。
「甲第2号証には・・・甲1発明と同様に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含む接着剤においてポリエステルポリオールの酸価が36?178当量/10^(6)gであることが記載されている(甲2発明)のであるから、甲第2号証を参照した当業者において、甲1発明のポリエステルポリオールの酸価を36?178当量/10^(6)gとすることに何ら困難性はない。」
しかし、甲第2号証には、本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価(80?150当量/10^(6)g)の条件を満たす具体例は記載されていないし、甲第2号証に記載されたポリエステルポリオールと甲第1号証に記載されたポリエステルポリウレタンポリオールとは共重合成分が異なるものであるから、甲第2号証を参照しても、甲第1号証に記載された発明において直ちに本件発明1と同じポリエステルポリオールの酸価を採用することが容易であったとはいえない。
また、上記8.(3)(a)「本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価について」に記載したとおり、本件発明1においては、ポリエステルポリオール(A)の酸価の上限値を150当量/10^(6)gと特定したことにより、高い耐湿熱性という好ましい効果が得られたものと解されるが、甲第2号証には、ポリエステルポリオールの酸価の上限を、接合物の耐湿熱性の観点から制限することについて記載も示唆もされていないから、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とを組み合わせたとしても、本件発明1の有利な効果を予測することができたとはいえない。

(f)甲第4号証について
甲第4号証には、「1種類以上のジカルボン酸成分と1種類以上のグリコール成分とからなり、ガラス転移点が-30?40℃、カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)g以下である共重合ポリエステル樹脂に、カルボキシル末端基と反応し得る化合物が、下記式を満たす量を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
0.5≦[X]/[COOH]≦5
(式中、[X]はカルボキシル末端基と反応し得る化合物の共重合ポリエステル樹脂中の総含有量(geq/10^(6)g)、[COOH]は共重合ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量(geq/10^(6)g)を表す。)」が記載されており(摘記甲4-1)、カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)gを超える場合には、経時での加水分解による分子量低下が大きく、下記の化合物を含有させても、耐水性、耐湿性の改良効果が十分でなく、接着剤としても接着強力が低下しやすく好ましくない(摘記甲4-2)ことが記載されているから、他の証拠と組み合わせても、本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価の範囲(80?150当量/10^(6)g)を採用することには阻害要因があると解される。

(g)甲第5号証及び甲第6号証について
甲第5号証及び甲第6号証には、上記8.(2)(d)「甲第5号証について」及び同(e)「甲第6号証について」に記載した事項が記載されており、本件発明1に記載されたポリエステルポリオール成分の酸価については記載されていない。

(h)小括
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第1号証の2、甲第2号証、甲第4号証、甲第2号証の1、甲第5号証及び甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。本件発明1を直接又は間接的に引用している本件発明2?7についても同様である。
したがって、異議申立理由(ロ)は理由がない。

(4)異議申立理由(ハ)(進歩性)について
異議申立人加藤加津子は、本件特許の請求項1?7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4号証に記載された発明(及び周知技術:甲第2号証の2、甲第5号証及び甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
(a)甲第2号証及び甲第2号証の1について
甲第2号証及び甲第2号証の2には、上記8.(3)(c)「甲第2号証について」及び同(d)「甲第2号証の1について」に記載した事項が記載されている。
甲第2号証には、ポリエステルポリオールの酸価は2?10mg-KOH/g-樹脂固形分(36?178当量/10^(6)g)とすることが好ましいことが記載されているが(摘記甲2-4)、本件発明1のポリエステルポリオールの酸価(80?150当量/10^(6)g)を採用した具体例は記載されておらず、また、本件発明1において酸価の上限値を150当量/10^(6)gとしたことによる高い耐湿熱性効果を予測し得る記載は見出せない。
また、甲第2号証には、ポリエステルポリオールの共重合成分として、イソフタル酸を酸成分の約50モル%用いた具体例が記載されているが(摘記甲2-5、甲2-6)、酸成分に占めるイソフタル酸の割合については、これ以外に特段記載されていないから、本件発明1とは、「ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有する」ことが記載されていない点でも相違する。
さらに、甲第2号証が解決しようとする課題は、「各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム及び金属箔をラミネートして複合フィルムを製造する際に、貼合した後、実用接着物性に達するまでの時間が著しく短く、更に優れた接着性、耐熱水性および耐酸性を発現する無溶剤型複合ラミネート用接着剤組成物およびそれを用いた貼合方法」を提供することにあり(摘記甲2-2)、貼り合わせる対象物としては屈曲性基材が想定されており(摘記甲2-1)、「短い硬化時間で耐熱性、耐酸性に優れた包装材料を製造することができる」(摘記甲2-7)ことが効果として記載されている。

(b)甲第1号証について
甲第1号証には、上記8.(2)(a)「甲第1号証について」に記載した事項が記載されている。甲第1号証には、ポリエステルポリオール成分の酸価を本件発明1の範囲とすることは記載も示唆もされていない。

(c)甲第3号証について
甲第3号証には、ジカルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸を主体とし、グリコール成分が側鎖アルキル基を有する炭素数5?11の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6?8の脂環族グリコールを主体とし、還元粘度0.30?0.70、酸価70?400当量/10^(6)gおよび比重が1.25以下であるポリエステル系樹脂70?99部、前記ポリエステル系樹脂と反応硬化し得る化合物30?1部とからなるポリエステル系接着剤組成物が記載されており(摘記甲3-1)、金属板とプラスチックフイルムまたはシートとの接着、とりわけ鋼板と塩化ビニールシートとの接着の際に優れた接着性、耐水性、耐熱性を発揮する接着剤組成物であること(摘記甲3-2)、上記ポリエステル系樹脂はイソフタル酸を60モル%以上含有することが好ましいこと(摘記甲3-3)、上記ポリエステル樹脂の酸価が70未満の場合、耐熱水テスト後の接着力が低下し、逆に400を超える場合は、初期接着力、耐熱水テスト後の接着力とも低下すること(摘記甲3-4)が記載されている。また、上記ポリエステル系樹脂を含む接着剤組成物及び積層体の具体例として、イソフタル酸を酸成分の70モル%含み、酸価が120当量/10^(6)gであるポリエステル樹脂A-1(摘記甲3-5、甲3-6)を溶剤に溶解し、硬化剤として多官能性ポリイソシアネート化合物であるコロネートMR(日本ポリウレタン工業製)を加え、鋼板上にバーコーターを用いて塗布し、180℃で1分間熱風乾燥機で溶剤を除いた後、直ちに200μm厚の塩化ビニールシートを載せ、ロールプレス機にて接着を行い、更に180℃で30秒間加熱し、得られた塩化ビニル/鋼板積層体をそのまま室温下で空冷し、1日後評価を実施したこと(摘記甲3-7、3-8)が記載されている。そして、ポリエステル樹脂A-1(酸価120当量/10^(6)g)、同A-2(酸価162当量/10^(6)g)、同A-3(酸価155当量/10^(6)g)のそれぞれにイソシアネート化合物を配合して製造された実施例1?3の接着剤組成物について、はくり接着力、初期密着力、耐熱性及び耐熱水性が評価されたことが記載されているが(摘記甲3-7、3-8)、本件発明の効果である「耐湿熱性」に相当する評価は行われておらず、また、ポリエステル樹脂の酸価の違いによって、耐熱水性等の性質が大きく変化しているようには見受けられない。

(d)異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書の第24頁において次のように主張している。
「本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、以下の相違点4を除き、その余において一致する。
<相違点4>
本件特許発明1において、ポリエステルポリオール(A)中のイソフタル酸は、全酸成分に対して60モル%以上であるのに対し、甲2発明ではこれが50モル%である点(構成要件B)。
・・・上記相違点4に関し、甲第3号証には、甲2発明と同様にポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含むポリエステル系接着剤において、160℃以下の温度で接着でき、かつ、初期接着性、耐久性等の性能に優れたポリエステル系接着剤を提供するために、芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸を60モル%以上含むことが好ましいことが記載されている。
ここで、甲2発明も60?120℃程度の加温で接着させるものであり、30?50℃で1日程度のエージングにより優れた初期接着力を得ることを課題とする発明であるから(甲第2号証の段落0026等)、甲第3号証の教示に基づき、甲2発明のイソフタル酸の比率を全酸成分の60モル%以上とすることには、当業者において動機付けがあり、容易であることは明らかである。」
しかし、甲第2号証に記載された発明は、上記8.(4)(a)「甲第2号証及び甲第2号証の1について」に記載したとおり、包装用フィルム等の屈曲性基材の貼合せを課題とする(摘記甲2-1、2-2、2-7)ものであるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、金属板とプラスチックフィルムまたはシート、とりわけ鋼板と塩化ビニールシートとの接着を行うことを課題とする(摘記甲3-2)ものであるから、両者は技術分野及び課題が共通しているとはいえず、両者を組み合わせることが当業者にとって容易であるとはいえない。
また、上記8.(3)(a)「本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価について」に記載したとおり、本件発明1においては、ポリエステルポリオール(A)の酸価の上限値を150当量/10^(6)gと特定したことにより、高い耐湿熱性という好ましい効果が得られたものと解されるが、上記8.(4)(c)「甲第3号証について」に記載したように、甲第3号証においては本件発明の「耐湿熱性」に相当する評価は行われておらず、ポリエステルポリオールの酸価と「耐湿熱性」とを結び付ける記載もなく、かつ、甲第2号証にも、ポリエステルポリオールの酸価の上限を、接合物の耐湿熱性の観点から制限することについて記載も示唆もされていないから(上記8.(3)(e)参照。)、甲第2号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明とを組み合わせたとしても、本件発明1の有利な効果を予測することができたとはいえない。

(e)甲第4号証について
甲第4号証には、上記8.(3)(f)「甲第4号証について」に記載した事項が記載されている。甲第4号証には、カルボキシル末端基量が50geq/10^(6)gを超える場合には、経時での加水分解による分子量低下が大きく、下記の化合物を含有させても、耐水性、耐湿性の改良効果が十分でなく、接着剤としても接着強力が低下しやすく好ましくない(摘記甲4-2)ことが記載されているから、甲2号証等の他の証拠と組み合わせても、本件発明1におけるポリエステルポリオール(A)の酸価の範囲(80?150当量/10^(6)g)を採用することには阻害要因があると解される。

(f)甲第5号証及び甲第6号証について
甲第5号証及び甲第6号証には、上記8.(2)(d)「甲第5号証について」及び同(e)「甲第6号証について」に記載した事項が記載されており、本件発明1に記載されたポリエステルポリオール成分の酸価については記載されていない。

(g)小括
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4号証に記載された発明(及び周知技術:甲第2号証の2、甲第5号証及び甲第6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。本件発明1を直接又は間接的に引用している本件発明2?7についても同様である。
したがって、異議申立理由(ハ)は理由がない。

(5)異議申立理由(ニ)(実施可能要件)及び(ホ)(明確性)について
異議申立人加藤加津子は、異議申立書の第27?28頁において次のように主張している。
「(ア)特許法第36条第4項第1号に基づく記載不備
本件特許発明7(請求項7)は、ゲル分率が40重量%以上となるまでエージングするとの構成を備える。・・・このゲル分率について、本件明細書にはその技術的意義も含めて何ら説明は無いが、実施例において、エージング後のポリエステルフィルム/接着剤積層体の「硬化度(%)」の測定方法が記載されている(段落0048)。そこで、本件発明7のゲル分率が同段落の「硬化度(%)」であるとしても、この硬化度の測定には酢酸メチル/メチルエチルケトン混合溶液の温度が記載されていない。・・・また、同段落には、ポリエステルフィルムのみの重量を「積層体に残留している接着剤層を削り取」って測定するとあるが、フィルムにいったん接着層を形成した後で、フィルム層を削らずに接着剤層のみを全て削り取ることが非常に困難であることは言うまでもなく、当業者に実施可能であるか否かも極めて疑問であると言わざるを得ない。」
「(イ)特許法第36条第6項第2号に基づく記載不備
上記のとおり、本件特許発明7のゲル分率は、浸漬液の温度を何度として測定するものであるか不明であるので、本件特許発明7は不明確である。」
しかし、一般に、樹脂中の溶液に可溶な部分の質量比をゾル分率、1-(ゾル分率)をゲル分率というから(もし必要であれば、社団法人高分子学会編、「高分子工学講座2 高分子の物理学」、株式会社地人書館発行、昭和38年12月23日発行、p.387を参照)、本件発明7におけるゲル分率とは、接着剤硬化物のうち溶媒(酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/1(重量比)の混合溶液、段落[0048])に可溶な部分をすべて溶かし出した後に残る部分の質量比を意味するものと解され、その溶出条件は「1時間浸漬させた」(段落[0048])という記載と、溶媒の種類及び硬化物の性状に応じて、当業者が適宜決定し得る事項と解される。また、「積層体に残留している接着剤層を削り取」る工程は、積層体を酢酸メチル/メチルエチルケトン混合溶液で処理した後に行われる工程であり、接着剤層の硬度は処理前より下がっていると解されるから、実施が困難であるとまではいえない。そして、上記の明細書の記載を参酌すると、本件発明7の記載が不明確であるとまではいえない。
よって、本件発明7が特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、異議申立理由(ニ)及び(ホ)はいずれも理由がない。

9.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?7の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?7の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
耐候性接着剤組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外産業用途等に適した耐候性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外産業用途向け、たとえば建築材料や太陽電池パネル材などに耐候性を有する接着剤組成物として、ポリエステルポリオールを含むポリウレタン系接着剤が知られている。
【0003】
特許文献1には、ポリエステルフィルムと特定のポリウレタン系接着剤とアルミ箔、およびポリエステルフィルムと特定のポリウレタン系接着剤とポリフッ化ビニリデンフィルムからなる積層体が開示されており、長期耐湿熱性に優れるとされている。また特許文献2には、3種類の多層フィルムをポリウレタン系接着剤で貼り合わせた積層体が開示されており、耐候性に優れるものであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-43238号公報
【特許文献2】特開2007-320218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタンの硬化反応において、例えば、金属板へのコーティングや金属板同士の接着の場合であれば200℃近くの高温をかけることが可能であり硬化時間を短くすることが可能である。しかし貼り合わせる基材の種類や形態により高温をかけることができない場合も多い。特許文献1、特許文献2に記載されているような樹脂フィルムを含む積層体の製造がそのような事例の典型的なものであり、特許文献1の実施例では60℃で7日間のエージング、特許文献2の実施例では50℃で5日間のエージングを行って積層体を製造している。このように、従来技術においては、50?60℃程度の比較的低い温度で5?7日間程度の長時間のエージング処理を行うことが一般的に行われている。エージング温度を現状と同程度あるいはさらに低温とし、なおかつエージング時間を短縮できれば、省エネルギー、作業性・生産性の向上およびコストダウンの観点から好ましいものである。
【0006】
そこで、本発明は低温かつ短時間エージングにより実用レベルの接着性、耐湿熱性および耐候性を発揮する耐候性接着剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ある特定範囲の酸価を有するポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物からなる接着剤組成物が、40?60℃程度の比較的低い温度における1日程度の短期間エージングにより、実用レベルの接着性、耐湿熱性、耐候性を発揮することを見出した。すなわち、本発明は、
(1) 酸価が80?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。
(2) 前記ポリエステルポリオール(A)が、炭素数5以上の脂肪族グリコールを含有するものである(1)に記載の耐候性接着剤組成物。
(3) 前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20?20℃であり、数平均分子量が5000?40000である(1)?(2)のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
(4) 前記ポリイソシアネート化合物(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のアダクト体、IPDIのイソシアヌレート体、IPDIのビウレット体からなる群より選択される、少なくとも1つ以上含有することを特徴とする、(1)?(3)のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
(5) ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)の配合比が、ポリエステルポリオール(A)100重量部に対してポリイソシアネート化合物(B)1?20重量部であることを特徴とする(1)?(4)のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物。
(6) ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムの1種または2種以上を、(1)?(5)のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物を接着層とし貼り合わせた積層体。
(7) (1)?(5)のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物をポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムに塗布し、ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムとドライラミネートで積層した後、40℃?70℃でゲル分率が40重量%以上となるまでエージングする、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着剤組成物は、40?60℃程度の比較的低い温度における1日程度の短期間エージングにより実用レベルの接着性、耐湿熱性、耐候性を発揮する。このため、省エネルギー、作業性・生産性の向上およびコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の接着剤組成物は、酸価が30?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有する。
【0010】
本発明に使用されるポリエステルポリオール(A)は、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合により得られる化学構造からなる。多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ダイマー酸及びその水素添加物などの脂肪族二塩基酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸等の二塩基酸の一種以上を用いることが好ましい。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族グリコール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコルなどの脂環式グリコール、キシリレングリーコルなどの芳香環含有グリコール等のグリコールの一種以上を用いることが好ましい。無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの三官能以上の多価カルボン酸やトリメチロールプロパンなどの三官能以上の多価グリコールを少量共重合させて分岐を導入することは、ポリイソシアネート化合物との反応性が向上する効果が発揮される場合があり、好ましい実施態様である。
【0011】
本発明に使用されるポリエステルポリオール(A)に共重合する二塩基酸としては、耐湿熱性の向上の点からテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸を使用することが望ましい。また、耐候性の向上の観点からは、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸が合計60モル%以上共重合されていることが好ましい。また、テレフタル酸の共重合比率を低く抑えることが、耐候性の向上において有効であり、40モル%未満であることが好ましく、25モル%未満であることがより好ましく、5モル%未満であることが更に好ましい。
【0012】
本発明のポリエステルポリオールを所定のTg範囲にするため、およびエステル基濃度減少による耐湿熱性向上のためにその構造に長鎖脂肪族構造を含むことが好ましい。長鎖脂肪族構造は、耐湿熱性の観点から炭素数5以上の脂肪族グリコールが好ましく、より好ましくは炭素数6以上12以下の脂肪族グリコールが好ましい。
【0013】
本発明に使用されるポリエステルポリオール(A)を製造する際には、従来公知の重合触媒、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルアセトネートなどのチタン化合物、トリブトキシアンチモン、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、テトラ-n-ブトキシゲルマニウム、酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物などを使用することができる。これらの触媒は1種又は2種以上を併用してもよい。重合の反応性の面からチタン化合物が好ましい。
【0014】
本発明に使用されるポリエステルポリオール(A)の酸価は30?150当量/10^(6)gであり、特に好ましくは80?100当量/10^(6)gである。酸価が低すぎるとエージング時間短縮に効果がなく、酸価が高すぎると得られた接着層の耐湿熱性が低下する傾向にある。
【0015】
ポリエステルポリオールにカルボキシル基を導入することにより、酸価を調整することができる。ポリエステルポリオールにカルボキシル基を導入する方法は、ポリエステルポリオールを重合した後に常圧、窒素雰囲気下で酸無水物を後付加して酸価を付与する方法や、ポリエステルを高分子量化する前のオリゴマー状態のものにこれらの酸無水物を投入し次いで減圧下の重縮合により高分子量化することでポリエステルに酸価を導入する方法などがある。前者の方法でかつ無水トリメリット酸を使用すると、目標とする酸価が特に得られやすい。これらの反応に用いることのできる酸無水物しては、既述の無水トリメリット酸のほか、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水1,8-ナフタル酸、無水1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸=3,4-無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、ナフタレン-1,8:4,5-テトラカルボン酸二無水物などの芳香族カルボン酸無水物および脂環族カルボン酸無水物であることが好ましく、これらの1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0016】
本発明に使用するポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度の範囲は-20?20℃であり、さらに好ましくは-10?10℃である。このようなポリエステルポリオールを得るには、組成に長い脂肪族鎖を有する二塩基酸またはグリコールを導入すればよく、耐湿熱性をも併せ持つためには炭素数5以上の脂肪族グリコールを共重合することが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると基材に対する接着力が低くなる傾向にあり、またガラス転移温度が低すぎると接着層が柔軟すぎるために接着力・耐湿熱性が低下してしまう恐れがある。
【0017】
本発明に使用するポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は特に限定されないが、5,000?40,000であることが好ましく、より好ましくは9,000?30,000である。ポリエステル樹脂の数平均分子量が低すぎると架橋間分子量が小さいため、塗膜が硬くなりすぎて接着強度が低下してしまう恐れがある。40,000以上では硬化剤と十分に反応できないために耐湿熱性が低下してしまう恐れがある。
【0018】
本発明に使用するポリイソシアネート化合物(B)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなる。脂肪族ポリイソシアネート化合物としてはヘキサメチレンジイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート化合物としてはイソホロンジイソシアネートを好適な例としてあげることができ、これらは耐候性向上の点で好ましい。また、ポリイソシアネート化合物はそれぞれイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体であってもよく、イソシアヌレート体が特に好ましい。
【0019】
本発明に使用するポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)の配合比は、ポリエステルポリオール(A)100重量部に対してポリイソシアネート化合物(B)1?20重量部であることが好ましく、より好ましくは5?10重量部である。ポリイソシアネート化合物(B)の配合比率が低すぎると架橋密度が低すぎて接着性および/または耐湿熱性に悪影響を与える恐れがあり、配合比率が高すぎると接着層の架橋密度が高すぎるために接着性に劣る可能性がある。
【0020】
本発明に使用する接着剤組成物には、接着剤組成物を構成するポリエステル成分に加水分解が起きた際に生成するカルボキシル基を封鎖するために、カルボジイミド化合物やオキサゾリン化合物、エポキシ化合物等の末端封鎖剤を任意の割合で配合しても良い。
【0021】
前記カルボジイミド化合物としては、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-tert-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0022】
前記オキサゾリン化合物としては、2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-フェニル-2-オキサゾリン、2,5-ジメチル-2-オキサゾリン、2,4-ジフェニル-2-オキサゾリンなどのモノオキサゾリン化合物、2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,2-エチレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-ブチレン)-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-(1,4-フェニレン)-ビス(2-オキサゾリン)などのジオキサゾリン化合物が挙げられる。
【0023】
前記エポキシエポキシ化合物としては、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールのような脂肪族のジオールのジグリシジルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族または芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、レゾルシノール、ビス-(p-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス-(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス-(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンなどの多価フェノールのジグリシジルエーテルもしくはポリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-ビス-(p-アミノフェニル)メタンのようにアミンのN-グリシジル誘導体、アミノフェールのトリグリシジル誘導体、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、オルソクレゾール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシが挙げられる。
【0024】
本発明の接着剤組成物には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させることができ、耐候性や耐湿熱性をさらに向上させることができる場合がある。
【0025】
本発明の接着剤組成物を接着層として、ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムの1種または2種以上を貼り合わせ、積層体を得ることができる。前記積層体は、フィルム/接着層/フィルムの3層積層体のみならず、フィルム/接着層/フィルム/接着層/フィルムの5層積層体、あるいはそれ以上の層数の積層体であっても良い。また、前記積層体を構成する各フィルムは、同種の素材からなるものであっても異種の素材からなるものであっても差し支えない。
【0026】
前記ポリエステルからなるフィルムを構成するポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール-テレフタレート(PCT)が挙げられる。
【0027】
前記フッ素系ポリマーからなるフィルムを構成するフッ素系ポリマーとは、例えばフッ素化ポリオレフィンおよびポリオレフィン-フッ素化ポリオレフィン共重合体であり、具体的にはポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
【0028】
前記ポリエチレンからなるフィルムを構成するポリエチレンとしては、例えばポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、これらに各種添加剤を加えたものなどが挙げられる。
【0029】
本発明に使用する基材には、塗布面および接着面に接着性を向上させる目的でコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施すことが望ましい。
【0030】
本発明の接着剤組成物からなる接着層の厚み(乾燥後)は5?30ミクロンが一般的であるが、この範囲には限らない。
【実施例】
【0031】
以下本発明について実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0032】
(ポリエステル組成)
ポリエステル樹脂の組成及び組成比の決定は共鳴周波数400MHzの^(1)H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)にて行った。測定装置はVARIAN社製NMR装置400-MRを用い、溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0033】
(数平均分子量Mn)
試料4mgを、4mlのテトラヒドロフラン(テトラブチルアンモニウムクロライド5mM添加)に溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過した試料溶液のゲル浸透クロマトグラフィー分析を行った。装置はTOSOH HLC-8220で示差屈折率検出器を用い、40℃で測定した。数平均分子量は標準ポリスチレン換算値とし、分子量1000未満に相当する部分を省いて算出した。
【0034】
(ガラス転移温度Tg)
示差走査型熱量計(SII社、DSC-200)により測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム抑え蓋型容器に入れ密封し、液体窒素を用いて-50℃まで冷却、次いで150℃まで20℃/分にて昇温させた。その過程にて得られる吸熱曲線において、吸熱ピークが出る前のベースラインと、吸熱ピークに向かう接線との交点の温度をもって、ガラス転移温度(Tg、単位:℃)とした。
【0035】
(酸価AV)
試料0.2gを精秤しクロロホルム40mlに溶解し、0.01Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定を行った。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定値を試料10^(6)gあたりの当量に換算し、単位は当量/10^(6)gとした。
【0036】
ポリエステルポリオール(1)の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にイソフタル酸464部、オルトフタル酸179部、無水トリメリット酸4部、ネオペンチルグリコール100部、1、6-ヘキサンジオール598部、触媒としてテトラ-n-ブチルチタネート(以下、TBTと略記する場合がある)を全酸成分に対して0.03モル%仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて90分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を4部投入し、30分間反応を行った。得られたポリエステルポリオール(1)はNMRによる組成分析の結果、酸成分がモル比でイソフタル酸/オルトフタル酸/トリメリット酸=69.5/30/0.5であり、グリコール成分がモル比でネオペンチルグリコール/1,6-ヘキサンジオール=10/90であった。また、数平均分子量は18,000、ガラス転移温度は0℃、酸価は40当量/10^(6)g、であった。
【0037】
ポリエステルポリオール(15)の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にイソフタル酸464部、オルトフタル酸179部、無水トリメリット酸4部、ネオペンチルグリコール100部、1、6-ヘキサンジオール598部、触媒としてTBTを全酸成分に対して0.03モル%仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて90分間重縮合反応を行った。得られたポリエステルポリオール(15)はNMRによる組成分析の結果、モル比でイソフタル酸/オルトフタル酸/トリメリット酸//ネオペンチルグリコール/1,6-ヘキサンジオール=69.5/30/0.5//10/90であった。また、数平均分子量は18,000、ガラス転移温度は0℃、酸価は10当量/10^(6)g、であった。
【0038】
ポリエステル樹脂(2)?(14)、(16)の製造例
ポリエステル樹脂(1)の製造例に準じて、但し、原料の種類と配合比率を変更して、ポリエステル樹脂(2)?(14)、(16)を製造した。結果を表1に記す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
TPA:テレフタル酸残基
IPA:イソフタル酸残基
OPA:オルソフタル酸残基
SA:セバシン酸残基
TMA:トリメリット酸残基
EG:エチレングリコール残基
NPG:ネオペンチルグリコール残基
HD:1,6-ヘキサンジオール残基
TMEG:エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート残基
【0042】
以下、主剤、硬化剤、添加剤は下記のものを示す。
主剤(1)?(16):ポリエステルポリオール(1)?(16)を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分30重量%の樹脂溶液。
硬化剤1:ポリイソシアネート化合物HDIイソシアヌレート体「住化バイエル製 デスモジュールN3300」を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分50重量%の溶液。
硬化剤2:ポリイソシアネート化合物HDIビューレット体「住化バイエル製 デスモジュールN3200」を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分50重量%の溶液。
硬化剤3:ポリイソシアネート化合物HDIアダクト体「住化バイエル製 スミジュールHT」を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分50重量%の溶液。
硬化剤4:ポリイソシアネート化合物IPDIイソシアヌレート体「住化バイエル製 デスモジュールZ4470」を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分50重量%の溶液。
硬化剤5:ポリイソシアネート化合物TDIイソシアヌレート体「住化バイエル製 デスモジュールIL 1351」を酢酸エチルに溶解させて得られた固形分50重量%の溶液。
添加剤1:酸化防止剤(BASF製、イルガノックス1010)を酢酸エチルに溶解させて固形分10重量%にしたもの。
添加剤2:紫外線吸収剤(BASF製、チヌビン234)を酢酸エチルに溶解させて固形分10重量%にしたもの。
【0043】
実施例1
(接着剤(1)の製造)
主剤(1)を10部、硬化剤1を0.6部、添加剤1を0.15部、添加剤2を0.3部配合し混合させたものを接着剤(1)とした。
【0044】
(初期接着力および耐湿熱性の評価)
基材Aに接着剤(1)をドライ膜厚が10μmになるようにアプリケーターで塗布し、溶剤を揮発させたあと、基材Bをドライラミネーターをもちいて圧着させた。ドライラミーションは、ロール温度120℃、ロール荷重3kg/cm、被圧着物速度1m/分、で行った。次いで、40℃、1日のエージングを行なって接着剤を硬化させ、基材A/接着層/基材B積層体を得た。なお、実施例1においては、基材A、基材Bともにポリエステルフィルム(東洋紡製、シャインビームQ1210、厚み125μm)を用いた。
【0045】
上記エージング後の基材A/接着層/基材B積層体を幅15mmの短冊状に切り取り、テンシロン(東洋測器(株)製、UTM-IV)で基材Aと基材Bの剥離強度(T型ピール剥離、引っ張り速度50mm/分)を測定し、初期接着力とした。評価結果を表3に示す。
評価基準: ◎:800g/15mm以上
○:600g/15mm以上800g/15mm未満
△:400g/15mm以上600g/15mm未満
×:400g/15mm未満
【0046】
また、上記エージング後の基材A/接着層/基材B積層体を、レトルト試験機(トミー工業(株)製 ES-315)を用いて105℃、100%RH、192時間の環境負荷を与えたのち、幅15mmの短冊状に切り取って基材Aと基材Bの剥離強度(T型ピール剥離、引っ張り速度50mm/分)を測定した。剥離強度の保持率を以下の式から算出し、耐湿熱性の指標とした。保持率は、数値が高いほど耐湿熱性が良好なことを示した。
保持率(%)=(耐湿熱試験後の剥離強度/耐湿熱試験前の剥離強度)×100
評価基準: ◎:80%以上
○:60%以上80%未満
△:40%以上60%未満
×:40%未満
【0047】
(硬化度の評価)
ポリエステルフィルム(東洋紡製E5101、厚み50μm、コロナ処理面)に接着剤(1)をドライ膜厚が10μmになるようにアプリケーターで塗布し、溶剤を揮発させたあと、ポリプロピレンフィルム(東洋紡製P2161、厚み50μm、非コロナ処理面)をドライラミネーターをもちいて圧着させた。ドライラミーションは、ロール温度120℃、ロール荷重3kg/cm、被圧着物速度1m/分、で行った。次いで、40℃、24時間のエージングを行なって接着剤を硬化させ、更にポリプロピレンフィルムを剥離させ、ポリエステルフィルム/接着剤積層体を得た。
【0048】
上記エージング後のポリエステルフィルム/接着剤積層体を縦2.5cm横10cmの短冊状に切り取って重量を測定し(この重量をAとする)、酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/1(重量比)の混合溶液に1時間浸漬させた。積層体を取り出して1時間熱風乾燥機で乾燥させ、重量を測定した(この重量をBとする)。その後積層体に残留している接着剤層を削り取り、ポリエステルフィルムのみの重量を測定した(この重量をCとする)。以下の式で算出した数値を硬化度(%)とした。評価結果を表3に示した。
硬化度(%)={(A-C)/(B-C)}×100
評価基準: ◎:80%以上
○:40%以上80%未満
×:40%未満
【0049】
(耐候性の評価)
ポリエステルフィルム(東洋紡製、シャインビームQ1210、厚み50μm)に接着剤(1)をドライ膜厚20ミクロンになるように塗布し、溶剤を揮発させたあとポリプロピレンフィルム(東洋紡製P2161、厚み50μm、非コロナ処理面)を、ドライラミネーターを用いて圧着させた。ドライラミーションは、ロール温度120℃、ロール荷重3kg/cm、被圧着物速度1m/分、で行った。次いで、40℃、24時間のエージングを行なって接着剤を硬化させ、更にポリプロピレンフィルムを剥離させ、ポリエステルフィルム/接着剤積層体を得た。
【0050】
上記エージング後のポリエステルフィルム/接着剤積層体の接着剤側から紫外線を照射した。紫外線照射はUV照射試験機(岩崎電気(株)製、アイスーパーUVテスター、SUV-W151)を用いて行い、照射条件は60℃(ブラックパネル温度)、相対湿度60%、照射のみ、とし、照射時間は24時間とした。紫外線照射前後のポリエステルフィルム/接着剤積層体のCo-b値を色差計(日本電色(株)製 ZE2000)を用いて測定し、紫外線照射前後の差を耐候性の指標とした。数値が大きいほど黄変の度合が大きく、耐候性に劣ることを示す。評価結果を表3に示した。
評価基準: ◎:+10未満
○:+10以上+15未満
×:+15以上
【0051】
実施例2?19および比較例1?3
実施例1の接着剤(1)に準じ、但し、主剤と硬化剤を表2の配合に変更して、接着剤(2)?接着剤(20)を製造した。次いで、接着剤および基材を表3に記載のように変更し、実施例1同様の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
PET:ポリエステルフィルム(東洋紡製、シャインビームQ1210、厚み125μm)
PVF:ポリフッ化ビニルフィルム(デュポン製、テドラー、厚み25μm)
PE:ポリエチレンフィルム(厚み50μm)
【産業上の利用可能性】
【0055】
従来技術においては、50?60℃程度の比較的低い温度で5?7日間程度の長時間のエージング処理を行うことが一般的に行われている。エージング温度を現状と同程度あるいはさらに低温とし、なおかつエージング時間を短縮できれば、省エネルギー、作業性・生産性の向上およびコストダウンの観点から好ましいものである。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が80?150当量/10^(6)gであるポリエステルポリオール(A)と、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/または脂環族ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート化合物(B)を含有し、前記ポリエステルポリオール(A)が、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸および/またはオルトフタル酸を合計60モル%以上含有するものである耐候性接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)が、炭素数5以上の脂肪族グリコールを含有するものである請求項1に記載の耐候性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度が-20?20℃であり、数平均分子量が5000?40000である請求項1?2のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体、HDIのイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のアダクト体、IPDIのイソシアヌレート体、IPDIのビウレット体からなる群より選択される、少なくとも1つ以上含有することを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物。
【請求項5】
ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)の配合比が、ポリエステルポリオール(A)100重量部に対してポリイソシアネート化合物(B)1?20重量部であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物。
【請求項6】
ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムの1種または2種以上を、請求項1?5のいずれかに記載する耐候性接着剤組成物を接着層とし貼り合わせた積層体。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の耐候性接着剤組成物をポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムに塗布し、ポリエステル、フッ素系ポリマー及びポリエチレンのいずれかからなるフィルムとドライラミネートで積層した後、40℃?70℃でゲル分率が40重量%以上となるまでエージングする、積層体の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-30 
出願番号 特願2012-515839(P2012-515839)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09J)
P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 536- YAA (C09J)
P 1 651・ 113- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 原 賢一
天野 宏樹
登録日 2016-03-18 
登録番号 特許第5900330号(P5900330)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 耐候性接着剤組成物  

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