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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C07F
管理番号 1330503
審判番号 不服2016-5145  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-07-12 
事件の表示 特願2013-529568「リンを含む金属錯体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月29日国際公開、WO2012/038029、平成25年12月5日国内公表、特表2013-543487〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2011年9月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月24日(DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月30日付けで拒絶査定がされ、平成28年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、同年7月1日に上申書が提出されたものである。
なお、平成28年4月7日に特願2016-77267号が分割出願されている。

第2 平成28年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正
平成28年4月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1が
「式(1)の化合物
M(L)_(n)(L’)_(m) 式(1)
ここで、前記化合物は式(18)?(23)の部分M(L)_(n) を含む。

式中、
Mは、イリジウムであり、
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR^(1) またはNであり、
Qは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、R^(1)C=CR^(1)、R^(1)C=N、O、S、Se、またはNR^(1) であり、
R^(1) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(2))_(3)、B(OR^(2))_(2)、C(=O)R^(2)、P(=O)(R^(2))_(2)、S(=O)R^(2)、S(=O)_(2)R^(2)、OSO_(2)R^(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(1) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族、および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく、
Wは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、式(3)および(4)のラジカルであり、

[式中、Vは、SまたはOに等しく、
R^(4) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(4) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく;
R^(2) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(3))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(3))_(3)、B(OR^(3))_(2)、C(=O)R^(3)、P(=O)(R^(3))_(2)、S(=O)R^(3)、S(=O)_(2)R^(3)、OSO_(2)R^(3)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(3)C=CR^(3)、C≡C、Si(R^(3))_(2)、Ge(R^(3))_(2)、Sn(R^(3))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(3)、P(=O)(R^(3))、SO、SO_(2)、NR^(3)、O、S、またはCONR^(3) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上の隣接しているラジカルR^(2) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよく、
R^(3) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1?20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族の炭化水素ラジカルであり、これらはさらに1個以上のH原子がFで置きかえられていてもよく;ここで2つ以上の置換基R^(3) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよい]、
qは、0以上の整数であり、
pは、0以上の整数であり、ただし、p+qは1以上の整数であり、
r+s+q≧1であり、
nは、3であり、
mは、0である。」
であり、補正前の請求項5が
「前記部分M(L)_(n) が、式(36)、(40)、(44)、(48)、(52)および(56)から選択されることを特徴とする、請求項1?4の何れか一項に記載の化合物。」
であり、その式(36)、(40)、(44)、(48)、(52)及び(56)は、補正前の請求項4に記載されるそれぞれ以下の

であったところ、その補正前の請求項5を、補正後の請求項1である
「式(1)の化合物
M(L)_(n)(L’)_(m) 式(1)
ここで、前記部分M(L)_(n) が、式(36)、(44)または(52)から選択される;

式中、
Mは、イリジウムであり、
Xは、CR^(1) であり、
R^(1) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(2))_(3)、B(OR^(2))_(2)、C(=O)R^(2)、P(=O)(R^(2))_(2)、S(=O)R^(2)、S(=O)_(2)R^(2)、OSO_(2)R^(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)であり;
Wは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、式(3)および(4)のラジカルであり、

[式中、Vは、SまたはOに等しく、
R^(4) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)であり;
R^(2) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(3))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(3))_(3)、B(OR^(3))_(2)、C(=O)R^(3)、P(=O)(R^(3))_(2)、S(=O)R^(3)、S(=O)_(2)R^(3)、OSO_(2)R^(3)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(3)C=CR^(3)、C≡C、Si(R^(3))_(2)、Ge(R^(3))_(2)、Sn(R^(3))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(3)、P(=O)(R^(3))、SO、SO_(2)、NR^(3)、O、S、またはCONR^(3) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)であり、
R^(3) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1?20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族の炭化水素ラジカルであり、これらはさらに1個以上のH原子がFで置きかえられていてもよい;]、
nは、3であり、
mは、0である。」
とする補正を含んでいる(審決注:補正箇所に下線を付した。)。

2 補正の適否

(1)補正の目的の適否
この補正は、補正前の請求項5に係る発明について、その請求項1を引用していた態様につき、式(1)の化合物における、部分M(L)_(n) が、「式(36)、(40)、(44)、(48)、(52)および(56)から選択される」と特定されていたものを、「式(36)、(44)または(52)から選択される」と限定するとともに、式(36)、(44)及び(52)に現れる部分構造について、
Xを「出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR^(1) またはN」から「CR^(1)」に限定し、
R^(1) の選択肢から、その末尾に記載されていた
「またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(1) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族、および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく」
を削除し、
WにおけるR^(4) の選択肢から、その末尾に記載されていた
「またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(4) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく」
を削除し、
R^(1) 及びR^(4) の選択肢に現れるR^(2) の選択肢から、その末尾に記載されていた
「またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上の隣接しているラジカルR^(2) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよく」
を削除し、
R^(2) の選択肢に現れるR^(3) の選択肢から、その末尾に記載されていた
「ここで2つ以上の置換基R^(3) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよい」
を削除する、
ものであり、式(1)の化合物における部分M(L)_(n) の化学構造を限定するものであるから、上記補正は、補正前の請求項5に記載された発明を特定するための事項を限定するものであって、その補正前の請求項5に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)そこで、上記補正後の請求項1に記載された特許を受けようとする発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

ア 先願
先願:PCT/JP2010/005087(特願2011-527582号)(国際公開第2011/021385号、再公表特許第2011/021385号公報参照)(原審における引用文献等8)(以下「先願」という。)
先願は、2010年8月17日(優先権主張2009年8月18日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、この出願の優先日である2010年9月24日より前に国際出願されたものである。

イ 先願明細書の記載事項
上記先願の、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。国際公開の記載により示す。
(1a)「[請求項10]下記の式(3)’で表されることを特徴とするアルコール可溶性リン光発光材料。

式(3)’において、L^(1)、L^(2) 及びL^(3) は二座配位子であり、X^(1)、Y^(1)、X^(2)、Y^(2)、X^(3) 及びY^(3) は、それぞれ、二座配位子L^(1)、L^(2) 及びL^(3) の構成原子であり、それぞれ独立して炭素原子、酸素原子及び窒素原子からなる群より選択される配位原子であり、かつ、L^(1)、L^(2) 及びL^(3) のうち1又は複数は下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有しており、

式(2)においてAr^(3) 及びAr^(4) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar^(3) 及びAr^(4) が結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
[請求項11]上記の式(3)’で表される前記イリジウム錯体が、下記の式(4)?(15)のいずれかで表されることを特徴とする請求項10記載のアルコール可溶性リン光発光材料。
・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
式(4)?(15)において、R^(2) 及びR^(3) のいずれか一方は下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を表し、前記R^(2) 及びR^(3) の他方、X^(1) 及びX^(2) は、それぞれ独立して、水素原子及びフッ素原子からなる群より選択され、qは1、2及び3のいずれかの自然数を表し・・・

式(2)においてAr^(3) 及びAr^(4) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar^(3) 及びAr^(4) が結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。」(89?92頁、請求の範囲の請求項10及び11)
(1b)「技術分野
[0001]本発明は有機電界発光素子及び新規なアルコール可溶性リン光発光材料に関し、より具体的には、多層構造を有する有機電子素子の製造において湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性、耐久性及び発光効率に優れた発光層を有する有機電界発光素子並びにその製造に好適に用いることができる新規なアルコール可溶性リン光発光材料に関する。
背景技術
[0002]陽極と陰極との間に発光性有機層(有機エレクトロルミネッセンス層)が設けられた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(以下、「有機EL素子」という。)は、無機EL素子に比べ、直流低電圧での駆動が可能であり、輝度及び発光効率が高いという利点を有しており、次世代の表示装置として注目を集めている。最近になってフルカラー表示パネルが市販されるに至り、表示面の大型化、耐久性の向上等に向けて盛んに研究開発が行われている。
[0003]有機EL素子は、注入した電子とホール(正孔)との再結合により有機化合物を電気的に励起し発光させる電気発光素子である。有機EL素子の研究は、有機積層薄膜素子が高輝度で発光することを示したコダック社のTangらの報告(非特許文献1参照)以来、多くの企業及び研究機関によりなされている。コダック社による有機EL素子の代表的な構成は、透明陽極であるITO(酸化インジウムスズ)ガラス基板上にホール輸送材料であるジアミン化合物、発光材料であるトリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)、陰極であるMg:Alを順次積層したもので、10V程度の駆動電圧で約1000cd/cm^(2) の緑色発光が観測された。現在研究及び実用化がなされている積層型有機EL素子は、基本的にはこのコダック社の構成を踏襲している。
[0004]有機EL素子は、その構成材料により、高分子系有機EL素子と低分子系有機EL素子に大別され、前者は湿式法により、後者は蒸着法及び湿式法のいずれかにより製造される。高分子系有機EL素子は、素子の作製に用いられる導電性高分子材料における正孔輸送特性と電子輸送特性とのバランスを取るのが困難であるため、近年では、電子輸送、正孔輸送及び発光の機能を分離した積層型低分子系有機EL素子が主流となりつつある。
[0005]積層型低分子系有機EL素子において、発光性有機層と電極との間に設けられる電子輸送層、電子注入層及び正孔輸送層の性能はデバイス特性を大きく左右するため、それらの性能向上に向けた研究開発が盛んになされており、電子輸送層及び電子注入層に関しても、多くの改良研究が報告されている。
例えば、特許文献1では、電子輸送性の有機化合物と、仕事関数(電気陰性度)の低い金属であるアルカリ金属を含む金属化合物とを共蒸着することにより、電子注入層中に金属化合物を混入させることにより、電子注入層の特性の改善を図る構成が提案されている。
また、特許文献2では、ホスフィンオキサイド化合物を電子輸送材料として用いることが提案されている。更に、特許文献3では、電子輸送層の構成として、配位部位を有する有機化合物にアルカリ金属をドーピングする方法が提案されている。
先行技術文献
特許文献
[0006]特許文献1:特開2005-63910号公報
特許文献2:特開2002-63989号公報、
特許文献3:特開2002-352961号公報
非特許文献
[0007]非特許文献1:C.W.Tang,S.A.VanSlyke著、「Organic electroluminescent diodes」、AppliedPhysics Letters(米国)、米国物理学会(The American Institute ofPhysics)、1987年9月21日、第51巻、第12号、p.913-915
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0008]しかしながら、特許文献1から3に記載の電子注入層、電子輸送材料及び電子輸送層は、いずれも動作電圧の低下や発光効率の向上を図ることが目的であり、湿式法による多層構造の形成や耐久性の向上が図られているとは言い難い。また、これらの発明においては、電子輸送層及び電子注入層を真空蒸着法により成膜するため、大掛かりな設備を必要とると共に、2種以上の材料を同時に蒸着する際には蒸着速度の精密な調整が困難であり、生産性に劣るという問題もある。
[0009]湿式法による積層型低分子系有機EL素子の製造法には大きく分けて2種類あり、1つは、下層を製膜後、熱や光により架橋や重合を行い不溶化し上層を製膜する方法、もう1つは、下層と上層で溶解性の大きく違う材料を用いる方法である。前者の方法は、材料の選択の幅が広い反面、架橋又は重合反応の終了後に反応開始剤や未反応物を取り除くことが困難であり、耐久性に問題がある。一方、後者の方法は、材料の選択が難しい反面、架橋や重合等の化学反応を伴わないため、前者の方法と比較して高純度で耐久性の高い素子の構築が可能になる。以上述べたように、湿式法による積層型低分子系有機EL素子の製造は、材料の選択が困難であるという問題があるにも関わらず、各層の構成材料の溶解性の違いを利用した後者の方法が適していると考えられる。しかし、各層の構成材料の溶解性の違いを利用した積層を難しくしている要因の1つに、導電性高分子やスピンコート可能な有機半導体の殆どが、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の比較的溶媒能の高い溶媒にしか溶けず、P型の導電性高分子でホール輸送層を成膜した後、同様の溶媒でN型の導電性高分子でスピンコートすると下地のホール輸送性高分子を浸食することになり、平坦で欠陥の少ないPN界面を有する積層構造を形成できないという問題がある。特にインクジェット法を用いる場合には、溶媒が自然乾燥で除去されるため溶媒の滞留時間が長くなることから、ホール輸送層や発光層の浸食が激しくなり、実用上問題のないデバイス特性を得ることが著しく困難になるおそれがある。
[0010]電子輸送、正孔輸送及び発光の各機能に最適化された材料を用いることにより性能の向上が期待できるという点においては、各機能を分離し、陽極と陰極との間に積層される層の数を多くすることが好ましい。しかしながら、積層数の増大は、工程数や製造に要するタクトタイムの増大、及び溶媒による下層の浸食に伴う性能低下等の問題を生じるおそれがある。
[0011]本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、多層構造を有する有機電子素子の製造において湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性、耐久性及び発光効率に優れた発光層を有する有機電界発光素子並びにその製造に好適に用いることができる新規なアルコール可溶性リン光発光材料を提供することを目的とする。」
(1c)「課題を解決するための手段
[0012]前記目的に沿う本発明の第1の態様は、陽極と陰極との間に挟まれるように積層された複数の有機化合物層を有する有機電界発光素子において、前記複数の有機化合物層が、アルコール系溶媒に不溶な有機化合物からなる正孔輸送層と、前記正孔輸送層が前記陰極と対向している側の面で該正孔輸送層に接するように湿式法で形成された発光層とを有し、前記発光層が、アルコール系溶媒に可溶な1又は複数のホスフィンオキシド誘導体からなるホスト材料と、アルコール系溶媒に可溶な1又は複数の有機化合物及び/又は有機金属化合物からなり、注入した電子と正孔との再結合により電気的に励起され発光することができるゲスト材料とを含むことを特徴とする有機電界発光素子を提供することにより上記課題を解決するものである。
[0013]発光層に含まれるホスト材料及びゲスト材料の双方がアルコール系溶媒に可溶であるため、アルコール系溶媒を用いた湿式法により発光層を形成できる。また、正孔輸送層がアルコール系溶媒に不溶であるため、正孔輸送層の形成後に発光層を形成する場合であっても、アルコール系溶媒による正孔輸送層の浸食及び膨潤が起こらず、欠陥や性能低下を起こすことなく有機電界発光素子を製造できる。更に、ホスト材料として用いられるホスフィンオキシド誘導体は、電子求引性のホスフィンオキシド基(P=O)を有しているため、発光層自体が高い電子輸送特性及び電子注入特性を併せ持つことができる。したがって、電子輸送層を別途形成しなくても十分な素子特性を実現可能であるため、製造工程における工数を低減できると共に、製造に要するタクトタイムの短縮が可能となる。
・・・・・・・・・・・・・・・
[0016]本発明の第1の態様において、前記ホスト材料を構成する前記ホスフィンオキシド誘導体が、下記の一般式(1)で表されるものであってもよい。
[0017]

[0018]式(1)において、
R^(1) は1又は複数のアリール基及びヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
Ar^(1) 及びAr^(2) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar^(1) 及びAr^(2) が結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよく、
[0019]

[0020]式(2)においてAr^(3) 及びAr^(4) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar^(3) 及びAr^(4) が結合することによりリン原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
[0021]この場合において、上記の式(1)で表される前記ホスフィンオキシド誘導体が、下記の式AからQのいずれかで表されるホスフィンオキシド誘導体からなる群より選択される1又は複数のホスフィンオキシド誘導体であることが好ましい。
[0022]

[0023]

[0024]

[0025]本発明の第1の態様において、前記ゲスト材料を構成する前記有機化合物及び/又は有機金属化合物が、下記の一般式(3)で表されるものであってもよい。
[0026]

[0027]式(3)においてAr^(5)、Ar^(6) 及びAr^(7) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を表し、かつAr^(5)、Ar^(6) 及びAr^(7) のうち1又は複数は、注入した電子と正孔との再結合により電気的に励起され発光することができる発光性芳香族残基を含んでいる。
[0028]この場合において、上記の式(3)で表される前記有機化合物及び/又は有機金属化合物が、下記の式(3)’で表されるイリジウム錯体であることが好ましく、下記の式(4)?(15)のいずれかで表されるイリジウム錯体であることがより好ましく・・・
[0029]

[0030]
・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
[0035]式(3)’において、L^(1)、L^(2) 及びL^(3) は二座配位子であり、X^(1)、Y^(1)、X^(2)、Y^(2)、X^(3) 及びY^(3) は、それぞれ、二座配位子L^(1)、L^(2) 及びL^(3) の構成原子であり、それぞれ独立して炭素原子、酸素原子及び窒素原子からなる群より選択される配位原子であり、かつ、L^(1)、L^(2) 及びL^(3) のうち1又は複数は上記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有している。
式(4)?(15)において、R^(2) 及びR^(3) のいずれか一方は下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を表し、前記R^(2) 及びR^(3) の他方、X^(1) 及びX^(2) は、それぞれ独立して、水素原子及びフッ素原子からなる群より選択され、qは1、2及び3のいずれかの自然数を表し・・・
[0036]また、本発明の第2の態様は、上記の式(3)’で表されるアルコール可溶性リン光発光材料を提供することにより上記課題を解決するものである。
[0037]本発明の第2の態様において、前記アルコール可溶性リン光発光材料が上記の式(4)?(15)のいずれかで表されることが好ましく・・・
[0038]式(3)’、好ましくは(4)?(15)のいずれか・・・で表されるイリジウム錯体は、電気的に励起することにより、三重項状態を経て高い量子収率でリン光発光することができる。また、上記の構造式のいずれかで表されるイリジウム錯体は、アルコール系溶媒に可溶であると共に嵩高いホスフィンオキシド基を有しているため、アルコール系溶媒中及び発光層中で会合体を形成しにくい。そのため、濃度消光による発光効率の低下が起こりにくく、高い発光効率を有する。
発明の効果
[0039]本発明によると、多層構造を有する有機電子素子の製造において湿式法により形成が可能で、かつ電子注入特性、電子輸送特性、耐久性及び発光効率に優れた発光層を有する有機電界発光素子有機電界発光素子及びその製造に好適に用いることができる新規なアルコール可溶性リン光発光材料が提供される。また、本発明に係るアルコール可溶性リン光発光材料を用いると、電子輸送層や積層型低分子EL素子の製造に高価な蒸着装置が不要になると共に、金属と有機電子輸送材料との共蒸着のための複雑な条件設定が不要になる。そのため、電子輸送層や積層型低分子EL素子の製造コストを低減できると共に生産性を向上させることが可能になる。本発明を適用することにより、高い生産性かつ低コストで製造でき、発光効率に優れ、高い耐久性を有する有機電界発光素子が提供される。」
(1d)「実施例
[0153]以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
ホスト材料の合成
使用したホスト材料(ホスフィンオキシド誘導体:上記の式A?Qで表されるもの)のうち国際公開第2005/104628号パンフレットに記載のものは、同パンフレットに記載の方法にしたがい合成した。
・・・・・・・・・・・・・・・
[0197][V]トリス[(1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)(Ir(pdpiq)_(3))の合成
[0198](V-1)1-(4-ジフェニルホスフィンオキシド)イソキノリン(pdpiq)の合成
[0199]

[0200]室温で4-ブロモフェニルジフェニルホスフィンオキシド10.7g(30mmol)のTHF(30mL)溶液にiPrMgCl(2M ジエチルエーテル溶液)17mL(34mmol)滴下した。2時間撹拌した。1-クロロイソキノリン5.89g(36mmol)、Ni(dppp)Cl_(2) 0.54g(1mmol)を加え、48h環流させた。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応をクエンチした。ジクロロメタンで抽出し、有機層に6N塩酸を加え2回抽出した。水層を中和し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/エタノール)にて精製した。FAB-MSによりm/z=406([M]+を確認した。シクロヘキサンで再結晶した。
収量:2.30g、収率:18.8%
[0201](V-2)テトラキス (1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))(μ-ジクロロ)ジイリジウム(III)([Ir(pdpiq)_(2)Cl]_(2))の合成
[0202]

[0203]pdpiq(上記V-1で合成)1.3g(3.2mmol)、塩化イリジウム0.42g(1.2mmol)に2-エトキシエタノール20mL、水6mLを加え、撹拌しながら一晩環流させた。反応終了後、室温まで冷却し水を加え生成物を沈殿させた。沈殿物をろ取し、水で洗浄し、乾燥させた。
収量:1.24g、収率:100%
[0204](V-3)ビス(アセトニトリル)ビス[(1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)テトラフルオロボレート(Ir(dppiq)_(2)(CH_(3)CN)_(2)BF_(4))の合成
[0205]

[0206][Ir(dpiq)_(2)Cl]_(2)(上記V-2で合成)1.24g(0.60mmol)、テトラフルオロホウ酸銀0.26g(1.35mmol)にアセトニトリル34mLを加えて6時間環流させた。反応終了後、ろ過により白色沈殿物を取り除き、溶液をエバボレーターで濃縮した。
収量:1.37g、収率=98.6%
[0207](V-4)トリス[(1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)(Ir(pdpiq)_(3))の合成
[0208]

[0209][Ir(piq)_(2)(CH_(3)CN)_(2)]BF_(4)(上記V-3で合成)1.33g(1.14mmol)、pdpiq(上記V-1で合成)1.38g(3,4mmol)にプロピレングリコール40mLを加え160℃で反応させた。反応終了後、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶液をエバボレーターで濃縮し、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/エタノール)で精製した。FAB-MSによりm/z=1408([M+3]^(+))を確認した。
粗収量:1.25g、粗収率:78.1%
[0210][VI]トリス[(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)(Ir(mdpiq)_(3))の合成
[0211](VI-1)1-(3-ブロモフェニル)イソキノリン(mBrpiq)の合成
[0212]

[0213]3-ブロモフェニルボロン酸1.83g(15mmol)、1-クロロイソキノリン3.69g(22.5mmol)にトルエン15mL、エタノール75mLおよび2M炭酸ナトリウム水溶液15mLを加えアルゴン雰囲気下で撹拌した。Pd(PPh_(3))_(4) 0.63g(0.55mmol)を加え、一晩環流撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、水、トルエンを加えて抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン)で精製した。FAB-MSによりm/z=206([M]^(+))を確認した。
粗収量:3.04g、粗収率:71.4%
[0214](VI-2)1-(3-ジフェニルホスホリルフェニル)イソキノリン(mdpiq)の合成
[0215]

[0216]mBrpiq(上記VI-1で合成)0.85g(3mmol)、DPPO 1g(4.9mmol)、Pd(OAc)_(2) 0.054g(0.24mmol)、DPPP 0.16g(0.39mmol)にDMSO 9mLを加えて撹拌した。さらにDIEA 2.24mL(13.1mmol)を入れて一晩環流させた。反応終了後、ジクロロメタンで抽出した。有機層に6N塩酸を加え、2回抽出した。水層を中和し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバボレーターで濃縮した。FAB-MSよりm/z=406([M]^(+))を確認した。
粗収量::1.11g、粗収率:91.0%
[0217](VI-3)テトラキス(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))(μ-ジクロロ)ジイリジウム(III)([Ir(mdpiq)_(2)Cl]_(2))の合成
[0218]

[0219]mdpiq(上記VI-2で合成)0.75g(1.85mmol)、塩化イリジウム0.21g(0.6mmol)に2-エトキシエタノール10mL、水3mLを加えて一晩環流させた。反応終了後、水を加え沈殿物を生成させた。沈殿物をろ取した。FAB-MSより目的物の生成を確認した(m/z=1001([(M-Cl)/2]^(+)))。
収量:0.56g、収率:90.8%
[0220](VI-4)ビス(アセトニトリル)ビス「(2-(3-ジフェニルホスフィノフェニル)イソキノリナト-N,C2’)」イリジウム(III)テトラブルオロボレート(Ir(mdpiq)_(2)(CH_(3)CN)_(2)BF_(4))の合成
[0221]

[0222][Ir(mdpiq)_(2)Cl]_(2)(上記VI-3で合成)0.56g(0.27mmol)、テトラフルオロホウ酸銀0.12g(0.62mmol)にアセトニトリル15mLを加えて4時間環流した。冷却後、ろ過により溶けない白色沈殿物を除去した。ろ液をエバボレーターで濃縮した。
溶媒を含んだ状態であり、収率は100%を超えたが、収率100%と仮定して次の反応に使用した。
[0223](VI-5)トリス[(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C2’)]イリジウム(III)(Ir(mdpiq)_(3))の合成
[0224]

[0225]Ir(mdpiq)_(2)(CH_(3)CN)_(2)BF_(4)(上記VI-4で合成)0.63g(0.54mmol)、mdpiq(上記VI-2で合成)0.64g(1.6mmol)にプロピレングリコール17mLを加え5時間環流させた。反応終了後、ジクロロメタンで抽出した。エバボレーターで濃縮し、充填剤シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/エタノール)で精製した。FAB-MSによりm/z=1409([M+4]^(+))を確認した。
粗収量:0.65g、粗収率:85.6%」
(1e)「[0300](4)積層型有機EL素子(有機電界発光素子)の製造
ITO基板は、三容真空製のもの(膜厚80nm)を使用した。基板洗浄に用いる2-プロパノールは関東化学製の電子工業用を用い、電子輸送層の成膜に用いるアルコール類は関東化学製、発光層の成膜に用いるトルエンは関東化学製の電子工業用を用いた。正孔注入材料としては、PEDOT-PSS(H.C.Starck製の、AI4083)を原液のまま用いた。正孔輸送材料としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK、Aldrich社製)をトルエン溶液(5g/L又は10g/L)として用いた。発光層に用いるホスト材料としては、上記の式Fで表されるホスフィンオキシド誘導体を用い、ゲスト材料としては、上記の(2)で合成した各種イリジウム錯体を用いた。ゲスト材料はホスト材料の8.7重量%添加し、総濃度が10g/L又は15g/Lの2-プロパノール溶液を作製した。
[0301]ITO基板の前処理として、2-プロパノール中で5分間煮沸洗浄し、その後すぐにUV/O_(3) 処理装置に入れ、15分間UV光照射によりO_(3) 処理を行った。PEDOT-PSS及びPVK及び発光層は酸素濃度が1?3ppmのN_(2) 雰囲気下(グローブボックス内)でMIKASA製のスピンコーターを用いて形成後、N_(2) 雰囲気下又は真空中で乾燥した。
[0302]陰極(Al、純度99.999%)及び電子輸送層(LiF)の蒸着には、チャンバー圧8×10^(-4)Paの高真空蒸着装置を用いた。蒸着速度は、LiFについては0.1Å/s、Alについては10Å/sとした。全ての素子においてN_(2) 雰囲気下で封止を行った。陰極の成膜が完了後、素子を窒素置換したグローブボックス(九州計測器製、露点-60?-70℃、酸素濃度5ppm以下)内に直ちに移動し、乾燥剤Oledry(14μL)を塗布したガラスキャップで素子を封止した。
[0303]素子構造は、陰極と発光層の間に電子輸送層を設けたこと以外は全て図1に示すものとした。各層の膜厚は下記のとおりである。
陽極:ITO(80nm)
正孔注入層:PEDOT-PSS(50nm)
正孔輸送層:PVK(15nm又は30nm)
発光層:(40nm又は70nm)
電子輸送層:LiF(0.2nm)
陰極:Al(100nm)
[0304](5)素子及び材料特性の評価
各ゲスト材料の発光特性(量子収率)については、相対蛍光量子収率は、溶液中での紫外可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定し、Φ_(p)=1とされる9,10-ジフェニルアントラセンを標準に用いて相対蛍光量子収率(Φ_(p))を見積もった。なお、リン光は、酸素により消光するため、酸素を脱気するために、5分間アルゴンでバブリング後、スペクトルを測定した。
作製したEL素子の電圧-電流-輝度特性はADVANTEST製DC電圧電流電源・モニター(TR6143)を用いて0Vから20Vまで電圧を印加して0.2Vステップ毎電流値を測定した。ELスペクトルは浜松ホトニクス製マルチチャンネル分光測定器(C7473)の分光検出器を用いて測定した。
[0305]電流効率η_(c)[cd/A]の測定には、有機EL発光効率測定装置を使用した。
500cd/m^(2) 換算寿命の測定にはアペックス製の装置を使用し、50mA/m^(2) の定電流連続駆動により測定した。全て1.5乗則(下式参照)を用い500cd/m^(2) に換算した駆動時間により、初期輝度の1/2に達した半減時間により比較した。
[0306]1.5乗則:T=(L_(0)/L)^(1.5)×T_(1)
(式中、L_(0):初期輝度[cd/m^(2)]、L:換算輝度[cd/m^(2)]、T_(1):輝度半減時の実測時間、T:半減時間である。)
・・・・・・・・・・・・・・・
[0308]下記の実施例1?13(使用したホスト化合物、ゲスト化合物、金属化合物及びそれらの濃度は以下に示すとおりである。)についての電流効率η_(c)、500cd/m^(2) 換算寿命(ホスフィンオキシド基を含まないIr(ppy)_(3) をゲスト化合物として使用した実施例11に対する相対寿命)及び発光色の測定結果は、下記の表1に示すとおりであった。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
[0310][表1]

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・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
[0311]イリジウム錯体以外のもの(実施例8、13)やホスフィンオキシド基を有しないもの(実施例11?13)を含む全てのゲスト材料を用いた有機EL素子について、リン光性色素として有機EL素子に用いられているIr(ppy)_(3)(実施例11)を用いた有機EL素子と同等以上の電流効率及び寿命が観測された。・・・」
(1f)「図面の簡単な説明
[0040][図1]本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の縦断面を模式的に示す図である。」、
「符号の説明
[0312]1 有機電界発光素子
2 基板
3 陽極
4 正孔注入層
5 正孔輸送層
6 発光層
7 陰極
8 封止部材」及び
「[図1]



ウ 先願明細書等に記載された発明
先願明細書等は、有機電界発光素子の製造に用いることができるアルコール可溶性リン光発光材料に関する特許文献である(摘示(1a)?(1c))。先願明細書等には、請求の範囲の請求項11に、以下の式(6)又は(7)で表されるイリジウム錯体が記載されている(摘示(1a))。

(上記式(6)又は(7)において、R^(2) 及びR^(3) のいずれか一方は下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を表し、R^(2) 及びR^(3) の他方、X^(1) 及びX^(2) は、それぞれ独立して、水素原子及びフッ素原子からなる群より選択され、qは1、2及び3のいずれかの自然数を表す。

上記式(2)においてAr^(3) 及びAr^(4) は、それぞれ独立して1又は複数の置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
そして、先願明細書等には、上記式(6)又は(7)のイリジウム錯体であってq=3であるものの具体例として、その実施例の「[VI]トリス[(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)(Ir(mdpiq)_(3))の合成」の項に、以下の化学構造式

で示され、Ir(mdpiq)_(3) とも略称される標題化合物を、製造したことが記載されている(摘示(1d)段落[0210]?[0225])。そして、この化合物を用いて有機電界発光素子を製造して試験したことも記載されている(摘示(1e)(1f))。
以上によれば、先願明細書等には、
「以下の化学構造式

で表される、トリス[(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)」
の発明(以下「先願発明6」といい、その化合物を「先願化合物6」という。)が記載されているということができる。

エ 対比
本願補正発明における式(36)の化合物(以下「本願化合物36」という。)と先願化合物6とを対比すると、先願化合物6は、本願化合物36において、R^(1) が全てHで、Wが式(3)

において、Vが、Oで、R^(4) が、フェニルであるから6個の炭素原子を有する芳香族環系であるものに、該当する。
そうすると、本願補正発明と先願発明6とは相違するところがなく、本願補正発明は、先願発明6と同一である。

オ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 補正の却下の決定のむすび
したがって、補正前の請求項5を補正後の請求項1とする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
平成28年4月7日付けの手続補正は上記第2に記載されたとおり却下されたので、この出願の発明は、平成27年8月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「前記部分M(L)_(n) が、式(36)?(59)から選択されることを特徴とする、請求項1?3の何れか一項に記載の化合物。

・・・(審決注:式(38)?(59)は省略する。)・・・」
ここにおいて、その請求項1は、
「式(1)の化合物
M(L)_(n)(L’)_(m) 式(1)
ここで、前記化合物は式(18)?(23)の部分M(L)_(n) を含む。

式中、
Mは、イリジウムであり、
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR^(1) またはNであり、
Qは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、R^(1)C=CR^(1)、R^(1)C=N、O、S、Se、またはNR^(1) であり、
R^(1) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(2))_(3)、B(OR^(2))_(2)、C(=O)R^(2)、P(=O)(R^(2))_(2)、S(=O)R^(2)、S(=O)_(2)R^(2)、OSO_(2)R^(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(1) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族、および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく、
Wは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、式(3)および(4)のラジカルであり、

[式中、Vは、SまたはOに等しく、
R^(4) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH2 基は、R^(2)C=CR^(2)、C≡C、Si(R^(2))_(2)、Ge(R^(2))_(2)、Sn(R^(2))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、P(=O)(R^(2))、SO、SO_(2)、NR^(2)、O、S、またはCONR^(2) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN、またはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(2) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上のラジカルR^(4) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族、芳香族および/またはベンゾ縮合型の環系を形成していてもよく;
R^(2) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(3))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(3))_(3)、B(OR^(3))_(2)、C(=O)R^(3)、P(=O)(R^(3))_(2)、S(=O)R^(3)、S(=O)_(2)R^(3)、OSO_(2)R^(3)、1?40個のC原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2?40個のC原子を有する直鎖のアルケニルもしくはアルキニル基、または3?40個のC原子を有する分枝もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらはそれぞれ、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH_(2) 基は、R^(3)C=CR^(3)、C≡C、Si(R^(3))_(2)、Ge(R^(3))_(2)、Sn(R^(3))_(2)、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(3)、P(=O)(R^(3))、SO、SO_(2)、NR^(3)、O、S、またはCONR^(3) で置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO_(2) で置きかえられていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有する芳香族環系もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ、アリールアルコキシ、アルキルアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、または10?40個の芳香族環原子を有するジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基もしくはアリールヘテロアリールアミノ基(これらは、1つ以上のラジカルR^(3) で置換されていてもよい)、またはこれらの基の2つ以上の組合せであり;ここで2つ以上の隣接しているラジカルR^(2) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよく、
R^(3) は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1?20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族の炭化水素ラジカルであり、これらはさらに1個以上のH原子がFで置きかえられていてもよく;ここで2つ以上の置換基R^(3) は、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよい]、
qは、0以上の整数であり、
pは、0以上の整数であり、ただし、p+qは1以上の整数であり、
r+s+q≧1であり、
nは、3であり、
mは、0である。」
である。

第4 原査定の理由
原査定の理由である平成27年5月15日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由は、理由2、3-1、3-2、4及び5であり、その理由3-1の概要は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない(特許法第184条の13参照)」というものであり、その「その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願」とは、PCT/JP2010/005087(上記第2の2(2)アの先願と同じ。以下「先願」といい、その明細書、請求の範囲及び図面を、以下「先願明細書等」という。)である。その「下記の請求項」は、請求項1?18であり、全請求項である。
そして、拒絶査定は、本願発明が、先願明細書等に記載された発明と同一であることを、その理由に含むものである。

第5 当審の判断

1 先願、先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された先願、先願明細書等の記載事項は、上記第2の2(2)ア及びイに記載したとおりである。

2 先願明細書等に記載された発明

(1)先願明細書等には、上記第2の2(2)ウに示した以下の先願発明6が記載されている。
(先願発明6)
「以下の化学構造式

で表される、トリス[(1-(3-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)」
(先願発明6の化合物を「先願化合物6」という。)

(2)加えて、先願明細書等には、請求項11の式(6)又は(7)のイリジウム錯体であってq=3であるものの具体例として、その実施例の「[V]トリス[(1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)(Ir(pdpiq)_(3))の合成」の項に、以下の化学構造式

で示され、Ir(pdpiq)_(3) とも略称される標題化合物を、製造したことが記載されている(摘示(1d)段落[0197]?[0209])。そして、この化合物を用いて有機電界発光素子を製造して試験したことも記載されている(摘示(1e)(1f))。
以上によれば、先願明細書等には、
「以下の化学構造式

で表される、
トリス[(1-(4-ジフェニルホスホリル)イソキノリナト-N,C^(2’))]イリジウム(III)」
の発明(以下「先願発明5」といい、その化合物を「先願化合物5」という。)が記載されているということができる。

3 対比

(1)本願発明と先願発明6とを対比する。
本願発明における式(36)の化合物(以下「本願化合物36」という。)と先願化合物6とを対比すると、先願化合物6は、本願化合物36において、Xが全てCR^(1) で、R^(1) が全てHで、Wが式(3)

において、Vが、Oで、R^(4) が、フェニルであるから6個の炭素原子を有する芳香族環系であるものに、該当する。
そうすると、本願発明と先願発明6とは相違するところがなく、本願発明は、先願発明と同一である。

(2)次に、本願発明と先願発明5とを対比する。
本願発明における式(37)の化合物(以下「本願化合物37」という。)と先願化合物5とを対比すると、先願化合物5は、本願化合物37において、Xが全てCR^(1) で、R^(1) が全てHで、Wが式(3)

において、Vが、Oで、R^(4) が、フェニルであるから6個の炭素原子を有する芳香族環系であるものに、該当する。
そうすると、本願発明と先願発明5とは相違するところがなく、本願発明は、先願発明5と同一である。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-08 
結審通知日 2017-02-14 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2013-529568(P2013-529568)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (C07F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 緒形 友美井上 典之村守 宏文  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 加藤 幹
中田 とし子
発明の名称 リンを含む金属錯体  
代理人 飯野 茂  
代理人 井上 正  
代理人 鵜飼 健  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
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