ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1330888 |
審判番号 | 不服2016-16926 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-11 |
確定日 | 2017-08-03 |
事件の表示 | 特願2014-127716号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月18日出願公開、特開2016- 7236号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月20日の出願であって、平成27年12月1日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月2日付けで手続補正がなされたが、平成28年8月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成28年11月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、これと同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の概要 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり、平成28年2月2日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。 (補正前:平成28年2月2日付け手続補正) 「【請求項1】 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 前記後方装飾手段の装飾態様を変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄が付された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域とが設けられ、 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄が付された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄が付されていない裏面側透明領域とが設けられ、 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域、前記裏面側透明領域、前記表面側絵柄領域、あるいは、前記裏面側絵柄領域を透して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える ことを特徴とした遊技機。」 (補正後:本件補正である平成28年11月11日付け手続補正) 「【請求項1】 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 前記後方装飾手段の装飾態様を光源の点灯状態によって変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄で装飾された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域とが設けられ、 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄で装飾された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄で装飾されていない裏面側透明領域とが設けられ、 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域、前記裏面側透明領域、前記表面側絵柄領域、前記裏面側絵柄領域の少なくとも一つを通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える ことを特徴とした遊技機。」 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「装飾態様変更手段」について「光源の点灯状態によって」との限定を付加する補正、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「表面側絵柄領域」について「所定の表面絵柄が付された」なる記載を「所定の表面側絵柄で装飾された」と限定する補正、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「表面側透明領域」について「所定の表面側絵柄が付されていない」なる記載を「所定の表面側絵柄で装飾されていない」と限定する補正、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「裏面側絵柄領域」について「所定の裏面側絵柄が付された」なる記載を「所定の裏面側絵柄で装飾された」と限定する補正、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「裏面側透明領域」について「所定の裏面側絵柄が付されていない」なる記載を「所定の裏面側絵柄で装飾されていない」と限定する補正を行うものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同様第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1に係る発明 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Gは本願補正発明を分説するため当審で付与した。)。 「A 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 B 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 C 前記後方装飾手段の装飾態様を光源の点灯状態によって変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 D 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄で装飾された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域とが設けられ、 E 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄で装飾された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄で装飾されていない裏面側透明領域とが設けられ、 F 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 G 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域、前記裏面側透明領域、前記表面側絵柄領域、前記裏面側絵柄領域の少なくとも一つを通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える ことを特徴とした遊技機。」 (2)先願明細書等 本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2012-277429号(特開2014-117585号公報参照。以下「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願1明細書等」という。)には、「遊技機」に関して次の事項が記載されている(下線部は当審で付与した。)。 (ア)「【0008】 前記課題を解決するために、本発明の遊技機は、 所定の遊技を行うことが可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1)であって、 光を透過可能な透光性を有する透光板(例えば、盤面板200)を備える遊技盤(例えば、遊技盤6)と、 前記透光板に遊技者側から視認可能に設けられた表示部(例えば、表示部301?303/表示部400,420,430,440,441)と、 を備え、 前記表示部は、 前記透光板の板厚方向(前後方向)に異なる複数の表示位置のうち第1表示位置(例えば、遊技盤面200a)に設けられる第1表示部(第1表示部301A,302A,303A/第1表示部400A,420A,430A,440A,441A)と、 該第1表示位置に対し遊技者と反対側(背面側)に離れた第2表示位置(例えば、背面200b)に設けられる第2表示部(第2表示部301B,302B,303B/第1表示部400B,420B,430B,440B,441B)と、 を含み、 前記第2表示部は、遊技者が所定の視点位置(例えば、視点位置EP1,EP8/視点位置EP10)から見たときに少なくとも一部(例えば、非視認領域S1,重畳領域P1)が前記第1表示部に対し前記透光板の板厚方向に重なる位置または面方向に近接する位置に配置されている(例えば、図6(A)(B)、図8(A)(B)、図13(A)(B)、図16(A)(B)参照)、 ことを特徴としている。・・・」 (イ)「【0019】 本発明の手段11の遊技機は、請求項1、手段1?10のいずれかに記載の遊技機であって、 前記遊技盤(例えば、遊技盤6)に形成される遊技領域(例えば、遊技領域7)に遊技媒体(例えば、遊技球)を発射することにより遊技を行うことが可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1)であって、 前記透光板(例えば、盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)における前記遊技領域に対応する領域には、前記遊技媒体の流下を妨げる障害釘(例えば、障害釘K)が複数植設され、 複数のうち前記表示部(例えば、表示部303)に植設される障害釘は、前記第1表示部(例えば、第1表示部303A)を挿通するが前記第2表示部(例えば、第2表示部303B)に到達しない深さで植設され(例えば、図14参照)、 前記第1表示部において前記障害釘が植設される箇所には孔部(例えば、孔部320)が形成され、 前記第2表示部において前記孔部に対応する箇所には該第2表示部(例えば、第2表示部303B)が形成されている、 ことを特徴としている。」 (ウ)【0025】 遊技盤6は、それを構成する板状の合成樹脂板と、その合成樹脂板に取り付けられた種々の部品とを含む構造体であり、これらの詳細な構造に関しては後述することとする。遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている。また、遊技盤6の背面側には、演出表示装置9や演出制御基板80及び演出ユニット等を含む変動表示制御ユニットが一体的に組み付けられている(図示略)。」 (エ)「【0076】 さらに、演出制御用CPU120は、出力ポート(図示略)を介してランプドライバ基板35に対して演出用ダイオード(演出用LED)390を含む各種LEDを駆動する信号を出力する。また、出力ポートを介して音声制御基板70に対して音番号データを出力する。 【0077】 ランプドライバ基板35において、LEDを駆動する信号は、入力ドライバ(図示略)を介してLEDドライバに入力される。LEDドライバは、駆動信号を天枠LED28a、左枠LED28b、右枠LED28cなどの枠側に設けられている各LEDに供給する。また、遊技盤側に設けられている装飾LED25a、後述する表示用LED310に駆動信号を供給する。尚、LED以外の発光体が設けられている場合には、それを駆動する駆動回路(ドライバ)がランプドライバ基板35に搭載される。」 (オ)「【0080】 図3及び図4に示すように、遊技盤6は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂等の透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200と、該盤面板200の背面側に一体的に取り付けられるスペーサ部材250と、から主に構成される。・・・」 (カ)「【0115】 図8(A)(B)に示すように、表示部302は、透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302Aと、透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部301Bと、から構成されている。図8(B)に示すように、第1表示部302Aは遊技盤面200aの前面に配置され、第2表示部302Bは背面200bに配置されるため、第2表示部302Bは、第1表示部302Aに対し盤面板200の板厚方向に向けて所定の隙間(約2cm弱)を隔てて配置されている。つまり、第2表示部302Bは第1表示部302Aから後側に離れた位置に配置されている。 【0116】 また、第1表示部302Aは、印刷により所定の色に着色されているが全域が透光性を有する透光部とされているとともに、第2表示部302Bを所定の割合で縮小した同形状に形成され、縮小中心が前後に一致して配置されている。また、第2表示部302Bも全域が透光性を有する透光部とされているとともに、「熱」という文字Tが印刷されている。 【0117】 よって、例えば、遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1(実際には図中に示す視点位置よりも盤面板200から前側に離れた位置となる)から表示部302を見たとき、第2表示部302Bにおいて第1表示部302Aに対応する領域、詳しくは第1表示部302Aの真後ろとなる文字Tを含む中央領域は、第1表示部302Aに対し前後方向に重畳する重畳領域P1とされ、その他の周辺領域が非重畳領域P2となる。具体的には、正面から見たとき、第1表示部302Aを透して背面側の第2表示部301Bの例えば文字Tが透視できるが、第1表示部302Aは着色もされていて透過率は低いため、透明の場合に比べて視認性はあまり良くない。 【0118】 このように第2表示部302Bは、所定の視点位置EP1から表示部302を見たときに少なくとも一部が第1表示部302Aに対し透光板の板厚方向、つまり、前後方向に重なる位置に配置されている。 【0119】 また、盤面板200の背面側における表示部302に対応する位置には、表示部302を背面側から照らす照明装置としての表示用発光ダイオード(表示用LED)310が配設されたLED基板311が設けられている。 【0120】 このように構成された表示部302は、上記したように表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して背面側の第2表示部302Bの例えば文字Tを透視しにくいが、図8(C)(D)に示すように、表示用LED310を発光することで、表示用LED310からの光は第2表示部302B、盤面板200、第1表示部302Aを透過して前方に出射される。 【0121】 よって、盤面板200の背面側から透光性を有する第2表示部302Bを照らすことができるので、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302B、特に文字Tなどが見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部301Aも見えやすくなるため、双方の視認性を高めることができる。」 (キ)上記【0019】の「盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)」、上記【0115】の「図8(A)(B)に示すように、表示部302は、透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302Aと、透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部301Bと、から構成されている。図8(B)に示すように、第1表示部302Aは遊技盤面200aの前面に配置され、第2表示部302Bは背面200bに配置される」、上記【0116】の「第2表示部302Bも全域が透光性を有する透光部とされているとともに、「熱」という文字Tが印刷されている」の記載を参照すると、【図8】(B)には、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aには第1表示部302Aが配置された部分と第1表示部302Aが配置されず透明フィルム304Aが配置される部分とがあること、盤面板200の背面200bには第2表示部302Bが配置された部分と第2表示部302Bが配置されず透明フィルム304Bが配置される部分とがあること、および、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が盤面板200の背面200bに設けられていることが図示されている。 なお、上記【0115】には、「図8(A)(B)に示すように、・・・透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部301B」と、【0117】には、「第1表示部302Aを透して背面側の第2表示部301Bの」と記載されているものの、図8(A)(B)には302Bはあるが301Bはなく、【0116】の「第2表示部302B」や【0117】の「第2表示部302B」等の記載を参酌すれば、上記【0115】、【0117】の「第2表示部301B」は「第2表示部302B」の誤記であることは明らかである(以下、【0115】、【0117】の「301B」は「302B」とする)。 同様に、上記【0120】には、「図8(C)(D)に示すように、表示用LED310を発光することで、表示用LED310からの光は第2表示部302B、盤面板200、第1表示部302Aを透過して前方に出射される」と記載され、【0121】には、「第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部301Aも見えやすくなる」と記載されているものの、図8(C)(D)には302Aはあるが301Aはなく、【0120】の「第1表示部302A」や【0121】の「第1表示部302A」等の記載を参酌すれば、上記【0121】の「第1表示部301A」は「第1表示部302A」の誤記であることは明らかである(以下、【0121】の「301A」は「302A」とする)。 上記(ア)?(カ)の記載事項および上記(キ)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(g)は、本願補正発明の構成A?Gに対応した事項を示している。 (a)上記(イ)の【0019】には「前記遊技盤(例えば、遊技盤6)に形成される遊技領域(例えば、遊技領域7)に遊技媒体(例えば、遊技球)を発射することにより遊技を行うことが可能な遊技機(例えば、パチンコ遊技機1)であって、前記透光板(例えば、盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)における前記遊技領域に対応する領域」と記載され、上記(ウ)の【0025】には「遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている」と記載されている。 また、上記(ア)の【0008】には「光を透過可能な透光性を有する透光板(例えば、盤面板200)を備える遊技盤(例えば、遊技盤6)・・・を備え、・・・前記透光板の板厚方向(前後方向)に・・・」と記載されている。ここで、「透光板の板厚方向」と記載されていることから、透光板である盤面板200は板厚を有しているといえる。 そして、上記(オ)の【0080】には「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200」と記載されている。 したがって、先願1明細書等には、盤面板200の遊技者側面となる遊技盤面200aにおける遊技領域7は遊技球が流下可能であり、板厚を有し、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200を備えたパチンコ遊技機1が記載されているといえる。 (b)上記(オ)の【0080】には「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200」と記載され、上記(イ)の【0019】には「前記透光板(例えば、盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)・・・」と記載されている。 また、上記(ア)の【0008】には「光を透過可能な透光性を有する透光板(例えば、盤面板200)を備える遊技盤(例えば、遊技盤6)・・・を備え、・・・前記透光板の板厚方向(前後方向)に異なる複数の表示位置のうち第1表示位置(例えば、遊技盤面200a)に設けられる第1表示部(第1表示部301A,302A,・・・)と、該第1表示位置に対し遊技者と反対側(背面側)に離れた第2表示位置(例えば、背面200b)に設けられる第2表示部(第2表示部301B,302B,・・・)と・・・」と記載されている。 そして、上記(カ)の【0115】には「透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302Aと、透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部302Bと、から構成されている。図8(B)に示すように、第1表示部302Aは遊技盤面200aの前面に配置され、第2表示部302Bは背面200bに配置される」と記載され、【0116】には「第2表示部302Bも全域が透光性を有する透光部とされているとともに、「熱」という文字Tが印刷されている」と記載されている。 さらに、上記(キ)で言及したように、【図8】の(B)には、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が盤面板200の背面200bに設けられていることが図示されている。 したがって、先願1明細書等には、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の背面200bに設けられ、大型の星を示す第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が記載されているといえる。 (c)上記(カ)の【0120】には「表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して背面側の第2表示部302Bの例えば文字Tを透視しにくい」と記載され、【0121】には「表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302B、特に文字Tなどが見えやすくなる」と記載されている。 また、上記(エ)の【0076】には「演出制御用CPU120は、出力ポート(図示略)を介してランプドライバ基板35に対して演出用ダイオード(演出用LED)390を含む各種LEDを駆動する信号を出力する」と記載され、同【0077】には「ランプドライバ基板35において、LEDを駆動する信号は、・・・後述する表示用LED310に駆動信号を供給する」と記載されている。 そして、上記(キ)で言及したように、【図8】の(B)には、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が盤面板200の背面200bに設けられていることが図示されている。 したがって、先願1明細書等には、表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を透視しにくいが、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を見えやすくなるように、この表示用LED310に駆動信号を出力する演出制御用CPU120が記載されているといえる。 (d)上記(イ)の【0019】には「前記透光板(例えば、盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)・・・」と記載され、上記(ア)の【0008】には「第1表示位置(例えば、遊技盤面200a)に設けられる第1表示部(第1表示部301A,302A,・・・)と、・・・」と記載され、上記(カ)の【0115】には「透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302A」および「第1表示部302Aは遊技盤面200aの前面に配置され」と記載されている。 また、上記(キ)で言及したように、【図8】の(B)には、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aには第1表示部302Aが配置された部分と第1表示部302Aが配置されず透明フィルム304Aが配置される部分とがあることが図示されている。 したがって、先願1明細書等には、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに、透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が配置された部分と配置されていない部分とがあることが記載されているといえる。 (e)上記(イ)の【0019】には「前記透光板(例えば、盤面板200)の遊技者側面(例えば、遊技盤面200a)・・・」と記載され、上記(ア)の【0008】には「前記透光板の板厚方向(前後方向)に異なる複数の表示位置のうち第1表示位置(例えば、遊技盤面200a)に設けられる第1表示部(第1表示部301A,302A,・・・)と、該第1表示位置に対し遊技者と反対側(背面側)に離れた第2表示位置(例えば、背面200b)に設けられる第2表示部(第2表示部301B,302B,・・・)と・・・」と記載され、上記(カ)の【0115】には「透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部302B」および「第2表示部302Bは背面200bに配置される」と記載されている。 また、上記(キ)で言及したように【図8】の(B)には、盤面板200の背面200bには第2表示部302Bが配置された部分と第2表示部302Bが配置されず透明フィルム304Bが配置される部分とがあることが図示されている。 したがって、先願1明細書等には、盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200bに、透明フィルム304Bに印刷された第2表示部302Bの大型の星が配置された部分と配置されていない部分とがあることが記載されているといえる。 (f)上記(カ)の【0115】には「透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302Aと、透明フィルム304Bに印刷された大型の星を示す第2表示部301B」と記載され、【0117】には「遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1(実際には図中に示す視点位置よりも盤面板200から前側に離れた位置となる)から表示部302を見たとき、第2表示部302Bにおいて第1表示部302Aに対応する領域、詳しくは第1表示部302Aの真後ろとなる文字Tを含む中央領域は、第1表示部302Aに対し前後方向に重畳する重畳領域P1とされ、その他の周辺領域が非重畳領域P2となる」と記載されている。 したがって、先願1明細書等には、遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1から表示部302を見たとき、第2表示部302Bの大型の星には、第1表示部302Aの小型の星に対し前後方向に重畳する重畳領域P1とその他の周辺領域である非重畳領域P2とがあることが記載されているといえる。 (g)上記(オ)の【0080】には「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200」と記載され、上記(ア)の【0008】には「前記透光板の板厚方向(前後方向)に異なる複数の表示位置のうち第1表示位置(例えば、遊技盤面200a)に設けられる第1表示部(第1表示部301A,302A,・・・)と、・・・」と記載され、上記(カ)の【0115】には「透明フィルム304Aに印刷された小型の星を示す第1表示部302A」、【0117】には「正面から見たとき、第1表示部302Aを透して背面側の第2表示部302Bの例えば文字Tが透視できる」と記載され、上記(キ)で言及したように、【図8】の(B)には、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aには第1表示部302Aが配置された部分と第1表示部302Aが配置されず透明フィルム304Aが配置される部分とがあること、および、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が盤面板200の背面200bに設けられていることが図示されている。 したがって、先願1明細書等には、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視できることが記載されているといえる。 また、上記(エ)の【0076】には「演出制御用CPU120は、出力ポート(図示略)を介してランプドライバ基板35に対して演出用ダイオード(演出用LED)390を含む各種LEDを駆動する信号を出力する」と記載され、【0077】には「ランプドライバ基板35において、LEDを駆動する信号は、・・・後述する表示用LED310に駆動信号を供給する」と記載され、上記(カ)の【0121】には「表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302B、特に文字Tなどが見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aも見えやすくなるため、双方の視認性を高めることができる」と記載されている。 したがって、先願1明細書等には、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなることが記載されているといえる。 これらのことから、先願1明細書等には、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなることが記載されているといえる。 したがって、上記(ア)?(カ)の記載事項、上記(キ)の図示内容、上記(a)?(g)認定事項を総合すれば、先願1明細書等には次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されている(a?gは先願発明1を分説するため当審で付した。)。 「a 盤面板200の遊技者側面となる遊技盤面200aにおける遊技領域7は遊技球が流下可能であり、板厚を有し、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200を備えたパチンコ遊技機1であって、 b 透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の背面200bに設けられ、大型の星を示す第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位と、 c 表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を透視しにくいが、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を見えやすくなるように、この表示用LED310に駆動信号を出力する演出制御用CPU120と、 を備え、 d 盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに、透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が配置された部分と配置されていない部分とがあり、 e 盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200bに、透明フィルム304Bに印刷された第2表示部302Bの大型の星が配置された部分と配置されていない部分とがあり、 f 遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1から表示部302を見たとき、第2表示部302Bの大型の星には、第1表示部302Aの小型の星に対し前後方向に重畳する重畳領域P1とその他の周辺領域である非重畳領域P2とがあり、 g 透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなる パチンコ遊技機1。」 (3)対比・判断 本願補正発明と先願発明1とを対比する。対比の見出しとしての(a)?(g)は先願発明1の分説構成と対応させた。 (a)先願発明1の「盤面板200の遊技者側面となる遊技盤面200a」は、遊技者側面ということから盤面板200の表面であるといえるので、本願補正発明の「遊技パネルの表面」に相当する。 また、先願発明1の「板厚を有」することは、本願補正発明の「所定の厚みを有する」ことに相当する。 そして、先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200」は、透明な盤面板200であるといえるから、本願補正発明の「透明な遊技パネル」に相当する。 さらに、先願発明1の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。 したがって、先願発明1の「盤面板200の遊技者側面となる遊技盤面200aにおける遊技領域7は遊技球が流下可能であり、板厚を有し、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200を備えたパチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機」に相当する。 (b)先願発明1の「盤面板200の背面200b」は、盤面板200の裏面といえるから、先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の背面200b」は、本願補正発明の「透明な遊技パネルの裏面」に相当する。 また、先願発明1の「大型の星を示す第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位」は、盤面板200の背面200bに設けられているから、盤面板200の後方に位置しているといえると共に、大型の星の中に印刷され、見えやすくなったりするものであるから、装飾であるといえる。このことから、先願発明1の「大型の星を示す第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位」は、本願補正発明の「後方装飾手段」に相当する。 したがって、先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の背面200bに設けられ、大型の星を示す第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位」は、本願補正発明の「前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段」に相当する。 (c)先願発明1の「表示用LED310」は、本願補正発明の「光源」に相当する。 また、先願発明1の「表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を透視しにくいが、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を見えやすくなる」ようにすることは、表示用LED310の発光によって、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を透視しにくい状態から見えやすい状態に変化させるものであるから、本願補正発明の「前記後方装飾手段の装飾態様を光源の点灯状態によって変化させる」ことに相当する。 そして、先願発明1の「演出制御用CPU120」は、表示用LED310に駆動信号を出力しているから、表示用LED310の非発光、発光を変更している手段であるといえるので、本願補正発明の「装飾態様変更手段」に相当する。 したがって、先願発明1の「表示用LED310の非発光状態では、第1表示部302Aを透して第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を透視しにくいが、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位を見えやすくなるように、この表示用LED310に駆動信号を出力する演出制御用CPU120」は、本願補正発明の「前記後方装飾手段の装飾態様を光源の点灯状態によって変化させる装飾態様変更手段」の機能を備える。 (d)先願発明1の「第1表示部302Aの小型の星」は、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200a側に配置されており、この小型の星は絵柄であるといえるから、本願補正発明の「表面側絵柄」に相当する。 また、先願発明1の「盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに、透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が配置された部分」は、小型の星により装飾されているといえるから、本願補正発明の「表面側絵柄で装飾された表面側絵柄領域」に相当する。 そして、先願発明1の「盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに、透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が」「配置されていない部分」は、本願補正発明の「前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域」に相当する。 したがって、先願発明1の「盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに、透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が配置された部分と配置されていない部分」は、本願補正発明の「前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄で装飾された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域」に相当する。 (e)先願発明1の「第2表示部302Bの大型の星」は、盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200b側に配置されており、この大型の星は絵柄であるといえるから、本願補正発明の「裏面側絵柄」に相当する。 また、先願発明1の「盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200bに、透明フィルム304Bに印刷された第2表示部302Bの大型の星が配置された部分」は、大型の星により装飾されているといえるから、本願補正発明の「裏面側絵柄で装飾された裏面側絵柄領域」に相当する。 そして、先願発明1の「盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200bに、透明フィルム304Bに印刷された第2表示部302Bの大型の星が」「配置されていない部分」は、本願補正発明の「前記裏面側絵柄で装飾されていない裏面側透明領域」に相当する。 したがって、先願発明1の「盤面板200の遊技者と反対側に離れた背面200bに、透明フィルム304Bに印刷された第2表示部302Bの大型の星が配置された部分と配置されていない部分」は、本願補正発明の「前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄で装飾された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄で装飾されていない裏面側透明領域」に相当する。 (f)先願発明1の「遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1から表示部302を見たとき、第2表示部302Bの大型の星には、第1表示部302Aの小型の星に対し前後方向に重畳する重畳領域P1とその他の周辺領域である非重畳領域P2とがあ」ることから、第2表示部302Bの大型の星の非重畳領域P2は、第1表示部302Aの小型の星とは重畳していないので、盤面板200の遊技者側面である遊技盤面200aに第1表示部302Aの小型の星が配置されていない部分から遊技者は視認できるといえる。 したがって、上記(e)において言及したように、先願発明1の「第2表示部302Bの大型の星」は、本願補正発明の「裏面側絵柄」に相当し、上記(d)において言及したように、先願発明1の「透明フィルム304Aに印刷された第1表示部302Aの小型の星が」「配置されていない部分」は、本願補正発明の「前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域」に相当するから、先願発明1の「遊技者が表示部302のほぼ正面に対峙する所定の視点位置EP1から表示部302を見たとき、第2表示部302Bの大型の星には、第1表示部302Aの小型の星に対し前後方向に重畳する重畳領域P1とその他の周辺領域である非重畳領域P2とがあ」ることは、本願補正発明の「前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域から透視可能であ」ることに相当する。 (g)先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなる」ことは、透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して透視できる背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなることといえると共に、この先願発明1の「第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなる」ことは、第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見える様子が変化しているといえるから、本願補正発明の「前記後方装飾手段の装飾態様を変化させること」に相当する。これらのことから、先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなる」ことは、本願補正発明の「前記透明な遊技パネルにおける前記表面側絵柄領域を通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させる」ことに相当する。 また、先願発明1の「第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき」ることから、第2表示部302Bの大型の星と第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位とは、該第1表示部302Aの小型の星に対して盤面板200の背面側に位置しており、第1表示部302Aの小型の星と第2表示部302Bの大型の星と第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位とは奥行きのある複数の装飾であるといえるので、先願発明1の「第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなる」ことは、第1表示部302Aの小型の星と第2表示部302Bの大型の星と第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位とによる奥行きのある複数の装飾の見える様子も変化しているといえる。このことから、先願発明1の「表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなる」ことは、本願補正発明の「前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える」ことに相当する。 したがって、上記(c)において言及したように、先願発明1の「演出制御用CPU120」は、本願補正発明の「装飾態様変更手段」に相当するから、先願発明1の「透明な合成樹脂材にて形成される盤面板200の遊技盤面200aに設けられる第1表示部302Aの小型の星が配置された部分を透して背面側の第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が透視でき、演出制御用CPU120は、表示用LED310に駆動信号を出力して、表示用LED310により透光性を有する第2表示部302Bを照らすことで第2表示部302Bの「熱」という文字Tが印刷されている部位が見えやすくなるだけでなく、第2表示部302Bを透して同じく透光性を有する第1表示部302Aが一緒に照らされることで該第1表示部302Aの小型の星も見えやすくなる」ことは、本願補正発明の「前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側絵柄領域を通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える」ことに相当する。 上記(a)?(g)の検討より、本願補正発明と先願発明1とは、 「A 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 B 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 C 前記後方装飾手段の装飾態様を光源の点灯状態によって変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 D 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄で装飾された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄で装飾されていない表面側透明領域とが設けられ、 E 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄で装飾された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄で装飾されていない裏面側透明領域とが設けられ、 F 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 G 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域、前記裏面側透明領域、前記表面側絵柄領域、前記裏面側絵柄領域の少なくとも一つを通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える 遊技機。」 である点で一致し、両者の間に相違点はない。 なお、審判請求人は審判請求書において、本願補正発明と特願2013-135403号(特開2015-008823号公報参照。後述の先願2)に記載された発明とを対比して相違点について主張しているが、本願補正発明の独立特許要件の判断には、先願1を用いており対比対象が異なるため請求人の主張は採用できない。 (4)小括 よって、本願補正発明は先願発明1と同一であり、しかも、本願補正発明の発明者がその先願発明1の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、本願補正発明は特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正(平成28年11月11日付け手続補正)は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年2月2日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Gは本願発明を分説するため当審で付与した。)。 「A 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 B 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 C 前記後方装飾手段の装飾態様を変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 D 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄が付された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域とが設けられ、 E 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄が付された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄が付されていない裏面側透明領域とが設けられ、 F 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 G 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域、前記裏面側透明領域、前記表面側絵柄領域、あるいは、前記裏面側絵柄領域を透して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える ことを特徴とした遊技機。」 1.先願明細書等 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2013-135403号(特開2015-008823号公報参照。以下「先願2」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願2明細書等」という。)には、「遊技機」に関して次の事項が図面とともに記載されている(下線部は当審で付与した。)。 (ア)「【0018】 まず、実施例のパチンコ機10について説明する。図1はパチンコ機10(遊技機)の外観を示す外観斜視図であり、図2はパチンコ機10の遊技盤30の構成の概略を示す構成図である。」 (イ)「【0023】 [遊技盤30の構成] 遊技盤30は、図2に示すように、透明のアクリル素材で形成され各種絵柄などが描かれた平板状のアクリル板50に、外レール31aと内レール31bとによって囲まれる遊技領域31が形成されている。・・・」 (ウ)「【0026】 アクリル板50の表面50aには、図4に示すように、樹木から舞い散る花びらを描いた第1表面絵柄52がアクリル板50の上部から左中央部にかけて設けられ、キャラクタを描いた第2表面絵柄54がアクリル板50の左下部に設けられ、扇子(扇)を描いた第3表面絵柄56がアクリル板50の右中央部に設けられている。・・・ 【0027】 アクリル板50の裏面50bには、図5に示すように、第1表面絵柄52と同様に花びらを描いた第1裏面絵柄61がアクリル板50の左中央部に設けられ、鏡面が表面50a側を向いた第1鏡62がアクリル板50の左中央部に設けられ、鏡面が表面50a側を向いた第2鏡64がアクリル板50の左下部に設けられ、キャラクタを描いた第2裏面絵柄65と扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄66とがアクリル板50の右中央部に設けられている。 ・・・ 【0031】 続いて、図8に基づいてアクリル板50の右中央部の詳細について説明する。なお、図8(a)は、図3のC-C断面を示す断面図であり、図8(b)は、アクリル板50の右中央部の拡大斜視図である。ここで、裏面50bの第3裏面絵柄66は、表面50aの第3表面絵柄56の背後に位置しており、第3表面絵柄56とは若干ずれた位置(図3中の上側にずれた位置)にあるものの、その大部分が重複するように配置されている。また、第3裏面絵柄66は、第3表面絵柄56よりも若干小さいものの、扇の形状が相似するものとした。このため、第3裏面絵柄66は、扇の要に相当する部分や扇面に相当する部分の輪郭が、第3表面絵柄56と共通になる。また、第3表面絵柄56は、扇の要56aと、扇面の内側部分56bと、扇面の外側部分56cと、外側部分の丸印56dとに、異なる彩色が施されるのに対し、第3裏面絵柄66は、黒一色だけで形成されている。これらのことから、第3裏面絵柄66が第3表面絵柄56の影であることを遊技者に認識させ易いものとなっている。この第3表面絵柄56は、アクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄66と離れている分、第3裏面絵柄66(裏面50b)から浮き出たように見えるから、第3表面絵柄56の立体感を高めることができる。・・・」 (エ)「【0034】 また、実施例のパチンコ機10によれば、装飾効果だけでなく、次のような効果を奏するものとなる。ここで、遊技領域31を遊技球が流下する際には、遊技球がアクリル板50の表面50aと摩擦接触して表面50aに静電気が生じ、アクリル板50が帯電することがある。 【0035】 実施例のパチンコ機10では、アクリル板50の裏面50bに影絵柄として設けられる第3裏面絵柄66を印刷やシール貼り付けなどにより裏面50bに固定したが、これに限られず、影絵柄として設けられる裏面絵柄を板状部材などの装飾部材でアクリル板50とは別に構成して移動可能としてもよい。図9に変形例の第3裏面絵柄166の構成を示す。図示するように、第3裏面絵柄166が設けられた装飾部材の要166aに駆動用モータ95の駆動軸が接続されており、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166(装飾部材)が要166aを中心に回転移動するよう構成されている。・・・ 【0036】 このように構成した第3裏面絵柄166が回転移動する様子を図10に示す。図示するように、所定の初期位置(図10(a))から、時間の経過と共に徐々に回転移動して(図10(b)?(c))、所定の停止位置で停止する(図10(d))。なお、所定の停止位置に到達すると、逆回転して初期位置に戻るもの(さらに往復動作を繰り返すもの)などとしてもよい。・・・あるいは、演出表示装置34で行われる演出の内容に合わせて第3裏面絵柄166を移動させてもよい。例えば、演出表示装置34の演出として、昼間の場面の演出と夜の場面の演出とを行う場合には、昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄66と重なる位置として(移動させずに)影を出さないものなどとしてもよい。いずれの場合も、影絵柄として描かれた第3裏面絵柄166が移動することから、遊技盤30の斬新な印象をさらに高めることができる。なお、この変形例では、第3裏面絵柄166を回転移動させたが、これに限られず、直線移動させてもよい。また、アクリル板50の表面50aに設けられた第3表面絵柄56の影絵柄としての第3裏面絵柄166を移動させるものに限られず、アクリル板50の裏面50bに設けられた第2裏面絵柄65の影絵柄を装飾部材で構成しておき、その装飾部材を移動させてもよい。」 (オ)「【0052】 ・・・、50 アクリル板、50a 表面、50b 裏面、・・・、56 第3表面絵柄、・・・、65 第2裏面絵柄、66,166 第3裏面絵柄、・・・、t 厚み。」 (カ)上記(オ)の【0052】の記載を参照すると、【図9】には、アクリル板50は厚みtを有していること、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられた領域とこの第3表面絵柄56が設けられていない領域とが設けられていること、アクリル板50の裏面50bには第2裏面絵柄65が設けられた領域とこの第2裏面絵柄65が設けられていない領域とが設けられていること、該第2裏面絵柄65のアクリル板50の表面50a側は第3表面絵柄56が設けられていない領域であること、および、アクリル板50の裏面50b側には第3裏面絵柄166が設けられていることがそれぞれ図示されている。 上記(ア)?(オ)の記載事項および上記(カ)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(g)は、本願発明の構成A?Gに対応した事項を示している。 (a)上記(エ)の【0034】には「遊技領域31を遊技球が流下する際には、遊技球がアクリル板50の表面50aと摩擦接触して」と記載されている。 また、上記(カ)で言及したように図9には、厚みtを有するアクリル板50が図示されている。 そして、上記(イ)の【0023】には「遊技盤30は、図2に示すように、透明のアクリル素材で形成され各種絵柄などが描かれた平板状のアクリル板50に、・・・」と記載されていることから、アクリル板50は透明であるといえる。 さらに、上記(ア)の【0018】には「図1はパチンコ機10(遊技機)の外観を示す外観斜視図であり、図2はパチンコ機10の遊技盤30の構成の概略を示す構成図である」と記載されている。 したがって、先願2明細書等には、遊技球がアクリル板50の表面50aと摩擦接触して流下し、厚みtを有する透明なアクリル板50を備えるパチンコ機10が記載されているといえる。 (b)上記(カ)で言及したように図9には、アクリル板50の裏面50b側には第3裏面絵柄166が設けられていることが図示されている。 また、上記(エ)の【0035】には「パチンコ機10では、アクリル板50の裏面50bに影絵柄として設けられる第3裏面絵柄66を印刷やシール貼り付けなどにより裏面50bに固定したが、これに限られず、影絵柄として設けられる裏面絵柄を板状部材などの装飾部材でアクリル板50とは別に構成して移動可能としてもよい。図9に変形例の第3裏面絵柄166の構成を示す」と記載されている。 そして、上記(ウ)の【0027】には「扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄66」と記載されている。 したがって、先願2明細書等には、アクリル板50の裏面50b側に設けられている扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄166が記載されているといえる。 (c)上記(エ)の【0035】には「パチンコ機10では、アクリル板50の裏面50bに影絵柄として設けられる第3裏面絵柄66を印刷やシール貼り付けなどにより裏面50bに固定したが、これに限られず、影絵柄として設けられる裏面絵柄を板状部材などの装飾部材でアクリル板50とは別に構成して移動可能としてもよい。図9に変形例の第3裏面絵柄166の構成を示す」と記載され、「第3裏面絵柄166が設けられた装飾部材の要166aに駆動用モータ95の駆動軸が接続されており、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166(装飾部材)が要166aを中心に回転移動するよう構成されている」と記載されている。 したがって、先願2明細書等には、第3裏面絵柄166が要166aを中心に回転移動するように駆動する駆動用モータ95が記載されているといえる。 (d)上記(カ)で言及したように図9には、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられた領域とこの第3表面絵柄56が設けられていない領域とが設けられていることが図示されている。 また、上記(ウ)の【0026】には「扇子(扇)を描いた第3表面絵柄56」と記載されている。 したがって、先願2明細書等には、アクリル板50の表面50aには、扇子を描いた第3表面絵柄56が設けられた領域と設けられていない領域とが設けられていることが記載されているといえる。 (e)上記(カ)で言及したように図9には、アクリル板50の裏面50bには第2裏面絵柄65が設けられた領域とこの第2裏面絵柄65が設けられていない領域とが設けられていることが図示されている。 また、上記(ウ)の【0027】には「キャラクタを描いた第2裏面絵柄65」と記載されている。 したがって、先願2明細書等には、アクリル板50の裏面50bには、キャラクタを描いた第2裏面絵柄65が設けられた領域と設けられていない領域とが設けられていることが記載されているといえる。 (f)上記(カ)で言及したように図9には、第2裏面絵柄65のアクリル板50の表面50a側は第3表面絵柄56が設けられていない領域であることが図示されており、上記(イ)の【0023】には「透明のアクリル素材で形成され各種絵柄などが描かれた平板状のアクリル板50」と記載されているようにアクリル板50は透明であるといえるから、第2裏面絵柄65は、アクリル板50の表面50a側の第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視できるといえる。 したがって、先願2明細書等には、第2裏面絵柄65は、アクリル板50の表面50a側の第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視できることが記載されているといえる。 (g)上記(ウ)の【0031】には「裏面50bの第3裏面絵柄66は、表面50aの第3表面絵柄56の背後に位置しており、・・・この第3表面絵柄56は、アクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄66と離れている分、第3裏面絵柄66(裏面50b)から浮き出たように見えるから、第3表面絵柄56の立体感を高めることができる」と記載され、上記(エ)の【0035】には「パチンコ機10では、アクリル板50の裏面50bに影絵柄として設けられる第3裏面絵柄66を印刷やシール貼り付けなどにより裏面50bに固定したが、これに限られず、影絵柄として設けられる裏面絵柄を板状部材などの装飾部材でアクリル板50とは別に構成して移動可能としてもよい。図9に変形例の第3裏面絵柄166の構成を示す」と記載されている。 また、上記(カ)で言及したように、図9には、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられた領域とこの第3表面絵柄56が設けられていない領域とが設けられていること、アクリル板50の裏面50bには第2裏面絵柄65が設けられた領域とこの第2裏面絵柄65が設けられていない領域とが設けられていること、および、アクリル板50の裏面50b側には第3裏面絵柄166が設けられていることがそれぞれ図示されている。 そして、上記(エ)の【0036】には「昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し」と記載され、上記(カ)で言及したように図9には、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられた領域とこの第3表面絵柄56が設けられていない領域とが設けられていることが図示されているから、第3裏面絵柄166はアクリル板50の表面50a側の第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視できるといえる。 さらに、上記(エ)の【0035】には「第3裏面絵柄166が設けられた装飾部材の要166aに駆動用モータ95の駆動軸が接続されており、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166(装飾部材)が要166aを中心に回転移動するよう構成されている」ことが記載され、【0036】に「昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄66と重なる位置として(移動させずに)影を出さないものなどとしてもよい」ことが記載されている。 なお、上記【0036】には、「・・・図10に示す。図示するように、・・・夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄66と重なる位置として・・・」と記載されているものの、図10には56はあるが66はなく、【0026】の「第3表面絵柄56」、【0031】の「第3表面絵柄56」等の記載を参酌すれば、上記【0036】の「第3表面絵柄66」は「第3表面絵柄56」の誤記であることは明らかである。 したがって、先願2明細書等には、第3表面絵柄56はアクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄166と離れており、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられ、裏面50bには第2裏面絵柄65および第3裏面絵柄166が設けられており、第3裏面絵柄166はアクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動するよう構成され、昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄56と重なる位置として影を出さないようにすることが記載されているといえる。 したがって、上記(ア)?(オ)の記載事項、上記(カ)の図示内容、上記(a)?(g)認定事項を総合すれば、先願2明細書等には次の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されている(a?gは先願発明2を分説するため当審で付した。)。 「a 遊技球がアクリル板50の表面50aと摩擦接触して流下し、厚みtを有する透明なアクリル板50を備えるパチンコ機10であって、 b アクリル板50の裏面50b側に設けられている扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄166と、 c 第3裏面絵柄166が要166aを中心に回転移動するように駆動する駆動用モータ95と、 d アクリル板50の表面50aには、扇子を描いた第3表面絵柄56が設けられた領域と設けられていない領域とが設けられ、 e アクリル板50の裏面50bには、キャラクタを描いた第2裏面絵柄65が設けられた領域と設けられていない領域とが設けられ、 f 第2裏面絵柄65は、アクリル板50の表面50a側の第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき、 g 第3表面絵柄56はアクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄166と離れており、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられ、裏面50bには第2裏面絵柄65および第3裏面絵柄166が設けられており、第3裏面絵柄166はアクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動するよう構成され、昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄56と重なる位置として影を出さないようにする パチンコ機10。」 2.対比・判断 本願発明と先願発明2とを対比する。対比の見出しとしての(a)?(g)は先願発明2の分説構成と対応させた。 (a)先願発明2の「アクリル板50」、「パチンコ機10」は、それぞれ本願発明の「遊技パネル」、「遊技機」に相当する。 したがって、先願発明2の「遊技球がアクリル板50の表面50aと摩擦接触して流下し、厚みtを有する透明なアクリル板50を備えるパチンコ機10」は、本願発明の「表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機」に相当する。 (b)先願発明2の「扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄166」は、扇子の影を模した影絵柄であるので装飾であるといえ、また、第3裏面絵柄166はアクリル板50の裏面50b側に設けられるので、アクリル板50の後方に位置する装飾であるといえるから、本願発明の「後方装飾手段」に相当する。 したがって、先願発明2の「アクリル板50の裏面50b側に設けられている扇子の影を模した影絵柄として描かれた第3裏面絵柄166」は、本願発明の「前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段」に相当する。 (c)先願発明2の「第3裏面絵柄166が要166aを中心に回転移動する」ことは、第3裏面絵柄166が回転移動することによって見える様子が変化するといえるから、本願発明の「後方装飾手段の装飾態様を変化させる」ことに相当する。 また、先願発明2の「駆動用モータ95」は、第3裏面絵柄166を回転移動させて見える様子を変化させる手段であるといえるから、本願発明の「装飾態様変更手段」に相当する。 したがって、先願発明2の「第3裏面絵柄166が要166aを中心に回転移動するように駆動する駆動用モータ95」は、本願発明の「前記後方装飾手段の装飾態様を変化させる装飾態様変更手段」に相当する。 (d)先願発明2の「扇子を描いた第3表面絵柄56」は、アクリル板50の表面50aに設けられているから、本願発明の「表面側絵柄」に相当する。 また、先願発明2の「扇子を描いた第3表面絵柄56が」「設けられていない領域」は、アクリル板50の表面50a側であり、アクリル板が透明であることから透明の領域であるといえるから、本願発明の「前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域」に相当する。 したがって、先願発明2の「アクリル板50の表面50aには、扇子を描いた第3表面絵柄56が設けられた領域と設けられていない領域」は、本願発明の「前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄が付された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域」に相当する。 (e)先願発明2の「キャラクタを描いた第2裏面絵柄65」は、アクリル板50の裏面50bに設けられているから、本願発明の「裏面側絵柄」に相当する。 また、先願発明2の「キャラクタを描いた第2裏面絵柄65が」「設けられていない領域」は、アクリル板50の裏面50b側であり、アクリル板が透明であることから透明の領域であるといえるから、本願発明の「前記裏面側絵柄が付されていない裏面側透明領域」に相当する。 したがって、先願発明2の「アクリル板50の裏面50bには、キャラクタを描いた第2裏面絵柄65が設けられた領域と設けられていない領域」は、本願発明の「前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄が付された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄が付されていない裏面側透明領域」に相当する。 (f)上記(e)において言及したように、先願発明2の「第2裏面絵柄65」は本願発明の「裏面側絵柄」に相当し、上記(d)において言及したように、先願発明2の「第3表面絵柄56が」「設けられていない領域」は本願発明の「前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域」に相当するから、先願発明2の「第2裏面絵柄65は、アクリル板50の第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき」ることは、本願発明の「前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域から透視可能であ」ることに相当する。 (g)先願発明2の「第3裏面絵柄166はアクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき」ることから、第3裏面絵柄166とは、アクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視できる第3裏面絵柄166といえると共に、先願発明2の「駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動する」ことは、駆動用モータ95は、その駆動によって第3裏面絵柄166を回転移動させているから、先願発明2の「駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動する」ことは、駆動用モータ95は、アクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視できる第3裏面絵柄166を回転移動させることといえる。また、この先願発明2の第3裏面絵柄166を回転移動させることは、第3裏面絵柄166を回転移動させることでその見える様子を変化させているといえるから、本願発明の「前記後方装飾手段の装飾態様を変化させること」に相当し、上記(d)において言及したように、先願発明2の「駆動用モータ9」は、本願発明の「装飾態様変更手段」に相当する。これらのことから、先願発明2の「駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動する」ことは、本願発明の「前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域を通して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させること」に相当する。 また、先願発明2の「第3表面絵柄56はアクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄166と離れており、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられ、裏面50bには第2裏面絵柄65および第3裏面絵柄166が設けられ」ることから、第3表面絵柄56はアクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄166と離れて位置しており、裏面50bには第3裏面絵柄166の他に第2裏面絵柄65も設けられており、「第3表面絵柄56」と「第2裏面絵柄65」と「第3裏面絵柄166」とは奥行きのある複数の装飾であるといえるので、先願発明2の「昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄56と重なる位置として影を出さないようにする」ことは、「第3表面絵柄56」と「第2裏面絵柄65」と「第3裏面絵柄166」とによる奥行きのある複数の装飾の見える様子に変化を与えているともいえる。このことから、先願発明2の「昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄56と重なる位置として影を出さないようにする」ことは、本願発明の「前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える」ことに相当する。 したがって、先願発明2の「第3表面絵柄56はアクリル板50の厚みtだけ第3裏面絵柄166と離れており、アクリル板50の表面50aには第3表面絵柄56が設けられ、裏面50bには第2裏面絵柄65および第3裏面絵柄166が設けられており、第3裏面絵柄166はアクリル板50の表面50aの第3表面絵柄56が設けられていない領域から透視でき、駆動用モータ95の駆動によって第3裏面絵柄166が回転移動するよう構成され、昼間の演出中は第3裏面絵柄166を移動させて影を出し、夜の演出中は第3裏面絵柄166を第3表面絵柄56と重なる位置として影を出さないようにする」ことは、本願発明の「前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域を透して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える」ことに相当する。 上記(a)?(g)の検討より、本願発明と先願発明2とは、 「A 表面を遊技球が流下可能であり、所定の厚みを有する透明な遊技パネルを備えた遊技機であって、 B 前記透明な遊技パネルの裏面側に設けられた後方装飾手段と、 C 前記後方装飾手段の装飾態様を変化させる装飾態様変更手段と、 を備え、 D 前記透明な遊技パネルの表面には、所定の表面側絵柄が付された表面側絵柄領域と、前記表面側絵柄が付されていない表面側透明領域とが設けられ、 E 前記透明な遊技パネルの裏面には、所定の裏面側絵柄が付された裏面側絵柄領域と、前記裏面側絵柄が付されていない裏面側透明領域とが設けられ、 F 前記裏面側絵柄は、前記透明な遊技パネルの表面における前記表面側透明領域、あるいは、前記透明な遊技パネルの切欠き端面から透視可能であり、 G 前記装飾態様変更手段は、前記透明な遊技パネルにおける前記表面側透明領域を透して視認可能な前記後方装飾手段の装飾態様を変化させることによって、前記表面側絵柄と前記裏面側絵柄と前記後方装飾手段とによる奥行きのある複合装飾の視認態様に変化を与える 遊技機。」 である点で一致し、両者の間に相違点はない。 よって、本願発明は先願発明2と同一であり、しかも、本願発明の発明者がその先願発明2の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、本願発明は特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-31 |
結審通知日 | 2017-06-06 |
審決日 | 2017-06-22 |
出願番号 | 特願2014-127716(P2014-127716) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 英司 |
特許庁審判長 |
瀬津 太朗 |
特許庁審判官 |
青木 洋平 川崎 優 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | あいわ特許業務法人 |