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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1331192
異議申立番号 異議2016-701079  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-22 
確定日 2017-06-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5926896号発明「唇用固形化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 1.特許第5926896号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。2.特許第5926896号の請求項1及び3?8に係る特許を維持する。3.特許第5926896号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5926896号(請求項の数は8、以下「本件特許」という。)は、平成23年6月8日(優先権主張平成22年9月17日)に特許出願され、平成28年4月28日にその特許権の設定登録がされたものである。
その後、特許異議申立人西村英人(以下、単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1?8に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがされ、平成29年3月23日付けで取消理由が通知され、同年5月29日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで特許請求の範囲及び明細書の訂正(以下、「本件訂正」という。)が請求された。

2.本件訂正の可否
(1)訂正の内容
訂正請求書並びにそれに添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書によれば、特許権者の求める本件訂正の内容は、実質的に以下ア.?ウ.のとおりである。

ア.訂正事項1
特許請求の範囲を、請求項2の削除を含め、以下のとおり訂正する。

・本件訂正前
「【請求項1】
(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料において、(a)と(b)が90℃で均一に分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項3】
請求項2に記載の化粧料において、・・・。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の化粧料において、・・・。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の化粧料において、・・・。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の化粧料において、、・・・。
【請求項7】
請求項6に記載の化粧料において、、・・・。
【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載の化粧料において、、・・・。」

・本件訂正後
「【請求項1】
(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(a)と(b)が90℃で均一に分散し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項2】
【請求項3】
請求項1に記載の化粧料において、・・・。
【請求項4】
請求項1または3のいずれかに記載の化粧料において、・・・。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれかに記載の化粧料において、・・・。
【請求項6】
請求項1、3?5のいずれかに記載の化粧料において、・・・。
【請求項7】
請求項6に記載の化粧料において、・・・。
【請求項8】
請求項1、3?7のいずれかに記載の化粧料において、・・・。」

イ.訂正事項2
明細書の段落【0006】を、以下のとおり訂正する。

・訂正前
「すなわち、本発明にかかる唇用固形化粧料は、・・・を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする。」

・訂正後
「すなわち、本発明にかかる唇用固形化粧料は、・・・を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(a)と(b)が90℃で均一に分散し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする。」

ウ.訂正事項3
明細書の段落【0007】を、以下のとおり訂正する。

・訂正前
「前記化粧料において、(a)と(b)が90℃で均一に分散していることが好適である。
前記化粧料において、(d)・・・」

・訂正後
「前記化粧料において、(d)・・・」

(2)本件訂正の可否についての判断
ア.訂正事項1について
(ア)請求項1についての訂正
この訂正は、請求項1に係る発明である「唇用固形化粧料」を特定するための事項として、「(a)と(b)が90℃で均一に分散し、」なる要件を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、上記要件は願書に添付した特許請求の範囲の請求項2や、同明細書の段落【0008】に記載されており、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)請求項2についての訂正
この訂正は、請求項の記載を削除する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(ウ)請求項3?8についての訂正
この訂正は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3?8について、実質的に請求項1についての訂正と同様に訂正するとともに、請求項2の記載を削除するのに伴い、その引用関係を整理するものである。そして、上記(ア)及び(イ)にて指摘したとおり、請求項1及び2についての訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、この訂正についても、実質的に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(エ)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?8は、請求項2?8が請求項1の記載を直接又は間接的に引用しているから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものであるといえる。

イ.訂正事項2、3について
この訂正は、明細書の段落【0006】及び【0007】の記載について、特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
よって、結論1.のとおり、本件訂正を認める。

エ.補足
本件訂正後の請求項1が、実質的に訂正前の請求項2と同じ内容であることからすれば、本件訂正のうち、特許請求の範囲についての訂正は、請求項1を削除する訂正に等しいといえる。そうすると、本件訂正後の請求項の内容について、改めて特許異議申立人に意見を聞くまでもないことは明らかである。
したがって、当合議体は、本件訂正について、特許法第120条の5第5項に規定される「特別な事情」があると判断し、異議申立人に意見書を提出する機会を与えることなく以下審理を行ったところ、念のため付言する。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.で検討のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1及び3?8に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明3」?「本件発明8」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び3?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、請求項3?8の記載は省略する。)。

「【請求項1】
(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(a)と(b)が90℃で均一に分散し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。」

(2)当審による取消理由について
ア.取消理由の概要
平成29年3月23日付け取消理由の内容は、概略、以下のとおりである。
「理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)本件特許明細書中において、「分離」の定義が一つに定まっているとはいえないため、本件発明1?8は明確でない。
(2)本件特許明細書中において、「分散」の定義が一つに定まっているとはいえないため、本件発明2?8は明確でない。

理由2(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明は「塗布直後より二次付着レス効果に優れ、安定性も良好な唇用固形化粧料を提供すること」を解決課題とするものであるのに対し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の発明特定事項を満たすと思われる試験例1-3の口紅について(【0061】【表1】)、安定性は「×」、二次付着レス効果は「-」との評価が示されているのであるから、本件発明1では、上記課題が解決できないことは明らかであり、本件発明1?8は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

イ.理由1(特許法第36条第6項第2号)についての当審の判断
以下(ア)及び(イ)で述べるとおり、本件発明1及びこれらを引用する本件発明3?8は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものである。

(ア) 「分離」の定義について
本件特許の明細書【0016】段落には、「(a)と(b)を、(a):(b)=1:1(質量比)で用いて、90℃に加温し、攪拌混合し、次いで静置し、混合物が25℃になった場合に、境界が均一に2層に分離しているものを「分離する」とし、半透明な状態、または、境界がなく透明な相溶した状態を「分離せず」とした。」と記載されており、この記載に基づくと、「分離」しているか否かの判断は、(a)成分と(b)成分のみを25℃で混合した時の状態に基づいて解釈されるべきものといえる。そして、本件発明1における「(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し」との規定においても、「25℃で混合した時に」との条件が設けられていることから、同様の解釈が導かれる。
よって、本願発明1における「分離」の定義は明確である。
なお、上記の解釈は、平成29年5月29日付け意見書における、「本願請求項1における「分離」の定義は、本願明細書段落0016に記載の通りです。」(第4頁第23?24行参照)との特許権者の主張とも整合する。

(イ)「分散」の定義について
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2には「請求項1に記載の化粧料において、(a)と(b)が90℃で均一に分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。」と記載され、同明細書の段落【0007】には、「前記化粧料において、(a)と(b)が90℃で均一に分散していることが好適である。」と記載されている。これらの記載に基づくと、「分散」しているか否かの判断は、他の成分が含有され得る「唇用固形化粧料」における(a)と(b)の状態に基づいて解釈されるべきものといえる。
よって、本願発明1における「分散」の定義は明確である。
なお、上記の解釈は、本件訂正の訂正請求書における、「訂正前の請求項2の発明特定事項・・・を請求項1に組み入れるものである」との特許権者の主張とも整合する。

ウ.理由2(特許法第36条第6項第1号)についての当審の判断
本件訂正によって、本件発明1に「(a)と(b)が90℃で均一に分散し、」なる要件が追加され、これによって、試験例1-3の口紅(段落【0061】の【表1】参照)は、本件発明1の範囲に含まれないものとなった。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。
よって、本件発明1及びこれらを引用する本件発明3?8は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。

(3)異議申立理由について
ア.異議申立理由の概要
異議申立人の主張する異議申立理由は、概略、以下のとおりである。

○申立理由1
本件発明1-8は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
○申立理由2
本件発明1、2、4?7は、甲第2号証に記載された発明と実質的に同一であり、それらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
○申立理由3
本件発明1-8は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
○申立理由4
本件発明1?8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号又は同第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

甲第1号証:特開2009-280570号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2001-199846号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2006-022015号公報(以下「甲3」という。)

イ.当合議体の判断
当合議体は、以下に述べるとおり、上記申立理由1?4にはいずれも理由がないと判断する。

(ア)申立理由1について
A.本件発明1について
a.甲1に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、「セレシンを12.0重量%、カルナウバワックスを1.0重量%、水添ポリイソブテンを20.0重量%、フェニルトリメチコンを20.0重量%含有する、口紅」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(実施例11(段落【0035】)参照)。

b.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者における「水添ポリイソブテン」は前者における「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油」に、後者における「フェニルトリメチコン」は前者における「(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油」に、後者における「セレシン」及び「カルナウバワックス」は前者における「(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックス」に、後者における「口紅」は前者における「唇用固形化粧料」に、それぞれ相当するものと認められる。また、上記(a)成分の含有量について、後者における「20.0重量%」は前者における「6?25質量%」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含む、唇用固形化粧料。」

<相違点>
相違点1:
本件発明1においては、(i)「(a)と(b)を25℃で混合した時に分離」すること、(ii)「(a)と(b)が90℃で均一に分散」すること、及び(iii)「(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している」ことが特定されているのに対し、甲1発明ではそのことが特定されていない点。
相違点2:
(b)成分の含有量について、本件発明1においては、「40?70質量%」であることが特定されているのに対し、甲1発明では「20.0重量%」である点。

c.相違点についての判断
上記相違点1に関し、本件特許の明細書には、上記(i)と(ii)の要件を同時に満たす場合に優れた安定性と二次付着レス効果が奏されること(試験例1-3及び1-4(段落【0061】の【表1】)参照)、及び、上記(iii)の要件を満たす場合に、そうでない場合よりも優れた二次付着レス効果が奏されること(試験例3-3?3-8(段落【0078】の【表4】)参照)、が具体的な試験結果を伴って記載されている。
他方、甲1及び甲3には、(a)成分に相当する「水添ポリイソブテン」と、(b)成分に相当する「フェニルトリメチコン」の分離・分散状態についての記載はなく、また、上記(i)?(iii)の要件を満たすことによって安定性や二次付着レス効果を向上させ得ることについて、そのことを明示ないし示唆するような記載も見受けられない。
そうすると、甲1発明において、上記(i)?(iii)の要件を満たそうとする動機はなく、他方、本件発明1は、これらの要件を満たすことによって、優れた効果を奏するものであるから、上記相違点1が想到容易であるということはできない。
異議申立人はこの点に関し、「単に甲1発明において具体的に記載されていない性質を明記したものにすぎず、同様の成分を使用している以上は、甲1発明においても各成分は本件特許発明1と同様の性質を有すると考えるべきものである。」と主張している。
しかしながら、本件特許の試験例1-3(段落【0061】の【表1】)参照)には、本件発明1において規定される量の(a)?(c)成分を含んでいても、(ii)「(a)と(b)が90℃で均一に分散」の要件を満たさない試験結果が示されているところ、この記載からも明らかなように、本件発明1と同様の成分が使用されていても、上記(i)?(iii)の要件を満たすとは限らないものと認められる。そして、甲1発明が上記(i)?(iii)の要件を満たすと認めるに足る証拠はなく、異議申立人の上記主張を採用することはできない。

さらに、相違点2について、甲1発明において、(b)成分に相当する「フェニルトリメチコン」は任意成分として配合されており、この成分の配合量を増加させようとする積極的な動機があったとも認められない。

d.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1及び甲3に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

B.本件発明3?8について
請求項3?8の記載は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして、本件発明1が、甲1及び甲3から想到容易であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明3?8も同様の理由により、想到容易であるということはできない。

C.まとめ
以上のとおりであるから,異議申立人が主張する申立理由1には理由がない。

(イ)申立理由2について
A.本件発明1について
a.甲2に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には、「水素化ポリイソブテンを11.15重量%、マイクロクリスタリンワックスを7.63重量%、及びフェニルトリメチコーン(1000cSt)を41.21重量%含有する、口紅」の発明(以下「甲2-1発明」という。)が記載されていると認められる(実施例2(段落【0050】)参照)。

b.対比
本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、後者における「水素化ポリイソブテン」は前者における「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油」に、後者における「フェニルトリメチコーン(1000cSt)」は前者における「(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油」に、後者における「マイクロクリスタリンワックス」は前者における「(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックス」に、後者における「口紅」は前者における「唇用固形化粧料」に、それぞれ相当するものと認められる。また、上記(a)成分の含有量について、後者における「11.15重量%」は前者における「6?25質量%」に相当し、上記(b)成分の含有量について、後者における「41.21重量%」は前者における「40?70質量%」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2-1発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含む、唇用固形化粧料。」

<相違点>
相違点:
本件発明1においては、(i)「(a)と(b)を25℃で混合した時に分離」すること、(ii)「(a)と(b)が90℃で均一に分散」すること、及び(iii)「(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している」ことが特定されているのに対し、甲2-1発明ではそのことが特定されていない点。

c.相違点についての判断
甲2には、(a)成分に相当する「水素化ポリイソブテン」と、(b)成分に相当する「フェニルトリメチコーン(1000cSt)」の分離・分散状態について、記載も示唆もされていない。また、甲2-1発明において、これらの成分が上記(i)?(iii)の要件を満たすことが、本件特許の優先日時点の技術常識からみて、記載されているに等しい事項であったとも認められない。
異議申立人はこの点に関し、「単に甲2発明において具体的に記載されていない性質を明記したものにすぎず、同様の原料を使用している以上は、甲2発明においても本件特許発明1と同様の性質が得られると考えるべきものである。」と主張している。
しかしながら、上記(ア)A.c.で述べたとおり、本件発明1と同様の原料が使用されていても、上記(i)?(iii)の要件を満たすとは限らないものと認められ、そして、甲2-1発明が上記(i)?(iii)の要件を満たすと認めるに足る証拠はなく、異議申立人の上記主張を採用することはできない。

d.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2-1発明と同一であるということはできない。

B.本件発明4?7について
請求項4?7の記載は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして、本件発明1が、甲2-1発明と同一であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明4?7も同様の理由により、甲2-1発明と同一であるということはできない。

C.まとめ
以上のとおりであるから,異議申立人が主張する申立理由2には理由がない。

(ウ)申立理由3について
A.本件発明1について
a.甲2に記載された発明
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には、「水素化ポリイソブテンを11.00重量%、ポリエチレンワックスを10.00重量%、及びフェニルトリメチコーン(1000cSt)を35.00重量%含有する、棒状口紅」の発明(以下「甲2-2発明」という。)が記載されていると認められる(実施例5(段落【0054】)参照)。

b.対比
本件発明1と甲2-2発明とを対比すると、後者における「水素化ポリイソブテン」は前者における「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油」に、後者における「フェニルトリメチコーン(1000cSt)」は前者における「(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油」に、後者における「ポリエチレンワックス」は前者における「(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックス」に、後者における「棒状口紅」は前者における「唇用固形化粧料」に、それぞれ相当するものと認められる。また、上記(a)成分の含有量について、後者における「11.00重量%」は前者における「6?25質量%」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2-2発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含む、唇用固形化粧料。」

<相違点>
相違点1:
本件発明1においては、(i)「(a)と(b)を25℃で混合した時に分離」すること、(ii)「(a)と(b)が90℃で均一に分散」すること、及び(iii)「(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している」ことが特定されているのに対し、甲2-2発明ではそのことが特定されていない点。
相違点2:
(b)成分の含有量について、本件発明1においては、「40?70質量%」であることが特定されているのに対し、甲2-2発明では「35.00重量%」である点。

c.相違点についての判断
上記相違点1に関し、甲2及び甲3には、(a)成分に相当する「水素化ポリイソブテン」と、(b)成分に相当する「フェニルトリメチコーン(1000cSt)」の分離・分散状態についての記載はなく、また、上記(i)?(iii)の要件を満たすことによって安定性や二次付着レス効果を向上させ得ることについて、そのことを明示ないし示唆するような記載も見受けられない。
そうすると、甲2-2発明において、上記(i)?(iii)の要件を満たそうとする動機はなく、他方、上記(ア)A.c.で述べたとおり、本件発明1は、これらの要件を満たすことによって、優れた効果を奏するものであるから、上記相違点1が想到容易であるということはできない。
異議申立人の「単に甲2発明において具体的に記載されていない性質を明記したものにすぎず、同様の原料を使用している以上は、甲2発明においても本件特許発明1と同様の性質が得られると考えるべきものである。」との主張については、上記(イ)A.c.で述べたとおりであり、採用することができない。

d.小括
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2及び甲3に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

B.本件発明3?8について
請求項3?8の記載は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして、本件発明1が、甲2及び甲3から想到容易であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明3?8も同様の理由により、想到容易であるということはできない。

C.まとめ
以上のとおりであるから,異議申立人が主張する申立理由3には理由がない。

(エ)申立理由4について
異議申立人は、概略、以下のような点を指摘して、本件発明が、特許法第36条第4項1号又は同第6項第1号の規定により特許を受けることができない旨主張をしている。

○本件特許の明細書においては、(b)成分として、特定の「メチルフェニルシリコーン」を用いた試験例が記載されているのみであり、性状や性質が大きく異なるその他の「メチルフェニルシリコーン」においても同様の作用・効果が発現すると判断する根拠はない。
○どのようにすれば「(a)と(b)を25℃で混合したときに分離する」との要件を満たすといえるかが明らかにされておらず、当業者が相当の検討を行うことが必要である。
○請求項1において、(a)成分6?25重量%(b)成分40?70重量%という広い範囲において権利を主張しているが、その全範囲において効果が確認されていない。

しかしながら、本件特許の明細書においては、(i)「(a)と(b)を25℃で混合した時に分離」及び(ii)「(a)と(b)が90℃で均一に分散」の要件を同時に満たす場合に優れた安定性と二次付着レス効果が奏されることが、具体的な試験結果を伴って記載されており(試験例1-3及び1-4(段落【0061】の【表1】)参照)、また、そのような効果が奏される理論的根拠も記載されている(段落【0018】参照)。
したがって、本件特許の明細書の実施例において具体的に示された(a)及び(b)成分の組合せ以外のものを用いたとしても、上記(i)及び(ii)の要件を同時に満たす場合には、本件発明と同様の効果が奏されるものと推認される。そして、異議申立書において、そのことを否定し得る根拠が示されているともいえない。
また、本件発明においては、(a)成分及び(b)成分は、それぞれ一定の選択肢から選択されることが特定されていることから、上記(i)及び(ii)の要件を同時に満たす(a)成分と(b)成分の組合せを特定することが、当業者にとって格別困難であるとは認められない。
よって、異議申立人の上記主張を採用することはできず、異議申立人が主張する申立理由4には理由がない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1及び3?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び3?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
唇用固形化粧料
【技術分野】
【0001】
本発明は唇用固形化粧料に関し、特に塗布直後より二次付着レス効果に優れ、安定性も良好な唇用固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の唇用化粧料は、口紅を唇に塗布した後、該口紅がカップなど唇に接触する部位に転写されてしまう二次付着性が問題となっていた。これに対し、二次付着を起こしにくい、いわゆる二次付着レス効果をもつ唇用化粧料が開発されている。
例えば、特許文献1では、揮発性炭化水素系溶媒、揮発性炭化水素系溶媒に溶解または分散可能な非揮発性シリコーン化合物、及び揮発性溶媒に溶解し、非揮発性シリコーン化合物と非融和性の非揮発性炭化水素系油を含有し、該非揮発性炭化水素系油が、ある溶解パラメーターを有する耐移り性化粧品組成物が開示されている。
しかしながらこの耐移り性化粧品組成物は、安定性の点で改善の余地があり、つやも不十分である。また、二次付着レス効果の発現には、塗布後しばらく時間がかかり、揮発性の油分を必須成分として含んでいるため、容器の制約がある、という問題点がある。
特許文献2には、非融和性であるペルフルオロポリエーテル型の非揮発性油と揮発性油を含有する耐移り性を有する口紅組成物が記載されている。この特許文献2では支持体への適用中に油分が分離し、第一組成物の上に油分が移動するようになっている。
しかしながら、この口紅組成物は、二次付着レス効果の発現には塗布後、しばらく時間がかかり、揮発性の油分を必須成分として含んでいるため、容器の制約がある、という問題点がある。
特許文献3には、揮発性油分と組み合わせてシリコーン界面活性剤を配合し、顔料を良好に分散させた耐移り性を有するスティック化粧品が開示されている。
しかしながら、このスティック化粧品は揮発性油分の組成物における割合が大きいためマットな仕上がりとなり、唇に乾燥感を生じやすいという欠点がある。
特許文献4には、揮発性油分とシリコーン樹脂を配合した一相型の口紅用組成物が開示されている。
しかしながら、この口紅用組成物は、耐移り性は改善されるものの、揮発性油が蒸発した後に時間が経つと乾燥感が生じやすく、また樹脂の皮膜が唇上に残り、皮膜感や突っ張り感を生じると共に、得られた付着物はマットであるという欠点がある。
特許文献5には、シリコーン系皮膜剤と揮発性シリコーン系油分と非揮発性シリコーン系液状油分と乳化剤とを含む連続相油分と、エステル油分と色材とを含む分散相油分とからなり、分散相油分/(分散相油分+連続相油分)の配合量比が0.05?0.5である油中油型乳化組成物が記載されている。
しかしながら、この油中油型乳化組成物は経時安定性を保つことが困難な場合がある。また、二次付着レス効果の発現には、塗布後しばらく時間がかかり、揮発性の油分を必須成分として含んでいるため、容器の制約がある、という問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-199846号公報
【特許文献2】国際公開96/40044号公報
【特許文献3】国際公開97/16157号公報
【特許文献4】特開平9-48709号公報
【特許文献5】特開2000-53530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み行われたものであり、塗布直後より二次付着レス効果に優れ、安定性も良好な唇用固形化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが前述の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(a)密着油、(b)該密着油と混合した時に、25℃で分離し、該密着油より粘性が低いしみ出し油、(c)少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックス、を配合することにより、塗布直後より二次付着レス効果に優れ、安定性も良好な唇用固形化粧料を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる唇用固形化粧料は、(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(a)と(b)が90℃で均一に分散し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする。
【0007】
前記化粧料において、(d)セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オリーブ油、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ミネラルオイル、流動パラフィン、スクワラン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソパラフィン、オレフィンオリゴマー、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)から選択される、90℃で(a)と混合した時、および90℃で(b)と混合した時に分離しないつなぎ成分を含むことが好適である。
前記化粧料において、(b)がメチルフェニルシリコーンであることが好適である。
前記化粧料において、(e)色材を含むことが好適である。
前記化粧料において、(a)に固形油もしくは半固形油を含むことが好適である。
前記化粧料において、(a)に半固形油を含むことが好適である。
前記化粧料において、化粧料全量中(a)を6?50質量%、(b)を25?70質量%、(c)を4?12質量%、(d)を0.5?16質量%、(e)を3?15質量%含むことが好適である。
前記化粧料において、(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることが好適である。
前記(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している化粧料において、化粧料全量中(a)を6?25質量%、(b)を40?70質量%含むことが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる唇用固形化粧料は、(a)密着油と、(b)該密着油と混合した時に、25℃で分離し、該密着油より粘性が低いしみ出し油と、(c)少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含有するしみ出し油中に密着油、または密着油中にしみ出し油が分散している化粧料であり、塗布直後より二次付着レス効果に優れ、安定性も良好な唇用固形化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 本発明にかかる唇用固形化粧料の(A)製造時、(B)製品化(固化)時、(C)唇への塗布時の機構を説明した図である。
【図2】 ポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックスおよびトリメチルペンタフェニルトリシロキサン(ワックス:油分=1:10)の系のレオロジー測定結果である。
【図3】 本発明にかかる唇用固形化粧料(試験例2-3)をSEMで観察した写真である。
【図4】 試験例2-1の唇用固形化粧料をSEMで観察した写真である。
【図5】 (b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している場合の状態を顕微鏡により観察した写真である(唇用固形化粧料製造時(ワックスを除く全成分の混合時)に撮影)。
【図6】 本発明にかかる唇用固形化粧料のレオロジー的解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる唇用固形化粧料は、(a)密着油、(b)該密着油と混合した時に、25℃で分離し、該密着油より粘性が低いしみ出し油、(c)少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックス、から構成されている。以下、各成分について詳述する。
【0011】
((a)密着油)
(a)密着油は、唇上に密着する油分である。密着油には、下記(b)成分であるしみ出し油より粘性の高いものであれば、唇用固形化粧料に通常用いられる油分を用いることができる。
【0012】
密着油としては、例えば、モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、フィタントリオール、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、半固形油等が挙げられる。
ポリイソステアリン酸ポリグリセリルとしては、例えば、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
【0013】
本発明にかかる唇用固形化粧料において、(a)成分に半固形油を含むことが好適である。
半固形油としては、例えば、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸エステル、マカダミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネート、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等が挙げられる。
ダイマージリノール酸エステルとしては、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)等が挙げられる。
【0014】
(a)密着油の配合量は、化粧料全量に対して6?50質量%であることが好適である。(a)成分の配合量が6質量%未満では、塗布時に分離せず、二次付着レス効果を発現しない場合がある。また50質量%を超えると、塗布時に分離しにくくなり二次付着レス効果を発現しない場合がある。
【0015】
((b)しみ出し油)
(b)しみ出し油は、唇に塗布した際に表層にしみ出る油分である。(b)しみ出し油は、(a)密着油と混合した時に、25℃で分離する油分であって、該密着油より粘性が低いことが必要である。また、(b)しみ出し油は、(a)密着油と混合した時に、90℃では均一に分散することが好適である。
本発明の唇用固形化粧料に配合される(b)しみ出し油は一種であっても、二種以上の混合物であっても良い。
【0016】
ここで、「分離」の有無は、以下の条件で測定された。
(測定条件)
(a)と(b)を、(a):(b)=1:1(質量比)で用いて、90℃に加温し、攪拌混合し、次いで静置し、混合物が25℃になった場合に、境界が均一に2層に分離しているものを「分離する」とし、半透明な状態、または、境界がなく透明な相溶した状態を「分離せず」とした。
【0017】
なお、(b)成分として二種以上のメチルフェニルシリコーンを用いる場合、分離の有無は、それらの配合割合により異なる。このため、分離の有無は、(b)成分の配合割合に応じて確認する必要がある。
【0018】
このような(b)成分を用いることで、本発明の唇用固形化粧料を唇に塗布した際、唇用固形化粧料と唇のシェアにより、ただちに(a)成分と(b)成分は分離し、(a)成分は唇上に密着し、(b)成分は表層に分離するため、二次付着レス効果が発現する。このような唇用固形化粧料が物についた際には、通常透明である(b)成分のみが付着する。加えて、(b)成分は大量に存在するため、物と唇のシェアによって、再び(b)成分は表層に分離する。したがって、本発明にかかる唇用固形化粧料は、長時間にわたって二次付着レス効果を発現することもできる。
【0019】
しみ出し油としては、例えば、メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノイン、トリイソステアリン、硬化ヒマシ油、流動パラフィン、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル・フィトステリル)等が挙げられる。
【0020】
メチルフェニルシリコーンとしては、例えば、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン等が挙げられる。
【0021】
(b)しみ出し油の配合量は、化粧料全量に対して25?70質量%であることが好適である。(b)成分の配合量が25質量%未満では、塗布時に分離しにくくなり二次付着レス効果を発現しない場合がある。また70質量%を超えると、密着油の配合量が少なすぎて、二次付着レス効果が発現しない場合がある。
【0022】
本発明にかかる唇用固形化粧料において、(a)成分より(b)成分の粘性が低いことが必要である。
(a)成分と(b)成分に粘性に差があるものを選択することにより、二次付着レス効果に優れた唇用固形化粧料を得ることができる。
【0023】
(a)密着油と(b)しみ出し油の組み合わせは、しみ出し油が上記条件を満たすものであれば特に限定されないが、下記に示す組み合わせを好適に用いることができる。
【0024】
(a)密着油がポリイソステアリン酸ポリグリセリルの場合、(b)しみ出し油として、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチコン等のメチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノイン、トリイソステアリンを好適に用いることができる。
【0025】
(a)密着油が水添ポリイソブテンの場合、(b)しみ出し油として、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニルトリメチコン等のメチルフェニルシリコーンを好適に用いることができる。
【0026】
(a)密着油が、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸エステル、マカデミアナッツ油ポリグリセリル-6エステルズベヘネートの場合、(b)しみ出し油として、メチルフェニルシリコーンを好適に用いることができる。
【0027】
((c)ワックス)
(c)ワックスは、少なくとも(b)しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化することが必要である。すなわち、ワックスは、密着油を固化する必要は必ずしもないけれども、しみ出し油を均一に固化できることは必須条件である。
このようなワックスとしては、通常化粧料に配合されるものであれば、特に限定されない。本発明の唇用固形化粧料に配合される(c)ワックスは一種であっても、二種以上の混合物であっても良い。
【0028】
ワックスとしては、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウ等が挙げられる。これらのワックスは、(b)しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化することが可能である。
このうち、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスを用いることが好ましい。
【0029】
(c)ワックスの配合量は、化粧料全量に対して、4?12質量%であることが好適であり、6?11質量%であることが特に好適である。(c)成分の配合量が4質量%未満では、固化しづらい場合がある。また12質量%を超えると、のびが重く、つやもなくなる場合がある。
【0030】
本発明にかかる唇用固形化粧料は、(b)しみ出し油中に(a)密着油もしくは、(a)密着油中に(b)しみ出し油が分散しているものである。
【0031】
本発明にかかる唇用固形化粧料において、(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることが好ましい。(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散するように(a)成分と(b)成分の配合量を調製することにより、より二次付着レス効果およびその持続性に優れた唇用化粧料を得られる。
本発明において、(b)成分と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化する(c)ワックスを配合することにより、より粘性の低い(b)成分中に(a)成分が分散した、安定な唇用固形化粧料を得ることができる。
【0032】
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している唇用固形化粧料を得るために、(a)成分を6?25質量%、(b)成分を40?70質量%配合することが好適である。また、(a)成分を12?25質量%、(b)成分を50?65質量%配合することが特に好適である。
【0033】
((d)つなぎ成分)
本発明においては上記必須成分である(a)?(c)成分の他に、(d)つなぎ成分を配合することが好適である。つなぎ成分は、90℃で(a)と混合した時、および90℃で(b)と混合した時にいずれも分離しないことが必要である。ここで、「分離」の有無は、上記(b)成分の場合と同じ条件で測定することができる。
【0034】
本発明において、(b)成分は、(a)成分と混合した時に25℃で分離するものである。しかし、25℃において(a)成分と(b)成分の相溶性があまりにも悪いと、高温(90℃)にしても分離したり、もしくは分離しないまでも不均一になってしまう場合がある。
このような場合でも、(d)成分を配合することにより、(b)成分の分離条件を満たすようになり、均一で安定な唇用固形化粧料を得ることができる。
【0035】
(d)つなぎ成分としては、上記条件を満たしており、化粧料に配合可能な成分であれば特に限定されないが、例えば、上記条件を満たす親油性界面活性剤、油分等が挙げられる。
【0036】
親油性界面活性剤としては、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ジイソステアリン酸ジグリセリル等を好適に用いることができる。
セスキイソステアリン酸ソルビタンとしては、市販品として、例えば、エステモール182V(日清オイリオ社製)が挙げられる。モノステアリン酸プロピレングリコールとしては、市販品として、例えば、ニッコールPMS-SEN(日光ケミカルズ社製)が挙げられる。セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンとしては、市販品として、例えば、ABIL EM90(Degussa社製)が挙げられる。ジイソステアリン酸ジグリセリルとしては、市販品として、例えば、WOGEL(松本製薬工業社製)が挙げられる。
【0037】
油分としては、例えば、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オリーブ油、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ミネラルオイル、流動パラフィン、スクワラン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソパラフィン、オレフィンオリゴマー、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等を好適に用いることができる。
【0038】
(d)つなぎ成分の配合量は、化粧料全量に対して0.5?16質量%であることが好適であり、1?12.5質量%であることが特に好適である。(d)成分の配合量が0.5質量%未満では、組成物の相溶性が悪く、分離する場合がある。また16質量%を超えると、二次付着レス効果を低下させる場合がある。
【0039】
((e)色材)
本発明においては上記必須成分である(a)?(c)成分の他に、(e)色材を配合することも好適である。色材としては通常唇用固形化粧料で用いられるものを配合することができる。
【0040】
色材としては、化粧料に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。通常、各種顔料であっても、パール剤であっても、色材は、連続相油分((b)成分)に比較して、分散相油分((a)成分)のほうに濡れやすい。したがって、色材は自発的に分散相油分に移行する。そのため色材は、唇へ塗布時には(a)密着油に抱え込まれ、表層の(b)しみ出し油の内側に存在するようになるため、二次付着し難くなる。
【0041】
また、色材としてパール剤を配合する場合、シリコーン処理パール剤を配合することが好ましい。シリコーン処理されたパール剤を用いることにより、製造時に色材が分散しやすくなる。
製造時に、シリコーン処理パール剤を用いた場合、(b)成分に濡れやすくなる。しかし、化粧料塗布時には、アスペクト比の高いパール剤は、(a)成分の方へ移行する。したがって、シリコーン処理パール剤を配合した場合でも、二次付着レス効果は優れている。
【0042】
(e)色材の配合量は、化粧料全量に対して0.1?15質量%であることが好適であり、3?15質量%であることがより好適であり、5?10質量%であることが特に好適である。(e)成分の配合量が0.1質量%未満では、二次付着レス効果を感じにくい場合がある。また15質量%を超えると、相対的に(a)?(c)成分の配合量が少なくなってしまうため、二次付着レス効果を低下させる場合がある。
このうち、パール剤の配合量は、5質量%以下であることが好ましい。パール剤の配合量が多すぎると、のびの軽さに劣る場合がある。
【0043】
本発明の唇用固形化粧料には、上記成分の他、通常の唇用化粧料に用いられる上記以外の油剤、粉体、高分子化合物、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
保湿剤としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール系保湿剤が挙げられる。
【0044】
本発明の唇用固形化粧料は、その製造工程のすべてにおいて分離せず、均一一相の状態であるように成分構成されたものであることが好ましい。
【0045】
本発明の唇用固形化粧料は、口紅、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどに応用することができる。特にスティック状の口紅が好ましい。
【実施例】
【0046】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0047】
まず、本発明者らは、唇用固形化粧料に要求される二次付着レス効果および安定性の実現のために必要な条件について検討を行った。
【0048】
図1(A)に示すように、高温での製造時には、各成分は溶解しており、均一な状態である必要があると考えた。これは、製造過程で組成物が不均一である場合、冷却し固化した際も不均一であるために、折れやすく不安定になってしまうためである。
【0049】
次に、冷却、固化し、製品化した際、複数の油分を配合した系では、図1(B)に示すように、内相の油分は微分散した状態となると考えた。
この際、もし内相が大きく、数カ所に凝集してしまった場合には、唇用固形化粧料上に油浮きが生じる、折れやすい等、製品の安定性は悪くなってしまうと考えた。
【0050】
続いて、製品を唇上に塗布した場合には、図1(C)に示すような唇用固形化粧料が理想的であると考えた。すなわち、表層には色材を含まない透明な油分が存在し、その内側の内層(唇上)には、色材を含む油分が存在する。この場合、唇が物に触れた際には透明な油分のみが付着し、物には色がつかないと考えた。加えて、表層の油分が少なすぎると、このような二次付着レス効果は長く続かなくなってしまうと考えた。
【0051】
また、表層の油分は、内層よりしみ出してくるため、通常内層の油分より粘性の低い液体と考えた。このような油分を製品化するためには、固化させる必要がある。
【0052】
そこで、本発明者らはワックスを用いて固化する方法を採用した。
ここで、ワックスおよび粘性の低い油分の系の、レオロジー測定結果を図2に示す。なお、本図は、ワックスとしてポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックス、粘性の低い油分としてトリメチルペンタフェニルトリシロキサンを用いて(ワックス:油分=1:10)、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G’’を粘弾性測定装置 MCR301(アントンパール社製)により測定を行った。測定モードはひずみ分散測定(ひずみを0.01%?1000%に変動させた時のG’・G’’)、測定温度は30℃で行った。
【0053】
図2によれば、ワックスおよび粘性の低い油分の系にひずみを加える前は、弾性が支配的である(ワックスにより固化されている)けれども、ひずみを加えると共に粘性(=損失弾性率)が優位になることがわかる。
これは、シェアの付加により、ワックスによる固化構造が崩壊し、固化されていた油分の粘性が低下し、液状化することを示している。
なお、一度低下した粘度は、シェアをかけるのを止めた場合も元に戻らない。
【0054】
このようなワックスの性質を利用して、図1(B)で示されるように、製品では外相(粘性の低い大量の油分)をワックスにより固化し、図1(C)で示されるように、製品を塗布する使用時は、唇用固形化粧料を唇上に塗布するシェアにより、粘度の低い油分が外層にしみ出すという系により、二次付着レス効果の付与を考えた。
【0055】
なお、図1(C)のように、表層の粘性の低い油分と、内層の油分が分かれて存在するためには、これらの油分の相溶性等も重要な要素であると考えた。
【0056】
上記の検討に基づき、本発明者らは、実際にさまざまな粘性を有する油分を配合した下記表1記載の配合組成よりなる唇用固形化粧料(口紅)を、常法により製造し、各試料を下記評価基準(1)および(2)に基づき評価した。また、製造時および常温時の油分(ワックスを除く)の混合状態について、下記測定条件により確認した。
【0057】
(混合状態の測定条件)
ワックスを除く成分を、90℃に加温し、攪拌混合し、次いで静置した時の油分混合状態、および、該油分混合物が25℃になった時の油分混合状態を、境界が均一に2層に分離しているものを「分離」と評価し、半透明な状態、または、境界がなく透明な相溶した状態を「均一」と評価した。
【0058】
評価(1):安定性の評価試験(均一性)
スティック状にした試料の切断面におけるワックスの均一性について、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:均一
○△:やや不均一
△:かなり不均一
×:不均一
【0059】
評価(2):二次付着レス効果の評価試験
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。試料を塗布直後の二次付着レス効果について、下記採点基準に基づいて5段階官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
【0060】
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
(評価基準)
◎:スコア平均値4点以上
○:スコア平均値3.4点以上4点未満
○△:スコア平均値2.5点以上3.4点未満
△:スコア平均値2点以上2.5点未満
×:スコア平均値1点以上2点未満
なお、下記表中に「-」と記載した例は、安定性が悪く、二次付着レス効果が測定できなかったものである。
【0061】
【表1】

【0062】
試験例1-1のように、従来の唇用化粧料によく配合されているトリエチルヘキサノインとリンゴ酸ジイソステアリルの油分の組み合わせは、高温での製造時および常温でも、均一に混合できるものであった。このような油分を用いて、ワックスにより固化し製造した試料は、安定性に優れていたが、二次付着レス効果に劣るものであった。
試験例1-2のように、水添ポリイソブテンおよびトリメチルペンタフェニルトリシロキサンの油分の組み合わせは、高温での製造時には均一であったが、常温では分離するものであった。このような油分を用いて、ワックスにより固化し製造した試料は、安定性に優れるだけではなく、二次付着レス効果にも優れていた。
試験例1-3のように、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)およびジフェニルジメチコンの油分の組み合わせは、高温での製造時および常温でも、分離するものであった。このような油分を用いて、ワックスにより固化しても、安定な試料を得ることができなかった。
試験例1-4のように、試験例1-3の油分の一部をトリイソステアリン酸トリメチロールプロパンに置き換えた油分の組み合わせは、高温での製造時には均一であったが、常温では分離するものであった。このような油分を用いて、ワックスにより固化し製造した試料は、安定性に優れるだけではなく、二次付着レス効果にも優れていた。
【0063】
以上のことから、図1(C)のような二次付着レス効果を発揮するためには、常温(25℃)で分離する油分を併用することが重要であることがわかる。このような油分をワックスにより固化することで、安定性にも優れる唇用固形化粧料を得られることが明らかになった。
なお一般的には、唇用固形化粧料を製造する際は、安定性の良好な製品を得るために、複数の油分を用いる場合、相溶性が高く、分離しない油分を用いて製造することが通常である。しかし、本発明では、あえて常温で分離する油分を併用することにより、優れた二次付着レス効果を実現している。
【0064】
すなわち、本発明にかかる唇用固形化粧料は、(a)唇に密着する内層の油分(密着油)と、(b)該密着油より粘性が低い、内層よりしみ出す油分と、(c)少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、(a)と(b)を25℃で混合した時に分離することが必要である。
【0065】
次に、本発明者らは、各種油分を配合した下記表2記載の配合組成よりなる唇用固形化粧料(口紅)を、常法により製造し、各試料を上記評価項目(1)および(2)について評価した。また、製造時および常温時の油分および/または界面活性剤(ワックスを除く)の混合状態について、上記測定条件により確認した。結果を表2に示す。
なお、下記表2において、配合量は質量部で示されている。
【0066】
【表2】

【0067】
表2によれば、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンやオリーブ油を配合した試験例2-2?2-4の組成では、90℃で油分を均一に分散させることができるようになり、塗布直後より二次付着レス効果に優れているだけではなく、安定性にも優れた試料を得ることができた。
一方、イソステアリン酸ソルビタンやラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを配合しても、90℃で油分を均一に分散させることができず、安定性に優れる試料が製造できなかった(試験例2-5、2-6)。
【0068】
したがって、(a)密着油と混合した時に、25℃で分離する(b)しみ出し油が、90℃では均一に分散しない場合には、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンやオリーブ油を配合することで90℃で均一に分散させることができ、安定な唇用固形化粧料を得られることが示唆された。
【0069】
次に本発明者らは、表2における(a)?(c)成分、色材以外の4種類の成分の性質について検証を行った。すなわち、該成分と、(a)水添ポリイソブテンもしくは(b)ジフェニルジメチコンを90℃で1:1(質量比)の割合で混合し、15分間放置した時の状態を観察した。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表2において、配合により油分を90℃で均一に分散させることができた成分(トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンおよびオリーブ油)は、(a)成分および(b)成分と90℃で混合した際に分離せず、相溶性が高い成分であった。
一方、配合しても油分を90℃で均一に分散させることができなかった成分(イソステアリン酸ソルビタンおよびラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)は、(a)成分および(b)成分と90℃で混合した際に分離する成分であった。
【0072】
したがって、本発明にかかる唇用固形化粧料において、(b)しみ出し油を(a)密着油と混合した時に、90℃で均一に分散しない場合には、(d)90℃で(a)成分と混合した時、および90℃で(b)成分と混合した時に分離しないつなぎ成分を配合することが好適である。
【0073】
次に、本発明者らは、試験例2-1と試験例2-3の唇用固形化粧料の相違について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行った。結果を図3(試験例2-3)および図4(試験例2-1)に示す。
【0074】
図3によれば、試験例2-3の試料は、全ての成分が均一に混ざり合った組成物が製造できていることがわかる。
一方、図4によれば、試験例2-1の試料は、しみ出し油とワックスが局所的に分離し、凝集していることがわかる。
すなわち、試験例2-1の試料は、この分離により、密着油に濡れやすい色材が局在してしまい、安定性(均一性)に劣るものと考えられる。
【0075】
次に、各成分の配合量について検討を行った。すなわち、各成分の配合量を変化させた下記表4に示す配合組成なる唇用固形化粧料(口紅)を常法により製造した。得られた試料における油中油型乳化系について観察した。ここでは、(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散している系をa/b、(a)密着油中に(b)しみ出し油が分散している系をb/aと表している。
続いて、各試料を上記評価項目(1)および(2)について評価した。結果を表4に示す。
【0076】
なお、油中油型乳化系は、唇用固形化粧料製造時に、ワックス以外の成分を90℃で混合後、25℃に冷却したものを、顕微鏡を用いて観察することができる。
【0077】
例えば、実施例である試験例2-3において、90℃でダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ジフェニルジメチコン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、色材を混合後、冷却したものを、顕微鏡で観察した結果を図5に示す。
図5によれば、透明な外相の中に着色した内相が存在することがわかる。色材は、(a)密着油であるダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)に濡れやすいことから、この試料はa/bであることがわかる。
【0078】
【表4】

【0079】
本発明の成分を適宜配合した試験例3-2?3-5において、試料の安定性および二次付着レス効果は非常に優れていた。
しかし、試験例3-7や試験例3-8によると、(a)成分の配合量を多くするに従い、二次付着レス効果に劣ってしまう。また、二次付着レス効果の持続性にも劣る傾向にある。
したがって、図1に示されないような(a)密着油中に(b)しみ出し油が分散した系では、二次付着レス効果およびその持続性に満足できる結果が得られないことがわかる。
【0080】
以上のことから、図1に示されるように、本発明にかかる唇用固形化粧料は、(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることが好ましい。
また、本発明にかかる唇用固形化粧料において、化粧料全量中(a)密着油を6?25質量%、(b)しみ出し油を40?70質量%含むことが好適である。
【0081】
本発明者らのさらなる検討の結果、(c)ワックスは化粧料全量中4?12質量%、(d)つなぎ成分は0.5?16質量%、(e)色材は化粧料全量中3?15質量%含むことが好適であることが明らかとなった。
【0082】
次に、本発明者らは、本発明にかかる下記表5記載の配合組成の唇用固形化粧料(口紅)を、常法により製造し、各試料を上記評価項目(1)および(2)について評価した。さらに、各試料の硬度を硬度計(FUDO社製)にて測定した。
また、各試料の脆性を、下記評価項目(3)およびレオロジー的解析(試料横方向より荷重をかけ、折れるまでの回数の測定)により評価した。
結果を表5および図6に示す。
【0083】
評価(3):脆性(繰り返し荷重試験)
スティック状にした試料に、荷重(20mm/s押した後、50gf開放)をかけ、試料が折れるまでの荷重回数を測定し、脆性を評価した。
【0084】
【表5】

【0085】
表5および図6によると、(a)成分の一部を半固形油であるダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)にすることで、硬度は若干下がるけれども、脆性が改善されることが明らかになった。
したがって、本発明にかかる唇用固形化粧料において、(a)密着油に半固形油を含むことが好適である。
【0086】
以下に、本発明にかかる唇用固形化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって限定されるものではない。以下に示す唇用固形化粧料は、いずれも二次付着レス効果および安定性に優れるものであった。
【0087】
【表6】

【0088】
処方例2 口紅
(質量%)
モノイソステアリン酸グリセリン 14
トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 56
ポリエチレンワックス 7
色材 4
デカメチルシクロペンタシロキサン 15
イオン交換水 3
ダイナマイトグリセリン 1
【0089】
処方例3 口紅
(質量%)
テトライソステアリン酸ポリグリセリル5 14
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 40
トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 12.5
ジフェニルジメチコン(※1) 12.5
ポリエチレンワックス 8
色材 6
パール剤 1
グリセリン 6
【0090】
処方例4 口紅
(質量%)
テトライソステアリン酸ポリグリセリル5 14
テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 26.5
ジメチルポリシロキサン 26.5
パラフィンワックス 8
色材 6
デカメチルシクロペンタシロキサン 10
グリセリン 6
亜鉛石鹸 3
【0091】
処方例5 口紅
(質量%)
ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル) 32.3
ジフェニルジメチコン(※1) 43
テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット 10.8
ポリエチレンワックス 7.5
色材 6.4
【0092】
処方例6 口紅
(質量%)
テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット 32.3
ジフェニルジメチコン(※2) 43
※2:シリコーンオイル KF50-300cs(信越化学工業社製)
リンゴ酸ジイソステアリル 10.8
ポリエチレンワックス 7.5
色材 6.4
【0093】
処方例7 口紅
(質量%)
水添ポリイソブテン 5
ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル) 13.192
トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 23.6
ジフェニルジメチコン(※1) 25
ポリエチレンワックス 8.7
オレフィンオリゴマー 7.4
トリエチルヘキサノイン 5
色材 12.1
香料 0.008
【0094】
処方例8 口紅
(質量%)
イソステアリルグリセリルエーテル 14
トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 38
ジフェニルジメチコン 25
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5
ポリエチレンワックス 8
水 2
ダイナマイトグリセリン 2
色材 6
【符号の説明】
【0095】
1 (a)密着油
2 (b)しみ出し油
3 (c)ワックス
4 (e)色材
5 唇
6 (a)密着油と(e)色材
7 (b)しみ出し油と(c)ワックス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モノイソステアリン酸グリセリン、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリイソステアリン酸ポリグリセリル、水添ポリイソブテン、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスリチル、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ダイマージリノール酸エステル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルから選択される、密着油 6?25質量%と、
(b)メチルフェニルシリコーン、テトラ(安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、ジメチルポリシロキサン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、トリエチルヘキサノインから選択される、該密着油より粘性が低いしみ出し油 40?70質量%と、
(c)カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウから選択される、少なくとも該しみ出し油と混合した時に、90℃で分散され25℃で固化するワックスと、を含み、
(a)と(b)を25℃で混合した時に分離し、
(a)と(b)が90℃で均一に分散し、
(b)しみ出し油中に(a)密着油が分散していることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の化粧料において、(d)セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、オリーブ油、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ミネラルオイル、流動パラフィン、スクワラン、デカメチルシクロペンタシロキサン、イソパラフィン、オレフィンオリゴマー、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)から選択される、90℃で(a)と混合した時、および90℃で(b)と混合した時に分離しないつなぎ成分を含むことを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項4】
請求項1または3に記載の化粧料において、(b)がメチルフェニルシリコーンであることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれかに記載の化粧料において、(e)色材を含むことを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項6】
請求項1、3?5のいずれかに記載の化粧料において、(a)に固形油もしくは半固形油を含むことを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項7】
請求項6に記載の化粧料において、(a)に半固形油を含むことを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項8】
請求項1、3?7のいずれかに記載の化粧料において、化粧料全量中(c)を4?12質量%、(d)を0.5?16質量%、(e)を3?15質量%含むことを特徴とする唇用固形化粧料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-21 
出願番号 特願2011-128083(P2011-128083)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 吾一  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 小川 慶子
安川 聡
登録日 2016-04-28 
登録番号 特許第5926896号(P5926896)
権利者 株式会社 資生堂
発明の名称 唇用固形化粧料  
代理人 岩橋 祐司  
代理人 岩橋 祐司  

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