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審決分類 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  B44C
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B44C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B44C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B44C
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B44C
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  B44C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B44C
管理番号 1331196
異議申立番号 異議2016-700905  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-21 
確定日 2017-07-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5903768号発明「転写箔、および転写箔の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5903768号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5903768号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5903768号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成23年3月28日に特許出願され、平成28年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年9月21日(提出日)に特許異議申立人 松田亘弘により特許異議の申立てがされたので、これを検討した結果として、同年12月1日付けで当審において取消理由を通知した(同年同月7日発送)ところ、その指定期間内である平成29年2月2日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、この請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)があったものである。
なお、特許異議申立人は、平成29年3月24日に本件訂正についての意見書を提出している。

第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)及び特許請求の範囲(請求項1及び2)に係る訂正であって、訂正事項1ないし4からなり、その内容は、次の(1)ないし(4)のとおりである(下線は、当審において、本件訂正前後の対応箇所を表すものとして付与した。)。
なお、本件特許異議の申立ては請求項ごとにされているところ、請求項1及び請求項1の記載を引用していない請求項2に係る本件特許請求の範囲についての本件訂正は、請求項ごとに訂正の請求をしているから特許法第120条の5第3項ただし書の規定に適合している。また、本件訂正は、明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて訂正を請求をしているから、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合している。

(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、
前記転写層は、
離型性フィルム基材の上層に配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、
前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、
前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。」とあったものを、
「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、
前記転写層は、
離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、
前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、
前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。」と訂正する。

(2)訂正事項2
本件明細書の段落【0008】に、
「すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、前記転写層は、離型性フィルム基材の上層に配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔である。」とあったものを、
「すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、前記転写層は、離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔である。」と訂正する。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、
前記離型層の上層に、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、
前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、
前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、
転写箔の製造方法。」とあったものを、
「離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、
前記離型層の上層に、前記離型性フィルム基材の全面を覆うように、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、
前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、
前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、
転写箔の製造方法。」と訂正する。

(4)訂正事項4
本件明細書の段落【0010】に、
「また、本発明の請求項2に係る発明は、離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、前記離型層の上層に、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、転写箔の製造方法である。」とあったものを、
「また、本発明の請求項2に係る発明は、離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、前記離型層の上層に、前記離型性フィルム基材の全面を覆うように、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、転写箔の製造方法である。」と訂正する。

2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1に係る訂正は、当審において、平成28年12月1日付けで通知した取消理由1(甲第1号証に記載された発明に基づく新規性進歩性欠如)及び取消理由2(甲第2号証に記載された発明に基づく進歩性欠如)に対応するためのものであって、請求項1の「立体意匠付与層」が、本件訂正前は、「離型性基材フィルムの上層」に単に「配置され」るものであったものを、本件訂正後は、「離型性基材フィルムの上層」に「全面を覆う形」で「配置され」ると、配置の形態を限定するものである。したがって、訂正事項1に係る訂正は、請求項1に「立体意匠付与層」の配置の形態を限定する事項を追加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

イ 訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正が本件特許請求の範囲の請求項1を訂正するものであることに伴って、請求項1の記載に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

ウ 訂正事項3に係る訂正は、当審において通知した上記取消理由1及び2に対応するためのものであって、請求項2の「透明性を有する樹脂層」の「形成」が、本件訂正前は、単に「離型層の上層」に「形成」するものであったものを、「離型層の上層」であってかつ「離型性フィルム基材の全面を覆うよう」に「形成」すると、形成の態様を限定するものである。したがって、訂正事項3に係る訂正は、請求項2に「透明性を有する樹脂層」の形成の態様を限定する事項を追加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

エ 訂正事項4に係る訂正は、訂正事項3に係る訂正が本件特許請求の範囲の請求項2を訂正するものであることに伴って、請求項2の記載に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると認められる。

(2)新規事項の有無について
訂正事項1ないし4に係る訂正は、本件明細書の段落【0016】の「また、本発明に係る転写箔1は、図2に示すように、立体意匠付与層4が離型性フィルム基材2の全面を覆う形で設けられていても良い。このような構成とすることで、意匠層5が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくて済む。」との記載(ただし、下線は強調のために当審が付与した。)を根拠とする訂正であるから、本件明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、本件明細書、特許請求の範囲及び図面を併せたものを「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の「立体意匠付与層」の配置の形態を限定するものであり、訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項2の「透明性を有する樹脂」の形成の態様を限定するものであり、訂正事項2及び4に係る訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。また、本件訂正の前後で請求項の項数や、本件発明のカテゴリや、その属する技術分野が変わっているわけでもない。そうすると、訂正事項1ないし4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項ただし書、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、特許第5903768号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された本件訂正後の特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。

第3 取消理由についての当審の判断
1 本件訂正後の請求項1及び2に係る発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正が認められたので、本件訂正後の特許第5903768号の請求項1及び2に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、
前記転写層は、
離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、
前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、
前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。
【請求項2】
離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、
前記離型層の上層に、前記離型性フィルム基材の全面を覆うように、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、
前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、
前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、
転写箔の製造方法。」(以下、本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、本件訂正後の請求項2に係る発明を「本件発明2」といい、本件発明1及び2を総称して、「本件発明」という場合がある。)

2 当審が通知した取消理由1及び2の概要
平成28年12月1日付けで当審において通知した取消理由は、取消理由1及び2からなり、その概略は、次の(1)及び(2)のとおりである。
(1)取消理由1(甲第1号証に記載された発明又は技術的事項に基づく新規性又は進歩性欠如)
ア 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開2006-255894号公報)に記載された発明と同一であるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
又は、本件特許の請求項1に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してなされたものである。

イ 本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
又は、本件特許の請求項2に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、同法同条第2項の規定に違反してなされたものである。

(2)取消理由2(甲第2号証に記載された発明及び技術的事項に基づく進歩性欠如)
ア 本件特許の請求項1に係る発明は、当業者が甲第2号証(特許第3813799号公報)に記載された発明及び技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

イ 本件特許の請求項2に係る発明は、当業者が甲第2号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

3 意見書における特許権者の反論の概要
取消理由1及び2に対し、特許権者は、平成29年2月2日に提出した意見書において、概略、次の(1)及び(2)のとおり反論している。
(1)取消理由1に対して
ア 請求項1について
本件特許の請求項1は、本件訂正により、上記1に記載したとおりに訂正されたので、本件訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)では、立体意匠付与層が、離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されている。
一方、甲第1号証には、透明ヘアライン層4を「線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成するとよい」と記載されており(段落【0020】参照。)、各実施例の図面(図1ないし10)の記載をみても、いずれも透明ヘアライン層4は部分的に形成されたものであることがみてとれる。
このように、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明の「透明ヘアライン層」に相当する「立体意匠付与層」が、離型性フィルム基材の上面に全面を覆う形で配置されていることから、甲第1号証に記載とはその構成が異なっており、したがって、甲第1号証に記載された発明と同一の発明ではない。
また、本件発明1は、上記の構成を備えることで、立体意匠付与層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏する(本件明細書の段落【0016】を参照。)。したがって、本件発明1は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

イ 請求項2について
本件特許の請求項2は、本件訂正により、上記1に記載したとおりに訂正されたので、本件訂正後の請求項2に係る発明(本件発明2)では、透明性を有する樹脂層が、離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように形成される。
このように、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明の「透明ヘアライン層」に相当する「透明性を有する樹脂層」を、離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように形成していることから、甲第1号証に記載された発明とはその構成が異なっており、したがって、甲第1号証に記載された発明と同一の発明ではない。
また、本件発明2は、上記の構成を備えることで、透明性を有する樹脂層が離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように形成されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏する。したがって、本件発明2は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

(2)取消理由2に対して
ア 請求項1について
甲第2号証に記載された発明は、担持フィルムの上に光制御パターン層と加飾色層とを備えた転写箔に関するものであり、本件発明1の「立体意匠付与層」に相当する「光制御パターン層」は、担持フィルム上に、文字や絵柄など所望の表示要素の領域を残して形成される。すなわち、甲第2号証に記載された発明は、光制御パターン層が担持フィルム上に部分的に形成されるのみであり、本件発明1における立体意匠付与層のように、離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されたものではない。
一方、本件発明1は、立体意匠付与層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏する。したがって、本件発明1は、当業者が甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

イ 請求項2について
甲第2号証に記載された発明は、光制御パターン層が担持フィルム上に部分的に形成されるのみであり、本件発明2における透明性を有する樹脂層のように、離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆う形で配置されたものではない。
一方、本件発明2は、透明性を有する樹脂層を離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように形成しているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏する。したがって、本件発明2は、当業者が甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

4 取消理由1(新規性又は進歩性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
(1)引用例の記載
ア 平成28年12月1日付けで当審において通知した取消理由1で引用した甲第1号証(特開2006-255894号公報。以下「引用例1」という。)には、次の(ア)ないし(ク)の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「本発明は、成形品表面にヘアライン調の装飾を行うことができるヘアライン調加飾シートに関する。」(段落【0001】)
(イ)「・・・本発明の第1態様のヘアライン調加飾シートは、・・・構成されている。
・・・
また、上記発明の第2態様として、基体シート上に、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層が少なくとも積層され、透明保護層および透明ヘアライン層の可視光透過率が60%以上であり、透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすものであり、反射層が可視光反射率50%以上であるように構成することもできる。
・・・
また、上記発明の第3態様として、・・・構成することもできる。
・・・
また、上記発明の第4態様として、第1?3態様のヘアライン調加飾シートは、インサート材または転写材であるように構成してもよい。」(段落【0009】?【0012】)
(ウ)「図1?10は、本発明のヘアライン調加飾シートの一実施例を示す断面図である。図中、1はヘアライン調加飾シート、2は基体シート、3は透明保護層、4は透明ヘアライン層、5は反射層、6は接着層、7は離型層である。なお、各図において同じ構成部分については同じ符号を付している。」(段落【0015】)
(エ)「透明ヘアライン層4は、透明保護層3とともにヘアライン模様を表現するための層である。透明ヘアライン層4の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、必要に応じて顔料または染料を着色剤として含有するインキを用いるとよい。透明ヘアライン層4の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用い、線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成するとよい。
・・・
透明ヘアライン層4の可視光透過率は60%以上となるようにする。可視光透過率が60%に満たないと、反射光が乏しくなりヘアライン模様が見えにくくなるという不都合が生じる。
・・・
透明保護層3のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、透明ヘアライン層4のd線(波長587.56nm)における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成する。
・・・
本発明では、屈折率の異なる2種類の透明層を用い、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成することによって、実感的なヘアライン模様を現出させることができる。すなわち、透明層の中で屈折率の異なる部分があり、この境界で光が屈折するために、その下に存在する平滑である金属光沢層があたかもヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるようにすることができる。」(段落【0020】?【0023】)
(オ)「反射層5は、ヘアライン調加飾シート1が表現しようとするヘアライン加工物の輝度に優れた金属光沢を表現するための層である。反射層5は、ヘアライン模様を見る場合において、透明保護層3と透明ヘアライン層4の下側(背面側)に位置するように構成する。したがって、反射層5は、透明保護層3と透明ヘアライン層4の基体シート2は反対側の面に積層する場合(図1?4、6?9)や、基体シート2に接するように積層する場合(図5、図10)がある。
・・・
反射層5としては、金属薄膜層を用いるとよい。金属薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用する。」(段落【0025】、【0026】)
(カ)「また、ヘアライン調加飾シート1が基体シート2を剥離して用いる転写材である場合、基体シート2から透明保護層3が剥離するように構成する必要がある。基体シート2からの透明保護層3の剥離性がよい場合には、基体シート2上に透明保護層3を直接設ければよい。基体シート2からの透明保護層3の剥離性を改善するためには、基体シート2上に透明保護層3を設ける前に、離型層7を全面的に形成してもよい(図6?10参照)。離型層7は、転写後または成形同時転写後に基体シート2を剥離した際に、基体シート2とともに透明保護層3から離型することになる。離型層7の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いることができる。離型層7の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。」(段落【0032】)
(キ)図8は次のとおりのものであり、当該図8から、一実施例のヘアライン調加飾シート1が、基体シート2の上に、離型層7、透明保護層3、透明ヘアライン層4、反射層5、接着層6がこの順に積層されたものであることがみてとれる。
【図8】

(ク)「厚さ125μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを基体シートとし、その上に可視光透過率が87%、d線(波長587.56nm)における屈折率n2が1.35のPTFE樹脂インキ用いて最大厚さが0.8μmになるようにヘアライン形状に塗布して透明ヘアライン層を形成した。」(段落【0047】)

イ 上記ア(ア)ないし(ク)の記載事項からみて、引用例1には、図8に示される一実施例として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「転写材であるように構成されたヘアライン調加飾シートであって、基体シートの上に、離型層、透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層がこの順に積層されており、
前記透明保護層及び前記透明ヘアライン層の可視光透過率は60%以上であり、前記反射層は可視光反射率50%以上であるように構成され、
前記透明ヘアライン層は、前記透明保護層とともにヘアライン模様を表現するための層であり、前記透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、前記透明ヘアライン層のd線における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成することによって、透明層の中で屈折率の異なる部分の境界で光が屈折するために、その下に存在する平滑である金属光沢層があたかもヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるようにされており、
前記透明ヘアライン層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、必要に応じて顔料または染料を着色剤として含有するインキを用い、前記透明ヘアライン層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用い、線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成されており、
前記反射層は、ヘアライン調加飾シートが表現しようとするヘアライン加工物の輝度に優れた金属光沢を表現するための層であり、金属薄膜層を用い、表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成され、
前記基体シートから前記透明保護層が剥離するように構成するために、基体シート上に透明保護層を設ける前に、離型層が全面的に形成されており、
前記離型層の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などを用いる、
ヘアライン調加飾シート。」
また、上記ア(ク)の記載事項からみて、甲第1号証には、基体シートの上に直接透明ヘアライン層を形成するヘアライン調加飾シートの別の実施例(図2に示される実施例)において、当該透明ヘアライン層の最大厚さが0.8μmであることが記載されている。

ウ 平成28年12月1日付けで当審において通知した取消理由2で引用した甲第2号証(特許第3813799号公報。以下「引用例2」という。)には、次の(ア)ないし(オ)の事項が記載されている
(ア)「【発明の属する技術分野】
本発明は、転写箔に係り、特に、工業製品の加飾に適した転写箔に関するものである。」(段落【0001】)
(イ)「本発明は上記した従来の問題点に鑑みて為されたものであり、表面には凹凸を作らないで表示要素には立体感を持たせることができて優れた意匠的効果を奏する画期的な転写箔を提供することを目的とする。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
この目的を解決するために、請求項1に記載した転写箔は、担持フィルムと、この担持フィルムの上に文字や絵柄など所望の表示要素の領域を残して形成され、且つ上側の面を所望のパターンによる凹凸面にした透明な光制御パターン層と、その上に形成され、この光制御パターン層の凹凸面の凹と光制御パターン層の存在する箇所と存在しない箇所とで形成された穴を埋める加飾色層とを備えるものである。
・・・
従って、この転写箔にあっては、光制御パターン層の凹凸がレンズ作用若しくはプリズム作用を奏するために、この凹凸がある領域に入射した光は多くが乱反射し、凹凸が無い表示要素の領域に入射した光は多くが全反射するので、表示要素だけが、その他の部分に対して浮き出たエンボス様の立体に見える。
特に、加飾色層のうち表示要素の領域を為す部分は実際にその他の部分に対して突出した立体構造になるので、立体感が一層強くなる。
そして、本発明においては、表面に凹凸が無いため、表示要素の部分が損傷し易いという問題は生じない。」(段落【0004】?【0007】)
(ウ)「【発明の実施の形態】
以下に、本発明の各実施の形態を図面に従って説明する。
〔A.第一の実施の形態〕(図1?図5)
図1から図5は、第一の実施の形態に係る転写箔1とこれが転写された成形品21などを示すものである。
・・・
〔A-1.概要〕(図1?図4)
転写箔1は、担持フィルム3上に印刷法によって形成され、合成樹脂製の成形品21(図3参照)が金型成形される際、その成形品21に転写される。この成形品21は、幅方向で円弧状に湾曲したフロント壁22を備えており、このフロント壁22の外面である化粧面22a(図4参照)の全体に転写箔1が転写される。
・・・
転写箔1は、全体が銀色に着色されると共に、所望の表示要素14、15、即ち、ある程度の幅を持つ線で描かれた「日本列島」という文字14と、「日本列島のおおまかな図形」15が表出しており、これら表示要素14、15以外の領域には所謂「砂目」パターン(図1、図3では、小さな点を多数付することで、図2、図4では小さな円弧を多数描くことで、それぞれ砂目を表している)が施されている。」(段落【0011】?【0013】)
(エ)「〔A-2.転写箔とその形成〕(図1、図2)
担持フィルム3は、ロール状に巻き取られた長尺なもので、そのベースを為すベースフィルム4と、その一方の面の全体に塗布された透明な剥離層5とから成る。
ベースフィルム4には、通常、ポリエステルなど強靭で耐熱性の良い合成樹脂製のフィルムが用いられ、この実施の形態においては厚さ38ミクロン程度の透明なものを用いている。
剥離層5はベースフィルム4の一方の面の全域に形成されていて、例えば、シリコンなど、加熱溶融性の剥離剤を数ミクロン程度に薄く塗布することで形成されている。
・・・
転写箔1は、成形品21の化粧面22aとほぼ同じ大きさの短冊形をしており、担持フィルム3の剥離層5に、光制御パターン層11と加飾色層12及び接着剤層13をこの順序で印刷することによって形成され、これらの印刷は、シルクスクリーンを印刷版としたスクリーン印刷法によって行われている。
・・・
光制御パターン層11の材料としては、着色層12のインクによって侵食されない性質を持つ透明な合成樹脂を用いる。この実施の形態では、紫外線硬化型樹脂を使用し、50?60ミクロン程度の厚さで塗布した。
この光制御パターン層11用の印刷版には、前記した表示要素14、15と外周枠部16を成す部分だけにマスキングを設けた砂目パターンのものを使用する。従って、この印刷版を通して塗布した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射すれば、剥離層5上に、マスキングされていた部分(表示要素14、15と枠部分16)を穴17の形で残して、砂目模様の光制御パターン層11が形成される。
・・・
このようにして光制御パターン層11を形成した後、この層11の全体に銀色のインクを塗布して加飾色層12を形成する。このインクは、光制御パターン層11の砂目を為す微小な凹凸を埋めると共に、穴17を埋める。このインクとしては、耐熱性の良いものであれば特に種類を選ばない。
そして、加飾色層12の上に接着剤を塗布して接着層13を形成する。
このようにして担持フィルム3上に転写箔1を、多数、一定のピッチで形成する(図1参照)。」(段落【0014】?【0017】)
(オ)図1及び図2は次のとおりのものである。
【図1】

【図2】


エ 上記ウ(ア)ないし(オ)の記載事項からみて、引用例2には、一実施形態として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表面には凹凸を作らないで表示要素には立体感を持たせることができる、工業製品の加飾に適した転写箔であって、
担持フィルムと、この担持フィルムの上に文字や絵柄など所望の表示要素の領域を残して形成され、上側の面を所望のパターンによる凹凸面にした透明な光制御パターン層と、その上に形成され、この光制御パターン層の凹凸面の凹を埋める加飾色層とを備え、
前記担持フィルムは、ベースフィルムと、その一方の面の全体に塗布された透明な剥離層とから成り、
前記剥離層は前記ベースフィルムの一方の面の全域に形成されていて、例えば、シリコンなど、加熱溶融性の剥離剤を数ミクロン程度に薄く塗布することで形成され、
前記剥離層に、光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層が、この順序で印刷することによって形成され、
前記光制御パターン層の凹凸がレンズ作用若しくはプリズム作用を奏するために、この凹凸がある領域に入射した光は多くが乱反射し、凹凸が無い表示要素の領域に入射した光は多くが全反射するので、表示要素だけがその他の部分に対して浮き出たエンボス様の立体に見え、
前記光制御パターン層の材料としては、着色層のインクによって侵食されない性質を持つ透明な合成樹脂、例えば、紫外線硬化型樹脂を使用し、50?60ミクロン程度の厚さで塗布して形成し、
前記光制御パターン層用の印刷版には前記表示要素と外周枠部を成す部分だけにマスキングを設けた砂目パターンのものを使用し、この印刷版を通して塗布した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することにより、前記剥離層上に、マスキングされていた部分(表示要素と外周枠部分)を穴の形で残して砂目模様の光制御パターン層が形成され、
前記光制御パターン層を形成した後、この層の全体に銀色のインクを塗布して加飾色層を形成し、
前記インクは、光制御パターン層の砂目を為す微小な凹凸を埋めると共に、前記穴を埋めるものである、
転写箔。」

オ 平成29年3月24日に特許異議申立人が提出した意見書に添付された参考資料1(特開2007-245725号公報)には、次の(ア)及び(イ)の事項が記載されている。
(ア)「この発明は、建材、自動車用内外装部品、家電製品用部品、携帯電話用部品などの樹脂成形品を装飾するために用いる凹凸模様加飾シートとその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)
(イ)「透明層22は、基体シート21または離型層上に全面的または部分的に形成する。」(段落【0025】)
また、上記意見書に添付された参考資料2(特許第5071607号公報)に対応する特許公開公報(特開2003-103709号公報)には、次の(ウ)及び(エ)の事項が記載されている。
(ウ)「【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形により形成された樹脂成形体の表面に、光輝性及び凹凸感を有する表面加飾層が設けられている加飾成形品に関する。」(段落【0001】)
(エ)「図2(A)、(B)及び図3(A)?(C)に示す加飾成形品は、光輝性樹脂層3が加飾成形品1の全面にわたり連続して存在するように形成したものであるが、図4(A)?(C)に示すように、光輝性樹脂層3が非連続的に形成されていてもよい。」(段落【0016】)
さらに、上記意見書に添付された参考資料3(特開2004-142439号公報)には、次の(オ)及び(カ)の事項が記載されている。
(オ)「したがって、本発明は、上記のような問題点を解消し、繊細な微細凹凸形状からなるとともに傷つきにくいヘアライン模様などの装飾が可能な金属光沢シートとその製造方法、金属光沢成形品の製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0008】)
(カ)「微細凹凸層13は、基体シート21または離型層上に全面的または部分的に形成する。」(段落【0041】)

カ 上記オ(ア)ないし(カ)の記載事項からみて、本件特許についての出願前に、樹脂等を成形した成形品の表面に凹凸模様を加飾するための加飾シートにおいて、凹凸模様を表現するための凹凸層を基材シート上に全面的に形成することは周知(以下「周知技術」という。)であったと認められる。

(2)本件発明と引用発明との対比・判断
ア 本件発明1と引用発明1との対比・判断
(ア)a 引用発明1の「基体シート」は、本件発明1の「離型性フィルム基材」における「フィルム基材」に相当する。
引用発明1の「ヘアライン調加飾シート」は、「転写材であるように構成され」たものであり、「基体シートから透明保護層が剥離するように構成するために、基体シート上に透明保護層を設ける前に、離型層が全面的に形成されて」いるから、本件発明1の「転写箔」に相当する。また、引用発明1の「離型層」は、本件発明1の「離型層」に相当し、引用発明1の「基体シート」と「離型層」とを合わせたものは、本件発明1の「離型性フィルム基材」に相当する。
さらに、引用発明1の「ヘアライン調加飾シート」において、「離型層」により「透明保護層」が剥離される際に、該「透明保護層」以下の「透明ヘアライン層、反射層、接着層」も該「透明保護層」と一体となって剥離されることは当業者には明らかであるから、「転写材であるように構成されたヘアライン調加飾シート」における被転写体、すなわち、本件発明1の「転写層」に相当する部分が、「透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層」を積層した層であることも、当業者には明らかである。
b 引用発明1の「ヘアライン調加飾シート」(本件発明1の「転写箔」に相当。以下、「」内に引用発明1の構成を記し、その後に()を付加したとき、()内には引用発明1の構成に相当する本件発明1の構成を記すものとする。)は、「基体シート」(フィルム基材)の上に、「離型層」(離型層)、「透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層」(転写層)がこの順に積層されているから、本件発明1の「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔」に該当するといえる。さらに、引用発明1は、「透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層」(転写層)が、「基体シート」及び「離型層」(離型性フィルム基材)の「上層に配置され」るとの本件発明1の構成を充足する。
c 引用発明1の「透明ヘアライン層」は、「可視光透過率が60%以上」であり、かつ、「その下に存在する平滑である金属光沢層があたかもヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるようにされて」いるものであり、かつ、「材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、必要に応じて顔料または染料を着色剤として含有するインキを用い」ているから、本件発明1の「透明性を有する樹脂層」である「立体意匠付与層」に相当する。
また、引用発明1の「反射層」は、「アルミニウム」などの「金属」などを使用し、「真空蒸着法」などで「形成され」た「金属薄膜層」である。ここで、本件明細書の段落【0031】には、意匠層として金属光沢層や金属調印刷層を形成する場合、蒸着等により形成された金属等からなる金属蒸着薄膜層とすることができる旨が記載されており、このことからみて、引用発明1の「反射層」は、本件発明1の「意匠層」に相当するといえる。
さらに、引用発明1の「接着層」は、本件発明1の「接着層」に相当する。
d 上記cからみて、引用発明1は、「透明保護層、透明ヘアライン層、反射層、接着層」(転写層)が、「透明ヘアライン層」(透明性を有する樹脂層)と、当該「透明ヘアライン層」上に配置された「反射層」(意匠層)と、当該「反射層」上に配置された「接着層」(接着層)とを備えるといえるから、本件発明1の「転写層」が「透明性を有する樹脂層である立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備え」るとの構成を充足する。
e 上記aないしdからみて、本件発明1と引用発明1とは、
「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、前記転写層は、離型性フィルム基材の上層に配置され、透明性を有する樹脂層である立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。」
において一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「立体意匠付与層」が、
本件発明1では、「表面に最大30μmの高低差を有する」のに対し、
引用発明1では、表面の高低差が特定されていない点

相違点2:
前記「立体意匠付与層」が、「離型性フィルム基材の上層」に、
本件発明1では、「全面を覆う形」で「配置」されているのに対し、
引用発明1では、線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成されている点

(イ)事案に鑑み、相違点2から検討する。
a 相違点2は形式的なものではなく、実質的な相違点であり、したがって、本件発明1が引用発明1と同一の発明であるということはできない。
b 引用発明1は、成形品表面にヘアライン調の装飾を行うことができるヘアライン調加飾シートに関する発明であり(引用例1の段落【0001】(上記(1)ア(ア))参照。)、ヘアライン模様を表現するための層として、透明保護層とともに透明ヘアライン層を備えており(同段落【0020】(上記(1)ア(エ))参照。)、当該透明ヘアライン層を線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成するものである(同段落【0020】(上記(1)ア(エ))参照。)。
また、引用発明1は、前記透明保護層のd線(波長587.56nm)における屈折率をn1、前記透明ヘアライン層のd線における屈折率をn2としたとき、1.0<n1/n2<1.24の関係を満たすように構成する(同段落【0022】(上記(1)ア(エ))参照。)ことによって、透明層の中で屈折率の異なる部分の境界で光が屈折するために、その下に存在する平滑である金属光沢層があたかもヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるようにされている(同段落【0023】(上記(1)ア(エ))参照。)ものである。
c 上記bからみて、引用発明1のヘアライン調加飾シートは、当該シートが施された成形品表面にヘアライン模様を表現するための構成として、透明ヘアライン層を線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成していると認められる。
ここで、仮に、当該透明ヘアライン層を、線分が多数表現されるようなパターンではなく、基体シート(本件発明1の「離型性フィルム基材」に相当する。)の上層に全面を覆うように形成した場合にどうなるかを考察すると、その場合はもはや上記パターンはなくなってしまっているから、ヘアライン模様が見えなくなるか、少なくとも、上記パターンがあったときと比べてヘアライン模様が見え辛くなることは明らかである。
引用発明1は、成形品にヘアライン調の装飾を行うことができるヘアライン調加飾シートに関する発明なのであるから、ヘアライン模様が見えなくなったり、見え辛くなるような改変が好ましくないことは明らかであり、そうすると、引用発明1には、透明ヘアライン層を基体シートの全面を覆うように改変することに対して阻害要因が存在するというべきである。
d また、上記bから、引用発明1では、あたかもヘアライン状の凹凸が形成されているように見えるための構成として、透明層(なお、当該「透明層」が、透明保護層と透明ヘアライン層の総称であることは明らかである。)の中に屈折率の異なる部分の境界(なお、当該「屈折率の異なる部分の境界」が、d線における屈折率n1の透明保護層とd線における屈折率n2の透明ヘアライン層の界面を意味することは明らかである。)があり、当該境界で光が屈折することが必要であることが理解される。
ここで、仮に、上記屈折率の異なる部分の境界が基材シートの上層に全面を覆うように存在した場合にどのように見えるかを考察すると、その場合は上記境界での光の屈折も全面で起きることになるから、ヘアライン状に凹凸が形成されているように見えるとは考え難い。つまり、引用発明1において、光が屈折する境界(透明保護層と透明ヘアライン層の界面)が全面ではなくパターン状に存在するがゆえに、ヘアライン状に凹凸が形成されているように見えると理解するのが妥当であるから、この点からみても、引用発明1には、透明ヘアライン層を基体シートの全面を覆うように改変することに対して阻害要因が存在するというべきである。
e 上記cの考察からも、上記dの考察からも、引用発明1には、透明ヘアライン層を基体シートの全面を覆うように改変することに対して阻害要因が存在するといえる。
そうすると、例え上記(1)カの周知技術の存在を認めたしたとしても、引用発明1において、透明ヘアライン層を基体シートの全面を覆うようになすこと、すなわち相違点2に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(ウ)本件発明1は、立体意匠付与層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏するものである。

(エ)上記(イ)及び(ウ)からみて、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1と同一ではなく、また、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件発明2と引用発明1との対比・判断
(ア)引用発明1の「基体シート」及び「透明ヘアライン層」は、本件発明2の「基材層」及び「透明性を有する樹脂層」にそれぞれ相当する。
本件発明2も、本件発明1と同様に、「離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように、・・・透明性を有する樹脂層を形成」するという構成を備えるのであるから、本件発明2と引用発明1とは、少なくとも、次の点で相違する。

相違点3:
「透明性を有する樹脂層」が、「離型層の上層」に、
本件発明2では、「離型性フィルム基材の全面を覆う」ように「形成」されるのに対し、
引用発明1では、線幅が0.5mm未満、長さが2mmの線分が多数表現されるようなパターンに形成される点

(イ)相違点3についての判断は、上記ア(イ)に示した相違点2についての判断とまったく同様である。
また、本件発明2は、透明性を有する樹脂層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で形成されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏するものである。
以上のことに鑑みれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明1と同一ではなく、また、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 本件発明1と引用発明2との対比・判断
(ア)a 引用発明2の「担持フィルム」、「ベースフィルム」、「剥離層」、「転写箔」及び「接着剤層」は、本件発明1の「離型性フィルム基材」、「フィルム基材」、「離型層」、「転写箔」及び「接着層」に相当する。
また、引用発明2の「光制御パターン層」は、「上側の面を所望のパターンによる凹凸面にした透明な」層であり、「前記光制御パターン層の凹凸がレンズ作用若しくはプリズム作用を奏するために、この凹凸がある領域に入射した光は多くが乱反射し、凹凸が無い表示要素の領域に入射した光は多くが全反射するので、表示要素だけがその他の部分に対して浮き出たエンボス様の立体に見え」るのであり、かつ、「材料としては、着色層のインクによって侵食されない性質を持つ透明な合成樹脂、例えば、紫外線硬化型樹脂を使用」するのであるから、本件発明1の「透明性を有する樹脂層」である「立体意匠付与層」に相当する。
また、引用発明2の「加飾色層」は、銀色のインクを塗布して形成したものである。ここで、本件明細書の段落【0032】には、意匠層としての金属光沢層や金属調印刷層としては、例えば、アルミフレーク等の金属製顔料を含有するインキで一部または全面印刷された層とすることができる旨が記載されており、このことからみて、引用発明2の「加飾色層」は、本件発明1の「意匠層」に相当するといえる。
さらに、引用発明2の「転写箔」において、「剥離層」により「光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層」が一体となって剥離されることは当業者には明らかであるから、「転写箔」における被転写体、すなわち、本件発明1の「転写層」に相当する部分が、「光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層」を積層した層であることも、当業者には明らかである。
b 引用発明2の「転写箔」(本件発明1の「転写箔」に相当。以下、「」内に引用発明2の構成を記し、その後に()を付加したとき、()内には引用発明2の構成に相当する本件発明1の構成を記すものとする。)は、「担持フィルム」(離型性フィルム基材)の上(正確には「担持フィルム」の一部である「剥離層」の上)に、「光制御パターン層」(立体意匠付与層)と「加飾色層」(意匠層)及び「接着剤層」(接着層)をこの順序で形成したものであり、上記aに示したとおり、「光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層」が本件発明1の「転写層」に相当するから、引用発明2の「転写箔」は、本件発明1の「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔」に該当するといえる。さらに、引用発明2は、「光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層」(転写層)が、「担持フィルム」(離型性フィルム基材)の「上層に配置され」るとの本件発明1の構成を充足する。
c 上記a及びbからみて、引用発明2は、「光制御パターン層と加飾色層及び接着剤層」(転写層)が、「光制御パターン層」(透明性を有する樹脂層である立体意匠付与層)と、当該「光制御パターン層」上に配置された「加飾色層」(意匠層)と、当該「加飾色層」上に配置された「接着剤層」(接着層)とを備えるといえるから、本件発明1の「転写層」が「透明性を有する樹脂層である立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備え」るとの構成を充足する。
d 上記aないしcからみて、本件発明1と引用発明2とは、
「離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、前記転写層は、離型性フィルム基材の上層に配置され、透明性を有する樹脂層である立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。」
において一致し、次の点において相違する。

相違点4:
前記「立体意匠付与層」が、
本件発明1では「表面に最大30μmの高低差を有する」のに対し、
引用発明2では50?60ミクロン程度の厚さであるが、表面の高低差は特定されていない点

相違点5:
前記「立体意匠付与層」が、「離型性フィルム基材の上層」に、
本件発明1では、「全面を覆う形」で「配置」されているのに対し、
引用発明2では、表示要素と外周枠部を成す部分だけにマスキングを設けた印刷版を使用し、この印刷版を通して塗布した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することにより、剥離層上にマスキングされていた部分(表示要素と外周枠部分)を穴の形で残したパターン層として形成されている点

(イ)事案に鑑み、相違点5から検討する。
a 引用発明2は、表示要素に立体感を持たせることができる、工業製品の加飾に適した転写箔に関する発明であり、前記表示要素とは、文字や絵柄等であり、前記文字の一例は、ある程度の幅を持つ線で描かれた「日本列島」という文字であり、また、前記絵柄の一例は、日本列島のおおまかな図形であって(引用例2の段落【0013】(上記(1)ウ(ウ))参照。)、光制御パターン層が形成されずに残った穴を加飾色層の銀色インクが埋めることによって、転写箔上にある程度の幅を持つ線で描かれた「日本列島」という文字や日本列島のおおまかな図形が表出するというものである。
b 上記aからみて、引用発明2の転写箔は、当該転写箔を工業製品に転写後、その表面に光制御パターン層が形成されずに残った穴のパターンによって文字や図柄が表現されるものであるから、仮に、光制御パターン層を担持フィルムの上層に全面を覆うように形成した場合には、前記穴(すなわち光制御パターン層が形成されていない領域)がなくなってしまい、文字や図柄である表示要素を表示することができなくなってしまう。
引用発明2は、表示要素に立体感を持たせることができる転写箔に関する発明なのであるから、表示要素を表示することができなくなってしまうような改変が引用発明2の目的に反することは明らかであり、そうすると、引用発明2には、光制御パターン層を担持フィルムの上層に全面を覆うように形成することに対して明確な阻害要因があるというべきである。
c 上記bからみて、例え上記(1)カの周知技術の存在を認めたしたとしても、引用発明2において、光制御パターン層を担持フィルムの上層に全面を覆うように形成すること、すなわち、相違点5に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(ウ)本件発明1は、立体意匠付与層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏するものである。

(エ)上記(イ)及び(ウ)からみて、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明2と引用発明2との対比・判断
(ア)引用発明2の「光制御パターン層」は、本件発明2の「透明性を有する樹脂層」に相当する。
本件発明2も、本件発明1と同様に、「離型層の上層に、離型性フィルム基材の全面を覆うように、・・・透明性を有する樹脂層を形成」するという構成を備えるのであるから、本件発明2と引用発明2とは、少なくとも、次の点で相違する。

相違点6:
「透明性を有する樹脂層」が、「離型層の上層」に、
本件発明2では、「離型性フィルム基材の全面を覆う」ように「形成」されるのに対し、
引用発明2では、表示要素と外周枠部を成す部分だけにマスキングを設けた印刷版を使用し、この印刷版を通して塗布した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射することにより、剥離層上にマスキングされていた部分(表示要素と外周枠部分)を穴の形で残したパターン層として形成されている点

(イ)相違点6についての判断は、上記ウ(イ)に示した相違点5についての判断とまったく同様である。
また、本件発明2は、透明性を有する樹脂層が離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で形成されているので、意匠層が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくてすむとの有利な効果を奏するものである。
以上のことに鑑みれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)まとめ
上記(2)に示したとおり、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明において、取消理由1は成り立たない。
また、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明において、取消理由2も成り立たない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由1及び2によっては、本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
転写箔、および転写箔の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔、およびそれを用いた加飾成形品に係り、特に、意匠的に立体感の付与が可能な転写箔と、それを用いた加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形品に対して意匠的に立体感を付与する手法としては、(1)成形品の表面に凹凸形状を付与するもの、(2)加飾層に視差を利用した立体印刷層を設けるものが知られている。(1)の手法としては、プラスチック射出成形用金型のキャビティ面に予め所望の凹凸形状を設けておく方法(例えば、特許文献1)や、離型性フィルム基材の加飾層とは反対側の面に凹凸付与層を設けた転写箔を用いる方法(例えば、特許文献2)が提案されている。また(2)の手法としては、離型性フィルム基材上に、第1の絵柄層、透明層、第2の絵柄層、隠蔽層、接着剤層が順次積層された構成の転写箔を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0003】
上記(1)の前者の場合にあっては、凹凸パターン毎に金型を作らなければならず、コストも嵩むため好ましくない。また(1)の手法の後者の場合にあっては、成形品の表面に凹凸形状を付与することは可能だが、凹凸形状が離型性フィルム基材を通した上でパターン転写されるために、実際に付与したい形状を、シャープに再現する事が難しい。また、(1)の手法の場合はいずれも成形加工を通じて成形品の表面に凹凸形状が付与される手法のため、印刷によって立体感を付与する手法とは異なる。更には、成形品の表面仕上がりが平滑のものを作製する事ができない。
【0004】
一方、上記(2)の手法の場合にあっては、印刷によって立体意匠が表わされているが、絵柄層を複数設ける必要があるため、使用可能な印刷機に制約が出たり、印刷が複数工程にまたがってしまったりする虞がある。また、透明層の厚みによって立体的に見える条件が決まってしまうため、見る角度次第では立体感が得られないといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-263973号公報
【特許文献2】特開平1-120398号公報
【特許文献3】特開平2-310051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような事情を鑑みてなされたものであり、従来の絵柄印刷のみを施した転写箔とは異なり、設けられた意匠が良好な立体感を有し、且つ所望の柄表現が可能な転写箔と、それを用いた加飾成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の転写箔は、離型性フィルム基材上の離型層側に、転写層として少なくとも、立体意匠付与層、意匠層、および接着層が積層されていることを基本構成とする。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、前記転写層は、離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔である。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る発明は、離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、前記離型層の上層に、前記離型性フィルム基材の全面を覆うように、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、転写箔の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転写箔を用いれば、立体意匠付与層を介して設けられた意匠層が立体的になっていることで、成形品に転写した後も意匠に奥行き感を与えることができる。
【0012】
また、前記立体意匠付与層が透明性を有する場合、積層される意匠層が立体意匠付与層に遮られることがなくなるため、任意の絵柄を表現可能となる。更には、前記立体意匠付与層は透明性があれば有色、無色の何れでも良いため、特に有色透明の場合は、意匠層に対して色味に変化を加えることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る転写箔の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る転写箔1は、図1に示すように、離型性フィルム基材2の離型層側に、転写層3として、少なくとも、立体意匠付与層4、意匠層5、および接着層6が積層されていることを基本構成とする。
このような構成とすることで、意匠層5が立体意匠付与層4を含み、立体的に印刷される形となる。このため、従来の絵柄印刷のみの場合と比較して意匠性が飛躍的に向上する。
なお、意匠層5としては、印刷絵柄層、スパッタや蒸着などの金属光沢層、あるいは金属調印刷層などが利用できるもので、求められる意匠に応じて設けることが可能である。
また、この転写箔1を用いて、射出成形同時加飾の手法の1つであるインモールド成形を実施した場合、転写層3は離型性フィルム基材2から剥離されて、接着層6を介して成形品の表面に転写されることになり、立体的に付与された意匠層5が表面の意匠として表現されることとなる。
【0016】
また、本発明に係る転写箔1は、図2に示すように、立体意匠付与層4が離型性フィルム基材2の全面を覆う形で設けられていても良い。このような構成とすることで、意匠層5が成形品の最表面にむき出しにならず、直接損傷を受けなくて済む。
【0017】
また、本発明に係る転写箔1は、図3に示すように、立体意匠付与層4を設ける前に表面保護層7を設けていても良い。このような構成とすることで、立体意匠付与層4の形成面積によらず、成形品の最表面を表面保護層7にて保護することが可能となり、成形品の耐傷付き性などの表面物性が向上する。
【0018】
また、本発明に係る転写箔1は、図3に示すように、意匠層5と接着層6の間に隠蔽層8を設けていても良い。このような構成とすることで、設けられた意匠層5の意匠の再現性が向上し、射出成形樹脂基材の色味の影響も受けにくくなる。
【0019】
前記表面保護層7、および隠蔽層8は、必要に応じて設けられる層であり、何れか一方であっても、両方とも設けられていても構わない。
【0020】
次に、本発明に係る転写箔を構成する各材料、および製造方法について説明する。
【0021】
(離型性フィルム基材)
離型性フィルム基材2としては、図1に示すように、基材層21と離型層22との積層体が使用できる。基材層21の材料としては、可撓性があれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル等が使用できる。中でも、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムが、耐熱性に優れていることからより好ましい。
離型性フィルム基材2の厚みとしては、5μm?200μm程度のものが好ましく、25μm?100μm程度のものがより好適に用いられる。
離型層22の材料としては、離型性樹脂や離型剤を含んだ樹脂などが使用できる。離型性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は1種単独、あるいは2種以上混合して用いることもできる。
また、離型剤を含んだ樹脂としては、例えば、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、又は各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などを用いることができる。
【0022】
離型層22の形成方法としては、上記の樹脂を溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ-ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどのコーティング方法で塗布し乾燥して、溶剤を除去することにより形成する方法を用いることができる。
離型層22の厚さは、0.1μm?5.0μm程度あれば良く、より好ましくは0.3μm?2.0μm程度である。
【0023】
(転写層)
続いて、本発明に係る転写箔の転写層について説明する。
図1に示すように、転写層3は、少なくとも、立体意匠付与層4、意匠層5、および接着層6が積層されていることを基本構成とするものである。また必要に応じて、図3に示すように、離型層22の面上に予め表面保護層7を有する構成としても良いし、意匠層5と接着層6の間に隠蔽層8を有する構成としても良い。
【0024】
(立体意匠付与層)
立体意匠付与層4を構成する樹脂としては、成形品の表面を加飾する際にかかる熱や圧力などの負荷に耐え得る材料であれば特に制限はなく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等から適宜選択できる。硬化方法に関しても、1液硬化タイプ、硬化剤を用いる2液硬化タイプ、あるいは活性エネルギー線照射による硬化タイプ等から適宜選択できる。
【0025】
立体意匠付与層4の形成方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を用いることができる。
立体意匠付与層4の厚さは、求められる意匠性を鑑みて任意に決められるものであり、特に制約はないが、0.1μm?50μm程度あれば効果が期待できる。
また、印刷方法以外にも、エンボス加工を行なうことで立体意匠付与層4を形成することもできる。この場合、公知の印刷方法やコーティング方法にて予め設けておいたエンボス加工前の立体意匠付与層に対して、所望の形状が付与されたエンボス版を押し当てることで、立体意匠付与層4を形成することができる。なお、エンボス加工により付与される形状には特に制約はなく、求められる意匠に応じて任意の形状が使用可能である。前記エンボス加工工程は、接着層6を形成する前であればどのタイミングでも良く、例えば、エンボス加工前の立体意匠付与層を形成した直後であっても、意匠層5を形成した後であっても構わない。エンボス加工により立体意匠付与層4を形成することで、よりシャープな形状再現が可能となり、更なる高意匠化を図ることができる。
【0026】
(表面保護層)
表面保護層7を形成する場合、構成する樹脂としては、耐候性、耐摩耗性、耐傷性、耐薬品性等の要求される諸物性に対して満足できるものであれば特に規定されるものではなく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等から適宜選択できる。硬化方法に関しても、1液硬化タイプ、硬化剤を用いる2液硬化タイプ、あるいは活性エネルギー線照射による硬化タイプ等から適宜選択できる。また、表面保護層7には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、減摩剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を加えても良い。
【0027】
ここで、本発明においては、表面保護層として前記活性エネルギー線硬化型樹脂を使用する場合の形態として、以下の方法を用いることができる。
まず第1は、該樹脂を塗工後に活性エネルギー線を照射して、完全に架橋硬化させて転写箔を作製する方法である。第2の方法としては、塗工後には活性エネルギー線を照射せず、被転写体への転写が完了した後に照射して完全硬化させる方法である。第2の方法の場合の使用形態の詳細は以下の通りである。まず、前記活性エネルギー線硬化型樹脂を溶剤に溶解あるいは分散させた状態で、離型性フィルム基材2の上にリバースグラビアコート等の方法で塗工し、その後、溶剤を揮発乾燥させて未架橋のままで非粘着固体化させ、未架橋状態の架橋硬化樹脂層を作製する。
なお、その際に必要に応じて、被転写体の表面形状への形状追従性を損なわない範囲内で、活性エネルギー線を適量照射して、不完全(一部分)架橋状態とすることにより、未架橋状態に比べてより完全に乾燥させたり、あるいは転写時の熱や応力による架橋硬化樹脂層の流動を防止したりしても良い。
このようにして得られた転写箔は、被転写体の表面形状に追従させつつ転写されるが、この際、前記架橋硬化樹脂層は完全には架橋していないため、熱可塑性を維持しており、被転写体の表面形状に追従することができる。その後、活性エネルギー線を照射することにより、前記架橋硬化樹脂層を完全に架橋、硬化せしめる。これにより、前記架橋硬化樹脂層は十分な耐擦傷性(ハードコート性)と成形性を両立させることができる。
【0028】
表面保護層7の形成方法としては、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなど公知のコーティング方法を用いることができる。
表面保護層7の厚さは、3?15μm程度が好適である。
【0029】
(意匠層)
意匠層5として、印刷絵柄層を形成する場合、インキは公知のものが使用できる。すなわち、ビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔剤を添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、希釈剤等で充分に希釈、攪拌してなるものでよい。
【0030】
印刷絵柄層の形成方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を用いることができる。
【0031】
意匠層5として、金属光沢層あるいは金属調印刷層を形成する場合、例えば、蒸着等により形成された金属等からなる金属蒸着薄膜層とすることができる。
その材料としては、発現すべき金属光沢色に応じて、アルミニウム、スズ、クロム、ニッケル、金、白金、銀、銅、インジウム、チタニウム、亜鉛などの金属やその酸化物、および、これらの合金または化合物を用いることができる。
前記金属薄膜層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などの方法を用いることができる。
【0032】
また、金属光沢層あるいは金属調印刷層としては、例えば、アルミフレーク等の金属製顔料を含有するインキで一部または全面印刷された層とすることができる。前記金属調印刷層の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法を用いることができる。
【0033】
(隠蔽層)
隠蔽層8を形成する場合、意匠層5の印刷絵柄層を形成する場合に用いる公知のインキが同様に使用できる。
【0034】
隠蔽層8の形成方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を用いることができる。
【0035】
(接着層)
本発明において、接着層6は、転写層3を成形品に貼り付けるために用いられるもので、常温で粘着力を持つものや、加熱などの処理によって粘着又は接着力を発現するものを用いることができる。
【0036】
接着層6の材料としては、接着性及び/又は粘着性を持てばよく、いわゆる接着剤、粘着剤、ホットメルトと呼ばれるものも含み、特に限定されるものではない。
例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、イソシアネート系、シリコーン系、スチレン-ブタジエン系、塩化ビニル-酢酸ビニル系、エチレン-酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、ポリウレタン系などの樹脂を単独で使用、またはこれらの混合物を主成分とするエマルジョン系樹脂や有機溶剤型樹脂、水溶性樹脂などが挙げられる。
【0037】
接着層6の形成方法としては、上記の樹脂を水や有機溶剤で希釈させた塗布用液体を、グラビア印刷、オフセット印刷、もしくはスクリーン印刷などの印刷方法、又は、ロールコート、バーコート、コンマコート、スプレーコート、もしくは押出しコートなどのコート法で塗布し、その後、乾燥又は冷却して形成する方法を用いることができる。
接着層6の厚さは、特に制限は無いが、通常1μm?10μm程度である。
【0038】
(被転写体)
本発明の転写箔に対する被転写体としては、その材質、形状に限定があるものではなく、例えば材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂等の樹脂類、あるいは、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮等の金属或いは金属化合物類、木質合板、木質単板、中密度繊維板(MDF)等の木材類、ガラス、陶磁器等のセラミック類、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、スラグセメント等のセメント、ケイ酸カルシウム、紙、布帛、不織布等と任意である。
また、形状もシート(フィルム)、平板、曲面板、棒状体、立体物等と任意である。被転写面の凹凸形状等によって、適宜転写方法を選択して転写することができる。
【実施例1】
【0039】
離型性フィルム基材の基材層として、厚さ50μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、前記基材層上の一方の面へ、グラビアコート法で、メラミン樹脂系塗工液を乾燥後の厚さが2.0μmになるように塗布し、離型層を形成した。
【0040】
次に、前記離型層上に、転写層として以下の層を順次積層した。
まず、表面保護層として、リバースグラビアコート法で、紫外線硬化タイプのアクリル系樹脂を乾燥後の厚さが5.0μmになるように塗布し、高圧水銀灯120W/cmを用いて、積算光量が1000mJ/cm2になるように紫外線を照射して架橋硬化させた。
【0041】
次に、前記表面保護層の表面に、スクリーン印刷により、紫外線硬化タイプの透明アクリル系樹脂を、乾燥後の凹凸高低差が最大30μmになるようにパターン印刷して、立体意匠付与層を形成した。この時、高圧水銀灯120W/cmを用いて、積算光量が200mJ/cm2になるように紫外線を照射して硬化させた。
【0042】
次に、前記立体意匠付与層の表面に、スクリーン印刷により、紫外線硬化タイプのシルバーインキ(アルミペーストを含む)を用いて、前記立体意匠付与層の凹凸形状も埋めつつ、ベタ印刷層としての金属調印刷層を形成した。形成した金属調印刷層は、高圧水銀灯120W/cmを用いて、積算光量が500mJ/cm2になるように紫外線を照射して架橋硬化させた。
【0043】
次に、前記金属調印刷層の表面に、グラビア印刷により、1液硬化タイプのアクリル樹脂系接着層を乾燥後の厚さが5.0μmになるように塗布し、本発明に係る転写箔を得た。
【0044】
上述のように作製した転写箔を射出成形(インモールド成形)に用いて、成形品の表面に転写したところ、今までにない立体感を有する成形品を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の転写箔は、紙、プラスチック、無機質系等の様々な基材に対して、転写面に良好な立体感を与えることができ、例えば、携帯電話やノートパソコンなどの各種電化製品の外装部品や、自動車などの車両内装部品、その他加飾が求められる様々な用途に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…転写箔
2…離型性フィルム基材
3…転写層
4…立体意匠付与層
5…意匠層
6…接着層
7…表面保護層
8…隠蔽層
21…基材層
22…離型層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性フィルム基材上の離型層側に転写層を有する転写箔であって、
前記転写層は、
離型性フィルム基材の上層に全面を覆う形で配置され、透明性を有する樹脂層であって、表面に最大30μmの高低差を有する立体意匠付与層と、
前記立体意匠付与層上に配置された意匠層と、
前記意匠層の上層に配置された接着層と、を備えた転写箔。
【請求項2】
離型性フィルム基材の基材層上の一方の面へ、離型性樹脂又は離型剤を含んだ樹脂材料により離型層を形成し、
前記離型層の上層に、前記離型性フィルム基材の全面を覆うように、パターン印刷により表面の凹凸高低差が最大30μmとなるように透明性を有する樹脂層を形成し、
前記樹脂層上に印刷又は金属蒸着により意匠層を形成し、
前記意匠層の上層に接着層を形成する、工程を備える、
転写箔の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-23 
出願番号 特願2011-71065(P2011-71065)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B44C)
P 1 651・ 854- YAA (B44C)
P 1 651・ 113- YAA (B44C)
P 1 651・ 853- YAA (B44C)
P 1 651・ 841- YAA (B44C)
P 1 651・ 855- YAA (B44C)
P 1 651・ 851- YAA (B44C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
西村 仁志
登録日 2016-03-25 
登録番号 特許第5903768号(P5903768)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 転写箔、および転写箔の製造方法  

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