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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 発明同一 A61K 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A61K |
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管理番号 | 1331210 |
異議申立番号 | 異議2016-700869 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-15 |
確定日 | 2017-07-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5887112号発明「板状αゲル組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5887112号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5887112号の請求項1、2、4-7に係る特許を維持する。 特許第5887112号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5887112号の請求項1-7に係る発明についての出願は、平成23年11月28日に出願された特願2011-258725号であって、平成28年2月19日にその特許権の設定登録がなされ、特許異議申立人 田中和幸(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。 平成28年12月16日付け:取消理由の通知 平成29年 2月13日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者) 同年 4月 7日 :意見書の提出(申立人) 第2 訂正の可否 1 訂正の内容 平成29年2月13日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)特許請求の範囲の請求項1の 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程とを含み、 該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする、板状αゲル組成物の製造方法。」を、 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程であって、 該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする工程と、 第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、 第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する、板状αゲル組成物の製造方法。」に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。 (2)特許請求の範囲の請求項3を削除する(以下、「訂正事項2」という。)。 (3)特許請求の範囲の請求項4の 「第3の流動体を、前記攪拌混合装置内において前記混合体と連続的に混合する請求項3に記載の製造方法。」を、 「第3の流動体を、前記攪拌混合装置内において前記混合体と連続的に混合する請求項1に記載の製造方法。」に訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。 (4)特許請求の範囲の請求項5の 「振動式の前記攪拌混合装置が、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。」を、 「振動式の前記攪拌混合装置が、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている請求項1、2又は4に記載の製造方法。」に訂正する(以下、「訂正事項4」という。)。 (5)特許請求の範囲の請求項6の 「固体の前記油性成分が、融点が25℃以上の脂肪族アルコールと界面活性剤とを含有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法。」を、 「固体の前記油性成分が、融点が25℃以上の脂肪族アルコールと界面活性剤とを含有する請求項1、2、4又は5に記載の製造方法。」に訂正する(以下、「訂正事項5」という。)。 (6)特許請求の範囲の請求項7の 「前記板状αゲル組成物が、毛髪化粧料又は皮膚用化粧料である請求項1ないし6のいずれかに記載の製造方法。」を、 「前記板状αゲル組成物が、毛髪化粧料又は皮膚用化粧料である1、2、4ないし6のいずれかに記載の製造方法。」に訂正する(以下、「訂正事項6」という。)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、本件特許の請求項1に係る「板状αゲル組成物の製造方法」の製造工程において、さらに、上記請求項1を引用する本件特許の請求項3に係る製造工程を加えて限定するものである。 訂正事項2は、訂正事項1に伴って、上記請求項3を削除するものである。 訂正事項3-6は、訂正事項2により上記請求項3が削除されることに伴って、本願特許の請求項4-7それぞれの引用請求項を整理するものである。 そして、訂正前の請求項2-7は、訂正前の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項であるから、請求項1-7は一群の請求項であるところ、特許請求の範囲の訂正に係る上記の訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 よって、いずれの訂正も新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合するので、訂正事項1-6に係る訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたように、本件訂正請求は認められるので、本件の請求項1、2、4-7に係る発明(以下、「本件発明1」…「本件発明7」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、平成29年2月13日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4-7に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程であって、 該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする工程と、 第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、 第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する、板状αゲル組成物の製造方法。」 【請求項2】 「前記混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを連続的に混合する請求項1に記載の製造方法。」 【請求項4】 「第3の流動体を、前記攪拌混合装置内において前記混合体と連続的に混合する請求項1に記載の製造方法。」 【請求項5】 「振動式の前記攪拌混合装置が、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている請求項1、2又は4に記載の製造方法。」 【請求項6】 「固体の前記油性成分が、融点が25℃以上の脂肪族アルコールと界面活性剤とを含有する請求項1、2、4又は5に記載の製造方法。」 【請求項7】 「前記板状αゲル組成物が、毛髪化粧料又は皮膚用化粧料である1、2、4ないし6のいずれかに記載の製造方法。」 第4 取消理由についての判断 1 取消理由通知の概要 当審は平成28年12月16日付け取消理由の通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。 理由1.本件特許の請求項1、2、6、7に係る発明は、本件特許の出願前外国において頒布された刊行物1-3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2.本件特許の請求項1、2、6、7に係る発明は、本件特許の出願の日前の先の出願に基づく優先権の主張を伴う外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、本件特許の出願後に国際公開がされた外国語特許出願5の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由3.本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 刊行物1:国際公開第2010/077707号(甲第1号証) 刊行物2:国際公開第2010/077706号(甲第2号証) 刊行物3:国際公開第2010/077704号(甲第3号証) 刊行物4:岡本亨、「化粧品における熱分析」、熱測定、37巻、3号、 124-131頁(甲第10号証) (技術常識を示す文献として) 出願5 :優先権主張を伴う特願2014-530008号 (特表2014-526477号:甲第9号証) (優先日:平成23年9月15日) 2 取消理由1について (1)刊行物に記載された事項 ア 刊行物1(甲第1号証)に記載された事項(下記は、当審で作成した訳文である。) 「 成分の定義 *1 アミノシリコーン:GEから入手可能な10,000mPa・sの 粘度を有し、以下の化学式(I)を有する: (R_(1))_(a)G_(3-a)-Si-(-OSiG_(2))_(n)-(-OSiG_(b)(R_(1))_(2-b))_(m)-O-SiG_(3-a)(R_(1))_(a) (I) 式中、Gはメチルであり;aは1の整数であり;bは0、1又は2、 好ましくは1であり;nは400-約600の数であり;mは0の 整数であり;R_(1)は、一般式C_(q)H_(2q)Lに従う一価ラジカルであ り、式中、qは3の整数であり、Lは-NH_(2)である。 作製方法 方法I 「実施例1」から「実施例3」、及び「実施例5」のコンディショニング組成物を次のように作製する: 成分1-7及び11を混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成する。別に、成分9、10及び15を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成する。Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中で、油相を注入する。油相が1.0×10^(4)J/m^(3)から1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有し、水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する。ゲルマトリックスが形成される。含まれる場合には、成分8及び12-14を振とうしながらゲルマトリックスに添加する。次に、組成物を室温に冷却する。 方法II 「実施例4」のコンディショニング組成物を次のように作製する: 成分1-7及び11を混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成する。別に、成分9、10及び15を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成する。Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中で、油相を注入する。油相が1.0×10^(3)J/m^(3)から1.0×10^(4)J/m^(3)(1.0×10^(4)J/m^(3)を排除)以下までのエネルギー密度を有し、水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する。ゲルマトリックスが形成される。含まれる場合には、成分8及び12-14を振とうしながらゲルマトリックスに添加する。次に、組成物を室温に冷却する。」(19頁11行-21頁17行) イ 刊行物2-3(甲第2-3号証)に記載された事項 刊行物2(18頁13行-21頁8行)及び刊行物3(18頁9行-21頁5行)には、実施例1-5に関し、刊行物1の実施例1-5すなわち上記アと同一の事項が記載されている。 (2)対比・判断 ア 刊行物1に記載された発明 (ア)引用発明1 刊行物1実施例1の組成及び作製方法からみて、刊行物1には以下の引用発明1が記載されている。 「ベヘニルトリメチル塩化アンモニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成し、 別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成し、 Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中に油相を注入し、油相が1.0×10^(4)J/m^(3)から1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する、ゲルマトリックスの形成、 更に、振とうしながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ゲルマトリックスの形成方法。」 (イ)引用発明2 刊行物1実施例2の組成及び作製方法からみて、刊行物1には以下の引用発明2が記載されている。 「ベヘニルトリメチル塩化アンモニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソプロパノール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成し、 別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成し、 Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中に油相を注入し、油相が1.0×10^(4)J/m^(3)から1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する、ゲルマトリックスの形成、 更に、振とうしながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ゲルマトリックスの形成方法。」 (ウ)引用発明3 刊行物1実施例3及び5の組成及び作製方法からみて、刊行物1には以下の引用発明3が記載されている。 「ベヘニルトリメチルメチル硫酸アンモニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソプロパノール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成し、 別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成し、 Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中に油相を注入し、油相が1.0×10^(4)J/m^(3)から1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する、ゲルマトリックスの形成、 更に、振とうしながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ゲルマトリックスの形成方法。」 (エ)引用発明4 刊行物1実施例4の組成及び作製方法からみて、刊行物1には以下の引用発明4が記載されている。 「ステアラミドプロピルジメチルアミン、L-グルタミン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成し、 別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成し、 Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中に油相を注入し、油相が1.0×10^(3)J/m^(3)から1.0×10^(4)J/m^(3)未満のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する、ゲルマトリックスの形成、 更に、振とうしながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ゲルマトリックスの形成方法。」 イ 刊行物2及び3に記載された発明 上記(1)イのような事情からみて、刊行物2及び3から認定できる発明は上記(2)アと同じ引用発明1-4である。 ウ 本件発明1について (ア)本件発明1と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の「ベヘニルトリメチル塩化アンモニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃から約85℃に加熱して、油相を形成」する工程について検討する。 ベヘニルトリメチル塩化アンモニウムは、刊行物1の11頁下から7-6行に挙げられ、同頁下から11行にあるように、カチオン性界面活性剤として認識されている。次に、セチルアルコール及びステアリルアルコールは、刊行物1の13頁18-20行に記載されているように、約56℃の融点及び約58-59℃の融点を有する脂肪族アルコールである。さらに、ベンジルアルコールが室温で液状であることは、文献を挙げるまでもなく技術常識である。 そうであれば、「ベヘニルトリメチル塩化アンモニウム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール」を、約66℃から約85℃に加熱すれば、セチルアルコール、ステアリルアルコールは溶融し、ベンジルアルコールと共に、全体として油性の流動体となるものと解される。 したがって、引用発明1の上記工程は、本件発明1の「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程」に相当する。 b 引用発明1の「別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃から約48℃に加熱して、水相を形成」する工程について検討すると、水相を形成する際の温度は、油相を形成する際の温度である「約66℃から約85℃」よりも低いことは明らかであるので、上記工程により形成した「水相」は、本件発明1の「第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体」に相当する。 c 引用発明1の「Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー」は、刊行物1の5頁16-19行に「回転部材を有する高剪断ホモジナイザー」の具体例として挙げられていることからみて、「回転部材」を有するものであり、高剪断力を有することから、ある程度の「高速回転」するものであると解される。 したがって、引用発明1の「Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー」は、本件発明1の「高速回転式の攪拌混合装置」に相当し、さらに「Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中に油相を注入し、油相が1.0×10^(4)J/m^(3)から1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要する」工程は、Becomix(登録商標)直接注入式ローターステーターホモジナイザー中で、油相と水相を撹拌混合する工程に他ならないため、本件発明1の「油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程」に相当する。 (イ)以上より、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 相違点2: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、引用発明1は「ゲルマトリックスの形成方法」である点。 相違点3: 本件発明1は「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、引用発明1は「更に、振とうしながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する」ものである点。 (ウ)上記相違点について検討する。 相違点3に関し、本件発明1における第3の流動体は、水性であり、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合するものである。これに対し、引用発明1における「アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテル」は、これが仮に流動体として添加されるものであるとしても、水性であるか明らかでない。パンテノールやパンテニルエチルエーテルは水溶性ではあるが、低級アルコールにもよく溶ける物質でもあることに鑑みると、上記成分が明らかに水性で添加されるものであるとはいえない。また、添加時の温度については何ら明らかでない。 そして、刊行物4には、「化粧品や医薬品に用いられる乳化基剤には,セチルアルコールやステアリルアルコールのような高級アルコールが配合されている。これら高級アルコールは,基剤中で界面活性剤,水とともにα-ゲルとよばれる会合体を形成し,そのネットワーク構造により系の粘度を上昇させエマルションの安定化に寄与している。…α-ゲルの構造はSAXS(小角X線散乱)測定などから,層状結晶の親水部の間に水が保持されたラメラ状の構造をとることが分かっている。」(126頁左欄18行-右欄18行)と記載されているが、これはα-ゲルに関するものであって、相違点3に関するものではない。 このため、相違点3において本件発明1と引用発明1とは相違し、本件発明1は、引用発明1であるとはいえない。 (エ)本件発明1と引用発明2-4各々との間についても、上記(イ)に記載した相違点がそれぞれ存在することに鑑みると、上記(ウ)で検討したことと同様のことがいえる。 よって、本件発明1は、刊行物1-3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえないから、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 エ 本件発明2、4-7について 本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、上記ウで検討したことと同様の理由で、本件発明2、4-7は、刊行物1-3に記載された発明とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえないから、本件発明2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 (3)まとめ 以上のとおり、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由2について (1)出願5明細書に記載された事項 ア 出願5明細書(甲第9号証)に記載された事項 「【0081】 【表1】 【0082】 構成成分の定義 ^(*)1 67?69%のジセチルジモニウムクロリド(プロピレングリコールの残部、100%とする)及び5%の水、Evonik Goldschmidt Corporationから入手可能 ^(*)2 アミノシリコーン:GEから入手可能、10,000mPa.sの粘度を有し、以下の化学式(I)を有する。 (R_(1))_(a)G_(3-a)-Si-(-OSiG_(2))_(n)-(-OSiG_(b)(R_(1))_(2-b))_(m)-O-SiG_(3-a)(R_(1))_(a) (I) 式中、Gはメチルであり、aは1の整数であり、bは0、1又は2であり、好ましくは1であり、nは400?約600の数であり、mは0の整数であり、R_(1)は、一般式CqH_(2q)Lに従う一価のラジカルであり、式中、qは3の整数であり、Lは、-NH_(2)である。 【0083】 調製方法 上述のヘアコンディショニング組成物「実施例1」?「実施例3」及び「実施例i」?「実施例iii」は、上記のように以下の方法I又はIIのうちの1つにより調製した。 【0084】 方法I 成分1?7を混合し、約66℃?約85℃に加熱して、油相を形成する。別に、成分8?10を混合し、約20℃?約48℃に加熱して、水相を形成する。Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザーに油相を注入する。油相が、1.0×10^(5)J/m^(3)?1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する高剪断場に到達するのに、0.2秒以下を要する。形成時のジェルマトリックスの温度は、約20℃?約37℃である。ジェルマトリックスを形成する。含まれる場合には、成分11?14を撹拌しながらジェルマトリックスに添加する。次に、組成物を室温に冷却する。 【0085】 方法II 成分1?7を混合し、約66℃?約85℃に加熱し、油相を形成する。別に、成分8?10を混合し、約20℃?約48℃に加熱し、水相を形成する。Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザーに油相を注入する。油相が、1.0×10^(5)J/m^(3)?1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する高剪断場に到達するのに、0.2秒以下を要する。形成時のジェルマトリックスの温度は、約44℃以上である。ジェルマトリックスを形成する。含まれる場合には、成分11?14を撹拌しながらジェルマトリックスに添加する。次に、組成物を室温に冷却する。」 (2)対比・判断 ア 出願5明細書に記載された発明 (ア)先願発明1 出願5の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「出願5の当初明細書等」という)における、実施例1の組成及び調製方法Iからみて、出願5明細書には以下の先願発明1が記載されている。 「ベヘニルトリメチルメトサルフェート、Varisoft 432 PPG、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃?約85℃に加熱し、油相を形成し、別に、EDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃?約48℃に加熱し、水相を形成し、Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザーに油相を注入し、油相が、1.0×10^(5)J/m^(3)?1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要し、形成時のジェルマトリックスの温度は、約20℃?約37℃であるゲルマトリックスの形成、 更に、撹拌しながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ジェルマトリックスの形成方法。」 (イ)先願発明2 出願5の当初明細書等における、実施例2の組成及び調製方法Iからみて、出願5明細書には以下の先願発明2が記載されている。 「ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、Varisoft 432 PPG、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃?約85℃に加熱し、油相を形成し、別に、EDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃?約48℃に加熱し、水相を形成し、Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザーに油相を注入し、油相が、1.0×10^(5)J/m^(3)?1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要し、形成時のジェルマトリックスの温度は、約20℃?約37℃であるゲルマトリックスの形成、 更に、撹拌しながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ジェルマトリックスの形成方法。」 (ウ)先願発明3 出願5の当初明細書等における、実施例iの組成及び調製方法IIからみて、出願5明細書には以下の先願発明3が記載されている。 「ベヘニルトリメチルメトサルフェート、Varisoft 432 PPG、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃?約85℃に加熱し、油相を形成し、別に、EDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃?約48℃に加熱し、水相を形成し、Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザーに油相を注入し、油相が、1.0×10^(5)J/m^(3)?1.0×10^(7)J/m^(3)のエネルギー密度を有しかつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要し、形成時のジェルマトリックスの温度は、約44℃以上であるゲルマトリックスの形成、 更に、撹拌しながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する、ジェルマトリックスの形成方法。」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と先願発明1とを対比する。 a 先願発明1の「ベヘニルトリメチルメトサルフェート、Varisoft 432 PPG、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールを混合し、約66℃?約85℃に加熱し、油相を形成」する工程について検討する。 まず、ベヘニルトリメチルメトサルフェートは、出願5の当初明細書等の【0046】に挙げられているように、カチオン性界面活性剤として認識されている。また、Varisoft 432 PPGは、出願5の当初明細書等の【0082】によれば「67?69%のジセチルジモニウムクロリド(プロピレングリコールの残部、100%とする)及び5%の水)」であり、ジセチルジモニウムクロリドは、【0049】に挙げられているように、カチオン性界面活性剤として認識されている。次に、セチルアルコール及びステアリルアルコールは、【0054】に記載されているように、約56℃の融点及び約58?59℃の融点を有する脂肪族アルコールである。さらに、ベンジルアルコールが室温で液状であることは、文献を挙げるまでもなく技術常識である。 そうであれば、「ベヘニルトリメチルメトサルフェート、Varisoft 432 PPG、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール」を、約66℃から約85℃に加熱すれば、セチルアルコール、ステアリルアルコールは溶融し、全体として油性の流動体となるものと解される。 したがって、先願発明1の上記工程は、本件発明1の「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程」に相当する。 b 先願発明1の「別にEDTA二ナトリウム、水溶性防腐剤、脱イオン水を混合し、約20℃?約48℃に加熱し、水相を形成」する工程について検討すると、水相を形成する際の温度は、油相を形成する際の温度である「約66℃?約85℃」よりも低いことは明らかであるので、上記工程により形成した「水相」は、本件発明1の「第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体」に相当する。 c 先願発明1の「Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザー」は、出願5の当初明細書等の【0028】に「回転部材を有する高剪断ホモジナイザー」の具体例として挙げられていることからみて、「回転部材」を有するものであり、高剪断力を有することから、ある程度の「高速回転」するものであると解される。 したがって、先願発明1の「Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザー」は、本件発明1の「高速回転式の攪拌混合装置」に相当し、さらに「Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザー中に油相を注入し、…かつ水相が既に存在する、高剪断場に到達するのに0.2秒以下を要(する)」工程は、Becomix(登録商標)直接噴射式ローター・ステーターホモジナイザー中で、油相と水相を撹拌混合する工程に他ならないため、本件発明1の「油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程」に相当する。 (イ)以上より、本件発明1と先願発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、先願発明1は、「形成時のジェルマトリックスの温度は、約20℃?約37℃である」である点。 相違点2: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、先願発明1は「ジェルマトリックスの形成方法」である点。 相違点3: 本件発明1は「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、先願発明1は「更に、撹拌しながら、アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテルを添加する」ものである点。 (ウ)上記相違点について検討する。 相違点3に関し、本件発明1における第3の流動体は、水性であり、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合するものである。これに対し、引用発明1における「アミノシリコーン、香料、パンテノール、パンテニルエチルエーテル」は、これが仮に流動体として添加されるものであるとしても、水性であるか明らかでない。パンテノールやパンテニルエチルエーテルは水溶性ではあるが、低級アルコールにもよく溶ける物質でもあることに鑑みると、上記成分が明らかに水性で添加されるものであるとはいえない。また、添加時の温度については何ら明らかでない。 このため、相違点3において、本件発明1は先願発明1と同一とはいえない。 (エ)本件発明1と先願発明2-3各々との間についても、上記(イ)に記載した相違点がそれぞれ存在することに鑑みると、上記(ウ)で検討したことと同様のことがいえる。 よって、本件発明1は、出願5の当初明細書等に記載された発明と同一とはいえず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 ウ 本件発明2、4-7について 本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、上記イで検討したことと同様の理由で、本件発明2、4-7は、出願5の当初明細書等に記載された発明と同一とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、本件発明2、4-7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。 4 取消理由3について 取消理由3は、異議申立書における申立人の主張を援用して、申立人による「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」の再現実験結果を示しつつ、概略、『本件特許明細書には、「板状αゲル組成物の固化終了温度」の定義が記載されていないため、「板状αゲル組成物の固化終了温度」の意味が不明確である。 また、DSC測定は…各種条件が明らかでなければ、一義的に特定されるDSC曲線を得ることができず、DSC曲線から導出される「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」にバラツキが生じる可能性がある。…したがって、これらの各種条件が本件特許明細書に記載されていない以上、一義的に特定されるDSC曲線を得ることができないため、請求項1に記載の「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」の意味が不明確になる。』と判断するものである。 そこで、この判断の当否について、以下検討する。 ア 「第1の流動体の固化開始温度」について 「第1の流動体の固化開始温度」に関し、本件明細書【0046】には、 「また「第1の流動体の固化開始温度」とは、第1の流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「第1の流動体の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。」 と記載されており、「固化開始温度」は「発熱ピークの立ち上がる温度」として明らかである。 イ 「板状αゲル組成物の固化終了温度」について (ア)「板状αゲル組成物の固化終了温度」に関し、本件明細書【0039】には、 「上述した「板状αゲル組成物の固化開始温度」とは、該板状αゲル組成物を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「板状αゲル組成物の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。したがって、固化温度よりも、固化開始温度の方が高温である。」 と記載されているが、「板状αゲル組成物の固化終了温度」についての直接的な記載はない。 また、両者において、発熱ピークが複数存在する場合についての直接的な記載はない。 (イ)これに関し、本件明細書【0042】には、「固体油性成分の固化開始温度」及び「固体油性成分の固化終了温度」についてであるが、 「上述した「固体油性成分の固化開始温度」とは、該固体油性成分を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度で定義される。また「固体油性成分の固化温度」とは、発熱ピークのピーク位置での温度で定義される。更に「固体油性成分の固化終了温度」とは、発熱ピークと、低温側でのベースラインとの交点での温度で定義される。第1の流動体が、固体油性成分を2種以上含有する場合、その固化開始温度、固化温度及び固化終了温度とは、2種以上の固体油性成分が相溶する場合は前記と同様に定義され、2種以上の固体油性成分が相溶せず発熱ピークが多数になる場合は、固化開始温度及び固化温度はそれぞれ、最も高温側のピークの立ち上がる温度及びピーク位置での温度として定義され、固化終了温度は最も低温側のピークと低温側でのベースラインとの交点として定義される。」 と記載されている。 この【0042】の記載を勘案すると、「板状αゲル組成物の固化終了温度」は、 『板状αゲル組成物を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークと、低温側でのベースラインとの交点での温度』 と解することができ、また、発熱ピークが多数になる場合は、「第1の流動体の固化開始温度」は、 『第1の流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、最も高温側のピークの立ち上がる温度』 と解することができ、「板状αゲル組成物の固化終了温度」は、 『板状αゲル組成物を、示差走査熱量計(DSC)を用い、2℃/minの加熱速度で95℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、最も低温側のピークと、低温側でのベースラインとの交点での温度』 と解することができる。 ウ DSC曲線から導出される「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」にバラツキが生じる可能性について DSC測定のための各種条件については、必ずしも全ての条件を請求項に列挙する必要はなく、明記されていないものについては、通常、技術常識に基づいて妥当な条件を意味すると解すべきである。また、そのように解した場合であっても、条件が一義的に特定されるわけではないので、「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」に多少のバラツキが生じることはあり得るが、ある特定の条件を設定して、それを発明の実施の際に用いさえすれば、その特定の条件において「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」は定めることができるものと認められる。そうすると、これによって「油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程」における「第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度」を特定の範囲とすることができるものと認められる。 エ まとめ 以上の点から、本件発明1、2、4-7は明確でないとはいえないので、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものとはいえない。したがって、この理由によって本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 第5 特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、特許異議申立理由として、以下のとおり主張する。 (1)特許法第29条第1項第3号関係 ア 請求項1-3及び7に係る発明は、甲第1号証-甲第7号証に記載されたものである。(「理由1」という。) イ 請求項4に係る発明は、甲第5号証及び甲第7号証に記載されたものである。(「理由2」という。) ウ 請求項6に係る発明は、甲第1号証-甲第5号証及び甲第7号証に記載されたものである。(「理由3」という。) (2)特許法第29条第2項関係 ア 請求項1-7に係る発明は、甲第1号証-甲第8号証に記載された発明から当業者が容易に想到したものである。(「理由4」という。) (3)特許法第29条の2関係 ア 請求項1-3、6及び7に係る発明は、当該特許出願日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開された甲第9号証に記載されたものである。(「理由5」という。) (4)特許法第36条第6項第1号関係 ア 請求項1には、本件特許発明の課題を解決するための手段(冷却方法に関する内容)が反映されていないため、本件は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。(「理由6」という。) (5)特許法第36条第6項第1号及び第2号関係 ア 本件明細書には、DSC測定の各種条件が記載されていないため、請求項1に記載の「第1の流動体の固化開始温度」及び「板状αゲル組成物の固化終了温度」の意味が不明確となり、明確性要件を満たさない。また、再現実験から、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点の温度を、目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」との要件を特定した請求項1の内容に技術的不備があることになるため発明が不明確となり、明確性要件を満たさない。また、発明の詳細な説明の記載が当業者によって本件特許発明の課題を解決できると認識できるものとも言えなくなるため、サポート要件も満たさない。(「理由7」という) (6)証拠方法 (甲第1号証-甲第3号証、甲第9号証、甲第10号証は上記のとおり) 甲第4号証:特開2005-255627号公報 甲第5号証:特表2006-509805号公報 甲第6号証:特表2002-519187号公報 甲第7号証:特表2006-509623号公報 甲第8号証:特開平4-235729号公報 甲第11号証:A.Berents GmbH & Co.KGの ホームページの印刷物(URL: http://www.becomix.de/en/technologie-und-produkte/ produkte/inline-homogeniser-dh、 印刷日:平成28年9月9日) 2 理由1-3について (1)甲第1-3号証に基づく理由 上記第4の2で検討したとおり、甲第1-3号証に基づく理由については、理由がない。 (2)甲第4号証に基づく理由 ア 甲第4号証に記載された事項 (ア)「【請求項1】 (A相)(i)界面活性能を有するカチオン性化合物の1種又は2種以上及び(ii)一般式(1) R^(1)-OH (1) [但し、R^(1)は、炭素数18?24の直鎖アルキル基を表す。]で表される高級アルコールの1種又は2種以上を含み、成分(ii)のうち最も融点が低い成分の融点以上に調整された相と、 (B相)(iii)水を含み、成分(ii)のうち最も融点が低い成分の融点未満に調整された相とを、 混合する工程を含む方法で製造されることを特徴とする毛髪化粧料。 【請求項2】 製造工程において、(A相)と(B相)との混合時及び混合後の混合物の温度が、成分(ii)のうち最も融点が低い成分の融点を超えないことを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。」 (イ)「【発明の効果】 【0007】 本発明によって、健康な毛髪だけでなく、ヘアカラーやパーマ、紫外線などによりダメージを受けた毛髪に対しても、毛髪に塗布するときの延展性に優れ、すすぎ時に髪が絡まったり、きしむことがなく、なめらかで、重厚感のある使用感触が得られ、かつ乾燥後の仕上り感に優れた毛髪化粧料を提供することができる。」 (ウ)「【0016】 本発明における(ii)一般式(1)で表される高級アルコールとしては、ステアリルアルコール(融点約58?59℃)、アラキルアルコール(融点約65?66℃)、ベヘニルアルコール(融点約70?72℃)、カルナービルアルコール(融点約74?75℃)などが挙げられ、好ましくはステアリルアルコールが用いられる。これらの高級アルコールは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、また、一般式(1)以外の高級アルコールを併用しても良いが、炭素数が12以上の直鎖状高級アルコール中、70?100%、特に80?100%が、ステアリルアルコールであることが望ましい。」 (エ)「【0022】 (A相)と(B相)との混合、乳化はパラセーター攪拌、プロペラ攪拌、ホモミキサー攪拌、ラインミキサー攪拌、スタティックミキサー混合など任意の方法で行うことができるが、強い攪拌強度が得られるホモミキサー攪拌、ラインミキサー攪拌が望ましい。」 (オ)「【0038】 実施例14 ヘアーリンス (%) 1.塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.5 2.アルギニン誘導体 (商品名:アミセーフLMA-60[味の素社製]) 2.0 3.ステアリルアルコール 3.5 4.セチルアルコール 0.3 5.グリセリン 4.0 6.高重合シリコーン分散液 (商品名:KM-910[信越化学工業社製]) 2.0 7.カワラヨモギ抽出物 (商品名:インチンコウ抽出液BG[丸善製薬社製]) 0.5 8.加水分解コラーゲン液 (商品名:プロモイスWU-32R[成和化成社製]) 1.0 9.ローヤルゼリーエキス (商品名:ローヤルゼリー抽出液BG[丸善製薬社製]) 0.1 10.クエン酸 0.03 11.クエン酸ナトリウム 0.02 12.パラベン 0.1 13.香料 適 量 14.精製水 残 余 【0039】 成分1?4を80℃にて混合して(A相)とした。成分7?12及び14を50℃にて混合して(B相)とした。パイプラインミキサー(T.K.パイプラインホモミクサー[特殊機化工業社製])にて(B相)に(A相)を混合し、次に成分6及び13をそれぞれ混合、35℃まで冷却した。このようにして調製した上記組成のヘアーリンスの使用感、仕上がり感を官能評価したところ、いずれの特性も優れており、良好な結果を得た。」 イ 甲第4号証に記載された発明 上記アの記載からみて、甲第4号証には、以下の発明(「甲4発明」という。)が記載されている。 「ステアリルアルコール及びセチルアルコールを含む成分を80℃で混合してA相を得る工程と、 A相と、水を含む成分を50℃で混合したB相とを、ホモミキサー攪拌装置に供給して混合する混合工程とを含み、 高重合シリコーン分散液と香料を更に混合して35℃まで冷却する、毛髪化粧料の製造方法。」 ウ 本件発明1と甲4発明との対比 (ア)本件発明1と甲4発明とを対比する。 ステアリルアルコール及びセチルアルコールの融点は、それぞれ59℃及び49℃であることからみて、両者は「25℃において固体の油性成分」であり、80℃で混合すれば、ステアリルアルコール及びセチルアルコールは溶融し、全体として油性の流動体となるものと解される。よって、A相は、本件発明1の「油性の第1の流動体」に相当する。 水を含むB相は、本件発明1の「水性の第2の流動体」に相当する。 ホモミキサー攪拌装置は、本件発明1の高速回転式の攪拌混合装置に相当する。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは、下記の点で一致する。 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程とを含む、 組成物の製造方法。」 (イ)そして、両者は少なくとも以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、甲4発明はそのような特定がない点。 相違点2: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、甲4発明は「毛髪化粧料の製造方法」である点。 相違点3: 本件発明1は「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。 エ 判断 相違点2及び3に関し、甲4発明は、「高重合シリコーン分散液と香料」を混合することは記載されており、「高重合シリコーン分散液」は水性と解しうるものの、これを本件発明1の「水性の第3の流動体」に相当するものと解しても、その混合温度は明らかでない。そして、甲4発明において得られる毛髪化粧料が「板状αゲル組成物」となることは明らかでない。 このため、少なくとも相違点2及び3において本件発明1と甲4発明とは相違し、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。 よって、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、同様の理由で、本件発明2、4-7は、甲第4号証に記載された発明とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 このため、甲第4号証に基づく理由1については、理由がない。 (3)甲第5号証に基づく理由 ア 甲第5号証に記載された事項 (ア)「【請求項1】 (i)パーソナルケアベース組成物の第1水性相部分を第1容器において形成すること; (ii)場合によっては、前記パーソナルケアベース組成物の第2相部分を第2の容器において形成すること; (iii)前記第1水性相をブレンド管に供給し、前記第1水性相を、1分間あたり2.27から2,270kg(5から5,000ポンド)の流量で、前記ブレンド管を通して移動させること; (iv)場合によっては、存在する場合に前記第2相を前記ブレンド管に供給し、前記第2相を、1分間あたり2.27から2,270kg(5から5,000ポンド)の流量で、前記ブレンド管を通して移動させること; (v)前記第1水性相と、存在する場合には前記第2相とを、前記ブレンド管内で混合すること; (vi)相違部分の後添加相を、香料、着色剤、促進成分およびこれらの混合物から選択される材料を含む前記ベース組成物の前記混合相に供給して、得られるパーソナルケア組成物を生成させること;および (vii)得られた前記パーソナルケア組成物を回収すること を含むパーソナルケア組成物の製造方法。」 (イ)「【0014】 通常、第1水性相の配合は、タンク4において成分を混合すること、および、約10から約70℃、好ましくは、約18から約58℃、最適には、約24から約52℃の範囲の温度に保つことを含む。全てではないがほとんどの場合に、第1水性相の温度が、第2相より、互いにブレンドされる時点で、少なくとも約5℃、好ましくは、少なくとも約11℃低いことが好ましいであろう。 … 【0016】 Sonolator16の下流で、スタティックミキサ20に入る前に、着色剤相22、香料相24および促進成分相26の流体の流れが導入される。後添加される3つの相違部分の流れの各々は、それぞれの容器28、30および32に入れられている。一連の各ポンプ34、36および38が、導管18の中をスタティックミキサに向かって流れているベース組成物の流れに、相違部分の後添加相を送る。後で添加される相違部分の相は、それぞれの容器において配合され、約0から約66℃、好ましくは、約10から約52℃、最適には、約24から約46℃の範囲の温度で、導管18に送られる。」 (ウ)「【0024】 第2相を、特にそれがオイルである場合、タンク12において、約10から約150℃、好ましくは、約38から約93℃、最適には、約65から約83℃の範囲の温度で成分を混合することにより形成することができる。 … 【0030】 第2相がオイルである場合、ブレンド管8におけるエマルジョンの温度は通常、オイル相がタンク12を出る時のオイル相の温度より低温であるべきである。ブレンド管8内の典型的なエマルジョンの温度は、約10から約83℃、好ましくは、約26から約65℃、最適には、約35から約55℃の範囲であり得る。」 (エ)「【0032】 本発明の一実施形態では、前記の相は、それぞれのタンク4および12から、Waukesha PDギアポンプのような容積式供給ポンプを通じて、または、3連(triplex)ポンプに自重供給して送られる。その後、別々の各相は、Giant Corporation(オハイオ州トレド)またはCat Corporationが市販する3連プランジャー型のような高圧ポンプにより送り出される。そこから、別々の各相はブレンド管8(好ましい実施形態では、General SignalのユニットであるSonic Corporationが市販するSonolator(登録商標)への前室(antechamber)である)に供給される。Sonolatorは、高速の液体の流れの運動エネルギーを大きな強さの混合作用に変換することができるインライン装置である。変換は、オリフィスを通して液体を、液体のジェット流として直接ブレード状障害物に向けてポンプで送り出すことにより実施される。液体は、それ自体、安定な渦巻きパターンで振動し、次には、それによりブレード状障害物が共振し、結果的に高レベルのキャビテーション、乱流および剪断が生じる。ブレードまたはナイフは、液体にキャビテーションを発生させる流体の運動により超音波振動をするようになる。 【0033】 Sonolator以外の別の高圧供給ホモジナイザには、APV Manton Corporationが市販するMonton Gaulin型ホモジナイザ、およびMicrofluidics Corporationが市販するMicrofluidizerがある。これらの型の高圧ホモジナイザは、固定弁座(valve seat)に対して(液体で、あるいはバネにより)押し付けられるバルブを備える。高圧の下では、流体は、弁座の開口部を通って、次に、バルブと弁座の間の間隙を通って流れる。様々な高圧ホモジナイザの形状寸法は、細かい点では異なり、鋭いエッジで粗くされていることさえあり得るが、それらは全て、大体は似ている。高圧ホモジナイザは、しばしば、2つ以上の弁座の組合せからなる。」 (オ)「【0034】 本発明によるパーソナルケア組成物には、シャンプー、シャワーゲル、液体ハンドクレンザー、液体歯用組成物、スキンローションおよびクリーム、毛髪着色剤、フェイシャルクレンザー、ならびに、拭き取り用の物品に染み込ませるための流体が含まれる。」 (カ)「【0035】 相違部分の後添加相の数は1つまたは複数であり得る。これらの相の数は、約2から約8の範囲になることがある。それらは、水性またはオイル状の相であり得る。香料および着色剤と促進成分は、それらが高温に弱いので、相違部分として後添加するのに特に適している。」 (キ)「【実施例3】 【0098】 ヘアコンディショナー 以下の手順に従ってヘアコンディショナーが調製される。第1タンクにおいて水相が配合される。成分は表IIIAに示されている。温度は24°と46℃の間に保たれる。 【0099】 【表6】 表IIIA 水相 ┌────────────────┬──────────────┐ │ 成分 │ 重量% │ ├────────────────┼──────────────┤ │水 │ 46.785 │ ├────────────────┼──────────────┤ │塩化カリウム │ 0.30 │ ├────────────────┼──────────────┤ │EDTA二ナトリウム │ 0.10 │ ├────────────────┼──────────────┤ │Kathon CG (登録商標) │ 0.05 │ ├────────────────┼──────────────┤ │2-ブロモ-2-ニトロプロパノール-1 │ 0.03 │ └────────────────┴──────────────┘ 【0100】 別にオイル(エマルジョン型)相が第2タンクにおいて調製される。この相の成分は下の表IIIBに略述されている。オイル相の温度は65°と88℃の間に保たれる。 【0101】 【表7】 表IIIB オイル(エマルジョン)相 ┌────────────────┬──────────────┐ │ 成分 │ 重量% │ ├────────────────┼──────────────┤ │水 │ 41.785 │ ├────────────────┼──────────────┤ │塩化ジステアリルジモニウム │ 0.15 │ ├────────────────┼──────────────┤ │塩化セトリモニウム │ │ │(活性成分30%) │ 2.80 │ ├────────────────┼──────────────┤ │セチルアルコール │ 3.00 │ └────────────────┴──────────────┘ 【0102】 1組のプログレッシブキャビティポンプ(例えば、Moyno/Seepex)を用いてオイルおよび水の相が、それぞれのタンクから、1分間に約216.56と214.74kg(477ポンドと473ポンド)の速度でそれぞれ移送される。これらの相は、Sonolator(登録商標)の前室部分であるブレンド管に最終的には至るように結合されたパイプを通して送られる。 【0103】 次に、得られたブレンドは、液体がオリフィスを通って、液体のジェット流として直接ブレード状障害物に向けて流出する時に、混合分散される。この液体は、液体中のキャビティを引き起こす超音波振動を受ける。ソノレーションの圧力は約3,000psiに保たれる。Sonolator(登録商標)からの、最終ヘアコンディショナーの95%を占める液体は、得られるヘアコンディショナーの残りの5%を占める相違部分の後添加相の流れを受け入れる。相違部分の後添加相の流れの導入は、スタティックミキサに至る導管を通って移動する流体の流路の途中で行なわれる。次に、全ての流れはスタティックミキサにおいて(背圧は20psiに保たれる)さらにブレンドされる。相違部分の後添加相の成分は表III(C)に略述されている。相違部分の後添加相の温度は24°と46℃の間に保たれる。 【0104】 【表8】 表IIIC 相違部分の後添加相 ┌────────────────┬──────────────┐ │ 成分 │ 重量% │ ├────────────────┼──────────────┤ │水 │ 4.79788 │ ├────────────────┼──────────────┤ │香料 │ 0.20 │ ├────────────────┼──────────────┤ │酢酸ビタミンA │ 0.001 │ ├────────────────┼──────────────┤ │ハーブ抽出物 │ 0.001 │ ├────────────────┼──────────────┤ │D&C Red #33 │ 0.0001 │ ├────────────────┼──────────────┤ │D&C Orange #4 │ 0.00002 │ └────────────────┴──────────────┘ 【0105】 スタティックミキサにおける処理に続いて、混合されたヘアコンディショナーは貯蔵容器に送られる。個々のボトルが、貯蔵容器から供給を受けてパッケージラインで充填される。」 イ 甲第5号証に記載された発明 上記アの記載からみて、甲第5号証には、以下の発明(「甲5発明」という。)が記載されている。 「セチルアルコールを含む成分を65℃と88℃の間に保ったオイル相を得る工程と、 オイル相と、水を含む成分を24℃と46℃の間に保った水相とを、ホモジナイザに供給して混合する混合工程であって、 該水相とオイル相とを混合して得られた混合体と、水を含む後添加相を混合する工程を含む、 パーソナルケア組成物の製造方法。」 ウ 本件発明1と甲5発明との対比 (ア)本件発明1と甲5発明とを対比する。 オイル相及び水相は、それぞれ本件発明1でいう「油性の第1の流動体」及び「水性の第2の流動体」に相当する。 水を含む後添加相は、本件発明1でいう「水性の第3の流動体」に相当する。 セチルアルコールの融点は49℃であることからみて、セチルアルコールは「25℃において固体の油性成分」であり、オイル相は、65℃と88℃の間に保っているのであるから、溶融されていると認められる。 ホモジナイザは攪拌混合装置である。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、下記の点で一致する。 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、攪拌混合装置に供給して混合する混合工程であって、 第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含む、 組成物の製造方法。」 (イ)そして、両者は少なくとも以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、甲5発明はそのような特定がない点。 相違点2: 本件発明1は、油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、「振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置」に供給して混合するのに対し、甲5発明は係る攪拌混合装置が「振動式」あるいは「高速回転式」であることの特定がない点。 相違点3: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、甲5発明は「パーソナルケア組成物の製造方法」である点。 相違点4: 本件発明1は「第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、甲5発明は、そのような特定がない点。 エ 判断 相違点2及び3に関し、甲5発明は、「振動式」あるいは「高速回転式」の攪拌混合装置を使用することが明らかでなく、仮に、「振動式」あるいは「高速回転式」の攪拌混合装置を使用するものであるとしても、得られる「パーソナルケア組成物」が「板状αゲル組成物」となることが明らかでない。 また、相違点4に関し、甲5発明は、第3の流動体の混合温度について明らかでない。 このため、少なくとも相違点2-4において本件発明1と甲5発明とは相違し、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。 よって、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、同様の理由で、本件発明2、4-7は、甲第5号証に記載された発明とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 このため、甲第5号証に基づく理由1については、理由がない。 (4)甲第6号証に基づく理由 ア 甲第6号証に記載された事項 (ア)「【請求項1】 水性エマルジョン又は懸濁液を製造するための方法であって、当該方法においては、 (A)容器内に液相を入れ、この際、前記容器にローター/ステーター型のホモゲナイザーを連結させ、当該ホモゲナイザーは更に別の補助合流を有しており、これにより、均質化される相がローターに直接供給でき、かつ、当該相が前記ホモゲナイザーの歯車リムにおいて先ず最初に、前記の先に入れられた相と接触し、 (B)前記ホモゲナイザーを始動させ、その後、 (C)前記の先に入れられた相に不溶な、均質化される液状の第二の相を、前記ホモゲナイザーの補助合流を通じて供給し、 この場合において、前記の両方の相の少なくとも一方が水性相であり、前記の両方の相の少なくとも一方が加熱されないことを特徴とする、水性エマルジョン又は懸濁液の製造方法。 【請求項2】 前記の先に入れられた相が水性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。 … 【請求項4】 前記の均質化される相が、室温では固体状であり、融解された状態で供給されることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の方法。 【請求項5】 前記の均質化される相が、融解されたワックスであることを特徴とする請求項4に記載の方法。 … 【請求項11】 化粧品又は医薬品を製造するための方法であって、当該方法にあっては、化粧用の作用物質および添加剤を、前記の先に入れた相中に含有させ、その後、前記請求項のいずれか1項に記載のエマルジョン又は懸濁液の製造を実施するか、あるいは、先ず最初に前記請求項のいずれか1項に記載のエマルジョン又は懸濁液を製造し、引き続いて、化粧用又は医薬用の作用物質および添加剤を添加することを特徴とする、化粧品又は医薬品の製造方法。 … 【請求項18】 ローション、クリーム、軟膏、エマルジョン状の化粧品、エマルジョン状の食品またはエマルジョン状の医薬品を製造するための、請求項17に記載の使用。 【請求項19】 整髪剤、毛髪染色剤、スキンクリーム、ソース、マヨネーズ、クリーム状のパン塗り材料、エマルジョン状のサラダドレッシング又はマーガリンを製造するための、請求項17又は18に記載の使用。」 (イ)「【0013】 既に存在する相と添加する溶融物の温度は、理想的には生成する混合物の温度が均質化されるべき物質の結晶化温度または凝固点より低くなるように選ぶ。溶融したワックスの温度を例えば70ないし90℃にすると、存在する水相の温度が10ないし25℃であれば、混合物の温度は20ないし40℃となる。得られたワックス懸濁液はそのあと直接続いてすぐ使えるように壜詰でき、長時間の冷却を必要とせず、また結晶化効果が直ちに終了するので、後からの時間の長い粘度または稠度の変化が生じない。」 (ウ)「【0020】 この方法の重要な構成要素は、使用するホモゲナイザーである。この場合問題となるのはローター/ステーター型のホモゲナイザーであり、それは完全に決められた位置に補助合流を有する。在来のローター/ステーター型のホモゲナイザーは、例えばアンドレアス・ドムシュ著「化粧用製剤」、III 巻、4版、305?307ページ、ならびにザイフェン-エーレ-フェッテ-バクゼ-112巻、1986年、532?536ページの論文に記載されている。ローター/ステーター原理は化粧用製剤の製造においてしばしば使用される均質化法である。この場合均質化されるべき材料は、回転部であるローターによって固定部であるステーターを通り抜け、その際、ローターとステーターの間には極めて僅かな間隙が存在するだけである。均質化作用は剪断間隙内に生じる乱流に基づく。追加の接続部のない在来のホモゲナイザーを使用した場合は、均質化されるべき物質は既に水相と接触し、従って初期混合物または初期エマルジョンとして存在する。この在来のホモゲナイザーでは、エマルジョンは在来の方法でしか製造できず、本発明の方法では製造できない。本発明の方法によれば、本来の均質化過程の前での均質化されるべき物質と既に存在する相との接触が避けられる。 【0021】 ローター(1)およびステーター(2)をもつ適切なホモゲナイザーを図1に示す。既に存在する相(3)は先ず歯車リムにて均質化されるべき第二の相(4)と接触する。出来た製品(5)は、微細なエマルジョンの形で流出する。」 (エ)「【0022】 本発明の別の対象は、溶融したワックスまたは溶融したワックス状物質と加熱していない水からの懸濁液の製造、または加熱していない室温で液状の疎水性の物質と加熱していない水からのエマルジョンの製造のための、追加の接続部をもつローター/ステーター型のホモゲナイザーの使用であり、これによって均質化されるべき物質は直接ローターに供給でき、この物質は先ず最初にホモゲナイザーの歯車リムにて外部の水相と接触する。特に、ローション、クリーム、軟膏、エマルジョン状の化粧品、エマルジョン状の食品またはエマルジョン状の医薬品を有利に製造できる。エマルジョン状の化粧品は、例えば整髪剤、ヘアキュア剤、毛染剤、スキンクリームまたは日焼け止めクリームのような頭髪-または皮膚処理剤である。エマルジョン状の食品は、例えばソース、マヨネーズ、クリーム状のパン塗り材料(Brotaufstriche)、エマルジョン状のサラダドレッシングまたはマーガリンである。 【0023】 ホモゲナイザーへの流入において追加の接続部を経て均質化されるべき物質が供給され、その追加の接続部は直接ローター/ステーターユニットの前に位置するという冷時乳化の実験が行われた。それでもやはり本来の均質化過程の前には、均質化されるべき物質と外相との間に非常に短い接触時間しかないので、この実験は満足な結果を与えなかった。多分、ゲル化、塊の形成または析出が起こるので、少なくとも微細でないエマルジョンまたは長い添加時間が生じ、極端な場合にはローターのブロッキング(Blockieren)さえ起こりかねない。従って本発明によれば、ホモゲナイザーは追加の接続部を介して使用されねばならず、それは均質化されるべき物質が直接ローター/ステーターユニットに到達し、その前に残りの外相と接触しないような位置になければならない。原則として構成上記載の方法で改造する限り、どの市販のホモゲナイザーでも使用できる。特に適当なホモゲナイザーは例えばベコミックス・デュオ-ホモゲニザトールDH2000という名称でベレント社から市販されている。」 (オ)「【0033】 理想的には、既に存在する水相の温度は、ワックス溶融体の乳化のあとに得られる混合物の温度がワックスの凝固点より低くなるように選択する。溶融したワックスの温度が例えば70?90℃の場合は、先に入れられた水相の温度が10?25℃のとき、混合物の温度を20?40℃とすることができる。染料クリームはつぎに直接使用できる形で壜詰することができる。」 (カ)「【0043】 実施例2:水中に乳化剤を含有するワックス懸濁液の製造 95kgの水と、8kgの25%セチルトリメチルアンモニウムクロリドを、12℃の温度にて釜の中へ入れ、この釜に、タイプベコミックスデュオ-ホモゲナイザーDH2000(ベレンツGmbH&Co.KG)というホモゲナイザーを連結した。このホモゲナイザーの補助合流を通じて、65℃に加温した液体状のセテアリルアルコール5kgを、前記の予め入れた水の中に注入し、この際、0.4バールの真空状態とした。引き続いて、更に5分間循環させて均質化した。これにより、均質で高粘度の塊状物が生成した。 【0044】 従来の方法により製造されたエマルジョンとの比較から、本発明の方法の場合には、原料の高い分散によって、少なくとも50%の原料節約が行えることが明らかである。本発明により製造された塊状物を水を用いて、1:1の割合で希釈すると、25℃において520mPasの粘度を有する有用で、均質なエマルジョンが得られる。」 イ 甲第6号証に記載された発明 上記アの記載からみて、甲第6号証には、以下の発明(「甲6発明」という。)が記載されている。 「65℃に加温した液体状のセテアリルアルコールと、12℃の水とセチルトリメチルアンモニウムクロリドを含む成分とを、ローター/ステーター型のホモゲナイザーに供給して混合して塊状物を得る混合工程と、 該塊状物を水を用いて希釈する工程とを含む、 均質なエマルジョンの製造方法。」 ウ 本件発明1と甲6発明との対比 (ア)本件発明1と甲6発明とを対比する。 セテアリルアルコールとはセチルアルコールとステアリルアルコールの混合物であり、両者の融点はそれぞれ49℃及び59℃であることからみて、セテアリルアルコールは「25℃において固体の油性成分」であり、65℃に加温した液体状であるから、セテアリルアルコールは溶融されている。そうすると、「65℃に加温した液体状のセテアリルアルコール」は、本件発明1の「油性の第1の流動体」に相当する。 「12℃の水とセチルトリメチルアンモニウムクロリドを含む成分」は、「65℃に加温した液体状のセテアリルアルコール」を併せ勘案すると、本件発明1の「第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体」に相当する。 「ローター/ステーター型のホモゲナイザー」は、本件発明1の「高速回転式の攪拌混合装置」に相当し、混合して得られた「塊状物」は本件発明1の「混合体」に相当する。 「塊状物を水を用いて希釈する工程」は、本件発明1の「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲6発明とは、下記の点で一致する。 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程であって、 第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含む、 組成物の製造方法。」 (イ)そして、両者は少なくとも以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、甲6発明はそのような特定がない点。 相違点2: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、甲6発明は「均質なエマルジョンの製造方法」である点。 相違点3: 本件発明1は「第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、甲6発明は、そのような特定がない点。 エ 判断 相違点2に関し、甲6発明によって得られる「均質なエマルジョン」が「板状αゲル組成物」となることが明らかでない。また、甲第6号証【0023】には「ホモゲナイザーへの流入において追加の接続部を経て均質化されるべき物質が供給され、その追加の接続部は直接ローター/ステーターユニットの前に位置するという冷時乳化の実験が行われた。それでもやはり本来の均質化過程の前には、均質化されるべき物質と外相との間に非常に短い接触時間しかないので、この実験は満足な結果を与えなかった。多分、ゲル化、塊の形成または析出が起こるので、少なくとも微細でないエマルジョンまたは長い添加時間が生じ、極端な場合にはローターのブロッキング(Blockieren)さえ起こりかねない。」(上記ア(エ))と記載されており、ゲル化することは「満足な結果を与えなかった」ものと解しうる。そうすると、甲6発明が「板状αゲル組成物」を製造すると解されるものということはできない。 また、相違点3に関し、甲6発明は、第3の流動体の混合温度について明らかでない。この混合温度が常温又は「12℃の水とセチルトリメチルアンモニウムクロリドを含む成分」のような12℃と同程度であると解される根拠も見いだすことができない。 このため、少なくとも相違点2及び3において本件発明1と甲6発明とは相違し、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明であるとはいえない。 よって、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、同様の理由で、本件発明2、4-7は、甲第6号証に記載された発明とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 このため、甲第6号証に基づく理由1については、理由がない。 (5)甲第7号証に基づく理由 ア 甲第7号証に記載された事項 (ア)「【請求項1】 (i)50から30,000cpsの粘度をもつ第1の水相をブレンド管に供給すること; (ii)第2の相を前記ブレンド管に供給すること; (iii)30cps未満の粘度をもち、組成物の少なくとも15%である第3の相を前記ブレンド管に供給すること; (iv)3つの全ての前記相を合わせて混合すること; を含み、前記相のそれぞれが、10から5,000psiの圧力で、また、1分間あたり2.274から2,270kg(5から5,000ポンド)の流量で、液体の流れとして、前記ブレンド管にポンプで送られ; さらに (v)得られた混合物をパーソナルケア組成物として回収すること; を含む、パーソナルケア組成物の製造方法。 … 【請求項11】 前記の管に流入する前記第1相が、前記の管に流入する前記第2相の温度より、少なくとも5℃低い温度である請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。」 (イ)「【0006】 今や、パーソナルケア組成物の製造について、かなり優れた製造効率を達成できることが見出された。この前進は、最終のパーソナルケア組成物において見出される水溶性成分のほとんどを組み入れる濃厚な第1の水相に基づいている。ここで、濃厚液は、第2の相とブレンドされる。最終のパーソナルケア組成物が、スキンクリームなどのエマルジョンである場合、第2相は油相であろう。油相を含まないシャンプーのような他の製品は、1種または複数の界面活性剤と共に配合された水性の第2相を用いて製造されるであろう。第3の相は追加の水を供給する。通常、第3相は、純粋な水であろうが、時には、それは少量のさらなる成分を伴い得る。」 (ウ)「【0016】 通常、本発明の方法は、第1の反応器における第1水相の形成を含み、そこで、成分が混合され、約10から約70℃、好ましくは、約18から約58℃、最適には、約24から約52℃の温度に保たれる。全てではないがほとんどの場合において、第1水相は、第2水相(特にこれが油である場合)より、互いにブレンドされる時点で、少なくとも約5℃、好ましくは少なくとも約11℃、低い温度であることが好ましいであろう。 【0017】 第2相は、反応器において、約10から約150℃、好ましくは、約40から約165℃、最適には約66から約95℃の範囲の温度で成分を混合することにより得られるであろう。 【0018】 第3相は、約0から約57℃、好ましくは、約5から約45℃、最適には約15から約38℃の温度に保たれ得る。 … 【0024】 第2相が油である系では、ブレンド管8におけるエマルジョンの温度は、通常、第2(油)相がその反応器タンクを出る時のその相の温度より低くあるべきである。ブレンド管8内のエマルジョンの典型的な温度は、約10から約82℃、好ましくは、約27から約65℃、最適には、約35から約55℃の範囲であり得る。」 (エ)「【0026】 本発明の一実施形態において、油相および第1水相は、それぞれの反応器から、Waukesha PDギアポンプなどの容積式供給ポンプを通じて移送される。その後、別々の相のそれぞれは、Giant Corporation(オハイオ州トレド)またはCat Corporationが市販する三連(triplex)プランジャー型などの高圧ポンプにより送り出される。そこから、別々の水相と油の相のそれぞれは、ブレンド管8(好ましい実施形態においては、General SignalのユニットであるSonic Corporationが市販するSonolator(登録商標)である)に供給される。 【0027】 Sonolator(登録商標)は、高速の液体の流れの運動エネルギーを大きな強さの混合作用に変換することができるインライン装置である。変換は、オリフィスを通して液体を、液体のジェット流として直接ブレード状障害物に向けてポンプで送り出すことにより実施される。液体は、それ自体、安定な渦巻きパターンで振動し、それによりブレード状障害物が共振し、結果的に高レベルのキャビテーション、乱流および剪断が生じる。ブレードまたはナイフは、流体の運動により、液体にキャビテーションを発生させる超音波振動をするようになる。 【0028】 Sonolator以外の別の高圧供給ホモジナイザには、APV Manton Corporationが市販するMonton Gaulin型ホモジナイザ、および、Microfluidics Corporationが市販するMicrofluidizerがある。これらの型の高圧ホモジナイザは、固定弁座(valve seat)に対して押し付けられる(液圧で、あるいはバネにより)バルブを備える。高圧の下では、流体は、弁座の開口部を通って、次に、バルブと弁座の間の間隙を通って流れる。様々な高圧ホモジナイザの形状寸法は、細かい点では異なり、鋭いエッジで粗くされていることさえあり得るが、それらは全て、大体は似ている。高圧ホモジナイザは、しばしば、2つ以上の弁座の組合せからなる。」 (オ)「【0031】 通常、第3相は水だけからなるであろう。しかし、特定の事例では、この相は少量の添加剤を含み得る。通常、これらの添加剤の量は、第3相の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最適には2重量%以下をなすであろう。対照的に、第1水相(濃厚液)は、通常、濃厚液の5重量%を超え、好ましくは10重量%を超え、最も好ましくは15重量%を超え、最適には40重量%を超える、水以外の成分を含む。」 (カ)「【0033】 本発明によるパーソナルケア組成物には、シャンプー、シャワージェル、液体ハンドクレンザー、液体歯用組成物、スキンローションおよびクリーム、毛染め、フェイシャルクレンザー、ならびに、拭き取り物品に吸収させる含浸流体が含まれ得る。」 (キ)「【0034】 通常、第1相および/または第2相は界面活性剤を含んでいるであろう。有用な界面活性剤には、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性、双性(zwitterionic)のもの、およびこれらの組合せが含まれる。界面活性剤の全体としての量は、パーソナルケア組成物全体の約0.1重量%から約50重量%、好ましくは、約2重量%から約40重量%、最適には、約15重量%から約25重量%の範囲であり得る。」 (ク)「【実施例1】 【0086】 1組のスキンローションを、2倍および10倍レベルの濃厚液を示すために調製する。何れの濃厚液も、適切な量の水を追加すると、表Iに示される、結果として得られる組成物となるであろう。 【0087】 【表1】 【0088】 油および水の相を、それぞれ別々に、それぞれの第1および第2タンクに入れる。プログレッシブキャビティポンプ(例えば、Moyno/Seepex)により、これらの相を、別々に、パイプを通して、Sonolator(登録商標)の前室部分であるブレンド管に供給する。合わせた流量を、200psiで、正確に9.08kg(20ポンド)/分に維持する。濃厚水相を、24と52℃の間の温度に保ち、タンク容量は3,000ガロンである。油相を、250ガロンのタンクにおいて65から93℃の温度に保つ。 【0089】 2倍濃厚液の実験では、第3のタンクから、第1水相および油相の圧力と同じ圧力に調節した純粋な水である第3の流れを送る。純粋な水の相を15から38℃に保ち、Sonolator(登録商標)の前室部分であるブレンド管にポンプで送る。次に、全ての相を、Sonolator(登録商標)において500psiで、合わせて均質化する(homogenize)。その後、合わせた流れを貯蔵容器に送り、得られた生成物をそこで24から44℃に保つ。得られたスキンローション組成物のいくらかを、戻りの流れとして、Sonolator(登録商標)のブレンド管に、容積式供給ポンプにより輸送する。この戻りの流れの量は、新たな運転開始のために、あるいは再処理物として、ほぼ5%である。貯蔵容器内に保たれる組成物の残りを、パッケージングラインに送り、空のボトルに充填する。 【0090】 10倍濃厚液では、水/シックナー(Carbopol 934(登録商標))の第4の流れを用いる。この第4の流れを、同様の圧力と流量(最終組成物におけるその比率に比例する)で、Sonolator(登録商標)の前室部分であるブレンド管にポンプで送る。他の全ての工程は、2倍濃厚液について上に記載したものと同じである。」 イ 甲第7号証に記載された発明 上記アの記載からみて、甲第7号証には、以下の発明(「甲7発明」という。)が記載されている。 「セチルアルコールを含む成分を65℃から93℃に保ったオイル相を得る工程と、 オイル相と、水を含む成分を24℃と52℃の間に保った水相と、15℃から38℃に保った純粋な水の相とを、あるいは更に水/シックナーの相とを、ホモジナイザに供給して混合する混合工程とを含む、 パーソナルケア組成物の製造方法。」 ウ 本件発明1と甲7発明との対比 (ア)本件発明1と甲7発明とを対比する。 オイル相は、本件発明1でいう「油性の第1の流動体」に相当する。 「水を含む成分を24℃と52℃の間に保った水相」と、「15℃から38℃に保った純粋な水の相」は、甲第7号証【0089】に「2倍濃厚液の実験では、…全ての相を、Sonolator(…)において…合わせて均質化する」(上記ア(ク))とあることに鑑みると、両者とも本件発明1でいう「水性の第2の流動体」に相当する。また、「水/シックナーの相」は、甲第7号証【0090】に「10倍濃厚液では、…Sonolator(…)の前室部分であるブレンド管にポンプで送る。他の全ての工程は、2倍濃厚液について上に記載したものと同じである。」(上記ア(ク))とあることに鑑みると、これも本件発明1でいう「水性の第2の流動体」に相当する。 セチルアルコールの融点は49℃であることからみて、セチルアルコールは「25℃において固体の油性成分」であり、オイル相は、65℃から93℃の間に保っているのであるから、溶融されていると認められる。 ホモジナイザは攪拌混合装置である。 そうすると、本件発明1と甲7発明とは、下記の点で一致する。 「25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、攪拌混合装置に供給して混合する混合工程とを含む、 組成物の製造方法。」 (イ)そして、両者は少なくとも以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は「該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする」のに対し、甲7発明はそのような特定がない点。 相違点2: 本件発明1は、油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、「振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置」に供給して混合するのに対し、甲7発明は係る攪拌混合装置が「振動式」あるいは「高速回転式」であることの特定がない点。 相違点3: 本件発明1は「板状αゲル組成物の製造方法」であるのに対し、甲7発明は「パーソナルケア組成物の製造方法」である点。 相違点4: 本件発明1は「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、甲7発明は、そのような特定がない点。 エ 判断 相違点2及び3に関し、甲7発明は、「振動式」あるいは「高速回転式」の攪拌混合装置を使用することが明らかでなく、仮に、「振動式」あるいは「高速回転式」の攪拌混合装置を使用するものであるとしても、得られる「パーソナルケア組成物」が「板状αゲル組成物」となることが明らかでない。 また、相違点4に関し、甲7発明は、第3の流動体の存在が明らかでなく、第3の流動体の混合温度についても明らかでない。 このため、少なくとも相違点2-4において本件発明1と甲7発明とは相違し、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明であるとはいえない。 よって、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1に対して、本件発明2は、第1の流動体と第2の流動体の混合様式を、本件発明4は、第3の流動体の混合様式を、本件発明5は、攪拌混合装置を、本件発明6は、油性成分を、本件発明7は、板状αゲル組成物の用途を、それぞれ限定するものである。 そして、同様の理由で、本件発明2、4-7は、甲第7号証に記載された発明とはいえず、本件発明1に係る特許と同様、特許法第29条第1項第3号に該当するものとして、本件発明2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 このため、甲第7号証に基づく理由1については、理由がない。 (6)まとめ よって、本件発明1、2、4-7は、甲第1号証-甲第7号証に記載された発明とはいえないので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものであるとの理由で本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 3 理由4について (1)本件発明と甲各号証記載の発明との相違点 本件発明1、2、4-7と、甲第1号証-甲第7号証に記載された発明とは、いずれも、本件発明1、2、4-7は「第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する」のに対し、甲第1号証-甲第7号証に記載された発明は、そのような特定がない点で相違する(この相違点を「相違点A」という。)。 (2)相違点Aについての検討 相違点Aに関し、第3の流動体を用いる本件発明1の実施例1が、第3の流動体を用いない同実施例2よりも塗布時の感触やラメラドメインのサイズにおいて良好な結果を示すことで、本件発明1の有利な効果が確認できるものと認められる。 このため、相違点Aにおいて、本件発明は、甲第1号証-甲第7号証に記載された発明、更には、振動式の攪拌混合装置を示す甲第8号証に記載された発明からは、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 よって、本件発明1、2、4-7は、甲第1号証-甲第8号証に記載された発明から容易に発明することができたものとはいえず、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取り消すことはできない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 4 理由5について 上記第4の3で検討したとおり、甲第9号証に基づく理由については、理由がない。 5 理由6について 申立人は、本件発明に関し、「請求項1は、冷却機能なしの攪拌混合装置を用い且つ第3の流動体による潜熱冷却を行わない場合についても包含するところ、このような場合においても目的とする板状αゲル組成物が得られるとは言い難い。したがって、請求項1には本件特許発明の課題を解決するための手段(冷却方法に関する内容)が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる。」と主張する。 しかし、本件発明1は、第3の流動体を用いるものに限定されており、「第3の流動体による潜熱冷却を行わない場合についても包含する」ものとはいえない。したがって、上記主張には理由がない。 よって、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものとはいえず、この理由によって本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 6 理由7について 理由7のうち、上記第4の4で検討したとおり、「本件特許明細書には、「板状αゲル組成物の固化終了温度」の定義が記載されていないため、「板状αゲル組成物の固化終了温度」の意味が不明確である」との理由には、理由がない。 そして、上記第4の4ウで検討したとおり、「油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程」における「第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度」を特定の範囲とすることができるものと認められる。 そうすると、仮に、申立人が主張するような「板状αゲル組成物の固化終了温度」が約43℃である場合があるとしても、本件発明1は、それを参考にして、「第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度」を定めればよいのであるから、本件発明1は明確性要件を満たさない、及び、サポート要件を満たさないということはできない。 よって、本件発明1、2、4-7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同第2号の規定に違反してされたものとはいえず、この理由によって本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、2、4-7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 25℃において固体の油性成分を1種以上含む第1の配合原料を溶融し、油性の第1の流動体を得る工程と、 該油性の第1の流動体と、第1の流動体の供給温度よりも低い温度の水性の第2の流動体とを、振動式の攪拌混合装置又は高速回転式の攪拌混合装置に供給して混合する混合工程であって、 該混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での混合体の温度を、第1の流動体の固化開始温度未満であり、かつ目的とする板状αゲル組成物の固化終了温度未満にする工程と、 第1の流動体と第2の流動体とを混合して得られた前記混合体と、水性の第3の流動体とを混合する工程とを含み、 第3の流動体は、第1の流動体と第2の流動体とを混合した時点での前記混合体の温度よりも低い温度で該混合体と混合する、板状αゲル組成物の製造方法。 【請求項2】 前記混合工程において、第1の流動体と第2の流動体とを連続的に混合する請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 第3の流動体を、前記攪拌混合装置内において前記混合体と連続的に混合する請求項1に記載の製造方法。 【請求項5】 振動式の前記攪拌混合装置が、管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている請求項1、2又は4に記載の製造方法。 【請求項6】 固体の前記油性成分が、融点が25℃以上の脂肪族アルコールと界面活性剤とを含有する請求項1、2、4又は5に記載の製造方法。 【請求項7】 前記板状αゲル組成物が、毛髪化粧料又は皮膚用化粧料である1、2、4ないし6のいずれかに記載の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-06-30 |
出願番号 | 特願2011-258725(P2011-258725) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 853- YAA (A61K) P 1 651・ 161- YAA (A61K) P 1 651・ 121- YAA (A61K) P 1 651・ 113- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山本 吾一 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
安川 聡 関 美祝 |
登録日 | 2016-02-19 |
登録番号 | 特許第5887112号(P5887112) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 板状αゲル組成物の製造方法 |
代理人 | 松嶋 善之 |
代理人 | 羽鳥 修 |
代理人 | 松嶋 善之 |
代理人 | 特許業務法人翔和国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人翔和国際特許事務所 |
代理人 | 羽鳥 修 |