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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1331602
審判番号 不服2016-11661  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-03 
確定日 2017-08-14 
事件の表示 特願2013-533857「EUV光源のためのシード保護を備える発振器-増幅器駆動レーザー」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日国際公開,WO2012/054145,平成25年12月26日国内公表,特表2013-546172〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年9月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月18日,2011年3月31日,いずれも米国)を国際出願日とする出願であって,平成25年4月22日に特許請求の範囲が補正され,平成27年8月11日付けで拒絶理由が通知され,同年11月19日に特許請求の範囲が補正され,平成28年4月12日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年8月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたものである。

第2 平成28年8月3日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年8月3日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は,補正前の請求項1?8を削除するとともに,請求項9?15を新たな請求項1?7とするものであって,補正後の請求項1は,次のとおりである。
「ビーム経路上に光出力を生成し,出力カプラを有する発振器と,
前記ビーム経路上に位置決めされた増幅器と,
前記ビーム経路上の照射箇所においてビームくびれ部直径Dを有する集束光との相互作用のために速度vで移動し,前記くびれ部においてT=D/2vである予備シード相互作用時間Tを有するターゲット材料小滴と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,を備えるデバイスであって,
前記ビーム経路は,前記出力カプラから前記照射箇所までの前記経路に沿って長さlを有し,cが前記経路上の光の速度である場合,2l/c>Tであり,前記出力カプラと前記小滴との間の振動を低減するようになっているデバイス。」

2.特許をすることができないものか否かの判断が示された発明
上記平成27年8月11日付けの拒絶理由通知において,特許をすることができないものか否かの判断が示された発明は,平成25年4月22日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明であるところ,請求項1は,次のとおりであり,請求項2ないし8は,請求項1の従属項である。
「【請求項1】
ビーム経路上に光出力を生成する発振器と,
照射箇所における前記ビーム経路上の光と相互作用するためのターゲット材料と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,
前記ビーム経路に沿って位置決めされ,前記発振器と前記ビーム遅延器との間に挿入されるスイッチと,
を備えるデバイスであって,
前記スイッチは,前記ビーム経路上の光のうちの少なくとも一部を前記ビーム経路から経路変更するように閉鎖可能であり,該スイッチは,閉鎖時間t_(1)を有し,該ビーム経路は,該スイッチから前記照射箇所までの経路に沿って長さL_(1)を有し,cが前記経路上の光の速度である場合,t_(1)<cL_(1)であり,前記発振器を保護するようになっているデバイス。」

3.引用例に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由に引用され,本願の優先権主張日前に頒布された特開2010-161364号公報(以下「引用例」という。)には,図とともに次の記載がある(下線は,当審による。)。

ア 「【0001】
[0001] 本発明は,レーザデバイス,及び,レーザパルスを同期させる方法に関する。」
イ 「【0032】
[0034] 図3は,プラズマ46を生成するために燃料物質の小滴を照射するよう用いてよい,例えばCO_(2)レーザであるレーザデバイス65の一実施形態を示す。レーザデバイス65は,レーザ放射の複数のパルスを発生するように構成されたシードレーザ67を含む。通常,シードレーザは,約10W,約100W,又は約W1000の出力を有してよい。シードレーザは,例えばCO_(2)レーザ又はYAGレーザであってよい。レーザデバイス65は更に,レーザ放射のパルスをビーム経路69に沿って,プラズマ46が生成されるプラズマ発生部位90に導くように構成された複数のミラー71,73,75,77を含む。これらのミラー71,73,75,77は,集合的に,ビームデリバリシステムとみなされてもよい。ビームデリバリシステムはより多くのミラー又はより少ないミラーを含んでもよい。ビーム経路69は,このビームデリバリシステムのミラーを用いて修正することができる。
【0033】
[0035] レーザデバイスは更に,レーザ放射の出力を必要とされる出力レベルに増幅するように構成されたゲイン媒体を有する複数のアンプ79,81,83,85を含む。」
ウ 「【0045】
[0047] レーザデバイス65のミラー71,73,75,77は,アンプ79,81,83,85からの増幅された自然放出放射が,プラズマ発生部位90における又はそれに隣接する位置に集束されるようにいくらかの屈折力を有してよい。増幅された自然放出放射が集束されることによって,レーザデバイスが時期尚早にトリガされる(これは,燃料物質の小滴がプラズマ発生部位90から離れている場合に,増幅された自然放出放射が,その小滴から反射された場合に起きる可能性がある)可能性を少なくする。空間フィルタがレーザデバイス内に含まれてもよい。空間フィルタも,レーザデバイスが時期尚早にトリガされる可能性を少なくする。
【0046】
[0048] 遅延回路94が,ディテクタ87とシードレーザ67との間に位置付けられて,例えば,反射された増幅自然放出放射がディテクタ87によって検出されるとシードレーザ67のトリガを遅延してよい。遅延回路94は調節可能であってよく,また,増幅された自然放出放射のディテクタ87への入射と,シードレーザ67によるレーザ放射のパルスの発生との間の時間遅延を調節すべく用いられてよい。遅延回路94は,レーザデバイス65のレーザ放射の発生と,プラズマ発生部位90における燃料物質の小滴93の到着とを同期させるように用いられてよい。
【0047】
[0049] レーザ放射は,燃料物質の小滴に入射すると,ある割合のレーザ放射が,燃料物質の小滴からアンプ79,81,83,85及びシードレーザ67へと反射して戻ることがある。この放射は非常に強烈なのでシードレーザ67を損傷してしまうことがある。
【0048】
[0050] アンプ79,81,83,85とプラズマ発生部位90との間の光路は,遅延線路95を含んでもよい。この遅延線路95は,シードレーザ67によるレーザ放射の発生と,燃料物質の小滴から反射されたレーザ放射のアンプ79,81,83,85及びシードレーザ67への入射との間の経過時間を増加する。用語「遅延線路」は,ここの文脈では,必要とされるよりも長く,また,それにより,レーザ放射のプラズマ発生部位90への到達を遅延するビーム路69の一部を意味するものと解釈されてよい。
【0049】
[0051] この経過時間は,反射されたレーザ放射がアンプ79,81,83,85に入射する前に,アンプ79,81,83,85内のゲイン媒体のエネルギーが実質的に使い切られているように十分に長い。これにより,アンプ79,81,83,85が反射されたレーザ放射を増幅する可能性が少なくなる。反射されたレーザ放射が増幅されてしまうと,シードレーザ67を損傷しかねないほどに高い強度の放射が発生されてしまうことがある。したがって,遅延線路によって遅延時間が増加されることで,反射レーザ放射によってシードレーザ67が損傷される可能性が少なくなる。
【0050】
[0052] 一実施例では,アンプ79,81,83,85がエネルギーを実質的に使い切るためには100ns必要であり,遅延線路65は,反射されたパルス放射がアンプ79,81,83,85に入射する前に100ns経過させるために15mの長さであってよい。例えば,遅延線路は10m,20m,30m,40m,又は50m以上の長さを有してよい。
【0051】
[0053] 経過時間は,音響光学素子96が反射されたレーザ放射をシードレーザ67から離すように回折することを可能にすべく十分に長い。この音響光学素子96は,レーザパルスがシードレーザ67から放出される場合は透明であり,燃料小滴から反射されたレーザ放射がシードレーザ67に入射する前に不透明となるように,ディテクタ87(又は遅延回路94からの出力)によってトリガされてよい。このようにして,音響光学素子96は,反射されたレーザ放射がシードレーザ67を損傷することを阻止できる。
【0052】
[0054] 図3では,音響光学素子96は,第1アンプ79と第2アンプ81との間に位置付けられる。この位置は,この位置ではレーザ放射は(例えば,第3アンプ83と第4アンプ85との間の位置に比べて)比較的低い強度を有し,したがって,音響光学素子96を損傷する可能性が少ないので選択される。」

(2)引用発明
上記(1)によれば,引用例には,
「プラズマ46を生成するために燃料物質の小滴93を照射するよう用いられるレーザデバイス65であって,
レーザ放射の複数のパルスを発生するように構成されたシードレーザ67と,
レーザ放射のパルスをビーム経路69に沿って,プラズマ46が生成されるプラズマ発生部位90に導くように構成された複数のミラー71,73,75,77と,
レーザ放射の出力を必要とされる出力レベルに増幅するように構成されたゲイン媒体を有する複数のアンプ79,81,83,85と
アンプ79,81,83,85とプラズマ発生部位90との間の光路に設けられる遅延線路95と,
第1アンプ79と第2アンプ81との間に位置付けられる音響光学素子96と,
を含み,
遅延線路95は,シードレーザ67によるレーザ放射の発生と,燃料物質の小滴から反射されたレーザ放射のアンプ79,81,83,85及びシードレーザ67への入射との間の経過時間を増加し,
経過時間は,音響光学素子96が反射されたレーザ放射をシードレーザ67から離すように回折することを可能にすべく十分に長く,
音響光学素子96は,レーザパルスがシードレーザ67から放出される場合は透明であり,燃料小滴から反射されたレーザ放射がシードレーザ67に入射する前に不透明となるようにトリガされ,反射されたレーザ放射がシードレーザ67を損傷することを阻止できるレーザデバイス65。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4.本件補正についての特許法第17条の2第4項の判断
上記1の補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)と上記2の特許をすることができないものか否かの判断が示された発明(以下「特許判断発明」という。)とを対比すると,両者間の同一の又は対応する技術的特徴は,
「ビーム経路上に光出力を生成する発振器と,
照射箇所における前記ビーム経路上の光と相互作用するためのターゲット材料と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,を備えるデバイス。」(以下「共通特徴」という。)であると認められる。
次に,上記共通特徴と引用発明とを対比すると,引用発明の「ビーム経路69」,「シードレーザ67」,「燃料物質の小滴93」,「遅延線路95」及び「レーザデバイス65」がそれぞれ,上記共通特徴の「ビーム経路」,「光出力を生成する発振器」,「ターゲット材料」,「ビーム遅延器」及び「デバイス」に相当する。
ここで,引用例においては,「遅延線路95」が「ビーム折り返し光学構成を有する」との明記はない。しかしながら,引用例の「遅延線路95」は,引用例の【0050】に「遅延線路は10m,20m,30m,40m,又は50m以上の長さを有してよい。」と記載されるような長さを有するものであるところ,装置サイズが長大なものとならないように,当然に「ビーム折り返し光学構成を有する」ものと認められる。
または,長い遅延線路を形成する際に,ビーム折り返し光学構成を有する遅延線路を用いることは,周知慣用の技術事項である。
してみると,上記共通特徴は,引用発明が当然に備えている構成か,または,引用発明に周知慣用の技術事項を付加したものであり,特許法施行規則第25条第2項に規定する「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」に該当しないから,「特別な技術的特徴」であるとはいえない。また,特許判断発明と,補正後発明との間に,他に同一の又は対応する特別な技術的特徴は存在しない。

5.小括
したがって,本件補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明(特許判断発明)と,審判請求時に補正された請求項1?7に係る発明(補正後発明及び補正後発明の全ての構成を含む請求項2?7に係る発明)とは,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成27年11月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載される事項によって特定されるものであるところ,その請求項1及び請求項9に係る発明(以下,それぞれ,「本願発明1」及び「本願発明9」という。)は,それぞれ,次のとおりである。
「【請求項1】
ビーム経路上に光出力を生成する発振器と,
照射箇所における前記ビーム経路上の光と相互作用するためのターゲット材料と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,
前記ビーム経路に沿って位置決めされ,前記発振器と前記ビーム遅延器との間に挿入されるスイッチと,を備えるデバイスであって,
前記スイッチは,前記ビーム経路上の光のうちの少なくとも一部を前記ビーム経路から経路変更するように閉鎖可能であり,前記スイッチは,前記スイッチが,光が前記スイッチを通って前記ビーム経路に沿って流れることを可能にする開放状態から,前記開放状態のときに前記スイッチを通って流れたであろう光の少なくとも一部を前記ビーム経路から偏向又は拡散させる閉鎖状態に変わるのに要する閉鎖時間t_(1)を有し,前記ビーム経路は,前記スイッチから前記照射箇所までの経路に沿って長さL_(1)を有し,cが前記経路上の光の速度である場合,t_(1)<L_(1)/cであり,前記発振器を保護するようになっているデバイス。」

「【請求項9】
ビーム経路上に光出力を生成し,出力カプラを有する発振器と,
前記ビーム経路上に位置決めされた増幅器と,
前記ビーム経路上の照射箇所においてビームくびれ部直径Dを有する集束光との相互作用のために速度vで移動し,前記くびれ部においてT=D/2vである予備シード相互作用時間Tを有するターゲット材料小滴と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,を備えるデバイスであって,
前記ビーム経路は,前記出力カプラから前記照射箇所までの前記経路に沿って長さlを有し,cが前記経路上の光の速度である場合,2l/c>Tであり,前記出力カプラと前記小滴との間の振動を低減するようになっているデバイス。」

2.特許法37条についての判断
本願発明1と本願発明9との同一の又は対応する技術的特徴は,
「ビーム経路上に光出力を生成する発振器と,
照射箇所における前記ビーム経路上の光と相互作用するためのターゲット材料と,
ビーム折り返し光学構成を有する,前記ビーム経路上のビーム遅延器と,を備えるデバイス。」と認められるところ,当該技術的特徴は,前記第2 [理由]「4.本件補正についての特許法第17条の2第4項の判断」に記載した共通特徴と同じものであるから,同項目に記載した理由と同様の理由により,特許法施行規則第25条の8第2項に規定する「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」に該当しない。よって,本願発明1と本願発明9とが,同一の又は対応する「特別な技術的特徴」を有しているとはいえない。
したがって,本願は,特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

3.本願発明1の特許性についての判断
(1)引用発明
引用発明は,前記第2 [理由]3.(2)に記載されたとおりのものである。

(2)対比・判断
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「ビーム経路69」,「シードレーザ67」,「プラズマ発生部位90」,「燃料物質の小滴93」,「遅延線路95」,「音響光学素子96」及び「レーザデバイス65」は,それぞれ,本願発明1の「ビーム経路」,「発振器」,「照射箇所」,「ターゲット材料」,「ビーム遅延器」,「スイッチ」及び「デバイス」に相当する。

したがって,両者は,
「ビーム経路上に光出力を生成する発振器と,
照射箇所における前記ビーム経路上の光と相互作用するためのターゲット材料と,
前記ビーム経路上のビーム遅延器と,
前記ビーム経路に沿って位置決めされ,前記発振器と前記ビーム遅延器との間に挿入されるスイッチと,を備えるデバイス」の点で一致する。

イ 一方,両者は,以下の各点で相違する。
《相違点1》
本願発明1においては,「ビーム遅延器」が「ビーム折り返し光学構成を有する」のに対して,引用発明においては,「遅延線路95」が「ビーム折り返し光学構成」に対応する構成を備えることが明らかでない点。
《相違点2》
本願発明1は「前記スイッチは,前記ビーム経路上の光のうちの少なくとも一部を前記ビーム経路から経路変更するように閉鎖可能であり,前記スイッチは,前記スイッチが,光が前記スイッチを通って前記ビーム経路に沿って流れることを可能にする開放状態から,前記開放状態のときに前記スイッチを通って流れたであろう光の少なくとも一部を前記ビーム経路から偏向又は拡散させる閉鎖状態に変わるのに要する閉鎖時間t_(1)を有し,前記ビーム経路は,前記スイッチから前記照射箇所までの経路に沿って長さL_(1)を有し,cが前記経路上の光の速度である場合,t_(1)<L_(1)/cであり,前記発振器を保護するようになっている」との構成を備えるのに対して,引用発明はそのような構成を備えることが明らかでない点。

ウ 上記相違点1について検討する。
引用例の「遅延線路95」は,引用例の【0050】に「遅延線路は10m,20m,30m,40m,又は50m以上の長さを有してよい。」と記載されるような長さを有するものであるところ,装置サイズが長大なものとならないように,当然に「ビーム折り返し光学構成を有する」ものと認められる。または,長い遅延線路を形成する際に,ビーム折り返し光学構成を有する遅延線路を用いることは,周知慣用の技術事項である。
よって,相違点1は,引用発明が当然に備えている構成であり,仮にそうでないとしても,引用発明において相違点1に係る構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。

エ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「音響光学素子96」は,「レーザパルスがシードレーザ67から放出される場合は透明であり,燃料小滴から反射されたレーザ放射がシードレーザ67に入射する前に不透明となるようにトリガされ,反射されたレーザ放射がシードレーザ67を損傷することを阻止できる」というものであり,引用発明において,「遅延線路95は,シードレーザ67によるレーザ放射の発生と,燃料物質の小滴から反射されたレーザ放射のアンプ79,81,83,85及びシードレーザ67への入射との間の経過時間を増加し」,「経過時間は,音響光学素子96が反射されたレーザ放射をシードレーザ67から離すように回折することを可能にすべく十分に長く」されていることからみれば,引用発明の「音響光学素子96」は,本願発明1の「スイッチ」と同様に,「前記ビーム経路上の光のうちの少なくとも一部を前記ビーム経路から経路変更するように閉鎖可能であり,前記スイッチは,前記スイッチが,光が前記スイッチを通って前記ビーム経路に沿って流れることを可能にする開放状態から,前記開放状態のときに前記スイッチを通って流れたであろう光の少なくとも一部を前記ビーム経路から偏向又は拡散させる閉鎖状態に変わるのに要する閉鎖時間t_(1)を有し,前記ビーム経路は,前記スイッチから前記照射箇所までの経路に沿って長さL_(1)を有し,cが前記経路上の光の速度である場合,t_(1)<L_(1)/cであり,前記発振器を保護するようになっている」ものと認められるから,相違点2は実質的なものではない。

エ 以上のとおりであって,本願発明1と引用発明に格別の相違は認められないから,本願発明1は,引用例に記載された発明である。または,本願発明1は,周知慣用の技術事項を勘案して,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
上記2のとおり,本願は,特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
上記3のとおり,本願発明1は,特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから,特許を受けることができない。または,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-23 
結審通知日 2017-03-24 
審決日 2017-04-04 
出願番号 特願2013-533857(P2013-533857)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01S)
P 1 8・ 65- Z (H01S)
P 1 8・ 56- Z (H01S)
P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
河原 英雄
発明の名称 EUV光源のためのシード保護を備える発振器-増幅器駆動レーザー  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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