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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1331855
審判番号 不服2016-6633  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2017-08-24 
事件の表示 特願2012- 80540号「ボトルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-209118号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日を出願日とする出願であって、平成28年2月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年5月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正について
2-1.補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に
「【請求項1】
射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され、減容変形自在に形成されたボトルであって、
底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、
該立ち上がり壁は、前記接地部に連なる外連結部と、頂部に連なる内連結部と、を備え、
前記外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、前記内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており、
前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成されていることを特徴とするボトル。」
とあるのを
「【請求項1】
減容変形自在に形成されたボトルを、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームをブロー成形して形成するボトルの製造方法であって、
前記ボトルの底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、
該立ち上がり壁は、前記接地部に連なる外連結部と、頂部に連なる内連結部と、を備え、
前記外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、前記内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており、
前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成され、
ブロー成形時に、前記立ち上がり壁を、前記頂部よりも延伸して薄肉に形成することを特徴とするボトルの製造方法。」
とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す)。

2-2.本件補正の適否
(1)本件補正は、請求項1について、「射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され、減容変形自在に形成されたボトル」を「減容変形自在に形成されたボトルを、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームをブロー成形して形成するボトルの製造方法」に補正し(以下、「補正事項1」という。)、「底部」を「前記ボトルの底部」に補正し(以下、「補正事項2」という。)、「ブロー成形時に、前記立ち上がり壁を、前記頂部よりも延伸して薄肉に形成する」という特定事項を追加し(以下、「補正事項3」という。)、「ボトル。」を「ボトルの製造方法。」に補正する(以下、「補正事項4」という。)ことを含むものである。

(1-1)補正事項1は、減容変形自在に形成されたボトルについて、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームをブロー成形して形成すると製造方法を特定しようとするものであって、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「当初明細書等」という。)の段落【0012】に「ボトル1は、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され、減容変形自在に薄肉に形成されたものである。」と記載されているから、当該明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、補正事項1は、実質的にボトルからボトルの製造方法へと補正しようとするものであるから、物の発明から方法の発明へと発明のカテゴリーを変更しようとするものである。そして、発明のカテゴリーを変更する補正は、請求項の削除、誤記の訂正、又は、明瞭でない記載の釈明のいずれかの事項を目的とするものにも該当するといえない。

(1-2)補正事項2は、底部がボトルの底部であることを明確にしようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、また、当初明細書等の段落【0006】に「本発明は、…、減容変形自在に形成されたボトルであって、底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、…ことを特徴とするボトルを提供する。」と記載されているから、当初明細書等に記載されているといえる。

(1-3)補正事項3は、立ち上がり壁について、ブロー成形時に、前記頂部よりも延伸して薄肉に形成すると限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、当初明細書等の段落【0019】に「頂部27は、ブロー成形の際にほとんど延伸されず、さらにゲート部分Gが位置するため、比較的脆性が高い性状を有するものである。また、本実施形態において頂部27は、ヒール部24の上端よりも下側に位置している。一方で、立ち上がり壁28は、ブロー成形の際に比較的延伸されて、頂部27よりも薄肉になる。」と記載されているから、当初明細書等に記載されているといえる。

(1-4)補正事項4は、補正事項1の理由と同様の理由により、当初明細書等に記載されているといえるものの、物の発明から方法の発明へと発明のカテゴリーを変更しようとするものであるから、請求項の削除、誤記の訂正、又は、明瞭でない記載の釈明のいずれかの事項を目的とするものにも該当するといえない。

(1-5)以上のとおり、補正事項1?4は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるが、そのうちの補正事項1及び4は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は、明瞭でない記載の釈明のいずれかの事項を目的とするものにも該当しない補正である。
また、特許法第17条の2第4項の要件を満たすことは明らかである
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の要件を満たし、また、同法同条第4項の要件を満たすことは明らかであるが、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反する補正を含むものである。

(2)ところで、審判請求人は、審判請求書の請求の【本願が特許されるべき理由】の欄において「請求項1、2に係る発明を全て、物を生産する方法の発明にいたしましたので、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしました。」と主張し、一方、補正事項1に係る請求項1の「射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され、減容変形自在に形成されたボトル」は、本来ボトルの製造方法を記載しようとしていたものと捉えられなくもない。
そこで、補正事項1及び4は、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するとして更に検討することとする。

(2-1)補正事項1及び4は、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものとすると、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(補正事項3を参照。)又は明瞭でない記載の釈明(補正事項1、2及び4を参照。)を目的とするものとなり、本件補正は、特許法第17条の2第3?5項の要件を満たすものとなる。
そこで、引き続き、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.補正の内容」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認められる(以下、「本願補正発明1」という。)。

(2-3)引用刊行物
平成27年6月12日付け拒絶理由で引用された実願昭55-77373号(実開昭57-9514号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という)には図面とともに次の記載がある。
(a)「第3図および第5図の形状の底面を有するポリエステル中空体は、パリソン底部のスプルを切断等によって除去した後、内面が上記底面形状に対応する形状を有する底型を備えた延伸吹込成形用金型を用いて、所定温度に加熱されたパリソンを常法により延伸吹込成形することによって製造される。」(第9頁14?末行)
(b)「延伸吹込ポリエステル中空体は、その透明性、光沢、強度、耐衝撃性およびガスパリヤー性等の諸性質が優れている点を着目され、最近食品用容器等への実用か伸びている。このような延伸吹込中空体の素材として射出成形有底パリソンが使用される場合か多い。しかしこの種の有底パリソンは、通常スプルと呼ばれる射出成形時のゲ-ト(gate)部が底部中央外面に突出している。」(第2頁13?末行)
(c)「第3図、第4図において4は延伸吹込ポリエステル中空体(断面は円形,楕円形等の任意の形状をとりうる)であって、その底部5は接地面6aを有し、かつ胴壁部7と連接する周縁部6,周縁部6の内側と連接して斜上内方に延びるほぼ平坦な(第3図の場合内側に凸の梢曲面状になっている。このような形状も本明細書においてはほぼ平坦と呼ぶことにする)パネル部9よりなる主凹部8、およびパネル部9に連接して、底部5の中央に形成された中央凹部l0を有している。パネル部9と中央凹部10の底部11はパネル部9よりも大きな勾配(例えば中空体の軸線に対し約30度)を有する立上り部12によって接続している。」(第5頁9行?第6頁1行)
(d)「底部11の外表面はほぼ平坦であるが、延伸吹込成形前にパリソン底部からスプルを切断した痕跡が残っている(スプルについては第10図参照)。底部11と立上り部12も曲率部13とほぼ等しい曲率半径を有する曲率部14を介して連接しているのであるが、底部11の外面側の直径は、切断されたスプルの最大直径(通常はパリソン底部との界面の直径)よりも大きいことが望ましい。」(第6頁17行?第7頁5行)
(e)「本考案の延伸吹込ポリエステル中空体は、底部が主凹部と中央凹部の2段の凹部によって形成されているので、内容物を充填密封した状態で落下衝撃や繰返し振動が加わって底部が下方に膨出した場合でも、中央凹部の外周縁の比較的強度の高い曲率部が床面等に衝突ないし接触するため、強度の最も弱い中央凹部の中心附近が床面等に当ることがない。従って亀裂等による内容物の漏洩等か防止できるという効果を有する。また主凹部を形成するパネル部はほぼ平坦であるので構造が簡単であるという利点を有する。」(第12頁7?17行)
(f)第3図より、パネル部9及び立上がり部12は接地面6aと底部11とを連結し、ともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びていることがみてとれる。

したがって、前記引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「ポリエステル中空体1を、射出成形有底パリソン18を延伸吹込成形して形成するポリエステル中空体1の製造方法であって、
前記ポリエステル中空体1の底部5は、周縁部6の接地面6aと、底部5の中央に形成された中央凹部10の底部11と、接地面6aと中央凹部の底部11とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びるパネル部9及び立上がり部12と、を備え、
これらのパネル部9及び立上がり部12は、
前記周縁部6の接地面6aに連なるパネル部9と、パネル部9と中央凹部の底部11を接続する立上り部12と、を備え、
前記パネル部9の勾配が、前記立上がり部12の勾配よりも小さくなっており、パネル部9はほぼ平坦に形成されているポリエステル中空体1の製造方法。」

(2-4)対比・判断
上記引用発明2と本願補正発明1とを対比すると、引用発明2の「射出成形有底パリソン18」は本願補正発明1の「射出成形により形成された有底筒状のプリフォーム」に相当し、同様に「延伸吹込成形」は「ブロー成形」に、「底部5」は「底部の底壁面」に、「周縁部6の接地面6a」は「外周縁部に位置する接地部」に、「中央凹部10の底部11」は「頂部」に、「パネル部9」は「外連結部」に、「中央凹部10の底部11を接続する立上り部12」は「頂部に連なる内連結部」に、「これらのパネル部9及び立上がり部12」は「立ち上がり壁」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2の「底部5の中央に形成された」と本願補正発明1の「ボトル径方向の中央部に位置して」は技術常識上同位置に位置していると認められ、上記(a)、(b)より、引用発明2の「中央凹部10の底部11」には「射出成形時のゲート部分が位置する」と認められるから、引用発明2の「底部5の中央に形成された中央凹部10の底部11」は本願補正発明1の「ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部」に相当する。
さらに、引用発明2の「勾配」が「水平面に対する傾斜角度」であり、技術常識上、本願補正発明1の「ボトル軸に対する傾斜角度」で見ると角度の大小関係が逆になるので、前者の「パネル部9の勾配が、立上がり部の勾配よりも小さくなっている」は後者の「外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており」に相当する。
そして、引用発明2の「ポリエステル中空体1」と本願補正発明1の「減容変形自在に形成されたボトル」とは、「ボトル」の限りにおいて一致し、同様に、「パネル部9はほぼ平坦に形成され」と「前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成され」とは、「前記外連結部は滑らかな面に形成され」の限りにおいて、一致する。
したがって、両者は、
「ボトルを、射出成形により形成された有底筒状のプリフォームをブロー成形して形成するボトルの製造方法であって、
前記ボトルの底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、
該立ち上がり壁は、前記接地部に連なる外連結部と、頂部に連なる内連結部と、を備え、
前記外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、前記内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており、前記外連結部は滑らかな面に形成されているボトルの製造方法。」
で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明1においては、ボトルが「減容変形自在に形成された」ボトルであるのに対して、引用発明2においてはこのように規定していない点。

[相違点2]
本願補正発明1においては、「前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成され」ているのに対して、引用発明2においては「パネル部9」は「ほぼ平坦に形成され」、「立上がり部12」は平面に形成されるか不明である点。

[相違点3]
本願補正発明1においては、「ブロー成形時に、立ち上がり壁を、頂部よりも延伸して薄肉に形成する」のに対して、引用発明2においてはこのように規定されていない点。

上記相違点1について検討すると、ブロー成形により成形されるボトルを減容変形自在な物とすることは平成27年6月12日付け拒絶理由で引用された特開2011-148551号(以下、「引用文献1」という。)に記載された事項であり(段落【0001】参照)、引用発明2において製造するボトルとして、減容変形自在に形成されたボトルを選択することは当業者が容易になし得たことである。
上記相違点2について検討すると、引用発明2の「パネル部9」は、引用文献2の記載の上記(a)の「ほぼ平坦な(第3図の場合内側に凸の相曲面状になっている。このような形状も本明細書においてはほぼ平坦と呼ぶことにする)パネル部9よりなる主凹部8」、(e)の「また主凹部を形成するパネル部はほぼ平坦であるので構造が簡単であるという利点を有する。」の記載からみて、「ほぼ平坦」が第3図のように「内側に凸の相曲面状になっている」場合に限定された面ではなく、これに「構造が簡単」な平担な面を用いることも当業者が適宜なし得たものと認められる。
一方、「立上がり部12」は、引用文献2に立上がり部12の形状を特に限定する記載はなく、第3図でもほぼ平坦といえる。さらに、引用文献2には「パネル部9と立上り部12は曲率部13を介して連接している。曲率部13の曲率半径(外表面の)は約2?15mmであることが好ましい。」(第6頁7?10行)、「底部11と立上り部12も曲率部13とはぼ等しい曲率半径を有する曲率部14を介して連接している」(第6頁末行?第7頁2行)とのみ記載され、これらの連設部の曲率部13以外は平坦であると考えられる。
また、構造が簡単な、平坦な立上がり部12を用いることは、当業者が適宜なす程度のことにすぎない。
したがって、前記「パネル部9」、及び前記「立上がり部12」をともに、傾斜方向に平坦であり、ボトル軸に対して傾斜角度を有する、傾斜平面に形成することは当業者が適宜なし得たことにすぎないと認められる。
上記相違点3について検討すると、ペットボトルのブロー成形時に、底の周縁の接地部より立ち上げた頂部の厚さを厚くし、他の部分を頂部よりも延伸して薄肉に形成することは周知技術にすぎず(例えば、特開2008-87814号公報の段落【0004】、特開2000-128140号公報の段落【0010】及び図1、特開平11-333912号公報の段落【0033】及び図2参照)、当業者が適宜なす程度の事項にすぎないと認める。
したがって、引用発明2において、頂部を厚く、頂部と接地部を連結する立ち上がり壁を延伸して薄肉に形成することは当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明1の作用効果も、引用発明2及び引用文献1に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

(2-5)小括
したがって、本願補正発明1は、引用発明2、引用文献1に記載された事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本願補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する補正を含むものであり(上記(1-5)を参照。)、また、本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反する補正を含むものではないとしてみても、本願補正発明1は、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである(上記(2-5)を参照。)。
よって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成28年5月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年8月7日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項1参照、以下「本願発明1」という。)。

4.当審の判断
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2011-148551号)には図面とともに次の事項が記載されている。
(h)「口筒部(2)とテーパー筒状の肩部(3)と筒状の胴部(4)と底部(5)を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、胴部(4)の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され、また、前記周壁には山折状に縦方向に略等間隔に形成される3本の稜線(12)を有し、隣接する該稜線(12)を3ケのパネル壁(11)で連結した構成であり、前記の各パネル壁(11)には一方の稜線(12)の上端部と他方の稜線(12)の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線(13)を形成し、該3本の折れ目線(13)が周方向に並列状に傾斜するように構成したことを特徴とする合成樹脂製壜体。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(i)「そして、底部5の側周壁5sは短円筒状で、底面の中央部には底面壁を壜体の内部方向に陥没させて陥没部5aが形成されており、その周縁にはリング状の周縁部5pが配設されている。」(段落【0026】)
(j)「勿論、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。壜体の容量は300ml程度のものに限定されるものではないし、ポリプロピレン樹脂製の2軸延伸ブロー成形の壜体に限らず、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体、あるいはポリエチレン樹脂製のダイレクトブロー成形壜体と、さまざまな樹脂製のブロー成形品を使用することができる。」(段落【0044】)
以上より、引用文献1には次に発明が記載されていると認める(以下「引用発明1」という。)
「底部5を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、胴部4の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され、、底部5の側周壁5sは短円筒状で、底面の中央部には底面壁を壜体の内部方向に陥没させて陥没部5aが形成されており、その周縁にはリング状の周縁部5pが配設されている、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体。」
また、引用文献2(実願昭55-77373号(実開昭57-9514号)のマイクロフィルム)には上記「2-2.」(2)の(a)?(f)の事項が記載され、次の発明が記載されていると認める(以下、「引用発明2’」という。)。
「ポリエステル中空体1を、射出成形有底パリソン18を延伸吹込成形して形成するポリエステル中空体1であって、
前記ポリエステル中空体1の底部5は、周縁部6の接地面6aと、底部5の中央に形成された、ゲート部分が位置する中央凹部10の底部11と、接地面6aと中央凹部の底部11とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びるパネル部9及び立上がり部12と、を備え、
これらのパネル部9及び立上がり部12は、
前記周縁部6の接地面6aに連なるパネル部9と、パネル部9と中央凹部の底部11を接続する立上り部12と、を備え、
前記パネル部9の勾配が、前記立上がり部12の勾配よりも小さくなっており、パネル部9はほぼ平坦に形成されているポリエステル中空体1」

そこで、上記引用発明1と本願発明1とを対比すると、引用発明1の「合成樹脂製壜体」は本願発明1の「ボトル」に相当し、同様に「胴部4の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され」は「減容変形自在に形成された」に相当する。
また、引用発明1の「底部5」は本願発明1の「底部」に、同様に「底面壁」は「底壁面」に、技術常識からみて「底面の中央部」は「ボトル径方向の中央部」に、「周縁に」「配設されている」「リング状の周縁部5p」は「外周縁部に位置する接地部」に相当する。
一方、引用発明1の「底部5の側周壁5sは短円筒状で、底面の中央部には底面壁を壜体の内部方向に陥没させて陥没部5aが形成されており、その周縁にはリング状の周縁部5pが配設されている」と本願発明1の「底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、該立ち上がり壁は、前記接地部に連なる外連結部と、頂部に連なる内連結部と、を備え、前記外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、前記内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており、前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成されている」とは「底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置してボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる陥没部とを備える」限りにおいて一致する。
また、引用発明1の「ブロー成形による」と本願発明1の「射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され」とは「ブロー成形され」る限りにおいて一致する。
したがって、両者は、
「ブロー成形され、減容変形自在に形成されたボトルであって、
底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置してボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる陥没部とを備えるボトル。」で一致し、以下の点で相違する。
[相違点4]
本願発明1においては、ボトルが「射出成形により形成された有底筒状のプリフォームがブロー成形され」るのに対して、引用発明1では「射出成形により形成された有底筒状のプリフォーム」をブロー成形するのか不明な点。
[相違点5]
本願発明1においては、「陥没部」が「底部の底壁面は、外周縁部に位置する接地部と、ボトル径方向の中央部に位置して射出成形時のゲート部分が位置する頂部と、これらの接地部と頂部とを連結するとともに、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下側から上側に向けて延びる立ち上がり壁と、を備え、該立ち上がり壁は、前記接地部に連なる外連結部と、頂部に連なる内連結部と、を備え、前記外連結部のボトル軸に対する傾斜角度が、前記内連結部のボトル軸に対する傾斜角度よりも大きくなっており、前記外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成されている」
のに対して、引用発明1においてはこのように規定していない点。

上記相違点4について検討すると、ポリエステル中空体(本願発明1の「ボトル」に相当)を、射出成形有底パリソン(同「射出成形により形成された有底筒状のプリフォーム」に相当)を延伸吹込成形(同「ブロー成形」に相当)して形成することが、引用文献2に記載されており(上記「2-2.」の(a)参照))、また、引用発明1のPET樹脂はポリエステルである。
したがって、引用発明1のPET樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体を射出成形により形成された有底筒状のプリフォームから成形することは当業者が適宜なし得た事項にすぎないと認める。
上記相違点5について検討すると、引用文献2には底壁面を引用発明2’のように形成して、「強度の最も弱い中央凹部の中心附近が床面等に当ることがない」ようにする点が記載されており、引用発明1において底壁面を引用発明2’のように形成して、「強度の最も弱い中央凹部の中心附近が床面等に当ることがない」ようにすることは当業者が容易になし得たことである。
また、上記[相違点2]でも検討したように、「外連結部、及び前記内連結部はともに傾斜平面に形成」することは当業者が適宜なし得たことにすぎない。

そして、本願発明1の作用効果も、引用発明1及び引用発明2’から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用発明2’に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用発明2’に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-22 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2012-80540(P2012-80540)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 537- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 啓山田 裕介  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 熊倉 強
関谷 一夫
発明の名称 ボトルの製造方法  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  

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