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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1332012 |
審判番号 | 不服2016-8825 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-14 |
確定日 | 2017-08-31 |
事件の表示 | 特願2015- 41205「電子署名装置,電子署名方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日出願公開,特開2015-111942〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成22年3月4日に出願した特願2010-48180号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成27年3月3日に新たな特許出願としたものであって, 平成27年3月3日付けで審査請求がなされ,平成27年11月30日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年2月8日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成28年2月29日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達:平成28年3月15日),これに対して平成28年6月14日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年9月27日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年12月7日付けで上申書の提出があったものである。 第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年6月14日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成28年6月14日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成28年2月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 治験データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出する抽出部と, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出する算出部と, 前記指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する署名データ生成部と を備える電子署名装置。 【請求項2】 コンピュータが, 治験データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出し, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出し, 前記指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する ことを特徴とする電子署名方法。 【請求項3】 治験データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出し, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出し, 前記指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する 処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出する抽出部と, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出する算出部と, 前記指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する署名データ生成部と を備える電子署名装置。 【請求項2】 コンピュータが, 治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出し, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出し, 前記指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する ことを特徴とする電子署名方法。 【請求項3】 治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出し, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出し, 前記指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する 処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正は,補正前の請求項1,補正前の請求項2,及び,補正前の請求項3に係る発明における発明特定事項である, 「治験データを格納したデータベース」を, 「治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベース」, と補正し, 同じく,補正前の請求項2,及び,補正前の請求項3に係る発明における発明特定事項である, 「指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データ」を, 「指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データ」, と補正するものであって,本願の願書に最初に添付された明細書の,段落【0033】等に記載された内容に基づくものであるから,本件手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定を満たすものである。 そして,本件手続補正は,上記引用のとおりの補正内容であるから,本件手続補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明と,本件手続補正により補正された請求項に係る発明とが,発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであって,減縮を目的とするものであることは明らかであるから, 特許法第17条の2第4項,及び,第5項の規定を満たすものである。 そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。 (1)補正後の請求項1に係る発明 補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。 「治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出する抽出部と, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出する算出部と, 前記指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する署名データ生成部と を備える電子署名装置。」 (2)引用刊行物に記載の事項 ア.原審における平成27年11月30日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)に引用された,本願の原出願の出願前に既に公知である,特開2002-169909号公報(平成14年6月14日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 A.「【0041】図4に示すように,第2実施形態の公開立証システム1Bも,第1実施形態の公開立証システム1Aとほぼ同様に構成されているが,第2実施形態の公開立証システム1Bでは,第1実施形態の公開情報アクセスログ記録サーバ20Aに代えて公開情報アクセスログ記録サーバ(閲覧アクセスログ記録サーバ)20Bがそなえられている。この公開情報アクセスログ記録サーバ20Bは,第1実施形態と同様のデータ送受信機能21,データトラップ機能22およびデータ保存機能23のほかに,メッセージダイジェスト生成機能24をさらに有している。 【0042】メッセージダイジェスト生成機能24は,データトラップ機能22によりトラップされた公開情報のメッセージダイジェストを生成するものであり,この第2実施形態のデータ保存機能23においては,公開情報そのものに代えて,メッセージダイジェスト生成機能24により公開情報(閲覧情報)の内容データから生成されたメッセージダイジェストが閲覧アクセスログとして保存されるようになっている。 【0043】なお,メッセージダイジェストを作成するには,例えばMD5(Message Digest algorithm 5)等のアルゴリズムが使用される。また,メッセージダイジェスト生成機能24により,閲覧アクセスログの全てについてのメッセージダイジェストを生成してデータ保存機能23に保存するように構成してもよい。即ち,情報端末30のアクセスログについてのメッセージダイジェストも生成し,第2実施形態のデータ保存機能23において,情報端末30のアクセスログそのものに代え,メッセージダイジェスト生成機能24によりアクセスログから生成されたメッセージダイジェストを保存してもよい。」 B.「【0046】そして,情報端末30は,まず,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bにアクセスしてから(ステップS22),情報提供サーバ10にアクセスし(ステップS23),情報提供サーバ10における公開情報を閲覧することが可能な状態となる。情報提供サーバ10では,公開情報掲示機能13により,情報端末30からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報が,公開情報保存機能12から検索されて読み出され,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bを経由して情報端末30に返送され,閲覧者に提供される(ステップS24)。 【0047】公開情報が公開情報アクセスログ記録サーバ20Bを経由する際,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bにおいては,データトラップ機能22により,閲覧者(第三者)が閲覧した公開情報と,その公開情報に対するアクセス日時を含む情報端末30のアクセスログとが,閲覧アクセスログとしてトラップされる(ステップS25)。 【0048】そして,第2実施形態においては,データトラップ機能22によりトラップされた公開情報データのメッセージダイジェストが,メッセージダイジェスト生成機能24により作成され(ステップS26),このメッセージダイジェストと情報端末30のアクセスログとがペアでデータ保存機能23により保存される(ステップS27)。 【0049】上述のごとく,公開立証システム1Bは,第1実施形態の公開立証システム1Aと同様,閲覧者側の情報端末30から情報提供サーバ10上の公開情報をアクセスする場合,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bを経由してアクセスする仕組みとなっている。そして,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bでは,情報端末30からアクセス・閲覧された公開情報の内容データから作成したメッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとが,閲覧アクセスログとして保存される。」 イ.原審拒絶理由に引用された,本願の原出願の出願前に既に公知である,特開2010-33442号公報(平成22年2月12日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 C.「【0015】 ここで,図4を参照して,Webアクセスログ101について説明する。Webアクセスログ101は,インターネットを介して検索操作(検索システムへのアクセス,検索結果としてのインターネットアドレス(URL)へのアクセス等であり,以下同様)の行われた複数の検索システムに対する利用状況を示す検索ログデータであり,ユーザIDデータD1,日付データD2,時間データD3およびリクエストデータD4(アクセスデータ)を含む。Webアクセスログ101は,検索システム評価装置1により作成される。 【0016】 ユーザIDデータD1は,インターネットを介して検索操作を行った検索端末を識別するためのデータである。本実施形態においては,IDが「1000」の検索端末と,IDが「1001」の検索端末とが例示されている。日付データD2は,検索操作が行われた日付を示すデータである。時間データD3は,検索操作が行われた時間を示すデータであり,検索操作の開始時刻と終了時刻とを含む。リクエストデータD4は,検索システムのURLと検索キーワードとを含む。本実施形態においては,URLが「http://www.AAA.ne.jp」の検索システムと,URLが「http://www.BBB.co.jp」の検索システムとが例示されている。また,リクエストデータD4は,検索システムにより検索された一または複数のインターネットサイトのうち実際にアクセスされたインターネットサイトのURLを含む。本実施形態においては,URLが「http://www.CCC.ne.jp/CCC.htm」のインターネットサイトと,URLが「http://www.DDD.ne.jp/DDD.htm」のインターネットサイトとが例示されており,何れも,URLが「http://www.BBB.co.jp」の検索システムによって検索され検索端末によりアクセスされたURLである。」 ウ.本願の原出願の出願前に既に公知である,特開平11-154185号公報(平成11年6月8日公開,以下,これを「周知文献1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 D.「【0041】図3は,図1および図2に示す治験支援装置を,治験データベースを中心に示した模式図である。治験データベース331は,治験支援装置300内に構成されるが,この図3では,わかりやすさのため,治験データベース331が治験支援装置300の外に取り出された形で示されている。この治験データベース331には,治験ID(治験名,治験番号等)3311と,その治験の実施計画が記述された治験実施計画書3312と,治験対象者(症例)を特定する患者ID3313と,その治験に関する画像情報3314が格納されている。画像情報3314としては,例えば,治験審査記録203(図7参照)の画像情報がこれに相当する。 【0042】これら治験実施計画書3312,患者ID3313,画像情報3314は,治験ID3311に紐づけられており,治験IDをキーワードとして,その治験IDによって特定される治験に関する治験実施計画書,患者ID,画像情報が検索される。尚,ここには簡単のため,患者IDは1つのみ示されているが,治験対象者(症例)の数はその治験により異なり,患者IDは,治験対象者(症例)の数だけ存在する。 【0043】この治験データベース331には,さらに,前述した患者情報3315,投薬情報3316,検査情報3317,および治験対象者(症例)に関する画像情報3318が格納されている。治験対象者(症例)に関する画像情報3318としては,例えば,図7に示す治験同意文書204,重篤事象報告書207,治験中止・脱落報告書208等の画像情報が存在する。 【0044】これら患者情報3315,投薬情報3316,検査情報3317,および画像情報3318は,患者IDに紐づけられており,患者IDをキーワードとしてその患者IDによって特定される治験対象者(症例)に関する患者情報,投薬情報,検査情報,画像情報が検索される。さらに,この治験データベース331には,病名および症状名のリスト3319が格納されている。前述したように,重篤事象報告書作成の際は,このリスト3319にリストアップされている病名,症状名の中からのみ,病名や症状名が選択される。 【0045】この治験データベース331のうち,この病名・症状名リスト3319は,この治験支援装置300の立ち上げの際にローディングされており,この治験データベース331中の他の情報は,新たな治験の開始時,およびその治験の進行に従って順次に構築される。図3に示す医薬品開発元に装置されたコンピュータシステム500では,SGMLに則ったタグが付された治験実施計画書が作成され,その作成された治験実施計画書がフロッピィディスク310にローディングされる。 【0046】図4は,医薬品開発により作成される治験実施計画書の一部を示す概念図,図5は,図4に示す治験実施計画書の一部を画面に展開した状態を示した図である。図4に示す<……>は全てタグであり,そのタグをキーワードとしてそのタグに対応して記述された情報を特定することができる。」 エ.本願の原出願の出願前に既に公知である,特開2006-333250号公報(平成18年12月7日公開,以下,これを「周知文献2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 E.「【0024】 送信元ユーザ情報201や受信先ユーザ情報202は,例えばメールアドレスが用いられるが,ネットワーク内で一意であればIPアドレスや端末名でもよい。・・・(中略)・・・ 署名204は,送信元ユーザ情報201,受信先ユーザ情報202,照会情報実部203の文書に対して,送信元のユーザの公開鍵暗号によるハッシュ値などが記載される。この署名204を付与することで,照会情報実部203を改竄された場合には署名204と一致しなくなる。これにより照会情報の内容を改竄されたことが判別可能となる。」 F.「【0028】 次に,データ送信元端末1Aのデータ管理アプリ1A-dは,図示しない入力装置を介してユーザによって選択された,送信対象となるデータの照会情報を生成し(S304),照会管理部1A-bに送信する(S305)。受信した照会管理部1A-bは,電子署名部1A-cに照会情報の署名を要求し(S306),それにより電子署名部1A-cは署名を生成して(S307),署名付照会情報を照会管理部1A-bへ送信する(S308)。なお,ステップS301?S303とステップS304?S308の順序は逆でも構わない。その後,データ送信元端末1Aの照会管理部1A-bは,署名付照会情報をデータ交換管理装置3の照会管理部3bへ送信する(S309)。照会管理部3bは,受信した署名付照会情報を保存する(S310)。」 G.「【0078】 本方法およびデータ交換システムの各産業分野への応用について説明する。 データ管理アプリケーション部やデータ取得アプリケーション部は,医療分野では電子カルテに相当する。電子カルテを用いて作成や収集された診療データを,本方法を用いて医療機関を越えて安全に交換することが可能となる。例えば,診療データとしては,医療機関同士で送達する紹介患者の紹介状や,医療機関から薬局への処方箋,臨床検査会社や医療機関への検査データ,イメージングセンタと読影機関と医療機関との間の画像データや読影レポート,臨床試験における医療機関から製薬企業への治験データなどが挙げられる。これによれば,秘匿性と真正性を保って,ネットワークを介してこれらのデータが交換可能となり,個人情報の漏洩防止と業務効率向上とを両立できるという効果を有する。その他,金融分野では,資産情報や買い付けなどの情報を安全に送信することが可能となる。流通分野では,プログラムなどを本方法で安全に送信することが可能となる。政府や自治体でも住民情報の安全な送信が可能となる。アンケート調査などにも適用可能である。この場合,複数のデータ受信先端末にアンケート自身ではなく,アンケート調査へのアクセス方法(照会情報)を送付する。受信先では送られたアクセス方法(照会情報)に基づき,各々の調査データに対して回答を入力していく。通常のアンケートでは参加者が複数の回答を返すこともできてしまうが,本方法によれば回答者を区別でき,アンケートの統計の信頼性を高めることも可能となる。」 オ.本願の原出願の出願前に既に公知である,「原 量宏 他著“保健医療福祉分野の電子認証基盤(HPKI)を用いた大規模治験ネットワークシステムの開発”医療情報学,第26巻,2号,有限責任中間法人日本医療情報学会,篠原出版新社,2006年9月1日発行,p93?103」(以下,これを「周知文献3」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 H.「CRFの作成までを模擬的に行った(図2). (1)認証情報取込・ログイン機能 利用者(医師,治験コーディネータ)が本人であることに加え,医療従事者の公的資格(hcRole)をICカードから読み取る(電子証明書を読み取る). この情報を利用者管理機能へ照会し,問題なければログイン操作に移る, (2)利用者管理機能 利用者とその資格を電子証明書から確認する. さらに地域認証局の失効リストと照合し有効であることを確認する. その結果を認証情報取込・ログイン機能に返し,ログインを受け付ける. ログイン後は利用者のアクセス権限(資格に対応)に応じて,症例情報入力,臨床試験データダウンロードなどの機能を利用できるようにする. (3)症例入力機能 Webアプリケーションによって,医師が病院や診療所から症例情報をリモート入力し,サーバ上の症例情報ファイルに一元管理する. 入力したデータはその場で論理チェックを行いデータの整合性を確保する(図3). 不整合の場合,利用者は訂正する. (4)署名登録機能 登録完了した症例データに電子署名を付加し,症例報告ファイルに移す. (5)症例報告データダウンロード機能 データマネジメント実施者がCROサーバ側の症例報告ファイルにダウンロードする. 症例報告データはCROのデータマネジメントシステムによって,詳細なデータチェックが行われ,データが正しいことを確認の上,統計・分析が行われる. そして最終的に製薬企業に電子署名がつけられ転送される. (6)ログ管理機能 臨床試験支援システムの操作を「誰が何をいつしたか」,その都度ログをとる.」(96頁左欄1行?右欄11行<当審注;原著における○付数字は,()付の数字で代用した。>) I.「3)保健医療福祉分野における公開鍵基盤(HPKI) (1)HPKIの必要性 現在国はe-Japan戦略の中で電子政府の実現を積極的に推進しており,その基本となるのが公開鍵基盤(PKI)を用いる電子認証技術6)である. 臨床試験のデータは複数の医療機関のみならず,検査機関,CROそして医師,薬剤師,看護師など多数の職種の間で移動するため,セキュリティ確保とデータの真正性を保障するために,電子認証,電子署名の技術が不可欠である. HPKIに関しては,MEDIS-DCが国の委託を受け実用化を進めている,我々のシステムで利用する電子認証はHPKIのガイドラインに沿うものであり,構築した認証局はMEDIS-DCの認証局(計画中)を頂点とする階層型モデルの下位認証帰すなわち,地域認証局として機能する. (2)臨床試験IT化の概念 臨床試験に携わるスタッフは,厳格な審査のもとに電子認証局から電子証明書の発行を受ける. 情報端末の操作はこの電子証明書を用いて行い,これによってインターネット上に接続された情報端末を操作する者が確実に本人であることを認証(電子認証)する. 医療機関では,情報端末を操作して症例データを入力し,医師がネットワーク上で電子署名を行う. すなわち,電子署名は文書の印鑑と同様の意味をもつため,電子文書の責任が明確になり,同時に改ざんの防止が可能となる. 同様にネットワークを介して収集した症例データは,統計・解析などの工程を経て最終的に申請書(e-CTD)が完成する. これら一連の段階において,ネットワーク上に接続された情報端末を操作する場合には常にHPKIを用い,作成した文書に責任者が電子署名を行う.」(97頁左欄17行?右欄24行) カ.本願の原出願の出願前に既に公知である,「土居範久監修“情報セキュリティ事典”共立出版株式会社,2003年7月10日,初版1刷発行,212頁?215頁」(以下,これを「周知文献4」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 J.「3.5.2 MD5 MD5はMD4の基本関数の処理回数を48回から64回に増加させたもので,MD4と同じくRivestによって1992年に発表された^([5]).MD5はSHA1とともに非常に広く使われているハッシュ関数である. MD5のcollisionsは見つかっていないが,基本ブロックの出力が同じになるような,異なるIV値とメッセージの組が見つかっている^([6]).これはただちにMD5のcollisionに結びつくものではないが,最近ではハッシュ値のサイズの見直しとともに,SHA1が利用されることが多くなっている.」(214頁下から3行?215頁5行) キ.本願の原出願の出願前に既に公知である,特開2006-277199号公報(平成18年10月12日公開,以下,これを「周知文献5」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。 K.「【0034】 データ検証部14は,不在ボックス20の送信部37から送信された認証用データ(署名付データ)について,その認証用データに付加されている電子署名を,公開鍵データベース12から取得したその受取人の公開鍵を用いて復号することにより,受取人が正当な本人であることを認証するようになっている。 なお,電子署名としてメッセージダイジェストを使用する場合には,データ検証部14は,受信した認証用データに付加されている電子署名(暗号ダイジェスト)をその受取人の公開鍵で複合化するとともに,受取人と同じメッセージ圧縮技術(ハッシュ関数等)を用いて,受信した平文からメッセージダイジェストを生成し,これらの,暗号ダイジェストを復号して得られたメッセージダイジェストと,平文から作成したメッセージダイジェストとを比較照合して,2つのメッセージダイジェストが同一である場合に,受取人から送信された認証用データの正当性が確認される。すなわち,これにより,受取人の本人確認と改ざん識別とを実現することができるのである。」 (3)引用刊行物に記載の発明 ア.上記Bの「情報提供サーバ10では,公開情報掲示機能13により,情報端末30からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報が,公開情報保存機能12から検索されて読み出され」という記載から,引用刊行物1には, “情報提供サーバの公開情報保存機能から,情報端末からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報を,検索して読み出す,公開情報掲示機能”が存在することが読み取れる。 イ.上記Aの「公開情報アクセスログ記録サーバ20Bは,第1実施形態と同様のデータ送受信機能21,データトラップ機能22およびデータ保存機能23のほかに,メッセージダイジェスト生成機能24をさらに有している」という記載,同じく,上記Aの「メッセージダイジェスト生成機能24は,データトラップ機能22によりトラップされた公開情報のメッセージダイジェストを生成するものであり」という記載,同じく,上記Aの「メッセージダイジェストを作成するには,例えばMD5(Message Digest algorithm 5)等のアルゴリズムが使用される」という記載,上記Bの「公開情報アクセスログ記録サーバ20Bにおいては,データトラップ機能22により,閲覧者(第三者)が閲覧した公開情報と,その公開情報に対するアクセス日時を含む情報端末30のアクセスログとが,閲覧アクセスログとしてトラップされる」という記載,及び,同じく,上記Bの「データトラップ機能22によりトラップされた公開情報データのメッセージダイジェストが,メッセージダイジェスト生成機能24により作成され」という記載から,引用刊行物1には, “MD5等のアルゴリズムを用いて,公開情報のメッセージダイジェストを生成する,メッセージダイジェスト生成機能”が存在することが読み取れる。 ウ.上記Aの「公開情報そのものに代えて,メッセージダイジェスト生成機能24により公開情報(閲覧情報)の内容データから生成されたメッセージダイジェストが閲覧アクセスログとして保存される」という記載,上記Bの「このメッセージダイジェストと情報端末30のアクセスログとがペアでデータ保存機能23により保存される」という記載,及び,同じく,上記Bの「公開情報アクセスログ記録サーバ20Bでは,情報端末30からアクセス・閲覧された公開情報の内容データから作成したメッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとが,閲覧アクセスログとして保存される」という記載から,引用刊行物1には, “メッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとをペアにした閲覧アクセスログを生成して,保存する,データ保存機能”が存在することが読み取れる。 エ.上記Aの「第2実施形態の公開立証システム1Bでは,第1実施形態の公開情報アクセスログ記録サーバ20Aに代えて公開情報アクセスログ記録サーバ(閲覧アクセスログ記録サーバ)20Bがそなえられている」という記載,及び,上記Bの「上述のごとく,公開立証システム1Bは,第1実施形態の公開立証システム1Aと同様,閲覧者側の情報端末30から情報提供サーバ10上の公開情報をアクセスする場合,公開情報アクセスログ記録サーバ20Bを経由してアクセスする仕組みとなっている」という記載と,上記ア.?ウ.において検討した事項から,引用刊行物1における「公開立証システム」が,「公開情報掲示機能」,「メッセージダイジェスト生成機能」,及び,「データ保存機能」を有していることが読み取れる。 オ.以上,ア.?エ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。 「情報提供サーバの公開情報保存機能から,情報端末からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報を,検索して読み出す,公開情報掲示機能と, MD5等のアルゴリズムを用いて,公開情報のメッセージダイジェストを生成する,メッセージダイジェスト生成機能と, メッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとをペアにした閲覧アクセスログを生成して,保存する,データ保存機能と, を有する,公開立証システム。」 (4)本件補正発明と引用発明との対比 ア.引用発明において,「情報提供サーバ」は,「公開情報保存機能」を有し,該「公開情報」は,「閲覧者」が「望む」ものを,「検索」によって取得しているのであるから,「閲覧者」の“検索キー”によって,「検索」されていることは,明らかであるから,「公開情報」は,「公開情報保存機能」に,“検索キー”と関連付けられて,保存されているものであることも,明らかである。 そうすると,引用発明における「情報提供サーバの公開情報保存機能」は,「公開情報」を,“検索キー”と関連付けて保存する“データベース”と言い得るものである。 そして,本件補正発明における「指定されたデータ」は,当該「指定されたデータ」に関連付けられた「治験データ」を抽出するための“検索キー”であるから, 引用発明における「公開情報」と,本件補正発明における「治験データ」とは,“検索対象データ”である点で共通し, 引用発明における“検索キー”は,本件補正発明における「指定されたデータ」に相当し, 引用発明において,「公開情報掲示機能」は,「公開情報」を検索して読み出すものであるから, 引用発明における「情報提供サーバの公開情報保存機能から,情報端末からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報を,検索して読み出す,公開情報掲示機能」と, 本件補正発明における「治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出する抽出部」とは, “検索対象データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている検索対象データを抽出する抽出手段” である点で共通する。 イ.引用発明における「MD5等のアルゴリズムを用いて,公開情報のメッセージダイジェストを生成する」ことに関して,「MD5」が,“ハッシュ関数”であることは,当業者には周知の技術事項であるから(必要であれば,「(2)引用刊行物に記載の事項」において,Jとして引用した,周知文献4の記載内容等を参照されたい。), 引用発明における「メッセージダイジェスト」が, 本件補正発明における「ハッシュ値」に相当するので, 引用発明における「MD5等のアルゴリズムを用いて,公開情報のメッセージダイジェストを生成する,メッセージダイジェスト生成機能」と, 本件補正発明における「抽出した治験データについてハッシュ値を算出する算出部」とは, “抽出した検索対象データについてハッシュ値を算出する算出手段” である点で共通する。 ウ.引用発明において,「メッセージダイジェスト」と,「アクセスログ」とを「ペアにした閲覧アクセスログ」は,“ハッシュ値とアクセスログ関連付けた閲覧アクセスログ”といえるものであり, 引用発明における「データ保存機能」は,「閲覧アクセスログ」を生成するものであるから, 引用発明における「メッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとをペアにした閲覧アクセスログを生成して,保存する,データ保存機能」と, 本件補正発明における「指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する署名データ生成部」とは, “ハッシュ値と,所定のデータとを関連付けたデータを生成するデータ生成手段” である点で共通する。 エ.上記ア.?ウ.において検討した事項から,引用発明における「公開立証システム」は,“抽出手段”,“算出手段”,及び,“データ生成手段”を含むものであるから, 本件補正発明における「抽出部」,「算出部」,及び,「署名データ生成部」を備える「電子署名装置」とは,「電子装置システム」である点で共通する。 オ.以上,ア.?エ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 検索対象データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている検索対象データを抽出する抽出手段と, 抽出した検索対象データについてハッシュ値を算出する算出手段と, ハッシュ値と,所定のデータとを関連付けたデータを生成するデータ生成手段と を備える電子装置システム。 [相違点1] “検索対象データ”に関して, 本件補正発明においては,「治験データ」であるのに対して, 引用発明においては,「公開情報」である点。 [相違点2] “データベース”に関して, 本件補正発明においては,「指定されたデータベース」であるのに対して, 引用発明においては,「情報提供サーバの公開情報保存機能」を指定することは,特に言及されていない点。 [相違点3] “関連付けたデータ”に関して, 本件補正発明においては,「指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データ」であるのに対して, 引用発明においては,“検索キー”と「データベースを識別する情報」と,「メッセージダイジェスト」とを関連付けて「署名データ」とすることについては,言及されていない点。 (5)相違点についての当審の判断 ア.[相違点1]について 「治験データベース」に,「治験データ」を“検索キーワード”に関連付けて格納し,当該“検索キーワード”を用いて検索を行って呼び出すことは,例えば,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,Dとして引用した,周知文献1の記載にもあるように,本願の原出願の出願前に,当業者には周知の技術事項である。 したがって,引用発明において,提供する情報を「治験データ」とするよう構成することは,当業者が,周知技術に基づいて適宜なし得る事項である。 よって,[相違点1]は,格別のものではない。 イ.[相違点2]について 検索すべきデータを保持する環境が複数存在する場合に,当該複数の環境の内の1つを選択し,選択した当該環境に対して,検索キーワードを用いて検索を行うことは,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,Cとして引用した,引用刊行物2に,「リクエストデータD4は,検索システムのURLと検索キーワードとを含む。本実施形態においては,URLが「http://www.AAA.ne.jp」の検索システムと,URLが「http://www.BBB.co.jp」の検索システムとが例示されている」と記載されているように,本願の原出願の出願前に,当業者には広く知られた技術事項である。 そして,引用発明も,引用刊行物2に係る発明も,情報を検索する技術である点で共通するので,引用発明においても,複数の「情報提供サーバ」を設け,検索の際に,何れかの「情報提供サーバ」を指定して,検索を行うことは,引用刊行物2に係る発明から,当業者が容易に構築し得るものである。 よって,[相違点2]は,格別のものではない。 ウ.[相違点3]について 検索した「ログ」の情報として,検索した「データベース」を識別する情報と,検索に用いた「検索キーワード」とを含めるようにすること,即ち,「データベース」を識別する情報と,「検索キーワード」とを関連付けた情報を作成することは,引用刊行物2に記載されている。 引用発明においては,「メッセージダイジェスト」(本件補正発明における「ハッシュ値」)と,「アクセス日時等を含むアクセスログ」とを関連付けた「閲覧アクセスログ」を生成しているので,「アクセス日時等を含むアクセスログ」に,引用刊行物2に係る発明に用いられている“アクセスされたサイトの情報”,即ち,“検索に対象となったデータベース等の情報”を含ませることは,当業者が適宜なし得る事項である。 そして,「治験データ」の改竄防止に「署名」を用いること自体は,例えば,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,E?Gとして引用した,周知文献2の記載内容,或いは,同じく,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,H,Iとして引用した,周知文献3の記載内容にもあるとおり,当該技術分野にあっては,本願の原出願の出願前,当業者には周知の技術事項であり,「メッセージダイジェスト」を,「署名」して用いることも,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,Kとして引用した,周知文献5の記載にもあるとおり,当該技術分野にあっては,本願の原出願の出願前,当業者には,周知の技術事項であるから,引用発明においても,“検索キーワードと,検索対象となった公開情報保存機能を識別する情報と,メッセージダイジェストとをペアにして,それを署名データとする”ことは,当業者が,引用発明,引用刊行物2に係る発明,及び,当該技術分野における周知技術とに基づいて,格別の困難を要することなくなし得たものである。 よって,[相違点3]は,格別のものではない。 エ.以上ア.?ウ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点3]は格別なものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。 (6)独立特許要件むすび 以上において検討したとおりであるから,本件補正発明は,本願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際,独立して特許を受けることができない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 平成28年6月14日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成28年2月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次のとおりのものである。 「治験データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている治験データを抽出する抽出部と, 抽出した治験データについてハッシュ値を算出する算出部と, 前記指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データを生成する署名データ生成部と を備える電子署名装置。」 第4.引用刊行物に記載の発明 上記「第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物1として引用した,特開2002-169909号公報(平成14年6月14日公開)には,上記「第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(3)引用刊行物に記載の発明」において認定したとおりの,次の引用発明が記載されている。 「情報提供サーバの公開情報保存機能から,情報端末からの指示に応じて,閲覧者の望む公開情報を,検索して読み出す,公開情報掲示機能と, MD5等のアルゴリズムを用いて,公開情報のメッセージダイジェストを生成する,メッセージダイジェスト生成機能と, メッセージダイジェストと,アクセス日時等を含むアクセスログとをペアにした閲覧アクセスログを生成して,保存する,データ保存機能と, を有する,公開立証システム。」 第5.本願発明と引用発明との対比 本願発明は,上記「第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」において検討した,本件補正発明における発明特定事項である, 「治験データを格納したデータベースのうちの指定されたデータベース」, から,「のうちの指定されたデータベース」という構成を削除し, 同じく,本件補正発明における発明特定事項である, 「前記指定されたデータ,前記指定されたデータベースを識別する情報及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データ」から,「指定されたデータベースを識別する情報」を削除したものであるから, 本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。 [一致点] 検索対象データを格納したデータベースから,指定されたデータに関連付けて格納されている検索対象データを抽出する抽出手段と, 抽出した検索対象データについてハッシュ値を算出する算出手段と, ハッシュ値と,所定のデータとを関連付けたデータを生成するデータ生成手段と を備える電子装置システム。 [相違点a] “検索対象データ”に関して, 本願発明においては,「治験データ」であるのに対して, 引用発明においては,「公開情報」である点。 [相違点b] “関連付けたデータ”に関して, 本願発明においては,「指定されたデータ及び算出したハッシュ値を関連付けた署名データ」であるのに対して, 引用発明においては,“検索キー”と「データベースを識別する情報」と,「メッセージダイジェスト」とを関連付けて「署名データ」とすることについては,言及されていない点。 第6.相違点についての当審の判断 本願発明と,引用発明との[相違点a]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]と同じものであり,本願発明と,引用発明との[相違点b]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点3]と,ほぼ,同等のものであるから,上記「第2.平成28年6月14日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」の「ア.[相違点1]について」,及び,「ウ.[相違点3]について」において検討したとおり,格別のものではない。 そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。 第7.むすび したがって,本願発明は,本願の原出願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-30 |
結審通知日 | 2017-07-04 |
審決日 | 2017-07-20 |
出願番号 | 特願2015-41205(P2015-41205) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 石井 茂和 |
発明の名称 | 電子署名装置、電子署名方法及びコンピュータプログラム |
代理人 | 河野 英仁 |
代理人 | 河野 登夫 |