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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1332047
審判番号 不服2016-9509  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-27 
確定日 2017-09-07 
事件の表示 特願2014-529750「改善したレイアウトを有するトランジスタを備える高電流密度電力モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開、WO2013/036370、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531752〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2011年9月11日、米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 4月28日 特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文提出
平成26年 6月20日 審査請求
平成27年 4月13日 拒絶理由通知
平成27年 7月 9日 意見書・手続補正書
平成28年 2月24日 拒絶査定
平成28年 6月27日 審判請求・手続補正書
平成28年11月 1日 上申書

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年6月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、本願の特許請求の範囲を補正するものであって、詳細には、請求項1を補正し、請求項6を削除し、補正前の請求項7を補正後の請求項6に繰り上げ、補正前の請求項8ないし10を補正して補正後の請求項7ないし9とし、補正前の請求項11及び12を補正後の請求項10及び11に繰り上げ、請求項13及び14を削除し、補正前の請求項15及び16を補正後の請求項12及び13に繰り上げ、請求項17ないし19を削除し、補正前の請求項20を補正後の請求項14に繰り上げ、補正前の請求項21を補正して補正後の請求項15とし、補正前の請求項22ないし38を補正後の請求項16ないし32に繰り上げるとともに、補正前の請求項22ないし38が引用していた請求項の項番を補正するものである。
そして、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1については、本件補正の前後で以下のとおりである。
・補正前
「【請求項1】
内部チャンバを有する筐体と、
前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、少なくとも10kVの電圧を扱う、複数のスイッチモジュールと
を備える、電力モジュール。」
・補正後
「【請求項1】
内部チャンバを有する筐体と、
前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、10kVより大きな電圧を扱う、複数のスイッチモジュールと
を備え、
前記複数のトランジスタのうちの少なくとも1つが、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、
前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトと
を備える、
電力モジュール。」

2 補正事項の整理
本件補正による、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1についての補正を整理すると次のとおりとなる。(当審注.下線は補正箇所を示し、当審で付加したもの。)

・補正事項1
本件補正前の請求項1の
「複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、少なくとも10kVの電圧を扱う」
を、
「複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、10kVより大きな電圧を扱う」
に補正すること。
・補正事項2
本件補正前の請求項1の
「複数のスイッチモジュールと
を備える、電力モジュール。」
を、
「複数のスイッチモジュールと
を備え、
前記複数のトランジスタのうちの少なくとも1つが、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、
前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトと
を備える、
電力モジュール。」
に補正すること。

3 補正の適否について
(1)特許法第17条の2第3項について
補正事項1は、本件補正前の請求項1における「複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つ」について、「少なくとも10kVの電圧を扱う」を「10kVより大きな電圧を扱う」に補正することによって、10kVちょうどの電圧を扱うものを除外するものであり、新たな技術事項を導入するものとはいえない。
また、特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文(以下「翻訳文」という。)の【請求項9】及び【請求項10】、並びに段落【0058】ないし【0062】の記載から、補正事項2が翻訳文に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
したがって、補正事項1及び2は、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用される同法第17条の2第3項の規定に適合する。
(2)特許法第17条の2第4項について
平成27年4月13日付け拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、本件補正後の請求項1に係る発明とが、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものであることは明らかである。
したがって、補正事項1及び2は、特許法第17条の2第4項の規定に適合する。
(3)特許法第17条の2第5項について
補正事項1は、本件補正前の請求項1における「複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つ」について、「少なくとも10kVの電圧を扱う」を「10kVより大きな電圧を扱う」に補正することによって、10kVちょうどの電圧を扱うものを除外するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項2は、本件補正前の請求項1における「複数のトランジスタ」について、少なくとも一つが「第1の導電型を有するドリフト層と、前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトとを備える」ものに限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項1及び2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、同項柱書の規定に適合する。
(4)特許法第17条の2第6項について
上記(3)のとおり、本件補正のうち、請求項1についての補正事項1及び2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、本件補正が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、更に検討する。
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものと認める。(再掲)
「【請求項1】
内部チャンバを有する筐体と、
前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、10kVより大きな電圧を扱う、複数のスイッチモジュールと
を備え、
前記複数のトランジスタのうちの少なくとも1つが、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、
前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトと
を備える、
電力モジュール。」
イ 引用文献及び引用発明
(ア)引用文献1の記載事項と引用発明
a 引用文献1の記載事項
原査定の理由において引用され、本願の優先権の主張の基礎とされた出願の日(以下「本願の優先日」という。)の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-10505号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(当審注.下線は、参考のために、当審において付したものである。以下において同じ。)。
「【0001】
本発明は、パワーモジュール及び電力変換装置に関する。特に、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)等のパワー半導体素子を有するパワーモジュールの実装構造と、ハイブリッド車などに使用される電力変換装置に関する。
・・・
【0017】
なお、本実施形態の構成は、自動車やトラックなどの車両駆動用電力変換装置として最適であるが、これら以外の電力変換装置、例えば電車や船舶,航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に対しても適用可能である。
・・・
【0027】
次に、図2を用いてインバータ装置140や142あるいはインバータ装置43の電気回路構成を説明する。
・・・
【0028】
本実施形態に係る電力変換装置200は、インバータ装置140とコンデンサモジュール500とを備え、インバータ装置140はインバータ回路144と制御部170とを有している。また、インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150を複数有し(図2の例では3つの上下アーム直列回路150,150,150)、それぞれの上下アーム直列回路150の中点部分(中間電極169)から交流端子159を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する構成である。また、制御部170はインバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。
【0029】
上アームと下アームのIGBT328や330は、スイッチング用パワー半導体素子であり、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
【0030】
インバータ回路144は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路150,150,150がそれぞれ、バッテリ136の正極側と負極側に電気的に接続されている直流正極端子314と直流負極端子316の間に電気的に並列に接続されている。
【0031】
本実施形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT328や330を用いることを例示している。IGBT328や330は、コレクタ電極153,163,エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165),ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクタ電極153,163とエミッタ電極との間にはダイオード156,166が図示するように電気的に接続されている。ダイオード156,166は、カソード電極及びアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT328,330のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。
・・・
【0041】
図3?図7において、200は電力変換装置、10は上部ケース、11は金属ベース板、12は筐体、13は冷却水入口配管、14は冷却水出口配管、420はカバー、16は下部ケース、17は交流ターミナルケース、18は交流ターミナル、19は冷却水流路、20は制御回路基板で制御回路172を保持している。21は外部との接続のためのコネクタ、22は駆動回路基板でドライバ回路174を保持している。300はパワーモジュール(半導体モジュール部)で2個設けられており、それぞれのパワーモジュールにはインバータ回路144が内蔵されている。700は平板積層バスバー、800はOリング、304は金属ベース、188は交流コネクタ、314は直流正極端子、316は直流負極端子、500はコンデンサモジュール、502はコンデンサケース、504は正極側コンデンサ端子、506は負極側コンデンサ端子、514はコンデンサセル、をそれぞれ表す。
【0042】
図3は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成の外観斜視図を示す。本実施形態に係る電力変換装置200の外観は、上面あるいは底面が略長方形の筐体12と、前記筐体12の短辺側の外周の1つに設けられた冷却水入口配管13および冷却水出口配管14と、前記筐体12の上部開口を塞ぐための上部ケース10と、前記筐体12の下部開口を塞ぐための下部ケース16とを固定して形成されたものである。筐体12の底面図あるいは上面図の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。
・・・
【0045】
図4は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
【0046】
図4に示すように、筐体12の中ほどに冷却水流路19が設けられ、該冷却水流路19の上部には流れの方向に並んで2組の開口400と402が形成されている。前記2組の開口400と402がそれぞれパワーモジュール300で塞がれる様に2個のパワーモジュール300が前記冷却水流路19の上面に固定されている。各パワーモジュール300には放熱のためのフィン305が設けられており、各パワーモジュール300のフィン305はそれぞれ前記冷却水流路19の開口400と402から冷却水の流れの中に突出している。
・・・
【0054】
筐体12の上部と下部には開口が形成され、これら開口はそれぞれ上部ケース10と下部ケース16が例えばネジ等で筐体12に固定されることにより塞がれる。筐体12の中央に冷却水流路19が設けられ、前記冷却水流路19にパワーモジュール300やカバー420を固定する。このようにして冷却水流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次に前記筐体12の上部と下部の開口から基板やコンデンサモジュール500を取り付ける作業を行うことができる。このように中央に冷却水流路19を配置し、次に前記筐体12の上部と下部の開口から必要な部品を固定する作業が行える構造を為しており、生産性が向上する。また冷却水流路19を最初に完成させ、水漏れ試験の後その他の部品を取り付けることが可能となり、生産性と信頼性の両方が向上する。
・・・
【0112】
図15(a)は、パワーモジュール300の上面図であり、図15(b)は同図(a)の点線AAの断面模式図である。図15に示されたパワーモジュール300は、50kWクラスの水冷3相インバータに適用される。
【0113】
まず、図15(a)を用いて、パワーモジュール300の寸法及びそれに収納されたIGBT328等の寸法について説明する。各上下アームに対応する絶縁基板334の寸法は横32mm×縦52mmであり、各IGBT328の寸法は横12.5mm×縦13.0mmであり、各ダイオード327の寸法は横12.5mm×縦7.0mmである。
【0114】
各絶縁基板334上に、IGBT328とダイオード327をそれぞれ2つ実装し、IGBT328とダイオード327を一組として2並列接続させる。各素子(IGBT328とダイオード327)の電圧/電流定格は600V/200Aであり、2並列接続されることにより、定格600V/400Aのモジュールを構成する。
・・・
【0118】
図15(a)に示されるように、絶縁基板334は、各相の各上下アームに対応して合計6枚備えられる。また、該6枚の絶縁基板334は、金属ベース304に、はんだ337bにより接合される。この金属ベース304は、横128.5mm×縦145mmであり、かつ平板部の厚さ4mmである。本実施形態においては、当該はんだ337bは、融点210℃以上の無鉛のはんだであり、その膜厚は、約0.18mmである。」
b 引用発明
上記aの引用文献1の記載及び当該技術分野における技術常識より、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「筐体12と、
前記筐体12の上部開口を塞ぐ上部ケース10と、
前記筐体12の下部開口を塞ぐ下部ケース16と、
筐体12内に搭載された2個のパワーモジュール300を備え、
前記パワーモジュール300は、それぞれ、横32mm×縦52mmの絶縁基板334上にIGBT328とダイオード327をそれぞれ2つ並列接続した定格600V/400Aのモジュールを6個備え、
前記IGBT328は、スイッチング用パワー半導体素子であり、バッテリから供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換された電力はモータジェネレータの電機子巻線に供給される、
電力変換装置200。」
(イ)引用文献5及び6の記載事項並びに周知技術1
a 引用文献5の記載事項
(a)原査定の理由において引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-4003号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0070】
なお、上記の実施の形態1?3は適宜組み合わせられてもよい。
また上記の実施の形態1?3においては、縦型のパワーデバイスとして平面(プレーナ)ゲート型のIGBTについて説明したが、本発明は、これに限定されず、図12に示すようなトレンチゲート型のIGBT、図13に示すような平面ゲート型のパワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、図14に示すようなトレンチゲート型のパワーMISFET、ダイオードなどに適用され得る。
【0073】
また図13に示された平面ゲート型のパワーMISFETの構成は、図6に示された平面ゲート型のIGBTと比較して、p^(+)コレクタ領域2が省略されてn^(+)エピタキシャル領域3がドレイン電極12に接続されている点において異なっている。このパワーMISFETは、ゲート絶縁膜8がシリコン酸化膜よりなるパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
・・・
【0077】
上述した実施の形態1?3の構成を適用できるメモリセル(IGBTもしくはパワーMOSFET)の具体的な構成としては、たとえば以下の4つの構成が考えられる。
【0078】
1つ目の構成は図16?図18に示す構成であり、2つ目の構成は図19?図21に示す構成であり、3つ目の構成は図22および図23に示す構成であり、4つ目の構成は図24および図25に示す構成である。
【0079】
1つ目の構成に関して、図16は平面ゲート型メモリセルの構成を示す概略平面図である。また図17および図18のそれぞれは図16のXVII-XVII線およびXVIII-XVIII線に沿う概略断面図である。
【0080】
図16?図18を参照して、半導体基板1の主表面であってp型ベース領域5が形成された領域内の主表面に、平面視において梯子状に延びるようにn^(+)エミッタ領域6が形成されている。平面視においてn^(+)エミッタ領域6の梯子の延びる方向と同じ方向に梯子の中央部を連続的に延びるようにp^(+)領域7が形成されている。このp^(+)領域7は半導体基板1の主表面に対してn^(+)エミッタ領域6よりも深く形成されている。
【0081】
n^(-)エピタキシャル領域4とn^(+)エミッタ領域6との間に位置するp型ベース領域5とゲート絶縁膜8を介して対向するように半導体基板1の主表面上にゲート電極層9が形成されている。このゲート電極層9は、互いに隣り合うp型ベース領域5の間に挟まれるn^(-)エピタキシャル領域4上にもゲート絶縁膜8を介して対向するように形成されている。
【0082】
n^(+)エミッタ領域6の梯子の格(rung)部分とp^(+)領域7とのそれぞれの表面に達するように、コンタクトホール10aが絶縁膜10に設けられている。これにより、エミッタパッド11はコンタクトホール10aを介してn^(+)エミッタ領域6およびp^(+)領域7のそれぞれに電気的に接続されている。
【0083】
なおコンタクトホール10aは、説明の便宜上、図16においては一部省略されている。この1つ目の構成は、図5および図6に示したIGBTのエミッタ側の構成と同様の構成である。
【0084】
2つ目の構成に関して、図19は平面ゲート型メモリセルの構成を示す概略平面図である。また図20および図21は図19のXX-XX線およびXXI-XXI線に沿う概略断面図である。
【0085】
図19?図21を参照して、この2つ目の構成は、p^(+)領域7が、梯子状に形成されたn^(+)エミッタ領域6の2本の枠(frame)と2つの格とに囲まれる半導体基板1の主表面に島状に形成されている点と、n^(+)エミッタ領域6およびp^(+)領域7がほぼ同じ深さで形成されている点とにおいて上記1つ目の構成と異なっている。
【0086】
なおこれ以外の構成については上述した1つ目の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0087】
またコンタクトホール10aは、説明の便宜上、図19においては一部省略されている。」
(b)引用文献5の図20及び図21には下記の事項が記載されていると認められる。
「n^(-)エピタキシャル領域4と、
p型ベース領域5と、
前記p型ベース領域5内にある、n^(+)エミッタ領域6と、
前記p型ベース領域5と接触するp^(+)領域7と、
前記n^(+)エミッタ領域6と重なり、かつ、前記p^(+)領域7と重なるエミッタパッド11と
を備える、パワーMOSFET。」
b 引用文献6の記載事項
(a)原査定の理由において引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である米国特許出願公開第2004/0041229号明細書(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.訳は当審で作成した。以下において同じ。)
「[0028] In FIGS.3 through 6B, like reference numerals are used to refer to like regions, layers, or portions. FIG.3 is a layout view of a power MOS field effect transistor according to an embodiment of the present invention, and FIG.4 is a layout view showing only the frame region and body regions of the FIG.3 layout view.」
(訳:[0028] 図3から図6Bにおいては、同じ領域、層、及び部位について、同一の符号を付している。図3は、本発明の一実施形態に係るパワーMOSFETのレイアウト図であり、図4は、図3のレイアウト図のうち、フレーム領域とボディ領域のみを示すレイアウト図である。)
「[0029] In FIGS.3 and 4, a plurality of stripe-shaped cells are surrounded by a frame region 200. An upper portion and a lower portion of frame region 200 are vertically connected to each other by body regions 308. That is, an upper end of the body region 308 is connected to the upper portion of the frame region 200, and a lower end of the body region 308 is connected to the lower portion of the frame region 200. Body regions 308 and frame region 200 are of the same conductivity type. By forming body regions 308 in stripes and terminating them in frame region 200, an electric field is prevented from being concentrated at the two ends of each body region 308, and thus the breakdown voltage of the device is improved. For the reasons stated above in connection with FIGS.1-2 and more fully explained further below, it is desirable that a spacing a between adjacent body regions 308 be made as small as possible. Further, in one embodiment, each corner 200c of frame region 200 has a radius of curvature that is greater than a predetermined value, e.g., 100 μm, so that a spherical junction can be prevented from occurring.」
(訳:[0029] 図3及び図4では、複数の縞(しま)状セルがフレーム領域200に囲まれている。フレーム領域の上部と下部はボディ領域308によって垂直に接続されている。すなわち、ボディ領域308の上部はフレーム領域200の上部と接続され、ボディ領域308の下部はフレーム領域200の下部と接続されている。ボディ領域308とフレーム領域200は同じ導電型である。ボディ領域308を縞(しま)状に形成しフレーム領域200で終端することにより、電界が各ボディ領域308の両端部に集中することを防ぎ、デバイスの耐圧が向上する。図1及び図2に関して上述し、以下においてさらに完全に説明する理由により、隣接するボディ領域308間の間隔は可能な限り小さくすることが望ましい。さらに、一実施例においては、フレーム領域200の各角部200cは、所定の値、例えば100μmよりも大きな曲率半径を有しており、球状接合の発生を防ぐ。)
「[0030] In FIG.3, gate electrodes 318 (e.g., from polysilicon) are arranged in stripes such that upper and lower ends of each gate electrode 318 terminate over frame region 200, and an outermost vertically extending side of the outermost gate electrodes 318 also terminates over frame region 200. Source electrodes 320 (e.g., from metal) are arranged in stripes between adjacent gate electrodes 318. Each source region includes a vertically extending stripe portion 310a and short horizontally extending portions 310b. The short horizontally extending portions 310b electrically contact source electrodes 320.」
(訳:[0030] 図3では、ゲート電極318(例えば、ポリシリコン)が縞(しま)状に配され、各ゲート電極318の上端及び下端はフレーム領域200上で終端しており、最も外側のゲート電極318の鉛直方向に延びる外側の端部もまた、フレーム領域200上で終端している。隣接するゲート電極318の間に、ソース電極320(例えば、金属)が縞(しま)状に配されている。各ソース領域は縦方向に延びる縞(しま)状部310aと水平方向に延びる短い部分310bを含む。水平方向に延びる短い部分310bはソース電極320と電気的に接触する。)
「[0031] FIG.5 is a sectional view along line B-B' in FIG.3. Adrift region 304 of n^(-)-type conductivity extends over an n^(+)-type semiconductor substrate 302 which serves as the drain contact region. An additional drift region 306 of n^(+)-type conductivity is formed on n^(-)-type drift region 304. Drift regions 804 and 806 may be epitaxially formed using conventional methods. Alternatively, only one epitaxially-formed drift region of n^(-)-type conductivity may be formed over substrate 302, and then the n^(+)-type region 306 is formed in an upper portion of the epitaxially-formed n^(-)-type drift region using conventional ion implantation methods. In one embodiment, a concentration of impurities in n^(+)-type drift region 306 is graded and becomes smaller toward the interface between n^(+)-type drift region 306 and n^(-)-type drift region 304. Body regions 308 of p^(-)-type conductivity are formed in an upper portion of n^(+)-type drift region 306. Source region portions 310a(corresponding to the vertically extending stripe portions 310a in FIG.3) are formed in an upper portion of p^(-)-type body regions 308. A highly doped region 312 of p^(+)-type conductivity is formed in an upper portion of each of p^(-)-type body regions 308.」
(訳:[0031] 図5は図3のB-B’線断面図である。ドレインコンタクト領域となるn^(+)型半導体基板302の上に、n^(-)型ドリフト領域304が延在している。n^(-)型ドリフト領域304の上に、n^(+)型の追加のドリフト領域306が形成されている。ドリフト領域804と806は従来の方法を用いてエピタキシャル形成することができる。あるいは、基板302上にエピタキシャル形成されたn^(-)型ドリフト領域を1つだけ形成した後に、従来のイオン注入法を用いて、エピタキシャル形成されたn^(-)型ドリフト領域の上部にn^(+)領域306を形成することもできる。一実施例では、n^(+)ドリフト領域306内の不純物濃度は段階的であり、n^(+)ドリフト領域306とn^(-)ドリフト領域304の界面に近づくにつれて減少する。n^(+)ドリフト領域306の上部にp^(-)型ボディ領域308が形成されている。p^(-)型ボディ領域308の上部にソース領域310a(図3において垂直に延びる縞(しま)状部310aに対応する)が形成されている。各p^(-)型ボディ領域308の上部にp^(+)型の高濃度不純物領域312が形成されている。)
「[0032] Gate insulating layers 316 overlap source region potions 310a, and extend over channel regions 314 in p^(-)-type body regions 308 and over n^(+)-type drift regions 306 between adjacent p^(-)-type body regions 308. Gate insulating layer may be from oxide formed using conventional methods. Gate electrode 318 extends over gate insulating layer 316. Source electrodes 320 electrically contact highly-doped (p^(+)) regions 312, but do not directly contact n^(+)-type source region portions 310a. However, source electrodes 320 electrically contact n^(+)-type source region portions 310a through n^(+)-type source region portions 310b(FIG.3). A drain electrode 322 electrically contacts n^(+)-type drain region 302. The source and drain electrodes may be from metal, and are formed using conventional methods. Also, conventional ion implantation methods may be used to form body regions 308, highly-doped (p^(+)) regions 312, and source region portions 310a, 310b.」
(訳:[0032] ゲート絶縁層316がソース領域の310aの部分に重なっており、p^(-)型ボディ領域308内のチャネル領域314の上、及び、隣接するp^(-)型ボディ領域308の間にあるn^(+)型ドリフト領域306の上に延びている。ゲート絶縁層は従来の方法を用いて形成された酸化物でよい。ゲート絶縁層316の上にゲート電極318が延在している。ソース電極320は高濃度不純物(p^(+))領域312と電気的に接触するが、n^(+)型ソース領域の310aの部分とは直接接触しない。しかしながら、ソース電極320は、n^(+)型ソース領域の310bの部分(図3参照)を介して、n^(+)型ソース領域の310aの部分と電気的に接触する。ドレイン電極322はn^(+)型ドレイン領域302と電気的に接触する。ソース電極とドレイン電極は金属でよく、従来の方法を用いて形成する。また、ボディ領域308、高濃度不純物(p^(+))領域312及びソース領域の310a及び310bを形成するために、従来のイオン注入法を用いることができる。)
(b)引用文献6の図3及び図5には下記の事項が記載されていると認められる。
「n^(+)ドリフト領域306と、
p^(-)型ボディ領域308と、
前記p^(-)型ボディ領域308内にある、n^(+)型ソース領域(当審注.n^(+)型ソース領域の310aの部分と310bの部分を合わせたものをいう。以下において同じ。)と、
前記p^(-)型ボディ領域308と接触するp^(+)型高濃度不純物領域312と、
前記n^(+)型ソース領域と重なり、かつ、前記p^(+)型高濃度不純物領域312と重なるソース電極320と
を備える、パワーMOSFET。」
c 周知技術1
上記a及びbより、
「パワーMOSFETを、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、
前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトと
を備えたものとすること。」
は、引用文献5及び6にみられるように、本願の優先日の前に当該技術分野において周知の技術と認められる(以下、当該技術を「周知技術1」という)。
(ウ)引用文献8ないし10の記載事項並びに周知技術2
a 引用文献8の記載事項
原査定において引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特表2007-535800号公報(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0005】
パワーMOSFETを開発する取り組みには、基板材料としての炭化ケイ素(SiC)の研究も含まれてきている。炭化ケイ素は、シリコンに比べて、広いバンドギャップ、低い誘電率、高いブレークダウン電界強度、高い熱伝導率、および高い飽和電子ドリフト速度を有している。したがって、炭化ケイ素パワーデバイスは、シリコンパワーデバイスに対して相対的に高い温度、高い電力レベル、高い電圧レベル、および/または低いオン抵抗で動作するようにすることができる。それにもかかわらず、炭化ケイ素パワーデバイス内の電圧サポートドリフト領域が不十分な厚みである場合には、炭化ケイ素パワーデバイスの定格電圧は、依然として制限されたままであることもある。したがって、炭化ケイ素の好ましい電気特性にもかかわらず、その中においてより厚い電圧サポート領域を有する炭化ケイ素パワーデバイスの必要性が引き続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
高電圧炭化ケイ素パワーデバイスを形成する方法は、コストのかかるエピタキシャル成長炭化ケイ素層の代わりに、高純度炭化ケイ素ウエハ材料から得られる炭化ケイ素ドリフト層を利用している。この方法は、10kVよりも大きなブロッキング電圧をサポートすることができ、約100μmよりも厚い厚みを有するドリフト層を使用することができる少数キャリアパワーデバイスおよび/または多数キャリアパワーデバイスを形成することを含んでいる。これらの多数キャリアパワーデバイスおよび少数キャリアパワーデバイスは、MOSFET、JFET、PiNダイオード、IGBT、BJT、GTOおよび他のデバイスを含んでいる。とりわけ、少数キャリアデバイス中における高純度炭化ケイ素ウエハ材料の使用は、50ナノ秒を超える固有少数キャリア寿命を有するデバイスをもたらすことができる。本発明の一部の実施形態による炭化ケイ素パワーデバイスを形成する方法は、10kV以上のブロッキング電圧をサポートする炭化ケイ素パワーMOSFETを形成することを含んでいる。
・・・
【0017】
次に本発明の実施形態によるパワーMOSFETを形成する方法について、図4を参照してさらに十分に説明する。図4には、その中にn型4Hブール成長炭化ケイ素ドリフト領域202を有する垂直パワーMOSFET200が示されている。ドリフト領域202は、その中に約2×10^(15)cm^(-3)未満である正味n型ドーパント濃度を有することができる。ドリフト領域202の厚み「t」は、20kVまでのMOSFETについての約100μmから80kVまでのMOSFETについての約400μmの範囲とすることができる。」
b 引用文献9の記載事項
原査定において引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2011/056407号(以下「引用文献9」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0036] Power MOSFETs and IGBTs are in use today for applications requiring high voltage blocking such as voltage blocking of 5,000 volts or more. By way of example, silicon carbide MOSFETs are commercially available that are rated for current densities of 10A/cm^(2) or more that will block voltages of at least 10kV.・・・」
(訳:[0036] 現在、パワーMOSFET及びIGBTは、5000ボルト以上の高耐圧が要求される用途において用いられている。例えば、電流密度10A/cm^(2)以上で少なくとも10kVの耐圧を有する炭化シリコンMOSFETが商業的に利用可能である。・・・)
c 引用文献10の記載事項
原査定において引用され、本願の優先日の前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2011/008328号(以下「引用文献10」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0035] High power SiC MOSFETs are in wide use today for applications requiring high voltage blocking such as voltage blocking of 5,000 volts or more. By way of example, SiC MOSFETs are commercially available that are rated for current densities of 10A/cm^(2) that will block voltages of at least 10kV.・・・」
(訳:[0035] 現在、5000ボルト以上の高耐圧が要求される用途において、ハイパワーSiCMOSFETが広く用いられている。例えば、電流密度10A/cm^(2)以上で少なくとも10kVの耐圧を有するSiCMOSFETが商業的に利用可能である。・・・)
d 周知技術2
上記aないしcより、「パワーMOSFETとして、10kV以上の耐圧を有する炭化ケイ素MOSFETを用いること」は、引用文献8ないし10に見られるように、本願の優先日の前に当該技術分野において周知の技術と認められる(以下、当該技術を「周知技術2」という)。
ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)上記イ(ア)aの引用文献1の記載(段落【0042】及び【0054】)並びに引用文献1の【図3】及び【図4】の記載より、引用発明における「筐体12」、「上部ケース10」及び「下部ケース16」を合わせたもの(以下「ケース付き筐体」という。)は、「内部チャンバを有する筐体」であるといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「内部チャンバを有する筐体」を備える点において共通するといえる。
(イ)上記イ(ア)aの引用文献1の記載(段落【0042】、【0046】及び【0054】)並びに引用文献1の【図3】及び【図4】の記載より、引用発明における「パワーモジュール300」は、「ケース付き筐体」の内部チャンバ内に搭載されたものであるといえる。
そして、引用発明における「横32mm×縦52mmの絶縁基板334上にIGBT328とダイオード327をそれぞれ2つ並列接続した定格600V/400Aのモジュール」(以下「モジュール」という。)は、「パワーモジュール300」を構成するものであるから、引用発明における「モジュール」もまた、「ケース付き筐体」の内部チャンバ内に搭載されたものであるといえる。
また、引用発明における「モジュール」は、IGBT328とダイオード327をそれぞれ2つ並列接続したものであり、当該IGBT328は、バッテリから供給された直流電力を三相交流電力に変換し、変換された電力はモータジェネレータの電機子巻線に供給されるのであるから、「負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備え」る「スイッチモジュール」であるといえる。
さらに、引用発明における「モジュール」は、「横32mm×縦52mmの絶縁基板334上」に形成された「定格600V/400Aのモジュール」であり、16.64cm^(2)(横32mm×縦52mm)の面積で400Aの電流を扱う(cm^(2)当たりに換算すると、約24Aの電流を扱う)ものであるから、「cm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポート」するものであるといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートする、複数のスイッチモジュール」を備える点において共通し、下記相違点1において相違するといえる。
(ウ)引用発明における「電力変換装置200」は「電力モジュール」であるといえる。
(エ)以上から、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違すると認める。
a 一致点
「内部チャンバを有する筐体と、
前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートする、複数のスイッチモジュールと
を備える、
電力モジュール。」
b 相違点
・相違点1
本件補正発明では、「複数のスイッチモジュール」のうちの少なくとも1つが10kVより大きな電圧を扱うのに対し、引用発明は、「モジュール」のうちの少なくとも1つが10kVより大きな電圧を扱うとは特定しない点。
・相違点2
本件補正発明では、「複数のトランジスタ」のうちの少なくとも1つが、第1の導電型を有するドリフト層と、前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトとを備えるのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。
エ 相違点についての検討
a 相違点1について
上記イ(ア)aのとおり、引用文献1の段落【0017】には、引用発明を電車の電力変換装置や産業用電力変換装置に対して適用することが記載されている。そして、電車の電力変換装置や産業用電力変換装置において取り扱う電圧が、通常、ハイブリッド車などに用いられる電力変換装置が取り扱う電圧よりも高いことは、当業者にとっては明らかであるといえる。そうすると、引用発明において、「モジュール」が扱うことのできる電圧を高めることについては、十分な動機付けがあったといえる。
そして、上記イ(ア)aのとおり、引用文献1の段落【0031】には、スイッチング用パワー半導体素子としてMOSFETを用いることが記載されており、さらに、上記イ(ウ)dのとおり、「パワーMOSFETとして、10kV以上の耐圧を有する炭化ケイ素MOSFETを用いること」(周知技術2)は、本願の優先日前に周知の技術であったから、引用発明において、「モジュール」が扱うことのできる電圧を高めるために、周知技術2を採用することは、当業者であれば普通になし得たことである。
また、「モジュール」が扱う電圧が「10kV以上」であるか「10kVよりも大きい」かによって作用効果に格別の差違があるとはいえないから、「モジュール」が扱う電圧が「10kVちょうど」であるものを除外することに、臨界的意義があるとは認められない。
以上より、引用発明において、「モジュール」が扱うことができる電圧を高めるために、周知技術2を採用し、MOSFETの耐圧が10kVちょうどであるものを除外することによって、「モジュール」が扱うことができる電圧を10kVよりも大きいものとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
b 相違点2について
上記イ(ア)aのとおり、引用文献1の段落【0031】には、スイッチング用パワー半導体素子としてMOSFETを用いることが記載されている。
そして、上記イ(イ)cのとおり、
「パワーMOSFETを、
第1の導電型を有するドリフト層と、
前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、
前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、
前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、
前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトと
を備えたものとすること。」(周知技術1)
は、本願の優先日前に周知の技術であった。
したがって、引用発明においてMOSFETを用いる際に、発明を具体化するために上記周知技術1を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
オ 本件補正発明の作用効果について
相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明並びに周知技術1及び2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
カ 請求人の主張について
請求人は審判請求書及び上申書において、「引用文献8に開示の方法が本願発明のスイッチモジュールに用いられると、当該スイッチモジュールは意図するように動作することができないであろう。」との主張をしている。
しかしながら、本件補正発明では、スイッチモジュールの用途を「負荷への電力をスイッチングすることを容易にする」としか特定しておらず、引用文献8に記載された炭化ケイ素のパワーMOSFETが「負荷への電力をスイッチングすることを容易にする」ことが可能であることは明らかであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
なお、上記イ(ウ)aの引用文献8の記載(段落【0005】)より、炭化ケイ素のパワーMOSFETは、シリコンのパワーMOSFETに対して相対的に高い温度、高い電力レベル、高い電圧レベル、および/または低いオン抵抗で動作するようにすることができるものと認められるから、引用発明に対して周知技術2を適用することによって引用発明が意図どおりに動作しなくなるとはいえない。したがって、引用発明に対して周知技術2を適用することを阻害する要因があったということもできない。
キ 特許法第17条の2第6項についてのまとめ
以上から、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年6月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし38に係る発明は、平成27年7月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし38に記載された事項により特定されるものであり、その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。(再掲)
「【請求項1】
内部チャンバを有する筐体と、
前記内部チャンバ内に搭載され、負荷への電力をスイッチングすることを容易にするために相互に接続された複数のトランジスタおよび複数のダイオードを備える複数のスイッチモジュールであって、複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つがcm^(2)当たり少なくとも10アンペアの電流密度をサポートし、少なくとも10kVの電圧を扱う、複数のスイッチモジュールと
を備える、電力モジュール。」

2 引用文献の記載事項及び引用発明
引用文献1の記載事項は上記第2の3(4)イ(ア)aで摘記したとおりであり、引用発明は上記第2の3(4)イ(ア)bで認定したとおりのものである。
また、引用文献5及び6の記載事項は上記第2の3(4)イ(イ)a及びbで摘記したとおりであり、周知技術1は上記第2の3(4)イ(イ)cで認定したとおりのものである。
さらに、引用文献8ないし10の記載事項は第2の3(4)イ(ウ)aないしcで摘記したとおりであり、周知技術2は第2の3(4)イ(ウ)dで認定したとおりのものである。

3 対比・判断
本件補正後の請求項1に係る発明(すなわち、本件補正発明)は、本件補正前の請求項1に係る発明(すなわち、本願発明)から、「複数のスイッチモジュールのうちの少なくとも1つ」が10kVちょうどの電圧を扱うものを除外するとともに、「前記複数のトランジスタのうちの少なくとも1つが、第1の導電型を有するドリフト層と、前記第1の導電型とは反対である第2の導電型を有するウェル領域と、前記ウェル領域内にあり、前記第1の導電型を有するソース領域と、前記ウェル領域と接触し前記第2の導電型を有するコンタクト領域と、前記ソース領域と重なり、かつ、前記コンタクト領域と重なるソースオーミックコンタクトとを備える」との事項を加入することで、本件補正前の請求項1に係る発明をより限定したものである。
したがって、本願発明は、本件補正発明から上記の各限定をなくしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本件補正発明が、上記第2の3(4)キのとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
 
審理終結日 2017-04-11 
結審通知日 2017-04-12 
審決日 2017-04-25 
出願番号 特願2014-529750(P2014-529750)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 棚田 一也  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 須藤 竜也
小田 浩
発明の名称 改善したレイアウトを有するトランジスタを備える高電流密度電力モジュール  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 大牧 綾子  
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