現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1332055
審判番号 不服2016-15742  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2017-09-07 
事件の表示 特願2012-105363「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-235873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年 5月 2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 2月 4日 審査請求
平成27年11月20日 拒絶理由通知
平成28年 1月28日 意見書・手続補正
平成28年 7日15日 拒絶査定
平成28年10月21日 審判請求・手続補正
平成29年 1月20日 上申書

第2 審判請求と同時にした手続補正の適否
1 補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,特許請求の範囲の請求項2及び請求項3の記載は次のとおりである。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記チャネル層は、GaNから形成され、
前記スペーサ層は、Al_(x)Ga_(1-x)Nから形成され、
前記電子供給層は、Al_(y)Ga_(1-y)Nから形成され、
組成比xと組成比yは、y<xの関係を満たし、
前記p型キャップ層の母体は、p型Al_(z)Ga_(1-z)N(0≦z≦1)から形成されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記チャネル層は、GaNから形成され、
前記スペーサ層は、Al_(d)In_(1-d)Nから形成され、
前記電子供給層は、Al_(e)In_(1-e)Nから形成され、
組成比dと組成比eは、e<dの関係を満たし、
前記p型キャップ層の母体は、p型Al_(c)In_(1-c)N(0≦c≦1)から形成されている半導体装置。

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の,特許請求の範囲の請求項2及び請求項3の記載は次のとおりである。(当審注。補正個所に下線を付した。以下,同じ。)
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記チャネル層は、GaNから形成され、
前記スペーサ層は、Al_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1)から形成され、
前記電子供給層は、Al_(y)Ga_(1-y)N(0<y<1)から形成され、
組成比xと組成比yは、y<xの関係を満たし、
前記p型キャップ層の母体は、p型Al_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1)から形成されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記チャネル層は、GaNから形成され、
前記スペーサ層は、Al_(d)In_(1-d)N(0<d<1)から形成され、
前記電子供給層は、Al_(e)In_(1-e)N(0<e<1)から形成され、
組成比dと組成比eは、e<dの関係を満たし、
前記p型キャップ層の母体は、p型Al_(c)In_(1-c)N(0<c<1)から形成されている半導体装置。

2 補正の適否
請求項2に対する補正(以下、「補正事項1」という)は、補正前の「スペーサ層は、Al_(x)Ga_(1-x)N」,「電子供給層は、Al_(y)Ga_(1-y)N」,「p型キャップ層の母体は、p型Al_(z)Ga_(1-z)N(0≦z≦1)」を、各々補正後の「スペーサ層は、Al_(x)Ga_(1-x)N(0<x<1)」、「電子供給層は、Al_(y)Ga_(1-y)N(0<y<1)」,「p型キャップ層の母体は、p型Al_(z)Ga_(1-z)N(0<z<1)」とする補正であり、補正前に含んでいたx=0,1;y=0,1;z=0,1の場合を除く補正と認められる。
補正事項1は、各々、「スペーサ層」、「電子供給層」、「p型キャップ層の母体」の組成を限定するものであり,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであって,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
また,補正事項1は,補正前の請求項2に記載された発明と補正後に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり,本件補正前の請求項2に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。さらに、同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件も満たす。
請求項3に対する補正(以下、「補正事項2」という。)は、補正前の「スペーサ層は、Al_(d)In_(1-d)N」、「電子供給層は、Al_(e)In_(1-e)N」、「p型キャップ層の母体は、p型Al_(c)In_(1-c)N(0≦c≦1)を、各々補正後の「スペーサ層は、Al_(d)In_(1-d)N(0<d<1)」、「電子供給層は、Al_(e)In_(1-e)N(0<e<1)」、「p型キャップ層の母体は、p型Al_(c)In_(1-c)N(0<c<1)」とする補正であり、補正前に含んでいたd=0,1;e=0,1;c=0,1の場合を除く補正と認められる。
補正事項2は、各々、「スペーサ層」、「電子供給層」、「p型キャップ層の母体」の組成を限定するものであり,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであって,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
また,補正事項2は,補正前の請求項3に記載された発明と補正後に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり,本件補正前の請求項3に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。さらに、同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件も満たす。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3乃至6項の規定に適合するから適法なものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
電界効果トランジスタを含む半導体装置であって、
前記電界効果トランジスタは、
(a)第1窒化物半導体層からなるチャネル層と、
(b)前記チャネル層上に形成された第2窒化物半導体層からなるスペーサ層と、
(c)前記スペーサ層上に形成された第3窒化物半導体層からなる電子供給層と、
(d)前記電子供給層上に形成されたソース電極と、
(e)前記ソース電極から離間して、前記電子供給層上に形成されたドレイン電極と、
(f)前記ソース電極と前記ドレイン電極で挟まれた前記電子供給層上に形成されたp型キャップ層と、
(g)前記p型キャップ層上に形成されたゲート電極と、を有し、
前記スペーサ層のバンドギャップは、前記電子供給層のバンドギャップよりも大きく、
前記スペーサ層と前記電子供給層と前記p型キャップ層の母体とは、同一の元素群から構成される一方、前記スペーサ層と前記電子供給層と前記p型キャップ層の母体とにおいて、互いに前記元素群の組成比が異なる半導体装置。」

(2)引用文献について
ア 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開2010/118092号(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(当審注。下線は当審において付加した。以下,同じ。訳は特表2012-523700号公報による。)

(ア)「FIELD OF THE INVENTION
[0001] The present invention relates to the field of enhancement mode gallium nitride (GaN) transistors. More particularly, the invention relates to an enhancement mode GaN transistor with a diffusion barrier.」

(訳:
【技術分野】
【0001】 本発明は、エンハンスメントモード窒化ガリウム(GaN)トランジスタの分野に関する。より具体的には、本発明は、拡散バリアを備えたエンハンスメントモードGaNトランジスタに関する。)

(イ)「 CLAIMS
1. An enhancement-mode III Nitride transistor comprising:
a substrate,
transition layers,
a buffer layer comprised of a III Nitride material,
a barrier layer comprised of a III Nitride material,
drain and source contacts,
a gate containing acceptor type dopant elements, and
a diffusion barrier comprised of a III Nitride material between the gate and the buffer layer.
2. (中略)
3. The transistor of claim 1, wherein the barrier layer is comprised of In_( x )AI _(y) Ga _(1-x-y) N of wider band gap than the buffer layer, where x + y < 1.
4. (中略)
5. The transistor of claim 3 , wherein the diffusion barrier is comprised of In _(x) Al _(y) Ga_(1-x-y) N with a higher Al fraction than the barrier layer, where x + y < 1.
6. The transistor of claim 5, wherein the gate is an In _(x) AI _(y) Ga _(1-x-y) N layer doped with an acceptor type element, where x + y < 1.」

(訳:特許請求の範囲
【請求項1】
基板と、
遷移層と、
III族窒化物材料を有するバッファ層と、
III族窒化物材料を有するバリア層と、
ドレインコンタクト及びソースコンタクトと、
アクセプタ型ドーパント元素を含有するゲートと、
前記ゲートと前記バッファ層との間の、III族窒化物材料を有する拡散バリアと、
を有するエンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタ。
【請求項2】(中略)
【請求項3】
前記バリア層は、x+y≦1として、前記バッファ層より広いバンドギャップを有するIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有する、請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項4】(中略)
【請求項5】
前記拡散バリアは、x+y≦1として、前記バリア層より高いAlの割合を有するIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有する、請求項3に記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ゲート層は、x+y≦1として、アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層である、請求項5に記載のトランジスタ。 )

(ウ)「[0025] Referring to FIG. 2, a first embodiment is now described with reference to the formation of an enhancement mode GaN transistor. FIG. 2 illustrates a cross-sectional view of the device 200. Device 200 includes substrate 21 composed of Si, SiC, sapphire, or other material, transition layers 22 typically composed of AlN and AlGaN from about 0.1 to about 1.0 μm in thickness, buffer layer 23 typically composed of GaN from about 0.5 to about 10 μm in thickness, channel layer 20 typically composed of GaN or InGaN with a thickness from about 0.01 to about 0.3 μm, barrier layer 27 typically composed of AlGaN where the Al fraction is about 0.1 to about 0.5 with a thickness between about 0.005 and about 0.03 μm, gate structure 26 typically composed of p-type GaN with a refractory metal contact such as Ta, Ti, TiN, W, or WSi _(2) . The p-type GaN and refractory metal contact are each between about 0.01 and about 1.0 μm in thickness. Ohmic contact metals 24, 25 are composed of Ti and Al with a capping metal such as Ni and Au or Ti and TiN. Diffusion barrier 28 is typically composed of AlGaN, where the Al fraction is between about 0.2 and about 1 with a thickness between about 0.001 and about 0.003 μm. The Al fraction is the content of Al such that Al fraction plus Ga fraction equals 1. Buffer layer 23, barrier layer 27, and diffusion barrier 28 are made of a III Nitride material. A III Nitride material can be composed of In _(x) AI _(y) Ga _(1-x-y) N where x + y < 1.」

(訳:
「[0025] 図2を参照して、エンハンスメントモードGaNトランジスタの形成に関して第1実施形態を説明する。図2は、デバイス200の断面図を示している。デバイス200は、Si、SiC、サファイア又はその他の材料からなる基板21と、典型的に約0.1μmから約1.0μmの厚さのAlN及びAlGaNからなる複数の遷移層22と、典型的に約0.5μmから約10μmの厚さのGaNからなるバッファ層23と、典型的に約0.01μmから約0.3μmの厚さを有するGaN又はInGaNからなるチャネル層20と、典型的に約0.005μmと約0.03μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.1から約0.5であるAlGaNからなるバリア層27と、典型的に例えばTa、Ti、TiN、W又はWSi_(2)などの高融点金属コンタクトを備えたp型GaNからなるゲート構造26と、を含んでいる。このp型GaN及び高融点金属コンタクトは各々、厚さにおいて約0.01μmと約1.0μmとの間である。オーミックコンタクト金属24、25は、例えばNi及びAuなどのキャップ金属を備えたTi及びAl、又はTi及びTiNからなる。拡散バリア28は典型的に、約0.001μmと約0.003μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.2と約1との間であるAlGaNからなる。Alの割合とは、Alの割合にGaの割合を足し合わせたものが1に等しくなるようにしたAlの含有量である。バッファ層23、バリア層27及び拡散バリア28は、III族の窒化物材料で形成される。III族の窒化物材料は、x+y≦1として、In_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nからなり得る。」)

(エ)「[0026] In accordance with the above-described embodiment, a double layer of different Al contents is formed. The structure in FIG. 2 has higher Al content close to the channel layer, and lower Al content near the gate layer. A comparison of Al content between the channel layer and gate layer in a conventional GaN transistor and the structure of FIG. 2 is shown in FIG. 3. In the structure shown in FIG. 2, the diffusion barrier layer 28 above the channel layer is high in Al, while the barrier layer 27 is of lower Al content. Although FIG. 3 shows 2 distinct layers of constant Al content, the combination of layer 28 and 27 into a graded Al content layer can also be employed, such that the Al content is graded from high near the channellayer to low near the gate structure. This grading can be done in many fashions, such as linear, multiple steps down, alternating between high and low Al content while gradually decreasingthe average Al content, or alternating between high and low Al content while changing the thickness of the high and low Al layers from thicker high Al near the channel to thinner high Alnear the gate. The high Al content material blocks diffusion of Mg and confines it to regions above the channel layer. The high Al content layer also leads to high electron mobility. In thestructure shown in FIG. 2, however, diffusion still proceeds into the top barrier layer. 」

(訳:
[0026]上述の実施形態によれば、異なるAl含有量の二重層が形成される。図2の構造は、チャネル層の近くで高めのAl含有量を有し、ゲート層の近くで低めのAl含有量を有する。従来のGaNトランジスタと図2の構造とにおける、チャネル層とゲート層との間のAl含有量の比較を図3に示す。図2に示した構造において、チャネル層上の拡散バリア層28はAlにおいて高く、バリア層27はより低いAl含有量を有する。図3は、一定のAl含有量の2つの別個の層を示しているが、Al含有量がチャネル層付近での高からゲート構造付近の低まで傾斜されるように、傾斜したAl含有量の1つの層へと層28及び27が結合されたものを採用することも可能である。この傾斜付け(グレーディング)は、様々に行われることができ、例えば、直線的、多段降下、平均Al含有量を次第に低下させながら高と低と間でAl含有量を交番させること、又は、チャネル付近での、より厚い高Al層から、ゲート付近での、より薄い高Al層へと、高Al層及び低Al層の厚さを変化させながら、高と低との間でAl含有量を交番させることなどで行われる。高Al含有量の層は、Mgの拡散を阻止し、それをチャネル層上の領域に閉じ込める。高Al含有量の層はまた、高い電子移動度をもたらす。しかしながら、図2に示した構造においては、依然として拡散が頂部のバリア層内まで進む。)

イ 引用発明
(ア)前記ア(イ)請求項5に記載された「拡散バリア」は、「前記バリア層より高いAlの割を有するInAlGaN」であり、また、前記ア(ウ)に「典型的に約0.005μmと約0.03μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.1から約0.5であるAlGaNからなるバリア層27」との記載、および、「拡散バリア28は典型的に、約0.001μmと約0.003μmとの間の厚さを有した、Alの割合が約0.2と約1との間であるAlGaNからなる」との記載から、「拡散バリア」は、「バリア層」よりも薄い層であると認められる。
そうすると、拡散バリアはバリア層より高いAlの割合を有し、前記拡散バリアは前記バリア層より薄いと認められる。
(イ)図2の記載から、ドレインコンタクトは、ソースコンタクトと離間してバリア層上に形成されていると認められる。
(ウ)前記ア(イ)請求項6に記載された「ゲート層」は、「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層である」が、前記ア(ウ)に対応する記載として「典型的に例えばTa、Ti、TiN、W又はWSi_(2)などの高融点金属コンタクトを備えたp型GaNからなるゲート構造26」とされているように、 エンハンスモードIII族窒化物トランジスタのゲートとして構成する際には、「p型GaN層」とその上に形成される「Ta、Ti、TiN、W又はWSi_(2)などの高融点金属コンタクト」との2層構造とするものであると認められるから、前記ア(イ)請求項6に記載されたゲート層は、「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層」に対応し、当該「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層」と「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層」上に形成される「高融点金属コンタクト」を有する「ゲート構造」の一部であると認められる。
また、この「ゲート構造」は図2の記載からソースコンタクトとドレインコンタクトに挟まれた「In_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有するバリア層」上に位置すると認められる。
してみれば、前記ア(ア)ないし(エ)及び図2の記載から、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「エンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタであって、
当該トランジスタは、GaNからなるチャネル層と、
チャネル層上に形成されたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有する拡散バリア層と、
拡散バリア層上に形成されたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有するバリア層と、
バリア層上に形成されたソースコンタクトと、
ソースコンタクトと離間してバリア層上に形成されたドレインコンタクトと、ソースコンタクトとドレインコンタクトで挟まれたバリア層上に形成されたアクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層と高融点金属コンタクトを含むゲート構造とを、有し、
拡散バリア層はバリア層より高いAlの割合を有し、前記バリア層より薄いエンハンスメントモードIII族窒化物トランジスタ。」

(3)本願発明と引用発明の対比
ア 引用発明の「エンハンスモードIII族窒化物トランジスタ」は、本願発明の「電界効果トランジスタ」に相当する。
イ 引用発明の「GaNからなるチャネル層」は、本願発明の「第1窒化物半導体層からなるチャネル層」に相当する。
ウ 引用発明の「In_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有する拡散バリア層」は、チャネル層上に形成され,バリア層と比較して相対的にGaに対するAl組成比が高く大きなバンドギャップを有し、かつバリア層よりも薄い層であることから、前記イを考慮すると、本願発明の「チャネル層上に形成された第2窒化物半導体層からなるスペーサ層」に相当する。
エ 引用発明の「In_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを有するバリア層」は、拡散バリア層上に形成され、拡散バリア層に比較して相対的に厚い層であり、GaNからなるチャネル層に対しては大きなバンドギャップエネルギーを有するから、キャリアとなる2DEG電子ガスの供給源かつキャリアに対するバリア層としての機能を有するので、前記ウを考慮すると本願発明の「スペーサ層上に形成された第3窒化物半導体層からなる電子供給層」に相当する。
オ 引用発明の「ソースコンタクト」は、バリア層上に形成されているので、前記エを考慮すると本願発明の「電子供給層上に形成されたソース電極」に相当する。
カ 引用発明の「ドレインコンタクト」は、ソースコンタクトと離間してバリア層上に形成されているので、前記エ、オを考慮すると、本願発明の「ソース電極から離間して、電子供給層上に形成されたドレイン電極」に相当する。
キ 引用発明の「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層」は、「アクセプタ型元素をドープされた」という記載が、ドープされた半導体層がp型であることを意味し、同層がソースコンタクトとドレインコンタクトで挟まれたバリア層上に形成されていることから、前記ウないしカを考慮すると、本願発明の「ソース電極と前記ドレイン電極で挟まれた前記電子供給層上に形成されたp型キャップ層」に相当する。
また、「高融点金属コンタクト」は、「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N層」上に形成されるので、本願発明の「p型キャップ層上に形成されたゲート電極」に相当する。
ク 引用発明の「拡散バリア層はバリア層より高いAlの割合を有し」という「拡散バリア層」と「バリア層」のAl組成比についての記載は、一般にGaとAlを含む窒化物半導体において、Gaに対するAl組成比が高くなるとバンドギャップが大きくなるという技術常識を参酌し、前記ウ、エを考慮すると、本願発明の「スペーサ層のバンドギャップは、電子供給層のバンドギャップよりも大きく」という条件を満たす。
ケ 引用発明の「拡散バリア層」、「バリア層」、「アクセプタ型元素をドープされたIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)N」は、いずれもIn_(x)Al_(y)Ga_(1-x-y)Nを組成元素とするから、前記ウ、エ、キを考慮すると、本願発明の「スペーサ層と前記電子供給層と前記p型キャップ層の母体とは、同一の元素群から構成される」という条件を満たす。

してみると、本願発明と引用発明とは、下記コの点で一致するが、下記サの点で相違すると認められる。

コ 一致点
「電界効果トランジスタを含む半導体装置であって、
前記電界効果トランジスタは、
(a)第1窒化物半導体層からなるチャネル層と、
(b)前記チャネル層上に形成された第2窒化物半導体層からなるスペーサ層と、
(c)前記スペーサ層上に形成された第3窒化物半導体層からなる電子供給層と、
(d)前記電子供給層上に形成されたソース電極と、
(e)前記ソース電極から離間して、前記電子供給層上に形成されたドレイン電極と、
(f)前記ソース電極と前記ドレイン電極で挟まれた前記電子供給層上に形成されたp型キャップ層と、
(g)前記p型キャップ層上に形成されたゲート電極と、を有し、
前記スペーサ層のバンドギャップは、前記電子供給層のバンドギャップよりも大きく、
前記スペーサ層と前記電子供給層と前記p型キャップ層の母体とは、同一の元素群から構成される一方、前記スペーサ層と前記電子供給層と前記p型キャップ層の母体とにおいて、互いに前記元素群の組成比が異なる半導体装置。」

サ 相違点
本願発明では、「スペーサ層と電子供給層とp型キャップ層の母体とにおいて、互いに前記元素群の組成比が異なる」のに対して、引用発明では、組成比が異なる点について明記されていない点。

(4)相違点についての検討
HEMTを構成する「スペーサ層」、「電子供給層」、「p型キャップ層」において、母体となる元素群の組成比はHEMTの電気的特性を最適化するために個別に調整可能なパラメータであるから、所望のHEMTの電気的特性を得るために、互いに元素群の組成比が異なるように設定することは、当業者が容易に想到し得る技術的事項である。

(5)まとめ
本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 結言
したがって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-10 
結審通知日 2017-07-11 
審決日 2017-07-25 
出願番号 特願2012-105363(P2012-105363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 棚田 一也  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
大嶋 洋一
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 筒井 大和  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ