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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1332170 |
審判番号 | 不服2016-13086 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-31 |
確定日 | 2017-09-26 |
事件の表示 | 特願2013-551532「サーバ、クライアント端末、システム、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/099472、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月19日(パリ条約による優先権主張 平成23年12月27日 日本国)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下の通りである。 平成27年11月11日付け:拒絶理由の通知 平成28年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出 平成28年 6月28日付け:拒絶査定 平成28年 8月31日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成28年 9月30日 :前置報告 第2 原査定の概要 原査定(平成28年6月28日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。 本願請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2006-260338号公報 2.特開平4-70729号公報 3.特開2011-238057号公報 第3 審判請求時の補正について 平成28年8月31日に審判請求書の提出とともになされた手続補正書(以下、「審判請求時の補正」という。)により補正された事項は以下の通りである。 (補正事項1) 平成28年1月7日付け手続補正書により補正された請求項1、9、12、15、16、17、18、19に記載されていた「シフト情報」を審判請求時の補正により補正された請求項1、9、12、15、16、17、18、19において『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報』に変更する補正事項。 (補正事項2) 平成28年1月7日付け手続補正書により補正された請求項2、10に記載されていた「前記シフト情報は、昼夜、季節、天候、または工事工程のシフト情報である、」を審判請求時の補正により補正された請求項2、10において『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の工事工程を指定する情報である、』に変更する補正事項。 (補正事項3) 平成28年1月7日付け手続補正書により補正された請求項8、11に記載されていた「前記季節のシフト情報は、開花ダイヤル情報を含む、」を審判請求時の補正により補正された請求項3、11において『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の開花状態または紅葉状態を指定する情報である、』に変更する補正事項。 以下、上記補正事項1?3について、それぞれ、目的要件、新規事項の有無、独立特許要件について検討する。 1.補正事項1について(目的要件及び新規事項の有無) 補正事項1は、平成28年1月7日付け手続補正書における「シフト情報」の内容を審判請求時の補正により『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報』と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号で規定するところの特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該補正事項1は、本願の明細書の段落【0035】?【0037】に記載されているから、当該補正事項1は、特許法第17条の2第3項で規定するところの新規事項を追加するものではない。 2.補正事項2について(目的要件及び新規事項の有無) 補正事項2は、平成28年1月7日付け手続補正書における「前記シフト情報は、昼夜、季節、天候、または工事工程のシフト情報である、」を審判請求時の補正により『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の工事工程を指定する情報である、』と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号で規定するところの特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該補正事項2は、本願の明細書の段落【0035】?段落【0037】に記載されているから、当該補正事項1は、特許法第17条の2第3項で規定するところの新規事項を追加するものではない。 3.補正事項3について(目的要件及び新規事項の有無) 補正事項3は、平成28年1月7日付け手続補正書における「前記季節のシフト情報は、開花ダイヤル情報を含む、」を審判請求時の補正により『前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の開花状態または紅葉状態を指定する情報である、』と補正することにより、平成28年1月7日付け手続補正書における「開花ダイヤル情報」の意図する内容を本願の明細書の段落【0087】及び段落【0088】の内容に沿ったものとするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号で規定するところの明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また、当該補正事項3は、本願の明細書の段落【0087】?段落【0088】に実質的に記載されていると認められるから、当該補正事項3は、特許法第17条の2第3項で規定するところの新規事項を追加するものではない。 4.独立特許要件について 「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、審判請求時の補正により補正された請求項1?19に係る発明は、特許法第17条の2第6項で規定するところの独立特許要件を満たすものである。 5.その他 補正事項1?3は、特許法第17条の2第4項で規定するところの要件に違反していないことは明らかである。 6.まとめ 上記1.?5.で検討したように、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項で規定するところの要件に違反しているものとはいえない。 第4 本願発明 本願請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明19」という。)は、審判請求時の補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される以下の通りのものである。 「【請求項1】 クライアント端末から撮像対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報を受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記撮像対象物に対するユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する検索部と、 前記検索部により検索した画像を前記クライアント端末に送信する送信部と、 を備え、 前記ユーザ指定の状況は、前記クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された前記撮像対象物の経過状態を指定する情報を含む、サーバ。 【請求項2】 前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の工事工程を指定する情報である、請求項1に記載のサーバ。 【請求項3】 前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の開花状態または紅葉状態を指定する情報である、請求項1に記載のサーバ。 【請求項4】 ユーザ指定の状況に関する前記情報は、前記クライアント端末の現在位置情報を含み、 前記検索部は、前記クライアント端末の現在位置情報と、前記撮像対象物の位置情報をマッチングすることにより、前記ユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する、 請求項1?3のいずれか1項に記載のサーバ。 【請求項5】 ユーザ指定の状況に関する前記情報は、前記クライアント端末による撮影時の方位、高度、仰角、または倍率の情報を含み、 前記検索部は、前記現在位置情報に加え、前記クライアント端末による撮影時の方位、高度、仰角、または倍率の情報に基づき前記ユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する、請求項4に記載のサーバ。 【請求項6】 ユーザ指定の状況に関する前記情報は、前記クライアント端末により撮像された前記撮像対象物の撮像画像を含み、 前記検索部は、前記撮像画像との画像の一致度または類似度マッチングにより、前記ユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する、請求項1?5のいずれか1項に記載のサーバ。 【請求項7】 前記一致度または類似度マッチングは、画像の輪郭情報を用いて行われる、請求項6に記載のサーバ。 【請求項8】 ユーザ指定の状況に関する前記情報は、前記クライアント端末の現在位置情報、および前記クライアント端末により撮像された前記撮像対象物の撮像画像を含み、 前記検索部は、前記クライアント端末の現在位置情報と前記撮像対象物の位置情報とのマッチング、および前記撮像画像と前記対象物の画像の一致度または類似度マッチングに基づき、前記ユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する、請求項1?3のいずれか1項に記載のサーバ。 【請求項9】 対象物の撮像画像を取得する撮像部と、 撮像対象物の経過状態を指定する情報の入力を受け付けるタイムシフト操作入力部と、 前記撮像部により取得した撮像対象物の画像と、前記タイムシフト操作入力部により入力された経過状態を指定する情報を、対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報に含めてサーバに送信する送信部と、 前記サーバから前記経過状態を指定する情報に適合する対象物の画像を受信する受信部と、 前記受信部により受信した画像を表示するよう制御する表示制御部と、 を備えるクライアント端末。 【請求項10】 前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の工事工程を指定する情報である、請求項9に記載のクライアント端末。 【請求項11】 前記撮像対象物の経過状態を指定する情報は、前記撮像対象物の開花状態または紅葉状態を指定する情報である、請求項10に記載のクライアント端末。 【請求項12】 前記表示制御部は、撮像対象物の画像と共に、前記撮像対象物の経過状態を指定する情報の入力を受け付ける操作部の画像を表示する、請求項9?11のいずれか1項に記載のクライアント端末。 【請求項13】 前記クライアント端末は、 外部からの取得信号に基づいて前記クライアント端末の位置情報を取得する取得部をさらに備え、 前記送信部は、前記取得部により取得した前記位置情報を、前記ユーザ指定の状況に関する情報に含めて送信する、請求項9?12のいずれか1項に記載のクライアント端末。 【請求項14】 前記表示制御部は、前記撮像画像から人物画像を抽出し、前記抽出した人物画像を、前記受信した画像に合成して表示する、請求項9?13のいずれか1項に記載のクライアント端末。 【請求項15】 前記表示制御部は、前記タイムシフト操作入力部から予め前記撮像対象物の経過状態を指定する情報が入力されている際、シャッターボタンの押下に応じて、前記受信部により受信したユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を表示するよう制御する、請求項9?14のいずれか1項に記載のクライアント端末。 【請求項16】 対象物の画像、および前記対象物の状況を示すメタ情報を対応付けて記憶する画像情報記憶部と、 ユーザにより指定された前記対象物に対する状況と適合する状況を示すメタ情報を、前記画像情報記憶部から検索し、検索されたメタ情報に対応する前記対象物の画像を検索結果とする検索部と、 前記検索部により検索した前記対象物の画像に基づいて表示を制御する表示制御部と、 を備え、 前記ユーザにより指定された前記対象物に対する状況は、クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された撮像対象物の経過状態を指定する情報を含む、システム。 【請求項17】 クライアント端末から対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報を受信する処理と、 前記受信する処理により受信した前記対象物に対するユーザ指定の状況に適合する前記対象物の画像を検索する処理と、 前記検索する処理により検索した画像を前記クライアント端末に送信する処理と、 をコンピュータに実行させるプログラムが記録され、 前記ユーザ指定の状況は、前記クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された撮像対象物の経過状態を指定する情報を含む、記録媒体。 【請求項18】 撮像部により取得した撮像対象物の画像と、撮像対象物の状況を指定するユーザによるシフト情報の入力を受け付けるタイムシフト操作入力部により入力された前記撮像対象物の経過状態を指定する情報を、対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報に含めてサーバに送信する処理と、 前記サーバから前記ユーザ指定の状況に適合する前記対象物の画像を受信する処理と、 前記受信した画像を表示するよう制御する処理と、 をコンピュータに実行させるプログラムが記録された記録媒体。 【請求項19】 対象物の画像、および前記対象物の状況を示すメタ情報を対応付けて画像情報記憶部に記憶する処理と、 ユーザにより指定された前記対象物に対する状況と適合する状況を示すメタ情報を、前記画像情報記憶部から検索し、検索されたメタ情報に対応する前記対象物の画像を検索結果とする処理と、 前記検索する処理により検索した前記対象物の画像に基づいて表示を制御する処理と、 をコンピュータに実行させるプログラムが記録され、 前記ユーザにより指定された前記対象物に対する状況は、クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された撮像対象物の経過状態を指定する情報シフト情報を含む、記録媒体。 」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-260338号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。) (ア)「図1に示すように、この例のタイムシフト画像配信システムは、画像サーバ1と、複数のクライアント装置2とが、例えばインターネット、携帯電話網、などを含む通信ネットワーク3を通じて接続されて構成されている。クライアント装置2は、タイムシフト画像要求装置の実施形態である。」(【0016】) (イ)「画像サーバ1は、画像データベース11を備えている。画像データベース11には、撮像画像データが、撮像された時(年、月、日、時、分、秒)、撮像された場所(地理的位置や高度)、撮像方向、撮像時の傾き(撮像方向の水平面に対する上下方向の角度(以下、カメラアングルという))、等のメタ情報と対応付けられて格納されている。メタ情報としては、これらの情報の他、対象となる撮像画像(対象画像)を特定するためのその他の情報、例えば特定の建造物の名前「東京タワー」、「雷門」、「法隆寺」などが、それらの建造物を画像内容に含む画像に対応して登録されていてもよい。」(【0017】) (ウ)「クライアント装置2は、この実施形態では、撮像機能と、撮像画像表示機能と、ネットワーク通信機能を備えるもので構成される。クライアント装置2の1つの形態は、いわゆるカメラ付き携帯電話端末である。また、クライアント装置2の他の1つの形態は、無線通信機能付きの撮像装置(デジタルカメラやビデオカメラ)である。また、クライアント装置のさらに他の形態は、カメラ付きの携帯情報機器(PDA(Personal Digital Assistants))やカメラ付きの携帯型パーソナルコンピュータである。」(【0019】) (エ)「この実施形態のクライアント装置2は、今現在以外の過去または未来の画像の検索要求を、画像サーバ1に対して送ることができるように構成されている。すなわち、後述するように、クライアント装置2は、ユーザが過去または未来の時を入力するためのユーザインターフェースを備えると共に、検索要求を画像サーバ1に送信する操作手段を備える。この実施形態では、検索要求を画像サーバ1に送信する操作手段は、過去または未来の時を入力した後、シャッターを切る(シャッターボタンを押す)操作とされる。」(【0022】) (オ)「これは、過去または未来の時を入力した後、シャッターを切るようにすることで、ユーザが、あたかも、当該過去または未来の画像の撮影を実行したのとほぼ等価の効果が得られるようにすること意図するものである。このユーザ操作に対応して、クライアント装置2は、当該過去または未来の画像の検索要求を画像サーバ1に送ることになる。このとき、クライアント装置2からの検索要求には、この実施形態では、過去または未来の時の情報と、撮像している場所、撮像方向、カメラアングルなどを含む検索条件情報が含まれている。」(【0023】) (カ)「また、検索条件情報に含まれる撮像された時の情報が過去の時の情報のときには、画像サーバ1は、画像データベース11を、受信した検索条件情報を用いて検索し、その検索の結果、該当する過去の画像を検出したときには、当該検出した検索結果の画像の画像データを、検索要求してきたクライアント装置2に送るようにする。」(【0026】) 上記(ア)?(カ)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「画像サーバ1と、複数のクライアント装置2とが、例えばインターネット、携帯電話網、などを含む通信ネットワーク3を通じて接続されて構成されてなるタイムシフト画像配信システムに係る画像サーバ1であって、 画像サーバ1は、画像データベース11を備えており、画像データベース11には、撮像画像データが、撮像された時(年、月、日、時、分、秒)、撮像された場所(地理的位置や高度)、撮像方向、撮像時の傾き(撮像方向の水平面に対する上下方向の角度(以下、カメラアングルという))、等のメタ情報と対応付けられて格納されており、 クライアント装置2は、撮像機能と、撮像画像表示機能と、ネットワーク通信機能を備えるもので構成され、クライアント装置2は、今現在以外の過去または未来の画像の検索要求を、画像サーバ1に対して送ることができ、クライアント装置2は、ユーザが過去または未来の時を入力するためのユーザインターフェースを備えると共に、検索要求を画像サーバ1に送信する操作手段を備え、クライアント装置2からの検索要求には、過去または未来の時の情報と、撮像している場所、撮像方向、カメラアングルなどを含む検索条件情報が含まれており、 画像サーバ1は、画像データベース11を、受信した検索条件情報を用いて検索し、その検索の結果、該当する過去の画像を検出したときには、当該検出した検索結果の画像の画像データを、検索要求してきたクライアント装置2に送る、画像サーバ1。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平4-70729号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。) (キ)「本発明は、撮影時にGPS受信機からの測位データを撮影画像と共に記録媒体に記録するカメラと、上記記録媒体に記録された撮影画像の検索を地図上の位置を入力して得られた位置データに基づいて行う検索機とから成る撮影画像検索システムに関する。」(第1頁右下欄第7行?第12行) (ク)「本発明によれば、カメラで撮影された撮影画像はフィルムあるいはメモリカード等の記録媒体に記録され、GPS受信機で得られる測位データはカメラに導かれ、そのときの撮影画像と対応付けられて上記記録媒体に自動的に記録される。一方、検索機では地図が表示され、この地図上の位置が入力されると該位置データが出力され、上記位置データと測位データとが照合され、合致する測位データ(撮影場所)に対応する撮影画像が上記記録媒体の記憶内容から検索される。」(第2頁左下欄第18行?同頁右下欄第7行) (ケ)「第9図は検索処理のメインフローを示す。先ず、どの項目(条件)で検索するかをキーボード62等により入力すると、CPU50は該検索項目と各画像乃至は検索用情報とを照合し(ステップ#81)、合致した画像を順次メモリカード26から読出してTVモニタ57にマルチ表示させる(ステップ#82)。」(第8頁右上欄第15行?同頁左下欄第1行) (コ)「第10図は前記ステップ#81で示した検索項目に対する「項目検索」のフローチャートを示す。この実施例では、検索項目として「場所」「日時」「天候」「人名」「室内外」「人物風景」「イベント」「音声」等が挙げられている。」(第8頁左下欄第13行?第17行) (サ)「第12図に示す「日時検索」のフローにおいては、計時部24からの日付情報がインデックスとなる。日時、すなわち年月日あるいは時分又は季節等がキーボード62から入力されると(ステップ#121)、CPU50は入力された検索条件に合致する画像の検索を実行する(ステップ#122)。この検索は前述同様各画像に関連付けて記録されている検索用情報(日時データ)を走査することにより行われる。なお、CPU50内には季節と日時データとを対応付けた記憶手段が設けられており、検索条件が季節の場合には、入力された季節が該記憶手段で対応する日時データに変換され、該変換された日時データにより検索が行われる。」(第9頁左下欄第19行?同頁右下欄第13行) (シ)「第13図に示す「天候検索」のフローにおいては、温度センサ17や湿度センサ18からの温度、湿度情報がインデックスとなる。天候に関する状態、例えば「晴れ」、「雨」、「暑い」、「寒い」等がキーボード62から入力されると(ステップ#131)、CPU50は入力された検索条件に合致する画像の検索を、検索用情報を走査することにより行う(ステップ#132)。CPU50内には上記天候に関する状態と温度、湿度からなる天候データとの対応関係を予め記憶している記憶手段が設けられている。例えば「暑い」と入力した場合は、温度(気温)が30℃以上のもの、湿度80%以上のものといったように、ある所定気温、湿度を基準に検索するようにすればよい。更に、その基準温度、湿度は場所、日時(季節も)によって変更するようにしてもよい。例えば「夏+暑い」で検索したい場合は、気温が30℃以上で、かつ7,8,9月のものとし、一方、「冬+暑い」では気温が25℃以上で、かつ12,1,2月のものというようにする。そして、検索時には、入力された天候に関する状態を上記記憶手段で対応する天候データに変換し、該変換された天候データにより検索が行われる。」(第10頁左上欄第4行?同頁右上欄第7行) 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-238057号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。) (ス)「そこで、本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置情報と画像特徴量の両方を考慮したランキングの方法、及び、このランキング方法を用いて画像を表示するシステムを提供することにある。」(【0010】) (セ)「まず、ユーザから、検索する画像のクエリと場所情報の入力を受け付ける(S100)。 画像のクエリは、典型的には言語からなり、名詞、形容詞、文章など、後述の画像検索の機能次第でどのようなテキスト情報も含むことができる。また、画像マッチングの技術を用い、画像を入力としてもよい。 検索される画像は、画像に関する付加情報、即ちメタデータを有する。そのメタデータは、画像に付された、画像を撮影した地点のGPS(Global Positioning System)情報、日時、方向、コメントなどを含む。典型的には、デジタルカメラ用の画像ファイルの規格Exif (Exchangeable Image File Format)にあるように、画像に付加された様々な情報を言う。 入力する場所情報とは、地域、地方、国、都市などの土地の地理上の位置を表わす情報であり、言語、地図情報、又は位置情報として表現できる。位置情報とは、座標系で表現される、二次元平面又は三次元空間における物理量を言い、典型的には、緯度、経度、高さなどからなるGPS情報である。 受け付けたクエリに関するメタデータ付き画像を検索する(S110)。このステップは、後続のステップの母集団となる画像を収集するステップであり、画像検索の方法自体は特に特定されない。典型的には、Flickr(登録商標)、Google(登録商標)、Yahoo(登録商標)が提供するAPI(Application Programming Interface)の検索機能を用いたWebサービスを使用してもよい。もちろん、自ら画像データを有し、その中から、受け付けたクエリにヒットする画像を独自の機構で検索し、結果セットの画像を後続のステップの母集団としてもよい。」(【0021】?【0024】) 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (1-1) 引用発明に係る「画像サーバ1」、「クライアント装置2」は、それぞれ、本願発明1でいうところの『サーバ』、『クライアント端末』に対応する。 (1-2) 本願明細書の段落【0027】、段落【0041】、段落【0045】等の記載を参酌するに、本願発明1でいうところの『撮像対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報』には、「デジタルカメラの位置情報」、「対象物の撮像画像」、「デジタルカメラの高度、方位、仰角、対象物との距離、および倍率」等が含まれているものと認められる。 一方、引用発明において、クライアント端末2が画像サーバ1に送信する検索要求には「過去または未来の時の情報と、撮像している場所、撮像方向、カメラアングルなどを含む検索条件情報」が含まれており、当該「過去または未来の時の情報と、撮像している場所、撮像方向、カメラアングルなどを含む検索条件情報」は、上記本願明細書の段落【0027】、段落【0041】、段落【0045】等の記載を鑑みると、本願発明1でいうところの『撮像対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報』に対応するものといえる。 そして、画像サーバ1は、前記「過去または未来の時の情報と、撮像している場所、撮像方向、カメラアングルなどを含む検索条件情報」を含む検索要求をクライアント端末2から受信するのであるから、引用発明に係る画像サーバ1には、本願発明1でいうところの『クライアント端末から撮像対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報を受信する受信部』を備えているといえる。 (1-3) 引用発明において、画像サーバ1は「画像データベース11を、受信した検索条件情報を用いて検索し、その検索の結果、該当する過去の画像を検出したときには、当該検出した検索結果の画像の画像データを、検索要求してきたクライアント装置2に送る、」のであるから、引用発明に係る画像サーバ1は、本願発明1でいうところの『前記受信部により受信した前記撮像対象物に対するユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する検索部』と『前記検索部により検索した画像を前記クライアント端末に送信する送信部』とを備えているといえる。 (1-4) 引用発明において、クライアント端末2は「ユーザが過去または未来の時を入力するためのユーザインターフェースを備える」のであるから、当該「ユーザインターフェース」は、本願発明1でいうところの『タイムシフト操作入力部』に対応するといえる。 してみると、引用発明と本願発明1とは、『前記ユーザ指定の状況は、前記クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された情報を含む』という点において一致しているといえる。 以上、上記(1-1)から(1-4)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、 「クライアント端末から撮像対象物に対するユーザ指定の状況に関する情報を受信する受信部と、 前記受信部により受信した前記撮像対象物に対するユーザ指定の状況に適合する対象物の画像を検索する検索部と、 前記検索部により検索した画像を前記クライアント端末に送信する送信部と、 を備え、 前記ユーザ指定の状況は、前記クライアント端末においてタイムシフト操作入力部により入力された情報を含む、サーバ。」 という点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 本願発明1は、ユーザ指定の状況に含まれる情報として『撮像対象物の経過状態を指定する情報』が含まれていることを特定しているのに対し、引用発明においては、かかる特定がない点。 (2)判断 上記(相違点)について判断する。 引用発明における検索条件情報には「過去または未来の時」が含まれることは開示されているものの、当該「過去または未来の時」は、「年、月、日、時、分、秒」そのものを指定するものであり、本願明細書の段落【0036】や段落【0037】で例示されているような、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』とはいえない。 また、引用文献2には、画像検索システムにおいて、検索項目として「日時」、「季節」、「天候」等の項目を用いることができることは開示されているものの、これらの検索項目が、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』に対応するといえる記載又はその旨を示唆する記載もないから、引用文献2に開示されている「検索項目」が、本願明細書の段落【0036】や段落【0037】で例示されているような、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』とはいえない。 さらに、引用文献3にも、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』を想起させる記載又は示唆する記載はない。 してみると、引用発明、引用文献2、引用文献3には、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』については記載されておらず、また、本願出願以前において周知のものであるとも認められないから、ユーザ指定の状況に含まれる情報として『撮像対象物の経過状態を指定する情報』が含まれていることを特定することは、当業者といえども容易に想到し得るとは認められない。 2.本願発明2から本願発明19について 本願発明1以外の独立請求項である本願発明9、本願発明16、本願発明17、本願発明18、本願発明19のいずれの発明においても、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、引用文献3に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 また、本願発明1を直接的又は間接的に引用する本願発明2?本願発明8、及び、本願発明9を直接的又は間接的に引用する本願発明10?本願発明15についても、本願発明1でいうところの『撮像対象物の経過状態を指定する情報』との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、引用文献3に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について ・理由(特許法第29条第2項) 審判請求時の補正により、本願発明1?19は『撮像対象物の経過状態を指定する情報』との発明特定事項を備えるものとなっており、上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」で示した様に、本願発明1?19は、拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-12 |
出願番号 | 特願2013-551532(P2013-551532) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉田 誠 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
佐藤 智康 相崎 裕恒 |
発明の名称 | サーバ、クライアント端末、システム、および記録媒体 |
代理人 | 亀谷 美明 |