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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16L
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
管理番号 1332230
異議申立番号 異議2016-701206  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-28 
確定日 2017-07-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5944705号発明「分岐開口連通方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5944705号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第5944705号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5944705号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年3月15日に特許出願され、平成28年6月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人渡邉芳則(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成29年3月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月19日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年4月25日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年6月2日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正事項は以下のとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示すものである。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、前記連通孔を開閉可能にする補修弁を取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を取り外した後、前記補修弁と連通する接続部材を取り付けた」とあるのを、
「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」に訂正する。

イ 訂正事項2
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0006】に
「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、前記連通孔を開閉可能にする補修弁を取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を取り外した後、前記補修弁と連通する接続部材を取り付けた」とあるのを、
「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」に訂正する。

(2)訂正の適否
(2-1)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否
a 訂正前の請求項1には、「補修弁」が「前記連通孔を開閉可能にする」ものとして記載されている一方で、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「本件明細書等」という。)には、「補修弁21によって補修弁ケース23を閉塞」することが記載されており(段落【0038】)、その結果、訂正前の請求項1に記載された「補修弁」に係る機能・構造が本件明細書の記載と整合しておらず、必ずしも明瞭な記載ということはできなかった。
これに対して、訂正後の請求項1では、「補修弁」に係る機能・構造を明らかにすることによって、不明瞭な記載を正すものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
b 訂正事項1は、訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?4についても訂正するものであるところ、上記aと同様に、訂正後の請求項2?4についても、「補修弁」の機能・構造を明らかにすることによって、不明瞭な記載を正すものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
a 上記「(1)ア」のとおり、訂正事項1によって、「補修弁」に係る機能・構造は「補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」と訂正された。
そして、かかる訂正は、本件明細書の「・・・作業弁ケース35、及び挿入機38’が配設された外ケース37を取り外した後、図9に示されるように、閉塞体40’のフランジ部42に補修弁21が内設された補修弁ケース23を取り付けるとともに、補修弁ケース23の上方に栓部材20を取り外すための取り外し具25を備えた蓋ケース24を配設する。」(段落【0035】、下線は当審で付した。以下同様。)、「・・・そして、作業者が把持部25cを把持し、取り外し具25を軸部25aの軸周りに回転させることで、栓部材20の雄ネジ部20cと雌ネジ部14aとの螺合を解除した後、取り外し具25を退行させることで栓部材20を連通孔4a’から取り外す。」(段落【0037】)及び「これにより、図10に示されるように、連通孔4a’が補修弁ケース23と連通する。その後、補修弁21によって補修弁ケース23を閉塞して蓋ケース24及び取り外し具25を取り外すとともに、本実施例の接続部材である消火栓61を取り付ける。そして、補修弁21によって補修弁ケース23を開放し、作業者が消火栓61の栓部材を操作することで穿孔Qから流入する流体を適宜外部へ排出することができる。」(段落【0038】)との記載等に基づくものであり、本件明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
b 訂正事項1は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?4についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記aと同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
c したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落【0006】の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記アで述べたように、本件明細書の記載に基づくものであって、本件明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2-2)一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前の請求項1?4を訂正するものであり、訂正前の請求項2?4は請求項1を直接的又は間接的に引用するため、請求項1?4は一群の請求項である。
訂正事項2は、この一群の請求項の全てについて明細書を訂正するものである。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項1?4について請求するものといえる。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部を備えた筐体において、前記分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法であって、
前記分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け、該ケース体を介し前記閉鎖体を取り外した後、
該閉鎖体に替えて、前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた閉塞体を、前記ケース体を介し前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け、
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放することを特徴とする分岐開口連通方法。
【請求項2】
前記閉塞体は、前記流体管の穿孔に当接される環状の防錆部を有しており、前記分岐開口に取り付けるとともに、該防錆部によって前記穿孔を防錆することを特徴とする請求項1に記載の分岐開口連通方法。
【請求項3】
前記穿孔を防錆する前に前記穿孔の穿孔面を切削することを特徴とする請求項2に記載の分岐開口連通方法。
【請求項4】
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、該分岐部の係止部によって係止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の分岐開口連通方法。」

第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して平成29年3月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである、というものである。

(2)判断
ア 上記「第2(2)(2-1)ア(ア)」のとおり、訂正前の請求項1には、「補修弁」が「前記連通孔を開閉可能にする」ものとして記載されている一方で、本件明細書には、「補修弁21によって補修弁ケース23を閉塞」することが記載されており(段落【0038】)、その結果、訂正前の請求項1に記載された「補修弁」に係る機能・構造が本件明細書の記載と整合しておらず、必ずしも明瞭な記載ではなかった。
しかし、上記「第2(2)(2-1)ア(イ)」のとおり、本件訂正請求により、「補修弁」に係る機能・構造は、本件明細書の段落【0035】、段落【0037】及び段落【0038】の記載等に基づいて、「補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」と訂正され、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載と整合するものとなり、この取消理由は解消した。
イ ここで、特許異議申立人は、平成29年6月2日付けの意見書(6頁1?11行)で、訂正前の請求項1の「連通孔を開閉可能にする補修弁」との構成が削除されており、訂正後の請求項1に記載の「補修弁が内設された補修弁ケース」は、訂正前の請求項1の「補修弁」とは異なることから、その結果、依然として特許法第36条第6項第1号に規定された要件に違反する旨主張する。
しかし、訂正前の請求項1に記載された「連通孔を開閉可能にする補修弁」は、本件明細書に記載されるとおり「補修弁21が内設された補修弁ケース23」(段落【0035】)として構成され、「補修弁21によって補修弁ケース23を閉塞」(段落【0038】)するものとして構成されるものであるから、訂正前の請求項1に記載された「補修弁」と、訂正後の請求項1に記載された「補修弁」とは異なる構成というものではない。
そして、本件訂正請求によって、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載と整合するものとなったことから、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に違反するということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
2-1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、次の甲第1?4号証を提出し、以下の申立理由1及び2により、特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開2011-122721号公報
甲第2号証:特開2009-115296号公報
甲第3号証:特開平9-217391号公報
甲第4号証:実願平4-54943号(実開平8-305号)のCD-ROM

(1)申立理由1(特許法第29条第2項)
ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び周知技術(甲第3号証)から容易想到である。
イ 請求項2?3に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び甲第3号証記載事項から容易想到である。
ウ 請求項4に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項、甲第3号証記載事項及び周知技術(甲第4号証)から容易想到である。
(2)申立理由2(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明において、補修弁を取り付け可能な閉塞体を、ケース体を介して分岐部に取り付ける方法は、その具体的方法が何ら記載されておらず、かつ周知のものでもないから、当業者がその実施をすることができる適度に明確かつ十分に記載されてない。

2-2 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明(下線は当審で付した。以下同様。)
(1a)「【請求項1】
流体管部の連結フランジに接合されている開閉弁を、流体管部側での流体輸送を維持したまま撤去する流体配管系の開閉弁撤去工法であって、
前記開閉弁の下流側の連結フランジに、前記開閉弁内を通して流体管部内に挿入可能な縮径状態と流体管部の流路を遮断する拡径状態とに切り替え可能な閉塞手段と当該閉塞手段を収納する遮断作業ケースとを備えた流路遮断装置の前記遮断作業ケースを取付け、開弁操作された開閉弁内を通して流体管部内に縮径状態の閉塞手段を挿入し、この閉塞手段を拡径状態に切り替え操作して流体管部の流路を遮断する工程、
前記閉塞手段を拡径状態に維持したまま流体管部の連結フランジから開閉弁及び流路遮断装置の遮断作業ケースを撤去する工程、
前記流体管部の連結フランジに、当該流体管部の流路に連通する栓装着口を貫通形成してあるフランジ本体と、当該フランジ本体の栓装着口を密封する中栓とを備えたフランジ蓋の前記フランジ本体を取付ける工程、
前記フランジ本体に作業用開閉弁を介して前記流路遮断装置の遮断作業ケースを取付け、この遮断作業ケース内に、流体管部内で縮径状態に切り替えられた閉塞手段をフランジ本体の栓装着口と開弁操作された作業用開閉弁とを通して回収したのち、前記作業用開閉弁を閉弁操作して当該作業用開閉弁から流路遮断装置の閉塞手段及び遮断作業ケースを撤去する工程、
前記作業用開閉弁に、前記中栓を装着してある栓装着治具を備えた栓装着作業ケースを取付け、この栓装着作業ケース内の中栓を開弁操作された作業用開閉弁を通してフランジ本体側に送り込み、前記栓装着治具で中栓をフランジ本体の栓装着口に装着する工程、
前記フランジ蓋のフランジ本体から作業用開閉弁及び栓装着作業ケースを撤去する工程、
を備えた流体配管系の開閉弁撤去工法。
・・・
【請求項3】
前記弁撤去後のフランジ蓋のフランジ本体に、前記中栓の離脱を阻止する押え蓋を取付ける工程が設けられている請求項1又は2記載の流体配管系の開閉弁撤去工法。」
(1b)「【0040】
〔第1実施形態〕
図1は流体配管系の途中の管接続構造を示し、流体管の一例である鋳鉄管製の水道管1の途中に上方に一体的に突出形成された分岐管部(流体管部の一例)2の連結フランジ2Aに、開閉弁の一例である補修弁3の上流側端部に形成された連結フランジ部3Aが、ボルト4A・ナット4Bからなる締結具4にて脱着自在に水密状態で固定連結されているとともに、前記補修弁3の下流側端部に形成された連結フランジ部3Bには、流体機器の一例である空気弁6の上流側端部に形成された連結フランジ6Aが、ボルト4A・ナット4Bからなる締結具4にて脱着自在に水密状態で固定連結されている。」
(1c)「【0070】
尚、施工完了後において、新たな補修弁3及び新たな空気弁6を設置する必要が生じた場合には、前記フランジ蓋Bのフランジ本体31から押え蓋44を撤去し、このフランジ本体31に、閉弁状態にある新たな補修弁3の上流側の連結フランジ3Aを水密状態で固定連結する。
この新たな補修弁3の下流側の連結フランジ3Bに、前記栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43の連結フランジ43Aを水密状態で固定連結(図15参照)し、開弁操作された補修弁3を通して栓装着治具Cの操作ロッド40をフランジ本体31側に送り込み、この操作ロッド40の雄ネジ部40aを、フランジ本体31の栓装着口32に装着されている中栓33のネジ穴38に螺合連結(図9参照)し、前記〔6〕で述べた中栓装着工程とは逆の手順で操作ロッド40を操作して、中栓33をフランジ本体31の栓装着口32から取り外し、操作ロッド40の先端に螺合連結されている中栓33を新たな補修弁3内の流路を通して栓装着作業ケース43内に回収(図8参照)する。
【0071】
閉弁操作された前記新たな補修弁3の下流側連結フランジ3Bから栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43を撤去し、新たな補修弁3の下流側連結フランジ3Bに新たな空気弁6を水密状態で固定連結(後述する第4実施形態の図30参照)する。」
(1d)「【0141】
A 流路遮断装置
A1 閉塞手段
B フランジ蓋
C 栓装着治具
D 遮断作業弁
1 流体管(水道管)
2 流体管部(分岐管部)
2A 連結フランジ
3 開閉弁(補修弁)
3B 下流側連結フランジ
4 締結具
13 遮断作業ケース
29 第2締結具
30 取付け部(ネジ穴)
31 フランジ本体
32 栓装着口
33 中栓
34 係止部
35 脱着通路
36 係止通路
37 シール材(Oリング)
42 作業用開閉弁
43 栓装着作業ケース
44 押え蓋
46 雄ネジ部
47 雌ネジ部
51 遮断作業カバー
52 仕切板弁
55 貫通口
56 フランジ蓋体
60 仕切弁(補修弁) 」

上記摘示(1a)?(1d)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる(なお、a1?a8の記号は、当審が便宜的に付したものであり、以下「a1の工程」などということがある。)
「流体管部2の連結フランジ2Aに接合されている開閉弁3を、流体管部2側での流体輸送を維持したまま撤去する流体配管系の開閉弁撤去工法であって、
前記流体管部2は、水道管1の途中に上方に一体的に突出形成されており、
a1 前記開閉弁3の下流側の連結フランジ3Bに、前記開閉弁3内を通して流体管部2内に挿入可能な縮径状態と流体管部2の流路を遮断する拡径状態とに切り替え可能な閉塞手段A1と当該閉塞手段A1を収納する遮断作業ケース13とを備えた流路遮断装置Aの前記遮断作業ケース13を取付け、開弁操作された開閉弁3内を通して流体管部2内に縮径状態の閉塞手段A1を挿入し、この閉塞手段A1を拡径状態に切り替え操作して流体管部2の流路を遮断する工程、
a2 前記閉塞手段A1を拡径状態に維持したまま流体管部2の連結フランジ2Aから開閉弁3及び流路遮断装置Aの遮断作業ケース13を撤去する工程、
a3 前記流体管部2の連結フランジ2Aに、当該流体管部2の流路に連通する栓装着口32を貫通形成してあるフランジ本体31と、当該フランジ本体31の栓装着口32を密封する中栓33とを備えたフランジ蓋Bの前記フランジ本体31を取付ける工程、
a4 前記フランジ本体31に作業用開閉弁42を介して前記流路遮断装置Aの遮断作業ケース13を取付け、この遮断作業ケース13内に、流体管部2内で縮径状態に切り替えられた閉塞手段A1をフランジ本体31の栓装着口32と開弁操作された作業用開閉弁42とを通して回収したのち、前記作業用開閉弁42を閉弁操作して当該作業用開閉弁42から流路遮断装置Aの閉塞手段A1及び遮断作業ケース13を撤去する工程、
a5 前記作業用開閉弁42に、前記中栓33を装着してある栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43を取付け、この栓装着作業ケース43内の中栓33を開弁操作された作業用開閉弁42を通してフランジ本体31側に送り込み、前記栓装着治具Cで中栓33をフランジ本体31の栓装着口32に装着する工程、
a6 前記フランジ蓋Bのフランジ本体31から作業用開閉弁42及び栓装着作業ケース43を撤去する工程、
a7 前記弁撤去後のフランジ蓋Bのフランジ本体31に、前記中栓33の離脱を阻止する押え蓋44を取付ける工程、
a8 新たな補修弁3及び新たな空気弁6を設置する場合には、前記フランジ蓋Bのフランジ本体31から押え蓋44を撤去し、このフランジ本体31に、閉弁状態にある新たな補修弁3の上流側の連結フランジ3Aを水密状態で固定連結し、この新たな補修弁3の下流側の連結フランジ3Bに、前記栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43の連結フランジ43Aを水密状態で固定連結し、開弁操作された補修弁3を通して栓装着治具Cの操作ロッド40をフランジ本体31側に送り込み、この操作ロッド40の雄ネジ部40aを、フランジ本体31の栓装着口32に装着されている中栓33のネジ穴38に螺合連結し、操作ロッド40を操作して、中栓33をフランジ本体31の栓装着口32から取り外し、操作ロッド40の先端に螺合連結されている中栓33を新たな補修弁3内の流路を通して栓装着作業ケース43内に回収し、前記新たな補修弁3の下流側連結フランジ3Bから栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43を撤去し、新たな補修弁3の下流側連結フランジ3Bに新たな空気弁6を水密状態で固定連結する工程、
を備える開閉弁撤去工法。」

(2)甲第2号証の記載事項
(2a)「【0001】
本発明は、水道管等の流体管の分流孔に接続されている下胴とこれに対して脱着自在に接続されている分流口付きの上胴が備えられている分流栓を、前記流体管内の流体の流れを維持したまま流体管から撤去した後、前記分流孔を密封状態で閉塞処理する工法に関する。」
(2b)「【0024】
前記分水栓Aの下胴3を収納する状態でそれの周りを囲繞可能な保護筒部10を備えた保護部材Bは、図5?図7、図9?図13に示すように、水道管1に対して管径方向の外方から外装自在な管周方向で複数に分割(当該実施形態では三分割)された部分円筒状の分割保護体11?13から構成され、・・・」
(2c)「【0035】
次に、上述の如く構成された各種資材を用いての分流栓撤去工法について説明する。
1)図1に示す甲型分水栓Aでは、上胴4内の流路のうち、前記接続管部4Aの基端側開口位置よりも装着口4c側に後退した待機位置に止水コマ5が常設されているため、水道管1の分水孔2から流出した上水は、下胴3内の流路→上胴4内の流路→分水口4fを備えた接続管部4A内の流路を経て分岐管8に流入する。
【0036】
2)図2に示すように、・・・上胴4内の待機位置にある止水コマ5を、接続管部4Aの基端側開口位置よりも上流側の下胴3内の流路まで螺進させ、該下胴3内の流路を遮断する。
【0037】
3)図3に示すように、・・・上胴4及び分岐管8を撤去したのち、前記止水コマ5の回転操作凹部5aからコマ操作軸9の回転操作凸部9aを取り外す。
【0038】
4)図4に示すように、前記分水栓Aの下胴3における角筒状の回転受け部3dに、取外し治具Cのコの字状の回転操作部20を外嵌装着し、・・・取外し治具Cの回転操作部20と下胴3の回転受け部3dとを一体回転状態に固定連結する。
【0039】
5)図5に示すように、・・・前記保護筒部10を備えた分割保護体11側のシール材16により、前記分水孔2周りにおいて水道管1の外周面1bとの間が密封される。
・・・
【0043】
6)図6に示すように、・・・水道管1の分水孔2から分水栓Aの下胴3を取り外した後、前記取外し治具Cの操作軸21を引き上げ、取り外した下胴3を開弁操作されている作業用開閉弁Dを通して第1作業用ハウジング17内の上部に取り込む。
【0044】
7)図7に示すように、作業用開閉弁Dを閉弁操作したのち、前記分水栓Aの下胴3及び取外し治具Cを備えた第1作業用ハウジング17を、前記弁ケース25の上部に形成された第2連結凹部28から撤去する。」

(3)甲第3号証の記載事項
(3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、水道管などの流体管に穿孔された分岐口に取付けられる耐震性に優れた分水栓の取付装置に関するものである。」
(3b)「【0026】しかして、図18の状態から図21のようにバルブ143を開き、治具150全体を押し込み降下させ、止めこま156を下胴60の上部内に主軸152を回転してねじ込み。止めこま156のテーパ状下部を下胴60内の段部に圧接させて下胴60内で止水した後(図22)、治具150を引き上げると治具下端と止めこま156は容易に離れる。しかる後、袋ナット151を外し、穿孔機の基台37を流体管36から取り除くとともに、図23のように下胴60の頂部にパッキン159を介在させてキャップ160をすると、一連の作業は終了する。」

2-3 判断
(1)申立理由1(特許法第29条第2項)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「流体管部2」と本件発明1の「流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部」とは、「分岐部」の限度で共通するものといえる。
(イ)甲1発明の「流体管部2の連結フランジ2Aに接合されている開閉弁3」は、流体管部2の開口を閉鎖する閉鎖体として機能することは技術的に明らかである。
また、甲1発明は、上記「開閉弁3」を、「流体管部2側での流体輸送を維持したまま撤去する流体配管系の開閉弁撤去工法」であるから、かかる「開閉弁撤去工法」と本件発明1の「流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部を備えた筐体において、前記分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法」は、上記(ア)をも踏まえると、「分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法」の限度で共通するものといえる。
(ウ)甲1発明において、a1及びa2の工程によって閉鎖弁3が取り外されること、a3の工程によって閉鎖弁3に替えてフランジ蓋Bのフランジ本体31が取り付けられること、a4及びa5の工程によって中栓33がフランジ本体31の栓装着口32に装着されること、a6及びa7の工程によってフランジ蓋Bが流体管部2に対して密封状になるように取り付けられることが明らかである。
ここで、フランジ本体31の栓装着口32に中栓33が装着されることで、フランジ蓋Bが流体管部2の開口を閉塞する閉塞体として機能することは技術的に明らかである。
してみると、上記a1?a7の工程と、本件発明1の「前記分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け、該ケース体を介し前記閉鎖体を取り外した後、該閉鎖体に替えて、前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた閉塞体を、前記ケース体を介し前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け」る構成とは、「前記閉鎖体を取り外した後、該閉鎖体に替えて、閉塞体を、前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け」る構成の限度で共通するものといえる。
(エ)甲1発明のa8の工程は、a1?a7の工程後に行われる「新たな補修弁3及び新たな空気弁6を設置する場合」の工程であるところ、a8の工程は、少なくとも「閉弁状態にある新たな補修弁3の上流側の連結フランジ3Aを水密状態で固定連結し」、「開弁操作された補修弁3を通して栓装着治具Cの操作ロッド40をフランジ本体31側に送り込み」、「中栓33をフランジ本体31の栓装着口32から取り外し」、「中栓33を新たな補修弁3内の流路を通して栓装着作業ケース43内に回収し」、「新たな補修弁3の下流側連結フランジ3Bに新たな空気弁6を水密状態で固定連結する」ものである。
ここで、甲1発明の「中栓33」、「フランジ本体31の栓装着口32」及び「新たな空気弁6」は、その機能・構造に照らして、本件発明1の「栓部材」「連結孔」及び「接続部材」に相当するものといえる。また、甲1発明の「新たな補修弁3」が、弁とケースを具備して構成されることは技術的に明らかである(図2等を参照)。
してみると、甲1発明のa8の工程と本件発明1の「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」との構成とは、「前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し栓部材を連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け」る限度で共通するものといえる。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法であって、
前記閉鎖体を取り外した後、
該閉鎖体に替えて、閉塞体を、前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け、
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し栓部材を連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付ける、分岐開口連通方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、分岐部が「流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部」として構成され、「分岐部を備えた筐体」を前提とした分岐開口連通方法であるのに対し、甲1発明は、分岐部(流体管部2)が「水道管1の途中に上方に一体的に突出形成されて」構成され、かかる分岐部を前提とした分岐開口連通方法である点。

<相違点2>
「閉鎖体」の取り外しに係る構成について、本件発明1では、「前記分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け、該ケース体を介し」閉鎖体を取り外すのに対し、甲1発明では、「a1 前記開閉弁3の下流側の連結フランジ3Bに、前記開閉弁3内を通して流体管部2内に挿入可能な縮径状態と流体管部2の流路を遮断する拡径状態とに切り替え可能な閉塞手段A1と当該閉塞手段A1を収納する遮断作業ケース13とを備えた流路遮断装置Aの前記遮断作業ケース13を取付け、開弁操作された開閉弁3内を通して流体管部2内に縮径状態の閉塞手段A1を挿入し、この閉塞手段A1を拡径状態に切り替え操作して流体管部2の流路を遮断する工程」及び「a2 前記閉塞手段A1を拡径状態に維持したまま流体管部2の連結フランジ2Aから開閉弁3及び流路遮断装置Aの遮断作業ケース13を撤去する工程」によって、開閉弁3を取り外す点。

<相違点3>
「閉塞体」の取り付けに係る構成について、本件発明1では、「前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた」閉塞体を、「前記ケース体を介し」て取り付けるのに対し、甲1発明では、「a3 前記流体管部2の連結フランジ2Aに、当該流体管部2の流路に連通する栓装着口32を貫通形成してあるフランジ本体31と、当該フランジ本体31の栓装着口32を密封する中栓33とを備えたフランジ蓋Bの前記フランジ本体31を取付ける工程」、「a4 前記フランジ本体31に作業用開閉弁42を介して前記流路遮断装置Aの遮断作業ケース13を取付け、この遮断作業ケース13内に、流体管部2内で縮径状態に切り替えられた閉塞手段A1をフランジ本体31の栓装着口32と開弁操作された作業用開閉弁42とを通して回収したのち、前記作業用開閉弁42を閉弁操作して当該作業用開閉弁42から流路遮断装置Aの閉塞手段A1及び遮断作業ケース13を撤去する工程」、「a5 前記作業用開閉弁42に、前記中栓33を装着してある栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43を取付け、この栓装着作業ケース43内の中栓33を開弁操作された作業用開閉弁42を通してフランジ本体31側に送り込み、前記栓装着治具Cで中栓33をフランジ本体31の栓装着口32に装着する工程」、「a6 前記フランジ蓋Bのフランジ本体31から作業用開閉弁42及び栓装着作業ケース43を撤去する工程」及び「a7 前記弁撤去後のフランジ蓋Bのフランジ本体31に、前記中栓33の離脱を阻止する押え蓋44を取付ける工程」によって、フランジ本体31及び中栓33を取り付ける点。

<相違点4>
「閉塞体」を分岐部に取り付けた後の構成について、本件発明1は、「前記ケース体に替えて」、その後、補修弁ケースに接続部材を取り付けた後、「前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放する」ものであるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2及び3について検討する。
(ア)本件発明1は、「分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け」ることを前提として、「該ケース体を介し」て閉鎖体が取り外され(相違点2に係る本件発明1の構成)、さらに、「前記ケース体を介し」て、「前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた」閉塞体が取り付けられるものである(相違点3に係る本件発明1の構成)。
他方、甲1発明は、「閉塞手段A1と当該閉塞手段A1を収納する遮断作業ケース13とを備えた流路遮断装置Aの前記遮断作業ケース13を取付け」ることを前提として(a1の工程)、閉鎖体(開閉弁3)が取り外されるものの(a2の工程)、「流路遮断装置Aの遮断作業ケース13」も撤去されるため(a2の工程)、かかる「流路遮断装置Aの遮断作業ケース13」は、閉塞体の取り付けに関与するものではない。
さらに、甲1発明は、閉塞体の取り付けについて、流路遮断装置Aの遮断作業ケース13が撤去された後(a2の工程)、フランジ本体31の取付けが先行して行われ(a3の工程)、その後、栓装着治具Cを備えた栓装着作業ケース43を取付けて、中栓33をフランジ本体31の栓装着口32に装着するものであるから(a5の工程)、そもそも、中栓33を備えたフランジ本体31を、上記流路遮断装置Aの遮断作業ケース13を介して取り付ける態様でもない。
(イ)そして、甲第2号証には、「水道管等の流体管の分流孔に接続されている下胴とこれに対して脱着自在に接続されている分流口付きの上胴が備えられている分流栓を、前記流体管内の流体の流れを維持したまま流体管から撤去した後、前記分流孔を密封状態で閉塞処理する工法」に関し(摘示(2a))、保護筒部10を備えた保護部材Bの構成として、水道管1に対して管径方向の外方から外装自在な管周方向で複数に分割された部分円筒状の分割保護体11?13から構成されること(摘示(2b))、及び、分流栓撤去に係る具体的な工法の例が記載され(摘示(2b))、また、甲第3号証には、「水道管などの流体管に穿孔された分岐口に取付けられる耐震性に優れた分水栓の取付装置」に関し(摘示(3a))、止めこま156を下胴60内に圧接させて下胴60内で止水する技術について記載されているが(摘示(3b))、そのいずれにも、「分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け」ることを前提として、「該ケース体を介し」て閉鎖体が取り外され、さらに、「前記ケース体を介し」て、「前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた」閉塞体が取り付けられる構成は記載も示唆もなされていない。
したがって、甲1発明に、甲第2号証あるいは甲第3号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2及び3に係る本件発明1の構成には至らない。

ウ 小活
以上のとおり、本件発明1は甲1発明と相違点1?4において相違するものであるところ、相違点2及び3に係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1及び4を検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)申立理由2(特許法第36条第4項第1号)について
特許異議申立人は、発明の詳細な説明において、補修弁を取り付け可能な閉塞体を、ケース体を介して分岐部に取り付ける方法は、その具体的方法が何ら記載されておらず、かつ周知のものでもないから、当業者がその実施をすることができる適度に明確かつ十分に記載されてない旨主張する。
しかし、本件明細書の段落【0034】には、「先ず図8に示されるように、フランジ部42と鍔部38aとをボルト・ナット18を介して接続し、前記実施例1、2と同様に挿入機38’を進行移動させる。これにより、図9に示されるように閉塞体40’が分岐部12に取り付けられ、分岐開口12bが密封状に閉塞される。」と記載され、挿入機38’の進行移動により、閉塞体40’を分岐部12まで移動させて取り付けることが具体的に記載されている。
ここで、特許異議申立人の上記主張の根拠は、図8において、閉塞体40’のフランジ部42が外ケース37の内径より大きな外径を有していることが看取され、その大小関係によれば閉塞体40’は外ケース37の内部に挿入することができない、というものである(特許異議申立書17頁12?19行)。
しかし、図8の構成は、あくまでも本件明細書の段落【0034】に記載されているとおり「挿入機38’を進行移動させる」ことができ、「これにより、図9に示されるように閉塞体40’が分岐部12に取り付けられ、分岐開口12bが密封状に閉塞される」ものと理解すべきであって、単に図8に示される一断面の図示内容のみを根拠として、閉塞体40’が外ケース37の内部に挿入することができないものと解すべき合理性はないから、本件発明1?4について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分なものではない、ということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
分岐開口連通方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔を有する流体管に対し密封状に取り付けられ該穿孔と連通する分岐部を備えた筐体において、前記分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分岐部を備えた筐体においては、水道管(流体管)の止水したい部分の外周を基礎支持部材で覆い、この基礎支持部材の円筒状部から穿孔機により水道管に透孔(穿孔)を形成し、この透孔から所定の作業を行うものがある。その後、円筒状部内に円盤状支持体と閉孔部材とから成る水密閉孔具ユニットを取り付け、円筒状部及び透孔を水密に閉孔しており、これにより水道管の外周より大きく突出して埋設されないため、例えば他の水道管工事の際にパワーシャベル等で引っ掛けて破損させる虞を防止したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-157353号公報(第4、5、6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、水密閉孔具ユニットが円筒状部及び透孔を閉塞するのみの機能しかなく、円筒状部を有効利用できないため、汎用性に欠けていた。更に、円盤状支持体と閉孔部材とのスペースに閉孔作業の際に流出した流体が滞留するため衛生的ではないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、分岐部を有効に利用することができるとともに、分岐部内に流体を滞留させない分岐開口閉塞方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の分岐開口連通方法は、
流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部を備えた筐体において、前記分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法であって、
前記分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け、該ケース体を介し前記閉鎖体を取り外した後、
該閉鎖体に替えて、前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた閉塞体を、前記ケース体を介し前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け、
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放することを特徴としている。
この特徴によれば、閉塞体が連通孔を備え、連通孔を開閉可能な接続部材が取り付けられることにより、筐体の配設位置における用途に合わせて、接続部材として例えば空気弁、補修弁、消火栓、ボールバルブ等を適宜接続することができ、筐体の分岐部を有効に利用することができるとともに、接続部材により連通孔を開閉することで分岐部内に流体を滞留させないようにすることができる。
【0007】
本発明の分岐開口連通方法は、
前記閉塞体は、前記流体管の穿孔に当接される環状の防錆部を有しており、前記分岐開口に取り付けるとともに、該防錆部によって前記穿孔を防錆することを特徴としている。
この特徴によれば、閉塞体が防錆部を有していることにより、穿孔に錆びが形成されることを防止できるとともに、別途に穿孔を防錆する工程を行うことなく、閉塞体を分岐開口に取り付けると同時に穿孔の防錆が行われるため、作業を簡略化できる。
【0008】
本発明の分岐開口連通方法は、
前記穿孔を防錆する前に前記穿孔の穿孔面を切削することを特徴としている。
この特徴によれば、穿孔の防錆を行う前に穿孔の穿孔面を切削することで、錆びや夾雑物が取り除かれた新しい穿孔面を防錆することができ、流体管内を清潔に保つことができる。
【0009】
本発明の分岐開口連通方法は、
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、該分岐部の係止部によって係止することを特徴としている。
この特徴によれば、分岐部に係止部が設けられることで閉塞体の位置決めが成され、閉塞体が設置された状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、実施例1において閉鎖体により分岐開口が閉鎖された状態を示す正面断面図であり、(b)は、同じく側断面図である。
【図2】実施例1における閉鎖体を取り外している状態を示す正面断面図である。
【図3】実施例1における閉塞体を分岐部に取り付ける状態を示す正面断面図である。
【図4】実施例1における閉塞体が分岐開口を閉塞した状態を示す正面断面図である。
【図5】実施例2,3における閉塞体を分岐部に取り付ける状態を示す正面断面図である。
【図6】実施例2,3における閉塞体が分岐開口を閉塞した状態を示す正面断面図である。
【図7】(a)は、実施例3における閉鎖体を分岐部から取り外している状態を示す正面断面図であり、(b)は、閉鎖体を取り外した後、穿孔の穿孔面を切削している状態を示す正面断面図である。
【図8】実施例4における閉塞体を分岐部に取り付ける状態を示す正面断面図である。
【図9】実施例4における閉塞体を取り付けた後、栓部材を取り外す状態を示す正面断面図である。
【図10】実施例4における閉塞体に消火栓を取り付けた状態を示す正面断面図である。
【図11】(a)は、実施例5において閉鎖体により分岐開口が閉鎖された状態を示す正面断面図であり、(b)は、閉鎖体を分岐部から取り外している状態を示す正面断面図である。
【図12】(a)は、実施例5における閉塞体を分岐部に取り付ける状態を示す正面断面図であり、(b)は、閉塞体が分岐開口を閉塞した状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る分岐開口連通方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る分岐開口連通方法につき、図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、本実施例の流体管1は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0013】
流体管1の外周面に密封状に取り付けられている筐体2は、いわゆる割T字管であって、流体管1の管軸と略直交方向に延設されるとともに、流体管1の穿孔Qと連通する分岐部12を備え、流体管1の外周の上側を被覆する第1筐体11aと、流体管1の外周の下側を被覆する第2筐体11bと、からなり、第1筐体11a及び第2筐体11bを流体管1を挟む位置で対向させ、ボルト・ナット13により締結されている。また、穿孔Qの外周には、ゴムリング22が分岐部12の内面と流体管1の外面との間に介設されており、穿孔Qを介し流体管1内からの流体の漏出が防止されている。
【0014】
分岐部12には、該分岐部12の分岐開口12bを閉鎖する本発明における閉鎖体である既設の弁蓋3が取り付けられており、この弁蓋3には、穿孔Qに向けて進退移動し、穿孔Qを介して流体管1内を開閉する弁体5が内設されている。また、弁蓋3は、分岐部12の上端部の内径より小径の外径を有しており、弁蓋3の下部には、外周に沿ってOリング19が設けられている。弁蓋3の下部の外周に沿ってOリング19が設けられていることにより、分岐部12の内周面に沿って密封状に嵌挿されている。更に、分岐部12の上フランジ12aから内径方向に螺挿される固定ボルト16によって係止されているとともに、弁蓋3の外周面にリング状のフランジ9が係合するように配設され、このフランジ9と上フランジ12aとがボルト・ナット14によって緊締されていることで位置固定されている。
【0015】
次に、このように弁蓋3により閉鎖されている分岐部12の分岐開口12bを不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法について説明する。
【0016】
先ず、図2に示されるように、分岐部12の上フランジ12aには、内部に作業弁36を配設した本発明におけるケース体である作業弁ケース35を密封状に接続し、作業弁ケース35の上方には、分岐部12に向けて進退可能な挿入機38を内部に配設した外ケース37を取り付ける。そして、挿入機38の先端に弁蓋3を接続するとともに、固定ボルト16を弁蓋3から螺出して該挿入機38を退行移動させ、作業弁ケース35を介して分岐部12から弁蓋3を取り外す。
【0017】
次に、図3に示されるように、作業弁36によって作業弁ケース35を閉塞するとともに、弁蓋3に替えて、分岐部12の内方と外方とに連通する連通孔4aを備えた閉塞体4を挿入機38の先端に取り付ける。本実施例において閉塞体4は、分岐部12の上端部の内径よりも若干小径であり、平面視略円形状を成している。また、閉塞体4の外周面には、固定ボルト16の先端が係止する凹部4bと、分岐開口12bを密封するためのシールリング4cと、が形成されている。更に閉塞体4の連通孔4aは、内周面が雌ネジ状に形成されており、連通孔4aを開閉可能な本発明の接続部材である空気弁6が螺合して取り付けられている。
【0018】
その後、挿入機38を進行移動させることで、空気弁6を取り付けた閉塞体4を分岐部12内に取り付ける。このときには、分岐部12から分岐するホース39を介し、流体管1から流入する流体が外ケース37内へ排出され、作業弁36を境にした分岐部12側と外ケース37側とを等圧とすることができるため、挿入機38による閉塞体4の挿入が容易である。
【0019】
これによれば、閉塞体4が連通孔4aを備え、連通孔4aを開閉可能な接続部材が取り付けられることで、筐体2の配設位置における用途に合わせて、接続部材として空気弁6を適宜接続することができ、筐体2の分岐部12を有効に利用することができるとともに、空気弁6により連通孔4aを開閉することで分岐部12内に流体を滞留させないようにすることができる。
【0020】
閉塞体4を分岐部12内に取り付けた状態においては、図4に示されるように、閉塞体4のシールリング4cが分岐部12の内周面に圧接され、分岐開口12bが密封状に閉塞されるように成る。これにより、穿孔Qから分岐部12内に流れ込む流体が分岐開口12bから漏出することがない。次いで、固定ボルト16を凹部4bに向けて螺挿し、閉塞体4を係止する。すなわち固定ボルト16は、本発明の係止部を構成している。このように、分岐部12の上フランジ12aに前述した係止部である固定ボルト16が設けられていることで閉塞体4の位置決めが成される。すなわち、分岐開口12bが閉塞体4により密封状に閉塞された状態が維持される。その後、分岐部12の上フランジ12aに環状の押え蓋10をボルト・ナットによって取り付けることで、分岐部12内に異物が進入すること若しくは閉塞体4が分岐部12内から外れることを防止する。
【0021】
図4の状態では、本発明の接続部材である空気弁6は、この空気弁6に接続された補修弁の操作部6aの常開状態において分岐部12内に溜まる空気を外部へ常時排出することができる。尚、再度弁蓋3及び弁体5を使用するときは、上述と同様の工程を行うことにより、閉塞体4及び空気弁6を不断流状態で容易に交換することができる。
【0022】
以上説明したように、穿孔Qを有する流体管1に対し密封状に取り付けられ穿孔Qと連通する分岐部12を備えた筐体2において、分岐部12の分岐開口12bが弁蓋3により閉鎖されている分岐開口12bを不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法であって、分岐部12に連通する作業弁ケース35を密封状に取り付け、作業弁ケース35を介し弁蓋3を取り外した後、弁蓋3に替えて、分岐部12の内方及び外方に連通する連通孔4aを備えた閉塞体4を、作業弁ケース35を介し分岐部12に対して当接箇所が密封状になるように取り付けることで、連通孔4aに、この連通孔4aを開閉可能な接続部材を取り付け可能にした。これによれば、閉塞体4が連通孔4aを備え、連通孔4aを開閉可能な接続部材が取り付けられることにより、筐体2の配設位置における用途に合わせて、接続部材として例えば空気弁、補修弁、消火栓、ボールバルブ等を適宜接続することができ、筐体2の分岐部12を有効に利用することができるとともに、接続部材により連通孔4aを開閉することで分岐部12内に流体を滞留させないようにすることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、実施例2に係る分岐開口連通方法につき、図5及び図6を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0024】
本実施例の分岐開口連通方法は、閉塞体40の構造が前記実施例1と相違している。すなわち図5、6に示されるように、本実施例の閉塞体40は、穿孔Qに向けて延設される防錆部41を有している。この防錆部41は、穿孔Qに向けて延設される環状の筒状体41aと、筒状体41aの先端の外周面には、流体管1の金属素地が露出した穿孔Qの内周面に亘り当接する防錆部材41bと、から構成されている。この筒状体41aには、筒状体41aの径方向に貫通する貫通孔41cを有している。また、防錆部材41bは、例えばスチレンブタジエンゴム等の弾性を有する部材から成っている。
【0025】
図5、図6に示されるように前記実施例1と同様の工程により、分岐部12に閉塞体40を取り付け、分岐開口12bを密封状に閉塞する。このときには、前記したように閉塞体40から防錆部41が穿孔Qに向けて延設されているため、分岐開口12bを密封状に閉塞するとともに、防錆部41の防錆部材41bが穿孔Qの内周面に亘り当接することで穿孔Qを防錆する。
【0026】
このように、閉塞体40が防錆部41を有していることにより、穿孔Qに錆びが生じることを防止できるとともに、別途に穿孔Qを防錆する工程を行うことなく、閉塞体40を分岐開口に取り付けると同時に穿孔Qの防錆が行われるため、作業を簡略化できる。更に、穿孔Qから筒状体41a内に流入する流体は、貫通孔41cを介して分岐部12内と筒状体41a内とに連通可能になっているため、該流体の滞留領域が形成されず、流体管1及び筐体2内の流体を清浄に保つことができる。
【実施例3】
【0027】
次に、実施例3に係る分岐開口連通方法につき、図5から図7を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0028】
図7(a)に示されるように、前記実施例1と同様に、挿入機38の先端に弁蓋3を接続するとともに、該挿入機38を退行移動させ、作業弁ケース35を介して分岐部12から弁蓋3を取り外す。その後、図7(b)に示されるように、作業弁36によって作業弁ケース35を閉塞するとともに、外ケース37に替えて、穿孔装置50を作業弁ケース35の上方に接続する。
【0029】
この穿孔装置50は、図示しない駆動手段に接続され分岐部12内を流体管1に向け軸方向に伸出するとともに軸周りに回転する軸部材51と、軸部材51の先端に固設され流体管1を穿設する穿孔刃52aを備えたカッタ部材52と、から主として構成されており、カッタ部材52を穿孔Qにアプローチして穿孔Qの当初の穿孔面を削り、新たな穿孔面を形成する。これによって、穿孔Qの当初の穿孔面に錆び等の夾雑物が付着した場合であっても、この夾雑物を取り除くことができる。
【0030】
前記実施例2と同様に、閉塞体40によって分岐開口12を密封状に閉塞するとともに、防錆部41の防錆部材41bが穿孔Qの内周面に亘り当接することで穿孔Qを防錆する(図5,6参照)。
【0031】
これによれば、穿孔Qの防錆を行う前に穿孔Qの当初の穿孔面を切削することで、当初の穿孔面に錆び等の夾雑物が生じていた場合であっても、この夾雑物が取り除かれた新しい穿孔面を防錆することができ、流体管1及び筐体2内を清潔に保つことができる。
【実施例4】
【0032】
次に、実施例4に係る分岐開口連通方法につき、図8から図10を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0033】
図8に示されるように、本実施例の挿入機38’の先端には、ボルト・ナット18を介して適宜の部材を取り付け可能であり、外径方向に張り出した鍔部38aが形成されている。また、本実施例の閉塞体40’は、前記実施例2と同様に、穿孔Qに向けて延設される防錆部41を有しているとともに、穿孔Qと対抗方向に向けて延設され、端部が外径方向に張り出すフランジ部42を有している。また、連通孔4a’には、予め栓部材20の雄ネジ部20cが連通孔4a’の内周面の雌ネジ部14aに螺合して取り付けられている。この栓部材20は、図9の囲い部に示されるように、上方に突設された凸部20bを備え、断面視凸形状と成っているとともに、外径方向に開口する係合凹部20aが設けられている。
【0034】
先ず図8に示されるように、フランジ部42と鍔部38aとをボルト・ナット18を介して接続し、前記実施例1、2と同様に挿入機38’を進行移動させる。これにより、図9に示されるように閉塞体40’が分岐部12に取り付けられ、分岐開口12bが密封状に閉塞される。このとき、防錆部41の防錆部材41bは、穿孔Qの内周面に亘り当接することで穿孔Qを防錆する。尚、このように閉塞体40’を分岐部12に取り付る前に、上記実施例3で説明したように、カッタ部材により穿孔Qの当初の穿孔面を削り、新たな穿孔面を形成するようにしてもよい。
【0035】
この状態において、穿孔Qから流出した流体は、筐体2及び閉塞体40’の外部へ流出することがないため、作業弁ケース35、及び挿入機38’が配設された外ケース37を取り外すことができる。作業弁ケース35、及び挿入機38’が配設された外ケース37を取り外した後、図9に示されるように、閉塞体40’のフランジ部42に補修弁21が内設された補修弁ケース23を取り付けるとともに、補修弁ケース23の上方に栓部材20を取り外すための取り外し具25を備えた蓋ケース24を配設する。
【0036】
この取り外し具25は、蓋ケース24内に挿通され、連通孔4a’に向けて進退可能な軸部25aと、軸部25aの先端部に設けられ、栓部材20の凸部20bに嵌合可能な嵌合部25bと、軸部25aの後端部に設けられ、作業者が把持して操作可能な把持部25cと、から構成されている。軸部25aは、作業者が把持部25cを把持し、連通孔4a’に向けて押し下げ、若しくは引き上げを行うことにより補修弁ケース23を介して進退可能となっているとともに、作業者が把持部25cを把持し、適宜回転させることで軸周りに回転可能となっている。また、嵌合部25bは、栓部材20の凸部20bに嵌合した状態で係合凹部20aと係合するための係合ボルト26を有しており、この係合ボルト26は、係合凹部20a側に向けて図示しない弾性部材により内径方向に付勢されている係合端部26aを備えている。
【0037】
補修弁ケース23の上方に取り外し具25を備えた蓋ケース24を配設した後、作業者が把持部25cを把持し、取り外し具25を連通孔4a’に向けて押し下げ、嵌合部25bを栓部材20の凸部20bに嵌合させる。このとき、係合ボルト26の係合端部26aが凸部20bの外周面に付勢されながら摺動し、やがて係合端部26aが係合凹部20aの位置まで移動したときに弾性復元力によって係合凹部20aに収容され(図9囲い部参照)、取り外し具25と栓部材20とが係合した状態となる。そして、作業者が把持部25cを把持し、取り外し具25を軸部25aの軸周りに回転させることで、栓部材20の雄ネジ部20cと雌ネジ部14aとの螺合を解除した後、取り外し具25を退行させることで栓部材20を連通孔4a’から取り外す。
【0038】
これにより、図10に示されるように、連通孔4a’が補修弁ケース23と連通する。その後、補修弁21によって補修弁ケース23を閉塞して蓋ケース24及び取り外し具25を取り外すとともに、本実施例の接続部材である消火栓61を取り付ける。そして、補修弁21によって補修弁ケース23を開放し、作業者が消火栓61の栓部材を操作することで穿孔Qから流入する流体を適宜外部へ排出することができる。
【0039】
尚、本実施例の係合ボルト26の係合端部26aは、図示しない弾性部材により内径方向に付勢されているが、これに限らず、係合端部自体が弾性を有しており、係合ボルトに取り付けられていてもよい。また、取り外し具は、これに限られず、外部からの操作により栓部材を取り外し可能なものであればよい。
【実施例5】
【0040】
次に、実施例5に係る分岐開口連通方法につき、図11及び図12を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する説明を省略する。
【0041】
図11(a)に示されるように、本実施例における穿孔Q’は、図示しないカッタ部材によって穿設されており、流体管1の上部に、管周方向の幅寸法が管軸方向の幅寸法よりも長寸な上面視で略矩形状に形成されている。尚、上記した穿孔は、例えばエンドミルによって穿設されるものでもよい。また筐体2’は、穿孔Q’の外周に沿って配設されるゴムリング22’と、流体管1の管軸方向における略全長に亘って配設されるとともに、図示しない連続して当該管軸方向の両端部の略全周に亘って配設されるシール部材32と、を備えており、第1筐体11a’及び第2筐体11b’をボルト・ナットで緊締することで流体管1に密封状に取り付けられている。更に、分岐部12’には、分岐開口12b’を密封状に閉鎖する弁蓋3’(閉鎖体)が取り付けられており、この弁蓋3’には、穿孔Q’に向けて進退移動し、穿孔Q’を介して流体管1内を開閉する弁体5’が内設されている。
【0042】
また、図12に示されるように、本実施例の閉塞体140は、分岐部12’と同軸方向に略円筒状の延びる円筒状部140aを有しており、この円筒状部140aの穿孔Q’側の端部が穿孔Q’の内周面に当接される環状の防錆部141となっている。この防錆部141の外周面には、防錆部材141aが配設されている。また、円筒状部140aには、閉塞体140が分岐部12’に取り付けられる際に、分岐部12’の上フランジ12a’と接続可能な接続部140bが形成されている。
【0043】
図11(b)に示されるように、前記実施例と同様の工程により、挿入機38によって弁蓋3’及び弁体5’を分岐部12’から取り外す。次いで、図12(a)に示されるように、弁蓋3’に替えて補修弁ケース23と消火栓61とが接続された閉塞体140を挿入機38の先端に取り付け、当該挿入機38を穿孔Q’に向けて進行移動させる。これにより、図12(b)に示されるように、閉塞体140が分岐部12’に取り付けられ、分岐開口12b’が密封状に閉塞される。このとき、防錆部141の防錆部材141aは、穿孔Qの内周面に亘り当接することで穿孔Qを防錆する。そして、接続部140bと上フランジ12a’を、本発明の係止部であるボルトで緊締することで、分岐部12’に閉塞体140を固定し、分岐開口連通方法における作業が完了する。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、閉塞体の連通孔に接続される接続部材として、空気弁6や消火栓61が適用されているが、接続部材はこれ等に限られず、例えば、ボール弁、スルース弁、バタフライ弁、三方弁、ドレン等でもよく、閉塞体の連通孔を開閉可能であれば構わない。
【0046】
また、本発明の閉塞体に取り替えられる既設の閉鎖体は、前記実施例の弁蓋3,3’に限らず、例えば分岐部内に設置され、分岐開口を閉鎖した中蓋等でもよく、分岐部の分岐開口を密封状に閉鎖しているものであればよい。
【0047】
また、前記実施例では係止部を固定ボルト16として説明したが、例えば係止部は、分岐部の内周面から閉塞体に係止可能に設けられていてもよく、閉塞体の位置決めが成されるものであれば構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 流体管
2,2’ 筐体
3,3’ 弁蓋(閉鎖体)
4 閉塞体
4a,4a’ 連通孔
6 空気弁(接続部材)
12,12’ 分岐部
12b,12b’ 分岐開口
16 固定ボルト(係止部)
35 作業弁ケース(ケース体)
40,40’,140 閉塞体
41,141 防錆部
41b,141a 防錆部材
61 消火栓(接続部材)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に対し密封状に取り付けられ該流体管と連通する分岐部を備えた筐体において、前記分岐部の分岐開口が閉鎖体により閉鎖されている分岐開口を不断流状態で連通可能にする分岐開口連通方法であって、
前記分岐部に連通するケース体を密封状に取り付け、該ケース体を介し前記閉鎖体を取り外した後、
該閉鎖体に替えて、前記分岐部の内方及び外方に連通する連通孔及び該連通孔を着脱自在に閉じる栓部材を備えた閉塞体を、前記ケース体を介し前記分岐部に対して当接箇所が密封状になるように取り付け、
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、前記ケース体に替えて、補修弁が内設された補修弁ケースを取り付け、該補修弁を介し前記栓部材を前記連通孔から取り外すことで、該連通孔と前記補修弁ケースとを連通させた後、前記補修弁によって前記補修弁ケースを閉塞し、前記補修弁ケースに接続部材を取り付け、前記補修弁によって前記補修弁ケースを開放することを特徴とする分岐開口連通方法。
【請求項2】
前記閉塞体は、前記流体管の穿孔に当接される環状の防錆部を有しており、前記分岐開口に取り付けるとともに、該防錆部によって前記穿孔を防錆することを特徴とする請求項1に記載の分岐開口連通方法。
【請求項3】
前記穿孔を防錆する前に前記穿孔の穿孔面を切削することを特徴とする請求項2に記載の分岐開口連通方法。
【請求項4】
前記閉塞体を前記分岐部に取り付けた後、該分岐部の係止部によって係止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の分岐開口連通方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-20 
出願番号 特願2012-58454(P2012-58454)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F16L)
P 1 651・ 121- YAA (F16L)
P 1 651・ 536- YAA (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
氏原 康宏
登録日 2016-06-03 
登録番号 特許第5944705号(P5944705)
権利者 コスモ工機株式会社
発明の名称 分岐開口連通方法  
代理人 重信 和男  
代理人 石川 好文  
代理人 溝渕 良一  
代理人 石川 好文  
代理人 特許業務法人コスモ国際特許事務所  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 林 道広  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 溝渕 良一  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 重信 和男  
代理人 林 道広  

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