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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B64C
管理番号 1332251
異議申立番号 異議2016-700356  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-26 
確定日 2017-07-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5801851号発明「無人ヘリコプタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5801851号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、7〕について訂正することを認める。 特許第5801851号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5801851号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年6月28日に特許出願され、平成27年9月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1及び2に係る特許について、特許異議申立人古川律子(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年6月27日付けで取消理由が通知され、平成28年8月30日に特許権者から意見書が提出され、平成28年9月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、28年11月28日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、その本件訂正請求に対して平成29年1月11日に異議申立人から意見書が提出され、同年3月16日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年4月21日に特許権者から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正請求
本件訂正請求の趣旨は、特許第5801851号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、7について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正後の変更部分を示す。)。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え」と記載されているのを、「前記シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え」に訂正する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記ベアリングの外周に設けられかつ前記テールボディに支持されるハウジングをさらに含み、前記ハウジングは、前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む、請求項1に記載の無人ヘリコプタ。」と記載されているのを、「駆動源と、テールロータと、前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディと、前記ベアリングの外周に設けられ、前記テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、前記ハウジングは、前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む、無人ヘリコプタ。」に訂正する。

3 訂正事項3
明細書の段落【0007】に「前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え」と記載されているのを、「前記シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え」に訂正する。

4 訂正事項4
明細書の段落【0009】に「請求項2に記載の無人ヘリコプタは、請求項1に記載の無人ヘリコプタにおいて、内輪を有さず、ドライブシャフトに直接接触するようにドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、ドライブシャフトを覆いかつベアリングを介してドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備えることを特徴とする。」と記載されているのを、「請求項2に記載の無人ヘリコプタは、駆動源と、テールロータと、前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディと、前記ベアリングの外周に設けられ、前記テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、前記ハウジングは、前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含むことを特徴とする。」に訂正する。

第3 訂正の適否についての判断
1 訂正の目的
訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

2 新規事項
訂正事項1?4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1?4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

3 拡張・変更の存否
訂正事項1は、「弾性体」という発明特定事項に「ゴム系材料からなる」との限定を付すものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項2は、「ハウジング」という発明特定事項に「環状に形成される」及び「前記ベアリングよりも径方向外側において」との限定を付すものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るため、明細書の記載を訂正するものであるから、訂正事項1及び2と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 一群の請求項
訂正事項1?4の訂正は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

5 独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1及び2について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1及び訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項で規定される独立特許要件は課されない。
一方、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項7に係る訂正事項1及び訂正事項2に関しては、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項で規定される独立特許要件が課される。
しかしながら、「第4 3」で後述するように、訂正後の請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、同様に訂正後の請求項1または2を引用する請求項7に係る発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。
したがって、訂正後の請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

6 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項の規定に適合するので、本件訂正請求による訂正を認める。

第4 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
特許第5801851号の請求項1?7に係る特許は、それぞれ、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、特許異議の申立てがされた請求項1及び2に係る特許発明(以下「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、
内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、
前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備える、無人ヘリコプタ。
【請求項2】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、
内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、
前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディと、
前記ベアリングの外周に設けられ、前記テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、
前記ハウジングは、前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む、無人ヘリコプタ。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成28年9月23日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下「取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明、刊行物に記載の技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 取消理由についての判断
(1)刊行物の記載事項、認定事項及び引用発明
ア 本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開平10-16895号公報(異議申立人が提出した甲第1号証。以下「刊行物」という。)には、「無人ヘリコプターのテールロータ駆動装置」に関して、図面とともに以下の事項(以下「記載事項(ア)」等という。)が記載されている。なお、下線は当審で付与した。以下同様。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無人ヘリコプターのテールロータ駆動装置に関し、特にテールロータ駆動装置の振動を防止できるようにした無人ヘリコプターのテールロータ駆動装置に関する。」

(イ)「【0005】又、例えば図4に示すように、メーンシャフト201からこれの回転軸と直交する方向の出力軸202aに回転を取り出せるようにしたパワーテークアウト用のギヤーボックス202を設け、このギヤーボックス202の出力軸202aにスプリングジョイントなどの可撓ジョンイト203を介してテールシャフト204を連結し、更に、テールボデー205の後端に支持させたギャボックス206を介してこのテールシャフト204にテールロータ207を連動させる伝動機構もある。
【0006】なお、図3及び図4においてEはエンジン、Vは水平ベルト伝動機構でを示している。」
(合議体注;段落【0005】の「ギャボックス206」は「ギヤボックス206」の誤記と認められるので、以下では、「ギヤボックス206」として扱う。)

以上の記載事項に加えて次の事項(以下「認定事項(ウ)」等という。)が認定できる。
(ウ)記載事項(イ)(段落【0005】)には、「例えば図4に示すように、パワーテークアウト用のギヤーボックス202を設け・・・ギヤーボックス202の出力軸202aにスプリングジョイントなどの可撓ジョンイト203を介してテールシャフト204を連結し・・・ギヤボックス206を介してこのテールシャフト204にテールロータ207を連動させる伝動機構もある。」と記載されており、併せて図4を参照すると、伝動機構は、テールシャフト204とパワーテークアウト用のギヤーボックス202とギヤボックス206とを含み、エンジンEからの動力をテールロータ207に伝達するものであり、スプリングジョイント203は、ギヤーボックス202の出力軸202aとテールシャフト204との間において、伝動機構に設けられているものと認められる。

(エ)記載事項(イ)(段落【0006】)の「図4においてEはエンジン、Vは水平ベルト伝動機構」との記載及び図4を参照すると、パワーテークアウト用のギヤーボックス202は水平ベルト伝動機構Vを介してエンジンEに連結されているものと認められる。

(オ)通常、テールボデーとはテールシャフトを覆うものを指すことが技術常識であり、併せて図4を参照すると、テールボデー205はテールシャフト204を覆っているものと認められる。

これらの記載事項(ア)、(イ)、認定事項(ウ)?(オ)及び図面内容を総合すると、刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「エンジンEと、
テールロータ207と、
前記エンジンEからの動力を前記テールロータ207に伝達するための伝動機構と、
前記伝動機構に設けられるスプリングジョイントなどの可撓ジョイント203とを備え、
前記伝動機構は、テールシャフト204と、水平ベルト伝動機構Vを介してエンジンEに連結され、かつ、前記テールシャフト204がその出力軸202aに連結されるパワーテークアウト用のギヤーボックス202と、前記テールシャフト204に前記テールロータ207を連動させるギヤボックス206とを含み、
前記スプリングジョイントなどの可撓ジョイント203は、前記ギヤーボックス202の出力軸202aと前記テールシャフト204との間において、前記伝動機構に設けられる、無人ヘリコプタであって、
前記テールシャフト204を覆うテールボデー205を備える、無人ヘリコプター。」

イ また、刊行物には、「無人ヘリコプターのテールロータ駆動装置」に関して、図面とともに以下の事項(以下「記載事項(カ)等という。)が記載されている。
(カ)「【0013】前記テールボデー5は、例えばグラスファイバーからなる先細りのテーパ筒状に形成された胴体5aと、その前端と後端とに設けた端壁5b,5c、これら前端壁5bと後端壁5cと連結する連結パイプ5dと、胴体5a内の中間部に設けた補強板5eと、胴体5aの機体への取付強度を高めるための取付板5fとを備えている。」

(キ)「【0016】このように、テールボデー5の前後両端壁5b,5cをに連結パイプ5dで連結することによりテールボデー5の剛性が著しく高められ、又、胴体5aの中間部に補強板5eを設け、この補強板5eを介して胴体5aと連結パイプ5dとを結合することによりテールボデー5の剛性は一層高められることになる。」

(ク)「【0018】さて、前記連結パイプ5d内にはその軸心方向に適当な間隔を置いて複数のベアリング8が配置され、これらのベアリング8を介して前記伝動機構7のテールシャフト71が連結パイプ5dに回転自在に支持される。」(合議体注;「ベアリング8」は「ベアリング10」の誤記と認められるので、以下では、「ベアリング10」として扱う。)

(ケ)「【0024】又、前記テールボデー5が前端壁5bと、後端壁5cと、これら前後両端壁5b,5cを連結する連結パイプ5dと、補強板5eとを備えるので、テールボデー5の剛性が高くなる上、前記テールシャフト71が複数のベアリング10を介してこの剛性の高いテールボデー5の連結パイプ5dに支持されるので、テールシャフト71の振動を完全に無くすことができる。」

(2)本件特許発明1との対比
ア 本件特許発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、引用発明の「エンジンE」は本件特許発明1の「駆動源」に相当し、以下同様に、「テールロータ207」は「テールロータ」に、「テールシャフト204」は「ドライブシャフト」に、「テールボデー205」は「テールボディ」に、「無人ヘリコプター」は「無人ヘリコプタ」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「伝動機構」は、シャフトである「テールシャフト204」を含んでおり、かつ、「前記エンジンEからの動力を前記テールロータ207に伝達する」点で本件特許発明1の「シャフトユニット」と同様の機能を有するものであるから、本件特許発明1の「シャフトユニット」に相当するといえる。

ウ 本件特許発明1の「前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される」は、弾性体がトランスミッションとドライブシャフトとの間に設けられている場合も含むものと解される。また、引用発明の「スプリングジョイントなどの可撓ジョイント203」は、弾性を有することが明らかであり「弾性体」といえるものである。
そうすると、引用発明の「前記伝動機構に設けられるスプリングジョイントなどの可撓ジョイント203とを備え、」「前記スプリングジョイントなどの可撓ジョイント203は、前記ギヤーボックス202の出力軸202aと前記テールシャフト204との間において、前記伝動機構に設けられる」と、本件特許発明1の「前記シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え、」「前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される」とは、「前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、」「前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される」との限度で一致するといえる。

エ 引用発明の「パワーテークアウト用のギヤーボックス202」は、「水平ベルト伝動機構Vを介してエンジンEに連結され、かつ、前記テールシャフト204がその出力軸202aに連結される」ものであるから、エンジンEからの動力をテールシャフト204に伝達するものといえる。
したがって、引用発明の「水平ベルト伝動機構Vを介してエンジンEに連結され、かつ、前記テールシャフト204がその出力軸202aに連結されるパワーテークアウト用のギヤーボックス202」は、本件特許発明1の「前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッション」に相当するといえる。

オ 引用発明の「ギヤボックス206」は、「前記テールシャフト204に前記テールロータ207を連動させる」ものであるから、テールシャフト204の回転トルクをテールロータ207に伝達するものといえる。
したがって、引用発明の「前記テールシャフト204に前記テールロータ207を連動させるギヤボックス206」は、本件特許発明1の「前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部」に相当するといえる。

カ 引用発明の「前記テールシャフト204を覆うテールボデー205を備える」という構成と、本件特許発明1の「前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備え」という構成は、「前記ドライブシャフトを覆うテールボディをさらに備え」との限度で一致するといえる。

キ したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、
前記ドライブシャフトを覆うテールボディをさらに備え、
前記駆動源はエンジンを含む、無人ヘリコプタ。」

<相違点1>
「弾性体」に関し、本件特許発明1では、「ゴム系材料からなる」ものであるのに対し、
引用発明では、「スプリングジョイントなど」が例示されるものである点。

<相違点2>
「ドライブシャフトを覆うテールボディ」に関し、本件特許発明1では、「内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、」「前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持する」ものであるのに対し、
引用発明では、当該事項を有していない点。

(3)本件特許発明1との相違点の判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ア 刊行物には、記載事項(キ)に「胴体5aの中間部に補強板5eを設け、この補強板5eを介して胴体5aと連結パイプ5dとを結合する」と記載され、記載事項(ケ)に「前記テールシャフト71が複数のベアリング10を介してこの剛性の高いテールボデー5の連結パイプ5dに支持される」と記載されており、併せて図1を参照すると、胴体5aは、テールシャフト71を覆い、かつ、ベアリング10、連結パイプ5d及び補強板5eを介してテールシャフト71を支持しているものと認められる。
したがって、刊行物の記載事項(カ)?(ケ)、上記認定事項及び図面内容を総合すると、刊行物には、図1に係る例として、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下「刊行物に記載の技術的事項1」という。)。
「テールシャフト71の振動を無くすために、テールシャフト71を連結パイプ5dに回転自在に支持するベアリング10と、テールシャフト71を覆い、かつ、ベアリング10、連結パイプ5d及び補強板5eを介してテールシャフト71を支持する胴体5aとを備える無人ヘリコプター。」

イ 刊行物に記載の技術的事項1の「テールシャフト71」は、その意味、機能または構造からみて本件特許発明1の「ドライブシャフト」に相当し、以下同様に、「胴体5a」は「テールボディ」、「無人ヘリコプター」は「無人ヘリコプタ」にそれぞれ相当する。
また、刊行物に記載の技術的事項1のベアリング10は、テールシャフト71を回転自在に支持するものであるから、テールシャフト71の外周に設けられているものといえる。したがって、刊行物に記載の技術的事項1の「テールシャフト71を連結パイプ5dに回転自在に支持するベアリング10」と、本件特許発明1の「内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリング」とは、「前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリング」という限度で一致するといえる。

ウ そうすると、刊行物に記載の技術的事項1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項のうち、「前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備える」点を有していると認められる。

エ そして、刊行物の段落【0008】には、引用発明のテールシャフト204が飛行中に振動する旨記載されていることから、当該テールシャフト204の振動を低減すべく、刊行物に記載の技術的事項1を、引用発明に適用する動機付けは十分にあるといえる。

オ ここで、本件特許発明1において、ベアリングを内輪を有さないものとした理由は、本件特許明細書の段落【0058】の「ドライブシャフト46に高周波の回転数変動が発生しても、ニードルベアリング134とドライブシャフト46との接触部が破損することを抑制できる。また、ドライブシャフト46をニードルベアリング134から容易に着脱できるため、部品の点検や交換が容易になる。」、同【0059】の「ドライブシャフト46をニードルベアリング134に装着するのに適切な位置にニードルベアリング134を配置できるため、ドライブシャフト46を容易に装着できる。」という作用効果を得るためのものと認める。

カ そして、例えば、異議申立人が提出した甲第3号証(米国特許出願公開第2009/0057481号明細書)(段落[0016]、[0024]及び図2等参照)または同甲第5号証(中国実用新案第202345913号明細書)(段落[0022]、[0023]及び図1等参照)に記載されるように、ヘリコプタにおいて、メインシャフトを回転自在に支持するためのベアリングとして、内輪を有さず、メインシャフト(甲第3号証の第一出力軸20、甲第5号証のメインローター軸1)に直接接触するように前記メインシャフトの外周に設けられるベアリング(甲第3号証の第一、第二のニードル軸受90、100、甲第5号証の無インナーリング円筒ローラベアリング2)を用いるという技術は、従来周知の技術であるといえる。

キ しかしながら、甲第3号証や甲第5号証に記載されるものは、いずれもテールロータではなくメインロータに動力を伝達するメインシャフト用のベアリングである上、上記オで述べたような作用効果に関する記載はない。そして、甲第3号証に記載されるのは、内輪を有する第三のニードル軸受110(FIG.2の記載から内輪を有していることが把握できる。)及び第一?三スラスト軸受60?62を併用するものであるから、上記オで述べたような作用効果は奏し得ないものと解され、また、甲第5号証に記載されるものも、内輪を有する三点接触玉軸受3を併用するものであることから、同様に上記オで述べたような作用効果は奏し得ないものと解される。

ク したがって、上記エの適用の際、ドライブシャフトのベアリングに、上記カの周知技術を採用する動機付けはなく、また、作用効果の予測性もないというべきである。
よって、本件特許発明1は、引用発明、刊行物に記載の技術的事項1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)本件特許発明2との対比
ア 本件特許発明2と引用発明とを対比すると、上記(2)ア、イ、エ?カと同様のことに加えて、次のことがいえる。

イ 本件特許発明2の「前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される」は、弾性体がトランスミッションとドライブシャフトとの間に設けられている場合も含むものと解される。また、引用発明の「スプリングジョイントなどの可撓ジョイント203」は、弾性を有することが明らかであり「弾性体」といえるものである。
そうすると、引用発明の「前記伝動機構に設けられるスプリングジョイントなどの可撓ジョイント203とを備え、」「前記スプリングジョイントなどの可撓ジョイント203は、前記ギヤーボックス202の出力軸202aと前記テールシャフト204との間において、前記伝動機構に設けられる」は、本件特許発明2の「前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、」「前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される」に相当するといえる。

ウ したがって、両者は、上記(2)キと同様の<一致点>で一致し、以下の点で相違している。
<相違点3>
「ドライブシャフトを覆うテールボディ」に関し、本件特許発明2では、「内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、」「前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持する」ものであり、「前記ベアリングの外周に設けられ、前記テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、前記ハウジングは、前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む」のに対し、
引用発明では、当該事項を有していない点。

(5)本件特許発明2との相違点の判断
ア 刊行物には、記載事項(キ)に、「胴体5aの中間部に補強板5eを設け、この補強板5eを介して胴体5aと連結パイプ5dとを結合する」と記載され、記載事項(ケ)に、「前記テールシャフト71が複数のベアリング10を介してこの剛性の高いテールボデー5の連結パイプ5dに支持される」と記載されており、併せて図1を参照すると、胴体5aは、テールシャフト71を覆い、かつ、ベアリング10、連結パイプ5d及び補強板5eを介してテールシャフト71を支持しており、補強板5e及び連結パイプ5dは、ベアリング10の外周に設けられ、かつ、胴体5aに結合されているものと認められる。また、一般的に、パイプがパイプの軸方向に貫通する孔を含むのは技術常識であり、併せて図1を参照すると、連結パイプ5dも連結パイプ5dの軸方向に貫通する、テールシャフト71及びベアリング10を配置するための孔を含むものと認められる
したがって、刊行物の記載事項(カ)?(ケ)、上記認定事項及び図面内容を総合すると、刊行物には、図1に係る例として、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下「刊行物に記載の技術的事項2」という。)。
「テールシャフト71の振動を無くすために、テールシャフト71を連結パイプ5dに回転自在に支持するベアリング10と、テールシャフト71を覆い、かつ、ベアリング10、連結パイプ5d及び補強板5eを介してテールシャフト71を支持する胴体5aとを備え、ベアリング10の外周に設けられかつ胴体5aに結合される補強板5e及び連結パイプ5dを含み、前記連結パイプ5dは、連結パイプ5dの軸方向に貫通する、テールシャフト71及びベアリング10を配置するための孔を含む、無人ヘリコプター。」

イ 刊行物に記載の技術的事項2の「テールシャフト71」は、その意味、機能または構造からみて本件特許発明2の「ドライブシャフト」に相当し、以下同様に、「胴体5a」は「テールボディ」、「無人ヘリコプター」は「無人ヘリコプタ」にそれぞれ相当する。
また、刊行物に記載の技術的事項2のベアリング10は、テールシャフト71を回転自在に支持するものであるから、テールシャフト71の外周に設けられているものといえる。したがって、刊行物に記載の技術的事項2の「テールシャフト71を連結パイプ5dに回転自在に支持するベアリング10」と、本件特許発明2の「内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリング」とは、「前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリング」という限度で一致するといえる。

ウ そうすると、刊行物に記載の技術的事項2は、上記相違点3に係る本件特許発明2の発明特定事項のうち、「前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディと」を含む点を有していると認められる。

エ そして、上記(3)エ?キの説示と同様に、刊行物に記載の技術的事項2を、引用発明に適用する動機付けは十分にあるといえるが、ドライブシャフトのベアリングに、上記(3)カの周知技術を採用する動機付けはなく、また、作用効果の予測性もないというべきである。

オ さらに、刊行物に記載の技術的事項2における「孔」は、テールシャフト71及びベアリング10を配置するためのものであるから、本件特許発明2のように「前記ベアリングよりも径方向外側」に配置されるものではないし、そのような配置とすることは構造上不可能なものである。
また、刊行物に記載の技術的事項2を、引用発明に適用したならば、本件特許発明2の「ハウジング」に機能上相当するのは、「補強板5e及び連結パイプ5d」になるが、それは「環状に形成される」ものとはいえないものであるし、「前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む」というものでもない。そして、当該「補強板5e及び連結パイプ5d」の構成を大幅に変更して、「環状に形成される」ものとし「前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む」構成とすることを容易とする合理的な理由も見当たらない。

カ よって、本件特許発明2は、引用発明、刊行物に記載の技術的事項2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(6)小括
以上、検討したとおり、取消理由によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立書の第14?16ページの「(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比」において、ベアリングが内輪を有さないことに関し、取消理由通知において採用しなかった甲第2、4、6号証の記載事項から容易想到である旨も主張しているので、以下各証拠について検討する。
ア 甲第2号証
甲第2号証(実公平6-6877号公報)に記載される「ニードルベアリングよりなるクラッチパイロットベアリング7」は、内輪を有さないことの直接的な記載はないものの、分解斜視図である第1図を見ると、その内側の面に縦の線が記載されており、ベアリングの技術常識を考慮すると、縦の線はニードルを表していると解するのが相当であるので、当該「ニードルベアリングよりなるクラッチパイロットベアリング7」は内輪を有さないものと一応把握できる。
しかしながら、当該「ニードルベアリングよりなるクラッチパイロットベアリング7」は、テールロータに動力を伝達するドライブシャフトを支持するものではなく、ロータに駆動ギア8を介して動力を伝達する「中心軸10」を支持するものである上、その構造からみて、エンジンEの回転数が所定回転数未満のとき(遠心クラッチが切れている状態)、エンジンEにより回転する「ファン一体型クラッチベース1」とエンジンEからの動力が伝達されない「中心軸10」の相対回転を許容し、エンジンEが所定回転数になり「クラッチシュー12」により「中心軸10」に動力が伝達されるとき(遠心クラッチが接続する状態)は、「中心軸10」とともに回転されるものであって、本件特許発明1の「ベアリング」とは、その目的とするところも作用効果も異なるものであるので、上記3(3)エの適用の際、ドライブシャフトのベアリングに、甲第2号証に記載の技術的事項を採用する動機付けがあるとはいえないし、作用効果の予測性もないというべきである。

イ 甲第4号証
甲第4号証(AMERICAN HELICOPTER SOCIETY,47th Annual Forum Proceedings,1991年5月6?8日開催,Volume2,p1249-1258)に記載されるベアリングも、テールロータに動力を伝達するドライブシャフトを支持するものではなく、「メインギアボックス」に用いられるものである上、上記3(3)オで述べたような作用効果に関する記載はなく、さらに、第1253ページ左上欄第6?7行及びFIG.9の記載からみて、ベアリングのローラーまたはボールを保持する内輪自体をシャフトに組み込んでいるものであるから、本件特許発明1の「内輪を有さ」ない「ベアリング」とは異なるものと解される。
したがって、上記3(3)エの適用の際、ドライブシャフト及びそのベアリングに採用する動機付けがあるとはいえないし、作用効果の予測性もなく、仮に採用したとしても、本件特許発明1の「ベアリング」に係る構成には至らない。

ウ 甲第6号証
甲第6号証(齋藤光平,外6名,航空工学講座 第11巻 ヘリコプタ,社団法人日本航空技術協会,2011年3月31日第4版第1刷,p.130-131,p.134-135)に記載されるころ軸受も、テールロータに動力を伝達するドライブシャフトを支持するものではなく、「トランスミッション系統」に用いられるものである上、上記3(3)オで述べたような作用効果に関する記載はなく、、第131ページ第3行の記載からみて、上記イと同様にころ軸受けのころを保持する内輪自体をギアシャフトと一体化しているものであって、さらに、第131ページ第2行には、ころ軸受は玉軸受(内輪自体をギアシャフトと一体化することはころ軸受しか記載がないことから、玉軸受は内輪をギアシャフトとは別途設けていると解される。)と組み合わせて使用する旨記載されていることから、上記3(3)エの適用の際、当該技術的事項をドライブシャフト及びそのベアリングに採用する動機付けがあるとはいえないし、作用効果の予測性もなく、仮に採用したとしても、本件特許発明1の「ベアリング」に係る構成には至らない。
なお、図7-16に記載されるテール・ロータ・シャフトに用いるベアリングは、当該図の右下の断面図の記載から明らかなようにテール・ロータ・シャフトとは別体の内輪を有する形式のものである。

(2)特許異議申立書の第16?18ページの「(イ)本件特許発明2と甲1発明との対比」において、甲第6号証にベアリングを覆って支持する部材が胴体構造に固定されており、甲第7号証(Boeing MH-47G,FLIGHT INTERNATIONAL,[online],[平成28年1月12日検索],インターネット<https://sobchak.files.wordpress.com/2013/02/mh47cut.jpg>、甲第8号証(US Army Special Operations Command MH-47G Special Operations Chinook,[online],Boeing,[平成28年1月12日検索],インターネット<http://www.boeing.co.in/resources/en-in/media/BoeingIndia/Products-and-Services/Defense-Space-and-Security/BDS-in-India/MH-47G_overview.pdf>、甲第9号証(木達一仁,Perdix駆動系詳細,Perdix,[online],@kazuhito,[平成28年1月12日検索],インターネット<http://kidachi.kazuhi.to/hpa/perdix/drive.html><http://kidachi.kazuhi.to/hpa/perdix/>により、ハウジングに貫通孔を設けることが周知技術であり、甲第6号証の記載事項に甲第7?9号証の記載事項を組み合わせることは容易であって、それを甲1発明に採用することにより本件特許発明2が容易に想到し得た旨も主張しているので以下検討する。
特許異議申立書の第10ページ第13?20行の記載によれば、異議申立人は、甲第1号証における従来の技術と実施の形態を組み合わせたものを「甲1発明」としている。
しかしながら、甲第1号証には、両者を組み合わせたものは記載されていないので、上記3(1)アで述べた「引用発明」と上記3(5)アで述べた「刊行物に記載の技術的事項2」がそれぞれ記載されているというべきである。
そして、「引用発明」に「刊行物に記載の技術的事項2」を適用した上で、甲第6号証に記載の技術的事項に甲第7?9号証に記載の技術的事項を組み合わせたものをさらに採用するということは、いわゆる容易の容易ということになり、当業者であっても容易になし得たとすることはできない。

第5 むすび
以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
無人ヘリコプタ
【技術分野】
【0001】
この発明は無人ヘリコプタに関し、より特定的には、ドライブシャフトを備える無人ヘリコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例が特許文献1において開示されている。特許文献1に開示された無人ヘリコプタは、テールロータへ回転トルクを伝達する伝導軸(ドライブシャフト)と、伝導軸を支持するテールブームと、テールブームの外周面を被蓋する化粧カバーとを含み、テールブームの外周面とこれに対面する化粧カバーとの間に弾性部材を介在させている。
【0003】
このような無人ヘリコプタにおいては、機体の姿勢を制御するためには、テールロータの回転数を厳密に制御する必要がある。そのためには、所望の回転トルクをテールブームを介してテールロータに伝達しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6-6876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された無人ヘリコプタでは、テールロータを回転させる際にエンジンの回転変動等に起因するハンチング現象によって伝導軸に高周波かつ振幅の大きい回転数変動が生じた場合、この回転数変動に起因して伝導軸に大きな回転トルクが発生するおそれがあった。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、テールロータを回転させる際にシャフトユニットに高周波かつ振幅が大きい回転数変動が生じても、ドライブシャフトにおける回転トルクの増加を抑制し、所望の回転数および回転トルクをテールロータに伝達することができる、無人ヘリコプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の無人ヘリコプタは、駆動源と、テールロータと、駆動源からの動力をテールロータに伝達するためのシャフトユニットと、シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え、シャフトユニットは、ドライブシャフトと、駆動源からの動力をドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、ドライブシャフトからの回転トルクをテールロータに伝達するための伝達部とを含み、弾性体は、トランスミッションとドライブシャフトとの間から、ドライブシャフトと伝達部との間までにおいて、シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、内輪を有さず、ドライブシャフトに直接接触するようにドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、ドライブシャフトを覆いかつベアリングを介してドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の無人ヘリコプタは、駆動源と、テールロータと、駆動源からの動力をテールロータに伝達するためのシャフトユニットと、シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、シャフトユニットは、ドライブシャフトと、駆動源からの動力をドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、ドライブシャフトからの回転トルクをテールロータに伝達するための伝達部とを含み、弾性体は、トランスミッションとドライブシャフトとの間から、ドライブシャフトと伝達部との間までにおいて、シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、内輪を有さず、ドライブシャフトに直接接触するようにドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、ドライブシャフトを覆いかつベアリングを介してドライブシャフトを支持するテールボディと、ベアリングの外周に設けられ、テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、ハウジングは、ベアリングよりも径方向外側においてドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の無人ヘリコプタは、駆動源と、テールロータと、駆動源からの動力をテールロータに伝達するためのシャフトユニットと、シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、シャフトユニットは、ドライブシャフトと、駆動源からの動力をドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、ドライブシャフトからの回転トルクをテールロータに伝達するための伝達部とを含み、弾性体は、トランスミッションとドライブシャフトとの間から、ドライブシャフトと伝達部との間までにおいて、シャフトユニットに介挿され、弾性体の変位量と弾性体が出力する回転トルクとが、変位量が増加すれば回転トルクが所定値に漸近するように増加する関係を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の無人ヘリコプタは、駆動源と、テールロータと、駆動源からの動力をテールロータに伝達するためのシャフトユニットと、シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、シャフトユニットは、ドライブシャフトと、駆動源からの動力をドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、ドライブシャフトからの回転トルクをテールロータに伝達するための伝達部とを含み、ドライブシャフトは、第1シャフト部と第2シャフト部とを含み、弾性体は、第1シャフト部と第2シャフト部との間に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の無人ヘリコプタは、請求項4に記載の無人ヘリコプタにおいて、第1シャフト部と弾性体とはドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、第2シャフト部と弾性体とはドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、第1シャフト部と弾性体との接続箇所を第1接続部とし、第2シャフト部と弾性体との接続箇所を第2接続部とすると、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフトの軸方向からみて重ならないことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の無人ヘリコプタは、請求項5に記載の無人ヘリコプタにおいて、弾性体における第1シャフト部側の主面に設けられる第1プレート部と、弾性体における第2シャフト部側の主面に設けられる第2プレート部とをさらに含み、第1プレート部と弾性体とはドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、第2プレート部と弾性体とはドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、ドライブシャフトの軸方向からみて、第1プレート部と第2接続部とが重なり、第2プレート部と第1接続部とが重なることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の無人ヘリコプタは、請求項1から6のいずれかに記載の無人ヘリコプタにおいて、駆動源はエンジンを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項1に記載の無人ヘリコプタでは、シャフトユニットに弾性体を挟むように設けることによって、シャフトユニットに高周波かつ振幅の大きい回転数変動が生じ、それに起因する過大な回転トルクが発生しても、弾性体がその回転トルクを吸収する。それによって、シャフトユニットに生じる回転トルクを減じることができる。したがって、ドライブシャフトから伝達部を介してテールロータには、過大な回転トルクの発生を抑制しつつ所望の回転数および回転トルクを伝達できる。
【0016】
また、ドライブシャフトは、たとえばニードルベアリングのような内輪を有さないベアリングを介して、テールボディに支持されている。このベアリングは、ドライブシャフトの外周に設けられる際にドライブシャフトに固着されない。したがって、ドライブシャフトに高周波の回転数変動が発生しても、ベアリングとドライブシャフトとの接触部が破損することを抑制できる。また、ドライブシャフトをベアリングから容易に着脱できるため、部品の点検や交換が容易になる。
【0017】
請求項2に記載の無人ヘリコプタでは、ドライブシャフトは、ベアリングおよびハウジングを介してテールボディに支持される。したがって、ドライブシャフトをベアリングに装着するのに適切な位置にベアリングを配置できるため、ドライブシャフトを容易に装着できる。また、ハウジングには孔が設けられているので、テールボディ内に配置された部材のメンテナンスを容易にできる。
【0018】
請求項3に記載の無人ヘリコプタでは、弾性体は、所定値未満の回転トルクを出力するが、所定値以上の回転トルクを出力しない。したがって、弾性体は、駆動源側から所定値以上の過大な回転トルクが与えられても、この過大な回転トルクをテールロータ側に出力しない。したがって、回転トルクの増加を抑制でき、テールロータに所望の回転トルクを伝達することができる。また、回転トルクの上記所定値を、常用域の(通常伝達する必要がある)トルクよりやや大きく設定しておけば、常用域のトルクがたとえ高周波トルクであっても、弾性体はそれを追従してテールロータ側に出力できる。
【0019】
請求項4に記載の無人ヘリコプタでは、ドライブシャフトは分割構造を有し、第1シャフト部と第2シャフト部とは弾性体を介して軸方向に連結される。したがって、ドライブシャフトを構成する第1シャフト部および第2シャフト部のそれぞれの長さを適切に設定できるので、各シャフト部を適切に支持できるとともに、伝達トルクから計算されるドライブシャフトの(ねじり/曲げ)剛性に起因する(回転/曲げ)自励共振振動を制御することができる。
【0020】
仮にドライブシャフトの軸方向からみて第1接続部と第2接続部とが重なる場合には、重なっている第1接続部および第2接続部とドライブシャフトとを含む仮想的な平面方向に、ドライブシャフトは撓み難くなる。そこで、請求項5に記載の無人ヘリコプでは、ドライブシャフトの軸方向からみて第1接続部と第2接続部とが重ならないように、第1接続部と第2接続部とをずらせることによって、ドライブシャフトは、特定の方向に撓み難いということはなく任意の方向に撓むことができる。したがって、ドライブシャフトは、たとえばその軸方向に直交する方向から外力を受けても、撓むことによってその外力を吸収でき、ドライブシャフトが損傷することを抑制できる。
【0021】
請求項6に記載の無人ヘリコプタでは、ドライブシャフトの軸方向からみて第1プレート部と第2接続部とは重なっており、弾性体の第1シャフト部側の主面において、第1プレート部は第1接続部とは異なる位置に取り付けられる。また、ドライブシャフトの軸方向からみて第2プレート部と第1接続部とが重なっており、弾性体の第2シャフト部側の主面において、第2プレート部は第2接続部とは異なる位置に取り付けられる。このように第1プレート部および第2プレート部を弾性体に取り付けることによって、弾性体の不所望な変形を抑制できる。
【0022】
駆動源がエンジンである場合、たとえばエンジンの回転数変動によってシャフトユニットに高周波の振動が発生しやすい。したがって、この発明は、請求項7に記載の無人ヘリコプタのように駆動源がエンジンを含む場合に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、テールロータを回転させる際にシャフトユニットに高周波かつ振幅が大きい回転数変動が生じても、ドライブシャフトにおける回転トルクの増加を抑制し、所望の回転数および回転トルクをテールロータに伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態の無人ヘリコプタを示す側面図である。
【図2】シャフトユニットを側方(左方)から見た側面図解図である。
【図3】シャフトユニットを上方から見た平面図解図である。
【図4】弾性体が介挿されたドライブシャフトを示す斜視図である。
【図5】ドライブシャフトと弾性体との接続部近傍を示す分解斜視図である。
【図6】第1シャフト部の両端部を示す斜視図である。
【図7】(a)は第1シャフト部の両端部を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図8】ドライブシャフトに装着されたニードルベアリングおよびハウジングの要部を示す斜視図である。
【図9】ニードルベアリングおよびハウジングの要部を示す斜視図である。
【図10】弾性体の変位量-回転トルク特性を示すグラフである。
【図11】(a)は弾性体への入力回転トルクを示す図解図、(b)は弾性体からの出力回転トルクを示す図解図である。
【図12】ドライブシャフトと弾性体との接続部近傍の他の例を示す分解斜視図である。
【図13】ドライブシャフトと弾性体との接続部近傍のその他の例を示す分解斜視図である。
【図14】ドライブシャフトと弾性体との接続部近傍のさらに他の例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。この実施形態における前後、左右、上下とは、無人ヘリコプタ10(以下、ヘリコプタ10と略記する)の基本姿勢(マスト14が鉛直方向に対して平行になっているときのヘリコプタ10の姿勢)を基準とした前後、左右、上下を意味する。なお、図1において、「Fr」は前方を示し、「Rr」は後方を示し、「U」は上方を示し、「Lo」は下方を示す。
【0026】
図1を参照して、ヘリコプタ10は、メインボディ12、マスト14、メインロータ16、テールボディ18およびテールロータ20を含む。
【0027】
メインボディ12は、メインフレーム22、ボディカバー24、脚部26,28、一対のスキッド30(図1では左側のスキッド30のみ図示)、ならびにアンダーカバー32を含む。
【0028】
テールボディ18およびボディカバー24は、メインフレーム22に支持される。
【0029】
脚部26および28はそれぞれ、正面視逆U字状に形成され、メインフレーム22に支持される。
【0030】
一対のスキッド30は、左右に並ぶように脚部26および28に取り付けられる。具体的には、一方側(左側)のスキッド30は、脚部26,28の一方側(左側)の部分に取り付けられ、他方側(右側)のスキッド30(図示せず)は、脚部26,28の他方側(右側)の部分に取り付けられる。
【0031】
アンダーカバー32は、テールボディ18およびメインフレーム22に取り付けられる。
【0032】
マスト14は、ボディカバー24から上方に突出するようにかつ回転可能に設けられる。マスト14の上端部に、メインロータ16が固定される。これにより、マスト14とメインロータ16とが一体的に回転する。テールボディ18は略円筒形状を有し、メインボディ12よりも後方に延びる。テールボディ18の前端部は、ボディカバー24内においてメインフレーム22の後端部に支持される。テールロータ20は、テールボディ18の後端部に回転可能に設けられる。
【0033】
ヘリコプタ10はさらに、表示装置34、駆動源36、シャフトユニット38、燃料タンク40、電装ボックス42を含む。図2および図3をも参照して、シャフトユニット38は、トランスミッション44、ドライブシャフト46および伝達部48を含み、駆動源36からの動力をテールロータ20に伝達する。
【0034】
燃料タンク40、駆動源36およびトランスミッション44は、ボディカバー24に収容される。表示装置34は、アンダーカバー32によって保持される。電装ボックス42は、メインフレーム22内に設けられる。
【0035】
駆動源36は、メインロータ16の下方においてメインフレーム22の前端部に支持される。この実施形態では、駆動源36としてエンジンが用いられる。より具体的には、駆動源36として、たとえば、水平対向型の多気筒エンジンが用いられる。
【0036】
トランスミッション44は、駆動源36の後方においてメインフレーム22に支持される。トランスミッション44は、駆動源36の図示しないクランクシャフトに連結される。トランスミッション44にマスト14の下端部が連結される。メインロータ16は、駆動源36からトランスミッション44およびマスト14を介して伝達される駆動力に基づいて回転する。マスト14の後方に、燃料タンク40が設けられる。燃料タンク40の上端部は、メインボディ12から上方に露出する。
【0037】
トランスミッション44から後方に延びるようにドライブシャフト46が設けられる。ドライブシャフト46は、メインボディ12内およびテールボディ18内を前後方向に延びる。テールロータ20は、伝達部48を介してドライブシャフト46の後端部に連結される。テールロータ20は、駆動源36からトランスミッション44、ドライブシャフト46および伝達部48を介して伝達される駆動力に基づいて回転する。
【0038】
図4を参照して、ドライブシャフト46は、第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとを含む。ドライブシャフト46は、炭素繊維強化プラスチックからなることが好ましい。この場合、ドライブシャフト46を他の材質によって構成するときより、比強度を高くすることができる。
【0039】
図5をも参照して、第1シャフト部50aは、中空円筒状のシャフト本体52aを含み、シャフト本体52aの第2シャフト部50b側端部に取付部54aを有する。シャフト本体52aと取付部54aとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部54aは、略T字状に形成され、シャフト本体52aの一端部が嵌入される円筒部56aと、円筒部56aの一端部に形成されかつ円筒部56aの軸方向に対して直交する方向に延びる略I字状のフランジ部58aと、フランジ部58aの両端部に形成される複数(この実施形態では2つ)のねじ孔60a,62aとを有する。フランジ部58aの両端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0040】
同様に、第2シャフト部50bは、中空円筒状のシャフト本体52bを含み、シャフト本体52bの第1シャフト部50a側端部に取付部54bを有する。シャフト本体52bと取付部54bとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部54bは、略T字状に形成され、シャフト本体52bの一端部が嵌入される円筒部56bと、円筒部56bの一端部に形成されかつ円筒部56bの軸方向に対して直交する方向に延びる略I字状のフランジ部58bと、フランジ部58bの両端部に形成される複数(この実施形態では2つ)のねじ孔60b,62bとを有する。フランジ部58bの両端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0041】
第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとの間に弾性体64が設けられる。弾性体64は、たとえば略四角柱状に形成されている。弾性体64は、その中央部においてドライブシャフト46の軸方向に延びる略四角柱状の貫通孔66と、弾性体64の四隅において貫通孔66を囲むようにドライブシャフト46の軸方向に延びる貫通孔68,70,72,74とを有する。弾性体64としては、ゴム系材料が好ましい。後述する弾性体168,220,282についても同様である。
【0042】
第1シャフト部50aと弾性体64との間には、短冊状の第1プレート部76aが配置される。第1プレート部76aは、複数(この実施形態では4つ)の貫通孔78a,80a,82a,84aを有する。貫通孔78a,84aは、弾性体64の貫通孔68,72に対応する位置に形成されている。同様に、第2シャフト部50bと弾性体64との間には、短冊状の第2プレート部76bが配置される。第2プレート部76bは、複数(この実施形態では4つ)の貫通孔78b,80b,82b,84bを有する。貫通孔78b,84bは、弾性体64の貫通孔70,74に対応する位置に形成されている。
【0043】
そして、第1プレート部76aを挟んで第1シャフト部50aと弾性体64とが接続され、第2プレート部76bを挟んで第2シャフト部50bと弾性体64とが接続される。このとき、第1シャフト部50a側から、ボルト86aが、フランジ部58aのねじ孔60a、弾性体64の貫通孔70、第2プレート部76bの貫通孔78bに通され、ナット90bで締結されるとともに、ボルト88aが、フランジ部58aのねじ孔62a、弾性体64の貫通孔74、第2プレート部76bの貫通孔84bに通され、ナット92bで締結される。同様に、第2シャフト部50b側から、ボルト86bが、フランジ部58bのねじ孔60b、弾性体64の貫通孔68、第1プレート部76aの貫通孔78aに通され、ナット90aで締結されるとともに、ボルト88bが、フランジ部58bのねじ孔62b、弾性体64の貫通孔72、第2プレート部76aの貫通孔84aに通され、ナット92aで締結される。
【0044】
このようにして、第1シャフト部50aと弾性体64とはドライブシャフト46の中心線A1を跨ぐように複数箇所(この実施形態では2箇所)で相互に接続され、第2シャフト部50bと弾性体64とはドライブシャフト46の中心線A1を跨ぐように複数箇所(この実施形態では2箇所)で相互に接続される。ここで、第1シャフト部50aと弾性体64との接続箇所を第1接続部とし、第2シャフト部50bと弾性体64との接続箇所を第2接続部とすると、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフト46の軸方向からみて重ならない。具体的には、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフト46の周方向に略90度ずれている。
【0045】
また、弾性体64における第1シャフト部50a側の主面に第1プレート部76aが設けられ、弾性体64における第2シャフト部50b側の主面に第2プレート部76bが設けられる。そして、第1プレート部76aと弾性体64とはドライブシャフト46の中心線A1を跨ぐように複数箇所(この実施形態では2箇所)で相互に接続され、第2プレート部76bと弾性体64とはドライブシャフト46の中心線A1を跨ぐように複数箇所(この実施形態では2箇所)で相互に接続され、ドライブシャフト46の軸方向からみて、第1プレート部76aと第2接続部とが重なり、第2プレート部76bと第1接続部とが重なる。
【0046】
図6および図7を参照して、第1シャフト部50aは、シャフト本体52aのトランスミッション44側端部に取付部94aを有する。シャフト本体52aと取付部94aとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部94aは、略T字状に形成され、シャフト本体52aの他端部が嵌入される円筒部96aと、円筒部96aの端部に形成されかつ円筒部96aの軸方向に対して直交する方向に延びる略I字状のフランジ部98aと、フランジ部98aの両端部に形成される複数(この実施形態では2つ)のねじ孔100a,102aとを有する。フランジ部98aの両端部はその中央部より肉厚に形成されている。シャフト本体52aの両端部に取り付けられる取付部54aと94aとは、それぞれのフランジ部58aの両端部とフランジ部98aの両端部とがドライブシャフト46の軸方向からみて重ならないように設けられる。具体的には、フランジ部58aの長手方向とフランジ部98aの長手方向とがドライブシャフト46の周方向に略90度ずれるように、取付部54aと94aとが設けられる。
【0047】
取付部94aには、角板状の板ばね104を介して取付部94bが接続される。取付部94bは、略T字状に形成され、円筒部96bと、円筒部96bの端部に形成されかつ円筒部96bの軸方向に対して直交する方向に延びる略I字状のフランジ部98bと、フランジ部98bの両端部に形成される複数(この実施形態では2つ)のねじ孔100b,102bとを有する。フランジ部98bの両端部はその中央部より肉厚に形成されている。板ばね104は、ねじ孔100a,102a,100b,102bに対応する貫通孔106,108,110,112を有する。
【0048】
取付部94aのフランジ部98aの端面に板ばね104が配置され、ボルト114がねじ孔100aおよび貫通孔106に通されナット116に締結されるとともに、ボルト118がねじ孔102aおよび貫通孔108に通されナット120に締結される。その状態の板ばね104に取付部94bが取り付けられる。このとき、ボルト122が板ばね104の貫通孔110に通されフランジ部98bのねじ孔100bに螺入されるとともに、ボルト124が板ばね104の貫通孔112に通されフランジ部98bのねじ孔102bに螺入される。したがって、取付部94aと94bとは、それぞれのフランジ部98aの両端部とフランジ部98bの両端部とがドライブシャフト46の軸方向からみて重ならないように設けられる。具体的には、フランジ部98aの長手方向とフランジ部98bの長手方向とがドライブシャフト46の周方向に略90度ずれるように、取付部94aと94bとが設けられる。
【0049】
図4に戻って、第2シャフト部50bは、シャフト本体52bの略中央部に取り付けられる円筒状の取付部126と、シャフト本体52bのテールロータ20側端部に取り付けられる取付部128とを有する。取付部128は、シャフト本体52bの端部に取り付けられる大筒部130と、大筒部130の端部に形成される小筒部132とを有する。取付部126および128は、シャフト本体52bにたとえば接着等によって一体的に形成されている。
【0050】
図2および図3をも参照して、このようなドライブシャフト46において、取付部94bにはトランスミッション44が接続され、取付部128には伝達部48が接続される。
【0051】
さらに、図8および図9を参照して、取付部54bの円筒部56bには、ニードルベアリング134を介してハウジング136が設けられる。ハウジング136はテールボディ18の内面に取り付けられる。ニードルベアリング134は、内輪を有さず、円筒状の外輪138と、外輪138の内面に設けられる保持部140と、保持部140によって保持される複数の棒状のころ142とを有する。各ころ142は、周方向に間隔をあけてかつ軸方向に延びるように配置され、回転可能に設けられる。取付部54bの円筒部56bは、複数のころ142に囲まれかつ接触し、ニードルベアリング134に対して回転可能となる。ハウジング136は、環状に形成され、ニードルベアリング134の外輪138とテールボディ18とを連結する。ハウジング136は、軸方向に貫通する貫通孔144,146,148,150を有する。
【0052】
図2および図3に戻って、ドライブシャフト46の取付部126にも、ニードルベアリング(図示せず)を介してハウジング152が設けられる。ハウジング152は、環状に形成され、テールボディ18の内面に取り付けられる。ハウジング152の外形は、ハウジング136の外形より小さいが、ハウジング152は、ハウジング136と同様の構造を有する。
【0053】
ついで、弾性体64について説明する。
図10を参照して、弾性体64の変位量と弾性体64が出力する回転トルクとが、変位量が増加すれば回転トルクが所定値に漸近するように増加する関係を有する。
【0054】
図10において、線Aは、比較的硬度の大きい弾性体における変位量-回転トルク特性を示し、弾性体から出力される回転トルクが所定値Thに漸近する。線Bは、比較的硬度が小さい弾性体における変位量-回転トルク特性を示し、弾性体から出力される回転トルクが所定値Tsに漸近する。所定値Th,Tsはいずれも、常用域の(通常伝達する必要がある)トルクよりやや大きく設定される。また、線AおよびBのいずれも、常用域のトルクでは略線形特性を有する。
【0055】
たとえば線Bの特性を有する弾性体をドライブシャフト46の第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとの間に介挿する場合、図11(a)に示すような回転トルクが第1シャフト部50aから弾性体に入力されると、弾性体から第2シャフト部50bへは図11(b)に示すような所定値Ts未満の回転トルクが出力される。言い換えれば、この弾性体を介挿せず第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとを接続する場合、第2シャフト部50bへは図11(a)に示す回転トルクが伝達される。
【0056】
同様に、線Aの特性を有する弾性体をドライブシャフト46の第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとの間に介挿する場合、弾性体から第2シャフト部50bへは所定値Th未満の回転トルクが出力される。
【0057】
このようなヘリコプタ10によれば、シャフトユニット38に弾性体64を挟むように設けることによって、シャフトユニット38に高周波かつ振幅の大きい回転数変動が生じ、それに起因する過大な回転トルクが発生しても、弾性体64がその回転トルクを吸収する。それによって、シャフトユニット38に生じる回転トルクを減じることができる。したがって、ドライブシャフト46から伝達部48を介してテールロータ20には、過大な回転トルクの発生を抑制しつつ所望の回転数および回転トルクを伝達できる。
【0058】
ドライブシャフト46は、内輪を有さないニードルベアリング134を介して、テールボディ18に支持されている。ニードルベアリング134は、ドライブシャフト46の外周に設けられる際にドライブシャフト46に固着されない。したがって、ドライブシャフト46に高周波の回転数変動が発生しても、ニードルベアリング134とドライブシャフト46との接触部が破損することを抑制できる。また、ドライブシャフト46をニードルベアリング134から容易に着脱できるため、部品の点検や交換が容易になる。
【0059】
ドライブシャフト46は、ニードルベアリング134およびハウジング136を介してテールボディ18に支持される。したがって、ドライブシャフト46をニードルベアリング134に装着するのに適切な位置にニードルベアリング134を配置できるため、ドライブシャフト46を容易に装着できる。また、ハウジング136には貫通孔144?150が設けられているので、ハウジング136より後方に配置されたニードルベアリング(図示せず)にグリスを補給できるなど、テールボディ18内に配置された部材のメンテナンスを容易にできる。
【0060】
弾性体64は、所定値未満の回転トルクを出力するが、所定値以上の回転トルクを出力しない。したがって、弾性体64は、駆動源36側から所定値以上の過大な回転トルクが与えられても、この過大な回転トルクをテールロータ20側に出力しない。したがって、回転トルクの増加を抑制でき、テールロータ20に所望の回転トルクを伝達することができる。また、回転トルクの所定値を、常用域の(通常伝達する必要がある)トルクよりやや大きく設定しておけば、常用域のトルクがたとえ高周波トルクであっても、弾性体64はそれを追従してテールロータ20側に出力できる。
【0061】
ドライブシャフト46は分割構造を有し、第1シャフト部50aと第2シャフト部50bとは弾性体64を介して軸方向に連結される。したがって、ドライブシャフト46を構成する第1シャフト部50aおよび第2シャフト部50bのそれぞれの長さを適切に設定できるので、第1シャフト部50aおよび第2シャフト部50bを適切に支持できるとともに、伝達トルクから計算されるドライブシャフト46の(ねじり/曲げ)剛性に起因する(回転/曲げ)自励共振振動を制御することができる。
【0062】
仮にドライブシャフト46の軸方向からみて第1接続部(第1シャフト部50aと弾性体64との接続箇所)と第2接続部(第2シャフト部50bと弾性体64との接続箇所)とが重なる場合には、重なっている第1接続部および第2接続部とドライブシャフト46とを含む仮想的な平面方向に、ドライブシャフト46は撓み難くなる。そこで、ドライブシャフト46の軸方向からみて第1接続部と第2接続部とが重ならないように、第1接続部と第2接続部とをずらせることによって、ドライブシャフト46は、特定の方向に撓み難いということはなく任意の方向に撓むことができる。したがって、ドライブシャフト46は、たとえばその軸方向に直交する方向から外力を受けても、撓むことによってその外力を吸収でき、ドライブシャフト46が損傷することを抑制できる。
【0063】
ドライブシャフト46の軸方向からみて第1プレート部76aと第2接続部(第2シャフト部50bと弾性体64との接続箇所)とは重なっており、弾性体64の第1シャフト部50a側の主面において、第1プレート部76aは第1接続部(第1シャフト部50aと弾性体64との接続箇所)とは異なる位置に取り付けられる。また、ドライブシャフト46の軸方向からみて第2プレート部76bと第1接続部(第1シャフト部50aと弾性体64との接続箇所)とが重なっており、弾性体64の第2シャフト部50b側の主面において、第2プレート部76bは第2接続部(第2シャフト部50bと弾性体64との接続箇所)とは異なる位置に取り付けられる。このように第1プレート部76aおよび第2プレート部76bを弾性体64に取り付けることによって、弾性体64の不所望な変形を抑制できる。
【0064】
駆動源64がエンジンである場合、たとえばエンジンの回転数変動によってシャフトユニット38に高周波の振動が発生しやすい。したがって、この発明は、駆動源64がエンジンを含む場合に好適に用いられる。
【0065】
また、図12を参照して、ドライブシャフトは、第1シャフト部154aおよび第2シャフト部154bを含み、弾性体168(後述)を介して連結されてもよい。
【0066】
第1シャフト部154aは、中空円筒状のシャフト本体52aを含み、シャフト本体52aの第2シャフト部154b側端部に取付部156aを有する。シャフト本体52aと取付部156aとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部156aは、シャフト本体52aの一端部が嵌入される円筒部158aと、円筒部158aの一端部に形成されかつ円筒部158aの軸方向に対して直交する3方向に延びる略Y字状のフランジ部160aと、フランジ部160aの先端部に形成される複数(この実施形態では3つ)のねじ孔162a,164a,166aとを有する。フランジ部160aの先端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0067】
同様に、第2シャフト部154bは、中空円筒状のシャフト本体52bを含み、シャフト本体52bの第1シャフト部154a側端部に取付部156bを有する。シャフト本体52bと取付部156bとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部156bは、シャフト本体52bの一端部が嵌入される円筒部158bと、円筒部158bの一端部に形成されかつ円筒部158bの軸方向に対して直交する3方向に延びる略Y字状のフランジ部160bと、フランジ部160bの先端部に形成される複数(この実施形態では3つ)のねじ孔162b,164b,166bとを有する。フランジ部160bの先端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0068】
第1シャフト部154aと第2シャフト部154bとの間に弾性体168が設けられる。弾性体168は、たとえば円柱状に形成されている。弾性体168は、その中央部においてドライブシャフトの軸方向に延びる円柱状の貫通孔170と、貫通孔170を囲むようにドライブシャフトの軸方向に延びる複数(この実施形態では6つ)の貫通孔172?182とを有する。
【0069】
第1シャフト部154aと弾性体168との間には、略Y字状かつ板状の第1プレート部184aが配置される。第1プレート部184aは、複数(この実施形態では3つ)の貫通孔186a,188a,190aを有する。貫通孔186a,188a,190aは、弾性体168の貫通孔174,178,182に対応する位置に形成されている。同様に、第2シャフト部154bと弾性体168との間には、略Y字状かつ板状の第2プレート部184bが配置される。第2プレート部184bは、複数(この実施形態では3つ)の貫通孔186b,188b,190bを有する。貫通孔186b,188b,190bは、弾性体168の貫通孔172,176,180に対応する位置に形成されている。
【0070】
そして、第1プレート部184aを挟んで第1シャフト部154aと弾性体168とが接続され、第2プレート部184bを挟んで第2シャフト部154bと弾性体168とが接続される。このとき、第1シャフト部154a側から、ボルト192aが、フランジ部160aのねじ孔162a、弾性体168の貫通孔172、第2プレート部184bの貫通孔186bに通され、ナット198bで締結され、ボルト194aが、フランジ部160aのねじ孔164a、弾性体168の貫通孔176、第2プレート部184bの貫通孔188bに通され、ナット200bで締結され、ボルト196aが、フランジ部160aのねじ孔166a、弾性体168の貫通孔180、第2プレート部184bの貫通孔190bに通され、ナット202bで締結される。同様に、第2シャフト部154b側から、ボルト192bが、フランジ部160bのねじ孔162b、弾性体168の貫通孔174、第1プレート部184aの貫通孔186aに通され、ナット198aで締結され、ボルト194bが、フランジ部160bのねじ孔164b、弾性体168の貫通孔178、第1プレート部184aの貫通孔188aに通され、ナット200aで締結され、ボルト196bが、フランジ部160aのねじ孔166b、弾性体168の貫通孔182、第1プレート部184aの貫通孔190aに通され、ナット202aで締結される。
【0071】
このようにして、第1シャフト部154aと弾性体168とはドライブシャフトの中心線A2を囲むように複数箇所(この実施形態では3箇所)で相互に接続され、第2シャフト部154bと弾性体168とはドライブシャフトの中心線A2を囲むように複数箇所(この実施形態では3箇所)で相互に接続される。ここで、第1シャフト部154aと弾性体168との接続箇所を第1接続部とし、第2シャフト部154bと弾性体168との接続箇所を第2接続部とすると、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフトの軸方向からみて重ならない。具体的には、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフトの周方向に略60度ずれている。
【0072】
また、弾性体168における第1シャフト部154a側の主面に第1プレート部184aが設けられ、弾性体168における第2シャフト部154b側の主面に第2プレート部184bが設けられる。そして、第1プレート部184aと弾性体168とはドライブシャフトの中心線A2を囲むように複数箇所(この実施形態では3箇所)で相互に接続され、第2プレート部184bと弾性体168とはドライブシャフトの中心線A2を囲むように複数箇所(この実施形態では3箇所)で相互に接続され、ドライブシャフトの軸方向からみて、第1プレート部184aと第2接続部とが重なり、第2プレート部184bと第1接続部とが重なる。
【0073】
図12に示すように第1シャフト部154aと第2シャフト部154bとが接続される場合においても、図5に示す実施形態と同様の効果が得られ、さらに、回転トルクと変位量の特性を変えることができる。
【0074】
さらに、図13を参照して、ドライブシャフトは、第1シャフト部204aおよび第2シャフト部204bを含み、弾性体220(後述)を介して連結されてもよい。
【0075】
第1シャフト部204aは、中空円筒状のシャフト本体52aを含み、シャフト本体52aの第2シャフト部204b側端部に取付部206aを有する。シャフト本体52aと取付部206aとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部206aは、シャフト本体52aの一端部が嵌入される円筒部208aと、円筒部208aの一端部に形成されかつ円筒部208aの軸方向に対して直交する4方向に延びる略十字状のフランジ部210aと、フランジ部210aの先端部に形成される複数(この実施形態では4つ)のねじ孔212a,214a,216a,218aとを有する。フランジ部210aの先端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0076】
同様に、第2シャフト部204bは、中空円筒状のシャフト本体52bを含み、シャフト本体52bの第1シャフト部204a側端部に取付部206bを有する。シャフト本体52bと取付部206bとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部206bは、シャフト本体52bの一端部が嵌入される円筒部208bと、円筒部208bの一端部に形成されかつ円筒部208bの軸方向に対して直交する4方向に延びる略十字状のフランジ部210bと、フランジ部210bの先端部に形成される複数(この実施形態では4つ)のねじ孔212b,214b,216b,218bを有する。フランジ部210bの先端部はその中央部より肉厚に形成されている。
【0077】
第1シャフト部204aと第2シャフト部204bとの間に弾性体220が設けられる。弾性体220は、たとえば略八角柱状に形成されている。弾性体220は、その中央部においてドライブシャフトの軸方向に延びる略八角柱状の貫通孔222と、貫通孔222を囲むようにドライブシャフトの軸方向に延びる複数(この実施形態では8つ)の貫通孔224?238とを有する。
【0078】
第1シャフト部204aと弾性体220との間には、略十字状かつ板状の第1プレート部240aが配置される。第1プレート部240aは、複数(この実施形態では4つ)の貫通孔242a,244a,246a,248aを有する。貫通孔242a,244a,246a,248aは、弾性体220の貫通孔226,230,234,238に対応する位置に形成されている。同様に、第2シャフト部204bと弾性体220との間には、略十字状かつ板状の第2プレート部240bが配置される。第2プレート部240bは、複数(この実施形態では4つ)の貫通孔242b,244b,246b,248bを有する。貫通孔242b,244b,246b,248bは、弾性体220の貫通孔224,228,232,236に対応する位置に形成されている。
【0079】
そして、第1プレート部240aを挟んで第1シャフト部204aと弾性体220とが接続され、第2プレート部240bを挟んで第2シャフト部204bと弾性体220とが接続される。このとき、第1シャフト部204a側から、ボルト250aが、フランジ部210aのねじ孔212a、弾性体220の貫通孔224、第2プレート部240bの貫通孔242bに通され、ナット258bで締結され、ボルト252aが、フランジ部210aのねじ孔214a、弾性体220の貫通孔228、第2プレート部240bの貫通孔244bに通され、ナット260bで締結される。さらに、ボルト254aが、フランジ部210aのねじ孔216a、弾性体220の貫通孔232、第2プレート部240bの貫通孔246bに通され、ナット262bで締結され、ボルト256aが、フランジ部210aのねじ孔218a、弾性体220の貫通孔236、第2プレート部240bの貫通孔248bに通され、ナット264bで締結される。同様に、第2シャフト部204b側から、ボルト250bが、フランジ部210bのねじ孔212b、弾性体220の貫通孔226、第1プレート部240aの貫通孔242aに通され、ナット258aで締結され、ボルト252bが、フランジ部210bのねじ孔214b、弾性体220の貫通孔230、第1プレート部240aの貫通孔244aに通され、ナット260aで締結される。さらに、ボルト254bが、フランジ部210bのねじ孔216b、弾性体220の貫通孔234、第1プレート部240aの貫通孔246aに通され、ナット262aで締結され、ボルト256bが、フランジ部210bのねじ孔218b、弾性体220の貫通孔238、第1プレート部240aの貫通孔248aに通され、ナット264aで締結される。
【0080】
このようにして、第1シャフト部204aと弾性体220とはドライブシャフトの中心線A3を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続され、第2シャフト部204bと弾性体220とはドライブシャフトの中心線A3を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続される。ここで、第1シャフト部204aと弾性体220との接続箇所を第1接続部とし、第2シャフト部204bと弾性体220との接続箇所を第2接続部とすると、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフトの軸方向からみて重ならない。具体的には、第1接続部と第2接続部とはドライブシャフトの周方向に略45度ずれている。
【0081】
また、弾性体220における第1シャフト部204a側の主面に第1プレート部240aが設けられ、弾性体220における第2シャフト部204b側の主面に第2プレート部240bが設けられる。そして、第1プレート部240aと弾性体220とはドライブシャフトの中心線A3を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続され、第2プレート部240bと弾性体220とはドライブシャフトの中心線A3を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続され、ドライブシャフトの軸方向からみて、第1プレート部240aと第2接続部とが重なり、第2プレート部240bと第1接続部とが重なる。
【0082】
図13に示すように第1シャフト部204aと第2シャフト部204bとが接続される場合においても、図5に示す実施形態と同様の効果が得られ、さらに、回転トルクと変位量の特性を変えることができる。
【0083】
また、図14を参照して、ドライブシャフトは、第1シャフト部266aおよび第2シャフト部266bを含み、弾性体282(後述)を介して連結されてもよい。
【0084】
第1シャフト部266aは、中空円筒状のシャフト本体52aを含み、シャフト本体52aの第2シャフト部266b側端部に取付部268aを有する。シャフト本体52aと取付部268aとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部268aは、シャフト本体52aの一端部が嵌入される円筒部270aと、円筒部270aの一端部に形成されかつ円筒部270aの軸方向に対して直交する方向に延びる円板状のフランジ部272aと、フランジ部272aに形成される複数(この実施形態では4つ)のねじ孔274a,276a,278a,280aとを有する。
【0085】
同様に、第2シャフト部266bは、中空円筒状のシャフト本体52bを含み、シャフト本体52bの第1シャフト部266a側端部に取付部268bを有する。シャフト本体52bと取付部268bとは、たとえば接着等によって一体的に形成されている。取付部268bは、シャフト本体52bの一端部が嵌入される円筒部270bと、円筒部270bの一端部に形成されかつ円筒部270bの軸方向に対して直交する方向に延びる円板状のフランジ部272bと、フランジ部272bに形成される複数(この実施形態では4つ)のねじ孔274b,276b,278b,280bとを有する。
【0086】
第1シャフト部266aと第2シャフト部266bとの間に弾性体282が設けられる。弾性体282は、たとえば円柱状に形成されている。弾性体282は、ドライブシャフトの軸方向に延びる複数(この実施形態では4つ)の貫通孔284?290を有する。
【0087】
そして、第1シャフト部266aと第2シャフト部266bとが弾性体282を挟んで接続される。このとき、第1シャフト部266a側から、ボルト292が、フランジ部272aのねじ孔274a、弾性体282の貫通孔284、フランジ部272bのねじ孔274bに通され、ナット300で締結され、ボルト294が、フランジ部272aのねじ孔276a、弾性体282の貫通孔286、フランジ部272bのねじ孔276bに通され、ナット302で締結される。さらに、ボルト296が、フランジ部272aのねじ孔278a、弾性体282の貫通孔288、フランジ部272bのねじ孔278bに通され、ナット304で締結され、ボルト298が、フランジ部272aのねじ孔280a、弾性体282の貫通孔290、フランジ部272bのねじ孔280bに通され、ナット306で締結される。
【0088】
このようにして、第1シャフト部266aと弾性体282とはドライブシャフトの中心線A4を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続され、第2シャフト部266bと弾性体282とはドライブシャフトの中心線A4を囲むように複数箇所(この実施形態では4箇所)で相互に接続される。
【0089】
図14に示すように第1シャフト部266aと第2シャフト部266bとが接続される場合においても、図5に示す実施形態と同様の効果が得られ、さらに、回転トルクと変位量の特性を変えることができる。
【0090】
なお、弾性体は、トランスミッションとドライブシャフトとの間から、ドライブシャフトと伝達部との間までにおいて、シャフトユニットの任意の位置に介挿されてもよい。
【0091】
弾性体の形状は上述のものに限定されず、駆動源の特性、所望のテールロータ回転数、所望の回転トルク、所望の常用域トルクの値等に合わせた適切な形状を選択できる。弾性体の適切な形状としては、正多角柱状、特に正偶数角柱状が好ましい。
【0092】
ベアリングは、ニードルベアリングに限定されない。ベアリングとしては、内輪を有さず、ドライブシャフトに直接接触するようにドライブシャフトの外周に設けられる任意のベアリングを用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 無人ヘリコプタ
20 テールロータ
18 テールボディ
36 駆動源
38 シャフトユニット
44 トランスミッション
46 ドライブシャフト
48 伝達部
50a,154a,204a,266a 第1シャフト部
50b,154b,204b,266b 第2シャフト部
52a,52b シャフト本体
54a,54b,94a,94b,126,128,156a,156b,206a,206b,268a,268b 取付部
64,168,220,282 弾性体
76a,184a,240a 第1プレート部
76b,184b,240b 第2プレート部
134 ニードルベアリング
136,152 ハウジング
144,146,148,150 ハウジングの貫通孔
A1,A2,A3,A4 中心線
Th,Ts 回転トルクの所定値
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられかつゴム系材料からなる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、
内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、
前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディとをさらに備える、無人ヘリコプタ。
【請求項2】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿される、無人ヘリコプタであって、
内輪を有さず、前記ドライブシャフトに直接接触するように前記ドライブシャフトの外周に設けられるベアリングと、
前記ドライブシャフトを覆いかつ前記ベアリングを介して前記ドライブシャフトを支持するテールボディと、
前記ベアリングの外周に設けられ、前記テールボディに支持されかつ環状に形成されるハウジングとをさらに含み、
前記ハウジングは、前記ベアリングよりも径方向外側において前記ドライブシャフトの軸方向に貫通する孔を含む、無人ヘリコプタ。
【請求項3】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記弾性体は、前記トランスミッションと前記ドライブシャフトとの間から、前記ドライブシャフトと前記伝達部との間までにおいて、前記シャフトユニットに介挿され、
前記弾性体の変位量と前記弾性体が出力する回転トルクとが、前記変位量が増加すれば前記回転トルクが所定値に漸近するように増加する関係を有する、無人ヘリコプタ。
【請求項4】
駆動源と、
テールロータと、
前記駆動源からの動力を前記テールロータに伝達するためのシャフトユニットと、
前記シャフトユニットに設けられる弾性体とを備え、
前記シャフトユニットは、ドライブシャフトと、前記駆動源からの動力を前記ドライブシャフトに伝達するトランスミッションと、前記ドライブシャフトからの回転トルクを前記テールロータに伝達するための伝達部とを含み、
前記ドライブシャフトは、第1シャフト部と第2シャフト部とを含み、
前記弾性体は、前記第1シャフト部と前記第2シャフト部との間に設けられる、無人ヘリコプタ。
【請求項5】
前記第1シャフト部と前記弾性体とは前記ドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、前記第2シャフト部と前記弾性体とは前記ドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、
前記第1シャフト部と前記弾性体との接続箇所を第1接続部とし、前記第2シャフト部と前記弾性体との接続箇所を第2接続部とすると、前記第1接続部と前記第2接続部とは前記ドライブシャフトの軸方向からみて重ならない、請求項4に記載の無人ヘリコプタ。
【請求項6】
前記弾性体における前記第1シャフト部側の主面に設けられる第1プレート部と、前記弾性体における前記第2シャフト部側の主面に設けられる第2プレート部とをさらに含み、
前記第1プレート部と前記弾性体とは前記ドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、前記第2プレート部と前記弾性体とは前記ドライブシャフトの中心線を跨ぐまたは囲むように複数箇所で相互に接続され、
前記ドライブシャフトの軸方向からみて、前記第1プレート部と前記第2接続部とが重なり、前記第2プレート部と前記第1接続部とが重なる、請求項5に記載の無人ヘリコプタ。
【請求項7】
前記駆動源はエンジンを含む、請求項1から6のいずれかに記載の無人ヘリコプタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-26 
出願番号 特願2013-137406(P2013-137406)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B64C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
尾崎 和寛
登録日 2015-09-04 
登録番号 特許第5801851号(P5801851)
権利者 ヤマハ発動機株式会社
発明の名称 無人ヘリコプタ  
代理人 辰巳 忠宏  
代理人 辰巳 忠宏  

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