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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61M 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61M |
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管理番号 | 1332253 |
異議申立番号 | 異議2016-701154 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-12-19 |
確定日 | 2017-08-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5947873号発明「マイクロニードルパッチ収納容器2」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 1 特許第5947873号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について、訂正することを認める。2 特許第5947873号の請求項1-4,8-11に係る特許を維持する。3 特許第5947873号の請求項5-7に係る特許についての申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5947873号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし11についての出願は、平成26年12月10日の特許出願に係るものであって、平成28年6月10日に特許権の設定登録がなされたところ(特許公報の発行日は平成28年7月6日)、平成28年12月19日に特許異議申立人 松田 亘弘(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされた。 その後、平成29年2月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月28日に意見書及び訂正請求書が提出された。そして、申立人に対し平成29年5月10日付けで特許法第120条の5第5項に基づく通知がなされ、その指定期間内である同年6月8日に申立人から意見書の提出がなされたものである。 なお、本決定において、特許法の条文を表記する際に「特許法」という表記を省略することがある。また「甲第1号証」等を単に「甲1」などという。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 平成29年4月28日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、訂正事項1及び5ないし7における下線は訂正部分を示す 。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、」と記載されているのを、 「最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、 i)該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている、 ii)該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている、又は iii)該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあり、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1から8のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1から4、8のいずれか1項」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1ないし請求項9のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1から4、8、9のいずれか1項」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11に、「請求項1から10のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1から4、8から10のいずれか1項」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1ないし7につき、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明に、「i)該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている。ii)該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている、又はiii)該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあり、」との記載により、架台部の数と周辺部との位置関係等をより具体的に限定しようとするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1において、選択的構成要件i)「該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている」は、訂正前請求項6に規定されていたものであり、また、特許明細書に「実施例1」として段落【0034】には、「一番外側が周辺部21であり、周辺部21の内周全面に約3mm窪んだ架台部22が設けられている。」との記載がなされている。次に、選択的構成要件ii)「該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている」は、訂正前請求項7に規定されていたものであり、また、特許明細書記載の実施例2?5及び図3?6に基づいて導き出される構成である。次に、選択的構成要件iii)「該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあり」は、特許明細書記載の「実施例6」(段落【0045】)及び図7に基づいて導き出される構成である。これらのことから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下単に「本件特許明細書等」ということがある。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 そして、訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (2)訂正事項2ないし4について 訂正事項2ないし4は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項5ないし7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書第1号)を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項2ないし4は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (3)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項9が請求項1から8の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2ないし4によって削除される請求項5ないし7を引用しないものとするため、請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でしたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (4)訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項10が請求項1から9の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2ないし4によって削除される請求項5ないし7を引用しないものとするため、請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (5)訂正事項7 訂正事項7は、訂正前の請求項11が請求項1から10の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2ないし4によって削除される請求項5ないし7を引用しないものとするため、請求項間の引用関係を解消するための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項7は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり本件訂正は認容されるので、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし請求項4及び請求項8ないし11に係る発明(以下「本件訂正発明1」などということがある。また、これらをまとめて単に「本件訂正発明」ということがある。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、 i)該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている、 ii)該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている、又は iii)該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあり、 該架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有する蓋をも備えるマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項2】 柔軟性あるマイクロニードルパッチの離型シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項3】 柔軟性あるマイクロニードルパッチの粘着シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項4】 1個の収納容器内に複数個のマイクロニードルパッチを平面的に収納することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。」 「【請求項8】 マイクロニードル収納容器と前記蓋の対応する位置に、切り込み及び耳を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項9】 表面に帯電防止処理が付されていることを特徴とする請求項1から4、8のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項10】 収納容器を減菌紙又は減菌フィルムシートにより形成した袋の中に格納して密閉することを特徴とする請求項1から4、8、9のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項11】 請求項1から4、8から10のいずれか1項に記載されたマイクロニードルパッチ収納容器に収納されたマイクロニードルパッチ。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1ないし11に係る特許(以下、「本件発明1」などということがある。)に対して平成29年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1及び取消理由2 ア 本件発明1及び本件発明8は、甲1に記載されており、本件発明1及び本件発明8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 イ 本件発明2及び3,6,7及び11は、甲1記載の発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明2及び3,6,7及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 本件発明4及び5は、甲1記載の発明に甲2記載の技術事項を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 本件発明9は、甲1記載の発明に甲4及び甲5記載の従来周知の技術事項を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 オ 本件発明10は、甲1記載の発明に甲7記載の従来周知の技術事項を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件発明10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲1:意匠登録第1435961号公報 甲2:意匠登録第1435962号公報 甲4:特開2001-172413号公報 甲5:特開2009-1341号公報 甲7:特開2006-347615号公報 2 取消理由3 カ 本件発明3は、特許請求の範囲の記載が不備のため、本件発明3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。 第5 取消理由1及び2についての判断 1 刊行物の記載 当審の取消理由に引用した、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である甲1、甲2、甲4、甲5及び甲7には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。なお、下線は当審で付したものである。 (1)甲1 ア 甲1に記載された事項 甲1は意匠登録公報であり、「マイクロニードルパッチ収納容器」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【意匠に係る物品の説明】 本物品は、医療用保管収納設備具の一種であって、医療用マイクロニードルパッチを収納するためのものである。本マイクロニードルパッチ収納容器は、基板が柔軟なマイクロニードルアレイに粘着テープを付し、さらにその粘着面に離型シートを付したマイクロニードルパッチを収納するのに適している。マイクロニードルパッチの中央部分を占めるマイクロニードルアレイはきわめて破損しやすいため、マイクロニードルパッチ収納容器は、マイクロニードルアレイの部分が輸送中あるいは保管中、容器のいかなる部分にも接触しないようにマイクロニ-ドルパッチを離型シートの部分で保持しなければならない。また、マイクロニードルアレイは人の体内に刺入される物であるため、本収納容器は、マイクロニードルパッチを衛生的に収納しなければならない。 本物品は、蓋を有する点以外は、同日に出願した整理番号S1101Aの意匠と形状同一である。本物品は、1枚のプラスチックシートをプレス加工して製造することができる。 」 (イ)「【意匠の説明】 本物品は透光性を有する。ただし、図面を明瞭とするため、うっすらと見える部分は記載を省略した。正面図と背面図は同一であるので、背面図の記載を省略する。左側面図と右側面図は同一であるので、左側面図の記載を省略する。 本物品は蓋を有するので、容器の平面図と蓋の平面図と底面図、正面図、右側面図を追加した。容器の底面図は本物品の底面図と同一である。容器の正面図、右側面図は本物品の正面図、右側面図から蓋の部分を除外したものと同一である。容器の平面図A-A断面での断面図と蓋の平面図のB-B断面での断面図を示す。」 (ウ)容器平面図、容器A-A断面図 (エ)蓋平面図 下に示す「蓋平面図」において、二筋の窪み部が看取できる。 イ 甲1発明 (オ)申立人の参考図について 請求人は、申立書に下に示す参考図Aを添付し、甲1の容器平面図は該参考図Aのように認定できると主張する(異議申立書第6ページ)。 該主張による甲1の容器平面図の認定は、部分的には妥当と認められるものの、下に示す図における黒塗りのロ字形状の部分は、甲1の容器A-A断面図とも照らして合理的に考えれば「架台部」として機能するものと認められ、甲1の容器平面図は下の図に示すように解すべきであり、架台部は計5個あるものと認められる。 (カ)そして、上記計5個の架台部は、周辺部内側に近接して互いに斜め向かいの位置に2個ずつ設けられた半円状の架台部計4個と、周辺部内部の離間した位置にロ字形状に設けられた1個の架台部であるものと認められる。 そこで、上記記載事項(ア)ないし(エ)並びに認定事項(オ)及び(カ)を、他の図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本件訂正発明1に照らして整理すると、甲1には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲1発明」という。)。 <甲1発明> 「最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ5個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、 該架台部は計5個であって、該周辺部内側に近接して互いに斜め向かいの位置に2個ずつ設けられた半円状の架台部計4個と、周辺部内部の離間した位置にロ字形状に設けられた1個の架台部として設けられており、 二筋の窪み部を設けた蓋をも備えるマイクロニードルパッチ収納容器。」 (2)甲2 ア 甲2に記載された事項 甲2は意匠登録公報であり、「マイクロニードルパッチ収納容器」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【意匠に係る物品の説明】 本物品は、医療用保管収納設備具の一種であって、医療用マイクロニードルパッチ2個を収納するためのものである。本マイクロニードルパッチ収納容器は、基板が柔軟なマイクロニードルアレイに粘着テープを付加し、さらにその粘着面に離型シートを付したマイクロニードルパッチを2個収納するのに適している。マイクロニードルパッチの中央部分を占めるマイクロニードルアレイはきわめて破損しやすいため、マイクロニードルパッチ収納容器は、マイクロニードルアレイの部分が輸送中あるいは保管中容器のいかなる部分にも接触しないようにマイクロニ-ドルパッチを離型シートの部分で保持しなければならない。また、マイクロニードルアレイは人の体内に刺入される物であるため、本収納容器は、マイクロニードルパッチを衛生的に収納しなければならない。 本物品は、1枚のプラスチックシートをプレス加工して製造することができる。」 (イ)「【意匠の説明】 本物品は透光性を有する。 左側面図と右側面図は同一であるので、左側面図の記載を省略する。底面図は平面図の鏡像体であるので、底面図の記載を省略する。 平面図のA-A断面を断面図として示す。使用状態のマイクロニードルパッチ収納容器の図を使用状態参考図として示すが、図中の破線部分にマイクロニードルアレイが存在する。離型シートは容器内部全面に広がっているが、通常透明であるため図に現れていない。」 (ウ)使用状態参考図 イ 甲2事項 上記記載事項(ア)ないし(ウ)を、技術常識を踏まえて整理すると、甲2には以下の事項が記載されていると認める(以下「甲2事項」という。)。 <甲2事項> 「1個の収納容器内に2個のマイクロニードルパッチを平面的に収納するマイクロニードルパッチ収納容器」 (3)甲4 甲4には、包装体において、帯電防止のために表面を帯電防止処理することが記載されている(段落【0015】等参照)。 (4)甲5 甲5には、包装用ケースにおいて、帯電防止のためにフィルム表面を帯電防止処理することが記載されている(段落【0019】等参照)。 (5)甲7 甲7には、内容物を滅菌紙により形成した袋の中に格納して密閉する包装袋が記載されている(段落【0010】等参照)。 2 本件訂正発明1 (1)対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点は以下のとおりである。 <一致点> 「最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、 窪み部を設けた蓋をも備えるマイクロニードルパッチ収納容器。」 そして、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の2点で相違する。 <相違点1> 1個若しくは複数個の架台部として、本件訂正発明1においては、 i)該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている、 ii)該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている、又は iii)該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあるのに対し、 甲1発明においては、架台部は計5個であって、該周辺部内側に近接して互いに斜め向かいの位置に2個ずつ設けられた半円状の架台部計4個と、周辺部内部の離間した位置にロ字形状に設けられた1個の架台部として設けられている点。 <相違点2> 本件訂正発明1の蓋は、架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有するのに対し、甲1発明の蓋は、二筋の窪み部が設けられているものの、架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持するための窪み部か明らかでない点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1について まず、相違点1が実質的な差異であることは明らかであり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるということはできず、取消理由1の同一性(第29条第1項第3号)は否定される。 次に、取消理由2の容易想到性(第29条第2項)について検討する。甲1発明の架台部は、該周辺部内側に近接して互いに斜め向かいの位置に2個ずつ設けられた半円状の架台部計4個と、周辺部内部の離間した位置にロ字形状に設けられた1個の架台部として設けられているところ、このような複雑で特徴のある架台部の形状と配置は、基板が柔軟なマイクロニードルアレイを輸送中あるいは保管中、容器のいかなる部分にも接触しないように(上記「1 刊行物の記載」(1)ア(ア))するために創意工夫されたものであって、半円状の4個の架台部とロ字形状に設けられた1個の架台部とが互いに関連して作用することによりマイクロニ-ドルパッチを離型シートの部分で保持しているものと認められる。 そうしてみると、かかる甲1発明の架台部の形状及び配置を、i)周辺部の内側全面に設けられた1個の架台部、ii)周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられた2個の架台部、iii)3個の架台部とそれらの間の2個の底面部、の何れかの形状及び配置に変えることには動機付けがないばかりか、創意工夫された半円状の4個の架台部とロ字形状に設けられた1個の架台部の組合せを改変することは、阻害事由があるというべきである。 よって、甲1発明から、相違点1に係る本件訂正発明1の構成を想到することは、当業者にとって容易であるとすることはできない。 イ 小括 したがって、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は実質的なものであり、また、甲1発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1に係る特許は、取消理由1及び2によって取り消すことはできない。 ウ 申立人の意見について 申立人は、平成29年6月8日付け意見書にて、周知技術等の証拠を提出することなく、当業者が甲1の架台部の数だけを変更しようとする前提は不自然であり、架台部の意義を考慮して適宜その数と位置の両方を変更しようとするのが自然であるなどと主張している(同意見書2ページ上段付近)。 しかしながら、甲1発明の架台部の形状及び配置の意義は上記アにて説示したとおりであり、かかる意義を理解した当業者が架台部の数及び位置を変更しようとは考え難いことは上述したとおりである。 よって、申立人の主張には理由がない。 3 本件訂正発明2及び3 本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2及び3に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。 4 本件訂正発明4 本件訂正発明4は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、甲2事項等の適用等を検討するまでもなく、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明4に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。 5 本件訂正発明8 本件訂正発明8は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由1(第29条第1項第3号)及び取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明8に係る特許も、取消理由1及び2によって取り消すことはできない。 6 本件訂正発明9 本件訂正発明9は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、甲4及び甲5に記載された事項の適用等を検討するまでもなく、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明9に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。 7 本件訂正発明10 本件訂正発明10は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、甲7に記載された事項の適用等を検討するまでもなく、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明10に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。 8 本件訂正発明11 本件訂正発明11は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、本件訂正発明1に係る特許を取消理由2(第29条第2項)により取り消すことはできないことは、上記2にて説示したとおりである。したがって、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明11に係る特許も、取消理由2によって取り消すことはできない。 9 取消理由1及び2に関する判断のまとめ したがって、本件訂正発明1ないし4及び8ないし11に係る特許は、取消理由1及び2によって取り消すことはできない。 第6 取消理由3についての判断 取消理由3は、本件発明3(本件訂正発明3に対しても同様)は、特許異議申立書第9ページ第23?30行までに記載された理由のとおり、本願の明細書に記載された発明ではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 より具体的には、本件発明3の(従属元である請求項1で特定される)「該架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有する蓋」との構成要件と、(請求項3で特定される)「柔軟性あるマイクロニードルパッチの粘着シート部分を前記架台部上で保持」する構成要件の組み合わせが発明の詳細な説明に記載されていないというものである。 これにつき検討するに、特許明細書段落【0043】及び図10において、実施例4として、マイクロニードルパッチの粘着シート部分を架台部上で保持することが記載されている。該記載に係る実施例4には、本件図8に示される「窪み部を有する蓋」で「マイクロニードルパッチを押さえ」ることは明記されていない。 しかしながら、「窪み部を有する蓋」で「マイクロニードルパッチを押さえ」ることは、特許明細書段落【0036】?【0037】並びに図8及び図9に示されているところ、図10の実施例4のような粘着シートによる保持においても蓋を設ける方が収容容器として一般的に好ましく、また、特許明細書及び図面において、実施例4の粘着シートによる保持において蓋の窪み部で押さえることを妨げるような記載は見当たらないことからすれば、かかる蓋の窪み部で押さえる事項は、図10に示される実施例4の態様にも適用し得ることが実質的に開示されていると解するのが合理的な解釈というべきである。 よって、本件訂正発明3は、本願の明細書に記載された発明ではないとまではいえず、本件訂正発明3に係る特許は、取消理由3によって取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由1ないし3及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4及び8ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし4及び8ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 なお、請求項5ないし7に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項5ないし7に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、 i)該架台部は1個であって、該周辺部の内側全面に設けられている、 ii)該架台部は2個であって、該周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられている、又は iii)該架台部は3個で、該底面部は2個であって各架台部の間にあり、 該架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有する蓋をも備えるマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項2】 柔軟性あるマイクロニードルパッチの離型シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項3】 柔軟性あるマイクロニードルパッチの粘着シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項4】 1個の収納容器内に複数個のマイクロニードルパッチを平面的に収納することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 マイクロニードル収納容器と前記蓋の対応する位置に、切り込み及び耳を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項9】 表面に帯電防止処理が付されていることを特徴とする請求項1から4、8のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項10】 収納容器を減菌紙又は減菌フィルムシートにより形成した袋の中に格納して密閉することを特徴とする請求項1から4、8、9のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。 【請求項11】 請求項1から4、8から10のいずれか1項に記載されたマイクロニードルパッチ収納容器に収納されたマイクロニードルパッチ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-08-01 |
出願番号 | 特願2014-267119(P2014-267119) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A61M)
P 1 651・ 537- YAA (A61M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 安田 昌司、藤田 和英、家辺 信太郎 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
根本 徳子 長屋 陽二郎 |
登録日 | 2016-06-10 |
登録番号 | 特許第5947873号(P5947873) |
権利者 | コスメディ製薬株式会社 |
発明の名称 | マイクロニードルパッチ収納容器2 |