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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  G01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01C
管理番号 1332286
異議申立番号 異議2017-700482  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-16 
確定日 2017-09-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6025267号発明「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6025267号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6025267号の請求項1ないし5に係る特許(以下、「請求項1ないし5に係る特許」という。また、請求項毎に「請求項1に係る特許」などという。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成26年6月20日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年5月16日に特許異議申立人株式会社ゼンリン(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
請求項1ないし5に係る特許に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、それぞれ、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区における地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示し、
前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、
前記入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部と
を更に備えることを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記住所番地をキーワードとしてインターネット上を検索して、当該住所番地に関連するWeb情報を付加情報として取得する情報検索部と、
前記情報検索部が取得したWeb情報から所定の文字列を抽出し、抽出された文字列の出現頻度からそのWeb情報の属性を決定し、抽出された属性及び前記住所番地に関連付けて当該Web情報を前記付加情報として分類して蓄積する情報分類部と、
各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するユーザー提供情報蓄積部と、
を更に備え、
前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、
前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示し、
前記ユーザーから提供される情報としては、少なくとも防災に関する情報が含まれ、前記防災に関する情報としては、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域のうち、少なくともいずれか一つが含まれる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、次の取消理由1ないし5を主張している。

1 取消理由1(特許法第17条の2第3項)
本件発明1ないし5は、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行われたものであって、本件特許発明1ないし5に係る特許は、特許法第113条第1号の規定により、取り消されるべきものである。

2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号)
本件発明1ないし5は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により、取り消されるべきものである。

3 取消理由3(特許法第36条第4項第1号)
本件特許明細書等の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

4 取消理由4(特許法第36条第6項第1号)
本件発明1ないし5は、本件特許明細書等の発明の詳細な説明に記載されているものではないから、本件発明1ないし5は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしておらず、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

5 取消理由5(特許法第29条第2項)
特許異議申立人は、甲第1号証ないし甲第3号証(以下、「甲1」ないし「甲3」という。)を提出し、本件発明1及び2は甲1に基づいて、本件発明3は甲1及び甲2に基づいて、本件発明4は甲1及び甲3に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

〔証拠方法〕
甲1:特開2002-7440号公報
甲2:特開2000-55687号公報
甲3:特開2013-11573号公報

第4 当審の判断
1 取消理由1(特許法第17条の2第3項)について
(1)異議申立人の主張
ア 請求項1に関して
請求項1の「前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」の下線部は、平成28年3月23日付け手続補正書により追加された事項である。この記載は、出願時明細書の段落0028,0128に記載された事項に基づいている。しかしながら、請求項1には、上記下線部に先行して、「前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示する」と記載している。かかる記載における「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」と上記下線部の「住所番地」がいかなる関係にあるかは、本件出願時明細書および図面(以下、出願時明細書等という)には一切記載がない。出願時明細書等には、「住居番号」に関して、明細書段落0040に、「この地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、また、地図には、道路と、該道路に沿って立ち並ぶ建物を表示する建物表示輪郭(ポリゴン)と、建物表示輪郭内には住所番地192を表示させている。即ち、この地図データでは、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)の社会座標系を組み合わせて表示させている。」との記載があること、および「住居番号」や「地番」については、住居表示に関する法律(昭和37年5月10日法律第119号)に明確な定義があることに鑑みれば、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示)については、出願時明細書等に記載されていたが、これを「住所番地」と共にどのような態様で表示するか、という点については、出願時明細書等には何らの記載も存在しない。「住所番地」は、専ら付加情報の検索や蓄積に用いられているものであり、これを「住居番号」等とどのように組み合わせて表示するかという点についての記載はない。
仮に請求項1において「住所番地」と、「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」とが同じものを意味するとして請求項1において用いられているとすれば、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については住居番号及び住居表示未実施地区における地番を重点的に表示する一方、住宅密集地では住居番号及び住居表示未実施地区における地番を間引いて表示する」ことは新規事項である。なぜなら、出願時明細書等では、「住所番地」を「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については」「重点的に表示する一方、住宅密集地では」「間引いて表示する」ことは記載されているが、「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」について、これをある場合に重点的に表示し、ある場合に間引いて表示することは何ら記載されていないからである。本件特許明細書等では、既に説明した様に、「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」と「住所表示」とは、截然と分かれて記載されており、補正された特許請求の範囲以外で、両者を一文に含んだ記載はなく、両者を同じ意味であると解することはできない。
他方、請求項1における「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」と「住所番地」とが何ら関係がないものであるとすると、表示情報生成部は、「地図上の住宅に、住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、」この「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」とは別に、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」ことになる。しかしながら、このような二つの表示を同時に行なうことは、本件特許明細書等には一切記載されていない。
従って、当該事項を加える補正は、その記載をいかなる意味に解釈したとしても、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものであって、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

イ 請求項2に関して
請求項2は「表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有する」ものとされているが、このうち下線部は、平成28年3月23日付けの手続補正書で補正された事項である。
しかしながら、平成28年3月23日付けで追加された上記事項は、出願時明細書等には記載されていた事項ではない。出願時明細書等には、「住所番地」に「関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる」ことは記載されている(例えば、段落0032)が、「住居番号」に関して、「関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる」ことは一切記載されていない。
従って、当該事項を加える補正は、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものであって、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

ウ 請求項3に関して
請求項3は、「表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」ものとされているが、かかる内容は、平成27年11月20日付け手続補正書により、請求項4として補正され、その後、平成28年3月23日付け手続補正書により、請求項3の内容に引き継がれた事項である。
しかしながら、かかる内容は、出願時明細書等には記載されていた事項ではない。本件出願時明細書等には、例えば、段落0029や段落0130に、「更に、このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。なお、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されるようにすればよい。」と記載されてはいるが、「緊急警報が入った時点で」、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」ことは一切記載されていない。なお、出願時明細書の段落0028には、「このナビシステムでは、住所番地は必ずしもすべての建物に表示されている必要はなく、例えば、交差点や道路沿いなどの建物に重点的に表示したり、或は住宅密集地では間引いて表示するなど、適宜、位置確認に必要な範囲で省略を行ってもよい。」という記載があるが、段落0028の記載は、ナビシステムの機能の一態様を示しているに過ぎず、この機能と緊急警報が入った場合の機能とをどのように組み合わせるかという請求項3の内容が記載されているとは言えない。まして段落0028の記載は、ナビシステムの機能を説明するものであり、請求項3に記載の「ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく」、つまりナビシステムが使用されていない場合に、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」ことは、出願時明細書等には一切記載がない。
従って、当該事項を加える補正は、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものであって、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

エ 請求項4に関して
請求項4は、「前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、
前記入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部と」を備えるものとされている。このうち、入力インターフェースに関する記載(下線部)は、平成28年3月23日付け手続補正書による補正によって加えられた事項である。
しかしながら、入力インターフェースが、「表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する」ことは、出願時明細書等には一切記載されていない。出願時明細書の段落0034には、「表示情報生成部が表示させた地図上において、住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェース」について記載されているが、住所番地を選択するユーザー操作の取得が「表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において」行なわれることは記載されていない。出願時明細書は「表示情報生成部」の機能については、「上記発明において、地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、当該ナビシステムは、現在位置を取得する現在位置取得部と、現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示するとともに、建物の座標位置に対応させて住所番地を表示させる表示情報生成部とを備えることが好ましい。」としているに過ぎず、「表示情報生成部」が表示させる地図データに関して、それ以上の記載は見あたらない。
従って、当該事項を加える補正は、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものであって、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

オ 請求項5に関して
請求項5は、「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、
前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するものとされている。かかる内容は、平成28年3月23日付け手続補正書による補正によって加えられた事項である。
しかしながら、出願時明細書等には、「表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含む」ことは記載されていないし、更に「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」することも記載されていない。前者に関しては言えば、出願時明細書には、「表示情報生成部」が付加情報を含むとの記載は一切ない。明細書段落0118には、「付加情報追加部184は、地図解析部183の制御により、住所番地に関連する付加情報を、地図データに重ね合わせるようにして(S209)、表示情報生成部182では、地図データ及び付加情報に基づいて、表示部13aの画面上に、番地入の地図データを表示するとともに、付加情報を建物の座標に対応する位置に表示させる(S210)。」との記載はあるが、「住居番号に関連する付加情報」についての記載はなく、また「付加情報を含む」との記載も見あたらない(下線は強調を示す、以下同じ)。
また、請求項5に加えられた上記記載のうちの後半の「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するという構成も、出願時明細書には記載されていない。本願出願時明細書には、その段落0029に「このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。なお、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されるようにすればよい。」との記載はあるが、「表示情報生成部」が、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を」「最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」することは記載されていない。請求項5は、「最寄りの避難場所や避難経路」を、避難警報が入っているか否かにかかわらず表示することを含むが、少なくとも避難警報が入っていない場合に最寄りの避難場所等を表示することは、出願時明細書には開示がない。また、その避難場所等が最寄りの避難場所等であるとの記載も見あたらない。
従って、当該事項を加える補正は、出願時明細書等に記載のない事項を追加するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものであって、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

(2)当審の判断
ア 請求項1に関して
本件特許明細書等の段落【0120】には、
「(作用・効果)
このような本実施形態によれば、現在位置取得部186が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示するとともに、建物の座標位置に対応させて住所番地を表示させている。即ち、本実施形態では、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)の社会座標系を組み合わせ、GPSによって特定された現在位置との関係において、利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。」
と記載され、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とが、対応するものであることが示されている。
ここで、「住所番地」及び「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」は、ともに、「住所」(の最も下位の部分)を表す番号であることを勘案すると、本件特許明細書等において、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、実質的に同じものを意味しているといえる。
そうすると、本件出願時の明細書(以下、「本件当初明細書」という。)には、
「なお、このサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムでは、住所番地は必ずしもすべての建物に表示されている必要はなく、例えば、交差点や道路沿いなどの建物に重点的に表示したり、或は住宅密集地では間引いて表示するなど、適宜、位置確認に必要な範囲で省略を行ってもよい。更に、このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。」(段落【0128】)
と記載されていたのだから、請求項1において「前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」とする補正は、本件当初明細書の段落【0120】及び【0128】の記載から自明な事項であり、本件当初明細書に記載された範囲内のものであるといえる。
すなわち、平成28年3月23日付け手続補正書により請求項1における上記事項を追加する補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものではない。

イ 請求項2に関して
上記アのとおり、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、同じものであるといえる。
そして、本件当初明細書には、「上記発明において、住所番地に関連する付加情報を、地図データに重ね合わせるようにして、建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することが好ましい。」(段落【0032】)と記載されていたのだから、請求項2において「当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有する」という事項を追加する補正は、本件当初明細書に記載された範囲内のものである。
したがって、平成28年3月23日付け手続補正書により請求項2における上記事項を追加する補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものではない。

ウ 請求項3に関して
本件当初明細書には、
「上記課題を解決するために、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)のみを表示することを特徴とする。」(段落【0020】)
「更に、このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。なお、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地 図が表示されるようにすればよい。」(段落【0029】)
と記載されている。
これらの記載から、平成28年3月23日付け手続補正書における請求項3(平成27年11月20日付け手続補正書における請求項4)における「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」という事項を導くことができる。
したがって、平成27年11月20日付け手続補正書により請求項4に上記事項を追加する補正及び平成28年3月23日付け手続補正書による請求項3における上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものではない。

エ 請求項4に関して
本件当初明細書には、
「上記課題を解決するために、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)のみを表示することを特徴とする。」(段落【0020】)
「また、上記発明において、表示情報生成部が表示させた地図上において、住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部とを更に備えることが好ましい。」(段落【0034】)
と記載されている。
これらの記載から、「地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)を表示すること」及び「表示情報生成部が表示させた地図上において、住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェース」という事項が読み取れる。
また、上記アのとおり、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、同じものであるといえる。
そうすると、本件当初明細書には、実質的に「前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェース」という事項が記載されていたといえるから、請求項4において「前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において」という事項を追加する補正は、本件当初明細書に記載された範囲内のものである。
すなわち、平成28年3月23日付け手続補正書及び平成28年8月18日付け手続補正書により請求項4における上記事項を追加する補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものではない。

オ 請求項5に関して
本件当初明細書には、
「また、上記発明において、住所番地に関連する付加情報を、地図データに重ね合わせるようにして、建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することが好ましい。この場合には、付加情報を地図データに重ね合わせて表示するので、地域に多岐多様にわたって顕在的、潜在的に分布する付加情報を、行く先々において現在地点から眺望できるように隈なく提供することができる。更に、上記発明において、付加情報は、住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報であることを特徴とすることが好ましい。この場合には、地域に多岐多様にわたって顕在的、潜在的に分布する防災・リスク情報や観光資源等を、自由にかつ効率的、体系的に探索できる。」(段落【0032】)
「そして、付加情報追加部184は、地図解析部183の制御により、住所番地に関連する付加情報を、地図データに重ね合わせるようにして(S209)、表示情報生成部182では、地図データ及び付加情報に基づいて、表示部13aの画面上に、番地入の地図データを表示するとともに、付加情報を建物の座標に対応する位置に表示させる(S210)。」(段落【0118】)
「更に、このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。なお、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されるようにすればよい。」(段落【0029】)
と記載されている。
上記段落【0029】の記載において、「避難場所や避難経路に安全に誘導することができる」のは、緊急警報が入っている場合に限られないから、緊急警報が入っていない場合においても「避難場所や避難経路」を表示することは自明といえる。
また、「避難場所」が、「最寄りの避難場所」を意味することは、技術常識である。
そして、上記アのとおり、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、同じものであるといえる。
そうすると、請求項5における「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、
前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」という事項は、本件当初明細書の記載から導くことができたものといえる。
すなわち、平成28年3月23日付け手続補正書により請求項5における上記事項を追加する補正は、特許法第17条の2第3項の規定に反して行なわれたものではない。

2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1)異議申立人の主張
ア 請求項1に関して
請求項1にかかる発明(以下、特許発明1という)は、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」であるとされている。しかしながら、「サーベイ」とその後に括弧書きで記載された「眺望」とがいかなる内容を指し示しているか明確でない。本件特許明細書等では、例外なく「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」と記載されており、両者の関係を説明する文言はない。カタカナ語「サーベイ」は、大辞林には「調査。探査。測量。測定。」として記載されており、「眺望」の語義は見あたらない。
してみると、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」は、「調査」等かつ「眺望」型ナビゲーションシステムなのか、「サーベイ型ナビゲーションシステム」の中で、特に「眺望」を重視したナビゲーションシステムなのか判然としない。
仮に「サーベイ型ナビゲーションシステム」が「眺望型ナビゲーションシステム」のことであるとすると、「眺望」とは、大辞林によれば、「遠くを見渡すこと」「みはらし」とされているから、「遠くを見渡す型のナビゲーションシステム」あるいは「みはらし型ナビゲーションシステム」ということになるが、請求項1の内容、即ち、
「現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有することを特徴とする」ことと、「遠くを見渡す型のナビゲーションシステム」とが、どのような関係にあるのか、明確に理解できない。

特許発明1には「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したもの」と記載されている。この定義は、日本語の解釈としては「地図のデータ」である「地図データ」が、「地形、地図および建物」を表示したものと規定されており、意味不明である。定義に従えば、地図データが表示する地図には、地形や建物は含まれないことになり、地形や建物を含まない素の地図としては、いわゆる白地図以外に想定できず、であるとすれば、地図データは、地形、白地図および建物を表示するものであり、道路や避難所などを含まないものとなってしまう。それでは、道路を含まない地図データが、ナビゲーションシステムとしてどのように機能するか、理解することきができない。また、道路を含まない地図データにおいて、「交差点又は道路沿いの建物」をどのように判別して、住所番地を重点的に表示するかも不明である。地図に、もともと地形や建物、道路などが含まれているとすれば、地形や建物を含まない地図としては、道路地図などが有り得るが、出願時明細書には、地図として道路地図が想定される旨の記載はなく、地図データが、「地形、建物、道路地図を線図、文字、図形で表示したもの」と解釈すべき理由はない。
従って、特許発明の1の地図データの定義は、明確に理解することができない。

特許発明1には、「表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」と記載されている。しかしながら、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する」とは、住所番地をどのように表示することを意味しているか不明確である。「重点的に」とは、大辞林によれば、「全体を一様にではなく、重要な箇所を選んで行なう様」であるとされている。してみると、住所番地を表示する際、一様にではなく、重要な箇所を選んで表示を行なうことと解されるが、「交差点又は道路沿いの建物」を重要な箇所として選ぶとは、「交差点又は道路沿いの建物」は全て住所番地を表示するということなのか、それ以外の箇所より沢山選択して住所番地を表示するのか、理解することができない。また、「交差点又は道路沿いの建物」とは、どのような建物を指すのか、明確でない。「交差点」の建物とは、複数の道路に面している建物を言うのか、交差点から何メートルまでの範囲を言うのかなども明確でない。本件特許明細書等に、どのような建物を「交差点又は道路沿いの建物」というのか、については、何ら具体的な記載がない。
更に言えば「道路沿いの建物」とはおよそ全ての建物を意味するのではないか。何となれば、道路に沿っていない建物とは、人や車両等により接近できない建物であり、建設したあとで建設用の道路を消去した場合等以外には、想定できないからである。
してみると、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する」とは、どのような表示の態様を意味しているか、不明確である。
同様に、「住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」なる記載も不明確である。そもそも「住宅密集地」とはどの程度密集していることを指すのか、不明である。また、住宅密集地が、何らか定義できたとしても、住宅密集地の交差点の建物はどのように表示するか、理解できない。なぜなら、「交差点又は道路沿いの建物」と「住宅密集地」とは、対概念でもなければ、排他的な概念でもないからである。しかも、本件特許明細書等を精査しても、どのような場合を「住宅密集地」と判断して住所番地の表示をどの程度を間引くかについては何ら記載がない。
従って、請求項1における「表示情報生成部は、(中略)地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」との記載は明確でない。

請求項1において、「表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」という記載の前半は、「表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示する」のであり、後半は「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」と記載されており、前半の「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」と後半の「住所番地」とがいかなる関係にあるか明瞭ではない。本件特許明細書等では、「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」と「住所番地」とは、截然と分けて記載されており、両者が一文の中に混在しているところは、補正された特許請求の範囲以外に存在しない。従って、両者は異なるものを意味していると解されるところ、請求項1において、両者の関係を理解することができず、発明が明確であるとは言えない。
しかも、本件特許発明1では、住居番号と住所番地に組み合わせて、「住宅」と「建物」という用語も使い分けられ、それぞれ別の文脈で記載されている。別の言葉を使っている以上、それぞれ別のものを指していることになる。そうすると、住宅密集地と判断できる地域を例にとれば、全住宅(ポリゴン)には住居番号が表示され、かつ、住宅(ポリゴン)とは異なる「建物」というなんらかの表示物に、住居番号とは異なる「住所番地」という何らかの表示が間引かれて表示されていることになる。しかしそのような表示の実例はなく、またどのような表示になるか、明確でない。このため、発明が明確であるとは言えない。

上記の通り、本件特許発明1は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

イ 請求項2に関して
請求項2にかかる発明(本件特許発明2という)は、「前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とする」とされている。
しかしながら、かかる記載において下線部の「建物の座標に対応する位置」とはいかなる位置を示すか明確でない。この「座標」は、特許発明2における自然座標系による座標なのか、社会座標系による座標なのか、判断できない。更に、「地番の社会座標系」が意味する所も明確でない。「社会座標系」とはいかなる座標系を意味するのか、明細書には記載がなく、また外部証拠としての辞書やハンドブックなどにも、説明は見当たらない。従って、「建物の座標に対応する位置」とはいかなる位置か、明確でない。

また、「緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって」、「当該住居番号に関連する付加情報を」「建物の座標に対応する位置に表示させる」とは、いかなる方法で付加情報を表示させるか明確でない。本件特許明細書等には、「緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせること」については、段落0031,0040,0120などに記載があるが、これらの記載は、両者を組み合わせて表示することで、「利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。」ことを説明するに留まり、組み合わせることによって、「当該住居番号に関連する付加情報を」「建物の座標に対応する位置に表示させる」ことについては、説明がない。従って、本件特許発明2の内容を明確に理解することができない。
なお、特許発明2における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が不明確なものであることは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明2は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

ウ 請求項3に関して
請求項3にかかる発明(本件特許発明3という)は、「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とする」とされている。しかしながら、「緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示すること」が、どうして「避難場所や避難経路に安全に誘導する」ことになるか、両者の関係は明確でない。本件特許明細書等には、段落0029に緊急警報が入ったときの対応について触れているが、そこには「避難場所や避難経路に安全に誘導することができる」のは、「住宅地図としての機能により」とされており、特許発明3の内容との整合性もない。従って、特許発明3の内容は明確でない。
なお、特許発明3における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が不明確なものであることは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明3は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

エ 請求項4に関して
請求項4にかかる発明(本件特許発明4という)には、「入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する」との記載がある。ここで、「表示されている地図データの補正」とは、何を行なうことを意味するのか不明確である。なぜなら、請求項1に記載されているように「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したもの」であるから、地図データの補正とは、これらを補正することを意味する。「補正」とは、「足りないところを補い、誤りを正すこと」あるいは「誤差を除いて正しい値を求めること」なので(大辞林)、地図データの補正が地図データの足りないところを補ったり、誤りを正したりするとはどのようなことか明確に理解できない。文言上、地図データに基づく表示を補正すると解釈することもできない。
本件特許明細書等の段落0104や0131には、地図データの補正について記載があるが、それらの記載は、例えば「現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行しているので、GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境による影響によって、測位に誤差が生じた場合であっても、ユーザーからの操作によって正確な位置情報を取得することができ、衛星から取得される位置情報の誤差を解消することができる。さらに、現在位置取得部186では、その誤差の補正情報を用いることで、その後の測位演算の精度向上に反映させることができる。」(段落0131)というものであり、簡明に言えば「衛星から取得される位置情報の誤差を解消すること」にすぎない。従って、これらの記載を参酌しても「地図データの補正を実行する」とはいかなる処理を言うのか、明確に理解することができない。従って、特許発明4の内容は明確でない。
なお、特許発明4における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が不明確なものであることは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明4は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

オ 請求項5に関して
請求項5記載の発明(以下、本件特許発明5という)は、「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含」むとされている。しかしながら、「住所番号に関連する付加情報」として、「住所番地に関連付けられた防災情報」等とはいかなるものか、明確でない。既に指摘したように、「住居番号」と「住所番地」とは、本件特許明細書等では、区別して用いられており、一文に同時に用いられている箇所は、補正された特許請求の範囲以外に存在しない。従って、両者の関係を明確に理解することができない。

更に、本件特許発明5では、「前記ユーザーから提供される情報としては、少なくとも防災に関する情報が含まれ、前記防災に関する情報としては、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域のうち、少なくともいずれかーつが含まれる」とされているが、このユーザーから提供される情報は、「各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するユーザー提供情報蓄積部」を備えるとされているだけであり、その利用については、何ら記載されていない。しかも、「少なくとも一つが含まれる」とされているから、避難場所や避難ルートを含まない構成を、特許発明5は含んでいることになる。
更に、特許発明5では、「表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、」とされているから、表示情報生成部が防災情報を含まないものも、特許発明5は含んでいることになる。
してみると、特許発明5において、「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するとしているものの、そのための防災情報や避難場所、避難経路が、表示情報生成部にもユーザー提供情報蓄積部にも存在しない場合があり、その場合、いかなる方法で、表示情報生成部が、「最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するかは、明確でない。
なお、特許発明5における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が不明確なものであることは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明5は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

(2)当審の判断
ア 請求項1に関して
広辞苑によれば、「サーベイ」は英語の「survey」であり、「概観。検分。調査。」という意味である。また、英語の「survey」は、「ざっと見渡す,見渡すこと」という意味を有する。
一方、「眺望」も、「遠く見渡すこと。見渡したながめ。見晴らし。」という意味を有する。
したがって、本件発明1における「サーベイ」とは、「眺望」と同じく見渡すという意味であると解される。
そして、本件特許明細書等を総合的にみると、本件発明における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」は、(従来の一次元の形式をとる”トンネル型”のナビシステムではなく、)例えば図1、7、10に示されるように、「広々とした眺望をもって、”発見的”かつ”360度の全方位性”」(段落【0021】)を有するナビゲーションシステムであると解される。
そうすると、本件発明1における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が明確でないとはいえない。

次に、「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり」に関して、「地図」には様々な種類の地図があるが、「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したもの」とすることにより、「地図データ」がどのようなものであるか明確に記載されている。
したがって、本件発明1における「地図データ」が明確でないとはいえない。

また、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」に関しては、「交差点又は道路沿いの建物」については住所番地の表示を多くし、「住宅密集地」では住所番地を間引いて表示するというものであって、「重点的に」、「交差点又は道路沿いの建物」及び「住宅密集地」については、一般的にも用いられている用語である。
また、どの程度重点的に住所番地を表示するか、あるいはどの程度間引いて表示するかについては、地図の縮尺及び住宅の広さ等によって当業者が適度に行うべきものであって、数値による限定をするまでもなく、当業者にとって明確に把握できるものである。
したがって、本件発明1における「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」という記載が明確でないとはいえない。

また、上記1(2)アのとおり、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、同じものであるといえる。
なお、「住宅」と「建物」については、「住宅」が「人が住むための家」であるのに対し、「建物」は「建築物。建造物。」であって、明細書の記載によれば「自動販売機」(段落【0127】)も建物に含まれるから、「建物」は「住宅」よりも広い概念であるといえる。
しかしながら、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する」という記載が明確でないとはいえない。

したがって、本件発明1における
「現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」
という記載が明確でないとはいえない。

イ 請求項2に関して
「前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とする」という記載において、「当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる」とは、表示画面上において、建物の座標に対応する位置に、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして表示させるということである。
したがって、「建物の座標」が自然座標系であるか社会座標系であるかは問題ではなく、「表示画面上の建物の座標」という意味と解される。
なお、表示画面上の建物は、自然座標系の建物の座標と社会座標系の建物の座標が重なるところに表示されると解される。

また、付加情報の表示方法については、請求項2に「当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる」と記載されており、具体的な方法としては、本件特許明細書等において、
「表示情報生成部182は、現在位置取得部186が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示するとともに、建物の座標位置に対応させて住所番地を表示させるモジュールである。この表示情報生成部182によって、図1に示すように、ユーザー端末1の画面上には、現在位置を中心として、道路、建物等の輪郭をポリゴンで表示させるとともに、建物ポリゴン内に住所番地を表示させる。更に、画面上には、付加情報としての避難場所を示す避難場所のアイコン101が表示される。このように、本実施形態では、地図データ上に、住所番地のレイヤー、属性毎のレイヤーを重ね合わせて画面上に表示させる。」(段落【0099】)
「また、表示情報生成部182では、図7(a)及び(b)に示すように、画面上の所定領域に付加情報を表示させることができる。ここで、図7(a)及び(b)は、携帯電話やスマートフォン以外のユーザー端末1としてカーナビゲーション装置1aやパーソナルコンピューター1bの画面上に地図データを表示させる場合を例にしているが、これらのような表示形態を図1に示すようなスマートフォンの画面上に表示させることもできる。」(段落【0100】)
「例えば、図7(a)に示すように、地図上に付加情報を表示させる付加情報表示領域を貼り付けるように表示させ、当該領域内に付加情報の詳細を表示させてもよい。この場合、付加情報表示領域内に表示される情報は、表示されている地図上の住所番地を含む付加情報である。また、地図上には、当該付加情報の位置を示すアイコンが表示される。」(段落【0101】)
「また、例えば、図7(b)に示すように、地図を表示させる地図表示領域と、付加情報を表示させる付加情報表示領域とを分けて表示させることもできる。ここでは、日付情報も含めており、本日イベントが行われている付加情報を付加情報表示領域に表示させている。なお、ここでも、地図上には、当該付加情報の位置を示すアイコンが表示される。」(段落【0102】)
と記載されている。
このようにして、「当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる」ことができることは明らかであるから、請求項2の記載が明確でないとはいえない。

ウ 請求項3に関して
請求項3には、「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とする」と記載されている。
ここで、「緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」ことにより、避難場所や避難経路が分かりやすくなるのであるから、「避難場所や避難経路に安全に誘導する」ことに結びつくことは、明らかである。
したがって、請求項3の記載が明確でないとはいえない。

エ 請求項4に関して
請求項4には、「入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部」という記載がある。
ここで、「現在位置取得部」とは、請求項1に記載された「現在位置を取得する現在位置取得部」であって、具体的には、本件特許明細書等を参照すると、
「現在位置取得部186は、ユーザー端末1の現在位置を取得するモジュールであり、位置情報取得部16を介して、例えば、衛星3からのGPS信号に基づいて、現在位置の座標を演算することで、自機の位置情報を取得することが可能となっている。現在位置取得部186によって取得された座標データは、地図解析部183に入力される。」(段落【0091】)
と記載されているように、「例えば、衛星3からのGPS信号に基づいて、現在位置の座標を演算することで、自機の位置情報を取得することが可能となっている」ものである。
そして、この方法によると、誤差が生じることが知られている。本件特許明細書等を参照すると、
「本実施形態において、地図解析部183には、衛星3から取得される位置情報を修正する現在位置修正部183aを有している。すなわち、衛星3を用いて現在位置を取得する場合、GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境によって大きな影響を受けるため、10m?40mの範囲で誤差が生じる。そのため、本実施形態では、図10(a)に示すように、表示部13a上に表示されている地図のうち、住所番地193(図中では12番地)をクリックすることで、当該選択された住所番地を現在位置として位置情報を変更することができる。」(段落【0103】)
と記載されている。
このような誤差を修正するために、
「具体的には、現在位置修正部183aは、タッチパネルなどの入力I/F12上における操作によって、表示部13a上に表示されている地図のうち、住所番地193(図中では12番地)を選択(タッチやクリック等)されることで、選択された住所番地に紐付けられた座標(緯度・経度)を地図データ蓄積部15bから取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部186に対して、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する。現在位位置の修正を要求された現在位置取得部186は、GPSの測位演算の誤差を補正し、その誤差による補正情報に基づいてその後の測位演算の精度向上に反映させる。」(段落【0104】)
ということを行う。
すなわち、請求項4における「表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部」とは、明細書(段落【0104】)の記載によれば、「表示部13a上に表示されている地図のうち、住所番地193(図中では12番地)を選択(タッチやクリック等)されることで、選択された住所番地に紐付けられた座標(緯度・経度)を地図データ蓄積部15bから取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部186に対して、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する。」ということであり、特に不明確な点はない。
したがって、請求項4の記載が明確でないとはいえない。

オ 請求項5に関して
上記1(2)アのとおり、「住所番地」と、「住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)」とは、同じものを意味している。
したがって、「住所番号に関連する付加情報」として、「住所番地に関連付けられた防災情報」があっても、不明確であるとはいえない。
次に、請求項5において、ユーザーから提供される情報は、「各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するユーザー提供情報蓄積部」を備えると記載され、その利用については記載されていないが、「・・・ユーザー提供情報蓄積部」を備えるという発明特定事項は明確であるから、そのことで請求項5の記載が不明確であるとはいえない。
また、「前記ユーザーから提供される情報としては、少なくとも防災に関する情報が含まれ、前記防災に関する情報としては、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域のうち、少なくともいずれか一つが含まれる」と記載されているから、ユーザーから提供される情報が避難場所や避難ルートを含まない場合もあるが、そのことで請求項5の記載が不明確であるとはいえない。
また、「表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み」と記載されているから、防災情報を含まない場合があるが、そのことで請求項5の記載が不明確とはいえない。
また、「前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示し」と記載されているところ、そのための防災情報や避難場所、避難経路が、表示情報生成部にもユーザー提供情報蓄積部にも存在しない場合があるが、その場合には、表示情報生成部は、自動表示をしないか、又は、地図のみを自動表示すると解され、そのことで請求項5の記載が不明確であるとはいえない。

3 取消理由3(特許法第36条第4項第1号)について
(1)異議申立人の主張
ア 請求項1に関して
特許発明1は、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」であるとされている。しかしながら、この記載は、上述したように不明確であり、いかなる構成を採用すれば、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現できるか、当業者と雖も理解できない。
仮に「サーベイ型ナビゲーションシステム」が「眺望型ナビゲーションシステム」のことであるとすると、「眺望」とは、大辞林によれば、「遠くを見渡すこと」「みはらし」とされているから、「遠くを見渡す型のナビゲーションシステム」あるいは「みはらし型ナビゲーションシステム」ということになるが、特許発明1の内容、即ち、
「現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有することを特徴とする」ことによって、「遠くを見渡す型のナビゲーションシステム」をどのように実現し得るのか、当業者と雖も理解できない。従って、サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムを実施することができない。

特許発明1における「地図データ」の定義が不明確であることは、既に説明した。このため、地図データの定義に従えば、地図データは道路や避難所などを含まないものとなってしまい、道路を含まない地図データを用いて、ナビゲーションシステムをどのように構成するか、当業者と雖も理解することきができない。

特許発明1には、「表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」と記載されている。しかしながら、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示」しようとすると、実際には、どのように判断し、何を行なえば良いか、当業者と雖も理解できない。
なぜなら、「道路沿いの建物」と「道路沿いでない建物」とを区別するにはどうすれば良いか、当業者には理解できない。当業者の理解によれば、よほどの例外を除いて、すべての建物は道路沿いに存在するからである。
また、「住宅密集地であるか住宅密集地ないか」を判断できなければ、特許発明1は実施できないが、住宅密集地か否かの判断をどのように行なえばよいか、本件特許明細書等には、記載がない。「住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」ためには、表示対象(表示画面内)における住宅密集地の有無を判定し、密集地を特定したうえで、間引くという作業をしなければならない。しかしながら、本件特許明細書等には「密集地の判定基準や方法」「密集地情報を含んだデータベース」等の記載はなく、密集地の判定ができない。また、その手法が、当業者にとって自明のことだとも解されない。実際、どの程度の状況を以て「住宅密集地」と判断するかについては、当業者に自明な判断基準は存在しない。更に言えば、住宅密集地(間引く)でかつ交差点に接している建物(重点的に表示する)とか、住宅密集地でかつ道路沿いの建物については、どのように表示するか、当業者には理解できない。「住宅密集地」や「交差点又は道路沿い」のの判断基準をどのようにしても、おそらく両方の条件に当て嵌まる建物は幾らも存在するからである。
従って、特許発明1における「表示情報生成部は、(中略)地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」との記載は、当業者が実施できる程度に記載されたものではない。

上記の通り、本件特許発明1についての明細書の記載は、当業者が容易に特許発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとは言えず、特許法第36条第4項第1号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

イ 請求項2に関して
特許発明2は、「前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とする」とされている。
しかしながら、「建物の座標に対応する位置」とはいかなる位置を示すか明確でないため、付加情報をどのように表示すれば良いか、当業者と雖も理解できない。この「座標」は、特許発明2における自然座標系による座標なのか、社会座標系による座標なのか、判断できないからである。更に、「地番の社会座標系」が意味する所も明確でない。「社会座標系」とはいかなる座標系を意味するのか、明細書には記載がなく、また外部証拠としての辞書やハンドブックなどにも、説明は見当たらない。従って、「建物の座標に対応する位置」とはいかなる位置か、明確でなく、当業者が特許発明2を実施することができない。
なお、いかなる構成を採用すれば、特許発明2の「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現できるか、当業者と雖も理解できないことは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明2は、当業者が容易に特許発明2を実施できる程度に明確かつ十分に本件特許明細書等に記載されたものとは言えず、特許法第36条第4項第1号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

ウ 請求項3に関して
特許発明3は、「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とする」とされている。しかしながら、どのようにすれば、「緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示」することで、「避難場所や避難経路に安全に誘導する」できるかが、当業者と雖も理解できない。本件特許明細書等には、段落0029に緊急警報が入ったときの対応について触れているが、そこには「避難場所や避難経路に安全に誘導することができる」のは、「住宅地図としての機能により」とされているに過ぎないから、特許発明3を実現するために、何をどのように実施したらよいか、理解できない。
なお、いかなる構成を採用すれば、特許発明3の「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現できるか、当業者と雖も理解できないことは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明3は、当業者が容易に特許発明3を実施できる程度に明確かつ十分に本件特許明細書等に記載されたものとは言えず、特許法第36条第4項第1号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

エ 請求項4に関して
特許発明4には、「入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する」とされている。ここで、「表示されている地図データの補正」として何を行なうかを、当業者と雖も理解することができない。なぜなら、請求項1に記載されているように「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したもの」であるから、地図データの補正とは、これらを補正することを意味する。「補正」とは、「足りないところを補い、誤りを正すこと」あるいは「誤差を除いて正しい値を求めること」なので(大辞林)、地図データの足りないところを補ったり、誤りを正したりすることを、どのように実施するか、明確に理解できない。
本件特許明細書等の段落0104や0131には、地図データの補正について記載があるが、それらの記載は、例えば「現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行しているので、GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境による影響によって、測位に誤差が生じた場合であっても、ユーザーからの操作によって正確な位置情報を取得することができ、衛星から取得される位置情報の誤差を解消することができる。さらに、現在位置取得部186では、その誤差の補正情報を用いることで、その後の測位演算の精度向上に反映させることができる。」(段落0131)というものであり、簡明に言えば「衛星から取得される位置情報の誤差を解消すること」にすぎない。これらの記載は、衛星から取得される位置情報の誤差を解消することが、「地図データの補正を実行する」こととどのように関連するのか、「地図データの補正」として、具体的にどのような処理を行なうのか、理解できない。従って、特許発明4の内容は、当業者と雖も実施できない。
なお、いかなる構成を採用すれば、特許発明4の「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現できるか、当業者と雖も理解できないことは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明4は、当業者が容易に特許発明4を実施できる程度に明確かつ十分に本件特許明細書等に記載されたものとは言えず、特許法第36条第4項第1号の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

オ 請求項5に関して
特許発明5は、「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含」むとされている。しかしながら、「住居番号に関連する付加情報」として、「住所番地に関連付けられた防災情報」等とはいかなるものか不明なので、特許発明5をいかにして実施するか、当業者と雖も、本件特許明細書等の記載が理解することができない。

更に、本件特許発明5では、「前記ユーザーから提供される情報としては、少なくとも防災に関する情報が含まれ、前記防災に関する情報としては、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域のうち、少なくともいずれかーつが含まれる」とされているが、このユーザーから提供される情報は、「各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するユーザー提供情報蓄積部」を備えるとされているだけであり、その利用については、何ら記載されていない。しかも、「少なくとも一つが含まれる」とされているから、避難場所や避難ルートを含まない構成を、特許発明5は含んでいることになる。
更に、特許発明5では、「表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、」とされているから、表示情報生成部が、防災情報を含まないものも、特許発明5は含んでいることになる。
してみると、特許発明5において、「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するとしているものの、そのための防災情報や避難場所、避難経路が、表示情報生成部にもユーザ提供情報蓄積部にも存在しない場合があり、その場合、いかなる方法で、表示情報生成部が、「最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するかを、当業者と雖も、本件特許明細書等の記載から理解することができない。
なお、特許発明5における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」が不明確なものであることは、特許発明1と同様である。

上記の通り、本件特許発明5は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号(当審注:項目からみて、「特許法第36条第4項第1号」の誤記と認める。)の規定に反して特許されたものであるから、同法第113条第4号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

(2)当審の判断
ア 請求項1に関して
「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」とは、上記2(2)アのとおり、例えば本件特許図面の図1、7、10に示されるように、「広々とした眺望をもって、”発見的”かつ”360度の全方位性”」(段落【0021】)を有するナビゲーションシステムであると解される。
そして、本件特許明細書等(段落【0039】ないし【0106】等)及び図面の記載を参照することにより、当業者は「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実施することができるから、この点において、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

また、「地図データ」については、請求項1において「地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したもの」と定義されており、本件特許明細書等には、「地図データ」に関して、
「以下に添付図面を参照して、本発明に係るサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムの実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムで用いられるユーザー端末1の画面構成である。図1に示すように、ユーザー端末1は、現在位置に対応した地図データを表示するナビシステムを備えており、ディスプレイ13aに地図データ上の建物に住所番地を表示することができる。」(段落【0039】)
「この地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、また、地図には、道路と、該道路に沿って立ち並ぶ建物を表示する建物表示輪郭(ポリゴン)と、建物表示輪郭内には住所番地192を表示させている。即ち、この地図データでは、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)の社会座標系を組み合わせて表示させている。」(段落【0040】)
「また、地図データ上には、住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報や、インターネット上で検索された住所番地に関連するWeb情報等などの付加情報191が表示可能となっている。この付加情報とは、地域に多岐多様にわたって顕在的、潜在的に分布する防災・リスク情報や観光情報など種々の情報である。地図データでは、この付加情報191を地図データ上に重ね合わせるようにして、建物の座標に対応する位置に表示させられている。」(段落【0041】)
「また、この地図データ上には、市町村の行政区画が表示されるとともに、一部の道路名や所定の場所には、道路、店舗、観光スポットの正式名称が表示されるとともに、主要な交差点の名称が表示される。なお、郵便局を表す記号、神社を表す記号、寺を表す記号のように地図上に表す記号などを表示してもよい。」(段落【0042】)
と記載されている。
そして、本件特許明細書等の上記記載及び図面を参照することにより、当業者は「地図データ」がどのようなものであるか理解することができ、「地図データ」を利用することができるから、この点において、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

また、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する」については、本件特許明細書等において、
「上記課題を解決するために、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)のみを表示することを特徴とする。
即ち、本発明では、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番)の社会座標系を組み合わせることを特徴とし、GPSによって特定された現在位置との関係において、利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。
なお、前記表示情報生成部によって、前記地図データ上の交差点又は道路沿いの建物に重点的に住所番地を表示するとともに、住宅密集地では間引いて表示する機能を設けてもよい。」(段落【0020】)
「なお、このナビシステムでは、住所番地は必ずしもすべての建物に表示されている必要はなく、例えば、交差点や道路沿いなどの建物に重点的に表示したり、或は住宅密集地では間引いて表示するなど、適宜、位置確認に必要な範囲で省略を行ってもよい。」(段落【0028】)
と記載されている。
これらの記載から、住所番地は必ずしもすべての建物に表示されている必要はなく、例えば、交差点や道路沿いなどの建物に重点的に表示したり、或は住宅密集地では間引いて表示するなど、適宜、位置確認に必要な範囲で省略を行ってもよいことが分かる。当業者は、地図データを参照すれば、住宅密集地が判断できるから、適宜住所番地を間引いて表示するように地図データを加工することができ、交差点や道路沿いなどの建物には住所番地を適宜重点的に表示するように地図データを加工することもできる。したがって、この点において、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。
なお、「住宅密集地でかつ道路沿いの建物」については、例えば、密集している住宅のうち道路沿いの建物については重点的に表示し、道路から離れた住宅については間引いて表示することが考えられ、「交差点又は道路沿いの建物」については、例えば、幹線道路沿いの建物ほど重点的に表示すること等が考えられ、当業者は、必要に応じて利用しやすいように地図データを加工すればよいといえる。

したがって、総合的にみて、本件発明1に係る明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

イ 請求項2に関して
請求項2には、
「請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」と記載されている。
そして、本件特許明細書等には、
「上記課題を解決するために、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)のみを表示することを特徴とする。
即ち、本発明では、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番)の社会座標系を組み合わせることを特徴とし、GPSによって特定された現在位置との関係において、利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。
なお、前記表示情報生成部によって、前記地図データ上の交差点又は道路沿いの建物に重点的に住所番地を表示するとともに、住宅密集地では間引いて表示する機能を設けてもよい。」(段落【0020】)
「上記発明において、地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、当該ナビシステムは、現在位置を取得する現在位置取得部と、現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示するとともに、建物の座標位置に対応させて住所番地を表示させる表示情報生成部とを備える。これにより、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では地番)の社会座標系を組み合わせ、GPSによって特定された現在位置との関係において、利用者が社会座標系も自由に使えることができる。」(段落【0031】)
「また、上記発明において、住所番地に関連する付加情報を、地図データに重ね合わせるようにして、建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することが好ましい。この場合には、付加情報を地図データに重ね合わせて表示するので、地域に多岐多様にわたって顕在的、潜在的に分布する付加情報を、行く先々において現在地点から眺望できるように隈なく提供することができる。更に、上記発明において、付加情報は、住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報であることを特徴とすることが好ましい。この場合には、地域に多岐多様にわたって顕在的、潜在的に分布する防災・リスク情報や観光資源等を、自由にかつ効率的、体系的に探索できる。」(段落【0032】)
「この地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、また、地図には、道路と、該道路に沿って立ち並ぶ建物を表示する建物表示輪郭(ポリゴン)と、建物表示輪郭内には住所番地192を表示させている。即ち、この地図データでは、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番表示を含む)の社会座標系を組み合わせて表示させている。」(段落【0040】)
と記載されている。
これらの記載から、地図データにおいて、緯度及び経度によって指標される座標上に建物が表示され、建物の座標位置に対応させて住所番地が表示されるとともに付加情報が表示されることが分かる。
そして、請求項2における「建物の座標に対応する位置」とは、地図データ上で建物が表示されている位置(明細書の記載によれば、「緯度及び経度によって指標される座標上」)であることは明らかである。
また、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現するための実施形態については、本件特許明細書等の段落【0043】ないし【0106】等に記載されている。

したがって、総合的にみて、本件発明2に係る明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

ウ 請求項3に関して
請求項3には、
「請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区における地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示し、
前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」
と記載されている。
そして、本件特許明細書等には、
「上記課題を解決するために、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、
現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
前記地図データ上の住宅に住居番号(住居表示未実施地区では、地番)のみを表示することを特徴とする。
即ち、本発明では、緯度経度の自然座標系と、住宅の住居番号(住居表示未実施地区では、地番)の社会座標系を組み合わせることを特徴とし、GPSによって特定された現在位置との関係において、利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。
なお、前記表示情報生成部によって、前記地図データ上の交差点又は道路沿いの建物に重点的に住所番地を表示するとともに、住宅密集地では間引いて表示する機能を設けてもよい。」(段落【0020】)
「そのことによって、従来システムの様に、探索行動の有効性が、目的地の”既知性”や目的地へのルート設定といった”一方向性”に縛られることなく、ナビ地図上の至る所に網羅された住所番地を手掛りに、広々とした眺望をもって、”発見的”かつ”360度の全方位性”において可能となる。これは、現地の地理空間での探索能力やその行動半径、自由度が、飛躍的に押し広げられて、大きく向上することを意味するものである。(段落【0021】)
「その結果、地域の避難場所や標高、危険情報、観光スポット、イベントなどの地理位置が、既知の情報として知らなくても、また、複数の場合でも、秩序立って、同時併行的に現地で見つけ出すことが可能となる。これまでのように、途中で道に迷ったり、労多くして功甚だ少ない疲労感のために、必要とされる達成の1/10も行かないうちに諦めたり、アクセスを放棄することがなくなる。」(段落【0022】)
「更に、このシステムは、災害時にGPS機能が使えない場合でも、住宅地図としての機能により、避難場所や避難経路に安全に誘導することができる。なお、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されるようにすればよい。」(段落【0029】)
と記載されている。
上記段落【0020】ないし【0022】の記載から、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムは、地域の避難場所等の地理位置が、同時併行的に現地で見つけ出すことが可能となるものであるから、避難場所や避難経路に安全に誘導することができるものである。
そして、ナビゲーションシステムの技術分野において、当該時点における現在地を中心とした地図を表示することは、常套手段(本件図面の第1図も参照。)である。
そうすると、本発明のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、当該時点における現在地を中心とした地図を表示することは、当業者が実施できる程度に明細書及び図面に記載された技術である。

また、段落【0029】には、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されることが記載されている。
そして、このように、緊急警報が入った時点で、自動的に当該時点における現在地を中心とした地図が表示されるようにすることは、当業者が実施できる程度に明細書及び図面に記載された技術である。

したがって、当業者は「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」ことを実施できるといえる。

よって、本件発明3に係る明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

エ 請求項4に関して
請求項4には、
「請求項1に記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステムにおいて、
前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、
前記入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部と
を更に備えることを特徴とするサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」
と記載されている。
これに関して、本件特許明細書等には、
「本実施形態において、地図解析部183には、衛星3から取得される位置情報を修正する現在位置修正部183aを有している。すなわち、衛星3を用いて現在位置を取得する場合、GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境によって大きな影響を受けるため、10m?40mの範囲で誤差が生じる。そのため、本実施形態では、図10(a)に示すように、表示部13a上に表示されている地図のうち、住所番地193(図中では12番地)をクリックすることで、当該選択された住所番地を現在位置として位置情報を変更することができる。」(段落【0103】)
「具体的には、現在位置修正部183aは、タッチパネルなどの入力I/F12上における操作によって、表示部13a上に表示されている地図のうち、住所番地193(図中では12番地)を選択(タッチやクリック等)されることで、選択された住所番地に紐付けられた座標(緯度・経度)を地図データ蓄積部15bから取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部186に対して、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する。現在位位置の修正を要求された現在位置取得部186は、GPSの測位演算の誤差を補正し、その誤差による補正情報に基づいてその後の測位演算の精度向上に反映させる。」(段落【0104】)
「また、本実施形態では、表示情報生成部182が表示させた地図上において、入力インターフェース12によって住所番地を選択可能としている。そして、現在位置修正部183aでは、入力インターフェース12により選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部15bから取得して、取得された座標に基づいて、現在位置取得部186に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行しているので、GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境による影響によって、測位に誤差が生じた場合であっても、ユーザーからの操作によって正確な位置情報を取得することができ、衛星から取得される位置情報の誤差を解消することができる。さらに、現在位置取得部186では、その誤差の補正情報を用いることで、その後の測位演算の精度向上に反映させることができる。」(段落【0131】)
と記載されている。
すなわち、請求項4における「表示されている地図データの補正」とは、「GPS受信機の測位精度や、測位を行う環境による影響によって、測位に誤差が生じた場合であっても、ユーザーからの操作によって正確な位置情報を取得すること」により、「表示されている地図データの補正を実行する」こと、すなわち、「誤った現在位置に基づいて誤って表示されている地図データ」を、「正しい現在位置に基いて正しく表示される地図データ」に補正することであると解される。
また、「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」を実現するための実施形態については、本件特許明細書等の段落【0043】ないし【0106】等に記載されている。

したがって、本件発明4に係る明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

オ 請求項5に関して
請求項5には、
「前記住所番地をキーワードとしてインターネット上を検索して、当該住所番地に関連するWeb情報を付加情報として取得する情報検索部と、
前記情報検索部が取得したWeb情報から所定の文字列を抽出し、抽出された文字列の出現頻度からそのWeb情報の属性を決定し、抽出された属性及び前記住所番地に関連付けて当該Web情報を前記付加情報として分類して蓄積する情報分類部と、
各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するユーザー提供情報蓄積部と、
を更に備え、
前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、
前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示し、
前記ユーザーから提供される情報としては、少なくとも防災に関する情報が含まれ、前記防災に関する情報としては、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域のうち、少なくともいずれか一つが含まれる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」
と記載されている。
請求項5の内容に関して、本件特許明細書等において、「情報検索部」については、
「更に、管理サーバ2には、付加情報を地図データに関連付けるモジュール群として、キーワード蓄積部204と、付加情報蓄積部205と、情報検索部211と、キーワード抽出部212と、情報分類部213と、データ合成部214と、データ配信部215とを備えている。
情報検索部211は、各蓄積部内の情報を検索キーワードとして検索して、検索キーワードに関連するWeb情報、又はユーザー提供情報を付加情報として取得するモジュールである。本実施形態において、情報検索部211は、地図データ蓄積部203の地図データ内に含まれる住所番地からWeb情報を取得したり、ユーザー提供情報蓄積部202内のユーザー提供情報を検索したりする。
地図データ蓄積部203の地図データ内に含まれる住所番地からWeb情報を取得する場合には、地図データ上の住所番地を検索キーワードとしてインターネット上を検索して、当該住所番地に関連するWeb情報を付加情報として取得する。これにより、例えば、その住所には、避難所があるのか、観光スポットがあるのか、ホテルなどの宿泊施設があるのか、病院があるのかが明確となる。
ここで、情報検索部211によって検索されるWebサーバ6は、各種のWebサーバであり、本実施形態では、防災関連情報を配信するサーバ、都市計画情報を配信するサーバ、観光・民宿情報を配信するサーバ、各種の文化財・戦跡情報を配信するサーバ、病院・介護情報を配信するサーバ、バリアフリー情報を配信するサーバ、自然・環境情報を配信するサーバ、観光農園等の特選品情報を配信するサーバ、飲食店などの店舗情報を配信するサーバなどが含まれる。また、facebook(登録商標)やtwitter(登録商標)などSNSシステムのサーバなども含まれる。
一方、ユーザー提供情報蓄積部202から所定の情報を検索する場合には、提供されたコメントの文字列や、ユーザー提供情報に含まれる住所位置、又は座標を抽出する。そして、検索されたWeb情報又はユーザー提供情報は、キーワード抽出部212に入力される。なお、情報検索部211において、地図データ蓄積部203とユーザー提供情報蓄積部202との検索順序は任意であるが、初めに地図データ内に含まれる住所番地からWeb情報を取得し、その後、ユーザー提供情報を検索することが好ましい。これにより、例えば、Web検索によってその位置が避難場所であることが判明した後、ユーザー提供情報によって、その避難場所についてのコメントなどから詳細な情報を紐付けすることができる。
キーワード抽出部212は、情報検索部211によって取得した付加情報(Web情報、又はユーザー提供情報)から、キーワードとなる情報を抽出するモジュールである。キーワードが文字列である場合には、例えば、コンテンツや提供情報に含まれる文章から形態素解析によってキーワードを抽出すると共に、TF-IDF(Term Frequency - Inverse Document Frequency:単語の出現頻度-逆出現頻度)によって特徴的な単語を、コンテンツキーワードとして抽出する。なお、この抽出するキーワードとしては、住所番地であってもよく、また、避難施設名、観光スポット名、店舗名、及び上記の各名称とともに記載されたコメント(評価)などであってもよい。また、例えば、画像データを用いる場合には、画像データに含まれた座標データをキーワードとして抽出してもよい。なお、キーワード抽出の手法は、上述した手法に限定するものではなく種々の技術を用いることができる。」(段落【0055】ないし【0060】)
と記載され、「情報分類部」については、
「情報分類部213は、情報検索部211が取得したWeb情報、又はユーザー提供情報から所定の文字列を抽出し、抽出された文字列の出現頻度からそのWeb情報の属性を決定し、抽出された属性及び住所番地に関連付けて当該Web情報を付加情報として分類して蓄積するモジュールである。本実施形態では、キーワード抽出部212によって抽出された文字列(キーワード)の出現頻度からWeb情報の属性を決定する。例えば、「避難所」という文字列が多く含まれていれば、当該キーワードを防災関連の属性に分類し、例えば、「ホテル」という文字列が多く含まれていれば、当該キーワードを観光・民宿関連の属性に分類する。
ここで、分類される分野としては、上述した、「防災」、「都市計画」、「観光」、「宿泊施設」、「文化財・戦跡、」「病院・介護」、「バリアフリー」、「自然・環境」、「特選品」、「飲食店」などが含まれ、その他としては、各土地の固定資産税を示す「固定資産税」、船乗り場、鉄道、バス等の時刻表を「時刻表」、防犯カメラの位置を示す「防犯」、「上下水道」、商店街内の各店舗の情報を示す「商店街案内」、釣り場、エステなどの所定施設を示す「サービス情報」、エレベータ設置箇所を示す「EV設置箇所」、トイレ位置を示す「トイレ」、公園を示す「公園」、AED設置箇所を示す「AED設置箇所」、駐車場を示す「駐車場」、学校を示す「学校」、イベント情報を示す「イベント」など様々な分野に分類することができる。」(段落【0062】及び【0063】)
と記載され、「ユーザー提供情報蓄積部」及び「ユーザーから提供される情報」については、
「また、管理サーバ2には、各ユーザーから提供される情報を取得して蓄積するモジュールとして、ユーザー提供情報蓄積部202を有している。ユーザー提供情報蓄積部202は、ユーザー端末1から送信された各種の情報を提供情報として取得し、当該情報を蓄積する記憶装置である。提供される情報としては、例えば、防災や観光に関する情報など種々の情報が含まれる。ここで、防災に関する情報には、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域などが含まれる。
また、観光に関する情報としては、観光スポットや文化財などの営業時間や、時間帯毎の混雑状況など観光スポットや文化財自体に関する情報に加え、当該観光スポットや文化財などの周囲の店舗(飲食店、お土産屋など)の営業時間や評価、混雑状況などが含まれる。更に、SNSシステムに関する情報としては、例えば、飲食店や民宿などの評価や、おすすめの商品などが含まれる。これらの情報は、住所番地又は座標が付加されているとともに、投稿者を特定するユーザーIDが付加される。
このユーザー提供情報の住所番地又は座標は、例えば、投稿された画像に座標データが含まれていた場合には、その座標データから位置を特定し、また、投稿された時点に座標データが取得されていた場合には、その座標データから位置を特定する。更に、コメント内に住所に関連するキーワード(例えば、○○駅など)が含まれている場合にはそのキーワードから位置を特定する。そして、ユーザー提供情報蓄積部202では、ユーザー端末1から、当該防災や観光に関する情報や、当該場所の住所データ(住所番地)、座標データ、及び情報を提供したユーザーを識別する識別情報であるユーザーIDを取得して、これらの情報を蓄積している。」(段落【0052】ないし【0054】)
と記載され、表示情報生成部については、
「表示情報生成部182は、現在位置取得部186が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示するとともに、建物の座標位置に対応させて住所番地を表示させるモジュールである。この表示情報生成部182によって、図1に示すように、ユーザー端末1の画面上には、現在位置を中心として、道路、建物等の輪郭をポリゴンで表示させるとともに、建物ポリゴン内に住所番地を表示させる。更に、画面上には、付加情報としての避難場所を示す避難場所のアイコン101が表示される。このように、本実施形態では、地図データ上に、住所番地のレイヤー、属性毎のレイヤーを重ね合わせて画面上に表示させる。
また、表示情報生成部182では、図7(a)及び(b)に示すように、画面上の所定領域に付加情報を表示させることができる。ここで、図7(a)及び(b)は、携帯電話やスマートフォン以外のユーザー端末1としてカーナビゲーション装置1aやパーソナルコンピューター1bの画面上に地図データを表示させる場合を例にしているが、これらのような表示形態を図1に示すようなスマートフォンの画面上に表示させることもできる。
例えば、図7(a)に示すように、地図上に付加情報を表示させる付加情報表示領域を貼り付けるように表示させ、当該領域内に付加情報の詳細を表示させてもよい。この場合、付加情報表示領域内に表示される情報は、表示されている地図上の住所番地を含む付加情報である。また、地図上には、当該付加情報の位置を示すアイコンが表示される。
また、例えば、図7(b)に示すように、地図を表示させる地図表示領域と、付加情報を表示させる付加情報表示領域とを分けて表示させることもできる。ここでは、日付情報も含めており、本日イベントが行われている付加情報を付加情報表示領域に表示させている。なお、ここでも、地図上には、当該付加情報の位置を示すアイコンが表示される。」(段落【0099】ないし【0102】)
と記載されている。
これらの記載に基づいて、当業者は、本件発明5を実施することができる。
なお、異議申立人は、「「住居番号に関連する付加情報」として、「住所番地に関連付けられた防災情報」等とはいかなるものか不明なので、特許発明5をいかにして実施するか、当業者と雖も、本件特許明細書等の記載が理解することができない。」と主張するが、上記1(2)アのとおり、「住居番号」と「住所番地」とは同じものを表しており、「住所番地に関連付けられた防災情報」については本件特許明細書等の段落【0122】等に記載されており、「住所番地に関連付けられた防災情報」について当業者であれば理解することができる。
また、異議申立人は、「・・・してみると、特許発明5において、「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するとしているものの、そのための防災情報や避難場所、避難経路が、表示情報生成部にもユーザ提供情報蓄積部にも存在しない場合があり、その場合、いかなる方法で、表示情報生成部が、「最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するかを、当業者と雖も、本件特許明細書等の記載から理解することができない。」と主張する。
しかしながら、上記段落【0052】には、「ユーザー提供情報蓄積部202は、ユーザー端末1から送信された各種の情報を提供情報として取得し、当該情報を蓄積する記憶装置である。提供される情報としては、例えば、防災や観光に関する情報など種々の情報が含まれる。ここで、防災に関する情報には、自宅や学校付近の地形や標高、避難場所、避難ルート、袋路地、3階建て以上建物、倒壊の危険のある建物・ブロック塀・自動販売機、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所、火災旋風の危険のある区域などが含まれる。」と記載され、段落【0066】には、「なお、本実施形態において、情報検索部211では、キーワード蓄積部204に記録されたキーワードを用いて、再度インターネット5上やユーザー提供情報蓄積部202から検索する機能を有しており、再検索された情報を付加情報として取得する。例えば、住所番地から災害時の避難場所が検索されて避難場所名がキーワードとして抽出された場合には、再度、その避難場所名を検索キーワードとして再度検索することで、その避難場所に関するユーザーの投稿(例えば、倒壊の危険のある建物であるコメントや、水没しやすい道路箇所、浸水時に側溝に落ちやすい場所などのコメント、火災旋風の危険のある区域などのコメント)を付加情報として追加することができる。」と記載されており、防災情報や避難場所、避難経路が、表示情報生成部にもユーザ提供情報蓄積部にも存在しない場合には、再度インターネット5上やユーザー提供情報蓄積部202から検索することにより、当業者が本件発明5を実施することができる。
したがって、本件発明5に係る明細書及び図面の記載は、特許法第36条第4項第1号違反であるとはいえない。

4 取消理由4(特許法第36条第6項第1号)について
(1)異議申立人の主張
ア 特許発明1?5に関して
上記理由1において、本件請求項1?5には、補正により新規事項が加入されていることについて詳しく説明した。
従って、特許発明1の「前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」の下線部、
特許発明2の「表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有する」ものの下線部、
特許発明3の「表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」との内容、
特許発明4の「前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、」の記載における下線部、
特許発明5の「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、
前記表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」するとの内容、
は、いずれも出願時明細書に記載のなかった事項であり、この結果、特許発明1?5は、いずれも、本件特許明細書等に記載されていたとは言えず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

イ 特許発明2に関する補足
更に、特許発明2における「緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって」、「当該住居番地に関連する付加情報を」「建物の座標に対応する位置に表示させる」ことは、出願時明細書に記載されていた発明であるとは言えない。本件特許明細書等には、「緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせること」については、段落0031,0040,0120などに記載があるが、これらの記載は、両者を組み合わせて表示することで、「利用者が社会座標系も自由に使えるようにする。」ことを説明するに留まり、組み合わせることで「当該住居番地に関連する付加情報を」「建物の座標に対応する位置に表示させる」ことができる、という点は、記載されていない。従って、本件特許発明2は、本件特許明細書等に記載されていた発明であるとは言えず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

ウ 特許発明3に関する補足
本件特許発明3は、「前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とする」とされている。しかしながら、「緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示」することで、「避難場所や避難経路に安全に誘導する」できるかは、出願時明細書等に記載されていた事項とは言えない。本件特許明細書等には、段落0029に緊急警報が入ったときの対応について触れているが、そこには「避難場所や避難経路に安全に誘導することができる」のは、「住宅地図としての機能により」とされているに過ぎないから、特許発明3がこれらの段落に記載されていたとは言えず、特許発明3は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)当審の判断
ア 請求項1に関して
請求項1における「前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」の下線部については、本件特許明細書等の段落【0020】及び【0028】(上記3(2)アを参照。)に記載されている。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

イ 請求項2に関して
請求項2における「表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有する」の下線部については、本件特許明細書等の段落【0032】(上記3(2)イを参照。)に記載されている。
また、「前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示する」については、本件特許明細書等の段落【0031】(上記3(2)イを参照。)及び段落【0040】に記載されている。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

ウ 請求項3に関して
請求項3における「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示すること」は本件特許明細書等の段落【0020】(上記3(2)アないしウを参照。)に記載されており、請求項3における「表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりなく」「地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示する」という事項は、本件特許明細書の段落【0032】(上記2(2)イを参照。)に記載されている。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項3の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

エ 請求項4に関して
請求項4における「前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェース」という記載における下線部は、本件特許明細書等の段落【0099】ないし【0102】(上記2(2)イ、3(2)オを参照。)に記載されている。
また、「前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェース」という事項は、本件特許明細書等の段落【0103】及び【0104】(上記2(2)エ、3(2)エを参照。)に記載されている。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項4の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

オ 請求項5に関して
請求項5における「前記表示情報生成部は、前記住居番号に関連する付加情報として、前記住所番地に関連付けられた防災情報又は観光情報のうち少なくとも一つを含み、」という事項は、本件特許明細書等の段落【0099】(上記2(2)イ、3(2)オを参照。)に記載されている。
また、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図」という事項は、本件特許明細書等の段落【0020】、【0039】、【0040】及び【0120】に記載されている。
また、「前記表示情報生成部は、地図を、当該時点における現在地を中心として最寄りの避難場所や避難経路を含む範囲で自動表示」という事項は、本件特許明細書等の段落【0029】に記載されている。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項5の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

カ まとめ
以上のように、本件特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、本件特許明細書等に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

5 取消理由5(特許法第29条第2項)について
(1)異議申立人の主張
ア 特許発明1?4は、本件特許の出願前公知の文献(甲第1号証?甲第3号証)に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。以下、公知文献と対比してこの点について説明する。

イ 公知文献についての説明
甲第1号証:特開2002-7440号公報(2002年1月11日公開)
甲第2号証:特開2000-55687号公報(2000年2月25日公開)
甲第3号証:特開2013-11573号公報(2013年1月17日公開)

ウ 特許発明1
特許発明1は、以下の構成を備える。
1-1)現在位置を取得する現在位置取得部と、
1-2)前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
1-3)前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地形、地図及び建物を線図、文字、図形で表示したものであり、
1-4)前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有することを特徴とする
1-5)サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。

エ 上記構成要件1-1)?1-5)と公知文献の記載との関係は以下の通りである。
構成要件 公知文献とその記載箇所
1-1) 甲第1号証、段落0022
1-2) 甲第1号証、段落0023
1-3) 甲第1号証、段落0002
1-4) 甲第1号証、段落0033,0037-0039,0042他
1-5) 甲第1号証、段落0089-0090

オ 構成要件1-4)のうち、「地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能」については、甲第1号証には直接的な記載はない。しかしながら、構成要件1-4)の内容は、明確ではない。つまり、「重点的」とはどのような態様を意味するのか、「間引いて」とはどの程度のことを言うのか、更には、交差点又は道路沿いの建物と住宅密集地といった区分けはどのように行なうのかが明確でないから、この1-4)は、結局のところ、必要に応じて住所に関する表示を適宜間引いて行なうものと変わる所はない。
ところで、この点は、先行技術文献を持ち出すまでもなく、地図における表示に関して、公知の技術である。
従って、特許発明1は、甲第1号証から当業者が容易に想到できた発明であり、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

カ 特許発明2について
特許発明2は、特許発明1に従属する形式で規定されており、特許発明1に加えて、以下の構成を備える。
2-1)前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区では、地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、当該住居番号に関連する付加情報を地図データに重ね合わせるようにして、前記建物の座標に対応する位置に表示させる付加情報追加部を更に有することを特徴とする
2-2)サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
かかる構成要件2-1)は、甲第1号証の段落0037-0039等に記載されている。
従って、特許発明2は、甲第1号証から当業者が容易に想到できた発明であり、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

キ 特許発明3について
特許発明3は、特許発明1に従属する形式で規定されており、特許発明1に加えて、以下の構成を備える。
3-1)前記表示情報生成部は、緯度経度の自然座標系と住宅の住居番号及び住居表示未実施地区における地番の社会座標系を組み合わせることによって、前記地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示し、
3-2)前記表示情報生成部は、避難場所や避難経路に安全に誘導するために、緊急警報が入った時点で、ナビシステムを使用しているか否かに関わりな<、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図を、当該時点における現在地を中心として自動表示することを特徴とする
3-3)サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
特許発明3の構成要件3-1)は、甲第1号証の段落0037-0039等に記載されている。また構成要件3-2)は、甲第2号証の段落0008、0010、0020-0022、0033-0034に記載されている。甲第1号証、甲第2号証は共に、ナビゲーションシステムに関するものなので、両者を組み合わせることに阻害要因はない。従って、特許発明3は、甲第1号証と甲第2号証とから当業者が容易に想到できた発明であり、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

ク 特許発明4について
特許発明4は、特許発明1に従属する形式で規定されており、特許発明1に加えて、以下の構成を備える。
4-1)前記表示情報生成部が表示させた地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示することを特徴とする地図上において、前記住所番地を選択するユーザー操作を取得する入力インターフェースと、
4-2)前記入力インターフェースにより選択された住所番地に関連づけられた座標を地図データ蓄積部から取得し、取得された座標に基づいて、現在位置取得部に対し、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行する現在位置修正部と
を更に備えることを特徴とする
4-3)サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。
特許発明4の上記構成要件4-1)や4-2)のように、入力インターフェースにより選択された場所に基づいて、現在位置の修正を要求するとともに、表示されている地図データの補正を実行することは、甲第3号証(例えば、段落0058、0060、0100等)に記載されている。
甲第1号証、甲第3号証は共に、ナビゲーションシステムに関するものなので、これらの甲第を号証(当審注:「これらの甲号証を」の誤記と認める。)組み合わせることに阻害要因はない。従って、特許発明4は、甲第1号証と甲第3号証とから当業者が容易に想到できた発明であり、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができないものである。

ケ 小括
以上説明したように、特許発明1?4は、出願前公知の文献(甲第1号証?甲第3号証)に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するにもかかわらず、特許されたものであるから、同法第113条第1号の規定により、登録を取り消されるべきものである。

(2)当審の判断
ア 甲各号証の記載
(ア)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
甲1(特開2002-7440号公報)には、以下の事項が記載されている。

・「【0002】
【背景の技術】近年、住宅地図のような縮尺の大きな地図も電子化され、地図データベースとして利用が進みつつある。このような地図データベースにおいては、道路などのインフラ図形のみならず、例えば、建物の位置・大きさ・形状、個別の建物を識別する情報としての居住者名、地図上に表示すべきランドマークの種類やその属性情報などが記録されており、記載内容が実態に合うよう、常時更新されている。」(段落【0002】)

・「【0022】請求項8記載の発明は、請求項7記載の地図データ更新システムにおいて、現在位置検出手段は、GPS(Global Positioning System)を用いて現在位置を検出することを特徴とする。」(段落【0022】)

・「【0023】請求項8記載の発明によれば、GPSを用いて現在位置を検出するので、現在位置を、デファレンシャル処理を行った場合、誤差3?10メートル程度で検出できる。したがって、地図上の現在位置に、現在位置マークPを高い精度で表示できる。」(段落【0023】)

・「【0033】地図図面データベース331には、地図表示プログラム用のデータ形式にされた地図図面データが記憶されている。地図図面データは、例えば、道路図面や、建物形状図面、敷地形状図面などが、ベクタ(座標値)データや、ラスタ(画像)データなどの電子データとして記憶されているものである。地図図面データは、後述する緯度経度情報に対応付けられている。」(段落【0033】)

・「【0037】このような地図図面データは、地図図面上の基準点を基準として、緯度経度情報に対応づけられて記憶されている。緯度経度情報は、例えば、小数点以下6桁で表せるようになっている。なお、これに限らず、後述するように、緯度経度情報が小数点以下6桁以上で表されていても良い。
【0038】表示物情報データベース332には、例えば、学校、公園、建物など、地図上の所定位置に表示すべき表示物に係わる表示物情報データが記憶されている。表示物情報データには、例えば、表示物の住所と、種別、属性などの情報が含まれている。例えば、表示物となる建物が、一戸建てや、マンション、アパートなどである場合、これに対応する表示物情報データには、建物の住所と、その建物の世帯主名や、借家人名、高さ情報などが含まれている。また、表示物となる建物が、コンビニや銀行、ガソリンスタンドなどの施設を備えている場合、これに対応する表示物情報データには、施設の住所と、施設の系列、商標マークなどのランドマーク情報が含まれている。
【0039】また、表示物情報データは、緯度経度情報が対応づけられて記憶されている。緯度経度情報は、例えば、小数点以下6桁で表せるようになっている。なお、これに限らず、緯度経度情報が小数点以下6桁以上で表されていても良い。詳しく説明すると、地図図面データの縮尺が1/1500?1/700程度の場合、緯度経度情報の精度が10進法で小数点以下6桁であれば、表示物を地図上に比較的精度良く表示できる。また、地図図面データの縮尺がより小さい場合には、地図図面上に表示される建物の密集度と形体に応じ、緯度経度情報の精度が小数点以下6桁以上であることが望ましい場合がある。」(段落【0037】ないし【0039】)

・「【0042】具体的に、CPU31は、地図図面データ取得手段として、表示物情報データに対応づけられた緯度経度情報に相当する位置(表示物を表示すべき位置)を含む地域を示す地図図面データを地図図面データベース331から取得する処理、地図情報作成手段として、地図図面データ上の、表示物情報データに対応づけられた緯度経度情報に相当する位置(表示物を表示すべき位置)に表示物マーク(例えば、図6に示す表示物マークM)を表示した地図情報を作成する処理、地図データ更新手段として、後述する差分データに基づいて、地図図面データベース331に記憶されている地図図面データ、または、表示物情報データベース332に記憶されている表示物情報データを更新する処理、解析編集手段として、各種アプリケーションプログラムによる解析及び編集処理などを実行する。」(段落【0042】)

・「【0063】次に、ステップS6で、CPU31により、取得した地図図面データに基づく地図上に、表示物情報データに対応づけられた緯度経度情報に相当する位置に表示物マークMを表示した地図情報を作成する。ここで、表示物マークは、例えば、図6に示す円形状のマークMや、公園、学校などを示す地図記号、施設の商標マークを示したランドマーク、建物形状そのものを示すマークなどであり、特にマークの形状が限定されるものではない。」(段落【0063】)

・「【0068】次に、ステップS14で、CPU31により、受信された表示物マーク情報に対応する表示物情報(例えば、住所、世帯主名、借家人名など)を、表示物情報データベース332から取得する。
【0069】次に、ステップS15で、伝送制御部34により、取得された表示物情報をモバイル端末5へ送信し、ステップS16で、モバイル端末5の伝送制御部55により表示物情報を受信する。次に、ステップS17で、CPU51により、受信した表示物情報を表示装置56の表示画面に表示する(図示省略)。」(段落【0068】及び【0069】)

・「【0089】なお、モバイル端末5は、現在位置検出手段として、GPS(Global Positioning System)受信機を備える構成としても良い。この場合、例えば、GPS受信機により現在位置データとして検出された現在位置の緯度経度情報を、伝送制御部55により地図サーバ3に送信し、地図サーバ3のCPU31により、現在位置の緯度経度情報に相当する場所を含む地図図面データを、地図図面データベース331から取得する。その後、CPU31により、地図図面データ上の現在位置の緯度経度情報に相当する場所に現在位置マーク(例えば、図7中の現在位置マークP)を表示した地図情報を作成する。
【0090】その後、現在位置マークPを表示した地図情報を、地図サーバ3の伝送制御部34によりモバイル端末5に送信し、CPU51によりモバイル端末5の表示装置56の表示画面に表示する。」(段落【0089】及び【0090】)

・「【0101】また、モバイル端末5の伝送制御部55により、ホスト装置2から送信された地図情報や表示物情報を受信して、モバイル端末5にダウンロードするものとしたが、これに限らず、例えば、あらかじめ地図情報や表示物情報を、LANなどの通信回線を介してモバイル端末5のハードディスク装置53に記録しておく構成としても良い。また、地図情報や表示物情報などが格納された記録媒体を、着脱自在にモバイル端末5に設け、前記記録媒体から地図情報や表示物情報を呼び出して、モバイル端末5の表示装置56の表示画面に、地図情報や表示物情報を表示させる構成としても良い。」(段落【0101】)

これらの記載及び図1ないし図8の記載から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「現在位置を検出する現在位置検出手段と、
前記現在位置検出手段が検出した現在位置に対応させて、地図情報を表示するCPU51と、
を備え、
前記地図情報は、緯度及び経度によって指標される座標上に、地図及び表示物を線図、文字、図形及び表示物マークで表示したものであり、
前記CPU51は、前記地図情報上の表示物に表示物情報を表示する、地図データ更新システム。」

(イ)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
甲2(特開2000-55687号公報)には、以下の事項が記載されている。

・「【0008】上述したナビゲーション動作としては、特定情報に関連する施設を地図画像に重ねて表示する動作、特定情報に関連する特定施設へ向かう経路を探索する動作、特定情報に関連する特定施設が誘導経路の近傍に存在する場合にその特定施設を迂回するように経路探索を再実施する動作等を含むことが好ましい。特定施設を地図画像に重ねて表示することにより、利用者は、表示された地図画像上の特定施設の場所を容易に知ることができ、この特定施設に向かって車両を走らせたり(例えば特定施設が避難場所の場合)、特定施設を避けて車両を走らせる(例えば特定施設が消防署や警察署の場合)等の適切な措置を講じることができる。また、特定施設へ向かう経路を探索することにより、この特定施設に向かって車両を走らせることがさらに容易になり、特例施設を迂回する経路を再探索することにより、この特定施設を避けることがさらに容易になる。」(段落【0008】)

・「【0010】
【発明の実施の形態】本発明を適用した一実施形態のナビゲーションシステムは、FM多重放送受信機によって緊急情報(例えば、地震情報、火災情報、犯罪情報等)の番組データが受信されたときに、この緊急情報に関係する施設(例えば、避難場所、消防署、警察署等)を強調表示したり、避難場所までの経路の探索や消防署等を迂回する経路の探索を行うことを特徴とする。以下、本発明を適用した一実施形態のナビゲーション装置システムについて図面を参照しながら説明する。」(段落【0010】)

・「【0020】経路探索処理部36は、あらかじめ設定された目的地と出発地との間を所定の条件下で結ぶ走行経路を探索する。また、経路探索処理部36は、受信制御部50から経路探索指示がなされた場合には、その指示内容に応じて避難場所までの経路を探索したり、消防署等を迂回する経路を探索する。誘導経路描画部42は、経路探索処理部36によって設定された誘導経路を地図画像に重ねて描画する。マーク画像発生部44は、自車位置に車両位置マークを発生させたり、所定形状を有するカーソルマークを発生させる。
【0021】受信制御部50は、FM多重放送受信機200が受信した番組データを取り込んで、情報描画部52に出力する。また、受信制御部50は、取り込んだ番組データが緊急情報の番組データであるか否かを判定しており、緊急情報の番組データである場合には、情報描画部52に、避難場所や警察署等を強調表示するように指示を出したり、その緊急情報の種別(地震情報、火災情報等)を判定する。そして、受信制御部50は、緊急情報が地震情報である場合には、経路探索処理部36に対して避難場所までの経路を探索する指示を出し、緊急情報が火災情報や犯罪情報である場合には、経路探索処理部36に対して消防署や警察署を迂回する経路を探索するように指示を出す。
【0022】情報描画部52は、受信制御部50から出力される番組データに含まれる文字情報を描画する。また、情報描画部52は、受信制御部50から避難場所や消防署等を強調表示するよう指示された場合には、対応する施設を強調表示する画像を描画する。」(段落【0020】ないし【0022】)

・「【0033】緊急情報の番組データである場合には、受信制御部50は、情報描画部52に対して、緊急情報に関係する施設を強調表示するように描画指示を出す(ステップ104)。情報描画部52は、この指示に応じて、避難場所、消防署、警察署等の緊急情報に関係する施設を強調表示した画像を描画する。具体的には、情報描画部52は、地図データに含まれている緊急情報に関係する施設の経度・緯度に基づいて緊急情報に関係する施設を強調表示した画像を描画する。この緊急情報に関係する施設を強調表示した画像は、VRAM22に送られ、図5に示すように、地図画像に重ねてディスプレイ装置9に表示される(ステップ105)。
【0034】このように、本実施形態のナビゲーションシステムは、番組データが緊急情報の番組データである場合には、避難場所、消防署、警察署等の緊急情報に関係する施設を強調表示する。したがって、利用者は、避難場所、消防署、警察署等の緊急情報に関係する施設の位置を容易に確認することができるため、地震発生時には迅速に避難し、また、火災発生時には消防署を迂回して走行する等の適切な措置を講じることが容易となる。」(段落【0033】及び【0034】)

これらの記載から、甲2には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されているといえる。

「緊急情報の番組データが受信されたときに、この緊急情報に関係する施設(例えば、避難場所)を強調表示したり、避難場所までの経路の探索を行うナビゲーションシステム。」

(ウ)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
甲3(特開2013-11573号公報)には、以下の事項が記載されている。

・「【0058】
さらに、制御部10は、GPS装置120、加速度センサ122および角速度センサ124から入力される情報と、記憶部130に記憶されたナビゲーション情報とを用いて、タッチパネル式表示部2に対するユーザのタッチ、および、操作部128に対するユーザの操作に従って、ナビゲーション装置1の現在位置を示すマーク(画像)をタッチパネル式表示部2のLCD20(図2)に表示したり、ナビゲーション装置1の行く先(目的地)までの道筋(経路)をLCD20に表示したりするなどの一般的なナビゲーションサービスに必要な処理を行う。」(段落【0058】)

・「【0060】
ナビゲーションに際して、LCD20の画面領域26(第1の領域)には、車両の現在位置を画面の中心とした所定の範囲の地図が案内すべき経路とともに表示され、車両の走行(現在位置の移動)とともに地図がスクロールされていく。ユーザが地図をスクロールしたい時のスクロールの態様は、たとえば、表示されている地図画像の所望の場所を指でタッチ(非連続タッチ)することにより、タッチされた位置が画面領域26の中央になるように地図画像がスクロールされ、また、地図の任意の場所を指でタッチし、そのまま指を画面から離すことなく連続的に移動させると、指の移動方向と移動距離に応じて地図画像が連続的にスクロールされる態様である。」(段落【0060】)

・「【0100】
さらに、上記実施例では、目的画像とは地図画像である場合を例示して説明を行なったが、例えば、現在位置マーク(目的画像)の位置(現在位置)を補正するために、所定の地図画像上の位置をタッチ(タッチした位置に現在位置マーク(目的画像)の位置(現在位置)が補正される)する場合などであっても適用可能である。」(段落【0100】)

これらの記載から、甲3には次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されているといえる。

「ナビゲーション装置1の現在位置マーク(目的画像)の位置(現在位置)を補正するために、所定の地図画像上の位置をタッチ(タッチした位置に現在位置マーク(目的画像)の位置(現在位置)が補正される)する技術。」

イ 対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「検出(する)」は、その技術的意義から見て、本件発明1における「取得(する)」に相当し、以下同様に、「現在位置検出手段」は「現在位置取得部」に、「地図情報」は「地図データ」に、「CPU51」は「表示情報生成部」に、「表示物」は「建物」又は「住宅」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明における「地図及び表示物」は、「地図及び建物」という限りにおいて、本件発明1における「地形、地図及び建物」に相当する。
また、甲1発明における「表示物情報」は、「住所」という限りにおいて、本件発明1における「住居番号及び住居表示未実施地区における地番」に相当する。
また、甲1発明における「線図、文字、図形及び表示物マーク」は、本件発明1における「線図、文字、図形」に相当する。
また、甲1発明における「地図データ更新システム」は、上方から見た地図を表示するとともに、ナビゲーション機能を有するものであるから、甲1発明における「地図データ更新システム」は、本件発明1における「サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致する。
「現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部が取得した現在位置に対応させて、地図データを表示する表示情報生成部と、
を備え、
前記地図データは、緯度及び経度によって指標される座標上に、地図及び建物を文字、図形で表示したものであり、
前記表示情報生成部は、前記地図データ上の住宅に住所を表示する、サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム。」

そして、次の点で相違する。
<相違点>
(ア)本件発明1においては、「表示情報生成部は、地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」のに対し、甲1発明においては、CPU51は、前記地図情報上の建物に住所を表示するものの、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」か否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。

(イ)「地図及び建物」に関して、本件発明1においては、「地形、地図及び建物」であるのに対し、甲1発明においては、「地図及び表示物」である点(以下、「相違点2」という。)。

<判断>
事案に鑑み、まず、相違点1について判断する。
甲1発明には、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」点は記載されておらず、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」点が自明であるとも認められない。
また、甲2技術及び甲3技術を参照しても、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」点は記載も示唆もされていない。

そして、本件発明1は、「地図データ上の住宅に住居番号及び住居表示未実施地区における地番を表示するとともに、地図データ上の交差点又は道路沿いの建物については重点的に住所番地を表示する一方、住宅密集地では住所番地を間引いて表示する機能を有する」ことにより、明細書に記載された格別顕著な作用効果を奏するものである。

してみれば、本件発明1は、相違点2について判断するまでもなく、甲1発明に基づいて、又は甲1発明並びに甲2技術及び甲3技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。

また、本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明に基づいて、又は甲1発明並びに甲2技術及び甲3技術に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号に該当するものではない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-08-30 
出願番号 特願2014-127655(P2014-127655)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G01C)
P 1 651・ 536- Y (G01C)
P 1 651・ 55- Y (G01C)
P 1 651・ 121- Y (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 島倉 理仲村 靖  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 金澤 俊郎
松下 聡
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6025267号(P6025267)
権利者 生活地図株式会社
発明の名称 サーベイ(眺望)型ナビゲーションシステム  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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