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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1332539
審判番号 不服2016-33  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2012-538760「モバイル端末機、ディスプレイ装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日国際公開、WO2011/059250、平成25年 3月28日国内公表、特表2013-511194〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2010年11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年11月13日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって,平成27年8月21日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成28年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年7月7日付けで当審より拒絶理由通知がされ,これに対し,同年10月11日付けで手続補正がされ,同年11月18日付けで当審より最後の拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,これに対し,平成29年3月17日付けで手続補正がされるとともに,意見書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の平成28年10月11日付けで手続補正された特許請求の範囲を次のように補正するものである。

[補正前の特許請求の範囲]
「 【請求項1】
命令を記憶する記憶部と,
前記記憶された命令を遂行するように構成され,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,前記他の電子装置とビデオ通話を遂行するように制御し,
前記他の電子装置から前記ビデオ通話の期間に共有されるべきコンテンツを受信するように制御し,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,
前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する,プロセッサとを含む
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において,
前記プロセッサは,記憶された命令をさらに遂行して,前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置の近くの外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御し,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置。
【請求項3】(省略)
【請求項4】(省略)
【請求項5】
請求項1に記載の電子装置において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,単一のネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置の近くの外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御する段階をさらに含み,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項8】(省略)
【請求項9】(省略)
【請求項10】
請求項6に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,単一のネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項11】
電子装置のプロセッサにより遂行される命令が記録されたコンピュータ可読記録媒体であって,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話が遂行される期間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御し,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する,ことを前記プロセッサに遂行させる
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータ可読記録媒体において,
前記プロセッサはさらに前記命令を遂行して,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置の近くの外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御し,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項13】(省略)
【請求項14】(省略)
【請求項15】
請求項11に記載のコンピュータ可読記録媒体において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,単一のネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項16】
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,前記他の電子装置とビデオ通話を遂行する段階と,
前記他の電子装置から,前記ビデオ通話の期間に,共有されるべきコンテンツを受信する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に表示し,前記コンテンツを第2表示領域に表示して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に表示する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を表示する段階と,
前記ビデオ通話の期間に,前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信する段階とを含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置の近くの外部表示装置に表示画面(screen)を送信する段階をさらに含み,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項18】(省略)
【請求項19】(省略)
【請求項20】
請求項16に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,単一のネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

[補正後の特許請求の範囲]
「 【請求項1】
電子装置において,
命令を記憶する記憶部と,
記憶された前記命令を遂行するように構成され,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,前記他の電子装置とビデオ通話を遂行するように制御し,
前記他の電子装置から前記ビデオ通話の期間に共有されるべきコンテンツを受信するように制御し,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する,プロセッサとを含み,
前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において,
前記プロセッサは,記憶された命令をさらに遂行して,前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近くの,外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御し,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置。
【請求項3】(省略)
【請求項4】(省略)
【請求項5】
請求項1に記載の電子装置において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,無線ネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
電子装置の制御方法において,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含み,
前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近くの,外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御する段階をさらに含み,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項8】(省略)
【請求項9】(省略)
【請求項10】
請求項6に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,無線ネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項11】
電子装置のプロセッサにより遂行される命令が記録されたコンピュータ可読記録媒体であって,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話が遂行される期間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御し,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御し,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する,ことを前記プロセッサに遂行させ,
前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータ可読記録媒体において,
前記プロセッサはさらに前記命令を遂行して,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近くの,外部表示装置に表示画面(screen)を送信するように制御し,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を
含む
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項13】(省略)
【請求項14】(省略)
【請求項15】
請求項11に記載のコンピュータ可読記録媒体において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,無線ネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。
【請求項16】
電子装置の制御方法において,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,前記他の電子装置とビデオ通話を遂行する段階と,
前記他の電子装置から,前記ビデオ通話の期間に,共有されるべきコンテンツを受信する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に表示し,前記コンテンツを第2表示領域に表示して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に表示する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を表示する段階と,
前記ビデオ通話の期間に,前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信する段階とを含み,
前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオ通話の期間に,前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近くの,外部表示装置に表示画面(screen)を送信する段階をさらに含み,
前記表示画面は,前記コンテンツと前記第1手書き情報と,前記第2手書き情報と,を含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項18】(省略)
【請求項19】(省略)
【請求項20】
請求項16に記載の電子装置の制御方法において,
前記ビデオデータと前記コンテンツと前記第1手書き情報と前記第2手書き情報とは,
無線ネットワークシステムを介して送信され受信される
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

これ以降,本件補正前の特許請求の範囲の請求項を,「補正前の請求項」,また,本件補正後の特許請求の範囲の請求項を,「補正後の請求項」ということとする。
また,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面を総称して,「出願当初の明細書等」ということとする。

本件補正は,次の補正からなる。
[補正1]
補正後の請求項1の冒頭に「電子装置において,」を付加する補正。
補正後の請求項6及び16の冒頭に「電子装置の制御方法において,」を付加する補正。
[補正2]
補正前の請求項1に記載の「前記記憶された命令」を,補正後の請求項1に記載の「記憶された前記命令」とする補正。
[補正3]
補正後の請求項1,6,11及び16に「前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである」を付加する補正。
[補正4]
補正前の請求項2,7,12及び17に記載の「前記電子装置の近くの外部表示装置」を,補正後の請求項2,7,12及び17に記載の「前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近くの,外部表示装置」とする補正。
[補正5]
補正前の請求項5,10,15及び20に記載の「単一のネットワークシステム」を,補正後の請求項5,10,15及び20に記載の「無線ネットワークシステム」とする補正。

2.新規事項の有無及びシフト補正の有無について
[補正1]ないし[補正5]は,出願当初の明細書等に記載された範囲内においてしたものであり,また,平成28年11月18日付けの拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明(補正前の請求項1ないし20に係る発明)と,補正後の請求項1ないし20に係る発明とが,特許法第37条の発明の単一性の要件を満たしていないともいえない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項(シフト補正)に規定する要件に適合する。

3.補正の目的要件について
(1)[補正1]について
[補正1]は,各請求項の末尾の記載及び各請求項中の「前記電子装置」との記載との整合を取るためのものであって,当審拒絶理由通知における理由3(1)に対応するものであるから,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(2)[補正2]について
[補正2]は,「前記記憶された命令」を,前記されている語句に合致するように,「記憶された前記命令」とするものであり,当審拒絶理由通知における理由3(2)に対応するものであるから,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(3)[補正3]について
[補正3]は,補正前の請求項1,6,11及び16に記載の「第1手書き情報」及び「第2手書き情報」を,「前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである」ものに限定するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
(4)[補正4]について
[補正4]は,補正前の請求項2,7,12及び17に記載の「前記電子装置の近くの外部表示装置」における「近く」が,「前記電子装置と無線ネットワークで連結されて前記電子装置のオペレータから視認可能な程度に近く」であると限定して明りょうにするものであり,当審拒絶理由通知における理由3(3)に対応するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮及び同法同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(5)[補正5]について
[補正5]は,明りょうでない語「単一のネットワークシステム」を明りょうな「無線ネットワークシステム」と補正するものであり,当審拒絶理由通知における理由3(4)に対応するものであるから,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項(補正の目的)に規定する要件に適合する。

3 独立特許要件について
本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするのものであるから,本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定)について以下に検討する。

(1)補正発明
補正後の請求項6に係る発明(以下,「補正発明」という。)は,以下のものである。

「 電子装置の制御方法において,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含み,
前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

(2)引用例,引用発明等
ア 引用例について
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用された特開平5-344498号公報(以下,「引用例」という。)には,「テレビ会議装置」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】電話回線等を利用し,音声情報と動画像,静止画像を同時に伝送するテレビ電話,テレビ会議装置に関する。」(第2ページ)

(イ)「【0014】また,ドキュメントへの加筆,修正操作は水平に設置された表示一体型タブレット上で行えるため,卓上のノートに記入する感覚で描画でき,この描画内容を双方で確認しながら会議を行うことができる。」(第3ページ)

(ウ)「【0016】
【実施例】本装置の実施例を示す外観図を図1に示す。101は操作者撮像用のカメラ,102は相手画像を表示する表示装置,103は表示一体型タブレット,104はドキュメントや静止画像入力用のスキャナ,105は音声情報を出力するスピーカ,106は音声情報を入力するマイク,107はタブレット操作用の操作ペン,108はタブレットの表示画面上に表示された操作アイコンである。」(第3ページ)

(エ)「【0019】まず,カメラ101で撮影された動画像は動画像符号器201にて圧縮符号化され,多重化部206,回線インターフェース207を介して,相手方会議装置に送られる。また,相手方会議装置より送られてきた動画像は,同様の経路を経て動画像符号器201で原画像に復元され,ディスプレイ102に表示される。
【0020】音声情報はマイク106で入力され,音声符号化器204で圧縮符号化され,多重化部206,回線インターフェース207を介して,相手方会議装置に送られる。また,相手方会議装置より送られてきた音声情報は,同様の経路を経て音声符号器204で原音声に復元され,スピーカ105に出力される。
【0021】このようにして,操作者は画像と音声を用いたテレビ会議を行うことができるのである。(以下省略)」(第3ページ)

(オ)「【0025】次にドキュメント伝送機能例を示す。スキャナ104に原稿をセットし,操作アイコン402の「入力」アイコンを選択するとドキュメントが読み込まれ,タブレット103の描画領域401に表示される。ここで操作アイコン402中のの「送信」アイコンを選択すると,描画領域に表示されているドキュメントが読み出され,ドキュメント符号器202で圧縮符号化され,多重化部206,回線インターフェース207を介して,相手方会議装置端末に伝送される。逆の経路で受信した,相手方会議装置からのドキュメント情報はドキュメント符号器202で復号され,描画領域401に表示される。
【0026】ドキュメントの伝送が終了すると両端末のタブレットの表示部103aには同一のドキュメントが表示されるため,該ドキュメントを資料として用いた会議を行うことができる。このとき回線は接続されているものとする。
【0027】最後にテレライティング機能について説明する。上記において描画領域401にペンで文字を書くと,システム制御部はペンの位置情報を読み取り,ペンの軌跡を該端末の描画領域401に表示する。同時に手書き文字符号器203により符号化した後,前述の手順で相手端末に伝送する。同様に,相手端末より受信したデータは203で復号され,タブレット103に表示される。よって両会議装置端末の描画データは等しくなり,会議者双方で同じ画像を確認しながら会議を進めることができる。」(第3-4ページ)

以下,前記(ア)ないし(オ)の記載及び本願の優先日における技術常識を考慮しつつ,引用例に記載された技術事項について検討する。

a.前記(ア)及び(エ)より,引用例には,カメラで撮影された動画像と音声情報とを送受信するテレビ会議に用いられる会議装置及び相手方会議装置並びにその動作方法が記載されているといえる。ここで,「相手方会議装置」に着目すれば,引用例には,「相手方会議装置の動作方法」が記載されているということができる。

b.前記(オ)の【0025】及び【0026】には,会議装置が,ドキュメントを表示するとともに,当該ドキュメントを相手方会議装置に送信することにより,会議装置のタブレットの表示部と相手方会議装置のタブレットの表示部とに同じドキュメントが表示されることが記載されている。
そうすると,「会議装置」と「相手方会議装置」とは,「ドキュメント」を「共有」しているといえ,さらに,前記(オ)の【0027】より,「テレビ会議中」に「共有」されるべき「ドキュメント」の送受信がなされることは自明である。また,「相手方会議装置」から見れば,「ドキュメント」を「会議装置」から「受信」していると言い替えることができる。
以上より,前記(ア)を参酌すれば,引用例には,「相手方会議装置の動作方法」において,「カメラで撮像された動画像及び音声情報を会議装置へ送信し,前記会議装置から動画像及び音声情報を受信するテレビ会議中に,前記会議装置から共有されるべきドキュメントを受信」することが記載されているといえる。

c.前記(ウ)及び(エ)の【0019】より,引用例の「相手方会議装置」は,「会議装置」から受信した動画像を「ディスプレイ」に表示し,「会議装置」から受信した「ドキュメント」を「タブレットの表示部」に表示することが記載されているといえる。また,前記(オ)の【0027】より,「動画像」と「ドキュメント」とは,「テレビ会議中に共に表示されるべき」ものといえる。
そうすると,引用例には,「相手方会議装置の動作方法」において,「動画像をディスプレイに表示し,前記ドキュメントをタブレットの表示部に表示して,テレビ会議中に共に表示されるべき動画像と前記ドキュメントとを前記相手方会議装置のディスプレイ及びタブレットの表示部に表示する」ことが記載されているといえる。

d.前記(イ)及び(オ)の【0027】より,テレビ会議中に,「相手方会議装置」のタブレットの表示部に表示されたドキュメント上でペンで文字を書くと,ペンの位置情報による「ペンの軌跡」を,ドキュメント上に表示するとともに,符号化して会議装置に送信し,一方,会議装置は,「相手方会議装置」から受信したデータに基づいて,「ペンの軌跡」をドキュメント上に表示することにより,両会議装置の「描画データ」を等しくし,会議者双方で同じ画像を確認しながら会議を進めることが記載されているといえる。
また,「ペンの軌跡」は,「ドキュメントへの加筆,修正操作」を行うことを目的としており,また,当該「ペンの軌跡」により生成されるデータの送受信により,両会議装置の「描画データ」が等しくなることから,当該「ペンの軌跡」により生成されるデータは,「ドキュメントのため」の「描画データ」といい得るものである。そして,会議装置から受信する「ペンの軌跡」を「ペンの軌跡による第1描画データ」と,また,「相手会議装置」のタブレットの表示部に書かれ(入力され),会議装置へ送信する「ペンの軌跡」を「ペンの軌跡による第2描画データ」と称することは任意である。
以上より,引用例には,「相手方会議装置の動作方法」において,「テレビ会議中に前記ドキュメントのためのペンの軌跡による第1描画データを前記会議装置から受信して,前記タブレットの表示部に前記ペンの軌跡による第1描画データを表示し,テレビ会議中に前記タブレットの表示部に入力されたペンの軌跡による第2描画データ情報を,前記会議装置へ,送信する」ことが記載されているといえる。

前記(ア)ないし(オ)及び前記a.ないしd.の検討より,引用例には,次の事項(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 相手方会議装置の動作方法において,
カメラで撮像された動画像及び音声情報を会議装置へ送信し,前記会議装置から動画像及び音声情報を受信するテレビ会議中に,前記会議装置から共有されるべきドキュメントを受信し,
動画像をディスプレイに表示し,前記ドキュメントをタブレットの表示部に表示して,テレビ会議中に共に表示されるべき動画像と前記ドキュメントとを前記相手方会議装置のディスプレイ及びタブレットの表示部に表示し,
テレビ会議中に前記ドキュメントのためのペンの軌跡による第1描画データを前記会議装置から受信して,前記タブレットの表示部に前記ペンの軌跡による第1描画データを表示し,
テレビ会議中に前記タブレットの表示部に入力されたペンの軌跡による第2描画データを,前記会議装置へ送信する,
ことを特徴とする相手方会議装置の動作方法。」

イ 引用例2について
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用された特開2004-228805号公報(以下,「引用例2」という。)には,「テレビ電話機能付き携帯電話端末」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は,テレビ電話機能付き携帯テレビ端末に関し,特に,各種データを同時に送信し表示することが可能なテレビ電話機能付き携帯テレビ端末に関する。」(第2ページ)

(イ)「【0024】
さらに,マルチアクセス機能による通信では,前述のTV電話通話の動作とデータ通信の動作とを,マルチアクセス機能手段203により同時に動作するように制御される。マルチアクセス動作での自局の表示画面例としては,TV電話通話の表示とデータ通信の表示情報の表示とを水平方向の分割表示として図4(c)に示すように上下の並列表示とすることができる。」(第6ページ)

(ウ)「【0026】
図6は,本実施の形態の相手局の表示画面の例を示す図である。相手局の携帯電話端末では,通常のTV電話通話として図5(a)に示す送信画像を受信し,相手局の撮影画像との合成画像として図6(a)に示すような表示画像が出力される。また,データ通信時の表示画像として図5(b)に示すデータ通信時の送信画像を受信し,直接表示部105に入力し,図6(b)に示すような表示画像が出力される。更にマルチアクセス通信時には,図5(c)に示すデータ通信時の画像と撮影画像との合成画像を受信し,該合成画像に画像合成手段で相手局の撮影画像を合成した合成画像を図6(c)に示すように出力される。以上の表示画面の場合には,データ通信によって得られる自局の表示情報は相手局でリアルタイムに表示することができるから,マルチアクセス通信時の取得データについても情報の共有化が可能となる。」(第6ページ)

(エ)「

」(第8ページ)

(オ)「

」(第9ページ)

前記(ア)ないし(オ)の記載及び本願の優先日における技術常識を考慮すれば,引用例2には次の事項が記載されていると認める。(以下,「技術事項」)という。)

「 テレビ電話機能付き端末において,
一の表示部の表示画面を分割したテレビ電話通話の表示画面とデータ通信の表示画面とを並列表示すること。」

ウ 周知例について
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-222839号公報(以下,「周知例1」という。)には,「ペン入力野球スコアブック作成装置及びその制御方法」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,強調のため当審が付与した。以降も同じ。)

(ア)「【0034】次に,ペン2は,表示部1から入力を行う際に使用するもので,表示部1の画面上をペン2でタッチされることにより,表示部1がタッチされた部分の座標データを画面入力制御手段5に出力するようになっている。尚,ペン2を用いた入力操作方法には,表示部1の画面上に表示されている選択項目の中で目的の項目部分がペン2でタッチされることにより入力を行うペンタッチ入力と,ペン2に備え付けてあるボタンを押しながら表示部1上に図形が描かれると,その図形の種類と描画位置とを認識するジェスチャ入力とがある。ジェスチャ入力の場合はペン2で画面上をなぞった軌跡をそのまま表示するようになっている。」(第5ページ)

前記(ア)の記載及び本願の優先日における技術常識を考慮すれば,次の事項は,周知であるといえる。(以下,「周知事項1」という。)

「ペンを用いた入力操作方法として,ペンにより画面上をなぞることにより軌跡を入力する「ジェスチャ入力」があること。」

また,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-181157号公報(以下,「周知例2」という。)には,「インターネットトータル電子会議システム」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

(イ)「【0023】
また,図1に示すように,本実施形態では,各コンピュータ13,23には,手書き入力手段15が設けられている。手書き入力手段15は,本実施形態では手書き入力パッドとタッチペンの構成である。コンピュータ13,23には,手書き入力手段15を接続するインターフェース(USBなど)を備え,手書き入力手段15からのデータ(を取り込むドライバソフトウェアがインストールされている。手書き入力手段15からのデータは,ビットマップやGIFのようなイメージデータである。
【0024】
電子会議用ソフトウェアは,取り込んだイメージデータを,自身のコンピュータ13,23の表示オブジェクトの手書き用フレーム45にはめ込んで表示するとともに,相手方のコンピュータ13,23に送信して相手方の表示オブジェクトの手書き用フレーム45に表示するようになっている。」(第7ページ)

また,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-134327号公報(以下,「周知例3」という。)には,「電子メモ処理装置,電子メモ処理方法,および電子メモ処理プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

(ウ)「【0136】[第3の実施の形態]図17に本願発明の第3の実施の形態にかかるシステムの概略構成を示す。このシステムは,通常のコンピュータシステム270で電子メモ処理装置を実現した例であり,かつ文書として紙媒体に印字されたものでなく,電子的に保存されている文書290を表示装置上に表示しこの文書290にさらに電子的なメモを付加するという機能を有する。
【0137】図17を参照して,このコンピュータシステム270は,文書290および図示しないメモが表示されるモニタ装置274と,ユーザが入力操作を行うための入力装置276と,本発明にしたがってシステムを制御するコンピュータ本体272とを含む。図17に示す例では,入力装置276は,キーボード278と,マウス280と,タブレット282と,ペン284とを含む。もちろん入力装置276としてこれ以外のポインティングデバイスを用いてもよい。
【0138】図17に示す第3の実施の形態では,文書290はコンピュータ・アプリケーション・プログラム等によってモニタ装置274に表示され,電子的に付加されたメモは当該文書上にこのシステム自体の機能として半透明形式で文書と重ね合わせて表示される。また,ユーザは,入力装置276を用いて文書290上の任意位置をポインティングすることで,電子的なメモ書き等の操作ができる。
【0139】図17に示す第3の実施の形態のシステムの機能的な構成は,文書がモニタ装置274により表示される点を除き第1の実施の形態または第2の実施の形態として説明したものと同様であるので,ここではその詳細は繰返さない。
【0140】以上の第1の実施の形態?第3の実施の形態のいずれについても,システム単体で構成した例を示した。しかしいずれの実施の形態を採用するにしても,ネットワークで複数のシステムがつながれているのが望ましい。ネットワーク接続することで,対象となる文書数が飛躍的に増加すると共に,システムの携帯性により出先でのシステム利用が可能となり利便性が増す。」(第15ページ)

(エ)「【0156】本実施例では,ペン入力部362によって入力されるペン軌跡データはストロークのデータであり,したがってこれを画面に表示するために軌跡データイメージ展開部370が必要である。しかし,ペン入力部から入力されるペン軌跡データがビットマップ形式のイメージデータである場合は,軌跡データイメージ展開部370は不要である。
【0157】イメージデータ合成部372はペン軌跡イメージ392と文書ファイルイメージ394とを重ね合せたイメージを生成し,表示部364に出力する。この様子は,図19を参照して既に説明した。」(第17ページ)

(オ)「【0219】以上から明らかなように,本発明により,ペンで文書に添削しているかのような簡単な操作で紙文書または文書ファイルにコメント等の情報を添付できる。しかも,添付されたコメントと元の紙文書または文書ファイルとが関連付けられて,または互いに一体となって保存されるので,手書データを添付したファイルを電子メール等に添付して送ることも容易である。そのため遠隔地にいるメンバーにコメントを求め,かつそうしたコメントを互いに明確に区別して検討するることも容易にできる。」(第23ページ)

前記(イ)ないし(オ)の記載及び本願の優先日における技術常識を考慮すれば,次の事項は,周知であるといえる。(以下,「周知事項2」という。)

「手書きによりペン入力されたデータは,イメージデータであり,当該イメージデータは,相手方の装置に送信され得ること。」

(3)対比・判断
ア 対比
補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「カメラ」,「動画像」,「会議装置」,「テレビ会議」,「テレビ会議中」,「ドキュメント」,「ディスプレイ」,「タブレットの表示部」,「ディスプレイ」と「タブレットの表示部」を総称したものはそれぞれ,補正発明における「カメラ」,「ビデオデータ」,「他の電子装置」,「ビデオ通話」,「ビデオ通話の期間」(及び「ビデオ通話を遂行する間」),「コンテンツ」,「第1表示領域」,「第2表示領域」,「電子装置の表示部」のそれぞれに相当し又は含まれる。

なお,本願の明細書の段落【0051】及び図6に記載を参酌すると,補正発明における「表示部」は,1つ(ディスプレイ部14)であり,また,「第1表示領域」及び「第2表示領域」は,1つの「表示部」における異なる「表示領域」であると限定して解される。
そうすると,本願の明細書及び図面の記載を参酌して補正発明を限定的に解釈した場合においては,引用発明における「ディスプレイ」,「タブレットの表示部」,「ディスプレイ」と「タブレットの表示部」を総称したもののそれぞれと,補正発明における「第1表示領域」,「第2表示領域」,「電子装置の表示部」のそれぞれとは,「第1表示部」,「第2表示部」及び「表示手段」である点において共通し,その余の点において相違するといえる。

また,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」は,いずれも,ユーザの「手書き」により入力された「情報」に含まれるから,それぞれ「第1手書き情報」及び「第2手書き情報」といい得るものである。
また,引用発明において,表示領域に表示することは,表示領域に,表示する対象(データ等)を「提供」することを前提としていることが明らかである。よって,引用発明の「…領域に表示」等は,補正発明の「…領域に提供」等を含むことは明らかである。。
また,引用発明において,「相手型会議装置」が自らを制御して各処理(「受信し」,「表示し」,「表示し」及び「送信する」)を実現することは自明であり,さらに,各処理を「段階」と称することは任意である。したがって,引用発明の「受信し」,「表示し」,「表示し」,「送信する」及び「動作方法」はそれぞれ,補正発明の「受信するように制御する段階」,「提供するように制御する段階」,「提供するように制御する段階」,「送信するように制御する段階」及び「制御方法」に相当する。

イ 一致点・相違点
前記アより,補正発明と引用発明とは,以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 電子装置の制御方法において,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含む,
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

[相違点]
補正発明は,「前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである」との限定があるのに対し,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」は,「コンテンツ」(ドキュメント)に対する「ユーザのジェスチャーを示す描画イメージ」であるか否かについて具体的に特定していない点。

なお,本願の明細書及び図面の記載を参酌して補正発明を限定的に解釈した場合においては,補正発明と引用発明とは,以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 電子装置の制御方法において,
カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示部に提供し,前記コンテンツを第2表示部に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示手段に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示部内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示部内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含む,
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

[相違点]
前記[相違点]と同じ。

[相違点2]
「第1表示部」,「第2表示部」及び「表示手段」が,補正発明は,「表示部」が1つであり,当該「表示部」に「第1表示領域」及び「第2表示領域」があるのに対し,引用発明は,「ディスプレイ」と「タブレットの表示部」の2つの異なる「表示手段」で構成されている点。

ウ 相違点についての判断
上記[相違点]について検討するに,引用発明の「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」において,「描画データ」は,「ペンの軌跡」を描画し,表示部に表示される画像すなわち「イメージ」であるから,「描画イメージ」といい得るものである。したがって,補正発明における「描画イメージ」と引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」とは,表現上の差異があるにすぎず,実質的な差異ではない。
仮に,実質的な差異であるとしても,「手書きによりペン入力されたデータは,イメージデータであり,当該イメージデータは,相手方の装置に送信され得ること。」(周知事項2)は,本願の優先日における周知事項であり,当該周知事項2において,手書きによりペン入力される「イメージデータ」は,「描画イメージ」といい得るものである。よって,当該周知事項2を参酌すれば,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」を「描画イメージ」とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,引用発明の「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」において,「ペンの軌跡」が,ユーザがペンを手により動かす操作により生じ得るものであることは自明であり,また,ユーザがペンを手により動かす操作は,「ジェスチャ」(身振り,手振り)といい得るものである。実際,「ペンを用いた入力操作方法として,ペンにより画面上をなぞることにより軌跡を入力する「ジェスチャ入力」があること。」(周知事項1)にあるように,ペンにより画面上をなぞることにより軌跡を入力する入力操作として「ジェスチャ入力」があること,すなわち,ユーザがペンを手により動かす操作を「ジェスチャ」と称することは本願の優先日における周知事項である。
そうすると,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」は,周知事項1等を参酌すれば,「ユーザのジェスチャー」を示すものといい得るものである。
以上より,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」を「ユーザのジェスチャーを示す描画イメージ」とすることは,当業者が周知事項1,周知事項2等を参酌することにより容易に想到し得たことである。

また,本願の明細書及び図面の記載を参酌して補正発明を限定的に解釈した場合における[相違点2]について検討するに,1つの表示部に,複数の処理に係る表示領域を処理に応じて複数設けること(マルチウィンドウ等)は,本願の優先日における周知技術にすぎず,かつ,引用例2に記載されている技術事項
「 テレビ電話機能付き端末において,
一の表示部の表示画面を分割したテレビ電話通話の表示画面とデータ通信の表示画面とを並列表示すること。」
にあるように,テレビ電話機能付き端末においても,1つの表示部に,テレビ電話通話用の表示画面(領域)と,データ通信用の表示画面(領域)とを設けることは,本願の優先日における公知の技術事項である。
したがって,上記公知の技術事項等を参酌すれば,引用発明において,1つの表示部に,動画像を表示する「第1表示領域」と,ドキュメント及びペンの軌跡による描画データを表示する「第2表示領域」を設けることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知事項から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

エ 請求人の主張について
平成29年3月17日付けで提出された意見書において,請求人は,次のような主張をしている。
「 ここで,本願発明の「手書き情報」に関連して,本願段落[0052]には,『[0052]モバイル端末機1の制御部18は,映像通話中に,共有イメージ143に対する編集を行なうことができる(302)。本実施形態による共有イメージ143の編集は,ユーザ入力部16を通じたユーザの入力に従って行なわれ,共有イメージ143に対して多様な形態で具現されることができる。例えば,共有イメージ143の編集は,図6に示すように,共有イメージ143に対するユーザのジェスチャーを示すイメージ(以下,“ジェスチャーイメージ”と言う)144の付加を含む。モバイル端末機1の制御部18は,ディスプレイ部14に設けられたユーザ入力部16のタッチスクリーン等を通して共有イメージ143に対するユーザのジェスチャーがあると判断すれば,これに対応するジェスチャーイメージ144が共有イメージ143に重なるようにディスプレイ部14に表示する。本実施形態のジェスチャーイメージ144は,本発明の編集情報の一例である。』と記載されています。
そして,当該「ジェスチャーイメージ144」に関して,本願図6,図7等を参照すれば,ピンポイント(点)入力にかかるタッチ入力ではなく,「描画イメージ」であることが明記されています。
すなわち,本願発明の手書き情報とは,典型的には,「共有イメージに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージ」を意味するものです。
引用文献1?5には,このような本願の技術的特徴については,一切言及されておらず,開示も示唆もされていないものと請求人は思料致します。」

この中で,請求人は,「そして,当該「ジェスチャーイメージ144」に関して,本願図6,図7等を参照すれば,ピンポイント(点)入力にかかるタッチ入力ではなく,「描画イメージ」であることが明記されています。」と主張し,当該主張は,引用発明においては「ピンポイント(点)入力にかかるタッチ入力」を用いていることを前提としたものと解されるが,引用発明の「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」における「ペンの軌跡」は,連続的な線としての入力によるものであって,「ピンポイント(点)入力によるタッチ入力」によるものではないことは明らかである。
また,当該主張において引用されている本願明細書の段落【0052】の記載によれば,補正発明における「描画イメージ」は,「共有イメージ143に対するユーザのジェスチャーを示すイメージ」であって,「共有イメージ143に重なるようにディスプレイ部14に表示」されるものである。そして,前記「ウ 相違点についての判断」で述べたように,引用発明における「ペンの軌跡による第1描画データ」及び「ペンの軌跡による第2描画データ」は,周知事項1を参酌すれば「ユーザのジェスチャー」を示すものといい得るものであり,また,周知事項2を参酌すれば,「描画イメージ」に限定することは当業者が適宜なし得ることにすぎない。
当該主張は,採用することができない。

(4)小括
よって,補正発明は,当業者が,引用例に記載された発明に基づいて周知例1ないし3に記載された周知技術を参酌することにより,または,引用例1に記載された発明に基づいて,引用例2に記載された公知の技術事項等及び周知例1ないし3に記載された周知技術を参酌することにより,容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができるものではない。

4 結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年3月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲は,平成28年10月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲であり,その請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。

「 カメラを介して取得したビデオデータを他の電子装置へ送信し,前記他の電子装置からビデオデータを受信することにより,ビデオ通話を遂行する間に,前記他の電子装置から共有されるべきコンテンツを受信するように制御する段階と,
ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記コンテンツのための第1手書き情報を前記他の電子装置から受信することに基づいて,前記第2表示領域内に,前記第1手書き情報を提供するように制御する段階と,
前記ビデオ通話の期間に前記第2表示領域内に入力された第2手書き情報を,前記他の電子装置へ,送信するように制御する段階とを含む
ことを特徴とする電子装置の制御方法。」

2 引用例,引用発明等
引用例,引用発明等は,「第2 補正の却下の決定」の[理由]の「3 独立特許要件について」の「(2)引用例,引用発明等」において,認定したとおりである。

3 判断
本願発明は,補正発明から,本件補正の[補正3]により限定された「前記第1手書き情報及び前記第2手書き情報は,前記コンテンツに対するユーザのジェスチャーを示す描画イメージである」との事項を省き,かつ,本件補正の[補正1]により,明りょうでない記載を明りょうにするために付加した「電子装置の制御方法において,」との事項を省いたものである。
ここで,本願発明の「ビデオデータを第1表示領域に提供し,前記コンテンツを第2表示領域に提供して,前記ビデオ通話の期間に共に表示されるべきビデオデータと前記コンテンツとを前記電子装置の表示部に提供するように制御する段階」において,「前記電子装置」は,前記されていないものの,本願の明細書の記載等を参酌すれば,末尾の「電子装置」を指していると解することができるから,引用発明との対比・判断に影響を与えるほど明確でないとはいえない。
そうすると,上記「第2 補正却下の決定」の[理由]の「3 独立特許要件について」で検討した事項を考慮すれば,本願発明と引用発明との間に[相違点]は存在しないこととなる。
よって,本願発明は,引用例に記載された発明と同一であるか,または,当業者が引用例に記載された発明に基づいて引用例2に記載された公知の技術事項等を参酌することにより容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明と同一であるか,または,当業者が引用例に記載された発明に基づいて引用例2に記載された公知の技術事項等を参酌することにより容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第1項第3号又は同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-29 
結審通知日 2017-04-03 
審決日 2017-04-26 
出願番号 特願2012-538760(P2012-538760)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H04M)
P 1 8・ 121- WZ (H04M)
P 1 8・ 575- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
中野 浩昌
発明の名称 モバイル端末機、ディスプレイ装置及びその制御方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 崔 允辰  
代理人 木内 敬二  

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