現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1332552
審判番号 不服2016-8641  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-09 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2013- 92845「オクトレオチドおよび2種またはそれ以上のポリラクチドコグリコリドポリマーを含む徐放性製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 9日出願公開、特開2013-177406、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月20日(パリ条約による優先権主張 2005年12月22日(GB)英国 2006年 8月17日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2008-546248号の一部を、平成25年 4月25日に新たな特許出願としたものであって、平成26年 4月 3日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月 8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年 4月21日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年 9月25日付けで意見書が提出され、平成28年 1月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年 6月 9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に誤訳訂正書が提出され、同年 8月24日付けで前置報告がされ、平成29年 2月22日付けで審判請求人から前置報告に対する上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年 1月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献1-7に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2005/046645号
2.Eur. J. Pharm. Biopharm., 2000, Vol.50, No.2, pp.263-270
3.Pharm. Res., 2006.01, Vol.23, No.1, pp.215-223
4.AAPS PharmSciTech., 2004, Vol.5, No.3, Article 49(周知技術を示す文献)
5.特開2001-233897号公報(周知技術を示す文献)
6.米国特許第5876761号明細書(周知技術を示す文献)
7.米国特許出願公開第2004/0097419号明細書(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正による、請求項1に「PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり」という事項を追加する補正が、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮(以下「限定的減縮」という。)を目的とするものであるかについて検討する。
「PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり」という事項は、補正前の請求項1に記載された「PLGA」を、「100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比」を有し、かつ、「固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下」であるものに限定するものであって、かつ、その補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、当該補正は、限定的減縮を目的とするものに該当する。
そして、以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、上記補正後の請求項1-12に係る発明は、独立して特許を受けることができるものであり、上記補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

第4 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成28年 6月 9日付け誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明であると認める。

「【請求項1】
活性成分としてオクトレオチドまたはその薬学的に許容される塩および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物。

【請求項2】
PLGAが90:10から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有する、請求項1に記載の医薬組成物。

【請求項3】
PLGAが85:15から65:35のラクチド:グリコリドモノマー比を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。

【請求項4】
PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.8dl/g以下である、請求項1?3のいずれかに記載の医薬組成物。

【請求項5】
オクトレオチドのパモ酸塩を含む、請求項1?4のいずれかに記載の医薬組成物。

【請求項6】
活性成分の放出が3か月またはそれ以上である、請求項1?5のいずれかに記載の医薬組成物。

【請求項7】
微粒子がさらに抗凝集剤と混合されているか、抗凝集剤で覆われているか、または、抗凝集剤で被覆されている、請求項1?6のいずれかに記載の医薬組成物。

【請求項8】
微粒子が抗凝集剤で被覆されており、該抗凝集剤が微粒子の2重量%未満の量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。

【請求項9】
抗凝集剤がマンニトールである、請求項7または8に記載の医薬組成物。

【請求項10】
γ放射により滅菌された、請求項1?9のいずれかに記載の医薬組成物。

【請求項11】
請求項1?10のいずれかに記載の微粒子を製造するための方法であって、
(i)
(ia)2種またはそれ以上の異なるPLGAポリマーを適当な有機溶媒または溶媒混合物に溶解し;
(ib)工程(ia)で得られたポリマー溶液中にオクトレオチドまたはその薬学的に許容される塩を溶解/懸濁/乳化し;内部有機相を製造し;
(ii)安定剤を含む外部水性相を製造し;
(iii)内部有機相を外部水性相と混合し、エマルジョンを形成し;そして、
(iv)溶媒蒸発または溶媒抽出により微粒子を硬化し、微粒子を洗浄し、微粒子を乾燥させ、そして微粒子を篩過させること
を含む方法。

【請求項12】
バイアル中の請求項1?10のいずれかに記載の医薬組成物をアンプル、バイアルもしくは充填済シリンジ中の水性ビヒクルと一緒に、または二重チャンバーシリンジ中で分けられた微粒子とビヒクルとして含む投与キット。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。
(引用文献1は英語のため、当審による日本語訳文にて記す。)

・1a(請求の範囲)
「1.ポリマーマトリックスに包埋された、式I

のラジカルであり、そして
X_(2)はC_(α)側鎖に芳香族性残基を有するα-アミノ酸であるか、またはDab、Dpr、Dpm、His、(Bzl)HyPro、チエニル-Ala、シクロヘキシル-Alaおよびt-ブチル-Alaから成る群から選択されるアミノ酸単位であり、該配列の残基Lysは天然ソマトスタチン-14の残基Lys^(9)に対応する。〕
のアミノ酸配列を含む遊離形、塩形、または被保護形のソマトスタチン類似体を含む、微粒子。

2.ソマトスタチン類似体が、式III

〔式中、
C-2の立体配置は(R)または(S)またはその混合物であり、そして
RはNR_(1)R_(2)-C_(2-6)アルキレンまたはグアニジン-C_(2-6)アルキレンであり、そしてR_(1)およびR_(2)の各々は、独立してHまたはC_(1-4)アルキルである。〕
の化合物の遊離形、塩形または被保護形である、請求項1記載の微粒子。

3.ソマトスタチン類似体がパモ酸塩形である、請求項1または2記載の微粒子。

4.ポリマーマトリックスが直鎖または分枝鎖ポリラクチドコグリコリドを含む、請求項1から3のいずれかに記載の微粒子。

5.ポリマーマトリックスが少なくとも2種の異なるポリマーを含む、請求項1から4のいずれかに記載の微粒子。
・・・

7.請求項1から6のいずれかに記載の微粒子および湿潤剤を含む水ベースの媒体を含む、医薬組成物。」

・1b(第4頁下から第7-4行)
「好ましい式IIIの化合物は、・・・シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe](化合物Aと呼ぶ)・・・の遊離形、塩形または被保護形である。」

・1c(第5頁第18-22行)
「例えば生体適合性の薬理学的に許容されるポリマーに包埋され、適当な溶媒に懸濁されたソマトスタチン類自体を含む微粒子は、活性成分の全てまたは実質的に全てを長期間にわたり、例えば数週間から6ヶ月にわたり、好ましくは少なくとも4週間にわたり放出することが判明した。」

・1d(第6頁下から第2行)
「本発明の好ましいポリマーは、直鎖ポリエステルおよび分岐鎖ポリエステルである。」

・1e(第7頁第4-7行)
「直鎖または分岐鎖ポリエステル中のポリラクチドコグリコリドのラクチド:グリコリド比は、好ましくは約75:25から25:75、例えば60:40から40:60であり、55:45から45:55、例えば52:48から48:52が最も好ましい。」

・1f(第7頁第8-15行)
「好ましくは本発明に従い使用する、直鎖ポリエステル、例えば直鎖ポリラクチドコグリコリド(PLG)は、約10,000から約500,000Da、例えば約50,000Daの重量平均分子量(Mw)を有する。このようなポリマーは、例えば1.2から2の多分散性Mw/Mnを有する。適当な例は、例えば一般式-[(C_(6)H_(8)O_(4))_(x)(C_(4)H_(4)O_(4))_(y)]_(n)-(x、yおよびnの各々は、合計が上記のMwを与えるような値を有する)を有する、例えばポリ(D,L-ラクチドコグリコリド)、例えば市販のもの、例えばBoehringer IngelheimのResomer(登録商標)、特にResomers(登録商標)RG、例えばResomer(登録商標)RG 502、502H、503、503H、504、504Hを含む。」

・1g(第18頁 表2)


該ポリマーを、表2に記載の量の塩化メチレンに溶解する。該ポリマー溶液を、次いで、化合物Aパモ酸塩に添加する。得られた懸濁液をUltra-Turraxで1分処理する。
2lの水を90℃に加熱する。加熱中に、表2に記載の量のリン酸塩を、交互に添加する。90℃で、表2に記載の量のPVA18-88を添加する。得られた溶液を、次いで20℃に冷却し、水を加えて所定量とする。
ポリマー/薬剤懸濁液およびPVA/リン酸塩溶液を混合し、塩化メチレンを真空下で蒸発させ、微粒子を濾取し、水(WBU)で洗浄し、減圧下(0.1mbar)、室温で乾燥させる。」

引用文献1において、直鎖のポリラクチドコグリコリドを用い、かつ2種類のポリマーマトリックスを含むものを具体的に説明している箇所は、実施例6及び実施例8に係る記載であると認められるところ、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ポリマーマトリックスに包埋された遊離形、塩形、または被保護形の化合物A(シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe])を活性成分として含む、微粒子であって、当該ポリマーが、ラクチド:グリコリド比が50:50の直鎖ポリラクチドコグリコリドであるResomer RG502H及びラクチド:グリコリド比が50:50である星型ポリラクチドコグリコリドの混和物である微粒子を含む、活性成分の全てまたは実質的に全てを長期間にわたって放出する医薬組成物。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(引用文献2は英語のため、当審による日本語訳文にて記す。)

・2a(p.263 Abstract第2-6行)
「親水性の50:50PLGA微粒子に充填されたリュープロリド酢酸塩が、溶媒-抽出/蒸発法により調製され・・・、インビトロでの薬物放出とインビボでの効力について特徴付けられた。分子量の異なるPLGAの様々な比率での組合せにより調製した微粒子は、ポリマーの水和傾向に比例した薬物放出プロファイルを示した。」

・2b(p.263左欄下から第3行-末行)
「ポリ(D,L-ラクチドコグリコリド)(PLGA)から製造される微粒子は、徐放性製剤としてこの20年間に、広範に研究されている。」

・2c(p.264“2.1.Materials”欄-“2.2. Preparation of microspheres”欄及びp.265“2.3.6.In vitro drug release”欄-“2.3.7.In vivo evaluation”欄)
「Boehringer Ingelheim製のPLGA(50:50)ポリマーであるResomer RG503HとResomer502Hを混ぜ合わせた混和物にリュープロリド酢酸塩が充填されたPLGA微粒子を製造し、in vitro 及びin vivoにおける当該微粒子から放出されるリュープロリド酢酸塩のプロファイルの測定に供した」ことが記載されていることが認められる。

・2d(p.264“2.1.Materials”欄-“2.2. Preparation of microspheres”欄、p.264 Table1、p.265 Table2)
p.264“2.1.Materials”欄、p.264 Table1の記載によると、表2に記載されている微粒子(A)はポリマーとして28.3kDaのResomer RG503Hを使用して製造されたものであり、微粒子(B)はポリマーとして8.6kDaのResomer RG502Hを使用して製造されたものであり、微粒子(C)?(E)はResomer RG503HとResomer RG502Hを混ぜ合わせた混和物(Resomer RG503HとResomer RG502Hの配合比は、微粒子(C)が3:1、微粒子(D)が4:1、微粒子(E)が5:1)を使用して製造されたものであることが認められる。

したがって、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「ポリマー微粒子に充填されたリュープロリド酢酸塩を含む徐放性製剤であって、当該ポリマーがPLGA(50:50)ポリマーであるResomer RG 503H及びResomer RG 502Hの混和物である徐放性製剤。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
(引用文献3は英語のため、当審による日本語訳文にて記す。)
・3a(p.216左欄第22-28行)
「このプロジェクトの目的は、2種類のPLGA分子、PLGA7525[D,L-ラクチド:グリコリド(75:25))・・・]とResomer RG 502H[D,L-ラクチド:グリコリド(50:50)・・・]を様々な比率で混和することによって調製される微粒子からの、モデル薬物であるGCV(ガンシクロビル)の放出を調べることである。微粒子は、3種類の異なる混和、すなわち、PLGA7525/Resomer RG 502Hが、1:3、1:1又は3:1である混和によって調製される。」

・3b(p.216右欄第4行-末行)
「ラクチド:グリコリド比が75:25であるPLGA7525と、ラクチド:グリコリド比が50:50のPLGAであるResomer RG 502Hを混ぜ合わせた混和物(PLGA7525とResomer RG 502Hの配合比は、1:3、1:1又は3:1)にガンシクロビルを充填したPLGA微粒子を製造し、in vitroにおける当該微粒子から放出されるガンシクロビルのプロファイルの測定に供した」ことが記載されていることが認められる。

・3c(p.219 Fig.4-6)
「in vitroにおける薬物放出プロファイル測定の結果、PLGA7525とResomer RG 502Hを混和比が3:1、1:1又は1:3で混ぜ合わせた混和物にガンシクロビルを充填したPLGA微粒子から、それぞれ、約60日間、約18日間又は約12日間にわたってガンシクロビルが放出された」ことが記載されていることが認められる。

したがって、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「ポリマー微粒子に充填されたガンシクロビルを含む徐放性製剤であって、当該ポリマーがPLGA(ラクチド:グリコリド比が75:25)であるPLGA7525とPLGA(ラクチド:グリコリド比が50:50)であるResomer RG 502Hの混和物である、徐放性製剤。」

4.その他の引用文献について
拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4-7には、それぞれ、有効成分としてオクトレオチドを含み、1種類のPLGAを含む微粒子が記載されている。
また、前置報告において周知文献として引用された引用文献8(生分解性ポリマー(RESOMER(登録商標)), 製品カタログ, SIGMA-ALDRICH, [retrieved on 2016.08.15], retrieved from the internet: japan/materialscience/polymer-science/biodegradablepolymers.html>)の第2頁表1には、Resomer RG 502H及びResomer RG 503Hの25℃クロロホルム中0.1%の固有粘度が、それぞれ、0.16-0.24dl/g及び0.32-0.44dl/gであることが記載されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1-1)引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明1における「ラクチド:グリコリド比が50:50の直鎖ポリラクチドコグリコリドであるResomer RG502H」は、引用文献8の記載から、クロロホルム中の固有粘度が0.16-0.24dl/gのポリマーであるといえるから、本願発明1における「直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)・・・、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり」に相当する。
また、引用発明1における「微粒子を含み、活性成分の全てまたは実質的に全てを長期間にわたって放出する医薬組成物」は、本願発明1における「微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、・・・前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」に相当するものである。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「活性成分および直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物。」

(相違点)
(相違点1)活性成分として、本願発明1はオクトレオチドを含むものであるのに対し、引用発明1は化合物A(シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe])を含む点。
(相違点2)本願発明1は2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含むものであるのに対し、引用発明1は直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマーと星型ポリラクチドコグリコリドポリマーを含む点。

(1-2)引用発明1との相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献1には化合物A(シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe])に代えてオクトレオチドを採用することは記載も示唆もされていない。
また、引用文献1に記載の化合物A(シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe])は6アミノ酸が結合した環状構造を有する化合物であるが、本願発明1におけるオクトレオチドは8個のアミノ酸が結合した環状構造を有する化合物であり、両者の物理化学的性質(サイズや形状、疎水性/親水性などの化学的性質)は異なることが認められる。ここで、微粒子ポリマーマトリックスからの薬剤放出は、薬剤とポリマーとの相互作用に依存し、各薬剤が固有の薬剤放出プロファイルを示すことが、本願優先権主張日当時の技術常識であると解されるところ、引用発明1において、化合物A(シクロ[{4-(NH_(2)-C_(2)H_(4)-NH-CO-O-)Pro}-Phg-DTrp-Lys-Tyr(4-Bzl)-Phe])に代えて、それとは構造や物理化学的性質が異なるオクトレオチドを採用したときにも、所望の薬剤放出プロファイルを示すか否かを当業者が予測できるものではない。
加えて、引用発明1は、上記相違点2において示したとおり、直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマーと星型ポリラクチドコグリコリドポリマーを含むものであって、活性成分のみならず、ポリマーの構造や物理化学的性質も本願発明1とは異なるものであるから、当該「直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマーと星型ポリラクチドコグリコリドポリマーを含むもの」を、「2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含むもの」に代えたときにも、所望の薬剤放出プロファイルを示すことを当業者が予測できるものとすることはできない。
そして、本願発明1は、オクトレオチドと所定の2種類の直鎖PLGAを使用することにより、当該2種類の直鎖PLGAポリマーの混和物で構成される微粒子からの初期バーストが、単一ポリマーから構成される微粒子からの初期バーストの足し合わせに比べて極めて小さく、単一ポリマーから構成される微粒子を含むオクトレオチド製剤に比べて初期バーストを減少させ得るものであり、さらに、本願発明1の製剤は約3ヶ月にもわたる延長された薬剤放出を可能とするという、当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものであって、これらの効果は、有効成分としてオクトレオチドを含み、1種類のPLGAを含む微粒子が記載されている引用文献4?7に記載の事項によっても当業者が想起することができなかったものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用発明1、並びに、引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2-1)引用発明2との対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明2における「PLGA(50:50)ポリマーであるResomer RG503H及びResomer RG502Hの混和物」は、引用文献8の記載から、クロロホルム中での固有粘度が、Resomer RG503H及びResomer RG502Hのそれぞれが、0.32-0.44dl/g及び0.16-0.24dl/gのポリマーであるから、本願発明1における「2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)・・・、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり」に相当する。
また、引用発明2における「ポリマー微粒子・・・を含む徐放性製剤」は、本願発明1における「微粒子形態の徐放性医薬組成物であって、・・・前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「活性成分および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物。」

(相違点)
(相違点1)活性成分として、本願発明1はオクトレオチドを含むものであるのに対し、引用発明2はリュープロリド酢酸塩を含む点。

(2-2)引用発明2との相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献2にはリュープロリド酢酸塩に代えてオクトレオチドを採用することは記載も示唆もされていない。
また、引用文献2に記載のリュープロリドは線状構造を有する化合物であるが、本願発明1におけるオクトレオチドは環状構造を有する化合物であり、両者の物理化学的性質(サイズや形状、疎水性/親水性などの化学的性質)が異なることが認められる。ここで、微粒子ポリマーマトリックスからの薬剤放出は、薬剤とポリマーとの相互作用に依存し、各薬剤が固有の薬剤放出プロファイルを示すことが、本願優先権主張日当時の技術常識であると解されるところ、引用発明2において、リュープロリドに代えて、それとは構造や物理化学的性質が異なるオクトレオチドを採用したときにも、所望の薬剤放出プロファイルを示すか否かを当業者が予測できるものではない。
そして、引用文献2のp.267 Fig.3及びp.268右欄下から第4行-p.269左欄第2行には、「in vitroの試験系において、PLGA(50:50)ポリマーであるResomer RG 503HとResomer RG 502Hを混ぜ合わせた混和物にリュープロリド塩酸塩が充填されたPLGA微粒子から、リュープロリドが約50日間にわたって放出されたこと、及び、リュープロリド放出プロファイルが、Resomer RG 503H又はResomer RG 502Hの単一ポリマーによって形成される微粒子からの放出プロファイルを元に算出される理論値に近似する」ことが記載されていることが認められる。これに対し、本願発明1は、オクトレオチドと所定の2種類の直鎖PLGAを使用することにより、当該2種類の直鎖PLGAポリマーの混和物で構成される微粒子からの初期バーストが、単一ポリマーにより構成される微粒子からの初期バーストの足し合わせに比べてはるかに小さく、単一ポリマーから構成される微粒子を含むオクトレオチド製剤に比べて初期バーストを減少させ得るものであり、さらに、本願発明1の製剤は約3ヶ月にもわたる延長された薬剤放出を可能とするというものであり、これらは、当業者の予測を超える顕著な効果というべきものである。そして、これらの効果は、有効成分としてオクトレオチドを含み、1種類のPLGAを含む微粒子が記載されている引用文献4?7に記載の事項によっても当業者が想起することができなかったものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用発明2、並びに、引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3-1)引用発明3との対比
本願発明1と引用発明3とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明3における「PLGA(ラクチド:グリコリド比が50:50)であるResomer RG502H」は、引用文献8の記載から、クロロホルム中での固有粘度が、0.16-0.24dl/gのポリマーであるから、本願発明1における「直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)・・・、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり」に相当するものである。
また、引用発明3における「PLGA(ラクチド:グリコリド比が75:25)であるPLGA7525」は、本願発明1における「直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)・・・、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し」に相当するものである。
さらに、引用発明3における「ポリマー微粒子・・・を含む徐放性製剤・・・」は、本願発明1における「微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、・・・前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「活性成分および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、2種のうちの一方のPLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物。」

(相違点)
(相違点1)活性成分として、本願発明1はオクトレオチドを含むものであるのに対し、引用発明3はガンシクロビルを含む点。
(相違点2)本願発明1は2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含むものであって、PLGAのクロロホルム中での固有粘度がいずれも0.9dl/g以下であるのに対し、引用発明3では2種のうちのPLGA7525のクロロホルム中での固有粘度が明らかでない点。

(3-2)引用発明3との相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献3にはガンシクロビルに代えてオクトレオチドを採用することは記載も示唆もされていない。
また、引用文献3に記載のガンシクロビルは分子量約255の線状構造を有する低分子化合物であるが、本願発明1におけるオクトレオチドは8個のアミノ酸が結合した環状構造を有する化合物であり、両者の物理化学的性質(サイズや形状、疎水性/親水性などの化学的性質)が異なることが認められる。ここで、微粒子ポリマーマトリックスからの薬剤放出は、薬剤とポリマーとの相互作用に依存し、各薬剤が固有の薬剤放出プロファイルを示すことが、本願優先権主張日当時の技術常識であると解されるところ、引用発明3において、ガンシクロビルに代えて、それとは構造や物理化学的性質が異なるオクトレオチドを採用したときにも、所望の薬剤放出プロファイルを示すか否かを当業者が予測できるものではない。
そして、本願発明1は、オクトレオチドと所定の2種類の直鎖PLGAを使用することにより、当該2種類の直鎖PLGAポリマーの混和物で構成される微粒子からの初期バーストが、単一ポリマーにより構成される微粒子からの初期バーストの足し合わせに比べてはるかに小さく、単一ポリマーから構成される微粒子を含むオクトレオチド製剤に比べて初期バーストを減少させ得るものであり、さらに、本願発明1の製剤は約3ヶ月にもわたる延長された薬剤放出を可能とするという、当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものであって、これらの効果は、有効成分としてオクトレオチドを含み、1種類のPLGAを含む微粒子が記載されている引用文献4?7に記載の事項によっても当業者が想起することができなかったものと認められる。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明3、並びに、拒絶査定において引用された引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)小括
よって、本願発明1は、引用発明1-3、並びに、拒絶査定において引用された引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10は、本願発明1をさらに限定したものであり、本願発明1の「活性成分としてオクトレオチド・・・および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」なる構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1-3、並びに、拒絶査定において引用された引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明11、12について
本願発明11、12は、本願発明1及びそれをさらに限定した本願発明2?10の徐放性医薬組成物の製造方法の発明であり、本願発明1の「活性成分としてオクトレオチド・・・および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」なる構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1-3、並びに、拒絶査定において引用された引用文献4-7、及び、前置報告において引用された引用文献8に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-12は「活性成分としてオクトレオチド・・・および2種の異なる直鎖ポリラクチドコグリコリドポリマー(PLGA)を含む、微粒子の形態の徐放性医薬組成物であって、PLGAがポリマー混和物として存在し、PLGAが100:0から40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有し、PLGAの固有粘度がクロロホルム中で0.9dl/g以下であり、前記微粒子は単一組成である、徐放性医薬組成物」との事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1-7に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2013-92845(P2013-92845)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 大輔  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 清野 千秋
田村 聖子
発明の名称 オクトレオチドおよび2種またはそれ以上のポリラクチドコグリコリドポリマーを含む徐放性製剤  
代理人 大森 規雄  
代理人 片山 英二  
代理人 小林 浩  
代理人 植竹 友紀子  
代理人 鈴木 康仁  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ