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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
管理番号 1332717
審判番号 無効2016-800118  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-10-11 
確定日 2017-09-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第3349710号発明「電解槽および電解水生成装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3349710号の請求項1ないし16に係る発明についての出願は、平成10年5月27日(優先権主張 1997年8月27日 日本国)を国際出願日として出願され、平成14年9月13日に特許権の設定登録がなされたもので、以後の経緯は以下のとおりである

平成28年10月11日 特許無効審判請求
平成28年11月22日 補正書
(審判請求書の被請求人の氏名住所の補正)
平成29年 2月 3日 審判事件答弁書
平成29年 3月24日付け 審理事項通知
平成29年 5月25日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成29年 5月26日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成29年 6月 9日 口頭審理の実施及び上申書(請求人)

上記口頭審理において、請求人の審判請求書及び口頭審理陳述要領書の誤記の訂正が調書に記載のとおり行われ、請求人は審判請求書及び口頭審理陳述要領書に記載のとおりに陳述し、被請求人は審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書に記載のとおりに陳述した。
また、上申書(請求人)で、甲第9号証が提出されたが、これは、本件審査段階の平成14年1月18日付け拒絶理由通知書における新規性及び進歩性要件違反の拒絶理由(以下、「拒絶理由」という。)で引用した引用文献2であるとされた審判請求書中の「特開平2-5477号公報」(甲第2号証)との記載が誤記で、「特公平2-5477号公報」が正しい記載であったので、同公告公報を甲第9号証として提出したものである。

第2 本件特許発明
本件特許第3349710号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された以下のとおりのもの(以下、請求項順に、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明16」といい、総称して「本件特許発明」という。)である。
「 【請求項1】
被電解原水が導入される電解室と、前記電解室内と前記電解室外を区画する一つ以上の隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一つ以上の電極板対と、を有し、前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられていることを特徴とする電解槽。
【請求項2】
被電解原水が導入される電解室と、その主面が相互に対面するように設けられ、前記電解室内と前記電解室外を区画する二つの隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記二つの隔膜をそれぞれ挟んで設けられた二つの電極板対と、を有し、前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられていることを特徴とする電解槽。
【請求項3】
請求の範囲第1項に記載の電解槽と、当該電解槽に対して電解電圧を供給する電源回路と、を備える電解水生成装置であって、
前記電源回路は、電解水生成工程において、前記電解室内に設けられた電極板に陽極又は陰極の何れか一方の極性の電圧を印加するとともに、前記電解室外に設けられた電極板に、前記電解室内に設けられた電極板とは異なる極性の電圧を印加することを特徴とする電解水生成装置。
【請求項4】
請求の範囲第2項に記載の電解槽と、当該電解槽に対して電解電圧を供給する電源回路と、を備える電解水生成装置であって、
前記電源回路は、電解水生成工程において、前記電解室内に設けられた電極板に陽極又は陰極の何れか一方の極性の電圧を印加するとともに、前記電解室外に設けられた電極板に、前記電解室内に設けられた電極板とは異なる極性の電圧を印加することを特徴とする電解水生成装置。
【請求項5】
前記電源回路は、逆洗浄工程において、前記電解室内に設けられた電極板に、前記電解工程とは異なる極性の電圧を印加するとともに、前記電解室外に設けられた電極板に、前記電解室内に設けられた電極板とは異なる極性の電圧を印加する逆洗浄回路を有することを特徴とする請求の範囲第3項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記電源回路は、逆洗浄工程において、前記電解室内に設けられた電極板に、前記電解工程とは異なる極性の電圧を印加するとともに、前記電解室外に設けられた電極板に、前記電解室内に設けられた電極板とは異なる極性の電圧を印加する逆洗浄回路を有することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記電源回路は、逆洗浄工程において、前記電解室内に設けられた電極板の一方に、前記電解水生成工程とは異なる極性の電圧を印加するとともに、前記電解室内に設けられた電極板の他方に、前記電解水生成工程と同一極性の電圧を印加して第1の逆洗浄を行ったのち、前記電解室内に設けられた両電極板への印加電圧極性を反転させて第2の逆洗浄を行う逆洗浄回路を有することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記逆洗浄回路は、前記第1および第2の逆洗浄中に、前記電解室外に設けられた電極板に電圧を印加しないことを特徴とする請求の範囲第7項に記載の電解水生成装置。
【請求項9】
前記電解室外の電極板のうちいずれか一方が、第2の電解室に設けられていることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の電解槽。
【請求項10】
被電解原水が導入され、二つの隔膜により仕切られた第1の電解室および第2の電解室と、前記第1の電解室と前記第2の電解室とのそれぞれに、前記二つの隔膜をそれぞれ挟んで設けられた二つの電極板対と、を有する第1の電解槽と、
前記第1の電解槽のうち前記第1の電解室で生成された電解水が導入される第3の電解室と、
その主面が相互に対面するように設けられ、前記第3の電解室内と前記第3の電解室外を区画する二つの隔膜と、
前記第3の電解室内外のそれぞれに、前記二つの隔膜をそれぞれ挟んで設けられた二つの電極板対と、を有し、
前記第3の電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている第2の電解槽と、
を備えたことを特徴とする電解槽。
【請求項11】
前記隔膜を挟んで設けられた電極板対は、ゼロギャップ電極で構成されることを特徴とする請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第10項の何れかに記載の電解槽。
【請求項12】
前記隔膜を挟んで設けられた電極板対のうち少なくともいずれか一方には、電極表面で発生するガスを前記隔膜に対して背面側へ逃がす孔または隙間が設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第11項の何れかに記載の電解槽。
【請求項13】
前記電解室外の電極板は、前記隔膜の表面に電極膜を形成する態様で前記隔膜に設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第12項の何れかに記載の電解槽。
【請求項14】
前記電極板には、その表面に貴金属コーティングが施されていることを特徴とする請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第13項の何れかに記載の電解槽。
【請求項15】
請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第14項の何れかに記載の電解槽のうち複数の組み合わせに係る電解槽と、前記電解槽の各電解室に並列的に原水を導入する給水系と、前記各電解室で生成された電解水を並列的に取り出す取水系と、を備えたことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項16】
請求の範囲第1項?第2項、または、請求の範囲第9項?第14項の何れかに記載の電解槽と、当該電解槽に対して電解電圧を供給する電源回路と、を備える電解水生成装置であって、
被電解原水を貯留する貯水タンクと、前記貯水タンクの被電解原水を同電解水生成装置に導いたのちに前記貯水タンクに戻す循環系と、をさらに備え、前記被電解原水を循環させながら電気分解を行うことを特徴とする電解水生成装置。」

第3 請求人の主張
請求人は、「特許第3349710号発明の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、証拠方法として以下の甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
そして、請求人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本件特許請求の範囲の記載は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第4項又は同条第6項第2号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものであるので、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきであると主張しており、その概要は以下の(1)?(4)のとおりである。

(1)本件特許発明1の特徴点
飲料水や点滴液等に有効に使用するためには、水を電気分解してpH中性で酸化還元電位(ORP)がマイナス側に大きい電解水を生成することが望ましいのに、従来の電解水生成装置ではpHとORPとを互いに独立して制御できず、ORPはマイナス側に大きいが、pHも大きい電解水しか製造できなかったが、従来の水の電気分解装置を改良した本件特許発明1の「電解槽及び電解水生成装置」であれば、上記の望ましい電解水を得ることができる(本件特許明細書5欄2-23行)ところ、
本件特許発明1の「電解槽」の特徴点は、電気分解の一方の電極に関して、「前記電解室内と前記電解室外を区画する一つ以上の隔膜」及び「前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている」ことを発明特定事項(以下、「構成X」という。)とすることにある。

(2)構成Xが発明特定事項とされた経緯
i)審査段階の拒絶理由(甲第5号証)では、水の電気分解に関する引用文献1ないし4(甲第1、9、3、4号証)が引用され、新規性進歩性要件違反が通知された。
ii)そこで、審査官との面接がなされ、面接記録(甲第6号証)添付の補正案の独立項である請求項1の構成Xについて、面接記録の「面接の具体的内容」において、拒絶理由の「理由1及び2」(新規性進歩性要件違反)は、「本件発明は外側の電極が水に浸漬していないものであることを明らかにすることにより、解消」すると記載されると共に、「理由3(1)」(記載要件違反)は、「僅かな隙間の意義を、当初明細書に基いて意見書で明らかにすることにより、解消」すると記載され、同「記」に、面接記録に添付の「補正案の趣旨に沿った補正書及び意見書」が提出されれば特許査定する旨が記載され、その後、この面接記録の内容に応じた手続補正書(甲第7号証)及び意見書(甲第8号証)の提出がなされ、それにより拒絶理由が解消したとして特許査定がなされた。

(3)構成Xの技術的意味
そうすると、本件の特許請求の範囲に記載された発明である本件特許発明1における構成Xの特定は、「外側の電極が被電解原水に浸漬していない」ことを意味し、これは国語的に考えても、「浸漬している」が(請求人の口頭審理陳述要領書3頁の図を参照。以下、同図を「浸漬の形態図」という。)の(A)及び(C)図の形態を意味し、「浸漬していない」は同(B)図の形態を意味し、この形態においては「電解室外の電極板」と「隔膜」との間に「被電解原水」は存在しないと解すべきである。


(4)結言
したがって、水の電気分解に関する技術常識からみて、本件の特許請求の範囲に記載された発明である本件特許発明1((B)図の形態)においては電流は流れないので、水の電気分解が生じないと解され、これは本件特許発明1は水の電気分解を行うものであるとの本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と矛盾し、また、特許請求の範囲に記載される本件特許発明1はそのような技術常識と矛盾する発明といえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本件特許請求の範囲の記載は、明確でないから、特許法第36条第4項又は同条第6項第2号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものであるので、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
本件特許発明1の構成Xと同様の特定事項を有する本件特許発明2又は10についても同様であり、本件特許発明1、2、10を直接又は間接的に引用する本件特許発明3-9、11-16についても同様である。

(証拠方法)
○甲第1号証 特開平7-966号公報(拒絶理由の引用文献1)
○甲第2号証 特開平2-5477号公報
○甲第3号証 特開平7-214063号公報(拒絶理由の引用文献3)
○甲第4号証 特開平8-74082号公報(拒絶理由の引用文献4)
○甲第5号証 平成14年1月29日発送の拒絶理由通知書
○甲第6号証 平成14年3月27日面接記録
○甲第7号証 平成14年4月 1日手続補正書
○甲第8号証 平成14年4月 1日意見書
○第第9号証 特公平2-5477号公報(拒絶理由の引用文献2)

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件特許無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。
(証拠方法)
○乙第1号証 特許第3349710号公報(本件特許公報)

第5 当審の判断
上記のように、請求人は、本件特許発明1の構成Xは、上記浸漬の形態図の(B)図の形態を表すものであり、同図の形態が、甲第6号証(面接記録)の「外側の電極が水に浸漬していない」形態を意味するのだから、電流の流れない(B)図の形態である本件特許発明1においては、「被電解水」の電気分解は生じない旨を主張する。
そこで、以下では、本件特許発明1の「構成X」の「電解室外の電極板」と「被電解原水」との関係について、上記の浸漬の形態図のどの形態に対応ないし類似するかを検討し、対応ないし類似する形態が「浸漬している」状態、もしくは、「浸漬していない」状態のどちらであるかを明らかにして、「構成X」の技術的意味が明確であるかどうかを判断し、その上で、請求人の主張が妥当なものであるかどうかについても判断する。

5-1.本件特許明細書の記載からの検討
まず、本件特許発明1の「電解室外の電極板」が上記浸漬の形態図の何れの形態に対応ないし類似するものであるかについて検討する。
本件特許発明1の請求項の記載をみると、「電解室外の電極板」の「隔膜」側ではない反対側には「被電解原水」が存在しないことは、「電解室」の外に「被電解原水」はないから、構成Xの文言から当然であり、また、そもそも本件特許発明1は「被電解原水」の「電解槽」の発明であり、「被電解原水」を電気分解するものだから、電極に電流が流れることが必要で、そのためには、電極は「被電解原水」と何らかの態様で接触していることが発明の前提条件といえる。
そこで本件特許明細書の記載をみると、そこには、
「本発明の電解槽では、電解室内と電解室外とのそれぞれに隔膜を挟んで電極板対が設けられ、当該隔膜の外部に一方の電極板が接触または僅かな隙間を介して設けられている。そして、電解室に原水を流しながら電極板対に電流を流すことで電気分解が行われる。ここで、隔膜を挟んで設けられた電極板対の間、特に電解室外の電極板と隔膜との間には、隔膜の含水性や電極板と隔膜との間における毛細管現象によって被電解原水が介在するので、両電極板間に電流が流れることになる。」(5欄30-39行)、
「隔膜115は、電解室113に流される水がしみ込みやすく、かつしみ込んだ水が垂れ難い性質のものが好ましい。すなわち、本実施形態の電解槽11では、電解中において隔膜115自体および隔膜115と電極板116の僅かな隙間Sに水膜が形成され、この水膜を介して両電極板116、117に電流が流れる。したがって、この水膜を構成する水が順次入れ替わることが電解効率を高める上で重要となる。また、隔膜115にしみ込んだ水が、隔膜115と電極板116との間から漏れるとその処理が必要となるため、しみ込んだ水が垂れ落ちない程度の含水性を有することが好ましい。」(9欄40-49行)と記載され、
また、他の【第1図】ないし【第4図】、【第6図】、【第10図】、【第11図】及び【第15図】等の開示も上記記載を裏付けるものであり、構成Xにおける「電極板」と「隔膜」の間に、「隔膜の含水性」や「電極板と隔膜との間における毛細管現象」で「しみ込んだ」「被電解原水」が介在することが記載されるのみであり、「被電解原水」が介在しないことの記載はない。
以上のことから、構成Xは、「電解室外の電極板」の「隔膜」側には「被電解原水」が存在し、「電解室外の電極板」の「隔膜」側ではない反対側には「被電解原水」が存在していない以下の(C’)図の形態に当たることは明らかであり、これは、本件の出願時の技術常識からも首肯されるものといえる。


5-2.手続の経緯からの検討
平成14年3月27日に実施された面接の後に、平成14年4月1日付け補正書(甲第7号証)及び意見書(甲第8号証)の提出がなされ、それにより拒絶理由が解消したとして特許査定がなされたことからして、上記補正書及び意見書は、面接記録(甲第6号証)における「本件発明は外側の電極が水に浸漬していないものであることを明らかにすることにより、解消」する、及び、「僅かな隙間の意義を、当初明細書に基いて意見書で明らかにすることにより、解消」するとの記載に応じてなされたものである。
すると、本件特許発明1は、上記補正書により補正することにより、構成Xを特定事項とするものであり、これをもって面接記録の記載に対応したとみるのが妥当である。
したがって、本件特許発明1の構成Xは、「浸漬していない」状態にあたるというべきである。

5-3.まとめ
i)上記「5-1」ないし「5-2」からして、上記の浸漬の形態図との対応ないし類似を考えると、本件特許発明1の構成Xである「電解室内と電解室外を区画する隔膜」及び「電解室外の電極板が隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている」ことは、上記(C’)図の形態にあたり、かつ、「浸漬していない」状態にあたるといえることになり、その技術的意味は明確である。
したがって、「電解室外の電極板」は「被電解原水」と接触するものであるので、電流が流れて「被電解原水」が電気分解されることは明らかである。
すると、本件特許発明1は「被電解原水」を電気分解できることは明らかであって、同発明は不明確なものとはいえない。
また、そうであれば、本件特許発明1は、水の電気分解を行うものであるとの本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載と矛盾せず、同発明は実施できない発明とはいえない。
ii)一方、請求人の主張は、上記「第3 請求人の主張」で示したものであり、この主張の前提は、『本件特許発明1の「電解室内と電解室外を区画する隔膜」及び「電解室外の電極板が隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている」(「構成X」)の「電解槽外の電極板」(上記(C)図の形態の電極板)は、「浸漬している」形態のもの』であり、上記(B)図の形態の電極板が「浸漬していない」形態のものであるというものである。
そうすると、請求人の主張は、本件特許発明1が意図するものから逸脱したものであり、本件特許発明1を無効とする理由としては合理性を欠くものであるといわざるを得ないことからして、妥当なものであるとはいい難い。
iii)したがって、請求人が提示した主張及び証拠方法によっては、「本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本件特許請求の範囲の記載は、明確でないから、特許法第36条第4項第1号又は同条第6項第2号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものであるので、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。」ということはできない。
本件特許発明1の構成Xと同様の特定事項を有する本件特許発明2又は10についても同様であり、本件特許発明1、2、10を直接又は間接的に引用する本件特許発明3-9、11-16についても同様である。

第6 結論
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし16に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-20 
結審通知日 2017-07-24 
審決日 2017-08-04 
出願番号 特願平11-514150
審決分類 P 1 113・ 536- Y (C02F)
P 1 113・ 537- Y (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 中澤 登
瀧口 博史
登録日 2002-09-13 
登録番号 特許第3349710号(P3349710)
発明の名称 電解槽および電解水生成装置  
代理人 市川 泰央  
代理人 飯島 秀明  
代理人 知念 芳文  
代理人 松尾 憲一郎  

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