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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02H
管理番号 1332736
審判番号 不服2016-727  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-15 
確定日 2017-09-20 
事件の表示 特願2014-513421「二次電池の過電流保護装置、保護方法、および電池パック」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/018972、平成26年 8月14日国内公表、特表2014-519800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年4月3日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理、2011年8月4日:韓国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月17日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成26年12月24日)、これに対し、平成27年3月18日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成27年4月30日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年5月12日)、これに対し、平成27年8月4日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年9月10日付で平成27年8月4日付の手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ(発送日:平成27年9月15日)、これに対し、平成28年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成28年11月9日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年11月15日)、これに対し、平成29年2月14日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.平成29年2月14日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由I]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
二次電池の過電流保護装置であって、
電池モジュールと発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレー;
前記主リレーと並列に連結し、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的にON/OFFさせる第1補助リレー;
前記第1補助リレーと直列に連結する第1電流制限抵抗;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結した追加の補助リレー;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結し、且つ、前記追加の補助リレーと直列に連結する追加の電流制限抵抗;および
過電流の検出によって前記電池モジュールを保護する制御機;を含み、前記制御機は
前記電池モジュールが前記発電機によって充電される正常状態において、前記主リレーはON、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーはOFFさせ、
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させることを特徴とする二次電池の過電流保護装置。
【請求項2】
前記制御機は、前記第1補助リレーがONになった後、一定時間内に一定値以上の電流が検出されれば、前記電池モジュールに流入する電流を遮断することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項3】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項4】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項5】
前記電池モジュールは複数の二次電池セルを含み、前記電池モジュールの容量は100A?300Aであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項6】
二次電池の過電流保護方法であって、
電池モジュールが発電機によって充電される正常状態において、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレーをON、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的にON/OFFさせる第1補助リレーおよび追加の補助リレーをOFFさせるステップ;
前記電池モジュールと前記発電機の間の過電流を検出するステップ;
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにするステップ;および
前記電池モジュールと前記発電機の間の連結をON/OFFさせる追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、追加の電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにして、順に電流強度を減少させるステップ;を含むことを特徴とする二次電池の過電流保護方法。
【請求項7】
前記第1補助リレーがONになった後、一定時間内に一定値以上の電流が検出されれば、前記電池モジュールに流入する電流を遮断するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項8】
前記第1補助リレーは前記主リレーと並列に連結し、
前記第1電流制限抵抗は前記第1補助リレーと直列に連結することを特徴とする、請求項6または7に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項9】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項10】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項11】
複数の二次電池セルを含む電池モジュール;および
前記電池モジュールの充電状態をモニタリングし、前記電池モジュールの過電流による損傷を防ぐ電池管理モジュール;を含み、
前記電池管理モジュールは
前記電池モジュールと発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレー;
前記主リレーと並列に連結し、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的に
ON/OFFさせる第1補助リレー;
前記第1補助リレーと直列に連結する第1電流制限抵抗;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結した追加の補助リレー;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結し、且つ、前記追加の補助リレーと直列に連結する追加の電流制限抵抗;および
過電流の検出によって前記電池モジュールを保護する制御機;を含み、前記制御機は
前記電池モジュールが前記発電機によって充電される正常状態において、前記主リレーはON、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーはOFFさせ、
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させることを特徴とする電池パック。
【請求項12】
前記制御機は、前記第1補助リレーがONになった後、一定時間内に一定値以上の電流が検出されれば、前記電池モジュールに流入する電流を遮断することを特徴とする、請求項11に記載の電池パック。
【請求項13】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項11または12に記載の電池パック。
【請求項14】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項15】
前記電池モジュールの容量は100A?300Aであることを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項16】
前記電池管理モジュールは、前記主リレー、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーに流れる電流を測定する電流センサをさらに含むことを特徴とする、請求項11から15のいずれか一項に記載の電池パック。」

本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
二次電池の過電流保護装置であって、
電池モジュールと発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレー;
前記主リレーと並列に連結し、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的にON/OFFさせる第1補助リレー;
前記第1補助リレーと直列に連結する第1電流制限抵抗;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結した追加の補助リレー;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結し、且つ、前記追加の補助リレーと直列に連結する追加の電流制限抵抗;および
過電流の検出によって前記電池モジュールを保護する制御機;を含み、前記制御機は
前記電池モジュールが前記発電機によって充電される正常状態において、前記主リレーはON、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーはOFFさせ、
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、その後前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ、順に電流強度を減少させることを特徴とする二次電池の過電流保護装置。
【請求項2】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項3】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項4】
前記電池モジュールは複数の二次電池セルを含み、前記電池モジュールの容量は100A?300Aであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護装置。
【請求項5】
二次電池の過電流保護方法であって、
電池モジュールが発電機によって充電される正常状態において、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレーをON、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的にON/OFFさせる第1補助リレーおよび追加の補助リレーをOFFさせるステップ;
前記電池モジュールと前記発電機の間の過電流を検出するステップ;
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにするステップ;および
前記電池モジュールと前記発電機の間の連結をON/OFFさせる追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ、追加の電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにして、順に電流強度を減少させるステップ;を含むことを特徴とする二次電池の過電流保護方法。
【請求項6】
前記第1補助リレーは前記主リレーと並列に連結し、
前記第1電流制限抵抗は前記第1補助リレーと直列に連結することを特徴とする、請求項5に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項7】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項5または6に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項8】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の二次電池の過電流保護方法。
【請求項9】
複数の二次電池セルを含む電池モジュール;および
前記電池モジュールの充電状態をモニタリングし、前記電池モジュールの過電流による損傷を防ぐ電池管理モジュール;を含み、
前記電池管理モジュールは
前記電池モジュールと発電機の間の連結を1次的にON/OFFさせる主リレー;
前記主リレーと並列に連結し、前記電池モジュールと前記発電機の間の連結を2次的にON/OFFさせる第1補助リレー;
前記第1補助リレーと直列に連結する第1電流制限抵抗;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結した追加の補助リレー;
前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗と並列に連結し、且つ、前記追加の補助リレーと直列に連結する追加の電流制限抵抗;および
過電流の検出によって前記電池モジュールを保護する制御機;を含み、前記制御機は
前記電池モジュールが前記発電機によって充電される正常状態において、前記主リレーはON、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーはOFFさせ、
前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、その後前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ、順に電流強度を減少させることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
前記第1電流制限抵抗の抵抗値は可変することを特徴とする、請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
前記第1電流制限抵抗は10Ω?100Ωの間の抵抗値を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記電池モジュールの容量は100A?300Aであることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項13】
前記電池管理モジュールは、前記主リレー、前記第1補助リレーおよび前記追加の補助リレーに流れる電流を測定する電流センサをさらに含むことを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の電池パック。」


(2)新規事項
(ア)本件補正後の請求項1には、「その後前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ」と記載されており、追加の補助リレーをONさせた後に第1補助リレーをOFFさせることとなる。

そこで、当該補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く)(以下、翻訳文等という)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

翻訳文等には、
a「追加で、追加の補助リレーが使用されることができる。補助リレー220を第1補助リレー、電流制限抵抗230を第1電流制限抵抗としよう。第2補助リレーと第2電流制限抵抗を前記第1補助リレーおよび第1電流制限抵抗に並列に連結することができる。過電流が検出されれば、順に補助リレーをONさせ、順に電流強度を減少させることができる。」(【0040】)
とあるのみで、過電流が検出されれば第1補助リレー、追加の補助リレーを順にONさせることは記載はあるものの、第1補助リレーのOFFについての記載は無く(なお、翻訳文等では、リレーをOFFする場合は明確に「OFF」と記載されている。)、追加の補助リレーをONさせた後に第1補助リレーをOFFさせることは記載も示唆もない。

したがって、本件補正後の請求項1に記載された「その後前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ」は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。請求項5、9も同様である。


(3)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。また、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正後の請求項1は二次電池の過電流保護装置に係るものであり、請求人も平成29年2月14日付意見書で主張するように、二次電池の過電流保護装置に係る本件補正前の請求項1に対応するものとして検討する。

本件補正前の請求項1は、「前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ」るだけであったものが、本件補正後の請求項1は、「前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ」ている。
そうすると、本件補正前の請求項1記載のどの構成を限定しても、本件補正後の請求項1に記載された第1補助リレーをOFFさせること、及び追加の補助リレーのON動作の後に第1補助リレーをOFFさせることにはならないから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。請求項5、9も同様である。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


[理由II]
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項に記載されたものが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)特許法第36条第4項及び第6項について
本件補正後の請求項1に、「その後前記追加の補助リレーをONさせた後に前記第1補助リレーをOFFさせ、順に電流強度を減少させる」とあるが、当該事項は発明の詳細な説明には何等記載されておらず、又、本件補正後の請求項1では、第1補助リレーと直列に連結する第1電流制限抵抗、追加の補助リレーと直列に連結する追加の電流制限抵抗の各々の抵抗値が特定されていないため各々の抵抗値は任意の値となり、何故順に電流強度を減少させることができるのか何等開示が無く不明である。また、追加の補助リレーをONさせた時は第1補助リレーはONであり、このとき第1電流制限抵抗と追加の電流制限抵抗は並列接続されて合成抵抗値が減少するから、何故順に電流強度を何故減少させることができるのか不明であり、第1補助リレーのOFFのタイミングについては特定が無いから、追加の補助リレーをONさせた後どの程度の期間の後に第1補助リレーをOFFさせるかによっては、電流強度を下げることができず、何故所望の効果を奏することができるのか何等開示が無く不明である。請求項5、9も同様である。

したがって、本件補正後の請求項1-13の記載は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本件補正後の請求項1-13の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-16に係る発明は、上記した平成27年3月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成28年11月9日付で通知した最後の拒絶の理由Iの概要は以下のとおりである。
「I この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項1に、「前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させる」との訳語があり、当該記載に基づけば、第1補助リレー、追加の補助リレーが順にONされることとなるが、何れの補助リレーもOFFするとは記載されていない。そうすると、第1補助リレーがONされると、次は追加の補助リレーがONされて第1補助リレーと追加の補助リレーがON状態となるが、当該状態の場合、第1電流制限抵抗と追加の電流制限抵抗が並列接続されて合成抵抗値が第1電流制限抵抗の抵抗値より低下することとなり、何故電流強度が低下するのか不明(本願が想定している過電流が仮に突入電流であるとすると、過電流状態は数秒程度で終了するが、この様な電流を想定しているのか。)である。請求項6、11も同様である。なお、明細書を参照すると、リレーをOFFする場合は明確に「OFF」と記載されているから、【0040】の補助リレーに関する記載から判断すると、第1補助リレーと追加の補助リレーはOFFされていない。
更に、請求項1の上記記載には、「且つ」と記載されているから、過電流検出時に、第1補助リレーをONさせた後に主リレーをOFFさせると共に追加の補助リレーを第1補助リレーと順にONさせることとなる。請求項1を引用する請求項2には、「前記第1補助リレーがONになった後、一定時間内に一定値以上の電流が検出されれば、前記電池モジュールに流入する電流を遮断する」との訳語があるから、第1補助リレーのON状態が継続しなければ請求項2の上記記載を実行することはできず、したがって請求項1の上記記載は、第1補助リレーと追加の補助リレーがON状態となることを想定しており、何故電流強度が低下するのか不明である。請求項6、7、11、12も同様である。
仮に、請求項1の上記記載が、請求人が主張するように、第1補助リレーと追加の補助リレーが同時にONにならないことを意図するとしても、特許請求の範囲にOFFすることが記載されておらず、しかも第1補助リレーから追加の補助リレーに切り替える際、ON/OFFの順番をどの様にするか明細書に何等記載がなく不明(追加の補助リレーがONになる時を基準に考えると、第1補助リレーのOFFが追加の補助リレーがONになる時の前か同時か後かの3通りの何れかであるが、明細書には何等記載がない。技術的には3通りの何れでも採用可能である。前か後の場合は、追加の補助リレーがONになる時を基準にどの程度の時間前か後かについても明細書には記載がない。)である。請求項6、11も同様である。」


(2)最後の拒絶の理由についての判断
請求項1に、「前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させる」とあり、当該記載に基づけば、第1補助リレー、追加の補助リレーが順にONされることとなるが、何れの補助リレーもOFFするとは記載されていない(明細書を参照すると、リレーをOFFする場合は明確に「OFF」と記載されている。【0040】には、第1補助リレーと追加の補助リレーのOFFは記載されていない。)。そうすると、第1補助リレーがONされると、次は追加の補助リレーがONされて第1補助リレーと追加の補助リレーがON状態となるが、当該状態の場合、第1電流制限抵抗と追加の電流制限抵抗が並列接続されて合成抵抗値が第1電流制限抵抗の抵抗値より低下することとなり、何故電流強度が低下するのか不明である。請求項6、11も同様である。
請求項1に、「前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させる」とあり、「且つ」と記載されているから、過電流検出時に、第1補助リレーをONさせた後に主リレーをOFFさせると共に追加の補助リレーを第1補助リレーと順にONさせることとなる。請求項1を引用する請求項2には、「前記第1補助リレーがONになった後、一定時間内に一定値以上の電流が検出されれば、前記電池モジュールに流入する電流を遮断する」とあるから、第1補助リレーのON状態が継続しなければ請求項2の上記記載の事項を実行することはできず、したがって請求項1の上記記載は、第1補助リレーと追加の補助リレーがON状態となることを想定しており、何故電流強度が低下するのか不明である。請求項6、7、11、12も同様である。
請求項1に「前記過電流が検出されれば、前記第1補助リレーをONさせた後に前記主リレーをOFFさせ、前記第1電流制限抵抗を通じて制限された電流が流れるようにし、且つ、前記追加の補助リレーを前記第1補助リレーと順にONさせ、順に電流強度を減少させる」とあり、当該記載が仮に請求人が主張するように、第1補助リレーと追加の補助リレーが同時にONにならないことを請求人が意図しているとしても、特許請求の範囲にリレーをOFFすることが記載されておらず、しかも第1補助リレーから追加の補助リレーに切り替える際、ON/OFFの順番をどの様にするか明細書に何等記載がなく不明(追加の補助リレーがONになる時を基準に考えると、第1補助リレーのOFFが追加の補助リレーがONになる時の前か同時か後かの3通りの何れかであるが、明細書には何等記載がない。前か後の場合は、追加の補助リレーがONになる時を基準にどの程度の時間前か後かについても明細書には記載がない。)である。請求項6、11も同様である。

したがって請求項1-16の記載は明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(3)むすび
したがって、請求項1-16の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-05-11 
出願番号 特願2014-513421(P2014-513421)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02H)
P 1 8・ 537- WZ (H02H)
P 1 8・ 536- WZ (H02H)
P 1 8・ 561- WZ (H02H)
P 1 8・ 536- WZ (H02H)
P 1 8・ 575- WZ (H02H)
P 1 8・ 572- WZ (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 聡生田中 寛人竹下 翔平小宮 慎司  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 二次電池の過電流保護装置、保護方法、および電池パック  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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