• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  G06F
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G06F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1333184
異議申立番号 異議2016-700180  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-01 
確定日 2017-08-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5773298号発明「レーザーエッチング加工用導電性ペースト、電気回路およびタッチパネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5773298号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第5773298号の請求項1ないし4、6ないし9に係る特許を維持する。 特許第5773298号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5773298号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?9に係る出願は、2013年7月8日を国際出願日とする特許出願である特願2013-532388号(優先権主張2012年7月20日 日本国)の一部を平成26年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月10日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年3月1日に特許異議申立人 加藤加津子(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年同月28日付けで異議申立人より甲第3号証についての手続補正書が提出され、同年4月12日付けで取消理由が通知され、同年6月3日に特許権者従業員 早川聡らとの面接が行われ、前記取消理由の通知の指定期間内である同年6月13日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正請求があり、同年8月3日付けで訂正請求があった旨が通知され、その指定期間内である同年同月31日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年12月21日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、前記取消理由(決定の予告)の通知の指定期間内である平成29年3月3日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正(以下、「本件訂正」という。)請求があり、同年5月15日付けで訂正請求があった旨が通知されたが、その指定期間内に異議申立人から意見書が提出されなかったものである。


第2 本件訂正の適否についての判断
本件訂正の請求の趣旨、及び、訂正の内容は、平成29年3月3日付けの訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。

なお、平成28年6月13日付けの訂正請求書による訂正の請求は、本件訂正の請求がなされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げたものとみなされる。

1. 訂正請求の趣旨
本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正の請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求める。


2.訂正の内容
本件訂正の請求は、一群の請求項である請求項1?9について訂正を請求するものであり、その訂正請求の内容は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂および酸価50?300当量/10^(6)gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるバインダ樹脂(A)」との記載から、
「および酸価50?300当量/10^(6)gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物」との記載を削除し、その結果として、請求項1を引用する請求項2?9からも削除する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であることを特徴とする、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」とあるのを、
「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」に訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項2?9も訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項3に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている導電性積層体。」とあるのを、
「請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。」に訂正し、その結果として、請求項4を引用する請求項5?6、9も訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項4または5に記載の導電性積層体」とあるのを、
「請求項4に記載の導電性積層体」に訂正し、その結果として、請求項6を引用する請求項9も訂正する。

(6) 訂正事項6
明細書の段落【0007】において、「(1)酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂および酸価50?300当量/10^(6)gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であることを特徴とする、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」、「(4)前記(3)に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている導電性積層体。」、「(5)前記基材が透明導電性層を有することを特徴とする(4)に記載の導電性積層体。」とあるのを、
それぞれ、
「(1)酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。」、「(4)前記(3)に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。」、「(5)(削除)」に訂正する。


3. 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求
の範囲の拡張・変更の存否(当審注:「…」は記載の省略を表す。
以下、同じ。)
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1におけるバインダ樹脂(A)についての、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂および酸価50?300当量/10^(6)gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物からなる」との特定から、「および酸価50?300当量/10^(6)gであるポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物」との記載を削除して、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなる」との特定に減縮して、請求項1?9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1における、「レーザーエッチング加工用導電性ペースト」について、訂正前の段落【0003】、【0006】、【0045】の記載に基づいて、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、」との発明特定事項を付加して、請求項1?9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項4における、「請求項3に記載の導電性薄膜と基材とが積層されている」との特定を、訂正前の段落【0045】の記載に基づいて、「請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている」に減縮して、請求項4?6、9記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。

(5) 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項6における、「請求項4または5に記載の導電性積層体」との特定を、「請求項4に記載の導電性積層体」にして、請求項6、9の記載と、訂正事項4により請求項5が削除されることとの整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6) 訂正事項6
訂正事項6は、発明の詳細な説明の記載と、訂正事項1?5により変更された、特許請求の範囲の記載との実質上の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7) 訂正事項1?6について
本件特許の全請求項について特許異議の申立てがされたので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用される請求項はなく、したがって、訂正事項1?6には、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定が適用されない。
また、訂正事項1?6は一群の請求項について適法に請求されたものである。


4. むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?4、6?9に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明4」、「本件訂正発明6」?「本件訂正発明9」という。また、これらの発明を、まとめて、「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4、6?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項2】
更にレーザー光吸収剤(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1?2のいずれかに記載のレーザーエッチング加工用導電性ペーストから形成された導電性薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項3に記載の導電性薄膜、または、請求項4に記載の導電性積層体、を用いてなる電気回路。
【請求項7】
請求項3に記載の導電性薄膜の一部に、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザーおよび半導体レーザーから選ばれるレーザー光を照射して、前記導電性薄膜の一部を除去することによって形成された配線部位を有する電気回路。
【請求項8】
前記導電性薄膜が透明導電性層上に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電気回路。
【請求項9】
請求項6?8のいずれかに記載の電気回路を構成部材として含むタッチパネル。」


第4 特許異議の申立てについて
1.取消理由の概要
(訂正前の)請求項1?9に係る特許に対して、平成28年12月21日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1?9に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、本件特許は取り消すべきものである。


刊行物1:国際公開第2011/046076号(甲第3号証)
刊行物2:特開2012-138017号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平10-65312号公報(甲第9号証)


2.各刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
ア. 「技術分野
[0001] 本発明は、導電性ペーストおよびその利用に関するものであり、さらに詳しくはバインダー樹脂としてポリウレタン樹脂を含有する導電性ペースト、該導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜及びその製造方法、該導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体、並びにその導電性積層体を用いたタッチパネルに関する。
背景技術
[0002] 指や専用のペン等で画面に触れることにより操作を行う透明タッチパネルはATM、カーナビゲーションシステム、ゲーム機、駅の切符自動販売機、複写機、博物館の解説端末、及びコンビニの情報端末等、幅広い用途に用いられている。
[0003] 透明タッチパネルは、透明な二枚の導電性薄膜を重ね合わせてスイッチを形成するように構成されている。一般的にこの種の透明タッチパネルの透明導電性薄膜は、蒸着法やスパッタ法により、透明電極材料となる酸化インジウム・スズ膜(以下ITO膜と略記する場合がある)をポリエステルフィルム、ガラス等の基材に付着させ、そのITO膜をエッチングすることによりパターニングして形成されている。
[0004] タッチパネルには種々の方式があり、抵抗膜方式と静電容量方式が代表的である。
[0005] 抵抗膜方式は、圧力を感知して触った位置を特定するというシンプルな仕組みで、製造が簡単で低コストで生産できるのが特徴であり、細かな位置検出がしやすく、ペンによる文字入力にも対応できる。一方、デメリットとしては、液晶の上に導電膜フィルムを貼る構造のため、画面の透過率が低くなり、鮮明な画面を実現しにくい点が挙げられる。
[0006] 静電容量方式は、指や専用のペンでパネルに触れることで起こる放電現象等を感知して位置を特定する方式で、多点感知できることが特徴である。
[0007] タッチパネルはペンや指先等で入力しようとすると、その固定電極側の透明導電性薄膜と可動電極(フィルム電極)側の透明導電性薄膜との透明導電性薄膜同士が接触又は接近するようになっているが、近年、ゲーム機等に見られるペン入力形態の多様化に伴い、入力時の荷重、特にペン入力による荷重で透明導電性薄膜にクラック、剥離等の破壊が生じることが問題となっている。そのためペン摺動耐久性を向上させることが必須となってきており、透明導電性薄膜の強度を向上させる試みが近年活発に行われている。
[0008] 透明導電性薄膜の強度を上げるための試みとして、例えば、薄膜を構成する酸化物を結晶化することが有効であると考えられている。透明導電性薄膜を結晶化させるためには、非結晶性の透明導電性薄膜をプラスチックフィルム基材上に成膜した後、得られた積層フィルムを透明導電性薄膜の結晶化温度以上に加熱するという手法がある(例えば、特許文献1)。
[0009] その他には特許文献2に示される…結晶性ITO薄膜を得る方法等、各社耐久性向上のため、結晶化率の向上を目指している。
[0010] 一方で前記のように透明導電性薄膜を構成する酸化物の結晶化に伴い、透明導電性薄膜上に形成される導電性塗膜の密着性を確保することが難しくなってきている。接続電極である導電性塗膜形成は一般的に、銀等の導電性粉末を含む導電性ペーストのスクリーン印刷塗布によって実施されるが、透明導電性薄膜を構成する酸化物が結晶性の場合、結晶化により透明導電性薄膜の表面構造の秩序が保たれているため、表面活性も低く、凹凸によるアンカー効果が低下する傾向にある。さらに構造の秩序が保たれているため、導電性ペースト中に存在する溶剤の下地層への浸透効果が非晶性透明導電性薄膜よりも弱まる傾向にある。これらの理由により、乾燥後の密着性を確保するのが困難である。
[0011] 以上のことから、特に結晶性透明導電性薄膜に対しての密着性が良好で、導電性を確保した低温加工可能な導電性ペーストが現在強く求められているが、現状はそのような導電性ペーストの開発は十分ではない。
[0012] 従来のタッチパネル用の導電性ペーストとしては、従来のメンブレンスイッチや感圧センサ等の電極用途として用いられる導電性ペーストをタッチパネル用途に転用して用いる場合が多い。例えば、…特許文献4にはポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂をバインダー樹脂とする導電性ペーストが開示されているが、結晶性透明導電性薄膜に対する密着性は必ずしも十分ではない。言い換えるならば透明導電性薄膜を構成する酸化物との密着性を向上させるための樹脂や添加剤の設計思想が盛り込まれておらず、酸化物の種類によって密着性にバラツキが生じ、特に結晶性透明導電性薄膜に対する密着性については極めて乏しいといわざるを得ない。

先行技術文献
特許文献
[0016] 特許文献1:特開2005-141981号公報
特許文献2:特開2004-323877号公報
特許文献3:特開2003-203523号公報
特許文献4:特開2003-223812号公報
特許文献5:特開2006-059720号公報
特許文献6:特開平1-159906号公報」

イ. 「発明が解決しようとする課題
[0017] 本発明は、透明導電性層等を有する基材に対して、密着性を顕著に向上させ、高信頼性及び高導電性を付与できる導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0018] このような問題を解決するために、鋭意検討した結果、導電性ペースト中に特定の数平均分子量、酸価、及びガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することが、導電性薄膜を形成する導電性ペーストとして有用であるという知見を得た。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。」

ウ. 「[0079] 後述する製造例において製造されたポリエステル樹脂(P)及びポリウレタン樹脂(U)の物性評価(1.数平均分子量、2.ガラス転移温度(Tg)、3.酸価及び4.樹脂組成)の測定方法を以下に示す。
[0080] また、製造例において製造されたポリエステル樹脂(P)及びポリウレタン樹脂(U)を用いて調製した導電性ペーストの10.貯蔵安定性、及び導電性ペーストを用いて形成したテストピースについての物性評価(5.密着性、6.比抵抗、7.鉛筆硬度、8.環境試験及び9.耐ブロッキング性)の測定方法を以下に示す。
[0081] 1.数平均分子量
試料樹脂を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、GPC測定試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行なった。数平均分子量既知の単分散ポリスチレンのGPC測定結果を用いて試料樹脂のポリスチレン換算数平均分子量を求め、それを本願における試料樹脂の数平均分子量とした。ただしカラムは昭和電工(株)製のshodex KF-802、804L、806Lを用いた。
[0082] 2.ガラス転移温度(Tg)
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC-220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
[0083] 3.酸価
試料樹脂0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。酸価の単位はeq/ton、すなわち試料1トン当たりの当量とした。
[0084] 4.樹脂組成
クロロホルム-dに試料樹脂を溶解し、VARIAN製400MHz-NMR装置を用い、^(1)H-NMRにより樹脂組成比を求めた。
[0085] 5.密着性
作製した導電性ペーストを厚み100μmのアニール処理をしたPETフィルム又は結晶性ITO膜にスクリーン印刷法により25×200mmのパターンを印刷し、150℃で30分乾燥、硬化したものをテストピースとした。乾燥膜厚は20?30μmになるように調整した。このテストピースを用いてJIS K-5600-5-6:1991に従って、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を用い、剥離試験により評価した。但し、格子パターンの各方向のカット数は11個、カット間隔は1mmとした。100/100は剥離がなく密着性が良好であることを示し、0/100は全て剥離してしまい、密着性が劣ることを表す。
[0086] 6.比抵抗
5.と同様に作製したテストピースを25×450mm幅に切り取り、シート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。なお、膜厚はゲージスタンドST-022(小野測器社製)を用い、PETフィルムの厚みをゼロ点として硬化塗膜の厚みを5点測定し、その平均値を用いた。シート抵抗はMILLIOHMMETER4338B(HEWLETT PACKARD社製)を用いて25×450mm幅のテストピースを4枚測定し、その平均値を用いた。
[0087] 7.鉛筆硬度
5.密着性試験で作製したテストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS K 5600-5-4:1999に従って測定し、剥離の有無で判断した。
[0088] 8.環境試験:
5.密着性試験でITO膜上に作製したテストピースを、80℃で300時間加熱する耐熱試験及び85℃、85%RH(相対湿度)で300時間加熱する耐湿熱試験を行い、加熱終了後24時間常温で放置した後、抵抗値を測定した。
環境試験の良否は、前記耐熱試験及び耐湿熱試験の実施前後における導電性塗膜の密着性及び鉛筆硬度の評価にて行った。
[0089] 9.耐ブロッキング性:
5.密着性試験のようにITO膜上に作製した塗膜を2枚、塗膜面を接するように重ね合わせ、導電性塗膜部分に500gの荷重を印加して、80℃で72時間放置した。ついで荷重を取り除き常温で1時間放置した後に以下の基準で外観により良否を判定した。
○:塗膜双方への転写がなく、元の塗膜状態を保持している。
×:双方への転写が見られ、ハガレが生じている。
[0090] 10.貯蔵安定性
導電性ペーストをポリ容器に入れ、密栓したものを40℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵後に粘度及び4と同様に作製したテストピースを用い、比抵抗、鉛筆硬度、密着性を測定した。
○:著しい粘度変化はなく、初期の比抵抗、鉛筆硬度、密着性を維持している。
×:かなりの粘度上昇が認められ、比抵抗、鉛筆硬度、密着性の低下が認められる。
[0091] 樹脂の製造例
ポリエステルポリオール(P)の合成

[0092]…ポリエステルポリオール(P-1)?(P-5)、及び(P-7)の組成並びに樹脂物性を表1に示す。
[0093] ポリエステル樹脂(P-6)の合成

[0094] 結果を表1に示す。
[0095]
[表1]

[0096] ポリウレタン樹脂の合成
ポリウレタン樹脂(U-1)の合成
…ポリウレタン樹脂(U-1)を製造する際に用いた各成分及び樹脂物性を表2に示す。
[0097] ポリウレタン樹脂(U-2)?(U-6)の合成
…ポリウレタン樹脂(U-2)?(U-6)を製造する際に用いた各成分及び樹脂物性を表2に示す。…
[0098] 表2に記載される略称は、以下のとおりである。
DMBA:ジメチロールブタン酸
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
DMH:2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
[0099]
[表2]


[0105] 実施例1
固形分濃度35質量%のポリウレタン樹脂溶液(U-1)を2,858部(固形部換算1,000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを6,540部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のECP600JDを76部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを76部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを58部、分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk2155を16部、溶剤としてエチルジグリコールアセテート(ECA)を640部、ブチルカルビトールアセテート(BCA)を210部配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した。表4に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムを基材とし、5.密着性試験において規定した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は4.9×10^(-5)Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度Hで良好であった。結果を表4に示す。
[0106] 一方で、基材として結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業(株)製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。評価結果を表4に示す。
[0107] 実施例2?7
表4に示す成分及び配合により実施例1と同様に銀ペーストを作製し、アニール処理をしたPETフィルムを基材として塗膜を作製した。塗膜物性を表4に示す。
[0108] また、実施例1と同様に結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業(株)製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。評価結果を表4に示す。
[0109] いずれの実施例もオーブン120℃×30分という低温短時間な条件で良好な塗膜物性を得た。またITOへの密着性、環境試験後の密着性、耐ブロッキング性等も良好であった。
[0110] なお、表4に示す、導電粉末、添加剤及び溶剤は以下のものを用いた。
銀粉1:フェロ・ジャパン(株)製のSF70A
銀粉2:福田金属箔粉工業(株)製のAgC-2011
カーボンブラック:ライオン(株)製のケッチェンECP600JD
グラファイト粉:(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBF
硬化剤:旭化成ケミカルズ(株)製のMF-K60X
硬化触媒:共同薬品(株)製のKS1260
レベリング剤:共栄社化学(株)のMKコンク
分散剤1:ビックケミー・ジャパン(株)社製のDieperbyk2155
分散剤2:ビックケミー・ジャパン(株) 社製のDieperbyk180
ECA:ダイセル化学工業(株)製のエチルジグリコールアセテート
BCA:ダイセル化学工業(株)製のブチルグリコールアセテート
[0111]
[表4]



エ. 「請求の範囲
[請求項1] (A)成分:酸価が50?500eq/ton、ガラス転移温度が60?150℃である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂、
(B)成分:金属粉末、及び
(C)成分:有機溶媒
を含有する導電性ペースト。

[請求項10] 請求項1?9のいずれかに記載の導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜。
[請求項11] 請求項10に記載の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。

[請求項13] 請求項11又は12に記載の導電性積層体を用いたタッチパネル。

オ. 「[0112]比較例1
ポリエステル樹脂(P-6)を固形分濃度35質量%(エチルジグリコールアセテート:ブチルグリコールアセテート=75:25(質量比)に調整した溶液を2,858部(固形部換算1,000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを6540部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のケッチェンECP600JDを76部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを76部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを58部、分散剤1としてビックケミー・ジャパン(株)製のDiesperbyk2155を16部、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを640部、ブチルカルビトールアセテートを210部配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した。表5に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムに5.密着性試験において記述した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は9.2×10^(-5)Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度HBで良好であった。結果を表5に示す。
[0113] 一方で、基材として結晶性ITOフィルムKA500(尾池工業社製)を用い、5.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。結果を表5に示す。

[0119]
[表5]




カ. 上記エ.の[請求項1]には、
「酸価が50?500eq/ton、ガラス転移温度が60?150℃である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂、金属粉末、及び、有機溶媒を含有する導電性ペースト」に係る発明が記載されている。

キ. 上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂ついて、上記ウ.の[0079]?[0099]には、U-1、U-2、U-4、U-5として、(ガラス転移温度、酸価、数平均分子量)が、それぞれ、(70℃、380eq/ton、55000)、(97℃、180eq/ton、35000)、(71℃、150eq/ton、25000)、(70℃、110eq/ton、20000)であるポリウレタン樹脂が記載され、さらに、上記ウ.の[0105]?[0111]によれば、上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明についての具体例は、実施例1?2、4?5として、U-1、U-2、U-4またはU-5であるポリウレタン樹脂と銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペーストであるとされている。

ク. 上記キ.の記載からすると、上記カ.に示した導電性ペーストに係る発明は、具体的には、
「ガラス転移温度が70?97℃、酸価が110?380eq/ton、数平均分子量が20000?55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂と、銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペースト」に係る発明であるといえる。

ケ. 上記ク.に示した銀ペーストに係る発明は、上記イ.によれば、透明導電性層等を有する基材に対して、密着性を顕著に向上させ、高信頼性及び高導電性を付与できる導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストを提供することを、発明が解決しようとする課題としており、その課題の解決には、導電性ペースト中に特定の数平均分子量、酸価、及びガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することが有用であるという知見を得、斯かる知見に基づき完成されたものであるとされている。

コ. 上記ケ.に示したことからすると、上記キ.に示した銀ペーストは、透明導電性層等を有する基材に導電性薄膜を形成させるための導電性ペーストであるといえるところ、透明導電性層等を有する基材とは、上記ア.によれば、導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材のことである。

サ. 上記カ.?コ.の検討を踏まえると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ガラス転移温度が70?97℃、酸価が110?380eq/ton、数平均分子量が20000?55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂と、銀粉とカーボンブラックとグラファイトと有機溶媒とを含有する銀ペーストであって、導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材の前記導電性薄膜を形成させるための銀ペースト。」

シ. また、刊行物1には、上記エ.の[請求項10]?[請求項13]を考慮すると、以下の発明も記載されていると認められる。

引用発明2:「引用発明1の銀ペーストを用いてなる導電性薄膜。」
引用発明3:「引用発明2の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。」
引用発明4:「引用発明3の導電性積層体を用いたタッチパネル。」

ス. なお、引用発明1?4をまとめて、引用発明ということがある。


(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
タ. 「【0009】
近年は、タッチパネルの意匠性や操作性を向上させる観点から、タッチパネル自体は大型化させずにアクティブエリアをより大きくすることが求められている。このような要求に応えるために、近年のタッチパネルは、額縁領域の面積をより少なくしてアクティブエリアを拡大することが種々検討されている。
【0010】
しかし、額縁領域の面積を少なくすると、この額縁領域に配置された第1の取出配線又は第2の取出配線をより細線化しなければならず、また各取出配線の設置場所の位置精度をより向上させなければならない。…スクリーン印刷のような印刷法により取出配線を形成する場合には、導電性インクを基材フィルム上に塗布して取出配線を形成するので、取出配線の細線化や設置場所の位置精度の向上が難しいという問題がある。…」

チ. 「【0020】
(タッチパネル1の構成)
図1に示すように、…タッチパネル1は、タッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とから構成されている。タッチパネルセンサ2は、表面に接触した物体の位置を検出するためのもので、第1の取出配線4に接続された接続端子(以下、第1の接続端子5と言う。)及び第2の取出配線6に接続された接続端子(以下、第2の接続端子7と言う。)がタッチパネルセンサ2の側部に形成されている。…なお、説明の便宜上、図1ではタッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とを分離して記載した。また、図1における符号8は、タッチパネルセンサ2の上に設けられる接着層である。この接着層8は、図示しないカバーガラスをタッチパネルセンサ2の上に設置する際に、これらタッチパネルセンサ2とカバーガラスとを接着するためのものである。
【0021】
タッチパネルセンサ2は、図示しないカバーガラスの表面に接触した物体の位置を検出するためのセンサ部材である。図2に示すように、タッチパネルセンサ2は、操作者が視認することができるとともに、表面に指等の物体の接触を検知可能なアクティブエリア11と、このアクティブエリア11の周囲に形成され、通常は操作者が視認することができない額縁領域12とに区画されている。この額縁領域12は、フレキシブル基板3が接合されるとともに第1の取出配線4の一部、第1の接続端子5、第2の取出配線6、及び第2の接続端子7が配置されている第1の額縁領域13と、少なくとも第1の取出配線4の一部が配置されている第2の額縁領域14とを有している。
【0022】
第1の額縁領域13は幅W1を有するように形成され、第2の額縁領域14は幅W2を有するように形成されている。これら幅W1及び幅W2は、幅W1が幅W2に比べて広くなるように形成されている。これは、第1の額縁領域13がフレキシブル基板3をタッチパネルセンサ2に接合するための領域でもあり、該フレキシブル基板3を接合するために必要な幅を確保する必要があるからである。
【0023】
なお、…第1の額縁領域13がアクティブエリア11の先端側に形成され、第2の額縁領域14がアクティブエリア11の左右端側に形成されているが、これら第1の額縁領域13及び第2の額縁領域14は、この位置に限定されるものではない。例えば、図1において、フレキシブル基板3がアクティブエリア11の右端側に接合される場合には、第1の額縁領域13はアクティブエリア11の右端側になり、第2の額縁領域14は、アクティブエリア11の先端側及び後端側になる。…
【0024】
図3に示すように、タッチパネルセンサ2は、第1の透明基板16の下面16aと第2の透明基板17の上面17aとを対向させて、第1の透明基板16を第2の透明基板17の上に接着層18を介して積層して構成されている。第1の透明基板16は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図4に示すように、一方側の面としての上面16bに、第1の透明電極19、第1の取出配線4及び第1の接続端子5が配置形成されている。また、第2の透明基板17は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図5に示すように、第2の透明電極20、第2の取出配線6及び第2の接続端子7が上面17aに配置形成されている。なお、以下においては、第1の透明基板16を構成する光透過性樹脂フィルムを第1の光透過性樹脂フィルム30といい、第2の透明基板17を構成する光透過性樹脂フィルムを第2の光透過性樹脂フィルム35という。

【0029】
第2の取出配線6は、フレキシブル回路を介して、第2の透明電極20で生成された検知信号を外部の装置へ送出するためのものである。第2の取出配線6は、図1、図3及び図5に示すように、先端側の端部はフレキシブル回路と接続するための第2の接続端子7と接続し、後端側の端部は第2の透明電極用端子24と接続するように形成されている。なお、図5においてハッチングを施しているのは、第2の取出配線6、第2の接続端子7及び第2の透明電極用端子24である。
【0030】
第2の取出配線6は、額縁領域12の先端側に形成されている第1の額縁領域13に形成されている。…

【0032】
図6は、図1のA-A´線における断面図、図7は、図5のB-B´線における断面図である。なお、図6は、説明の便宜上、左右両端と中央の一部を省略して記載する。…

【0038】
第2の透明基板17は、図5のB-B´線の断面に示すように、第2の透明導電膜層38が形成されている部分と、図1のA-A´線の断面に示すように、該第2の透明導電膜層38が形成されていない部分がある。例えば、図5に示す部分では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37、第2の透明導電膜層38及び第2の遮光導電膜層39が積層されている。また、図1に示す箇所では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37及び第2の遮光導電膜層39が積層されており、第2の透明導電膜層38が形成されていない。これは、額縁領域12は操作者が視認することができる場所ではなく、金属又は合金からなる第2の遮光導電膜層39を形成することが許容されており、また第2の遮光導電膜層39を形成しやすくすることができるからである。…

【0043】
第2の遮光導電膜層39は、第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7を構成するものであり、これら第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7の形状に対応するパターンを形成するように、第2の誘電体層37及び第2の透明導電膜層38の上に形成されている。」

ツ.「【0044】
第2の遮光導電膜層39は、ペースト状の電極材料が第2の誘電体層37上又は第2の透明導電膜層38上にスクリーン印刷法で塗布されて形成されている。第2の遮光導電膜層39は、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の導電性材料によって形成されている。金属材料に用いられるものとしては、例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金…などが挙げられる。
【0045】
また、樹脂材料に用いられるものとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。…上記のペーストを用いてスクリーン印刷法で外周パターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよい…」

テ. 「【図1】

【図2】

上記チ.の【0020】?【0022】の記載を踏まえると、【図1】?【図2】からは、タッチパネルにおいては、そのセンサ2がアクティブエリア11と額縁領域12とに区画され、その額縁領域には、フレキシブル基板3をタッチパネルセンサ2に接合するために必要な領域を確保しつつ、取出配線が形成されているということが視認される。」

ト. 「【図3】

【図4】


【図5】

上記チ.の【0024】?【0030】の記載を踏まえると、【図3】?【図5】からは、タッチパネルにおいては、そのセンサ2は、第1の透明基板16と第2の透明基板17とが接着層18を介して積層して構成され、第1の透明基板16は額縁領域12に第1の取出配線4等が形成された第1の光透過性樹脂フィルム30からなり、また、第2の透明基板17は額縁領域12に第2の取出配線6等が形成された第2の光透過性樹脂フィルム35からなっていることが視認される。」

ナ. 「【図6】

【図7】

上記チ.の【0032】?【0043】、上記ツ.の【0044】の記載を踏まえると、図1のA-A’線の断面図である【図6】と、図5のB-B’線の断面図である【図7】とからは、第2の取出配線6等を構成する第2の遮光導電膜層39は、第2の透明導電層38を介して、又は、第2の透明導電層38を介さずに、第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12に、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料がスクリーン印刷法で塗布されてパターン形成されたことが視認される。」

ニ. 刊行物2の上記テ.?ナ.によれば、タッチパネルにおいては、そのセンサ2がアクティブエリア11と額縁領域12とに区画され、その額縁領域12には取出配線が形成されており、また、そのセンサ2は、第1の透明基板16と第2の透明基板17とが接着層18を介して積層して構成され、第1の透明基板16は前記額縁領域12に第1の取出配線4等が形成された第1の光透過性樹脂フィルム30からなり、また、第2の透明基板17は前記額縁領域12に第2の取出配線6等が形成された第2の光透過性樹脂フィルム35からなっているところ、前記第2の取出配線6は、第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12の、第2の透明導電層38の上に、又は、第2の透明導電層38の上以外の箇所に、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料がスクリーン印刷法で塗布されてパターン形成された取出配線であるとされる。

ヌ. 上記ニ.に示したことは、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料に注目すると、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料が、タッチパネルの第2の透明基板17を構成する第2の光透過性樹脂フィルム35の額縁領域12の、第2の透明導電層38の上に、又は、第2の透明導電層38の上以外の箇所に、スクリーン印刷法で塗布されて、第2の取出配線6をパターン形成するために用いられると言い換えることができる。

ネ. そして、上記ヌに示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料について、刊行物2の上記タ.には、近年は、タッチパネルの意匠性や操作性を向上させる観点から、タッチパネル自体は大型化させずにアクティブエリアをより大きくすることが求められており、このような要求に応えるために、近年のタッチパネルは額縁領域の面積をより少なくすることが種々検討されているが、前記額縁領域の面積をより少なくするには、この額縁領域に配置された取出配線をより細線化しなければならず、また、各取出配線の設置場所の位置精度をより向上させなければならないところ、スクリーン印刷のような印刷法により取出配線を形成する場合には、取出配線の細線化や設置場所の位置精度の向上が難しいという問題があるということが記載されている。

ノ. また、上記ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料について、刊行物2の上記ツ.の【0045】には、タッチパネルの額縁領域にスクリーン印刷法でパターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよいとの技術事項が記載されている。


(3)刊行物3の記載事項
刊行物3には、以下の事項が記載されている。
ハ. 「【特許請求の範囲】

【請求項2】 基板上に厚膜導体を所定パターンで形成する工程と、
該厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成する工程とを具備した、
ことを特徴とする導体パターン形成方法。
…」

ヒ. 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランド等の導体を基板上に形成する導体パターン形成方法に関するものである。」

フ. 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、スクリーン印刷技術を利用した従来の導体パターン形成方法は、コストが低く済む反面、導体ペーストの粘度制御が困難であるため幅50μm以下の導体を高精度で形成することが難しい。…
【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、所望形状の導体を高精度且つ安定に形成できる導体パターン形成方法を提供することにある。」

ヘ. 「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、…
【0010】請求項2の発明に係る導体パターン形成方法は、基板上に厚膜導体を所定パターンで形成する工程と、該厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成する工程とを具備した、ことをその特徴としている。この導体パターン形成方法によれば、厚膜導体の一部にレーザ光を照射して不要部分を昇華,除去し部品搭載部分を形成することにより、端縁ラインが綺麗で且つ厚みが均一な部品搭載部分を有する導体を形成できる。」

ホ. 「【0020】…基板1に、スクリーン印刷法によって所定形状の導体膜3を形成してこれを乾燥させる。…
【0022】…基板1または…光学系の少なくとも一方を一定速度で移動させながら、…導体膜3の不要部分…にレーザ光Lを照射して同部分を昇華,除去する。
【0023】…除去する部分の幅が照射レーザ光Lのスポット径よりも大きい場合は、レーザ光Lを複数回走査して上記の部分除去を実施する。
【0024】…最初に形成された導体膜3はその不要部分をレーザ光照射により除去され、これにより…所望形状の導体膜3’が基板1上に作成される。」

マ. 「【0028】…レーザ光照射による加工精度をより向上させるには、導体膜2,3のレーザ光吸収性を高めるために、カーボン,有機色素,低融点金属粉等を導体ペーストに予め添加しておくとよい。」


3. 本件発明と引用発明との対比・判断
(1) 本件訂正発明1と引用発明1との対比・判断
(1-1) 本件訂正発明1と引用発明1との対比
本件訂正発明1と、上記2.(1)サ.に示した、引用発明1とを対比すると、引用発明1における「バインダー樹脂」、「銀粉」、「有機溶媒」、「銀ペースト」、「透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材」は、それぞれ、本件訂正発明1における「バインダー樹脂(A)」、「金属粉(B)」、「有機溶剤(C)」、「導電性ペースト」、「全面または一部に透明導電性層を有する基材」に相当し、また、引用発明1における「導電性薄膜」は、上記2.(1)ア.によれば接続電極を形成するための薄膜であることから、本件訂正発明1における「電極回路配線」に相当し、また、引用発明1における「導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体を用いたタッチパネルの基材の前記導電性薄膜を形成させる」ことは、本件訂正発明1における「電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成する」ことに相当し、また、引用発明1における「バインダー樹脂」が、「ガラス転移温度が70?97℃」「数平均分子量が20000?55000である」ことは、本件訂正発明1における「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である」ことと数値範囲が重複する。
そうすると、本件訂正発明1と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
バインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が20000?55000であり、なおかつ、ガラス転移温度が70?97℃であり、
電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、導電性ペースト。

<相違点>
相違点1:バインダ樹脂(A)が、
本件訂正発明1では、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からな」「る熱可塑性樹脂であ」るのに対し、
引用発明1では、酸価が110?380eq/tonである、ポリウレタン樹脂からなっており、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂である」との特定はされていない点。

相違点2:電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、導電性ペーストが、
本件訂正発明1では、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用」であるのに対し、
引用発明1では、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用」であるとの特定はされていない点。


(1-2) 判断
上記相違点について検討する。
ア. まず、上記相違点1につき検討するに、引用発明1における、ガラス転移温度が70?97℃、酸価が110?380eq/ton、数平均分子量が20000?55000である、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂の根拠となっている、刊行物1記載のU-1、U-2、U-4、U-5のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂(以下、「引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂」という。)は、それらの原料の組成が、それぞれ、本件特許の明細書記載の実施例における、U-1、U-2、U-3、U-4のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂(以下、「本件のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂」という。)の原料の組成と同一である(上記2.(1)ウ.の[0091]?[0111]、本件特許の明細書【0077】?【0090】)ところ、本件特許の明細書によれば、本件のポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂は熱可塑性樹脂とされている(本件特許の明細書【0009】?【0010】)から、引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂も熱可塑性樹脂であるといえる。

イ. しかしながら、引用発明1におけるポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂は、刊行物1の記載(上記2.(1)ウ.の[0091]?[0099])によれば、刊行物1記載のP-1またはP-2のポリエステル樹脂とポリイソシアネートとイソシアネートと反応する基を有する化合物とから合成された熱可塑性樹脂であるから、ポリエステル樹脂の誘導体とはいえるものの、ポリエステル樹脂からなるものではない。

ウ. また、 刊行物1には、酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂(以下、「特定のポリエステル樹脂」という。)からなるバインダー樹脂を用いる銀ペーストも記載されている(上記2.(1)オ.)ものの、当該銀ペーストは比較例1のペーストにすぎず、その比較例1のペーストを用いて透明導電性層であるITO上にスクリーン印刷法により形成した導電性薄膜は、密着性等の特性が、引用発明のペーストを用いて透明導電性層であるITO上にスクリーン印刷法により形成した導電性薄膜の密着性等の特性に比べて、劣っていることは明らかである(上記2.(1)ウ.の[0111]の[表4]、上記2.(1)オ.の[0119]の[表5])。

エ. してみると、引用発明1のペーストにおいて、ポリウレタン樹脂からなるバインダー樹脂を特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に変更して、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は、刊行物1の記載(上記2.(1)ア.?オ.)に基づき、容易になし得ることではない。

オ. また、上記2.(2)タ.?ナ.の刊行物2の記載全体を参照すると、タッチパネルの製造に際し、透明導電性層等を有するタッチパネルの基材にスクリーン印刷塗布によって導電性薄膜を形成する際に用いられるペーストは、上記2.(2)ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料以外には見当たらないことからして、引用発明1のペーストが、上記2.(2)ヌ.に示した、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料に包含されることは明らかであるが、上記2.(2)タ.?ナ.をみても、刊行物2には、特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に関する記載は見当たらないし、上記ア.?エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、上記2.(2)タ.?ナ.等の刊行物2の記載全体を参酌しても、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることではない。

カ. また、刊行物3には、上記2.(3)ハ.?マ.に示したように、スクリーン印刷法で導体パターンを形成した後に、レーザー加工を行うことで、幅50μm以下の導体、すなわち、幅50μm以下のラインを高精度で形成することができ、除去する部分の最小幅、すなわち、スペースの最小幅は照射レーザ光のスポット径に対応するという技術事項が記載されているものの、特定のポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂に関する記載は見当たらないし、上記ア.?エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、上記2.(3)ハ.?マ.等の刊行物3の記載全体を参酌しても、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることではない。

キ. さらに、本件特許の出願の優先日前の如何なる周知技術や技術常識を考慮したとしても、上記ア.?エ.の検討のとおり、引用発明1のペーストにおいては本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えさせることに合理性はないといえるから、本件訂正発明1の上記相違点1に係る発明特定事項は容易になし得ることととはいえない。

ク. してみると、上記相違点2につき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(2) 本件訂正発明2と引用発明1との対比・判断
(2-1) 本件訂正発明2と引用発明1との対比
本件訂正発明2と引用発明1とを対比すると、上記(1-1)と同様の検討により、上記相違点1?2以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点3:導電性ペーストが、本件訂正発明2では、レーザー光吸収剤(D)を含有するのに対し、引用発明1では、レーザー光吸収剤(D)を含有するとの特定はされていない点。

(2-2) 判断
上記相違点1については、上記(1-2)ア.?キ.で検討したとおりであるから、上記相違点2?3につき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、引用発明1、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(3) 本件訂正発明3と引用発明2との対比・判断
本件訂正発明3と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明2とを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)?(2-2)と同様の検討により、引用発明2、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4) 本件訂正発明4、6?8と引用発明3との対比・判断
本件訂正発明4、6?8と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明3とを対比検討するに、本件訂正発明4、6?8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)?(2-2)と同様の検討により、引用発明3、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5) 本件訂正発明9と引用発明4との対比・判断
本件訂正発明9と、上記2.(1)シ.に示した、引用発明4とを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(2-1)?(2-2)と同様の検討により、引用発明4、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1?4、6?9は、引用発明、刊行物1?3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。


4. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
(特許法第29条第2項)について
異議申立人は、特許異議申立書の第26頁第4行?第41頁第5行において、上記3.で検討したような、甲第3号証を主引例とする、特許法第29条第2項の申立理由以外に、甲第1号証または甲第2号証を主引例とする特許法第29条第2項の申立理由がある旨も主張している。
そこで、甲第1号証または甲第2号証を主引例とする特許法第29条第2項の申立理由につき、以下に、検討することとする。

(1) 甲各号証の記載事項・視認事項
ア. 甲第1号証(特開2008-13809号公報)の記載事項・視認事項
(ア1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、金属元素を含んでなる微粒子が有機分散媒中に均一に分散されたレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して前記組成物の層を形成させ、
前記組成物の層にレーザー光を像様に照射して、照射された部分の前記組成物を除去し、レーザー光照射後、基板上に残留する前記組成物の層を焼成する、
ことを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーションによる機能膜の製造法。
【請求項2】
前記の金属元素を含んでなる微粒子が、金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記金属元素を含んでなる微粒子の粒径が、0.5?200nmである、請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
前記有機分散媒が、前記レーザー光の波長における吸光度が0.3以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項5】
前記有機分散媒が、有機重合体またはそのプレポリマーを含んでなるものである、請求項1?4のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項6】
前記有機分散媒が、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなる、請求項1?5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
前記レーザー光の照射の前に、前記組成物の層に含まれる溶剤の少なくとも一部を乾燥により除去する、請求項6に記載の製造法。
【請求項8】
前記有機分散媒が、架橋剤をさらに含んでなる、請求項5?7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなることを特徴とする、レーザーアブレーション加工用組成物。
【請求項10】
請求項1?8のいずれか1項に記載の方法で製造された機能膜を具備してなる電子部品。」

(ア2) 「【背景技術】
【0002】
基板上に形成された機能膜をパターニング加工する手段として、レーザーアブレーション法が注目されつつある。このレーザーアブレーション法とは、基板上に連続的に形成された機能膜にレーザー光を像様に照射し、レーザー光が照射された部分の機能膜を昇華、蒸発、または分解させて除去することによりパターンを形成させる方法である。この機能膜を形成する物質として種々のものが選択することが可能であり、例えば金属を含む機能膜を用いれば配線パターンなどを形成でき、…
【0003】
このレーザーアブレーション法は、加工しようとする機能膜が有機物、例えば樹脂からなるものである場合、特に有効である。これはレーザー光照射によるエネルギーが比較的少なくても加工が可能であるためである。このような背景から、有機物からなる機能膜をレーザーアブレーション法により加工する技術が種々検討されている…
【0004】
しかしながら、機能膜を形成する物質がアブレーションにより除去しにくいものである場合、レーザー光照射により発生する昇華物、蒸発物、または分解物は、加工領域の近辺に再付着しやすく、結果としてパターン周辺の汚れ(アブレーション煤)を招くという問題があった。このような問題は、機能膜として金属を含むもの、例えば金属膜、金属酸化物膜、または金属窒化物膜を用いた場合、顕著となる。

【0007】
さらには、機能膜に金属が含まれる場合には、その機能膜を除去するのに必要なレーザー光のエネルギーが高いことが要求されるのが一般的である。すなわち、従来は金属を含む機能膜をパターニングする場合には、金属や金属酸化物等の被膜を基板上に均一に形成させ、その金属膜または金属酸化物膜をレーザー光で直接除去するために、高いエネルギーのレーザー光を用いていた。このために、エネルギーの高いレーザー光は機能膜の下に存在する基板をも除去してしまう危険性も高かった。

【0011】
本発明による機能膜の製造法によれば、金属を含む機能膜をレーザーアブレーション法により製造するのに、従来よりも低いエネルギーのレーザー光による加工を可能となる。さらには、高いエネルギーのレーザー光を用いることに起因する基板の損傷や、アブレーション煤の問題も改善することができる。
【0012】
すなわち、本発明によるレーザーアブレーション加工用法では従来の金属膜や金属酸化膜に代わり、金属元素を含む微粒子と有機分散媒とからなる、いわば機能膜の前躯体膜に対してレーザーアブレーションを施すことにより加工性を改善するものである。レーザーアブレーション加工時に有機分散媒は、金属、金属酸化物あるいは金属窒化物などの無機物だけを含む機能性膜と比較してはるかに分解されやすく、有機分散媒自身が昇華・蒸発する際に併せて微粒子もレーザー光照射領域から除去される。結果として、無機物だけからなる機能膜を直接レーザーアブレーション加工するより、はるかに低い投入エネルギーで、良好な形状に加工することが可能となる。」

(ア3) 「【0015】
まず、基板101上にレーザーアブレーション加工用組成物を塗布して、レーザーアブレーション加工用組成物の均一な層102を形成させる(図1(a))。基板101は目的に応じて任意に選択されるが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、プラスチックなどが挙げられる。ここで、基板101は、後述するレーザー光に対して耐性があるものが好ましい。
【0016】
基板101上に塗布するレーザーアブレーション加工用組成物は、金属元素を含む微粒子103と、有機分散媒104とを含んでなる。ここで、金属元素を含む微粒子は、金属元素を含む物であれば特に限定されないが、金属元素としては、インジウム、スズ、亜鉛、パラジウム、白金、銀、金、銅、珪素、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、およびアルミニウムが挙げられ、微粒子はこれらの金属そのものの微粒子である他、その酸化物または窒化物などでもよい。…
【0017】
ここで、微粒子はレーザーアブレーション加工用組成物中で沈殿することを防ぐために、より小さいものであることが好ましく、一方で分散状態を維持するために十分な有機分散媒の含有量を少なくするためにある程度大きいものが好ましい。このために、微粒子の大きさは、0.5?200nmであることが好ましく、より好ましくは1?100nm、更に好ましくは2?50nmである。…

【0019】
また、有機分散媒は前記した微粒子を均一に分散させることができるものであり、特に限定されない。一般に有機物はレーザーアブレーションに用いられるレーザー光の波長に対する光吸収があるため、任意に選択することができる。…
【0020】

このような有機分散媒は、その形状は特に制限されず、液体状の有機物であっても、また液体または固体の有機物を溶剤に溶解させたものであってもよい。さらには、常温で固体である有機分散媒を高温状態で溶融させ、金属元素を含む微粒子を分散させるものであってもよい。また、有機分散媒が、組成物中で前記した微粒子に配位結合などにより化学的に結合するようなものであってもよい。さらには、有機物が微粒子の表面に吸着または結合などして、微粒子表面を被覆するものであってもよい。
【0021】
このような有機分散媒の例のひとつは、オレフィンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、カルバゾール、クマリン、およびベンゾキノンなどの芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体を含む有機化合物である。これらは、単独で有機分散媒として利用できる。
【0022】
有機分散媒の他の例は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマーを溶融または適切な溶剤に溶解させたものである。必要に応じて用いられる溶剤は特に限定されないが、そのレーザーアブレーション加工用組成物の特性および後述の塗布方法に応じて、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒から選択される。…」

(ア4) 「【0027】
前記したレーザーアブレーション加工用組成物を基板101に塗布する方法としては、スピン塗布、スリット塗布、スプレイ塗布、ロール塗布、ディップ塗布、インクジェット塗布、スクリーン印刷など各種の塗布法が利用可能であり、特に制限されない。…
【0028】
基板上にレーザーアブレーション加工用組成物の層を形成させた後、有機分散媒が溶剤を含む場合には、必要に応じて加熱により溶媒を乾燥する事ができる。…
【0029】
この後レーザーアブレーション加工用組成物の層102に、レーザー光を像様に照射する(図1(b))。用いるレーザーとしては、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー(YAGレーザー)、半導体励起固体レーザー(DPSS)、エキシマレーザーなどが挙げられる。レーザーはポイントビームで照射し所望のパターンを描画してもよいし、投影光学系の中にマスクを設置しパターンを直接描画してもよい。…

【0031】
レーザーアブレーション加工後は、レーザー照射部分が除去された機能性膜の前躯体膜が得られる(図1(c))。この前躯体膜を焼成することによって膜中有機成分の昇華または分解等が起こり、機能性微粒子同士の融合が発生し結果として、パターン化された機能膜を得ることができる(図1(d))。…

【0033】
このようにして形成された機能膜は、金属元素を含むものであるが、用いる微粒子の特性に応じて、種々の用途に用いることができる。例えば、このようにして製造された機能膜を、配線パターンや層間絶縁膜などとして各種の電子部品、例えば半導体素子や表示素子に用いることができる。」

(ア5) 「【図1】

上記(ア3)?(ア4)の記載を踏まえると、図1からは、金属元素を含む微粒子103と有機分散媒104とを含んでなるレーザーアブレーション加工用組成物を、基板101上に塗布して、レーザーアブレーション加工用組成物の層102を形成し、その層102にレーザー光を照射してレーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法が視認される。」


イ. 甲第4号証(特開2011-252140号公報)の記載事項
(イ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ密度が1.0?10.0(g/cm^(3))、D50粒子径が0.3?5μm、BET比表面積0.3?5.0m^(2)/gの導電性粒子と、
数平均分子量(Mn)が10,000?300,000であり、水酸基価2?300(mgKOH/g)のエポキシ樹脂と、
前記エポキシ樹脂中の水酸基とアルコール交換反応が可能であり、前記エポキシ樹脂100重量部に対して0.2?20重量部の金属キレートとを含有する、 貯蔵弾性率(G')が5,000?50,000(Pa)である導電性インキ。

【請求項15】
基材と、
前記基材上に形成された導電パターンと、を具備し、
前記導電パターンが、請求項1?14いずれか1項に記載の導電性インキにより形成されている導電パターン付き積層体。

【請求項17】
前記導電パターンの下層側で、前記導電パターンと電気的に接続された所定のパターンを有する他の導電膜が、前記基材上にさらに形成されている、請求項15又は16に記載の導電パターン付き積層体。
【請求項18】
前記他の導電膜が、錫がドープされた酸化インジウムを主成分とする透明導電膜である、請求項15?17のいずれか1項に記載の導電パターン付き積層体。
【請求項19】
タッチスクリーンパネル用途に用いられる、請求項15?18のいずれか1項に記載の導電パターン付き積層体。
…」

(イ2) 「【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中、「部」、「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を、水酸基価はKOHmg/gを、それぞれ意味する。
【0090】
(バインダー1)
ジャパンエポキシレジン社製、JER1256(重量平均分子量が57,400,数平均分子量が25,000、エポキシ当量が7,500、水酸基価が190)40部をイソホロン60部に溶解し、不揮発分40%のバインダー(1)溶液を得た。

【0115】
実施例1<導電性インキの調製>
40重量部のエポキシ樹脂を含むバインダー(1)溶液:100重量部と、0.81重量部のアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピオネートを含む金属キレートA:0.9重量部、銀粉A:330重量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:40重量部とをディスパーにて混合後、3本ロールにより分散し、導電性インキを調製した。
得られた導電性インキは、固形分が約79重量%であり、エポキシ樹脂と銀粉との合計370重量部中、銀粉は約89重量%、エポキシ樹脂は11重量%である。
そして、ティー・エイ・インスツルメント社製レーオメーター「AR-G2」を使用して、25℃の温度下で、周波数1Hzに固定し、振動応力1.0?10,0000Paの範囲で貯蔵弾性率G'等の動的粘弾性特性を測定したところ、実施例1の導電性インキの貯蔵弾性率G'は7,200、tanδは0.89であった。

【0117】
[テストピースの作成]
厚さ75μmのコロナ処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETという)に実施例1?12、比較例1?9の導電性インキを、15mm×30mmのパターン形状にスクリーン印刷し、150℃オーブンにて30分乾燥させ、膜厚が8?10μmの導電性印刷物を得た。
【0118】
<膜厚の測定>
上記印刷物の膜厚は、仙台ニコン社製MH-15M型測定器を用いて測定した。
【0119】
<表明抵抗値の測定>
上記印刷物の表面抵抗値は、25℃、湿度50%環境下にて三菱化学社製ロレスタAPMCP-T400測定器を用い、測定した。
【0120】
<体積抵抗率の算出>
上記方法で測定された表面抵抗値、および膜厚より、体積抵抗率を算出した。体積抵抗率の目標値は5.0×10-5Ω・cm以下である。なお、5.0×10-5Ω越え、8.0×10-5Ω・cm以下は、一応実用性があるが、8.0×10-5越えでは、通常、実用性がない。
体積抵抗率(Ω・cm)=(表面抵抗率:Ω/□)×(膜厚:cm)
【0121】
<ITO積層フィルムに対する密着性>
ITO積層フィルム(日東電工社製、V270L-TEMP、75μm厚)の一部を塩酸でエッチングしてITO層を除去して基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を露出させたものを用意した。そして、ITO積層部分およびエッチングして基材が露出した部分に、実施例1?9、比較例1?9の各導電性インキを、乾燥後の膜厚が8?10μmになるように15mm×30mmのパターンをスクリーン印刷し、150℃オーブンにて30分乾燥させ、この印刷物の密着性を評価した。評価方法および評価基準は下記の通りである。
【0122】
<テープ密着試験>:JIS K5600に準拠して、テープ密着試験を実施した。
ITO残存部分、ITOエッチング部分それぞれの領域上の導電インキ層に、幅1m間隔に10マスX10マスの計100マス目をカッターで入れ、ニチバン製セロハンテープ(25mm幅)を印刷面に貼り付け、急激に剥離し、残ったマス目の状態にて評価を行った。
○:剥離無し(密着性良好レベル)
△:マスの端がわずかに欠ける(密着性やや不良だが、実用上使用可能レベル)
×:1マス以上の剥離が観察される(密着性不良レベル)
【0123】
<ポリイミドフィルムに対する密着性>
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100H、25μm厚)上に、実施例1?9、比較例1?9の各導電性インキを、乾燥後の膜厚が8?10μmになるように15mm×30mmのパターンをスクリーン印刷した。その後、180℃オーブンにて30分乾燥させ、この印刷物の密着性を評価した。評価方法および評価基準は下記の通りである。
ニチバン製セロハンテープ(25mm幅)を印刷物表面に貼り付け、急激に剥離し、印刷物の密着性を評価した。
○:剥離なく、密着性良好。
△:若干剥離有り、密着性やや不良。
×:全面剥離が有り、密着性不良。
【0124】
[細線印刷性の評価]
高精度スクリーン印刷装置(東海精機株式会社製SERIA)を用いて、実施例1?9、比較例1?9の各導電性インキを、200mm×200mmの領域に、線幅40μm、線間の幅60μm(L/S=40μm/60μm)の微細配線パターンを多数有するスクリーン版にて、厚さ75μmのコロナ処理PETに20枚連続印刷した。その後、150℃で30分乾燥させた。印刷の条件は下記の通りである。
【0125】
(スクリーン印刷条件)
・スクリーン:ステンレス版650メッシュ
・乳剤厚:10μm
・スクリーン枠:650×550mm
・スキージ角度:70°
・スキージアタック角度:50°
・スキージ硬度:80°
・スキージ速度:20mm/秒
・スキージ印圧:10kg
・クリアランス:3.5mm
【0126】
(線幅のばらつき度合いの評価)
スクリーン印刷した配線パターンの微細配線部分を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製VHX-900)を用いて倍率500倍で撮影した。撮影した拡大写真をニレコ社製小型汎用画像解析装置「LUZEX AP」を用いて印刷後の細線幅を読み取った。
具体的には、5枚目、20枚目の印刷物について、それぞれ任意の細線8本を選択し、1本につき460箇所、8本合計で3680箇所の線幅を測定し、最小値、最大値、平均値、標準偏差、細線の太りの度合い「(平均値-40μm)/40μm(%)」を求めた。
平均値、標準偏差、細線の太りの度合いを表1、2に示す。
なお、標準偏差は細線の直線性(細線の凸凹)を示す。
【0127】
また、細線の太りの度合い「(平均値-40μm)/40μm(%)」の評価基準は次の通りである。
25%未満:線幅の太りがほとんど認められず、細線印刷性は良好
25?40%:線幅の太りがやや認められるが、細線印刷性は実用上差し支えの無いレベル
40%を越える:線幅の太りが認められ、細線印刷性は不良
【0128】
さらに、印刷配線パターンの微細配線部分の形状を下記の基準で評価した。結果を表1、2に示す。
○:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつき、にじみ、掠れを生じておらず、微細配線部分の境界線が明瞭で良好であった。
△:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつきが多少見られたが、にじみ、掠れを生じておらず、実用上差し支えの無いレベルであった。
×:微細配線部分は、蛇行による太さのばらつきが見られ、にじみ、掠れがあり、境界線が不明瞭であった。

【0131】
【表1】


【0133】
表1から明らかなように、実施例1?12の導電性インキは、良好な(体積抵抗率、細線印刷性、ITO積層フィルムへの密着性)を示す。」

(イ3)「【産業上の利用可能性】
【0142】
なお、本発明に係る導電性インキは、特にスクリーン印刷用途に適しているが、他の印刷方法に適用してもよい。
…」

イ-1. 甲第4号証の1(特開2011-35075号公報)の記載事項
(イ4) 「【0187】
…フェノキシ樹脂(JER1256、Tg:100℃、重量平均分子量:50,000、ジャパンエポキシレジン(株)製)…」


ウ. 甲第5号証(特開平9-306240号公報)
(ウ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒子径0.1?5μmの1次粒子が3次元状につながって形成された粒子径1?20μmの2次粒子の銀粉を主体とする導電粉(A)、数平均分子量が3、000以上の結合剤(B)、これと反応し得る硬化剤(C)および溶剤(D)を主成分とする硬化後に金属めっきをしない導電性ペーストであって、(A)/((B)+(C))が60/40?95/5(重量比)かつ(B)/(C)が100/0?50/50(重量比)であることを特徴とする導電性ペースト。」

(ウ2) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は導電性ペーストに関するものであり、さらに詳しくは導電性ペーストをフィルムまたは基板上に塗布または印刷、硬化することにより導電性を与え、回路を形成したり、電子部品の端子やリード線の接着を行ったり、電子装置を電磁波障害(EMI)から保護することに利用する導電性ペーストに関わるものであり、特に高い導電性と耐屈曲性、ファインパターン印刷性の要求される回路用に適した導電性ペーストに関し、印刷または塗布、硬化後に金属めっきしない用途の導電性ペーストである。」

(ウ3) 「【0009】本発明に使用する結合剤(B)はその種類に制限はないが、数平均分子量が3、000以上、好ましくは8、000以上であることが必要である。数平均分子量が3、000未満であると良好な耐屈曲性が得られず、また、ペースト粘度が低下して好ましくない。耐コネクター挿抜性、耐コネクターブロッキング性の面からガラス転移点温度は25℃以上、好ましくは45℃以上のものが好ましい。また、結合剤(B)の種類としては、共重合ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。このうちPETフィルムを基材として使用する場合は、耐屈曲性と基材に対する密着性の面から、共重合ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。」

(ウ4) 「【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるものは重量部を示す。…

【0029】合成例.1(ポリエステル樹脂I)
グビリュー精留塔を具備した四口フラスコにジメチルテレフタル酸101部、ジメチルイソフタル酸35部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換を行なった。ついで、セバシン酸61部を仕込み、さらにエステル化反応を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=52/18/30//55/45(モル比)で還元粘度0.64dl/g、数平均分子量22,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=7℃であった。
【0030】合成例.2(ポリエステル樹脂II)
合成例.1と同様に合成した。 得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=50/50//51/49(モル比)で還元粘度0.55dl/g、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃であった。
【0031】銀粉A-1の調整
濃度37%の硝酸銀水溶液275部と濃度18%の水酸化ナトリウム水溶液220部とを40?50℃で攪拌下で反応させ、反応終了後に蒸留水70部を添加した。ついで、これに濃度23%のホルマリン水溶液60部を加え、30?40℃で反応させた。反応終了後のpHは8であった。得られた銀粉を濾過し、水洗、脱水を繰り返した後、メタノールで置換した上で濾過し、80℃で24時間減圧乾燥した。得られた銀粉は図1?3に示す形状を有し、1次粒子の平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真より0.5μmであり、2次粒子の平均粒子径は光散乱法により測定したところ11μm、比表面積1.62m^(2 )/gであった。
【0032】銀粉A-2の調整
市販のフレーク状銀粉(福田金属箔粉工業(株)製)をそのまま用いた。光散乱法による平均粒子径は4.5μm、比表面積0.7m^(2 )/gであった。
【0033】銀粉A-3の調整
市販のフレーク状銀粉(福田金属箔粉工業(株)製)をそのまま用いた。光散乱法による平均粒子径は4.5μm、比表面積0.65m^(2 )/gであった。
【0034】実施例.1
銀粉A-1、85部、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体VAGH(ユニオンカーバイト(株)製)のγ-ブチロラクトン溶液11.3固形部、ブロックイソシアネート化合物C-1(ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレートアダクトのメチルエチルケトオキシムブロック体、固形分80%)3.7固形部、分散剤0.2固形部を配合し、充分プレミックスした後、チルド3本ロール混練り機で、3回通して分散した。得られた銀ペーストは比抵抗1.5×10^(-5 )Ω・cmと低抵抗であり、耐屈曲性はMIT耐屈曲試験1000回後の抵抗増加が+10Ωで非常に良好であった。ファインパターンの印刷性は太り幅25μmで良好であった。また、耐コネクター挿抜性、耐コネクターブロッキング性も良好であった。
【0035】実施例1と同様に実施例2?6の導電性ペーストを作成、評価した。結果を表1に示す。
【0036】実施例1と同様に比較例1?5の導線性ペーストを作成評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【発明の効果】本発明の導電性ペーストによりファインパターンの印刷性が優れ、低抵抗で耐屈曲性を大幅に向上でき、さらにはコネクター装着時の良好な耐コネクター挿抜性、耐ブロッキング性をも合わせ持つ優れた回路材料を作成することが可能となる。」


エ. 甲第6号証(特開2010-123457号公報)
(エ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉表面の少なくとも一部を銀で覆った銀コート銅粉末と、ガラス転移温度(Tg)が35?170℃のバインダー樹脂とを含有することを特徴とする導電性ペースト。」

(エ2) 「【背景技術】
【0002】
電子回路や、プラズマディスプレイなどの電磁波シールド材を作成する際、導電性ペーストを印刷して所定のパターンの導体回路を形成する方法が知られている。導電性ペーストは、銅、ニッケル、銀などの導電性の金属粉末とバインダー樹脂とが溶剤に分散してなるものである。…」

(エ3) 「【0027】
ガラス転移温度(Tg)が35?170℃のバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、適宜のものを使用することができる。ガラス転移温度(Tg)が35?170℃のバインダー樹脂を用いれば、加熱して乾燥する際に樹脂が軟化又は溶融するなどして銀コート銅粉末が導通状態となるのを促進するので、導体パターンの導通性を向上させることができる。特に、導電性ペーストを印刷や塗布した後、プレスや加熱加湿処理などにより導体パターンを形成した場合、ガラス転移温度がこの範囲にある樹脂が軟化又は溶融しやすくなり、導体パターンの導通性をさらに向上させることができる。

【0029】
ガラス転移温度(Tg)が35?170℃のバインダー樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などや、-COC-骨格、-COO-骨格などを含むこれらの樹脂の誘導体などを用いることができる。…」

(エ4) 「【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0050】
(実施例1)
有機溶媒に硝酸銀を溶解し、この溶解液と銅粉とを混合・撹拌して金属銅と銀イオンとの置換反応で銀を銅粒子の表面に析出させ、これをろ過することにより、銀コート銅粉末を得た。この銀コート銅粉末の平均粒径は1.3μmであり、コートされた銀の量は銅100重量部に対して100重量部であった。
【0051】
銀コート銅粉末8gと、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート:ブチル基/水酸基=52.0/1.8、EASTMAN製CAB-551-0.2、ガラス転移温度101℃)0.5gとを、メチルイソブチルケトン(MIBK)1.8mLに分散し、導電性ペーストを調製した。
【0052】
導電性ペーストを基材(PETフィルム)の表面に平面視矩形状(5mm×30mm×0.1mm)にスクリーン印刷した後、120℃、30分の条件で加熱して乾燥させ、導体パターンを形成した。

【0055】
(実施例4)
バインダー樹脂として非結晶性ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン200、ガラス転移温度67℃)を用いた。それ以外は、実施例1と同様の材料及び方法にて導電性ペーストを調製し、スクリーン印刷及び乾燥後、プレス処理することにより実施例1と同じ形状の導体パターンを形成した。」

エ-1. 甲第6号証の1(非晶性ポリエステル樹脂(有機溶剤可溶型)バイロン、[online]、2005年、[平成28年1月29日検索]、インターネット)
(エ5) バイロン200は、分子量(Mn)が17×10^(3)であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満であることが視認される。


オ. 甲第7号証(特開平8-157698号公報)
(オ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】導電性フィラーと結着樹脂とを含む導電性組成物において、上記結着樹脂が、当該導電性組成物からなる導電層の使用温度より高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を、70?100重量%の割合で含有する熱可塑性樹脂からなることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】上記熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、25?140℃の範囲内である請求項1記載の導電性組成物。
…」

(オ2) 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、導電性を有する接着剤、塗料等として使用しうる導電性組成物と、当該導電性組成物からなる導電層をシールド層として有する、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、フラットケーブル等の配線部材に関するものである。」

(オ3) 「【0021】なお、上記熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、室温での導電層の使用を考慮した場合、前記のように25?140℃の範囲内であるのが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が25℃未満では、前記のように導電層の導電性が低下したり不安定化したりするおそれがある。逆に熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が140℃を超えると、導電性接着剤においては接着強度が低下するおそれがあり、また導電性塗料においては下地への密着性が低下するおそれがある。
【0022】熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量等についてはとくに限定されないが、溶媒溶解性や成膜性、あるいは導電層の膜強度等を考慮すると、5000?25000程度が好ましい。…」

(オ4) 「【0035】
【実施例】以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は、本発明の一例を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1?7、比較例1?5〈導電性組成物〉
導電性フィラーである銅粉〔樹枝状、福田金属(株)製の商品名FCC-115A〕100重量部と、結着樹脂である、表1?3に示す配合量(重量部)の熱可塑性ポリエステル樹脂A?Eとを、160重量部のジオキサンとともに混合して、導電性組成物を作製した。なお、各実施例、比較例で使用した熱可塑性ポリエステル樹脂A?Eはそれぞれ下記の製品であって、いずれも前述した共重合ポリエステル類に属している。
【0036】熱可塑性ポリエステル樹脂
A:エリーテルUE-3600〔ユニチカ(株)製〕
B:ケミットK-1089〔東レ(株)製〕
C:ケミットK-1294〔東レ(株)製〕
D:エリーテルUE-3220〔ユニチカ(株)製〕
E:ケミットR-99〔東レ(株)製〕
上記各実施例、比較例の導電性組成物について、以下の各試験を行って、その特性を評価した。
…」

オ-1 甲第7号証の1(高Tg耐熱グレード(ペレット状)|性能|エリテール、[online]、1997年、[平成28年2月1日検索]、インターネット)
(オ5) エリーテルUE3600は、分子量が20,000であり、ガラス転移点が75であり、酸価が1mgKOH/gであることが視認される。

オ-2 甲第7号証の2(特開2004-314152号公報)
(オ6) 「【0042】
…エリーテルUE-3600(ユニチカ社製、ポリエステル樹脂、数平均分子量20,000、ガラス転移点75℃)…」


カ. 甲第8号証(特開2009年-176728号公報)
(カ1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 導電性粉末と、
b) フェノキシ樹脂と、
c) ウレタン樹脂と、
d) 有機溶剤と
を含み、成分a)、b)およびc)は、成分d)中に溶解または分散されていることを特徴とするメンブレン・タッチ・スイッチ用の厚膜ペースト。
…」

(カ2) 「【0019】
B.フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂は、導電性ペーストの有機バインダーとして含まれる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの重合によって得られるポリマーであり、通常、30,000より大きい重量平均分子量を有する。本発明に適用されるフェノキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は、50,000より大きい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が50,000未満の場合、印刷の観点において、得られるペーストの粘度が低くなる傾向がある。重量平均分子量の上限は制限されないが、実用上、上限は100,000である。
【0020】
本発明に適用されるフェノキシ樹脂の例は、Inchemから提供されるPKHH(商標)、PKHC(商標)およびPKFE(商標)である。」

(カ3) 「【実施例】

【0039】
(実施例1)
Inchemから供給されるPKFE(商標)フェノキシ樹脂20gを、Invistaから供給されるDBE(DiBasic Ester)-9(商標)溶剤80g中に溶解させ、樹脂溶液(1)を得た。Bayerから供給されるDesmocol(商標)350ポリウレタン樹脂20gを、DBE-9およびシクロヘキサノンの混合物80g中に溶解させ、樹脂溶液(2)を得た。
【0040】
1.7μmの平均粒度を有するフレーク状銀粉末40g、0.3g/mlのタップ密度を有する綿状銀粉末10g、13.9gの樹脂溶液(1)、13.9gの樹脂溶液(2)、および22.2gのDBE-9溶剤を、ロールミル処理によって十分に混合して、15Pa-sの粘度を有する導電性ペーストを得た。
【0041】
得られた導電性ペーストを用いて、PETフィルム上に回路配線を描画した。その上にペーストを有するPETフィルムを、60分間にわたって140℃で硬化させた。硬化後のペーストの抵抗率は、2.8×10^(-5)Ω・cmであり、10回の折り曲げ後の抵抗率の変化は+64%であった。このペーストの塩素含有量の計算値は、28ppmであった。」

カ-1. 甲第8号証の1(特表2013-543524号公報)
(カ4) 「【0066】
フェノキシ系樹脂はInChemRez(登録商標)社のPKFE(Mw=60,000、Mn=16,000、Tg=95℃)」

なお、甲第2号証、甲第3号証、甲第9号証についての記載事項・視認事項は、それぞれ、上記2.(2)、上記2.(1)、上記2.(3)に示したとおりである。


(2) 甲第1号証記載の発明
2ア. 上記(1)ア.(ア1)の請求項9には、「基板上にレーザーアブレーション法によりパターン化された機能膜を製造するのに用いるレーザーアブレーション加工用組成物であって、金属元素を含んでなる微粒子と、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなる、レーザーアブレーション加工用組成物。」が記載されている。

2イ. 上記2ア.に示した「金属元素を含んでなる微粒子」に関し、上記(1)ア.(ア3)には、「…【0016】…金属元素を含む微粒子は、金属元素を含む物であれば特に限定されない…微粒子はこれらの金属そのものの微粒子である他、その酸化物または窒化物などでもよい。…」との記載があり、上記(1)ア.(ア1)の請求項2には、「金属元素を含んでなる微粒子が、金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である」との記載がある。また、上記2ア.に示した「微粒子を均一に分散することができる有機分散媒」に関し、上記(1)ア.(ア3)には、「…【0019】…有機分散媒は前記した微粒子を均一に分散させることができるものであり、特に限定されない。一般に有機物はレーザーアブレーションに用いられるレーザー光の波長に対する光吸収があるため、任意に選択することができる。…【0021】 このような有機分散媒の例のひとつは、オレフィンなどの脂肪族炭化水素…芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体を含む有機化合物である。…【0022】 有機分散媒の他の例は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマーを溶融または適切な溶剤に溶解させたものである。…」との記載があり、上記(1)ア.(ア1)の請求項6には、「有機分散媒が、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなる」との記載がある。

2ウ. そして、上記2ア.に示したレーザーアブレーション加工用組成物は、上記(1)ア.(ア2)によれば、金属、金属酸化物あるいは金属窒化物などの金属を含む機能膜をレーザーアブレーション加工によって製造する際に生ずる問題を改善するために開発された、上記(1)ア.(ア5)に示されるような、レーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法において、用いられる組成物であるといえる。

2エ. 上記2ア.?2ウ.の検討からして、甲第1号証には、レーザーアブレーション加工用組成物に注目すると、「金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である金属を含む微粒子と、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなり、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒とを含んでなる、基板上の機能膜のレーザーアブレーション加工用組成物。」(以下、「甲1発明a」という。)が記載されていると認められる。

2オ. また、上記(1)ア.(ア1)の請求項10には、「請求項1?8のいずれか1項に記載の方法で製造された機能膜を具備してなる電子部品。」の発明が記載されていることからして、甲第1号証には、以下の発明も記載されていると認められる。
甲1発明b:「甲1発明aのレーザーアブレーション加工用組成物を用いてなる機能膜。」
甲1発明c:「甲1発明bの機能膜を基板上に積層した積層体。」
甲1発明d:「甲1発明cの積層体を用いた電子部品。」

2カ. なお、甲1発明a?dをまとめて、甲1発明ということがある。


(3) 甲第2号証記載の発明
3ア. 甲第2号証の記載事項・視認事項は、上記2.(2)タ.?ノ.に示したとおりであり、タッチパネルの第2の透明基板17の額縁領域12の第2の透明導電層38の上にスクリーン印刷法で塗布されて、第2の取出配線6をパターン形成するために用いられる材料として、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の電極材料が記載されている。

3イ. そして、上記3ア.に示したペースト状の電極材料における金属材料について、「例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金などが挙げられる。」(【0044】)との記載があり、また、上記3ア.に示したペースト状の電極材料における樹脂材料について、「例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。」(【0045】)との記載がある。

3ウ. また、上記3ア.に示したペースト状の電極材料について、「タッチパネルの額縁領域にスクリーン印刷法でパターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよい」(【0045】)との記載もある。

3エ. 上記3ア.?3ウ.の検討からして、甲第2号証には、タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料に注目すると、「金属材料と樹脂材料からなる、タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料。」(以下、「甲2発明a」という。)が記載されていると認められる。

3オ. また、甲第2号証には、以下の発明も記載されていると認められる。
甲2発明b:「甲2発明aのペースト状の電極材料を用いてなる取出配線。」
甲2発明c:「甲2発明bの取出配線がタッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上に形成された積層体。」
甲2発明d:「甲2発明cの積層体を用いたタッチパネル。」

3カ. なお、甲2発明a?dをまとめて、甲2発明ということがある。


(4) 本件訂正発明と甲1発明との対比・判断
(4-1) 本件訂正発明1と甲1発明aとの対比・判断
(4-1-1) 本件訂正発明1と甲1発明aとの対比
本件訂正発明1と、上記(2)2エ.に示した、甲1発明aとを対比すると、甲1発明aにおける「有機物を溶解し得る溶剤」は、本件訂正発明1における「有機溶剤(C)」に相当し、甲1発明aにおける「金属粒子、金属酸化物粒子、および金属窒化物粒子からなる群から選択される少なくとも一種である金属を含む微粒子」は、本件訂正発明1における「金属粉(B)」とは、金属粉の点で共通する。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明aとの一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有する点。

<相違点>
相違点A:本件訂正発明1は、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)」を含有し、「前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、
甲1発明aは、有機物とそれを溶解し得る溶剤とを含んでなり、前記微粒子を均一に分散することができる有機分散媒を含んでいるものの、前記有機物について前記発明特定事項を備えていない点。

相違点B:本件訂正発明1は、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト」に係る発明であるのに対し、
甲1発明aは、基板上の機能膜のレーザーアブレーション加工用組成物に係る発明であるが、「レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト」に係る発明であるのか否かが明らかではない点。


(4-1-2) 判断
4ア. そこで、上記相違点Aにつき検討するに、甲第1号証には、甲1発明aにおいて、溶剤とともに、有機分散媒に含まれる有機物について、一例として、「アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリオレフィン、芳香族ビニル重合体、ポリエステル、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの有機重合体またはそのプレポリマー」との記載がある(上記(2)2イ.)ため、前記有機物が樹脂の場合も包含されているとはいえるものの、そもそも、前記有機分散媒は、甲1発明aにおいては、金属を含む微粒子を均一に分散させることができるものである(上記(2)2エ.)ところ、上記(2)2ウ.に示したように、甲1発明aの組成物は、レーザーアブレーション加工を行って機能性膜の前駆体膜を得、この前駆体膜を焼成することによって、有機成分を除去し、機能性微粒子同士の融合を発生させて、パターン化された機能膜を得るという機能膜の製造法において、用いられる組成物であるから、前記有機物が樹脂の場合であっても、前記樹脂も焼成によって除去される有機成分にすぎず、前記樹脂を、前記機能膜において金属を含む微粒子同士を結合させる、バインダーとして作用させるとの技術的思想は甲第1号証には見当たらない。換言すると、甲第1号証には、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていない。

4イ. そして、甲第4号証には、数平均分子量が25,000であり、Tg:100℃である、エポキシ樹脂を、実施例1、3?6、10?11の導電性インキにおけるバインダーとして用いることが記載されており(上記(1)イ.(イ1)?(イ3)、上記(1)イ.(イ4))、甲第5号証には、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃である、共重合ポリエステルを、実施例6及び比較例4の導電性ペーストにおける結合剤として用いることが記載されており(上記(1)ウ.(ウ1)?(ウ4))、甲第6号証には、分子量(Mn)が17×10^(3)であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満である非結晶性ポリエステル樹脂を、実施例4の導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが記載されており(上記(1)エ.(エ1)?(エ5))、甲第7号証には、数平均分子量20,000であり、ガラス転移点75℃であり、酸価が1mgKOH/gである熱可塑性ポリエステル樹脂を、実施例1、4?7及び比較例3?5の導電性組成物における結着樹脂として用いることが記載されており(上記(1)オ.(オ1)?(オ4)、上記(1)オ-1.(オ5)、上記(1)オ-2.(オ6))、甲第8号証には、Mn=16,000、Tg=95℃であるフェノキシ樹脂を実施例1?2の導電性ペーストの有機バインダーとして用いることが記載されている(上記(1)オ.(カ1)?(カ3)、上記(1)カ-1.(カ4))。
これらのことから、数平均分子量が16,000?25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、あるいは、数平均分子量が17,000?21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?75℃であり、酸価が1mgKOH/g?2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、上記4ア.で検討したとおり、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていないことを考慮すると、それらの周知の技術事項を甲1発明aに適用しようとする動機付けは合理的には生じ得ない。

4ウ. 上記4ア.?4イ.の検討を踏まえると、上記4イ.に示した周知の技術事項があったと仮定しても、甲1発明aにおいては、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項を備えさせることはできないから、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項は容易になし得ることではない。

4エ. また、甲第1号証には、甲1発明aにバインダー樹脂を含有させることは記載も示唆もされていないことを考慮すると、それぞれ、上記2.(2)、上記2.(1)、上記2.(3)に示されている、甲第2号証、甲第3号証、甲第9号証についての記載事項・視認事項を考慮しても、甲1発明aにおいては、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項を備えさせることはできないから、本件訂正発明1の上記相違点Aに係る発明特定事項は容易になし得ることではない。

4オ. してみると、上記相違点Bにつき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明a、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。


(4-2) 本件訂正発明2と甲1発明aとの対比・判断
(4-2-1) 本件訂正発明2と甲1発明aとの対比
本件訂正発明2と甲1発明aとを対比すると、上記(4-1-1)と同様の検討により、上記相違点A?B以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点C:本件訂正発明2は、「更にレーザー光吸収剤(D)を含有する」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲1発明aは、前記発明特定事項も備えていない点。

(4-2-2) 判断
上記相違点Aについては、上記(4-1-2)4ア.?4エ.で検討したとおりであるから、上記相違点B?Cにつき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、甲1発明a、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4-3) 本件訂正発明3と甲1発明bとの対比・判断
本件訂正発明3と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明bとを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)?(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明b、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4-4) 本件訂正発明4、6?8と甲1発明cとの対比・判断
本件訂正発明4、6?8と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明cとを対比検討するに、本件訂正発明4、6?8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)?(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明c、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4-5) 本件訂正発明9と甲1発明dとの対比・判断
本件訂正発明9と、上記(2)2オ.に示した、甲1発明dとを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(4-2-1)?(4-2-2)と同様の検討により、甲1発明d、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(4-6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1?4、6?9は、甲1発明、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。


(5) 本件訂正発明と甲2発明との対比・判断
(5-1) 本件訂正発明1と甲2発明aとの対比・判断
(5-1-1) 本件訂正発明1と甲2発明aとの対比
本件訂正発明1と、上記(3)3エ.に示した、甲2発明aとを対比すると、甲2発明aにおける「金属材料」、「樹脂材料」、「レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行う」こと、「取出配線」、「タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上」、「レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる、ペースト状の電極材料」は、技術常識に照らし、それぞれ、本件訂正発明1における、「金属粉(B)」、「バインダ樹脂(A)」、「レーザーエッチング加工」、「電極回路配線」、「全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上」、「レーザーエッチング加工用導電ペースト」に相当し、また、甲2発明aのペースト状の電極材料は、ペースト状であることからして、本件訂正発明1における、「有機溶剤(C)を含有し」ていることは自明の事項であるし、そして、甲2発明aにおける「タッチパネルの透明基板の額縁領域の透明導電層の上にスクリーン印刷法で塗布されて、取出配線をパターン形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行うために用いられる」ことは、本件訂正発明1における、「レーザーエッチング加工により、電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる」ことに相当する。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明aとの一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
バインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、
レーザーエッチング加工により、電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。

<相違点>
相違点A’:バインダ樹脂(A)について、本件訂正発明1では、「酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からな」り、「数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であ」るとの発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aでは、前記のような発明特定事項を備えていない点。

相違点B’:電極回路配線について、本件訂正発明1では、「平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μ以下である」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aでは、前記のような発明特定事項を備えていない点。

(5-1-2) 判断
5ア. そこで、上記相違点A’につき検討するに、甲第2号証には、バインダ樹脂については、「例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。」との記載があり(上記2.(2)ツ.)、その記載から種々の樹脂をバインダ樹脂に用いることができることは把握できるものの、バインダ樹脂として、数平均分子量やガラス転移温度等が特定された樹脂を用いる必要があることまでの動機付けを把握することはできない。

5イ. そして、甲第4号証には、数平均分子量が25,000であり、Tg:100℃である、エポキシ樹脂を、実施例1、3?6、10?11の導電性インキにおけるバインダーとして用いることが記載されており(上記(1)イ.(イ1)?(イ3)、上記(1)イ.(イ4))、甲第5号証には、数平均分子量21,000、酸価1.5mgKOH/g、Tg=67℃である、共重合ポリエステルを、実施例6及び比較例4の導電性ペーストにおける結合剤として用いることが記載されており(上記(1)ウ.(ウ1)?(ウ4))、甲第6号証には、分子量(Mn)が17×10^(3)であり、Tgが67℃であり、酸価が2KOHmg/g未満である非結晶性ポリエステル樹脂を、実施例4の導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが記載されており(上記(1)エ.(エ1)?(エ5))、甲第7号証には、数平均分子量20,000であり、ガラス転移点75℃であり、酸価が1mgKOH/gである熱可塑性ポリエステル樹脂を、実施例1、4?7及び比較例3?5の導電性組成物における結着樹脂として用いることが記載されており(上記(1)オ.(オ1)?(オ4)、上記(1)オ-1.(オ5)、上記(1)オ-2.(オ6))、甲第8号証には、Mn=16,000、Tg=95℃であるフェノキシ樹脂を実施例1?2の導電性ペーストの有機バインダーとして用いることが記載されている(上記(1)オ.(カ1)?(カ3)、上記(1)カ-1.(カ4))。
これらのことから、数平均分子量が16,000?25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、あるいは、数平均分子量が17,000?21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?75℃であり、酸価が1mgKOH/g?2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることが周知の技術事項であると仮定しても、上記5ア.で検討したとおり、甲2発明aにおいては、バインダ樹脂として、数平均分子量やガラス転移温度等が特定された樹脂を用いる必要があることまでの動機付けを把握することはできないことを考慮すると、それらの周知の技術事項を甲2発明aに適用しようとすることに合理性を見出すことはできない。

5ウ. また、仮に、上記5イ.に示した技術事項のうちの、数平均分子量が16,000?25,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?100℃である樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いるとの技術事項を、甲2発明aに適用できたとしても、その技術事項の適用によっては、甲2発明aにおけるバインダー樹脂は、酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなり、熱可塑性樹脂であるとの特定事項までを備えたものとはならないから、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を容易になし得ることとはいえないし、また、仮に、上記5イ.に示した技術事項のうちの、数平均分子量が17,000?21,000であり、Tg、すなわちガラス転移温度が67?75℃であり、酸価が1mgKOH/g?2KOHmg/g未満である熱可塑性ポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いるとの技術事項を、甲2発明aに適用できたとしても、酸価が1mgKOH/g?2KOHmg/g未満であるとは、56KOHg=1当量であることから、酸価が18当量/10^(6)g?36当量/10^(6)g未満であることを意味するため、その技術事項の適用によっては、甲2発明aにおけるバインダー樹脂は、酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるとの特定事項までを備えることにはならず、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を容易になし得ることとはいえない。

5エ. また、酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂を、導電性ペーストにおけるバインダー樹脂として用いることについては、甲第3号証に比較例1としての記載はある(上記2.(1)オ.)ものの、上記3.(1-2)ウ.?エ.と同様の検討により、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項を備えることは容易になし得ることとはいえない。

5オ. また、他の甲号証の記載(上記(1)ア.、上記2.(3))を参照しても、本件訂正発明1の上記相違点A’に係る発明特定事項に関する記載は見当たらない。

5カ. してみると、上記相違点B’につき検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明a、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(5-2) 本件訂正発明2と甲2発明aとの対比・判断
(5-2-1) 本件訂正発明2と甲2発明aとの対比
本件訂正発明2と甲2発明aとを対比すると、上記(5-1-1)と同様の検討により、上記相違点A’?B’以外に、以下の点でも相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点C’:本件訂正発明2は、「更にレーザー光吸収剤(D)を含有する」との発明特定事項を備えているのに対し、
甲2発明aは、前記発明特定事項も備えていない点。

(5-2-2) 判断
上記相違点A’については、上記(5-1-2)5ア.?5オ.で検討したとおりであるから、上記相違点B’?C’につき検討するまでもなく、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様に、甲2発明a、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5-3) 本件訂正発明3と甲2発明bとの対比・判断
本件訂正発明3と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明bとを対比検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)?(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明b、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5-4) 本件訂正発明4、6?8と甲2発明cとの対比・判断
本件訂正発明4、6?8と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明cとを対比検討するに、本件訂正発明4、6?8は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)?(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明c、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5-5) 本件訂正発明9と甲2発明dとの対比・判断
本件訂正発明9と、上記(3)3オ.に示した、甲2発明dとを対比検討するに、本件訂正発明9は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(5-2-1)?(5-2-2)と同様の検討により、甲2発明d、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(5-6) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1?4、6?9は、甲2発明、甲第1号証?甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。


第5 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項5に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項5に対する特許異議の申立については対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定をする。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
レーザーエッチング加工用導電性ペースト、電気回路およびタッチパネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面方向の配置密度が高い導電性パターンを製造することができる導電性パターンの製造方法およびこの製造方法に好適に用いることのできる導電性ペーストに関する。本発明の導電性パターンは、典型的には透明タッチパネルの電極回路配線に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や、ノートパソコン、電子書籍などに代表される透明タッチパネルを搭載する電子機器の高性能化と小型化が急激に進んでいる。これらの電子機器の高性能化と小型化には、搭載される電子部品の小型化、高性能化、集積度の向上に加え、これら電子部品相互を接合する電極回路配線の高密度化が求められている。透明タッチパネルの方式として電極回路配線の数が少ない抵抗膜方式に加え、電極回路配線の数が飛躍的に多い静電容量方式の普及が近年急速に進んでおり、このような観点から電極回路配線の高密度化が強く求められている。また、ディスプレイ画面をより大きくするために、また商品デザイン上の要求により、電極回路配線が配置される額縁部をより狭くしたいとの要求があり、このような観点からも電極回路配線の高密度化が求められている。以上のような要求を満たすために、従来以上の電極回路配線の高密度配置を行うことができる技術が求められている。
【0003】
抵抗膜方式の透明タッチパネルの額縁部分の電極回路配線の配置密度は、平面方向のラインとスペースの幅が各々200μm(以下、L/S=200/200μmというように略記する)以上程度であり、これを導電性ペーストのスクリーン印刷によって形成することが従来から行われている。静電容量方式のタッチパネルでは、L/Sの要求は100/100μm程度以下となっており、さらにはL/Sが50/50μm以下を求められる場合もあり、スクリーン印刷による電極回路配線形成技術では対応困難な状況になりつつある。
【0004】
スクリーン印刷に替わる電極回路配線形成技術の候補の一例として、フォトリソグラフィ法が挙げられる。フォトリソグラフィ法を用いれば、L/Sが50/50μm以下の細線を形成することも十分に可能である。しかしながらフォトリソグラフィ法にも課題がある。フォトリソグラフィ法の最も典型的な事例は感光性レジストを用いる手法であり、一般的には、銅箔層を形成した表面基板の銅箔部位に感光性レジストを塗布し、フォトマスクあるいはレーザー光の直接描画等の方法により所望のパターンを露光し、感光性レジストの現像を行ない、その後、所望のパターン以外の銅箔部位を薬品で溶解・除去することにより、銅箔の細線パターンを形成させる。このため、廃液処理による環境負荷が大きく、さらには工程が煩雑であり、生産効率の観点、コスト的観点を含め多くの課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-237573号公報
【特許文献2】特開2011-181338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スクリーン印刷法では対応困難とされているL/Sが50/50μm以下の高密度電極回路配線を、低コストかつ低い環境負荷で製造することができる製造方法を提供することにある。また、このような製造方法に好適に用いることのできる導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは平面方向に高密度で電極回路配線を配置する製造方法について鋭意検討した結果、バインダ樹脂と導電粉体からなる層を絶縁性基材上に形成し、その一部をレーザー光照射により絶縁性基材上から除去することにより、スクリーン印刷法では実現困難なL/Sが50/50μm以下の高密度電極回路配線を製造することができることを見出した。また、このような製造方法に適するバインダ樹脂と導電粉体からなる層を形成するのに適する導電性ペーストを見出した。すなわち、本願発明は以下の構成からなるものである。
(1)酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。
(2)更にレーザー光吸収剤(D)を含有することを特徴とする(1)に記載のレーザーエッチング加工用導電性ペースト。
(3)前記(1)?(2)のいずれかに記載のレーザーエッチング加工用導電性ペーストから形成された導電性薄膜。
(4)前記(3)に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。
(5)(削除)
(6)前記(3)に記載の導電性薄膜、または、(4)または(5)に記載の導電性積層体、を用いてなる電機回路。
(7)前記(3)に記載の導電性薄膜の一部に、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザーおよび半導体レーザーから選ばれるレーザー光を照射して、前記導電性薄膜の一部を除去することによって形成された配線部位を有する電気回路。
(8)前記導電性薄膜が透明導電性層上に形成されていることを特徴とする(7)に記載の電気回路。
(9)前記(6)?(8)のいずれかに記載の電気回路を構成部材として含むタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性ペーストは、熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有する導電性ペーストであり、このような構成をとることによって、レーザーエッチング加工適性に優れ、なおかつレーザーエッチング加工後においても基材に対する初期および湿熱環境負荷後の密着性に優れる導電性薄膜を形成することができる。なおここで、レーザーエッチング加工適性に優れるとは、レーザーエッチング加工により導電性薄膜の少なくとも一部を基材から剥離させ、L/S=30/30μm程度の細線を形成させたときに、1)細線両端間の導通が確保され、2)隣接細線間の絶縁が確保され、3)細線形状が良好であること、の3条件を満たすことを指す。また、本発明の実施態様であるレーザー光吸収剤(D)を含有する導電性ペーストは、レーザー光吸収剤(D)を含有しない導電性ペーストよりもレーザー光照射による対する感度が高くなるので、レーザー走査速度の向上、レーザー出力の低減等が可能となる、との更に優れた効果をも発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例、比較例で用いたレーザーエッチング加工適性評価試験片にレーザー光を照射するパターンを表す模式図である。白色部位にレーザー光が照射され、基材上に形成された導電性薄膜が除去される。網点部位にはレーザー光が照射されない。図中の寸法表示の単位はmmである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<本発明の導電性ペーストを構成する成分>>
本発明におけるレーザーエッチング加工用導電性ペーストは、熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を必須成分として含有する。
【0011】
<バインダ樹脂(A)>
バインダ樹脂(A)の種類は熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレンーアクリル樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、フェノール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、スチレンーアクリル樹脂、スチレンーブタジエン共重合樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独で、あるいは2種以上の混合物として、使用することができる。ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、繊維素誘導体樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。また、これらの樹脂の中でも、ポリエステル樹脂および/またはポリエステル成分を共重合成分として含有するポリウレタン樹脂(以下ポリエステルポリウレタン樹脂と呼ぶ場合がある)が、バインダ樹脂(A)として好ましい。
【0012】
本発明におけるバインダ樹脂(A)としてポリエステル樹脂を用いることの利点の一つとして、分子設計の自由度の高さにある。ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸およびグリコール成分を選定し、共重合成分を自在に変化させることができ、また、分子鎖中、もしくは分子末端への官能基の付与も容易である。このため、得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度や基材および導電性ペーストに配合される他の成分との親和性等の樹脂の特性を適宜調整することができる。
【0013】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリエステル樹脂の共重合成分として使用することのできるジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数12?28の二塩基酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。また、発明の効果を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の三価以上のカルボン酸、フマール酸等の不飽和ジカルボン酸、および/または、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩等のスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸を共重合成分として併用してもよい。
【0014】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリエステル樹脂の共重合成分として使用することのできるポリオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール等の脂環族ジオールが挙げられる。また、発明の効果を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン等の三価以上のポリオールを共重合成分として併用してもよい。
【0015】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリエステル樹脂は、強度や耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性等の耐久性等の観点から、前記ポリエステル樹脂を構成する全酸成分のうち芳香族ジカルボン酸が60モル%以上共重合されていることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。全酸成分が芳香族ジカルボン酸からなることは好ましい実施態様である。芳香族ジカルボン酸成分の共重合比率が低すぎると、得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度が60℃より低くなり、得られる導電性薄膜の耐湿熱性、耐久性が低下する傾向にある。
【0016】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリエステル樹脂は、強度や耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性等の耐久性等の観点から、前記ポリエステル樹脂を構成する全ポリオールのうち主鎖の炭素数が4以下であるグリコールが60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。全ポリオール成分の内、主鎖の炭素数が4以下であるグリコールの共重合比率が低すぎると得られるポリウレタン樹脂のガラス転移温度が60℃より低くなり、得られる導電性薄膜の耐湿熱性、耐久性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明におけるバインダ樹脂(A)としてポリウレタン樹脂を用いることも好ましい実施態様である。ポリエステル樹脂の場合と同様、ポリウレタン樹脂に関しても、ポリウレタン樹脂を構成する共重合成分として適切な成分を選定し、また、分子鎖中、もしくは分子末端への官能基の付与をおこなうことにより、ガラス転移温度や基材および導電性ペーストに配合される他の成分との親和性等の樹脂の特性を適宜調整することができる。
【0018】
ポリウレタン樹脂の共重合成分に関しても特に限定はされないが、設計の自由度や耐湿熱性、耐久性の維持といった観点から、ポリエステルポリオールを共重合成分として用いるポリエステルポリウレタン樹脂であることが好ましい。前記ポリエステルポリオールの好適な例としては、前述の本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いることのできるポリエステル樹脂のうちポリオールであるものを挙げることができる。
【0019】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリウレタン樹脂は、例えばポリオールとポリイソシアネートの反応によって得ることができる。前記ポリウレタン樹脂の共重合成分として用いることのできるポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等を挙げることがで、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートのいずれであっても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で、三価以上のイソシアネート化合物を共重合成分として併用しても良い。
【0020】
本発明におけるバインダ樹脂(A)として用いられるポリウレタン樹脂には、イソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物を必要に応じて共重合することができる。イソシアネートと反応し得る官能基としては、水酸基及びアミノ基が好ましく、いずれか一方を有するものでも双方を有するものであっても良い。その具体的な例としては、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2’,2’-ジメチル-3’-ヒドロキシプロパネート、2-ノルマルブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-プロピル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3-オクチル-1,5-ペンタンジオール、3-フェニル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-3-ナトリウムスルホ-2,5-ヘキサンジオール、ダイマージオール(たとえば、ユニケマ・インターナショナル社製PRIPOOL-2033)等の1分子中に2個の水酸基を有する化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン等の1分子中に3個以上の水酸基を有するアルコール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の1分子に1個以上の水酸基とアミノ基を有するアミノアルコール、エチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミンやメタキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどの1分子中に2個のアミノ基を有する化合物が挙げられる。上記の数平均分子量1,000未満の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物は単独で用いてもよいし複数を併用しても何ら問題はない。
【0021】
本発明におけるバインダ樹脂(A)の数平均分子量は特に限定はされないが、数平均分子量が5,000?60,000であることが好ましい。数平均分子量が低すぎると、形成された導電性薄膜の耐久性、耐湿熱性の面で好ましくない。一方、数平均分子量が高すぎると、樹脂の凝集力が増し、導電性薄膜としての耐久性等は向上するものの、レーザーエッチング加工適性が顕著に悪化する。
【0022】
本発明におけるバインダ樹脂(A)のガラス転移温度は60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が低いと、レーザーエッチング加工適性が向上する場合があるが、導電性薄膜としての湿熱環境信頼性が低下するおそれがあり、また、表面硬度の低下を誘発しタック性により製造工程及び/又は使用の際に接触相手側へのペースト含有成分の移行が生じて導電性薄膜信頼性が低下するおそれがある。一方、本発明に用いるバインダ樹脂(A)のガラス転移温度は、印刷性、密着性、溶解性、ペースト粘度、及びレーザーエッチング加工適性等を考慮すると、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
【0023】
本発明におけるバインダ樹脂(A)の酸価は特に限定されないが、特定の範囲の酸価を有していることで、基材に対する密着性を著しく向上させることができる場合がある。導電性薄膜のレーザーエッチング加工時において、レーザー照射部位周辺の温度が上昇し導電性薄膜と基材との密着性が低下する場合があるが、バインダ樹脂(A)として、特定範囲の酸価を有するバインダ樹脂を用いることにより、密着性の低下を抑制することができる場合がある。バインダ樹脂(A)の酸価は、50?350eq/tonであることが好ましく、100?250eq/tonであることがより好ましい。酸価が低すぎると、形成される導電性薄膜と基材との密着性が低くなる傾向がある。一方、酸価が高すぎると、形成される導電性薄膜の吸水性が高くなる上、カルボキシル基による触媒作用によりバインダ樹脂の加水分解が促進される可能性があり、導電性薄膜の信頼性の低下につながる傾向がある。
【0024】
<金属粉(B)>
本発明に用いられる金属粉(B)としては、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、真鍮粉等の卑金属粉、銀等の貴金属でめっき又は合金化した卑金属粉等を挙げることができる。これらの金属粉は、単独で用いてもよく、また、併用してもよい。これらの中でも導電性、安定性、コスト等を考慮すると銀粉単独又は銀粉を主体とするものが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる金属粉(B)の形状は特に限定されない。従来から知られている金属粉の形状の例としては、フレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、特開平9-306240号公報に記載されている球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状(凝集状)等があり、これらの中で、球状、凝集状およびフレーク状の金属粉を用いることが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる金属粉(B)の中心径(D50)は4μm以下であることが好ましい。中心径が4μm以下の金属粉(B)を用いることで、レーザーエッチング加工部位の細線形状が良好となる傾向にある。中心径が4μmより大きい金属粉を用いた場合には、レーザーエッチング加工後の細線形状が悪くなり、結果として細線同士が接触を起こし、短絡を招く可能性がある。さらには、レーザーエッチング加工で、一旦剥離・除去した導電性薄膜が再度加工部位に付着する可能性がある。金属粉(B)の中心径の下限は特に限定されないが、コスト的観点ならびに、粒径が細かくなると凝集し易く、結果として分散が困難となるため中心径は80nm以上であることが好ましい。中心径が80nmより小さくなると、金属粉の凝集力が増し、レーザーエッチング加工適正が悪化する他、コスト的観点からも好ましくない。
【0027】
なお、中心径(D50)とは、何らかの測定方法によって得られた累積分布曲線(体積)において、その累積値が50%となる粒径(μm)のことである。本発明においては、累積分布曲線をレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、MICROTRAC HRA)を用い全反射モードで測定することとする。
【0028】
金属粉(B)の含有量は、形成された導電性薄膜の導電性が良好であるという観点から、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、400質量部以上が好ましく、560質量部以上がより好ましい。また、(B)成分の含有量は、基材とのとの密着性において良好であるという観点から、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、1,900質量部以下が好ましく、1,230質量部以下がより好ましい。
【0029】
<有機溶剤(C)>
本発明に用いることのできる有機溶剤(C)は、とくに限定されないが、有機溶剤の揮発速度を適切な範囲に保つ観点から、沸点が100℃以上、300℃未満であることが好ましく、より好ましくは沸点が150℃以上、280℃未満である。本発明の導電性ペーストは、典型的には熱可塑性樹脂(A)、金属粉(B)、有機溶剤(C)および必要に応じてその他の成分を三本ロールミル等で分散して作製するが、その際に有機溶剤の沸点が低すぎると、分散中に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化する懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、乾燥条件によっては溶剤が塗膜中に多量に残存する可能性があり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。
【0030】
また、本発明に用いることのできる有機溶剤(C)としては、熱可塑性樹脂(A)が可溶であり、かつ、金属粉(B)を良好に分散させることができるものが好ましい。具体例としては、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)、ブチルグリコールアセテート(BMGAC)、ブチルジグリコールアセテート(BDGAC)、シクロヘキサノン、トルエン、イソホロン、γ-ブチロラクトン、ベンジルアルコール、エクソン化学製のソルベッソ100,150,200、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アジピン酸、こはく酸およびグルタル酸のジメチルエステルの混合物(例えば、デュポン(株)社製DBE)、ターピオネール等が挙げられるが、これらの中で、熱可塑性樹脂(A)の配合成分の溶解性に優れ、連続印刷時の溶剤揮発性が適度でありスクリーン印刷法等による印刷に対する適性が良好であるという観点から、EDGAC、BMGAC、BDGACおよびそれらの混合溶剤が好ましい。
【0031】
有機溶剤(C)の含有量としては、ペースト全重量100重量部に対して5重量部以上、40重量部以下であることが好ましく、10重量部以上、35重量部以下であることがさらに好ましい。有機溶剤(C)の含有量が高すぎるとペースト粘度が低くなりすぎ、細線印刷の際にダレを生じやすくなる傾向にある。一方で有機溶剤(C)の含有量が低すぎると、ペーストとしての粘度が極めて高くなり、導電性薄膜を形成させる際の例えばスクリーン印刷性が顕著に低下する他、形成された導電性薄膜の膜厚が厚くなり、レーザーエッチング加工性が低下する場合がある。
【0032】
<レーザー光吸収剤(D)>
本発明の導電ペーストには、レーザー光吸収剤(D)を配合しても良い。ここでレーザー光吸収剤(D)とは、レーザー光の波長に強い吸収を有する添加剤のことであり、レーザー光吸収剤(D)自身は導電性であっても非導電性であってもよい。例えば、基本波の波長が1064nmであるYAGレーザーを光源として用いる場合には、波長1064nmに強い吸収を有する染料および/又は顔料を、レーザー光吸収剤(D)として用いることができる。レーザー光吸収剤(D)を配合するとにより、本発明の導電性薄膜はレーザー光を高効率に吸収し、発熱によるバインダ樹脂(A)の揮散や熱分解が促進され、その結果レーザーエッチング加工適性が向上する。
【0033】
本発明に用いることのできるレーザー光吸収剤(D)のうち、導電性を有するものの例としては、カーボンブラック、グラファイト粉などの炭素系のフィラーを挙げることができる。炭素系のフィラーの配合は、本発明の導電性薄膜導電性を高める効果もあるが、例えばカーボンブラックは1060nm近傍に吸収波長を有しているので、YAGレーザー、ファイバーレーザーなどの1064nmの波長のレーザー光を照射すれば導電性薄膜がレーザー光を高効率で吸収するのでレーザー光照射に対する感度が高まり、レーザー照射の走査速度を上げた場合および/またはレーザー光源が低出力な場合においても良好なレーザーエッチング加工適性が得られる、との効果が期待できる。前記炭素系フィラーの含有量としては金属粉(B)100重量部に対し、0.1?5重量部であることが好ましく、0.3?2重量部であることがより好ましい。炭素系フィラーの配合比率が低すぎる場合は、導電性を高める効果およびレーザー光照射に対する感度を上げる効果が小さい。一方で炭素系フィラーの配合比率が高すぎる場合は、導電性薄膜の導電性が低下する傾向にあり、更に、カーボンの空隙部位へ樹脂が吸着し、基材との密着性が低下するという問題点が生じる場合もある。
【0034】
本発明に用いることのできるレーザー光吸収剤(D)のうち、非導電性のものの例としては、従来公知の染料、顔料および赤外線吸収剤を挙げることができる。より具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料、顔料としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、が使用できる。赤外線吸収剤の例としてはジイモニウム塩タイプの赤外線吸収剤であるNIR-IM1、アミニウム塩タイプのNIR-AM1(ともにナガセケムテックス社製)を挙げることができる。これらの非導電性のレーザー光吸収剤(D)は0.01?5重量部、好ましくは0.1?2重量部含むことが好ましい。非導電性のレーザー光吸収剤(D)の配合比率が低すぎる場合は、レーザー光照射に対する感度を上げる効果が小さい。非導電性のレーザー光吸収剤(D)の配合比率が高すぎる場合は、導電性薄膜の導電性が低下するおそれがあり、またレーザー光吸収剤の色目が顕著となり、用途によっては好ましくない場合がある。
【0035】
本発明の導電性ペーストには、下記の無機物を添加することができる。無機物としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物;酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸;その他、滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母等を用いることができる。これらの無機物を添加することによって、印刷性や耐熱性、さらには機械的特性や長期耐久性を向上させることが可能となる場合がある。中でも、本発明の導電性ペーストにおいては、耐久性、印刷適性、特にスクリーン印刷適性を付与するという観点でシリカが好ましい。
【0036】
また、本発明の導電性ペーストには、チキソ性付与剤、消泡剤、難燃剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料を配合することができる。さらには樹脂分解抑制剤としてカルボジイミド、エポキシ等を適宜配合することもできる。これらは単独でもしくは併用して用いることができる。
【0037】
<硬化剤(E)>
本発明の導電性ペーストには、バインダ樹脂(A)と反応し得る硬化剤を、本発明の効果を損なわない程度に配合してもよい。硬化剤を配合することにより、硬化温度が高くなり、生産工程の負荷が増す可能性はあるが、塗膜乾燥時あるいはレーザーエッチング時に発生する熱による架橋で塗膜の耐湿熱性の向上が期待できる。
【0038】
本発明のバインダ樹脂(A)に反応し得る硬化剤は、種類は限定しないが密着性、耐屈曲性、硬化性等からイソシアネート化合物が特に好ましい。さらに、これらのイソシアネート化合物として、イソシアネート基をブロック化したものを使用すると、貯蔵安定性が向上し、好ましい。イソシアネート化合物以外の硬化剤としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ベンゾグアナミン、尿素樹脂等のアミノ樹脂、酸無水物、イミダゾール類、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の公知の化合物が挙げられる。これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。硬化剤の配合量としては、本発明の効果を損なわない程度に配合されるものであり、特に制限されるものではないが、バインダ樹脂(A)100質量部に対して、0.5?50質量部が好ましく、1?30質量部がより好ましく、2?20質量部がさらに好ましい。
【0039】
本発明の導電性ペーストに配合することができるイソシアネート化合物の例としては、芳香族又は脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート等があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、等の芳香族ジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物又は各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物等と反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。また、イソシアネート基のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t-ブタノール、t-ペンタノール等の第三級アルコール類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタム等のラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。このうち、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類が特に好ましい。
【0040】
<<本発明の導電性ペーストに求められる物性>>
本発明の導電性ペーストは、F値が60?95%であることが好ましく、より好ましくは75?95%である。F値とはペースト中に含まれる全固形分100質量部に対するフィラー質量部を示す数値であり、F値=(フィラー質量部/固形分質量部)×100で表される。ここで言うフィラー質量部とは導電性粉末の質量部、固形分質量部とは溶剤以外の成分の質量部であり、導電性粉末、バインダ樹脂、その他の硬化剤や添加剤を全て含む。F値が低すぎると良好な導電性を示す導電性薄膜が得られず、F値が高すぎると導電性薄膜と基材との密着性及び/又は導電性薄膜の表面硬度が低下する傾向にあり、印刷性の低下も避けられない。尚、ここで導電性粉末とは、金属粉(B)および非金属からなる導電性粉末の双方を指す。
【0041】
<<本発明の導電性ペーストの製造方法>>
本発明の導電性ペーストは前述したように熱可塑性樹脂(A)、金属粉(B)、有機溶剤(C)および必要に応じてその他の成分を三本ロール等で分散して作製することができる。ここで、より具合的な作製手順の例を示す。熱可塑性樹脂(A)をまずは有機溶剤(C)に溶解する。その後、金属粉(B)ならびに、必要に応じて添加剤を添加し、ダブルプラネタリーやディゾルバー、遊星式の攪拌機等で予備分散を実施する。その後、三本ロールミルで分散して、導電性ペーストを得る。このようにして得られた導電性ペーストは必要に応じて濾過することができる。その他の分散機、例えばビーズミル、ニーダー、エクストルーダーなどを用いて分散しても何ら問題はない。
【0042】
<<本発明の導電性薄膜、導電性積層体およびこれらの製造方法>>
本発明の導電性ペーストを基材上に塗布または印刷して塗膜を形成し、次いで塗膜に含まれる有機溶剤(C)を揮散させ塗膜を乾燥させることにより、本発明の導電性薄膜を形成することができる。導電性ペーストを基材上に塗布または印刷する方法はとくに限定されないが、スクリーン印刷法により印刷することが工程の簡便さおよび導電性ペーストを用いて電気回路を形成する業界で普及している技術である点から好ましい。また、導電性ペーストは、最終的に電気回路として必要とされる導電性薄膜部位よりも幾分広い部位に塗布または印刷することが、レーザーエッチング工程の負荷を下げ効率よく本発明の電気回路を形成するとの観点から、好ましい。
【0043】
本発明の導電性ペーストを塗布する基材としては、寸法安定性に優れた材料が好ましく用いられる。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート或いはポリカーボネート等の可撓性に優れる材料からなるフィルムを挙げることができる。また、ガラス等の無機材料も基材として使用することができる。基材の厚みはとくに限定されないが、50?350μmであることが好ましくは、100?250μmがパターン形成材料の機械的特性、形状安定性あるいは取り扱い性等から更に好ましい。
【0044】
また、本発明の導電性ペーストを塗布する基材の表面に物理的処理および/または化学的処理を行うことにより、導電性薄膜と基材との密着性を向上させることができる。物理的処理方法の例としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射処理法などを挙げることができる。また、化学的処理方法の例としては、強酸処理法、強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などを挙げることができる。
【0045】
また、前記基材は透明導電性層を有するものであってもよい。本発明の導電性薄膜を透明導電性層上に積層することができる。前記透明導電性層の素材は特に限定されず、例えば、酸化インジウム・スズを主成分としてなるITO膜を挙げることができる。また、透明導電性層は基材全面に形成されたものだけでなく、エッチング等により透明導電性層の一部が除去されたものを使用することもできる。
【0046】
有機溶剤(C)を揮散させる工程は、常温下および/または加熱下で行うことが好ましい。加熱する場合、乾燥後の導電性薄膜の導電性や密着性、表面硬度が良好となることから、加熱温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましい。また、下地の透明導電性層の耐熱性、及び生産工程における省エネルギーの観点から、加熱温度は150℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。本発明の導電性ペーストに硬化剤が配合されている場合には、有機溶剤(C)を揮散させる工程を加熱下で行うと、硬化反応が進行する。
【0047】
本発明の導電性薄膜の厚さは、用いられる用途に従って適切な厚さに設定すればよい。但し、乾燥後の導電性薄膜の導電性が良好であるという観点と、レーザーエッチング加工適性が良好であるという観点から、導電性薄膜の膜厚は3μm以上、30μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上、20μm以下である。導電性薄膜の膜厚が薄すぎると、回路としての所望の導電性が得られない可能性がある。膜厚が厚すぎると、レーザーエッチング加工に要する照射量が過大に必要になり、基材にダメージを与える場合がある。また、膜厚のばらつきが大きいと、導電性薄膜のエッチングされやすさにばらつきが生じ、エッチング不足による線間の短絡やエッチング過剰による断線が生じやすくなる傾向にある。このため、膜厚のばらつきは小さい方がよい。
【0048】
<<本発明の電気回路およびその製造方法>>
レーザー光が照射され吸収された部位においては、レーザー光のエネルギーが熱へと変換され、温度上昇により熱分解および/または揮散が生じ、照射部位が剥離・除去される。本発明の導電性薄膜のレーザー光を照射された部位が効率よく基材から除去されるためには、本発明の導電性薄膜が照射レーザー光の波長に強い吸収を有することが好ましい。よって、レーザー種としては、本発明の導電性薄膜を構成するいずれかの成分が強い吸収を有する波長領域にエネルギーを有するレーザー種を選択することが好ましい。
【0049】
一般的なレーザー種としては、エキシマレーザ(基本波の波長が193?308nm)、YAGレーザ(基本波の波長が1064nm)、ファイバーレーザー(基本波の波長が1060nm)、CO2レーザー(基本波の波長が10600nm)、半導体レーザーなどが挙げられ、基本的にはどのような方式、どのような波長のレーザー種を用いても何ら問題はない。導電性薄膜のいずれかの構成成分の吸収波長領域と一致し、なおかつ基材が強い吸収を有さない波長を照射することのできるレーザー種を選択することにより、レーザー光照射部位の導電性薄膜の除去を効率的に行い、なおかつ基材のダメージを避けることができる。このような観点から、照射するレーザー種としては、基本波の波長が、532?10700nmの範囲が好ましい。例えば、ポリエステルフィルム、ポリエステルフィルム上にITO層を形成した透明導電性積層体、または、ポリエステルフィルム上にITO層を形成しその一部をエッチングにより除去された積層体を基材として用いる場合には、YAGレーザーまたはファイバーレーザーを使用することが、基本波の波長に基材が吸収を有さないので基材にダメージを与えにくい点で特に好ましい。
【0050】
レーザー出力、Q変調周波数は特に限定されないが、レーザー光照射部位の導電性薄膜を除去でき、かつ下地の基材が損傷しないように調節する。一般的には、レーザー出力は、0.5?100W、Q変調周波数10?400kHzの範囲で適宜調節することが好ましい。レーザー出力が低すぎると、導電性薄膜の除去が不十分となる傾向にあるが、レーザーの走査速度を低くしたり走査回数を増やしたりすることにより園そのような傾向はある程度回避できる。レーザー出力が高すぎると、照射部分からの熱の拡散によって導電性薄膜が剥離される部位がレーザービーム径よりも極端に大きくなり、線幅が細くなりすぎたり断線したりする可能性がある。
【0051】
レーザー光の走査速度は、タクトタイムの減少による生産効率向上の観点からは高いほどよく、具体的には、1000mm/s以上が好ましく、1500mm/s以上がより好ましく、さらに好ましくは2000mm/s以上である。走査速度が遅すぎると、生産効率が低下するのみならず、導電性薄膜および基材が熱履歴によりダメージを受けるおそれがある。加工速度の上限は特には定めないが、走査速度が高すぎると、レーザー光照射部位の導電性薄膜の除去が不完全となり回路が短絡する可能性がある。また、走査速度が速すぎると、形成するパターンのコーナー部位において、直線部位と比較して走査速度を減速させることが避けられなくなるため、コーナー部位の熱履歴が直線部位にくらべて高くなり、コーナー部位のレーザーエッチング加工部位周辺の導電性薄膜の物性が顕著に低下するおそれがある。
【0052】
レーザー光の走査は、レーザー光の発射体を動かす、レーザー光を照射される被照射体を動かす、あるいは双方を組み合わせる、のいずれでも良く、例えばXYステージを用いることにより実現できる。また、ガルバノミラー等を用いてレーザー光の照射方向を変更することによりレーザー光を走査することもできる。
【0053】
レーザー光の照射に際して、集光レンズ(アクロマティックレンズ等)を使用することにより、単位面積あたりのエネルギー密度を高めることができる。この方法の利点としては、マスクを使用する場合と比較して、単位面積当たりのエネルギー密度を大きくすることができるため、小さな出力のレーザー発振器であっても高い走査速度でレーザーエッチング加工を行うことが可能になる点が挙げられる。集光したレーザー光を導電性薄膜へ照射する場合、焦点距離を調節する必要がある。焦点距離の調節は、特に基材に塗布されている膜厚によって調節する必要があるが、基材に損傷を与えず、かつ所定の導電性薄膜パターンを剥離・除去できるように調節することが好ましい。
【0054】
レーザー光の走査を複数回同一パターンで繰り返し行うことは、好ましい実施態様のひとつである。1回目の走査において除去不完全な導電性薄膜部位があった場合、もしくは除去した導電性薄膜を構成する成分が再度基材に付着した場合であっても、複数回の走査でレーザー光照射部位の導電性薄膜を完全に除去することが可能となる。走査回数の上限は特には限定されないが、加工部位周辺が熱履歴を複数回受けることで、ダメージを受け、変色したり、塗膜物性が低下する可能性があるため、注意が必要となる。また、生産効率の点からは、走査回数は少ないほど良いのは当然である。
【0055】
レーザー光の走査を複数回同一パターンで繰り返し行なわないことも、好ましい実施態様のひとつである。得られる導電性薄膜、導電性積層体および電気回路の特性に悪影響を及ぼさない限り、走査回数は少ないほど生産効率的に優れることは当然である。
【0056】
<<本発明のタッチパネル>>
本発明の導電性薄膜、導電性積層体および/または電気回路はタッチパネルの構成部材として用いることができる。前記タッチパネルは、抵抗膜方式であっても静電容量方式であってもよい。いずれのタッチパネルにも適用が可能であるが、本ペーストは、細線形成に好適であるため、静電容量方式のタッチパネルの電極配線用に特に好適に用いることができる。尚、前記タッチパネルを構成する基材としては、ITO膜等の透明導電性層を有している基材、もしくはそれらがエッチングによって一部除去された基材を用いることが好ましい。
【実施例】
【0057】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例、比較例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例、比較例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。
【0058】
1.数平均分子量
試料樹脂を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、GPC測定試料とした。テトラヒドロフランを移動相とし、島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行なった。尚、数平均分子量は標準ポリスチレン換算値とし、分子量1000未満に相当する部分を省いて算出した。GPCカラムは昭和電工(株)製のshodex KF-802、804L、806Lを用いた。
【0059】
2.ガラス転移温度(Tg)
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC-220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0060】
3.酸価
試料樹脂0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、指示薬にフェノールフタレイン溶液を用い、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定を行った。酸価の単位はeq/ton、すなわち試料1トン当たりの当量とした。
【0061】
4.樹脂組成
クロロホルム-dに試料樹脂を溶解し、VARIAN製400MHz-NMR装置を用い、1H-NMR分析により樹脂組成を求めた。
【0062】
5.ペースト粘度
粘度の測定はサンプル温度25℃において、BH型粘度計(東機産業社製,)を用い、20rpmにおいて測定を実施した。
【0063】
6.導電性ペーストの貯蔵安定性
導電性ペーストをポリ容器に入れ、密栓したものを40℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵後に粘度測定及び上記5.導電性積層体テストピースにより作製したテストピースの評価を行った。
○:著しい粘度変化はなく、初期の比抵抗、鉛筆硬度および密着性を維持している。
×:著しい粘度上昇(初期粘度の2倍以上)または著しい粘度低下(初期粘度の1/2以下)、および/または、比抵抗、鉛筆硬度および/または密着性の低下、のいずれかが認められる。
【0064】
7.導電性積層体テストピースの作成
厚み100μmのアニール処理をしたPETフィルム(東レ社製ルミラーS)およびITO膜(尾池工業(株)製、KH300)のそれぞれに、200メッシュのポリエステルスクリーンを用いてスクリーン印刷法により導電性ペーストを印刷し、幅25mm、長さ450mmのべた塗りパターンを形成し、次いで熱風循環式乾燥炉にて120℃で30分加熱したものを導電性積層体テストピースとした。なお、乾燥膜厚が6?10μmになるように印刷時の塗布厚を調整した。
【0065】
8.密着性
前記導電性積層体テストピースを用いてJIS K-5400-5-6:1990に従って、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を用い、剥離試験により評価した。但し、格子パターンの各方向のカット数は11個、カット間隔は1mmとした。100/100は剥離がなく密着性が良好なことを示し、0/100は全て剥離してしまったことを表す。
【0066】
9.比抵抗
前記導電性積層体テストピースのシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はゲージスタンドST-022(小野測器社製)を用い、PETフィルムの厚みをゼロ点として硬化塗膜の厚みを5点測定し、その平均値を用いた。シート抵抗はMILLIOHMMETER4338B(HEWLETT PACKARD社製)を用いてテストピース4枚について測定し、その平均値を用いた。尚、本ミリオームメーターで検出できる範囲は1×10^(-2)以下(Ω・cm)であり、1×10^(-2)(Ω・cm)以上の比抵抗は測定限界外となる。
【0067】
10.鉛筆硬度
導電性積層体テストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS K 5600-5-4:1999に従って鉛筆硬度を測定した。
【0068】
11.耐湿熱性試験:
導電性積層体テストピースを、80℃で300時間加熱し、次いで85℃、85%RH(相対湿度)で300時間加熱し、その後24時間常温で放置した後、各種評価を行った。
【0069】
12.レーザーエッチング加工適性の評価
スクリーン印刷法により、ポリエステル基材(東レ社製ルミラーS(厚み100μm))上に、導電性ペーストを2.5×10cmの長方形に印刷塗布した。スクリーン版としてT400ステンレスメッシュ(乳剤厚10μm、線径23μm(東京プロセスサービス社製))を用い、スキージ速度150mm/sで印刷した。印刷塗布後、熱風循環式乾燥炉にて120℃で30分間の乾燥を行って導電性薄膜を得た。尚、膜厚は5?12μmとなるようにペーストを希釈調整した。次いで、上記方法にて作成した導電性薄膜にレーザーエッチング加工を行い、図1に示す長さ50mmの4本の直線部分を有するパターンを作製し、レーザーエッチング加工適性評価試験片とした。上記直線部分の線間のレーザーエッチング加工は、ビーム径30μmのレーザー光を60μmピッチで各2回走査することによって行った。レーザー光源にはファイバーレーザーを用い、Q変調周波数200kHz、出力10W、走査速度2700mm/sとした。
【0070】
評価項目、測定条件は以下の通りである。
【0071】
(レーザーエッチング加工幅評価)
前記レーザーエッチング加工適性評価試験片において、導電性薄膜が除去された部位の線幅を測定した。測定は、レーザー顕微鏡(キーエンスVHX-1000)を用いて行い、下記の評価判断基準で判定した。
○;導電性薄膜が除去された部位のライン幅が28?32μm
△;導電性薄膜が除去された部位のライン幅が24?27μmもしくは33?36μm
×;導電性薄膜が除去された部位のライン幅が23μm以下、もしくは37μm以上
【0072】
(レーザーエッチング加工適性評価(1)細線両端間導通性)
前記レーザーエッチング加工適性評価試験片において、細線1b、2b、3b、4bの両端の間の導通が確保されているかにより評価した。具体的には、端子1a-端子1c間、端子2a-端子2c間、端子3a-端子3c間、端子4a-端子4c間、のそれぞれについてテスターを当てて導通の有無を確認し、下記評価基準で判定した。
○;4本の細線の全てについて細線の両端間に導通がある
△;4本の細線のうち、1?3本について細線の両端間に導通がない
×;4本の細線の全てについて細線の両端間に導通がない
(レーザーエッチング加工適性評価(2)隣接細線間絶縁性)
前記レーザーエッチング加工適性評価試験片において、隣接する細線の間の絶縁が確保されているかにより評価した。具体的には、端子1a-端子2a間、端子2a-端子3a間、端子3a-端子4a間、のそれぞれについてテスターを当てて導通の有無を確認し、下記評価基準で判定した。
○;すべての隣接細線間が絶縁されている
△;一部の隣接細線間が絶縁されている
×;すべての隣接細線間が絶縁されていない
【0073】
(導電性薄膜が除去された部位の残渣の評価)
前記レーザーエッチング加工適性評価試験片において、導電性薄膜が除去された部位をレーザー顕微鏡で観察し、残渣の付着有無を下記評価基準により判定した。
○:導電性薄膜が除去された部位に残渣がない。
△:導電性薄膜が除去された部位に残渣が多少ある。
×:導電性薄膜が除去された部位に残渣が多く見られる。
【0074】
(レーザーエッチング後の導電性薄膜と基材との密着性の評価)
前記レーザーエッチング加工適性評価試験片における導電性薄膜が除去された部位に挟まれている導電性薄膜が残存している部位の、基材に対する密着性を、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を用いたテープ剥離テストにより、評価した。この評価は、試験片作成の24時間後直後(初期)とその後さらに85℃、85%RH(相対湿度)の湿熱環境下に120時間静置しさらに24時間常温で静置した後(耐湿熱試験後)に行った。
○:剥離がない。 △:一部剥離する。×:全て剥離する。
【0075】
樹脂の製造例
ポリエステル樹脂P-1の製造例
攪拌機、コンデンサー、及び温度計を具備した反応容器にテレフタル酸700部、イソフタル酸700部、無水トリメリット酸16.9部、エチレングリコール983部、2-メチル-1,3-プロパンジオール154部を仕込み、窒素雰囲気2気圧加圧下、160℃から230℃まで3時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。放圧後、テトラブチルチタネート0.92部を仕込み、次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。次いで、窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を50.6部投入し、30分間反応を行いポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂P-1の組成及び物性を表1に示した。
【0076】
ポリエステル樹脂P-2?P-11の製造例
ポリエステル樹脂P-1の製造例においてモノマーの種類と配合比率を変更し、ポリエステル樹脂P-2?P-11を製造した。得られた共重合ポリエステル樹脂の組成及び樹脂物性を表1?2に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
BPE-20F:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(三洋化成工業社製)
BPX-11 :ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(旭電化社製)
【0080】
ポリウレタン樹脂U-1の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にポリエステル樹脂P-7を1000部、ネオペンチルグリコール(NPG)を80部、ジメチロールブタン酸(DMBA)を90部投入した後、エチルジグリコールアセテート(EDGAC)1087部仕込み、85℃において溶解した。その後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を460部加え、85℃、2時間反応を行った後、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.5部添加し、85℃でさらに4時間反応させた。ついで、EDGAC1940部で溶液を希釈し、ポリウレタン樹脂U-1の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液の固形分濃度は35質量%であった。このようにして得た樹脂溶液をポリプロピレンフィルム上に滴下し、ステンレス鋼製のアプリケーターを用いて延展し、樹脂溶液の薄膜を得た。これを120℃に調整した熱風乾燥機内に3時間静置して溶剤を揮散させ、次いでポリプロピレンフィルムから樹脂薄膜を剥がし、フィルム状の乾燥樹脂薄膜を得た。乾燥樹脂薄膜の厚みは約30μmであった。左記乾燥樹脂薄膜をポリウレタン樹脂U-1の試料樹脂として、各種樹脂物性の評価結果を表3に示した。
【0081】
ポリウレタン樹脂U-2?U-8の製造例
ポリウレタン樹脂U-2?U-8は、ポリエステルポリオール、イソシアネートと反応する基を有する化合物及びポリイソシアネートを表3に示すものに代えた以外は、ポリウレタン樹脂U-1の製造例と同様の方法にて製造した。ポリウレタン樹脂U-2?U-8の樹脂物性の評価結果を表3に示した。
【0082】
【表3】

【0083】
DMBA:ジメチロールブタン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
DMH:2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0084】
実施例1
ポリエステル樹脂P-1を固形分濃度が35質量%となるようにEDGACに溶解した溶液2860部(固形部換算1000部)、フレーク状銀粉1を7,888部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを71部、分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk130を30部、溶剤としてEDGACを300部を配合し、チルド三本ロール混練り機に3回通して分散した。その後、得られた導電性ペーストを所定のパターンに印刷後、120℃×30分間乾燥し、導電性薄膜を得た。本導電性薄膜を用いて基本物性を測定し、次いで、レーザーエッチング加工の検討を行った。ペーストおよびペースト塗膜、レーザーエッチング加工性の評価結果を表4に示した。
【0085】
実施例2?13、参考例1?4
導電性ペーストの樹脂および配合を変えて実施例2?13及び参考例1?4を実施した。導電性ペーストの配合および評価結果を表4?表6に示した。実施例においてはオーブン120℃×30分という比較的低温かつ短時間の加熱により良好な塗膜物性を得ることができた。またITO膜への密着性、湿熱環境試験後の密着性も良好であった。
【0086】
なお、表4?表7において、バインダ樹脂、導電粉末、添加剤及び溶剤は以下のものを用いた。
バインダ樹脂PH-1:InChem製PKKH(フェノキシ樹脂、数平均分子量14000、Tg=71℃)
銀粉1:フレーク状銀粉(D50:2μm)
銀粉2:球状銀粉(D50:1μm)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製♯4400
ケッチェンブラック:ライオン(株)製ケッチェンECP600JD
グラファイト粉:(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBF
硬化剤:旭化成ケミカルズ(株)製MF-K60X
硬化触媒:共同薬品(株)製KS1260
レベリング剤:共栄社化学(株)MKコンク
分散剤1:ビックケミー・ジャパン(株)社製のDisperbyk130
分散剤2:ビックケミー・ジャパン(株)社製Disperbyk2155
分散剤3:ビックケミー・ジャパン(株)社製のDisperbyk180
添加剤1:日本アエロジル(株)製シリカR972
添加剤2:ナガセケムテックス(株)製 NIR-AM1
添加剤3:共栄社化学(株)製 ライトアクリレートPE-3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
EDGAC:(株)ダイセル製エチルジグリコールアセテート
BMGAC:(株)ダイセル製ブチルグリコールアセテート
BDGAC:(株)ダイセル製ブチルジグリコールアセテート
TPOL :日本テルペン化学(株)製ターピネオール
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
比較例1
ラウリルカルボン酸銀(1000g)とブチルアミン(480g)とをトルエン(10L)に溶解させた。次いで、蟻酸(150g)を滴下し、そのまま室温で1.5時間攪拌した。大量のメタノールを加えると銀ナノ粒子の凝集物が沈殿するのでこれをデカンテーションした。デカンテーションを3回繰り返したのち、沈殿物を減圧下で乾燥させた。次いで、得られた沈殿物1000g(うち920g銀、カルボン酸銀アミン錯体80g)をターピネオール1860g中へ再分散させ、銀ナノ粒子(銀粉3)を含んだ導電性ペーストを得た。得られた銀粉3は透過型電子顕微鏡写真より粒子径が約10nmであった。導電性ペーストの固形分濃度は35質量%であった。得られた導電性ペーストを用いて実施例と同様に導電性積層体テストピースおよびレーザーエッチング加工適性評価試験片を作成し、実施例と同様に評価を行った。評価結果を表7に示した。本導電性銀ペースト組成物は初期塗膜物性が顕著に劣り、特には密着性に乏しく、実用には耐えないものであった。
【0091】
比較例2
ターピネオールにドデシルアミンを溶解し、固形分濃度12重量%の溶液とした。この溶液1000部(固形120重量部)に、銀粉4(球状銀粉(D50=1μm)を8083部、さらに平均粒径1.5μmとなるようにビーズミルで粉砕したガラスフリット((酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))を主成分するガラス粉末(酸化ビスマス含有量80.0?99.9%)を250部加えて混合を継続し、均一となってから、この溶液を三本ロールミルで分散し、ガラスフリット含有導電性ペーストを作製した。得られた導電性ペーストを用いて実施例と同様に導電性積層体テストピースおよびレーザーエッチング加工適性評価試験片を作成し、実施例と同様に評価を行った。評価結果を表7に示した。本導電性銀ペースト組成物は初期塗膜物性が顕著に劣り、特には密着性に乏しく、実用には耐えないものであった。また、レーザーエッチング加工性が顕著に劣り、照射部位よりも広い範囲で照射したレーザービームの幅よりも大幅に広い巾の塗膜が剥離されてしまい、所定の線幅を加工することはできなかった。また、レーザーエッチング加工後の細線部分の密着性および耐湿熱性にも乏しかった。
【0092】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のレーザーエッチング加工用導電性ペーストは、レーザーエッチング加工適性を保持しながら、湿熱環境信頼性に優れ、導電性薄膜としての塗膜耐久性を維持することができる導電性薄膜を提供することができ、例えば、携帯電話、ノートパソコン、電子書籍等に搭載されるタッチパネルに用いられる導電性ペーストとして有用である。
【符号の説明】
【0094】
1a、2a、3a、4a : 端子1a、2a、3a、4a
1b、2b、3b、4b : 細線1b、2b、3b、4b
1c、2c、3c、4c : 端子1c、2c、3c、4c
5 : レーザーエッチング加工適性評価試験片上に形成されるパターン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が53.5当量/10^(6)gを超えて300当量/10^(6)g以下であるポリエステル樹脂からなるバインダ樹脂(A)、金属粉(B)および有機溶剤(C)を含有し、
前記バインダ樹脂(A)が、数平均分子量が5,000?60,000であり、なおかつ、ガラス転移温度が60?100℃である熱可塑性樹脂であり、
レーザーエッチング加工により、平面方向のラインおよびスペースの幅がいずれも50μm以下である電極回路配線を、全面または一部に透明導電性層を有する基材の前記透明導電性層上に、形成するために用いられる、レーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項2】
更にレーザー光吸収剤(D)を含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザーエッチング加工用導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1?2のいずれかに記載のレーザーエッチング加工用導電性ペーストから形成された導電性薄膜。
【請求項4】
請求項3に記載の導電性薄膜と、全面または一部に透明導電性層を有する基材とが積層されている導電性積層体。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項3に記載の導電性薄膜、または、請求項4に記載の導電性積層体、を用いてなる電気回路。
【請求項7】
請求項3に記載の導電性薄膜の一部に、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザーおよび半導体レーザーから選ばれるレーザー光を照射して、前記導電性薄膜の一部を除去することによって形成された配線部位を有する電気回路。
【請求項8】
前記導電性薄膜が透明導電性層上に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の電気回路。
【請求項9】
請求項6?8のいずれかに記載の電気回路を構成部材として含むタッチパネル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-15 
出願番号 特願2014-257177(P2014-257177)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (G06F)
P 1 651・ 121- YAA (G06F)
P 1 651・ 851- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 敬士  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5773298号(P5773298)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 レーザーエッチング加工用導電性ペースト、電気回路およびタッチパネル  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ