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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  D01F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D01F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D01F
管理番号 1333201
異議申立番号 異議2016-700698  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-08 
確定日 2017-08-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5853065号発明「ギャザー部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5853065号(以下、「本件特許」ともいう。)の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5853065号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5853065号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年8月4日に出願され、平成27年12月11日にその特許権の設定登録がされたものである。その後、その特許について、特許異議申立人古川佳靖(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年11月7日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年12月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成29年2月16日に申立人より意見書が提出され、当審より平成29年4月19日付けで特許権者に審尋し、その指定期間内である平成29年5月18日に回答書が提出され、平成29年6月30日に申立人より上申書が提出されたものである。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の請求は、「特許第5853065号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。

(1)訂正事項1
ア.特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維が含有されたギャザー部材であって、該ギャザー部材から取り出した該弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが4800以上11000以下であり、該弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.150以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下であり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsが、下記式(1):
3.8≦Nmms≦35 …式(1)
を満たす、前記ギャザー部材。但し、前記弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msは、前記ポリアルキレンエーテルジオールと前記有機ジイソシアネートからなるポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトル図において、両端がウレタン結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f1)と、一方がウレタン結合でもう一方がウレア結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f2)の積分曲線の高さをそれぞれF1、F2としたとき、以下の構造式:
【化1】

{式中、R_(1)?R_(3)は有機基である。}中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mを、下記式(9):
m=2×(F1/F2) …式(9)
により求め、さらに、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msとして下記式(10):
Ms=(Mdo+Mdi)×m+Mdo …式(10)
{式中、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、m:前記式(9)により求めた、前記構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mである。}により求めたものであり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(10)により求めたソフトセグメント部分の数平均分子量Msを、下記式(5):
Nmms=Nmd×{(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1} …式(5)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量である。}に代入して求めたものである。」とあるのを、

イ.「ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維がホットメルト接着剤を介して不織布に接着されているギャザー部材であって、該ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、該不織布から剥離させて該ギャザー部材から取り出し、1日風乾させた後の該弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが6350以上7530以下であり、該弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.100以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下であり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsが、下記式(1):
3.8≦Nmms≦35 …式(1)
を満たす、前記ギャザー部材。但し、前記弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msは、前記ポリアルキレンエーテルジオールと前記有機ジイソシアネートからなるポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトル図において、両端がウレタン結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f1)と、一方がウレタン結合でもう一方がウレア結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f2)の積分曲線の高さをそれぞれF1、F2としたとき、以下の構造式:
【化1】

{式中、R_(1)?R_(3)は有機基である。}中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mを、下記式(9):
m=2×(F1/F2) …式(9)
により求め、さらに、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msとして下記式(10):
Ms=(Mdo+Mdi)×m+Mdo …式(10)
{式中、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、m:前記式(9)により求めた、前記構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mである。}により求めたものであり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(10)により求めたソフトセグメント部分の数平均分子量Msを、下記式(5):
Nmms=Nmd×{(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1} …式(5)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量である。}に代入して求めたものである。」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2、3についても、同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0022】に、
「側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量をMnm、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量をMm、AとBの共重合比をAr:Br、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数をNMとしたときの、ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数Nmdは、下記式(2):
Nmd=Mdo/[Mnm×{Ar/(Ar+Br)}+Mm×{Br/(Ar+Br)}]×Ar/(Ar+Br)×NM …式(2)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mnm:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量、Mm:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量、Ar:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの共重合比、Br:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの共重合比、NM:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数である。}により計算することができる。」とあるのを、
「側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量をMnm、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量をMm、AとBの共重合比をAr:Br、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数をNMとしたときの、ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数Nmdは、下記式(2):
Nmd=Mdo/[Mnm×{Ar/(Ar+Br)}+Mm×{Br/(Ar+Br)}]×Br/(Ar+Br)×NM …式(2)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mnm:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量、Mm:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量、Ar:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの共重合比、Br:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの共重合比、NM:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数である。}により計算することができる。」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1のうち「ポリウレタン弾性繊維がホットメルト接着剤を介して不織布に接着されているギャザー部材であって、該ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、該不織布から剥離させて該ギャザー部材から取り出し、1日風乾させた後の該弾性繊維」とする訂正は、「ギャザー部材」について「ポリウレタン弾性繊維がホットメルト接着剤を介して不織布に接着されている」ことを限定するとともに、ポリウレタン弾性繊維をギャザー部材から取り出す態様について「ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、該不織布から剥離させて該ギャザー部材から取り出し、1日風乾させた」旨限定するものであって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、この訂正は、当審の平成28年11月7日付けで通知された記載不備に係る取消理由に対して、ポリウレタン弾性繊維をギャザー部材から取り出す態様を明確にするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものにも該当する。
また、訂正事項1のうち「該弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが6350以上7530以下」とする訂正は、「弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Ms」の数値範囲を、訂正前に「4800以上11000以下」であったものを更に限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1のうち「該弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.100以下」とする訂正は、「弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)」の数値範囲を、訂正前に「0.050以上0.150以下」であったものを更に限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ.本件特許明細書の段落【0034】には「本実施形態のギャザー部材は、こうした部位に特に好適に用いられる。ギャザー部材は、弾性糸が伸長された状態でホットメルト等を介して不織布等に接着される方法を含む、紙おむつ、生理用品、マスク、包帯の製造工程における通常の方法により作製することができる。」と記載され、同じく段落【0040】には「前記(4)の方法で作製したギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した。撹拌後、不織布から剥離した弾性繊維を取り出し、1日風乾させた。」と記載されている。
また、同じく段落【0054】の【表2】には、実施例1、2及び4の「弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Ms」が、それぞれ「7520」、「6350」、「7530」であることが記載されている。これらは、訂正された「6350以上7530以下」の範囲のうち、下限値である「6350」(実施例2)と上限値である「7530」(実施例4)を示すとともに、範囲内の「7520」(実施例1)である。
さらに、同じく段落【0054】の【表2】には、実施例1、2及び4の「弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)」が、「0.050以上0.100以下」の範囲の、「0.059」、「0.100」、「0.095」であることが記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ.また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
本件特許明細書の段落【0022】の式(2)は、「ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数(Nmd)」を求める式であって、
Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、
Mnm:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量、
Mm:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量、
Ar:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの共重合比、
Br:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの共重合比、
NM:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数
の各値から求められる式(2)は、[ポリアルキレンエーテルジオールの平均重合度(1分子中に重合している平均ユニット数)]と、[側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aと側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bのうち、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの割合]と、[側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数]とを、掛け合わせるものであることは明らかである。
しかし、上記の[側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aと側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bのうち、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの割合]の項について、本件特許明細書の段落【0022】の式(2)中では、「Ar/(Ar+Br)」と記載されており、これは、側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの割合を意味しており、この記載では側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの割合を求めることにならず、「Ar/(Ar+Br)」の記載のうち分子の「Ar」は、明らかな誤記であるといえる。
ここで、訂正事項2は、この明らかな誤記である段落【0022】の式(2)の「Ar/(Ar+Br)」との記載を、「Br/(Ar+Br)」と訂正するものであり、「ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数(Nmd)」を求めようとする式(2)の意味と整合する。
実際、式(2)を、
Nmd=Mdo/[Mnm×{Ar/(Ar+Br)}+Mm×{Br/(Ar+Br)}]×Br/(Ar+Br)×NM
とすると、例えば、本件特許明細書の実施例1についてみれば、各値を【表1】から、「Mdo:1800、Mnm:72、Mm:86、Ar:90、Br:10、NM:2」とすると、「4.9」と算出され、【表1】中の値とも合致する。
よって、訂正事項2の訂正は、明らかな誤記を正しい記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当する。

また、訂正事項2の訂正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定にも適合するものである。、

(3)一群の請求項について
上記訂正事項1及び2に係る各訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1?3に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本件訂正発明1は、上記「第2 1.(1)イ」に示すとおりのものである。

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る特許に対して、特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

[理由1]本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1には、「ギャザー部材から取り出した」旨規定されているが、ギャザー部材からの取り出す態様によって、ギャザー部材から取り出した繊維の物性は変動し得るものであり、そのような物性により特定される「ギャザー部材」は、明確ではない。
(2)明細書中(段落【0022】)の式(2)の「Ar/(Ar+Br)」は誤記ではないか。

[理由2]本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
[理由3]本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特開2006-144192号公報
甲第2号証:特開平9-136937号公報

3.取消理由1(特許法第36条違反)に係る当審の判断
(1)ア.本件は、紙おむつ等のギャザー部のポリウレタン弾性糸は、「おむつの製造工程において弾性繊維は延伸工程やホットメルトによる接着工程等を経ることから、工程中に物性が変化し、使用方法によっては効果の程度が変動する」(本件特許明細書の段落【0003】)ため、「ギャザー部材を構成する弾性繊維が、特定の伸長時応力、回復力、残留歪み物性を有することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った」(同【0006】)ものであり、このギャザー部材を構成する弾性繊維の物性を、本件訂正発明1は、「ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維がホットメルト接着剤を介して不織布に接着されているギャザー部材であって、該ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、該不織布から剥離させて該ギャザー部材から取り出し、1日風乾させた」ポリウレタン弾性繊維の物性により特定している。
申立人は、特許異議申立書(16頁6?13行)において、「ギャザー部材の素材、ギャザー部材への取り付け態様(例えば、熱を加えるか否か、どのような接着剤を使用するのかなど)、ギャザー部材からの取り外し態様(例えば、張力を作用させて取り外すのであればその張力の大きさがどの程度であるかなど)によって、ギャザー部材から取り出す繊維の物性は、大きく変動しうるし、意図的に大きな変動を伴うこともできる。・・・・『ギャザー部材から取り出した』旨の規定があることで、構成要件C?G(特に繊維の物性に関する構成要件D?F)は、無限とも言えるほど多彩に変化しうるということになり、発明の範囲を確定することができない。」と主張する。
そこで本件訂正発明1をみると、ギャザー部材の素材については「ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維」と「不織布」からなり、ギャザー部材への取り付け態様については「ホットメルト接着剤を介して」接着し、ギャザー部材からの取り外し態様については「ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、不織布から剥離させてギャザー部材から取り出し、1日風乾させた」ものと、申立人が主張する物性が変動する要因として挙げる事項は、本件訂正発明1において特定されている。そして、申立人は、ギャザー部材から取り外す際、張力を作用させて取り外すのであればその張力の大きさがどの程度であるかにより、ギャザー部材から取り出す繊維の物性は大きく変動しうると主張するが、本件特許明細書に「ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した。撹拌後、不織布から剥離した弾性繊維を取り出し、1日風乾させた。」(段落【0040】)とあるように、「ポリウレタン弾性繊維」と「不織布」の素材同士を「ホットメルト接着剤を介して」取り付けたものを、「シクロヘキサン」に浸漬、撹拌して取り外す際に、ポリウレタン弾性繊維の物性が変わる程の外力を加えて引き剥がさないと、不織布からポリウレタン弾性繊維を取り出せないものではなく、取り外す際の外力により、ポリウレタン弾性繊維の物性が変動するというようなことはない。また、他に変動すると認めるに足る要因もない。
すると、本件訂正発明1で特定された態様により取り出されたポリウレタン弾性繊維の物性が変動するとは直ちにはいえず、取り出されたポリウレタン弾性繊維の物性で特定される本件訂正発明1は明確である。
また、本件訂正発明2及び3も同様である。

イ.さらに、本件特許明細書の段落【0035】?【0047】には、ポリウレタン弾性繊維の物性の計測方法が記載され、段落【0048】?【0054】には、具体的な実施例1?5とともに比較例1?3も記載されているから、これらの記載を参酌すれば、当業者であれば、本件訂正発明1?3を実施することが困難であるとはいえない。

ウ.申立人は、平成29年2月16日の意見書(「3(1)」)で、弾性部材の伸長の倍率の違いや、ホットメルト接着剤の種類の違いにより、不織布から取り出した際のポリウレタン弾性繊維の物性が変動し得ることを実験により確認した旨主張するが、この申立人の実験は、ポリウレタン弾性部材の伸長倍率やホットメルト接着剤の種類の違いにより、取り出す前のポリウレタン弾性部材の物性に差違が生じることを確認しているにすぎず、取り出す態様により物性に差違が生じることを示すものではなく、取り出したポリウレタン弾性部材の物性により特定される本件訂正発明1?3が、明確ではないとする根拠となり得るものではない。また、申立人の、ギャザー部材の作製後の期間の違い(意見書では製造直後か7ヶ月経過後か)により物性が変わるとの主張についても、上記と同様である。
また、申立人は、同じく意見書で、「作用させる剥離力、剥離速度、剥離の際の弾性繊維の掴み代をどのように設定するかなどによっても、物性は容易に変動する」とも主張するが、有機溶媒のシクロヘキサンに浸漬して撹拌することにより、ポリウレタン弾性繊維の物性が変わる程の外力を加えないと不織布からポリウレタン弾性繊維を取り出せないものとはいえず、取り出す際の外力によりポリウレタン弾性繊維の物性が変動するというようなことがないことは、上記アで述べたとおりであり、この申立人の主張も採用できない。
さらに、申立人は、同じく意見書で、シクロヘキサンの量、撹拌の態様、浸漬や撹拌の際の温度等の取り出し方、測定方法が規定されていない旨主張するが、上述したように、シクロヘキサンに浸漬して撹拌する際、ポリウレタン弾性繊維の物性が変わる程の外力を加えないと不織布からポリウレタン弾性繊維を取り出せないものでもなく、また、ポリウレタン弾性繊維の物性が変わることが容易に予測できるような取り外し方を、あえて取るようなことはしないことも明らかであるし、測定方法についても、本件特許明細書に記載の方法に依ることが明らかであるから、シクロヘキサンの量、撹拌の態様、浸漬や撹拌の際の温度等の取り出し方、測定方法についてまで、請求項に規定することが求められるものではない。
申立人は、平成29年6月30日の上申書(4頁3行?末行)で、「シクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、1日風乾させる」か否かにより、「300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)」が変わることを実験により確認した旨主張するが、この申立人の実験も、「ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、不織布から剥離させてギャザー部材から取り出し、1日風乾させた」という本件の取り出す態様を経て、取り出したポリウレタン弾性部材の物性に差違が生じることを示したものではなく、取り出したポリウレタン弾性部材の物性により特定される本件訂正発明1?3が、明確ではないとする根拠とはなり得ない。

エ.また、本件特許明細書の段落【0022】中の式(2)の誤記は、本件訂正請求により訂正された。

オ.よって、本件訂正発明1?3は明確であり、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件訂正発明1?3に係る特許が、特許法第36条第6項第2号及び同条第4項第1号に規定される要件を満たしていないとすることはできない。

(2)申立人が特許異議申立書に記載する特許法第36条第6項第1号に係る特許異議申立理由は、上記取消理由には採用しなかったが、本件訂正発明1?3は、本件特許明細書において具体的な実施例1?5とともに比較例1?3が示されることで、本件訂正発明1?3の効果を確認されているところ、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができるから、本件訂正発明1?3に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていないとすることはできない。

4.取消理由2及び3(特許法第29条違反)に係る当審の判断
(1)提出された証拠に記載された発明
申立人が提出した甲第1号証(特に、実施例1の記載、段落【0057】)には以下の発明が記載されている。
「THFと3-メチルTHKの共重合体であるポリエーテルジオール(3-メチルTHFの比率が約15モル%、保土ヶ谷化学(株)製、PTG-L3500、分子量3500)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを、1:1.85のモル比で窒素気流下、90℃、無溶媒の条件で4時間反応させ、得られたイソシアネート末端ウレタンプレポリマ585gを、1225gのジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、6.38gのエチレンジアミンと1.39gの1,2-ジアミノプロパンと0.92gのジエチルアミンとの混合液を160gのDMAcで希釈した鎖伸長剤溶液を添加し攪拌して重合体溶液を製造し、得られた重合体溶液(ポリウレタン濃度30重量%)を紡糸溶液として乾式紡糸し製造された、33デシテックス/4フィラメントの弾性糸であって、このソフトストレッチ性と耐熱性に優れる弾性糸を用いた、紙おしめなどの漏れ防止用の締め付け材料」(以下、「甲1発明」という。)

また、申立人が提出した甲第2号証(特に、実施例1の記載、段落【0030】)には以下の発明が記載されている
「10.2モル%の3メチル-テトラヒドロフランを含む分子量2016のコポリエーテルグリコール1モルに対しMDIは1.7モルの比でN_(2)気流中90℃180分間固相重合して、NCO含量2.41%を有するイソシアネート末端コポリエーテルグリコール(ソフトセグメントの分子量L=5503)とし、このイソシアネート末端コポリエーテルグリコールを50℃に冷却し、DMACを添加して36%の固形物を有する混合物とし、5分間強く掻き混ぜを行ない溶解させ、強く掻き混ぜながら追加量のDMAC中に87モル%のエチレンジアミンと13モル%のジエチルアミンからなる化学量論的な量の混合物を添加して溶液重合を行い、得られたセグメント化コポリエーテルグリコールポリウレタン-尿素重合体の溶液は32%の固形分(重量基準)を含み、この重合体溶液にビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタンとt-ブチルジエタノールアミンの重付加重合物およびジビニルベンゼンパラクレゾール共重合物を添加し、この溶液を乾式紡糸して40d、4フィラメント凝固糸を製造し、このフィラメントを640m/minの速度で引張り、775m/minで巻取りを行い得た、ポリウレタン弾性繊維であって、この低温特性および耐熱性に優れるポリウレタン弾性繊維を用いた、紙おしめ等のサニタリー品の漏れ防止締め付け部材」(以下、「甲2発明」という。)

(2)ア.本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、
本件訂正発明1が「ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、不織布から剥離させてギャザー部材から取り出し、1日風乾させた後の弾性繊維」の物性について、「弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが6350以上7530以下であり、弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.100以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下であり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsが、3.8≦Nmms≦35を満たす」ものであるのに対し、
甲1発明には、ギャザー部材から取り外した「弾性糸」の物性は特定されておらず、本件訂正発明1のような物性を備えるのか不明である点で、少なくとも相違する。

イ.本件は、前記「3.(1)ア」で述べたように、ポリウレタン弾性繊維はおむつの製造工程により物性が変化することから、ギャザー部材から取り出した弾性繊維の物性について、課題を解決し得る弾性繊維の物性を特定したものである。これに対し、甲1発明はそのようなものではなく、むしろ製造した弾性糸自体の物性について特定するものである。
しかも、申立人が、甲第1号証の実施例1の記載、本件特許明細書の段落【0038】、【0040】?【0047】の記載に従って得たとするギャザー部材から取り外したポリウレタン弾性繊維であっても(特許異議申立書11頁下から3行?12頁末行)、その物性を測定して得られた値は、弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが「7540」、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が「0.11」であり、これらの値は本件訂正発明1のものと相違している。
よって、上記相違点は実質的なものであり、本件訂正発明1は甲1発明ではない。

ウ.本件訂正発明1と甲2発明との対比においても、上記相違点と同様に、甲2発明には、ギャザー部材から取り外した「ポリウレタン弾性繊維」の物性は特定されておらず、本件訂正発明1のような物性を備えるのか不明である点で、少なくとも相違する。
そして、甲2発明も、甲1発明と同様に製造した弾性糸自体の物性により特定するものであり、申立人が特許異議申立書において示す甲第2号証の実施例の追試結果においても、本件訂正発明1で特定される各数値範囲をすべて満たすものは示されていない。
よって、上記相違点は実質的なものであり、本件訂正発明1は甲2発明でもない。

(3)申立人は、甲第1号証、甲第2号証の他に、甲第3号証(特開2001-39627号公報)及び甲第4号証(特開2005-320636号公報)を提出するが、甲第3号証及び甲第4号証にも、上記相違点について記載も示唆もされていない。

本件は、おむつの製造工程において、弾性繊維は延伸工程やホットメルトによる接着工程等を経て物性が変化することから、ギャザー部材から取り出した弾性繊維の物性について、課題を解決し得る弾性繊維の物性を特定したものであるが、甲第1号証?甲第4号証のいずれもギャザー部材から取り出した弾性繊維の物性について記載するものではなく、ギャザー部材から取り出した弾性繊維の物性に着目しようとする動機付けがない以上、本件訂正発明1は、甲1発明又は甲2発明並びに甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件訂正発明2及び3は、いずれも本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件訂正発明1は、上記のように、甲1発明又は甲2発明ではなく、甲1発明又は甲2発明並びに甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件訂正発明2及び3も、甲1発明又は甲2発明ではなく、甲1発明又は甲2発明並びに甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5)よって、本件訂正発明1?3は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、本件訂正発明1?3に係る特許については、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ギャザー部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用品や使い捨て紙おむつに代表される吸収性物品、マスク、包帯等の医療用資材の基材として好適な、特定の弾性繊維が含有されたギャザー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつの腰部や脚部等は、フィット感を向上し、尿などの漏れを防ぐために伸縮性を有するギャザー部が配置されている。このようなギャザー部には、伸縮性を得るためにゴムやポリウレタン弾性繊維が使用され、通常、ゴムやポリウレタン弾性繊維を伸長した状態で、ホットメルト接着剤等により不織布に接着され、ギャザー部を構成している。
このため、ホットメルト接着剤等により不織布に接着された後のゴムやポリウレタン弾性繊維の伸縮材料としての特性が、紙おむつ等のフィット感や尿漏れ等に大きく影響する。
【0003】
こうした紙おむつ等のギャザー部は、従来から各種の提案がなされている。
例えば、以下の特許文献1には、特定のポリアルキレンエーテルジオールからなるポリウレタン弾性繊維に特定の処理剤を付着させることにより、着脱しやすく快適なフィット感を有するポリウレタン弾性糸が提案されている。しかし、おむつの製造工程において弾性繊維は延伸工程やホットメルトによる接着工程等を経ることから、工程中に物性が変化し、使用方法によっては効果の程度が変動する。
また、以下の特許文献2には、弾性繊維を2枚のシート間に一定間隔に配置したギャザー部の物性を特定することにより、装着時のズレが発生しにくく、ゴムの跡付きが抑制できるパンツ型おむつが提案されているが、これらの効果を得るための弾性繊維については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-344214号公報
【特許文献2】特開2004-81365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ギャザー部材中の弾性繊維を特定することにより、着脱しやすく、フィット感が良好であり、ずれ落ち難い衛生製品、医療品等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、ギャザー部材を構成する弾性繊維が、特定の伸長時応力、回復力、残留歪み物性を有することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0007】
[1]ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維が含有されたギャザー部材であって、該ギャザー部材から取り出した該弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが4800以上11000以下であり、該弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.150以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下であり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsが、下記式(1):
3.8≦Nmms≦35 …式(1)
を満たす、前記ギャザー部材。但し、前記弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msは、前記ポリアルキレンエーテルジオールと前記有機ジイソシアネートからなるポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトル図において、両端がウレタン結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f1)と、一方がウレタン結合でもう一方がウレア結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f2)の積分曲線の高さをそれぞれF1、F2としたとき、以下の構造式:
【化1】

{式中、R_(1)?R_(3)は有機基である。}中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mを、下記式(9):
m=2×(F1/F2) …式(9)
により求め、さらに、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msとして下記式(10):
Ms=(Mdo+Mdi)×m+Mdo …式(10)
{式中、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、m:前記式(9)により求めた、前記構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mである。}により求めたものであり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(10)により求めたソフトセグメント部分の数平均分子量Msを、下記式(5):
Nmms=Nmd×{(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1} …式(5)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量である。}に代入して求めたものである。
【0010】
[2]前記[1]に記載のギャザー部材を含む吸収性物品。
【0011】
[3]前記[1]に記載のギャザー部材を含む医療用資材。
【発明の効果】
【0012】
本発明のギャザー部材を使用した衛生製品、医療品等は着脱しやすく、フィット感が良好であり、ずれ落ち難い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のギャザー部材を構成するポリウレタン弾性繊維のソフトセグメント部分及びハードセグメント部分の構造式の一例の化学構造式。
【図2】本発明のギャザー部材を構成するポリウレタン弾性繊維の原料のポリアルキレンエーテルジオールの構造式の一例の化学構造式。
【図3】本発明のギャザー部材を構成するポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトル図(例示)。
【図4】弾性繊維の走行応力を測定する装置の概略図。
【図5】糸切れ評価装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本実施形態のギャザー部材には、少なくとも構成材料の一部に弾性繊維が用いられる。本実施形態における弾性繊維としては、ポリウレタン弾性繊維、ポリエステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維、天然ゴム、合成ゴムから成るゴム糸、これらを主体とした他の有機合成樹脂との複合又は混合によって得られるものが用いられる。
【0015】
ポリウレタン弾性繊維とは、ポリエーテルジオールと有機ジイソシアネートから成るソフトセグメント部分と、有機ジイソシアネートとジアミン若しくはジオールから成るハードセグメント部分とから構成される。図1に、本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維のポリウレタンウレアのソフトセグメント部分とハードセグメント部分の構造式の一例を示す。図1中、R_(1)はポリアルキレンエーテルジオールの残基、R_(2)は有機ジイソシアネートの残基、そしてR_(3)はジアミンの残基を表す。本実施形態においては、特定の伸長時応力、回復力、残留歪みを発現させる観点から、ポリウレタン弾性繊維を用いるのが好ましい。
【0016】
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維中のポリアルキレエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等の炭素数2?6のアルキレン基が直鎖状にエーテル結合したものを用いてもよいし、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン等の炭素数2?6の直鎖状のものと、1,2-プロピレン、3-メチルテトラメチレン、3-メチルペンタメチレン、2,2-ジメチルプロピレン等の炭素数2?10の分岐状のアルキレン基の2種以上がエーテル結合した、側鎖にメチル基を有している共重合ポリアルキレンエーテルジオールを用いてもよい。
【0017】
得られるギャザー部材のストレッチ性能、耐水性、耐光性、耐摩耗性の観点から、アルキレン基の1つがテトラメチレン基であり、他のアルキレン基として3-メチルテトラメチレン、又は2,2-ジメチルプロピレン基がエーテル結合した共重合ポリアルキレンエーテルジオールが好ましい。
【0018】
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維中の有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族及び芳香族のジイソシアネートの中で、反応条件下で溶解又は液状を示すものを全て適用することができる。例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレン-ビス(3-メチル-4-フェニルイソシアネート)、2,4-トリレンジイソシアネート、2、6-トリレンジイソシアネート、m-及びp-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチル-p-キシリレンジイソシアネート、m-及びp-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジメチル-1,3-キシリレンジイソシアネート、1-アルキルフェニレン-2,4及び2,6-ジイソシアネート、3-(α-イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6-ジエチルフェニレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニル-ジメチルメタン-4,4-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン-ビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-及び1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。反応性や伸長時応力から好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0019】
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維中のイソシアネート基と反応する鎖延長剤である多官能性活性水素原子含有化合物としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2?10の直鎖または分岐した脂肪族、脂環族又は芳香族の活性水素を有するアミノ基若しくはヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、N-メチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ピペラジン、特開平5-155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水、低分子量のグリコール、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10-デカンジオール、1,3-ジメチロールシクロヘキサンおよび1,4-ジメチロールシクロヘキサン等を用いることができる。エチレンジアミン又は1,2-プロピレンジアミンが好ましい。
【0020】
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維中のイソシアネート基と反応する末端停止剤である単官能性活性水素原子としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等やエタノールのようなアルキルアルコール等が用いられる。これらの鎖延長剤や末端停止剤は、単独又は、2種以上混合して用いてもよい。
【0021】
ポリウレタン弾性繊維のポリウレタン化の反応操作に関しては、無溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の溶剤を用いてもよい。
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維のポリウレタン系重合体は、ポリアルキレエーテルジオールとモル過剰の有機ジイソシアネートを反応させてソフトセグメントとなるウレタン中間重合体を合成後、鎖延長剤でハードセグメントを重合し、末端停止剤で末端封鎖するといった公知の技術を用いて製造することができる。
【0022】
本実施形態に用いるポリウレタン弾性繊維のソフトセグメント部分に含まれる、ポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数を制御するためには、ポリアルキレンエーテルジオールの種類、ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量Mdo、ポリアルキレンエーテルジオールの共重合比、ソフトセグメント数平均分子量Msを調整する必要がある。図2に、ポリアルキレンエーテルジオールの一例を示す。o、pはそれぞれ側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aと側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの平均繰り返し数を表し、q、r、sは各メチレン基の繰り返し数を、R_(4)、R_(5)はH、又はCH_(3)を表す。側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量をMnm、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量をMm、AとBの共重合比をAr:Br、側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数をNMとしたときの、ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数Nmdは、下記式(2):
Nmd=Mdo/[Mnm×{Ar/(Ar+Br)}+Mm×{Br/(Ar+Br)}]×Br/(Ar+Br)×NM …式(2)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mnm:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの1ユニットの分子量、Mm:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニットの分子量、Ar:側鎖メチル基を持たないエーテルユニット部Aの共重合比、Br:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの共重合比、NM:側鎖メチル基を持つエーテルユニット部Bの1ユニット中の側鎖メチル基の個数である。}により計算することができる。
【0023】
また、ソフトセグメント数平均分子量Msを制御するためには、ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量Mdoと、ポリアルキレンエーテルジオールに対する有機ジイソシアネートのモル比N_(1)を調整する必要がある。ここで、ソフトセグメント数平均分子量Msは、下記式(3):
Ms={Mdo+Mdi(N_(1)-N_(0))}/(N_(1)-N_(0)-1)-2Mdi …式(3)
{式中、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、N_(1):有機ジイソシアネートのポリアルキレンエーテルジオールに対するモル比、N_(0):下記式(4):
N_(0)=aN_(1)^(4)+bN_(1)^(3)+cN_(1)^(2)+dN_(1)+e …式(4)
(式中、定数a=0.03806、定数b=-0.3997、定数c=1.617、定数d=-2.144、定数e=0.8795である。)により求められるウレタンプレポリマー反応後に存在する未反応の有機ジイソシアネートのポリアルキレンエーテルジオールに対するモル比である。}により計算することができる。
【0024】
つまり、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msを制御するためには、使用するポリアルキレンエーテルジオールの分子量Mdoを決定した上で、上記式(3)のMsが所定の値となるように、ポリアルキレンエーテルジオールに対する有機ジイソシアネートのモル比N_(1)を設計すればよい。さらに、ソフトセグメント数平均分子量Ms中に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの平均個数は(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1から計算できることから、ソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、下記式(5):
Nmms=Nmd×{(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1} …式(5)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量である。}により計算することができる。
【0025】
このソフトセグメント部分に含まれる、ポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、ギャザー部材を構成する弾性繊維の応力、回復性、残留歪み、さらにはおむつ製造工程における糸切れの諸物性の観点から、3以上35以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3以上18以下である。
【0026】
また、ポリウレタン弾性繊維におけるソフトセグメント部分の数平均分子量Msは4800以上11000以下であることが好ましい。4800未満では、ポリウレタン全体におけるハードセグメント部分の占める割合が増加し、ポリウレタン重合体の粘度安定性の低下、さらには紡糸工程での糸切れを引き起こす。11000を超える場合では、ポリウレタン全体におけるハードセグメント部分の占める割合が低下し、ポリウレタン弾性繊維の耐熱性が低下し、さらにはポリウレタン弾性繊維の弾性性能が大きく低下する。
【0027】
ポリウレタン重合体組成物には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、ヒンダードフェノール系薬剤やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、リン系及び各種ヒンダードアミン系の酸化防止剤、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム等の無機物、カーボンブラック及び各種顔料、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む抗菌剤や消臭剤、帯電防止剤、酸化窒素捕捉剤、熱酸化安定剤、光安定剤等を併用して添加してもよい。
【0028】
このようにして得られたポリウレタン重合体は、公知の乾式紡糸、溶融紡糸又は湿式紡糸法等で繊維状に成形し、ポリウレタン弾性繊維を得ることができる。また、異なる原料を用いて重合したポリウレタン重合体を紡糸の前段階で混合して紡糸してもよい。
【0029】
ポリウレタン弾性繊維の単糸数は限定されず、モノフィラメント及びマルチフィラメントのいずれでもよいが、接着性の観点から、単糸繊度が5?25dt(デシテックス)であるマルチフィラメントが好ましい。弾性繊維の総繊度は10?3000dtが好ましい。得られたポリウレタン弾性繊維は、通常、紙管パッケージに巻き取る前又は後に、ロールオイリング、ガイドオイリング、スプレーオイリング等の公知の方法によって処理剤を付与されるが、処理剤を付与しないで巻き取ってもよい。
【0030】
本実施形態に使用する処理剤は特に限定されないが、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、アミノ変性シリコン、鉱物油、鉱物性微粒子、例えば、シリカ、コロイダルアルミナ、タルク等、高級脂肪酸金属塩粉末、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固形状ワックス等の油剤を単独、又は必要に応じて任意に組合せて付与してもよい。また、ホットメルトを介した不織布との接着性及び巻糸体からの解舒性、おむつ製造工程中の摩擦性向上を目的として、ホモまたは共重合ポリアルキレンエーテルジオールと末端にOH基を有する炭素数が8?25の高級アルコールの混合物に鉱物油、ジメチルシリコン、又は鉱物油とジメチルシリコンとの混合物を添加した処理剤を使用してもよい。
【0031】
ギャザー部材に使用する弾性繊維の走行応力は0.060g/dt以上であることが好ましい。走行応力が0.060g/dt未満では、ギャザー製造時にガイドやローラー間で弾性繊維の弛み、又はばたつきが発生し、弾性繊維の糸切れに繋がりやすい。
【0032】
通常、ギャザー部材に使用する弾性繊維は、ギャザー部に配置される際に巻糸体から解舒された後、ガイドやローラーを介してドラフト率2.0?4.0の範囲で延伸され、その状態でホットメルトを直接弾性繊維に塗布し不織布に接着する、あるいはホットメルトを塗布した不織布に弾性繊維を接着する工程を経る。その工程を経ることにより、弾性繊維に軽微なセットがなされ、所望の物性を発現する弾性繊維を得ることができる。
【0033】
本実施形態のギャザー部材を構成する弾性繊維は、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.150以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、かつ、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下である。300%伸張回復繰返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)は0.050以上0.150以下である。0.050未満では応力が低すぎて本来の弾性体としての機能を発現することができず、0.150を超えると紙おむつを着用する場合に伸張する力が大きいためにスムーズに着用することができない。
300%伸張回復繰返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)は、好ましくは0.060以上0.145以下である。また、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)は65以上95以下である。65未満では、着用時の締め付け力が弱くなりずれ落ちる等の不具合が生じ、95を超える弾性繊維は物理的に生産が困難である。
さらに300%伸張回復繰返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)は42以下である。42を超えると着用時に弾性繊維が歪むことで締め付け力が弱くなりずれ落ちる等の不具合が生じる。
【0034】
本実施形態に用いるギャザー部材中の弾性繊維は、裸糸であっても他の弾性繊維又は非弾性繊維によって被覆、カバリングされたものであってもよい。
本実施形態のギャザー部材は、生理用品や使い捨て紙おむつに代表される吸収性物品や、マスク、包帯等の医療用資材の基材として好適に使用される。紙おむつにおいては、ウエスト部や脚回り部に不織布にホットメルトを介して弾性繊維を接着された部位があるが、本実施形態のギャザー部材は、こうした部位に特に好適に用いられる。ギャザー部材は、弾性糸が伸長された状態でホットメルト等を介して不織布等に接着される方法を含む、紙おむつ、生理用品、マスク、包帯の製造工程における通常の方法により作製することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例には以下の方法を用いた。
(1)粘度安定性評価方法
重合によって得られたポリウレタン溶液を溶媒が飛散しないように密閉容器に入れ、50℃のセーフティーオーブン(タバイエスペック社製SPH-200型)内に15日間、放置した。50℃で15日間放置する前後のポリウレタン溶液の粘度を、回転粘度計(東京計器製BH型)を用いて測定し、その粘度上昇幅Δη(poise)を粘度安定性の指標とした。Δηが小さいほど、紡糸工程での糸切れ等がなく安定生産可能なポリウレタン溶液である。
【0036】
(2)弾性繊維の走行応力測定方法
紡糸によって得られた弾性繊維の巻糸体1を、図4の装置にかけ、弾性繊維送り出しロール2を速度10m/分、巻き取りロール3を速度30m/分の延伸倍率3倍で走行させ、テンションメーター4で糸走行時の応力(g)を測定した。得られた応力値を、弾性繊維の繊度で除した値を走行応力(g/dt)とした。
【0037】
(3)おむつ製造工程における糸切れ評価方法
紡糸によって得られた弾性繊維の巻糸体1を、図5の装置にかけ、弾性繊維送り出しロール5を速度50m/分、弾性繊維を3回巻きつけたプレドラフトロール6を速度80m/分、巻き取りロール7を速度85m/分の条件で走行させた。観察部位8での弾性繊維の挙動を3分間目視観察し、次の評価基準:
◎:糸揺れ幅が0mm以上?2mm未満
○:糸揺れ幅が2mm以上?5mm未満
△:糸揺れ幅が5mm以上
×:糸切れ
を用いて評価した。
【0038】
(4)ギャザー部材の作製方法
弾性繊維を5mmの間隔で平行に3本並べ、弾性繊維の元の長さに対して3倍になるように伸長し、160℃で溶融させたヘンケルジャパン(社)製ディスポメルト5434を伸張させた弾性繊維に、繊維1本当たり0.03g/mとなるようにサンツール(社)製のコームガンで塗布し、幅方向5cm、目付17g/m^(2)の旭化成せんい(社)製不織布、エルタスガード(登録商標)2枚で挟み込み、その上からローラーにて圧着し、ギャザー部材を作製した。
【0039】
(5)ギャザー部材の着脱性、フィット性評価方法
前記(4)の方法で作製したギャザー部材を無伸長状態で1日放置し、弾性繊維の応力を十分緩和させた。その後、緩和させた状態でギャザー長42cmを測りとり、この末端同士をヒートシーラーで熱接着し、ギャザー部材から成る周囲42cmの輪を作製した。この輪をウエスト長75cm?80cmの被験者10人がウエスト部位に着用し、その際の着用感の官能評価を、下記評価基準で実施した。
・着脱性
◎:着脱性が良いと判断した人が8?10人の場合
○:着脱性が良いと判断した人が6?7人の場合
△:着脱性が良いと判断した人が4?5人の場合
×:着脱性が良いと判断した人が3人以下の場合
・フィット性
◎:締め付けが適度と判断した人が8?10人の場合
○:締め付けが適度と判断した人が6?7人の場合
△:締め付けが適度と判断した人が4?5人の場合
×:締め付けが適度と判断した人が3人以下の場合
【0040】
(6)300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)、200%保持率(%)、残留歪み(%)の測定方法
前記(4)の方法で作製したギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した。撹拌後、不織布から剥離した弾性繊維を取り出し、1日風乾させた。風乾後、弾性繊維の長さ(m)と重量(g)から繊度(dt)を下記式(6):
繊度(dt)=10000/弾性繊維の長さ(m)×弾性繊維の重量(g) …式(6)
により求めた。
引張試験機(オリエンテック(株)製RTG-1210型テンシロン)を使用し、20℃、相対湿度65%の条件下で、試料長10mmの風乾後の弾性繊維を100mm/分の速度で伸度0%?300%の伸長回復繰り返し試験を3回実施した。その際、繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN)を測定した。得られた応力値を前記式(6)により求めた弾性繊維の繊度(dt)で除した値を300%伸長時の応力(cN/dt)とした。
【0041】
また、300%伸長回復繰り返し試験の伸長時の応力をSM、回復時の応力をRMとし、繰り返し3回目の200%伸度の時のSM(cN)とRM(cN)を測定した。この200%伸度の時のSMに対するRMの比率を200%応力保持率(%)と呼び、下記式(7):
200%応力保持率(%)=200%RM/200%SM×100 …式(7)
{式中、200%RM:300%伸長回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%伸度の時のRM(cN)、200%SM:300%伸長回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%伸度の時のSM(cN)である。}により求めた。
【0042】
さらに300%伸長回復繰り返し試験を3回実施後のRMが0となる歪み量RS(mm)を測定した。この時の残留歪み(%)は下記式(8):
残留歪み(%)=RS/10×100 …式(8)
{式中、RS:300%伸長回復繰り返し試験を3回実施後のRMが0となる歪み量(mm)である。}により求めた。
【0043】
(7)NMRによるソフトセグメント部分の数平均分子量Msの測定方法
前記(4)の方法で作製したギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した。撹拌後、不織布から剥離した弾性繊維を取り出し、1日風乾させた。その後、クロロホルムを溶媒としてソックスレー抽出を行い、有機系添加剤を除去した。クロロホルムを乾燥除去し、以下の装置と条件で測定を行った。
測定装置 :JEOL社製 ECS400
測定核 :1H
共鳴周波数 :400MHz
積算回数 :256回
測定温度 :室温
溶媒 :重水素化ジメチルホルムアミド
測定濃度 :1.5重量%
化学シフト基準:ジメチルホルムアミド(8.023ppm)
【0044】
この測定条件で測定したポリアルキレンエーテルジオールと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトルの例を図3に示す。図3中の線PがNMRスペクトルであり、Iがその積分曲線である。両端がウレタン結合である4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのメチレン基(f1)のピークが3.87ppmに、一方がウレタン結合でもう一方がウレア結合である4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのメチレン基のピーク(f2)が3.84ppmに見られた。ピークf1、f2の積分曲線の高さをそれぞれF1、F2とした。
【0045】
図1の構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mは、下記式(9):
m=2×(F1/F2) …式(9)
により求めた。
【0046】
さらに、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msは下記式(10):
Ms=(Mdo+Mdi)×m+Mdo …式(10)
{式中、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、m:前記式(9)により求めた、図1の構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mである。}により求めた。
【0047】
また、ポリアルキレンエーテルジオールの構造やポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量MdoはNMRスペクトルによって確認することもできる。
ソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(10)によって求められるソフトセグメント部分の数平均分子量Ms値を用い、前記式(5)より求めた。
【0048】
[実施例1]
テトラメチレン基と2,2-ジメチルプロピレン基からなる、数平均分子量1800で2,2ジメチルプロピレン基の共重合率が10モル%である共重合ポリアルキレンエーテルジオール1800g(1.00モル)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート335g(1.34モル)を乾燥窒素雰囲気下、60℃で3時間攪拌することで反応させて、末端がイソシアネートであるウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミド2610gを追加して室温で攪拌することにより、均一なプレポリマー溶液とした。
一方、ジアミンとしてエチレンジアミンを20.1g(0.335モル)、末端停止剤としてジエチルアミンを3.29g(0.0450モル)、ジメチルアセトアミド2545gに溶解した溶液を、上記プレポリマー溶液に高速攪拌下で一気に加え、さらに室温下で1時間反応させ、ポリウレタン溶液を得た。このポリウレタン溶液の原液安定性を評価したところ、Δηが210poiseであった。
【0049】
さらに重合直後のポリウレタン溶液に、添加剤としてp-クレゾールとジシクロペンタジエンとイソブチレンの縮合物をポリウレタンポリマー固形分に対して1重量%、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールをポリウレタンポリマー固形分に対して0.2重量%、ハイドロタルサイトをポリウレタンポリマー固形分に対して0.3重量%添加して、均一な溶液とした。添加剤を加えたポリウレタン溶液は室温減圧下で脱泡し、紡糸原液を得た。
この紡糸原液を、紡口口金を使用して紡口直下の加熱窒素ガス温度270℃の雰囲気下に吐出し、ゴデッドローラーと巻き取りボビン間のドラフト1.15の条件下で、巻き取り速度400m/分で、ジメチルシリコンを主成分とする油剤を付与した後、ボビンに巻き取り、620デシテックス(72フィラメント)のポリウレタン弾性繊維を得た。
【0050】
紡糸によって得られたポリウレタン弾性繊維の走行応力を測定したところ、0.055g/dtであり、おむつ製造工程における糸切れ評価は〇であった。
このポリウレタン弾性繊維からなるギャザー部材を作製し、ギャザー部材の着用感を評価したところ、着脱性は◎、フィット性は○であった。また、ギャザー部材から抜き出したポリウレタン弾性繊維の物性を測定したところ、300%伸長回復繰り返し試験の繰り返し3回目の300%伸長時の応力が0.059cN/dt、200%応力保持率が89%、残留歪みが31%であった。
【0051】
また、このポリウレタン弾性繊維のMdoは1800、Mnmは72、Mmは86、Ar:Brは90:10、NMは2であることから、前記式(2)よりNmdは4.9となる。さらに、ギャザー部材から抜き出したポリウレタン弾性繊維のNMR測定の結果、図3のスペクトルが得られた。図1中のf1、f2に対応する積分曲線の高さF1、F2は、各々7.99、5.73であった。これらから求めたソフトセグメント部分の平均繰り返し数mは、前記式(9)より2.79であった。つまり、このポリウレタンウレアのソフトセグメント部分の数平均分子量Msは、前記式(10)より7520であった。これは原料仕込み量から前記式(3)及び前記式(4)より求めたMsが7550であることから、NMR測定によって得られた値は原料仕込み量から計算された値と良い一致を示した。さらに、ソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(5)より、18.6であった。
【0052】
[実施例2?4、参考例5、比較例1?3]
実施例1と同様の方法で以下の表1に示す原料及び仕込み比で製造したポリウレタン溶液を、実施例1と同様の方法で紡糸を行い、620デシテックス(72フィラメント)のポリウレタン弾性繊維を得た。さらに実施例1と同様に、ギャザー部材を作製し、ギャザー部材の着脱性、フィット性、ギャザーを構成する弾性繊維の物性評価、NMRによる分析を行った。結果を以下の表1、表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のギャザー部材は、生理用品や使い捨て紙おむつに代表される吸収性物品、マスク、包帯等の医療用資材の基材として使用されることで、着脱しやすく、フィット感が良好であり、ずれ落ち難い製品を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 弾性繊維の巻糸体
2 送り出しロール
3 巻き取りロール
4 テンションメーター
5 送り出しロール
6 プレドラフトロール
7 巻き取りロール
8 観察部位
9 セラミックフックガイド
10 セラミックフックガイド
11 セラミックフックガイド
12 ベアリングフリーローラー
13 ベアリングフリーローラー
14 ベアリングフリーローラー
15 セラミックフックガイドにかかる糸条がなす角度=120°
16 セラミックフックガイドにかかる糸条がなす角度=120°
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンエーテルジオール、有機ジイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する活性水素原子含有化合物から得られるポリウレタン弾性繊維がホットメルト接着剤を介して不織布に接着されているギャザー部材であって、該ギャザー部材を有機溶媒のシクロヘキサンに10分浸漬し、撹拌した後、該不織布から剥離させて該ギャザー部材から取り出し、1日風乾させた後の該弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msが6350以上7530以下であり、該弾性繊維の300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の300%伸長時の応力(cN/dT)が0.050以上0.100以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目の200%応力保持率(%)が65以上95以下であり、300%伸張回復繰り返し試験における繰り返し3回目後の残留歪み(%)が42以下であり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsが、下記式(1):
3.8≦Nmms≦35 …式(1)
を満たす、前記ギャザー部材。但し、前記弾性繊維のソフトセグメント部分の数平均分子量Msは、前記ポリアルキレンエーテルジオールと前記有機ジイソシアネートからなるポリウレタン弾性繊維のNMRスペクトル図において、両端がウレタン結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f1)と、一方がウレタン結合でもう一方がウレア結合である有機ジイソシアネートのメチレン基のピーク(f2)の積分曲線の高さをそれぞれF1、F2としたとき、以下の構造式:
【化1】

{式中、R_(1)?R_(3)は有機基である。}中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mを、下記式(9):
m=2×(F1/F2) …式(9)
により求め、さらに、ソフトセグメント部分の数平均分子量Msとして下記式(10):
Ms=(Mdo+Mdi)×m+Mdo …式(10)
{式中、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量、m:前記式(9)により求めた、前記構造式中のソフトセグメント部分の平均繰り返し数mである。}により求めたものであり、かつ、前記弾性繊維を構成するポリマーのソフトセグメント部分に含まれるポリアルキレンエーテルジオールの側鎖メチル基の平均個数Nmmsは、前記式(10)により求めたソフトセグメント部分の数平均分子量Msを、下記式(5):
Nmms=Nmd×{(Ms-Mdo)/(Mdo+Mdi)+1} …式(5)
{式中、Nmd:ポリアルキレンエーテルジオール1分子に含まれる側鎖メチル基の平均個数、Ms:ソフトセグメント部分の数平均分子量、Mdo:ポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量、Mdi:有機ジイソシアネートの分子量である。}に代入して求めたものである。
【請求項2】
請求項1に記載のギャザー部材を含む吸収性物品。
【請求項3】
請求項1に記載のギャザー部材を含む医療用資材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-08 
出願番号 特願2014-158581(P2014-158581)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (D01F)
P 1 651・ 536- YAA (D01F)
P 1 651・ 121- YAA (D01F)
P 1 651・ 537- YAA (D01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 玲奈福井 弘子斎藤 克也  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
谿花 正由輝
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5853065号(P5853065)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 ギャザー部材  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 三間 俊介  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 三間 俊介  
代理人 中村 和広  
代理人 齋藤 都子  
代理人 齋藤 都子  
代理人 中村 和広  

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