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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09B
審判 一部申し立て 発明同一  C09B
管理番号 1333211
異議申立番号 異議2017-700037  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-16 
確定日 2017-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5953380号発明「顔料分散剤、顔料分散剤の製造方法および顔料分散液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5953380号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2、7、8〕について訂正することを認める。 特許第5953380号の請求項1、7及び8に係る特許を維持する。 特許第5953380号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5953380号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2013年11月26日〔優先権主張 2012年12月11日(JP)日本国〕を国際出願日として出願され、平成28年6月17日に特許権の設定登録がされ、同年7月20日にその特許公報が発行され、その請求項1?2及び7?8に係る発明の特許に対し、平成29年1月16日に平川弘子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 1月16日 特許異議申立書(特許異議申立人)
同年 3月30日付け 取消理由通知
同年 6月 2日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 7月14日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
1.訂正請求
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成29年6月2日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、7、8について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

2.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項A?Dのとおりである。

(1)訂正事項A
請求項1の「メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、
前記グラフトコポリマーが、
酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基又は塩基性基が結合している主鎖と、
その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し、且つ、
該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%であることを特徴とする顔料分散剤。」を「メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、
前記グラフトコポリマーが、
酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖と、
その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し、且つ、
該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%であり、
前記グラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gであることを特徴とする顔料分散剤。」に訂正する。

(2)訂正事項B
請求項2を削除する。

(3)訂正事項C
請求項7の「請求項1又は2に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。」を「請求項1に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。」に訂正する。

(4)訂正事項D
請求項8の「さらに色素誘導体が含有されてなり、前記顔料分散剤の主成分であるポリマーの合成原料である酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)が、酸性基を有するメタクリレートの場合は、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体であり、塩基性基を有するメタクリレートの場合は、上記色素誘導体が酸性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。」を「さらに色素誘導体が含有されてなり、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。」に訂正する。

3.訂正の適否
(1)訂正事項A
訂正事項Aは、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基又は塩基性基が結合している主鎖」のうちの「塩基性基」である場合のものを削除して「酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖」に限定するとともに、訂正前の請求項2に記載されていた事項に対応する「前記グラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gである」という特徴を訂正前の請求項1の記載に導入するものである。
したがって、訂正事項Aは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項Aのうち、訂正前の「酸性基又は塩基性基」を「酸性基」に改める訂正は択一的事項の削除であるから新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正後の「前記グラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gである」という特徴を組み込む訂正は訂正前の請求項2に記載された特徴を組み込むものであるから新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項Aは、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項Aは、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた「酸性基又は塩基性基」のうち「塩基性基」の場合を削除し、かつ、訂正前の請求項2に記載された特徴を有するものに限定することからなるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項Aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項B
訂正事項Bは、訂正前の請求項2を削除して、減縮するものである。
したがって、訂正事項Bは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項Bは、訂正前の請求項2を削除するものであるから新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項Bは、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項Bは、訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項Bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項C
訂正事項Cは、訂正前の請求項2の削除に伴って、訂正前の請求項7において引用する「請求項1又は2」から請求項2を削除し、訂正後の「請求項1」を引用する従属形式での記載に改めるものである。
したがって、訂正事項Cは特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項Cは、訂正前の請求項2の削除に伴って、その引用する請求項から請求項2を削除するものであって、その直接に引用する請求項1において新たな技術的事項が導入されるものではないことは上述のとおりであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項Cは、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項Cは、訂正前の請求項2の削除に伴って、その引用する請求項から請求項2を削除するものであって、その直接に引用する請求項1において実質上特許請求の範囲が拡張し、又は変更されるものではないことは上述のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項Cは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項D
訂正事項Dは、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた事項のうちの「塩基性基」である場合のものを削除したことに伴って、訂正前の請求項8に記載されていた「前記顔料分散剤の主成分であるポリマーの合成原料である酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)が、酸性基を有するメタクリレートの場合は、」及び「り、塩基性基を有するメタクリレートの場合は、上記色素誘導体が酸性基を有する色素誘導体であ」との記載を削除して、減縮するものである。
したがって、訂正事項Dは特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項Dは、訂正前の「前記顔料分散剤の主成分であるポリマーの合成原料である酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)が、酸性基を有するメタクリレートの場合は、」及び「り、塩基性基を有するメタクリレートの場合は、上記色素誘導体が酸性基を有する色素誘導体であ」との記載を削除して、減縮するものであって、その直接又は間接に引用する請求項1及び7において新たな技術的事項が導入されるものではないことは上述のとおりであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項Dは、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項Dは、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた事項のうちの「塩基性基」である場合のものを削除したことに伴い減縮するものであって、その直接又は間接に引用する請求項1及び7において実質上特許請求の範囲が拡張し、又は変更されるものではないことは上述のとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項Dは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)一群の請求項について
訂正事項A?Dによる本件訂正は、請求項1、2、7及び8を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2、7及び8はいずれも請求項1を直接又は間接に引用するものであって、訂正前の請求項1、2、7及び8に対応する訂正後の請求項1、2、7及び8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。なお、他の請求項において、請求項1、2、7及び8との間に引用関係はない。
したがって、訂正事項A?Dによる本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

(6)訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項A?Dによる本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、7、8〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1、2、7及び8に係る発明(以下、順に「本1発明」、「本2発明」、「本7発明」及び「本8発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2、7及び8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(訂正箇所に下線を付す。)。

「【請求項1】メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、
前記グラフトコポリマーが、
酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖と、
その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し、且つ、
該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%であり、
前記グラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gであることを特徴とする顔料分散剤。」
「【請求項2】(削除)」
「【請求項7】請求項1に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。」
「【請求項8】さらに色素誘導体が含有されてなり、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。」

第4 取消理由
1.特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。

(1)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
訂正前の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
訂正前の請求項8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)特許法第29条の2について(同法第113条第2号)
訂正前の請求項1、2、7、8は、本件特許出願の日前に出願され、本件特許出願後に出願公開された他の特許出願の出願当初明細書(甲第3号証)に記載の発明と同一である。本件特許発明1、2、7、8と当該他の特許出願の出願当初明細書に記載の発明の発明者は同一の者でなく、本件特許出願と当該他の特許出願の出願人は同一の者でない。

(3)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2011/129078号
甲第2号証:特開2012-220637号公報
甲第3号証:特開2013-119568号公報

2.当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、7及び8に係る発明の特許に対して平成29年3月30日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

〔理由1〕本件特許の請求項1、2、7及び8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第3号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の請求項1、2、7及び8に係る発明に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

〔理由2〕本件特許の請求項1に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証又は甲第2号証の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

なお、当審が通知した取消理由で引用した甲第1?3号証は、特許異議申立人が提示した甲第1?3号証に同じである。

第5 当審の判断
当審は、本1発明、本7発明、及び本8発明は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
さらに、訂正前の請求項2は、訂正により削除されているので、請求項2についての申立てを却下する。

1.理由1(特許法第29条の2)について
(1)甲第3号証及びその記載事項
甲第3号証(以下「甲3」という。)に係る特許出願(特願2011-267059号)は、平成23年12月6日に出願人を「大塚化学株式会社」とし、発明者を「梅本 光」として出願され、平成25年6月17日に「特開2013-119568号公報」として出願公開されたものであって、その願書の最初に添付した明細書、又は特許請求の範囲(以下「先願明細書等」という。)には、次のとおりの記載がなされている。

摘記3a:請求項1、7及び8
「【請求項1】下記一般式(1):【化1】

[一般式(1)において、nは、1?10の整数である。R^(1)は、水素原子またはメチル基である。R^(2)は、炭素数が1?10のアルキレン基である。R^(3)は、炭素数が1?10のアルキレン基である。]
で表わされる部分構造を含むセグメントAと、
下記一般式(2):【化2】

[一般式(2)において、R^(4)は、水素原子またはメチル基である。R^(5)は、炭素数が1?10のアルキレン基である。R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1?10のアルキル基である。]
で表される部分構造を含むセグメントBとを有し、
アミン価が、20mgKOH/g?150mgKOH/gである、ブロック共重合体。…
【請求項7】請求項1?6のいずれか1項に記載のブロック共重合体からなる、分散剤。
【請求項8】請求項7に記載の分散剤及び顔料を含む、顔料分散組成物。」

摘記3b:段落0001及び0021
「【0001】本発明は、ブロック共重合体、分散剤及び顔料分散組成物に関する。…
【0021】本発明によれば、例えば分散剤として用いられたときに、分散性、アルカリ現像性、乾燥再溶解性の優れた顔料分散組成物を与えることができる。」

摘記3c:段落0066、0068及び0078
「【0066】顔料分散組成物は、必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー、光重合開始剤、顔料誘導体、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤などが挙げられる。…
【0068】顔料誘導体としては、例えば、上記の顔料の骨格構造に、直接またはアルキル基、アリール基、複素環基などを介して、スルホン酸基、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基などが置換したものが挙げられる。上記の顔料と顔料誘導体とを併用することで、顔料の分散性、分散安定性などを向上させることができる。…
【0078】<重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)>
GPC(商品名:GPCV-2000、日本ウォーターズ社製、カラム:TSKgel α-3000、移動相:10mMトリエチルアミン/ジメチルホルムアミド溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から、分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。」

摘記3d:段落0088?0091
「【0088】<重合開始剤の合成>(合成例1):エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート(以下「BTEE」という)の合成…
【0089】(合成例2):ジブチルジテルリド(以下「DBDT」という)合成…
【0090】<分散剤の合成>(合成例3):分散剤Aの合成…メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物(商品名:プラクセルFM5、ダイセル化学社製、以下「PCL5」という)3.00g、メタクリル酸n-ブチル(商品名:アクリエステルB、三菱レイヨン社製、以下「BMA」という)9.00g、アゾビスイソブチニトリル(商品名:AIBN、大塚化学社製、以下「AIBN」という)0.0493g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PMA」という)6.71gを仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。…
【0091】得られた溶液に、予めアルゴン置換したメタクリル酸ジメチルアミノエチル(商品名:GE720(DAM)、三菱ガス化学社製、以下「DMAEMA」という)3.00g、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え、60℃で29時間反応させた。」

摘記3e:段落0096?0098
「【0096】(合成例5):分散剤Cの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(9.03g)、BMA(3.00g)、AIBN(0.0493g)、PMA(4.14g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0097】得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(3.00g)、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え、60℃で29時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0098】反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、攪拌しているn-ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Cを得た。重量平均分子量(Mw)は、15,900、分子量分布(PDI)は、1.88、アミン価は、65mgKOH/gであった。結果を表1に示す。」

摘記3f:段落0136?0138
「【0136】<実施例1?14及び比較例1?5>
顔料10質量部、分散剤3質量部、バインダー樹脂3質量部、メトキシプロパノール10質量部、及びPMA74質量部となるように配合を調整し、遊星ボールミル(0.5mmジルコニアビーズ、2時間)で撹拌して、表1に示す実施例1?14及び比較例1?5の顔料分散組成物を得た。分散剤としては、合成例3?17で得た分散剤A?Оを用い、バインダー樹脂には合成例18で得たバインダー樹脂Aを用い、顔料にはC.I.Pigment Red 254(商品名:BKCF、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)及びC.I.Pigment Green 58(商品名:FASTOGEN Green A110、DIC社製)を用いた。
【0137】得られた顔料分散組成物の粘度、顔料分散組成物の乾燥溶解性及びアルカリ現像性を評価した。結果を表1に示す。
【0138】【表1】



(2)甲3の先願明細書等に記載された発明
摘記3aの「一般式(1)…で表わされる部分構造を含むセグメントAと、…一般式(2)…で表される部分構造を含むセグメントBとを有し、アミン価が、20mgKOH/g?150mgKOH/gである、ブロック共重合体…からなる、分散剤。」との記載、
摘記3cの「重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)…の測定値から、分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。」との記載、
摘記3dの「重合開始剤…エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート(以下「BTEE」という)…ジブチルジテルリド(以下「DBDT」という)…メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物(…以下「PCL5」という)…メタクリル酸n-ブチル(…以下「BMA」という)…アゾビスイソブチニトリル(…以下「AIBN」という)…プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PMA」という)…メタクリル酸ジメチルアミノエチル(…以下「DMAEMA」という)」との記載、
その具体例としての摘記3eの「(合成例5):分散剤Cの合成…PCL5(9.03g)、BMA(3.00g)、AIBN(0.0493g)、PMA(4.14g)を仕込み…BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え…反応させた。重合率は、100%であった。…得られた溶液に…DMAEMA(3.00g)、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え…反応させた。重合率は、100%であった。…反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、攪拌しているn-ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Cを得た。重量平均分子量(Mw)は、15,900、分子量分布(PDI)は、1.88、アミン価は、65mgKOH/gであった。結果を表1に示す。」との記載、並びに
摘記3fの「顔料10質量部、分散剤3質量部、…及びPMA74質量部となるように配合を調整し、…表1に示す実施例1?14…の顔料分散組成物を得た。」との記載及び「表1」の「実施例3」の欄における『顔料=C.I.PigmentRed254、分散剤=分散剤C、分子構造=セグメントA:一般式(1)60質量%+一般式(3)20質量%+セグメントB:一般式(2)20質量%、アミン価=65mgKOH/g、PDI=1.88、Mw=15,900』との記載からみて、甲3の先願明細書等には、
『PCL5(メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物)60質量%とBMA(メタクリル酸n-ブチル)20質量%からなるセグメントAと、DMAEMA(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)20質量%からなるセグメントBとを有し、アミン価が65mgKOH/g、分子量分布(PDI)が1.88、重量平均分子量(Mw)が15,900であるブロック共重合体からなる分散剤。』についての発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
甲3発明の「PCL5(メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物)60質量%」からなる部分構造は、モノマーとしての『CH_(2)=C(CH_(3))COO(CH_(2))_(2)O〔CO(CH_(2))_(5)O〕_(5)H』に由来する部分構造であって、摘記3aの一般式(1)において、R^(1)が-CH_(3)、R^(2)が-CH_(2)CH_(2)-、R^(3)が-(CH_(2))_(5)-、n=5、分子量が700となる構造を有するである。
そして、本1発明の「ポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖」という「ポリマー鎖である側鎖」の「分子量」は、本件特許明細書の段落0109の「合成例4…メタクリレート系マクロモノマー(B)として、分子量3000のポリε-カプロラクトンモノメタクリレート(メタクリル酸2-ヒドロキシエチルを開始剤としてε-カプロラクトンを開環重合して得られるポリε-カプロラクトン末端メタクリレート…以下、CLMAと記す)」との記載からみて、開始剤のヒドロキシエチルに由来する「ヒドロキシアルキル部分」と重合したカプロラクトンに由来する「C5カルボン酸部分」の両方を含む「分子量」を意味するものと解されるところ、
甲3発明の「メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物」における「側鎖」としての「分子量」は、ヒドロキシエチル部分〔(12+2)×2+16+1〕とカプロラクタム部分〔16+12+16+(12+2)×5〕の合計で615(カプロラクトン部分のみで570)と計算される。
また、甲3発明の「PCL5」に由来する「ヒドロキシエチル部分」と「カプロラクタム部分」とからなる「側鎖」が甲3発明の「ブロック共重合体」に占める割合は(615/700)×60質量%=52.7質量%(カプロラクタム部分のみでは48.9%)と計算される。

以上のことを踏まえて、本1発明と甲3発明とを対比する。

甲3発明の「PCL5(メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物)60質量%」からなる部分構造は、その分子量が615であるポリヒドロキシエチルC5カルボン酸のポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するモノマー由来のポリマー鎖である側鎖に該当するから、本1発明の「その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し」に相当する。
甲3発明の「DMAEMA(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)20質量%」からなる部分構造は、本件特許明細書の段落0118の「メタクリル酸ジメチルアミノエチル(以下、DMAEMAと記す)」との記載、及び同段落0129の表2の「合成例8」において「19.2」の組成比(質量比)で用いられている「DMAEMA」に合致する塩基性基を有するメタクリレート由来の主鎖であって、本1発明の「酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖」とは、両者とも「メタクリレート(A)から誘導された主鎖」を有するという点において一致する。
甲3発明の「PCL5(メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物)60質量%とBMA(メタクリル酸n-ブチル)20質量%からなるセグメントAと、DMAEMA(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)20質量%からなるセグメントB」とを有する「ブロック共重合体」は、本1発明の「該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%である」に相当する。
甲3発明の「ブロック共重合体からなる分散剤」は、当該「ブロック共重合体」を構成するセグメント単位がいずれもメタクリレート系(メタアクリル酸系と同義)のモノマー成分に由来し、その主鎖に「カプロラクトン5mol付加物」に由来する側鎖がグラフトした構造にあるコポリマー(共重合体と同義)であって、甲3の請求項8(摘記3a)の「顔料分散組成物」との記載にあるように当該「分散剤」が「顔料」を分散するための分散剤であることも明らかであるから、本1発明の「メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤」に相当する。
甲3発明の「アミン価が65mgKOH/g、分子量分布(PDI)が1.88、重量平均分子量(Mw)が15,900であるブロック共重合体」と、本1発明の「前記主成分とするグラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gである」とは、両者とも「前記主成分とするグラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000である」という点において一致する。
なお、甲3発明の「BMA(メタクリル酸n-ブチル)20質量%」からなる部分構造は、本件特許明細書の段落0043?0044の「これらと共重合でき得る他のラジカル重合性モノマー(a)…メチルメタクリレート…ブチルメタクリレート」との記載、及び同段落0107の「メタクリル酸メチル(以下、MMAと記す)」との記載にある「他のラジカル重合性モノマー(a)」に対応するものであって、甲3発明における「BMA」の使用は、本1発明との対比において相違点を構成しない。

してみると、本1発明と甲3発明は、両者とも『メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、前記グラフトコポリマーが、メタクリレート(A)から誘導された主鎖と、その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し、且つ、該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%であり、前記主成分とするグラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であることを特徴とする顔料分散剤。」に関するものである点において一致し、
(α)主鎖が、本1発明においては「酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖」であるのに対して、甲3においては、塩基性基を有するメタクリレート(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)から誘導された塩基性基が結合している主鎖であって、酸性基を有するメタクリレートから誘導された酸性基が結合している主鎖ではない点、及び
(β)グラフトコポリマーが、本1発明においては「酸価が15?70mgKOH/g」であるのに対して、甲3発明においては「アミン価が65mgKOH/g」である点の2つの点で相違する。

したがって、本1発明は、甲3の先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(4)本7発明
本7発明は「請求項1に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。」に関するものであって、本1発明の「顔料分散剤」と「顔料」とを「有機溶剤」などの液媒体に分散してなる「顔料分散液」に関するものである。
してみると、本1発明の「顔料分散剤」が甲3の先願明細書等に記載されているとはいえないことは上述のとおりであるから、本7発明が甲3の先願明細書等に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本7発明は、甲3の先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(5)本8発明
本8発明は「さらに色素誘導体が含有されてなり、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。」に関するものであって、本7発明の「顔料分散剤」に特定の「色素誘導体」が更に含有されてなる「顔料分散液」に関するものである。
してみると、本7発明の「顔料分散液」が甲3の先願明細書等に記載されているとはいえないことは上述のとおりであるから、本8発明が甲3の先願明細書等に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本8発明は、甲3の先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
(1)甲第1号証及び甲第2号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載がある。
摘記1a:段落0078?0079及び0087
「[0078](重合工程)
1000mLフラスコにテトラヒドロフラン(以下、THFと略すことがある)594.35g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)10.98gを加え、-60℃まで冷却した。その後、n-ブチルリチウム7.89g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、メタクリル酸1-エトキシエチル(以下、EEMAと略すことがある)4.04g、メタクリル酸n-ブチル(以下、nBMAと略すことがある)61.33g、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PME-200 日油株式会社製)(以下、PEGMAと略すことがある)26.19gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。そしてガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)・ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)(移動相THF、DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した。
次にメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(以下、DMMAと略すことがある)39.71gを滴下し、滴下後30分反応継続した。そして、GC・GPC(移動相DMF)を測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.21gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5260、分子量分布が1.09、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/EEMA]=30-[47/20/3]重量%の共重合体であることを確認した。
[0079](脱保護工程)
得られた前駆体ポリマーの50重量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略すことがある)溶液200gを、160℃に加温し3時間反応させた。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF)により分析し、分子量(Mw)が5140、分子量分布が1.08、組成比がDMMA-[nBMA/PEGMA/MA]=31-[47/20/2]重量%の共重合体であることを確認した(MAは、メタクリル酸を表す)。…
[0087]上記実施例1?4及び比較例1で得られた共重合体溶液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの40重量%溶液とした後、これらを顔料分散剤として用いて、以下の顔料分散液を調製した。」

イ.甲第2号証の記載事項
甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の記載がある。
摘記2a:請求項6
「【請求項6】前記顔料分散剤が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有し、さらに前記繰り返し単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【化1】

[式(I)及び式(II)中、R^(1)は、水素原子又はメチル基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?8のアルキル基、Aは、炭素数1?8のアルキレン基、-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]_(x)-CH(R^(6))-CH(R^(7))-又は-[(CH_(2))_(y)-O]_(z)-(CH_(2))_(y)-で示される2価の基、R^(4)は、炭素数1?18のアルキル基、炭素数2?18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]x-R^(8)又は-[(CH_(2))_(y)-O]_(z)-R^(8)で示される1価の基である。R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R^(8)は、水素原子、あるいは炭素数1?18のアルキル基、炭素数2?18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、-CHO、-CH_(2)CHO、又は-CH_(2)COOR^(9)で示される1価の基であり、R^(9)は水素原子又は炭素数が1?5のアルキル基である。上記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1?18の整数、yは1?5の整数、zは1?18の整数を示す。mは3?200の整数、nは10?200の整数を示す。]」

摘記2b:段落0064及び0067
「【0064】Aは、炭素数1?8のアルキレン基、*-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]_(x)-CH(R^(6))-CH(R^(7))-**、又は、*-[(CH_(2))_(y)-O]_(z)-(CH_(2))_(y)-**で示される2価の基である。…xは1?18の整数、好ましくは1?4の整数、より好ましくは1?2の整数であり、yは1?5の整数、好ましくは1?4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1?18の整数、好ましくは1?4の整数、より好ましくは1?2の整数である。…
【0067】上記R^(4)において、x、y及びzは、前記Aで説明したとおりである。」

(2)甲1及び甲2に記載された発明
ア.甲1発明
摘記1aからみて、甲1には『メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸n-ブチルおよびメタクリル酸が重合してなる共重合体からなる顔料分散剤。』についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

イ.甲2発明
摘記2aからみて、甲2には『下記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有し、さらに前記繰り返し単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体からなる顔料分散剤。

[式(I)及び式(II)中、R^(1)は、水素原子又はメチル基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?8のアルキル基、Aは、炭素数1?8のアルキレン基、-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]_(x)-CH(R^(6))-CH(R^(7))-又は-[(CH^(2))_(y)-O]_(z)-(CH_(2))_(y)-で示される2価の基、R^(4)は、炭素数1?18のアルキル基、炭素数2?18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]_(x)-R^(8)又は-[(CH_(2))_(y)-O]_(z)-R^(8)で示される1価の基である。R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R^(8)は、水素原子、あるいは炭素数1?18のアルキル基、炭素数2?18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、-CHO、-CH_(2)CHO、又は-CH_(2)COOR^(9)で示される1価の基であり、R^(9)は水素原子又は炭素数が1?5のアルキル基である。上記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1?18の整数、yは1?5の整数、zは1?18の整数を示す。mは3?200の整数、nは10?200の整数を示す。]』についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

(3)対比・判断
ア.甲1発明に基づく容易性
(ア)対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸n-ブチルおよびメタクリル酸が重合してなる共重合体からなる顔料分散剤」は、本1発明の「メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤」に相当する。
甲1発明の「メタクリル酸」が重合してなる共重合体の主鎖は、本1発明の「酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖」に相当する。
甲1発明の「メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート」に由来する側鎖と、本1発明の「その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖」とは、両者とも「ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖から選ばれるポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖」という点において共通する。
してみると、本1発明と甲1発明は、両者とも『メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、前記グラフトコポリマーが、置換基を有するメタクリレート(A)から誘導された置換基が結合している主鎖と、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有する顔料分散剤。』に関するものである点において一致し、次の〔相違点1〕?〔相違点4〕の点において相違する。

〔相違点1〕メタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖の分子量が、本1発明においては「その分子量が500?5000である」とされているのに対して、甲1発明においては、その分子量が特定されていない点。
〔相違点2〕メタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める質量比での割合が、本1発明においては「50?90質量%であり」とされているのに対して、甲1発明においては、その質量比が特定されていない点。
〔相違点3〕グラフトコポリマーの数平均分子量が、本1発明においては「5000?25000」であるのに対して、甲1発明においては、その数平均分子量が特定されていない点。
〔相違点4〕グラフトコポリマーの酸価が、本1発明においては「15?70mgKOH/g」であるのに対して、甲1発明においては、その酸価が不明である点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。
上記〔相違点1〕について、甲1の段落0043?0045には、その「ポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位」として「式(IX)で表される繰り返し単位」が例示されており、その式(IX)の「-(R^(36)O)_(m1)-R^(37)」で示される基について「R^(36)は、C2?C4アルキレン基を表す。R^(37)は、水素原子又はC1?C6アルキル基を表し、m1は、2?150のいずれかの整数を表し」との記載がなされ、同段落0048には「上記式(IX)及び(III)において、m1およびmは、好ましくは2?10である。」との記載がなされている。
そして、同段落0078の「実施例1」で用いられている「メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PME-200)」は、例えば、特開2011-148889号公報(参A)の段落0057?0058の記載にあるとおりの化学構造を有するモノマーであるから、その式(IX)の「-(R^(36)O)_(m1)-R^(37)」で示される側鎖が「-(CH_(2)CH_(2)O)_(4)-CH_(3)」で示されるもの(m1=4)であって、当該側鎖の分子量は{(12+1+1)×2+16}×4+12+1×3=191と計算されるものである。
また、甲1の段落0048の『式(IX)…において、m1…は、好ましくは2?10である。』との記載における「m1」の好ましい範囲の側鎖の分子量の上限値は44×10+15=455と計算されるものである。
してみると、甲1において好ましい実施態様とされる「実施例1」の具体例(甲1発明)のメタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖の分子量が「191」となり、甲1の段落0048において好ましいとされる側鎖の分子量の上限値も「455」となるので、甲1において好ましいとされる側鎖の分子量から逸脱した数値範囲の本1発明の「500?5000」という側鎖の分子量を想到することが、当業者にとって容易であるということはできない。

上記〔相違点4〕について、本件特許明細書の段落0023の記載にあるように、本1発明は『その主鎖が、A成分由来の酸性基を有することから、該酸性基が吸着性基となって、塩基性顔料や塩基性基を有する色素誘導体処理顔料表面の塩基性基とイオン結合して、顔料に吸着する作用を示す』というものであって、同段落0027の記載にあるように、本1発明は『顔料分散剤を構成するグラフトコポリマー全体の酸価が15?70mgKOH/gであることによって、顔料に良好に吸着する主鎖とすることができる』という作用を奏するものである。
これに対して、甲1には、顔料分散剤として用いられる共重合体について、その酸価を特定の数値範囲にすることによって、上記作用が得られることについての記載がなく、甲1の実施例1の具体例(甲1発明)の共重合体の酸価を計算した場合に、本1発明の「15?70mgKOH/g」の範囲に一致した酸価を有するといえる根拠も見当たらない。
してみると、甲1発明の「酸価」が本1発明の数値範囲にあるとはいえず、甲1発明の「酸価」を本1発明の数値範囲に設定することが、当業者にとって容易であるということはできない。

したがって、本1発明は、相違点2及び3について検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、理由2に基づき、取り消すべきものであるとはいえない。

イ.甲2発明に基づく容易性
(ア)対比
本1発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)とを有し、さらに前記繰り返し単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したブロック共重合体からなる顔料分散剤」は、その式(I)及び(II)の化学構造式からみて、式(I)及び(II)の繰り返し単位(1)及び(2)が「メタクリレート系のグラフトコポリマー」を構成することが明らかなので、本1発明の「メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤」に相当する。
甲2発明の「下記一般式(I)で表される繰り返し単位(1)」から形成される主鎖と、本1発明の「酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖」とは、両者とも「置換基を有するメタクリレート(A)から誘導された置換基が結合している主鎖」という点において共通する。
甲2発明の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)」において、その「R^(4)」が「-[CH(R^(6))-CH(R^(7))-O]_(x)-R^(8)又は-[(CH_(2))_(y)-O]_(z)-R^(8)」で示される1価の基であって、その「R^(6)及びR^(7)」が「水素原子又はメチル基」であり、その「R^(8)」が「水素原子、あるいは炭素数1?18のアルキル基」であるものは、本1発明における「ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖から選ばれるポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有」するものに相当する。

してみると、本1発明と甲2発明は、両者とも『メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、前記グラフトコポリマーが、置換基を有するメタクリレート(A)から誘導された置換基が結合している主鎖と、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有することを特徴とする顔料分散剤。』に関するものである点において一致し、次の〔相違点5〕?〔相違点9〕の点において相違する。

〔相違点5〕主鎖を構成するメタクリレート(A)の置換基が、本1発明においては「酸性基」であるのに対して、甲2発明においては「-A-NR^(2)R^(3)」で示される「塩基性基」であって、少なくとも「酸性基」ではない点。
〔相違点6〕グラフトコポリマーの酸価が、本1発明においては「15?70mgKOH/g」であるのに対して、甲2発明においては「酸価」が明らかではない点。
〔相違点7〕メタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖の分子量が、本1発明においては「その分子量が500?5000である」とされているのに対して、甲2発明においては、側鎖の分子量として特定されていない点。
〔相違点8〕メタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める質量比での割合が、本1発明においては「50?90質量%であり」とされているのに対して、甲2発明においては、グラフトコポリマー中に占める質量比の割合として特定されていない点。
〔相違点9〕グラフトコポリマーの数平均分子量が、本1発明においては「5000?25000」であるのに対して、甲2発明においては、数平均分子量として特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点について検討する。

上記〔相違点6〕について、本件特許明細書の段落0023の記載にあるように、本1発明は『その主鎖が、A成分由来の酸性基を有することから、該酸性基が吸着性基となって、塩基性顔料や塩基性基を有する色素誘導体処理顔料表面の塩基性基とイオン結合して、顔料に吸着する作用を示す』というものであって、同段落0027の記載にあるように、本1発明は『顔料分散剤を構成するグラフトコポリマー全体の酸価が15?70mgKOH/gであることによって、顔料に良好に吸着する主鎖とすることができる』という作用を奏するものである。
これに対して、甲2には、顔料分散剤として用いられるブロック共重合体について、その酸価を特定の数値範囲にすることによって、上記作用が得られることについての記載がなく、甲2発明は、酸性基を有するメタクリレート(A)に相当する繰り返し単位を必須単位として含むものではないから、本1発明の「15?70mgKOH/g」の範囲に一致した酸価を有するとはいえない。
してみると、甲2発明の「酸価」が本1発明の数値範囲にあるとはいえず、甲2発明の「酸価」を本1発明の数値範囲に設定することが、当業者にとって容易であるということはできない。

したがって、本1発明は、その余の事項(相違点5及び7?9)について検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、理由2に基づき、取り消すべきものであるとはいえない。

(4)本7発明について
本7発明は「請求項1に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。」に関するものであって、本1発明の「顔料分散剤」と「顔料」とを「有機溶剤」などの液媒体に分散してなる「顔料分散液」に関するものである。
してみると、本1発明の「顔料分散剤」が甲1又は甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本7発明が甲1又は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本7発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(5)本8発明
本8発明は「さらに色素誘導体が含有されてなり、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。」に関するものであって、本7発明の「顔料分散剤」に特定の「色素誘導体」が更に含有されてなる「顔料分散液」に関するものである。
してみると、本7発明の「顔料分散液」が甲1又は甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえないことは上述のとおりであるから、本8発明が甲1又は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとはいえない。
したがって、本8発明は、甲1又は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(6)特許異議申立人の意見書の主張について
平成29年7月14日付けの意見書において、特許異議申立人は、
参考資料1:特開2002-155229号公報
参考資料2:特開2003-238837号公報
参考資料3:特開2012-98381号公報
参考資料4:特開2012-36251号公報
参考資料5:特開2011-245670号公報
を提示して『本件特許発明1、7および8は、甲1に記載された発明、または、甲1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項に該当するものであるから、取り消されるべきであると考えます。』と主張している。
しかしながら、上記〔相違点1〕についての検討で示したように、甲1において好ましい実施態様とされる「実施例1」の具体例(甲1発明)のメタクリレート形マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖の分子量が「191」となり、甲1の段落0048において好ましいとされる側鎖の分子量の上限値も「455」となるので、甲1において好ましいとされる側鎖の分子量から逸脱した数値範囲の本1発明の「500?5000」という側鎖の分子量を想到することが、当業者にとって容易であるということはできない。
また、特許異議申立人の意見書の第8頁には『参2の段落0020?0022には、グラフト共重合体のグラフト鎖が重合性オリゴマーによるものであること、段落0029には、「上記重合性オリゴマーの分子量としては、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000?20000であるのが好ましく、2000?15000であるのがより好ましいことが記載されています。参3の段落0014には、「グラフトポリマーの側鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500?20,000、より好ましくは700?10,000、更に好ましくは700?6000である。」ことが記載されています。これらの記載からも、顔料分散剤の保存安定性の観点から、甲11発明の側鎖の分子量を500?5000程度に制御することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると考えます。』との主張がなされている。
しかしながら、参考資料2の段落0087の「〔合成例5〕…片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(数平均分子量:6000、商品名:AA-6、東亞合成化学工業(株)製)」との記載にあるように、参考資料2の「重合性オリゴマー」は、本1発明のポリアルキレングリコール鎖、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル鎖及びポリヒドロキシアルキルカルボン酸鎖から選ばれるポリマー鎖を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)に対応するものではなく、参考資料2の段落0029の「1000?20000」という数平均分子量(Mn)が、マクロモノマーの側鎖の分子量を意味するものではないことも明らかである。
また、参考資料3の段落0019の「グラフトポリマーの側鎖の構成単位となるモノマーとしては…(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。」との記載にあるように、参考資料3の「グラフトポリマーの側鎖」は、本1発明のポリアルキレングリコール鎖、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル鎖及びポリヒドロキシアルキルカルボン酸鎖から選ばれる側鎖に対応するものではなく、参考資料3の段落0045の「片末端メタクリロイル化ポリメタクリル酸メチルマクロモノマー…数平均分子量は1800」との記載にある数平均分子量の値を参酌して、本1発明のメタクリレート系マクロモノマー(B)の側鎖の分子量の数値範囲を設定できるとはいえない。
そして、新たに提示された参考資料1?5の記載を参酌しても、甲1発明の「メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート」の側鎖の数平均分子量を、本1発明の「500?5000」という数値範囲に設定する動機付けが認められず、この点が当業者にとって適宜なし得る設計事項であると認めるに足る根拠も見当たらない。
次に、上記〔相違点4〕についての検討で示したように、甲1には、顔料分散剤として用いられる共重合体について、その酸価を特定の数値範囲にすることによって、本1発明の作用効果が得られることについての記載がない。そして、甲1発明に参考資料1?5に記載された発明を組み合わせる動機付けがあるとも認められないので、甲1発明の「酸価」を本1発明の数値範囲に設定することが、当業者にとって容易であるということはできない。
したがって、本1発明は、相違点2及び3について検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、理由2に基づき、取り消すべきものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1発明、本7発明、及び本8発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本1発明、本7発明、及び本8発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分とする顔料分散剤であって、
前記グラフトコポリマーが、
酸性基を有するメタクリレート(A)から誘導された酸性基が結合している主鎖と、
その分子量が500?5000である、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)由来のポリマー鎖である側鎖を有し、且つ、
該グラフトコポリマーを構成している、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選択されたポリマー鎖のグラフトコポリマー中に占める割合が、その質量比で、50?90質量%であり、
前記グラフトコポリマーの数平均分子量が5000?25000であり、且つ、その酸価が15?70mgKOH/gであることを特徴とする顔料分散剤。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
重合開始化合物を用いて特定のモノマー類をリビングラジカル重合してなるメタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分としてなる顔料分散剤を製造する製造方法であって、該ポリマーを、
重合開始化合物1モルに対して、
原料として、少なくとも、酸性基又は塩基性基を有するメタクリレート(A)と、
その分子量が500?5000の、ポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖の片末端にメタクリレート残基を有するメタクリレート系マクロモノマー(B)とを含む2種類以上のモノマー類を用い、その際に、該モノマー類中のメタクリレート系モノマー類の合計のモル数が20?50モルとなる比率で、且つ、形成したポリマー中に占める上記ポリマー鎖の割合が、その質量比で50?90質量%となるように構成して用い、
上記重合開始化合物と触媒との存在下、これらのモノマー類をリビングラジカル重合して得ることを特徴とする顔料分散剤の製造方法。
【請求項4】
前記メタクリレート系モノマー類の合計のモル数のうち、前記メタクリレート系マクロモノマー(B)の占める比率が、上記合計のモル数に対して10?50%である請求項3に記載の顔料分散剤の製造方法。
【請求項5】
重合開始化合物を用いて特定のモノマー類をリビングラジカル重合してなるメタクリレート系のグラフトコポリマーを主成分としてなる顔料分散剤を製造する製造方法であって、該ポリマーを、
少なくとも、エポキシ基を有するメタクリレート及び/又はイソシアネート基を有するメタクリレート(D)を含む1種以上のメタクリレート系モノマー類を、重合開始化合物と触媒との存在下、該重合開始化合物1モルに対する上記メタクリレート系モノマー類の合計のモル数が20?50モルとなる比率で用いてリビングラジカル重合して得られたエポキシ基及び/又はイソシアネート基を有するポリマー(E)に、
1個の水酸基、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基の群から選ばれるいずれか1種の官能基を有し且つ酸性基又は塩基性基を有する化合物(F)、及び
末端が、水酸基、一級アミノ基、二級アミノ基、カルボキシル基の群から選ばれる一種の官能基を有し、且つ、その分子量が500?5000であるポリアルキレン(C2?C4)グリコール鎖、ポリアルキレン(C2?C4)グリコールモノアルキル(C1?C18)エーテル鎖及びポリ(ヒドロキシアルキル(C2?C18)カルボン酸)鎖の群から選ばれるいずれかのポリマー鎖を有する化合物(G)を、形成したポリマー中に占める該化合物(G)に由来するポリマー鎖の割合が、その質量比で50?90質量%となるようにして用いて、反応させることを特徴とする顔料分散剤の製造方法。
【請求項6】
前記リビングラジカル重合する工程で使用する重合開始化合物が、ヨウ素又はヨウ素化合物の少なくともいずれかであり、該工程で使用する触媒が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物、イミド系化合物、フェノール系化合物、ジフェニルメタン系化合物及びシクロペンタジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項3又は5に記載の顔料分散剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の顔料分散剤と顔料とを、水、有機溶剤及び重合性化合物から選ばれるいずれか1種以上の液媒体に分散してなることを特徴とする顔料分散液。
【請求項8】
さらに色素誘導体が含有されてなり、上記色素誘導体が塩基性基を有する色素誘導体である請求項7に記載の顔料分散液。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-22 
出願番号 特願2014-551963(P2014-551963)
審決分類 P 1 652・ 161- YAA (C09B)
P 1 652・ 121- YAA (C09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 木村 敏康
冨永 保
登録日 2016-06-17 
登録番号 特許第5953380号(P5953380)
権利者 大日精化工業株式会社
発明の名称 顔料分散剤、顔料分散剤の製造方法および顔料分散液  
代理人 菅野 重慶  
代理人 菅野 重慶  
代理人 岡田 薫  
代理人 岡田 薫  
代理人 近藤 利英子  
代理人 近藤 利英子  
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