• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1333954
審判番号 不服2016-4400  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-24 
確定日 2017-10-25 
事件の表示 特願2014- 60491「1つ以上の仮想マシンをマイグレートする方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月 7日出願公開,特開2014-142957〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成20年9月29日(パリ条約による優先権主張2007年9月30日 アメリカ合衆国)の外国語書面出願である特願2008-250890号の一部を,特許法第44条第1項の規定により,平成26年3月24日に新たな特許出願としたものであって,
平成26年4月1日付けで特許法第36条の2第2項の規定による外国語書面,及び,外国語要約書面の日本語による翻訳文が提出されると共に審査請求がなされ,平成27年5月7日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年8月10日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年11月18日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年11月24日),これに対して平成28年3月24日付けで審判請求がなされると共に誤訳訂正書が提出され,平成28年4月26日付けで審査官により特許法第162条の規定に基づく拒絶理由が通知され,これに対して平成28年8月4日付けで意見書が提出され,平成28年8月23日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年12月19日付けで上申書の提出があったものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成28年3月 24日付けの誤訳訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。

「ソースサーバ上のマイグレートする複数の仮想マシンの数に応じて,マネジメントサービスによって論理コンテナを形成するステップと,
前記複数の仮想マシンのファイルを前記論理コンテナに関連付けるステップと,
前記複数の仮想マシンのための状態情報および前記複数の仮想マシンの前記ファイルが前記論理コンテナに全て格納されるように,前記論理コンテナに各前記仮想マシンの状態情報を格納するステップであって,前記論理コンテナは,前記複数の仮想マシンのための前記状態情報および前記複数の仮想マシンの前記ファイルのより高レベルの編成を提供する,格納するステップと,
前記複数の仮想マシンに関する前記全てのファイルを前記ソースサーバから宛先サーバにコピーせずに,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントし前記宛先サーバにマウントすることによって,前記複数の仮想マシンにおいて各前記仮想マシンを共に前記ソースサーバから前記宛先サーバにマイグレートするステップと,を具え,
前記マイグレートするステップは,
前記複数の仮想マシンをシャットダウンするステップと,
前記複数の仮想マシンをシャットダウンした後,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントした後,前記複数の仮想マシンをスタートアップさせるステップと,を具えることを特徴とする方法。」

第3.引用刊行物に記載の事項
1.平成28年4月26日付けの審査官による特許法第162条の規定に基づく拒絶理由(以下,これを「前置拒絶理由」という)において引用された,本願の原出願の第1国出願前に既に公知である,米国特許出願公開第2007/0220121号明細書(2007年9月20日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「[0019] As in physical machine environments, the virtual machine environment that is the VM 108 has a set of files related thereto. These files include configuration files, virtual disk files, and other types of files associated with the VM 108 that are needed for the VM 108 to properly run. In the embodiment of FIG.1, such files are stored on a logical volume 116 of the SAN 106. The volume 116 may span, or extend, more than one partition of more than one physical hard disk drive of the SAN 106, as is described in more detail later in the detailed description.」
([0019] 物理マシン環境などで,VM108である,仮想マシン環境は,それに関連した,一連のファイルを有している。これらのファイルは,構成ファイル,仮想ディスク・ファイル,及び,VM108が,適切に動くために必要な,VM108に関係する,他のタイプのファイルを含む。図1の実施例において,そうしたファイルは,SAN106の論理ボリューム116上に格納される。ボリューム116は,詳細な説明の後半で,更に詳述されるように,SAN106の1以上の物理ハードディスク・ドライブの,1以上のパーティションに及ぶ,或いは,拡張する。<当審にて訳出。以下,同じ。>)

B.「[0023] Therefore, embodiments of the invention, as part of the migration process of the VM 108 from the server 102A to the server 102B, do not copy or move the files relating to the VM 108 from the server 102A to the server 102B. Rather, in lieu of such file copying or moving, the following is performed. The volume 116 is dismounted at the server 102A, where it was previously mounted at the server 102A. Thereafter, the volume 116 is mounted at the server 102B. In this way, the files relating to the VM 108 can be accessed at the server 102B, without having to be physically copied over the network 104 from the server 102A to the server 102B.
[0024] It is noted that dismounting of the volume 116 at the server 102A, prior to mounting the volume 116 at the server 102B, is performed at least in part to avoid any corruption of data stored on the server 102A. For instance, as will be described, as part of the dismounting process, the server 102A flushes its file buffers of any data that is being temporarily stored within those buffers, so that the volume 116A as stored on the SAN 106 represents the latest version of the data of the volume 116A as may have been modified at the server 102A. Therefore, when the server 102B mounts the volume 116, it is guaranteed to be receiving the latest version of the data of the volume 116, and it is further guaranteed that the server 102A no longer has access to the volume 116, such that the server 102A cannot change the data after having dismounted the volume 116.」
([0023] したがって,本発明の実施例では,VM108の,サーバ102Aから,サーバ102Bへのマイグレーションの過程の一部として,VM108に関連するファイルの,サーバ102Aから,サーバ102Bへのコピー,或いは,移動はない。むしろ,そのようなファイルをコピーすること,或いは,移動することに代えて,以下を実行する。ボリューム116は,それが,以前に,サーバ102Aにマウントされている場合は,サーバ102Aから,ディスマウントされる。その後,ボリューム116は,サーバ102Bにマウントされる。このような方法で,VM108に関連するファイルは,ネットワーク104を介して,サーバ102Aからサーバ102Bへ,物理的に,コピーされる必要なく,サーバ102Bからアクセスされ得る。
[0024] サーバ102Bでボリューム116をマウントすることの前に,サーバ102Aでボリューム116をディスマウントすることは,少なくとも,サーバ102A上に格納されたデータの任意の破損を,ある程度避ける結果をもたらすことが行われる。例えば,ディスマウント過程の一部として述べられるように,サーバ102Aは,それらのバッファに,一時的に格納された任意のデータのファイルバッファをフラッシュする。そのため,SAN106上に保存されたボリューム116Aは,サーバ102Aで修正されたかもしれないボリューム116のデータの最新ヴァージョンを表す。したがって,サーバ102Bが,ボリューム116をマウントするときに,ボリューム116のデータの最新ヴァージョンを受け取ることを保証され,更に,サーバ102Aが,ボリューム116をディスマウントした後は,データを変更することが不可能となるように,サーバ102Aが,もはやボリューム116へアクセスしないことを保証する。)

C.「[0026] Thus, rather than copying or moving the files related to the VM 108 from the server 102A and 102B as part of the migration process of the VM 108, as in the prior art, embodiments of the invention dismount the volume 116 on which the files are stored, at the server 102A, and then mount the volume 116 at the server 102B. The net effect is the same, insofar as the server 102B is able to access the files regardless of whether they are copied or moved from the server 102A thereto or whether the volume 116 is dismounted at the server 102A and then mounted at the server 102B. In this way, this part of the VM migration process is performed significantly more quickly than in the prior art.」
([0026] それ故,VM108のマイグレーションの過程の一部として,サーバ102A,及び,102Bから,VM108に関連するファイルを,コピーしたり,或いは,移動したりすることは,むしろ,従来技術としてであり,本発明の実施例は,その上にファイルが格納されている,ボリューム116を,サーバ102Aで,ディスマウントし,そして,次に,サーバ112Bで,ボリューム116を,マウントする。ファイルが,サーバ102Aから,コピーされ,或いは,移動されてもされなくても,それに加えて,或いは,ボリューム116が,サーバ102Aで,ディスマウントされ,そして,次に,サーバ102Bで,マウントされてもされなくても,サーバ102Bが,そのファイルにアクセスできる限りにおいて,正味の効果は同じである。)

D.「[0036] The VM 108 is then turned or powered off (308). Turning off or powering off in this sense is itself a virtual operation, since the server 102A is not physically turned off, but rather the VM 108 is virtually turned off, as can be appreciated by those of ordinary skill within the art. In one embodiment, such turning or powering off is accomplished by calling an appropriate API exposed by the given virtualization environment software being employed.」
([0036] VM108は,次に,停止される,或いは,電源を落とされる(308)。この要旨において,停止,或いは,電源断は,当業者にとって好まれ得るものとして,サーバ102Aが,物理的に停止されるのではなく,むしろ,VM108が,仮想的に停止されるので,それ自体,仮想な処理である。1つの実施例において,こうした,停止,或いは,電源断は,与えられた仮想環境ソフトウェアが,使用されることによって,顕在化される,適切なAPIを呼び出すことによって達成される。)

E.「[0042] Thereafter, the server 102B registers the VM 108 (322). Registration of the VM 108 means that the server 102B is now hosting the VM 108. Thus, the VM 108 has been migrated from the server 102A to the server 102B, without having to copy all the files relating to the VM 108 from the server 102A to the server 102B. The VM 108 is now accessible, and can now be turned on as needed (324), by calling an appropriate API of the given virtualization environment software being employed.」
([0042] したがって,サーバ102Bは,VM108を登録する(322)。VM108の登録は,サーバ102Bが,現在,VM108をホスティングしていることを意味する。それ故,VM108は,VM108に関連する全てのファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bにコピーすることなく,VM108は,サーバ102Aから,サーバ102Bに移動されている。VM108は,現在,アクセス可能であり,与えられた仮想環境ソフトウェアが,使用されることで,適切なAPIが呼ばれることにより,必要とされるものとして(324),作動され得る。)

F.「



G.「[0017] The VM manager 118 running on the server 103 manages the VM's running on the servers 102. That is, the VM manager 118 allows for administration of the individual VM's, such as their startup, shutdown and maintenance. When a new VM is desired to be run on any of the servers 102, it is started from within the VM manager 118, and when an existing VM is desired to be shutdown, it is shutdown from within the VM manager 118. The VM manager 118 performs this functionality in relation to the servers 102A and 102B through agents 112A and 112B, collectively referred to as the agents 112, running on these servers. That is, the agents 112 are small software programs running on the servers 102A and 102B for the purposes of performing VM-related functionality on these servers.」
([0017] サーバ103上で動作するVMマネージャ118は,複数のサーバ102上で動作する仮想マシンを管理する。それ故,VMマネージャ118は,それらのスタートアップ,シャットダウン,及び,維持管理といった,個々の仮想マシンの管理を可能にする。任意のサーバ102上で,新しい仮想マシンを動作させることが要求されると,それは,VMマネージャ118の中から開始され,そして,現存する仮想マシンが,シャットダウンすることを要求されると,それは,VMマネージャ118の中から,シャットダウンされる。VMマネージャ118は,これらのサーバ上で動作している,まとめてエージェント112として言及される,エージェント112A,及び,112Bを通じて,サーバ102A,及び,102Bに関して,この機能を実行する。それ故,エージェント112は,これらサーバ上で,VM-関連機能を実行する目的で,サーバ102A,及び,102B上で動作している,小型ソフトウェア・プログラムである。)

2.原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2006-072591号公報(2006年3月16日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H.「【0016】
このシステムを用いて実計算機10から実計算機20への仮想計算機11,12および仮想計算機制御プログラム13の移動または複製の例を説明する。なお,記憶媒体30は実計算機10上のいづれかの仮想計算機に割り当てられているものとする。」

I.「



第4.引用刊行物に記載の発明
1.上記Aの「the virtual machine environment that is the VM 108 has a set of files related thereto. These files include configuration files, virtual disk files, and other types of files associated with the VM 108 that are needed for the VM 108 to properly run(VM108である,仮想マシン環境は,それに関連した,一連のファイルを有している。これらのファイルは,構成ファイル,仮想ディスク・ファイル,及び,VM108が,適切に動くために必要な,VM108に関係する,他のタイプのファイルを含む)」という記載と,同じく,上記Aの「such files are stored on a logical volume 116 of the SAN 106(そうしたファイルは,SAN106の論理ボリューム116上に格納される)」という記載から,引用刊行物1においては,“仮想マシンに対して,前記仮想マシンが適切に動作するために必要なファイルを格納するための,論理ボリュームが,生成されるステップ”が存在することが読み取れ,
また,「仮想マシン」に関連する各種「ファイル」は,「論理ボリューム」に格納されるのであるから,引用刊行物1において,“仮想マシンが適切に動作するために必要なファイルを,論理ボリュームに関連付けるステップ”が存在していることが読み取れる。

2.上記Bの「as part of the migration process of the VM 108 from the server 102A to the server 102B, do not copy or move the files relating to the VM 108 from the server 102A to the server 102B(VM108の,サーバ102Aから,サーバ102Bへのマイグレーションの過程の一部として,VM108に関連するファイルの,サーバ102Aから,サーバ102Bへのコピー,或いは,移動はない)」という記載と,同じく,上記Bの「 The volume 116 is dismounted at the server 102A, where it was previously mounted at the server 102A. Thereafter, the volume 116 is mounted at the server 102B(ボリューム116は,それが,以前に,サーバ102Aにマントされている場合は,サーバ102Aから,ディスマウントされる。その後,ボリューム116は,サーバ102Bにマウントされる)」という記載,上記Cの「 embodiments of the invention dismount the volume 116 on which the files are stored, at the server 102A, and then mount the volume 116 at the server 102B(本発明の実施例は,その上にファイルが格納されている,ボリューム116を,サーバ102Aで,ディスマウントし,そして,次に,サーバ112Bで,ボリューム116を,マウントする)」という記載,上記Eの「the VM 108 has been migrated from the server 102A to the server 102B, without having to copy all the files relating to the VM 108 from the server 102A to the server 102B(VM108は,VM108に関連する全てのファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bにコピーすることなく,VM108は,サーバ102Aから,サーバ102Bに移動されている)」という記載,及び,上記1.において検討した事項から,引用刊行物1においては,“仮想マシンVM108を,サーバ102Aから,サーバ102Bにマイグレーションする際に,前記マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bに,コピー,或いは,移動することなしに,前記ファイルが格納されている論理ボリューム116を,それがマウントされているサーバ102Aからディスマウントし,前記論理ボリューム116を,サーバ102Bにマウントするステップ”が存在することが読み取れる。

3.上記Dの「The VM 108 is then turned or powered off(VM108は,次に,停止される,或いは,電源を落とされる)」という記載と,上記Eの「The VM 108 is now accessible, and can now be turned on as needed (324), by calling an appropriate API of the given virtualization environment software being employed(VM108は,現在,アクセス可能であり,与えられた仮想環境ソフトウェアが,使用されることで,適切なAPIが呼ばれることにより,必要とされるものとして,作動され得る)」という記載と,上記Eに引用した,引用刊行物1のFIG3に開示された事項,及び,上記2.において検討した事項から,引用刊行物1においては,“マイグレーションの過程は,サーバ102Aにおいて,仮想マシンVM108が,停止されるステップと,論理ボリューム116が,サーバ102Aから,ディスマウントされるステップと,前記論理ボリューム116が,サーバ102Bに,マウントされるステップと,仮想マシンVM108が,サーバ102Bにおいて作動されるステップ”が存在するものであることが読み取れる。

4.以上,1.?3.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「仮想マシンVM108に対して,前記仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを格納するための,論理ボリューム116が,生成されるステップと,
前記仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,前記論理ボリューム116に関連付けるステップと,
前記仮想マシンVM108を,サーバ102Aから,サーバ102Bにマイグレーションする際に,前記マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bに,コピー,或いは,移動することなしに,前記ファイルが格納されている,論理ボリューム116を,それがマウントされている,サーバ102Aからディスマウントし,前記論理ボリューム116を,サーバ102Bにマウントするステップと,を有し,
前記マイグレーションする過程は,
前記サーバ102Aにおいて,前記仮想マシンVM108が,停止されるステップと,
前記論理ボリューム116が,前記サーバ102Aから,ディスマウントされるステップと, 前記論理ボリューム116が,前記サーバ102Bに,マウントされるステップと,
前記仮想マシンVM108が,前記サーバ102Bにおいて作動されるステップと,からなる方法。」

第5.本願発明と引用発明との対比
1.引用発明における「サーバ102A」,「サーバ102B」,「仮想マシンVM108」,及び,「論理ボリューム116」が,本願発明における「ソースサーバ」,「宛先サーバ」,「仮想マシン」,「論理コンテナ」に相当し,
引用発明における「仮想マシンVM108に対して,前記仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを格納するための,論理ボリューム116が,生成されるステップ」において,「仮想マシンVM108」は,「サーバ102A」から,「サーバ102B」への「マイグレーション」の対象であることは,明らかであるから,
引用発明における「仮想マシンVM108に対して,前記仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを格納するための,論理ボリューム116が,生成されるステップ」と,
本願発明における「ソースサーバ上のマイグレートする複数の仮想マシンの数に応じて,マネジメントサービスによって論理コンテナを形成するステップ」とは,
“ソースサーバ上のマイグレートする仮想マシン応じて,論理コンテナを形成するステップ”である点で共通する。

2.引用発明における「論理ボリューム116」は,「仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイル」が,関連付けられているものであるから,
引用発明における「仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,前記論理ボリューム116に関連付けるステップ」と,
本願発明における「複数の仮想マシンのファイルを前記論理コンテナに関連付けるステップ」とは,
“仮想マシンのファイルを論理コンテナに関連付けるステップ”である点で共通し,
加えて,引用発明における「ファイル」には,「仮想マシンVM108」の「状態情報」が含まれることは,当業者に周知の技術事項であることを考慮すれば,
引用発明においても,「仮想マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,前記論理ボリューム116に関連付けるステップ」に関連して,
本願発明における「仮想マシンのための状態情報および前記複数の仮想マシンの前記ファイルが前記論理コンテナに全て格納されるように,前記論理コンテナに各前記仮想マシンの状態情報を格納するステップ」に共通する,
“仮想マシンのための状態情報および前記仮想マシンの前記ファイルが前記論理コンテナに全て格納されるように,前記論理コンテナに前記仮想マシンの状態情報を格納するステップ”を有することは,明らかである。

3.引用発明における「仮想マシンVM108を,サーバ102Aから,サーバ102Bにマイグレーションする際に,前記マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bに,コピー,或いは,移動することなしに,前記ファイルが格納されている,論理ボリューム116を,それがマウントされている,サーバ102Aからディスマウントし,前記論理ボリューム116を,サーバ102Bにマウントするステップ」は,「仮想マシンVM108」が,複数でない点を除けば,本願発明における「複数の仮想マシンに関する前記全てのファイルを前記ソースサーバから宛先サーバにコピーせずに,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントし前記宛先サーバにマウントすることによって,前記複数の仮想マシンにおいて各前記仮想マシンを共に前記ソースサーバから前記宛先サーバにマイグレートするステップ」と,ほぼ,同等の処理内容であると認められるので,
引用発明における「仮想マシンVM108を,サーバ102Aから,サーバ102Bにマイグレーションする際に,前記マシンVM108が適切に動作するために必要なファイルを,サーバ102Aから,サーバ102Bに,コピー,或いは,移動することなしに,前記ファイルが格納されている,論理ボリューム116を,それがマウントされている,サーバ102Aからディスマウントし,前記論理ボリューム116を,サーバ102Bにマウントするステップ」と,
本願発明における「複数の仮想マシンに関する前記全てのファイルを前記ソースサーバから宛先サーバにコピーせずに,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントし前記宛先サーバにマウントすることによって,前記複数の仮想マシンにおいて各前記仮想マシンを共に前記ソースサーバから前記宛先サーバにマイグレートするステップ」とは,
“仮想マシンに関する前記全てのファイルを前記ソースサーバから宛先サーバにコピーせずに,論理コンテナをソースサーバからディスマウントし宛先サーバにマウントすることによって,前記仮想マシンを前記ソースサーバから前記宛先サーバにマイグレートするステップ”である点で共通する。

4.引用発明における「停止」,「作動」が,本願発明における「シャットダウン」,「スタートアップ」に相当するので,上記1.?3.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における「マイグレーションする過程は,
前記サーバ102Aにおいて,前記仮想マシンVM108が,停止されるステップと,
前記論理ボリューム116が,前記サーバ102Aから,ディスマウントされるステップと, 前記論理ボリューム116が,前記サーバ102Bに,マウントされるステップと,
前記仮想マシンVM108が,前記サーバ102Bにおいて作動されるステップ」と,
本願発明における「マイグレートするステップは,
前記複数の仮想マシンをシャットダウンするステップと,
前記複数の仮想マシンをシャットダウンした後,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントした後,前記複数の仮想マシンをスタートアップさせるステップ」とは,
“マイグレートするステップは,
仮想マシンをシャットダウンするステップと,
前記仮想マシンをシャットダウンした後,論理コンテナをソースサーバからディスマウントするステップと,
前記論理コンテナを宛先サーバにマウントするステップと,
論理コンテナを前記宛先サーバにマウントした後,前記仮想マシンをスタートアップさせるステップ”である点で共通する。

5.以上,1.?4.において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
ソースサーバ上のマイグレートする仮想マシン応じて,論理コンテナを形成するステップと,
前記仮想マシンのファイルを前記論理コンテナに関連付けるステップと,
前記仮想マシンのための状態情報および前記仮想マシンの前記ファイルが前記論理コンテナに全て格納されるように,前記論理コンテナに前記仮想マシンの状態情報を格納するステップと,
前記仮想マシンに関する前記全てのファイルを前記ソースサーバから宛先サーバにコピーせずに,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントし前記宛先サーバにマウントすることによって,前記仮想マシンを前記ソースサーバから前記宛先サーバにマイグレートするステップと,を備え,
前記マイグレートするステップは,
前記仮想マシンをシャットダウンするステップと,
前記仮想マシンをシャットダウンした後,前記論理コンテナを前記ソースサーバからディスマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントするステップと,
前記論理コンテナを前記宛先サーバにマウントした後,前記仮想マシンをスタートアップさせるステップとからなる,方法。

[相違点1]
“仮想マシン”に関して,
本願発明においては,「複数の仮想マシン」であるのに対して,
引用発明においては,「仮想マシン」が複数あることについては,特に,言及されていない点。

[相違点2]
“論理コンテナを形成するステップ”に関して,
本願発明においては,「複数の仮想マシンの数に応じて,マネジメントサービスによって論理コンテナを形成するステップ」であるのに対して,
引用発明においては,“仮想マシンの数に応じて,マネージメントサービスによって形成する”ことについては,特に,言及されていない点。

[相違点3]
本願発明においては,「論理コンテナは,前記複数の仮想マシンのための前記状態情報および前記複数の仮想マシンの前記ファイルのより高レベルの編成を提供する」ものであるのに対して,
引用発明における「論理ボリューム」において,「高いレベルの編成を提供する」ことについては,特に,言及されていない点。

第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点1]について
上記Hに引用した,引用刊行物2の「このシステムを用いて実計算機10から実計算機20への仮想計算機11,12および仮想計算機制御プログラム13の移動または複製の例を説明する」という記載,及び,上記Iに引用した,引用刊行物2の【図1】に開示されている事項から明らかなように,「仮想計算機」(本願発明における「仮想マシン」に相当)を複数,1つの「実計算機」(本願発明における「ソースサーバ」に相当)上で動作させ,当該複数の「仮想計算機」を,他の「実計算機」(本願発明における「宛先サーバ」に相当)に「移動」させる(本願発明における「マイグレート」)よう構成することは,本願の原出願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項であるから,引用発明においても,「仮想マシンVM108」を複数とし,それに応じた制御を行うことは,当業者が適宜行い得る事項である。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。

2.[相違点2]について
上記Gに引用した,引用刊行物1の記載内容にもあるとおり,引用発明においても「仮想マシン」を管理するための「マネージャ118」を有している。引用刊行物1の記載内容においては,当該「マネージャ118」が,「論理ボリューム」に関する事項まで処理している点について,明文の記載はないが,当該「マネージャ118」が,「仮想マシン」の「スタートアップ」,「シャットダウン」といった「機能」を管理していること,及び,当該「機能」には,その他の機能が含まれることが示されていること,引用発明において,「論理ボリューム116」に対して管理が行われていることを考慮すれば,引用発明において,当該「マネージャ118」に,「論理ボリューム116」への「ファイル」の関連付けを行わせるようにすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点2]は,格別のものではない。

3.[相違点3]について
本願の請求項1に記載の「論理コンテナは,前記複数の仮想マシンのための前記状態情報および前記複数の仮想マシンの前記ファイルのより高レベルの編成を提供する」という記載について,本願明細書の発明の詳細な説明には,その段落【0025】に,本願の請求項1の記載と同等の,「論理コンテナ308は,仮想マシン312,314に関するファイルおよび状態情報のより高レベルの編成を提供すると考えられる」という記載が存在しているが,ここでいう「より高いレベルの編成」が,本願明細書の発明の詳細な説明におけるどの構成に対応するものであるか,本願明細書の発明の詳細な説明には示されていない。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された「論理コンテナ」に関する記載内容は,引用発明における「論理ボリューム116」に対する処理と格別相違しない。
したがって,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された,「論理コンテナ」に関する処理の何れかが,「より高いレベルの編成」であるとしても,当業者であれば,引用発明における「論理ボリューム116」に対する処理と同様に,当該「より高いレベルの編成」の処理についても,行い得るものである。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。

なお,審判請求人は,平成28年8月4日付けの意見書において,本願発明と,引用発明との相違点として,引用刊行物1の段落[0030]の記載内容を引用して,
「引用文献1に記載のボリューム116には記憶装置に関する情報が格納されておりません。そのため,引用文献1の方法によって,複数の仮想マシンをマイグレートするには,複数の仮想マシンにおける記憶装置に関する状態情報を,ソースサーバであるサーバ102Aが,宛先サーバであるサーバBに提供する必要があります。従って,引用文献1の方法では,複数の仮想マシンを迅速かつ効率よくマイグレーションすることができません。」
と主張しているが,本願発明において,「論理コンテナ」に,当該「論理コンテナ」に関する情報が記憶され,当該情報が無ければ,「宛先サーバ」が,当該「論理コンテナ」を「マウント」できないとすると,「ソースサーバ」から,当該「論理コンテナ」が,「ディスマウント」された後は,「宛先サーバ」は,当該「論理コンテナ」が,「宛先サーバ」に「マウント」されるまで,その内容にはアクセスできない訳であるから,引用発明と同じく,「宛先サーバ」に対して,当該「論理コンテナ」を「マウント」することができないことは明らかである。
そもそも,本願発明でいうところの「仮想マシンのための状態情報」とは,「仮想マシン」のためのものであって,「論理コンテナ」に関する情報ではない。
以上に検討しとおりであるから,意見書における審判請求人の主張は,採用できない。

また,審判請求人は,平成28年12月19日付けの上申書(以下,これを「上申書」という)において,上記検討の本願発明について,「複数の仮想マシンのための状態情報および複数の仮想マシンのファイルが論理コンテナに全て格納されるように,論理コンテナに各仮想マシンの状態情報を格納するステップ」について,開示も示唆もしていない」と主張する(主張点1)と共に,特許請求の範囲についての補正案を提示し,当該補正案の請求項1等において,“論理コンテナが,マイグレート対象の複数の仮想マシンのファイルを全て含む”点,及び,“仮想マシンのための状態情報には,複数の仮想マシンの記憶装置に関する情報が含まれる”点を加えようとしている(主張点2)。
しかしながら,主張点1は,引用刊行物2に係る発明を考慮すれば,引用発明において,“複数の仮想マシンのマイグレーション”に対応し得ることは,上記「第6.相違点についての当審の判断」の1.において検討したとおりである。
次に,主張点2は,審判請求時の補正によって,拒絶査定の理由が解消している場合に採用できるものであって,上記において指摘したとおり,主張点1が採用できない以上,主張点2を採用することはできない。
仮に,拒絶査定の理由が解消したとしても,「記憶装置」に関しては,本願明細書において,段落【0007】,【0011】,【0012】,【0015】,【0022】,【0024】,【0025】,【0035】,【0040】,【0043】?【0045】,【0047】,【0049】?【0053】に記載されているが,何れにも,「状態情報には,複数の仮想マシンの記憶装置に関する情報が含まれる」と同等の記載は存在しない。
類似する記載として,段落【0007】に,「仮想マシン・マイグレーション・プロセスを実行することは,仮想マシンの全ての状態を移行することが必要である。これらの状態は,3つの領域を含む。すなわち・・・(3)仮想マシンのディスク状態(永続記憶装置)である」という記載が存在し,段落【0024】に,「各仮想マシン312,314のための状態情報は,プロセッサレジスタの状態,仮想ハードウェアの状態,仮想記憶の状態等に関する情報を含むことができる」旨の記載が存在するのみである。
しかしながら,段落【0007】,及び,段落【0024】に開示されている事項は,“サーバ間で,仮想マシンをマイグレーションする”場合に必要な条件を示すものであり,引用発明,及び,引用刊行物2に係る発明においても,当然に考慮される事項であることは,当業者においては周知の技術事項である。
以上に検討したとおりであるから,上申書における主張を採用することはできない。

4.以上,1.?3.において検討したとおりであるから,[相違点1]?[相違点3]は,いずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-17 
結審通知日 2017-05-22 
審決日 2017-06-15 
出願番号 特願2014-60491(P2014-60491)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠塚 隆  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
石井 茂和
発明の名称 1つ以上の仮想マシンをマイグレートする方法  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ