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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1334136
審判番号 不服2015-18703  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-16 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2011- 34320「トナーの組成物および工程」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開,特開2011-186455〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成23年2月21日(パリ条約による優先権主張2010年3月4日,米国)の出願であって,平成27年2月26日付けで拒絶理由が通知され,同年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年6月15日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年10月16日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成29年2月7日付けで拒絶理由が通知され,同年5月15日に意見書及び手続補正書が提出された。


2 本件出願の請求項1に係る発明
本件出願の請求項1に係る発明は,平成29年5月15日提出の手続補正書によって補正された請求項1によって特定されるとおりのものと認められるところ,当該請求項1の記載は次のとおりである。

「ガラス転移温度約58.5℃から約66℃までであり,重量平均分子量(Mw)が1000から5000までである少なくとも一つの低分子量非結晶性ポリエステル樹脂をトナーの約8重量%から約15重量%までと,ガラス転移温度約53℃から約58℃までであり,Mwが63000から94000までである少なくとも一つの高分子量非結晶性樹脂をトナーの約36重量%から約43重量%まで;少なくとも一つの結晶性ポリエステル樹脂;ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのワックス;並びに任意の着色剤を組み合わせて含有するコアと;
ガラス転移温度約58.5℃から約66℃までである少なくとも一つの非結晶性ポリエステル樹脂を含有するシェルと,ここで,シェルの非結晶性ポリエステル樹脂は,トナーの約25重量%から約35重量%までである;
を含むトナーにおいて,
ガラス転移温度約58.5℃から約66℃までである非結晶性樹脂,ガラス転移温度約53℃から約58℃までである非結晶性樹脂,またはその両方は,一般式(I)の非結晶性ポリエステル樹脂を含有し:
【化1】

(式中,Rは水素基またはメチル基,mおよびnはコポリマーのランダム単位を示し,mは約2から約10まで,nは約2から約10までである。),
少なくとも一つの結晶性樹脂は一般式(II)の結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー:
【化2】

(式中,bは約5から約2000まで,dは約5から約2000までである。)。」(以下,「本願発明」という。)


3 当審において通知した拒絶理由の概要
当審において平成29年2月7日付けで通知された拒絶理由は,概略次のとおりである。(以下,当該理由を「当審拒絶理由」という。)

請求項1ないし4(審決注:平成29年5月15日提出の手続補正書による補正前の請求項であり,当該補正前の請求項4に係る発明が本願発明に該当する。)に係る発明は,当業者において,本件出願の明細書の発明の詳細な説明の記載から,あるいは,本件出願の出願当時の技術常識に基づいて,本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないから,本件出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。


4 当審拒絶理由についての判断
(1) 特許法36条6項は,「特許請求の範囲は,次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している(以下,「サポート要件」という。)ところ,特許請求の範囲の記載が当該サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される(知財高裁 平成17年11月11日判決 平成17年(行ケ)第10042号)。

(2) そこで,本件出願について,特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載をみると,まず特許請求の範囲の請求項1の記載については,前記2で認定したとおりである。

(3) これに対して,本件出願の明細書(以下,「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明(平成27年6月2日提出の手続補正書によって,【0064】が補正されている。)には,次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本開示は一般的にトナー工程に向けてであり,さらに具体的には,エマルジョン凝集および合体工程,並びにこの様な工程および成長工程によって形成されるトナー組成物であり,この様なトナーを電子写真複写または印刷機との使用のためのトナーとして使用することである。
【0002】
改善したトナーおよびこれらの製造方法が依然望ましい。」

イ 「【0005】
他の実施形態において,本開示のトナーはガラス転移温度約58.5℃から約66℃までである少なくとも一つの非結晶性樹脂約8重量%から約15重量%までと,ガラス転移温度約53℃から約58℃までである少なくとも一つの非結晶性樹脂約36重量%から約43重量%まで;少なくとも一つの結晶性ポリエステル樹脂;ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのワックス;並びに任意の着色剤を組み合わせて含有するコアと,ガラス転移温度約58.5℃から約66℃までである少なくとも一つの非結晶性樹脂約25重量%から約35重量%までを含有するシェルとを含むことができる。実施形態において,ガラス転移温度約58.5℃から約66℃までである非結晶性樹脂,ガラス転移温度約53℃から約58℃までである非結晶性樹脂,またはその両方は,一般式(I)の非結晶性ポリエステル樹脂を含有し:
【化1】

(式中,Rは水素基またはメチル基,mおよびnはコポリマーのランダム単位を示し,mは約2から約10まで,nは約2から約10までである。),
少なくとも一つの結晶性樹脂は一般式(II)の結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー:
【化2】

(式中,bは約5から約2000まで,dは約5から約2000までである。)。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示に従って,低融点EAトナーは低分子重量樹脂,任意の高分子重量樹脂,結晶性樹脂,顔料およびワックスを含有するものとして提供する。本開示のトナーは優れた定着特性を有する。実施形態において,本開示のトナーはシェルに二つの非結晶性樹脂の混合物とのコア-シェル構造を有する。実施形態において,シェル内の二つの非結晶性樹脂は高いガラス転移温度(Tg)を有するものと,低いガラス転移温度(Tg)を有するものとを含有することができる。
・・・(中略)・・・
【0009】
実施形態において,トナー形成に利用される樹脂は非結晶性ポリエステル樹脂を含有することができる。実施形態において,樹脂は任意の触媒の存在下においてジオールと二塩基酸またはジエステルの反応によって形成されるポリエステル樹脂であることができる。
【0010】
実施形態において,適した非結晶性ポリエステル樹脂は(フマル酸プロポキシル化ビスフェノールA)-(テレフタル酸プロポキシル化ビスフェノールA)共重合体樹脂であることができ,一般式(I)を含有し:
【化3】

(式中,Rは水素基またはメチル基,mおよびnはコポリマーのランダム単位を示し,mは約2から10まで,そしてnは約2から10までである。)」

エ 「【0013】
実施形態において,本開示のトナーの利用に適した非結晶性樹脂は低分子重量の非結晶性樹脂,時々実施形態においてオリゴマーとして参照し,重量平均分子量(Mw)約500ダルトンから約10,000ダルトンまで,実施形態において約1000ダルトンから約5000ダルトンまで,他の実施形態において約1500ダルトンから約4000ダルトンまでを有する。
【0014】
低分子重量の非結晶性樹脂はガラス転移温度約58.5℃から約66℃まで,実施形態において約60℃から約62℃までを有することができる。」

オ 「【0018】
他の実施形態において,本開示のトナー形成に利用される非結晶性樹脂は高分子重量の非結晶性樹脂であることができる。本明細書において使用される高分子重量の非結晶性ポリエステル樹脂は,例えばゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によって測定される数均分子量(Mn)を例えば約1,000から約10,000まで,実施形態において約2,000から約9,000まで,実施形態において約3,000から約8,000まで,そして実施形態において約6,000から約7,000までを有することができる。樹脂の重量平均分子量(Mw)はポリスチレン基準を使用したGPC測定によると,45,000を超える,例えば約45,000から約150,000まで,実施形態において約50,000から約100,000まで,実施形態において約63,000から約94,000まで,実施形態において約68,000から約85,000までである。・・・(中略)・・・
【0019】
高分子重量の非結晶性樹脂はガラス転移温度約53℃から約58℃まで,実施形態において約54.5℃から約57℃までを有することができる。」

カ 「【0021】
実施形態において,トナー組成物は少なくとも一つの結晶性樹脂を含むことができる。本明細書において使用される“結晶性”とはポリエステルと3次元秩序化として参照する。本明細書において使用される“半結晶性樹脂”とは,樹脂が結晶性比率,例えば約10から約90%まで,実施形態において約12から約70%までとして参照する。さらに以下において使用される“結晶性ポリエステル樹脂”および“結晶性樹脂”とは,他に明記しない限り結晶性樹脂および半結晶性樹脂の両方を包囲する。
・・・(中略)・・・
【0024】
実施形態において,適した結晶性樹脂はエチレングリコールまたはノナンジオール,そしてドデカン二酸とフマル酸コモノマーの混合物と一般式(II):
【化4】

(式中,bは約5から約2000まで,dは約5から約2000までである。)」

キ 「【0027】
本開示に従って,驚くべきことにブロッキング性能を約50%改善することができると同時に,優れたトナーの荷電および定着を維持することができることを見出した。」

ク 「【発明の効果】
【0063】
実施形態において,トナーイメージは寒冷圧定着によって,即ち熱の適応なしに定着することができる。定着をいずれかの所望のまたは効果的な圧力,実施形態において約1000ポンドパースクエアインチ(psi)から約10,000ポンドパースクエアインチ,実施形態において約1,500ポンドパースクエアインチから約5,000ポンドパースクエアインチにおいて達成することができる。冷圧定着による利点は,それが低電力を必要として,熱間圧延工程と異なり,予備電力を必要としない。従って,本開示のトナーをより環境にやさしい,低いエネルギーを必要とするシステムに利用することができる。さらに熱がトナーに適応されないため,トナーは融解されず,従って定着最中に裏移りしない。
【0064】
本開示のトナーは優れたブロッキング,即ちトナーが配送中および/または保存している際,一緒に粘着することに抵抗する能力を有することができる。」

(4) 前記(3)で摘記した記載を含め本願明細書の発明の詳細な説明の記載には,その内容を理解し難い点が散見されるものの,【0002】,【0006】及び【0063】等の記載を参酌すると,本件出願の発明が解決しようとする課題(以下,「本願発明の課題」という。)は,低温での定着性とブロッキング性能に優れたトナーを提供することにあると認めることができる。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明の【0063】及び【0064】には,加熱せずに圧力のみで定着することが可能であること,及びブロッキング性能を向上できることが,発明の効果として記載されている。
しかしながら,本願明細書の発明の詳細な説明には,請求項1に記載された発明特定事項を具備することで何故本願発明の課題が解決できるのか,その作用機序について説明はされておらず,かつ,請求項1に記載された各発明特定事項に相当する構成を具備する具体例及びその低温定着性やブロッキング性能についての評価結果は一切開示されていないから,発明の詳細な説明の記載からは,そもそも当業者が本願発明の課題を解決できると認識できるようなトナーを把握することはできない。

(5) また,本件出願の出願当時の技術常識について検討してみると,例えば本件出願の出願前に頒布された特開2008-165017号公報(原査定の拒絶の理由で「引用文献1」として引用された刊行物)には,
「【請求項1】
ポリエステル樹脂A,ポリエステル樹脂B及びポリエステル樹脂Cを含む結着樹脂と,着色剤と,離型剤と,を含有し,
前記ポリエステル樹脂Aがテトラヒドロフラン不溶分を含まない分岐状の非晶性ポリエステル樹脂,前記ポリエステル樹脂Bが直鎖状の非晶性ポリエステル樹脂であり,
前記ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bが,アルキルコハク酸,アルケニルコハク酸及びそれら無水物から選択される少なくとも1種を酸成分として含んで反応させた樹脂成分を各々含有し,
前記ポリエステル樹脂Cが結晶性ポリエステル樹脂であり,かつ,これらが下記(1)?(3)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(1)ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量が25000?60000,数平均分子量が4000?10000
(2)ポリエステル樹脂Bの重量平均分子量が10000?25000,数平均分子量が3000?8000
(3)ポリエステル樹脂Cが炭素数6?10のジカルボン酸及び炭素数6?10のジアルコールを反応して得られる脂肪族結晶性ポリエステル樹脂
・・・(中略)・・・
【請求項3】
コア粒子と,該コア粒子を被覆するシェル層とを含む構造を有し,
前記コア粒子の結着樹脂が前記ポリエステル樹脂A,ポリエステル樹脂B及びポリエステル樹脂Cを含み,
前記シェル層が前記ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂Bを含むことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。」
「【0032】
ポリエステル樹脂Aとしては,・・・(中略)・・・重量平均分子量が25000?60000の範囲・・・(中略)・・・のものを用いる。重量平均分子量・・・(中略)・・・が上記の範囲より大きいと,低温定着性が悪く定着温度が上昇し,消費電力も増加してしまう。」
「【0034】
ポリエステル樹脂Bは・・・(中略)・・・重量平均分子量が10000?25000の範囲・・・(中略)・・・のものを用いる。重量平均分子量・・・(中略)・・・が上記の範囲よりも小さくなると,樹脂成分のガラス転移点が低下するため,トナーのブロッキング性が悪化する。」
との記載がある。
当該記載に照らせば,重量平均分子量が異なる2種類の非晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂B)及び結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂C)を含有するコア粒子と,非結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A及びポリエステル樹脂B)を含有するシェル層とからなるコアシェル型のトナー(以下,「刊行物公知トナー」という。)において,重量平均分子量が大きいほうの非晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂A)の重量平均分子量が60000より大きくなると,低温定着性が悪くなり,重量平均分子量が小さいほうの非晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂B)の重量平均分子量が10000より小さくなると,ブロッキング性能が悪化することが,本件出願の出願前に当業者に知られていたといえる。
しかるに,本願発明は,低分子量非結晶性ポリエステル樹脂,高分子量非結晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するコアと,非結晶性ポリエステル樹脂を含有するシェルとからなるトナーであって,低分子量非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が1000ないし5000であり,高分子量非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が63000ないし94000であるから,前述した「刊行物公知トナー」に該当するトナーであり,かつ,コアが含有する2種類の非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量の各値が,低温定着性及びブロッキング性能が悪化するとして知られた数値範囲内にあるものである。
そうすると,当業者は,本願発明の発明特定事項のうち樹脂成分の結晶性・非結晶性の別や重量平均分子量に係る発明特定事項をみて,技術常識に照らし,本願発明を低温定着性及びブロッキング性能に劣るトナーと認識するのが自然であって,本願発明が本願発明の課題を解決できると認識することはない。
また,前記樹脂成分の結晶性・非結晶性の別や重量平均分子量に係る発明特定事項を有しているにもかかわらず,本願発明が本願発明の課題を解決できると当業者が認識するような技術常識が本件出願の出願当時に存在したとも認められない。
したがって,本願発明について,本願明細書の発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が本件出願の出願時の技術常識に照らし本願発明の課題を解決できると認識できるとは認められない。

(6) 前記(4)及び(5)のとおりであって,本願発明は,当業者において,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から,あるいは,本件出願の出願当時の技術常識に基づいて,本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
したがって,本件出願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

(7) なお,審判請求書において,請求人が,原査定の拒絶の理由に対して,本件出願のパリ条約に基づく優先権主張の基礎とされた米国特許出願12/717332号(以下,「本件基礎出願」という。)の特許公報(米国特許第9012118号)に記載された実施例及び比較例の評価結果等に基づいて,本件出願の請求項に係る発明において予想外の効果が得られることを主張しているから,念のため,サポート要件において本件基礎出願の明細書に記載された事項を考慮することの可否について,付言しておく。
特許法36条1項には「特許を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。」と規定され,同条2項には「願書には,明細書,特許請求の範囲,必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」と規定され,同条3項には「前項の明細書には,次に掲げる事項を記載しなければならない。」と規定され,同項3号に「発明の詳細な説明」が掲げられているところ,同条6項1号(サポート要件)にいう「発明の詳細な説明」とは,同条3項3号に掲げられた「発明の詳細な説明」にほかならないから,サポート要件の判断の対象となる「発明の詳細な説明」は,日本国の特許庁長官に提出した願書に添付された明細書中の「発明の詳細な説明」である。したがって,(技術常識である場合は別として)日本国の特許庁長官に提出した願書に添付された明細書中の「発明の詳細な説明」に記載されていない事項は,たとえパリ条約に基づく優先権主張の基礎となる外国における出願の明細書等に記載されている事項であっても,前記願書に係る出願のサポート要件の判断において,これを考慮することは許されないというべきである。
これを本件についてみると,本件基礎出願の明細書の[0094]ないし[0105]には実施例1及び比較例1の評価結果等が記載されているが,当該記載事項は本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていない(当該記載事項が本件出願の出願当時の技術常識であるわけでもない)から,本件出願のサポート要件の判断において,当該記載事項を考慮することはできない。


5 むすび
以上のとおり,本件出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-29 
結審通知日 2017-06-05 
審決日 2017-06-16 
出願番号 特願2011-34320(P2011-34320)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
発明の名称 トナーの組成物および工程  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 浅井 賢治  
代理人 弟子丸 健  
代理人 箱田 篤  
代理人 山崎 一夫  
代理人 市川 さつき  

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