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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C
管理番号 1334195
審判番号 不服2016-11364  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-28 
確定日 2017-11-08 
事件の表示 特願2014-95178号「歯列矯正装置の位置決め方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-217759号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月2日(優先日:平成25年5月2日、優先権主張:台湾)に出願したものであって、平成27年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年5月21日に手続補正書が提出され、さらに、同年9月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年1月26に手続補正書が提出されたが、同年3月31日付けで該補正を却下する決定がされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。

第2 本件補正について
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の発明
(1)本件補正は、平成27年5月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
歯列矯正装置の位置決め方法であって、
コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程と、
コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程と、
矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、
連接されたベース単体を矯正装置と共に歯型模型から取り外す工程と、
連接されたベース単体と矯正装置を患者の歯に直接貼付して、矯正装置とベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外し、矯正装置を歯の表面に固定する工程と、
を含むことを特徴とする、歯列矯正装置の位置決め方法。」
と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す)

そうすると、本件補正は、請求項1に係る発明において、「コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程」という特定事項を追加する(補正事項1)とともに、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻し、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成る位置決め部材を彫刻する工程」を、「コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程」と補正し(補正事項2)、さらに、同「矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して、矯正装置を各位置決め部材に嵌置して位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程」を「矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程」と補正する(補正事項3)ことを含むものである。

(2)補正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであることは明らかである。そして、技術常識を考慮すると、その「患者の歯をスキャンした」が「スキャナにより患者の歯形をデータ化し、そのデータをコンピュータに保存する」ことを意味し、本件出願の当初明細書の段落【0006】、【0010】および【0011】に実質的に記載されているといえる。

(3)補正事項2は、実質的に、補正前の「歯型模型を彫刻し」及び「位置決め部材を彫刻する」を「コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で」と限定し、「位置決め部材」を「直接一体成型で」及び「壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の」と限定し、さらに、「位置決め部材を彫刻する」について「歯形模型を彫刻すると同時に」と限定を付すものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件出願の当初明細書には「直接一体成型で」との記載がないものの、その段落【0006】に「彫刻機で歯型模型を製作すると同時に、歯型模型の矯正装置取り付け位置に位置決め部材をそれぞれ彫刻し」、同段落【0010】に「4.コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で歯型模型を製作すると同時に、歯型模型の矯正装置取り付け位置に位置決め部材を彫刻する。」および同段落【0011】に「コンピュータから彫刻機に出力し、図2と図3に示すように、彫刻機で歯型模型1を製作し、同時に歯型模型1の歯部11において矯正装置取り付け位置に位置決め部材2を彫刻する。」と記載され、図3には「歯部11」と一体の「位置決め部材2」が図示されており、技術常識を考慮すると、実質的に記載されているといえる。
また、本件出願の当初明細書には「矯正装置の周囲に接触する寸法」との記載がないものの、本願発明1では「矯正装置を各位置決め部材に嵌置」すると特定されており、該「嵌置」が「嵌合状態で配置」であり、上記特定は、該「位置決め部材」の内壁面が「矯正装置の周囲に接触する」ことを意味するといえる。(下線は当審にて付与する。以下同様)

(4)補正事項3は、補正前の「に嵌置」を「内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置」としたものであって、該「嵌置」をより限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。

(5)してみると、請求項1に係る発明についての本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第17条の2第3項の要件を満たし、また、同法第17条の2第4項の要件を満たすことは明らかである。そして、同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することも、明らかである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
(1)本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2011-136144号公報(以下「刊行物1」という)には、「歯列矯正器具のポジショニング方法」について、第1?10図とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付したものである。)。

(1-ア)
「【0001】
本発明は、歯列矯正器具のポジショニング方法に関し、特に、矯正器具の取り付けをより便利かつ効率的にすることで、取り付けコストを抑えることができる、歯列矯正器具のポジショニング方法に関する。」

(1-イ)
「【0005】
本発明が解決しようとする課題は、歯列矯正器具の取り付けをより便利かつ効率よくし、取り付けコストを抑えることができる歯列矯正器具のポジショニング方法を提供することにある。」

(1-ウ)
「【0013】
本発明の歯列矯正器具の製作及び取り付けのプロセスは、以下の工程を含むものである。
(工程1)患者の歯形に基づき歯型模型4を製作し、患者の歯型模型4に特定の装置で十字の基準線41を描く(図1参照)。
【0014】
(工程2)プラスチック射出成型方式で、異なる歯部及び異なる型式の矯正器具に基づき異なるベース単体1を製作し、各ベース単体1がそれぞれ水平鉤部11と水平鉤部11から下方に向かって延伸された垂直部12とを含み、垂直部12の前面の適切な位置に横方向の位置決め溝121を設け、かつ中央位置に縦方向の基準線溝122を設けることにより、十字状の基準線を形成する(図3参照)。
【0015】
(工程3)各ベース単体1の垂直部12に異なる歯部に基づいて番号111を付与する(図3参照)。
【0016】
(工程4)矯正器具2を加熱した後、ベース単体1の垂直部12の裏面に嵌置する。ベース単体1に矯正器具2の形状に基づいて矯正器具2の安定座部123を形成し(図4参照)、可撓部材3で位置決め溝121に沿って矯正器具2を縛り、ポジショニングする(図3、図5参照)。
【0017】
(工程5)前述の各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を歯型模型4の歯部に掛止させて貼付し(図5及び図6参照)、垂直部12の位置決め溝121と基準線溝122で形成した十字状基準線を歯型模型4の十字基準線41に合わせ、矯正器具2の位置を適切に調整する。
【0018】
(工程6)光硬化樹脂5を前述の各ベース単体1に貼付し、光硬化樹脂5の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂5で各ベース単体1を相互に連接する(図7参照)。
【0019】
(工程7)光硬化樹脂5を硬化させて、連接されたベース単体1を構成する。
【0020】
(工程8)連接された各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に歯型模型4から取り外す(図8参照)。
【0021】
(工程9)各矯正器具2の背面に接着剤を塗布した後、連接した各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を患者の矯正が必要な各歯部に掛止させて直接貼付する。
【0022】
(工程10)背面の接着剤が固まった後、各ベース単体1に縛り付けられた可撓部材3を特定の工具(一点鎖線で示す)で外し、かつ各ベース単体1を矯正器具2から取り外す(図9参照)。ベース単体1を取り外すことにより、矯正器具2がそれぞれ矯正の必要がある歯部の表面に接着剤で固定される(図10参照)。
【0023】
(工程11)歯科医は、金属等の線材によって歯の表面に固定された各矯正器具2を相互に連接させて矯正器具の取り付け作業を完了することができる。」

(2)本件出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許出願公開第2010/0279243号明細書(以下「刊行物2」という)には、「METHODS AND APPARATUS FOR APPLYING DENTAL SEALANT TO AN ORTHODONTIC PATIENT'S TEETH」について、第1?24図とともに次の事項が記載されている。(日本語訳として、対応する特表2011-505195号公報に記載された箇所を付記する)

(2-ア)
「[0084] FIG. 7 is a block diagram describing some of the steps that are carried out in one method of making the treatment apparatus 10 , although other methods are also possible. Block 100 represents the step of obtaining a digital data file of the patient's teeth and optionally the patient's adjacent gingival tissue. The digital data may be obtained by the use of a hand-held intra-oral scanner such as the intra-oral scanner using active wavefront sampling developed by Brontes Technologies, Inc. Alternatively, other intra-oral scanners or intra-oral contact probes may be used. ・・・・・」
(日本語訳:「【0063】図7は、治療装置10を作製する1つの方法を実施するステップのうちのいくつかを示すブロック図であるが、他の方法も可能である。ブロック100は、患者の歯群及び任意に患者の隣接する歯肉組織のデジタルデータファイルを得る工程を表す。デジタルデータは、Brontes Technologies、 Inc.によって開発されたアクティブ波面サンプリングを用いて、口腔内スキャナ等の手持ち式の口腔内スキャナを用いることによって獲得することができる。あるいは、他の口腔内スキャナ又は口腔内接触プローブを用いてもよい。・・・・・」

(2-イ)
「[0087] As also represented by block 102 , the digital data file of the patient's dental arch is then modified to provide virtual separation of each tooth from adjacent teeth and gingiva so that each tooth may be independently moved as a separate object. Next, and as represented by block 104, the modified virtual model is forwarded to the practitioner. For example, if the steps in block 102 are carried out at a manufacturing facility, the facility may send the virtual model to the practitioner over a wired communications network such as the internet. The practitioner then interacts with a local computer to view the three dimensional(“3D”) virtual model and determine the desired final positions of the patient's teeth.
[0088] As shown in block 106, the practitioner selects and places virtual appliances such as brackets and buccal tubes on the virtual model using the local computer. During this process, the practitioner selects virtual appliances that embody certain geometric attributes and also selects the positions of the appliances on the patient's teeth within the modeling environment. The modeling software manipulates each bracket and each tooth as a separate object within the 3D environment and fixes the position of each bracket within the 3D space relative to a coordinate system associated with the tooth of the corresponding bracket. The modeling software then computes the final positions of the teeth based on the positions of the appliances selected by the practitioner and displays the virtual teeth in their final occlusion.
[0089] If the practitioner is not entirely satisfied with the final predicted positions of the teeth, the practitioner may use the modeling software to move one or more of the virtual appliances relative to the virtual teeth. The modeling software will then compute and display new final positions of the virtual teeth based on the revised positions of the virtual appliances on the virtual teeth. These steps can be repeated as many times as desired until the practitioner is satisfied with the final positions of the virtual teeth as represented by the modeling software. As an alternative to moving appliances, however, the practitioner may use the modeling software to move the virtual teeth to desired positions, and the modeling software will then compute positions of the appliances on the teeth for moving the teeth to those desired positions. Data representing the selected positions of the appliances, along with identification data for each appliance (such as brand name and the manufacturer's part number), tooth identification data (such as tooth type and location in the oral cavity) and patient data (such as name and birth date, or a patient identification number) is then submitted to the manufacturing facility.」
(日本語訳:【0066】またブロック102により表されるように、患者の歯列弓のデジタルデータファイルを修正して、各歯が別々の物体として個別に移動できるように、各歯を隣接する歯群及び歯肉から仮想分離する。次に、またブロック104に表すように、修正された仮想模型を施術者に転送する。例えば、ブロック102の工程を製造設備で実施する場合、設備は仮想模型を、インターネットのような通信回線に接続された通信ネットワークで施術者に送ってもよい。施術者は、次いで、ローカルコンピュータと情報をやりとりし、三次元(「3D」)仮想模型を見て、患者の歯群の所望の最終位置を決定する。
【0067】ブロック106に示すように、施術者は、ブラケット及びバッカルチューブのような仮想装具を選択し、ローカルコンピュータを用いて、仮想模型上に定置する。このプロセス中、施術者は、特定の幾何学的属性を具現化する仮想装具を選択し、またモデリング環境内で患者の歯群上の装具の位置を選択する。モデリング・ソフトウェアは、3D環境内で別々の物体として各ブラケット及び各歯を操作し、対応するブラケットの歯に関連する座標系に対して3D空間内で各ブラケットの位置を決定する。モデリング・ソフトウェアは、次いで、施術者によって選択された装具の位置に基づいて歯群の最終位置を計算し、それらの最終咬合における仮想歯群を表示する。
【0068】施術者が歯群の最終的に予測される位置に十分満足しない場合、施術者はモデリング・ソフトウェアを使用して、仮想歯群に対して1つ以上の仮想装具を移動させてもよい。モデリング・ソフトウェアは、次いで、仮想歯群上の仮想装具の修正された位置に基づいて、仮想歯群の新たな最終位置を計算及び表示する。これらの工程は、施術者がモデリング・ソフトウェアにより表されるような仮想歯群の最終位置に満足するまで、所望の回数繰り返すことができる。しかしながら、装具の移動の代替として、施術者はモデリング・ソフトウェアを用いて、仮想歯群を所望の位置に移動させてもよく、モデリング・ソフトウェアは次いで所望の位置へ歯群を移動させるための歯群上の装具の位置を計算する。各装具の識別データ(商品名及び製造業者の品番のような)、歯の識別データ(歯の種類及び口腔内での位置のような)及び患者データ(氏名、誕生日又は患者識別番号のような)とともに、装具の選択された位置を表すデータを、次いで、製造設備に送信する。」

(2-ウ)
「[0092] Block 108 describes steps that are preferably undertaken at the manufacturer's facility using data of the virtual dental model and identification data of the appliances and position data of the appliances. Ridges for circumscribing the base of each appliance on a physical model are first created by creating virtual ridges corresponding to the shape of the periphery of each appliance base. The virtual ridges are created on the virtual model using software. Next, alignment structure for use in placing appliances on a physical model is created by first creating one or more virtual guides on the virtual model using software. Preferably, virtual guides are created corresponding to each appliance and are connected to the virtual ridge for the associated appliance. In addition, one or more occlusal stop members are designed and the shape of a tray molding vessel is determined. A data file of the virtual model with the ridges and guides, a data file of the occlusal stop member and a data file of the tray molding vessel are then forwarded to a rapid prototyping machine as described in block 110 . The occlusal stop member and the tray molding vessel are described in more detail below.
[0093] As used herein, rapid prototyping is the process of generating an object directly from digital data, such as digital data representing its shape. Examples of suitable rapid prototyping processes include solid freeform fabrication such as 3D printing processes, stereolithography methods, fused deposition modeling, laminated object manufacturing, laser engineered net shaping, selective laser sintering, shape deposition manufacturing and solid ground curing. An example of a suitable 3D printing machine is the Eden brand 500V printer from Objet Geometries Ltd., using FullCure 720 acrylic-based photopolymer printing material (also from Objet Geometries Ltd.). Another example of rapid prototyping is the use of CAD-CAM software to direct a milling machine to mill the dental arch model with the ridges and alignment guides, the occlusal stop member and the tray molding vessel. The manufactured parts are then cleaned as described in block 112 .
[0094] An exemplary dental arch model 33 made by rapid prototyping is illustrated in FIG. 8 . In this embodiment, the arch model 33 includes a portion of the model gingival tissue 35 as well as individual model teeth 34 . The arch model 33 as shown represents the patient's entire upper dental arch, and preferably a model of the patient's lower dental arch (not shown) is also provided. ・・・・・」
(日本語訳:【0071】ブロック108は、仮想歯科模型のデータ及び装具の識別データ及び装具の位置データを用いて、好ましくは製造設備で行われる工程を記載する。物理的な模型上に各装具の基部に外接するリッジは、まず各装具の基部の形状に対応する仮想リッジを作製することによって作製される。仮想リッジは、ソフトウェアを用いて仮想模型上に作製される。次いで、物理的模型上への装具の定置で用いられる位置合わせ構造は、まずソフトウェアを用いて仮想模型上に1つ以上の仮想ガイドを作製することにより、作製される。好ましくは、仮想ガイドは、各装具に対応して作製され、関連する装具の仮想リッジに接続されている。更に、1つ以上の咬合面レスト部材を設計し、トレー成型容器の形状を決定する。次いで、リッジ及びガイドを備えた仮想模型のデータファイル、咬合面レスト部材のデータファイル、及びトレー成形容器のデータファイルが、ブロック110に示したように、ラピッドプロトタイピングマシンに転送される。咬合面レスト部材及びトレー成型容器については、以下でより詳細に記載する。
【0072】本明細書で使用するとき、ラピッドプロトタイピングは、その形状を表すデジタルデータのような、デジタルデータから直接物体を作り出すプロセスである。・・・・・ラピッドプロトタイピングの別の例は、CAD-CAMソフトウェアを用いて、フライス盤に指示し、リッジ及び位置合わせガイド、咬合面レスト部材及びトレー成型容器とともに歯列弓模型をフライス加工することである。ブロック112に記載のように、次いで製造された部品を洗浄する。
【0073】ラピッドプロトタイピングにより作製された代表的な歯列弓模型33を図8に示す。この実施形態では、弓模型33は、模型の歯肉組織35の一部に加えて個々の模型の歯群34を含む。図示のような歯列弓模型33は、患者の下歯列弓の全体を表し、好ましくは、患者の上歯列弓(図示せず)の模型もまた用意される。・・・・・」

(2-エ)
「[0096] The ridges and guides as mentioned in block 108 preferably include one or more ridges and guides associated with each appliance and its corresponding model tooth 34. In the embodiment shown in FIGS 8-11 and 14 - 16 , two guides 40 are integrally connected to each ridge 39 of each corresponding model tooth 34 as a consequence of being simultaneously fabricated by rapid prototyping during rapid prototyping of the arch model 33 . Each ridge 39 (shown by dotted lines in FIGS.9-11) extends in a closed-loop path that surrounds the intended location of the bonding pad 27 of the corresponding appliance 14 . Each of the guides 40 includes a generally U-shaped body 42 (see, e.g., FIGS.9 and 11 ) with a channel 44 defined by occlusal, lingual and gingival walls that are optionally flat.
[0097] The exemplary orthodontic bracket appliance 14 shown in FIG. 3 is also depicted in FIGS. 9-11 . The appliance 14 is received in the space between the two guides 40 associated with one of the model teeth 34 such that the base 26 of the appliance 14 is surrounded by the ridge 39 . The appliance 14 has an archwire slot 48 (FIG. 9) adapted to matingly receive an archwire. In the example shown in the drawings, the appliance 14 is known as a twin tiewing bracket and optionally includes a hook (not shown).」
(日本語訳:【0075】リッジ及びガイドは、ブロック108において言及したように、好ましくは各装具及びそれに対応する模型の歯34に関連する1つ以上のリッジ及びガイドを備える。図8?11及び図14?16に示す実施形態において、2つのガイド40が、歯列弓模型33のラピッドプロトタイピングの間にラピッドプロトタイピングによって同時に製作された結果として、各対応する模型歯34の各リッジ39に一体的に接続されている。各リッジ39(図9?図11では点線で示す)は、対応する装具14のボンディングパッド27の意図する位置を取り囲む閉じたループ通路内に延びる。ガイド40の各々は、チャネル44を備えた概ねU字形状の本体42(例えば図9及び11を参照)を有しており、チャネル44は、任意に平坦である、咬合側、舌側、及び歯肉側の壁によって画定されている。
【0076】図3に示す例示の歯科矯正ブラケット装具14は、図9?図11にも図示されている。装具14は、装具14の基部26がリッジ39によって取り囲まれるように、模型の歯群34のうちの1つに関連する2つのガイド40間の空間に受容される。装具14は、アーチワイヤを噛合受容するよう構成されたアーチワイヤスロット48(図9)を有する。図に示す例では、装具14は対結合ウイングブラケットとして既知であり、任意にフック(図示せず)を備える。)

(2-オ)
「[0102] Each of the guides 40 is preferably connected by detachable structure to the ridge 39 of the associated model tooth 34 . In the embodiment shown in FIGS. 9-11 , each of the guides 40 include four cylindrical legs 52 that integrally connect the body 42 to the associated ridge 39 . The legs 52 can be readily fractured by urging the associated body 42 in a direction away from the appliance 14 using a pivotal, swinging motion in order to detach and separate the guide 40 from the ridge 39 when desired.」
(日本語訳:【0081】各ガイド40は、好ましくは、取り外し可能な構造により、関連する模型の歯34のリッジ39に接続される。図9?11に示す実施形態において、ガイド40の各々は、本体42を関連するリッジ39に一体的に結合する4つの円柱形脚部を有している。脚部52は、所望のときガイド40をリッジ39から取り外し、分離するために、旋回、揺れ運動を用いて装具46から離れる方向に、関連する本体42を付勢することにより容易に破断することができる。)

(2-カ)
「[0122] Although robotic machinery in theory can be operated with great precision to place appliances 14 , 14 a on model teeth 34 , 34 a, the use of alignment structure such as guides 40 , 40 a is an advantage in that small errors in the position of the holder 54 , 54 a can be tolerated. So long as the robotic machinery provides the holder 54 , 54 a with sufficient freedom to move small, limited distances during placement of the appliances 14 , 14 a, the guides 40 , 40 a can serve to properly position the holder 54 , 54 a as the appliance 14 , 14 a is placed on the model teeth 34 , 34 a. Optionally, the ridges 39 , 39 a may also be designed with sufficient inclination and height in a labial direction to help guide the respective appliances 14 , 14 a to proper positions on the model teeth 34 , 34 a. 」
(日本語訳:【0101】理論上は、ロボット機械装置を非常に正確に操作して装具14、14aを模型の歯群34、34a上に定置することができるが、ガイド40、40aのような位置合わせ構造の使用は、ホルダ54、54aの位置の小さな誤差を許容できるという点が利点である。ロボット機械装置が、装具14、14aの装着中、小さな制限された距離を移動させるのに十分な動きやすさをホルダ54、54aにもたらす限り、ガイド40、40aは、装具14、14aが模型の歯群34、34a上に定置されるとき、ホルダ54、54aを適切に位置決めするよう機能できる。任意に、リッジ39、39aは、それぞれの装具14、14aを模型の歯群34、34a上の適切な位置に案内するのを助けるように、唇側方向に十分な傾斜及び高さを有して設計することもできる。)

3 当審の判断
なお、以下の刊行物2の記載事項については、上記日本語訳を使用する。

(1)引用発明1
ア 上記記載事項(1-ア)の「歯列矯正器具のポジショニング方法に関し」からみて、刊行物1には「歯列矯正器具のポジショニング方法」が記載されているといえる。

イ 上記記載事項(1-ウ)の「(工程1)患者の歯形に基づき歯型模型4を製作し、患者の歯型模型4に特定の装置で十字の基準線41を描く(図1参照)。」および図1からみて、刊行物1には「患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程」が記載されているといえる。

ウ 上記記載事項(1-ウ)の「【0017】(工程5)前述の各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を歯型模型4の歯部に掛止させて貼付し(図5及び図6参照)、垂直部12の位置決め溝121と基準線溝122で形成した十字状基準線を歯型模型4の十字基準線41に合わせ、矯正器具2の位置を適切に調整する。【0018】(工程6)光硬化樹脂5を前述の各ベース単体1に貼付し、光硬化樹脂5の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂5で各ベース単体1を相互に連接する(図7参照)。」からみて、刊行物1には「矯正器具を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に掛止させて貼付して、前記ベース単体の垂直部の十字状基準線を前記歯型模型の十字基準線に合わせ、前記矯正器具の位置を適切に調整した後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程」が記載されているといえる。

エ 上記記載事項(1-ウ)の「(工程8)連接された各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に歯型模型4から取り外す(図8参照)。」からみて、刊行物1には「連接されたベース単体を矯正器具と共に歯型模型から取り外す工程」が記載されているといえる。

オ 上記記載事項(1-ウ)の「【0021】(工程9)各矯正器具2の背面に接着剤を塗布した後、連接した各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を患者の矯正が必要な各歯部に掛止させて直接貼付する。【0022】(工程10)背面の接着剤が固まった後、各ベース単体1に縛り付けられた可撓部材3を特定の工具(一点鎖線で示す)で外し、かつ各ベース単体1を矯正器具2から取り外す(図9参照)。ベース単体1を取り外すことにより、矯正器具2がそれぞれ矯正の必要がある歯部の表面に接着剤で固定される(図10参照)。」からみて、刊行物1には「連接されたベース単体と矯正器具を患者の歯に直接貼付して、前記矯正器具を歯の表面に固定し、前記矯正器具と前記ベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外す工程」が記載されているといえる。

カ そして、上記ア?オを総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。

「歯列矯正器具のポジショニング方法であって、
患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、
矯正器具を縛り付けたベース単体を前記歯型模型の各歯部に掛止させて貼付して、前記ベース単体の垂直部の十字状基準線を前記歯型模型の十字基準線に合わせ、前記矯正器具の位置を適切に調整した後、光硬化樹脂で前記各ベース単体を相互に連接する工程と、
前記連接されたベース単体を前記矯正器具と共に前記歯型模型から取り外す工程と、
前記連接されたベース単体と前記矯正器具を患者の歯に直接貼付して、前記矯正器具を前記歯の表面に固定し、前記矯正器具と前記ベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外す工程と、
を含む歯列矯正器具のポジショニング方法。」
(以下「引用発明1」という)

(2)引用発明2
ア 上記記載事項(2-ア)の「ブロック100は、患者の歯群及び任意に患者の隣接する歯肉組織のデジタルデータファイルを得る工程を表す。・・・・・口腔内スキャナ等の手持ち式の口腔内スキャナを用いることによって獲得することができる。」、同(2-イ)の「モデリング・ソフトウェアは、3D環境内で別々の物体として各ブラケット及び各歯を操作し、対応するブラケットの歯に関連する座標系に対して3D空間内で各ブラケットの位置を決定する。モデリング・ソフトウェアは、次いで、施術者によって選択された装具の位置に基づいて歯群の最終位置を計算し、それらの最終咬合における仮想歯群を表示する。」からみて、刊行物2には「口腔内スキャナが、患者の歯群をスキャンした後、矯正が必要な歯と装具(ブラケット)取り付け位置を決定する工程」が記載されているといえる。

イ 「リッジ」すなわち「隆起部」が「表面から突出した壁面」を有することは技術常識であり、上記記載事項(2-ウ)の「物理的な模型上に各装具の基部に外接するリッジは、まず各装具の基部の形状に対応する仮想リッジを作製することによって作製される。・・・・・リッジ及びガイドを備えた仮想模型のデータファイル、・・・・・ラピッドプロトタイピングマシンに転送される。・・・・・ラピッドプロトタイピングは、その形状を表すデジタルデータのような、デジタルデータから直接物体を作り出すプロセスである。・・・・・CAD-CAMソフトウェアを用いて、フライス盤に指示し、リッジ及び位置合わせガイド、咬合面レスト部材及びトレー成型容器とともに歯列弓模型をフライス加工することである。」、同(2-エ)の「【0076】・・・・・装具14は、装具14の基部26がリッジ39によって取り囲まれる・・・・・」および図8からみて、刊行物2には「コンピュータからフライス盤に出力し、フライス盤で患者の歯に基づいて歯型模型をフライス加工すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の装具取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだリッジ及びガイドより成り、前記壁面が前記装具の基部に外接する寸法のリッジ及びガイドをフライス加工する工程」が記載されているといえる。

ウ 上記記載事項(2-カ)の「リッジ39、39aは、それぞれの装具14、14aを模型の歯群34、34a上の適切な位置に案内するのを助けるように、唇側方向に十分な傾斜及び高さを有して設計することもできる。」及びFig.15の記載からみて、リッジは、装具(ブラケット)をその周囲に接触した状態でリッジ内に案内して適切に位置決めするための傾斜部を有するといえる。

エ よって、上記ア?ウを総合すると、刊行物2には以下の発明が記載されていると認められる。

「口腔内スキャナにより患者の歯群をスキャンした後、矯正が必要な歯と装具(ブラケット)取り付け位置をコンピュータが決定する工程と、
コンピュータからフライス盤に出力し、該フライス盤で患者の歯に基づいて歯型模型をフライス加工すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の装具取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだリッジ及びガイドより成り、前記壁面が前記装具の基部に外接する寸法のリッジ及びガイドをフライス加工する工程と、
装具(ブラケット)をリッジ及びガイド内に、リッジの傾斜部が装具(ブラケット)の周囲に接触した状態で案内して適切に位置決めする工程と、
を有する歯型模型への装具(ブラケット)の位置決め方法。」
(以下「引用発明2」という)

(3)対比
補正発明と引用発明1とを比較する。
「ポジショニング」が「位置決め」であること意味し、「歯列矯正器具」と「歯列矯正装置」とが技術的に同義であるから、引用発明1の「歯列矯正器具のポジショニング方法」は、補正発明の「歯列矯正装置の位置決め方法」に相当するといえる。

「患者の歯に基づいて」が「患者の歯形に基づいて」であること意味するとともに「歯型模型を彫刻する」が「歯型模型を製作する」の一種であるといえるから、引用発明1の「患者の歯形に基づいて歯型模型を製作」と補正発明の「コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻」とは、上位概念の「患者の歯に基づいて歯型模型を製作」という点で一致するといえる。
また、引用発明1の「前記矯正器具の位置を適切に調整」と補正発明「矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決め」とは、「矯正装置を位置決め」という点で共通する。
したがって、引用発明1の「患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、矯正器具を縛り付けたベース単体を前記歯型模型の各歯部に掛止させて貼付して、前記ベース単体の垂直部の十字状基準線を前記歯型模型の十字基準線に合わせ、前記矯正器具の位置を適切に調整した後、光硬化樹脂で前記各ベース単体を相互に連接する工程と、」と、補正発明の「コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程と、コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程と、矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、」とは、「患者の歯に基づいて歯型模型を製作する工程と、矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付し、矯正装置を位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、」の点で一致する。

引用発明1の「前記連接されたベース単体を前記矯正器具と共に前記歯型模型から取り外す工程」は、補正発明の「連接されたベース単体を矯正装置と共に歯型模型から取り外す工程」に相当することは明らかである。

引用発明1の「前記連接されたベース単体と前記矯正器具を患者の歯に直接貼付して、前記矯正器具を前記歯の表面に固定し、前記矯正器具と前記ベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外す工程」は、補正発明の「連接されたベース単体と矯正装置を患者の歯に直接貼付して、矯正装置とベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外し、矯正装置を歯の表面に固定する工程」に相当することは明らかである。

そうすると、両者は、
(一致点)
「歯列矯正装置の位置決め方法であって、
患者の歯に基づいて歯型模型を製作する工程と、
矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付し、矯正装置を位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、
連接されたベース単体を矯正装置と共に歯型模型から取り外す工程と、
連接されたベース単体と矯正装置を患者の歯に直接貼付して、矯正装置とベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外し、矯正装置を歯の表面に固定する工程と、
を含む歯列矯正装置の位置決め方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
歯形模型を製作する工程及び矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して矯正装置を位置決めする工程について、補正発明は、コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程と、コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程と、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めする工程であるのに対し、引用発明1は、患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、ベース単体の垂直部の十字状基準線を前記歯型模型の十字基準線に合わせ、前記矯正器具の位置を適切に調整する工程である点。

(4)判断
ア 最初に、引用発明2について検討する。
引用発明2の「装具(ブラケット)」は「矯正装置」といえるから、引用発明2の「口腔内スキャナにより患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と装具(ブラケット)取り付け位置をコンピュータが決定する工程」は、「コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程」といえる。
引用発明2の「フライス盤」が「彫刻機」の一種であることは技術常識であるから、引用発明2の「コンピュータからフライス盤に出力し、該フライス盤で患者の歯に基づいて歯型模型をフライス加工する」は、「コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で彫刻する」といえる。
上記記載事項(2-カ)の「リッジ39、39aは、それぞれの装具14、14aを模型の歯群34、34a上の適切な位置に案内するのを助けるように、唇側方向に十分な傾斜及び高さを有して設計することもできる。」からみて、引用発明2の「リッジ」は「位置決め部材」といえる。
「外接する」は「接触する」ことを意味しているといえるから、引用発明2の「同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の装具取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだリッジ及びガイドより成り、前記壁面が前記装具の基部に外接する寸法のリッジ及びガイドをフライス加工する」は、「同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する」といえる。
引用発明2の「装具(ブラケット)をリッジ及びガイド内に、リッジの傾斜部が装具(ブラケット)の周囲に接触した状態で案内して適切に位置決めする工程」は、「矯正装置を各位置決め部材内に、位置決め部材の壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めする工程」といえる。
したがって、引用発明2は、歯形模型を製作する工程及び矯正装置を歯型模型の各歯部に貼付して矯正装置を位置決めする工程について、コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程と、コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程と、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めする工程とを有するといえる。

イ 相違点について
上記アにおいて検討したとおりであるから、引用発明1に引用発明2を適用し、歯形模型を製作する工程及び矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して矯正装置を位置決めする工程について、患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、ベース単体の垂直部の十字状基準線を前記歯型模型の十字基準線に合わせ、前記矯正器具の位置を適切に調整する工程に代えて、コンピュータが、患者の歯をスキャンした後、矯正が必要な歯と矯正装置取り付け位置を決定する工程と、コンピュータから彫刻機に出力し、彫刻機で患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻すると同時に、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に直接一体成型で、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成り、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触する寸法の位置決め部材を彫刻する工程と、矯正装置を各位置決め部材内に、前記壁面が前記矯正装置の周囲に接触した状態で嵌置して位置決めする工程とすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

そして、本件出願明細書に記載された補正発明の効果は、刊行物1および2の記載から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

(5)小括
したがって、補正発明は、引用発明1および2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年5月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されたものであると認められ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりである。なお、平成28年1月26日付け手続補正は、原審において、補正を却下する決定がなされている。

「歯列矯正装置の位置決め方法であって、
患者の歯に基づいて歯型模型を彫刻し、該歯型模型において矯正が必要な歯部の矯正装置取り付け位置に、前記歯部の表面から突出した壁面で上下及び左右を囲んだ枠体より成る位置決め部材を彫刻する工程と、
矯正装置を縛り付けたベース単体を歯型模型の各歯部に貼付して、矯正装置を各位置決め部材に嵌置して位置決めした後、光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、
連接されたベース単体を矯正装置と共に歯型模型から取り外す工程と、
連接されたベース単体と矯正装置を患者の歯に直接貼付して、矯正装置とベース単体を縛り付けた可撓部材を取り外し、矯正装置を歯の表面に固定する工程と、
を含むことを特徴とする、歯列矯正装置の位置決め方法。」
(以下「本願発明」という)

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定で引用された本願出願前に頒布された刊行物1、2およびその記載事項は、上記「第2 2 引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明における上記補正事項1を削除し、同補正事項2および3の限定を除いたものである。
そして、本願発明の構成を全て備えた補正発明が、上記「第2 3 当審の判断」にて検討したとおり、引用発明1および2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1および2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-12 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-28 
出願番号 特願2014-95178(P2014-95178)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61C)
P 1 8・ 575- Z (A61C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 胡谷 佳津志  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 関谷 一夫
高木 彰
発明の名称 歯列矯正装置の位置決め方法  
代理人 あいわ特許業務法人  
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