• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01B
審判 全部申し立て 特29条の2  A01B
審判 全部申し立て 特174条1項  A01B
管理番号 1334346
異議申立番号 異議2016-700976  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-11 
確定日 2017-09-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5902858号発明「作業機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5902858号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第5902858号の請求項1ないし3、5ないし8に係る特許を維持する。 特許第5902858号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5902858号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成28年3月18日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人松山株式会社(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1?8に対して特許異議の申立てがされ、平成28年12月20日付けで取消理由が通知され、平成29年2月24日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年4月3日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月17日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月25日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(6)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1?3、5?8に係る「同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材と」を「前記第2の支点及び前記第3の支点を通る同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材と」に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1?3、5?8に係る「前記第2の筒状部材に設けられた第1の突部」を「前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項1?3、5?8に係る「前記第3の支点を回動中心とする第2の突部」を「、前記第3の支点を回動中心とし、前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項1?3、5?8に係る「前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化させる」を「前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項1?3、5?8において、ガススプリングについて、「前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成される」の記載を追加し、訂正する。
(6)訂正事項6
請求項4を削除する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、第1の筒状部材と第2の筒状部材の位置を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は第1の筒状部材と第2の筒状部材の位置を限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
明細書の発明の詳細な説明の「・・・エプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)141は、主フレーム110に設けられた台座111による支点151と、エプロン130に設けられた台座134による支点152との間に設けられ、支点151と支点152の距離を変化させる力を作用させる。」(【0021】)、「跳ね上げアシスト機構141は、ガススプリング250の伸長方向の力を圧縮方向の力に変換するため、内側筒状部材210と外側筒状部材220とを組み合わせている。内側筒状部材210と外側筒状部材220とは、同一軸上で移動可能である。」(【0024】)、及び図2、3の記載から、訂正事項1は明細書に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、第1の突部の設置位置を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2に関して、図5、6における外側筒状部材220(「第2の筒状部材」に相当)と図番号152の部材に隣接する部材(「第1の突部」に相当。以下「第1部材」という。)の相対的な位置関係に変化がないことから、第1部材が外側筒状部材220に設けられていることは明らかであり、また、図2、3における第1部材の設置位置や形状から見て、第1部材は外側筒状部材220の外周に突設されていることが見て取れるので、訂正事項2は明細書及び図面に記載されているものと認められる。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、第2の突部の設置位置を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3に関して、図5、6における図番号152の部材(「第2の突部」に相当。以下「第2部材」という。)は、図2、3における第2部材の設置位置、及びエプロン130が跳ね上げられた前後における台座134との位置関係から見て、第2部材は台座134に設けられていると解することができ、訂正事項3は明細書及び図面に記載されているものと認められる。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、第3の支点と第2の支点との距離を縮める際の態様を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4に関して、明細書の発明の詳細な説明の「図7は、アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフである・・・他方で、アシスト機構が作用する場合には、エプロン角度0°近傍から、ほぼ線形に荷重が低減していく。そして、エプロン角度が約60°の点で荷重がゼロになる。つまり、作業者からみれば、だんだんと軽くなっていく。」(【0028】)及び図7の記載から、訂正事項4は明細書及び図面に記載されているものと認められる。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、ガススプリングの態様を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項5に関して、明細書の発明の詳細な説明の「・・・ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において、収縮するよう構成している」(【0041】)の記載から、訂正事項5は明細書に記載されているものと認められる。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項4を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、訂正前の請求項1?8は、請求項2?8が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?8について訂正を認める。

第3 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由1(特許法29条の2)について
(1)訂正後の請求項1?3、5?8に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1?3、5?8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、上記「第2 1 訂正の内容」において示した、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

本件発明1
「【請求項1】
走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、
前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、
前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、
前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、
前記ガススプリングは、シリンダーと、前記シリンダーの内部に挿入されたピストンと、前記ピストンから延長されるピストンロッドと、前記ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、前記シリンダーと前記ピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、前記シリンダー内部のうち前記フリーピストンと前記ピストンとの間及び前記ピストンと前記ロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され、
前記アシスト機構は、さらに、前記第2の支点及び前記第3の支点を通る同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、
前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が、前記第3の支点を回動中心とし、前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、
前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成される
ことを特徴とする作業機。」

本件発明2
「【請求項2】
請求項1に記載の作業機において、前記第1の筒状部材又は前記第2の筒状部材のエプロン側の一端に、下方に向けた開口が存在する
ことを特徴とする作業機。」

本件発明3
「【請求項3】
請求項1に記載の作業機において、前記第1の筒状部材と前記第2の筒状部材との間に樹脂カラーを介在させる
ことを特徴とする作業機。」

本件発明5
「【請求項5】
請求項1に記載の作業機において、前記アシスト機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにするロック機構を有する
ことを特徴とする作業機。」

本件発明6
「【請求項6】
請求項5に記載の作業機において、前記ロック機構は前記第2の筒状部材に設けられた回動可能な制止レバーを有し、前記制止レバーが前記第2の筒状部材の一端を閉じることによって前記第2の筒状部材から前記第1の筒状部材が突出することを防止し、前記制止レバーが前記第2の筒状部材の一端を開くことによって前記第2の筒状部材から前記第1の筒状部材が突出することを許容するよう構成した
ことを特徴とする作業機。」

本件発明7
「【請求項7】
請求項6に記載の作業機において、前記ロック機構は、前記制止レバーを前記第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させる手段と、前記制止レバーを前記第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定する手段とを有する
ことを特徴とする作業機。」

本件発明8
「【請求項8】
請求項1に記載の作業機において、前記アシスト機構は複数のガススプリングを含む
ことを特徴とする作業機。」

(2)刊行物の記載
ア 取消理由通知において引用した甲第1号証(特願2015-21893号(特開2016-28566号公報))には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。

(ア)
「【0021】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に脱着可能に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)3と、機体2に左右方向の軸(回動支点)5を中心として上下方向に回動可能に設けられ耕耘体3の後方で整地作業する板状の整地体(均平板)4とを備えている。
【0022】
また、農作業機1は、耕耘体3や整地体4等のメンテナンス時に作業者の人力による整地体4の持ち上げ(上方回動)をアシストする持上アシスト手段8を備えている。持上アシスト手段8は、例えば1本で、農作業機1の一方側である左側の位置において機体2と整地体4との間に設けられている。」

(イ)
「【0046】
そして、図3に示すように、例えばメンテナンス時等において、整地体4を軸5を中心として上方に回動させることによって最上げ位置(メンテナンス位置)まで持ち上げると、ストッパ装置53のストッパピン54が連結ロッド55のストッパピン用孔部に自動的に挿入され、その結果、整地体4が最上げ位置に位置決め固定される。」

(ウ)
「【0080】
また、農作業機1の持上アシスト手段8は、例えば図24ないし図33に示す第3の実施の形態のように、伸縮可能な付勢体であるガススプリング91の付勢力を利用して整地体4を上方側に付勢することによって、整地体4の持ち上げをアシストするものでもよい。
【0081】
そして、この持上アシスト手段8は、操作部材である操作レバー90の操作(例えば位置変更である回動)により、ガススプリング91が整地体4を上方側に付勢するアシストオン状態およびガススプリング91が整地体4を上方側に付勢しないアシストオフ状態に選択的に切換可能となっている。
【0082】
すなわち例えば、持上アシスト手段8は、操作レバー90の一方向への回動(例えば下方回動)によってアシストオフ状態(ロック状態)となり、操作レバー90の一方向とは反対方向である他方向への回動(例えば上方回動)によってアシストオン状態(ロック解除状態)となる。
【0083】
ここで、持上アシスト手段8は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)93を有している。
【0084】
長尺体93は、機体2に左右方向の軸37を中心として上下方向に回動可能に設けられている。つまり、機体2の左側のフレームパイプ部18には取付部33が突設され、この取付部33に長尺体93の前端部が軸37を介して回動可能に取り付けられている。
【0085】
長尺体93は、例えば1本の丸パイプのみからなるものであり、この長尺体93の前端部には軸用孔部94が形成され、この軸用孔部94と取付部33の孔部分とに軸37が挿入され、この挿入された軸37を中心として長尺体93が機体2に対して上下方向に回動可能となっている。また、長尺体93の前後方向中間部には、この長尺体93の長手方向に沿った長孔状の案内長孔部95が形成されている。さらに、長尺体93の後端部には、ピン用孔部96が形成されている。
【0086】
そして、長尺体93内にガススプリング91が収納配設されており、その結果、このガススプリング91は、その全体が常に長尺体93によって覆われて保護されている。このガススプリング91は、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部98と、この本体部98内に対して出入りするロッド部99とにて構成されている。
【0087】
ガススプリング91の本体部98の基端部にはピン用孔部100が形成されており、このピン用孔部100および長尺体93のピン用孔部96に挿入された取付ピン101と抜止めピン102とによって、ガススプリング91の本体部98が長尺体93に取り付けられている。
【0088】
また、持上アシスト手段8は、挿通孔部105を有する短筒状(例えば八角筒状)の回動体(タンブラ)106を有している。この回動体106は、整地体4の突出板28の上部における上方突出部分に回動可能に設けられている。
【0089】
回動体106は、挿通孔部105が形成された八角筒状の筒状部107と、この筒状部107の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部108とにて構成され、この各軸状部108が突出板28の取付孔部28aに回動可能に取り付けられている。そして、回動体106は、整地体4に対して左右方向の軸状部108を中心として回動可能となっている。
【0090】
さらに、持上アシスト手段8は、回動体106の挿通孔部105に挿通され長尺体93に対して移動可能(例えばスライド移動可能)な移動体(アウターパイプ)111を有している。この移動体111は、長尺体93の外側(外周側)にこの長尺体93の外周面に沿って前後方向(長尺体の長手方向)にスライド移動可能、つまり摺動可能に配設されている。
【0091】
移動体111は、外周側に回動体106がスライド移動可能に配設された前後方向長手状で円筒状の筒状部112を有し、この筒状部112の前端部にはピン用孔部113が形成されている。そして、そのピン用孔部113、ロッド部99のピン用孔部114および長尺体93の案内長孔部95に挿入された取付ピン115と抜止めピン116とによって、ガススプリング91のロッド部99が移動体111に取り付けられている。このため、移動体111を上方側へ向けて付勢するガススプリング91の伸縮に応じて、移動体111が長尺体93の外周面に沿ってスライド移動する(図31参照)。なおこのとき、取付ピン115が長尺体93の案内長孔部95にて案内される。
【0092】
また、筒状部112の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段8のアシストオン状態時にガススプリング91の付勢力に基づいて回動体106を押し上げる円形環状の回動体当接部である鍔部118が突出状に固設されている。さらに、筒状部112の後端側には、規制板取付部120およびレバー取付部121が固設されている。なお、規制板取付部120は、ねじ孔部122が形成された略L字状のL字板123にて構成されている。レバー取付部121は、互いに離間対向する対をなす対向板124にて構成されている。
【0093】
そして、移動体111の規制板取付部120には、操作レバー90との当接によりこの操作レバー90の必要以上の回動を規制する規制部であるレバー規制板125が取付ねじ126にて取り付けられている。レバー規制板125には、取付孔部127および規制長孔部128が形成されている。
【0094】
また、移動体111のレバー取付部121には、作業者が把持して手動操作する略L字状の操作レバー90がオフ位置(下位置)およびオン位置(上位置)に回動可能に取り付けられている。
【0095】 ・・・
【0096】 ・・・
【0097】
また一方、レバー規制板125には、操作レバー90をオフ位置およびオン位置のいずれかの位置に位置決めする弾性変形可能な板状の弾性部材である板バネ136が取付手段137にて脱着可能に取り付けられている。なお、取付手段137は、例えばボルト138、ナット139およびスペーサ140にて構成されており、レバー規制板125と板バネ136との間には隙間部135が存在している。
【0098】 ・・・
【0099】 ・・・
【0100】
そして、操作レバー90がオフ位置やオン位置に位置すると、板バネ136は弾性復元力により元の平板状に復帰し、この復帰した板バネ136によって操作レバー90がその所望位置(オフ位置およびオン位置のいずれかの位置)に位置決め保持される。
【0101】
また、図30から明らかなように、操作レバー90がオフ位置に位置した状態では、操作レバー90の一部である当接部90aが長尺体93の後端面93aに対向してこの後端面93aと当接しており、その結果、移動体111の長尺体93に対する移動が規制されている。しかし、操作レバー90をオフ位置からオン位置まで上方側へ回動させると、操作レバー90の当接部90aが長尺体93の後端面93aから離れ、この操作レバー90による移動体111の移動規制が解除される。
【0102】
なお、この図24ないし図33に示す第3の実施の形態に係る農作業機1のその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じである。
【0103】
そして、この第3の実施の形態に係る農作業機1を用いて耕耘整地作業をする作業時には、作業者は、操作レバー90を操作してオフ位置に位置させることによって、持上アシスト手段8をアシストオフ状態に設定する。
【0104】 ・・・
【0105】
このとき、操作レバー90の当接部90aが長尺体93の後端面93aと当接することでこの操作レバー90にて長尺体93に対する移動体111の前方移動が規制(つまりガススプリング91の伸びが規制)されているため、回動体106は、整地体4の上下回動に応じて、移動体111に対して前後方向にスライド移動する(図25参照)。つまり、回動体106が移動体111の筒状部112の外周面に沿って前後方向にスライド移動することによって、整地体4が機体2に対して軸5を中心として上下方向に回動する。
【0106】
また一方、例えば耕耘爪24の交換や整地体4の洗浄等のメンテナンス時には、作業者は、操作レバー90を操作してオン位置に位置させることによって、当接部90aを長尺体93の後端面93aから離して、持上アシスト手段8をアシストオン状態に設定する。
【0107】
すると、長尺体93に対する移動体111の前方移動が許容(つまりガススプリング91の伸びが許容)されることとなり、移動体111が鍔部118に当接した回動体106とともに長尺体93に対してガススプリング91の付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体4がガススプリング91の付勢力に基づいて上方へ回動する(図27参照)。
【0108】
そして、作業者が整地体4を最上げ位置まで軽い人力で持ち上げると、ストッパ装置53によって整地体4がその最上げ位置に自動的にロックされる。なお、この例においても、整地体4は、ガススプリング91の付勢力のみによって最上げ位置まで上方回動しないため、作業者が最上げ位置まで人力で少し持ち上げる必要があるが、この際、ガススプリング91は、自由長(最大長さ)にはなっておらず、整地体4を上方側へ付勢しているため、作業者は、軽い人力で整地体4を最上げ位置まで持ち上げることが可能である。
【0109】
このように、第3の実施の形態に係る農作業機1でも、前記第1、2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
すなわち、例えばメンテナンス時等に操作レバー90の操作により持上アシスト手段8をアシストオン状態に切り換えると、このアシストオン状態の持上アシスト手段8が整地体4の持ち上げをアシストするため、作業者は整地体4を最上げ位置まで容易に持ち上げることができ、作業者の負担を軽減できる。
【0111】 ・・・
【0112】
さらに、操作レバー90がオフ位置に位置した持上アシスト手段8のアシストオフ状態時には、操作レバー90にて長尺体93に対する移動体111の移動が規制され、この移動が規制された移動体111に対して回動体106が整地体4の動きに応じて移動するため、持上アシスト手段8が整地体4による整地作業に悪影響を及ぼすことがない。
【0113】
また、操作レバー90がオン位置に位置した持上アシスト手段8のアシストオン状態時には、長尺体93に対する移動体111の移動が許容され、この移動が許容された移動体111が長尺体93に対して回動体106とともにガススプリング91の付勢力に基づいて移動するため、そのガススプリング91の付勢力を利用して整地体4の持ち上げを適切にアシストできる。」

(エ) 図24、図25において、軸5は、機体2の後方に設けられ、整地体4の前端部近傍にあることが見て取れる。

(オ) 図24、図25において、長尺体93及び移動体111は、軸37、軸状部108(取付孔部28a)を通る同一軸上にあることが見て取れる。

(カ) 図32、図33から、ピン用孔部96は長尺体93の下方に開口していることが見て取れる。

(キ) 以上の記載によれば、刊行物1には以下の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。

先願発明1
「トラクタの後部に脱着可能に連結される機体と、この機体に回転可能に設けられ所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(ロータリー)と、機体の後方に設けられた回動支点を中心として上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体の後方で整地作業する板状の整地体(均平板)とを備えている農作業機であって、
前記回動支点は整地体の前端部近傍にあり、
作業者の人力による整地体の持ち上げ(上方回動)をアシストする持上アシスト手段を備えており、
持上アシスト手段は、操作レバーの一方向への回動(例えば下方回動)によってアシストオフ状態(ロック状態)となり、操作レバーの一方向とは反対方向である他方向への回動(例えば上方回動)によってアシストオン状態(ロック解除状態)となり、
持上アシスト手段は、細長い円筒状に形成された前後方向長手状の長尺体(インナーパイプ)、及び回動体の挿通孔部に挿通され長尺体に対してスライド移動可能な移動体(アウターパイプ)を有し、
長尺体は、機体に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に設けられており、長尺体内にガススプリングが収納配設されており、このガススプリングは、窒素ガス等の高圧ガスが封入された本体部と、この本体部内に対して出入りするロッド部とにて構成され、本体部が長尺体に取り付けられ、
移動体は、外周側に回動体がスライド移動可能に配設された前後方向長手状で円筒状の筒状部を有し、この筒状部の前端部にはガススプリングのロッド部が取り付けられており、このため、移動体を上方側へ向けて付勢するガススプリングの伸縮に応じて、移動体が長尺体の外周面に沿ってスライド移動するようになっており、筒状部の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段のアシストオン状態時にガススプリングの付勢力に基づいて回動体を押し上げる円形環状の回動体当接部である鍔部が突出状に固設されており、
回動体は、筒状部と、この筒状部の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部とにて構成され、この各軸状部が整地体の突出板の取付孔部に回動可能に取り付けられており、
長尺体及び移動体は、左右方向の軸、取付孔部を通る同一軸上にあり、
持上アシスト手段をアシストオン状態に設定することにより、長尺体に対する移動体の前方移動が許容(つまりガススプリングの伸びが許容)されることとなり、移動体が鍔部に当接した回動体とともに長尺体に対してガススプリングの付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体がガススプリングの付勢力に基づいて上方へ回動する、
農作業機」

イ 取消理由通知において引用した甲第2号証(特開2010-63367号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
本発明は、トラクタの後部に昇降可能に装着された作業ロータの上方を覆うエプロンを備えるロータリ作業機において、エプロンを跳ね上げる際の作業者の負荷を軽減するエプロン跳ね上げ軽減装置に関する。」

(イ)
「【0016】
図1は、・・・エプロン3を跳ね上げ方向に付勢する伸縮自在な伸縮部21aを有する付勢手段21と、を備えるロータリ作業機において、付勢手段21が、作業機本体10の表面とエプロン3の表面との間にコンプレッションロッド18と並列に配置され、伸縮部21aが、コンプレッションロッド18に間接的に接合されているエプロン跳ね上げ軽減装置1の構成例を示す。」

(ウ)
「【0025】
付勢手段21には、常に伸張方向に付勢されているが、伸縮部21aの内部に設けられたプッシュロッド21bの操作(例えば、プッシュロッド21bを押すと伸縮部21aが伸縮可能、離すとロック。この逆でもよい。)により伸縮部21aの伸張を任意の位置で停止可能なプッシュロックタイプのガススプリングが使用される。付勢手段(以下、ガススプリング)21は、支持部材22によりコンプレッションロッド18に並列した状態で支持される。
【0026】・・・
【0027】・・・
【0028】
ここで、ガススプリング21(例えばフリーピストンタイプ)の動作原理について図9を用いて説明する。図9(a)、(b)に示すように、シリンダチューブ21cの内部には、フリーピストン21d及びピストン21eがシリンダ軸方向に摺動可能に配置される。ピストン21eには、プッシュロッド21bを摺接可能に支持したピストンロッド21aの他端部が接続される。
【0029】
シリンダチューブ21cとフリーピストン21dによって仕切られたA室には圧縮された窒素ガス、シリンダチューブ21cとフリーピストン21dとピストン21eによって仕切られたB室にはオイルが充填される。また、シリンダチューブ21cとピストン21eとシール21fによって仕切られたC室にもオイルが充填される。B室とC室とのオイルは、ピストン21e内部においてプッシュロッド21bの他端部に接続されたスプール弁21gのシリンダ軸方向への移動によって開閉されるオリフィス孔21hにより移動(流通)可能とされる。なお、図中の符号21iは、ピストンロッド21aを摺接可能に支持するガイド、21jは、シリンダチューブ21c内に異物が入るのを防止するダストシールである。」

(エ)以上の記載によれば、甲第2号証には、以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

甲2技術
「トラクタの後部に昇降可能に装着された作業ロータの上方を覆うエプロンを備えるロータリ作業機のエプロンを跳ね上げる際の作業者の負荷を軽減するエプロン跳ね上げ軽減装置において、
エプロンを跳ね上げる付勢手段として、ガススプリングを用いており、ガススプリングのシリンダチューブの内部には、フリーピストン及びピストンがシリンダ軸方向に摺動可能に配置され、ピストンには、プッシュロッドを摺接可能に支持したピストンロッドの他端部が接続され、シリンダチューブとフリーピストンによって仕切られたA室には圧縮された窒素ガス、シリンダチューブとフリーピストンとピストンによって仕切られたB室にはオイルが充填され、シリンダチューブとピストンとシールによって仕切られたC室にもオイルが充填され、さらに、ピストンロッド21aを摺接可能に支持するガイドを有すること」

ウ 取消理由通知において引用した甲第3号証(実願昭61-101485号(実開昭63-9805号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「本考案は、整畦機に係り、・・・に関する。」(明細書1頁17行?2頁1行)

(イ)
「ここで第5図のものはフリーピストン20a側のガス室20bに高圧窒素ガスが封入され、・・・ピストン20cの両側にオイル室20d、20eが形成されたもので、ピストン20cの移動の際にガススプリングとして機能し・・・ばね力を発生する。」(明細書12頁4行?11行)

(ウ)第5図において、ピストン20cの左側に伸びる棒状物が見て取れる。

(エ)以上の記載によれば、甲第3号証には、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

甲3技術
「整畦機において、ガススプリングは、ピストン、フリーピストン、ピストンから伸びる棒状物を有し、フリーピストン側のガス室に高圧窒素ガスが封入され、ピストンの両側にオイル室が形成されたもので、ピストンの移動の際にガススプリングとして機能すること」

エ 取消理由通知において引用した甲第4号証(特開2006-226424号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0015】
図1に示すように、一実施の形態におけるシール構造が具現化された緩衝器は、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、一端がピストン2に連結されシリンダ1内に挿通されるロッド3と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるフリーピストン4と、シリンダ1の一端側に保持されロッド3が挿通される環状部材5と、該環状部材5と上記ロッド3との間をシールする環状のシール部材6と、ロッドガイド7とを備えて構成されている。
【0016】
以下、各部材について詳細に説明すると、ピストン2は、シリンダ1内に2つの圧力室R1,R2を画成しており、この圧力室R1,R2内には、作動油等の液体が充填されている。また圧力室R2の図中下方には上記フリーピストン4により気室Gが区画されている。」

(イ)上記(ア)の記載及び図1から、フリーピストン4とシリンダ1により気室Gが構成されていることが見て取れる。

(ウ)以上の記載によれば、甲第4号証には、以下の発明(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

甲4技術
「シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、一端がピストンに連結されシリンダ内に挿通されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるフリーピストンと、シリンダの一端側に保持されロッドが挿通される環状部材と、該環状部材と上記ロッドとの間をシールする環状のシール部材と、ロッドガイドとを備えて構成され、ピストンは、シリンダ内に2つの圧力室を画成しており、これらの圧力室内には、作動油等の液体が充填され、フリーピストンとシリンダにより気室が区画されている、緩衝器」

オ 取消理由通知において引用した甲第5号証(特開2003-265002号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機体の進行方向と直交して水平方向に延びる本体フレームに対し、複数の作業ユニットを間隔を置いて摺動可能に配置した農作業機に関する。」

(イ)
「【0014】前記各作業ユニット3C,3R,3Lの伝動兼支持ケース10はチェン伝動系を内装し、図2及び図4で明らかなように、機体後方斜め下方に向け突出しており、その下端部に中耕ロータが装着されている・・・また、本体フレーム2に対する摺動・固定金具4の摺動面に摺動抵抗を軽減させるための合成樹脂板からなる摺動抵抗軽減用部材4c,4cを介装している。」

(ウ)
「【0016】次に、このような構成を備えたロータリ中耕機1の動作について説明する。・・・作物列の畝間隔に応じて、固定・固定解除ボルト4aを緩めて摺動・固定金具4をスライドさせ、作業ユニット3R,3Lを左右移動させて、適切な作業間隔に設定する。このとき、摺動・固定金具4は摺動抵抗軽減用部材4cによりスムーズにスライドする。」

(エ)以上の記載によれば、甲第5号証には、以下の技術(以下「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

甲5技術
「農作業機において、本体フレームに対する摺動・固定金具の摺動面に摺動抵抗を軽減させるための合成樹脂板からなる摺動抵抗軽減用部材を介装し、摺動・固定金具はスムーズにスライドするようにすること」

カ 取消理由通知において引用した甲第6号証(特開平10-14321号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、移動作業機の接地輪取付装置に関し、ロータリ耕耘装置の如き作業装置の尾輪やゲージホイル等の接地輪を取付ける取付装置として利用しうる。」

(イ)
「【0004】
【発明の効果】接地輪5は、取付杆6をブラケット2のボス3に挿通させて取付けられる。このときボス3内周に二つ割型居至半円形態のスリーブ4を嵌合させておき、このスリーブ4の内側に取付杆6を挿通させて、これらボス3、スリーブ4、及び取付杆6に亘って形成されるピン穴7にセットピン8を挿通することにより、ボス3に対する取付杆6のがたつきを少くした状態にして取付けることができ、又、この少しのがたつきがあったとしても、合成樹脂材からなるスリーブ4がボス3と取付杆6との間に介在されるためにがたつき音は発しない。」

(ウ)
「【0008】・・・この取付構成は、左右のブラケット2にボス3を取付け、このボス3の内周に合成樹脂からなる二つ割型のスリーブ4を嵌合することにより、このスリーブ4の内側に上下方向の取付杆6を挿通して、上下動調節自在とする。これらボス3と、スリーブ4と、取付杆6との間に亘ってピン穴7を形成し、このピン穴7にセットピン8を挿通して、先端に抜止ピン25を取付けて、取付杆6の位置決めを行う。接地輪5はこの取付杆6の下端部に回転自在に設けられている。
【0009】前記スリーブ4は、ボス3の断面形状に応じて、丸パイプ状、乃至角パイプ状等に形成され、上下端には外周に突出するリブ26が形成されて、ボス3に嵌合することにより、これら上下のリブ26がこのボス3の上下端に係止して、上下動しない構成としている。このスリーブ4の割型は、上下方向の筒軸に沿う方向の断面のもとに左右に分割27する半円筒形態(A)の構成とするもよく、又、筒軸方向に沿った所定幅の切割溝28を形成する欠円筒形態(B)の構成とするもよい。」

(エ)以上の記載によれば、甲第6号証には、以下の技術(以下「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

甲6技術
「ロータリ耕耘装置の如き作業装置において、ボス内周に二つ割型半円形態又は欠円筒形態のスリーブを嵌合させておき、このスリーブの内側に取付杆を挿通させて、合成樹脂材からなるスリーブがボスと取付杆との間に介在されるためにがたつき音は発しないようにすること」

キ 取消理由通知において引用した甲第7号証(特開昭52-20651号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「また前記内パイプ6と外パイプ7との間にブツシュ8を挿設し、かつその一端部に形成された鍔部8aを前記外パイプ7の端部とリンク連結部5の端面間に介装させてあるので、外パイプ7とリンク連結部5との直接の接触を防ぎ、該連結部5の自在性を確保すると共に、外パイプ7を固定し得る。またリンク連結部5はこれが回動する際、当該ブツシュ8の鍔部8aの端面と摺接するが、ブツシュ8の材質を考慮することによって、接触音の発生や摩耗を可及的に防止し得る特長がある。従って、このブツシュ8は耐摩耗性及び耐蝕性を有する合成樹脂材で構成するのが望ましい。」(2頁右上欄17行?左下欄9行)

(イ)以上の記載によれば、甲第7号証には、以下の技術(以下「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

甲7技術
「内パイプと外パイプとの間にブツシュを挿設し、ブツシュの材質を耐摩耗性及び耐蝕性を有する合成樹脂材で構成することによって、接触音の発生や摩耗を可及的に防止すること」

ク 取消理由通知において引用した甲第8号証(特開2005-151848号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
本発明は、走行車の走行により移動しながら土作業を行う農作業機に関するものである。」

(イ)
「【0036】
また一方、農作業機1は、・・・トラクタの3点リンク部による持上げ状態時において可動枠部5を比較的小さい力で移動操作できるよう徐々に伸びながら可動枠部5の前進作業位置から格納非作業位置への移動(斜め上方移動)および可動枠部5の後退作業位置から格納非作業位置への移動(斜め上方移動)を補助する伸縮可能な1本のガススプリング41を備えている。」

(ウ)
「【0068】
また、農作業機1は、1本のガススプリング41のみを備えた構成には限定されず、例えば図9に示すように、自由長の状態で固定枠部4および可動枠部5間(或いは第1回動部材12および第2回動部材13間)に回動アーム40を介して介装可能で互いに平行に位置する複数本、例えば2本のガススプリング41を備えた構成でもよい。」

(エ)以上の記載によれば、甲第8号証には、以下の技術(以下「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

甲8技術
「土作業を行う農作業機に関して、可動枠部の前進作業位置から格納非作業位置への移動(斜め上方移動)および可動枠部の後退作業位置から格納非作業位置への移動(斜め上方移動)を補助する伸縮可能なガススプリングを備えており、ガススプリングは平行に位置する複数本、例えば2本のガススプリングを備えた構成とすること」

ケ 取消理由通知において引用した甲第9号証(特開2015-65841号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
本発明は、穀粒タンク内の穀粒を機外に排出搬送する排出オーガを備えたコンバインに関する。」

(イ)
「【0017】
ガススプリング18は、縦パイプ11側に設けられるブラケット24と、横パイプ12側に設けられるブラケット25との間に介設され、横パイプ12を上昇方向に付勢することにより、モータリンク機構17の負荷を軽減している。本実施形態では、2本のガススプリング18を並設(図3において前後、図4において上下に並設)することにより、必要な付勢力を確保しているが、ガススプリング18の本数は、1本でも3本以上であってもよい。」

(ウ)以上の記載によれば、甲第9号証には、以下の技術(以下「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。

甲9技術
「コンバインに関して、ガススプリングは、縦パイプ側に設けられるブラケットと、横パイプ側に設けられるブラケットとの間に介設され、2本のガススプリングを並設していること」

コ 取消理由通知において引用した甲第10号証(特開2002-188180号公報)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建設機械の運転室、さらに詳しくは、開閉自在な天井窓の上方に上部保護部材が備えられた建設機械の運転室に関する。」

(イ)
「【0029】付勢手段20は、トップガード6を上方へ押し上げるシリンダ形スプリングであるガススプリングである。前述のハッチ4を開放方向に付勢するガススプリング32と同種のものであるが、ガススプリング20はハッチ4よりも大形のトップガード6を付勢するために、ガススプリング32よりも大形のものが用いられている。」

(ウ)
「【0039】以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。例えば、本発明の実施の形態においては、トップガード6の揺動の付勢手段としてのガススプリング20が1個用いられているが、左右に1個ずつ設けてもよい。」

(エ)以上の記載によれば、甲第10号証には、以下の技術(以下「甲10技術」という。)が記載されていると認められる。

甲10技術
「建設機械の運転室に関して、トップガードの揺動の付勢手段としてのガススプリングを、左右に1個ずつ設けること」

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)先願発明1の「農作業機」、「トラクタ」、「耕耘体」は、それぞれ本件発明1の「作業機」、「走行機体」、「耕うんロータ」に相当する。

(イ)先願発明1の「機体」はトラクタの後部に脱着可能に取り付けられるものであると共に、耕耘体を回転可能に取り付けるものであるから、本件発明1の「フレーム」に相当する。

(ウ)先願発明1の「回動支点」を中心として、耕耘体の後方で「整地体」が上下方向に回動するので、「回動支点」、「整地体」は、それぞれ本件発明1の「第1の支点」、「エプロン」に相当する。

(エ)先願発明1の「持上アシスト手段」は、整地体の持ち上げ(上方回動)をアシストするので、本件発明1の「アシスト機構」に相当する。

(オ)先願発明1の持上アシスト手段は「長尺体」(インナーパイプ)及び長尺体に対してスライド移動可能な「移動体」(アウターパイプ)を有していること、及び長尺体は機体に「左右方向の軸」を中心として上下方向に回動可能に設けられており、長尺体内に「ガススプリング」が収納配設されており、このガススプリングは、窒素ガス等の高圧ガスが封入された「本体部」と、この本体部内に対して出入りする「ロッド部」とにて構成され、本体部が長尺体に取り付けられていること、また、移動体は前後方向長手状で円筒状の筒状部を有し、この筒状部の前端部にはガススプリングのロッド部が取り付けられていることから、先願発明1の「長尺体」、「移動体」、「左右方向の軸」、「ガススプリング」、「本体部」、「ロッド部」は、それぞれ本件発明1の「第1の筒状部材」、「第2の筒状部材」、「第2の支点」、「ガススプリング」、「シリンダー」、「ピストンロッド」、に相当する。

(カ)先願発明1の回動体は「筒状部」と、この筒状部の左右両側に外側方に向かって突設された左右方向の丸軸状の軸状部とにて構成され、この各軸状部が「整地体の突出板」の「取付孔部」に回動可能に取り付けられていること、及び移動体の筒状部の前後方向中間部の外周面には、持上アシスト手段のアシストオン状態時にガススプリングの付勢力に基づいて回動体を押し上げる円形環状の回動体当接部である「鍔部」が突出状に固設されていることから、先願発明1の「(回動体の)筒状部」、「整地体の突出板」、「取付孔部」、「鍔部」は、それぞれ本件発明1の「第2の突部」、「台座」、「第3の支点」、「第1の突部」に相当する。

(キ)先願発明1において「回動支点は整地体の前端部近傍に設けられて」いることから、整地体の重心が回動支点よりも後方にあることは明らかであり、先願発明は本件発明1の(エプロンの)「重心が前記第1の支点よりも後方にある」との構成を有している。

(ク)先願発明1の「長尺体に対する移動体の前方移動が許容(つまりガススプリングの伸びが許容)されることとなり、移動体が鍔部に当接した回動体とともに長尺体に対してガススプリングの付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体がガススプリングの付勢力に基づいて上方へ回動する」との構成から、「左右方向の軸」と「取付孔部」との距離を変化させる力を作用させることで整地体を跳ね上げる方向に力を作用させていること、及び整地体が下降した場合にはガススプリングは収縮していることは明らかであり、先願発明は本件発明1の「前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し」、「前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成される」との構成を有している。

(ケ)これらのことから、本件発明1と先願発明1は
「走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、
前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、
前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、
前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、
前記ガススプリングは、シリンダーとピストンロッドとを有し、
前記アシスト機構は、さらに、前記第2の支点及び前記第3の支点を通る同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、
前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が、前記第3の支点を回動中心とし、前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、
前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成されることを特徴とする作業機。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1は、ガススプリングとして、「シリンダーの内部に挿入されたピストン」、「ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、前記シリンダーと前記ピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、前記シリンダー内部のうち前記フリーピストンと前記ピストンとの間及び前記ピストンと前記ロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され」ているのに対し、先願発明1はそのような構成が特定されていない点。

(相違点2)
本件発明1は「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するのに対し、先願発明1はそのような構成が特定されていない点。

(コ)相違点1について
相違点1について検討するに、ガススプリングとして本件発明1のような「シリンダーの内部に挿入されたピストン」、「ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、前記シリンダーと前記ピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、前記シリンダー内部のうち前記フリーピストンと前記ピストンとの間及び前記ピストンと前記ロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され」る構成とすることは、上記で説示した甲第2?4号証に開示されているように、先願出願日前において周知慣用の技術にすぎず、さらに甲第2、3号証に示されているように、当該周知技術を農業用の作業機において用いることも通常行われていることであるから、先願発明1において、そのような構成を採用することは設計上の微差にすぎず、実質的な差異とはいえない。なお、甲3技術のピストンから伸びる棒状物はピストンロッドに相当すること、及び甲4技術の緩衝器は、甲第4号証の図1から見ても、ガススプリングを意味していることは明らかである。

(サ)相違点2について
a 先願発明1においては、明細書において「エプロンを跳ね上げるのに要する力」に関連して、「【0107】すると、・・・移動体111が鍔部118に当接した回動体106とともに長尺体93に対してガススプリング91の付勢力に基づいて前方へ移動し、その結果、整地体4がガススプリング91の付勢力に基づいて上方へ回動する(図27参照)。【0108】そして、作業者が整地体4を最上げ位置まで軽い人力で持ち上げると、ストッパ装置53によって整地体4がその最上げ位置に自動的にロックされる。なお、この例においても、整地体4は、ガススプリング91の付勢力のみによって最上げ位置まで上方回動しないため、作業者が最上げ位置まで人力で少し持ち上げる必要があるが、この際、ガススプリング91は、自由長(最大長さ)にはなっておらず、整地体4を上方側へ付勢しているため、作業者は、軽い人力で整地体4を最上げ位置まで持ち上げることが可能である。」(上記(2)ア(ウ)参照。以下「先願明細書記載1」という。)と記載されているものの、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するとは明記されておらず、また、先願明細書の記載から見て、自明の事項あるいは記載されているに等しい事項とまではいえない。
したがって、本件発明1の「所定角度範囲内」を、エプロン角度が増加する「ある一部の角度範囲内」、あるいは「全角度範囲内」のいずれに解したとしても、先願発明1において、そのような角度範囲内において「エプロンを跳ね上げるのに要する力」を「徐々に減少」することが特定されているとはいえない。
また、上記相違点2に係る構成については、甲第2号証?甲第10号証にも開示されていない。

b 相違点2に関して、特許異議申立人は「そこで、甲第1号証に記載された『第1の支点』、『第2の支点』及び『第3の支点』をみると、これら3つの各支点の位置関係は、本件訂正発明1の3つの各支点の位置関係と同じである・・・それゆえ、甲1発明においても、本件訂正発明1と同様に、エプロン(整地体4)を跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する。」(平成29年4月3日付け意見書4頁9行?6頁3行参照)と主張する。
確かに、本件発明1と先願発明1は、それぞれの実施例(図面)において、アシスト機構の構成が、第1の支点、第2の支点、第3の支点、第1の筒状部材、第2の筒状部材、ガススプリング、第1の突部、第2の突部を含めて、相対的な位置関係が近似しており、それらの位置関係の比較だけで見れば、両者のアシスト機構の本質的な機能は同様であると考えることもできる。
しかしながら、「エプロンを跳ね上げるのに要する力」については、上記のような相対的な位置関係だけではなく、本件明細書に「【0028】・・・上記説明したガススプリング250は圧縮状態の力のほうが、伸長状態の力よりも大きいが、支点152が支点151に近づくにつれ、所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなるため、「てこの原理」により、逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する。」とも記載されており、ガススプリングの反発力をどの程度に設定するか、エプロンを跳ね上げる際にガススプリングがどの範囲で伸縮するようにするか、ガススプリングのエプロンに対する取付角度をどの程度にするか、などの他の要因によっても大きな影響を受けるため、相対的な位置関係が近似しているのみでは、先願発明1において、相違点2に係る「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するとは限らない。
そして、先願明細書には上記他の要因についてどのように設定するかは格別説明されておらず、先願発明1において「エプロンを跳ね上げるのに要する力」をどのように制御しているのか詳細に確認できないこと、及び上記先願明細書記載1からも「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するように設定されているとは解することができないことから、相違点2に係る構成を先願発明1が有しているとまではいえない。
また、前記平成29年4月3日付け意見書の参考説明図において、「F_(1)sinθ_(1)×L<F_(2)sinθ_(2)×L」の関係を示しているが、この関係式は、ガススプリングの反力F_(1)、F_(2)及び角度θ_(1)、θ_(2)の組み合わせにより、満たす場合と満たさない場合があり得るので、そのような意味でも、相対的な位置関係が近似しているのみでは、本件発明1のようになるとまではいえない。

c よって、先願発明1は、相違点2に係る構成を有していない。

(シ)小括
したがって、本件発明1は、上記先願発明1と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

イ 本件発明2、3、5?8について
本件発明2、3、5?8は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア(サ)参照)により、上記先願発明1と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1?3、5?8は、上記先願発明1と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

2 取消理由通知に記載した取消理由2(特許法第17条の2第3項)について
(1)平成27年12月28日付手続補正書によって、以下ア、イの事項が補正された。

ア 補正事項1
請求項1において、「前記第2の筒状部材には前記第3の支点と前記ガススプリングの他端とが接続され」から「前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され」への補正

イ 補正事項2
請求項1において、「前記第2の筒状部材に設けられた第1の突部が前記第3の支点を回動中心とする第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化させる」の記載の追加

(2)補正事項1、2について
補正事項1、2は関連する補正であるため、その適否について併せて検討する。
特許異議申立人が主張するように、本件当初の明細書において「第1の突部」、「第2の突部」との用語は用いられていない。一方で、本件図2、図3、図5、図6から、(第3の)支点152周辺に2つの突部があることが見て取れることから、これらを「第1の突部」、「第2の突部」とすることは、本件当初の明細書及び図面に記載された事項から逸脱したものとはいえない。
次に、「第1の突部」、「第2の突部」が、どのように(第3の)支点152と連携して機能するかについては、本件図2、図3、図5、図6における 「第1の突部」、「第2の突部」、(第3の)支点152の移動範囲、回動範囲及びロータリ作業機等の農作業機の技術常識に基づけば、「第1の突部」、「第2の突部」、「第3の支点」が補正事項2のような関係となることが理解できるので、補正事項2の内容は本件当初の明細書及び図面に記載されているに等しい事項であるといえる。
また、補正事項1において「第2の筒状部材」に「第3の支点」が接続されているとの記載が削除されているが、「第2の筒状部材」と「第3の支点」の関連について、補正事項2において、より詳細に充当されていることから、補正事項1は「第2の筒状部材」の構成を拡張するものではなく、本件当初の明細書及び図面に記載された範囲のものである。
以上のとおりであるから、補正事項1、2は、本件当初の明細書等に記載された範囲のものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

3 取消理由通知に記載した取消理由3(特許法第36条第6項第2項)について
上記2(2)で示したように、「第1の突部」、「第2の突部」、「第3の支点」の関係性については、本件図2、図3、図5、図6の記載及び技術常識に基づいて理解できるものであり、本件特許請求の範囲の記載は明確である。
以上のとおりであるから、本件発明1?3、5?8は明確でないとはいえず、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしている。

4 請求項4に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項4を削除する本件訂正が認められたので、請求項4に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項4に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成28年12月20日付け取消理由通知並びに平成29年5月17日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし3、5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3、5ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、
前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、
前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、
前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、
前記ガススプリングは、シリンダーと、前記シリンダーの内部に挿入されたピストンと、前記ピストンから延長されるピストンロッドと、前記ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、前記シリンダーと前記ピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、前記シリンダー内部のうち前記フリーピストンと前記ピストンとの間及び前記ピストンと前記ロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され、
前記アシスト機構は、さらに、前記第2の支点及び前記第3の支点を通る同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、
前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が、前記第3の支点を回動中心とし、前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、
前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成されることを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機において、前記第1の筒状部材又は前記第2の筒状部材のエプロン側の一端に、下方に向けた開口が存在する
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機において、前記第1の筒状部材と前記第2の筒状部材との間に樹脂カラーを介在させる
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
請求項1に記載の作業機において、前記アシスト機構は、前記エプロンが下降した地点において、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにするロック機構を有する
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機において、前記ロック機構は前記第2の筒状部材に設けられた回動可能な制止レバーを有し、前記制止レバーが前記第2の筒状部材の一端を閉じることによって前記第2の筒状部材から前記第1の筒状部材が突出することを防止し、前記制止レバーが前記第2の筒状部材の一端を開くことによって前記第2の筒状部材から前記第1の筒状部材が突出することを許容するよう構成した
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機において、前記ロック機構は、前記制止レバーを前記第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させる手段と、前記制止レバーを前記第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定する手段とを有する
ことを特徴とする作業機。
【請求項8】
請求項1に記載の作業機において、前記アシスト機構は複数のガススプリングを含む
ことを特徴とする作業機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-15 
出願番号 特願2015-174637(P2015-174637)
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (A01B)
P 1 651・ 537- YAA (A01B)
P 1 651・ 55- YAA (A01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 圭伸  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
井上 博之
登録日 2016-03-18 
登録番号 特許第5902858号(P5902858)
権利者 小橋工業株式会社
発明の名称 作業機  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 山田 哲也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ