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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A63B
管理番号 1334356
異議申立番号 異議2016-701010  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-21 
確定日 2017-10-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5912415号発明「ゴルフスイング解析装置およびゴルフスイング解析方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5912415号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、〔10-11〕について訂正することを認める。 特許第5912415号の請求項1、2、10及び11に係る特許を維持する。 特許第5912415号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5912415号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成23年10月27日に特許出願され、平成28年4月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人仲井登志美(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年3月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月1日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から同年7月4日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、」の後に、「前記演算処理回路に接続される画像処理回路と、」を追加する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出する」とあるのを、「前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出する」を上記訂正事項2のとおり訂正した後に、「前記画像処理装置は、前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」を追加する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「前記演算処理回路は、前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する」とあるのを、「前記演算処理回路は、前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2の「前記演算処理回路は、前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する」を上記訂正事項4のとおり訂正した後に、「前記画像処理装置は、前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」を追加する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項3に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記三次元二重振子モデルは、前記ゴルファーのアドレス時の両肩を結ぶ線の中心と前記ゴルファーが握る前記ゴルフクラブのグリップ部を結ぶ仮想線を腕リンクとし、
前記ゴルファーが握る前記グリップ部を前記関節として、前記ゴルフクラブが前記腕リンクと接続されたモデルであることを特徴とするゴルフスイング解析装置。」とあるのを、
「ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーと、
前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、
を備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出し、
前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出し、
前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率との和に基づいて、前記ゴルフクラブの総エネルギー変化率を算出し、
前記三次元二重振子モデルは、前記ゴルファーのアドレス時の両肩を結ぶ線の中心と前記ゴルファーが握る前記ゴルフクラブのグリップ部を結ぶ仮想線を腕リンクとし、
前記ゴルファーが握る前記グリップ部を前記関節として、前記ゴルフクラブが前記腕リンクと接続されたモデルであることを特徴とするゴルフスイング解析装置。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出する工程と、」とあるのを、「前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10の「前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する工程」を上記訂正事項8のとおり訂正した後に、「前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、」を追加する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に「前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する工程」とあるのを、「前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11の「前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する工程」を上記訂正事項10のとおり訂正した後に、「前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、」を追加する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「ゴルフスイング解析装置」について、「前記演算処理回路に接続される画像処理回路」を備えることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項1は、特許明細書の「演算処理回路16には画像処理回路21が接続される。」(段落【0026】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る特許発明の演算処理回路が第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出する際に、「時系列で算出」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項2は、特許明細書の「演算処理回路16は第2エネルギー変化率算出手段53を備える。第2エネルギー変化率算出手段53は第2リンク33の内力F_(2)に由来するエネルギー変化率を算出する。……第2エネルギー変化率算出手段53は第2エネルギー変化率情報を出力する。第2エネルギー変化率情報は時系列に第2リンク33の内力F_(2)に由来するエネルギー変化率を特定する。」(段落【0040】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項2が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「ゴルフスイング解析装置」について、上記訂正事項1によって限定された「画像処理回路」が「前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項3は、特許明細書の「演算処理回路16は、……第2リンク33の内力F_(2)に由来するエネルギー変化率の時系列変化……を算出する。演算処理回路16は個々の時系列変化に基づきグラフデータを作成する。グラフデータに基づき画像データが生成される。画像データはグラフの画像を規定する。グラフはグラフデータを反映する。グラフの横軸は例えば時間軸に設定される。画像データは画像処理回路21に供給される。画像処理回路21は画像データに基づき画像信号を生成する。」(段落【0066】)及び「こうしてゴルフクラブ14に作用するエネルギー変化率が時系列に観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングの形成に大いに貢献することができる。」(段落【0069】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項3が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
上記訂正事項4は、訂正前の請求項1に係る特許発明の演算処理回路が第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する際に、「時系列で算出」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項1は、特許明細書の「第5エネルギー変化率算出手段56は関節34回りに第2リンク33に作用するトルクτ_(2)に由来するエネルギー変化率を算出する。このエネルギー変化率は次式の右辺第2項に該当する。……第5エネルギー変化率算出手段56は第5エネルギー変化率情報を出力する。第5エネルギー変化率情報は時系列に第2リンク33のトルクτ_(2)に由来するエネルギー変化率を特定する。」(段落【0043】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項4が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(5)訂正事項5について
上記訂正事項5は、訂正前の請求項2に係る特許発明の「ゴルフスイング解析装置」について、上記訂正事項1によって限定された「画像処理回路」が「前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項5は、特許明細書の「演算処理回路16は、……第2リンク33のトルクτ_(2)に由来するエネルギー変化率の時系列変化……を算出する。演算処理回路16は個々の時系列変化に基づきグラフデータを作成する。グラフデータに基づき画像データが生成される。画像データはグラフの画像を規定する。グラフはグラフデータを反映する。グラフの横軸は例えば時間軸に設定される。画像データは画像処理回路21に供給される。画像処理回路21は画像データに基づき画像信号を生成する。」(段落【0066】)及び「こうしてゴルフクラブ14に作用するエネルギー変化率が時系列に観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングの形成に大いに貢献することができる。」(段落【0069】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項5が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
上記訂正事項6は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
上記訂正事項7は、訂正事項6による請求項の削除に伴った、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
上記訂正事項8は、訂正前の請求項10に係る特許発明の「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出する工程」が、「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項2は、特許明細書の「演算処理回路16は第2エネルギー変化率算出手段53を備える。第2エネルギー変化率算出手段53は第2リンク33の内力F_(2)に由来するエネルギー変化率を算出する。……第2エネルギー変化率算出手段53は第2エネルギー変化率情報を出力する。第2エネルギー変化率情報は時系列に第2リンク33の内力F_(2)に由来するエネルギー変化率を特定する。」(段落【0040】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項8が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(9)訂正事項9について
上記訂正事項9は、訂正前の請求項10に係る特許発明の「ゴルフスイング解析方法」について「画像処理回路」が「前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程」を備えることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項9は、上記訂正事項3と同様に特許明細書の段落【0066】及び【0069】の記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項9が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(10)訂正事項10について
上記訂正事項10は、訂正前の請求項11に係る特許発明の「第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出する工程」が「第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項10は、特許明細書の「第5エネルギー変化率算出手段56は関節34回りに第2リンク33に作用するトルクτ_(2)に由来するエネルギー変化率を算出する。このエネルギー変化率は次式の右辺第2項に該当する。……第5エネルギー変化率算出手段56は第5エネルギー変化率情報を出力する。第5エネルギー変化率情報は時系列に第2リンク33のトルクτ_(2)に由来するエネルギー変化率を特定する。」(段落【0043】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、訂正事項10が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである

(11)訂正事項11について
上記訂正事項11は、訂正前の請求項11に係る特許発明の「ゴルフスイング解析方法」について、「前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程」を備えることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記訂正事項11は、上記訂正事項5と同様に特許明細書の段落【0066】及び【0069】の記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項11が実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。

(12)一群の請求項について
訂正事項1ないし7に係る訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4がそれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、一群の請求項である。
また、訂正事項8ないし11に係る訂正前の請求項10及び11は、請求項11が請求項10を引用するものであるから、一群の請求項である。

(13)引用関係の解消の求めについて
引用関係の解消を目的とする訂正事項7は、上記のとおり認められるから、訂正後の請求項4について、訂正後の請求項〔1-3〕とは別途訂正することを認める。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕、4、〔10-11〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーと、
前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、
前記演算処理回路に接続される画像処理回路と、
を備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、
前記画像処理装置は、前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、
前記画像処理装置は、前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーと、
前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、
を備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出し、
前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出し、
前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率との和に基づいて、前記ゴルフクラブの総エネルギー変化率を算出し、
前記三次元二重振子モデルは、前記ゴルファーのアドレス時の両肩を結ぶ線の中心と前記ゴルファーが握る前記ゴルフクラブのグリップ部を結ぶ仮想線を腕リンクとし、
前記ゴルファーが握る前記グリップ部を前記関節として、前記ゴルフクラブが前記腕リンクと接続されたモデルであることを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項5】
請求項4に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記上半身の部位に取り付けられる第2慣性センサーをさらに備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルファーの両肩を結ぶ線の中心を支点としたとき、前記腕リンクの質量と前記第2慣性センサーで計測される第2加速度とに基づき、前記腕リンクの前記支点に作用する第2関節間力を算出し、前記第2加速度の積分値と前記第2関節間力との積に基づき、前記腕リンクの前記第2関節間力に由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第2慣性センサーで計測される第2角速度に基づいて前記支点周りの第2トルクを算出し、前記第2トルクと前記第2角速度との積に基づいて、前記腕リンクの前記第2トルクに由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項7】
請求項6に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第1トルクと前記第2角速度との積に基づいて、前記腕リンクの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記腕リンクの前記第2関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記腕リンクの前記第2トルクに由来するエネルギー変化率とを加算し、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記腕リンクの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率とを減算して、前記腕リンクの総エネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項9】
請求項8に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの総エネルギー変化率と前記腕リンクの総エネルギー変化率との総和を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項10】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーから第1加速度を取得する工程と、
前記第1加速度と前記ゴルフクラブの質量に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従って、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出する工程と、
前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、
前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、
を有することを特徴とするゴルフスイング解析方法。
【請求項11】
請求項10に記載のゴルフスイング解析方法において、
前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを
算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、
前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、
をさらに有することを特徴とするゴルフスイング解析方法。」

2 異議申立人が主張する取消理由
異議申立人が特許異議申立書において主張する取消理由の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし3、10及び11に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に示される周知技術から当業者が容易に想到することができたものである。
または、本件特許の請求項1ないし3、10及び11に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到することができたものである。
または、本件特許の請求項1ないし3、10及び11に記載された発明は、甲第4号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に示される周知技術、並びに、甲第1号証及び甲第5号証ないし甲第7号証に示される周知技術から当業者が容易に想到することができたものである。
よって、請求項1ないし3、10及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:金子靖仙 外1名,“ゴルフスイングの質的分離”,スポーツ工学シンボジウム講演論文集,日本機械学会,平成3年10月,p.13-18
甲第2号証:Hiroshi Negoro 外4名,“Measurement and Analysis of Golf Swing Using 3D Acceleration and Gyroscopic Sensors”,Proceedings of SICE Annual Conference 2011,The Society of Instrument and Control Engineers,平成23年9月,p.1111-1114
甲第3号証:特開2008-73210号公報
甲第4号証:特開2009-5760号公報
甲第5号証:特開2011-30761号公報
甲第6号証:太田憲 外3名,“B26 二重振子のパラメータ励振原理によるハンマー投運動の数理解析”,シンボジウム:スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス2010講演論文集,日本機械学会,平成22年11月,p.319-324
甲第7号証:阿江通良 外1名,“身体運動における力学的エネルギー利用の有効性とその評価指数”,筑波大学体育科学系紀要,第19巻,筑波大学体育科学系,平成8年3月,p.127-137

3 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3、10及び11に係る特許に対して平成29年3月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし3、10及び11に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項並びに甲第2号証及び甲第3号証に示される周知技術から当業者が容易に想到することができたものである。
または、本件特許の請求項1ないし3、10及び11に記載された発明は、甲第4号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証に記載された事項並びに甲第2号証及び甲第3号証に示される周知技術から当業者が容易に想到することができたものである。
よって、請求項1ないし3、10及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
取消理由で通知した本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「2.二重物理振子モデルによるスイング動作の検討
スイング動作の発現の幾つかの可能な方法を示すためにFig.1に示した左上肢とゴルフクラブからなる二重物理振子を用いる.」(第13ページ右欄第13?16行)

イ.「3.1 3次元剛体モデル
人間の左上肢を3つの剛体(S_(1):前腕,S_(2):上腕,S_(3):肩)から構成されるものとしてモデル化した(Fig.3).このうちS_(3)は仮想のセグメントであり質量および慣性係数をもたない.このモデルでは手関節J_(O)にゴルフクラブS_(O)が連結されている.身体はさらに左上肢の3つの剛体を含むn個の剛体から構成されていてn番目の剛体はJ_(n)で地面に固定されているものとする.
Fig.3において,J_(i)に作用する関節反力ベクトルF_(i)→(「F_(i)→」は「F_(i)」の上に「→」が付されたベクトルを示す。以下同様。)および筋力トルクベクトルN_(i)→は次式で与えられる.

ここで:

で、式の記号の意味は以下の通りである:

」(第15ページ左欄第14行?右欄第16行)

ウ.「Fig.3においてゴルフクラブに関する運動方程式は式(17),(18)によって示される.ここでF_(E)→=0として式(17)の両辺とC_(O)との内積をとり,式(18)の両辺とω_(O)との内積をとって辺々加えると:

したがって:

ただし,J_(i)→は慣性座標系におけるJ_(i)の位置ベクトルである.式(30)で左辺はクラブのエネルギーの時間変化E_(O)・(「E_(O)・」は、「・」の直前の変数である「E_(O)」の上に「・」が付された「E_(O)」の微分を意味する。以下同様。)を表している.また,右辺第1項はクラブに流れ込む瞬時パワーのうち手関節の関節反力に起因する成分(PF)を表し,右辺第2項は手関節回りのトルク(手関節の筋力以外のトルクも含む)に起因する成分(PM)を表している.」(第16ページ左欄第19?31行)

エ.「成人男子3名(身長1.74±0.07m,体重66.3±3.1kg,年齢33.7±5.13歳)に通常の努力感での1番ウッドと9番アイアンでのスイングをおこなわせ、2台のハイスピードカメラ(200fpsシャッタースピード1/2000s)で被験者の斜め前方から撮影した.コンピュータに入力したスイング中の身体各点の座標はDLT法^(7))によって3次元データに変換した.……データの分析はダウンスイング区間に対しておこない、左上肢の関節トルク,関節パワー,仕事量などを求めた.」(第16ページ右欄第18?29行)

オ.「一人の被験者のダウンスイング中の各関節の筋力トルクの時間変化をFig.4示す.」(第16ページ右欄第33?34行)

カ.上記イ.によれば、J_(i)に作用する関節反力ベクトルF_(i)→は式(15)ないし(18)で与えられるのだから、手関節J_(O)に作用する関節反力ベクトルF_(O)→が式(17)で与えられることは明らかである。

キ.上記エ.によれば、1番ウッドと9番アイアンでのスイングをおこなわせ、ハイスピードカメラで撮影し、コンピュータでスイング中の身体各点の座標を3次元データに変換し、データの分析を行っているところ、「1番ウッド」及び「9番アイアン」が「ゴルフクラブ」であることは明らかであって、引用文献1記載のものはゴルフクラブのスイングの分析を行っているといえる。そして、当該分析に用いられる「ハイスピードカメラ」及び「コンピュータ」は、「ゴルフクラブのスイングの分析装置」であるといえる。

ク.上記オ.によれば、「一人の被験者のダウンスイング中の各関節の筋力トルクの時間変化」が図示されるのだから、一人の被験者のダウンスイング中の各関節の筋力トルクの時間変化を求めていることは明らかである。

上記イ.ないしク.の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「人間の左上肢を前腕、上腕、肩の3つの剛体から構成され、手関節にゴルフクラブが連結される3次元剛体モデルとしてモデル化し、
ゴルフクラブのスイングを被験者の斜め前方から撮影したハイスピードカメラと、
スイング中の身体各点の座標をDLT法によって3次元データに変換するコンピュータとを備え、
データの分析はダウンスイング区間に対しておこない、左上肢の関節トルク、関節パワーを求め、
一人の被験者のダウンスイング中の各関節の筋力トルクの時間変化を求め、
手関節J_(O)に作用する関節反力ベクトルF_(O)→が

の式によって与えられ、
の式で、左辺はクラブのエネルギーの時間変位E_(O)・を表し、右辺第1項はクラブに流れ込む瞬時パワーのうち手関節の関節反力に起因する成分(PF)を表し、右辺第2項は手関節回りのトルク(手関節の筋力以外のトルクも含む)に起因する成分(PM)を表している
ゴルフクラブのスイングの分析装置。」

また、上記ア.の記載事項から、刊行物1には、引用発明1とは別に、以下の事項(以下「刊行物1記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「左上肢とゴルフクラブからなる二重物理振子モデル。」

(2)甲第2号証
取消理由で通知した本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、括弧内の翻訳文は、異議申立人による翻訳文を参考として当審において作成したものである。

ア.「Abstract: This paper describes the analysis of golf swing motion based on measurements obtained by a very simple device. Conventional studies generally use large, expensive equipment such as high-speed cameras. In this study, we used small, low-cost device employing 3D acceleration and gyroscopic sensors. The device was attached to the grip end of the golf club in order to measure the grip motion angle during the golf swing. The results of the experiment are in good agreement with the results obtained from high-speed cameras.」(第1111ページ第12?16行)
(要約:本論文では、非常に単純な装置により取得される計測値に基づくゴルフスイング動作の解析について述べる。従来の研究は、通常、大型で高価なハイスピードカメラのような装置を用いる。本研究では、我々は、小型で低コストの3次元加速度センサ及びジャイロセンサを利用する装置を用いた。この装置は、ゴルフスイング中のグリップの動作角度を計測するために、ゴルフクラブのグリップエンドに取り付けられた。実験の結果は、ハイスピードカメラから取得される結果と良好に一致した。)

イ.「3.4 Results
Figure 6 shows the data on the movement of the golf swing as measured by the motion sensor: (a) shows the waves of acceleration measured by the acceleration sensor and (b) shows the wave of angular velocity measured by the gyroscopic sensor. The 'impact' time is set to 0 s, 'address' starting time is shown by the vertical dotted line (around -1.7s), the timing of the 'top of swing' is also shown by a vertical dotted line, and the timing of the “finish” is shown at around 0.6 s.
Figure 7 shows the angles in the global coordinate system using Eq. (4). Figure 8 shows the velocity in the global coordinate system using Eqs. (6) and (7).
The blue curves are the results measured by the motion capture system and the red curves are the results from our proposed method using the motion sensor. Figure 7 shoes the grip angle of the golf swing in the global coordinate system: (a) is the angle seen from the front view, (b) is the angle seen from the side view, and (c) is the angle seen from the top view. Figure 8 shows the velocity in the global coordinate system: (a) is the synthesized velocity, (b) is the velocity of the X-axis, (c) is the velocity of the Y-axis, and (d) is the velocity of the Z-axis.
Lastly, Tables 3 and 4 show the root mean square error (RMSE) for the angle and velocity, respectively, using the data from the motion capture system and the data from the motion sensor.」(第1113ページ左欄第26行?第1114ページ左欄第15行)
(3.4 結果
図6は、モーションセンサにより計測されたゴルフスイングの動作のデータを示す。(a)は加速度センサによって計測された加速度の波を示し、(b)はジャイロセンサによって計測された加速度の波を示す。「インパクト」の時刻を0とし、「アドレス」の開始時刻は垂直方向の点線で示され(約-1.7秒)、「スイングのトップ」のタイミングも垂直方向の点線で示され、「フィニッシュ」のタイミングは約0.6秒に示されている。
図7は、式(4)を用いたグローバル座標系での角度を示す。図8は、式(6)及び(7)を用いたグローバル座標系での速度を示す。
青色の曲線は、モーションキャプチャシステムによって計測された結果であり、赤色の曲線は、我々が提案するモーションセンサを用いる方法による結果である。図7は、グローバル座標系でのゴルフスイングのグリップ角度を示している。(a)は正面から見た角度であり、(b)は側面から見た角度であり、(c)は上から見た角度である。図8は、グローバル座標系での速度を示す。(a)は合成速度であり、(b)はX軸の速度であり、(c)はY軸の速度であり、(d)はZ軸の速度である。
最後に、表3及び4は、角度及び速度についての二乗平均平方根誤差(RMSE)を示しており、それぞれ、モーションピクチャシステムからのデータ及びモーションセンサからのデータを用いている。)

ウ.「4. CONSIDERATIONS
Figure 6 shows that the acceleration and angular velocity can distinguish the golf motion phases. The phases are the address, top of swing, impact and finish. These four phases are states of the golf swing. As a result, the swing motion that was previously envisioned subjectively can now be seen objectively and accurately. This information can be used to analyze and improve the swing from.
In Table 3, the angle in the global coordinate system in α and γ show very high agreement. However, the angle in β generates a large error. This is because the number of cameras in the side position is not enough to detect the grip motion. In addition, the motion capture system does not successfully measure the gyration.
In Table 4, the results for velocity generate a large error. This is because the acceleration includes considerable noise such as centrifugal force. So the error accumulates when the acceleration is integrated and the velocity's error is large.
5. CONCLUSION
In this study, we used a motion sensor attached to the grip of the golf club to measure the golf swing motion. In addition, we transformed the local coordinate to the global coordinate system and obtained the angle and velocity of the golf swing motion. The results, 10.88° and 0.37 m/s, were similar to the results obtained by the motion capture system used as the reference.」(第1114ページ右欄第1?28行)
(4.検討
図6は、加速度及び各速度により、ゴルフモーションのフェーズを区別可能であることを示している。フェーズとは、アドレス、スイングのトップ、インパクト及びフィニッシュである。これらの4つのフェーズは、ゴルフスイングの状態である。結果として、以前は主観的に考えられていたスイングモーションが、今では客観的かつ正確に理解することができる。この情報は、スイングのフォームを分析し、改善するのに用いることができる。
表3によると、グローバル座標系でのαとγの角度が高い一致を示している。しかしながら、βの角度については、大きな誤差が生じている。これは、側面位置のカメラの数が十分でなく、グリップモーションを検出できないからである。加えて、モーションキャプチャシステムは、旋回をうまく計測できないからである。
表4によると、速度の結果には、大きな誤差が生じている。これは、加速度は、遠心力のようなかなりのノイズを含むからである。加速度が積分される時に誤差が蓄積され、速度の誤差が大きくなる。
5.結論
本研究では、我々は、ゴルフスイングモーションを計測するために、ゴルフクラブのグリップエンドに取り付けられたモーションセンサを用いた。加えて、我々は局所座標系からグローバル座標系への変換を行い、ゴルフスイングモーションの角速度を取得した。その結果である、10.88°及び0.37m/sは、基準として用いたモーションキャプチャシステムによって得られた結果と類似していた。)

上記の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「ゴルフスイング動作の解析について
3次元加速度センサ及びジャイロセンサを利用する
ゴルフクラブのグリップエンドに取り付けられた装置。」

(3)甲第3号証
取消理由で通知した本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【請求項2】
ゴルフクラブのスイング評価支援装置であって、
前記ゴルフクラブは、
ヘッド部に配された第1の三軸のジャイロセンサと、グリップ部に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、
前記スイング評価支援装置は、
前記ゴルフクラブのスイング時の前記ヘッド部のジャイロセンサの出力と、前記グリップ部のジャイロセンサの出力とを用いて前記ゴルフクラブのスイングに関する評価情報を生成する評価情報生成手段と、
前記評価情報生成手段で生成した評価情報を出力する出力手段とを備える
ことを特徴とするスイング評価支援装置。」

イ.「【0021】
図2は、挙動検出装置20の構成図である。挙動検出装置20は、様々な処理を行う中心的なユニットである主制御部21と、2つのジャイロセンサ22h、22gと、2つの加速度センサ23h、23gと、蓄電池24と、日時を生成する時計25と、入出力IF(インタフェース)26と、スイッチ27と、記憶装置28とを備えている。
【0022】
2つのジャイロセンサ22h、22gは、三軸のジャイロセンサで、三軸(x,y,z)方向の角速度を検出する。それぞれ、ヘッド部11と、グリップ部13に内蔵されている。ジャイロセンサ22h、22gは、例えば、三軸の振動型マイクロジャイロセンサである。
【0023】
2つの加速度センサ23h、22gは、三軸の加速度センサで、三軸(x,y,z)方向の加速度を検出する。それぞれ、ヘッド部11と、グリップ部13に内蔵されている。加速度センサ23h、23gは、例えば、三軸の振動型マイクロ加速度センサである。」

上記の記載事項を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「ゴルフクラブのスイング評価支援装置であって、
前記ゴルフクラブは、
ヘッド部に配された第1の三軸のジャイロセンサと、グリップ部に配された第2の三軸のジャイロセンサとを有し、
ヘッド部と、グリップ部に内蔵されている2つの三軸の加速度センサを有し、
前記スイング評価支援装置は、
前記ゴルフクラブのスイング時の前記ヘッド部のジャイロセンサの出力と、前記グリップ部のジャイロセンサの出力とを用いて前記ゴルフクラブのスイングに関する評価情報を生成する評価情報生成手段と、
前記評価情報生成手段で生成した評価情報を出力する出力手段とを備える
スイング評価支援装置。」

(4)甲第4号証
取消理由で通知した本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証(以下「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【0014】
図1は、本発明のゴルフクラブ解析方法を実施するための計測の一実施形態を示す図である。本発明に係る計測では、ゴルフクラブ及びゴルファー(被験者)のスイング中における挙動が測定される。好ましくは、本発明に係る計測では、ゴルフクラブ及びゴルファー(被験者)のスイング中における三次元座標が時系列的に測定される。三次元座標は、ゴルフクラブ上の一箇所以上と、被験者の一箇所以上とにおいて測定される。本願において、スイングを行う人間は、ゴルファー、被験者又は人体とも称される。
【0015】
三次元座標の計測には、DLT(Direct Linear Transformation)法と呼ばれる方法が用いられるのが好ましい。このDLT法は、例えば特開2004-344418号公報に記載されている。DLT法は、特にバイオメカニクスの分野で一般的に用いられている。DLT法は、異なる方向から見た複数の画像を用いて三次元の空間座標を得る方法である。DLT法では、三次元座標が既知である点(コントロールポイント)の画像に基づき3次元座標が再構築される。DLT法は、カメラの配置に関する制約が少なく、汎用性が高い。また、DLT法は、カメラの実空間での位置、光軸の方向、レンズの焦点距離等のカメラ定数に関する情報が不要とされうる利点を有する。
【0016】
計測においては、人体における所定箇所及びゴルフクラブの所定箇所にマーカを取り付けて、このマーカの動作が計測されるのが好ましい。動作解析においては、マーカ動作の計測結果に基づいて解析がなされるのが好ましい。マーカにより、人体又はゴルフクラブの所定箇所が画像上において目立つこととなり、画像処理等の解析が容易とされうる。また、マーカが基準とされることにより、演算が簡略化され、人体の動作解析が容易に且つ精度よくなされうる。より好ましくは、マーカの三次元座標が、DLT法により計測される。
【0017】
図1の実施形態は、DLT法を用いた三次元動作計測システム2を示している。この計測システム2は、三次元動作計測装置を構成している。この計測システム2は、複数のカメラ4、コンピュータ6、複数のマーカ、及びゴルフクラブ8を備えている。カメラ4は、高速度カメラである。本実施形態では、複数のマーカとして、マーカm1、マーカm2及びマーカm3が用いられている。」

イ.「【0022】
動作解析においては、リンクモデル(剛体マルチリンクモデル)が用いられるのが好ましい。リンクモデルが用いられることにより、複雑な人体の動作が簡略化される。リンクモデルが用いられることにより、演算が簡略化され、人体の動作解析が容易に且つ精度よくなされうる。リンクモデルを用いずに、人体及びゴルフクラブの画像そのものが解析されてもよい。」

ウ.「【0027】
本実施形態では、リンクモデルのジョイント(関節)におけるトルクが解析される。本実施形態では、上記三次元動作解析システムと、リンクモデルにおけるトルクを解析しうるリンクモデル解析システムとが用いられる。このリンクモデル解析システムは、記憶部、演算部、入力部及び出力部を有する。この解析により、人体(ゴルファー)からゴルフクラブに付与されるトルクに関する情報が得られる。ゴルフクラブに作用するトルクの解析が可能なリンクモデルが選択される。」

エ.【0029】
グリップ部に作用するトルクの解析が可能なリンクモデルとして、少なくともグリップ部の近傍にジョイントを有するリンクモデルが選択されうる。好ましいリンクモデルは、ゴルフクラブに対応したクラブ対応リンクと、ジョイントを介してこのクラブ対応リンクと接続する人体対応リンクとを有する。この人体対応リンクは、人体の少なくとも一部に対応している。人体対応リンクが、更に他のリンクと接続していてもよい。クラブ対応リンクと人体対応リンクとを接続しているジョイントは、グリップ部の近傍に対応した位置とされる。このジョイントに作用するトルクが解析される。このトルクに基づき、ゴルファーがゴルフクラブに与えているトルクが分析されうる。リンクモデルのジョイントに作用するトルクを解析することは、ゴルフクラブのグリップ部に作用するトルクを解析する方法の一例である。」

オ.「【0034】
第一リンクL1は、人体の一部に対応したリンクである。第一リンクL1は、人体の肩部及び腕部に対応する。第一リンクL1は、人体対応リンクである。第二リンクL2は、ゴルフクラブ8に対応したリンクである。第二リンクL2は、クラブ対応リンクである。」

カ.「【0063】
関節トルクを求めるためのプログラムの概要を示すフローチャートが、図10で示される。このプログラムは、リンクモデル解析システムの記憶部に記録される。このプログラムでは、先ずゴルフクラブ8の慣性モーメントと重心位置とが入力される(ステップs1)。入力は、リンクモデル解析システムの入力部よりなされる。次に、三次元座標の解析に基づいて算出された角度、角速度及び角加速度がファイル入力される(ステップs2)。次に、リンク重心の並進加速度が算出される(ステップs3)。次に、リンクに係る力及びモーメントが算出される(ステップs4)。次に、関節トルクが算出される(ステップs5)。これらの算出は、リンクモデル解析システムの演算部によりなされる。次に、算出された関節トルクが出力される(ステップs6)。この出力は、リンクモデル解析システムの出力部によりなされる。ステップs2からステップs6までは、すべてのリンクについての計算がなされるまで繰り返される。ステップs2からステップs6までは、ニュートン・オイラー法が適用される。ステップs2及びステップs3は正順計算であり、ステップs4及びステップs5が逆順計算である。」

キ.上記ウ.によれば、「三次元動作解析システムと、リンクモデルにおけるトルクを解析しうるリンクモデル解析システムとが用いられる」ところ、「三次元動作解析システム」及び「リンクモデル解析システム」から成るものは全体として「システム」であるといえる。

上記の記載事項を総合すると、刊行物4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。

「ゴルフクラブ及びゴルファー(被験者)のスイング中における三次元座標が時系列的に測定され、
三次元座標の計測には、DLT(Direct Linear Transformation)法が用いられ、
DLT法は、異なる方向から見た複数の画像を用いて三次元の空間座標を得る方法であり、
動作解析においては、リンクモデル(剛体マルチリンクモデル)が用いられ、
グリップ部に作用するトルクの解析が可能なリンクモデルとして、グリップ部の近傍にジョイントを有するリンクモデルが選択され、
リンクモデルは、ゴルフクラブに対応したクラブ対応リンクと、ジョイントを介してこのクラブ対応リンクと接続する人体の肩部及び腕部に対応する人体対応リンクとを有し、
ゴルフクラブの慣性モーメントと重心位置とが入力され、三次元座標の解析に基づいて算出された角度、角速度及び角加速度がファイル入力され、リンクモデル解析システムの演算部により、リンク重心の並進加速度が算出され、リンクに係る力及びモーメントが算出され、関節トルクが算出され、リンクモデル解析システムの出力部により算出された関節トルクが出力され、
三次元動作解析システムと、リンクモデルにおけるトルクを解析しうるリンクモデル解析システムとが用いられるシステム。」

(5)甲第5号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証(以下「刊行物5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
スイングにおける時刻Tsから時刻Tfまでを含む時間におけるゴルフクラブの動作が計測されるステップ(St1)と、
上記動作の計測結果に基づいて、上記時刻Tsから上記時刻Tfまでの間のパワー指標値Pwを時系列的に得るステップ(St2)と、
上記パワー指標値Pwを、上記時刻Tsから上記時刻Tfまでの間で積分して得られるパワー積分値Spを算出するステップ(St3)と、
上記時刻Tfにおいて上記ゴルフクラブが有するクラブエネルギーEgを算出するステップ(St4)と、
上記パワー積分値Sp及び上記クラブエネルギーEgに基づいて、クラブ適合性を定量的に評価するステップ(St5)と、
を含むゴルフクラブの評価方法。
ただし、上記パワー指標値Pwは、ゴルファーからゴルフクラブに付与された仕事の仕事率に相関しうる値である。
【請求項2】
上記パワー積分値Spの、上記クラブエネルギーEgに対する比(Sp/Eg)に基づいてクラブ適合性の評価がなされる請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
上記パワー指標値Pwが、次の式(1)により算出される請求項1又は2に記載の評価方法。



イ.「【0152】
図13は、パワー指標値Pwの時系列データのグラフの一例である。図13のグラフにおいて、縦軸はパワー(Nm/s)であり、横軸は時間である。この横軸では、インパクトが0.0秒とされている。このグラフは、トップオブスイング近傍からインパクトまでのグラフである。図13のグラフにおいて、曲線P1が、パワー指標値Pwのグラフである。斜線部の面積が、パワー積分値Spである。この斜線部の面積は、時刻Tsがトップオブスイング近傍とされ且つ時刻Tfがインパクトとされた場合の、パワー積分値Spである。
【0153】
なお、曲線P2、曲線P3、曲線P4及び曲線P5は、参考データである。曲線P5の「クラブ合計パワー」は、「クラブ回転パワー」(曲線P4)と「クラブ並進パワー」(曲線P3)との和である。「クラブ回転パワー」(曲線P4)は、慣性モーメントIと角速度ωとの積、即ち、角運動量を意味する。「クラブ並進パワー」(曲線P3)は、クラブ質量Mとクラブ重心速度V1との積、即ち、運動量を意味する。」

上記の記載事項を総合すると、刊行物5には、次の技術事項(以下「刊行物5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「スイングにおける時刻Tsから時刻Tfまでを含む時間におけるゴルフクラブの動作が計測されるステップ(St1)と、
上記動作の計測結果に基づいて、上記時刻Tsから上記時刻Tfまでの間のパワー指標値Pwを時系列的に得るステップ(St2)と、
上記パワー指標値Pwを、上記時刻Tsから上記時刻Tfまでの間で積分して得られるパワー積分値Spを算出するステップ(St3)と、
上記時刻Tfにおいて上記ゴルフクラブが有するクラブエネルギーEgを算出するステップ(St4)と、
上記パワー積分値Sp及び上記クラブエネルギーEgに基づいて、クラブ適合性を定量的に評価するステップ(St5)と、を含み
上記パワー積分値Spの、上記クラブエネルギーEgに対する比(Sp/Eg)に基づいてクラブ適合性の評価がなされ、
上記パワー指標値Pwが、次の式(1)により算出され、

パワー指標値Pwの時系列データのグラフに
クラブ質量Mとクラブ重心速度V1との積である「クラブ並進パワー」(曲線P3)と、
慣性モーメントIと角速度ωとの積である「クラブ回転パワー」(曲線P4)とを示した点。」

(6)甲第6号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証(以下「刊行物6」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「ハンマーの速度は腕とハンマーによる回転運動に大きく依存しているが,この系は外部入力によって直接ハンマーの回転を制御できない劣駆動系であることから,パラメータ励振によってハンマーを加速する方法が用いられている.二重振子モデルで運動を直接制御しているのは肩部に作用するトルクγと力F1であることから,この肩で与える外部入力によってどのようにハンマーの運動を制御しているのかを考察する.
Fig.9bに肩部の外部トルクによる外部トルクエネルギー変化率τq_(1)・と,外力によるエネルギー変化率F^(T)_(1)x_(0)・と,その和τq_(1)・+F^(T)_(1)x_(0)・を比較した.」(第323ページ左欄第25?35行)

イ.上記ア.の記載を踏まえると、Fig.9からは、外部トルクエネルギー変化率、外力によるエネルギー変化率、及び、その和がグラフに示された点が看取できる。

上記の記載事項を総合すると、刊行物6には、次の技術事項(以下「刊行物6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「腕とハンマーによる回転運動の系の二重振子モデルで、
肩部の外部トルクによる外部トルクエネルギー変化率、外力によるエネルギー変化率、及び、その和をグラフに示した点。」

(7)甲第7号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第7号証(以下「刊行物7」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「方法4○(「4○」は「4」を「○」で囲んだ丸数字を指す。)では,剛体リンクモデルの各リンクのエネルギー変化は関節力によるパワー(関節力×関節速度)および関節トルクパワー(関節トルク×関節角速度)によって生じ,このうち後者を関節まわりの筋群が発揮したパワーと考えて,その時間積分値を筋のなした力学的仕事とするものである.」(第130ページ右欄第22?28行)

上記の記載事項を総合すると、刊行物7には、次の技術事項(以下「刊行物7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「剛体リンクモデルの関節トルクパワー(関節トルク×関節角速度)を関節まわりの筋群が発揮したパワーと考えて、その時間積分値を筋のなした力学的仕事とする点。」

5.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア.本件発明1について
(ア)引用発明1を主引用例とした場合
a.対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。

後者の「ゴルフクラブのスイングの分析装置」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「ゴルフスイング解析装置」に相当する。

後者は「人間の左上肢を前腕、上腕、肩の3つの剛体から構成され、手関節にゴルフクラブが連結される3次元剛体モデルとしてモデル化し、ゴルフクラブのスイングを被験者の斜め前方から撮影したハイスピードカメラと、スイング中の身体各点の座標をDLT法によって3次元データに変換するコンピュータとを備え、データの分析はダウンスイング区間に対しておこない、左上肢の関節トルク、関節パワーを求め」るものであって、「手関節J_(O)に作用する関節反力ベクトルF_(O)→」が与えられるところ、「コンピュータ」がデータの分析を行うこと、及び、「手関節J_(O)に作用する関節反力ベクトルF_(O)→」が内力であることは明らかであるから、後者の「コンピュータ」と前者の「前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路」とは、「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路」との概念で共通する。

上記「4.(1)イ.」によれば「m_(i)」は「S_(i)の質量」を表すから、後者の(17)式中の「m_(O)」は「S_(O)の質量」、すなわち「ゴルフクラブの質量」を意味しており、後者はゴルフクラブの質量m_(O)に基づき、手関節J_(O)に作用する関節反力ベクトルF_(O)→を算出するといえる。また、後者の(30)式の右辺第1項は、手関節J_(O)の位置ベクトルの微分値と関節反力ベクトルF_(O)との積であるから、後者は、手関節J_(O)の位置ベクトルの微分値と関節反力ベクトルF_(O)との積に基づき、クラブのエネルギーの時間変化E_(O)・を算出するといえる。そして、後者は一人の被験者のダウンスイング中の各関節の筋力トルクの時間変化を求めるのだから、クラブのエネルギーの時間変化E_(O)・の算出が時系列で行われることは明らかである。そうすると、両者は、「ゴルフクラブの質量に基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1関節間力に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する」との概念で共通する。

したがって、両者は、

「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路を備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量に基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1関節間力に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出するゴルフスイング解析装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者が「ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサー」を備え、「第1慣性センサーからの出力に基づき」内力を特定するのに対して、後者はゴルフクラブに取り付けられる慣性センサーを有さない点。

[相違点2]
前者が「三次元二重振子モデル」に従ってスイングにより生じる内力を特定するのに対して、後者の「3次元剛体モデル」は「二重振子モデル」ではない点。

[相違点3]
前者が、ゴルフクラブの質量と「第1慣性センサーで計測される第1加速度」とに基づき、ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、「第1加速度の積分値」と第1関節間力との「積」に基づき、ゴルフクラブの第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出するのに対して、後者は、慣性センサーで計測される加速度及び加速度の積分値を用いない点。

[相違点4]
前者が、「演算処理回路に接続される画像処理回路」を備え、「画像処理装置は、第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

b.判断
相違点4について検討する。

刊行物1記載事項及び引用発明2ないし4は、いずれも「画像処理回路」を有さず、「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」を算出するものでもない。
刊行物5記載の「クラブ質量Mとクラブ重心速度V1との積である「クラブ並進パワー」(曲線P3)」、刊行物6記載の「外力によるエネルギー変化率」、及び、刊行物7記載の「関節力によるパワー(関節力×関節速度)」はそれぞれ本件発明1の「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」に相当するものであって、運動の解析において「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」を算出することは、本件特許の出願前に周知の事項であるといえる。
しかしながら、刊行物5には「「クラブ並進パワー」(曲線P3)」をグラフに示す点は記載されているものの、「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。また、「「クラブ並進パワー」(曲線P3)」は「参考データ」としてグラフに示されたもので、その技術的意味については記載されていない。
また、刊行物6には、「外力によるエネルギー変化率」をグラフに示す点は記載されているものの、「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。また、刊行物6は「腕とハンマーによる回転運動の系の二重振子モデル」に係るものであって、本件発明1の「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデル」とは異なる運動に関するものである。
また、刊行物7にも、「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。
そうすると、刊行物5ないし7には「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。

また、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本件発明1は、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「ゴルフスイングでは内力は腕からゴルフクラブへのエネルギー伝達の役割を果たす。内力が特定されれば、ゴルフクラブに伝達されるエネルギーは解析されることができる。内力が時系列で観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングは導き出されることができる。例えばゴルフスイングの変更と観察とが繰り返されることで、試行錯誤を通じてゴルフスイングには良好な改良が加えられることができる。」(段落【0010】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、当業者が、引用発明1、刊行物1記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)引用発明4を主引用例とした場合
a.対比
本件発明1と引用発明4とを対比する。

後者の「三次元動作解析システムと、リンクモデルにおけるトルクを解析しうるリンクモデル解析システムとが用いられるシステム」は、「ゴルフクラブ及びゴルファー(被験者)のスイング中における三次元座標が時系列的に測定され」るからゴルフのスイングに関するものであり、かつ、解析を行うものであるので、前者の「ゴルフスイング解析装置」に相当する。

後者においては「リンクモデルは、ゴルフクラブに対応したクラブ対応リンクと、ジョイントを介してこのクラブ対応リンクと接続する人体の肩部及び腕部に対応する人体対応リンクとを有」し、「ゴルフクラブ及びゴルファー(被験者)のスイング中における三次元座標が時系列的に測定され」るから、後者の「リンクモデル」は前者の「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデル」に相当する。

後者においては、「リンクモデル解析システム」において「ゴルフクラブの慣性モーメントと重心位置とが入力され、三次元座標の解析に基づいて算出された角度、角速度及び角加速度がファイル入力され、リンクモデル解析システムの演算部により、リンクに係る力及びモーメントが算出され、関節トルクが算出され、リンクモデル解析システムの出力部により算出された関節トルクが出力される」から、後者の「リンクモデル解析システム」と前者の「前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路」とは、「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従って力を特定する演算処理回路」との概念で共通する。

したがって、両者は、

「ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる力を特定する演算処理回路を備えるゴルフスイング解析装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点5]
前者が「ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサー」を備え、「第1慣性センサーからの出力に基づき」内力を特定するのに対して、後者はゴルフクラブに取り付けられる慣性センサーを有さない点。

[相違点6]
前者の「演算処理回路」が「内力」を特定し、「ゴルフクラブの質量と第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点7]
前者が、「演算処理回路に接続される画像処理回路」を備え、「画像処理装置は、第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

b.判断
相違点7について検討する。

相違点7は、上記「(ア)a.」における相違点4と同様の点である。

そうすると、上記「(ア)b.」において検討したとおり、引用発明1ないし3及び引用物1記載事項は、いずれも「画像処理回路」を有さず、「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」を算出するものでもない。また、刊行物1及び5ないし7には「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。

また、上記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本件発明1は、上記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「ゴルフスイングでは内力は腕からゴルフクラブへのエネルギー伝達の役割を果たす。内力が特定されれば、ゴルフクラブに伝達されるエネルギーは解析されることができる。内力が時系列で観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングは導き出されることができる。例えばゴルフスイングの変更と観察とが繰り返されることで、試行錯誤を通じてゴルフスイングには良好な改良が加えられることができる。」(段落【0010】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、当業者が、引用発明4、引用発明1、刊行物1記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ.本件発明2、10及び11について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものである。また、本件発明10は本件発明1のカテゴリーを変更して「ゴルフスイング解析方法」としたものであって、本件発明11は本件発明10をさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2、10及び11は、本件発明1と同様に、当業者が、引用発明1、刊行物1記載事項並びに周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明2、10及び11は、当業者が、引用発明4、引用発明1、刊行物1記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)取消理由通知に記載しなかった取消理由について
ア.本件発明1について
(ア)引用発明1を主引用例とした場合
本件発明1と引用発明1とを対比すると、両者は上記「(ア)a.」における相違点1ないし4で相違する。

相違点4について検討すると、上記「(ア)b.」のとおり、引用発明2ないし4は、いずれも「画像処理回路」を有さず、「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」を算出するものでもない。また、刊行物5ないし7には「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。

また、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本件発明1は、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「ゴルフスイングでは内力は腕からゴルフクラブへのエネルギー伝達の役割を果たす。内力が特定されれば、ゴルフクラブに伝達されるエネルギーは解析されることができる。内力が時系列で観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングは導き出されることができる。例えばゴルフスイングの変更と観察とが繰り返されることで、試行錯誤を通じてゴルフスイングには良好な改良が加えられることができる。」(段落【0010】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、当業者が、引用発明1及び周知技術に基づいて、又は、引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)引用発明4を主引用例とした場合
本件発明1と引用発明4とを対比すると、両者は上記「(イ)a.」における相違点5ないし7で相違する。

相違点7について検討すると、上記「(イ)b.」のとおり、引用発明1ないし3は、いずれも「画像処理回路」を有さず、「第1関節間力に由来するエネルギー変化率」を算出するものでもない。また、刊行物1及び5ないし7には「画像処理回路」は記載されておらず、「画像処理回路」によって「第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で観察される画像に処理する」点も開示されていない。

また、上記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本件発明1は、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書に記載の「ゴルフスイングでは内力は腕からゴルフクラブへのエネルギー伝達の役割を果たす。内力が特定されれば、ゴルフクラブに伝達されるエネルギーは解析されることができる。内力が時系列で観察されれば、効率的なエネルギー伝達を実現するゴルフスイングは導き出されることができる。例えばゴルフスイングの変更と観察とが繰り返されることで、試行錯誤を通じてゴルフスイングには良好な改良が加えられることができる。」(段落【0010】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、当業者が、引用発明4及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ.本件発明2、10及び11について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものである。また、本件発明10は本件発明1のカテゴリーを変更して「ゴルフスイング解析方法」としたものであって、本件発明11は本件発明10をさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2、10及び11は、本件発明1と同様に、当業者が、引用発明1及び周知技術に基づいて、又は、引用発明1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明2、10及び11は、当業者が、引用発明4及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して特許異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーと、
前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、
前記演算処理回路に接続される画像処理回路と、
を備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、
前記画像処理回路は、前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出し、
前記画像処理回路は、前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーと、
前記第1慣性センサーからの出力に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従ってスイングにより生じる内力を特定する演算処理回路と、
を備え、
前記演算処理回路は、
前記ゴルフクラブの質量と前記第1慣性センサーで計測される第1加速度とに基づき、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出し、前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を算出し、
前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出し、
前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率との和に基づいて、前記ゴルフクラブの総エネルギー変化率を算出し、
前記三次元二重振子モデルは、前記ゴルファーのアドレス時の両肩を結ぶ線の中心と前記ゴルファーが握る前記ゴルフクラブのグリップ部を結ぶ仮想線を腕リンクとし、
前記ゴルファーが握る前記グリップ部を前記関節として、前記ゴルフクラブが前記腕リンクと接続されたモデルであることを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項5】
請求項4に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記上半身の部位に取り付けられる第2慣性センサーをさらに備え、
前記演算処理回路は、前記ゴルファーの両肩を結ぶ線の中心を支点としたとき、前記腕リンクの質量と前記第2慣性センサーで計測される第2加速度とに基づき、前記腕リンクの前記支点に作用する第2関節間力を算出し、前記第2加速度の積分値と前記第2関節間力との積に基づき、前記腕リンクの前記第2関節間力に由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第2慣性センサーで計測される第2角速度に基づいて前記支点周りの第2トルクを算出し、前記第2トルクと前記第2角速度との積に基づいて、前記腕リンクの前記第2トルクに由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項7】
請求項6に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記第1トルクと前記第2角速度との積に基づいて、前記腕リンクの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記腕リンクの前記第2関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記腕リンクの前記第2トルクに由来するエネルギー変化率とを加算し、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率と、前記腕リンクの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率とを減算して、前記腕リンクの総エネルギー変化率を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項9】
請求項8に記載のゴルフスイング解析装置において、
前記演算処理回路は、前記ゴルフクラブの総エネルギー変化率と前記腕リンクの総エネルギー変化率との総和を算出することを特徴とするゴルフスイング解析装置。
【請求項10】
ゴルフクラブに取り付けられる第1慣性センサーから第1加速度を取得する工程と、
前記第1加速度と前記ゴルフクラブの質量に基づき、前記ゴルフクラブおよびゴルファーの上半身の部位で構築される三次元二重振子モデルに従って、前記ゴルフクラブの関節に作用する第1関節間力を算出する工程と、
前記第1加速度の積分値と前記第1関節間力との積に基づき、前記ゴルフクラブの前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、
前記第1関節間力に由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、
を有することを特徴とするゴルフスイング解析方法。
【請求項11】
請求項10に記載のゴルフスイング解析方法において、
前記第1慣性センサーで計測される第1角速度に基づいて前記関節周りの第1トルクを算出し、前記第1トルクと前記第1角速度との積に基づいて、前記ゴルフクラブの前記第1トルクに由来するエネルギー変化率を時系列で算出する工程と、
前記第1トルクに由来するエネルギー変化率が時系列で観察される画像に処理する工程と、
をさらに有することを特徴とするゴルフスイング解析方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-28 
出願番号 特願2011-235747(P2011-235747)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (A63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中澤 真吾  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 畑井 順一
森次 顕
登録日 2016-04-08 
登録番号 特許第5912415号(P5912415)
権利者 学校法人慶應義塾 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 ゴルフスイング解析装置およびゴルフスイング解析方法  
代理人 竹腰 昇  
代理人 黒田 泰  
代理人 井上 一  
代理人 竹腰 昇  
代理人 竹腰 昇  
代理人 黒田 泰  
代理人 井上 一  
代理人 黒田 泰  
代理人 井上 一  

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