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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 E04F 審判 全部申し立て 2項進歩性 E04F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E04F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 E04F |
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管理番号 | 1334363 |
異議申立番号 | 異議2016-701187 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-12-26 |
確定日 | 2017-10-06 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5954602号発明「装飾性マグネット吸着不燃化粧板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5954602号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5954602号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5954602号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、平成27年1月22日に特許出願され、平成28年6月24日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人柚木翔太(以下「申立人A」という。)、及び古屋亮(以下「申立人B」という。)より請求項1ないし2に対して特許異議の申立てがされ、平成29年4月24日付けで取消理由(発送日同年4月28日)が通知され、その指定期間内である同年6月19日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月26日に申立人Bから意見書が提出され、同年8月30日付けで手続補正指令(方式)(発送日同年9月5日)が通知され、その指定期間内である同年9月18日に特許権者から訂正請求書の手続補正書(方式)及び上申書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 平成29年9月19日付け(同年9月18日提出)手続補正書により補正された本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (訂正事項1) 請求項1、2に係る「厚さ40?200μmの、」と記載されているのを、「厚さ50μmの、」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正の目的の適否について 訂正事項1は、スチール箔の厚さを「40?200μm」から「50μm」に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記(1)で説示したように、訂正事項1はスチール箔の厚さを限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 明細書の【実施例1】、【実施例2】、【実施例3】には、厚さ50μmのスチール箔が記載されており、訂正事項1は明細書に記載されているものである。 また、訂正前の請求項1、2は、請求項2が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 3 小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1、2]について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正後の請求項1、2に係る発明 上記訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等、あるいはまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。) 本件訂正発明1 「【請求項1】 壁面基体に貼り付ける装飾性マグネット吸着不燃化粧板であって、当該装飾性マグネット化粧板は、表面から順に化粧薄板からなる表装材と、厚さ50μmの、平面平滑度±1?5μmで、幅600?1230mmの磁気吸着力を有したスチール箔と、厚さ2.0?21mm、幅600?1230mm、長さ1000?3100mmの形状であるボード状体であるマグネシアの不燃板材料とを、接着により積層したものであり、当該表装材は、生地色から濃厚色で色の異なる種類を有し、又は自然素材の木質の質感をもつ模様を施した0.035?1.2mmの厚さで、600?1230mm幅の紙体、或は突板、或は樹脂フイルムであって、表装材とスチール箔とマグネシアの不燃板材料との積層体に貼り合わせる接着剤を、エチレン酢酸ビニル共重合体水性エマルジョン形、又はウレタン系樹脂であって、各表面に5?200g/m^(2)を塗布することを特徴とする装飾性マグネット吸着不燃化粧板。」 本件訂正発明2 「【請求項2】 表面の表装材は紙体、或は突板、或は樹脂フイルムであり、紙体の表装材では、木目、又は節をもった色彩の異なる種類の木目柄が印刷された印刷紙で、又は無地、又は模様の入った印刷紙で、突板の表装材としては、木目、又は節をもって色彩の異なる種類の木材の突板で、樹脂フイルムの表装材としては、無地、又は模様の入った多色にプリントされた樹脂フイルムであることを特徴とする請求項1に記載の装飾性マグネット吸着不燃化粧板。 」 2 取消理由の概要 請求項1ないし2に係る特許に対して平成29年4月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)本件特許は、その出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 刊行物1:国際公開2009/069464号(申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第1号証) 刊行物2:特開平9-104087号公報(申立人Aの甲第2号証) 刊行物3:特開昭53-16072号公報(申立人Aの甲第3号証) 刊行物4:特開2013-78942号公報(申立人Aの甲第4号証) 刊行物5:特開2013-226791号公報(申立人Aの甲第5号証) 刊行物6:特開2001-328227号公報(申立人Aの甲第6号証) 刊行物7:特開2000-328010号公報(申立人Aの甲第7号証) 刊行物8:特公平3-56912号公報(申立人Aの甲第9号証) 刊行物9:特開2012-245627号公報(申立人Aの甲第10号証) 刊行物10:特開2004-76538号公報(申立人Aの甲第11号証) 刊行物11:特開平8-74400号公報(申立人Aの甲第12号証) 刊行物12:実願平5-21022号(実開平6-78983号)のCD-ROM(申立人Aの甲第13号証) 刊行物13:特開2009-202462号公報(申立人Bの甲第2号証) 刊行物14:特開2012-71517号公報(申立人Bの甲第3号証) 刊行物15:特開2009-61588号公報(申立人Bの甲第4号証) 刊行物16:特開2002-103491号公報(申立人Bの甲第5号証) 刊行物17:特開2003-213914号公報(申立人Bの甲第6号証) 刊行物18:特開平11-245337号公報(申立人Bの甲第7号証) (2)出願時における明細書及び図面を精査してみても、「平面平滑度±1?5μm」という記載はなく、「平面平滑度±1?5mμ」の記載があるのみであり、一方で「mμ」という厚さの単位も実在することから、単なる誤記であるとは到底言うことができない。よって、本件特許は、その手続においてした補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである。 (3)本件特許における「平面平滑度」は、JISなどの規格ではなく、発明の詳細な説明等においても何ら説明されておらず、その定義、意義が不明ある。よって、本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものである。 3 判断 (1)特許法第29条第2項について(進歩性の欠如違反) ア 刊行物1の記載 刊行物1には、申立人A、申立人Bが主張するとおり、以下の発明(以下「刊1発明」という。)が記載されている(申立人Aの申立書8頁17行?9頁1行、申立人Bの申立書8頁20行?末行参照)。 刊1発明 「マグネット吸着キッチンパネル用材料であって、 キッチンパネル用材料は、表面から順に有機樹脂層と、厚さ0.1?0.5mmの金属板と、無機物を主成分とする不燃性材料からなる基板とを積層したものであり、不燃性材料は酸化マグネシウム板(マグネシア)であり、 表装材は有機樹脂層であり、有機樹脂層は、木目模様の絵柄印刷とベタ印刷層の2層で構成された印刷層が形成された厚さ50μmの有機樹脂フィルムであり、 有機樹脂層と金属板の積層体を貼り合わせる接着剤として、酢酸ビニル樹脂系、ウレタン樹脂系などのエマルジョン型接着剤を用い、基板と金属板の接着にウレタン樹脂系、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を用いる、 マグネット吸着キッチンパネル用材料。」 イ 判断 (ア)本件訂正発明1 a 本件訂正発明1と刊1発明の対比 本件訂正発明1と刊1発明を対比すると、以下の一致点で一致し、相違点1?4で相違する。 <一致点> 「壁面基体に貼り付ける装飾性マグネット吸着不燃化粧板であって、当該装飾性マグネット化粧板は、表面から順に化粧薄板からなる表装材と、磁気吸着力を有したスチールと、ボード状体であるマグネシアの不燃板材料とを、接着により積層したものであり、当該表装材は、生地色から濃厚色で色の異なる種類を有し、又は自然素材の木質の質感をもつ模様を施した0.035?1.2mmの厚さの樹脂フイルムであって、表装材とスチール箔とマグネシアの不燃板材料との積層体に貼り合わせる接着剤を、エチレン酢酸ビニル共重合体水性エマルジョン形、又はウレタン系樹脂であって、各表面に塗布する 装飾性マグネット吸着不燃化粧板。」 <相違点1> 本件訂正発明1が「厚さ50μmの、平面平滑度±1?5μmで、幅600?1230mm」の磁気吸着力を有したスチール箔を有しているのに対し、刊1発明は「厚さ0.1?0.5mmの金属板」を有している点 <相違点2> 本件訂正発明1が「厚さ2.0?21mm、幅600?1230mm、長さ1000?3100mmの形状である」不燃板材料を有しているのに対し、刊1発明はそのような特定がなされていない点 <相違点3> 表装材について、本件訂正発明1が「600?1230mm幅の紙体、或は突板、或は樹脂フィルム」であるのに対し、刊1発明は「有機樹脂フィルム」である点 <相違点4> 本件訂正発明1が、接着剤を「各表面に5?200g/m^(2)を塗布している」のに対し、刊1発明はそのような特定がなされていない点 b 相違点について 相違点1について検討するに、刊行物1には「[0047]ただし、本発明のキッチンパネル用材料を木工用ハンディ式丸鋸で切断加工する用途の場合、厚さ0.1?0.3mmと薄い金属板を用いることが好ましい。厚さが0.1mm未満では、数回の圧延工程が必要となり、また歩留が悪くなるので、製造コストの点で問題がある。また、金属板の厚さが0.1mm未満では、コイル状の表面に有機樹脂フィルムを連続的に工業的に積層することが困難である。」(下線は決定で付与。)と記載されていることから、刊1発明において、金属板の厚さを0.1mm未満とすることは想定されておらず、例えば、申立人Bにおける平成29年7月26日付け意見書の参考資料2(特開2014-129681号公報)のような先行技術文献に本件訂正発明1と同様の数値が記載されていたとしても、当該記載事項を刊1発明に適用し、本件訂正発明1のようにスチール箔の厚さを50μmにすることには阻害要因があるというべきである。 また、その他の証拠である刊行物2?18、及び申立人Aが申立書において提示した甲第8号証(株式会社永住産業、商品一覧、楽ちんマグボード、[online]、2014年8月9日、[2016年11月15日検索])にも、上記に加えて、相違点1に係る構成は開示されていない。 よって、刊1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 c まとめ したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物1ないし刊行物18、申立人Aの甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件訂正発明2 本件訂正発明2は、本件訂正発明1に従属し、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件訂正発明1と同様の理由(上記(ア)参照)で、本件訂正発明2は、刊行物1ないし刊行物18に記載された発明、申立人Aの甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)特許法第17条の2第3項について(新規事項の追加違反) ア 補正の適否について 本件特許の願書に最初に添付した明細書において、平面平滑度について、「1?5mμ」と記載されていたところ、平成27年11月5日付け手続補正書において「1?5μm」と補正された(下線は決定で付与。以下同様)。ここで、「mμ」は実在する単位であり、nmと同義であるため、「μm」とは異なる意味を持つ単位である。 本件特許は主に建材として使用される化粧板に関するものであり、化粧板の積層材として用いられるスチール箔の表面の粗さの程度を表す単位として、上記単位「μm」が用いられている。 ここで、「mμ(nm)」は、通常、分子や細胞の大きさ、光の波長などを表す際に用いられ、特に「1?5mμ(nm)」は細胞膜厚程度のサイズであり、建材の表面の粗さを表す数値限定としては、現実的な数値とはいえない。一方で、「1?5μm」は、建材の表面の粗さとしても使用されうる数値範囲であること、及び「mμ」、「μm」の両単位は語順が反対となるものであることから、「1?5mμ」は「1?5μm」の誤記と解することが相当である。 イ 小括 したがって、本件特許における平成27年11月5日付けでした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、本件特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものではない。 (3)特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号について(記載要件違反) ア 記載不備について 「平面平滑度」は、一般的に用いられている技術用語ではないものの、その記載から、平面の平滑の度合い、つまり、表面粗さ等の程度を意味していると解され、「平面平滑度1?5μm」については、それら一般的な表面粗さについての数値限定であると解することができる。 一般的な表面粗さの算定方法には種々あり、それらのうちのいかなる方法で算定された値を意味しているのかまでは明らかでないが、当該数値限定は、特許権者が平成29年6月19日付け意見書で主張しているように(意見書2頁18行?20行)、既製品を慎重に取り扱えば実現できる程度のものであり、通常、実現される数値を示しているにすぎない。 よって、「平面平滑度」の表現自体は日本語として意味をなしており、さらに、それらの意図していることが概ね理解できること、及び当該数値限定が本件特許の中心的な構成ではなく、一般的に実現されうる数値範囲を規定していることから、詳細な意義、定義が不明であることをもって、当業者が本件特許を理解できない、あるいは、実施できないというほどのものではない。 イ 小括 したがって、本件特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。 よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 壁面基体に貼り付ける装飾性マグネット吸着不燃化粧板であって、当該装飾性マグネット化粧板は、表面から順に化粧薄板からなる表装材と、厚さ50μmの、平面平滑度±1?5μmで、幅600?1230mmの磁気吸着力を有したスチール箔と、厚さ2.0?21mm、幅600?1230mm、長さ1000?3100mmの形状であるボード状体であるマグネシアの不燃板材料とを、接着により積層したものであり、当該表装材は、生地色から濃厚色で色の異なる種類を有し、又は自然素材の木質の質感をもつ模様を施した0.035?1.2mmの厚さで、600?1230mm幅の紙体、或は突板、或は樹脂フイルムであって、表装材とスチール箔とマグネシアの不燃板材料との積層体に貼り合わせる接着剤を、エチレン酢酸ビニル共重合体水性エマルジョン形、又はウレタン系樹脂であって、各表面に5?200g/m^(2)を塗布することを特徴とする装飾性マグネット吸着不燃化粧板。 【請求項2】 表面の表装材は紙体、或は突板、或は樹脂フイルムであり、紙体の表装材では、木目、又は節をもった色彩の異なる種類の木目柄が印刷された印刷紙で、又は無地、又は模様の入った印刷紙で、突板の表装材としては、木目、又は節をもって色彩の異なる種類の木材の突板で、樹脂フイルムの表装材としては、無地、又は模様の入った多色にプリントされた樹脂フイルムであることを特徴とする請求項1に記載の装飾性マグネット吸着不燃化粧板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-26 |
出願番号 | 特願2015-23636(P2015-23636) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(E04F)
P 1 651・ 55- YAA (E04F) P 1 651・ 121- YAA (E04F) P 1 651・ 537- YAA (E04F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西村 隆 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 井上 博之 |
登録日 | 2016-06-24 |
登録番号 | 特許第5954602号(P5954602) |
権利者 | 有限会社イマヤマ |
発明の名称 | 装飾性マグネット吸着不燃化粧板 |
代理人 | 内田 昌宏 |