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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B62M
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B62M
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B62M
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B62M
審判 一部申し立て 特174条1項  B62M
管理番号 1334367
異議申立番号 異議2016-701073  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-22 
確定日 2017-10-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5922583号発明「非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5922583号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5?8、11?13、15?26〕について訂正することを認める。 特許第5922583号の請求項2、3、5?7、9?19及び23?27に係る特許を維持する。 特許第5922583号の請求項1及び8に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5922583号の請求項1?27に係る特許についての出願は、2010年12月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月4日、2009年12月6日、いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年11月22日付けで、特許異議申立人 ゼフス ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月29日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年6月9日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年8月1日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正事項は以下のとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示すものである。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1または4に記載の装置」と記載されているのを、「請求項4に記載の装置」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項17、及び請求項17を介し請求項7の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1または4に記載の装置」と記載されているのを、「請求項4に記載の装置」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項16、請求項16を介し請求項13の記載を引用する請求項17、並びに請求項16及び請求項17を介し請求項13の記載を引用する請求項18も同様に訂正する。)。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項19に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項20に「請求項1から3のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から3のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項21に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項22に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項23に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項24に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項25に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

チ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項26に「請求項1から4のいずれか一つに記載の装置」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか一つに記載の装置」に訂正する。

(2)訂正の適否
(2-1)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1及び5について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであり、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、それら訂正事項1及び5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2?4、6?17について
(ア)訂正事項2?4、6?17は、訂正事項1によって請求項1が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5?7、11?13、15?26における引用請求項において請求項1を引用しないようにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)ここで、訂正された請求項20?22については、本件特許異議の申立ての対象となる請求項ではないが、訂正事項11?13は、上記(ア)のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、独立特許要件を判断する必要はない。

(2-2)一群の請求項について
訂正事項1?17は、訂正前の請求項1、5?8、11?13、15?26を訂正するものであり、訂正前の請求項5?8、11?13、15?26は請求項1を直接的又は間接的に引用するため、請求項1、5?8、11?13、15?26は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項1、5?8、11?13、15?26について請求するものといえる。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、5?8、11?13、15?26〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?27に係る発明(以下「本件発明1?27」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、特許異議の申立ての対象となっていない請求項についても記載している。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含み、
ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項3】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、自転車を電気モータ駆動自転車に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含み、
ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項4】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムであって、前記機械的駆動ユニットに固定された内側スリーブと、前記ホイールに固定された外側スリーブとを含み、さらに、前記外側スリーブに対する前記内側スリーブの相対位置を測定する近接センサ、圧力センサ、および変位センサのうちの少なくとも一つを含む感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項5】
前記制御ユニットが、前記ユーザによって加えられた回転入力に応じて前記電気モータの駆動トルクを調節する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに正の回転入力が与えられ、その正の回転入力に応じて、前記制御ユニットが、前記ユーザによって加えられた前記正の回転入力を、前記回転ユニットを駆動する既定量の正の回転入力で補足するように、前記電気モータに指令する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その与えられた負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、請求項4に記載の装置。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記電力源がバッテリを含み、前記バッテリが、完全自蔵式の前記モータ駆動ハブユニットから取り外し可能である、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記回転ユニットが、前記ホイールリムに対して固定されており、前記ホイールリムと共に回転する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記電気モータのステータが前記静止ユニットに固定されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記機械的駆動ユニットが、スプロケットおよびギアのうちのいずれか一方を含む、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記非モータ駆動車両が自転車である、請求項4に記載の装置。
【請求項14】
前記非モータ駆動車両が、前記機械的駆動ユニットに機械的に連結された少なくとも一つのペダルを有する自転車であり、前記ペダルは、前記ユーザによって作動されることで前記モータ駆動ハブユニットに前記力を加える、請求項2または4に記載の装置。
【請求項15】
前記感知システムが、前記機械的駆動ユニットに加えられたトルクを測定する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その与えられた負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記電気モータが電気エネルギを生成する、請求項2、3、7および16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
前記電気モータによって生成された前記電気エネルギを貯蔵する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記感知システムが、前記ホイールの加速度、前記機械的駆動ユニットの回転速度、および前記ホイールの回転速度のうちの少なくとも一つを測定する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
前記感知システムが、
前記機械的駆動ユニットに固定された内側スリーブと、
前記ホイールに固定された外側スリーブと、
前記外側スリーブに対する前記内側スリーブの相対位置を測定する近接センサ、圧力センサ、および変位センサのうちの少なくとも一つと、
を備える、請求項2から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
前記感知システムが、前記機械的駆動ユニットに加えられたトルクを測定する少なくとも一つの圧力センサを、前記機械的駆動ユニットとシャフトとの間に備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
前記装置がシャフトに取り付けられており、前記感知システムが、前記シャフトの屈曲を測定するセンサを備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項23】
前記電気モータ駆動車両用ホイールが、ホイールハブギアシステムをさらに備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項24】
前記制御ユニットが、無線制御ユニットまたは携帯電話から無線で受信された指令信号に応答して、前記電気モータのパワー出力を調節する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
前記制御ユニットが、一つまたは複数の無線ネットワークを通じて信号を送受信するように構成されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項26】
前記制御ユニットが、少なくとも一つの外部センサとインタフェースするように構成されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項27】
前記装置が、前記ホイールリムを前記回転ユニットに接続する複数個のスポークをさらに備え、
前記複数個のスポークのそれぞれが第1端部および第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部が、互いの間に鋭角を成すように延在して取付部を形成しており、
前記各端部は前記リムに取り付けられ、前記各取付部は前記回転ユニットに取り付けられている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。」

第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
1-1 取消理由の概要
訂正前の各請求項に係る特許に対して平成29年2月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
[取消理由1]本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[取消理由2]平成27年3月30日付け手続補正書でした補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
[取消理由3]本件特許の請求項1、5、6、8、11?13、15、19に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(ただし、請求項5、6、11?13、15、19に係る発明は、請求項1を引用するものに限る。)。
[取消理由4]
本件特許の請求項1、5、6、8、11?13、15、19に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、
本件特許の請求項23に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項及び慣用技術(例えば引用文献2を参照)に基いて、
本件特許の請求項24に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項に基いて、
本件特許の請求項25に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項、引用文献4に記載された技術事項及び慣用技術(例えば引用文献5を参照)に基いて、
本件特許の請求項26に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術(例えば、引用文献3及び6を参照)に基いて、
その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(ただし、請求項5、6、11?13、15、19、23?26に係る発明は、請求項1を引用するものに限る)。

<引用文献一覧>
引用文献1: 特開平7-172372号公報
引用文献2: 特開2002-220079号公報
引用文献3: 特開2000-6878号公報
引用文献4: 欧州特許出願公開第1820727号明細書
引用文献5: 米国特許出願公開第2009/0181826号明細書
引用文献6: 米国特許出願公開第2005/0067207号明細書
なお、引用文献1?6は、順に、特許異議申立人が提出した甲第1?3、5?7号証に対応するものである。

1-2 判断
(1)取消理由1について
ア 取消理由1の概要は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「非モータ駆動車両のホイールに装着することによって、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造する電気モータ駆動車両用ホイール用装置」との事項に関し、
(ア)本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面には、非モータ駆動車両のホイールに「装着」することによって、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に「改造する」電気モータ駆動車両用ホイール用「装置」は記載されていないことから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、
(イ)また、本件明細書及び図面には、電気モータ駆動車両用ホイール用「装置」を非モータ駆動車両のホイールに「装着することによって」、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に「改造する」ことについては記載されていないことから、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識とに基づいて、請求項1に係る発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できないものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、
(ウ)さらに、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項に係る発明(特許異議の申立てがされていない、請求項4及び20?22に係る発明を除く。)についても上記(ア)及び(イ)と同様の理由が存在する、というものである。
イ しかし、上記「第2(1)」のとおり、本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1は削除されるとともに、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項も存在しないものとなったため、この取消理由1は解消した。

(2)取消理由2について
ア 取消理由2の概要は、平成27年3月30日付けで提出された補正書において、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の「現存の車両用ホイールを電気モータ駆動の車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、」との記載を、「非モータ駆動車両のホイールに装着することによって、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造する電気モータ駆動ホイール用装置であって、」とする補正は、本件特許の翻訳文等には記載されていないものであるから、当該補正は新規事項を導入するものである、というものである。
イ しかし、上記「第2(1)」のとおり、本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1は削除されるとともに、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項も存在しないものとなったため、この取消理由2は解消した。

(3)取消理由3及び4について
取消理由3及び4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明及び請求項1を直接的に引用する請求項5、6、8、11?13、15、19、23?26に係る発明についての取消理由であるが、上記「第2(1)」のとおり、本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1は削除されるとともに、請求項1を直接的に引用する請求項も存在しないものとなったため、これらの取消理由3及び4は解消した。

2 特許異議申立理由について
2-1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、次の甲第1?9号証を提出し、以下の申立理由1及び2により、特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証: 特開平7-172372号公報
甲第2号証: 特開2002-220079号公報
甲第3号証: 特開2000-6878号公報
甲第4号証: 特開2002-255080号公報
甲第5号証: 欧州特許出願公開第1820727号明細書
甲第6号証: 米国特許出願公開第2009/0181826号明細書
甲第7号証: 米国特許出願公開第2005/0067207号明細書
甲第8号証: 仏国特許発明第2264676号明細書
甲第9号証: 国際公開第2004/073155号

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3項)
本件特許の請求項1、5、6、8、10?15、19、23に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
本件特許の請求項1?3、5?19及び23?27に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?9号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2-2 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。)
(1a) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、太陽電池で駆動する電動機付き自転車を形成する車輪に関し、更に詳しくいえば、人の体力のみで走行する自転車の車輪と取替えるだけで、自転車に太陽電池を電源とする駆動部と、それによって駆動される車輪とを取付けた状態に改造することができる太陽電池駆動部付き自転車用車輪に関する。
・・・
【0004】本発明は、従来の上述のような問題点を鑑みて発明したものであり、その目的とするところは、既存の自転車に大幅な改造を加えることなく、どこでも極めて簡単に太陽電池で駆動する電動機付き自転車に改造することができ、また経済的な太陽電池駆動部付き自転車用車輪を提供することにある。
・・・
【0008】
【作用】本発明請求項1記載の太陽電池駆動部付き自転車用車輪では、前記のように構成したので、既存の自転車の車輪をハブ軸ごと自転車フレームのつめから取外し、このハブ軸を取外したつめ同士に太陽電池駆動部付き自転車用車輪のハブ軸を固定すると共に、電動機を装着した台板を回り止め材でフレームに固定するだけで、既存の自転車に太陽電池および電動機と、その電動機で駆動される車輪とを取付けた状態に改造することができる。そして、電動機に太陽電池から電源を供給することにより、ハブを駆動して自転車を動力で走行させるようにすることができる。また、太陽電池の起電力に余力があると2次電池に充電させて太陽電池の起電力が不足した場合に放電させることにより、効率的に使用することができる。
【0009】請求項2記載の太陽電池駆動部付き自転車用車輪では、人の踏力をトルクセンサで検知させ、踏力の大きさに比例して供給電源を増減することにより踏力を軽減させて常に楽に走行させ、踏力のみでも楽に走行できる場合は踏力のみによる経済走行をさせることができる。また、走行速度を速度センサで検知させ、過大または過小な速度のときは電動機による駆動を停止させ、人力のみによる安全走行を行うことができる。」
(1b) 「【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本実施例の太陽電池駆動部付き自転車用車輪を示す断面図、図2は同上の側面図、図3は同上の取付状態を示す全体図、図4はトルクセンサの取付状態を示す説明図、図5は同上の電気回路を示すブロック図である。
【0012】まず、実施例の構成を説明する。本実施例の太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aは、ハブ軸1と、ハブ2と、リム3と、台板4と、電動機5と、回り止め材6と、トルクセンサ7aと、速度センサ7bと、太陽電池8aと、畜電池8bの誤記と認める。以下同様)と、制御装置9と、を主要な構成としている。尚、図中10は自転車11のフレームである。
【0013】前記ハブ軸1は、フレーム10の後車側つめ12,12同士に装着した従来車輪のハブ軸と同一の締付け長さを有すると共に、その両側に同一直径の締付けねじ部13が設けられている。
【0014】前記ハブ2は、ハブ体14が従来車輪のハブ体より短く形成され、そのハブ体14の一端側に、後述するリム3の内径まで拡大した鍔部15が設けられている。図中16はハブ体14の該鍔部15側に設けられたフリーホイルである。
【0015】前記リム3は、前記鍔部15と一体に形成されており、ハブ軸1を後輪側つめ12,12同士に装着したとき、このリム3はフレーム10の中心に配置される。図中3aはリム3に取付けたタイヤである。
【0016】前記台板4は、前記鍔部15と対向状態に配置されてその間に後述する電動機5や畜電池8b、制御装置9等の収納空間を作るものであって、鍔部15と略同一直径を有し、その外周縁部15aは、前記リム3の一端内面側を覆うように全周が略L字状に折曲げられている。そして、この台板4は、その中心に前記ハブ軸1を貫通させて保持する軸支部17を有しており、前記リム3とは近接状態となるようにハブ軸1に回転自在に装着される。図中2a,4aは、それぞれハブ2と台板4とを所定位置に保持するナットであって、このナット2a,4aの両外側同士の間隔が後車輪側つめ12,12同士の内幅と略同一となるように設定されている。
【0017】前記電動機5は、ビルトイン型の直流電動機であって、リング状の固定子5aが前記ハブ軸1を同心にして台板4の内面側に固定されている。また、内径が前記固定子5aより大径のリング状の回転子5bが、ハブ軸1を同心にして鍔部15の内面側に固定されている。
【0018】前記回り止め材6は、電動機5を駆動中に、そのトルクによって台板4が回転しないように係止するものであって、フレーム10にバンド部を係止して台板4にボルトで固定するものである。尚、図中18はギアクランク19の大スプロケットホイルに連設されたチェン、20はブレーキレバーである。
【0019】前記トルクセンサ7aは、走行中にどの程度の踏力が作用しているかを検出するものであって、図4に示すように、チェン18の引張り側を小スプロケット21で係止し、この小スプロケット21をフレーム10に上下回動自在に保持したレバー23をスプリング24で上方に押上げ、その変動幅をセンサ22(ストレィンゲージ、ロードセル、可変抵抗器等)で検出するようにしている。
【0020】前記速度センサ7bは電動機5の発停を行わせるために自転車の現在速度を検出するものであって、ハブ体14の回転を取出して計測する発電型のものを使用している。
【0021】前記太陽電池8aは、電動機5の通常の電源となるものであって、前記台板4と鍔部15の外面にそれぞれ貼付けられており、鍔部15側のものは、ハブ体14に設けたスリップリング25で台板4側に電気的に接続される。
【0022】前記畜電池8bは、太陽電池8aの余分の電力を充電し不足時の電力を放電(給電)するものであって、台板4の内面側に固定されている。図中26a,26bは端子である。
【0023】前記制御装置9は、電動機5の制御や畜電池8bの充放電等を行うものであって、図5に示すように、第1制御部27と第2制御部28とを有している。前記第1制御部27は、後述する第2制御部28の指示に従って太陽電池8aのみ使用したり、余力が有った場合は畜電池8bに充電させて電力の安定供給を行うようにしたものである。前記第2制御部28は、電動機5に通電してその駆動力を補助させようとする自転車の速度範囲(例えば5km/hから20km/hまで)を設定しておく速度範囲設定部29と、その速度範囲設定部29のデータを取込み、速度センサ7bの検出信号と比例してその結果を出力する比例判断部30と、この比例判断部30の信号により太陽電池8aまたは畜電池8bの回路を開閉するスイッチ部31とを有している。
【0024】また、踏力の範囲を設定しておくトルク設定部32と、そのトルク設定部32のデータを取込み、トルクセンサ7aの検出信号と比較してその結果を出力する比較判断部33と、この比較判断部33の信号により前記スイッチ部31からの電源(電圧または電流)を調整する電源調整部34とを有している。図中35はこの制御装置9用に台板4に設けた点検蓋、36はメインスイッチである。」
(1c) 「【0025】前記部品は、トルクセンサ7aを別にして図1,図2に示すように太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aとして一体に組立てられている。従って、本実施例の太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aは、まず、チェン18を後車輪のフリーホイルから取外した後、この後車輪をそのハブ軸と共につめ12,12から取外す。
【0026】この後、太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aのハブ軸1を前記つめ12,12同士に装着し、チェン18をフリーホイル16に連結してその張り具合を調整しナット37を締付けて固定する。前記ハブ軸1を固定後、回り止め材6をフレーム10に係止しボルトで台板4に固定する。
【0027】トルクセンサ7aのレバー23をフレーム10に固定し、小スプロケット21をチェン18の引張側に係止しスプリング24で上方に押圧させる。そして、そのセンサ22の出力ケーブルを前記制御装置9と接続する。以上の作業により、従来の自転車を太陽電池で駆動する電動機付き自転車に改造することができる。」
(1d) 「【0028】次に本実施例の作用を説明する。まず、メインスイッチ36を閉じ自転車に乗ってペダルを踏む。自転車の速度が0km/hから5km/h未満のときは、スイッチ部31が比較判断部の信号によって開いた状態となっており、踏力のみで走行させる。このとき太陽電池8aの起電力は電源調整部34の信号により、第1制御部27が畜電池8bに充電させる。自転車の速度が5km/h以上で20km/h以下となったとき、スイッチ部31が閉じる。また、トルクセンサ7aで検出した踏力が設定値の範囲内にあるとき、比較判断部33がその大小に比例した信号を出し、電源調整部34はこれに比例して電力を増減させる。従って、自転車の速度が設定値範囲内であって、しかも踏力が設定値範囲内にあるとき、電動機5を駆動して走行時の補助をし、その踏力に比例して電動機5の駆動力を調整する。この場合、最低速と高速の場合は電動機の駆動を停止して踏力のみによる安全走行を行わせ、中低速から中高速の範囲内のみ電動機の駆動を行うと共に、踏力のきつさの度合いに応じて電動機の駆動力を調整し楽な走行をさせる。また、このとき、調整部34の信号によって太陽電池の起電力に余力が有ると畜電池8bに充電させ、不足の場合は放電(給電)させる。
【0029】以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明の具体的な構成は本実施例で限定させるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0030】例えば、実施例では、トルクセンサ7aはチェン18の張力を利用する構造のものとしたが、これに限らず、フリーホイル16とハブ体14との間に設定してもよい。
【0031】速度センサ7bの構造や取付位置も任意である。
【0032】電動機5はハブ軸1を同心にビルトインされるもので説明したが、鍔部15に大ギヤを取付け、これに回転軸を有する直流電動機にピニオンを取付け噛合させるようにしてもよい。この場合、電動機は台板の外面側に取付けることもできる。また、減速機付きの電動機を使用してもよい。
・・・
【0035】電動機と鍔部との間に遊星歯車装置40を設け、これによって高速型電動機の回転を減速させて使用するようにしてもよい(図6参照)。」
(1e) 「【符号の説明】
A 太陽電池駆動部付き自転車用車輪
1 ハブ軸
2 ハブ
3 リム
4 台板
5 電動機
5a 固定子
5b 回転子
6 回り止め材
7a トルクセンサ
7b 速度センサ
8a 太陽電池
8b 畜電池(2次電池)
9 制御装置
10 フレーム
11 自転車
12 フレームつめ
15 鍔部
27 電力の安定供給を行う第1制御部
28 自転車の速度によって電動機を発停させる第2制御部」
(1f) 図1?5にはそれぞれ、以下の図が記載されている。

(2)甲第2号証の記載事項
(2a) 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の実施形態を、電動アシスト自転車を例にとって説明する。」
(2b) 「【0020】上述のように、前記後輪14は、ペダル5、前スプロケット12、チェーン13、後スプロケット及び変速機等から成る人力駆動部と、モータ及び減速機構等から成る電動駆動部の2つの駆動部によって駆動され、それらを併用して走行することができるようになっている。
【0021】次に、この電動アシスト自転車の駆動部17について、図1?図5に基づき詳細に説明する。
【0022】後輪14の車軸20には、その長手方向の一部に通常の自転車と同様の内装式変速機21が設けられ、この変速機21は後スプロケット22に一方向クラッチ(図示せず)を介して連結されており、前記ペダル5の一方向の回転でしか動力伝達せず、ペダル5を逆回転させたときには変速機21への動力伝達が遮断されるようになっている。
【0023】内装式変速機21は、車軸20を中心に後輪14のハブを構成する回転ケーシング23で覆われ、この回転ケーシング23は2部品からなっており、一方は、外周にスポークを取り付けるための2本の環状リブ24a,24bが形成された回転ケーシング23aで、他方は、前記回転ケーシング23aの開口部を塞ぐように複数箇所で前記環状リブ24bにネジ止め固定された回転ケーシング23bである。」
(2c) 「【0032】一方、人力が伝達される後スプロケット22側の変速機21外周には、回転ケーシング23aの内側にあって人力トルクを検出するトルクセンサ用のセンサプレート(第1の回転板)51が固定されている。後で詳述するが、上記回転ケーシング23aの開口周縁には上記センサプレート51に摺接するパッキン52が取り付けられて、防水,防塵等の対策が施されている。
【0033】上記センサプレート51の内側には、変速機21の外周にベアリング53を介して取り付けられると共に回転ケーシング23aにネジ止め固定されたセンサケース(第2の回転板)54が設けられており、これらセンサプレート51とセンサケース54は、センサプレート51に固定された押さえピン51aとセンサケース54に設けられた収納部54a間に介在させたコイルスプリング55を介して連結されている。即ち、変速機21から人力駆動力がセンサプレート51に伝わると、人力トルクの大きさに応じた収縮量でコイルスプリング55を収縮させ、センサケース54を介して回転ケーシング23aを回転させるようになっている。なお、コイルスプリング55を介した回転ケーシング23aとセンサプレート51の変位量(角度)は最大7度に設定されている。
・・・
【0035】このように、コイルスプリング55の収縮、即ち人力トルクの大きさによって変位量が変わるリング57を用いたので、人力トルクの大きさによってコイル60のインダクタンスを変化させることができ、人力トルクの大きさを電気信号で出力することができる。」

(3)甲第3号証の記載事項
(3a)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は電動自転車の回生電流制御方法に関し、特にたとえばブレーキ操作時や下り坂走行時あるいは自転車速度がペダル速度より大きい場合等において電動直流モータの発電電力をバッテリへ回生する電動自転車の回生電流制御方法に関する。」
(3b)「【0009】
【実施例】この発明の一実施例の前提となる電動自転車10は、図1に示されるように、自転車本体12のペダル14を搭乗者が踏むことにより発生する人力トルクは人力トルクセンサ16により検出され、このトルク検出信号はコントローラ18に入力される。コントローラ18では、入力されたトルク検出信号に応じたトルク制御信号が作成され、この制御信号はバッテリ20により駆動される電動直流モータ22に供給される。
【0010】この結果、自転車本体12には、人力トルクに加えて、この人力トルク値に応じた大きさのモータ出力が供給され、ペダル14を踏む踏力による駆動力が電動直流モータ22の電動力によって補助される。ところで、電動自転車10の走行状態としては、(A)平地路走行,(B)上り坂路走行および(C)下り坂路走行の3つの走行形態が考えられ、通常はこれら3つの走行形態の組み合わせとなる。
【0011】先ず、(A)の平地路走行においては、電動自転車10は、搭乗者のペダルを踏む踏力による駆動力を主体とし必要に応じて電動直流モータ22の電動補助力を付加して走行し、たとえば、自転車速度がペダル速度より大きい場合、人力トルクセンサ16のトルク検出信号により電動直流モータ22を回生に切替えて回生走行状態となり、電動直流モータ22で発生した電力エネルギをバッテリ20に供給し、バッテリを充電する。そして、走行速度が低下すると、回生走行状態を解除し必要に応じて電動直流モータ22の電動補助力を付加した電動補助走行状態に切替わる。」

(4)甲第4号証の記載事項
(4a)「 【特許請求の範囲】
【請求項1】 人力による駆動力を後輪に伝達するための人力駆動系と、バッテリで付勢されるモータによる駆動力を後輪に伝達するモータ駆動系とを備えた電動補助自転車の制御装置において、
車両の実走行抵抗を検出する走行抵抗検出手段と、
前記実走行抵抗に応じた駆動力を前記モータ駆動系で発生させる補助動力発生手段と、
車両の運転状態を判別する運転状態判別手段と、
前記実走行抵抗が負の場合に、車両の運転状態に応じて前記モータ駆動系に回生指示を供給する回生制御手段とを具備したことを特徴とする電動補助自転車の制御装置。
・・・
【請求項4】 ブレーキが操作されたことを検出するブレーキ操作検出手段を具備し、
前記回生制御手段が、ブレーキ操作の検出に応答して回生出力が増大されるように前記回生指示を供給することを特徴とする請求項1記載の電動補助自転車の制御装置。」
(4b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動補助自転車の制御装置に関し、特に、電動補助装置を備えない自転車(以下、「通常の自転車」と呼ぶ)と同様の走行感覚で運転できるようにするのに好適な電動補助自転車の制御装置に関する。」
(4c)「【0040】総駆動力算出部54は人力によって得られる駆動力PhとモータトルクTおよびモータ回転数Nmに基づくモータ出力とを加算して総駆動力Pwを算出する。ここで使用されるモータトルクTは前回値つまり前回値メモリ61に格納されている値T-1である。
【0041】モータ回転数検出部56はモータ回転センサ49の検出信号によりモータ回転数Nmを検出する。車速検出部57は車速センサ50の検出信号により車速Vを検出する。なお、モータ回転センサ49および車速センサ50として前記磁極センサ41を使用できる。
【0042】車速メモリ58には車速Vの前回検出値V-1が記憶される。車速変化量算出部59は車速Vの前回値V-1と今回値Vとの差ΔVを算出する。標準走行抵抗演算部60は車速Vにより通常の自転車の平地走行抵抗Rrをマップ検索する。
【0043】走行抵抗算出部62は総駆動力Pwおよび車速変化量ΔVに基づいて車速V毎のマップを検索して実走行抵抗Raを算出する。実走行抵抗Raを求めるマップは後述する。なお、走行抵抗算出部62では、総駆動力Pwに代えて総駆動力Pwの積算値を用いてもよい。すなわち、総駆動力積算部55を設けて、その出力を使用できる。総駆動力積算部55は、予定時間毎または予定期間毎の総駆動力Pwを積算して積算値P・hを求める。例えば、クランク軸22の1回転中の総駆動力Pwの積算値P・hを求める。」

2-3 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、
ア 人の体力のみで走行する自転車の車輪と取替えるだけで、自転車に太陽電池を電源とする駆動部と、それによって駆動される車輪とを取付けた状態に改造することができる太陽電池駆動部付き自転車用車輪に関し(摘示(1a)【0001】)、
イ 太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aは、ハブ軸1と、ハブ2と、リム3と、台板4と、電動機5と、回り止め材6と、トルクセンサ7aと、速度センサ7bと、太陽電池8aと、畜電池8bと、制御装置9と、を主要な構成とすること(摘示(1b)【0012】)、

(ア) 台板4は、中心にハブ軸1を貫通させて保持する軸支部17を有しており、ハブ軸1に回転自在に装着されること(摘示(1b)【0016】)、
(イ) 鍔部15は、ハブ2のハブ体14の一端側に設けられていること(摘示(1b)【0014】)、
(ウ) 回り止め材6は台板4が回転しないように係止するものであって、フレーム10にバンド部を係止して台板4にボルトで固定するものであること(摘示(1b)【0018】)、
エ 電動機5は、固定子5aが台板4の内面側に固定され、回転子5bが鍔部15の内面側に固定されていること(摘示(1b)【0017】)、
オ ハブ体14の鍔部15側には、フリーホイル16が設けられていること(摘示(1b)【0014】)、

(ア) トルクセンサ7aは、走行中にどの程度の踏力が作用しているかを検出するものであること(摘示(1b)【0019】)、
(イ) トルクセンサ7aは、フリーホイル16とハブ体14との間に設定してもよいこと(摘示(1d)【0030】)、

(ア) 制御装置9は、電動機5の制御や畜電池8bの充放電等を行うこと(摘示(1b)【0023】)、
(イ) 制御装置9は、トルク設定部32のデータを取込み、トルクセンサ7aの検出信号と比較してその結果を出力する比較判断部33と、比較判断部33の信号により電源(電圧または電流)を調整する電源調整部34とを有すること(摘示(1b)【0024】)、
(ウ) 自転車の速度が設定値範囲内であって、トルクセンサ7aで検出した踏力が設定値範囲内にあるとき、電動機5を駆動して走行時の補助をし、その踏力に比例して電動機5の駆動力を調整すること(摘示(1d)【0028】)、
ク 畜電池8bは、太陽電池8aの余分の電力を充電し不足時の電力を放電(給電)するものであって、台板4の内面側に固定されていること(摘示(1b)【0022】)、
が記載されている。
また、甲第1号証において、
ケ 摘示(1f)の図1及び技術常識に照らして、上記「エ」において、電動機5は鍔部15を回転させるように動作するものであること、
コ 摘示(1f)の図4より、上記「オ」のフリーホイル16は、ギアクランク19の大スプロケットホイルに連設されたチェン18(摘示(1b)【0018】)と係合しているから、技術常識に照らして、自転車の乗員によってギアクランク19に加えられた回転入力に応じて鍔部15を回転させるように動作するものであること、

(ア) 摘示(1f)の図1及び2より、上記「キ」の制御装置9は、太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aの内部にあること、
(イ) 摘示(1d)の【0028】において「比較判断部33がその大小に比例した信号を出し、電源調整部34はこれに比例して電力を増減させる」と記載されていること、及び、技術常識に照らして、上記「キ(ウ)」は制御装置9の制御によるものであること、
シ 摘示(1f)の図5より、上記「ク」の畜電池8bは制御装置9及び電動機5と接続されていること(なお、上記「ク」の「畜電池」は、上記「キ(ア)」の「畜電池8bの充放電」との記載、及び、摘示(1e)において符号8bが「畜電池(2次電池)」と記載されていることからみて、「蓄電池」の誤記と認められる。)、
が明らかである。

以上によれば、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「人の体力のみで走行する自転車の車輪と取替えるだけで、自転車に太陽電池を電源とする駆動部と、それによって駆動される車輪とを取付けた状態に改造することができる太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aであって、
リム3と、
中心にハブ軸1を貫通させて保持する軸支部17を有し、ハブ軸1に回転自在に装着される台板4と、
ハブ2のハブ体14の一端側に設けられた鍔部15と、
台板4が回転しないように係止するものであって、フレーム10にバンド部を係止して台板4にボルトで固定される回り止め材6と、
固定子5aが台板4の内面側に固定され、回転子5bが鍔部15の内面側に固定され、鍔部15を回転させるように動作する電動機5と、
ハブ体14の鍔部15側に設けられ、自転車の乗員によってギアクランク19に加えられた回転入力に応じて鍔部15を回転させるように動作するフリーホイル16と、
フリーホイル16とハブ体14との間に設定され、走行中にどの程度の踏力が作用しているかを検出するトルクセンサ7aと、
太陽電池駆動部付き自転車用車輪Aの内部にあり、自転車の速度が設定値範囲内であって、トルクセンサ7aで検出した踏力が設定値範囲内にあるとき、電動機5を駆動して走行時の補助をし、その踏力に比例して電動機5の駆動力を調整する制御装置9と、
制御装置9及び電動機5と接続され、台板4の内面側に固定された蓄電池8bと、
を有する、太陽電池駆動部付き自転車用車輪A。」

2-4 判断
(1)申立理由1について
上記「第2(1)」のとおり、本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1及び8が削除され、請求項5、6、11?13、15、19、23は請求項1を引用しないものとされたため、申立理由1については、対象となる請求項が存在しないものとなった。
また、請求項10及び14に係る発明は、そもそも請求項1を引用するものではないから(請求項10に係る発明は請求項2から4のいずれか一つを引用し、また、請求項14に係る発明は請求項2または4を引用しているところ、かかる請求項2?4は申立理由1の対象となっていない。)、申立理由1の対象となるものではない。

(2)申立理由2について
(2-1)本件発明1及び8について
上記「第2(1)」のとおり、本件訂正請求により、特許請求の範囲の請求項1及び8が削除されたため、申立理由2については、対象となる請求項が存在しないものとなった。

(2-2)本件発明2について
特許異議申立人は、特許異議申立書(25?26頁「(イ)」の項)において、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証または甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)本件明細書には、「【0016】一部の実施形態では、非モータ駆動車両は、自転車を含む。」と記載されているから、甲1発明の「人の体力のみで走行する自転車」及び「人の体力のみで走行する自転車の車輪」は、本件発明2の「非モータ駆動車両」及び「現存の車両ホイール」に相当する。
(イ)甲1発明の「電動機5」は、本件発明2の「電気モータ」に相当する。また、甲1発明の「太陽電池駆動部付き自転車用車輪A」は、「電動機5」を有するものであるから、本件発明2の「電気モータ駆動車両用ホイール」に相当するものといえる。そして、甲1発明の「太陽電池駆動部付き自転車用車輪A」は、太陽電池駆動部付き自転車の車輪をなすことが明らかであるから、かかる「太陽電池駆動部付き自転車」は、本件発明2の「電気モータ駆動車両」に相当するものといえる。
(ウ)甲1発明の「太陽電池駆動部付き自転車用車輪A」は、「人の体力のみで走行する自転車の車輪と取替えるだけで、自転車に太陽電池を電源とする駆動部と、それによって駆動される車輪とを取付けた状態に改造することができる」ものであるところ、上記「取替える」ことと「交換する」こととは同義であるから、かかる「太陽電池駆動部付き自転車用車輪A」は、上記(ア)及び(イ)をも踏まえると、本件発明2の「現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置」に相当するものといえる。
(エ)甲1発明の「リム3」は、「ホイールリム」に相当する。
(オ)甲1発明の「フリーホイル16」は「自転車の乗員によってギアクランク19に加えられた回転入力に応じて鍔部15を回転させるように動作する」ものであり、ユーザからの力を受けるように構成されていることが明らかであるから、本件発明2の「ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニット」に相当するものといえる。
(カ)甲1発明の「鍔部15」は、「ハブ2のハブ体14の一端側に設けられ」るものであって、「自転車の乗員によってギアクランク19に加えられた回転入力に応じて」「回転させ」られるものであるから、上記(オ)をも踏まえると、本件発明2の「前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニット」に相当するものといえる。
(キ)甲1発明の「台板4」は、「中心にハブ軸1を貫通させて保持する軸支部17を有し、ハブ軸1に回転自在に装着される」ものであって、「回転しないように係止」されるものであるから、本件発明2の「静止ユニット」に相当する。
(ク)甲1発明の「トルクセンサ7a」は、「フリーホイル16とハブ体14との間に設定され、走行中にどの程度の踏力が作用しているかを検出する」ものであるから、「自転車の乗員」によって加えられる回転入力を検出することは技術的に明らかである。
したがって、甲1発明の「トルクセンサ7a」は、本件発明2の「前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システム」に相当するものといえる。
(ケ)甲1発明の「制御装置9」は、「自転車の速度が設定値範囲内であって、トルクセンサ7aで検出した踏力が設定値範囲内にあるとき、電動機5を駆動して走行時の補助をし、その踏力に比例して電動機5の駆動力を調整する」ものであるから、上記(イ)及び(ク)をも踏まえると、本件発明2の「前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニット」に相当するものといえる。
(コ)甲1発明の「蓄電池8b」は、「制御装置9及び電動機5と接続され」るものであるから、上記(ケ)をも踏まえると、本件発明2の「前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源」に相当するものといえる。

以上によれば、本件発明2と甲1発明とは、
「現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含む、
装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「回転ユニット」、「静止ユニット」、「感知システム」、「電気モータ」、「制御ユニット」及び「電力源」の各要素について、本件発明2は、それら各要素が「自蔵式のモータ駆動ハブユニット」として構成されるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明2は、「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)上記相違点2に係る本件発明2の構成は「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する」(以下「事項A」という。)というものであるから、事項Aの「前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する」ことは、「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ」ることに起因し、「その負の回転に応じて」制御ユニットが電気モータに指令することが明らかである。
また、本件明細書には、本件発明2に係る実施の形態として、サイクリストのペダルの逆踏みに応答して回生制動させることが記載され(【0134】?【0135】)、また、ペダルの逆踏みによって、機械的駆動ユニットに負の回転が与えられることも技術的に明らかであるから(【0208】)、事項Aにおける「負の回転」とは、「ユーザによって加えられた回転入力(サイクリストのペダルの逆踏み)」によって、「機械的駆動ユニット」自体に与えられた「負の回転」を意味するものと解するのが自然である。
(イ)以上を踏まえて検討すると、甲第3号証には、「電動自転車の回生電流制御方法に関し、特にたとえばブレーキ操作時や下り坂走行時あるいは自転車速度がペダル速度より大きい場合等において電動直流モータの発電電力をバッテリへ回生する電動自転車の回生電流制御方法」に関する技術について開示されているところ(摘示(3a))、自転車本体12のペダル14を搭乗者が踏むことにより発生する人力トルクは人力トルクセンサ16により検出され、このトルク検出信号はコントローラ18に入力されること(摘示(3b)【0009】)、自転車本体12には、人力トルクに加えて、この人力トルク値に応じた大きさのモータ出力が供給され、ペダル14を踏む踏力による駆動力が電動直流モータ22の電動力によって補助されること(摘示(3b)【0010】)、及び、平地路走行において、自転車速度がペダル速度より大きい場合、人力トルクセンサ16のトルク検出信号により電動直流モータ22を回生に切替えて回生走行状態とすること(摘示(3b)【0011】)が記載されている。
しかし、かかる技術は、あくまでも、自転車速度がペダル速度より大きい場合、人力トルクセンサ16のトルク検出信号により電動直流モータ22を回生に切替える、というものであって、「機械的駆動ユニット」自体に与えられる「その負の回転に応じて」電動直流モータ22を回生に切り替えるというものではない。
(ウ)ここで、異議申立人は、特許異議申立書(21頁15行?22頁2行)において、甲第3号証に記載される「自転車速度がペダル速度より大きい場合」とは、機械的駆動ユニットのスプロケットの速度が車輪の回転速度より小さい場合であるから、機械的駆動ユニットのスプロケットが車輪に対して相対的に負の回転しており、したがって、上記相違点2に係る本件発明2の構成は、甲第3号証に記載されている旨主張する。
しかし、上記(ア)で述べたとおり、事項Aの「負の回転」とは、例えば、サイクリストがペダルを逆踏みすることで生ずる「機械的駆動ユニット」自体の「負の回転」を意味するものであって、「機械的駆動ユニットのスプロケットの速度」と「車輪の回転速度」との相対関係により判断される「相対的な負の回転」を意味するものではないから、甲第3号証には、事項Aの「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて」回生に切替えて回生走行状態とすることが記載されているということはできない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(エ)また、甲第4号証には、「電動補助自転車の制御装置」に関する技術について開示されているところ(摘示(4b))、車両の実走行抵抗を検出し、前記実走行抵抗が負の場合に、車両の運転状態に応じてモータ駆動系に回生指示を供給すること(摘示(4a)【請求項1】)、ブレーキ操作の検出に応答して回生出力が増大されるように前記回生指示を供給すること(摘示(4a)【請求項4】)、及び、上記「実走行抵抗」は、総駆動力Pwおよび車速変化量ΔVに基づいて車速V毎のマップを検索して算出されること(摘示(4c))、の記載は認められるものの、事項Aの「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて」回生指示を供給することは記載も示唆もなされていない。
(オ)したがって、甲1発明に、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明2の構成には至らない。

ウ 小活
以上のとおり、本件発明2は甲1発明と相違点1及び2において相違するものであるところ、相違点2に係る本件発明2の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点1を検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明及び甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-3)本件発明3について
特許異議申立人は、特許異議申立書(25?26頁「(イ)」の項)において、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証または甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、以下検討する。
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「人の体力のみで走行する自転車」及び「太陽電池駆動部付き自転車」は、本件発明3の「自転車」及び「電気モータ駆動自転車」に、それぞれ相当する。
そして、上記「(2-2)ア」の対比関係をも考慮すれば、本件発明3と甲1発明とは、
「現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、自転車を電気モータ駆動自転車に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含む、
装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「回転ユニット」、「静止ユニット」、「感知システム」、「電気モータ」、「制御ユニット」及び「電力源」の各要素について、本件発明3は、それら各要素が「自蔵式のモータ駆動ハブユニット」として構成されるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点B>
本件発明3は、「ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する」ものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点Bについて検討する。
上記相違点Bは、上記「(2-2)ア」の相違点2と実質的に同様であるから、上記「(2-2)イ」の理由と同様の理由により、甲1発明に、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点Bに係る本件発明3の構成には至らない。

ウ 小活
以上のとおり、本件発明3は甲1発明と相違点A及びBにおいて相違するものであるところ、相違点Bに係る本件発明3の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点Aを検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明及び甲第3号証あるいは甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-4)本件発明5、6、9?12、15、19、23?27について
本件発明5、6、9?12、15、19、23?27は、本件発明2?4のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。
そして、本件発明2及び3は、上記「(2-2)」及び「(2-3)」で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたということはできず、また、本件発明4は、そもそも特許異議の申立てはなされておらず当業者が容易に発明をすることができたとする理由はないから、本件発明5、6、9?12、15、19、23?27も同様に、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-5)本件発明7、13、及び16について
本件発明7、13、及び16は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。
そして、本件発明4は、そもそも特許異議の申立てはなされておらず当業者が容易に発明をすることができたとする理由はないから、本件発明7、13、及び16も同様に、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-6)本件発明14について
本件発明14は、本件発明2または4の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。
そして、本件発明2は、上記「(2-2)」で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたということはできず、また、本件発明4は、そもそも特許異議の申立てはなされておらず当業者が容易に発明をすることができたとする理由はないから、本件発明14も同様に、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-7)本件発明17及び18について
本件発明17及び18は、本件発明2、3、7及び16のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。
そして、本件発明2及び3は、上記「(2-2)」及び「(2-3)」で述べたとおり、当業者が容易に発明をすることができたということはできないから、本件発明17及び18も同様に、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2、3、5?7、9?19及び23?27に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項2、3、5?7、9?19及び23?27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1及び8に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1及び8に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含み、
ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項3】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、自転車を電気モータ駆動自転車に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、を含み、
ユーザによって加えられた回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、
ことを特徴とする、装置。
【請求項4】
現存の車両ホイールを電気モータ駆動車両用ホイールに交換することで、非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置であって、
ホイールリムと、
ユーザから力を受けるように構成された機械的駆動ユニットと、
自蔵式のモータ駆動ハブユニットと、
を備え、前記モータ駆動ハブユニットが、
前記機械的駆動ユニットによって駆動されるように構成された回転ユニットと、
静止ユニットと、
前記ユーザによって加えられた回転入力を検出するように構成された感知システムであって、前記機械的駆動ユニットに固定された内側スリーブと、前記ホイールに固定された外側スリーブとを含み、さらに、前記外側スリーブに対する前記内側スリーブの相対位置を測定する近接センサ、圧力センサ、および変位センサのうちの少なくとも一つを含む感知システムと、
電気モータと、
前記ユーザによって加えられた前記力に応じて前記電気モータの出力を制御するように構成された制御ユニットと、
前記制御ユニットおよび前記電気モータに電気的に接続された電力源と、
を含むことを特徴とする、装置。
【請求項5】
前記制御ユニットが、前記ユーザによって加えられた回転入力に応じて前記電気モータの駆動トルクを調節する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに正の回転入力が与えられ、その正の回転入力に応じて、前記制御ユニットが、前記ユーザによって加えられた前記正の回転入力を、前記回転ユニットを駆動する既定量の正の回転入力で補足するように、前記電気モータに指令する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その与えられた負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、請求項4に記載の装置。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記電力源がバッテリを含み、前記バッテリが、完全自蔵式の前記モータ駆動ハブユニットから取り外し可能である、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記回転ユニットが、前記ホイールリムに対して固定されており、前記ホイールリムと共に回転する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記電気モータのステータが前記静止ユニットに固定されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記機械的駆動ユニットが、スプロケットおよびギアのうちのいずれか一方を含む、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記非モータ駆動車両が自転車である、請求項4に記載の装置。
【請求項14】
前記非モータ駆動車両が、前記機械的駆動ユニットに機械的に連結された少なくとも一つのペダルを有する自転車であり、前記ペダルは、前記ユーザによって作動されることで前記モータ駆動ハブユニットに前記力を加える、請求項2または4に記載の装置。
【請求項15】
前記感知システムが、前記機械的駆動ユニットに加えられたトルクを測定する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
ユーザによって加えられた前記回転入力によって前記機械的駆動ユニットに負の回転が与えられ、その与えられた負の回転に応じて、前記制御ユニットが、前記回転ユニットの前転方向への回転に抵抗するように前記電気モータに指令する、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記電気モータが電気エネルギを生成する、請求項2、3、7および16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
前記電気モータによって生成された前記電気エネルギを貯蔵する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記感知システムが、前記ホイールの加速度、前記機械的駆動ユニットの回転速度、および前記ホイールの回転速度のうちの少なくとも一つを測定する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
前記感知システムが、
前記機械的駆動ユニットに固定された内側スリーブと、
前記ホイールに固定された外側スリーブと、
前記外側スリーブに対する前記内側スリーブの相対位置を測定する近接センサ、圧力センサ、および変位センサのうちの少なくとも一つと、
を備える、請求項2から3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
前記感知システムが、前記機械的駆動ユニットに加えられたトルクを測定する少なくとも一つの圧力センサを、前記機械的駆動ユニットとシャフトとの間に備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
前記装置がシャフトに取り付けられており、前記感知システムが、前記シャフトの屈曲を測定するセンサを備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項23】
前記電気モータ駆動車両用ホイールが、ホイールハブギアシステムをさらに備える、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項24】
前記制御ユニットが、無線制御ユニットまたは携帯電話から無線で受信された指令信号に応答して、前記電気モータのパワー出力を調節する、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
前記制御ユニットが、一つまたは複数の無線ネットワークを通じて信号を送受信するように構成されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項26】
前記制御ユニットが、少なくとも一つの外部センサとインタフェースするように構成されている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項27】
前記装置が、前記ホイールリムを前記回転ユニットに接続する複数個のスポークをさらに備え、
前記複数個のスポークのそれぞれが第1端部および第2端部を有し、前記第1端部および前記第2端部が、互いの間に鋭角を成すように延在して取付部を形成しており、
前記各端部は前記リムに取り付けられ、前記各取付部は前記回転ユニットに取り付けられている、請求項2から4のいずれか一つに記載の装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-21 
出願番号 特願2012-542232(P2012-542232)
審決分類 P 1 652・ 55- YAA (B62M)
P 1 652・ 113- YAA (B62M)
P 1 652・ 536- YAA (B62M)
P 1 652・ 121- YAA (B62M)
P 1 652・ 537- YAA (B62M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 浩佐々木 訓  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
登録日 2016-04-22 
登録番号 特許第5922583号(P5922583)
権利者 マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
発明の名称 非モータ駆動車両を電気モータ駆動車両に改造するための装置  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 前島 一夫  
代理人 大橋 康史  
代理人 島田 哲郎  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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