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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1334370
異議申立番号 異議2016-700679  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-03 
確定日 2017-10-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5853021号発明「強化ポリアミド樹脂ペレット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5853021号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項1について訂正することを認める。 特許第5853021号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5853021号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-517999号、以下「本願」という。)は、平成24年5月23日(優先権主張:平成23年5月27日、特願2011-118723号)を国際出願日とする出願であって、平成27年12月11日に特許権の設定登録(請求項の数1)がなされたものである。
本件特許につき平成28年8月3日付け(受理日:同年8月5日)で特許異議申立人 東レ株式会社(以下「申立人」という。)により「特許第5853021号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。
平成28年12月1日付けで取消理由が通知され、平成29年2月3日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、同年2月27日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がなされ、同年3月31日付け(受理日:同年4月3日)で申立人から意見書が提出され、同年6月1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月7日付けで意見書が提出されたものである。

第2 平成29年2月3日付けの訂正請求について

上記平成29年2月3日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。

1.訂正内容

本件訂正は、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(1)訂正事項1

本件特許請求の範囲の請求項1に「(A)融点が200?270℃であるポリアミド樹脂」と記載されているのを、「(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂」に訂正する。

(2)訂正事項2

本件特許請求の範囲の請求項1に「前記強化ポリアミド樹脂のストランドの水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法」と記載されているのを、「溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程、前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程、ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程、を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法」に訂正する。

(3)訂正事項3

本件特許に係る明細書の【0010】において、
「〔1〕
(A)融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有する強化ポリアミド樹脂からなり、
前記ポリアミド樹脂と、前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂ペレットであり、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
前記強化ポリアミド樹脂のストランドの水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。」
とあるのを、
「〔1〕
(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有する強化ポリアミド樹脂からなり、
前記ポリアミド樹脂と、前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂ペレットであり、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程、
前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程、
ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程、
を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。」
に訂正する。

2.検討

上記訂正事項1及び2による訂正は、いずれも本件特許に係る請求項1について、請求項1の「製造方法」で使用されるポリアミド樹脂の種別の限定(訂正事項1)及び製造工程の追加(訂正事項2)を行うことにより、同項記載の「製造方法」に係る発明の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

訂正事項3による訂正は、本件特許に係る請求項1についての上記訂正事項1及び2による訂正に伴って生じた、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(【0010】)の不整合、すなわち明瞭でない記載を整合させるよう単に正したものと認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

訂正事項1及び2による訂正は、本件特許明細書の【0014】及び【0049】に記載された事項に基づき、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の範囲を減縮しており、また、上記訂正事項3による訂正は、上記訂正事項1及び2による訂正により生じた不整合を単に正したものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内で訂正するものであることが明らかであり、さらに、本件特許に係る特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

訂正事項3は、明細書の訂正に係る請求項の全て(請求項1)について行われているので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。

3.まとめ

以上のとおりであるから、本件訂正に係る上記訂正事項1ないし3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項に適合するものである。
よって、本件訂正後の請求項1及び明細書の【0010】について訂正を認める。

第3 本件発明

本件訂正は第2のとおり認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有する強化ポリアミド樹脂からなり、
前記ポリアミド樹脂と、前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂ペレットであり、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程、
前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程、
ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程、
を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。」

第4 取消理由の概要

平成28年12月1日付け取消理由は下記の取消理由1ないし3、及び、平成29年6月1日付け取消理由(決定の予告)は下記の取消理由2を通知した。

(取消理由1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであって、本件発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(取消理由2)本願は、願書に添付された明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載が不備であるから、本件発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(取消理由3)本願は、本件特許の請求項1の記載が不備であるから、本件発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

<申立人提示の証拠方法>
甲第1号証:特開平7-96519号公報
甲第2号証:申立人従業者川上弘二が平成28年7月27日付けで作成した「実験報告書」(甲第1号証に記載された実施例等の追試を行ったもの)
(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)

第5 当審の判断

上記取消理由1ないし3につき、事案に鑑み、取消理由2、取消理由1、取消理由3の順に検討する。

1.取消理由2について

取消理由2について以下検討する。
特許権者は、平成29年8月7日付け意見書(以下、「特許権者の意見書」という。)において、当該意見書に添付された参考文献1(村上健吉編、「押出成形」、改訂第7版、株式会社プラスチックス・エージ、1985年12月10日、210?213頁)に基づき、概略、以下のとおり主張している。
ストランドカット方式による樹脂ペレット製造方法は古くから確立された樹脂ペレットの工業的製造方法であって、使用される装置も本件出願時においてよく知られており、各種設定値についても同様である。
本件発明においては、本質的には、このように一般に確立されたストランドカット方式による樹脂ペレット製造において、水浸漬長さを通常より短い90cm以下の範囲で調整するだけで、わずかに扁平な断面形状を有するペレットが製造できるので、当業者であれば技術常識に基づいて、過度な試行錯誤を繰り返すことなく本件発明を実施することができる。
カッターの回転速度は、所望するペレットの長さとカッターの刃の間隔に基づいて自ずと決まる値である。
ロール引き取り圧力については、円形のペレットを製造する通常の場合から大きく変える必要はなく、ロール引き取り圧力を上げればストランドがつぶれやすく長径/短径比が大きくなり、逆に下げれば長径/短径比が1に近づくことは明らかなので、所望するペレットの長径/短径比に応じて適宜設定することは容易である。
水浸漬長さについても、これを長くすればストランドの冷却が進みつぶれにくくなるため、長径/短径比が1に近づき、逆に短くすれば長径/短径比が大きくなることは明らかである。水浸漬長さの調整は、温度を厳密に制御するという意味ではなく、押圧により変形するかしないかが変わる程度に冷却状態を制御するという趣旨である。

また、参考文献1は、以下の事項が記載されている。
ストランドカット方式はいずれの場合でも、ダイ(ノズル)から円形断面のストランドを押出して冷却後切断を行うので、コールドカット方式とも呼ばれる(211頁右欄下から1行?212頁左欄3行)。
ストランドカット方式において、ペレット径は通常2.5?3.2φ程度で、これに対して4?4.8φくらいのノズル穴が用いられる(212頁右欄10、11行)。
通常のストランドカット方式では、水槽の中のガイドロールによって冷却長を調整して、もろい材料では過度の冷却となる前に切断を行ったり、融点の高い材料では自熱により付着水分を乾燥させるなどの操作を行う。この水槽中のストランド掛けなどはすべて人力で行うのでストランド本数200?240本、引取速度50?60m/minが操作限界で、能力に対応する(213頁左欄1?9行)。

本件特許明細書には、強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し後のストランドの温度、水浸漬長さ、ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整することが記載されているが、実施例において、その具体的な条件、数値等は記載されず、その他の必要な条件、数値等についても記載されていない。
しかしながら、特許権者の意見書及び参考文献1によれば、ロール引き取り圧力と長径/短径比とが相関関係を有すること、水浸漬長さはストランドの冷却に影響を与え、長径/短径比と相関関係を有すること、ストランドカット方式は、通常ダイ(ノズル)から円形断面のストランドを押出すものであって、ペレット径は通常2.5?3.2φ程度で、これに対して4?4.8φくらいのノズル穴が用いられること、材料によって水槽における冷却長を調整すること、引取速度には操作限界があること等が、当業者の技術常識であること、また、本件発明は、一般に確立されたストランドカット方式による樹脂ペレット製造において、水浸漬長さを調整するだけで極端な条件の変更を行うものではないことが理解できる。
また、本件特許明細書の【0014】にポリアミド樹脂の融点が200?270℃であること、【0049】にストランドの温度が230?350℃であること、実施例3?15に水浸漬長さを60cm以下とすることが記載されている。
そうすると、当業者の技術常識及び本件特許明細書の記載から、当業者であれば、ロール引き取り圧力又は水浸漬長さと長径/短径比との相関関係、通常のストランドカット方式におけるペレット径、水槽における冷却長調整の必要性、引取速度、ポリアミド樹脂の融点とストランドの温度範囲等を理解した上で、ストランドの温度、水浸漬長さ、ロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度、及び、その他の必要な条件、数値等を具体的に設定し、得られたペレットの長さ、長径/短径比を計測し、その上で、長径/短径比が1.3を下廻っている場合には、水浸漬長さを90cm以下の範囲内で短くするか、ロール引き取り圧力を上げることにより、長径/短径比を1.3以上とし、逆に長径/短径比が2.5を上廻っている場合には、水浸漬長さを長くするか、ロール引き取り圧力を下げることにより、長径/短径比を2.5以下とすることができるといえるし、ペレットの長さについても1mmを下廻っている場合には、ペレタイザーのカッターの回転速度を小さくすることにより、ペレットの長さを1mm以上とし、逆にペレットの長さが5mmを上廻っている場合には、ペレタイザーのカッターの回転速度を大きくすることにより、ペレットの長さを5mm以下とすることができるといえ、これらの条件、数値等の設定を変えることは、当業者であれば、数度程度の変更により達成できるものであるといえ、過度の試行錯誤を要するものであるとまではいえない。そうすると、当業者であれば、ペレットの長さ、長径/短径比を、過度の試行錯誤をすることなく、本件発明の範囲内とすることができるといえるので、本件発明を実施することができるものである。

申立人は、平成29年3月31日付け意見書(以下、「申立人の意見書」という。)において、概略、以下のとおり主張している。
ストランドの冷却度合いは様々な要因により有意に変化するものであり、ストランドの冷却度合いに大きな影響を与える条件は、(ア)ストランドの外径、(イ)ダイノズルから押し出された直後のストランドの温度、(ウ)ストランドを冷却する水浴の温度、及び(エ)水浴中でのストランドの冷却時間であると考えられるが、本件特許明細書はストランドの冷却度合いに関する開示が不十分である。

申立人の主張について検討する。
本件特許明細書には、(ア)?(エ)は具体的に記載されていない。
しかしながら、上記で述べたとおり、当業者であれば、ロール引き取り圧力又は水浸漬長さと長径/短径比との相関関係、通常のストランドカット方式におけるノズル穴の寸法、水槽における冷却長調整の必要性、引取速度、ポリアミド樹脂の融点とストランドの温度範囲等を理解することができ、本件発明は、一般に確立されたストランドカット方式による樹脂ペレット製造において、水浸漬長さと共に、ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整するだけで極端な条件の変更を行うものではないことも理解することができる。

そうすると、
(ア)ストランドの外径として、通常のストランドカット方式におけるペレット径とすることは容易であること、
(イ)ダイノズルから押し出された直後のストランドの温度は、原料ポリアミド樹脂の融点に基づき設定される押出機の設定温度と略同一であると考えられること、
(ウ)ストランドを冷却する水浴の温度は、特に指定がないので、季節による多少の変動があるにしても、室温付近と考えられること、
(エ)水浴中でのストランドの冷却時間は、上記(ア)?(ウ)の条件や、その他の必要な条件からストランドの冷却状態を考慮して設定することは容易であることから、申立人の主張を採用することができない。

したがって、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

2.取消理由1について

各甲号証の記載事項及び記載された発明は以下のとおりである。

(1)甲1の記載事項及び記載された発明

ア.甲1の記載事項

甲1には、申立人が申立書第7頁最下行?第8頁第26行で主張するとおりの事項が記載されており、さらに、以下の事項も記載されている。
「【0002】
【従来の技術】脂肪族ポリアミドと強化繊維とを主成分とする樹脂組成物あるいは脂肪族ポリアミド、α,β-不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン及び強化繊維を主成分とする樹脂組成物等の脂肪族ポリアミド系繊維強化樹脂組成物のペレットの製造方法においては、これらの原料を押出機により溶融混練し、ダイより押出されたストランドを水冷し、ストランドの表面を固化することによって、一定の長さに切断していた。しかし、脂肪族ポリアミド系繊維強化樹脂組成物は吸湿性が高いため、こうして得たペレットの水分量は通常0.1重量%を越えるものであった。ペレットの水分が多いとペレットから成形品を作る際、成形時に発泡等の不良現象が発生するため、一般にカッティング後のペレットを乾燥機によって乾燥し、ペレットの水分量を0.1重量%程度以下にまで減少し防湿袋に包装することが行なわれてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、乾燥設備に多大な費用を要するだけでなく、熱源コストもかかり、又乾燥工程に長時間を要するという問題があった。また乾燥温度を上げて乾燥時間を短縮する方法もあるが、窒素等の不活性ガスを用いたとしても加熱により着色し品質の低下を起こすという問題があった。
【0004】本発明の目的は、ダイより押出されたストランドを水冷後、カッティング不良なしにカッティングすることができ、又得られたペレット中に含有される水分を十分低くすることで、包装前に乾燥機を用いて長時間乾燥することなしに防湿袋に包装することができ、且つ色調の優れた脂肪族ポリアミド系繊維強化樹脂組成物ペレットの製造方法を提供することにある。」
「【0037】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ダイより押出されたストランドを水冷後カッティング不良なしにカッティングすることができ、又得られたペレットの水分量が十分低く、包装前に乾燥機を用いて長時間乾燥することなしに防湿袋に包装することのできる脂肪族ポリアミド系繊維強化樹脂組成物ペレットの製造方法を提供することができる。又、得られるペレットの色調も黄変がなく良好である。」

イ.甲1に記載された発明

上記ア.の記載事項(特に実施例1の記載)からみて、甲1には、申立人が申立書第10頁第13行?第23行に概略示すとおりの、
「(A)「ノバミッド1010J」なる商品名のポリアミド樹脂と、
(B)強化繊維としてのガラスファイバーからなる無機充填材と、を含有する強化ポリアミド樹脂組成物からなり、
前記ポリアミド樹脂と前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂組成物ペレットであり、長さが2.2mmである強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、
前記強化ポリアミド樹脂組成物のストランドの水浸漬長さを220mmとして冷却する工程を有する、強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)甲2の記載事項

甲2には、申立人が申立書第8頁下から第2行?第9頁第7行で主張するとおりの事項が記載されている。

(3)対比・検討

本件発明と甲1発明とを対比すると、本件発明と甲1発明とは、下記の点でのみ一応相違し、その余で一致するものと認められる。

<相違点1>
本件発明では、「(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂」であるのに対して、甲1発明では、「(A)「ノバミッド1010J」なる商品名のポリアミド樹脂」である点。

<相違点2>
製造されたペレットにつき、本件発明では、「断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である」のに対して、甲1発明では、ペレット断面の長径と短径との比につき特定されていない点。

<相違点3>
本件発明では、「溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程」を有するのに対して、甲1発明では、当該工程につき特定されていない点。

<相違点4>
本件発明では、「前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程」を有するのに対して、甲1発明では、当該工程につき特定されていない点。

<相違点5>
本件発明では、「ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程」を有するのに対して、甲1発明では、当該工程につき特定されていない点。

相違点1について検討する。
甲1発明の「ノバミッド1010J」なる商品名のポリアミド樹脂は、平成29年2月3日付け意見書に添付された乙第1号証によれば、PA6(ナイロン6)であり、同乙第2号証によれば、PA6は、ポリカプロラクタム、すなわち、芳香環を含まない脂肪族ポリアミドであって、半芳香族ポリアミドではないから、相違点1は実質的な相違点である。
そうすると、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明と甲1発明とは相違しているといえる。

(4)小括

したがって、本件発明は、甲1に記載された発明ではないから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明ではない。

3.取消理由3について

取消理由3は、概略、訂正前の請求項1において、ストランドの温度が限定されていないので、ストランドの温度が限定されていない製造方法についてまで、当業者が本件訂正前の請求項1に係る発明の課題を解決することができると認識できるとはいえないというものである。

上記で述べたとおり、本件訂正が認められ、「230?350℃のストランドとする工程」が追加・減縮される訂正が行われたので、取消理由3は解消しているから、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことができない。
そして、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
強化ポリアミド樹脂ペレット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ポリアミド樹脂ペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、成形加工性、機械物性、耐薬品性に優れていることから、従来から、衣料用、産業資材用、自動車、電気・電子用又は工業用等の様々な部品材料として広く用いられている。
【0003】
近年、ポリアミド樹脂を用いた成形品においては、生産性を向上させるために、成形サイクルを短縮させた成形条件で、長期的に連続成形する場合がある。
このようなポリアミド樹脂の長期連続成形においては、成形時の可塑化時間安定性が高いことが重要であり、この可塑化時間がばらつくと、成形品の寸法、外観性のばらつきが増え、生産性に大きく影響することがある。
特に無機充填材等で強化された、強化ポリアミド樹脂を成形する場合には、可塑化安定性が成形品外観の安定性に大きく影響する。
よって、特に、上述したような長期連続成形を行う際の可塑化時間安定性に優れ、更には成形品外観の安定性に優れたポリアミド樹脂が要求されているのが現状である。
【0004】
このような長期連続成形を行う際の樹脂の可塑化時間安定性の向上の要求に応えるため、可塑化時間短縮を図り、かつ製品質量のばらつきを少なくさせることができる材料として、ペレット形状を規定したポリオレフィン樹脂からなるガラス強化長繊維材料(例えば、特許文献1参照。)、ペレット形状を規定した融点が280℃以上330℃未満であるポリアミド樹脂からなるガラス強化材料(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-129246号公報
【特許文献2】特開2002-249568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1、及び2に開示されている材料は、短時間での成形条件下での成形品の可塑化時間安定性には効果が見られるものの、長期連続成形における成形条件下においては、可塑化時間安定性が不十分であり、成形品の生産性や、成形外観性の安定性に関しては、未だ改良の余地があるという問題を有している。
【0007】
上述したように、従来技術では、長期連続成形における成形条件下においては、可塑化時間安定化に優れ、かつ成形外観安定性に優れた、生産性が安定したポリアミド樹脂は未だ知られていないのが実情である。このようなポリアミド樹脂が市場で要求されている。
【0008】
そこで、本発明においては、上記事情に鑑み、長期連続成形における成形条件下において成形時の可塑化時間安定性に優れ、かつ成形外観安定性に優れた強化ポリアミド樹脂ペレットを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(A)所定の融点を有するポリアミド樹脂と、(B)所定の無機充填材を含有し、所定の長さを有する強化ポリアミド樹脂ペレットであって、当該ペレットの断面の長径と短径の比が所定の数値範囲に特定されている強化ポリアミド樹脂ペレットにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕
(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有する強化ポリアミド樹脂からなり、
前記ポリアミド樹脂と、前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂ペレットであり、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程、
前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程、
ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程、
を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期連続成形時の可塑化時間安定性に優れ、成形品の外観安定性にも優れた強化ポリアミド樹脂ペレットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
〔強化ポリアミド樹脂ペレット〕
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットは、
(A)融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有し、
長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットである。
以下、本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットの構成要素について説明する。
【0014】
((A)ポリアミド樹脂)
前記融点が200?270℃である(A)ポリアミド樹脂(以下、(A)ポリアミド樹脂、ポリアミド、(A)成分と記載する場合がある。)としては、公知のポリアミド樹脂を使用できる。
(A)ポリアミド樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミドMXD6、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド(以下ポリアミド6T)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸を重合してなるポリアミド(以下ポリアミド6I)等のホモポリマーの単独、又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
また、前記ポリアミドを成分とした共重合体単独、又は当該共重合体同士のブレンド物、当該共重合体とホモポリマーとのブレンド物等が挙げられる。
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットに含まれる(A)ポリアミド樹脂としては、モノマー構造単位に芳香環を含む半芳香族ポリアミド樹脂を含むものが成形性の観点から好ましい。
【0015】
前記半芳香族ポリアミド樹脂としては、結晶性ポリアミド又は非晶性ポリアミドを用いることができる。
前記結晶性半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから得られるヘキサメチレンテレフタラミド単位(以下6T成分と記す)、イソフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから得られるヘキサメチレンイソフタラミド単位(以下6I成分と記す)、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるメタキシリレンアジパミド単位(以下MXD6成分と記す)、からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む半芳香族ポリアミド、前記6T成分、6I成分、及びMXD6成分からなる群より選ばれる少なくとも1つと、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンから得られるヘキサメチレンアジパミド単位(以下66成分と記す。)との共重合体であり、各単位の単独重合体及び/又は共重合体とのブレンド等が挙げられる。
また、前記非晶性半芳香族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンとから得られるポリアミド;ビス(4-アミノ-メチルヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸、カプロラクタムから得られるポリアミド;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-メチル-5-エチルシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、イソフタル酸、カプロラクタムから得られる非晶性ポリアミド等が挙げられる。
これらの半芳香族ポリアミド樹脂の内、可塑化時間安定性、及び外観安定性の観点からポリアミド66/6Iが好ましい。
【0016】
前記(A)ポリアミド樹脂の原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、公知のアミノ酸(アミノカルボン酸)、ラクタム、ジアミンとジカルボン酸とからなる塩、及びそのオリゴマー等が挙げられる。
【0017】
<末端封止剤>
前記(A)ポリアミド樹脂の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のためにさらに末端封止剤を添加することができる。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられ、生産安定性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
本発明では、1種類の末端封止剤を用いてもよいし、2種類以上の末端封止剤を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
これらのモノカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
これらのモノアミンは、1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<融点>
前記(A)ポリアミド樹脂の融点は200?270℃であり、好ましくは210?270℃であり、より好ましくは210?265℃である。
融点の測定は、JIS K7121に準じて行うことができ、例えば、PERKIN-ELMER社製、「DSC-7」を用いて測定することができる。
具体的には、サンプル10mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、400℃まで昇温して、得られた融解曲線のピーク温度を融点とする。
融点が200℃以上の場合には、耐薬品性や耐熱性の低下を一層抑制できる傾向があり、270℃以下の場合には連続成形時の可塑化時間、外観性が安定する傾向がある。
【0021】
<分子量>
(A)ポリアミド樹脂の分子量は、安定成形性及び機械物性向上の観点から、98%硫酸相対粘度ηr(1g/100mL)で表した場合、好ましくは1.5?3.5、より好ましくは1.8?3.2である。
【0022】
((B)無機充填材)
前記(B)無機充填材(以下、無機充填材、(B)成分と記載する場合がある。)は、チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
これらの中でも、物性、安全性、及び経済性の観点から、チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、アパタイトが好ましく、チョップドストランドガラス繊維がより好ましい。
【0023】
前記チョップドストランドガラス繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、異型断面タイプ(例えば、まゆ型、長円型)等の任意の形状のチョップドストランドガラス繊維が使用可能である。
【0024】
前記チョップドストランドガラス繊維や前記炭素繊維の中でも、高い特性を発現できる観点から、数平均繊維径が3?30μmであるものが好ましく、重量平均繊維長が100?750μmであるものが好ましく、重量平均繊維長数と平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10?100であるものが好ましい。
特に、数平均繊維径が3?30μm、重量平均繊維長が100?750μm、重量平均繊維長と平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10?100であるものがより好ましい。
【0025】
前記ウォラストナイトは、高い特性を発現できる観点から、数平均繊維径が3?30μmであるものが好ましく、重量平均繊維長が10?500μmであるものが好ましく、前記アスペクト比(L/D)が3?100であるものが好ましい。
特に、数平均繊維径が3?30μm、重量平均繊維長が10?500μm、前記アスペクト比(L/D)が3?100であるものがより好ましい。
【0026】
前記タルク、マイカ、カオリン、窒化珪素、チタン酸カリウムとしては、高い特性を発揮できる観点から、数平均粒径が0.1?3μmであるものが好ましい。
【0027】
上述した(B)無機充填材の数平均繊維径及び重量平均繊維径は、顕微鏡法により測定することができる。例えば、(B)無機充填材としてガラス繊維が含有されている場合、強化ポリアミド樹脂の分解温度以上で加熱し、残ったガラス繊維を、顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維の径を計測する方法により測定することができる。
顕微鏡法によって得られた測定値から、数平均繊維径及び重量平均繊維径を計算する方法としては、下記式(1)及び式(2)が挙げられる。
数平均繊維径=ガラス繊維径の合計/ガラス繊維の数 ・・・(1)
重量平均繊維長=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(2)
【0028】
前記(B)無機充填材は、機械強度向上の観点から、表面処理を施すことが好ましい。
表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、カップリング剤やフィルム形成剤を用いることができる。
【0029】
前記カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
【0030】
前記シラン系カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。
これらの中でも、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン及びエポキシシランが、経済性と取り扱い性に優れるという観点から、好ましい。
【0031】
前記チタン系カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネートイソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0032】
前記フィルム形成剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3ジクロロブタジエン、1,3-ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等の重合体が挙げられる。
これらの中でも、経済性と性能とが優れるという観点から、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が好ましい。
【0033】
上述したカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、無機充填材(B)の表面処理を行う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、カップリング剤及びフィルム形成剤の有機溶媒溶液又は懸濁液を、いわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理;ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いて塗布する乾式混合を行う方法;スプレーにより塗布するスプレー法;インテグラルブレンド法;ドライコンセントレート法等が挙げられる。また、これらの方法を組合せた方法(例えば、カップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等)も挙げられる。これらの中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法、及びこれらを組合せた方法が好ましい。
【0034】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対する前記(B)無機充填材の配合量は、特に限定されないが、好ましくは1?300質量部であり、より好ましくは1?200質量部であり、さらに好ましくは1?180質量部であり、よりさらに好ましくは5?150質量部である。
無機充填材(B)の配合量を上記範囲内にすることにより、機械特性に優れ、かつ押出性及び成形性が良好なものとなる。これらの(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(その他の材料)
<劣化抑制剤>
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、及び耐候性の向上を目的として、後述する劣化抑制剤を添加してもよい。
劣化抑制剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸銅及びヨウ化銅等の銅化合物;ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤;ホスファイト系安定剤;ヒンダードアミン系安定剤;トリアジン系安定剤;及びイオウ系安定剤等が挙げられる。
これらの、劣化抑制剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
<成形性改良剤>
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を配合してもよい。
成形性改良剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0037】
前記高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8?40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、離型性の観点から、ステアリン酸及びモンタン酸が好ましい。
【0038】
前記高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、高級脂肪酸金属塩安定性の観点から、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム等の、第1,2族元素、並びにアルミニウム等がより好ましい。
高級脂肪酸金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、離型性の観点から、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩が好ましい。
【0039】
前記高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
前記高級脂肪酸エステルとしては、離型性の観点から、炭素数8?40の脂肪族カルボン酸と炭素数8?40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0040】
前記高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
前記高級脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリルアミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとしては、離型性の観点から、好ましくは、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN-ステアリルエルカ酸アミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN-ステアリルエルカ酸アミドである。
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0041】
<着色剤>
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。
着色剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料;カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等が挙げられる。
【0042】
<その他の樹脂>
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットには、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の樹脂を配合してもよい。
このようなその他の樹脂としては、特に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
【0043】
前記熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン等の縮合系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0044】
前記ゴム成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプのゴム材料等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0045】
〔強化ポリアミド樹脂ペレット〕
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットは、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である。
ペレットの断面とは、前記ペレットの長さ方向に対して略垂直の面で切断したときの断面である。
ペレットの長さは、好ましくは1?4mmであり、より好ましくは1.5?4mmである。ペレット長さを1mm以上とすることにより、押出機のスクリューへの噛み込み性に優れる強化ポリアミド樹脂ペレットとすることができる。一方、ペレット長さを5mm以下とすることで、連続成形時の可塑化時間安定性、外観安定性に優れる強化ポリアミド樹脂ペレットとすることができる。
次に、ペレット断面の長径と短径の比(長径/短径)は、好ましくは1.3?2.4であり、より好ましくは1.3?2.3である。ペレット断面の長径と短径との長さの比(長径/短径)を1.3?2.5の範囲とすることにより、連続成形時の可塑化時間安定性、外観安定性に優れる強化ポリアミド樹脂ペレットとすることができる。
【0046】
ペレット平均長さは、例えば、強化ポリアミド樹脂ペレットを100個取り出し、各ペレットの長さを計測する方法により測定することができる。ペレット平均長さの計算方法としては、下記式(3)が挙げられる。
ペレット平均長さ=ペレット長さの合計/ペレットの個数 ・・・(3)
ペレット断面の長径と短径との比(長径/短径)は、例えば、強化ポリアミド樹脂ペレットを100個取り出し、各ペレットの断面の最大径と最小径の長さを計測する方法により測定することができる。ペレット断面の長径と短径の比の計算方法としては、下記式(4)が挙げられる。
ペレット断面の長径と短径との比=(ペレットの最大径の合計/ペレット最小径の合計)/ペレットの個数・・・(4)
【0047】
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法としては、前記(A)ポリアミド樹脂と、(B)無機充填材、及び、必要に応じて、上述した劣化抑制剤、成形性改良剤、着色剤、その他の樹脂を、混合する方法であれば、特に限定されるものではない。
例えば、(A)ポリアミド樹脂と(B)無機充填材と、必要に応じてその他の材料とをヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し、混練する方法や、減圧装置を備えた単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド樹脂に、サイドフィダーから(B)無機充填材、必要に応じてその他の材料を配合する方法等が挙げられる。
強化ポリアミド樹脂ペレットを構成する成分を溶融混練機に供給して混合する工程においては、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
【0048】
溶融混練温度は、(A)ポリアミド樹脂の融点に対して50℃以上であることが好ましい。溶融混練時間は、0.25?5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置については特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
【0049】
前記溶融混練機において溶融混練を行った後、ダイノズルからストランドを押出す。
ストランドは、230?350℃の高温状態であり、このままではペレタイザーのカッターローラーで押しつぶされてカッティングできないため、(A)ポリアミド樹脂の融点以下に冷却する。通常この冷却には水が用いられ、ダイノズルから押出されたストランドを水中で冷却する。
水中にて冷却する場合は、通常、水槽を用いてストランドを通過させる。水中でのストランドの水浸漬長さは、吸水抑制の観点から90cm以下が好ましい。より好ましくは80cm以下であり、さらに好ましくは60cm以下である。
次に冷却されたストランドは、ペレタイザーでカッティングされることによりペレットとなるが、ペレタイザーのロール引き取り圧力、カッターの回転速度を調整すること、及び上述の水中でのストランドの水浸漬長さを90cm以下とすることで、本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットを得ることができる。
具体的には、例えば、ペレット長さは、カッターの回転速度を変えることにより変更することができ、カッターの回転数を速くすることでペレット長さを短くすることができ、回転数を遅くすることでペレット長さを長く調節することができる。
また、ペレット断面の長径と短径との比は、ストランドの水浸漬長さを90cm以下とし、ペレタイザーのロール引き取り圧力を強く設定することでペレットの断面の長径と短径の比が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットを得ることができるが、その方法については特に限定されない。
【0050】
〔成形品〕
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットを用い、これを成形することにより、所望の成形品が得られる。
成形方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0051】
〔用途〕
本実施形態の強化ポリアミド樹脂ペレットは、連続成形時の可塑化時間安定性、外観安定性に優れるため、様々な用途に用いることができる。
例えば、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野において、好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
〔材料の構造、物性の測定方法〕
<分子量の測定(25℃での相対粘度ηr)>
ポリアミド樹脂の分子量を、JIS-K6810に準じて実施し、25℃での相対粘度ηrとして測定した。
具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液({ポリアミド樹脂1g/98%硫酸100mL}の割合)を調製し、25℃で測定した。
<ポリアミド樹脂の融点(℃)>
融点は、JIS K7121に準じて、PERKIN-ELMER社製、「DSC-7」を用いて測定した。
測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、Tm1+40℃の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温、2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のピーク温度を融点(Tm2(℃))とした。
【0054】
<可塑化時間安定性の評価>
測定用装置は、日精樹脂(株)製、「FN3000」を用いた。
シリンダー温度を、使用したポリアミド樹脂の融点+30℃に設定し、金型温度を80℃に設定し、射出10秒、冷却20秒の射出成形条件で、1000ショットまで成形し、ISO試験片を得た。
可塑化時間安定性(標準偏差)は、下記式により求めた。
【0055】
【数1】

【0056】
Ai=1000ショットそれぞれの可塑化時間
X1=1000ショットの相加平均
n=ショット数(1000ショット)
上記の標準偏差(σ)が小さいほど、可塑化時間安定性に優れるものと判断した。
【0057】
<外観安定性の評価>
上記成形性安定試験で用いたISO試験片のグロス値を測定し、下記式により求めた。
外観安定性は、堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」を用いてグロス値を測定し、下記方法により求めた。
【0058】
【数2】

【0059】
Bi=1000ショットそれぞれのグロス値
X2=1000ショットの相加平均
n=ショット数(1000ショット)
上記の標準偏差(σ)が小さいほど、外観安定性に優れるものと判断した。
【0060】
<成形機ホッパーブリッジ発生状況>
測定装置は、日精樹脂(株)製、「FN3000」を用いた。
シリンダー温度をポリアミド樹脂の融点+30℃に設定し、金型温度を80℃に設定し、射出10秒、冷却20秒の射出成形条件で、1000ショットまで成形し、ホッパー内のブリッジ発生状況を評価した。
評価指標を下記に示す。
○:ブリッジ発生無し、△:ブリッジ発生有り、×:ブリッジ発生、及び毛玉発生有り
【0061】
<加工性(切粉発生量)>
後述する実施例及び比較例で得られた強化ポリアミド樹脂ペレット1kgを、40メッシュの篩い(目開き:0.425mm)を用いて1分間篩って落下した切粉の量を測定し、下記方法により求めた。
切粉発生量(質量%)=切粉の量(kg)/強化ポリアミド樹脂1kg×100
切粉の量が少ない方が、加工性が良好であると判断した。
【0062】
〔(A)ポリアミド樹脂〕
(材料)
後述する実施例及び比較例における強化ポリアミド樹脂ペレットに含有される、下記<製造例1>?<製造例4>のポリアミド樹脂は、下記化合物を用いて製造した。
(1)アジピン酸 和光純薬工業(株)製 商品名:アジピン酸
(2)イソフタル酸 和光純薬工業(株)製 商品名:イソフタル酸
(3)テレフタル酸 和光純薬工業(株)製 商品名:テレフタル酸
(4)ヘキサメチレンジアミン 和光純薬工業(株)製 商品名:ヘキサメチレンジアミン
(5)ε-カプロラクタム 和光純薬工業(株)製 商品名:ε-カプロラクタム
ポリアミド樹脂を製造し、上記記載の方法により測定及び評価を行った。
【0063】
<製造例1:ポリアミド樹脂(A1)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を、蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、内部温度が260℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミド樹脂(A1)を得た。得られたポリアミド樹脂(A1)の25℃での相対粘度ηrは2.8であった。
【0064】
<製造例2:ポリアミド樹脂(A2)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を、蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、内部温度が260℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミド樹脂(A2)を得た。得られたポリアミド樹脂(A2)の25℃での相対粘度ηrは2.5であった。
【0065】
<製造例3:ポリアミド樹脂(A3)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1109g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、εカプロラクタム5g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を、蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、内部温度が260℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミド樹脂(A3)を得た。得られたポリアミド樹脂(A3)の25℃での相対粘度ηrは2.4であった。
【0066】
<製造例4:ポリアミド樹脂(A4)の製造>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩675g、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩825g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を、蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110?150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。
その後、内部温度を220℃に昇温した。
このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。
そのまま1時間、内部温度が300℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。
このとき、重合の最終内部温度は330℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミド樹脂(A4)を得た。得られたポリアミド樹脂(A4)の25℃での相対粘度ηrは2.5であった。
【0067】
〔(B)無機充填材〕
後述する実施例及び比較例における強化ポリアミド樹脂ペレットに含有される、無機充填材としては、下記材料を用いた。
(B1)ガラス繊維 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H
平均繊維径(平均粒径)10μm(真円状)、カット長3mm
(B2)ウォラストナイト NYCO製 商品名 NYAD400
平均繊維径(平均粒径)7.0μm 平均繊維長35μm
(B3)ウォラストナイト NYCO製 商品名 NYAD5000
平均繊維径(平均粒径)2.2μm 平均繊維長7.2μm
(B4)タルク 富士タルク工業(株)製 商品名 PKP-80
平均粒径14μm
(B5)マイカ 山口雲母工業所(株)製 商品名 A-21
平均粒径22μm
(B6)カオリン 林化成(株)製 商品名 TRANSLINK445 平均粒径1.5μm
(B7)ガラス繊維ロービング 重慶国際複合材料有限公司製 商品名:ER4301H 平均繊維径(平均粒径)17μm、ロービングTEX数:1200TEX、比重2.54
【0068】
〔強化ポリアミド樹脂ペレット〕
<実施例1、2>
上述した製造例1のポリアミド樹脂(A1)100質量部を、コペリオン製、ZSK40mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド樹脂(A1)の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給した。
さらに、サイドフィード口より、無機充填材(B1)を下記表1に示す質量部に従って供給した。
ダイス出口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズし強化ポリアミド樹脂ペレットを得た。
ペレットの断面の長径と短径との比は、ダイス出口から押出された溶融混練物をストランド状で冷却する際に水浸漬長さを60cm以下とし、ストランドを引き取る時のペレタイザーの引き取りロール圧を変更することにより調節した。
ペレット長さは、ペレタイザーのロール引き取り速度と、カッターの回転速度をすることにより調整した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0069】
<実施例3?13>
製造例1のポリアミド樹脂(A1)に代えて、上述した製造例2のポリアミド樹脂(A2)を用いた。さらには、ポリアミド樹脂100質量部に対して供給する(B)無機充填材を、下記表1に示す種類及び質量部に変更した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0070】
<実施例14>
製造例2のポリアミド樹脂(A2)100質量部を、東芝機械社製、コペリオン製、ZSK40mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド樹脂(A2)の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給した。
さらに、サイドフィード口を2箇所設け、押出機上流側(トップフィード口より供給された樹脂が十分溶融している状態)のサイドフィード口1より、無機充填材(B1)を、下記表1に示す質量部に従って供給した。
押出機下流側(トップフィード口より供給された樹脂が十分溶融している状態)のサイドフィード口2より、前記無機充填材(B2)を、下記表1に示す質量部に従って供給した。
ペレットの断面の長径と短径の比は、ダイス出口から押出された溶融混練物をストランド状で冷却する際に水浸漬長さを60cm以下とし、ストランドを引き取る時のペレタイザーの引き取りロール圧を変更することにより調節した。
ペレット長さは、ペレタイザーのロール引き取り速度と、カッターの回転速度をすることにより調整した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0071】
<実施例15>
製造例1のポリアミド樹脂(A1)に代えて、上述した製造例3のポリアミド樹脂(A3)を用いた。さらには、ポリアミド樹脂100質量部に対して供給する(B)無機充填材の種類及び供給量を、下記表1に示す種類及び質量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0072】
<比較例1?4> 上述した製造例1のポリアミド樹脂(A1)100質量部を、コペリオン製、ZSK40mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド樹脂(A1)の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給した。
さらに、サイドフィード口より、無機充填材(B1)を下記表1に示す質量部に従って供給した。
ダイス出口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズし強化ポリアミド樹脂ペレットを得た。
ペレットの断面の長径と短径の比は、ダイス出口から押出された溶融混練物をストランド状で冷却する際に水浸漬長さを100cm以上とし、ストランドを引き取る時のペレタイザーの引き取りロール圧を変更することにより調節した。
ペレット長さは、ペレタイザーのロール引き取り速度と、カッターの回転速度をすることにより調整した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0073】
<比較例5、6>
2軸押出機(製品名「ZSK25」、Coperion社製)を用い、トップフィード口よりポリアミド樹脂(A1)を供給した。
シリンダー設定温度をポリアミド樹脂(A1)の融点Tm+50℃である310℃、スクリュー回転数を300rpmにそれぞれ設定して、押出機内で溶融混練した。
次いで、溶融混練されたポリアミド樹脂を、長繊維強化樹脂製造装置(製品名「KOSLFP-212」、(株)神戸製鋼所製)の樹脂含浸用ローラを備えた含浸ダイ(容積:375cc)に供給した。
一方、3本のガラス繊維ロービング(B7)の束(1200×3=3600TEX)を、ロービング台から、ポリアミド樹脂の溶融混練物が充填された含浸ダイクロスヘッドに導入した。
含浸ダイ内でポリアミド樹脂の溶融混練物を含浸したガラス繊維ロービング束を、含浸ダイのノズル(ノズル直径:2.4mm)から連続的に引き抜いて、1本のストランドを得た。
続いて、そのストランドを水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーで切断して、表1に示す組成となる樹脂ペレットを得た。
なお、ストランドの引き取り速度はポリアミド樹脂の溶融混練物の含浸状態が十分である範囲で熱滞留時間を少なくするために、最速の条件とした。その速度は30m/分であった。
樹脂ペレットの断面の長径と短径との比は、含侵ダイのノズル形状、及び含侵ダイのノズル出口から連続的に引き抜いた1本のストランドを冷却する際に水浸漬長さを100cm以上とし、ストランドを引き取る時のペレタイザーの引き取りロール圧を変更することにより調節した。樹脂ペレット長さは、ペレタイザーのロール引き取り速度と、カッターの回転速度をすることにより調整した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0074】
<比較例7?10>
製造例1のポリアミド樹脂(A1)に代えて、上述した製造例2のポリアミド樹脂(A2)を用いた以外は、比較例1と同様に実施した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0075】
<比較例11、12>
製造例1のポリアミド樹脂(A1)に代えて、上述した製造例2のポリアミド樹脂(A2)を用いた以外は、比較例5と同様に実施した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0076】
<比較例13>
上述した製造例4のポリアミド樹脂(A4)100質量部を、コペリオン製、ZSK40mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にトップフィード口より供給した。
さらに、サイドフィード口より、無機充填材(B1)を供給した。
ダイス出口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズし強化ポリアミド樹脂ペレットを得た。
ペレットの断面の長径と短径の比は、ダイス出口から押出された溶融混練物をストランド状で冷却する際に水浸漬長さを60cm以下とし、ストランドを引き取る時のペレタイザーの引き取りロール圧を変更することにより調節した。
ペレット長さは、ペレタイザーのロール引き取り速度と、カッターの回転速度をすることにより調整した。
上記記載の方法により、上述した可塑化時間安定性、外観安定性、及びホッパーブリッジ発生状況の評価を行った。併せて切粉発生量を測定した。
評価結果を下記表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
前記表1に示すように、実施例1?15の強化ポリアミド樹脂ペレットは、長期連続成形時にいずれも極めて優れた可塑化時間安定性、外観安定性を有することが確認された。さらに切粉発生量が少ないことを確認した。
一方、ペレット断面の長径/短径の比(長径/短径)、ペレット長さ、(B)無機充填材、(A)ポリアミド樹脂の融点の少なくともいずれかにおいて、本発明の要件を満たさない比較例1?13の強化ポリアミド樹脂ペレットは、長期連続成形時の可塑化時間安定性、外観安定性が大きく低下したことが確認された。
【0079】
本出願は、2011年5月27日に日本国特許庁へ出願された、特願2011-118723に基づくものであり、その内容は、ここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の強化ポリアミド樹脂ペレットは、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等において、産業上の利用可能性がある。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)半芳香族ポリアミドを含み、融点が200?270℃であるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有する強化ポリアミド樹脂からなり、
前記ポリアミド樹脂と、前記無機充填材とを、溶融混練することにより製造された強化ポリアミド樹脂ペレットであり、長さが1?5mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3?2.5である強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法であって、
溶融混練機において溶融混練を行った後、前記強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出し、230?350℃のストランドとする工程、
前記ストランドを水中で、水浸漬長さを90cm以下として冷却する工程、
ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整して、冷却した前記ストランドをペレタイザーで切断してペレットとする工程、
を有する、強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-26 
出願番号 特願2013-517999(P2013-517999)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 西山 義之
原田 隆興
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5853021号(P5853021)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 強化ポリアミド樹脂ペレット  
代理人 大貫 敏史  
代理人 斉藤 直彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 秋山 祐子  
代理人 斉藤 直彦  
代理人 秋山 祐子  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 稲葉 良幸  

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