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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F16H
審判 全部無効 出願日、優先日、請求日  F16H
審判 全部無効 判示事項別分類コード:857  F16H
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F16H
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F16H
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F16H
管理番号 1334594
審判番号 無効2012-800135  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-29 
確定日 2017-10-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4897747号「揺動型遊星歯車装置」の特許無効審判事件についてされた平成25年10月30日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10330号平成27年 3月11日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第4897747号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第4897747号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4897747号に係る出願(以下「本件出願」という。)は、平成15年3月28日に出願した特願2003-90065号の一部を平成20年7月11日に新たな特許出願としたものであって、平成24年1月6日にその発明について特許権の設定登録(請求項の数2)がなされたものである。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
1.平成24年 8月29日 本件無効審判の請求
2.平成24年 9月27日 手続補正書(請求人)
3.平成24年11月30日 審判事件答弁書
4.平成24年11月30日 訂正請求書
5.平成25年 1月31日 審判事件弁駁書
6.平成25年 3月 7日 審理事項通知書
(発送日:同年3月11日)
7.平成25年 2月27日 無効理由通知書、職権審理結果通知
(発送日:同年3月14日)
8.平成25年 4月15日 意見書(被請求人)
9.平成25年 4月23日 口頭審理陳述要領書(請求人)
10.平成25年 4月23日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
11.平成25年 5月14日 口頭審理
12.平成25年 5月28日 審決の予告(発送日:同年5月31日)
13.平成25年 8月 1日 訂正請求書
14.平成25年 8月 1日 上申書(被請求人)
15.平成25年 9月13日 審判事件弁駁書(2)
16.平成25年10月30日 審決(発送日:同年11月7日)
17.平成27年 3月11日 知的財産高等裁判所において審決取消しの
判決、平成25年(行ケ)第10330号
18.平成27年 3月27日 訂正請求申立書
19.平成27年 4月22日 訂正請求書、上申書(被請求人)
20.平成27年 6月 8日 弁駁書、上申書(請求人)
21.平成27年 7月22日 無効理由通知書、職権審理結果通知
(発送日:同年7月24日)
22.平成27年 8月21日 意見書(被請求人)
23.平成27年 8月24日 意見書(請求人)
24.平成27年10月15日 審決の予告(発送日:同年10月19日)
25.平成27年12月18日 上申書、証拠説明書(被請求人)

第2 請求人主張
請求人は、審判請求書において、「特許第4897747号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書、平成24年9月27日付け手続補正書、平成25年1月31日付け審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理、平成25年9月13日付け審判事件弁駁書(2)、平成27年6月8日付け審判事件弁駁書、及び平成27年8月24日付け意見書を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。

1 無効理由1(特許法第17条の2第3項違反(新規事項の追加))
平成21年9月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」を「揺動型遊星歯車装置」と補正する内容を含み、発明の対象を「外歯揺動型遊星歯車装置」を含む上位概念の「揺動型遊星歯車装置」に拡大するものである。
「揺動型遊星歯車装置」に関し、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)には「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」に関する記載があるのみで、「外歯揺動型遊星歯車装置」に関する記載はなく、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、当初明細書等に記載されていない発明を含むものとなっているから、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲を超える不適法なものである。請求項1を引用する請求項2についても同様である。

2 無効理由2(特許法第29条第2項(容易想到性))
(1) 本件特許発明1は、甲第5号証に記載されている発明、甲第5号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明1の「伝動外歯歯車は、前記出力軸に軸受を介して支持され」る構成に関し、「甲第5号証の段落【0013】には、偏心差動方式減速機において減速された回転を出力する出力軸として環状部材18が記載され、同号証の段落【0016】にはリングギヤ48(伝動外歯歯車に相当)が、保持部材14にベアリング46を介して配設されることが記載されているので、甲第5号証には、『環状部材18を出力軸とし、リングギヤ48を保持部材14にベアリングを介して支持される』構成が記載されている。さらに、甲第5号証(段落【0025】)には、環状部材18を固定し、保持部材14を出力軸とすることが可能であることが明記されているので、保持部材14が固定され、環状部材18が出力軸とする構成から、環状部材18が固定され、保持部材14を出力軸とする構成に入れ替えた場合には、リングギヤ48が出力軸である保持部材14に軸受を介して支持されることになるから、『リングギヤ48が出力軸である保持部材14に軸受を介して支持される』構成が既に記載されている。」旨主張している。(平成25年9月13日付け審判事件弁駁書(2)の7ページ8行?8ページ12行)

(2) 本件特許発明2は、甲第5号証に記載されている発明に、甲第5号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明2の「伝動外歯歯車の径方向において、前記モータ軸は前記中間軸よりも外側に配置されている」構成に関し、「モータから減速機に回転を伝達する駆動機構において、回転中心軸と異なる位置に平行に配置される中間軸を介在させることは周知の技術である。また、甲第5号証には、サーボモータの出力軸を、径方向において中心から外側にオフセットして配置する技術思想が記載されているのであるから、中間軸を介在させる場合にも、サーボモータの出力軸は中間軸よりも径方向に外側に配置する構成がごく自然に選択される。」旨主張している。(平成25年9月13日付け審判事件弁駁書(2)の10ページ3行?18行)

3 無効理由3(特許法第29条第2項(容易想到性))
(1) 本件特許発明1は、甲第6号証に記載されている発明、甲第6号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、または、甲第7号証に記載されている発明、甲第7号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明1の「伝動外歯歯車は、前記出力軸に軸受を介して支持され」る構成に関し、「甲第6号証または甲第7号証には、内接噛合遊星歯車装置の発明について、『内接噛合遊星歯車装置について減速された回転を出力する出力軸20と、』という構成が記載されているところ、この内接噛合遊星歯車装置においてリング状のアイドル歯車を設ける際に、いかなる部材に軸受を介して支持するかは、設計者が適宜設計する単なる設計事項なので、甲第6号証または甲第7号証に接した当業者が、甲第6号証または甲第7号証に記載されている内接噛合遊星歯車装置の発明において、『リング状のアイドル歯車は、出力軸に軸受を介して支持され』る構成を採用することは当業者の設計的事項として容易に想到しうることである。」旨主張している。(平成25年9月13日付け審判事件弁駁書(2)の11ページ19行?13ページ6行)

(2) 本件特許発明2は、甲第6号証に記載されている発明、甲第6号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、または、甲第7号証に記載されている発明、甲第7号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明2の「伝動外歯歯車の径方向において、前記モータ軸は前記中間軸よりも外側に配置されている」構成に関し、「モータから減速機に回転を伝達する駆動機構において、回転中心軸と異なる位置に平行に配置される中間軸を介在させることは周知の技術である。また、甲第6号証または甲第7号証には、そもそも、モータにつながる、駆動源側のピニオンが組み込まれた軸を、径方向において中心から外側にオフセットして配置する技術思想が記載されているのであるから、中間軸を介在させる場合にも、駆動源側のピニオンが組み込まれた軸は中間軸よりも径方向に外側に配置する構成がごく自然に選択される。」旨主張している。(平成25年9月13日付け審判事件弁駁書(2)の14ページ3行?19行)

4 平成27年4月22日付け訂正請求について
上記訂正は、明細書の記載事項の範囲外においてするものであり、訂正要件に反し認められない旨主張している。(平成27年6月8日付け弁駁書10ページ23行?18ページ17行)

5 請求人の証拠方法
[証拠方法]
甲第1号証:特開平4-41106号公報
甲第2号証:実願平1-127466(実開平3-65039号)のマイク
ロフィルム
甲第3号証:実公平8-3733号公報
甲第4号証:特開2000-280125号公報
甲第5号証:実願平4-50852号(実開平6-6786号)のCD-R
OM
甲第6号証:特開2000-65159号公報
甲第7号証:特開2000-65158号公報
甲第8号証:本件出願の平成21年9月24日付け手続補正書
甲第9号証:本件出願の平成21年9月24日付け上申書
甲第10号証:特願2003-90065号の平成20年7月11日付け意
見書
甲第11号証:米国特許出願10/809713の意見書
甲第12号証:本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面
甲第13号証の1:小学館「大辞泉」編集部編,「大辞泉 第1版増補・新
装版」,株式会社小学館,1998年11月20日発行
甲第13号証の2:松村明編,「大辞林 第2版新装版」,株式会社三省堂
,1999年10月1日発行
甲第14号証:武田定彦著,「基礎シリーズ16 歯車機構の基礎」,株式
会社パワー社,1995年5月25日発行
甲第15号証:日本機械学会著,「機械工学便覧 A.基礎編 B.応用編
,新版,社団法人日本機械学会,1987年4月15日発行
甲第16号証:特開平8-52776号公報
甲第17号証:特開平2-48193号公報
甲第18号証:特開2002-364717号公報
甲第19号証:特許第2607937号公報
甲第20号証:特開2000-65158号公報
甲第21号証:新・注解特許法【別冊】 平成23年改正特許法解説
158?164頁「164条の2の解説箇所」

第3 当審が通知した無効理由の概要
1 平成25年2月27日付け無効理由通知書における無効理由
(1) 理由A
本件特許発明2は、甲第5号証に記載されている発明、甲第1号証に記載されている発明、慣用技術、甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2) 理由B
本件特許発明2は、甲第6号証に記載されている発明、甲第1号証に記載されている発明、慣用技術、甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

2 平成27年7月22日付け無効理由通知書における無効理由
(1) 分割出願の要件の充足性について
訂正発明1は、原出願に包含されていないから、本件特許に係る出願は分割の要件を満たさないものである。

(2) 特許法第29条第1項第3号違反について
本件出願は分割の要件を満たさないから、その出願日の原出願の出願日までの遡及は認められず、本件出願の願書を提出した平成20年7月11日がその出願日とされる。
訂正発明1及び訂正発明2は、いずれも引用文献(特開2004-293743号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明である。

第4 被請求人主張
被請求人は、審判事件答弁書において「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、平成25年4月15日付け意見書、口頭審理陳述要領書、口頭審理、平成25年8月1日付け上申書、平成27年4月22日付け上申書、平成27年8月21日付け意見書、及び平成27年12月18日付け上申書を総合すると、概略次のとおり主張している。

1 請求人の主張する無効理由1について
当初明細書等には、「遊星歯車装置」が記載されているといえるから、新規事項の追加に該当しない。
「使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる」(本件当初明細書【0015】及び原出願当初明細書【0015】)とは、内歯揺動型特有の課題ではなく、外歯揺動型にもあり得る課題である。(甲第2号証ないし甲第5号証、及び乙第3号証参照。)内歯揺動型遊星歯車装置と外歯揺動型遊星歯車装置とに共通する技術の存在を示す先行技術文献として、例えば、乙第4号証ないし乙第6号証が存在する。
本件特許発明は、入力軸の回転を複数の偏心体軸に振り分けて伝達することにより全偏心体軸を同位相で回転させる構造に着目したもので、偏心体を介して揺動回転する歯車が内歯であるか外歯であるかに依存しないことは明らかである。

2 請求人の主張する無効理由2について
(1) 本件特許発明1は、甲第5号証に記載されている発明、周知技術、及び甲第13号証ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明1の「伝動外歯歯車は、前記出力軸に軸受を介して支持され」の構成に関し、「甲第5号証に記載されている発明において、リングギヤ(48)を内歯歯車から外歯歯車に変更し、さらに、当該リングギヤ(48)を保持部材(14a)にベアリング(46)を介して支持する構成を、リングギヤを出力軸である環状部材(18)にベアリングを介して支持する構成とすることは、装置の基本構成を根本的に変更するものであり、到底、当業者が容易に想到しうるものではない。」旨と主張している。(平成25年8月1日付け上申書の9ページ1行?5行)

(2) 本件特許発明2は、甲第5号証に記載されている発明、周知技術、及び甲第13号証ないし甲第18号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明2の「伝動外歯歯車の径方向において、前記モータ軸は前記中間軸よりも外側に配置されている」構成に関し、「甲第5号証に記載されている発明は、本件特許発明2の『中間軸』に対応するものはなく、サーボモータの出力軸と中間軸との位置関係は全く記載されていない。」旨主張している。(平成25年8月1日付け上申書の11ページ22行?25行)

3 請求人の主張する無効理由3について
(1) 本件特許発明1は、甲第6号証に記載されている発明、甲第6号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、または、甲第7号証に記載されている発明、甲第7号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明1の「伝動外歯歯車は、前記出力軸に軸受を介して支持され」の構成に関し、「甲第6号証及び甲第7号証には、リング状のアイドルの歯車をどのように支持するかについては、全く記載されていない。また、甲第6号証の【図10】及び甲第7号証の【図19】の構造において、出力軸20にリング状のアイドル歯車を軸受支持するスペースはないために、当業者が当該構成に導くのは容易でない。」旨主張している。(平成25年8月1日付け上申書の14ページ27行?31行)

(2) 本件特許発明2は、甲第6号証に記載されている発明、甲第6号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、または、甲第7号証に記載されている発明、甲第7号証に記載されている事項、周知技術、及び甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明2の「伝動外歯歯車の径方向において、前記モータ軸は前記中間軸よりも外側に配置されている」構成に関し、「甲第6号証に記載されている発明及び甲第7号証に記載されている発明は、本件特許発明2の『中間軸』に対応するものはなく、サーボモータの出力軸と中間軸との位置関係は全く記載されていない。」旨主張している。(平成25年8月1日付け上申書の17ページ1行?4行)

4 当審が通知した無効理由について
(1) 平成25年2月27日付け無効理由通知書における無効理由
(1-1) 理由A
本件特許発明2は、甲第5号証に記載されている発明、甲第1号証に記載されている発明、慣用技術、甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ア 本件特許発明2(本件特許発明1の発明特定事項)の「伝動外歯歯車」に関して、「甲第5号証のリングギヤ48を内歯歯車から外歯歯車に変更する場合に、スパーギヤ38と第1駆動シャフト60との間にスペースがないため、リングギヤ48を内歯歯車から外歯歯車に変更することには技術的に困難性があるので、装置の設計内容や具体的構造に応じて適宜に選択される設計的事項ではない。」旨主張している。(平成25年4月15日付け意見書の3ページ6行?4ページ2行)

イ 本件特許発明2(本件特許発明1の発明特定事項)の「駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車および複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」構成に関して、「中間軸にとして甲第1号証に記載されている発明のスプライン・クラッチシャフト54を適用しても、インプットギヤ52、リングギヤ48および複数のスパーギヤ38が同一平面上で噛み合う構成とならない。また、リングギヤ48を内歯歯車から外歯歯車に変更し、インプットギヤ52、リングギヤ48および複数のがスパーギヤ38が同一平面上で噛み合う構成とすると、周りの部材との干渉、または装置の径方向の寸法が増大する問題が生じる。」旨主張している。(同意見書の4ページ18行?5ページ9行)

ウ 「『伝動外歯歯車』の構成と『中間軸』の構成と、『駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および複数の偏心体軸歯車が、同一平面状で噛み合う』構成とは、相互に密接に関係しており、一体として把握すべきものであるものを、断片的な構成に細分化して判断を行うために整合性に欠ける結果となっている。」旨主張している。(同意見書の6ページ8行?12行)

(1-2) 理由B
本件特許発明2は、甲第6号証に記載されている発明、甲第1号証に記載されている発明、慣用技術、甲第13号証の1ないし甲第18号証に記載されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ア 本件特許発明2(本件特許発明1の発明特定事項)の「中心部がホロー構造とされ」る構成に関して、「甲第6号証の段落【0012】、【図10】及び【図11】から把握される発明は、『中心部がホロー構造』ではないことが明らかである。」旨主張している。(平成25年4月15日付け意見書の7ページ31行?8ページ15行)

イ 本件特許発明2(本件特許発明1の発明特定事項)の「駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車および複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」る構成に関して、「『中間軸』として、甲第1号証に記載されている発明の『スプライン・クラッチシャフト54』を採用するのであれば、甲第6号証の段落【0012】に記載されているリング状のアイドル歯車として、同じく甲第1号証に記載されている発明のリング状のアイドル歯車に相当するインプットギヤ11の適用を検討するものであり、この場合には『ピニオン6、リング状のアイドル歯車および複数の伝動歯車7が、同一平面状で噛み合う』構成とはならない。」旨主張している。(同意見書の8ページ末行?11ページ9行)

(2) 平成27年7月22日付け無効理由通知書における無効理由
訂正発明1は、原出願に包含される発明であり、分割要件を満たすものであるから、本件出願の出願日は、原出願の出願日に遡及し、訂正発明は、特開2004-293743号公報(公開日:平成16年10月21日)に記載された発明には該当せず、特許法第29条第1項第3号の規定は、適用されない。

ア 「『外歯揺動型遊星歯車装置』の基本構成や、『入力軸や駆動源についてはホロー構造とせずに、出力軸と一体的に回転する筒状の部材を設けて中心部をホロー構造とする』ことは、例えば、乙第7号証、乙第10号証 ・・・ に記載されているように、原出願の出願時における揺動型遊星歯車装置の技術分野において、技術常識中の技術常識 ・・・ 駆動源側のピニオンから偏心体軸に至るまでの動力伝達系を外歯揺動歯車に適用した構成も、乙第8号証に示すとおり、原出願の当初明細書等の記載及び技術常識から、当業者にとって自明なこと」である旨主張している。(平成27年8月21日付け意見書の5ページ9行?36行)

イ 「揺動歯車が『内歯』である場合と、『外歯』である場合に共通する、訂正発明1は原出願の当初明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また訂正発明1が外歯揺動型遊星歯車装置に適用できることは当業者にとって自明なことですから、訂正発明1は原出願の当初明細書に記載された発明です。」旨主張している。(同意見書の6ページ2行?5行)

ウ 「『内歯揺動型』と『外歯揺動型』に共通する技術の存在を考慮すべきである」旨主張している。(同意見書の12ページ末行?13ページ6行)

(3) 平成27年10月15日付け審決の予告について
ア 「どのようにして揺動型遊星歯車を『中心部がホロー構造』(訂正発明1)とするか」、「どのようにして、これらを『入力軸や駆動源についてホロー構造とする必要がない』ように達成できるか」、「どのようにして駆動源側のピニオンおよび中間軸を設けるか」、「どのようにして中間軸を回転駆動するか」は、いずれも、外歯揺動型遊星歯車装置において、自明な事項である。(平成27年12月18日付け上申書の7ページ25行?11ページ27行)

イ 訂正発明1を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適用しうることは、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。(同意見書の11ページ28行?12ページ13行)

ウ 訂正発明1は、2型の内歯揺動型と2型の外歯揺動型とに共通する技術である。(同意見書の12ページ14行?13ページ3行)

5 被請求人の証拠方法
[証拠方法]
乙第1号証:特開2008-249149号公報
乙第2号証:特開2004-293743号公報
乙第3号証:特開2002-317857号公報
乙第4号証:特公平5-86506号公報
乙第5号証:特許第2707473号公報
乙第6号証:特許第2739071号公報
乙第7号証:特許第3659707号公報
乙第8号証:原出願の出願当初明細書・図面に記載された従来技術と訂正発
明1の各模式図
乙第9号証:本件特許の出願当初明細書・図面に記載された従来技術と本件
特許発明の各模式図
乙第10号証:特開2002-106650号公報
乙第11号証:特開2001-353684号公報
乙第12号証:精密制御用高剛性減速機 RV SERIES技術資料集
乙第13号証:特開平7-124883号公報
乙第14号証:平成25年(行ケ)第10330号審決取消請求事件におけ
る平成26年10月6日付け被告準備書面(3)

第5 訂正請求について

1 平成27年4月22日付けの訂正請求の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、下記訂正事項1?3のとおり訂正することを求めるものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
ケーシングと、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う
ことを特徴とする揺動型遊星歯車装置。」
に訂正する。(下線部は訂正箇所。以下同様。)

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、
「【請求項2】
中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して内歯揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
前記内歯揺動歯車と噛合い、前記出力軸としての機能を兼用する外歯歯車と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合い、
前記中間軸は、当該揺動型遊星歯車装置と連結されるモータのモータ軸と一体的に回転するピニオンと噛合うギヤが組み込まれている
ことを特徴とする揺動型遊星歯車装置。」
に訂正する。

(3) 訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0016】を、
「本発明は、中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、ケーシングと、前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、を備え、前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合うように構成することにより、上記課題を解決したものである。」
に訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「揺動型遊星歯車装置」の中心部の構成について、「中心部がホロー構造とされ」ているとの限定を付し、
「揺動型遊星歯車装置」について、「ケーシング」及び「前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸」を備えているとの限定を付し、伝動外歯歯車について、「前記出力軸に軸受を介して支持され」ているとの限定を付し、
「駆動源側のピニオン」、「伝動外歯歯車」および「複数の偏心体軸歯車」について、「前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」との限定を付すものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、上記の訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を、従属形式から独立形式へ変更するとともに、
請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「揺動型遊星歯車装置」の中心部の構成について、「中心部がホロー構造とされ」ているとの限定を付し、
「揺動型遊星歯車装置」について、「当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸」及び「前記内歯揺動歯車と噛合い、前記出力軸としての機能を兼用する外歯歯車と、」を備えているとの限定を付し、伝動外歯歯車について、「前記出力軸に軸受を介して支持され」ているとの限定を付し、
「駆動源側のピニオン」、「伝動外歯歯車」および「複数の偏心体軸歯車」について、「前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合い、」との限定を付すものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、上記の訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

そして、上記の訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するので、適法な訂正であるからこれを認める。

第6 訂正発明
上記のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?2に係る発明は、前記「第5」において記載した特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものである。(以下「訂正発明1」?「訂正発明2」という。)

第7 当審の判断
当審が通知した平成27年7月22日付け無効理由通知書における無効理由について検討する。

1 分割出願の要件の充足性について
訂正発明1及び訂正発明2が、分割のもととなる特願2003-90065号(以下「原出願」という。)に包含されているといえるためには、原出願の出願当初の明細書及び図面(以下「原出願の当初明細書等」という。特開2004-293743号公報を参照。)に記載された事項の範囲内のものといえるか否か、すなわち、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるか否かを検討する必要がある。

(1) 原出願の当初明細書等に記載された事項について
原出願の当初明細書等には、以下の記載がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯歯車と該外歯歯車と僅少の歯数差を有する内歯歯車とを有すると共に、前記内歯歯車を揺動回転させるための偏心体軸を備え、該偏心体軸に配置された偏心体を介して外歯歯車の周りで内歯歯車を揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、
前記偏心体軸を、前記外歯歯車の軸心と平行に複数備えると共に、
該複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、を備え、
該伝動外歯歯車を介して前記駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達される
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記伝動外歯歯車がリング状に形成され、且つ、前記外歯歯車または出力軸のいずれかの外周によって回転支持されている
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記外歯歯車の外歯が円弧状の溝に回転自在に嵌合された外ピンによって形成されており、この外ピンが、前記伝動外歯歯車の軸受のころを兼用する構成とされた
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかにおいて、
前記内歯揺動体が軸方向に2枚以上組み込まれており、このうちの何れか2枚の内歯揺動体の間に前記伝動外歯歯車が配置されている
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかにおいて、
前記複数の偏心体軸が、円周方向において等間隔に配置されている
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかにおいて、更に、
前記出力軸と平行で且つ前記内歯揺動体の半径方向外側位置に、前記駆動源側のピニオンが組み込まれた中間軸を備え、該中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを介して前記伝動外歯歯車を駆動する
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかにおいて、
入力軸に組み込まれたピニオンが、前記駆動源側のピニオンとして前記伝動外歯歯車に直接噛合している
ことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内接噛合遊星歯車装置は、大トルクの伝達が可能であり且つ大減速比が得られるという利点があるので、種々の減速機分野で数多く使用されている。
【0003】
その中で、外歯歯車の周りで該外歯歯車と僅少の歯数差を有する内歯揺動体を揺動回転させることにより、入力軸の回転を減速して出力部材から取り出す内歯揺動型の内接噛合遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4、図5を用いて同歯車装置の一例を説明する。
【0005】
図において、1はケーシングであり、互いにボルトやピン等の締結部材(図示略)を締結孔2に挿入することにより結合される第1支持ブロック1Aと第2支持ブロック1Bとを有する。5は入力軸で、入力軸5の端部にはピニオン6が設けられ、ピニオン6は、入力軸5の周りに等角度に配設された複数の偏心体軸歯車(偏心体軸駆動用の歯車)7と噛合している。
【0006】
ケーシング1には、3本の偏心体軸10が、円周方向に等角度間隔(120度間隔)で設けられている。この偏心体軸10は、軸方向両端を軸受8、9によって回転自在に支持され且つ軸方向中間部に偏心体10A、10Bを有する。前記伝動歯車7は各偏心体軸10の端部に結合されており、入力軸5の回転を受けて該伝動歯車7が回転することにより、各偏心体軸10が回転するようになっている。
【0007】
各偏心体軸10は、ケーシング1内に収容された2枚の内歯揺動体12A、12Bの偏心体孔11A、11Bをそれぞれ貫通しており、各偏心体軸10の軸方向に隣接した2段の偏心体10A、10Bの外周と、内歯揺動体12A、12Bの貫通孔の内周との間にはころ14A、14Bが設けられている。
【0008】
一方、ケーシング1内の中心部には、出力軸20の端部に一体化された外歯歯車21が配されており、外歯歯車21の外歯23に、内歯揺動体12A、12Bのピンからなる内歯13が噛合している。外歯歯車21の外歯23と内歯揺動体12A、12Bの内歯13の歯数差は僅少(例えば1?4程度)に設定されている。
【0009】
この歯車装置は次のように動作する。
【0010】
入力軸5の回転は、ピニオン6を介して偏心体軸歯車7に与えられ、偏心体軸歯車7によって偏心体軸10が回転させられる。偏心体軸10の回転により偏心体10A、10Bが回転すると、該偏心体10A、10Bの回転によって内歯揺動体12A、12Bが揺動回転する。内歯揺動体12A、12Bはその自転が拘束されているため、該内歯揺動体12A、12Bの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体12A、12Bと噛合する外歯歯車21はその歯数差だけ位相がずれ、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車21の(減速)回転となり、出力軸20から減速出力が取り出される。
【0011】
ところで、この種の内歯揺動型の内接噛合遊星歯車装置は、内歯揺動体を揺動させるための偏心体軸は必ずしも円周方向において等間隔に配置する必要はなく、また偏心体軸の全てが駆動される必要ななく、一部は従動回転するものであっても良い。例えば、図5に示されるように、非駆動の偏心体軸50Aを含むと共に、各偏心体軸50A?50Cを円周方向において非等間隔に配置した構造や、図6に示されるように、わずか2本の偏心体軸60A、60Bのみで内歯揺動体62を揺動駆動するようにした構造が、例えば特許文献2等において開示されている。」

ウ 「【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された歯車装置では、円周方向に等間隔で配置した3つの偏心体軸歯車7を1つの入力軸5(のピニオン6)で回転させる関係上、入力軸が出力軸と同軸に配置されていることから、歯車装置全体を貫通するホローシャフトを有するように設計するのが困難であるという問題があった。例えば産業用ロボットの関節駆動用の歯車装置や、精密機械の駆動用の歯車装置として用いる場合には、歯車装置を介して相手機械(被駆動機械)側にワイヤハーネスや冷却水用のパイプを通したいというような要求がしばしば生じることがある。このような場合に、入力軸を貫通孔とするには、該入力軸に接続されるモータ等の駆動源をも貫通孔とする必要があることを意味し、事実上大きなホローシャフトを形成するのは不可能に近かった。更に、敢えてホローシャフトにしたとしても、高速で回転する入力軸の内部に空間を形成することになることから、例えばワイヤハーネスや冷却水用のパイプ等を空間内に配置するには、該入力軸の内周との間に別途軸受等で回転しないように保持した防護パイプを配備する必要があり、この面でも大きな空間を確保するのが難しく、またコストも上昇するという問題があった。
【0014】
この点に関しては、特許文献2に記載したような、偏心体軸を円周方向において非等間隔に配置する構成を採用すると、必ずしも入力軸を出力軸と同軸に配置しなくてもよくなるため、より大きな径のホローシャフトを形成することができるようになる。しかしながら、この偏心体軸を円周方向において非等間隔に配置する構造によって内歯揺動体を駆動した場合、現実問題として、通常の製造工程による製造で作製したものでは内歯揺動体を外歯歯車の周りでバランス良く円滑に揺動させるのが難しいと問題があった。そのため各部材を特別に高い精度で加工し、組立てる必要があった。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外歯歯車と該外歯歯車と僅少の歯数差を有する内歯歯車とを有すると共に、前記内歯歯車を揺動回転させるための偏心体軸を備え、該偏心体軸に配置された偏心体を介して外歯歯車の周りで内歯歯車を揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、前記偏心体軸を、前記外歯歯車の軸心と平行に複数備えると共に、該複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、を備え、該伝動外歯歯車を介して前記駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達されるように構成することにより、上記課題を解決したものである。なお、本発明において「僅少の歯数差」とは1?6程度の歯数差をいう。
【0017】
本発明によれば、駆動源側ピニオンの軸心を、伝導外歯歯車の半径方向外側位置にずらすことができることから、結果として入力軸(あるいは駆動源の出力軸)の軸心を出力軸の軸心から外すことができる。そのため、入力軸や駆動源についてはホロー構造とする必要がないため、出力軸に大径のホローシャフトを容易に形成することができる。特に、(高速で回転する)入力軸をホロー構造とする必要がないため、歯車装置の中心部に形成される空間の内壁の回転速度を非常に遅くでき、別途防護パイプ等を敢えて配置する必要もない。そのため、より大きな空間をより低コストで確保することができるようになる。
【0018】
また、全ての偏心体軸を「等しく駆動する」ことができるようになるため、内歯揺動体をバランスよく且つ円滑に揺動駆動することができる。
【0019】
なお、より好ましくは、前記伝動外歯歯車がリング状に形成され、且つ、前記外歯歯車または出力軸のいずれかの外周によって回転支持されている構成とするとよい。これにより、大径のホローシャフトを形成する場合でも支障なく且つ容易に伝導外歯歯車を装置内に組み込むことができるようになる。」

エ 「【0023】
また、本発明においては、伝導外歯歯車を具体的にどのように駆動するかについては特に限定されない。この点については、例えば、前記出力軸と平行で且つ前記内歯揺動体の半径方向外側位置に、前記駆動源側のピニオンが組み込まれた中間軸を備え、該中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを介して前記伝動外歯歯車を駆動するように構成するとよい。或いは、入力軸に組み込まれたピニオンが、前記駆動源側のピニオンとして前記伝動外歯歯車と直接噛合・駆動するような構成としてもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1、図2は、本発明の実施形態の例に係る内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置(以下、単に歯車装置と称す。)100を示した図であり、図1は歯車装置100の側断面図、図2は図1におけるII-II線に沿う断面図である。
【0026】
この歯車装置100は、本体ケーシング102、入力軸104、平行軸歯車セット106、中間軸108、伝動外歯歯車110、偏心体軸駆動用の歯車(偏心体軸歯車)112、該偏心体軸駆動用の歯車112によって駆動される三本の偏心体軸114(114A?114C)、2つの内歯揺動体(内歯歯車)116A、116B、及び出力軸としての機能を兼用する外歯歯車118によって主に構成されている。
【0027】
即ち、この歯車装置100は、内歯揺動体116A、116Bを揺動回転させるための複数の偏心体軸114を内歯揺動体116A、116Bを貫通して3本備え、入力軸104の回転を該複数の偏心体軸114A?114Cに振り分けて伝達することにより全偏心体軸114A?114Cを同位相で回転させるものである。
【0028】
既に説明した従来例と大きく異なるのは入力軸104から偏心体軸114A?114Cまでの動力伝達構造及び歯車装置全体のケーシング構造である。そのため、以下この点について詳細に説明する。
【0029】
前記本体ケーシング102は、図1において左右に配置された、2つの第1、第2ケーシング102A、102Bによって構成されている。この第1、第2ケーシング102A、102Bには、図2に示されるように、これらを貫通するように複数のボルト孔102A1がそれぞれ形成されている。該第1、第2ケーシング102A、102Bは、互いにボルト(図示略)によって結合可能な構造となっている。
【0030】
この本体ケーシング102には、前記入力軸104が図1において横向き、即ち外歯歯車(出力軸)と平行に配置され、軸受120、122により回転自在に支持されている。入力軸104の一端側(図の左側)には、ピニオン104Aが形成されており、他端にはモータM(具体的な図示は省略)の出力軸が挿入される挿入口104Bが形成されている。
【0031】
本体ケーシング102には、入力軸104ほかに、内歯揺動体116A、116Bよりも半径方向外側位置に、外歯歯車(出力軸)118と平行に前記中間軸108が配置され、テーパーローラベアリング124、124によって回転自在に支持されている。中間軸108にはピニオン104Aと噛合して平行軸歯車セット106を構成するギヤ128が組み込まれており、さらに、中間ピニオン(本実施形態での駆動源側ピニオン)130が組み込まれている。
【0032】
一方、外歯歯車(出力軸)118の外周には、軸受132を介してリング状の伝動外歯歯車110が該外歯歯車118と同軸に配置されている。この伝動外歯歯車110には、前記中間ピニオン108及び、3本の偏心体軸114A?114Cにそれぞれ組み込まれた偏心体軸駆動用の歯車112が同時に噛合している。即ち、伝動外歯歯車110は、前記中間ピニオン130を介して中間軸108と連結されると共に、偏心体軸駆動用の歯車112を介して全偏心体軸114A?114Cのそれぞれとも連結されていることになる。
【0033】
偏心体軸114A?114Cは、同一の円周上で等間隔に配置され(図2参照)、それぞれテーパーローラベアリング136、136によって両持ち支持されている。各偏心体軸114A?114Cとも内歯揺動体116A、116Bの偏心体孔116A1、116B1を軸方向に貫通している。各偏心体軸114A?114Cには偏心体140A、140Bが一体に組み込まれており、3本の偏心体軸114が同位相で同時に同方向に回転できように各偏心体軸114A?114Cの偏心体140A、140Bの位相が揃えられている。又、2枚の内歯揺動体116A、116Bはこの偏心体140A、140Bとの摺動により、それぞれ互いに180°の位相差を保ちながら揺動回転可能である。なお、図の符号119は、当該2枚の内歯揺動体116A、116Bの軸方向の移動規制を行うための差し輪である。
【0034】
内歯揺動体116A、116Bには、ホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118が内接している。外歯歯車118は配管や配線等を貫通可能な貫通孔118Dを有する略円筒形状の部材からなり、テーパーローラベアリング142、142を介してケーシング本体102に回転自在に支持されている。
【0035】
外歯歯車118の外歯は外ピン118Pが溝118Hに回転自在に組み込まれた構造になっている。外ピン118Pの数(外歯の歯数)は90で、内歯揺動体116A、116Bの内歯92の歯数より2だけ小さい(僅少の歯数差)。この外歯歯車118は、本体118A、端部部材118B、118Cの3つの部材からなる。これは、端部部材118B、118Cの段部118B1、118C1によって前記テーパーローラベアリング142、142の組込み及びその軸方向の位置決めを可能とするためである。
【0036】
次にこの歯車装置100の作用を説明する。
【0037】
モータMの図示せぬモータ軸の回転によって入力軸104が回転すると、この回転は、ピニオン104A及びギヤ128を介してその初段の減速が行われ、中間軸108に伝達される。中間軸108が回転すると、該中間軸108に組み込まれた中間ピニオン130が回転し、更にこれと噛合している伝動外歯歯車110が回転する。
【0038】
伝動外歯歯車110には同時に偏心体軸駆動用の歯車112が噛合しているため、該伝動外歯歯車110の回転によりこれらの歯車112が回転する。その結果、3本の偏心体軸114A?114Cが同位相で回転し、これにより2つの内歯揺動体116A、116Bがそれぞれの位相を180°に保った状態で外歯歯車118の周りを揺動回転する。内歯揺動体116A、116Bは、その自転が拘束されているため、該内歯揺動体116A、116Bの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体116A、116Bと噛合する外歯歯車118はその歯数差だけ位相がずれ、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車110の回転となり、出力が外部へ取り出される。偏心体軸114が円周方向等間隔に配置されており、しかも全ての偏心体軸114が駆動されるため、内歯歯車116A、116Bを極めて円滑に揺動させることができる。
【0039】
ここで、本発明の実施形態の例に係る歯車装置100によれば、内歯揺動体116A、116Bよりも半径方向外側位置に、外歯歯車(出力軸)118と平行に前記中間軸108を配置し、入力軸104の回転を、一度中間軸108で受けた後に揺動体側に入力するようにしている。そのため、入力軸104を、従来のように歯車装置100の軸心L1上にではなく、半径方向外側に移動した位置に配置することができるようになる。この結果、装置全体の軸方向長さを短縮できる。
・・・(中略)・・・
【0045】
なお、上記実施形態の例においては、前記入力軸104、204を外歯歯車(出力軸)118、218の軸心L1に対して平行に配置したが、本発明はこれに限定されず、入力軸を偏心体歯車の軸心に対して直角に配置し、直交軸歯車機構を付設する構成としてもよい。この場合、歯車装置を駆動するモータ等の駆動装置をも歯車装置の径方向に配置することができ、特に軸方向において一層の省スペース化を図ることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を得ることができる。」

(2) 訂正発明1について
訂正発明1では、「揺動歯車」として「内歯」であることを限定していないから、揺動歯車として「外歯」であるものを包含している。
ここで、揺動歯車を「外歯」としたものとしては、外側の内歯歯車を出力歯車とする型(外側に出力軸、内側に固定部材を配置する動作。以下「1型」という。)と、外側の内歯歯車を固定部材とする型(内側に出力軸、外側に固定部材を配置する動作。以下「2型」という。)とがある。(「1型」及び「2型」の詳細については、本件について平成25年10月30日にした審決の取消を求める訴の知財高裁平成27年3月11日(平成25年(行ケ)第10330号)の判決を参照。)
訂正発明1では、「前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸」と限定しており、ケーシングは固定部材といえるから、訂正発明1は、1型を含まず、2型のみを含むと解される。(なお、被請求人は、平成27年4月22日付け上申書の8ページ23行?27行において、2型を含み、1型は含まないと主張している。)
したがって、訂正発明1は、内歯揺動型遊星歯車装置に加え、2型の外歯揺動型遊星歯車装置についても包含している。

(3) 訂正発明1についての検討
外歯揺動型遊星歯車装置を包含する訂正発明1は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものといえるか否か、すなわち、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるか否かについて検討する。
原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるというためには、原出願の当初明細書等に記載された事項であるか、そうでないとしても、原出願の当初明細書等の記載から自明な事項である必要がある。

ア 外歯揺動型遊星歯車装置は、原出願の当初明細書等に記載された事項か。

原出願の当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1?7の末尾は、いずれも「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」とされている。
同じく段落【0001】の発明の属する技術分野の記載は、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」についてのもので、「内歯揺動型」を前提としている。
同じく段落【0002】?【0011】の従来の技術の記載は、「内歯噛合遊星歯車装置」についてのものである。
同じく段落【0012】の従来の技術として挙げられた特許文献1(特許第2607937号公報)及び特許文献2(特開2000-65158号公報)は、いずれも「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」についてのものである。
同じく段落【0013】?【0015】の発明が解決しようとする課題は、「装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を提供すること」であり、「内歯揺動型」を前提としている。
同じく段落【0016】の課題を解決するための手段は、「外歯歯車と該外歯歯車と僅少の歯数差を有する内歯歯車とを有すると共に、前記内歯歯車を揺動回転させるための偏心体軸を備え、該偏心体軸に配置された偏心体を介して外歯歯車の周りで内歯歯車を揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、前記偏心体軸を、前記外歯歯車の軸心と平行に複数備えると共に、該複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、を備え、該伝動外歯歯車を介して前記駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達されるように構成すること」であり、外歯歯車と、その周りで揺動する内歯歯車とが特定されており、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」についてのものである。
同じく段落【0017】?【0023】の作用に関する記載は、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」のみについてのものである。
同じく段落【0024】?【0040】の発明の実施の形態及び作用は、複数の偏心体軸114によって揺動回転されるものとして、2つの内歯揺動体(内歯歯車)116A、116Bを特定しているから、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」のみについてのものである。
同じく段落【0041】?【0045】の実施形態以外の構造を示唆する記載は、内歯揺動体を備えるものを前提としているから、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」のみについてのものである。
同じく段落【0046】の発明の効果は、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」についてのものである。
同じく図1?3は、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」の実施形態についてのもので、図4?7は従来の「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」についてのものである。
このように、原出願の当初明細書等には、外歯揺動型遊星歯車装置に関して言及した記載は一切存在していないとともに、当該「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」が「内歯揺動型遊星歯車装置」に限られない「外歯揺動型遊星歯車装置」にも適用されるものであることが理解される手がかりも、全く記載されていないから、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」のみを対象としたものと解するのが自然である。
よって、外歯揺動型遊星歯車装置は、原出願の当初明細書等に記載された事項ではない。

イ 外歯揺動型遊星歯車装置は、原出願の当初明細書等の記載から自明な事項か。

原出願の当初明細書等の記載から自明な事項とは、原出願の当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、そこに記載されているのと同然であると理解する事項であり、周知技術又は慣用技術であるというだけでは、足りないと解される。

(ア) 出願時の技術常識及び周知技術又は慣用技術について
乙第3号証記載のものは、ホロー構造であるが、中間軸を備えておらず、また、入力歯車25b(訂正発明1の「駆動源側のピニオン」に相当。)、中間歯車30(訂正発明1の「伝動外歯歯車」に相当。)及び伝達歯車33(訂正発明1の「偏心体軸歯車」に相当。)は、同一平面上で噛み合っていない。
乙第7号証記載のものは、ホロー構造であるが、中間軸を備えておらず、また、一方の外歯車53(訂正発明1の「偏心体軸歯車」に相当。)は第1伝達部材52(訂正発明1の「駆動源側のピニオン」に相当。)により回転駆動されるのに対して、他方の外歯車58(訂正発明1の「偏心体軸歯車」に相当。)は円筒状歯車55(訂正発明1の「伝動外歯歯車」に相当。)により回転駆動されるから、「伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され」るものではない。
乙第10及び11号証記載のものも、乙第3号証記載のものと同様に、ホロー構造であるが、中間軸を備えていない。
乙第12及び13号証記載のものは、訂正発明1の「前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」との構成を備えておらず、単に、ホロー構造と中間軸を備えているものに止まる。
甲第1号証記載のものは、ホロー構造ではなく、中間軸を備えてはいるものの、スパーギヤ53(訂正発明1の「駆動源側のピニオン」に相当。)、インプットギヤ11(訂正発明1の「伝動外歯歯車」に相当。)及びギヤ12(訂正発明1の「偏心体軸歯車」に相当。)は、同一平面上で噛み合っていない。
甲第5号証記載のものは、ホロー構造であるが、中間軸を備えておらず、また、インプットギヤ52(訂正発明1の「駆動源側のピニオン」に相当。)、リングギヤ48(訂正発明1の「伝動外歯歯車」に相当。)及びスパーギヤ38(訂正発明1の「偏心体軸歯車」に相当。)は、同一平面上で噛み合っていない。
そうすると、乙第3号証、乙第7号証、乙第10?13号証、甲第1号証及び甲第5号証の各証拠は、揺動型遊星歯車装置において、中心部をホロー構造とすること、及び中間軸を設けて回転駆動することについて、その限りで出願時の技術常識であることを示したにとどまる。
また、上記各証拠は、揺動型遊星歯車装置において、ホロー構造、駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車、偏心体軸歯車又は中間軸の個々の技術自体が周知技術又は慣用技術であることを示したにとどまる。

(イ) 原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項といえるか。

(イ-1) 特許法第44条第2項の「新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす」との効果の大きさ及び先願主義を踏まえた出願人間の公平に照らせば、原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項か否かは緩やかに判断するべきではない。
この点、外歯揺動型遊星歯車装置では、揺動体の外側に歯を設けるために、その外形は円形でなければならないし、揺動体は本体ケーシングの内側に設ける歯と噛み合うようにしなければならないところ、原出願の当初明細書等では、揺動体の外形は非円形(図2を参照。)であり、外歯揺動型にした場合に、揺動体は本体ケーシング102の内側に設ける歯と噛み合うような形状になっていないから、外歯揺動型として機能させることを前提としていないと解するべきである。
また、原出願の当初明細書等では、中間軸108及び入力軸104と内歯揺動体116、116Bとが、互いに半径方向に近接した位置で、かつ軸心L1方向に渡り重なった位置にあり(図1?3を参照。)、外歯揺動型にした場合には、揺動体に設けられる外歯と中間軸108及び入力軸104とが干渉してしまうから、この干渉を防ぐために、相応の工夫が必要であるのに、原出願の当初明細書等にはその工夫が何ら記載されていない。
確かに、乙第8号証には、2型の外歯揺動型遊星歯車装置として、被請求人が案出した「訂正発明1を外歯揺動型遊星歯車装置に適用した場合の模式図」が示されているから、このような2型の外歯揺動型遊星歯車装置を想定し得ることを否定することは相当でない。
しかし、2型の外歯揺動型遊星歯車装置は、乙第8号証のように、揺動体に設けられる外歯と中間軸及び入力軸とが干渉しないように、中間軸を外歯揺動歯車の中を貫通させ、かつモータ軸と一体的に回転するピニオン(中間軸のギヤを回転させるもの)を固定部材よりも軸方向で外側(乙第8号証において左側)に配置するという、その中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成について相応の工夫(以下、単に「相応の工夫」という。)をして初めて、外歯揺動型遊星歯車装置として機能し得るといえる。
そうすると、上記出願時の技術常識に照らしても、相応の工夫なく、2型の外歯揺動型遊星歯車装置を機能させることはできないから、これを原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であるとすることは緩やかに過ぎ、むしろ、2型の外歯揺動型遊星歯車装置は、内接揺動型内接噛合遊星歯車装置を完成した後、すなわち出願後に、その思想を抽出して相応の工夫をすることにより初めて想定し得るものに止まるというべきである。
したがって、たとえ揺動型遊星歯車装置において、ホロー構造、駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車、偏心体軸歯車又は中間軸の個々の技術自体が周知技術又は慣用技術であったとしても、原出願の当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、2型の外歯揺動型遊星歯車装置は原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項とまではいえない。

(イ-2) 原出願の当初明細書等の段落【0014】では、従来の技術の問題として、特許文献2を挙げ、外歯歯車の周りで内歯揺動体を揺動させるために、偏心体軸が円周方向に非等間隔に配置されているもの(原出願の当初明細書等の図6及び図7、すなわち前記特許文献2(特開2000-65158号公報:甲第7号証を参照。)の図1及び図3。)を前提にし、このようなものでは、「内歯揺動体を外歯歯車の周りでバランス良く円滑に揺動させるのが難しい」としている。そして、「全ての偏心体軸を『等しく駆動する』ことができるようになるため、内歯揺動体をバランスよく且つ円滑に揺動駆動することができる」(段落【0018】)との記載に鑑みれば、内歯揺動体が外歯歯車の周りで円滑に揺動駆動されることにより、原出願の当初明細書等に記載の課題のうちの「動力伝達の更なる円滑化を図ることができる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を提供すること」(段落【0015】)が解決されるといえる。そうすると、前記発明が解決しようとする課題に照らせば、課題を解決するための手段において特定されている、外歯歯車と、その周りで揺動する内歯歯車とを備えること(すなわち「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」であること。)は、原出願の当初明細書等に記載された発明の本質にかかわる構成であって、必須の構成といえる。
そして、当該必須の構成を備えていない「揺動型遊星歯車装置」が、上記課題を解決できるとは、原出願の当初明細書等を精査しても、これを把握することはできない。
したがって、当該必須の構成を備えていない「揺動型遊星歯車装置」、すなわち「外歯揺動型遊星歯車装置」は、原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項とまではいえない。

(ウ) よって、外歯揺動型遊星歯車装置は、原出願の当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない。

ウ 小括

以上のことから、外歯揺動型遊星歯車装置を包含する訂正発明1は、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
したがって、外歯揺動型遊星歯車装置を包含する訂正発明1は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとはいえない。

(4) 被請求人の主張について
ア 被請求人は、乙第8号証(右下の「訂正発明1を外歯揺動型遊星歯車装置に適用した場合の模式図」を参照。)を提出し、乙第7号証、乙第10号証、乙第11号証及び乙第12号証と併せて、原出願の当初明細書等の記載及び出願時の技術常識から駆動源側のピニオンから偏心体軸に至るまでの動力伝達系を外歯揺動型に適用した構成も自明である旨主張している。(平成27年8月21日付け意見書5ページ31行?36行を参照。)

上記の主張について検討する。
乙第8号証の外歯揺動型は、揺動体に設けられる外歯と中間軸及び入力軸とが干渉しないように、前記相応の工夫をしている(前記「(3)イ(イ-1)」を参照。)
他方、乙第7号証、乙第10号証、乙第11号証及び乙第12号証に開示された技術は、上記「(3)イ(ア)」で説示したように、揺動型遊星歯車装置において、中心部をホロー構造とすること、及び中間軸を設けて回転駆動することについて、その限りで出願時の技術常識であること、並びに、ホロー構造、駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車、偏心体軸歯車又は中間軸の個々の技術自体が周知技術又は慣用技術であることを示したにとどまる。
また、甲第6号証(図5、6を参照。)には、内歯揺動体612A、612Bに入力軸605を貫通させたものが記載されてはいるものの、甲第6号証記載のものは、中間軸すら備えておらず、外歯揺動型でもなく、したがって、訂正発明1のうちの外歯揺動型遊星歯車装置の前記の相応の工夫を示唆するものではない。
すなわち、上記各証拠は、中間軸を備えていないものやこれを備えていても単に中間軸が存在するというものに止まり、前記相応の工夫について示唆するどころか、その中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成そのものが、訂正発明1と大きく異なっている。
加えて、乙第8号証の外歯揺動型のように、中間軸が外歯揺動歯車の中を貫通させた点については、原出願の当初明細書等に記載されているものではなく、かつ原出願の当初明細書等の記載から自明な事項でもなく、むしろ、「ここで、本発明の実施形態の例に係る歯車装置100によれば、内歯揺動体116A、116Bよりも半径方向外側位置に、外歯歯車(出力軸)118と平行に前記中間軸108を配置し、・・・」(段落【0039】)との記載、すなわち揺動歯車よりも半径方向外側位置に中間軸を配置する旨の記載に反するものである。
更に、乙第8号証の外歯揺動型のように、モータ軸と一体的に回転するピニオンを固定部材よりも軸方向で外側(乙第8号証において左側)に配置した点については、原出願の当初明細書等に明示的に記載されているものではなく、かつ原出願の当初明細書等の記載から自明な事項でもなく、むしろ、「そのため、入力軸104を、従来のように歯車装置100の軸心L1上にではなく、半径方向外側に移動した位置に配置することができるようになる。この結果、装置全体の軸方向長さを短縮できる。」(段落【0039】)、及び「入力軸を偏心体歯車の軸心に対して直角に配置し、直交軸歯車機構を付設する構成としてもよい。この場合、歯車装置を駆動するモータ等の駆動装置をも歯車装置の径方向に配置することができ、特に軸方向において一層の省スペース化を図ることが可能となる。」(段落【0045】)との記載、すなわち軸方向長さを短縮する旨の記載に反するものである。
そうすると、外歯揺動型遊星歯車装置の個々の部品や部分的な構成が、周知技術又は慣用技術として技術常識であったとしても、訂正発明1のうちの外歯揺動型遊星歯車装置の、中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成について前記相応の工夫をしたものまでもが、原出願の当初明細書等の記載及び出願時の技術常識から自明であるとまではいえない。
よって、被請求人の上記主張は理由がない。

イ 被請求人は、2型の内歯揺動型遊星歯車装置と2型の外歯揺動型遊星歯車装置において共通する技術の存在を媒介として、2型の外歯揺動型遊星歯車装置が、原出願の当初明細書等の記載から自明である旨主張している。

上記の主張について検討する。
原出願の当初明細書等に記載された発明(以下、「原発明」という。)の課題は、「装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を提供すること」(段落【0015】)であるところ、原発明は、これを解決するために、内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を前提として(段落【0001】)、「外歯歯車と該外歯歯車と僅少の歯数差を有する内歯歯車とを有すると共に、前記内歯歯車を揺動回転させるための偏心体軸を備え、該偏心体軸に配置された偏心体を介して外歯歯車の周りで内歯歯車を揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、前記偏心体軸を、前記外歯歯車の軸心と平行に複数備えると共に、該複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、を備え、該伝動外歯歯車を介して前記駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達されるように構成する」(段落【0016】)という技術を採用したものである。そして、同技術に更に限定を加えた訂正発明1は、駆動源側のピニオン、伝動外歯歯車、偏心体軸歯車及び中間軸の関係を特定するものと解されることから、換言すれば、「ケーシングと、複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、を備え、前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」ように構成するという技術(以下、「本件技術」という。)を開示するものと解される。
当該本件技術については、上記「(3)イ(イ-1)」で検討したように、2型の外歯揺動型遊星歯車装置は、その中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成について前記相応の工夫が必要であり、原出願の当初明細書等の記載及び出願時の技術常識から自明であるとまではいえないから、本件技術を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に直ちに適用できるということはできない。
そうすると、本件技術が、2型の内接歯合遊星歯車装置と2型の外歯揺動型遊星歯車装置において共通する技術の存在を媒介として2型の外歯揺動型遊星歯車装置が、原出願の当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない。
よって、被請求人の上記主張は理由がない。

ウ 被請求人は、乙第8号証として提示しつつ、訂正発明1を、判決において「想定できる」とされた、内側に出力軸、外側に固定部材を配置する「2型の外歯揺動型遊星歯車装置」に減縮した旨主張している(平成27年4月22日付け上申書8ページ23行?27行)。
確かに、前記判決において「本件技術を前記1型及び2形に適用できるか否かについて検討すると・・・伝動外歯歯車と出力軸との上記位置関係を前提とすると、2型においては、出力部材が内側となることから、『伝動外歯歯車は単一の歯車からなり、出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され』る構成を想定できる・・・」(前記判決の28ページ1行?11行を参照。)と判示している。
しかし、上記判示事項は、訂正発明1を2型の外歯揺動型に適用した場合に、訂正発明1のうちの「伝動外歯歯車は単一の歯車からなり、出力軸(出力部材)に軸受を介して支持され」るとの構成自体については、「想定できる」としたにとどまり、訂正発明1を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適用したもの全体が想定できることまでをいうものではないと考える。
むしろ、乙第8号証に記載のものは、「(3)イ(イ-1)」で検討したように、相応の工夫を加えた上で2型の外歯揺動型遊星歯車装置を「想定できる」ものであって、「想定できる」という可能性と原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるか否かとは、別個の問題であるというべきである。
よって、被請求人の上記主張は理由がない。

エ 被請求人は、訂正発明1を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適用し得ることは、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである旨主張している。(平成27年12月18日付け上申書11ページ28行?12ページ13行)
しかし、訂正発明1を2型の外歯揺動型遊星歯車装置に適用することは、原出願の当初明細書等で発明の対象としていなかった「外歯揺動型遊星歯車装置」であるし、「(3)イ(イ-1)」で検討したように、相応の工夫を必要とするものであるから、適用すること自体が、新たな技術上の意義を有するというべきである。
したがって、訂正発明1を2型の外歯揺動型に適用し得るとしても、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。
よって、被請求人の上記主張は理由がない。

オ 被請求人は、乙第4?7号証を提示しつつ、訂正発明1は、内歯揺動型と外歯揺動型に共通する動力伝達系に関するものである旨主張している。(平成27年12月18日付け上申書17ページ25行?18ページ23行。)
確かに、乙第4?6号証に記載のものは、いずれも歯車装置の一部である歯車の部分に関するものである点で内歯揺動型と外歯揺動型に共通する動力伝達系に関するものであるとはいえる。また、乙第7号証記載のものは、ピニオン21(外歯揺動歯車)の内側の形状が円形であり、他に内歯揺動型に適用することを妨げる構成があるものでもない点で内歯揺動型と外歯揺動型に共通する動力伝達系に関するものであるとはいえる。
しかし、訂正発明1は、「前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う」との、中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成を備えているのに対して、乙第4?7号証記載のものは、そもそも中間軸さえ備えておらず、上記構成を充足するものではないから、揺動型遊星歯車装置の中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成が相違している。また、訂正発明1は、上記の構成のみならず、「前記伝動外歯歯車は単一の歯車からなる」など、その他の部品の配置、構成を発明特定事項とするものである。
そうすると、乙第4?7号証に記載された単純な構成が、内歯揺動型と外歯揺動型の両方に利用できるものであるといえても、中間軸から偏心体軸に至るまでの動力伝達系の主要な構成及び「前記伝動外歯歯車は単一の歯車からなる」など、その他の部品の配置、構成も含めて、これらを全体として検討すれば、直ちに訂正発明1が内歯揺動型と外歯揺動型に共通する動力伝達系に関するものであるとはいえない。
よって、被請求人の上記主張は理由がない。

(5) 小括
訂正発明1は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとはいえないから、訂正発明2について検討するまでもなく、本件出願は、分割の要件を満たさないものである。

2 当審で通知した無効理由(特許法第29条第1項第3号違反)について
(1) 本件出願の出願日について
前記「1」に記載したように、本件出願は分割の要件を満たさないから、出願日の遡及は認められず、本件出願の願書を提出した平成20年7月11日がその出願日とされる。

(2) 引用文献及びその記載事項
本件出願の出願日(平成20年7月11日)より前の平成16年10月21日に頒布された刊行物であり原出願の公開公報である特開2004-293743号公報(以下「引用文献」という。)に記載された事項は、前記「1(1)」に記載したとおりである。

(2-1)引用発明1について
引用文献の上記記載事項及び図1?7に記載の内容を総合して、訂正発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」について、その実施の形態として次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保するためのホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118を備え、
3本の偏心体軸114(114A?114C)の各々に配置された偏心体140A、140Bを介して内歯揺動体(内歯歯車)116A、116Bを揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、
本体ケーシング102と、
前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112と、
前記偏心体軸歯車112及び駆動源側ピニオン130がそれぞれ同時に噛合するリング状の伝動外歯歯車110と、
前記リング状の伝動外歯歯車110の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されるとともに、該駆動源側ピニオン130が組込まれた中間軸108と、
前記本体ケーシング102の内側で、該本体ケーシング102に回転自在に支持され、当該内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸兼用の外歯歯車118と、
を備え、
前記リング状の伝動外歯歯車110は、単一の歯車からなり、前記出力軸兼用の外歯歯車118に軸受132を介して支持され、
前記中間軸108を回転駆動することにより前記駆動源側ピニオン130を回転させ、前記リング状の伝動外歯歯車110を介して該リング状の伝動外歯歯車110の回転が前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112に同時に伝達され、
前記駆動源側ピニオン130、前記リング状の伝動外歯歯車110および前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112が、同一平面上で噛み合う
内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。」

(2-2)引用発明2について
同じく、引用文献の上記記載事項及び図1?7に記載の内容を総合して、訂正発明2の記載ぶりに則って整理すると、引用文献には、「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」について、その実施の形態として次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保するためのホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118を備え、
3本の偏心体軸114(114A?114C)の各々に配置された偏心体140A、140Bを介して内歯揺動体(内歯歯車)116A、116Bを揺動回転させる内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、
前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112と、
前記偏心体軸歯車112及び駆動源側ピニオン130がそれぞれ同時に噛合するリング状の伝動外歯歯車110と、
前記リング状の伝動外歯歯車110の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されるとともに、該駆動源側ピニオン130が組込まれた中間軸108と、
当該内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸兼用の外歯歯車118と、
前記内歯揺動体(内歯歯車)116A、116Bと噛合い、出力軸としての機能を兼用する前記外歯歯車118と
を備え、
前記リング状の伝動外歯歯車110は、単一の歯車からなり、前記出力軸兼用の外歯歯車118に軸受132を介して支持され、
前記中間軸108を回転駆動することにより前記駆動源側ピニオン130を回転させ、前記リング状の伝動外歯歯車110を介して該リング状の伝動外歯歯車110の回転が前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112に同時に伝達され、
前記駆動源側ピニオン130、前記リング状の伝動外歯歯車110および前記3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112が、同一平面上で噛み合い、
前記中間軸108は、当該内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置と連結されるモータMのモータ軸と一体的に回転するピニオン104Aと噛み合うギヤ128が組み込まれている
内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。」

(3) 対比・判断
(3-1) 訂正発明1について
訂正発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」は、訂正発明1の「揺動型遊星歯車装置」に相当する。
以下同様に「3本の偏心体軸114(114A?114C)」は「複数の偏心体軸」に、
「偏心体140A、140B」は「偏心体」に、
「内歯揺動体(内歯歯車)116A、116B」は「揺動歯車」に、
「本体ケーシング102」は「ケーシング」に、
「偏心体軸歯車112」は「偏心体軸歯車」に、
「駆動源側ピニオン130」は「駆動源側のピニオン」に、
「リング状の伝動外歯歯車110」は「伝動外歯歯車」に、
「中間軸108」は「中間軸」に、
「出力軸兼用の外歯歯車118」は「出力軸」に、
「軸受132」は「軸受」に、
「3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112」は「複数の偏心体軸歯車」に、それぞれ相当する。

また、引用発明1の「中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保するためのホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118を備え」ることは、訂正発明1の「中心部がホロー構造とされ」ていることに相当する。

以上のことから、訂正発明1と引用発明1とは、下記の点で一致する。
「中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
ケーシングと、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う
揺動型遊星歯車装置。」

そして、訂正発明1の構成のうちで、引用発明1が備えていない構成はない。
したがって、訂正発明1は、引用文献に記載された発明(引用発明1)である。

(3-2) 訂正発明2について
訂正発明2と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置」は、訂正発明2の「揺動型遊星歯車装置」に相当する。
以下同様に「3本の偏心体軸114(114A?114C)」は「複数の偏心体軸」に、
「偏心体140A、140B」は「偏心体」に、
「内歯揺動体(内歯歯車)116A、116B」は「内歯揺動歯車」に、
「偏心体軸歯車112」は「偏心体軸歯車」に、
「駆動源側ピニオン130」は「駆動源側のピニオン」に、
「リング状の伝動外歯歯車110」は「伝動外歯歯車」に、
「中間軸108」は「中間軸」に、
「出力軸兼用の外歯歯車118」は「出力軸」に、
「軸受132」は「軸受」に、
「3本の偏心体軸114(114A?114C)にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車112」は「複数の偏心体軸歯車」に、
「モータM」は「モータ」に、
「モータ軸」は「モータ軸」に、
「ピニオン104A」は「ピニオン」に、
「噛み合うギヤ128」は「噛合うギヤ」に、それぞれ相当する。

また、引用発明2の「中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保するためのホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118を備え」ることは、訂正発明2の「中心部がホロー構造とされ」ていることに相当する。

以上のことから、訂正発明2と引用発明2とは、下記の点で一致する。
「中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して内歯揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
前記内歯揺動歯車と噛合い、前記出力軸としての機能を兼用する外歯歯車と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合い、
前記中間軸は、当該揺動型遊星歯車装置と連結されるモータのモータ軸と一体的に回転するピニオンと噛合うギヤが組み込まれている
揺動型遊星歯車装置。」

そして、訂正発明2の構成のうちで、引用発明2が備えていない構成はない。
したがって、訂正発明2は、引用文献に記載された発明(引用発明2)である。

(4) 小括
以上のことから、訂正発明1及び訂正発明2は、いずれも引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明である。

第8 むすび
以上のとおり、訂正発明1及び訂正発明2は、いずれも特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、請求人の主張する無効理由1?3及び当審が通知した平成25年2月27日付け無効理由通知書における無効理由について検討するまでもなく、訂正発明1及び訂正発明2に係る特許は、無効とされるべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
揺動型遊星歯車装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動型遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星歯車装置は、大トルクの伝達が可能であり且つ大減速比が得られるという利点があるので、種々の減速機分野で数多く使用されている。
【0003】
その中で、外歯歯車の周りで該外歯歯車と僅少の歯数差を有する揺動歯車である内歯揺動体(以下、内歯歯車とも称する)を揺動回転させることにより、入力軸の回転を減速して出力部材から取り出す揺動型の遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図4、図5を用いて同歯車装置の一例を説明する。
【0005】
図において、1はケーシングであり、互いにボルトやピン等の締結部材(図示略)を締結孔2に挿入することにより結合される第1支持ブロック1Aと第2支持ブロック1Bとを有する。5は入力軸で、入力軸5の端部にはピニオン6が設けられ、ピニオン6は、入力軸5の周りに等角度に配設された複数の偏心体軸歯車(偏心体軸駆動用の歯車)7と噛合している。
【0006】
ケーシング1には、3本の偏心体軸10が、円周方向に等角度間隔(120度間隔)で設けられている。この偏心体軸10は、軸方向両端を軸受8、9によって回転自在に支持され且つ軸方向中間部に偏心体10A、10Bを有する。前記伝動歯車7は各偏心体軸10の端部に結合されており、入力軸5の回転を受けて該伝動歯車7が回転することにより、各偏心体軸10が回転するようになっている。
【0007】
各偏心体軸10は、ケーシング1内に収容された2枚の内歯揺動体12A、12Bの偏心体孔11A、11Bをそれぞれ貫通しており、各偏心体軸10の軸方向に隣接した2段の偏心体10A、10Bの外周と、内歯揺動体12A、12Bの貫通孔の内周との間にはころ14A、14Bが設けられている。
【0008】
一方、ケーシング1内の中心部には、出力軸20の端部に一体化された外歯歯車21が配されており、外歯歯車21の外歯23に、内歯揺動体12A、12Bのピンからなる内歯13が噛合している。外歯歯車21の外歯23と内歯揺動体12A、12Bの内歯13の歯数差は僅少(例えば1?4程度)に設定されている。
【0009】
この歯車装置は次のように動作する。
【0010】
入力軸5の回転は、ピニオン6を介して偏心体軸歯車7に与えられ、偏心体軸歯車7によって偏心体軸10が回転させられる。偏心体軸10の回転により偏心体10A、10Bが回転すると、該偏心体10A、10Bの回転によって内歯揺動体12A、12Bが揺動回転する。内歯揺動体12A、12Bはその自転が拘束されているため、該内歯揺動体12A、12Bの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体12A、12Bと噛合する外歯歯車21はその歯数差だけ位相がずれ、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車21の(減速)回転となり、出力軸20から減速出力が取り出される。
【0011】
その他、この種の揺動型の遊星歯車装置としては、例えば、図6に示されるように、非駆動の偏心体軸50Aを含む構造が、例えば特許文献2等において開示されている。
【0012】
【特許文献1】特許第2607937号公報
【特許文献2】特開2000-65158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に開示された歯車装置では、円周方向に等間隔で配置した3つの偏心体軸歯車7を1つの入力軸5(のピニオン6)で回転させる関係上、入力軸が出力軸と同軸に配置されていることから、歯車装置全体を貫通するホローシャフトを有するように設計するのが困難であるという問題があった。例えば産業用ロボットの関節駆動用の歯車装置や、精密機械の駆動用の歯車装置として用いる場合には、歯車装置を介して相手機械(被駆動機械)側にワイヤハーネスや冷却水用のパイプを通したいというような要求がしばしば生じることがある。このような場合に、入力軸を貫通孔とするには、該入力軸に接続されるモータ等の駆動源をも貫通孔とする必要があることを意味し、事実上大きなホローシャフトを形成するのは不可能に近かった。
【0014】
この点に関しては、特許文献2に記載したような構成を採用すると、必ずしも入力軸を出力軸と同軸に配置しなくてもよくなるため、より大きな径のホローシャフトを形成することができるようになる。しかしながら、非駆動の偏心体軸を含む構造では内歯揺動体を外歯歯車の周りでバランス良く円滑に揺動させるのが難しいという問題があった。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる揺動型遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、ケーシングと、前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、を備え、前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合うように構成することにより、上記課題を解決したものである。
【0017】
本発明によれば、駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸を、伝導外歯歯車の半径方向外側位置にずらすことができることから、結果として駆動源側のピニオンを回転させる入力軸(あるいは駆動源の出力軸)の軸心を装置の中心から外すことができる。そのため、入力軸や駆動源についてはホロー構造とする必要がないため、大径のホロー構造を容易に形成することができる。
【0018】
また、駆動源側のピニオンの回転が伝動外歯歯車を回転させて、複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車を同時に回転させることで、全ての偏心体軸を「等しく駆動する」ことができるようになるため、揺動歯車をバランスよく且つ円滑に揺動駆動することができる。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、使用用途に応じて装置の中心部に配管や配線等の配置スペースを容易に確保することができると共に、動力伝達の更なる円滑化を図ることができる揺動型遊星歯車装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1、図2は、本発明の実施形態の例に係る揺動型遊星歯車装置(以下、単に歯車装置と称す。)100を示した図であり、図1は歯車装置100の側断面図、図2は図1におけるII-II線に沿う断面図である。
【0027】
この歯車装置100は、本体ケーシング102、入力軸104、平行軸歯車セット106、中間軸108、伝動外歯歯車110、偏心体軸駆動用の歯車(偏心体軸歯車)112、該偏心体軸駆動用の歯車112によって駆動される三本の偏心体軸114(114A?114C)、揺動歯車である2つの内歯揺動体(内歯歯車)116A、116B、及び出力軸としての機能を兼用する外歯歯車(揺動歯車と噛合する歯車)118によって主に構成されている。
【0028】
即ち、この歯車装置100は、内歯揺動体116A、116Bを揺動回転させるための複数の偏心体軸114を内歯揺動体116A、116Bを貫通して3本備え、入力軸104の回転を該複数の偏心体軸114A?114Cに振り分けて伝達することにより全偏心体軸114A?114Cを同位相で回転させるものである。
【0029】
既に説明した従来例と大きく異なるのは入力軸104から偏心体軸114A?114Cまでの動力伝達構造及び歯車装置全体のケーシング構造である。そのため、以下この点について詳細に説明する。
【0030】
前記本体ケーシング102は、図1において左右に配置された、2つの第1、第2ケーシング102A、102Bによって構成されている。この第1、第2ケーシング102A、102Bには、図2に示されるように、これらを貫通するように複数のボルト孔102A1がそれぞれ形成されている。該第1、第2ケーシング102A、102Bは、互いにボルト(図示略)によって結合可能な構造となっている。
【0031】
この本体ケーシング102には、前記入力軸104が図1において横向き、即ち外歯歯車(出力軸)と平行に配置され、軸受120、122により回転自在に支持されている。入力軸104の一端側(図の左側)には、ピニオン104Aが形成されており、他端にはモータM(具体的な図示は省略)の出力軸が挿入される挿入口104Bが形成されている。
【0032】
本体ケーシング102には、入力軸104ほかに、内歯揺動体116A、116Bよりも半径方向外側位置に、外歯歯車(出力軸)118と平行に前記中間軸108が配置され、テーパーローラベアリング124、124によって回転自在に支持されている。中間軸108にはピニオン104Aと噛合して平行軸歯車セット106を構成するギヤ128が組み込まれており、さらに、中間ピニオン(本実施形態での駆動源側ピニオン)130が組み込まれている。
【0033】
一方、外歯歯車(出力軸)118の外周には、軸受132を介してリング状の伝動外歯歯車110が該外歯歯車118と同軸に配置されている。この伝動外歯歯車110には、前記中間ピニオン108及び、3本の偏心体軸114A?114Cにそれぞれ組み込まれた偏心体軸駆動用の歯車112が同時に噛合している。即ち、伝動外歯歯車110は、前記中間ピニオン130を介して中間軸108と連結されると共に、偏心体軸駆動用の歯車112を介して全偏心体軸114A?114Cのそれぞれとも連結されていることになる。
【0034】
偏心体軸114A?114Cは、同一の円周上で等間隔に配置され(図2参照)、それぞれテーパーローラベアリング136、136によって両持ち支持されている。各偏心体軸114A?114Cとも内歯揺動体116A、116Bの偏心体孔116A1、116B1を軸方向に貫通している。各偏心体軸114A?114Cには偏心体140A、140Bが一体に組み込まれており、3本の偏心体軸114が同位相で同時に同方向に回転できるように各偏心体軸114A?114Cの偏心体140A、140Bの位相が揃えられている。又、2枚の内歯揺動体116A、116Bはこの偏心体140A、140Bとの摺動により、それぞれ互いに180°の位相差を保ちながら揺動回転可能である。なお、図の符号119は、当該2枚の内歯揺動体116A、116Bの軸方向の移動規制を行うための差し輪である。
【0035】
内歯揺動体116A、116Bには、ホローシャフトタイプの出力軸兼用の外歯歯車118が内接している。外歯歯車118は配管や配線等を貫通可能な貫通孔118Dを有する略円筒形状の部材からなり、テーパーローラベアリング142、142を介してケーシング本体102に回転自在に支持されている。
【0036】
外歯歯車118の外歯は外ピン118Pが溝118Hに回転自在に組み込まれた構造になっている。外ピン118Pの数(外歯の歯数)は90で、内歯揺動体116A、116Bの内歯92の歯数より2だけ小さい(僅少の歯数差)。この外歯歯車118は、本体118A、端部部材118B、118Cの3つの部材からなる。これは、端部部材118B、118Cの段部118B1、118C1によって前記テーパーローラベアリング142、142の組込み及びその軸方向の位置決めを可能とするためである。
【0037】
次にこの歯車装置100の作用を説明する。
【0038】
モータMの図示せぬモータ軸の回転によって入力軸104が回転すると、この回転は、ピニオン104A及びギヤ128を介してその初段の減速が行われ、中間軸108に伝達される。中間軸108が回転すると、該中間軸108に組み込まれた中間ピニオン130が回転し、更にこれと噛合している伝動外歯歯車110が回転する。
【0039】
伝動外歯歯車110には同時に偏心体軸駆動用の歯車112が噛合しているため、該伝動外歯歯車110の回転によりこれらの歯車112が回転する。その結果、3本の偏心体軸114A?114Cが同位相で回転し、これにより2つの内歯揺動体116A、116Bがそれぞれの位相を180°に保った状態で外歯歯車118の周りを揺動回転する。内歯揺動体116A、116Bは、その自転が拘束されているため、該内歯揺動体116A、116Bの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体116A、116Bと噛合する外歯歯車118はその歯数差だけ位相がずれ、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車110の回転となり、出力が外部へ取り出される。偏心体軸114が円周方向等間隔に配置されており、しかも全ての偏心体軸114が駆動されるため、内歯歯車116A、116Bを極めて円滑に揺動させることができる。
【0040】
ここで、本発明の実施形態の例に係る歯車装置100によれば、内歯揺動体116A、116Bよりも半径方向外側位置に、外歯歯車(出力軸)118と平行に前記中間軸108を配置し、入力軸104の回転を、一度中間軸108で受けた後に揺動体側に入力するようにしている。そのため、入力軸104を、従来のように歯車装置100の軸心(伝動外歯歯車110の回転中心軸)L1上にではなく、半径方向外側に移動した位置に配置することができるようになる。この結果、装置全体の軸方向長さを短縮できる。
【0041】
更に、歯車装置100の軸方向サイドに入力軸も駆動源も存在しないことから、外歯歯車118を、歯車装置100を貫通する大径のホローシャフトとすることができている。外歯歯車118は出力軸を兼ねるものであり、その回転は極めて低速であるため、該外歯歯車118の内側に別体の防護パイプ等を付設することなく、ワイヤハーネスや冷却水パイプ等をそのまま配置することができる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、入力軸104として、モータ軸の挿入口104Bを有する構造のものが使用されているが、モータのモータ軸の先端に直接ピニオンを形成し、これを入力軸として兼用する構造であってもよい。
【0043】
また、ピニオン104A及びギヤ128の平行軸歯車セット106を省略し、入力軸104のピニオン104Aを直接中間ピニオン130と噛合させても良い。
【0044】
また上記実施形態においては、伝導外歯歯車110を専用の軸受132を介して外歯歯車118によって支持するようにしていたが、このような構造に代え、例えば、図3に示されるように、2枚の内歯揺動体216A、216Bの間に伝動外歯歯車210が配置されるようにすると、該伝動外歯歯車210に当該2枚の内歯揺動体216A、216Bの軸方向の移動規制を行うための、前記差し輪119(図1参照)の機能を兼用させることができる。また、この場合は、外歯歯車218の外ピン218Pを伝導外歯歯車を支持するためのころとして機能させることができるため、該伝導外歯歯車210を外歯歯車218の外周に支持するための専用の軸受130(図1参照)も不要とできる。尤も、この構成を採用しない場合には、例えば、内歯揺動体の内歯を円弧歯形、外歯歯車の外歯をトロコイド歯形としてもよく、又、それぞれをインボリュート歯形等としてもよい。
【0045】
なお、この実施形態におけるその他の構成は先の実施形態とほぼ同様なので、図中で同様な部分に下2桁が同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0046】
なお、上記実施形態の例においては、前記入力軸104、204を外歯歯車(出力軸)118、218の軸心(伝動外歯歯車110の回転中心軸)L1に対して平行に配置したが、本発明はこれに限定されず、入力軸を偏心体歯車の軸心に対して直角に配置し、直交軸歯車機構を付設する構成としてもよい。この場合、歯車装置を駆動するモータ等の駆動装置をも歯車装置の径方向に配置することができ、特に軸方向において一層の省スペース化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態の例に係る揺動型遊星歯車装置の側断面
【図2】図1におけるII-II線に沿う断面図
【図3】本発明の他の実施形態の例を示す、図2相当の断面図
【図4】従来の揺動型遊星歯車装置の側断面図
【図5】図4におけるV-V線に沿う断面図
【図6】従来の他の揺動型遊星歯車装置の側断面図
【符号の説明】
【0048】
100...揺動型遊星歯車装置
102、202...本体ケーシング
102A、102B、202A、202B...第1、第2ケーシング
104、204...入力軸
104A、204A...ピニオン
106、206...平行軸歯車セット
108、208...中間軸
110、210...伝動外歯歯車
112、212...偏心体軸歯車
116A、116B...内歯揺動体(内歯歯車)
118、218...外歯歯車(出力軸)
119...差し輪
128、228...ギヤ
130、230...中間ピニオン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
ケーシングと、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
前記ケーシングの内側で、該ケーシングに回転自在に支持され、当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合う
ことを特徴とする揺動型遊星歯車装置。
【請求項2】
中心部がホロー構造とされ、複数の偏心体軸の各々に配置された偏心体を介して内歯揺動歯車を揺動回転させる揺動型遊星歯車装置において、
前記複数の偏心体軸にそれぞれ組込まれた偏心体軸歯車と、
該偏心体軸歯車及び駆動源側のピニオンがそれぞれ同時に噛合する伝動外歯歯車と、
該伝動外歯歯車の回転中心軸と異なる位置に平行に配置されると共に、該駆動源側のピニオンが組込まれた中間軸と、
当該揺動型遊星歯車装置において減速された回転を出力する出力軸と、
前記内歯揺動歯車と噛合い、前記出力軸としての機能を兼用する外歯歯車と、
を備え、
前記伝動外歯歯車は、単一の歯車からなり、前記出力軸に軸受を介して支持され、
前記中間軸を回転駆動することにより前記駆動源側のピニオンを回転させ、前記伝動外歯歯車を介して該駆動源側のピニオンの回転が前記複数の偏心体軸歯車に同時に伝達され、
前記駆動源側のピニオン、前記伝動外歯歯車および前記複数の偏心体軸歯車が、同一平面上で噛み合い、
前記中間軸は、当該揺動型遊星歯車装置と連結されるモータのモータ軸と一体的に回転するピニオンと噛合うギヤが組み込まれている
ことを特徴とする揺動型遊星歯車装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-03-18 
結審通知日 2016-03-23 
審決日 2016-04-05 
出願番号 特願2008-181532(P2008-181532)
審決分類 P 1 113・ 841- ZAA (F16H)
P 1 113・ 851- ZAA (F16H)
P 1 113・ 03- ZAA (F16H)
P 1 113・ 113- ZAA (F16H)
P 1 113・ 853- ZAA (F16H)
P 1 113・ 857- ZAA (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 忠志  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
登録日 2012-01-06 
登録番号 特許第4897747号(P4897747)
発明の名称 揺動型遊星歯車装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 磯部 健介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 加藤 隆夫  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 加藤 隆夫  
代理人 木田 博  
代理人 伊東 忠重  
代理人 鈴木 良和  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 山口 昭則  
代理人 上野 潤一  
代理人 佐々木 定雄  
代理人 竹田 稔  
代理人 佐々木 定雄  
代理人 山口 昭則  
代理人 木田 博  

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