• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 一部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1335103
異議申立番号 異議2016-700862  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-14 
確定日 2017-10-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5883976号発明「ガスセンサの検知電極、導電性ペーストの製造方法、および、ガスセンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5883976号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5?12〕、3、4、13、14について訂正することを認める。 特許第5883976号の請求項1?3、5?11、13に係る特許を維持する。 特許第5883976号の請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5883976号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成27年6月17日(優先権主張、平成26年7月29日)を出願日として出願したものであって、平成28年2月12日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 平林 恭子(以下、「申立人」という。)より請求項1?3、5?12に対して特許異議の申立てがされ、平成28年12月27日付けで取消理由が通知され、平成29年3月6日に意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正請求に対して同年4月14日に申立人から意見書が提出されたものである。
さらに、同年5月11日付で、再度、取消理由が通知され、その取消理由通知の指定期間内である同年6月21日に意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正請求に対して申立人からは意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正請求について(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)本件訂正請求の内容
特許権者は、以下の訂正事項1?13により特定されるとおり訂正することを請求する。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記所定ガス成分を検知するための検知電極であって、」と記載されているのを、
「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、」と訂正する(請求項1を直接にまたは間接に引用する請求項2および請求項5?請求項11についても同様に訂正する)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」と訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記所定ガス成分の濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。」
と記載されているのを、
「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。」と訂正する(請求項5を直接にまたは間接に引用する請求項6?請求項11についても同様に訂正する)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
と訂正し、新たに請求項13とする。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。」
と訂正し、新たに請求項14とする。

ク 訂正事項8
特許明細書の段落【0012】に
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記所定ガス成分を検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とする。」
と訂正する。

ケ 訂正事項9
特許明細書の段落【0014】に
「請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項3の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、 前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。

コ 訂正事項10
特許明細書の段落【0015】に
「請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項4の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。

サ 訂正事項11
特許明細書の段落【0016】に
「請求項5の発明は、被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記所定ガス成分の濃度を求める、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項5の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、ことを特徴とする。」
と訂正する。


シ 訂正事項12
特許明細書の段落【0023】に
「請求項12の発明は、請求項5ないし請求項11のいずれかに記載のガスセンサであって、前記所定ガス成分が炭化水素ガスまたは一酸化炭素の少なくとも一種類である、ことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項13の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
請求項14の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。」
と訂正する。

ス 訂正事項13
特許明細書の段落【0026】に
「請求項1ないし請求項12の発明によれば、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサを実現できる。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項11、請求項13、および請求項14の発明によれば、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサを実現できる。」
と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1、4は、「被測定ガス中の所定ガス成分の濃度を測定する」と記載されているのを、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する」と、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許明細書の段落【0030】に「より具体的には、ガスセンサ100Aは、・・・該被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を、好適に求めるためのものである。」と記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2は、訂正前請求項3のうち訂正前請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
ウー1 訂正事項3は、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウー2 訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については独立して特許を受けることができるものでなければならない。
(ア) 被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ、明確であるから、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではない。

(イ) 甲1の記載事項(「第9」「1」「(1)」参照)、甲2の記載事項(「第8」「1」「(1)」参照)、甲3の記載事項(「第13」「1」「(1)」参照)、甲4の記載事項(「第9」「1」「(4)」参照)、甲5の記載事項(「第9」「1」「(5)」参照)から、訂正後の請求項4に係る発明の「Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含む」導電性ペーストの製造方法は、甲1?5のいずれにも記載されていない(下記「第8?10、12、13」参照)。
したがって、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではない。
そして、他に、訂正事項3により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、訂正事項3により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができるものである。

訂正前の請求項4から、訂正事項7により独立形式の新たな特許発明として追加された請求項14も、同様に、独立して特許を受けることができるものである。

エ 訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項6は、訂正前請求項3のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めて、新たな請求項13とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 訂正事項7について
カー1 訂正事項7は、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めて、新たな請求項14とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものであり、さらに当該訂正において、被測定ガス中の濃度を測定する所定ガス成分を「炭化水素ガス」と限定することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記アでの検討と同様、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カー2 訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については独立して特許を受けることができるものでなければならない。
上記ウ-2で検討したように、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではないし、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではないので、訂正後の請求項4を減縮したものに相当する新たな請求項14も特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものではないし、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものではない。
そして、他に、訂正事項7により訂正された請求項4は、独立して特許を受けることができないとする理由はない。
したがって、訂正事項7により訂正された、訂正前請求項4のうち訂正前請求項1を引用する請求項2を引用するものを独立形式請求項へ改めた請求項14は、独立して特許を受けることができるものである。

キ 訂正事項8について
特許明細書の段落【0012】における訂正は、上記アと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項1の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ク 訂正事項9について
特許明細書の段落【0014】における訂正は、上記イと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項3の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ケ 訂正事項10について
特許明細書の段落【0015】における訂正は、上記ウと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項4の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

コ 訂正事項11について
特許明細書の段落【0016】における訂正は、上記アと同様、新規事項ではなく、訂正後の請求項5の記載と整合させるためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

サ 訂正事項12について
特許明細書の段落【0023】における「請求項12の発明は、・・・。」
と記載されているのを、
「請求項13の発明は、・・・を特徴とする。
請求項14の発明は、・・・を特徴とする。」
と訂正するは、請求項12が削除され、独立形式の新たな請求項13、14が追加された訂正後の請求項の記載と整合させるためのものであって、上記エ?カと同様、新規事項ではなく、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

シ 訂正事項13について
特許明細書の段落【0026】における「請求項1ないし請求項12の発明によれば、・・・。」
と記載されているのを、
「請求項1ないし請求項11、請求項13、および請求項14の発明によれば」
と訂正するは、請求項12が削除され、独立形式の新たな請求項13、14が追加された訂正後の請求項と整合させるためのものであって、新規事項ではなく、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ス 一群の請求項
訂正前の請求項2?12は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?12は、一群の請求項である。
したがって、訂正事項1?7は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

セ 明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
訂正事項8?13は、それぞれ、訂正後の請求項1、3、4、5、12、13、14の記載と整合させるためのものとして訂正を請求したものであり、訂正前の請求項1?12は一群の請求項であるから、訂正事項8?13は、いずれも一群の請求項1?12に関係する訂正である。
したがって、訂正事項8?13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。

ソ 訂正後の請求項
本件訂正請求において、「訂正後の請求項3、請求項4、請求項13,および請求項14については、引用関係の解消を目的とする訂正であるから、当該請求項についての訂正が認められる場合には請求項3、請求項4、請求項13、および請求項14は、請求項1?2および請求項5?12とは別途訂正すること」を「求め」ているので、訂正前の一群の請求項1?12は、訂正後の請求項〔1、2、5?12〕、3、4、13、14となる。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、5?12〕、3、4、13、14について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記「第2 訂正請求について」で述べたとおり、本件訂正は認められることとなったから、請求項1?14に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件特許発明1」などという。)は、次の事項により特定される発明であると認める。

【請求項1】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサの検知電極であって、
Au存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項3】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項4】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項5】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のガスセンサであって、
少なくとも前記検知電極を被覆する多孔質層である電極保護層、
をさらに備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記被測定ガスが存在する空間と隔絶されてなり、基準ガスが導入される基準ガス導入空間、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガスの雰囲気下に配置される、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記基準ガス導入空間に連通する多孔質層である基準ガス導入層、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガス導入層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項9】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記基準電極を前記基準ガス導入空間に露出させて配置してなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極が前記センサ素子の表面に配置されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項11】
請求項10に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極とが電極保護層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、
を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項14】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。

第4 特許異議申立の理由及び証拠について

1 申立の概要
申立人は、以下の証拠を提出して、本件特許の請求項1?3、5?12に係る発明に対して、以下の取消理由を申し立てている。
甲第1号証:特開平11-223617号公報
甲第2号証:特開2003-35693号公報
甲第3号証:特許第4827924号公報
甲第4号証:特開2000-28573号公報
甲第5号証:特許第3560316号公報
(以下、「甲第1号証」?「甲第5号証」を、それぞれ「甲1」?「甲5」という。)

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
ア 請求項1、2、5、6、7、9、10
甲1および甲2記載の発明に該当する。

イ 請求項11、12
甲2記載の発明に該当する。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
ア 請求項1、2、5、6、7、9、10
甲1記載の発明、および甲2記載の発明から容易に想到できる。

イ 請求項3
甲3記載の発明、甲2記載事項から容易に想到できる。

ウ 請求項8
甲1記載の発明および甲2記載の発明、並びに、甲1記載事項および甲2記載事項から容易に想到できる。

エ 請求項11
甲2記載の発明から容易に想到できる。

オ 請求項12
甲2記載の発明から容易に想到できる。
甲1記載の発明、甲4記載事項から容易想到である。

(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号違反:申立書9頁「理由の要点」の項)
本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号違反:申立書39頁6?16行「(4)具体的理由 エ 記載不備 (イ)」の項)
本件特許の請求項1に係る発明に、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記ptが露出している部分に対する前記AUが被覆している部分の面積比率であるAU存在比」なる記載があるが、本件の特許明細書には「ptが露出している部分」と「Auが被覆している部分」の具体的説明は何ら記載されていない。このため、これらを前提として数値が定められるAu存在比は、前提が不明確であるために、如何なるものを示すのか不明であり、本件特許の請求項1に係る発明を認識することができない。したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

第5 取消理由の概要
平成28年12月27日付けで通知した当審の1回目の取消理由、及び平成29年3月6日付けの訂正請求に対する平成29年5月11日付けで通知した当審の2回目の取消理由の概要は以下のとおりである。

1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号違反について)
本件特許の請求項1?3、5?12に係る発明は、下記のように発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1における検知電極が検知する所定ガス成分として、炭化水素ガス以外のガス成分は、発明の詳細な説明に技術的な裏付けを持って記載されていないのでサポートがないものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5?12も同様である。

2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号違反について)
本件特許の請求項1?3、5?12に係る発明は、下記のように明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(1)請求項1は「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比」と特定している。
一方、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」は、
(Auが露出している部分でその下にPtがある部分の面積)/(Ptが露出している部分の面積)
となるが、「Auが露出している部分」について、「Auが露出している部分でもその下にPtがない部分の面積」と「Auが露出している部分でその下にPtがある部分の面積」をどのように区別して測定するのかが不明であり、その結果、面積比率をどのように計算するのかも不明である。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5?12も同様である。

(2)請求項3は「請求項1または請求項2に記載のガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、」と導電性ペーストを製造する方法を限定しているが、この限定によって導電性ペーストを製造する方法について、何を特定しているのか明確でない。
したがって、請求項3に係る発明は明確でない。

3 取消理由3(特許法第29条第1項第3号違反について)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

4 取消理由4の1(特許法第29条第2項違反について)
本件特許の請求項1、2、5?11に係る発明は、本件特許の出願の優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

5 取消理由4の2(特許法第29条第2項違反について)
本件特許の請求項5?12に係る発明は、本件特許の出願の優先日前日本国内または外国において頒布された甲2に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

6 訂正請求に伴い生じた取消理由5(特許法第36条第6項第1号違反について)
平成29年3月6日付けの訂正請求における請求項1?11、13、14に係る発明は、下記のように発明の詳細な説明に記載したものではなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


(1)訂正後の請求項1に係る発明では「Au存在比」を「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率」であると特定している。
一方、発明の詳細な説明の段落【0072】には「Au存在比」について「検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率」であると記載されており、「Auが被覆している部分」とは記載されているが「Auが露出している部分」とは記載されていない。
明細書全体を見渡しても実施例を含めても「Au存在比」について「検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率」以外は記載されていない。
そうすると、訂正後の請求項1に係る発明における「Au存在比」として、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率」は、発明の詳細な説明に技術的な裏付けを持って記載されていないのでサポートがないものである。

(2)したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2、5?11に係る発明も同様である。
また、訂正後の請求項1に係る発明と同様に「Au存在比」を特定している訂正後の請求項3、4、13、14に係る発明も同様である。

第6 特許法第36条第6項第1号に関する取消理由1についての当審の判断
本件特許発明1は、上記「第2」「(1)」「ア 訂正事項1」の訂正により、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサ」と訂正されている。
この訂正により、本件特許発明1は、特許明細書に「【0011】 本発明は、・・・未燃炭化水素ガスに対する検出感度の優れたガスセンサを提供することを目的とする。」と記載され、そのための構成が技術的な裏付けを持って記載されているものとなり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとなった。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、5?11も同様である
本件特許発明1と同じ「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサ」との記載を含む本件特許発明3、4、13、14も、発明の詳細な説明に、技術的な裏付けを持って記載されているものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

第7 特許法第36条第6項第2号に関する取消理由2についての当審の判断
(1)本件特許発明1の「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」における、「Auが被覆している部分」との表現は、検知電極中で、Pt粒子がAuに被覆されている状態において、Ptが露出している部分(Auに被覆されていない部分)に対して、Auに被覆されている部分を表現しているものと解せる。
そうすると、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比」は明確であるので、本件特許発明1は明確である。
本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、3、5?12も同様である。
本件特許発明1と同じ「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」との記載を含む本件特許発明3、4、13、14も明確である。

(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は「ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、」と訂正され、本件特許発明3の「導電性ペースト」の用途が明確になり、本件特許発明3が明確になった。
訂正前の請求項3から、訂正事項7により独立形式の新たな特許発明として追加された本件特許発明13についても同様である。

第8 特許法第29条第1項第3号に関する取消理由3についての当審の判断

1 甲号証の記載
(1)甲2記載の事項

本願の優先権主張日前に頒布された甲2には、「可燃性ガスセンサ」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は可燃性ガスセンサに関する。更に詳しくは、リッチ(可燃ガス含有量の多い)雰囲気への曝露前後におけるセンサ出力の差が小さく、この曝露後におけるセンサ出力の低下が抑制され、高い測定精度で可燃性ガスの濃度測定を行うことができる可燃性ガスセンサに関する。本発明の可燃性ガスセンサは、あらゆる内燃機関から排出される排気ガス中の可燃性ガス等の濃度測定に好適である。」

(イ)
「【0017】本発明の可燃性ガスセンサにより測定できる可燃性ガスは検知電極に含有される白金、金及びロジウムを除く他の成分等により異なるが、例えば、アンモニア、一酸化窒素、一酸化炭素、水素及び炭化水素ガスである。」

(ウ)
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]可燃性ガスセンサの製造及び接続
(1)6種類の検知電極用ペーストの調製
表1に示す割合で白金粉末(純度99.9%以上、平均粒径7.4μm)と、金粉末(純度99.9%以上、平均粒径1μm)と、ロジウム粉末(純度99.9%以上、平均粒径3μm)と、ジルコニア粉末(純度99.9%以上、平均粒径1μm)10部(白金、金及びロジウムの合計を100部とした場合の外配合)とを混合した混合粉末に、バインダ(エチルセルロース)、エトセル及び溶剤(ブチルカルビトール)を加えて調製した検知電極用ペーストを得た。
・・・
【0022】(2)固体電解質体の作製
4.5モル%のY_(2)O_(3)を含有するイットリア安定化ジルコニア(以下、単にYSZという)の粉末をゴム型に充填し、有底円筒型に加圧成形した。その後、得られた成形体の外表面に検知電極リード線となる白金ペーストを印刷し、焼成して検知電極リード部が配設された有底円筒型の固体電解質体を得た。
【0023】(3)検知電極及び基準電極の形成
得られた固体電解質体の内表面に白金めっきを施して基準電極を形成した。その後、固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7?10mmの領域に(1)で得られた各検知電極用ペースト6種を各々別々の固体電解質体に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて検知電極を形成した。」

(エ)
表1に表示された実施例の比較例は、貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストが記載されている。

2 甲2記載の発明
上記(1)甲2記載の事項の(ア)?(エ)の記載を参照すると、上記甲2号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを、
4.5モル%のY_(2)O_(3)を含有するイットリア安定化ジルコニアの粉末を焼成して得られた固体電解質体、の内表面に白金めっきを施して基準電極を形成した後に、該固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7?10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した、濃度測定を行うことができる内燃機関から排出される排気ガス中の炭化水素ガスのセンサの検知電極。」(以下、「甲2発明」という。)

3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比・判断
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「Au」は、「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを」、「固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7?10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した」「検知電極」の「Au」であって、AuがPt粉末を被覆しているか否か明らかでなく、さらに、被覆しているとしても、「Au存在比」が0.3以上であるか否かも明らかでない。
したがって、本件特許発明1では、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成であるのに対して、甲2では、「貴金属がPt粉末とAu粉末であり、Ptが90質量%、Auが10質量%であって、ジルコニア粉末をさらに含む検知電極用ペーストを、」「該固体電解質体の前端(底部側)から後端に向かって7?10mmの領域に塗布した後、1400℃で1時間焼き付けて形成した」構成である点(以下、「相違点」という。)で相違する。

よって、本件特許発明1は甲2発明ではない。

(2)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明ではないから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

4 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2は、甲2発明ではないから、本件特許発明2の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

第9 特許法第29条第2項に関する取消理由4の1についての当審の判断

1 甲号証の記載
(1)甲1記載の事項

本願の優先権主張日前に頒布された甲1号証には、「二酸化硫黄ガスセンサ」について、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、燃焼機関等の排気ガスあるいは空気中の二酸化硫黄(SO_(2))ガスの濃度を測定するためのSO_(2)ガスセンサに関するもの・・・。」

(イ)
「【0015】 図1は、本発明のSO_(2)ガスセンサの基本構造を示す断面図である。固体電解質板1と、同固体電解質板1を挟み込む一対の電極である基準極2と検知極3とが該固体電解質板1のそれぞれの表面に形成される。このとき、基準極2は基準ガス側に、検知極3は測定ガス側に形成され、それぞれの電極にはリード線4、5が取り付けられる。また、固体電解質板1は基体6に嵌挿されて測定ガス領域と基準ガス領域との隔壁の役割をも果たしている。
【0016】 固体電解質板1としては、酸素イオン伝導性を有する材料であればよく、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化セリウムが例としてあげられるが、本発明においては、高温安定性、化学的安定性に優れた安定化ジルコニアが好適に使用される。」

(ウ)
「【0023】 このことから、検知極用の金属としては本発明においては、金(Au)が好適に使用される。また、Auに0.1?10wt%の他の貴金属を加えたAu合金を用いるとより好ましい。Auに0.1?10wt%、好ましくは0.1?5wt%、より好ましくは、0.1?1wt%の他の貴金属を加えることにより検知極の製造時の高温下でのAu粒子の凝集を抑制し、検知極の多孔質性の保持と検知極の表面積の拡大化が可能となり、結果としてSO_(2)の検出感度をより向上させることができる。なお、Auと合金化される金属としては、Rh、Pt、Pd、銀(Ag)等が例としてあげられる。このときの、Au含有率としては、90wt%以上、好ましくは95wt%以上、より好ましくは99wt%以上が好適であり、Auの含有率は合金の融点と焼付け温度あるいはセンサの使用温度により適宜選択し定めればよい。係る合金の調製方法としては、常法に従えばよい。勿論、AuまたはAu合金に固体電解質板と同じ材料を混合したサーメット電極も好適に用いられる。」

(エ)図1



(2)甲2記載の事項
上記「第8」「1」「(1)」記載のとおりである。

(3)甲3記載の事項
下記「第13」「1」「(1)」記載のとおりである。

(4)甲4記載の事項
甲4には高温で検知が可能な炭化水素ガスセンサに関する技術事項が記載されている。

(5)甲5記載の事項
甲5には酸素濃度や素子温度が変動しても、高精度で検出でき、水蒸気の分解による可燃ガス成分検出精度への影響が生じにくいガスセンサに関する技術事項が記載されている。

2 甲1記載の発明
上記(1)甲1記載の事項の(ア)?(エ)の記載を参照すると、上記甲1号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「固体電解質板1を挟み込む一対の電極である基準極2と検知極3とが酸素イオン伝導性を有する材料である固体電解質板1のそれぞれの表面に、基準極2は基準ガス側に、検知極3は測定ガス側に形成された燃焼機関等の排気ガス中の二酸化硫黄(SO_(2))ガスの濃度を測定するためのSO_(2)ガスセンサの検知極3であって、
検知極3用の金属としてはAuに0.1?10wt%のRh、Pt、Pd、銀(Ag)等の貴金属を加えたAu合金を用い、Au含有率としては、90wt%以上となる、Au合金に固体電解質板と同じ材料を混合したサーメット電極である、SO_(2)ガスセンサの検知極3」(以下、「甲1発明」という。)

3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、
本件特許発明1では、「被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であ」るのに対して、甲1発明では、「燃焼機関等の排気ガス中の二酸化硫黄(SO_(2))ガスの濃度を測定するためのSO_(2)ガスセンサの検知極3であ」る点(以下、「相違点1」という。)、
本件特許発明1では、「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成であるのに対して、甲1発明では、「検知極3用の金属としてはAuに0.1?10wt%のRh、Pt、Pd、銀(Ag)等の貴金属を加えたAu合金を用い、Au含有率としては、90wt%以上となる」構成である点(以下、「相違点2」という。)で相違する。

(2)判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲2?甲5のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲1発明と、甲2ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない。

(3)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 本件特許発明2、5?11について
本件特許発明2、5?11は、いずれも本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2、5?11は、いずれも、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲1発明と、甲2ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないから、本件特許発明2、5?11の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第10 特許法第29条第2項に関する取消理由4の2についての当審の判断

1 甲号証の記載
(1)甲2記載の事項
上記「第8」「1」「(1)」記載のとおりである。

2 甲2記載の発明
上記「第8」「2」記載のとおりである。

3 本件特許発明1との対比・判断
(1)対比
上記「第8」「3」「(1)対比・判断」記載のとおりの相違点で相違する。

(2)判断
「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲1、甲3?甲5のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲2発明と、甲1、甲3ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない

(3)本件特許発明1の小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 本件特許発明5?12について
本件特許発明12は削除されている。
本件特許発明2、5?11は、いずれも本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明5?11は、いずれも、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないし、甲2発明と、甲1、甲3ないし甲5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到するものとはいえないから、本件特許発明5?11の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第11 特許法第36条第6項第1号に関する取消理由5についての当審の判断
今回の訂正により「Au存在比」を「前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率」とする訂正前の特許発明の定義に戻ったので、取消理由5は解消した。


第12 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(1)
申立人は、申立理由1(特許法第29条第1項第3号違反)において、
ア 本件特許発明1、2、5、6、7、9、10は、甲1発明であり、
イ 本件特許発明11、12は甲2発明であると主張するので以下に検討する。

1 検討
アについては、上記「第9」において説示したように、本件特許発明1は甲1発明と対比すると相違点があるから、甲1発明であるとはいえないし、また、本件特許発明2、5、6、7、9、10は甲1発明をさらに限定するものであるから、同様に、甲1発明であるとはいえない。

イについては、上記「第8」において説示したように、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、本件特許発明11、12は、本件特許発明1をさらに限定したものであるので、本件特許発明1と同様に、本件特許発明11、12は、甲2発明ではない。
したがって、かかる主張は理由がない。

第13 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(2)
申立人は、申立理由2(特許法第29条第2項違反)において、イ 本件特許発明3は 甲3記載の発明及び甲2記載事項から容易に想到できると主張するので以下に検討する。

1 甲号証の記載
(1)甲3記載の事項

本願の優先権主張日前に頒布された甲3には、「ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサおよびその製造方法」について、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(ア)
「【請求項4】
イオン伝導性固体電解質(120)と、固体電解質(120)によって相互に分離された電極とを備え、外部電極(160)はガス混合物にさらされ、内部電極(170)は、拡散隔壁(150)によってガス混合物から分離された中空空間(130)内に配置されている、ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサの電極の製造方法において、
白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部電極(160)を形成することを特徴とするガス混合物内のガス成分の濃度測定センサの電極の製造方法。
【請求項5】
前記ペーストの金含有量が、0.1-10重量%の間で変化することを特徴とする請求項4に記載の製造方法。」

(イ)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物内ガス成分濃度の測定センサに関するものである。さらに、本発明は、このようなセンサの電極の製造方法に関するものである。」

(ウ)
「【0010】
図2に示されているセンサは、拡散隔壁150を介して、例えば(図示されていない)内燃機関の排気ガスと結合されている中空空間130を設けた、加熱要素190として形成されたヒータによって加熱される酸化ジルコニウム要素120と、基準電極140、内部ポンプ電極170および外部ポンプ電極160とを含む。」

(エ)
「【0016】
外部ポンプ電極が、白金からなるそれ自身既知の固体において金の電気めっきが行われることによって形成されることが好ましい。白金電極を含浸工程によって修正すること、即ち白金電極を適切なAu塩、即ちHAuCl4により含浸させ、且つ後燃焼工程においてAu塩を分解することもまた可能である。さらに、酸化ジルコニウム・セラミック120に白金-金ペーストを塗布し、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部ポンプ電極160を形成することもまた可能である。この場合、0.1-10重量%、特に1-5重量%の白金-金ペースト内のAu含有量が有利であることがわかった。」

(オ)図2



2 甲3記載の発明
上記(1)甲2記載の事項の(ア)?(オ)の記載を参照すると、上記甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「イオン伝導性固体電解質(120)と、固体電解質(120)によって相互に分離された電極とを備え、外部電極(160)はガス混合物にさらされ、内部電極(170)は、拡散隔壁(150)によってガス混合物から分離された中空空間(130)内に配置されている、ガス混合物内のガス成分濃度の測定センサの電極の製造方法において、
白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され、この固体が外部電極(160)を形成することを特徴とするガス混合物内のガス成分の濃度測定センサの電極の製造方法。」(以下、「甲3発明」という。)

3 本件特許発明3との対比・判断
(1)対比
本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、本件特許発明3では、「導電性ペーストの製造方法」において、「Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含む」のに対して、甲3では、「白金-金ペースト」である点(以下、「相違点1」という。)、
本件特許発明3では、そのペースとにより形成される検知電極について、「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」のに対して、甲3では、「白金-金ペーストが固体電解質(120)上に塗布され、この白金-金ペーストが共燃焼により固体に変換され」たものである点(以下、「相違点2」という。)で相違する。

(2)検討
事案に鑑み相違点2から検討する。
「検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが被覆している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である」構成は、甲2には記載されていないし、示唆もされていない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲3発明及びに甲2に記載の技術事項基づいて当業者が容易に想到するものとはいえない。
訂正前の請求項3から、訂正事項6により独立形式の新たな特許発明として追加された本件特許発明13についても同様である。

したがって、かかる主張は理由がない。

第14 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について(3)
(1)申立理由4(特許法第36条第4項第1号違反)
ア 本件の特許明細書には、「【0061】 <センサ素子の製造プロセス>
次に、図1ないし図3に例示するような層構造を有する場合を例として、センサ素子101Aないし101Cを製造するプロセスについて説明する。」として、本件特許発明のセンサ素子の製造プロセスが開示されている。

イ その中で「【0078】<検知電極形成用の導電性ペースト>
次に、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストについて説明する。検知電極形成用の導電性ペーストは、Auの出発原料としてAuイオン含有液体を用い、該Auイオン含有液体を、Pt粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって作製する。」、「【0088】 <導電性ペースト作製の別態様>
検知電極形成用の導電性ペーストを作製するにあたっては、上述のようにAu液体混合によって作製する代わりに、Ptの粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料として作製するようにしてもよい。」と記載されている。
そうすると、検知電極形成用の導電性ペーストはPtの粉末がAuに被覆された状態であると認められる。

ウ さらに、「【0072】なお、本明細書において、Au存在比とは、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。本明細書においては、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いてAu存在比を算出するものとする。」と「Au存在比」の測定方法も記載されている。

エ 以上より、発明の詳細な説明は、本件特許発明1について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないものとはいえない。

オ よって、特許異議申立書に記載された特許法第36条第4項第1号に関する特許異議申立理由によっては、本件特許発明1を取り消すべき理由を発見しない。

第15 むすび
以上のとおりであるから、平成28年12月27日付けの取消理由通知に記載した取消理由、平成29年5月11日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1?3、5?11、13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3、5?11、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項12は、本件訂正請求により削除されたので請求項12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

よって、結論の通り決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガスセンサの検知電極、導電性ペーストの製造方法、および、ガスセンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素ガス検知用のガスセンサに関し、特にその検知電極に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定ガス中の所定ガス成分を検知してその濃度を求めるガスセンサには、半導体型、接触燃焼型、酸素濃度差検知型、限界電流型、混成電位型など、種々の方式のものがある(例えば、特許文献1ないし特許文献4参照)。そのなかには、ジルコニアなどの固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料としたセンサ素子に、貴金属を主成分とする電極を設けたものがある。
【0003】
特許文献1および特許文献4には、固体電解質から成るセンサ素子を備えた、限界電流型のガスセンサであって、ポンピング用の電極として、Pt-Au合金からなる電極を備えるものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属酸化物と金とからなる電極と固体電解質との密着性を補うべくPtまたはAuのいずれかを主成分とする薄層を設けたガスセンサが開示されている。
【0005】
特許文献3には、混成電位型のガスセンサであって、第1電極をPt-Auペーストの塗布により形成し、第2電極をPtペーストの塗布およびAuめっきにより形成してなるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3566089号公報
【特許文献2】特許第4405643号公報
【特許文献3】特許第4914447号公報
【特許文献4】特許第5323752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、排ガス規制が強化されたことを受けて、ガソリンエンジンにおける排ガス浄化装置(TWC:三元触媒)における未燃炭化水素浄化性能の故障診断や、ディーゼルエンジンにおける排気ガス浄化装置(DOC:ディーゼル酸化触媒)における未燃炭化水素浄化性能の故障診断の要望が高まっている。これらの用途のために、未燃炭化水素ガスを検出し、その濃度を特定することができるガスセンサが求められている。
【0008】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、Au存在比を高めたPt-Au合金からなる検知電極において、炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化させられ、炭化水素ガス濃度と相関のある混成電位が発現するという知見を得た。そして、係る知見に基づけば、炭化水素ガスを感度よく検知可能なガスセンサが実現されるものと思い至った。
【0009】
なお、特許文献3に開示された発明では、第1の電極および第2の電極が程度の差はあれともに触媒活性を有することを前提としてガス成分濃度を求めるものとなっている。また特許文献2においては、電極の合金組成と検出感度との関係が明確ではない。
【0010】
また、特許文献4には、限界電流型のガスセンサのポンピング電極を、Pt-Au合金にてAu存在比が0.01以上0.3以下となるように形成することで、ポンピング電極における酸素に対する選択的分解能が高めることができること、および、Au存在比が0.3を上回ると電極インピーダンスが増加して好ましくないことが開示されてはいるが、混成電位型のガスセンサについては(当然ながらその検知電極については)、何らの開示も示唆もなされてはいない。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、未燃炭化水素ガスに対する検出感度の優れたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が、0.3以上である、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のガスセンサの検知電極であって、Au存在比が0.7以上である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、を備え、前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、ことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項5に記載のガスセンサであって、少なくとも前記検知電極を被覆する多孔質層である電極保護層、をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、前記センサ素子が、前記被測定ガスが存在する空間と隔絶されてなり、基準ガスが導入される基準ガス導入空間、をさらに備え、前記基準電極が前記基準ガスの雰囲気下に配置される、ことを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項7に記載のガスセンサであって、前記センサ素子が、前記基準ガス導入空間に連通する多孔質層である基準ガス導入層、をさらに備え、前記基準電極が前記基準ガス導入層に被覆されてなる、ことを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項7に記載のガスセンサであって、前記基準電極を前記基準ガス導入空間に露出させて配置してなる、ことを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、前記検知電極と前記基準電極が前記センサ素子の表面に配置されてなる、ことを特徴とする。
【0022】
請求項11の発明は、請求項10に記載のガスセンサであって、前記検知電極と前記基準電極とが電極保護層に被覆されてなる、ことを特徴とする。
【0023】
請求項13の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末と、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
請求項14の発明は、ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、前記貴金属がPtとAuであり、X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、ことを特徴とするものであり、Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1ないし請求項11、請求項13、および請求項14の発明によれば、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に係るガスセンサ100Aの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
【図2】ガスセンサ100Aの変形例であるガスセンサ100Bの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
【図3】第2の実施の形態に係るガスセンサ100Cの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。
【図4】センサ素子101Aないし101Cを作製する際の処理の流れを示す図である。
【図5】Au液体混合にて検知電極形成用の導電性ペーストを作製する場合のAu添加率に対し、当該導電性ペーストを用いて形成した検知電極10におけるAu存在比をプロットした図である。
【図6】Au添加率を6水準に違えて検知電極10を形成した6種のガスセンサ100Aについての、炭化水素ガス濃度とセンサ出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガスセンサ100Aの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。図1(a)は、ガスセンサ100Aの主たる構成要素であるセンサ素子101Aの長手方向に沿った垂直断面図である。また、図1(b)は、図1(a)のA-A’位置におけるセンサ素子101Aの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0029】
本実施の形態に係るガスセンサ100Aは、いわゆる混成電位型のガスセンサである。ガスセンサ100Aは、概略的にいえば、ジルコニア(ZrO_(2))等の酸素イオン伝導性固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料とするセンサ素子101Aの表面に設けた検知電極10と、該センサ素子101Aの内部に設けた基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいて両電極近傍における測定対象たるガス成分の濃度の相違に起因して電位差が生じることを利用して、被測定ガス中の当該ガス成分の濃度を求めるものである。
【0030】
より具体的には、ガスセンサ100Aは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気管内に存在する排ガスを被測定ガスとし、該被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を、好適に求めるためのものである。なお、本明細書において、未燃炭化水素ガスには、C_(2)H_(4)、C_(3)H_(6)、n-C8などの典型的な炭化水素ガス(化学式上、炭化水素に分類されるもの)に加えて、一酸化炭素(CO)も含むものとする。なお、被測定ガス中に複数種類の未燃炭化水素ガスが存在する場合は、検知電極10と基準電極20の間に生じる電位差はそれら複数種類の未燃炭化水素ガスの全てが寄与した値となるので、求められる濃度値も、それら複数種類の未燃炭化水素ガスの濃度の総和となる。
【0031】
また、センサ素子101Aには、上述した検知電極10および基準電極20に加えて、基準ガス導入層30と、基準ガス導入空間40と、表面保護層50とが主に設けられてなる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、センサ素子101Aが、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1固体電解質層1と、第2固体電解質層2と、第3固体電解質層3と、第4固体電解質層4と、第5固体電解質層5と、第6固体電解質層6との6つの層を、図面視で下側からこの順に積層した構造を有し、かつ、主としてそれらの層間あるいは素子外周面に他の構成要素を設けてなるものとする。なお、それら6つの層を形成する固体電界質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101Aは、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0033】
ただし、ガスセンサ100Aがセンサ素子101Aをこのような6つの層の積層体として備えることは必須の態様ではない。センサ素子101Aは、より多数あるいは少数の層の積層体として構成されていてもよいし、あるいは積層構造を有していなくともよい。
【0034】
以下の説明においては、便宜上、図面視で第6固体電解質層6の上側に位置する面をセンサ素子101Aの表面Saと称し、第1固体電解質層1の下側に位置する面をセンサ素子101Aの裏面Sbと称する。また、ガスセンサ100Aを使用して被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度を求める際には、センサ素子101Aの一方端部である先端部E1から少なくとも検知電極10を含む所定の範囲が、被測定ガス雰囲気中に配置され、他方端部である基端部E2を含むその他の部分は、被測定ガス雰囲気と接触しないように配置されるものとする。
【0035】
検知電極10は、被測定ガスを検知するための電極である。検知電極10は、Auを所定の比率で含むPt、つまりはPt-Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。係る検知電極10は、センサ素子101Aの表面Saであって、長手方向の一方端部たる先端部E1寄りの位置に平面視略矩形状に設けられてなる。なお、ガスセンサ100Aが使用される際には、センサ素子101Aのうち、少なくとも係る検知電極10が設けられている部分までが、被測定ガス中に露出する態様にて配置される。
【0036】
また、検知電極10は、その構成材料たるPt-Au合金の組成を好適に定めることによって未燃炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化されてなる。つまりは、検知電極10での未燃炭化水素ガスの分解反応を抑制させられてなる。これにより、ガスセンサ100Aにおいては、検知電極10の電位が、当該未燃炭化水素ガスに対して選択的に、その濃度に応じて変動する(相関を有する)ようになっている。換言すれば、検知電極10は、未燃炭化水素ガスに対しては、電位の濃度依存性が高い一方で、他の被測定ガスの成分に対しては電位の濃度依存性が小さいという特性を有するように、設けられてなる。その詳細については後述する。
【0037】
基準電極20は、センサ素子101Aの内部に設けられた、被測定ガスの濃度を求める際に基準となる平面視略矩形状の電極である。基準電極20は、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。
【0038】
基準ガス導入層30は、センサ素子101Aの内部において基準電極20を覆うように設けられた、多孔質のアルミナからなる層であり、基準ガス導入空間40は、センサ素子101Aの基端部E2側に設けられた内部空間である。基準ガス導入空間40には、未燃炭化水素ガス濃度を求める際の基準ガスとしての大気(酸素)が外部より導入される。
【0039】
これら基準ガス導入空間40と基準ガス導入層30は互いに連通しているので、ガスセンサ100Aが使用される際には基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30を通じて基準電極20の周囲が絶えず大気(酸素)で満たされるようになっている。それゆえ、ガスセンサ100Aの使用時、基準電極20は、常に一定の電位を有してなる。
【0040】
なお、基準ガス導入空間40および基準ガス導入層30は周囲の固体電解質によって被測定ガスと接触しないようになっているので、検知電極10が被測定ガスに曝されている状態であっても、基準電極20が被測定ガスと接触することはない。
【0041】
図1に例示する場合であれば、センサ素子101Aの基端部E2の側において第5固体電解質層5の一部が外部と連通する空間とされる態様にて基準ガス導入空間40が設けられてなる。また、第5固体電解質層5と第6固体電解質層6との間においてセンサ素子101Aの長手方向に延在させる態様にて基準ガス導入層30が設けられてなる。そして、センサ素子101Aの重心の図面視下方の位置に、基準電極20が設けられてなる。
【0042】
表面保護層50は、センサ素子101Aの表面Saにおいて少なくとも検知電極10を被覆する態様にて設けられた、アルミナからなる多孔質層である。表面保護層50は、ガスセンサ100Aの使用時に被測定ガスに連続的に曝されることによる検知電極10の劣化を抑制する電極保護層として設けられてなる。図1に例示する場合においては、表面保護層50は、検知電極10のみならず、センサ素子101Aの表面Saのうち先端部E1から所定の範囲を除くほぼ全ての部分を覆う態様にて設けられてなる。
【0043】
また、図1(b)に示すように、ガスセンサ100Aにおいては、検知電極10と基準電極20との間の電位差を測定可能な電位差計60が備わっている。なお、図1(b)においては検知電極10および基準電極20と電位差計60との間の配線を簡略化して示しているが、実際のセンサ素子101Aにおいては、基端部E2側の表面Saもしくは裏面Sbに図示しない接続端子がそれぞれの電極に対応させて設けられてなるとともに、それぞれの電極と対応する接続端子とを結ぶ図示しない配線パターンが表面Saおよび素子内部に形成されてなる。そして、検知電極10および基準電極20と電位差計60とは配線パターンおよび接続端子を通じて電気的に接続されてなる。以降、電位差計60で測定される検知電極10と基準電極20との間の電位差をセンサ出力とも称する。
【0044】
さらに、センサ素子101Aは、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101Aを加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
【0045】
ヒータ電極71は、センサ素子101Aの裏面Sb(図1においては第1固体電解質層1の下面)に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を図示しない外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
【0046】
ヒータ72は、センサ素子101Aの内部に設けられた電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子101Aを形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0047】
図1に例示する場合であれば、ヒータ72は第2固体電解質層2と第3固体電解質層3とに上下から挟まれた態様にて、かつ、基端部E2から先端部E1近傍の検知電極10の下方の位置に渡って埋設されてなる。これにより、センサ素子101A全体を固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0048】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2固体電解質層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3固体電解質層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0049】
圧力放散孔75は、第3固体電解質層3を貫通し、基準ガス導入空間40に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0050】
以上のような構成を有するガスセンサ100Aを用いて被測定ガスにおける未燃炭化水素ガス濃度を求める際には、上述したように、センサ素子101Aのうち先端部E1から少なくとも検知電極10を含む所定の範囲のみを、被測定ガスが存在する空間に配置する一方で、基端部E2の側は当該空間とは隔絶させて配置し、基準ガス導入空間40に対し大気(酸素)を供給する。また、ヒータ72によりセンサ素子101Aを適宜の温度400℃?800℃に、好ましくは500℃?700℃、より好ましくは500℃?600℃に加熱する。
【0051】
係る状態においては、被測定ガスに曝されてなる検知電極10と大気中に配置されてなる基準電極20との間に電位差が生じる。ただし、上述のように、大気(酸素濃度一定)雰囲気下に配置されてなる基準電極20の電位は一定に保たれている一方で、検知電極10の電位は、被測定ガス中の未燃炭化水素ガスに対して選択的に濃度依存性を有するものとなっているので、その電位差(センサ出力)は実質的に、検知電極10の周囲に存在する被測定ガスの組成に応じた値となる。それゆえ、未燃炭化水素ガス濃度と、センサ出力との間には一定の関数関係(これを感度特性と称する)が成り立つ。
【0052】
そこで、実際に未燃炭化水素ガス濃度を求めるにあたっては、あらかじめそれぞれの未燃炭化水素ガス濃度が既知である、相異なる複数の混合ガスを被測定ガスとしてセンサ出力を測定することで、感度特性を実験的に特定しておく。これにより、ガスセンサ100Aを実使用する際には、被測定ガス中の未燃炭化水素ガスの濃度に応じて時々刻々変化するセンサ出力を、図示しない演算処理部において感度特性に基づき未燃炭化水素ガス濃度に換算することによって、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度をほぼリアルタイムで求めることができる。
【0053】
<第1の実施の形態の変形例>
図2は、ガスセンサ100Aの変形例であるガスセンサ100Bの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。図2(a)は、ガスセンサ100Bの主たる構成要素であるセンサ素子101Bの長手方向に沿った垂直断面図である。また、図2(b)は、図2(a)のB-B’位置におけるセンサ素子101Bの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0054】
ガスセンサ100Bは、ガスセンサ100Aのセンサ素子101Aの基準ガス導入空間40を検知電極10の下方にまで延在させる一方で、基準ガス導入層30を省略し、かつ、基準電極20を基準ガス導入空間40に露出させる態様にて設けたものである。それ以外の構成についてはガスセンサ100Aと同じである。それゆえ、センサ出力の生じ方も、ガスセンサ100Aの場合と同じである。すなわち、ガスセンサ100Bも、ガスセンサ100Aと同様に、いわゆる混成電位型のガスセンサである。
【0055】
よって、以上のような構成を有するガスセンサ100Bにおいても、ガスセンサ100Aによると同様にセンサ素子101Bを配置し、あらかじめ感度特性を特定しておくことで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度を求めることができる。
【0056】
<第2の実施の形態>
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るガスセンサ100Cの構成の一例を概略的に示す断面模式図である。図3(a)は、ガスセンサ100Cの主たる構成要素であるセンサ素子101Cの長手方向に沿った垂直断面図である。また、図3(b)は、図3(a)のC-C’位置におけるセンサ素子101Cの長手方向に垂直な断面を含む図である。
【0057】
ガスセンサ100Cも、ガスセンサ100Aおよび100Bと同様に、いわゆる混成電位型のガスセンサである。ただし、ガスセンサ100Cのセンサ素子101Cは、上述したセンサ素子101Aやセンサ素子101Bとは異なり、検知電極10のみならず基準電極20についてもセンサ素子101Cの表面Saに配置してなるとともに表面保護層50で被覆してなる。なお、それぞれの電極の構成材料自体は、ガスセンサ100Aおよび100Bと同じである。
【0058】
その一方で、内部に基準ガス導入空間40(さらには基準ガス導入層30)および圧力放散孔75は備えていない。その他の構成要素についてはガスセンサ100Aおよび100Bと同様である。なお、図3に示す場合においては、検知電極10と基準電極20とは、長手方向において同じ位置に設けられてなる(図3(b)参照)が、これは必須の態様ではなく、長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0059】
以上のような構成を有するガスセンサ100Cを用いて被測定ガスにおける未燃炭化水素ガス濃度を求める際には、ガスセンサ100Aおよび100Bとは異なり、検知電極10に加えて基準電極20もが被測定ガスに曝される態様にて、センサ素子101Cを配置する。それゆえ、検知電極10と基準電極20とは同じ雰囲気に曝されることになるが、両電極の構成材料はガスセンサ100Aおよび100Bと同じであるので、検知電極10の電位が未燃炭化水素ガス濃度に対して選択的に変動する点も同じである。一方で、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる基準電極20では、検知電極10とは異なり、特定のガス成分に対し触媒活性が抑制されているわけではないことから、結果として、未燃炭化水素ガス以外のガス成分に対する挙動は検知電極10と基準電極20とにおいて同じとなる。それゆえ、ガスセンサ100Cにおいても、センサ出力は実質的に、被測定ガス中に存在する未燃炭化水素ガスに応じて変動することになる。
【0060】
従って、ガスセンサ100Cにおいても、ガスセンサ100Aおよび100Bによると同様に、あらかじめ感度特性を特定しておくことで、被測定ガス中の未燃炭化水素ガス濃度を求めることができる。
【0061】
<センサ素子の製造プロセス>
次に、図1ないし図3に例示するような層構造を有する場合を例として、センサ素子101Aないし101Cを製造するプロセスについて説明する。概略的にいえば、図1ないし図3に例示するセンサ素子101Aないし101Cは、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含むグリーンシートからなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによって作製される。酸素イオン伝導性固体電解質としては、例えば、イットリウム部分安定化ジルコニア(YSZ)などが例示される。
【0062】
図4は、センサ素子101Aないし101Cを作製する際の処理の流れを示す図である。センサ素子101Aないし101Cを作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示せず)を用意する(ステップS1)。具体的には第1ないし第6固体電解質層1?6に対応する6枚のブランクシートが用意される。併せて、表面保護層50を形成するためのブランクシートも用意される。ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が内部空間を構成するグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101Aないし101Cの各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
【0063】
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対して種々のパターンを形成するパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、検知電極10および基準電極20などの電極パターンや、基準ガス導入層30や、図示を省略している内部配線などが形成される。なお、第1固体電解質層1に対しては、後工程において積層体を切断するときに切断位置の基準とされるカットマークも印刷される。
【0064】
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0065】
なお、本実施の形態においては、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストの調製態様が特徴的である。その詳細については後述する。
【0066】
パターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0067】
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。
【0068】
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101Aないし101Cの個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。切り出された素子体を、所定の条件下で焼成することにより、上述のようなセンサ素子101Aないし101Cが生成される(ステップS6)。すなわち、センサ素子101Aないし101Cは、固体電解質層と電極との一体焼成によって生成されるものである。その際の焼成温度は、1200℃以上1500℃以下(例えば1365℃)が好適である。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、センサ素子101Aないし101Cにおいては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
【0069】
このようにして得られたセンサ素子101Aないし101Cは、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100Aないし100Cの本体(図示せず)に組み込まれる。
【0070】
<電極の詳細>
上述のように、ガスセンサ100Aないし100Cにおいては、検知電極10を、未燃炭化水素ガスに対する触媒活性が不能化されるように形成する。これは、検知電極10の導電性成分(貴金属成分)として、主成分である白金(Pt)に加えて金(Au)を含有させることで実現される。
【0071】
具体的には、検知電極10におけるAuの存在比(Au存在比)が0.3以上となるように、検知電極10を形成する。係る場合、検知電極10を基準電極20と同様にPtとジルコニアとのサーメット電極として形成する場合に比して、検出感度が高くなる。
【0072】
なお、本明細書において、Au存在比とは、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。本明細書においては、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いてAu存在比を算出するものとする。
【0073】
なお、Au存在比が0.3以上である場合、検知電極10においては、検知電極10を構成する貴金属粒子の表面にAuが濃化した状態となっている。より詳細には、PtリッチなPt-Au合金粒子の表面近傍に、AuリッチなPt-Au合金が形成された状態となっている。係る状態が実現されてなる場合に、検知電極10における触媒活性が好適に不能化され、検知電極10の電位の未燃炭化水素ガス濃度依存性が高められる。
【0074】
なお、検知電極10における貴金属成分とジルコニアとの体積比率は、5:5から8:2程度であればよい。
【0075】
また、ガスセンサ100Aないし100Cがその機能を好適に発現するには、検知電極10の気孔率が10%以上30%以下であり、検知電極10の厚みは、5μm以上であることが好ましい。特に、気孔率が15%以上25%以下であり、厚みが25μm以上35μm以下であることがより好ましい。
【0076】
また、検知電極10の平面サイズは適宜に定められてよいが、例えば、センサ素子長手方向の長さが2mm?10mm程度で、これに垂直な方向の長さが1mm?5mm程度であればよい。
【0077】
一方、基準電極20については、気孔率が10%以上30%以下であり、厚みが5μm以上15μm以下であるように形成されればよい。また、基準電極20の平面サイズは、図1に例示するように検知電極10に比して小さくてもよいし、図3に例示するように検知電極10と同程度でもよい。
【0078】
<検知電極形成用の導電性ペースト>
次に、検知電極10の形成に用いる導電性ペーストについて説明する。検知電極形成用の導電性ペーストは、Auの出発原料としてAuイオン含有液体を用い、該Auイオン含有液体を、Pt粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって作製する。なお、バインダーとしては、他の原料を印刷可能な程度に分散させることができ、焼成によりすべて焼失するものを適宜選べばよい。係る態様での導電性ペーストの作製を、Au液体混合と称することとする。
【0079】
ここで、Auイオン含有液体とは、Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を、溶媒へ溶解させたものである。Auイオンを含む塩としては、例えばテトラクロロ金(III)酸(HAuCl_(4))、塩化金(III)ナトリウム(NaAuCl_(4))、二シアノ金(I)カリウム(KAu(CN)_(2))などを用いることができる。Auイオンを含む有機金属錯体としては、ジエチレンジアミン金(III)塩化物([Au(en)_(2)]Cl_(3))、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)金(III)塩化物([Au(phen)Cl_(2)]Cl)、ジメチル(トリフルオロアセチルアセトナト)金あるいはジメチル(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)金などを用いることができる。なお、NaやKなどの不純物が電極中に残留しない、取り扱いが容易である、あるいは溶媒へ溶解しやすい、などの観点からは、テトラクロロ金(III)酸やジエチレンジアミン金(III)塩化物([Au(en)_(2)]Cl_(3))を用いることが好ましい。また、溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類の他、アセトン、アセトニトリル、ホルムアミドなどを用いることができる。
【0080】
なお、混合は、滴下などの公知の手段を用いて行うことができる。また、得られた導電性ペースト中においては、Auはイオン(もしくは錯イオン)の状態で存在しているが、上述した作製プロセスを経て得られたセンサ素子101Aないし101Cに形成されてなる検知電極10においては、Auは主として単体あるいはPtとの合金の状態で存在することになる。
【0081】
図5は、Au液体混合にて検知電極形成用の導電性ペーストを作製する場合の、出発原料における全貴金属元素の重量(PtとAuの重量の総和)に対するAuの重量比率(以下、Au添加率と称する)に対し、当該導電性ペーストを用いて形成した検知電極10におけるAu存在比をAu添加率が50wt%以下の範囲においてプロットした図である。
【0082】
図5からは、Au添加率を2wt%以上とした場合、Au存在比が0.3以上となる検知電極10が作製できること、および、Au添加率が大きいほど、Au存在比が大きくなる傾向があることがわかる。すなわち、Au添加率を2wt%以上とした導電性ペーストを用いることで、Au存在比が0.3以上となる検知電極10を好適に形成することができる。ただし、Au添加率は50wt%以下とするのが好ましい。これは、50wt%を上回る導電性の良好な検知電極10の作製が困難となるためである。
【0083】
図6は、Au添加率を0wt%(つまりは添加なし)、0.8wt%、2wt%、10wt%、20wt%、50wt%の6水準に違えて検知電極10を形成した6種のガスセンサ100Aについての、未燃炭化水素ガス濃度(図6では炭化水素濃度と表記)とセンサ出力との関係を示す図である。ただし、縦軸であるセンサ出力は対数目盛にて表している。なお、上記それぞれのAu添加率の場合に実現されるAu存在比は順に、0、約0.2、約0.3、約0.7、約1.1、約3.4?5.5である。
【0084】
なお、未燃炭化水素ガスとしてはC_(2)H_(4)を用い、被測定ガス中における濃度は0ppm、100ppm、300ppm、500ppm、700ppm、1000ppm(Au添加率0wt%の場合は除く)の6水準に設定した。また、被測定ガスは未燃炭化水素ガスの他に5vol%の水(水蒸気)と10vol%の酸素とを含むようにするとともに残余を窒素ガスとした。
【0085】
また、検知電極10の気孔率は20%とし、素子温度は600℃とした。
【0086】
図6に示されるように、Au添加率が0%および0.8wt%の場合(それぞれAu存在比0および0.2に相当)、センサ出力は炭化水素濃度に対してほとんど依存性を示さず、C_(2)H_(4)=1000ppmに対しても10mV程度と小さい。一方、2wt%以上の場合(Au存在比0.3以上)、センサ出力は炭化水素濃度に対して単調増加し、C_(2)H_(4)=1000ppmに対して30mV以上を示した。特に10wt%以上の場合(Au存在比0.7以上)、センサ出力はC_(2)H_(4)=1000ppmに対して200mV以上を示した。
【0087】
以上の結果は、センサ素子の検知電極をAu存在比が0.3以上となるようにAuを含むPt、つまりはPt-Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成することによって検知電極の触媒活性を不能化することで、貴金属成分としてPtのみを含む検知電極を有するものよりも未燃炭化水素に対する検出感度の優れたガスセンサが実現されることを意味している。
【0088】
<導電性ペースト作製の別態様>
検知電極形成用の導電性ペーストを作製するにあたっては、上述のようにAu液体混合によって作製する代わりに、Ptの粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料として作製するようにしてもよい。係る場合、当該コーティング粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって、空所内ポンプ電極用の導電性ペーストを作製する。ここで、コーティング粉末としては、Pt粉末の粒子表面をAu膜にて被覆してなる態様のものを用いるようにしてもよいし、Pt粉末粒子にAu粒子を付着させてなる態様のものを用いるようにしてもよい。
【0089】
この場合も、Au存在比が0.3以上となる検知電極10を好適に形成することができる。
【符号の説明】
【0090】
1?6 第1?第6固体電解質層
10 検知電極
20 基準電極
30 基準ガス導入層
40 基準ガス導入空間
50 表面保護層
60 電位差計
70 ヒータ部
71 ヒータ電極
72 ヒータ
73 スルーホール
74 ヒータ絶縁層
75 圧力放散孔
100A、100B、100C ガスセンサ
101A、101B、101C センサ素子
E1 (センサ素子の)先端部
E2 (センサ素子の)基端部
Sa (センサ素子の)表面
Sb (センサ素子の)裏面
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が、0.3以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサの検知電極であって、
Au存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするガスセンサの検知電極。
【請求項3】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項4】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.3以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項5】
被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質を主たる構成材料とするセンサ素子と、
前記センサ素子の表面に設けられた、請求項1または請求項2に記載の検知電極と、
Ptと酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなる基準電極と、
を備え、
前記検知電極と前記基準電極との間の電位差に基づいて前記炭化水素ガスの濃度を求める、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のガスセンサであって、
少なくとも前記検知電極を被覆する多孔質層である電極保護層、
をさらに備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記被測定ガスが存在する空間と隔絶されてなり、基準ガスが導入される基準ガス導入空間、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガスの雰囲気下に配置される、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子が、
前記基準ガス導入空間に連通する多孔質層である基準ガス導入層、
をさらに備え、
前記基準電極が前記基準ガス導入層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項9】
請求項7に記載のガスセンサであって、
前記基準電極を前記基準ガス導入空間に露出させて配置してなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極が前記センサ素子の表面に配置されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項11】
請求項10に記載のガスセンサであって、
前記検知電極と前記基準電極とが電極保護層に被覆されてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末と、
Auイオンを含む塩もしくは有機金属錯体を溶媒へ溶解させてなるイオン含有液体と、を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【請求項14】
ガスセンサの検知電極の形成に用いる導電性ペーストを、製造する方法であって、
前記ガスセンサが、被測定ガス中の炭化水素ガスの濃度を測定する混成電位型のガスセンサであり、
前記検知電極が、前記ガスセンサに設けられた、前記炭化水素ガスを検知するための検知電極であって、
貴金属と酸素イオン伝導性を有する固体電解質とのサーメットからなり、
前記貴金属がPtとAuであり、
X線光電子分光法により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度に基づいて特定される、前記検知電極を構成する貴金属粒子の表面のうち前記Ptが露出している部分に対する前記Auが露出している部分の面積比率であるAu存在比が0.7以上である、
ことを特徴とするものであり、
Pt粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末を出発原料に含むようにするとともに、
前記導電性ペーストの貴金属成分中の前記Auの重量比率が2wt%以上50wt%以下となるように、前記出発原料を作製する、
ことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-05 
出願番号 特願2015-121843(P2015-121843)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (G01N)
P 1 652・ 537- YAA (G01N)
P 1 652・ 121- YAA (G01N)
P 1 652・ 536- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒田 浩一  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
登録日 2016-02-12 
登録番号 特許第5883976号(P5883976)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 ガスセンサの検知電極、導電性ペーストの製造方法、および、ガスセンサ  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ