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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
管理番号 1335125
異議申立番号 異議2016-701041  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-09 
確定日 2017-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5940496号発明「半硬化物、硬化物およびそれらの製造方法、光学部品、硬化樹脂組成物ならびに化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5940496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項〔17-22〕について訂正することを認める。 特許第5940496号の請求項1ないし17、19ないし22に係る特許を維持する。 特許第5940496号の請求項18に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5940496号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし22に係る特許についての出願は、平成25年7月1日(優先権主張 平成24年9月26日)の特許出願であって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年6月29日に公報が発行され、その後、同年11月9日に本件特許の請求項1ないし22に係る特許に対し、特許異議申立人 枝木幸二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月21日付けで取消理由が通知され、同年4月21日付け(受理日:同年4月24日)意見書が提出され、同年5月16日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年7月10日付け(受理日:同年7月11日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、申立人に対して同年7月18日付けで本件訂正請求があった旨の通知がされたところ、指定期間内に申立人から意見書が提出されなかったものである。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成29年7月10日付け(受理日:同年7月11日)で提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の訂正の内容は以下の(1)ないし(6)のとおりである(なお、合議体により、訂正部分に下線を付した。)。

(1) 訂正事項1
請求項17に
「Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である」
とあるのを、
「Ar^(13)およびAr^(14)のうち1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基であり、Ar^(13)およびAr^(14)の残りは破線で囲まれたベンゼン環からなるアリール基またはヘテロアリール基である」
に訂正する。

(2) 訂正事項2
請求項18を削除する。

(3) 訂正事項3
請求項19の「下記一般式(6)」を「下記一般式(7)」に訂正し、「請求項17または18」を「請求項17」に訂正し、「一般式(6)」との記載および「【化19】」を削除する。

(4) 訂正事項4
請求項20の「前記一般式(6)」を「前記一般式(7)」に訂正し、「(6A)」、「(6B)」、「一般式(6A)」、「一般式(6B)」との記載および【化23】、【化27】を削除する。

(5) 訂正事項5
請求項21の「(5)?(9)、(6A)」、「(6B)」との記載を削除する。

(6) 訂正事項6
請求項22の
「前記一般式(5)?(9)、(6A)、(7A)、(8A)、(9A)、(6B)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれか」
とあるのを
「前記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれか」
と訂正し、
「下記Xa-4?Xa-15」
とあるのを
「下記Xa-4、Xa-6?Xa-11、Xa-14、Xa-15」
と訂正し、【化31】から化合物Xa-5,Xa-12、Xa-13を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適宜
訂正事項1は、Ar^(13)およびAr^(14)の構造を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の「Ar^(13)およびAr^(14)のうち1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基であり、Ar^(13)およびAr^(14)の残りは破線で囲まれたベンゼン環からなるアリール基またはヘテロアリール基である」との特定事項については、一般式(7)、(8)、(9)として具体的に記載があるので、新規事項の追加には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
そして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
請求項18に係る訂正事項2は、訂正事項1に関連して、訂正前の請求項18を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項18の削除するものであるから、新規事項の追加には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項にも適合する。

(3) 訂正事項3
ア 訂正の目的の適否
請求項19における訂正事項3は、訂正事項1に関連して、化合物を表す一般式を限定し、かつ、削除した請求項18の引用を除くものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」および特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
化合物を表す一般式を限定し、かつ、削除した請求項18の引用を除くものであるから、 新規事項の追加には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項にも適合する。

(4) 訂正事項4ないし6
ア 訂正の目的の適否
請求項20ないし22に係る訂正事項4ないし6は、訂正事項1に関連して、化合物を表す一般式を削除して限定したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
化合物を表す一般式を限定し、かつ、削除した請求項18の引用を除くものであるから、 新規事項の追加には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項にも適合する。

3 一群の請求項について
訂正事項による本件訂正は、訂正前の請求項17ないし22を訂正するものであるところ、訂正前の請求項17ないし22は、請求項17の記載を請求項18ないし22で直接又間接的に引用しており、訂正事項1により連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項17ないし22は一群の請求項である。

4 まとめ
以上総括すると、訂正事項1ないし6による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[17-22]について訂正することを認める。


第3 本件発明について
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項17ないし22に係る発明は、平成29年7月10日付け(受理日:同年7月11日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項17、19ないし22に記載された事項により特定されるものであり、また、訂正のない本願特許の請求項1ないし16に係る発明は、特許明細書の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるので、本件特許の請求項1ないし22に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
下記一般式(5)で表される縮合環含有化合物と、
下記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物と、
熱または光ラジカル重合開始剤の少なくとも一方と、を含有することを特徴とする硬化樹脂組成物。
一般式(5)

(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR_(1)?R_(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
一般式(2)
【化2】

【請求項2】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物中、Ar^(13)およびAr^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含む炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物が、下記一般式(6)?(9)のいずれかで表されることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化樹脂組成物。
一般式(6)
【化3】


一般式(7)
【化4】


一般式(8)
【化5】



一般式(9)
【化6】



(一般式(6)?(9)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR_(1)およびR_(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(6)?(9)で表される縮合環含有化合物が、下記一般式(6A)、(7A)、(8A)、(9A)、(6B)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表されることを特徴とする請求項3に記載の硬化樹脂組成物。
一般式(6A)
【化7】



一般式(7A)
【化8】



一般式(8A)
【化9】


一般式(9A)
【化10】


(一般式(6A)、(7A)、(8A)および(9A)中、L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。)
一般式(6B)
【化11】


一般式(7B)
【化11】


一般式(8B)
【化12】


一般式(9B)
【化14】



(一般式(6B)、(7B)、(8B)および(9B)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(11)およびAr^(12)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項5】
前記一般式(5)?(9)、(6A)、(7A)、(8A)、(9A)、(6B)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表される縮合環含有化合物中、L_(1)?L_(4)がそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)がそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表すことを特徴とする請求項4に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物が、下記Xa-4?Xa-15のいずれかであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【化15】


【請求項7】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物に対して、前記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物を2?50質量%含むことを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項8】
熱ラジカル重合開始剤および光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項9】
さらに単官能(メタ)アクリレートモノマーを含み、
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物に対して前記単官能(メタ)アクリレートモノマーを10?80質量%含有することを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする半硬化物の製造方法。
【請求項11】
前記硬化樹脂組成物に対して光照射する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の半硬化物の製造方法。
【請求項12】
前記硬化樹脂組成物に対して、光照射を行って、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10^(5)?10^(8)mPa・sの半硬化物を形成することを特徴とする請求項10または11に記載の半硬化物の製造方法。
【請求項13】
下記一般式(5)で表される縮合環含有化合物と、下記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物と、熱または光ラジカル重合開始剤の少なくとも一方と、を含有し、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10^(5)?10^(8)mPa・sであることを特徴とする半硬化物。
一般式(5)
【化16】


(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R1?R4はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
一般式(2)
【化17】


(一般式(2)中、R_(21)?R_(26)は、それぞれ独立に置換基を表し、R_(21)?R_(26)のうち少なくとも1つが環を形成しているか、少なくとも2つが互いに結合して環を形成している。
)
【請求項14】
請求項10?12のいずれか一項に記載の半硬化物の製造方法によって製造された半硬化物を成形型に入れて加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物を用いたことを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物を用いたことを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項17】
下記一般式(5)で表されることを特徴とする化合物。
一般式(5)
【化18】

(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基であり、Ar^(13)およびAr^(14)の残りは破線で囲まれたベンゼン環からなるアリール基またはヘテロアリール基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)?(9)のいずれかで表されることを特徴とする請求項17に記載の化合物。
一般式(7)
【化20】

一般式(8)
【化21】


一般式(9)
【化22】


(一般式(7)?(9)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項20】
前記一般式(7)?(9)で表される化合物が、下記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表されることを特徴とする請求項19に記載の化合物。
一般式(7A)
【化24】


一般式(8A)
【化25】


一般式(9A)
【化26】


(一般式(7A)、(8A)および(9A)中、L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。)
一般式(7B)
【化28】


一般式(8B)
【化29】


一般式(9B)
【化30】


(一般式(7B)、(8B)および(9B)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(11)およびAr^(12)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項21】
前記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)中、L_(1)?L_(4)がそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)がそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表すことを特徴とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表される化合物が、下記Xa-4、Xa-6?Xa-11、Xa-14、Xa-15のいずれかであることを特徴とする請求項20または21に記載の化合物。
【化31】




第4 申立人が申し立てた申立理由
申立人が申し立てた申立理由の概要および証拠方法は以下のとおりである。
1 申立理由
(1) 特許法第29条第1項第3号について(同法第113条第2号)
訂正前の請求項17ないし22に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、これらに係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2) 特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
ア 請求項1ないし16に係る発明は、甲1に記載された発明および甲2ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 訂正前の請求項17ないし22に係る発明は、甲1に記載された発明および甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3) 特許法第36条第6項第1号について(同法第113条第4号)
訂正前の請求項17ないし22に係る発明は、本件特許発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に記載されておらず、これらの特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである

2 証拠方法
甲1号証:特開2009-57322号公報
甲2号証:特開2009-173648号公報
甲3号証:特解2012-107191号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲3」という。)


第5 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要
当審において平成29年5月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、本件特許発明17ないし22は、特開2009-57322号公報(異議申立人が提出した甲第1号証(甲1))に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明17ないし22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、その特許は取り消すべきものである、というものである。


第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1に記載された事項
(甲1-1)
「【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】


(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Eは酸素原子又は硫黄原子、R^(1)およびR^(2)は、同一又は異なって、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、R^(3)は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基、ヒドロキシアルキル基又はカルボキシル基を示し、R^(4)はアルキレン基を示す。kは0?2の整数、lは0?3の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
【請求項2】
式(1)において、環Zがベンゼン環であり、R^(3)がアルキル基であり、かつmが0?2である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、環Zがナフタレン環である請求項1記載の化合物。」

(甲1-2)
「【0034】
本発明の化合物(ジベンゾフルオレン化合物などということがある)は、ジベンゾフルオレン類(詳細には2,3:6,7-ジベンゾフルオレン類、単にジベンゾフルオレン、フルオレンなどということがある)の9位に、ヒドロキシル基又はメルカプト基を有する芳香族炭化水素環が置換した化合物であり、通常、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
・・・
【0036】
・・・
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC_(8-20)縮合二環式炭化水素、好ましくはC_(10-16)縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式炭化水素としては、縮合多環式芳香族炭化水素(ナフタレン、アントラセンなど)が挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、ジベンゾフルオレン類の9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0037】
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。なお、環Zが、縮合多環式芳香族炭化水素環である場合、ジベンゾフルオレン類の9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、9位に置換するナフチル基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。」

(甲1-3)
「【0120】
[ジベンゾフルオレン化合物の用途]
本発明のジベンゾフルオレン化合物は、ジベンゾフルオレン骨格を有しているとともに、芳香族炭化水素骨格(ベンゼン骨格、ナフタレン骨格など)を有しており、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れており、種々の用途においてこれらの特性を向上又は改善するのに有用である。また、前記骨格により、高い屈折率も有している。さらに、前記のように、芳香族炭化水素骨格の種類を選択することにより、ハンドリング性や反応性をより一層改善したり、線膨張性の低減により寸法安定性を向上することもできる。このため、このようなジベンゾフルオレン化合物は、添加剤、樹脂原料(モノマーなど)などとして好適に用いることができ、前記のような優れた特性を効率よく付与するための化合物として用いることができる。」

(甲1-4)
「【0129】
このような樹脂としては、ジベンゾフルオレン化合物の官能基(ヒドロキシル基又はメルカプト基)の種類に応じて選択でき、種々の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂(又は光硬化性樹脂)が挙げられる。ポリオール成分(例えば、ジオール成分)を重合成分とする樹脂としては、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトンなど)など]、熱硬化性樹脂[例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂(ヒドロキシル基を有する前記ジベンゾフルオレン化合物のポリグリシジルエーテルなど)、ビニルエステル系樹脂、フェノール樹脂、ポリオールポリ(メタ)アクリレート(ヒドロキシル基を有する前記ジベンゾフルオレン化合物のポリ(メタ)アクリレート、又は前記ジベンゾフルオレン化合物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体((メタ)アクリル酸ハライドなど)との反応物など)、ウレタン(メタ)アクリレート]など]などが挙げられる。」

(甲1-5)
「【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有しており、樹脂添加剤、樹脂原料などとして好適に用いることができる。また、本発明のジベンゾフルオレン化合物は、低線膨張性を有しており、樹脂などに適用しても高い寸法精度で成形できる。さらに、本発明のジベンゾフルオレン化合物は、添加剤分散性にも優れ、各種添加剤を含む成形材料としても好適である。例えば、本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂)は、カーボンなどの添加剤を効率よく分散させることができる。そのため、樹脂などに適用すると、前記のような優れた特性を有するとともに、高強度又は高硬度を有する成形体(膜やフィルムなどを含む)を効率よく得ることができる。
【0205】
そのため、本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂、例えば、ポリエステル樹脂)は、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL(エレクトロルミネッセンス)用フィルムなどに好適に利用できる。
・・・
【0206】
特に、本発明のジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂)は、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。・・・」

(甲1-6)
「【0226】
(実施例1)
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3:6,7-ジベンゾ-9-フルオレンの合成
・・・
【0229】
反応式を以下に示す。
【0230】
【化23】



【0231】
(実施例2)
実施例1において、フェノール7.2g(0.076mol)に代えて、2-ナフトール10.9g(0.076mol)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応および回収し、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシナフチル)]-2,3:6,7-ジベンゾ-9-フルオレンを59%の収率で得た。融点は、315?319℃であった。
・・・
【0233】
【化24】



(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記式(1)で表される化合物。


(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Eは酸素原子又は硫黄原子、R^(1)およびR^(2)は、同一又は異なって、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、R^(3)は、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基、ヒドロキシアルキル基又はカルボキシル基を示し、R^(4)はアルキレン基を示す。kは0?2の整数、lは0?3の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。) 」

2 周知技術
(1)ア 特開2009-173648号公報(異議申立人が提出した甲第2号証(甲2))には、次のとおりの記載がある。

(ア-1)
「【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】


(式中、環Zは縮合多環式芳香族炭化水素環、R^(1)はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R^(2)はアルキレン基を示し、R^(3)は水素原子又はメチル基を示し、R^(4)は炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、kは0?4の整数、mは1以上の整数、nは0又は1以上の整数、pは1以上の整数である。)」

(ア-2)
「【0055】
(式(1)で表される化合物の製造方法)
前記式(1)で表される化合物は、特に限定されないが、下記式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とを反応させることにより製造できる。
【0056】
【化8】


【0057】
(式中、Z、R^(1)、R^(2)、R^(4)、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
上記式(2)で表される化合物としては、前記式(1)で表される化合物に対応する化合物、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス(ポリヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス(ポリヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン類などの前記式(2)において環Zがナフタレン環である化合物などが挙げられる。」

(ア-3)
「【0083】
前記式(2)で表される化合物との反応に使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体において、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのC1-4アルキル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸ハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなど)、(メタ)アクリル酸無水物などが挙げられる。
【0084】
(メタ)アクリル酸又はその誘導体の割合は、下記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2?20モル、好ましくは2.2?10モル、さらに好ましくは2.5?5モル程度であってもよい。
【0085】
反応では、適宜、触媒(酸触媒、塩基触媒など)を使用してもよい。酸触媒としては、エステル化酸触媒であれば特に限定されず、例えば、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸など)、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが例示でき、固体化酸・・・などの固体酸触媒も含まれる。酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
・・・
【0090】
反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(有機溶媒)としては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、アニソールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなどのジアルキルケトン類など)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、前記触媒が液体である場合、前記触媒を溶媒として使用してもよい。
【0091】
反応温度や反応時間は、使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体の種類に応じて適宜選択できる。反応時間は、例えば、30分?48時間、通常、1?36時間、好ましくは2?24時間程度である。
【0092】
反応は、還流しながら行ってもよく、副生する水やアルコール類を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。特に、減圧下で反応させると、着色を低減したり、反応時間を短縮できる。
【0093】
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。」

(ア-4)
「【0102】
[式(1)で表される化合物の用途]
本発明の化合物(前記式(1)で表される化合物又は前記方法により得られる化合物)(前記混合物(又は混合化合物)を含む。以下同じ)は、フルオレン骨格(詳細には9,9-ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有しており、高耐熱性、高屈折率、低線膨張性などのフルオレン骨格特有の特性を有している。しかも、このようなフルオレン骨格を有しているにもかかわらず、低粘度でありハンドリング性に優れている。
【0103】
本発明の化合物は、前記のように、高耐熱性などの特性を有し、ハンドリング性にも優れており、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂として好適に使用できる。熱又は光硬化性樹脂は、通常、重合開始剤などを含む樹脂組成物を構成してもよい。本発明には、このような前記化合物を含む樹脂組成物も含む。」

(ア-5)
「【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の化合物は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有しつつ、ハンドリング性においても優れており、種々の熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂用途として使用できる。
【0121】
具体的には、本発明の化合物(又は本発明の化合物を用いて得られる硬化物)は、インク材料、・・・、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、・・・などに好適に使用できる。特に、本発明の化合物は、光学材料用途に好適に利用でき、このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム又はシート状、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。」

(ア-6)
「【0132】
(合成例1)
・・・得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度95.7%で原料として用いたBNF1モルに対して2モルのオキシエチレン基(エトキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、FD-MSにより測定された分子量=530(ピーク)、BNF-EOという)が得られた。
【0133】
【化11】

・・・
【0135】
(合成例2)
・・・得られた白色粉末を分析した結果、HPLCによる純度86.3%で原料として用いたBNF1モルに対して2モルのオキシプロピレン基(プロポキシ基)が付加した目的化合物(下記式で表される化合物、BNF-POという)が得られた(BNF1モルに対して3モルのオキシプロピレン基が付加した化合物が8.7%、BNF1モルに対して1モルのオキシプロピレン基が付加した化合物が4.3%)。
【0136】
【化12】


・・・
【0138】
(実施例1)
合成例1で得られた化合物74.4g(0.138mol)、アクリル酸(東京化成工業(株)製)25.9g(0.359mol)、p-トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)3.28g(0.017mol)、トルエン135g(1.463mol)、及びメトキノン(キシダ化学(株)製)0.3g(0.002mol)を仕込み、100℃?115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去し、粘稠物を得た。さらに、得られた粘稠物の1H-NMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式)であることを確認した。
・・・
【0141】
【化13】



【0142】
(実施例2)
合成例2で得られた化合物78.2g(0.138mol)、アクリル酸(東京化成工業(株)製)25.9g(0.359mol)、p-トルエンスルホン酸(キシダ化学(株)製)3.28g(0.017mol)、トルエン135g(1.463mol)、及びメトキノン(キシダ化学(株)製)0.3g(0.002mol)を仕込み、100℃?115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去し、粘稠物を得た。さらに、得られた粘稠物の1H-NMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式)であることを確認した。
・・・
【0145】
【化14】



イ 特開2012-82386号公報(平成24年4月26日公開)には、次のとおりの記載がある。

(イ-1)
「【請求項6】
前記単官能(メタ)アクリレート(A)と二官能(メタ)アクリレート(B)とジフェニル誘導体(C)と前記フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(Y)の合計を100質量%としたときに、
前記単官能(メタ)アクリレート(A)と二官能(メタ)アクリレート(B)とジフェニル誘導体(C)の合計が30?80質量%である請求項4又は5記載の組成物。」

(イ-2)
「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、紫外線を照射することにより容易に硬化物を得ることができる、低粘度かつ光学材料として利用可能な高屈折率の組成物、及び高屈折率であって透明に優れ、耐光性、金型との離型性がよい硬化物を提供することで、光学材料として利用可能な高屈折の硬化物を提供することができる。
【0023】
従って、本発明の組成物は、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズム等の光学部品に広く適用することができる。」

(イ-3)
「【0061】
〔フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(Y)〕
本発明における、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(Y)(以下、フルオレンアクリレート(Y)と称する)は、フルオレン骨格またはジフェニルフルオレン骨格を有し、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を持つ化合物である。また、フルオレン骨格またはジフェニルフルオレン骨格が複数あってもかまわない。好ましくは、ジフェニルフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であり、より好ましくは1つのジフェニルフルオレン骨格を持つ(メタ)アクリレート化合物である。
【0062】
具体的には、下記一般式(8)
【0063】
【化11】



【0064】
(式中、Lは置換基を有していてもよい芳香族基であり、存在していてもよく、しなくてもよい、R_(1)はHまたはOHであり、R_(2)はHまたはアルキル基であり、nおよびmは0?3の整数を示す)で表されるフルオレン骨格を有する化合物が挙げられる。」

ウ 特開2011-68624号公報には、次のとおりの記載がある。

(ウ-1)
「【請求項1】
酸触媒およびチオール類の存在下、下記式(1)・・・
で表されるフルオレノン類と、下記式(2)・・・
で表されるアルコールとを反応させ、下記式(3)
【化3】

(式中、Z、R^(1)、R^(2)、R^(3)、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
で表される化合物を製造する方法であって、
前記式(2)で表されるアルコールの使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類1モルに対して3モル以上であり、かつ前記チオール類の使用割合が、前記式(1)で表されるフルオレノン類100重量部に対して3重量部以上である製造方法。」

(ウ-2)
「【請求項13】
請求項1?12の製造方法により得られる前記式(3)で表される化合物であって、環Zがベンゼン環およびpが1?4であるか、又は環Zがナフタレン環である化合物。」

(ウ-3)
「【請求項16】
請求項13?15のいずれかに記載の化合物を重合成分とする樹脂であって、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリレートおよびエポキシ樹脂から選択された樹脂。」

(ウ-4)
「【0096】
[式(3)で表される化合物の用途]
前記式(3)で表される化合物は、特定のフルオレン骨格を有しているため、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れており、種々の用途においてこれらの特性を向上又は改善するのに有用である。また、前記骨格により、高い屈折率も有している。このため、このような前記式(3)で表される化合物は、機能性材料[例えば、添加剤(レジスト用添加剤、樹脂用添加剤、硬化剤(樹脂用硬化剤)など)、試薬(医薬、農薬など)の原料又は中間体など](又はその原料又は中間体)、樹脂原料(モノマーなど)などとして好適に用いることができ、前記のような優れた特性を効率よく付与するための化合物として用いることができる。
【0097】
これらの用途の中でも、前記式(3)で表される化合物は、着色において著しく抑制されているので、樹脂原料として好適である。以下に、樹脂原料用途について詳述する。
【0098】
(樹脂原料用途および樹脂)
前記式(3)で表される化合物は、樹脂原料として用いることができる。例えば、前記式(3)で表される化合物は、2以上のヒドロキシル基を有しているため、熱可塑性樹脂のモノマー成分や熱硬化性樹脂(又はその前駆体)として用いることができる。すなわち、このような樹脂は、前記化合物を重合成分とする樹脂である。
【0099】
詳細には、前記樹脂は、ポリオール成分を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂において、前記ポリオール成分の一部又は全部が、前記化合物(又はその誘導体)で構成された樹脂であってもよい。
【0100】
ポリオール成分(例えば、ジオール成分)を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂としては、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトンなど)など]、熱硬化性樹脂[例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂(前記化合物のポリグリシジルエーテルなど)、ビニルエステル系樹脂、フェノール樹脂、ポリオールポリ(メタ)アクリレート(前記化合物(3)のポリ(メタ)アクリレート、又は前記化合物(3)と(メタ)アクリル酸又はその誘導体((メタ)アクリル酸ハライドなど)との反応物など)、ウレタン(メタ)アクリレート]など]などが挙げられる。
【0101】
このようなポリオール成分を単量体成分(又は重合成分)とする樹脂では、ポリオール成分を、前記式(3)で表される化合物で構成することができる。このような樹脂において、前記式(3)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0102】
以下、代表的な樹脂として、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、およびエポキシ樹脂(エポキシ化合物)を詳述する。これらの樹脂は、用途にもよるが、着色を好まない場合が多く、前記化合物をモノマー成分とすることによる有用性は極めて高い。」

(ウ-5)
「【0130】
(ポリ(メタ)アクリレート)
ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0131】
【化8】


【0132】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、Z、R^(1)、R^(2)、R^(3)、k、m、nおよびpは前記と同じ。)
代表的なポリ(メタ)アクリレート(又は前記式(5)で表される化合物)には、例えば、9,9-ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ-アルキルフェニル)フルオレン・・・などが含まれる。
・・・
【0135】
なお、前記ジ(メタ)アクリレートは、例えば、前記式(3)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体[例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのC1-4アルキル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸ハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロライドなど)、(メタ)アクリル酸無水物など]とを反応させることにより製造できる。」

(ウ-6)
「【0210】
(実施例25)
実施例1で得られた9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン43.8g(0.1モル)、アクリル酸18.7g(2.6モル)、p-トルエンスルホン酸2.2g、トルエン98g、及びメトキノン0.21gを仕込み、110℃?115℃で還流しながら理論脱水量を得るまで脱水エステル化反応を行った。その後、反応液をアルカリ中和し、20%食塩水で洗浄を行った。洗浄後、トルエンを除去した。さらに、得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度85%以上)であることを確認した。
そして、得られた化合物の屈折率は1.626、色相(APHA)は20、色差b*は3であった。
【0211】
【化14】




(ウ-7)
「【0216】
(実施例28)
実施例25において、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンに変えて、実施例13で得られた9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンを用いた以外は、実施例25と同様にして、化合物を得た。得られた化合物のNMR分析を行った結果、目的とするジアクリレート(下記式で表される化合物)を主成分とする化合物(HPLC純度80%以上)であることを確認した。そして、得られた化合物の屈折率は1.649、色相(APHA)は500、色差b*は40であった。
【0217】
【化17】




(ウ-8)
「【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明の方法では、着色が著しく抑制されたフルオレン骨格を有するアルコールを得ることができる。このようなアルコールは、着色が低減されているとともに、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れている。そのため、前記アルコールは、樹脂原料や樹脂硬化剤などとして好適に用いることができる。特に、前記アルコールを、エポキシ樹脂(又はその硬化剤)や、アクリル系樹脂(ジ(メタ)アクリレートなど)などの光又は熱硬化性樹脂や、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に適用すると、高耐熱性、高架橋性、高屈折率、高透明性、低線膨張率などの優れた特性が効率よく付与されているとともに、着色が著しく低減された樹脂やその成形体を得ることができる。・・・また、前記アクリル系樹脂は、光学材料用途、例えば、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに有用である。」

(2) 周知技術の認定
上記(1)の記載によれば、本件優先日当時、ヒドロキシ基を有するフルオレン骨格の化合物を、(メタ)アクリル酸(誘導体)と反応させてフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物とし、当該化合物をモノマーとして用いてレンズなどの光学物品を成形することは、当業界において周知であったと認められる。

3 当審の判断
(1) 本件特許発明17について
本件特許発明17と甲1発明とを対比すると、本件特許発明17の式(5)の化合物は、訂正により、フルオレン骨格部分について、破線で囲まれたAr^(13)とAr^(14)のうちの1つはベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基であり、Ar^(13)とAr^(14)の残りはベンゼン環からなるアリール基又はヘテロアリール基を有するものとなったので、フルオレン骨格の両端のベンゼン環がいずれも縮合環である甲1発明の化合物のフルオレン骨格部分とは異なるものとなり、両発明における一致点は存在しない。
そして、甲1の記載および甲2等の周知技術を開示した文献をみても、フルオレン骨格の両端の縮合環となっているベンゼン環を縮合していないベンゼン環とする動機付けとなる記載はなく、また、これが本件優先日時点の技術常識であったとの事情もない。
そうすると、本件特許発明17は、甲1発明、甲1に記載された事項及び周知技術(甲2等)に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2) 本件特許発明19ないし22について
請求項19ないし22は、請求項17を直接又は間接的に引用しており、本件特許発明19ないし22は、本件特許発明17にさらに限定を付したものであるから、本件特許発明17と同様に判断される。
すなわち、本件特許発明19ないし22は、甲1発明、甲1に記載された事項及び周知技術(甲2等)に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(3) 小括
したがって、本件特許発明17,19ないし22は、甲1発明、甲1に記載された事項及び周知技術(甲2等)に基いて当業者が容易に発明することができたものではなく、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2項に該当せず、取り消すべきものではない。
よって、甲1に基づく取消理由には理由がない。


第7 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号に対する申立てについて
(1) 申立人の主張
申立人は、訂正前の請求項17ないし22に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、これらに係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨の主張をしている。

(2) 判断
しかしながら、第6で検討したように、訂正された請求項17、19ないし22に係る発明の化合物は、甲1に記載ないし示唆がないので、上記申立人の主張は理由がない。

2 本件特許発明1ないし16に対する特許法第29条第2項に対する申立てについて
(1) 申立人の主張
申立人は、請求項1ないし16に係る発明は、甲1に記載された発明および甲2ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨の主張をしている。

(2) 判断
ア 本件特許発明1について
甲1発明と本願特許発明1を比較すると、両発明は、化合物について、
「 下記式で表される化合物。


(一般式中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr14はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。また、X^(1)とX^(2)は置換基である。)」
である点で一致するものの、次の点で相違している。

<相違点1>
化合物の置換基であるX^(1)、X^(2)について、本件特許発明1は、X^(1)=-
L_(1)-R_(5)-L_(5)-C(R_(9))=CH_(2)、X^(2)=-L_(2)-R_(6)-L_(6)-C(R_(10))=CH_(2)(L_(1)?L_(2)はそれぞれ単独に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(6)はそれぞれ単独に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(1)?L_(2)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(6)?R_(10)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す)であるのに対し、甲1発明は、X^(1)、X^(2)=-(OR_(4))_(n)-E-H (Eは酸素原子又は硫黄原子、R_(4)はアルキレン基、n=0以上の整数)である点。

<相違点2>
本件特許発明1は、上記相違点1において甲1発明とは異なる特定を有する一般式(5)の化合物に、一般式(2)で示される非ビニリデン基含有化合物と、熱又はラジカル重合開始剤の一方とを配合した組成物に係る発明であるのに対し、甲1発明は、上記相違点1において異なる特定を有する化合物に係る発明であって、当該一般式(5)の化合物を含む硬化性組成物とする特定がない点。

まず、相違点2について検討する。
甲2には、本願特許発明1の一般式(5)とは異なる、フルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレートが記載されているが(甲2の特許請求の範囲)、本件特許発明1に係る「一般式(2)の非ビニリデン基含有化合物と、熱又はラジカル重合開始剤の一方を含有する硬化樹脂組成物」の記載はなく、また、この点について、甲1発明を甲2発明と組み合わせる動機付けはない。
また、甲3には、(メタ)アクリレートモノマーと非共役ビニリデン基含有化合物と熱ラジカル重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物が開示され(特許請求の範囲)、光学的用途に用いることが記載されてはいるものの(請求項16)、段落【0041】には、(メタ)アクリレートモノマーは脂環式を有する二価の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい旨の記載がされており、硬化性樹脂組成物において、芳香族環を有する甲1発明の化合物を(メタ)アクリルモノマーを構成する材料として使用することを示唆する記載はない。そうすると、甲1発明と甲3に記載された事項とを組み合わせる動機付けがない。
よって、相違点1を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明および甲2ないし3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、上記申立理由には理由がない。

イ 本件特許発明2ないし16について
請求項2ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明2ないし16は、本件特許発明1と同様に判断され、上記申立理由には理由がない。
また、本件特許発明13は、本件特許発明1と同じ成分からなる硬化性樹脂組成物を半硬化した半硬化物の発明であるから、本件特許発明1と同様に判断され、上記申立理由には理由がない。

3 特許法第36条第6項第1号に対する申立てについて
(1) 申立人の主張
申立人は、訂正前の請求項17ないし22に係る発明は、「成形時のバリの発生を抑制され、低アッペ数である硬化物を製造することができる硬化樹脂組成物を提供する」という本件特許発明の課題を解決できることが発明の詳細な説明に記載されていないから、これらの特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである旨の主張をしている。

(2) 判断
訂正された請求項17、19ないし22に係る発明は、化合物に係る発明であるから、その課題は、成形時のバリ発生抑制および金型離型性の改善との特性と低アッペ数とを両立できる硬化樹脂組成物に使用できる新規な化合物を提供することにあるといえる。
そして、請求項17、19ないし22に係る化合物と、非共役ビニリデン基含有化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む硬化樹脂組成物は、成形時のバリ発生抑制及び金型離型性の改善との特性と低アッペ数を両立できることが実施例(表1)に示され、当該化合物の量が少なくなれば金型離型性に劣る結果となっているから(実施例29)、当該化合物が、上記効果の両立に全く寄与せず、本件特許発明に係る課題を解決しないとまでいえるものではない。
よって、上記申立理由には理由がない。


第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、請求項1ないし17、19ないし22に係る特許を
取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし17、19ないし22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項18に係る特許は、本件訂正の請求による訂正により削除されたため、請求項18に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(5)で表される縮合環含有化合物と、
下記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物と、
熱または光ラジカル重合開始剤の少なくとも一方と、を含有することを特徴とする硬化樹脂組成物。
一般式(5)
【化1】

(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に置換基を表し、R^(21)?R^(26)のうち少なくとも1つが環を形成しているか、少なくとも2つが互いに結合して環を形成している。)
【請求項2】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物中、Ar^(13)およびAr^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含む炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物が、下記一般式(6)?(9)のいずれかで表されることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化樹脂組成物。
一般式(6)
【化3】

一般式(7)
【化4】

一般式(8)
【化5】

一般式(9)
【化6】

(一般式(6)?(9)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(6)?(9)で表される縮合環含有化合物が、下記一般式(6A)、(7A)、(8A)、(9A)、(6B)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表されることを特徴とする請求項3に記載の硬化樹脂組成物。
一般式(6A)
【化7】

一般式(7A)
【化8】

一般式(8A)
【化9】

一般式(9A)
【化10】

(一般式(6A)、(7A)、(8A)および(9A)中、L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。)
一般式(6B)
【化11】

一般式(7B)
【化12】

一般式(8B)
【化13】

一般式(9B)
【化14】

(一般式(6B)、(7B)、(8B)および(9B)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(11)およびAr^(12)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項5】
前記一般式(5)?(9)、(6A)、(7A)、(8A)、(9A)、(6B)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表される縮合環含有化合物中、L_(1)?L_(4)がそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)がそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表すことを特徴とする請求項4に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物が、下記Xa-4?Xa-15のいずれかであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【化15】


【請求項7】
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物に対して、前記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物を2?50質量%含むことを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項8】
熱ラジカル重合開始剤および光ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項9】
さらに単官能(メタ)アクリレートモノマーを含み、
前記一般式(5)で表される縮合環含有化合物に対して前記単官能(メタ)アクリレートモノマーを10?80質量%含有することを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか一項に記載の硬化樹脂組成物を硬化する工程を含むことを特徴とする半硬化物の製造方法。
【請求項11】
前記硬化樹脂組成物に対して光照射する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の半硬化物の製造方法。
【請求項12】
前記硬化樹脂組成物に対して、光照射を行って、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10^(5)?10^(8)mPa・sの半硬化物を形成することを特徴とする請求項10または11に記載の半硬化物の製造方法。
【請求項13】
下記一般式(5)で表される縮合環含有化合物と、下記一般式(2)で表される非共役ビニリデン基含有化合物と、熱または光ラジカル重合開始剤の少なくとも一方と、を含有し、
25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10^(5)?10^(8)mPa・sであることを特徴とする半硬化物。
一般式(5)
【化16】

(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
一般式(2)
【化17】

(一般式(2)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に置換基を表し、R^(21)?R^(26)のうち少なくとも1つが環を形成しているか、少なくとも2つが互いに結合して環を形成している。)
【請求項14】
請求項10?12のいずれか一項に記載の半硬化物の製造方法によって製造された半硬化物を成形型に入れて加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る熱重合工程を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物を用いたことを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物の製造方法によって製造された硬化物を用いたことを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項17】
下記一般式(5)で表されることを特徴とする化合物。
一般式(5)
【化18】

(一般式(5)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。Ar^(13)およびAr^(14)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(13)およびAr^(14)のうちの1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基であり、Ar^(13)およびAr^(14)の残りは破線で囲まれたベンゼン環からなるアリール基またはヘテロアリール基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、eおよびfの上限値はそれぞれ5-aおよび5-bであり、gおよびhの上限値はそれぞれAr^(13)およびAr^(14)が有することができる置換基の数からcまたはdを減じた値である。但し、Ar^(11)?Ar^(14)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、a、b、cおよびd個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項18】(削除)
【請求項19】
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(7)?(9)のいずれかで表されることを特徴とする請求項17に記載の化合物。
一般式(7)
【化20】

一般式(8)
【化21】

一般式(9)
【化22】

(一般式(7)?(9)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表す。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項20】
前記一般式(7)?(9)で表される化合物が、下記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表されることを特徴とする請求項19に記載の化合物。
一般式(7A)
【化24】

一般式(8A)
【化25】

一般式(9A)
【化26】

(一般式(7A)、(8A)および(9A)中、L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。)
一般式(7B)
【化28】

一般式(8B)
【化29】

一般式(9B)
【化30】

(一般式(7B)、(8B)および(9B)中、Ar^(11)およびAr^(12)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を含むアリール基またはヘテロアリール基を表し、Ar^(11)およびAr^(12)のうち少なくとも1つは破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である。L_(1)?L_(4)はそれぞれ独立に単結合、酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)はそれぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、L_(5)?L_(8)はそれぞれ独立にエステル結合を表し、R_(9)?R_(12)はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはそれぞれ独立に1?5の整数を表し、cおよびdはそれぞれ独立に0の整数を表す。R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立に置換基を表し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。但し、Ar^(11)およびAr^(12)がそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環を縮合環のひとつとして含む芳香族縮合環基である場合は、aおよびb個の括弧で囲まれた構造ならびにR^(1)およびR^(2)はそれぞれ独立に破線で囲まれたベンゼン環に置換していても、破線で囲まれたベンゼン環以外の環に置換していてもよい。)
【請求項21】
前記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)中、L_(1)?L_(4)がそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R_(5)?R_(8)がそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキレン基を表すことを特徴とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記一般式(7A)、(8A)、(9A)、(7B)、(8B)および(9B)のいずれかで表される化合物が、下記Xa-4、Xa-6?Xa-11、Xa-14、Xa-15のいずれかであることを特徴とする請求項20または21に記載の化合物。
【化31】


 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-18 
出願番号 特願2013-138415(P2013-138415)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松元 洋  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
岡崎 美穂
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5940496号(P5940496)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 半硬化物、硬化物およびそれらの製造方法、光学部品、硬化樹脂組成物ならびに化合物  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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