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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01J |
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管理番号 | 1335141 |
異議申立番号 | 異議2017-700007 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-01-06 |
確定日 | 2017-11-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5947939号発明「チタン含有粉末、排ガス処理触媒及びチタン含有粉末の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5947939号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを認める。 特許第5947939号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5947939号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成22年12月28日に出願した特願2010-292986号の一部を、平成27年3月10日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされ、登録後の経緯は以下のとおりである。 平成29年 1月 6日付け:特許異議申立人 坂田 純子による特許 異議の申立て 同年 3月24日付け:取消理由の通知 同年 5月26日付け:意見書の提出 同年 6月13日付け:取消理由の通知(決定の予告) 同年 8月16日付け:訂正請求書及び意見書の提出 同年 9月28日付け:特許異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 (1)訂正の内容 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「(a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと」とある技術的事項を、「(a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)。」と訂正することを請求する。 また、特許権者は、明細書の段落【0006】に記載された「(a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと」を、【請求項1】における訂正と同様に、「(a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)。」と訂正することを請求する(訂正事項2)。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明から引用発明と重複する部分を除外するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。よって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 次に、訂正事項2は、上記の訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 そして、訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 (小括) 上述のとおり、上記の訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?7について訂正を認める。 第3 本件特許発明 特許第5947939号の請求項1?7に係る発明(以下「本件特許発明1?7」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された以下のとおりのものと認める。 【請求項1】 二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末において、下記(a)?(c)を備えることを特徴とするチタン含有粉末(バナジウムの酸化物を含むものを除く)。 (a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)。 (b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12?40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10?38nmの範囲にあること。 (c)硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有すること。 【請求項2】 活性成分を含むものを除くことを特徴とする請求項1に記載のチタン含有粉末。 【請求項3】 前記チタン複合酸化物がチタンと、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のチタン含有粉末。 【請求項4】 前記チタン含有粉末は99.9質量%以上が45μm以下の粒子径であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のチタン含有粉末。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のチタン含有粉末と、活性成分と、を含有し、当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%以上であることを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒。 【請求項6】 前記活性成分は、酸化バナジウムであることを特徴とする請求項5記載のハニカム状排ガス処理触媒。 【請求項7】 前記ハニカム状排ガス処理触媒が窒素酸化物除去触媒であることを特徴とする請求項5又は6記載のハニカム状排ガス処理触媒。 第4 甲各号証の記載事項 先の取消理由で引用された、本件特許の原出願日(平成22年12月28日)前に頒布された刊行物、若しくは本件特許の原出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと認められる技術事項が記載された文書である甲第1?13号証のうち、特に甲第1?3、5、6、9、10号証には、以下の記載がある。 甲第1号証:特開平10-235206号公報 甲第2号証:ローヌ・プーラン社のグループ会社であるタン・エト・ミュルーズ社が発行した二酸化チタン製品(TITAFRANCE DT51)のカタログ 甲第3号証:クリスタル・グローバル社のグループ会社であるミレニアム・インオーガニック・ケミカルズ・リミテッド社が発行した二酸化チタン製品(Tiona DT51)の分析証明書 甲第4号証:米国地質調査所のホームページ、「Minerals Information」の「Titanium Statistics and Information」と題するページ;URL:https://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/titanium/)(印刷日:平成29年1月5日) 甲第5号証:米国地質調査所のホームページ、「Minerals Information」の「Titanium Statistics and Information」と題するページに掲載の「Minerals Yearbook」と題する定期刊行物の1997年版「TITANIUM」のページ;URL:https://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/titanium/670497.pdf(印刷日:平成28年12月27日) 甲第6号証:米国地質調査所のホームページ、「Minerals Information」の「Titanium Statistics and Information」と題するページに掲載の「Minerals Yearbook」と題する定期刊行物の1998年版「TITANIUM」のページ;URL:https://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/titanium/670498.pdf(印刷日:平成28年12月27日) 甲第7号証:特開2003-290656号公報 甲第8号証:特開2004-880号公報 甲第9号証:特開2010-17687号公報 甲第10号証:特開2004-943号公報 甲第11号証:特開2005-144299号公報 甲第12号証:特開2005-319422号公報 甲第13号証:特開2006-255641号公報 (1)甲第1号証 a「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は脱硝触媒、すなわち窒素酸化物(NOx)除去用触媒、この触媒の調製に好適な脱硝触媒の調製方法、およびこの脱硝触媒を用いて排ガス中の窒素酸化物を還元除去する方法に関する。」 b「【0029】方法Cは、予めタングステン酸化物を担持したチタン酸化物、またはチタン酸化物とタングステン酸化物との均密混合物にバナジウム酸化物および/またはタングステン酸化物を担持する方法である。・・・ 【0030】上記方法Cによって得られる脱硝触媒は脱硝性能に優れている。」 c「【0036】実施例1 市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)20kgにメタバナジン酸アンモニウム1.4kg、シュウ酸1.7kgおよびモノエタノールアミン0.4kgを水5L(リットル)に溶解させた溶液を加え、さらにフェノール樹脂(ベルパール(商品名)、カネボウ(株)製)1kgと成形助剤としてのデンプン0.5kgとを加えて混合し、ニーダーで混練りした後、押出成形機で外形80mm角、目開き4.0mm、肉厚1.0mm、長さ500mmのハニカム状に成形した。次いで、80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成して触媒Aを得た。 【0037】上記フェノール樹脂は、平均粒子径20μm、熱分解温度450℃、分解時の発熱量8kcal/gであった。 【0038】触媒Aの組成は、V_(2)O_(5):TiO_(2)=5:95(重量比)であった。触媒Aの細孔径分布を水銀圧入式ポロシメーターにより測定したところ、ピーク強度比は0.77であり、第二細孔群の孔径分布のピーク半値幅は0.13μmであった。全細孔容積は0.35cc/gであり、第一および第二細孔群の細孔容積はそれぞれ全細孔容積の44%および48%であった。また、BET表面積は68m^(2)/gであり、バナジウム酸化物(V_(2)O_(5))の、触媒の単位表面積当りの含有量は3.8×10^(-6)mol/m^(2)であった。触媒Aの細孔径分布を図2に示した。」 (2)甲第2号証 d「2-CHEMICAL IDENTITY, ASPECT, GENERAL PROPERTIES AND CARACTERISTICS ・・・ Crystallographical structure : anatase Particle size (Cristallites) : 15 --- 25 nanometers Diameter distribution (laser diffraction) : D10=0.5 D50=1.2 D90=2.5(μm)」 (当審訳:2-化学的同一性、相、一般的な性質及び特性 ・・・ 結晶構造:アナターゼ 粒子サイズ(結晶):15?25ナノメートル 粒径分布(レーザー回折):D10=0.5 D50=1.2 D90=2.5(μm)) (3)甲第3号証 e「 」 f「 」 (4)甲第5号証 g「France. - Millennium agreed to acquire Rhone-Poulenc's Thann et Mulhouse S.A.」(第5ページ左欄第9?10行) (当審訳:フランス - ミレニアムは、ローヌ・プーランのタン・エト・ミュルーズS.A.を買収することに合意した。) (5)甲第6号証 h「France. - Millennium Chemicals Inc. acquired Thann et Mullhouse S.A., a subsidiary of Rhone-Poulenc S.A.」(第79.5ページ左欄第22?23行) (当審訳:フランス - ミレニアム・ケミカルス・インコーポレイテッドは、ローヌ・プーランS.A.の子会社であるタン・エト・ミュルーズS.A.を買収した。) (6)甲第9号証 i「【0001】 本発明は排ガス浄化用触媒およびその製造法に係り、特に二酸化硫黄(SO_(2))濃度が高い排ガス中に含まれる、窒素酸化物及び金属水銀を除去するための排ガス浄化用触媒およびその方法に関する。」 j「【0019】 次に、具体的な実施例により詳細に示す。 実施例1 水72.7kg、コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名OSゾル)37.2kg、メタバナジン酸アンモニウム2.465kg、酸化チタンとシリカの複合酸化物(SiO_(2)含有量10重量%、TiO_(2)結晶子径150Å)27.8kg、およびメタタングステン酸アンモニウム(WO_(3)として92%)4.07kgを混合し脱硝触媒用コーティング液を作成した。このコーティング液中のTi/W/V比は原子比で89/5/6である。 【0020】 一方、酸化チタン(石原産業社製、商品名MC50、結晶子径250Å)、メタタングステン酸アンモニウム、コロイダルシリカ(日産化学社製、OSゾル)、シリカアルミナ無機繊維(ITM社製)及び水を、ニーダを用いて混練してペーストを得た。得られたペーストを厚さ0.2mmのSUS430製鋼板をメタルラス加工した基材の上に置き、これを二枚のポリエチレンシートに挟んで一対の加圧ローラを通して、前記メタルラス基材の網目間及び表面に塗布後乾燥し、担体Aを得た。担体AのTi/Wは原子比で96/4、コーティング層の重量は135g/m^(2)であった。 担体A(500×500mm)をコーティング剤に含浸した後液切りし、150℃で2時間乾燥した後、500℃で2時間焼成し、本発明の触媒を得た。 ・・・ 【0023】 実施例6 実施例1の酸化チタン(石原産業社製、MC50、結晶子径250Å)を、酸化チタン(ミレニアム社製、商品名DT51、結晶子径150Å)に変え、また、実施例1の酸化チタンとシリカの複合酸化物を、TiO_(2)結晶子径100Åの原料に変える以外は、実施例1と同様にして本発明の触媒を得た。コーティング層の重量は、120g/m^(2)であった。」 k「 」 (7)甲第10号証 l「【0027】 また、本発明のハニカム状排ガス処理触媒用二酸化チタン粉末は、99.9重量%以上が45μm以下の粒子径であることが好ましい。該二酸化チタン粉末の粒子径の45μm以下が99.9重量%より少ない場合、即ち、45μmより大きい粒子径の二酸化チタン粉末が0.1重量%より多い場合には、押出成形した際に隔壁が欠落したハニカム構造体が得られることがある。」 第5 甲第1号証を主たる引用例とする取消理由 1.引用発明1、2 甲第1号証の摘示箇所a、cから、甲第1号証には、「ハニカム状に成形した、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する触媒を得るために用いられる、 市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)。」(引用発明1)が記載されている。 また、甲第1号証の実施例1には、「市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)20kg、メタバナジン酸アンモニウム1.4kg、シュウ酸、モノエタノールアミン、水、フェノール樹脂、デンプンを混合し、ハニカム状に成形し、焼成して得られた、V_(2)O_(5):TiO_(2)=5:95(重量比)の組成を有する、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する触媒。」(引用発明2)も記載されている。(摘示箇所c) 2.対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)」は、本件特許発明1の「二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含む」「チタン含有粉末」に相当し、引用発明1が、「ハニカム状に成形した、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する触媒を得るために用いられる」ことは、本件特許発明1の、「ハニカム状排ガス処理触媒の原料用」であることに相当する。 したがって、本件特許発明1と引用発明1とは、下記の点で一致し、下記の点で一応相違する。 一致点:「二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末。」 相違点1:本件特許発明1は、バナジウムの酸化物を含むものを除くものであるのに対し、引用発明1は、バナジウムの酸化物を含有するかどうか明らかでない点。 相違点2:本件特許発明1は、リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含む(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)ものであるのに対し、引用発明1は、P_(2)O_(5)を含有するかどうか明らかでない点。 相違点3:本件特許発明1は、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径について、チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12?40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10?38nmの範囲にあるのに対し、引用発明1は、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径が明らかでない点。 相違点4:本件特許発明1は、硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有するものであるのに対し、引用発明1は、硫酸根を含有するかどうか明らかでない点。 イ 上記相違点1?4について検討するに、まず、甲第2号証には、ローヌ・プーラングループ(GROUPE RHONE-POULENC)の、タン・エト・ミュルーズ社(THANN ET MULHOUSE)による、「TITAFRANCE DT51」が、アナターゼ型の結晶構造を有し、15?25nmの「粒子サイズ(結晶)」を有し、D50=1.2μm、D90=2.5μmのレーザー回折による粒径分布を有することが記載されている。(摘示箇所d) 次に、甲第3号証には、ミレニアム・インオーガニック・ケミカルズ(MILLENNIUM INORGANIC CHEMICALS)が販売する「Tiona DT51」が、1.2?1.5%のSO_(3)、0.05?0.08%のP_(2)O_(5)を含有することが記載されており、また、バナジウムについては記載がない。(摘示箇所e、f) そして、甲第4?6号証から、少なくとも1998年には、ミレニアム社が、ローヌ・プーラングループの子会社であるタン・エト・ミュルーズ社を買収していたことが理解される。(摘示箇所g、h) すなわち、上記甲第4?6号証の記載から、引用発明1の「市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)」と、甲第2号証に記載されている、ローヌ・プーラングループのタン・エト・ミュルーズ社による「TITAFRANCE DT51」と、甲第3号証に記載されている、ミレニアム社による「Tiona DT51」とは、当業者に同じ物質として認識されていたものといえる。 すると、引用発明1の「市販の酸化チタン粉体(DT-51(商品名)、ローヌ・プーラン社製)」は、1.2?1.5%のSO_(3)と、0.05?0.08%のP_(2)O_(5)とを含有し、かつ、有意にバナジウムを含有しないものといえる。 そして、上記「1.2?1.5%のSO_(3)」は、SO_(4)に換算すると「1.4?1.8%のSO_(4)」となるから、本件特許発明1の、「硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有する」ものに相当する。 以上をまとめると、上記相違点1、4は、実質的な相違点ではないといえる。しかしながら、相違点2は、訂正により0.05?0.08質量%の範囲が本願発明から除外されている以上、実質的な相違点であるといえる。この点について、甲第2号証及び甲第3号証には、P_(2)O_(5)の含有量の上限値が仕様上0.4%である旨も記載されているから、市販されたDT-51に、P_(2)O_(5)を0.05質量%未満、又は0.08?0.4質量%含有する商品も存在していた可能性があるが、それを裏付ける証拠はない。まして、引用発明1において、P_(2)O_(5)が0.05?0.08質量%の範囲内にないDT-51を利用する積極的な理由は認められないし、0.05?0.08質量%の範囲外でP_(2)O_(5)を含有させることによる効果を予測することもできない。 ウ 相違点3について、甲第2号証の摘示箇所dには、「粒子サイズ」が「結晶」のものと明示されていること、及び、μmオーダーのレーザー回折による粒径分布が別途記載されていることからみて、当該「粒子サイズ(結晶)」は、粒子自体の大きさではなく、結晶の大きさ、すなわち本件特許発明1の「結晶子径」に相当するものといえる。 そして、ナノオーダーの結晶子径は、X線回折ピークの幅を用いてScherrerの式により算出することが当業者に周知慣用の技術事項であるところ、例えば以下に示すKheamrutai THAMAPHAT et al., "Phase Characterization of TiO_(2) Powder by XRD and TEM", Kasetsart J. (Nat. Sci.), vol.42, issue 5, pp.357-361の図2にも記載のとおり、アナターゼ型のTiO_(2)において、(101)面が最も強度の強いピークを示すことは当業者の技術常識である。 してみれば、同じくアナターゼ型のTiO_(2)に関する甲第2号証に記載された「粒子サイズ(結晶)」は、算出に用いたピークについて特段の記載がない以上、最も強度の強い回折面である「アナターゼ型結晶(101)面」のピークから算出された「結晶子径」であると考えることが合理的である。 エ なお、この点について特許権者は、平成29年5月26日付けの意見書において乙第1、2号証を提出し、乙第1号証の【0033】には、結晶子径を「X線回折法(TiO_(2)の(100)ピークの半価幅から計算」したことが記載され、また、乙第2号証の【0008】には、「平均結晶子径は二酸化チタンの(110)面のX線回折ピークより、後記のScherrerの公式・・・を用いて算出した」ことが記載されているように、二酸化チタンのアナターゼ型結晶の特定の結晶面に着目して結晶子径を測定し、その値を特定するための種々の手法が存在し、ただ一つの手法に限定することはできない、すなわち、アナターゼ型結晶であれば必然的に(101)面という特定の結晶面に特定されることになる、とはいえない旨主張している。(意見書第7?10ページ) しかしながら、まず、乙第2号証は、針状二酸化チタン微粒子について、【0014】に、「特にルチル型のものが生成すると推測される」と記載されているとおり、アナターゼ型の二酸化チタンに関する記載であるとはいえない。 加えて、先に示した図1に記載のとおり、ルチル型のTiO_(2)において、(110)面が最も強度の強いピークを示すことは当業者の技術常識であり、「特にルチル型のものが生成すると推測される」乙第2号証における結晶子径の算出に関し、最も強度の強い回折面のX線回折ピークを用いることは甲第2号証と同じく合理的であり、それ故に(110)面のX線回折ピークが用いられたというべきである。 また、乙第1号証についてみたとき、乙第1号証の酸化チタンは、アナターゼ型のものであるか明らかでない。 仮に、乙第1号証の酸化チタンがアナターゼ型であったとしても、乙第1号証で結晶子径が測定された実施例20?28、比較例15?26はいずれも、酸化チタンにケイ酸エチルを添加し乾燥させた後、五酸化バナジウム、三酸化タングステン、三酸化モリブデンといった活性成分と反応させて得られた触媒を測定したものであり、純粋な二酸化チタンのアナターゼ型結晶を測定したものであるとはいえない。 上記のとおり、乙第1、2号証はいずれも二酸化チタンのアナターゼ型結晶に関するものとはいえないから、特許権者の上記主張は妥当なものとはいえず、採用できない。 オ 他に、特許権者は、平成29年8月16日付けの意見書において、甲第9号証の段落[0026]の「酸化チタン(ミレニアム社製DT51、TiO_(2)結晶子径80Å」なる記載を参照し、80Åなる結晶子径が、甲第2号証に記載されたDT-51の製品規格(15?25nm)から外れることをもって、引用発明1で利用されたDT-51の結晶子径について疑義(本件特許発明1の酸化チタンの結晶子径の範囲から外れる蓋然性)を呈示している。この点、甲第9号証の段落【0023】には、実施例として結晶子径150ÅのDT51を利用した旨も記載されているから、引用発明1において、甲第2号証に記載された製品規格を満足するDT-51が実在し得ることも理解される。 しかしながら、甲第9号証の比較例(80Å)の記載からみて、引用発明1で利用されたDT-51の結晶子径が、甲第2号証に記載された範囲を満足しない可能性は残されている。そして、引用発明1で利用されるDT-51が、甲第2号証に記載された結晶子径を満足することを示す証拠も認められないから、相違点3については、なお実質的な相違点である可能性が残る。 カ 上記のとおり、相違点1、4は実質上相違点にならないものの、相違点2、3において、本件特許発明1は、引用発明1との間で相違するため、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 そして、上記イに記載したとおり、本件特許発明1において、訂正されたP_(2)O_(5)の含有量を満たすようにする動機付けがあるといえないし、さらに甲第1?13号証を参照しても、本件特許発明1の訂正されたP_(2)O_(5)の含有量を満たすようにする動機付けがないから、本件特許発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。よって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものでもない。 なお、下記第7で詳述するように、甲第11号証のP_(2)O_(5)の効果の記載を併せて考慮しても、やはり、本件特許発明1で特定された具体的なP_(2)O_(5)の含有量を特定するまでには至らないと認められる。 (2)本件特許発明2?7 本件特許発明2?7は、本件特許発明1を引用する発明であり、いずれも上記の相違点2、3に係る技術的事項を包含している。 そうすると、本件特許発明2?7は、本件特許発明1と同様に、上記の相違点2、3において、引用発明1又は2と相違するため、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 また、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2?7は、引用発明1又は引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものでもない。 第6 甲第9号証を主たる引用例とする取消理由 1.引用発明3、4 甲第9号証の摘示箇所i、jから、甲第9号証には、「窒素酸化物を除去するための排ガス浄化用触媒を得るために用いられる、酸化チタン(ミレニアム社製、商品名DT51、結晶子径150Å)。」(引用発明3)が記載されている。 また、甲第9号証の実施例6には、「酸化チタン(ミレニアム社製、商品名DT51、結晶子径150Å)、メタタングステン酸アンモニウム、コロイダルシリカ(日産化学社製、OSゾル)、シリカアルミナ無機繊維(ITM社製)及び水を、ニーダを用いて混練し、得られたペーストをメタルラス基材の網目間及び表面に塗布後乾燥して得られた担体Aを、メタバナジン酸アンモニウムを含むコーティング剤に含浸した後、液切りし、乾燥、焼成して得られた、窒素酸化物を除去するための排ガス浄化用触媒。」(引用発明4)も記載されている。(摘示箇所j) 2.対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 本件特許発明1と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「酸化チタン(ミレニアム社製、商品名DT51、結晶子径150Å)」は、本件特許発明1の「二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含む」「チタン含有粉末」に相当し、引用発明3が、「窒素酸化物を除去するための排ガス浄化用触媒を得るために用いられる」ことは、本件特許発明1の、「排ガス処理触媒の原料用」であることに相当する。 したがって、本件特許発明1と引用発明3とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 一致点:「二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含む排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末。」 相違点1:本件特許発明1は、バナジウムの酸化物を含むものを除くものであるのに対し、引用発明3は、バナジウムの酸化物を含有するかどうか明らかでない点。 相違点2:本件特許発明1は、リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むもの(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)であるのに対し、引用発明3は、P_(2)O_(5)を含有するかどうか明らかでない点。 相違点3:本件特許発明1は、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径について、チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12?40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10?38nmの範囲にあるのに対し、引用発明3は、酸化チタンの結晶子径が150Åであることは明らかであるものの、それがアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径であるかは明らかでない点。 相違点4:本件特許発明1は、硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有するものであるのに対し、引用発明3は、硫酸根を含有するかどうか明らかでない点。 相違点5:本件特許発明1は、ハニカム状排ガス処理触媒用の原料粉末であるのに対し、引用発明3は、製造される排ガス浄化用触媒がハニカム状ではない点。 イ 上記相違点1?4について、まず、上記「第5 2.(1)イ?エ」で検討したことと同様の理由により、引用発明3の「ミレニアム社製、商品名DT51」と、甲第2号証に記載されている、ローヌ・プーラングループのタン・エト・ミュルーズ社による「TITAFRANCE DT51」と、甲第3号証に記載されている、ミレニアム社による「Tiona DT51」とは、当業者に同じ商品として認識されていたものといえる。 そうすると、上記「第5 2.(1)イ」で検討したことと同様の理由により、本件特許発明1と引用発明3との間の相違点2は、実質的な相違点であると考えられる。 また、上記「第5 2.(1)ウ?オ」で検討したことと同様の理由により同相違点3も、実質的な相違点である可能性が残る。 ウ 相違点5について、例えば甲第1号証の【0021】、甲第10号証の【0007】、甲第11号証の【0019】、甲第12号証の【請求項1】、甲第13号証の【0014】などに記載されているように、排ガス処理触媒の形状として、ハニカム状は当業者に周知慣用のものである。 してみれば、引用発明3を「排ガス処理触媒」に利用するに当たり、その形状としてハニカム状を採用することは、当業者であれば適宜なし得る設計変更の範囲である。 エ 上記のとおり、本件特許発明1は、少なくとも、引用発明3との間でP_(2)O_(5)の含有量が相違し、また、上記「第5 2.(1)カ」で検討したことと同様の理由により、引用発明3のP_(2)O_(5)の含有量を、本願発明で特定される範囲に調整する積極的な理由も認められない。 したがって、引用発明3をハニカム状の排ガス処理触媒に利用する動機付けがあってもなお、本件特許発明1は、引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。 (2)本件特許発明2?7 本件特許発明2?7は、本件特許発明1を引用する発明であり、いずれも上記の相違点2に係る技術的事項を包含している。 そうすると、本件特許発明2?7は、本件特許発明1と同様に、引用発明3又は4との間において、上記の相違点2について相違し、P_(2)O_(5)の含有量を本件特許発明1と重複する範囲に調整する積極的な理由も認められない。 よって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2?7は、引用発明3又は4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではない。 第7 異議申立人の意見について 上記の論点に加えて、異議申立人は、「リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く」との構成要件によって本件特許発明が特定される場合、当該特定の作用効果が、当該発明の範囲の全体にわたって、かつ、当該発明の範囲から外れる発明よりも優れたものとして奏されることが必要である旨を主張している。 しかしながら、本件の判断に当たっては、本件特許発明の作用効果を評価するまでもなく、本件特許発明の構成を導出し得ない点で、本件特許発明の進歩性を否定することができない。詳述すると、引用発明1?4では、いずれも商品としてのDT51を利用する旨しか記載されておらず、利用するDT51が偶然に本件特許発明で特定されるP_(2)O_(5)含有量を満足する可能性までは甲第2号証や甲第3号証から示唆されるとしても、商品の成分組成を積極的に調整しようとする技術思想は、引用発明1?4に認めることができない。その点、異議申立人は、甲第11号証に記載されたリン化合物の添加による効果を併せて参酌すれば、当業者が本件特許発明に容易に想到し得る旨も主張しているが、やはり、市販品であるDT51に含まれる、その含有の理由も不明なP_(2)O_(5)の含有量を、引用発明1?4において、本件特許発明で特定される具体的な数値範囲に調整する積極的な理由は見出せない。 よって、異議申立人の意見は、採用することができない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、上記の理由の他に、本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 チタン含有粉末、排ガス処理触媒及びチタン含有粉末の製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、ハニカム成形性の良好な排ガス処理触媒用のチタン含有粉末及びその製造方法、並びにそれを用いた機械強度及び耐摩耗性の高い排ガス処理触媒に関する。 【背景技術】 【0002】 火力発電所、各種工場やゴミ焼却所などから排出される燃焼排ガス中には光化学スモッグなどの原因となる窒素酸化物などが含有されている。このため、排ガス中からこれら窒素酸化物を除去する排煙脱硝技術が種々提案されている。広く採用されている排煙脱硝技術の1つに、排ガスにアンモニアを注入してから触媒と接触させ、窒素酸化物を窒素ガスと水とに還元する選択的接触還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)法がある。このSCR法では、酸化チタン担体に酸化バナジウム、酸化タングステンなどの活性成分を担持した触媒が用いられる。通常、SCR法の脱硝触媒は煙道内に配置され、排ガスと接触することにより脱硝反応を進行させるが、煙道内の圧力損失の増大を抑えると共に、排ガスとの接触面積を大きくするため、脱硝触媒は例えばハニカム形状に成形されて使用されている。 ハニカム形状の脱硝触媒は、粉体状の担体成分をハニカム形状に押出成形した後、活性成分を含浸・担持する方法や、担体成分と活性成分を成形助材等と共に混練してハニカム形状に押出成形する方法などにより成形される。このため、担体成分となる酸化チタン粉末は、押出成形性の高いものが好ましい。ここで、比較的高温で焼成した酸化チタン粉末は、押出成形性が良好である一方で、押出形成して得られたハニカム構造体を焼成する際に酸化チタンの結晶化が進むため、比表面積が低下し、脱硝性能の低下を招く場合があり、比較的低温で焼成した酸化チタンは、比表面積の低下は少ないが、押出成型性が悪くハニカム形状に成形することが難しいという問題がある。 また、燃焼排ガス中にはダストが含まれている場合が多く、排ガスがハニカム構造体の内側を通流する際にダストが接触すると、脱硝触媒が摩耗してしまうため、ハニカム成形される酸化チタン粉末には高い耐摩耗性も求められる。 【0003】 ここで、特許文献1には、酸化チタンを含有するハニカム形状の脱硝触媒において、硫化アンモニウムなどの被毒物質による脱硝触媒の活性の低下を抑制するため、リンをP_(2)O_(5)に換算して5?25質量%含んだものが記載されている。しかし発明者らは、このようにリンを高濃度で含む脱硝触媒は、初期活性が低く、触媒被毒による活性の低下を抑制できるとしても、維持される活性の高さが十分ではない。 また、特許文献2には、チタニアゾルなどの含水酸化チタンを焼成して得られた焼成物に、酸化物として0.3?5wt%のリンを担持した窒素酸化物還元用触媒が好適例として記載されている。ここで、特許文献2には、リンを含む窒素酸化物還元用触媒は500℃以上の高温領域で使用すると高い活性を発揮することができる一方で、この窒素酸化物還元用触媒を500℃よりも低い反応領域で使用すると脱硝活性が低くなる傾向があることが明記されている。 ところが、特許文献2の表2には、P_(2)O_(5)として2.6wt%のリンを含む窒素酸化物還元用触媒が例示されているのみであり(実施例2B)、P_(2)O_(5)の担持量の好適範囲の下限値として記載されている0.3wt%からは大きく離れた含有量となっている。そうすると、特許文献2には、500℃以上の高温領域で使用したとき高い活性を発揮するであろうリンの担持量の下限値として0.3wt%程度の含有量が示唆されてはいるものの、当該含有量付近において実体的な記載がされているとはいえない。ましてその他の温度領域で使用される窒素酸化物還元用触媒についてのリンの担持量の記載はない。従って、特許文献2には、例えば500℃以下といった比較的低温の温度範囲で使用され、且つ、P_(2)O_(5)を0.3wt%程度と低濃度で担持した窒素酸化物還元用触媒が実質的に開示されているとはいえない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】 特開2005-087815号公報:請求項10、段落0013の6?8行目、表1の実施例7 【特許文献2】 特開平4?346834号公報:請求項1、2頁2欄10?16行目、3頁3欄37?39行目 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、前述の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、成形性が良好で、耐摩耗性が高く、焼成後の比表面積の低下が少ないチタン含有粉末、このチタン含有粉末を含有するハニカム状排ガス処理触媒、及び前記チタン含有粉末の製造方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 第1の発明は、二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末において、下記(a)?(c)を備えることを特徴とするチタン含有粉末(バナジウムの酸化物を含むものを除く)である。 (a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)。 (b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12?40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10?38nmの範囲にあること。 (c)硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有すること。 前記第1の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。 (i)活性成分を含むものを除くこと。 (ii)前記チタン複合酸化物がチタンと、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物であること。 (iii)前記チタン含有粉末は99.9質量%以上が45μm以下の粒子径である場合が好適であること。 【0007】 第2の発明は、前記第1の発明のチタン含有粉末と、活性成分と、を含有し、当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%以上であることを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒である。 この第2の発明を別の観点から見ると、活性成分と、二酸化チタンとチタン複合酸化物との少なくとも一方と、0.018?0.5質量%のP_(2)O_(5)と、を含むことを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒であるといえる。 前記第2の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。 (i)前記活性成分は、酸化バナジウムであること。 (ii)前記ハニカム状排ガス処理触媒が窒素酸化物除去触媒であること。 【発明の効果】 【0010】 本発明のチタン含有粉末中にはリンが含有されているので、焼成時に酸化チタンの結晶化が抑制されることによりハニカム構造体の比表面積の低下を抑制することができる。更に、リンの含有量をP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%の範囲に調整することにより、脱硝触媒自体の初期活性の低下を抑え、前述の比表面積の低下抑制の効果とあわせて高い触媒活性を維持することができる。更には、触媒の機械強度及び摩耗強度を向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0011】 【図1】 本例のハニカム構造体を、ハニカム孔の貫通方向の一端側から見た平面図である。 【発明を実施するための形態】 【0012】 以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。 [チタン含有粉末] 本発明におけるハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末は、二酸化チタン(TiO_(2))又はチタン複合酸化物の少なくとも一方を含んでいる。 チタン複合酸化物は、二酸化チタン(「第1の無機酸化物」である)と、例えば、ケイ素(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)などのチタン以外の元素を含有する1種以上の無機酸化物(以下、「第2の無機酸化物」ともいう)との混合物である。二酸化チタンの粉末又はチタン複合酸化物の粉末は少なくともアナターゼ型の二酸化チタンを含んでいる。チタン複合酸化物の具体例としては、二酸化チタン及びシリカ(TiO_(2)-SiO_(2))、二酸化チタン及び酸化タングステン(TiO_(2)-WO_(3))、二酸化チタン及び酸化モリブデン(TiO_(2)-MoO_(3))、二酸化チタン及びジルコニア(TiO_(2)-ZrO_(2))などの二元系複合酸化物、また、二酸化チタンと酸化タングステン及びシリカ(TiO_(2)-WO_(3)-SiO_(2))、二酸化チタンと酸化モリブデン及びシリカ(TiO_(2)-MoO_(3)-SiO_(2))などの三元系複合酸化物が挙げられる。この三元系複合酸化物は、TiO_(2)にSiO_(2)やWO_(3)、MoO_(3)を高分散で含んだ構造を有し、加熱焼成による結晶化の進行やルチル型TiO_(2)への転移を抑制する性質を有するので好適である。チタン複合酸化物中における第2の無機酸化物の含有量は、二酸化チタンの量よりも少ないことが好ましく、0質量%を超え、20質量%以下の範囲にあることが望ましい。第2の無機酸化物の含有量が二酸化チタンの量よりも多くなると排ガス処理触媒、特に窒素酸化物除去触媒の担体として、硫化物などに対する耐性や耐摩耗性などの優れた効果が得られないことがある。 【0013】 更に、実施の形態に係るチタン含有粉末は、上述の二酸化チタンやチタン複合酸化物に加えてリンを含んでいる。ここで、リンを含むチタン含有粉末にて脱硝触媒を製造すると、例えば500℃以下の温度範囲ではリンは脱硝触媒の触媒活性を低下させる作用があるが、本発明者らは、リンの存在が、チタン含有粉末の焼成時やハニカム成形された脱硝触媒の焼成時における二酸化チタンの結晶化の進行を抑える作用があることを見出した。この二酸化チタンの結晶化の進行は、具体的にはチタン含有粉末に含まれるアナターゼ型二酸化チタンの結晶子径の増大として観察される。 特に、脱硝触媒の活性成分として担持されるバナジウム(酸化バナジウムとして担持される)は、二酸化チタンの結晶化を促進する物質であるが、チタン含有粉末前駆体にリンを添加し、焼成して得られたリンの酸化物は、バナジウムによる結晶化の促進を抑制することができる。この結果、リンを添加して結晶化の進行を抑えることにより、チタン含有粉末の製造時における高温焼成が可能となり押出成形性の高いチタン含有粉末を得ることができる。更に、このようにして製造されたチタン含有粉末は、活性成分が添加され、ハニカム形状に成形された後の焼成時においても結晶化の進行が抑えられ、比表面積の低下を抑制できる。 更に、二酸化チタンの結晶化の進行を抑えると、焼成後のハニカム状排ガス処理触媒を構成する構造体(二酸化チタンやチタン複合酸化物)の緻密性が向上する。この結果、排ガス処理触媒の耐摩耗性が向上すると共に、その強度が向上してハニカム構造体を構成する隔壁をより薄くすることが可能となる。 本発明のチタン含有粉末におけるリンの含有量はP_(2)O_(5)に換算して、0.03?0.5質量%の範囲であることが好ましい。リンの含有量が0.03質量%を下回ると、チタン含有粉末やハニカム構造耐を焼成する際の二酸化チタンの結晶化の進行が大きく、耐摩耗性や圧縮強度が劣る。リンの含有量が0.5質量%を超えると、脱硝率を低下させる影響が大きくなる。 【0014】 (1)本発明のチタン含有粉末が、二酸化チタンのみからなる場合には、アナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径は12?40nmの範囲がより好適である。ここで、結晶子径が12nmより小さい場合には、チタン含有粉末の捏和物をハニカム形状に押出成形する際に脱水現象が生じて成形性が悪くなり、隔壁の薄いハニカム構造体の成形が難しくなる。また、この場合には、成形できたとしても、担体の緻密性も低下し、ハニカム構造体の耐摩耗性も悪化する。一方、前記結晶子径が40nmより大きくなると、リンが添加されハニカム構造体の焼成中における結晶化の進行が抑えられているとはいっても、焼成の開始時点における結晶子径が大きいことから、焼成後のハニカム構造体の比表面積の低下を招き、触媒活性が低下するので好ましくない。 また、(2)本発明のチタン含有粉末が、チタン複合酸化物を含む場合には、アナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径は10?38nmの範囲が好適である。ここで、結晶子径が10nmより小さい場合には、チタン含有粉末の捏和物をハニカム形状に押出成形する際に脱水現象が生じて成形性が悪くなり、隔壁の薄いハニカム構造体の成形が難しくなる。また、この場合には、成形できたとしても、担体の緻密性も低下し、ハニカム構造体の耐摩耗性も悪化する。一方、前記結晶子径が38nmより大きくなると、リンが添加されハニカム構造体の焼成中における結晶化の進行が抑えられているとはいっても、焼成の開始時点における結晶子径が大きいことから、焼成後のハニカム構造体の比表面積の低下を招き、触媒活性が低下するので好ましくない。 なお、この結晶子径はシェラー(Scherrer)の式から求めることができる。 【0015】 更に、本発明のハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末は、粉末中に硫酸根(SO_(4))を乾燥基準で0.4?4.0質量%の範囲で含有する。前記含有量は、0.5?3.5質量%の範囲がより望ましい。前記含有量は、1.0?3.5質量%の範囲がより望ましい。 チタン含有粉末に含まれる硫酸根は、ハニカム構造体を乾燥し、焼成する際における同構造体の収縮を抑える役割を果たす。このため、硫酸根の含有量が0.3質量%より少ない場合には、乾燥、焼成時における収縮率が大きくなるため、得られたハニカム構造体にひび割れ等が生じ強度が弱くなる。また、触媒の細孔容積、特に細孔直径50nm(500Å)以下の細孔容積が小さくなるため窒素酸化物除去性能などが低下するので好ましくない。 一方で硫酸根の含有量が4.0質量%より多い場合には、チタン含有粉末の捏和物を押出成形してハニカム形状にする際に脱水固化する現象などが生じて流動性が悪くなる。また、成形助剤として添加される有機可塑剤などの粘性が低下するため、押出成形が難しくなる。 ここで、チタン含有粉末中の硫酸根の含有量は、後述するチタン含有粉末の製造方法において、洗浄や焼成等により調整することができる。 【0016】 以上に説明した本発明のハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末は、粒子計が45μm以下の粒子が、全重量の99.9質量%以上を占めていることが好ましい。この粒径範囲の粒子が全重量の99.9質量%より少ない場合、即ち、45μmより大きい粒子径のチタン含有粉末が0.1質量%より多い場合には、押出成形した際に隔壁が欠落してしまい、所望のハニカム構造体が得られないことがある。 【0017】 [チタン含有粉末の製造方法] 以上に述べてきた特徴を備えるチタン含有粉末の製造方法の一例について説明する。二酸化チタン原料であるメタチタン酸などのチタン含有溶液に、リン原料であるリン化合物を添加し、当該リンをP_(2)O_(5)換算で0.03?0.5質量%含むスラリー溶液を調製する。また、メタチタン酸の原料として、硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を用い、この硫酸チタンを加水分解してメタチタン酸を得ることにより、前記スラリー溶液中に硫酸根を含有させることができる。また、この硫酸根は、前記スラリー溶液に硫酸アンモニウムなど、硫酸塩溶液を添加することにより含有させてもよい。 リン化合物の添加量は、予備実験などにより、脱水、焼成をしたチタン含有粉末中のP_(2)O_(5)に換算したリンの含有量とリン化合物の添加量との対応を予め把握しておくことなどにより決定される。リン化合物の具体的な例としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、リン酸化物、リン塩化物、リン硫化物などが挙げられる。 また、チタン複合酸化物を調製する場合には、上述のリン及びチタン含有溶液にケイ素(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)などの第2の無機酸化物を構成する元素が含まれている化合物を添加する。 【0018】 こうして得られたリン、チタンなどの含有溶液に、例えば硫酸などの酸、アンモニアなどのアルカリを添加し、当該溶液のpHを2?9.5の範囲内の予め設定した値に調整する。pHの調整は、原料の安定化のために行われ、その値は、製品(すなわち、チタン含有粉末)の物性を考慮して決定される。 こうしてリン、チタンなどを含み、予め設定した値にpHを調整したスラリー溶液が得られたら、このスラリー溶液を例えば50?100℃の温度範囲で0.5?24時間、加熱熟成する。予め行った予備実験などにより、熟成温度や熟成時間とアナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径との関係を把握しておくことにより、所望の結晶子径を持つ二酸化チタンやチタン複合酸化物を調製することができる。そして、加熱熟成後のスラリー溶液を脱水し、得られた脱水ケーキを蒸留水などで洗浄してから、再度、脱水を行って脱水ケーキを得る。 得られた脱水ケーキ中の水分を乾燥させて得られた乾燥体を、大気雰囲気のキルン内などで例えば400?700℃の温度範囲で、0.5?20時間焼成し、二酸化チタン又はチタン複合酸化物と、P_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%のリンとを含むチタン含有粉末を得ることができる。このチタン含有粉末をボールミルなどにより更に粉砕して全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径のチタン含有粉末を得る。 【0019】 [ハニカム状排ガス処理触媒] 本発明のハニカム状排ガス処理触媒は、上述のハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末を全重量の60質量%以上含有することが好ましく、より好適な含有割合は70?99.9質量%の範囲である。当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%より少ない場合には、所望の脱硝活性が得られないことがある。また、上述のように、本発明のチタン含有粉末を60質量%以上含有していれば、例えばリンを含まない本発明の技術的範囲外のチタン含有粉末を40質量%未満含有していてもよい。 前記ハニカム状排ガス処理触媒には、窒素酸化物を除去するための活性成分が含まれる。活性成分としては、例えば、バナジウム(V)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、インジウム(In)、イリジウム(Ir)などの金属成分が挙げられる。 上述の活性成分のうち、特にバナジウム酸化物(V_(2)O_(5))は、安価であり且つ窒素酸化物の除去率が高いために好適に使用される。また、窒素酸化物を除去するための排ガス処理触媒に使用される活性成分の含有量は、酸化物として全触媒重量の0.1?30質量%の範囲である。 上述のようにリンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むチタン含有粉末は、焼成時における結晶化の進行が抑制される結果、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径を12?40nmの範囲とし、(2)チタン複合酸化物を含む場合には、同結晶子径を10?38nmの範囲とすることができる。このようなチタン含有粉末を少なくとも60質量%以上含有するようにして成形されたハニカム状排ガス処理触媒は、チタン含有粉末の結晶子径が小さいことにより緻密な構造体を形成することが可能であり、その摩耗強度が向上する。 【0020】 このほか、リンを含み、結晶化の進行が抑制されたチタン含有粉末を少なくとも60質量%以上含有するようにして成形されたハニカム状排ガス処理触媒は、チタン含有粉末の結晶化が進行していないことから、粘り気を備え、高い靭性を発揮することができる。また、前記チタン含有粉末が0.4?4.0質量%の硫酸根を含有していることにより、ハニカム状排ガス処理触媒を焼成する際における構造体の収縮が抑えられ、ひび割れ等の発生による構造体の強度低下を防止することができる。これらの結果、ハニカム状排ガス処理触媒の圧縮強度が向上する。 更に、リンを含有するチタン含有粉末をハニカム形状に形成し、更にこのハニカム状の構造体を焼成する際においても、酸化チタンの結晶化の進行が抑えられ、比表面積の低下を抑制することができると共に、当該リンの含有量が、P_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%の範囲に調整されていることにより、初期活性の低下が抑えられることから比較的高い脱硝活性を得ることができる。そして既述のように当該ハニカム状排ガス処理触媒は耐摩耗性が高いことから、その比表面積が低下しにくく、初期活性に近い脱硝活性を長期間維持することができる。 【0021】 [ハニカム状排ガス処理触媒の製造方法] 本例のハニカム状排ガス処理触媒は、(a)本例のチタン含有粉末と活性成分又はその前駆物質を、成形助材等と共に混練して捏和物とした後に、所望のハニカム形状に押出成形し、乾燥、焼成する方法(混練法)、(b)本例のチタン含有粉末を、成形助材等と共に混練して捏和物とした後に、所望のハニカム形状に押出成形し、乾燥、焼成した担体に、活性成分を含有する水溶液を含浸し、乾燥、焼成する方法(含浸法)などにより製造される。 特に前記(a)の混練法により製造した触媒はソリッドタイプの触媒と言われており、高い脱硝活性を得られることから、混練法により活性物質として酸化バナジウムを担持したハニカム状排ガス処理触媒を製造する場合を一例に挙げて説明しておく。 まず、本発明のチタン含有粉末を水などの溶媒に分散させてスラリー溶液とし、このスラリー溶液中に酸化バナジウムの前駆体、例えばメタバナジン酸アンモニウムと、溶解剤であるモノエタノールアミンとを添加する。更に、このスラリー溶液に、グラスファイバーや酸性白土などの補強材、ポリエチレンオキサイドなどの潤滑剤を加え、ニーダーなどの混練機で混練捏和して押出成形に適した捏和物を調製する。 こうして得られた混和物を例えば真空式の押出成形機などで押出成形し、ハニカム構造体を得る。しかる後、得られたハニカム構造体を乾燥させ、乾燥後のハニカム構造体を大気雰囲気のキルン内などで例えば400?700℃の温度範囲で、0.5?24時間焼成してグラスファイバーや酸性白土が添加されたに酸化チタンに、酸化バナジウムが担持されたハニカム状の排ガス処理触媒を得る。 【0022】 ここで、本発明者らは、酸化チタン担体に活性物質として酸化バナジウムを添加した状態で酸化チタンを焼成すると、バナジウムの存在により二酸化チタンの結晶化が進行することを把握している。そこで、本例の排ガス処理触媒の製造方法では、バナジウム及びその前駆体を添加しない状態で焼成して得たチタン含有粉末を利用している。このことから、例えばチタン含有粉末の焼成段階からバナジウムを添加した場合と比較して、排ガス処理触媒の焼成を終えた時点における二酸化チタンの結晶化の進行度合いを抑えることができる。 このようにして得られたハニカム状排ガス処理触媒の構造体の形状は、図1に示すように、(i)ハニカム構造体の外形寸法が好ましくは30?300mm□(□は、ハニカム孔の貫通方向の一端側から見た構造体の平面形状(図1に示す平面形状)が四角形であることを示している)、更に好ましくは50?200mm□、(ii)ハニカム構造体の長さが100?3000mm、更に好ましくは300?1500mm、(iii)例えば平面形状が四角形に開口するハニカム孔(以下、目開きということがある)の1辺の長さが好ましくは1?15mm、更に好ましくは2?10mm、(iv)ハニカムの隔壁厚が好ましくは0.1?2mm、更に好ましくは0.1?1.5mm、(v)ハニカムの開口率が好ましくは60?85%、更に好ましくは70?85%の範囲である場合を例示できる。該ハニカム構造体の形状が前記形状の範囲を外れる場合には、成形が困難になったり、ハニカム構造体の強度が弱くなったり、また、単位体積当たりの脱硝活性や有機ハロゲン化合物の分解活性等が低くなったりする場合がある。 【0023】 [ハニカム状排ガス処理触媒を用いた脱硝プロセス] 本発明のハニカム状排ガス処理触媒は、NO_(X)を含有する排ガス、特にボイラー排ガスなどのようにNO_(X)、SO_(X)を含有するほか重金属、ダストを含有する排ガスに、アンモニアなどの還元剤を添加して接触還元するNO_(X)除去法に好適に使用される。また、該触媒の使用条件は、通常の脱硝処理条件が採用され、具体的には、反応温度は150?600℃、より好適には300?400℃、空間速度1000?100000hr^(?1)の範囲などが例示される。 本実施の形態のチタン含有粉末によれば以下の効果がある。チタン含有粉末中にリンが添加されていることにより、酸化チタンの結晶化を抑制してハニカム構造体の比表面積の低下を抑制することができる。その一方で、リンの含有量をP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%の範囲に調整することにより、脱硝触媒自体の初期活性の低下を抑え、前述の比表面積の低下抑制の効果とあわせて高い触媒活性を維持することができる。更には、触媒の機械強度及び摩耗強度を向上させることができる。 【実施例】 【0024】 [評価方法] 各例のチタン含有粉末用いて製造したハニカム状排ガス処理触媒の評価方法について以下に記す。 [1]結晶子径 粉末X線回折法にてアナターゼ型二酸化チタン結晶の(101)面のピークを測定し、シェラー(Scherrer)の式(1)から結晶子径Lを得る。 L=Kλ/(βcosθ)…(1) ここで、Kは定数、λは波長、βは半価幅、θは入射角を示す。 [2]成形性 成型性の判定基準は、押出成型されたハニカム触媒のダイス面からの流れが安定的であれば○とした。一方、流れが不安定でハニカム触媒の内部に欠陥が発生した場合は×とした。 [3]摩耗強度 各ハニカム状排ガス処理触媒を、ハニカム孔数9×9目、長さ100mmに切り出して試験試料とし、この試験試料を流通式反応器に充填した。流通式反応器には、砂を含むガスを下記の条件で通流させ、触媒重量の減少量から下記(2)式に基づいて摩耗率を測定した。流通式反応器内を通流した砂の通砂量は、流通式反応器の後段にサイクロンを設け、摩耗試験終了後、当該サイクロンに捕集された砂の重量を測定することにより求めた。 摩耗率(%/kg)={〔摩耗開始前の触媒重量(g)-摩耗終了後の触媒重量(g)〕/摩耗開始前の触媒重量(g)}×100/通砂量(kg)…(2) 試験条件 触媒形状:ハニカム孔数9×9目、長さ100mm ガス流速:(16.5±2)m/s(触媒断面) ガス温度:室温25℃ ガス流通時間:3時間 砂濃度:(40±5)g/Nm^(3) 砂:珪砂 平均粒径500μm 【0025】 [4]圧縮強度 ハニカム状排ガス処理触媒を立方体又は直方体に切り出した試料に対し、ハニカム孔の貫通方向、及びこの方向と直交する方向(以下、単に「直交方向」ともいう)に一定速度で圧縮負荷をかけ、試料が破壊されるまでの最大荷重(N)を読み取り、下記(3)式より圧縮強度を求める。 圧縮試験機:東京試験機製作所(型式 AL/B30P) 圧縮強度: (N/cm^(2))=W(N)/{a(cm)×c(cm)} …(3) ここで、a(cm)及びc(cm)は供試料の加圧面の2辺の寸法を示す。W(N)は徐々に負荷し試料が完全に破壊されるまでの最大荷重を示す。 [5]比表面積 30%窒素?70%ヘリウムの混合ガスを吸着ガスとしたBET法に基づく比表面積測定装置によりチタン含有粉末又はハニカム状排ガス処理触媒の比表面積を求める。 [6]細孔容積 ポロシメーターを用いて、水銀圧入法によりハニカム状排ガス処理触媒の全細孔容積を求める。 【0026】 [7]脱硝試験 各ハニカム状排ガス処理触媒を、ハニカム孔数3×3目、長さ300mmに切り出して試験試料とし、この試験試料を流通式反応器に充填した。この流通式反応器に下記組成のモデルガスを通流させて脱硝率を測定した。触媒接触前後のガス中の窒素酸化物(NO_(X))の脱硝率は、下記(4)式により求めた。このときNO_(X)の濃度は化学発光式の窒素酸化物分析計にて測定した。 脱硝率(%)= {〔未接触ガス中のNO_(X)(質量ppm)-接触後のガス中のNO_(X)(質量ppm)〕/未接触ガス中のNO_(X)(質量ppm)}×100 …(4) 試験条件 触媒形状:ハニカム孔数3×3目、長さ300mm 反応温度:380℃、SV=10,000hr^(?1) モデルガス組成:NO_(X)=180質量ppm、NH_(3)=180質量ppm、SO_(2)=500質量ppm、O_(2)=2重量%、H_(2)O=10重量%、N_(2)=バランス 【0027】 [実施例1] <チタン含有粉末(a)及びハニカム状排ガス処理触媒(a)> 硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を熱加水分解してメタチタン酸スラリーを得た。このメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を10.4g加え、更に、15質量%アンモニア水を30.5kg加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、P_(2)O_(5)含有量が0.03質量%(Dry Basis)、燃焼法で測定した硫酸根(SO_(4))が2.7wt%(Dry Basis)(以下、硫酸根の測定法については同じ)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(a)を調製した。当該チタン含有粉末(a)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.5nmであった。 このチタン含有粉末(a)23.5kgに、モノエタノールアミン0.25kgにメタバナジン酸アンモニウム0.325kgを溶解した溶液を加え、次いでアンモニア水と水を加えこの混合スラリーのpHを9とした。更に、グラスファイバー(GF)1.25kg及びポリエチレンオキサイド0.5kgを加えてニーダーにて加熱しながら捏和して押出成形に適した捏和物を調製した。次いで該捏和物を真空押出成形機でハニカム形状に押出成形し、ハニカム外形寸法75mm□(四角形状を意味する)、目開き(ハニカム孔径)6.5mm(一辺の長さが6.5mmの四角形状)、隔壁厚0.9mm、開口率75.1%、長さ300mmのハニカム構造体を得た。このハニカム構造体を600℃で3hr焼成して、重量比でTiO_(2)粉末(a)/V_(2)O_(5)/GFが94/1/5の組成をもつハニカム状排ガス処理触媒(a)を調製した。 【0028】 [実施例2] <チタン含有粉末(b)及びハニカム状排ガス処理触媒(b)> リン酸の添加量を17.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1同様の方法にてチタン含有粉末(b)を調製した。当該チタン含有粉末(b)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.4nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(b)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(b)を調製した。 【0029】 [実施例3] <チタン含有粉末(c)及びハニカム状排ガス処理触媒(c)> リン酸の添加量を86.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.25質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(c)を調製した。当該チタン含有粉末(c)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.1nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(c)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(c)を調製した。 【0030】 [実施例4] <チタン含有粉末(d)及びハニカム状排ガス処理触媒(d)> リン酸の添加量を172.7gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.5質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1のチタン含有粉末(a)と同様の方法にてチタン含有粉末(d)を調製した。当該チタン含有粉末(d)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.0nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(d)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(d)を調製した。 【0031】 [比較例1] <チタン含有粉末(e)及びハニカム状排ガス処理触媒(e)> リン酸を添加しない点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(e)を調製した。当該チタン含有粉末(e)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.9nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(e)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(e)を調製した。 【0032】 [比較例2] <チタン含有粉末(f)及びハニカム状排ガス処理触媒(f)> リン酸の添加量を345.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が1質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(f)を調製した。当該チタン含有粉末(f)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.7nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(f)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(f)を調製した。 【0033】 [比較例3] <ハニカム状排ガス処理触媒(e-2)> チタン含有粉末(e)23.5kgに、モノエタノールアミン0.25kgにメタバナジン酸アンモニウム0.325kgを溶解した溶液を加え、これにリン酸を16.2g加え、次いでアンモニア水と水を加えこの混合スラリーのpHを9とした。更に、グラスファイバー(GF)1.25kg及びポリエチレンオキサイド0.5kgを加えてニーダーにて加熱、混練捏和して押出成形に適した捏和物を調製した。次いで該捏和物を真空押出成形機でハニカム形状に押出成形し、ハニカム外形寸法75mm□(四角形状を意味する)、目開き(ハニカム孔径)6.5mm(一辺の長さが6.5mmの四角形状)、隔壁厚0.9mm、開口率75.1%、長さ300mmのハニカム構造体を得た。ここで、P_(2)O_(5)含有量は、二酸化チタン含有粉末の重量比で0.05質量%(Dry Basis)である。このハニカム構造体を60℃で24hr乾燥後、600℃で3hr焼成して、重量比でTiO_(2)粉末(e)/V_(2)O_(5)/GFが94/1/5の組成をもつハニカム状排ガス処理触媒(e-2)を調製した。 【0034】 [比較例4] <チタン含有粉末(g)及びハニカム状排ガス処理触媒(g)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を17.3g加え、更に、15質量%アンモニア水でpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過、脱水、15質量%アンモニア水による洗浄工程を3回繰り返した。これを脱水して、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が0.2wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(g)を調製した。当該チタン含有粉末(g)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は19.1nmであった。このチタン含有粉末(g)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(g)を調製した。 【0035】 [比較例5] <チタン含有粉末(h)及びハニカム状排ガス処理触媒(h)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を17.3g加え、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。これを脱水して、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が4.1wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(h)を調製した。当該粉末(h)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は15.2nmであった。このチタン含有粉末(h)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(h)を調製したが、成形性不良のため性能測定ハニカム触媒を得られなかった。 【0036】 [実施例5] <チタン含有粉末(i)及びハニカム状排ガス処理触媒(i)> 焼成温度を650℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(i)を調製した。当該チタン含有粉末(i)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は32.0nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(i)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(i)を調製した。 【0037】 [実施例6] <チタン含有粉末(j)及びハニカム状排ガス処理触媒(j)> 焼成温度を450℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(j)を調製した。当該チタン含有粉末(j)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は13.8nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(j)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(j)を調製した。 【0038】 [比較例6] <チタン含有粉末(k)及びハニカム状排ガス処理触媒(k)> 焼成温度を750℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(k)を調製した。当該チタン含有粉末(k)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は52.0nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(k)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(k)を調製した。 【0039】 [比較例7] <チタン含有粉末(l)及びハニカム状排ガス処理触媒(l)> 焼成温度を350℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(l)を調製した。当該チタン含有粉末(l)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は11.9nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(l)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(l)を調製したが、成型性不良のため性能測定用ハニカム触媒が得られなかった。 【0040】 [実施例7] <チタン含有粉末(m)及びハニカム状排ガス処理触媒(m)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、WO_(3)含有量が10.0重量%(Dry Basis)、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(m)を調製した。当該チタン含有粉末(m)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.6nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(m)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(m)を調製した。 【0041】 [実施例8] <チタン含有粉末(n)及びハニカム状排ガス処理触媒(n)> リン酸の添加量を17.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(n)を調製した。当該チタン含有粉末(n)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.5nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(n)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(n)を調製した。 【0042】 [実施例9] <チタン含有粉末(o)及びハニカム状排ガス処理触媒(o)> メタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.4kg、リン酸の添加量を86.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.25質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(o)を調製した。当該チタン含有粉末(o)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.4nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(o)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(o)を調製した。 【0043】 [実施例10] <チタン含有粉末(p)及びハニカム状排ガス処理触媒(p)> リン酸の添加量を172.7gとし、P_(2)O_(5)含有量が0.5質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(p)を調製した。当該チタン含有粉末(p)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.2nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(p)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(p)を調製した。 【0044】 [比較例8] <チタン含有粉末(q)及びハニカム状排ガス処理触媒(q)> リン酸を添加しない点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(q)を調製した。当該チタン含有粉末(q)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.4nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(q)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(q)を調製した。 【0045】 [比較例9] <チタン含有粉末(r)及びハニカム状排ガス処理触媒(r)> メタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.4kg、リン酸の添加量を345.3gとし、P_(2)O_(5)含有量が1質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(r)を調製した。当該チタン含有粉末(r)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.0nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(r)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(r)を調製した。 【0046】 [比較例10] <ハニカム状排ガス処理触媒(q-2)> チタン含有粉末(q)を用いた点以外は、比較例3と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(q-2)を調製した。 【0047】 [比較例11] <チタン含有粉末(s)及びハニカム状排ガス処理触媒(s)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過、脱水、15質量%アンモニア水による洗浄工程を3回繰り返した。これを脱水して、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が0.3wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(s)を調製した。当該チタン含有粉末(s)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は19.8nmであった。このチタン含有粉末(s)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(s)を調製した。 【0048】 [比較例12] <チタン含有粉末(t)及びハニカム状排ガス処理触媒(t)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。これを脱水して、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が4.1wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(t)を調製した。当該チタン含有粉末(t)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は14.8nmであった。このチタン含有粉末(t)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒を調製(t)したが、成形性不良のため性能測定ハニカム触媒を得られなかった。 【0049】 [実施例11] <チタン含有粉末(u)及びハニカム状排ガス処理触媒(u)> 焼成温度を650℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(u)を調製した。当該チタン含有粉末(u)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は29.4nmであり、硫酸根の含有量は2.4wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(u)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(u)を調製した。 【0050】 [実施例12] <チタン含有粉末(v)及びハニカム状排ガス処理触媒(v)> 焼成温度を450℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(v)を調製した。当該チタン含有粉末(v)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は12.9nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(v)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(v)を調製した。 【0051】 [比較例13] <チタン含有粉末(w)及びハニカム状排ガス処理触媒(w)> 焼成温度を750℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(w)を調製した。当該粉末(v)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は48.0nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(w)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(w)を調製した。 【0052】 [比較例14] <チタン含有粉末(x)及びハニカム状排ガス処理触媒(x)> 焼成温度を350℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(x)を調製した。当該チタン含有粉末(x)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は9.8nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(x)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(x)を調製したが、成型性不良のため性能測定用ハニカム触媒が得られなかった。 【0053】 [実施例13] <チタン含有粉末(y-1)及びハニカム状排ガス処理触媒(y-1)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で24.2kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸と4重量%濃度のケイ酸18.75kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、SiO_(2)含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(y-1)を調製した。当該チタン含有粉末(y-1)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は16.8nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y-1)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y-1)を調製した。 【0054】 [実施例14] <チタン含有粉末(y-2)及びハニカム状排ガス処理触媒(y-2)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で24.2kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸とパラモリブデン酸アンモニウム0.92kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、MoO_(3)含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(y-2)を調製した。当該チタン含有粉末(y-2)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.1nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y-2)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y-2)を調製した。 【0055】 [実施例15] <チタン含有粉末(y-3)及びハニカム状排ガス処理触媒(y-3)> 実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で23.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸と1.4kgのパラタングステン酸アンモニウムと4重量%濃度のケイ酸18.75kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、WO_(3)含有量が5.0重量%(Dry Basis)、SiO_(2)含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P_(2)O_(5)含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(y-3)を調製した。当該チタン含有粉末(y-3)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は14.6nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y-3)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y-3)を調製した。 【0056】 上述の各実施例、比較例にて使用したチタン含有粉末a?x、y-1?y-3の物性(リン含有量、結晶子径、硫酸根含有量、比表面積(SA)、焼成温度)を(表1)に示す。これらのうち、チタン含有粉末a?lが二酸化チタンのみを含有する場合に相当し、チタン含有粉末m?x、y1?y-3がチタン複合酸化物を含む場合に相当している。また実施例1?15、比較例1?14に係わるハニカム状排ガス浄化触媒の評価結果(チタン含有粉末中のリン含有量(但し、比較例3、10については換算値)、成型性評価、摩耗率、圧縮強度、比表面積(SA)、細孔容積(PV))を(表2)に示す。 【表1】 【表2】 【0057】 (表2)によれば、実施例1?15に示した排ガス浄化触媒は、本発明の(a)?(c)の要件を満たすチタン含有粉末を原料として製造したものであり、これらのチタン含有粉末はハニカム構造体の成型性が良好であった。また、摩耗率は0.055?0.097%/sand-kg、ハニカム孔の貫通方向への圧縮強度は、314?436N/cm^(2)、ハニカム孔と直交する方向への圧縮強度は、73?157N/cm^(2)であって、耐摩耗性や機械強度も良好である。また、比表面積は48?61m^(2)/g、細孔容積は0.28?0.34ml/g、脱硝率は81.5?88.7%の範囲であり、実用上、良好な範囲の特性であった。 【0058】 これに対して、リンが添加されていない比較例1は、リンが含まれている点を除いてチタン含有粉末の組成が同じ、実施例1?4に比べて摩耗率が大きく、圧縮強度も劣る。またリンが添加されていない比較例8と、これに対応する実施例7?10との比較においても同様の傾向が見られる。一方、リンの含有量が1質量%まで多くなると(比較例2、比較例9)、対応する実施例(実施例1?4、実施例7?10)よりも脱硝率が低いことが分かる。 また、リンの含有量が本発明の要件を満たしている場合であっても、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径が上限を超えている比較例6、比較例13は、対応する実施例(実施例1?4、実施例7?10)と比較して脱硝率が低下している。そして、結晶子径が下限を下回る比較例7、比較例14では成型不良のため、ハニカム構造体を得ることができなかった。 そして、硫酸根(SO_(4))の含有量が下限を下回る比較例4、比較例11は、各々リンの含有量が同じ実施例2、実施例8に比べて脱硝率が低い。一方、硫酸根の含有量が上限を上回る比較例5、比較例12は、成型不良のため、ハニカム構造体を得ることができなかった。 最後に、リンを含まない状態で焼成したチタン含粉末(粉末e、q)に、後からリン化合物を添加して、ハニカム構造体の成型、焼成を行った比較例3、比較例10は、各々リンの含有量が同じ実施例2、実施例8と比べて脱硝率が低い。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末において、下記(a)?(c)を備えることを特徴とするチタン含有粉末(バナジウムの酸化物を含むものを除く)。 (a)リンをP_(2)O_(5)として0.03?0.5質量%含むこと(リンをP_(2)O_(5)として0.05?0.08質量%含むものを除く)。 (b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12?40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10?38nmの範囲にあること。 (c)硫酸根を0.4?4.0質量%の範囲で含有すること。 【請求項2】 活性成分を含むものを除くことを特徴とする請求項1に記載のチタン含有粉末。 【請求項3】 前記チタン複合酸化物がチタンと、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のチタン含有粉末。 【請求項4】 前記チタン含有粉末は99.9質量%以上が45μm以下の粒子径であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のチタン含有粉末。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のチタン含有粉末と、活性成分と、を含有し、当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%以上であることを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒。 【請求項6】 前記活性成分は、酸化バナジウムであることを特徴とする請求項5記載のハニカム状排ガス処理触媒。 【請求項7】 前記ハニカム状排ガス処理触媒が窒素酸化物除去触媒であることを特徴とする請求項5又は6記載のハニカム状排ガス処理触媒。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-10-23 |
出願番号 | 特願2015-47320(P2015-47320) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B01J)
P 1 651・ 113- YAA (B01J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西山 義之、増山 淳子 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 蛭田 敦 |
登録日 | 2016-06-10 |
登録番号 | 特許第5947939号(P5947939) |
権利者 | 日揮触媒化成株式会社 |
発明の名称 | チタン含有粉末、排ガス処理触媒及びチタン含有粉末の製造方法 |
代理人 | 井上 俊夫 |
代理人 | 井上 俊夫 |
代理人 | 瀧澤 宣明 |
代理人 | 瀧澤 宣明 |