ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M |
---|---|
管理番号 | 1335152 |
異議申立番号 | 異議2017-700363 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-12 |
確定日 | 2017-11-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6007315号発明「非水電解質二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6007315号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6007315号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6007315号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、2014年3月26日(優先権主張 平成25年3月26日、日本国)を国際出願日として特許出願され、平成28年9月16日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、平成29年4月12日付けで特許異議申立人 小宮 邦彦(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年6月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月4日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、単に「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して、同年9月25日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである(当審注:当該欄における下線は、特許件者が付したものである。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満である」と記載されているのを、「前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?11も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 明細書の段落【0023】に、「ガス排出という本発明の効果」と記載されているのを、「電池の出力性能およびガス排出の両立という本発明の効果」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前請求項1に係る「正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合」を「前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して」、「0.85以上1.0未満」とする手段として、「発電要素に群圧を付与している」ことに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、この訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0029】の「電解液層の厚さを制御する方法は特に限定されるものではないが、好適な一実施形態は、電池要素に掛かる群圧を制御する方法である。」という記載に基づいたものであって、特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 そのうえ、訂正事項1によって、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、特許明細書の段落【0023】の「本発明の効果」として、「ガス排出」と記載されているのを、「電池の出力性能およびガス排出の両立」に訂正し、本発明の効果を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、この訂正事項2は、特許明細書の段落【0023】の「正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して0.85を下回ると、リチウムイオンの通り道が長くなり、電池内のイオン移動が阻害される。」、「正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が1.0以上であると、セパレータ等の樹脂層が圧縮されガスが排出されることとなり、ガスの系外への排出が円滑に行われなくなる。」との記載から、電解液層の厚みが大きすぎると正負極間の距離が大きくなることから、イオンの移動距離が長くなり電池の出力性能が悪くなること、また、電解液層がなくなる(正極、負極およびセパレータの合計厚みが1.0以上になる)と、ガス排出という効果が発揮されなくなることから、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して0.95以上1.0未満であることで、電池の出力性能とガス排出の両立が図れることは、特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて導き出される事項であり、特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 そのうえ、訂正事項2によって、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 さらに、訂正事項2は、特許請求の範囲に記載した全ての請求項に関係しており、本件訂正では、実質的に全ての請求項について訂正を請求している。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。 3 一群の請求項について 訂正事項1、2による本件訂正は、一群の請求項1?11に係るものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 4 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件特許についての特許異議の申立て事件では、訂正前請求項1、2について特許異議の申立ての対象とされているから、本件訂正における訂正前請求項1、2に係る訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 また、本件訂正の対象である請求項3?11は、特許異議の申立ての請求がされていない請求項であり、その訂正については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定が適用されるところ、下記「第3」に記載するように、訂正後の請求項1、2に係る発明(本件発明1、2)に対する無効理由に理由がなく、また、訂正後の請求項3?11の記載について不備はないことから、本件発明1、2を限定する訂正後の請求項3?11に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるということはできない。なお、平成29年9月25日付けで申立人が提出した意見書を参照する限りにおいて、申立人は、訂正後の請求項3?11に係る発明について、独立特許要件を充足しない、との主張はしていない。 5 訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正に係る請求項1?11からなる一群の請求項についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、または、第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項?第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正は上記「第2」で検討したとおり認められるので、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1、2」という。また、まとめて、「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。さらに、本件訂正請求により訂正された明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、 水系バインダーを含む負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、 前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を含む発電要素を有し、 前記負極活物質層の密度が1.4?1.6g/cm^(3)であり、 前記負極活物質層および前記正極活物質層のうち少なくとも一層と前記セパレータとの間に液体電解質から構成される電解液層が配置され、前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している、非水電解質二次電池。 【請求項2】 前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.95以上1.0未満である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。」 2 申立理由の概要 申立人は、証拠として、 ・ 特開2002-110252号公報(以下、「甲第1号証」という。) ・ 特開2005- 5113号公報(以下、「甲第2号証」という。) ・ 特開2010- 80297号公報(以下、「甲第3号証」という。) ・ 特開2008-293715号公報(以下、「甲第4号証」という。) ・ 特開2013- 45598号公報(以下、「甲第5号証」という。) ・ 特開2005-259635号公報(以下、「甲第6号証」という。) ・ 特開平11-111339号公報(以下、「甲第7号証」という。) ・ 特開2012- 89444号公報(以下、「甲第8号証」という。) を提出し、以下の申立理由1、及び、申立理由2によって請求項1、及び、請求項2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1) 申立理由1 本件発明1、2は、甲第1?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 (2) 申立理由2 本件発明1、2は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 3 取消理由の概要 当審において、本件訂正請求による訂正前の請求項1、2に係る特許に対して通知した取消理由は、上記申立理由2に基づく、以下のものである。 本件請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件発明1の「前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満である」について、当該「割合」は、「正極、負極、セパレータおよび前記電解液層の合計厚み」に対する「正極、負極および前記セパレータの合計厚み」の「比」であって、本件発明1においては、当該割合(比)を「0.85以上1.0未満」とすることによって、「負極活物質層のバインダーとして水系バインダーを用いた非水電解質二次電池であって、初回充放電時に電極から発生したガスを効率的に電極外へ排出させることができ、長期にわたって使用しても電池容量の低下が少ない非水電解質二次電池を提供すること」(本件明細書の段落【0006】、【0007】参照。)という課題を解決するものであるところ、当該「割合」は、「電解液層」の厚さを制御することによって調整できるものであり、また、制御するためには、加圧手段等、何らかの外力を付加する手段が必要であると認められるところ、当該手段が何ら言及されていない、本件発明1においては、初回充放電時や長期にわたって使用しても当該割合を維持することができるのかどうか不明であり、その場合、上記課題を解決できるとは認められない。 そうすると、外力を付加する手段が何ら特定されていない、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるものではなく、本件発明2においても、同様である。 4 判断 特許権者は、本件訂正請求により、請求項1を訂正し、請求項1に係る「正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合」を「前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して」、「0.85以上1.0未満」とする手段として、「発電要素に群圧を付与している」ことを特定し、平成29年8月4日付け意見書において、「例えば、電池内部の発電要素に加圧力(群圧)を付与する手法としては、乙第1号証(当審注:「特開2001-68074号公報」のこと。)【0009】、乙第2号証(当審注:「特開平10-144352号公報」のこと。)【0016】、乙第3号証(当審注:「特開2005-116482号公報」のこと。)【0057】、【0058】にみられるように、電池内部を減圧することによって大気圧と電池の内部の圧力(内圧)とに差圧を発生させ、差圧によって電池を押圧して発電要素に加圧力(群圧)を付与する技術が周知であり、当業者であれば、必ずしも上記のような加圧部材2を用いて発電要素に加圧力を付与する必要はない」旨述べている。ここで、「発電要素」とは、請求項1における「正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、水系バインダーを含む負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を含む」ものである。 そして、本件明細書の段落【0013】によれば、「電解液層(負極(正極)活物質層/セパレータ間に位置する)の厚さが特定の範囲内」であることにより、「電解液層が存在することにより、発電要素内のガスの通り道を抜けたガスが、電解液層から発電要素系外に排出される」とのことから、上記割合が上記「特定の範囲内」、すなわち、「0.85以上1.0未満」であれば、電解液層が存在し、発電要素内のガスの通り道を抜けたガスが、電解液層から発電要素系外に排出されることは、当業者に明らかであり、また、本件明細書の段落【0029】、【0030によれば、それぞれ、「電解液層の厚さを制御する方法は特に限定されるものではないが、好適な一実施形態は、電池要素に掛かる群圧を制御する方法である。」、「群圧の制御は特に限定されるものではないが、発電要素に物理的に直接または間接的に外力を付加し、該外力を制御することで制御できる。かような外力の付加方法としては、外装体に圧力を付加させる加圧部材を用いることが好ましい。」とのことであり、「発電要素に群圧を付与している」ことによって電解液層の厚さを制御し、上記割合「0.85以上1.0未満」とすることが技術的に明らかになり、また、群圧を付与する手法としては、加圧手段のみではなく、電池内部を減圧することによって大気圧と電池の内部の圧力(内圧)とに差圧を発生させ、差圧によって電池を押圧して発電要素に加圧力(群圧)を付与する手段が周知であるから、加圧手段等、何らかの外力を付加する手段まで特定する必要はなく、本件発明1が、本件明細書に記載される発明の課題を解決することを当業者が理解できるように記載された範囲を超えるものとはいえなくなった。 よって、本件発明1、及び、本件発明1を引用する本件発明2は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、本件発明1、2は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1) 申立理由1について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、上記2(1)の申立理由1であり、訂正前の請求項1、2に係る発明についての甲第1?6号証に基づく進歩性違反であり、以下、当該申立理由1について検討する。 ア 甲第1号証について (ア) 甲第1号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第1号証には、「電池の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付加したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。 1a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 外装部材内に正極、負極、セパレータおよび非水電解液を有する発電要素を密封した後、圧力容器内で加圧処理することを特徴とする電池の製造方法。 【請求項2】 前記外装部材は、金属シートと樹脂フィルムを重ね合せた積層フィルムからなる袋状の外装フィルムであることを特徴とする請求項1記載の電池の製造方法。 【請求項3】 前記発電要素は、外部端子が電気的に接続された正極と、外部端子が電気的に接続された負極と、これら正負極間に介在されたセパレータと、非水電解液とからなり、前記袋状の外装フィルム内にその熱シール部で前記各外部端子が接着封止されるとともに、外部に延出するように密封されることを特徴とする請求項2記載の電池の製造方法。」 1b 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、外装部材の内部に発電要素を密封した電池の製造方法に関する。」 1c 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近のように高容量化、特にエネルギー密度を上げる要請に応えるために、電極群の電極内や電極間の空隙を極力減らし、この電極群を外装部材内に高気密充填すると、電極内や電極間の空隙に電解液や高分子ゲル状電解質が十分含浸できない問題が発生するようになった。」 1d 「【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明を外装部材としては金属シートと樹脂フィルムを重ね合せた積層フィルムからなる袋状の外装フィルムを用いた薄形電池(例えば薄形非水電解液二次電池)を図面を参照して説明する。 【0009】(第1工程)まず、活物質および結着剤を含む正極活物質層が例えば集電体両面に担持された正極、セパレータ、活物質および結着剤を含む負極活物質層が例えば集電体両面に担持された負極およびセパレータを渦巻状に捲回してほぼ円筒状物を作製する。なお、この捲回時に正負極に外部端子を例えば溶接によりそれぞれ接続する。 【0010】次いで、得られた円筒状の電極物を加熱加圧成形することにより図1,図2に示す活物質および結着剤を含む正極活物質層1が集電体2の両面に担持された正極3とセパレータ4と活物質および結着剤を含む負極活物質層5が集電体6の両面に担持された負極7とを有する扁平状電極体(電極群)8を作製する。前記正負極3,7に接続された外部端子9,10は、それぞれ前記電極体8の同一側面から外部に延出されている。 【0011】(第2工程)前記電極群の長辺より僅かに長く、かつその短辺の例えば2倍の長さの寸法を有する二つ折りのカップ型外装材用フィルム素材を用意し、図3、図4に示すようにこの外装フィルム用素材11の絞り成型により形成されたカップ12内に前記扁平状の電極体8をその外部端子9,10と反対側の側面が前記素材の折り曲げ部に位置するように収納する。前記外装フィルム用素材11は、前記電極体8が位置する内面側からシーラントフィルム13、アルミニウムまたはアルミニウム合金のシート14および剛性を有する樹脂フィルム15をこの順序で積層した積層フィルムにより構成されている。この時、接着性絶縁フィルム16を前記正極の外部端子9の上下面と前記外装フィルム用素材11の熱融着性樹脂フィルム13との間および前記負極の外部端子10の上下面と前記外装フィルム用素材11のシーラントフィルム13との間にそれぞれ介在させる。ひきつづき、前記電極体8の長辺に対応する前記外装フィルム用素材11の左端部よび前記外部端子9,10の延出側に対応する前記素材11の端部においてシーラントフィルム13同士およびシーラントフィルム13と接着性絶縁フィルム16を熱シールし、さらに溶融された接着性絶縁フィルム16と外部端子9,10とを密着させてシール部17a,17bを形成する。 【0012】(第3工程)非水電解液を前記外装材フィルム用素材11の未シール部(右端部)を通して注液し、前記電極体8の右端部付近の未シール部においてシーラントフィルム13同士を熱シールする。その後、余分な外装材フィルム用素材11を裁断除去することにより図5に示す袋状の外装フィルム18で扁平状電極体8が密封された未充電状態の薄形非水電解液二次電池19を作製する。 【0013】(第4工程)前記二次電池を図示しない圧力容器に収納し、加圧処理することにより前記二次電池内において非水電解液を扁平状電極体に含浸することにより薄形非水電解液二次電池を製造する。」 1e 「【0015】1)正極3 この正極3は、例えば集電体2の両面に活物質および結着剤を含む正極活物質層1を担持した構造を有する。なお、正極は集電体の片面に正極活物質層を担持させた構造であってもよい。 ・・・ 【0021】3)負極7 この負極7は、集電体6の両面に活物質および結着剤を含む負極活物質層5を担持した構造を有する。なお、負極は集電体の片面に負極活物質層を担持させた構造であってもよい。 ・・・ 【0024】前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロライド、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等の結着剤を含有することが好ましい。」 1f 「【0064】(実施例1) <正極の作製>正極活物質として平均粒径3μmのLiCoSn_(0.02)O_(2)89重量部、導電フィラーとしてグラファイト(ロンザ社製KS6)6重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製商品名;#1100)3重量部を溶剤であるN-メチルピロリドン25重量部に加え、均一せん断攪拌した後、ビーズミルを用いて分散して正極スラリーを調製した。このスラリーの見掛けの粘度は、7500mPa・sであった。つづいて、この正極スラリーを集電体である厚さ20μmの帯状アルミニウム箔両面に均一に塗付し、溶剤を乾燥させ、さらにロールプレス機で加圧成形した後、所定の大きさに切断することにより、帯状の正極を作製した。その後、前記正極の集電体の一端に厚さ0.1mm、幅5mm、長さ50mmのアルミニウム製外部端子を溶接により取り付けた。」 1g 「【0065】<負極の作製>カルボキシメチルセルロース1.5重量部に鱗片状黒鉛50重量部を分散し、カーボンのマスターバッチ塗料を作製した。この分散液に繊維状炭素材を50重量部添加し同様にせん断分散し、更にスチレンブタジエンゴムラテックス2.4重量部を添加し均一混合攪拌し、負極スラリーを調製した。このスラリーの見掛けの粘度は、4500mPa・sであった。つづいて、この負極スラリーを集電体である厚さ10μmの帯状銅箔の両面に均一に塗付し、溶剤を乾燥させ、更にロールプレス機で加圧成形した後、所定の大きさに切断することにより帯状の負極を作製した。その後、前記負極の集電体の一端に厚さ0.1mm、幅5mm、長さ50mmのニッケル製外部端子を溶接により取り付けた。」 1h 「【0066】次いで、前記帯状の正極と帯状の負極を、厚さ25μm、気孔率50%、透気度300秒/100ccのポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して、正極/セパレータ/負極/セパレータの順序に積層し、断面が扁平状の巻芯で渦巻き状に捲回し、さらに油圧式プレスで加熱圧縮し、成形して扁平状電極体(電極群)を作製した。」 1i 「【0068】次いで、非水電解液を外装フィルム用素材の開放された長辺側部分を通して1torr以下の真空下で注入・含浸させた。この非水電解液としては、エチレンカーボネート/γ-ブチロラクトン=1/3(体積比)の混合液にトリオクチルフォスフェート(TOP)を0.5重量%加えた溶媒に対してLiBF_(4)を1.25モル/Lとなるように添加したものを用いた。その後未シール部を210℃に加熱したプレスヘッド(図示せず)により、5秒間加圧し、マレイン化ポリプロピレンフィルム同士を接着させて、シール部を形成し、余分な外装フィルム用素材部分を裁断除去して未充電状態の薄形非水電解液二次電池を作製した。つづいて、この二次電池を圧力容器であるオートクレーブ内に設置し、この圧力容器内に乾燥空気を供給することにより前記二次電池をゲージ圧0.5MPaで10分間加圧した。この後、20℃、0.2Cの条件で初充電を8時間行うことにより外寸法が厚さ3.6mm、幅35mm、高さ62mmで、容量が650mAh(0.2C)の薄形非水電解液二次電池を製造した。」 1j 「 」 (イ) 甲第1号証に記載された発明 a 上記1eの段落【0015】の記載によれば、正極3は、集電体2の両面に活物質および結着剤を含む正極活物質層1を担持した構造を有することから、甲第1号証には、正極活物質層1が集電体2の両面に形成されてなる正極3、が記載されていると認められる。 b 上記1eの段落【0021】の記載によれば、負極7は、集電体6の両面に活物質および結着剤を含む負極活物質層5を担持した構造を有することから、甲第1号証には、結着剤を含む負極活物質層5が集電体6の両面に形成されてなる負極7、が記載されていると認められる。 c 上記1eの段落【0010】、【0013】、上記1jの【図1】?【図5】の記載によれば、発電要素は、外部端子9が接続された正極3と、外部端子10が接続された負極7と、これら正負極間に介在されたセパレータ4と、非水電解液とからなり、ここで、正極3と負極7は、上記a、bより、それらの両面に、それぞれ正極活物質層1、負極活物質層5が形成されていることから、甲第1号証には、正極活物質層1と負極活物質層5との間に配置されるセパレータと、非水電解液を含む発電要素、が記載されていると認められる。 d 上記1eの段落【0013】の記載によれば、薄形非水電解液二次電池を製造したとのことであるから、甲第1号証には、非水電解液二次電池、が記載されていると認められる。 e 上記a?dの検討事項に基づくと、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。 「正極活物質層1が集電体2の両面に形成されてなる正極3と、 結着剤を含む負極活物質層5が集電体6の両面に形成されてなる負極7と、 正極活物質層1と負極活物質層5との間に配置されるセパレータ4と、 非水電解液と、を含む発電要素を有する、 非水電解液二次電池。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲第2号証について (ア) 甲第2号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第2号証には、「非水電解質二次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 2a 「【発明の属する技術分野】 本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。」 2a 「【0056】 得られた黒鉛質物粒子100重量部に対して、エーテル化度の分布が0.6?0.8で、重量平均分子量の分布が20万?25万のカルボキシメチルセルロース(CMC)を1.8重量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)を1.5重量部とを添加し、水の存在下で混練することにより固形分量が40重量%で、B型粘度計(50rpm)による粘度が10000mPa・sのペーストを調製した。得られたペーストを厚さが12μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより、電極密度が1.45g/cm^(3)で、負極集電体の両面に負極層が担持された構造を有する負極を作製した。」 ウ 甲第3号証について (ア) 甲第3号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第3号証には、「非水電解質二次電池用負極、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池用負極の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 3a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、非水電解質二次電池用負極、それを備えた非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池用負極の製造方法に関する。」 3b 「【0053】 次に、負極形成用スラリーを銅箔の両面に、目標塗工量を204mg/10cm^(2)として塗工し、乾燥させた後、充填密度が1.60g/cm^(3)となるように圧延し、本発明負極t1を得た。なお、正極と負極との対向容量比は、1.10で負極リッチとなるように調整した。」 エ 甲第4号証について (ア) 甲第4号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第4号証には、「非水電解質二次電池電極」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 4a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリマー電解質と、活物質とを含む活物質層を有する非水電解質二次電池電極であって、 前記ポリマー電解質と前記活物質との界面に形成されてなる電解液層を含み、前記電解液層が、活物質100体積%に対して5体積%未満である、非水電解質二次電池電極。」 4b 「【0004】 非水電解質二次電池の初回充放電時には、電池要素からガスが発生することが知られている。このガスは、パッケージする際に内部に入り込んだ空気や、負極の細孔内に吸着していた空気、または負極表面に被膜が形成される際の電解液の分解などにより発生したものと考えられている。 【0005】 このようなガスをそのままにしておくと、電極の活物質の剥離等が起こり、充放電特性や電池寿命等の特性が低下する原因となる。ここで、電極に含まれる電解質が液体電解質である場合、初回充電時に電極において発生したガスを電極外部に抜くことは比較的容易である。一方、ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質などのポリマー電解質が電極に含まれる場合、電極において発生したガスを電極外部に抜くことは困難である。これは、活物質粒子の周囲をバインダーおよび固体状態のポリマー電解質が包囲するという電極の構造に起因するものと考えられる。」 4c 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明者らは、上記ガスの発生によって、電解質と電極との間だけではなく、活物質とポリマー電解質との界面の接着性が低下することを見出した。かような活物質とポリマー電解質との界面の接着性の低下は、電池の反応抵抗の増大を引き起こすため、発電性能が低下する場合があり、また電池耐久性の点で問題が生ずる場合がある。 【0008】 本発明の目的は、非水電解質二次電池において、初回充放電時のガス発生に起因する発電性能の低下および耐久性の低下を防止しうる手段を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極製造の際に予め発生させたガスを脱気することでガス流路を形成させ、前記ガス流路を電解液で置換することによって、活物質とポリマー電解質との間に電解液層を設けることで上記問題の解決を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。」 オ 甲第5号証について (ア) 甲第5号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第5号証には、「電池用電極の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 5a 「【0025】 本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、負極集電体10の上に負極活物質からなる第1線状部12a及び第2線状部12b(負極活物質層12)と、セパレータ20を含む電解質液層14と、正極集電体18の上に正極活物質からなる第1線状部16a及び第2線状部16b(正極活物質層16)と、を積層した構造を有している。負極集電体10と負極活物質層12とが負極を構成し、正極活物質層16と正極集電体18とが正極を構成する。本明細書においては、X、Y及びZ座標方向を図1及び図2に示すように定義する。」 5b 「【図1】 」 カ 甲第6号証について (ア) 甲第6号証の記載事項 本件特許に係る出願の出願日前に頒布された甲第6号証には、「非水電解質二次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。 6a 「【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明で用いる水系バインダーとは、水にバインダーを分散させた状態で活物質と混合して用いるバインダーを意味し、代表的なものとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができ、これにカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合することもできるし、SBRに替えてCMC単独で用いることもできる。」 キ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「正極活物質層1」、「集電体2」、「両面」、「正極3」、「負極活物質層5」、「集電体6」、「負極7」、「セパレータ4」は、それぞれ、本件発明1の「正極活物質層」、「正極集電体」、「表面」、「正極」、「負極活物質層」、「負極集電体」、「負極」、「セパレータ」に相当する。 b 本件発明1の「非水電解質二次電池」は、「液体電解質から構成される電解液層」を含むことから、甲1発明の「非水電解液二次電池」は、本件発明1の「非水電解質二次電池」に相当するといえる。 上記の検討から、本件発明1と甲1発明とは、 「正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、 負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、 前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を含む発電要素を有する、非水電解質二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 負極活物質層について、本件発明1は、「水系バインダーを含む」ものであるのに対して、甲1発明は、「結着剤を含む」ものである点。 <相違点2> 負極活物質層について、本件発明1は、「密度が1.4?1.6g/cm^(3)であ」るのに対して、甲1発明は、密度についての特定がない点。 <相違点3> 本件発明1は、「前記負極活物質層および前記正極活物質層のうち少なくとも一層と前記セパレータとの間に液体電解質から構成される電解液層が配置され、前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している」のに対して、甲1発明は、非水電解液を含むものの電解液層が配置されているか不明である点。 (イ)判断 a 相違点3についての判断 甲1号証の上記1cによれば、【発明が解決しようとする課題】として、「しかしながら、最近のように高容量化、特にエネルギー密度を上げる要請に応えるために、電極群の電極内や電極間の空隙を極力減らし、この電極群を外装部材内に高気密充填すると、電極内や電極間の空隙に電解液や高分子ゲル状電解質が十分含浸できない問題が発生するようになった。」と記載されていることから、甲1号証には、甲1発明の前提として、高容量化、特にエネルギー密度を上げるために電極間等の空隙を極力減らすことが記載されているといえる。 一方、本件発明1は、「前記負極活物質層および前記正極活物質層のうち少なくとも一層と前記セパレータとの間に液体電解質から構成される電解液層が配置され、前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している」を発明特定事項とするものであり、ここから、厚みの割合が0超0.15以下の電解液層が電極間に配置されているといえる。 そうすると、甲1発明において、電極間の空隙を極力減らす代わりに電極間に厚みの割合が0超0.15以下の電解液層を配置すること、特に、厚みの割合が0.15付近の電解液層は、甲1発明の上記前提に反することであるから、甲1号証に接した当業者にとってそのようにする動機づけはないし、発明の課題を解決しないものとなる電解液層を配置することには、阻害要因があるといえる。 仮に、阻害要因がないとしても、本件発明1における「前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している」という発明特定事項については、甲第2?6号証やその他の刊行物を参照しても、記載も示唆もされていないことは明らかである。 そして、本件明細書の段落【0013】によれば、「正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して0.85を下回ると、リチウムイオンの通り道が長くなり、電池内のイオン移動が阻害される。このため、電極面内で反応が不均一となり、ガス発生量が多い電圧が高い部分が電極内で部分的に存在することとなる。また、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が1.0以上であると、セパレータ等の樹脂層が圧縮されガスが排出されることとなり、ガスの系外への排出が円滑に行われなくなる。このため、正極、負極およびセパレータの合計厚みが正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して1.0以上である、または0.85未満であると、電池の長期サイクル特性が低下する。」とのことであり、本件発明1は、上記発明特定事項により、0.85以上であると電池の長期サイクル特性が低下することなく、また、1.0未満であるとガスの系外への排出が円滑に行われ、0.85以上1.0未満であると、電池の長期サイクル特性とガスの系外への排出に関する両方の効果を満たすものと認められる。 よって、甲1発明において上記相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 そして、本件発明1は、その構成により、「負極活物質層のバインダーとして水系バインダーを用いた場合であっても、発生したガスが電極外へ放出されやすくなるため、長期にわたって使用しても電池容量の低下が少ない非水電解質二次電池が可能となる」(本件明細書の段落【0014】)という効果を奏するものである。 b 判断のまとめ 甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 よって、本件発明1は、相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、また、技術常識に照らしても、甲第1?6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ク 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を有し、これをさらに限定したものであるから、上記キ(ア)で検討したと同様に、甲1発明と少なくとも相違点1?相違点3の点で相違しており、上記キ(イ)で検討したとおり、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の特定事項とすることが容易であるとはいえないから、甲1発明と少なくも相違点3において相違している本件発明2についても同様に、甲第1?6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ケ まとめ 以上より、本件発明1、2は、甲第1?6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。 6 むすび 以上のとおり、上記申立理由1、2によっては、請求項1、2に係る本件特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 非水電解質二次電池 【技術分野】 【0001】 本発明は、非水電解質二次電池に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、環境保護運動の高まりを背景として、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、および燃料電池車(FCV)の開発が進められている。これらのモータ駆動用電源としては繰り返し充放電可能な二次電池が適しており、特に高容量、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が注目を集めている。 【0003】 非水電解質二次電池は、集電体表面に形成された正極活物質(たとえば、LiCoO_(2)、LiMnO_(2)、LiNiO_(2)等)を含む正極活物質層を有する。また、非水電解質二次電池は、集電体表面に形成された負極活物質(たとえば、金属リチウム、コークスおよび天然・人造黒鉛等の炭素質材料、Sn、Si等の金属およびその酸化物材料等)を含む負極活物質層を有する。 【0004】 活物質層に用いられる活物質を結着させるためのバインダーは、有機溶媒系バインダー(水に溶解/分散せず、有機溶媒に溶解/分散するバインダー)および水系バインダー(水に溶解/分散するバインダー)に分類される。有機溶媒系バインダーは、有機溶剤の材料費、回収費、廃棄処分などに多額のコストがかかり、工業的に不利となる場合がある。一方で、水系バインダーは、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。さらに水系バインダーは、有機溶媒系バインダーに比べて少量でも結着効果が大きく、同一体積当たりの活物質比率を高めることができ、電極を高容量化できるという利点がある。 【0005】 このような利点を有することから、活物質層を形成するバインダーとして水系バインダーを用いて負極を形成する種々の試みが行われている。例えば、特開2010-80297号公報では、水系バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)などのラテックス系結着剤とともに、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロースを負極活物質層に含有させる非水電解質二次電池用負極が提案されている。 【発明の概要】 【0006】 しかしながら、水系バインダーを用いた負極活物質層を含む非水電解質二次電池においては、有機系バインダーを用いた場合よりも初回充放電時に電極から発生するガス量が多くなることがわかった。発生するガス量が多くなると、電池特性に影響を与える虞があり、特に長期にわたって電池を用いる場合に電池容量が低下する場合があった。 【0007】 そこで本発明は、負極活物質層のバインダーとして水系バインダーを用いた場合に、発生したガスを効率的に電極外へ排出させることができ、長期にわたって使用しても電池容量の低下が少ない非水電解質二次電池を提供することを目的とする。 【0008】 本発明に係る非水電解質二次電池は、正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、水系バインダーを含む負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータとを含む。そして、負極活物質層の密度が1.4?1.6g/cm^(3)であり、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満である点に特徴を有する。 【図面の簡単な説明】 【0009】 【図1】扁平型(積層型)の双極型でない非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 【図2A】図2Aは本発明の好適な一実施形態である非水電解質二次電池の概略図である。 【図2B】図2Bは図2AにおけるA方向からの矢視図である。 【図3】図3は、本発明の他の好適な一実施形態である非水電解質二次電池を含む電池モジュールを示す斜視図である。 【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明は、正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、水系バインダーを含む負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、正極活物質層と負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を含む発電要素を有し、負極活物質層の密度が1.4?1.6g/cm^(3)であり、負極活物質層および正極活物質層のうち少なくとも一層とセパレータとの間に電解液層が配置され、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満である、非水電解質二次電池である。 【0011】 上述したように水系バインダーは活物質層を製造する際の溶媒として水を用いることができるため、種々の利点が存在し、また、活物質を結着する結着力も高い。しかしながら、本発明者らは、負極活物質層に水系バインダーを用いると、有機溶媒系バインダーを用いた負極に比較して初回充放電時のガス発生量が多いという問題点があることを見出した。これは、水系バインダーを溶解(分散)する際に用いる溶媒の水が電極内に残存し、この水が分解してガスとなるため、有機溶媒系バインダーよりもガスの発生が多くなるものと考えられる。かようなガスの発生により、負極活物質層に水系バインダーを用いた場合、電池を長期間にわたって使用する際の電池の放電容量が初期時の電池の放電容量と比較して低下していた。これは、ガスの発生により、活物質層上にガスが残存し、負極表面上でのSEI被膜の形成が不均一となるためであると考えられる。 【0012】 単セルあたりの容量が民生用途の数倍?数十倍である積層型ラミネート電池では、エネルギー密度向上のため電極が大型化されているため、ガスの発生量が一層大きくなり、更に負極上の不均一反応も起こりやすくなる。 【0013】 上記知見の元に鋭意検討した結果、負極活物質層内にガスの通り道を作り、活物質層内を抜けたガスが発電要素外に排出される機構を作製すれば、発生したガスを効率的に系外に排出できるのではないかという発想の元に、本発明の構成を完成させたものである。本発明では、負極活物質層の密度と、電解液層(負極(正極)活物質層/セパレータ間に位置する)の厚さが特定の範囲内となっている。負極活物質層の密度を適度に制御することにより、発生したガスの通り道ができるようになり、さらに電解液層が存在することにより、発電要素内のガスの通り道を抜けたガスが、電解液層から発電要素系外に排出されると考えられる。電解液層が存在しない場合、ガスはセパレータや活物質層から排出されることとなるが、セパレータや活物質層は樹脂層である。このような樹脂層からのガスの排出よりも、液からのガスの排出のほうが速いため、従来の電池と比較して、本発明の構成によればガス抜けが効率的に行われるものと考えられる。すなわち、本発明の構成は、ガスの電極垂直方向の通り道と電極面方向の通り道とを適切に作製することで、発生したガスを系外に円滑に排出し、電池性能を向上させたものである。 【0014】 したがって、本発明によれば、負極活物質層のバインダーとして水系バインダーを用いた場合であっても、発生したガスが電極外へ放出されやすくなるため、長期にわたって使用しても電池容量の低下が少ない非水電解質二次電池が可能となる。 【0015】 以下、非水電解質二次電池の好ましい実施形態として、非水電解質リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。 【0016】 なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。 【0017】 図1は、扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、セパレータ17と、負極とをこの順に積層した構成を有している。また、セパレータ17は、非水電解質(例えば、液体電解質)を内蔵している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、セパレータ17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。 【0018】 なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。 【0019】 正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)25および負極集電板(タブ)27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。 【0020】 図1において、負極活物質層15とセパレータ17との間、および正極活物質層13とセパレータ17との間には、電解液層16が存在する。 【0021】 なお、図1では、扁平型(積層型)の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。 【0022】 以下、本発明の特徴部である電解液層および負極活物質層について、さらに詳細に説明する。 【0023】 [電解液層] 本発明においては、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満である。ここで、電解液層は、発電要素内のいずれかの活物質層およびセパレータの間に存在すれば足りるが、本発明の効果を考慮すると、少なくとも負極活物質層とセパレータとの間に電解液層が存在することが好ましい。より好ましくは、正極活物質層および負極活物質層と、セパレータとの間に電解液層が存在する。正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して0.85を下回ると、リチウムイオンの通り道が長くなり、電池内のイオン移動が阻害される。このため、電極面内で反応が不均一となり、ガス発生量が多い電圧が高い部分が電極内で部分的に存在することとなる。また、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が1.0以上であると、セパレータ等の樹脂層が圧縮されガスが排出されることとなり、ガスの系外への排出が円滑に行われなくなる。このため、正極、負極およびセパレータの合計厚みが正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して1.0以上である、または0.85未満であると、電池の長期サイクル特性が低下する。また、電池の出力性能およびガス排出の両立という本発明の効果がより発揮されることから、正極、負極およびセパレータの合計厚みの割合が正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対して0.95以上1.0未満であることが好ましい。 【0024】 以下、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みを発電構成要素の厚みとも称する。また、正極、負極およびセパレータの合計厚みを発電要素部材の厚みとも称する。なお、発電要素部材の厚みは、正極、負極およびセパレータの物理的厚さから計算により求められる。そして、発電構成要素の厚みは、ラミネートフィルムで封止された電池の厚みを測定し、ラミネートフィルムの厚さを引いた発電要素の厚みを求めればよい。 【0025】 なお、電解液層とは、有機溶媒にリチウム塩が溶解した液体電解質から構成される層を指し、セパレータと活物質層との間に液体電解質から構成される厚みが存在することを意味する。換言すれば、「活物質層とセパレータとの間に電解液層が配置される」とは、活物質層とセパレータとが物理的に接触せずに、活物質層とセパレータとの間が電解液で一定の厚みをもって満たされている状態をいう。したがって、電解液「層」は、物理的に末端が閉鎖している構造のみを意味するのではなく、セパレータと活物質層との間に液体電解質から構成される厚みが存在すれば足りる。 【0026】 電解液層を構成する液体電解質は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。液体電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N、Li(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiClO_(4)、LiAsF_(6)、LiTaF_(6)、LiCF_(3)SO_(3)等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。液体電解質は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。 【0027】 これらの電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。 【0028】 電解液層は、後述の製造方法に記載するように、セパレータおよび電極を積層後、過剰の電解液を注入することにより、セパレータと電極の活物質層との間に形成される。 【0029】 電解液層の厚さを制御する方法は特に限定されるものではないが、好適な一実施形態は、電池要素に掛かる群圧を制御する方法である。したがって、本発明の好適な一実施形態は、発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)(6.86?68.6kPa)である、非水電解質二次電池である。より好適には、発電要素に掛かる群圧が0.08?0.7kgf/cm^(2)(7.84?49.0kPa)である。ここで、群圧とは、発電要素に付加された外力を指し、群圧は、フィルム式圧力分布計測システムを用いて容易に測定することができ、本明細書においてはtekscan社製フィルム式圧力分布計測システムを用いて測定する値を採用する。 【0030】 群圧の制御は特に限定されるものではないが、発電要素に物理的に直接または間接的に外力を付加し、該外力を制御することで制御できる。かような外力の付加方法としては、外装体に圧力を付加させる加圧部材を用いることが好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、発電要素が外装体で密閉された構造を有し、発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように外装体に圧力を付加させる加圧部材をさらに有する、非水電解質二次電池である。 【0031】 図2Aは本発明の他の好適な一実施形態である非水電解質二次電池の概略図、図2Bは図2AにおけるA方向からの矢視図である。発電要素を封入した外装体1は長方形状の扁平な形状を有しており、その側部からは電力を取り出すための電極タブ4が引き出されている。発電要素は、電池外装体によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素は、電極タブ4を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素は、先に説明した図1に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。図2において、2は加圧部材であるSUS板、3は固定部材である固定治具、4は電極タブ(負極タブまたは正極タブ)を表す。加圧部材は、発電要素に掛かる群圧を0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように制御する目的で配置されるものである。加圧部材としては、ウレタンゴムシートなどのゴム材、アルミニウム、SUSなどの金属板などが挙げられる。また、加圧部材が発電要素に対して一定の圧力を継続的に付与できることから、加圧部材を固定するための固定部材をさらに有することが好ましい。また、固定治具の加圧部材への固定を調節することで、発電要素に掛かる群圧を容易に制御できる。 【0032】 なお、図2に示すタブの取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブと負極タブとを両側部から引き出すようにしてもよいし、正極タブと負極タブをそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。 【0033】 図3は、本発明の他の好適な一実施形態である非水電解質二次電池を含む電池モジュールを示す斜視図である。電池モジュール120は、外装体に封止された発電要素が複数スタックされた単電池130、箱形状を成すロアケース123および蓋形状を成すアッパーケース124からなるケース122を有する。アッパーケース124の縁部は、カシメ加工によって、ロアケース123の周壁の縁部に巻き締められており、積重ね方向に突出した突起部125を有する。図3の形態では、加圧部材はケース122であり、かつ、ケース122は固定部材も兼ねる。図3に記載の電池モジュールでは、電池収納ケースの厚さの寸法が決定しているため、スタックを収納した後の発電要素に掛かる群圧は、収納ケースの厚みに依存する。このため、発電要素に掛かる群圧の制御は、電池スタックの厚さを考慮して、電池収納ケースの厚みを調整することで制御することができる。この形態では、非水電解質二次電池は、外装体に封止された発電要素(単電池)および加圧部材であるケースから構成されることになる。 【0034】 ロアケース123およびアッパーケース124は、比較的薄肉の鋼板またはアルミニウム板から形成される。鋼やアルミニウムなどの金属材料は、良好な剛性を有するため、必要な剛性を確保しつつ小型軽量化および低騒音化を図り、また、良好な熱伝導率を有するため、冷却性能および温度制御性を向上させることで、低燃費化および長寿命化を図ることが可能である。 【0035】 ケース122の内部には、スリーブ126および単電池130が収容されている。スリーブ126は、ケース122の4隅に配置されており、ケース122の補強部材として機能し、電池スタックを締結するための締結力を受けるために使用される。128は、単電池130とアッパーケース124との間に設けられる緩衝材を示している。 【0036】 また、非水電解質二次電池としては、発電要素を金属缶やラミネートフィルムなどの電池外装体で封止した電池(単電池)を、加圧部材および固定部材である電池収納ケース内に収納した形態であってもよい。 【0037】 [負極活物質層] 本発明では、負極活物質層の密度を1.4?1.6g/cm^(3)とする。負極活物質層の密度が1.6g/cm^(3)を超えると、活物質層の密度が高いために、発生したガスが電極内から抜けず、長期サイクル特性が低下する。また、負極活物質層の密度が1.4g/cm^(3)未満であると、活物質の連通性が低下し、電子伝導性が低下するため、電池性能が低下する。負極活物質層の密度は、本発明の効果がより発揮されることから、1.4?1.55g/cm^(3)であることが好ましい。 【0038】 負極活物質層の密度を上記範囲内に制御するためには、電極を製造する際のプレス圧を適宜調整することによって、制御できる。なお、負極活物質層の密度は、単位体積あたりの活物質層質量を表す。具体的には、電池から負極活物質層を取り出し、電解液中などに存在する溶媒等を除去後、電極体積を長辺、短辺、高さから求め、活物質層の重量を測定後、重量を体積で除することによって求めることができる。 【0039】 負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li_(4)Ti_(5)O_(12))、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム-遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。 【0040】 負極活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1?100μm、より好ましくは1?30μmである。 【0041】 負極活物質層は、少なくとも水系バインダーを含む。水系バインダーは、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。 【0042】 水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。 【0043】 水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合体等)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200?4000、より好適には、1000?3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98?30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1?80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1?50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド-(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1?4)エステル-(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン-マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素-ホルマリン樹脂、メラミン-ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン-エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。 【0044】 上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン-ブタジエンゴムを含むことが好ましい。 【0045】 水系バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン-ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン-ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロースとを組み合わせることが好ましい。スチレン-ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン-ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.3?0.7であることが好ましい。 【0046】 負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80?100質量%であることが好ましく、90?100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。水系バインダー以外のバインダーとしては、下記正極活物質層に用いられるバインダーが挙げられる。 【0047】 負極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5?15質量%であり、より好ましくは1?10質量%であり、さらに好ましくは2?4質量%である。水系バインダーは結着力が高いことから、有機溶媒系バインダーと比較して少量の添加で活物質層を形成できる。このことから、水系バインダーの活物質層中の含有量は、活物質層に対して、好ましくは0.5?15質量%であり、より好ましくは1?10質量%であり、さらに好ましくは2?4質量%である。 【0048】 負極活物質層は、必要に応じて、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。 【0049】 導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。 【0050】 電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiClO_(4)、LiAsF_(6)、LiCF_(3)SO_(3)等が挙げられる。 【0051】 イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。 【0052】 負極活物質層および後述の正極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2?100μm程度である。 【0053】 [正極活物質層] 正極活物質層は活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。 【0054】 正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn_(2)O_(4)、LiCoO_(2)、LiNiO_(2)、Li(Ni-Mn-Co)O_(2)およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくは、Li(Ni-Mn-Co)O_(2)およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。 【0055】 NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。 【0056】 NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):Li_(a)Ni_(b)Mn_(c)Co_(d)M_(x)O_(2)(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。 【0057】 一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。 【0058】 より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点から好ましい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。 【0059】 正極活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1?100μm、より好ましくは1?20μmである。 【0060】 正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-HFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF-PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-ペンタフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFP-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-PFMVE-TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド-クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF-CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 【0061】 正極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5?15質量%であり、より好ましくは1?10質量%である。 【0062】 バインダー以外のその他の添加剤については、上記負極活物質層の欄と同様のものを用いることができる。 【0063】 [セパレータ] セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。 【0064】 セパレータとしては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを適宜利用することができる。例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。 【0065】 ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。 【0066】 微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4?60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。 【0067】 不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5?200μmであり、特に好ましくは10?100μmである。 【0068】 また、セパレータとしては多孔質基体に耐熱絶縁層が積層されたセパレータであってもよい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電気デバイスの製造工程でセパレータがカールしにくくなる。 【0069】 また、上述したように、セパレータは、電解質を含む。電解質としては、かような機能を発揮できるものであれば特に制限されないが、液体電解質またはゲルポリマー電解質が用いられる。液体電解質は上記電解液層で用いたものが挙げられる。 【0070】 ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。 【0071】 ゲル電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。 【0072】 [電池外装体] 電池外装体29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。 【0073】 外装体の内容積は発電要素の容積よりも大きいことが好ましい。ここで外装体の内容積とは、外装体で封止した後の真空引きを行う前の外装体内の容積を指す。また、発電要素の容積とは、発電要素が空間的に占める部分の容積であり、発電要素内の空孔部を含む。外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きいことで、ガスが発生した際にガスを溜めることができる容積が存在する。したがって、系外へのガスの排出が円滑に行われ、発生したガスが電池挙動に影響することが少なく、電池特性が向上する。また、ガスが発生した場合に、外装体内にガスを溜めることができる余剰部分が存在することで、発電要素の体積を一定に保つことができるため、電極間の距離を一定にし、均一な反応を持続させることが可能となる。外装体の内容積は、ガスを溜めることができるようある程度大きいことが好ましく、具体的には、発電要素の空孔部を除く体積の0.03?0.12の体積分、外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きいことが好ましい。 【0074】 自動車用途などにおいては、昨今、大型化された電池が求められている。そして、発生したガスを外部へ効率的に排出するという本発明の効果は、ガス発生量の多い大面積電池の場合に、より効果的にその効果が発揮される。したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体が大型であることが本発明の効果がより発揮されるという意味で好ましい。具体的には、負極活物質層が矩形状であり、当該矩形状の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。矩形状の短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常250mm以下である。 【0075】 また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積の最大値)の比の値が5cm^(2)/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池においては、単位容量当たりの電池面積が大きいため、やはりガス発生量が多い。このため、SBR等の水系バインダーを負極活物質層の形成に用いた電池における電池性能(特に、長期サイクル後の寿命特性)の低下という課題がよりいっそう顕在化しやすい。したがって、本形態に係る非水電解質二次電池は、上述したような大型化された電池であることが、本願発明の作用効果の発現によるメリットがより大きいという点で、好ましい。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1?3であることが好ましく、1?2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、水系バインダーの使用を必須とする本発明では、面方向に均一にガスを排出することが可能となり、不均一な被膜の生成をよりいっそう抑制することができるという利点がある。 【0076】 [集電体] 集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。 【0077】 集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1?100μm程度である。 【0078】 [正極集電板および負極集電板] 集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。 【0079】 [正極リードおよび負極リード] また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。 【0080】 [製造方法] 非水電解質二次電池の製造方法については特に制限はなく、電池の製造分野において従来公知の知見を参照して、製造されうる。 【0081】 本発明の非水電解質二次電池の製造方法の好適な一実施形態は以下のとおりである。 【0082】 セパレータ、負極および正極を積層させた積層体を形成する工程と、該積層体を外装体内に封入する工程と、該外装体内に電解液を注液する工程と、該外装体上に加圧部材を配置し、前記外装体に発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように外装体に圧力を付加させる工程と、を含む非水電解質二次電池の製造方法である。 【0083】 以下、各工程を簡単に説明する。 【0084】 (1)セパレータ、負極および正極を積層させた積層体を形成する工程 まず、活物質を含むスラリーを集電体に塗布し、乾燥させて、電極を作製する。この際、負極活物質層は水系バインダーを用いているため、水系スラリーを用いることが好ましい。水系スラリーを作製する際には、水系溶媒を用いることができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。水系溶媒とは、水および水と有機溶媒との混合溶媒を指す。具体的には、水、水と、メタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が挙げられ、水がより好ましい。水系溶媒として水と少量の有機溶媒との混合溶媒を用いる際、当該混合溶媒中の水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%として、80?99.9質量%であることが好ましく、90?99.5質量%であることがより好ましい。 【0085】 次いで、上記で作製した電極とセパレータとを所望の形態および積層数積層して、発電要素である積層体を作製する。 【0086】 (2)積層体を外装体で封止する工程 続いて、上述した手法により得られた積層体の最外層に、リードが接続されたタブを接合し、当該リードが外部に露出するように、電池要素を封止する。この際、電解液を注入するための開放端部を設けてもよい。 【0087】 (3)外装体内に電解液を注液する工程 外装体内に電解液を注入する方法としては、減圧注入法により電極間の空隙部に電解液を注入する方法や、上記外装体内に積層体とともに電解液を注液し、封止する方法などが挙げられる。 【0088】 (4)外装体上に加圧部材を配置し、前記外装体に発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように外装体に圧力を付加させる工程 加圧部材による外装体への群圧の付加の方法は特に限定されるものではなく、例えば、上述の図2のように固定治具で加圧部材を固定して発電要素に群圧をかける方法などが挙げられる。 【0089】 [組電池] 単電池または電気モジュールを複数個接続して組電池としてもよい。組電池は、詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。 【0090】 電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。 【0091】 [車両] 上記非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。 【0092】 具体的には、組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。 【実施例】 【0093】 以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。 【0094】 (実施例1) 1.電解液の作製 エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF_(6)をリチウム塩とした。さらに上記溶媒と上記リチウム塩との合計100質量%に対して2質量%のビニレンカーボネートを添加して電解液を作製した。なお、「1.0MのLiPF_(6)」とは、当該混合溶媒およびリチウム塩の混合物におけるリチウム塩(LiPF_(6))濃度が1.0Mであるという意味である。 【0095】 2.正極の作製 正極活物質としてLiMn_(2)O_(4)(平均粒子径:15μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量%、およびバインダーとしてPVdF 10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(20μm)の両面に塗布し乾燥・プレスを行い、片面塗工量20.0mg/cm^(2),両面厚み172μm(箔込み)の正極を作成した。また、正極活物質層の密度は、2.92g/cm^(3)とした。 【0096】 3.負極の作製 負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:20μm)95質量%、導電助剤としてアセチレンブラック2質量%およびバインダーとしてSBR(日本ゼオン社製) 2質量%、CMC(日本製紙ケミカル社製、商品名:サンローズ) 1質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるイオン交換水を適量添加して、負極スラリーを作製した。次に、負極スラリーを、集電体である銅箔(15μm)の両面に塗布し乾燥・プレスを行い片面塗工量5.64mg/cm^(2),両面厚み92μm(箔込み)負極を作製した。また、負極活物質層の密度は、1.46g/cm^(3)とした。 【0097】 4.単電池の完成工程 上記で作製した正極を210×184mmの長方形状に切断し、負極層を215×188mmの長方形状(矩形状)に切断した(正極15枚、負極16枚)。この正極と負極を219×191mmのセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜、厚さ25μm、空隙率55%)を介して交互に積層した。 【0098】 これらの正極と負極それぞれにタブを溶接し、アルミラミネートフィルムからなる外装中に表1に記載の量の電解液とともに密封して電池を完成させ、電極面積よりも大きいウレタンゴムシート(厚み3mm)、更にAl板(厚み5mm)で電池を挟み込み、表1に記載の群圧となるように加圧することで単電池を完成させた。このように作製された電池の定格容量は17.7Ahであり、定格容量に対する電池面積の比は28.8cm^(2)/Ahであった。なお、電池(単電池)の定格容量は、以下により求めた。 【0099】 定格容量は、試験用電池について、電解液を注入した後で、10時間程度放置し、初期充電を行う。その後、温度25℃、3.0Vから4.15Vの電圧範囲で、次の手順1?5によって測定される。 【0100】 手順1:0.2Cの定電流充電にて4.15Vに到達した後、5分間休止する。 【0101】 手順2:手順1の後、定電圧充電にて1.5時間充電し、5分間休止する。 【0102】 手順3:0.2Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10秒間休止する。 【0103】 手順4:0.2Cの定電流充電によって4.1Vに到達後、定電圧充電にて2.5時間充電し、その後、10秒間休止する。 【0104】 手順5:0.2Cの定電流放電によって3.0Vに到達後、定電圧放電にて2時間放電し、その後、10秒間停止する。 【0105】 定格容量:手順5における定電流放電から定電圧放電に至る放電における放電容量(CCCV放電容量)を定格容量とする。 【0106】 得られた単電池の正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚み(発電構成要素の厚み)、正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚みに対する正極、負極およびセパレータの合計厚みの比(発電要素部材の厚み/発電構成要素の厚み比)を表1に記載した。 【0107】 (実施例2?12および比較例1?3) 表1に記載の電解液量で電解液を注入したこと、および表1に記載の外装体群圧となるように加圧したこと以外は実施例1と同様にして電池を作製した。 【0108】 (電池の評価) 1.単電池の初回充電工程 上記のようにして作製した非水電解質二次電池(単電池)を充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験は、25℃に保持した恒温槽において24時間保持し、初回充電を実施した。初回充電は、0.05CAの電流値で4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、あわせて25時間充電した。その後、40℃に保持した恒温槽において96時間保持した。その後、25℃に保持した恒温槽において、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。 【0109】 2.電池の評価 上記のようにして作製した非水電解質二次電池(単電池)を充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験は、45℃に保持した恒温槽において、電池温度を45℃とした後、性能試験を行った。充電は1Cの電流レートで4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、あわせて2.5時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとし、充放電試験を実施した。初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率とした。結果を表1に示す。 【0110】 【表1】 【0111】 *発電構成要素の厚み:正極、負極、セパレータおよび電解液層の合計厚み 発電要素部材の厚み:正極、負極およびセパレータの合計厚み 上記結果より、実施例1?9の電池は、比較例1?3の電池と比較して長期サイクル後の容量維持率が高いものであることがわかる。 【0112】 本出願は、2013年3月26日に出願された日本特許出願番号2013-064911号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。 【符号の説明】 【0113】 1 発電要素が封入された外装体、 2 加圧部材、 3 固定部材、 4 電極タブ、 10 リチウムイオン二次電池、 11 正極集電体、 12 負極集電体、 13 正極活物質層、 15 負極活物質層、 16 電解液層、 17 セパレータ、 21 発電要素、 25 正極集電板、 27 負極集電板、 29 電池外装体、 120 電池モジュール、 122 ケース、 123 ロアケース、 124 アッパーケース、 125 突起部、 126 スリーブ、 128 緩衝材、 130 単電池。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、 水系バインダーを含む負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極と、 前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、を含む発電要素を有し、 前記負極活物質層の密度が1.4?1.6g/cm^(3)であり、 前記負極活物質層および前記正極活物質層のうち少なくとも一層と前記セパレータとの間に液体電解質から構成される電解液層が配置され、前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.85以上1.0未満となるように発電要素に群圧を付与している、非水電解質二次電池。 【請求項2】 前記正極、前記負極および前記セパレータの合計厚みの割合が、前記正極、前記負極、前記セパレータおよび前記電解液層の合計厚みに対して、0.95以上1.0未満である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。 【請求項3】 前記発電要素が外装体で密閉された構造を有し、前記発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように外装体に圧力を付加させる加圧部材をさらに有する、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。 【請求項4】 前記発電要素が外装体で密閉された構造を有し、外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きい、請求項1?3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項5】 前記負極活物質層が矩形状であり、前記矩形状の短辺の長さが100mm以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項6】 定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm^(2)/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である、請求項1?5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項7】 矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される電極のアスペクト比が1?3である、請求項1?6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項8】 前記外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムである、請求項4?7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項9】 前記発電要素が外装体で密閉された構造を有し、前記発電要素に掛かる群圧が0.07?0.7kgf/cm^(2)となるように外装体に圧力を付加させる加圧部材をさらに有し、前記加圧部材を固定保持するための固定部材をさらに有する、請求項1?8のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項10】 前記水系バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含む、請求項1?9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。 【請求項11】 前記水系バインダーは、スチレン-ブタジエンゴムを含む、請求項10に記載の非水電解質二次電池。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-10-31 |
出願番号 | 特願2015-508629(P2015-508629) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 太田 一平 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
井上 能宏 國島 明弘 |
登録日 | 2016-09-16 |
登録番号 | 特許第6007315号(P6007315) |
権利者 | 日産自動車株式会社 オートモーティブエナジーサプライ株式会社 |
発明の名称 | 非水電解質二次電池 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |